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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】下流側空燃比検出装置の異常診断装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240806BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20240806BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20240806BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240806BHJP
   F01N 11/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F02D45/00 368F
F01N3/035 A
F01N3/18 C
F01N3/24 B
F01N3/24 E
F01N11/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020010078
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021116730
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-11-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】北爪 芳之
(72)【発明者】
【氏名】若尾 和弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 康敬
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-19542(JP,A)
【文献】特開2007-56723(JP,A)
【文献】特開2005-9401(JP,A)
【文献】特開2006-183591(JP,A)
【文献】特開2020-2928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F01N 3/035
F01N 11/00
F01N 3/18
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路において触媒の下流側に配置された下流側空燃比検出装置の異常診断装置であって、
前記内燃機関の燃焼室内の混合気の空燃比を制御する空燃比制御部と、
前記空燃比制御部が前記混合気の空燃比をリッチからリーンに変化させたときの前記下流側空燃比検出装置の出力変化特性に基づいて、該下流側空燃比検出装置の異常を判定する異常判定部と、
前記空燃比制御部が前記混合気の空燃比をリッチからリーンに変化させたときの前記触媒の酸素吸蔵量の変化量を算出する酸素変化量算出部と
を備え、
前記触媒が、排気ガス中の粒子状物質を捕集するためのフィルタ機能を有する四元触媒であり、
前記異常判定部は、前記酸素吸蔵量の変化量が下限閾値未満である場合に、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定せず、前記酸素吸蔵量の変化量が前記下限閾値よりも大きな上限閾値よりも大きい場合にも、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定しない、下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【請求項2】
前記下流側空燃比検出装置は複数の触媒の下流側に配置され、
前記酸素変化量算出部は、前記複数の触媒のそれぞれについて、前記空燃比制御部が前記混合気の空燃比を変化させたときの酸素吸蔵量の変化量を算出し、
前記複数の触媒の少なくとも一つが、排気ガス中の粒子状物質を捕集するためのフィルタ機能を有する四元触媒であり、
前記異常判定部は、前記四元触媒の前記酸素吸蔵量の変化量が前記下限閾値未満である場合に、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定せず、前記四元触媒の前記酸素吸蔵量の変化量が前記下限閾値よりも大きな上限閾値よりも大きい場合にも、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定しない、請求項1に記載の下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【請求項3】
前記排気通路において前記触媒の上流側に配置された上流側空燃比検出装置を更に備え、
前記酸素変化量算出部は、前記上流側空燃比検出装置の出力値と前記下流側空燃比検出装置の出力値との差と、吸入空気量又は吸入空気量と相関する所定のパラメータとの積に基づいて前記酸素吸蔵量の変化量を算出する、請求項1に記載の下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【請求項4】
前記排気通路において前記複数の触媒のそれぞれの上流側に配置された上流側空燃比検出装置を更に備え、
前記酸素変化量算出部は、前記複数の触媒のそれぞれについて、該触媒の両側に配置された空燃比検出装置の出力値の差と、吸入空気量又は吸入空気量と相関する所定のパラメータとの積に基づいて前記酸素吸蔵量の変化量を算出する、請求項2に記載の下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【請求項5】
前記異常判定部は、前記空燃比制御部が前記混合気の空燃比を変化させたときに前記四元触媒において粒子状物質が燃焼したと判定した場合にも、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定しない、請求項1から4のいずれか1項に記載の下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下流側空燃比検出装置の異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素を吸蔵可能な触媒を内燃機関の排気通路に配置し、排気ガス中のHC、CO、NOx等を触媒において浄化することが知られている。
【0003】
しかしながら、触媒の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量近傍であるときには、理論空燃比よりもリーンな空燃比の排気ガスに対する触媒の浄化性能が低下する。この結果、触媒からNOxが流出し、触媒から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンになる。
【0004】
一方、触媒の酸素吸蔵量がゼロ近傍であるときには、理論空燃比よりもリッチな空燃比の排気ガスに対する触媒の浄化性能が低下する。この結果、触媒からHC及びCOが流出し、触媒から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチになる。
【0005】
このため、排気エミッションの悪化を抑制するためには、触媒の下流側に配置された下流側空燃比検出装置の出力に基づいて混合気の空燃比をフィードバック制御することが望ましい。しかしながら、斯かる下流側空燃比検出装置は、使用に伴って徐々に劣化し、その応答特性が悪化する場合がある。
【0006】
これに対して、特許文献1に記載の劣化診断装置では、燃料カットが実施されるときの下流側空燃比検出装置の出力に基づいて、下流側空燃比検出装置の劣化が判定される。また、触媒の酸素ストレージ作用の影響を低減すべく、燃料カットが開始されてから酸素が下流側空燃比検出装置に到達するまでの吸入空気量の積算値のようなパラメータ値が閾値未満である場合には、下流側空燃比検出装置の劣化判定が禁止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-52462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の手法では、燃料カットの実施時にのみ下流側空燃比検出装置の劣化が判定されるため、所望のタイミングで異常診断を行うことができない。また、燃料カット以外のときに異常診断が行われる場合には、吸入空気量の積算値のようなパラメータ値が閾値以上であったとしても、異常診断時の触媒の酸素吸蔵量は混合気の空燃比に応じて変化する。このため、上記の手法では、触媒の酸素ストレージ作用の影響を低減することが困難である。
【0009】
さらに、上記の手法では、下流側空燃比検出装置の上流側に一つの触媒が配置されることが想定されている。このため、下流側空燃比検出装置の上流側に複数の触媒が配置された場合に、複数の触媒が下流側空燃比検出装置の出力に与える影響が一切考慮されていない。したがって、下流側空燃比検出装置の異常診断の手法には改善の余地がある。
【0010】
上記課題に鑑みて、本発明の目的は、触媒の下流側に配置された下流側空燃比検出装置の異常診断の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0012】
(1)内燃機関の排気通路において触媒の下流側に配置された下流側空燃比検出装置の異常診断装置であって、前記内燃機関の燃焼室内の混合気の空燃比を制御する空燃比制御部と、前記空燃比制御部が前記混合気の空燃比を変化させたときの前記下流側空燃比検出装置の出力変化特性に基づいて、該下流側空燃比検出装置の異常を判定する異常判定部と、前記空燃比制御部が前記混合気の空燃比を変化させたときの前記触媒の酸素吸蔵量の変化量を算出する酸素変化量算出部とを備え、前記触媒が、排気ガス中の粒子状物質を捕集するためのフィルタ機能を有する四元触媒であり、前記異常判定部は、前記酸素吸蔵量の変化量が下限閾値未満である場合に、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定せず、前記酸素吸蔵量の変化量が前記下限閾値よりも大きな上限閾値よりも大きい場合にも、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定しない、下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【0013】
(2)前記下流側空燃比検出装置は複数の触媒の下流側に配置され、前記酸素変化量算出部は、前記複数の触媒のそれぞれについて、前記空燃比制御部が前記混合気の空燃比を変化させたときの酸素吸蔵量の変化量を算出し、前記複数の触媒の少なくとも一つが、排気ガス中の粒子状物質を捕集するためのフィルタ機能を有する四元触媒であり、前記異常判定部は、前記四元触媒の前記酸素吸蔵量の変化量が前記下限閾値未満である場合に、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定せず、前記四元触媒の前記酸素吸蔵量の変化量が前記下限閾値よりも大きな上限閾値よりも大きい場合にも、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定しない、上記(1)に記載の下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【0014】
(3)前記排気通路において前記触媒の上流側に配置された上流側空燃比検出装置を更に備え、前記酸素変化量算出部は前記上流側空燃比検出装置の出力値と前記下流側空燃比検出装置の出力値との差と、吸入空気量又は吸入空気量と相関する所定のパラメータとの積に基づいて前記酸素吸蔵量の変化量を算出する、上記(1)に記載の下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【0015】
(4)前記排気通路において前記複数の触媒のそれぞれの上流側に配置された上流側空燃比検出装置を更に備え、前記酸素変化量算出部は、前記複数の触媒のそれぞれについて、該触媒の両側に配置された空燃比検出装置の出力値の差と、吸入空気量又は吸入空気量と相関する所定のパラメータとの積に基づいて前記酸素吸蔵量の変化量を算出する、上記(2)に記載の下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【0018】
)前記異常判定部は、前記空燃比制御部が前記混合気の空燃比を変化させたときに前記四元触媒において粒子状物質が燃焼したと判定した場合に、前記下流側空燃比検出装置の異常を判定しない、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の下流側空燃比検出装置の異常診断装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、触媒の下流側に配置された下流側空燃比検出装置の異常診断の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る下流側空燃比検出装置の異常診断装置が設けられた内燃機関を概略的に示す図である。
図2図2は、三元触媒の浄化特性を示す。
図3図3は、第1空燃比センサの電圧-電流特性を示す図である。
図4図4は、センサ印加電圧が0.45Vであるときの排気ガスの空燃比と出力電流Iとの関係を示す図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る異常診断装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図6図6は、混合気の目標空燃比を変化させたときの第1空燃比センサの出力値及び第3空燃比センサの出力値のタイムチャートである。
図7図7は、第3空燃比センサの異常診断時の混合気の目標空燃比等のタイムチャートである。
図8図8は、第一実施形態において第3空燃比センサの異常判定が許可される領域を示す図である。
図9図9は、第一実施形態における異常判定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図10図10は、混合気の目標空燃比を変化させたときの第3空燃比センサの出力値のタイムチャートである。
図11図11は、第二実施形態において第3空燃比センサの異常判定が許可される領域を示す図である。
図12図12は、第二実施形態における異常判定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図13図13は、混合気の目標空燃比を変化させたときの第1空燃比センサの出力値及び第3空燃比センサの出力値のタイムチャートである。
図14図14は、第三実施形態における異常判定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図15図15は、本発明の第四実施形態に係る異常診断装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図16図16は、第四実施形態における異常判定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0022】
<第一実施形態>
最初に図1図9を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
【0023】
<内燃機関全体の説明>
図1は、本発明の第一実施形態に係る下流側空燃比検出装置の異常診断装置が設けられた内燃機関を概略的に示す図である。図1に示される内燃機関は火花点火式内燃機関である。内燃機関は車両に搭載される。
【0024】
図1を参照すると、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。吸気弁6は吸気ポート7を開閉し、排気弁8は排気ポート9を開閉する。
【0025】
図1に示したように、シリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4の内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。点火プラグ10は、点火信号に応じて火花を発生させるように構成される。また、燃料噴射弁11は、噴射信号に応じて、所定量の燃料を燃焼室5内に噴射する。本実施形態では、燃料として理論空燃比が14.6であるガソリンが用いられる。
【0026】
各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15を介してエアクリーナ16に連結される。吸気ポート7、吸気枝管13、サージタンク14、吸気管15等は、空気を燃焼室5に導く吸気通路を形成する。また、吸気管15内には、スロットル弁駆動アクチュエータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。スロットル弁18は、スロットル弁駆動アクチュエータ17によって回動せしめられることで、吸気通路の開口面積を変更することができる。
【0027】
一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結される。排気マニホルド19は、各排気ポート9に連結される複数の枝部と、これら枝部が集合した集合部とを有する。排気マニホルド19の集合部は、第1触媒20を内蔵した第1ケーシング21に連結される。第1ケーシング21は、排気管22を介して、第2触媒23を内蔵した第2ケーシング24に連結される。排気ポート9、排気マニホルド19、第1ケーシング21、排気管22、第2ケーシング24等は、燃焼室5における混合気の燃焼によって生じた排気ガスを排出する排気通路を形成する。第1触媒20は最も上流側に配置された触媒であり、第2触媒23は最も下流側に配置された触媒である。
【0028】
内燃機関の各種制御は電子制御ユニット(ECU)31によって実行される。すなわち、ECU31は内燃機関の制御装置として機能する。ECU31には、内燃機関に設けられた各種センサの出力が入力され、ECU31は各種センサの出力等に基づいて内燃機関の各種アクチュエータを制御する。
【0029】
ECU31は、デジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36及び出力ポート37を備える。なお、本実施形態では、一つのECU31が設けられているが、機能毎に複数のECUが設けられていてもよい。
【0030】
吸気管15には、吸気管15内を流れる空気の流量を検出するエアフロメータ39が配置され、エアフロメータ39の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
【0031】
また、第1触媒20の上流側の排気通路(排気マニホルド19の集合部)には、内燃機関の燃焼室5から排出されて第1触媒20に流入する排気ガスの空燃比を検出する第1空燃比センサ40が配置される。第1空燃比センサ40の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
【0032】
また、第1触媒20の下流側且つ第2触媒23の上流側の排気通路(第1触媒20と第2触媒23との間の排気管22内)には、第1触媒20から流出して第2触媒23に流入する排気ガスの空燃比を検出する第2空燃比センサ41が配置される。第2空燃比センサ41の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
【0033】
また、第2触媒23の下流側の排気通路(第2触媒23の下流側の排気管22内)には、第2触媒23から流出する排気ガスの空燃比を検出する第3空燃比センサ42が配置される。第3空燃比センサ42の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
【0034】
また、内燃機関を搭載した車両に設けられたアクセルペダル43には、アクセルペダル43の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ44が接続され、負荷センサ44の出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。ECU31は負荷センサ44の出力に基づいて機関負荷を算出する。
【0035】
また、入力ポート36には、クランクシャフトが所定角度(例えば10°)回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ45が接続され、この出力パルスが入力ポート36に入力される。ECU31はクランク角センサ45の出力に基づいて機関回転数を算出する。
【0036】
一方、出力ポート37は、対応する駆動回路46を介して、内燃機関の各種アクチュエータに接続される。本実施形態では、出力ポート37は、点火プラグ10、燃料噴射弁11及びスロットル弁駆動アクチュエータ17に接続され、ECU31はこれらを制御する。具体的には、ECU31は、点火プラグ10の点火時期、燃料噴射弁の噴射時期及び噴射量、並びにスロットル弁18の開度を制御する。
【0037】
なお、上述した内燃機関は、ガソリンを燃料とする無過給内燃機関であるが、内燃機関の構成は、上記構成に限定されるものではない。したがって、気筒配列、燃料の噴射態様、吸排気系の構成、動弁機構の構成、過給器の有無のような内燃機関の具体的な構成は、図1に示した構成と異なっていてもよい。例えば、燃料噴射弁11は、吸気ポート7内に燃料を噴射するように配置されてもよい。
【0038】
<触媒の説明>
排気通路に配置された第1触媒20及び第2触媒23は同様な構成を有する。このため、以下、第1触媒20について説明する。第1触媒20は、酸素を吸蔵可能であり、例えば炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を同時に浄化可能な三元触媒である。第1触媒20は、セラミック、金属等から成る担体と、触媒作用を有する貴金属(例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等)と、酸素吸蔵能力を有する助触媒(例えばセリア(CeO2)等)とを有する。貴金属及び助触媒は担体に担持される。
【0039】
図2は、三元触媒の浄化特性を示す。図2に示されるように、第1触媒20によるHC、CO及びNOxの浄化率は、は、第1触媒20に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍領域(図2における浄化ウィンドウA)にあるときに非常に高くなる。したがって、第1触媒20は、排気ガスの空燃比が理論空燃比に維持されていると、HC、CO及びNOxを効果的に浄化することができる。
【0040】
また、第1触媒20は助触媒によって排気ガスの空燃比に応じて酸素を吸蔵し又は放出する。具体的には、第1触媒20は、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときには、排気ガス中の過剰な酸素を吸蔵する。一方、第1触媒20は、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときには、HC及びCOを酸化させるのに不足している酸素を放出する。この結果、排気ガスの空燃比が理論空燃比から若干ずれた場合であっても、第1触媒20の表面上における空燃比が理論空燃比近傍に維持され、第1触媒20においてHC、CO及びNOxが効果的に浄化される。
【0041】
<空燃比センサの出力特性>
排気通路に配置された第1空燃比センサ40、第2空燃比センサ41及び第3空燃比センサ42は同様な構成を有する。このため、以下、図3及び図4を参照して、第1空燃比センサ40の出力特性について説明する。
【0042】
図3は、第1空燃比センサ40の電圧-電流(V-I)特性を示す図である。図3からわかるように、第1空燃比センサ40では、出力電流Iは、排気ガスの空燃比が高くなるほど(リーンになるほど)、大きくなる。また、各空燃比におけるV-I線には、V軸にほぼ平行な領域、すなわちセンサ印加電圧が変化しても出力電流がほとんど変化しない領域が存在する。この電圧領域は限界電流領域と称され、このときの電流は限界電流と称される。図3では、排気空燃比が18であるときの限界電流領域及び限界電流をそれぞれW18、I18で示している。したがって、第1空燃比センサ40は限界電流式の空燃比センサである。
【0043】
図4は、センサ印加電圧が0.45Vであるときの排気ガスの空燃比と出力電流Iとの関係を示す図である。すなわち、図4には、図3の破線上の点における排気ガスの空燃比と出力電流Iとの関係が示される。図4からわかるように、排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときに、第1空燃比センサ40の出力電流Iはゼロとなる。また、第1空燃比センサ40では、排気ガスの空燃比が高いほど、すなわち排気ガスの空燃比がリーンであるほど、第1空燃比センサ40の出力電流Iが大きくなる。したがって、第1空燃比センサ40の出力(出力電流I)は排気ガスの空燃比に比例して大きくなり、第1空燃比センサ40は排気ガスの空燃比を連続的に(リニアに)検出することができる。
【0044】
<下流側空燃比検出装置の異常診断装置>
しかしながら、第1空燃比センサ40、第2空燃比センサ41及び第3空燃比センサ42のような空燃比検出装置は、使用に伴って徐々に劣化し、その応答特性が悪化する場合がある。特に、触媒から流出する排気ガスの状態を精度良く推測するためには、触媒の下流側に配置された下流側空燃比検出装置の劣化状態を監視する必要がある。
【0045】
そこで、本実施形態では、下流側空燃比検出装置の異常を診断する下流側空燃比検出装置の異常診断装置(以下、単に「異常診断装置」という)が内燃機関に設けられる。図5は、本発明の第一実施形態に係る異常診断装置1の構成を概略的に示すブロック図である。異常診断装置1は、第1空燃比センサ40、第2空燃比センサ41、空燃比制御部71、異常判定部72及び酸素変化量算出部73を備え、第3空燃比センサ42の異常を診断する。第1空燃比センサ40及び第2空燃比センサ41は上流側空燃比検出装置の一例であり、第3空燃比センサ42は下流側空燃比検出装置の一例である。また、本実施形態では、ECU31が、空燃比制御部71、異常判定部72及び酸素変化量算出部73として機能する。
【0046】
空燃比制御部71は、内燃機関の燃焼室5内の混合気の空燃比、すなわち燃焼室5から排気通路に排出される排気ガスの空燃比を制御する。具体的には、空燃比制御部71は、混合気の目標空燃比を設定し、混合気の空燃比が目標空燃比に一致するように燃料噴射弁11の燃焼噴射量を制御する。例えば、空燃比制御部71は、第1空燃比センサ40の出力空燃比が目標空燃比に一致するように燃料噴射弁11の燃焼噴射量をフィードバック制御する。ここで、空燃比センサの出力空燃比とは、空燃比センサの出力値に相当する空燃比、すなわち空燃比センサによって検出される空燃比を意味する。
【0047】
なお、空燃比制御部71は、第1空燃比センサ40を用いることなく、混合気の空燃比が目標空燃比に一致するように燃料噴射弁11の燃焼噴射量を制御してもよい。この場合、空燃比制御部71は、燃料噴射弁11の燃焼噴射量と空気との比率が目標空燃比に一致するように、エアフロメータ39によって検出された吸入空気量と目標空燃比とから算出された燃料量を燃料噴射弁11から燃焼室5に供給する。
【0048】
第一実施形態では、第3空燃比センサ42の異常が診断されるとき、空燃比制御部71は混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンにする。具体的には、空燃比制御部71は混合気の目標空燃比を理論空燃比から理論空燃比よりもリーンな値に切り替える。
【0049】
異常判定部72は、空燃比制御部71が混合気の空燃比を変化させたときの第3空燃比センサ42の出力変化特性に基づいて、第3空燃比センサ42の異常を判定する。第3空燃比センサ42の応答特性が悪化すると、第3空燃比センサ42に流入する排気ガスの空燃比が変化したときに、第3空燃比センサ42の出力の変化が遅くなる。このため、異常判定部72は、例えば、第3空燃比センサ42の出力が所定の出力区間を通過するときの時間が基準値よりも長い場合に、第3空燃比センサ42が異常であると判定する。所定の出力区間及び基準値は混合気の目標空燃比に基づいて設定される。
【0050】
ところで、図1に示されるように、第3空燃比センサ42は内燃機関の排気通路において複数の触媒(第1触媒20及び第2触媒23)の下流側に配置される。このため、第3空燃比センサ42の出力は第1触媒20及び第2触媒23における排気浄化の影響を受ける。
【0051】
図6は、混合気の目標空燃比を変化させたときの第1空燃比センサ40の出力値及び第3空燃比センサ42の出力値のタイムチャートである。図6には、混合気の目標空燃比が破線で示され、第1空燃比センサ40の出力値が実線で示される。また、図6には、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合の第3空燃比センサ42の出力値が一点鎖線で示され、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合の第3空燃比センサ42の出力値が二点鎖線で示される。
【0052】
図6の例では、時刻t0において混合気の目標空燃比が理論空燃比に設定されている。このため、時刻t0において、第1空燃比センサ40及び第3空燃比センサ42の出力値はゼロとなる。その後、時刻t1において、異常診断のために混合気の目標空燃比が理論空燃比から理論空燃比よりもリーンな値に切り替えられる。これに伴い、時刻t1の後、第1空燃比センサ40の出力値が目標空燃比に向かって変化する。このとき、排気ガスが入れ替わるのに時間を要するため、第1空燃比センサ40の出力値は目標空燃比の変化に対して遅れて変化する。
【0053】
一方、第3空燃比センサ42には、第1触媒20及び第2触媒23を通過した排気ガスが流入する。第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が適切な値であるときには、酸素の吸蔵によって触媒20の雰囲気が理論空燃比に近付けられる。この結果、排気ガス中のNOxは第1触媒20及び第2触媒23において浄化され、第3空燃比センサ42の出力値は理論空燃比に維持される。
【0054】
第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ないほど、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときに第1触媒20及び第2触媒23に吸蔵可能な酸素の量は多くなる。このため、第3空燃比センサ42の出力値が理論空燃比に維持される時間は、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ないほど長くなる。
【0055】
異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量に達するまでの時間が短くなる。この結果、時刻t2において、第3空燃比センサ42の出力値が目標空燃比に向かって変化し始める。このとき、第1空燃比センサ40の出力値は目標空燃比に未だ達していない。このため、第3空燃比センサ42の出力値の変化が遅くなる。
【0056】
一方、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量に達するまでの時間が長くなる。この結果、時刻t2よりも後の時刻t3において、第3空燃比センサ42の出力値が目標空燃比に向かって変化し始める。このとき、第1空燃比センサ40の出力値は目標空燃比に達している。このため、第3空燃比センサ42の出力値の変化が早くなる。
【0057】
図6に示されるように、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合には、第3空燃比センサ42の出力が所定の出力区間(図6の例ではIa~Ib)を通過するときの時間がT1となる。一方、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合には、第3空燃比センサ42の出力が所定の出力区間を通過するときの時間がT2となる。第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合の時間T1は、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合の時間T2よりも長い。
【0058】
このため、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合には、第3空燃比センサ42が正常であっても、第3空燃比センサ42の応答特性が悪化していると判定されるおそれがある。したがって、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合、すなわち、混合気の空燃比をリーン側に変化させたときの第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量が小さい場合には、第3空燃比センサ42の異常が誤判定されるおそれがある。
【0059】
また、内燃機関の気筒間で空燃比のバラツキ(いわゆるインバランス)が生じることがある。この結果、第3空燃比センサ42が特定の気筒の排気ガスの影響を強く受ける場合に、第3空燃比センサ42の出力が排気ガス全体の平均空燃比からずれる場合がある。混合気の目標空燃比が理論空燃比よりもリーンに変更された場合、インバランスの影響は、第1触媒20及び第2触媒23のそれぞれに排気ガス中の酸素を吸蔵させることで低減可能である。
【0060】
このため、異常診断の精度を向上させるためには、第1触媒20及び第2触媒23のそれぞれにおいて酸素吸蔵量が大きく変化した後の第3空燃比センサ42の出力に基づいて第3空燃比センサ42の異常を判定する必要がある。そこで、本実施形態では、以下のように、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量が算出され、酸素吸蔵量の変化量に基づいて第3空燃比センサ42の異常判定の可否が判定される。
【0061】
酸素変化量算出部73は、空燃比制御部71が混合気の空燃比を変化させたときの触媒の酸素吸蔵量の変化量を算出する。本実施形態のように下流側空燃比検出装置が複数の触媒の下流側に配置されている場合には、酸素変化量算出部73は、複数の触媒のそれぞれについて、空燃比制御部71が混合気の空燃比を変化させたときの酸素吸蔵量の変化量を算出する。具体的には、酸素変化量算出部73は、第3空燃比センサ42の上流側に配置された第1触媒20及び第2触媒23のそれぞれについて、空燃比制御部71が混合気の空燃比を変化させたときの酸素吸蔵量の変化量を算出する。
【0062】
例えば、酸素変化量算出部73は、触媒の両側に配置された空燃比センサの出力値の差に基づいて触媒の酸素吸蔵量の変化量を算出する。このことによって、触媒の酸素吸蔵量の変化量を精度良く算出することができる。本実施形態では、酸素変化量算出部73は、第1空燃比センサ40の出力値と第2空燃比センサ41の出力値との差に基づいて第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量を算出し、第2空燃比センサ41の出力値と第3空燃比センサ42の出力値との差に基づいて第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量を算出する。
【0063】
以下、図7を参照して、触媒の酸素吸蔵量の算出方法について具体的に説明する。図7は、第3空燃比センサ42の異常診断時の混合気の目標空燃比、第1空燃比センサ40の出力値、第2空燃比センサ41の出力値及び第3空燃比センサ42の出力値のタイムチャートである。
【0064】
図7の例では、図6の例と同様に混合気の目標空燃比が切り替えられる。すなわち、時刻t1において、混合気の目標空燃比が理論空燃比から理論空燃比よりもリーンな値に切り替えられる。この結果、時刻t2において、第1空燃比センサ40の出力値が上昇し始める。
【0065】
時刻t2の後、排気ガス中の酸素が第1触媒20に吸蔵される。その後、第1触媒20の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量近傍に達し、時刻t3において、第2空燃比センサ41の出力値が上昇し始める。時刻t3の後、排気ガス中の酸素が第2触媒23に吸蔵される。その後、第2触媒23の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量近傍に達し、時刻t4において、第3空燃比センサ42の出力値が上昇し始める。
【0066】
第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量、すなわち混合気の目標空燃比が理論空燃比よりもリーンな値に切り替えられた後に第1触媒20に吸蔵された酸素の量は、時刻t2から時刻t3までの第1空燃比センサ40の出力値と第2空燃比センサ41の出力値との差に比例して大きくなる。また、理論空燃比よりもリーンな空燃比の排気ガス中の酸素の量、すなわち第1触媒20に吸蔵される酸素の量は吸入空気量に比例して多くなる。
【0067】
このため、酸素変化量算出部73は、第1空燃比センサ40の出力値と第2空燃比センサ41の出力値との差に吸入空気量を乗算した値を積算することによって第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量を算出する。具体的には、酸素変化量算出部73は下記式(1)によって第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量OCA1を算出する。
【数1】
ここで、I1は第1空燃比センサ40の出力値であり、I2は第2空燃比センサ41の出力値であり、Gaは吸入空気量である。吸入空気量Gaはエアフロメータ39の出力に基づいて算出される。
【0068】
時刻t2は、第1空燃比センサ40の出力値が目標空燃比に向かって変化し始めるときの時刻であり、例えば第1空燃比センサ40の出力値が理論空燃比よりも僅かにリーンなリーン判定空燃比に相当する値に達した時刻に設定される。時刻t3は、第2空燃比センサ41の出力値が目標空燃比に向かって変化し始めるときの時刻であり、例えば第2空燃比センサ41の出力値がリーン判定空燃比に相当する値に達した時刻に設定される。リーン判定空燃比は、予め定められ、例えば14.65に設定される。
【0069】
第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量、すなわち混合気の目標空燃比が理論空燃比よりもリーンな値に切り替えられた後に第2触媒23に吸蔵された酸素の量は、時刻t3から時刻t4までの第2空燃比センサ41の出力値と第3空燃比センサ42の出力値との差に比例して大きくなる。また、理論空燃比よりもリーンな空燃比の排気ガス中の酸素の量、すなわち第2触媒23に吸蔵される酸素の量は吸入空気量に比例して多くなる。
【0070】
このため、酸素変化量算出部73は、第2空燃比センサ41の出力値と第3空燃比センサ42の出力値との差に吸入空気量を乗算した値を積算することによって第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量を算出する。具体的には、酸素変化量算出部73は下記式(2)によって第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量OCA2を算出する。
【数2】
ここで、I2は第2空燃比センサ41の出力値であり、I3は第3空燃比センサ42の出力値であり、Gaは吸入空気量である。吸入空気量Gaはエアフロメータ39の出力に基づいて算出される。
【0071】
時刻t3は、第2空燃比センサ41の出力値が目標空燃比に向かって変化し始めるときの時刻であり、例えば第2空燃比センサ41の出力値がリーン判定空燃比に相当する値に達した時刻に設定される。時刻t4は、第3空燃比センサ42の出力値が目標空燃比に向かって変化し始めるときの時刻であり、例えば第3空燃比センサ42の出力値がリーン判定空燃比に相当する値に達した時刻に設定される。
【0072】
なお、上記式(1)、(2)において、吸入空気量Gaの代わりに、吸入空気量と相関する他のパラメータが用いられてもよい。他のパラメータの例は、機関負荷、内燃機関の出力トルク、筒内圧、燃料噴射量等である。機関負荷は例えば負荷センサ44の出力に基づいて算出される。出力トルクは、例えば、内燃機関の出力軸(クランクシャフト)に配置されたトルクセンサによって検出され、又は機関負荷、スロットル弁18の開度、筒内圧等に基づいて算出される。筒内圧は、例えば、気筒内に配置された筒内圧センサによって検出される。燃料噴射量は例えばECU31から燃料噴射弁11への指令値に基づいて算出される。
【0073】
また、第1空燃比センサ40の出力値I1、第2空燃比センサ41の出力値I2及び第3空燃比センサ42の出力値I3として、出力電流の値の代わりに、出力電流に相当する空燃比の値、すなわち出力空燃比が用いられてもよい。
【0074】
また、上記式(1)において、時刻t2の代わりに、混合気の目標空燃比が理論空燃比から目標空燃比に切り替えられた時刻t1が用いられてもよい。この場合、上記式(1)において、第1空燃比センサ40の出力値I1の代わりに、混合気の目標空燃比に相当する出力電流の値又は混合気の目標空燃比が用いられてもよい。この場合、第1空燃比センサ40は異常診断装置1から省略されてもよい。
【0075】
また、上記式(2)において、時刻t3の代わりに、混合気の目標空燃比が理論空燃比から目標空燃比に切り替えられた時刻t1が用いられてもよい。
【0076】
異常判定部72は、複数の触媒(本実施形態では第1触媒20及び第2触媒23)のうちの少なくとも一つの触媒の酸素吸蔵量の変化量が下限閾値未満である場合には、下流側空燃比検出装置(本実施形態では第3空燃比センサ42)の異常を判定しない。一方、異常判定部72は、複数の触媒の酸素吸蔵量の変化量が下限閾値以上である場合には、下流側空燃比検出装置の異常を判定する。このことによって、下流側空燃比検出装置の異常診断の信頼性を向上させることができる。
【0077】
図8は、第一実施形態において第3空燃比センサ42の異常判定が許可される領域を示す図である。図8において、THL1は第1触媒20についての下限閾値であり、THL2は第2触媒23についての下限閾値である。図8に示されるように、第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量が下限値THL1以上であり且つ第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量が下限閾値THL2以上であるときに第3空燃比センサ42の異常判定が許可される。
【0078】
<異常判定処理>
以下、図9のフローチャートを参照して、本実施形態において第3空燃比センサ42の異常を判定するための制御について説明する。図9は、第一実施形態における異常判定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関の始動後、ECU31によって繰り返し実行される。
【0079】
最初に、ステップS101において、空燃比制御部71は異常判定条件が成立しているか否かを判定する。異常判定は、例えば、内燃機関の始動後に所定時間が経過しており且つ内燃機関の始動後に第3空燃比センサ42の異常判定が未だ行われていない場合に成立する。なお、異常判定条件に、第1触媒20及び第2触媒23の温度が予め定められた活性温度以上であること、第1空燃比センサ40、第2空燃比センサ41及び第3空燃比センサ42の温度が予め定められた活性温度以上であること、機関回転数が所定範囲内であること、機関負荷が所定範囲内であること等が含まれていてもよい。
【0080】
ステップS101において異常判定条件が成立していないと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS101において異常判定条件が成立していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS102に進む。
【0081】
ステップS102では、空燃比制御部71は混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンにする。具体的には、空燃比制御部71は、混合気の目標空燃比を理論空燃比よりもリーンなリーン設定空燃比に設定し、混合気の空燃比が目標空燃比に一致するように燃料噴射弁11の燃焼噴射量を制御する。リーン設定空燃比は、予め定められ、例えば14.8~16.6に設定される。
【0082】
次いで、ステップS103において、酸素変化量算出部73は第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量OCA1を算出する。
【0083】
次いで、ステップS104において、異常判定部72は第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量OCA1が下限閾値THL1以上であるか否かを判定する。下限閾値THL1は、予め定められ、例えば未使用(新触)の第1触媒20の最大酸素吸蔵量の1/5以上の値に設定される。
【0084】
ステップS104において第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量OCA1が下限閾値THL1未満であると判定された場合、本制御ルーチンは終了する。この場合、第3空燃比センサ42の異常は判定されない。言い換えれば、第3空燃比センサ42の異常判定が禁止される。
【0085】
一方、ステップS104において第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量OCA1が下限閾値THL1以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS105に進む。ステップS105では、酸素変化量算出部73は第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量OCA2を算出する。
【0086】
次いで、ステップS106において、異常判定部72は第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量OCA2が下限閾値THL2以上であるか否かを判定する。下限閾値THL2は、予め定められ、例えば未使用(新触)の第2触媒23の最大酸素吸蔵量の1/5以上の値に設定される。下限閾値THL2は上限閾値THL1と同じであっても異なっていてもよい。
【0087】
ステップS106において第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量OCA2が下限閾値THL2未満であると判定された場合、本制御ルーチンは終了する。この場合、第3空燃比センサ42の異常は判定されない。言い換えれば、第3空燃比センサ42の異常判定が禁止される。
【0088】
一方、ステップS106において第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量OCA2が下限閾値THL2以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS107に進む。ステップS107では、異常判定部72は、第3空燃比センサ42の出力が所定の出力区間を経過するときの時間として、応答時間Tを取得する。所定の出力区間は、予め定められ、理論空燃比よりもリーンな範囲に設定される。
【0089】
次いで、ステップS108において、異常判定部72は、応答時間Tが基準値Tref以下であるか否かを判定する。基準値Trefは、実験、計算等によって予め定められる。
【0090】
ステップS108において応答時間Tが基準値Tref以下であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS109に進む。ステップS109では、異常判定部72は、第3空燃比センサ42の応答特性が正常であると判定する。ステップS109の後、本制御ルーチンは終了する。
【0091】
一方、ステップS108において応答時間Tが基準値Tよりも長いと判定された場合、本制御ルーチンはステップS110に進む。ステップS110では、異常判定部72は、第3空燃比センサ42の応答特性が異常であると判定し、内燃機関を搭載した車両に設けられた警告灯を点灯させる。ステップS110の後、本制御ルーチンは終了する。
【0092】
なお、ステップS107において第3空燃比センサ42の出力が所定の出力区間を経過するときの出力の傾きが取得され、ステップS108において出力の傾きが基準値以上であるか否かが判定されてもよい。
【0093】
また、燃料噴射弁11による燃料噴射を停止する燃料カット制御が実行された場合には、空気が排気通路に供給され、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなる。このため、異常判定部72は、空燃比制御部71が燃料カット制御によって混合気の空燃比を変化させたときの第3空燃比センサ42の出力変化特性に基づいて、第3空燃比センサ42の異常を判定してもよい。この場合、ステップS102において、異常判定部72は、燃料カット制御が実行されている否かを判定し、燃料カット制御が実行されていると判定された場合に、本制御ルーチンはステップS103に進む。
【0094】
また、ステップS104又はステップS106の判定が否定された場合、空燃比制御部71は、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量を減少させるべく、混合気の空燃比を一時的に理論空燃比よりもリッチにしてもよい。
【0095】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る異常診断装置は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る異常診断装置の構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0096】
第二実施形態では、第2触媒23は、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するためのフィルタ機能を有する四元触媒として構成される。四元触媒は、触媒作用によってHC、CO及びNOxを同時に浄化することができると共に、フィルタ機能によってPMを捕集することができる。
【0097】
本願の発明者は、鋭意検討の結果、四元触媒では、PMの触媒への堆積状態が第3空燃比センサ42の出力変化に影響を与えることを見出した。図10は、混合気の目標空燃比を変化させたときの第3空燃比センサ42の出力値のタイムチャートである。図10には、異常診断の開始時に第2触媒23の酸素吸蔵量が少なく且つPMが第2触媒23に堆積していない場合の第3空燃比センサ42の出力値が実線で示される。また、異常診断の開始時に第2触媒23の酸素吸蔵量が少なく且つPMが第2触媒23に堆積している場合の第3空燃比センサ42の出力値が破線で示される。
【0098】
図10の例では、図6の例と同様に、混合気の目標空燃比が切り替えられる。図10に示されるように、PMが第2触媒23に堆積している場合、PMが第2触媒23に堆積していない場合に比べて、第3空燃比センサ42の出力値の変化が遅くなる。この結果、PMが第2触媒23に堆積している場合の応答時間T4が、PMが第2触媒23に堆積していない場合の応答時間T3よりも長くなる。
【0099】
このことは、PMの局所的な堆積が酸素の吸蔵後に第2触媒23から流出する排気ガスの空燃比に影響を与えているからであると考えられる。なお、異常診断の開始時に第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合には、このような現象は生じない。
【0100】
このため、四元触媒である第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合には、第3空燃比センサ42が正常であっても、第3空燃比センサ42の応答特性が悪化していると判定されるおそれがある。すなわち、四元触媒である第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合には、第3空燃比センサ42の異常が誤判定されるおそれがある。
【0101】
このため、第二実施形態では、異常判定部72は、第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量が上限閾値よりも大きい場合には、第3空燃比センサ42の異常を判定しない。このことによって、第2触媒23が四元触媒である場合に、第3空燃比センサ42の異常診断の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0102】
図11は、第二実施形態において第3空燃比センサ42の異常判定が許可される領域を示す図である。図11において、THL1は第1触媒20についての下限閾値であり、THL2は第2触媒23についての下限閾値であり、THUは第2触媒23についての上限閾値である。図11に示されるように、第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量が下限値THL1以上であり且つ第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量が下限閾値THL以上且つ上限閾値THU以下であるときに第3空燃比センサ42の異常判定が許可される。
【0103】
また、第2触媒23においてPMの燃焼が生じると、第2触媒23から流出する排気ガスに燃焼ガスが混ざり、第3空燃比センサ42の出力値が低下する(リッチになる)。このため、PMの燃焼が生じている場合も、第3空燃比センサ42の異常が誤判定されるおそれがある。
【0104】
そこで、第二実施形態では、異常判定部72は、空燃比制御部71が混合気の空燃比を変化させたときに第2触媒23においてPMが燃焼したと判定した場合には、第3空燃比センサ42の異常を判定しない。このことによって、第2触媒23が四元触媒である場合に、第3空燃比センサ42の異常診断の信頼性が低下することをより一層抑制することができる。
【0105】
<異常判定処理>
図12は、第二実施形態における異常判定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関の始動後、ECU31によって繰り返し実行される。
【0106】
ステップS201~ステップS205は図9のステップS101~ステップS105と同様に実行される。ステップS205の後、ステップS206において、異常判定部72は、第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量OCA2が下限閾値THL2以上且つ上限閾値THU以下であるか否かを判定する。上限閾値THUは、予め定められ、下限閾値THL2よりも大きな値に設定される。上限閾値THUは例えば未使用(新触)の第2触媒23の最大酸素吸蔵量の1/2以上の値に設定される。
【0107】
ステップS206において第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量OCA2が下限閾値THL2未満又は上限値THUよりも大きいと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。この場合、第3空燃比センサ42の異常は判定されない。言い換えれば、第3空燃比センサ42の異常判定が禁止される。
【0108】
一方、ステップS206において第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量OCA2が下限閾値THL2以上且つ上限閾値THU以下であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS207に進む。ステップS207では、図9のステップS107と同様に、異常判定部72は応答時間Tを取得する。
【0109】
次いで、ステップS208において、異常判定部72は、空燃比制御部71が混合気の空燃比を変化させたときに第2触媒23においてPMが燃焼したか否かを判定する。例えば、異常判定部72は、混合気の目標空燃比がリーン設定空燃比TAFleanに設定されてから第3空燃比センサ42の出力が所定の出力区間を通過するまでの期間の第2触媒23の平均温度が所定温度以上である場合に、第2触媒23においてPMが燃焼したと判定する。
【0110】
第2触媒23の温度は、例えば、第2触媒23に配置された温度センサによって検出される。なお、第2触媒23の温度は、第2触媒23に流入する排気ガスの温度又は第2触媒23から流出する排気ガスの温度を検出する温度センサの出力に基づいて算出されてもよい。また、第2触媒23の温度は内燃機関の所定の運転パラメータ(積算吸入空気量等)に基づいて算出されてもよい。
【0111】
ステップS208において第2触媒23においてPMが燃焼したと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。この場合、第3空燃比センサ42の異常は判定されない。言い換えれば、第3空燃比センサ42の異常判定が禁止される。
【0112】
一方、ステップS208において第2触媒23においてPMが燃焼しなかったと判定された場合、本制御ルーチンはステップS209に進む。ステップS209~ステップS211は図9のステップS108~ステップS110と同様に実行される。なお、本制御ルーチンは図9の制御ルーチンと同様に変形可能である。
【0113】
また、第二実施形態において、第2触媒23に加えて又は第2触媒23の代わりに、第1触媒20が四元触媒として構成されていてもよい。この場合、ステップS204において、異常判定部72は、第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量OCA1が下限閾値THL1以上且つ上限閾値THU以下であるか否かを判定する。上限閾値THUは、予め定められ、下限閾値THL1よりも大きな値に設定される。
【0114】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る異常診断装置は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る異常診断装置の構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第三実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0115】
第三実施形態では、空燃比制御部71は、第3空燃比センサ42の異常が診断されるとき、空燃比制御部71は混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチにする。具体的には、空燃比制御部71は混合気の目標空燃比を理論空燃比から理論空燃比よりもリッチな値に切り替える。
【0116】
図13は、混合気の目標空燃比を変化させたときの第1空燃比センサ40の出力値及び第3空燃比センサ42の出力値のタイムチャートである。図13には、混合気の目標空燃比が破線で示され、第1空燃比センサ40の出力値が実線で示される。また、図13には、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合の第3空燃比センサ42の出力値が一点鎖線で示され、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合の第3空燃比センサ42の出力値が二点鎖線で示される。
【0117】
図13の例では、図6の例と異なり、時刻t1において、異常診断のために混合気の目標空燃比が理論空燃比から理論空燃比よりもリッチな値に切り替えられる。これに伴い、時刻t1の後、第1空燃比センサ40の出力値が目標空燃比に向かって変化する。このとき、排気ガスが入れ替わるのに時間を要するため、第1空燃比センサ40の出力値は目標空燃比の変化に対して遅れて変化する。
【0118】
一方、第3空燃比センサ42には、第1触媒20及び第2触媒23を通過した排気ガスが流入する。第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が適切な値であるときには、酸素の放出によって触媒20の雰囲気が理論空燃比に近付けられる。この結果、排気ガス中のHC及びCOは第1触媒20及び第2触媒23において浄化され、第3空燃比センサ42の出力値は理論空燃比に維持される。
【0119】
第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多いほど、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときに第1触媒20及び第2触媒23から放出可能な酸素の量は多くなる。このため、第3空燃比センサ42の出力値が理論空燃比に維持される時間は、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多いほど長くなる。
【0120】
異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量がゼロに達するまでの時間が短くなる。この結果、時刻t2において、第3空燃比センサ42の出力値が目標空燃比に向かって変化し始める。このとき、第1空燃比センサ40の出力値は目標空燃比に未だ達していない。このため、第3空燃比センサ42の出力値の変化が遅くなる。
【0121】
一方、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量がゼロに達するまでの時間が長くなる。この結果、時刻t2よりも後の時刻t3において、第3空燃比センサ42の出力値が目標空燃比に向かって変化し始める。このとき、第1空燃比センサ40の出力値は目標空燃比に達している。このため、第3空燃比センサ42の出力値の変化が早くなる。
【0122】
図13に示されるように、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合には、第3空燃比センサ42の出力が所定の出力区間(図13の例ではIc~Id)を通過するときの時間がT5となる。一方、異常診断の開始時の第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合には、第3空燃比センサ42の出力が所定の出力区間を通過するときの時間がT6となる。第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合の時間T5は、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が多い場合の時間T6よりも長い。
【0123】
このため、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合には、第3空燃比センサ42が正常であっても、第3空燃比センサ42の応答特性が悪化していると判定されるおそれがある。したがって、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量が少ない場合、すなわち、混合気の空燃比をリッチ側に変化させたときの第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量が小さい場合には、第3空燃比センサ42の異常が誤判定されるおそれがある。また、混合気の目標空燃比が理論空燃比よりもリッチに変更された場合、インバランスの影響は、第1触媒20及び第2触媒23のそれぞれから排気ガス中の酸素を放出させることで低減可能である。
【0124】
このため、第一実施形態と同様に、異常判定部72は、複数の触媒(本実施形態では第1触媒20及び第2触媒23)のうちの少なくとも一つの触媒の酸素吸蔵量の変化量が下限閾値未満である場合には、下流側空燃比検出装置(本実施形態では第3空燃比センサ42)の異常を判定しない。一方、異常判定部72は、複数の触媒についての酸素吸蔵量の変化量が下限閾値以上である場合に、下流側空燃比検出装置の異常を判定する。このことによって、下流側空燃比検出装置の異常診断の信頼性を向上させることができる。
【0125】
第三実施形態においても、上記式(1)によって第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量OCA1を算出し、上記式(2)によって第2触媒23の酸素吸蔵量の変化量OCA2を算出することができる。なお、第一実施形態において、触媒の酸素吸蔵量の変化量とは、触媒に吸蔵される酸素の量に相当し、第三実施形態において、触媒の酸素吸蔵量の変化量とは、触媒から放出される酸素の量に相当する。
【0126】
第三実施形態では、上記式(1)において、時刻t2は、例えば、第1空燃比センサ40の出力値が理論空燃比よりも僅かにリッチなリッチ判定空燃比に相当する値に達した時刻に設定される。また、上記式(1)、(2)において、時刻t3は、例えば第2空燃比センサ41の出力値がリッチ判定空燃比に相当する値に達した時刻に設定される。また、上記式(2)において、時刻t4は、例えば、第3空燃比センサ42の出力値がリッチ判定空燃比に相当する値に達した時刻に設定される。リッチ判定空燃比は、予め定められ、例えば14.55に設定される。
【0127】
<異常判定処理>
図14は、第三実施形態における異常判定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関の始動後、ECU31によって繰り返し実行される。
【0128】
最初に、ステップS301において、図9のステップS101と同様に、空燃比制御部71は異常判定条件が成立しているか否かを判定する。異常判定条件が成立していないと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS301において異常判定条件が成立していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS302に進む。
【0129】
ステップS302では、空燃比制御部71は混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチにする。具体的には、空燃比制御部71は、混合気の目標空燃比を理論空燃比よりもリッチなリッチ設定空燃比に設定し、混合気の空燃比が目標空燃比に一致するように燃料噴射弁11の燃焼噴射量を制御する。リッチ設定空燃比は、予め定められ、例えば12.6~14.4に設定される。
【0130】
ステップS303~ステップS310は図9のステップS103~ステップS110と同様に実行される。このとき、ステップS307において応答時間Tを取得するときの所定の出力区間は、理論空燃比よりもリッチな範囲に設定される。
【0131】
なお、ステップ305において第3空燃比センサ42の出力が所定の出力区間を経過するときの出力の傾きが取得され、ステップS308において出力の傾きの絶対値が基準値以上であるか否かが判定されてもよい。
【0132】
また、ステップS304又はステップS306の判定が否定された場合、空燃比制御部71は、第1触媒20及び第2触媒23の酸素吸蔵量を増加させるべく、混合気の空燃比を一時的に理論空燃比よりもリーンにしてもよい。
【0133】
<第四実施形態>
第四実施形態に係る異常診断装置は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る異常診断装置の構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第四実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0134】
図15は、本発明の第四実施形態に係る異常診断装置1’の構成を概略的に示すブロック図である。異常診断装置1’は、第1空燃比センサ40、空燃比制御部71、異常判定部72及び酸素変化量算出部73を備え、第2空燃比センサ41の異常を診断する。第1空燃比センサ40は上流側空燃比検出装置の一例であり、第2空燃比センサ41は下流側空燃比検出装置の一例である。
【0135】
図1に示されるように、第2空燃比センサ41は内燃機関の排気通路において第1触媒20の下流側且つ第2触媒23の上流側に配置される。このため、第2空燃比センサ41は第1触媒20による排気浄化の影響を受ける。したがって、第1触媒20の酸素吸蔵量が多いときに第2空燃比センサ41の異常診断が行われると、第3空燃比センサ42の異常診断と同様の問題が生じる。
【0136】
そこで、第四実施形態では、酸素変化量算出部73は、空燃比制御部71が混合気の空燃比を変化させたときの第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量を算出し、異常判定部72は、空燃比制御部71が混合気の空燃比を変化させたときの第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量が下限閾値未満である場合には、第2空燃比センサ41の異常を判定しない。一方、異常判定部72は、第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量が下限閾値以上である場合に、第2空燃比センサ41の異常を判定する。このことによって、第2空燃比センサ41の異常診断の信頼性を向上させることができる。
【0137】
<異常判定処理>
以下、図16のフローチャートを参照して、第四実施形態において第2空燃比センサ41の異常を判定するための制御について説明する。図16は、第四実施形態における異常判定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関の始動後、ECU31によって繰り返し実行される。
【0138】
ステップS401~ステップS404は図9のステップS101~ステップS104と同様に実行される。ステップS404において第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量OCA1が下限閾値THL1以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS405に進む。
【0139】
ステップS405では、異常判定部72は、第2空燃比センサ41の出力が所定の出力区間を経過するときの時間として、応答時間Tを取得する。所定の出力区間は、予め定められ、理論空燃比よりもリーンな範囲に設定される。
【0140】
次いで、ステップS406において、異常判定部72は、応答時間Tが基準値Tref以下であるか否かを判定する。基準値Trefは、実験、計算等によって予め定められる。
【0141】
ステップS406において応答時間Tが基準値Tref以下であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS407に進む。ステップS407では、異常判定部72は、第2空燃比センサ41の応答特性が正常であると判定する。ステップS407の後、本制御ルーチンは終了する。
【0142】
一方、ステップS406において応答時間Tが基準値Tよりも長いと判定された場合、本制御ルーチンはステップS408に進む。ステップS408では、異常判定部72は、第3空燃比センサ42の応答特性が異常であると判定し、内燃機関を搭載した車両に設けられた警告灯を点灯させる。ステップS408の後、本制御ルーチンは終了する。
【0143】
なお、本制御ルーチンは図9の制御ルーチンと同様に変形可能である。また、第四実施形態において、第2触媒23及び第3空燃比センサ42は内燃機関から省略されてもよい。
【0144】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、第1空燃比センサ40、第2空燃比センサ41及び第3空燃比センサ42は、排気ガスの空燃比がリッチ又はリーンであることを検出する酸素センサであってもよい。この場合、上記式(1)、(2)において、第1空燃比センサ40の出力値I1、第2空燃比センサ41の出力値I2及び第3空燃比センサ42の出力値I3として、出力電圧の値、出力電圧に相当する空燃比の値等が用いられてもよい。
【0145】
また、内燃機関の排気通路に三つ以上の触媒が配置され、最も下流側の触媒の下流側に配置された下流側空燃比検出装置の異常診断が、上述したように行われてもよい。
【0146】
また、上述した実施形態は、任意に組み合わせて実施可能である。第二実施形態と第三実施形態とが組み合わされる場合、図12の制御ルーチンにおいて、ステップS202の代わりに図14のステップS302が実行される。
【0147】
また、第二実施形態と第四実施形態とが組み合わされる場合、第1触媒20が四元触媒として構成され、図16のステップS404において、異常判定部72は、第1触媒20の酸素吸蔵量の変化量OCA1が下限閾値THL1以上且つ上限閾値THU以下であるか否かを判定する。上限閾値THUは、予め定められ、下限閾値THL1よりも大きな値に設定される。また、図16の制御ルーチンにおいて、ステップS405とステップS406との間に図12のステップS208が実行される。
【0148】
また、第三実施形態と第四実施形態とが組み合わされる場合、図16の制御ルーチンにおいて、ステップS402の代わりに図14のステップS302が実行される。
【0149】
また、第一実施形態における図9のステップS102~ステップS110と、第三実施形態における図14のステップS302~ステップS310とが連続的に実行されてもよい。すなわち、異常判定部72は、空燃比制御部71が混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンに変化させたときの下流側空燃比検出装置の出力特性と、空燃比制御部71が混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチに変化させたときの下流側空燃比検出装置の出力特性とに基づいて下流側空燃比検出装置の異常を判定してもよい。
【符号の説明】
【0150】
1、1’ 異常診断装置
5 燃焼室
20 第1触媒
22 排気管
23 第2触媒
31 電子制御ユニット(ECU)
40 第1空燃比センサ
41 第2空燃比センサ
42 第3空燃比センサ42
71 空燃比制御部
72 異常判定部
73 酸素変化量算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16