(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】スペーサファブリック部分、スペーサファブリック部分から成るヒータ設備を形成する方法及び原動機付き車両用の加熱可能な内装部品
(51)【国際特許分類】
D04B 21/14 20060101AFI20240806BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240806BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
D04B21/14 Z
H05B3/20 349
D04B21/00 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020016795
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】10 2019 103 934.7
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515264089
【氏名又は名称】ミュラー・テクスティール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・ヴァイス
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第102009013250(DE,B3)
【文献】米国特許出願公開第2013/0102217(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00-1/28、21/00-21/20、
H05B3/20-3/38、3/84-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ生産方向(P)に沿って延びるウェール及び横方向(Q)に延びるコースを備える第1のファブリック層(2)と第2のファブリック層(3)と、前記ファブリック層(2,3)を結合するスペーサ糸(4)とを有す
るスペーサファブリック部分(1)であって、前記ファブリック層(2,3)のうち少なくとも1つが、不導体から形成された基礎構造と、追加的な導体糸(5a,5b)とを備えている、前記スペーサファブリック部分
(1)において、
前記導体糸(5a,5b)が、前記生産方向(P)に沿って部分的に、機能範囲(7)において、割り当てられた前記ファブリック層(2,3)へ組み込まれているとともに、複数のウェールにわたって延在する接続範囲(8)において、フローティングによって、割り当てられた前記ファブリック層(2,3)に載置されること
、及び少なくとも前記第1のファブリック層(2)に導体糸(5a)が存在し、前記第1のファブリック層(2)の前記導体糸(5a)が、前記機能範囲(7)において、それぞれ第1の数m>5のウェールにわたって前記第1のファブリック層(2)へ導入されていることを特徴とするスペーサファブリック部分
(1)。
【請求項2】
前記接続範囲(8)が、少なくとも10のコースにわたって延在していることを特徴とする請求項1に記載のスペーサファブリック部分(1)。
【請求項3】
少なくとも前記第1のファブリック層(2)には導体糸(5a)が存在しており、前記第1のファブリック層(2)の前記導体糸(5a)が、前記機能範囲(7)において、それぞれ第1の数mのウェールにわたって前記第1のファブリック層(2)へ導入されていること、及び前記第1のファブリック層(2)の隣り合う導体糸(5a)の間の間隔が、前記コースに沿って、前記ウェールの第2の数nに対応し、該第2の数nが前記第1の数mよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスペーサファブリック部分(1)。
【請求項4】
前記第1のファブリック層(2)の前記導体糸(5a)が、それぞれ絶縁部を備えた金属ワイヤで形成されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載のスペーサファブリック部分(1)。
【請求項5】
前記金属ワイヤが、25~200μmの直径を有しているとともに、1~280Ω/m(1m当たりのオーム抵抗)を有していることを特徴とする請求項
4に記載のスペーサファブリック部分(1)。
【請求項6】
少なくとも前記第2のファブリック層(3)において導体糸(5b)が存在しており、前記第2のファブリック層(3)の前記導体糸(5b)又は前記導体糸(5b)の少なくとも一部が、前記機能範囲(7)において、横方向(Q)において規定された第1の幅(b
1)にわたって前記第2のファブリック層(3)へ組み込まれており、前記第2のファブリック層(3)の前記導体糸(5b)又は該導体糸(5b)の一部へ、横方向に見た両方向で第2の幅(b
2)が接続されており、該第2の幅は、前記第1の幅(b
1)よりも大きいとともに、前記導体糸(5b)を有さないことを特徴とする請求項1又は2に記載のスペーサファブリック部分(1)。
【請求項7】
前記第2のファブリック層(3)の前記導体糸(5b)が、それぞれ金属ストランドで形成されていることを特徴とする請求項
6に記載のスペーサファブリック部分(1)。
【請求項8】
厚さが1~20mmであることを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載のスペーサファブリック部分(1)。
【請求項9】
前記機能範囲(7)が、前記生産方向(P)に沿って10~200cmの第1の長さ(l
1)にわたって延在していること、及び前記接続範囲(8)が、前記生産方向(P)に沿って0.5~15cmの第2の長さ(l
2)にわたって延在していることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載のスペーサファブリック部分(1)。
【請求項10】
幅が5~100
cmであることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載のスペーサファブリック部分(1)。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載のスペーサファブリック部分(1)から成る加熱インサートを形成するための方法であって、前記接続範囲(8)において
、電気的な接触がなされることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記接続範囲(8)の少なくとも一部が、前記導体糸(5a,5b)の下方において切り取られることを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記スペーサファブリック部分(1)が、カバー層と下部構造の間に配置されることを特徴とする請求項
11又は
12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の、加熱インサートとしてのスペーサファブリック部分(1)を有する原動機付き車両用の加熱可能な内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のファブリック層と、それぞれ生産方向に沿って延びるウェール及び横方向に延びるコースを備える第2のファブリック層と、ファブリック層を結合するスペーサ糸とを有する、特に加熱インサートとして用いるためのスペーサファブリック部分であって、ファブリック層のうち少なくとも1つが、不導体から形成された基礎構造と、追加的な導体糸とを備えている、前記スペーサファブリック部分に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スペーサファブリックは、わずかな単位面積当たりの質量と、比較的開放された通気性の構造と、厚さ方向における弾性的な特性とにおいて傑出している。したがって、スペーサファブリックは、しばしば、織物の製造において通気性のある材料として、シートレスト用のまくらカバー及びマットレスカバーとして、及び特に自動車分野における技術的な織物として用いられる。
【0003】
同種のスペーサファブリック部分は、特許文献1から知られている。絶縁されていない導体糸は、ファブリック層のうち少なくとも1つにわたって延在しており、直接隣り合う導体糸は接触している。上述の形態により、平坦で導体性の構造が形成され、当該構造は、織り込まれた側方の2つの接続導体によって接触可能である。全ての導体糸が、多数の接触箇所を有する共通の導電性の構造を形成するため、基本的には、点状の接触で十分である。ただし、実際には、事情によっては、局所的に不均一な加熱又は不十分な加熱にも至り得る。
【0004】
別の同種のスペーサファブリック部分は、特許文献2から知られている。ファブリック層のうち1つは、不導体から形成された基礎構造を備えており、複数の導体糸は、発熱導体として生産方向に沿って対応するファブリック層へ織り込まれている。個々の導体糸は、接触しないとともに、絶縁されることもない。したがって、それぞれ個々の導体糸を個々のファブリック部分に関してその両側で電気的に接触させることも必要である。このために、接続導体糸が設けられており、当該接続導体糸は、ファブリック層自体へ統合されている。接続導体糸は、ファブリック部分の両端において横方向へ延びているとともに、その間で生産方向に沿って織り込まれている。このとき、接続導体糸は、好ましくは側方でファブリック部分から引き出されているとともに、そこで電気的な接続のために中断されている。接続導体糸は、その横方向に延びる部分において、適切に個々の導体糸と接触されるべきである。
【0005】
別の同種のスペーサファブリック部分は、特許文献3から知られており、別々の接続接触部が、平行に配置された導体糸と接続されている。
【0006】
特許文献2によれば個々のスペーサファブリック部分の長さが接続導体糸の経過によってあらかじめ設定されている一方、特許文献1及び特許文献3によればスペーサファブリックは無端材料として形成され、スペーサファブリック部分は、適宜の大きさに切除されることができるか、又は打ち抜かれ、接触されることが可能である。
【0007】
従来技術において記載されているアプローチは、実際には大部分においてまだ価値を認められることができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102006038612号明細書
【文献】独国特許発明第102009013250号明細書
【文献】独国特許発明第4239068号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この背景において、本発明の基礎となる課題は、加熱インサートとしての特に信頼性をもった使用が長期にわたっても可能なスペーサファブリック部分を提供することにある。さらに、スペーサファブリック部分から成る加熱インサートを形成する方法及び原動機付き車両用の加熱可能な内装部品が提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の対象及び課題の解決手段は、請求項1によるスペーサファブリック部分、請求項12によるスペーサファブリック部分から成るヒータ設備を形成する方法及び請求項15による原動機付き車両用の加熱可能な内装部品である。
【0011】
したがって、同種のスペーサファブリック部分を起点として、本発明によれば、導体糸が、生産方向に沿って部分的に、機能範囲において、割り当てられたファブリック層へ編み込まれているとともに、複数のウェールにわたって延在する接続範囲において、フローティングによって、割り当てられたファブリック層に載置されるようになっている。
【0012】
本発明の範囲では、スペーサファブリック部分は、無端帯の適当な範囲及びこのような無端帯の個々のカット部と理解され得る。少なくとも機能範囲及び接続範囲への本発明による分配により、製造時には、適当なレピートを考慮することが可能である。したがって、あらかじめ所定の用途に対して個々のスペーサファブリック部分の大きさを規定及び設定する必要がある。通常、スペーサファブリック部分は、生産方向に見て、その間の機能範囲を有する2つの接続範囲を備えている。
【0013】
従来技術によれば導体糸が生産方向において常に均等にファブリック層へ編み込まれている一方、これは、本発明の範囲では機能範囲においてのみ設定されており、導体糸は、編み目を形成するように、部分緯糸(インレー)の形態で、又は緯糸編み込みとして、割り当てられたファブリック層へ製織技術的に編み込まれ得る。このような編み込みにより、導体糸は、ファブリック層において保持され、保護されている。
【0014】
さらに、少なくとも1つの接続範囲も設けられており、当該接続範囲では、導体糸がフローティング(実際にはフロートとも呼ばれる)として割り当てられたファブリック層において載置される。このようなフローティングは製織技術において知られており、個々の導体糸は、織りプロセスにおいて編み目形成に関与せず、緯糸あるいは部分緯糸としても個々の編み目間へ入れられることもない。フローティングに際して、導体糸はむしろ割り当てられたファブリック層において載置される。フローティングは、導体糸がスペーサ糸に対向して割り当てられたファブリック層において載置され、したがって外部からアクセス可能であるように形成されている。
【0015】
導体糸がフローティングによって割り当てられたファブリック層ひいてはスペーサファブリック部分全体において外部で載置されるため、そこでは、後から若干の接触がなされ得る。導体糸は、接続範囲において例えば束ねられ、及び/又は薄板ストリップ、フィルムストリップ、ワイヤ、ストランドバンド若しくはこれらに類するものの形態の金属製の中間要素に結合されることが可能である。これにより、例えばはんだ付け時にその下に位置する材料が損傷されず、一方、基礎構造に統合されている導体糸においては信頼性のある接触が不可能であるか、非常に困難であるという利点が得られる。
【0016】
フローティングが導体糸の接触に関してかなりの利点をもたらすとしても、適当なスペーサファブリック部分の取り扱いに際して、及びこれに基づき形成される加熱インサートの更なる処理に際して、特別な注意を要する。なぜなら、追加的な導体糸が少なくとも1つの接続範囲において広範囲で保護されていないためである。しかしながら、改善された機能特性と、特に信頼性があり長寿命の接触の可能性に関して、本発明の範囲では、対応する欠点が意図的に甘受される。
【0017】
少なくとも1つの接続範囲は、上述の態様において単純な手段で接触を行うことができるように寸法設定されるべきである。好ましくは、接続範囲ひいては導体糸のフローティングは、生産方向に沿って少なくとも10の、好ましくは少なくとも20の、特に好ましくは少なくとも40のコースにわたって延在している。このとき、生産方向に沿った接続範囲の長さは、典型的には0.5~15cmである。本発明の好ましい形態により機能部分の両側において接続範囲が存在すれば、上述のパラメータは、それぞれ両接続範囲に対しても当てはまる。
【0018】
上述のように、スペーサファブリック部分の製造時には、レピートを考慮する必要がある。これに対応して、生産時にも機能部分の長さが設定される。機能部分の長さが技術的な観点から本質的な制限を受けないとしても、好ましい使用分野に関して、通常、10~200cm、特に好ましくは20~100cmの機能部分の第1の長さが選択せれる。
【0019】
横方向に沿ったスペーサファブリック部分の幅も、スペーサファブリックの製造時の最大の帯幅によってのみ制限されている。しかし、通常、通常の使用分野に関しては、多重使用するように作業され、スペーサファブリック部分の幅は、例えば5~100cmの間にあり得る。
【0020】
スペーサファブリック部分の厚さは、典型的には1~20mm、特に3~7mmである。
【0021】
本発明によるスペーサファブリック部分では、少なくともファブリック層のうち1つにおいて追加的な導体糸が設けられている。この場合、両ファブリック層においても、異なる機能を有する追加的な導体糸を設けることが可能である。スペーサファブリック部分の一形態においては、一方側における加熱インサートとして加熱が所望される一方、他の側では、全体的に一方側からのスペーサファブリック部分の接触を可能とするために、電気的な戻し部を設けることが可能である。この背景から、以下では、両ファブリック層の好ましい形態を互いに別々に説明する。このとき、本発明による特徴を両ファブリック層又は1つのファブリック層においてのみ設けることが可能であることはいうまでもない。
【0022】
そして、本発明の好ましい一形態によれば、少なくとも第1のファブリック層において導体糸が存在している。導体糸は、特に発熱導体であってよく、その結果、第1のファブリック層にはヒータ機能が割り当てられている。しかし、このような使用分野に関しても、異なる可能な、あるいは好ましい形態ももたらす非常に異なる要求が生じ得る。
【0023】
第1のアプローチによれば、導体糸が一種のジグザグ配列で生産方向に沿って延びるように設定することが可能である。この場合、発熱導体として設けられた個々の導体糸により比較的大きな面を覆うことが可能であるという利点が得られる。そして、あらかじめ設定された面に関して、考慮されるべき要求に応じて比較的わずかな発熱導体のみが必要であり、これにより、その接触全体も簡易化される。
【0024】
これに対して、第2のアプローチによれば、導体糸が、生産方向に沿うその延長に沿って、横方向におけるわずかのみの織りずれを有しているか、又は横方向における織りずれを全く有していなければ有利であり得る。例えば、明確なジグザグ配列においては、用いられる導体糸の種類及び使用時の負荷に応じて、永続的に満足な曲げ疲労強度が得られない。さらに、まさに原動機付き車両の分野における使用時には、例えば初めは覆われているエアバッグを解放するために、スペーサファブリックがその使用時に所定の態様で裂けやすい必要がある用途も知られている。合目的には、コントロールされた裂開がなされるべき箇所では、引裂き強度を高める導体糸は設けられない。わずかなウェールにわたる比較的わずかな織りずれのほかに、導体糸は、「1より小さな緯糸」としても織られることが可能である。そして、導体糸は、それぞれ割り当てられたウェールに沿って延びるとともに、それ自体が編み目を形成することなく基礎構造の編み目により保持される。
【0025】
上述の第1のアプローチの範囲では、第1のファブリック層の導体糸は、機能範囲において、それぞれm>5の第1の数のウェールにわたってファブリック層へ編み込まれることが可能である。したがって、導体糸は、例えば特許文献2又は特許文献3から知られているような一種のジグザグ配列で延びている。
【0026】
これにより、全体として比較的わずかな導体糸を有する少なくとも5つのウェールにわたる延長により、大きな面を覆うことができるという利点が生じ、その結果、全田尾としてわずかな導体糸も接触される必要がある。
【0027】
用途に応じて設定されるべき織りずれにかかわらず、個々のスペーサファブリック部分については、例えば4~40、好ましくは5~20、特に好ましくは6~12の導体糸を設けることができるが、本発明は、このような形態に限定されていない。
【0028】
第1のファブリック層は、好ましくはヒータ機能のために設けられており、第1のファブリック層は、合目的には、露出した、加熱される表面を形成するか、又は少なくとも直接装飾層の下方に配置されている。そして、導体糸により、特に有利な態様でも、厚さ方向において良好な断熱効果が得られる。
【0029】
したがって、あらかじめ設定された加熱ラインでは、第1のファブリック層を特に迅速に加熱することができ、良好な断熱性により、比較的高い表面温度を達成することが可能である。これに対して、所定の加熱率あるいは表面温度があらかじめ設定される場合には、スペーサファブリック部分によって形成されていない加熱インサートに比して明らかにより良好なエネルギー効率を得ることが可能である。
【0030】
上述の第1のアプローチの範囲では、コース又はコースの少なくとも1つの部分に沿って、第1のファブリック層の隣り合う導体糸の間の間隔がnの数のウェールに対応する。数nは、好ましくは上述の数mよりも小さい。そして、互いに対してずれを有する導体糸は、スペーサファブリック部分の生産方向に沿って、それぞれ形成されたジグザグ形状へ係合し、これにより、まさに特に均等で効率的な加熱が促進される。
【0031】
これに代えて、本発明の範囲において、上述の第2のアプローチによれば、数nは、数mよりも大きいか、又は少なくとも同数であり、導体糸は、生産方向に沿って互いにずれして配置されているもののもはや互いに係合しない。そして、このような形態は、個々の導体糸が分離されることなく、スペーサファブリックが生産方向における直線に沿って分離あるいは引き裂かれることとなっていれば有意義である。このような構成は、基本的にかなり様々な導体糸の設置パターンに対して可能である。しかしながら、ずれに応じて、合目的には、個々の糸取りレバーは、製造のために覆われていない。導体糸が例えば5と同数の数mのウェールにわたって延びていれば、第1の糸取りレバーは導体糸で覆われることができる一方、これにつづく4つの糸取りレバーは空けられている。そして、これにつづく第6の糸取りレバーが再び導体糸で覆われる。これにより、隣り合って配置された2つの導体糸の間で生産方向においてほどくことが可能であることが保証される。
【0032】
上述したように、個々の導体糸について織りずれを完全に省略することができ、その結果、導体糸は、例えば「1より小さな緯糸」として、割り当てられたファブリック層の基礎構造によって保持されている。そして、ほどくこと、あるいは裂開は、引裂き強度が導体糸により高められることなく、隣り合う全てのウェールの間で可能である。
【0033】
従来の製造プロセスにおいては、糸取りレバーの被覆にかかわらず、機能範囲では、生産方向にも、また横方向にも均一なレイアウトパターンが得られる。
【0034】
しかし、本発明は、具体的な実施形態への適合の可能性も含んでおり、特に、スペーサファブリック内の導体糸を有さない凹部も設けることが可能である。このとき、当該凹部の種類及び形状を自由に選択することができ、したがって、スペーサ織物における凹部であり得る。このとき、均一なレイアウトパターンとは異なり、導体糸は、切断される必要はなく、有利にはフレキシブルに凹部の周囲で案内されることが可能である。導体糸の異なる経過は、例えば、個々の導体糸が異なるガイドバーに割り当てられていることで達成され得る。
【0035】
本発明の好ましい形態によれば、第1のファブリック層の導体糸は、好ましくは断熱部を備えたそれぞれ1つの金属ワイヤによって形成されている。金属ワイヤのほかに、基本的には、例えば金属ストランド、導電性の合成樹脂糸、導電性のコーティングを有するモノフィラメント糸又は個別のフィラメントの導電性のコーティング若しくは導電性のジャケット部を有するマルチフィラメント糸のような他の形態も考慮に値する。しかし、ヒータ機能及び処理に関して、単純な金属ワイヤが特に好ましい。
【0036】
導体糸の具体的な形態にかかわらず、絶縁部は、スペーサファブリックの耐久性に関して有利である。したがって、スペーサファブリック部分は、加熱インサートとしての使用時に、異なる環境影響にもさらされ得る。例えば液体の侵入は、用途に応じて、常に排除され得るわけではなく、絶縁部が導体糸の保護を提供する。
【0037】
このような電気的な絶縁部の典型的な厚さは、4~20μm、特に約10μmである。特に、電気的な絶縁部は、ラッカー層によって形成されることができる。対応して、絶縁された金属ワイヤは、織りプロセスにおいても絶縁部の損傷なしに良好に処理され得る。他方で、このような絶縁部は、単独で、少なくとも1つの機能範囲における導体糸のはんだ付け時に、温度入力により容易に除去される。
【0038】
所望の加熱特性を達成するために、及び金属ワイヤを良好に処理することができるように、当該金属ワイヤは、好ましくは25~200μm、好ましくは50~100μmの直径を有しており、電気抵抗は、1~280Ω(オーム)/m(1メートル当たりのオーム抵抗)、好ましくは5~70Ω/mである。このとき、上記直径は、ワイヤの通常の円形に関するものである。基本的には、断面が円形でない金属ワイヤも用いることが可能である。そして、合目的には、断面積は、上述の直径を有する円形のワイヤの面積に対応する。
【0039】
本発明の別の態様によれば、少なくとも第2のファブリック層において導体糸が存在しており、第2のファブリック層の導体糸又は導体糸の少なくとも一部が、機能範囲において、横方向において規定された第1の幅にわたって第2のファブリック層へ織り込まれており、第2のファブリック層の導体糸又は該導体糸の一部へ、横方向に見た両方向で第2の幅が接続されており、該第2の幅は、第1の幅よりも大きいとともに、導体糸を有さないように構成されている。上述の形態においてはヒータ機能が第1のファブリック層に割り当てられている一方、第2のファブリック層は、電気的な接続部のために用いられることが可能である。特に、スペーサファブリック部分がその生産方向に沿って一方側でのみ電流供給部に接続されるべき場合には、第2のファブリック層へ組み込まれることが可能な電気的な戻し部を提供する必要がある。そして、第2のファブリック層では一種の接続ケーブルが形成され、当該接続ケーブルは、少なくとも機能範囲においてファブリック層へ組み込まれている。
【0040】
特に単純な形態の範囲では、接続導体として設けられる対応する第2のファブリック層の導体糸が、織りプロセスにおける一種の緯糸編み込み部として編み目あるいは第2のファブリック層の基礎構造の編み目へ導入されることが可能である。そして、接続導体として設けられた導体糸は、第2のファブリック層において保持され、保護されている。
【0041】
第2のファブリック層の導体糸は、好ましくは金属ストランドで形成されることができ、外部の影響に対する、及び/又は短絡に対するより良好な保護を達成するために、第2のファブリック層の導体糸も好ましくは絶縁部を備えている。
【0042】
上述のように、第2のファブリック層の導体糸は、一種の緯糸編み込み部として生産方向において本質的にまっすぐ案内されることが可能である。このとき、第2のファブリック層の導体糸が第2のファブリック層の基礎構造に比して、及び第1のファブリック層に比して通常はより高い強度を有していることも考慮すべきである。このことは、特に第2のファブリック層の導体糸が金属ストランドで形成されている場合に当てはまる。第2のファブリック層への十分強固な編み込み時には、スペーサファブリック部分全体の過剰な伸びを回避するために、第2のファブリック層の導体糸も一種の引張制限部として用いられることが可能である。例えば、上述の形態により、第1のファブリック層が、比較的迅速に引き裂かれる薄い導体糸を備えている場合には、より引張強度の大きい第2のファブリック層の導体糸によって特に有利な安定性を得ることが可能である。
【0043】
他方で、所定の用途については、スペーサファブリック部分をある程度の規模で成形及び適合することができるように、スペーサファブリック部分のある程度の延性も所望される。スペーサファブリック部分が加熱インサートとして用いられる場合には、スペーサファブリック部分は、しばしば、三次元に湾曲され、及び/又は折り曲げられた支持部へ持ち上げられ、このためには、ひだ取り及び過剰な折り曲げ箇所を有さない適当な形状適合を可能とするよう、十分な可動性が必要である。
【0044】
このような背景から、第2のファブリック層の導体糸の高い張力にもかかわらず可動性を達成するために、第2のファブリック層の導体糸も生産方向においてジグザグに延びることが可能である。横方向におけるこのジグザグ形状の延長により、提供される生産方向に沿った可動性あるいは延性が、各要求によってもあらかじめ設定あるいは調整されることが可能である。
【0045】
本発明は、上述のスペーサファブリック部分から成る加熱インサートを形成するための方法であって、機能範囲の両側における接続範囲又は通常は2つの接続範囲において、特にはんだ付けによって電気的な接触がなされる前記方法にも関するものである。そして、例えばフィルム、薄板、ストランドバンド又はワイヤも、第1のファブリック層及び/又は第2のファブリック層における接続範囲で対応する導体糸と対応するファブリック層の間へ押し込まれることが可能である。
【0046】
これに代えて、特に有利には、接続範囲を導体糸の下方で切断することも可能であり、その結果、そこには自由空間が生じる。その間に配置されたスペーサ糸を有する両ファブリック層の基礎構造を切断することで、そこには第1及び/又は第2のファブリック層の導体糸のみが残る。
【0047】
好ましい実施形態により、上述の態様において、第1のファブリック層が発熱導体を備えており、第2のファブリック層が接続導体を備えていれば、これらは、特に容易に互いに接触するか、あるいは電流接続部を備えることが可能である。そして、形成されるべき加熱インサートに関して、接触した範囲は、下方へ向けて折り返されることができ、その結果、最終的に、当該範囲は、加熱インサートの使用時に、残ったスペーサファブリック部分によって保護されている。
【0048】
加熱インサートを形成する方法によれば、好ましくは、スペーサファブリック部分がカバー層と下部構造の間に配置されるようになっている。カバー層は、例えば皮革、合成皮革又は他の種類の被覆材料であってよい。下部構造は、例えば合成樹脂支持部、フォームコア又はこれらに類するものであってよい。
【0049】
最後に、本発明は、上述のスペーサファブリック部分を有する原動機付き車両の加熱可能な内装部品にも関するものである。
【0050】
加熱可能な内装部品は、原動機付き車両の使用における快適性及び効率を高めることが可能である。
【0051】
従来の内燃エンジンにおいては、内部空間の暖房は、内燃エンジンの排熱を用いて、ブロワによってなされ、内部空間全体が暖房される。このとき、しばしば、原動機付き車両の外部を介して低温の周囲と接触する非常に大きな体積を暖房する必要があることが考慮されるべきである。
【0052】
快適性を向上させるために、従来の原動機付き車両においては、ステアリングホイール及びシートを加熱することが既に知られている。快適性を向上させるために、アームレスト及びサイドカバーを加熱するという第1のアプローチも注目される。当該アプローチは、ユーザの幸福感のためには、最終的には主観的な暖かさが決定的であるという認識に基づいている。
【0053】
通常、下肢及び前側の上半身は衣服で覆われている一方、シート又はアームレストで支持される体の部分では、低温の周囲との直接的な接触によって不快な冷たさが生じる。同様のことは、ステアリングホイール及び例えばシフトレバーを操作する手についても当てはまる。ユーザにおけるこれらの範囲が「体の近くで」加熱されれば、全体的に低い周囲温度にもかかわらず快適な温かさを生じさせることが可能である。そして、ブロワヒータによる大きな空気流量を回避することができるか、又は少なくとも低減することができるという利点が得られる。この場合、まだ低温の車両においては、まず低温の空気が流動されることも考慮されるべきである。
【0054】
全体的に低い周囲温度において原動機付き車両のユーザの幸福感を得られれば、改善されたエネルギー効率に関して有利である。体に近いヒータにより、かなりの損失が生じる、内部空間全体を高い温度へもたらす必要がなくなる。特に良好なエネルギー効率は、よりわずかな燃料消費量又は特に電動車両においてかなりの意義がある。
【0055】
したがって、加熱可能な内装部品がますます使用されることは、高級車においてのみならず、コンパクト車及び小型車においても合目的である。さらに、ステアリングホイール及びシート、アームレスト、シフトレバー、側方部材、ルーフライナ又はダッシュボードのような、別の特に体に近い内装部品も適当なヒータ機能を備えることが可能である。
【0056】
上述のように、本発明の好ましい形態は、第1のファブリック層と、第2のファブリック層と、当該ファブリック層を結合する不導性のスペーサ糸とを有するスペーサファブリックの形態のヒータ設備に関するものであり、第1及び第2のファブリック層は、それぞれ生産方向に沿って延びるウェールと、横方向に沿って延びるコースとを備えており、ファブリック層は、それぞれ不導性の糸から形成された基礎構造を備えており、第1のファブリック層は、基礎構造に加えて、好ましくはジグザグに生産方向へ延びる、発熱導体としての導体糸を備えている。上述の特に好ましい形態の範囲では、第2のファブリック層は、織り技術的に基礎構造へ編み込まれた少なくとも1つの導体糸を接続導体として備えており、本発明の別の形態によれば、全ての発熱導体の電気抵抗は、接続導体あるいは第2のファブリック層に設けられた全ての接続導体の電気抵抗の少なくとも3倍である。
【0057】
複数の接続導体が設けられていれば、当該接続導体は、通常、互いに並列に接続されている。同様のことは、第1のファブリック層に設けられた発熱導体についても当てはまる。特に好ましくは、全ての発熱導体の電気抵抗は、接続導体の電気抵抗の少なくとも3倍、好ましくは5倍、特に好ましくは10倍、特に20倍である。上述の形態の範囲では、電圧降下、したがって発熱導体における電力が存在する一方、1つの接続導体あるいは複数の接続導体により本質的な電気損失が生じないということが達成される。それゆえ、第1のファブリック層が加熱される一方、第2のファブリック層では本質的な加熱がなされず、スペーサ糸によって良好な断熱も達成される。
【0058】
そして、発熱導体は、上述の接続範囲における、生産方向に見たスペーサファブリックの第1の端部において、少なくとも1つの発熱導体に接触している。第2の接続範囲に対応して、スペーサファブリックの第2の端部には、給電ラインのための電気接続部を設けることが可能である。例えば、二極プラグを設けることができ、発熱導体は第1の極に接続され、少なくとも1つの接続導体は第2の極に接続されている。
【0059】
上述の実施形態の範囲では、発熱導体は、特に容易に一方側で接触されることが可能である。このことは、一方側からのみアクセス可能な多数の内装部品においては有利である。このことは、例えば、アームレストの形態の内装部品について当てはまる。少なくとも1つの接続導体が前方から第2のファブリック層へ統合されることで、場合によってはメンテナンス時に損傷することがあり、及び/又は加熱インサートの使用時にユーザによって知覚可能な、追加的なケーブルを敷設する必要がない。
【0060】
第2のファブリック層に複数の接続導体が設けられていれば、上述のように、当該接続導体は、横方向に規定されたスペーサファブリック部分の幅の一部にわたってのみ延びる。複数の接続導体は、例えば一種のストリップとして設けられることができ、当該ストリップは、幅の20%未満、特に10%未満にわたって延在している。
【0061】
上述の具体的な形態においては、好ましくはスペーサファブリック部分において、導体糸のフローティングを備えた2つの接続範囲の間に機能範囲が配置されている。しかし、基本的には、これとは異なる別の形態も可能である。
【0062】
この背景から、代替的な有利な形態によれば、スペーサファブリック部分におけるファブリック層のうち少なくとも1つにおいては、接続範囲によって途切れた2つの機能範囲が設けられるようになっており、その結果、対応するファブリック層における合計において、合計で3つの接続範囲と2つの機能範囲が存在する。具体的には、接続導体として設けられた導体糸のための第2のファブリック層におけるこのような分配が実現されている形態も考えられる。このとき、接続導体として設けられた、対応する第2のファブリック層の導体糸は、生産方向に沿って外側に位置する両接続範囲において、適切な態様で、特に発熱導体として設けられた、第1のファブリック層の導体糸と接触することができ、第2のファブリック層において機能範囲間に位置する接続範囲では、導体糸がフローティングにおいて切断され、例えばプラグと接触されることが可能である。このような形態の範囲では、1つの箇所における電気的な接続も可能であるが、当該接続箇所は、スペーサファブリック部分の中央範囲へつながれている。
【0063】
本発明の範囲では、更に、第1のファブリック層においてのみ導体糸が特に発熱導体として存在する形態も可能であり、この場合、生産方向に沿って延びる別々の接続導体が省略され、それにもかかわらず一方側のみからの接触が可能である。したがって、例えばプラス極及びマイナス極への接続を可能とするために、第1のファブリック層の導体糸を、スペーサファブリック部分のそれぞれ同一側において互いに分離して接触される2つのグループに分割することができる。そして、スペーサファブリック部分の対向する端部には、形成された両グループが互いに電気的に接続され、このために、そこに設けられたフローティングを用いることができる。
【0064】
横方向に沿って、個々に発熱導体として設けられた導体糸は、例えば交互に往復導体として設けられ、対で互いに接続されることが可能である。そして、プラス極とマイナス極の間には二重の長さを有する発熱導体が形成される。それぞれちょうど2つの導体糸の対状の接触のほかに、形成された導体糸の両グループは、接続部に対向して、並列接続において導電するように全て互いに接続されることも可能である。発熱導体のうち1つが機能不能であるか、機能不能となる場合には、当該発熱導体のみが機能不全となり、一方、逆方向への電流は、相補的なグループの全ての発熱導体へ分割されることが可能である。
【0065】
別の可能な形態によれば、1つのファブリック層、特に第1のファブリック層に異なる導体糸を設けることも可能である。したがって、このような形態の範囲では、例えば発熱導体及び接続導体を第1のファブリック層へ組み込むことも可能である。合目的には、異なる導体糸のこれら少なくとも2つのグループは、織りプロセスにおいて異なるガイドバーに割り当てられており、その結果、それぞれ1つの最適な織りパターンを選択することが可能である。
【0066】
以下に、1つの実施例のみを示す図面に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】個々のスペーサファブリック部分から切り離され得る、スペーサファブリックの一部を示す図である。
【
図2】第1のファブリック層へ見た、
図1によるスペーサファブリックの平面図である。
【
図3】下方から見た、すなわちスペーサファブリックの第2のファブリック層へ見た、
図2による図示である。
【
図4A】異なる敷設パターンの概略的な図示である。
【
図4B】異なる敷設パターンの概略的な図示である。
【
図4C】異なる敷設パターンの概略的な図示である。
【
図4D】異なる敷設パターンの概略的な図示である。
【
図4E】異なる敷設パターンの概略的な図示である。
【
図5】カット部に適合されたフレキシブルな敷設パターンを示す図である。
【
図6】スペーサファブリック部分の代替的な構成を第2のファブリック層に対する平面図において示す図である。
【
図7】スペーサファブリック部分の別の代替的な構成を第1のファブリック層に対する平面図において示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1には、個別のスペーサファブリック部分1(
図2参照)を分離可能なスペーサファブリックが示されている。詳細に後述するように、個々のスペーサファブリック部分1は、加熱インサートとして使用するために設けられている。スペーサファブリック部分1は、通常のように、第1のファブリック層2及び第2のファブリック層3を備えており、これらファブリック層は、それぞれ生産方向Pに沿って延びるウェール及び横方向Qに沿って延びるコースを有している。ファブリック層2,3は、スペーサ糸4によって結合されている。上述の構造は、スペーサファブリックの通常の構成に対応している。
【0069】
これを起点として、両ファブリック層2,3が、不導性の糸で形成された基礎構造と、追加的な導体糸5a,5bとを備えるように設定されている。
【0070】
第1のファブリック層2の導体糸5aは、発熱導体として設けられているとともに、スペーサファブリック部分1の幅の半分よりも多くにわたって延在している。横方向Qでは、
図2に図示されているような弓状のカット部6を可能とするために、個々のスペーサファブリック部分1の側方のストリップは、第1のファブリック層2の導体糸5aで覆われていない。
【0071】
これに対して、第2のファブリック層3の導体糸5bは、接続導体を形成している。
【0072】
図1と
図2の比較に基づき、個々のスペーサファブリック部分1は生産方向において異なる範囲を有していることが分かる。すなわち、
図2及び
図3によれば、両ファブリック層2,3の導体糸5a,5bは、生産方向Pに沿って部分的に機能範囲7において、特に編み目を形成するように緯糸として、又は好ましくは部分緯糸として、割り当てられたファブリック層2,3へ編み込まれる。
【0073】
生産方向Pに沿った機能範囲7の両側において、それぞれ1つの接続範囲8がつづいており、当該接続範囲は、多数の、典型的には少なくとも10のコース、例えば20~100のコースにわたって延在しており、接続範囲8では、導体糸5a,5bがフローティングによって割り当てられたファブリック層2,3に載置される。したがって、導体糸5a,5bは、接続範囲8において基礎構造へ組み込まれており、その結果、そこでは、導体糸5a,5bとそれぞれ割り当てられた基礎構造との間の係合が可能である。
【0074】
例えば、そこでは、シートストリップ、金属フィルムのストリップ、フレックスストリップ(ストランド)又はワイヤも導体糸5a,5bをこれに接触させるために導入することが可能である。これに加えて、又はこれに代えて、接続範囲8では、両ファブリック層2,3の基礎構造も、その間に配置されたスペーサ糸4と共に切り取ることが可能である。そして、導体糸5a,5bのみがそこに残り、当該導体糸は、上述のように、別々の要素をもって、又は直接接触されることが可能である。
【0075】
図2及び
図3に図示されたスペーサファブリック部分1に関して、例えば、接続範囲8のうち1つにおいて、第2のファブリック層3の導体糸5bとの第1のファブリック層の導体糸5aの結合を行うことが可能である。他の接続範囲8には例えば二極プラグを設けることができ、第1の極が第1のファブリック層2の導体糸5aに接触され、第2の極が接続導体として設けられる第2のファブリック層3の導体糸5bに接触される。
【0076】
上述の措置により、個々のスペーサファブリック部分1が一方側から電流及び電圧供給部に接続されることが可能であることが達成され、第1のファブリック層2では発熱導体として設けられた多数の導体糸5aによって発熱作用が得られる一方、第2のファブリック層3の導体糸5bはリターン導体として設けられている。
【0077】
図2では、スペーサファブリック部分1は、それぞれ接続範囲8に更に接続して中間連結部9を備えており、当該中間連結部では、導体糸5a,5bが、ここでも、第1のファブリック層2あるいは第2のファブリック層3の割り当てられた基礎構造へ編み込まれている。これにより、導体糸5a,5bがそこで少なくともある程度の規模で固定されていることを達成可能である。上述の態様により第1のファブリック層2及び第2のファブリック層3の基礎構造がその間に配置されたスペーサ糸4と共に切除されると、通常、そこで導体糸5a,5bを保持するために、中間連結部9の範囲がまだ残る。対応する部分を、場合によっては置き換えるか、又は後に切り取ることが可能である。
【0078】
図示の実施例では、例示的に8つの導体糸5aが第1のファブリック層2が設けられている。第1のファブリック層2の導体糸5aの数は、例えば4~40であってよい。
【0079】
第1のファブリック層2の導体糸5aが機能範囲7においてそれぞれm>5の第1の数のウェールにわたって延在していることも見て取れる。第1のファブリック層2の導体糸5aが互いに平行にジグザグパターンで延びていることが
図2の部分拡大図からまさに見て取れ、第1のファブリック層2の隣り合う導体糸5aがnの第2の数のウェールに対応し、第2の数nは第1の数mよりも小さい。それゆえ、個々の導体糸5aは、互いに接触又は切断されることなく、そのジグザグ運動時に互いに係合する。
【0080】
当該実施例では、第1のファブリック層2の導体糸5aは、絶縁部を備えた金属ワイヤで形成されており、当該金属ワイヤは、例えば50μmの直径及び例えば20Ω/m(1m当たりのオーム抵抗)の抵抗を備えている。第1のファブリック層2の導体糸5aは互いに平行に配線されており、上述のジグザグ運動及び相互の係合により、わずかな導体糸5aによる特に均等な面加熱が可能である。対応して、比較的わずかな導体糸5aも両接続範囲8へ接触させる必要がある。
【0081】
第2のファブリック層3において接続導体として設けられた導体糸5bは、第1のファブリック層の導体糸5aと比較して明らかによりわずかな抵抗を有している。当該実施例では、第2の導体糸5bのために金属ストランドが設けられており、当該金属ストランドは、例えば典型的には1Ω/m(1m当たりのオーム抵抗)の抵抗を有することができる。このために、例えば、それぞれ70μmの直径を有する7つの個別ワイヤを1つのストランドへ加工することが可能である。
【0082】
図3には、個々のスペーサファブリック部分1を有するスペーサファブリックが下方からの視点、すなわち第2のファブリック層3に対する視点で示されている。基本的には、第2のファブリック層3の導体糸5bは、まさに一種の緯糸として、第2のファブリック層3の基礎構造の編み目へ、又は当該編み目の間へ組み込まれることが可能である。しかし、
図3の図示の実施例では、第2のファブリック層3の導体糸5bもジグザグに延びており、このために、対応する導体糸5bが部分緯糸として組み込まれている。導体糸5bは、生産方向へ延びるストリップの種類に応じて組み込まれている。導体糸5bは、機能範囲7において、横方向Qにおいて規定された第1の幅b
1にわたって延在しており、第2のファブリック層3の導体糸5bには、横方向Qに見た両側において第2の幅b
2あるいはb
2’がつづいていて、当該第2の幅は、第1の幅b
1よりも大きく、そこには導体糸5bは設けられていない。
【0083】
スペーサファブリック部分の厚さは、典型的には1~20mm、特に3~7mmである。
【0084】
原動機付き車両用の加熱可能な内装部品における加熱インサートとしての好ましい用途に関して、機能範囲7は、生産方向Pに沿って典型的には10~200cmの第1の長さl1にわたって延在しており、両接続範囲8は、生産方向Pに沿って0.5~15cm、典型的には2~10cmの第2の長さl2にわたって延在している。スペーサファブリック部分1の全幅は、典型的には5~100cmである。
【0085】
図4A~
図4Eには様々なレイアウトパターンが示されており、これらレイアウトパターンでは、導体糸が互いにずらして配置されているが互いに係合していない。これにより、スペーサファブリックは、個々の導体糸5aを分離することなく、生産方向Pへ延びるまっすぐなラインに沿ってほどかれることが可能である。
図4Aによれば、導体糸5aは、m=1の数のウェールにわたってのみ導入されている一方、互いに隣り合って配置された2つの導体糸5aの間の間隔は、同様にn=1の数のウェールとなる。これにより、各糸取りレバーは、製造中に導体糸5aで覆われることができ、その結果、生産方向Pにおいても、また横方向Qにおいても、できる限り大きな加熱性能を得ることが可能である。
【0086】
図4Bによれば、各導体糸5aは最大で2つのウェールにわたって延びており、その結果、製造中に、それぞれ第2の糸取りレバーのみが導体糸5aで覆われている。
図4C~
図4Eには代替的な構成が示されており、それぞれ第3の糸取りレバー、それぞれ第5の糸取りレバー又はそれぞれ第13の糸取りレバーのみが覆われており、個々の導体糸5aは、3つ、5つ又は13のウェールにわたって延在することが可能である。基本的には、当然、個々の導体糸5aが同一に覆われたままよりわずかなウェールにわたって延在することも考えられるが、横方向Qにおける効率的な加熱性能が最適に活用されない。数mが数nと対応する限り、一方では、生産方向Pにまっすぐに延びるラインに沿ってほどくことが可能である一方、同時に加熱性能を横方向Qにおいて最適に分配されることを保証することが可能である。
【0087】
図5には、ハッチングして図示され導体糸5aを有さない2つの凹部10を有するカット部6が図示されている。当該凹部10は、覆われていない単一の範囲であるか、又はスペーサファブリックから成る部分である。このとき、導体糸5aは、一方では凹部10が導体糸5aを有さず、同時に導体糸5aのうちいずれも切断されていないように、カット部6へフレキシブルに織り込まれている。
【0088】
図4A~
図4Eにおいても、また
図5においても、見やすさの観点から導体糸5aのみが図示されており、これに関して説明した論述は、同様に導体糸5bについても当てはまる。
【0089】
図6には、スペーサファブリック部分1の代替的な構成が第2のファブリック層3に対する平面図において示されている。この場合、第1のファブリック層2は、
図2に図示されているように構成されることが可能である。
【0090】
上述の構成の場合には、スペーサファブリック部分1における両ファブリック層2,3では2つの接続範囲8の間に1つの機能範囲7が設けられている一方、
図6による第2のファブリック層3では、追加的に中央の接続範囲が設けられているため、相応して2つの機能範囲7も生じ、これら機能範囲は、追加的な中央の接続範囲8の両側に接続している。上述の構成の範囲では、中央における追加的な接続範囲8によって、そこでも電気的な接続部、例えばプラス極及びマイナス極との接触を行うことが可能である。したがって、加熱インサートとしてのスペーサファブリック部分1の電気的な接続は、生産方向Pに沿ったスペーサファブリック部分1の端部ではなく、中央の範囲でなされる。これに対して、生産方向に見て外側に位置する接続範囲8は、接続導体として設けられた第2のファブリック層3の導体糸5bとの、発熱導体として設けられた第1のファブリック層2の導体糸5aの接触のために用いられる。
【0091】
図6に関して、接続導体として設けられた第2のファブリック層3の導体糸5bの位置も横方向Qに沿って各要求に応じて変更され得ることも明らかである。
【0092】
図7には、スペーサファブリック部分1の別の代替的な構成が第1のファブリック層2に対する平面図で示されており、当該代替的な構成の範囲では、導体糸5aは、第1のファブリック層2においてのみ存在している。この場合、第2のファブリック層3における上述の導体糸5bは省略されている。
図7によれば、導体糸5aは2つのグループに分割されるようになっており、両グループは、それぞれ割り当てられた接続導体11と接触している。両接続導体11は、
図7では例示的にプラグ12の両極に接続されている。発熱導体として設けられた第1のファブリック層の導体糸5aはそれぞれ対状に接続されているため、両接続導体11の間では、最終的に接続によって二重の長さを有する発熱導体が形成される。
【0093】
図7によれば、導体糸5aはそれぞれまさに対状に接続されているため、それぞれ往復導体としての割り当てが生じる。これに代えて、
図7によれば、個々の導体糸5aの対状の接続の代わりに、全ての導体糸5aを両接続導体11に対向して全て共通に接触されることも可能である。導体糸5aのグループ(往復導体)において遮断がなされると、これら個々の導体糸5aのみが機能不全となる一方、逆方向への電流の流れは、並列接続により確保されたままである。
【0094】
図7によれば、電流の往復導体がスペーサファブリック部分1の一方側における、また第1のファブリック層2のみにおける接続時に可能であることが分かる。不図示の別の代替的な構成の範囲では、第1のファブリック層2には、基本的に、好ましくは異なる織り交ぜ(インターレース)を有する異なる種類の導体糸5aを設けることも可能である。例えば、比較的薄い発熱ワイヤも、また更にはわずかな抵抗を有する接続導体も同一のファブリック層2,3に設けることが可能である。このような異なる導体糸5aは、交互にも、またグループとしても生産方向Qに沿って互いに分離して配置されることが可能である。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.それぞれ生産方向(P)に沿って延びるウェール及び横方向(Q)に延びるコースを備える第1のファブリック層(2)と第2のファブリック層(3)と、前記ファブリック層(2,3)を結合するスペーサ糸(4)とを有する、特に加熱インサートとして用いるためのスペーサファブリック部分(1)であって、前記ファブリック層(2,3)のうち少なくとも1つが、不導体から形成された基礎構造と、追加的な導体糸(5a,5b)とを備えている、前記スペーサファブリック部分において、
前記導体糸(5a,5b)が、前記生産方向(P)に沿って部分的に、機能範囲(7)において、割り当てられた前記ファブリック層(2,3)へ組み込まれているとともに、複数のウェールにわたって延在する接続範囲(8)において、フローティングによって、割り当てられた前記ファブリック層(2,3)に載置されることを特徴とするスペーサファブリック部分。
2.前記接続範囲(8)が、少なくとも10のコースにわたって延在していることを特徴とする上記1.に記載のスペーサファブリック部分(1)。
3.少なくとも前記第1のファブリック層(2)に導体糸(5a)が存在し、前記第1のファブリック層(2)の前記導体糸(5a)が、前記機能範囲(7)において、それぞれ第1の数m>5のウェールにわたって前記第1のファブリック層(2)へ導入されていることを特徴とする上記1.又は2.に記載のスペーサファブリック部分(1)。
4.少なくとも前記第1のファブリック層(2)には導体糸(5a)が存在しており、前記第1のファブリック層(2)の前記導体糸(5a)が、前記機能範囲(7)において、それぞれ第1の数mのウェールにわたって前記第1のファブリック層(2)へ導入されていること、及び前記第1のファブリック層(2)の隣り合う導体糸(5a)の間の間隔が、前記コースに沿って、前記ウェールの第2の数nに対応し、該第2の数nが前記第1の数mよりも大きいことを特徴とする上記1.又は2.に記載のスペーサファブリック部分(1)。
5.前記第1のファブリック層(2)の前記導体糸(5a)が、それぞれ絶縁部を備えた金属ワイヤで形成されていることを特徴とする上記1.~4.のいずれか1つに記載のスペーサファブリック部分(1)。
6.前記金属ワイヤが、25~200μmの直径を有しているとともに、1~280Ω/m(1m当たりのオーム抵抗)を有していることを特徴とする上記5.に記載のスペーサファブリック部分(1)。
7.少なくとも前記第2のファブリック層(3)において導体糸(5b)が存在しており、前記第2のファブリック層(3)の前記導体糸(5b)又は前記導体糸(5b)の少なくとも一部が、前記機能範囲(7)において、横方向(Q)において規定された第1の幅(b
1
)にわたって前記第2のファブリック層(3)へ組み込まれており、前記第2のファブリック層(3)の前記導体糸(5b)又は該導体糸(5b)の一部へ、横方向に見た両方向で第2の幅(b
2
)が接続されており、該第2の幅は、前記第1の幅(b
1
)よりも大きいとともに、前記導体糸(5b)を有さないことを特徴とする上記1.又は2.に記載のスペーサファブリック部分(1)。
8.前記第2のファブリック層(3)の前記導体糸(5b)が、それぞれ金属ストランドで形成されていることを特徴とする上記7.に記載のスペーサファブリック部分(1)。
9.厚さが1~20mmであることを特徴とする上記1.~8.のいずれか1つに記載のスペーサファブリック部分(1)。
10.前記機能範囲(7)が、前記生産方向(P)に沿って10~200cmの第1の長さ(l
1
)にわたって延在していること、及び前記接続範囲(8)が、前記生産方向(P)に沿って0.5~15cmの第2の長さ(l
2
)にわたって延在していることを特徴とする上記1.~9.のいずれか1つに記載のスペーサファブリック部分(1)。
11.幅が5~100mmであることを特徴とする上記1.~10.のいずれか1つに記載のスペーサファブリック部分(1)。
12.上記1.~11.のいずれか1つに記載のスペーサファブリック部分(1)から成る加熱インサートを形成するための方法であって、前記接続範囲(8)において、特にはんだ付けによって電気的な接触がなされることを特徴とする方法。
13.前記接続範囲(8)の少なくとも一部が、前記導体糸(5a,5b)の下方において切り取られることを特徴とする上記12.に記載の方法。
14.前記スペーサファブリック部分(1)が、カバー層と下部構造の間に配置されることを特徴とする上記1.又は2.に記載の方法。
15.上記1.~11.のいずれか1つに記載の、加熱インサートとしてのスペーサファブリック部分(1)を有する原動機付き車両用の加熱可能な内装部品。