(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及び回路基板
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240806BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/38 B
(21)【出願番号】P 2020021215
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2023-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹木 隆
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072452(JP,A)
【文献】特開2010-118499(JP,A)
【文献】特開2012-253245(JP,A)
【文献】特開2012-164966(JP,A)
【文献】特開2008-300563(JP,A)
【文献】特開2012-069766(JP,A)
【文献】特開2002-025850(JP,A)
【文献】特開平08-330174(JP,A)
【文献】特開2016-178161(JP,A)
【文献】特開2018-018960(JP,A)
【文献】特開2014-187322(JP,A)
【文献】特開平01-283809(JP,A)
【文献】特開2014-045055(JP,A)
【文献】特開平07-037753(JP,A)
【文献】特開平03-178112(JP,A)
【文献】特開2012-191006(JP,A)
【文献】特開2010-199171(JP,A)
【文献】特開平04-038810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に
セラミック層を挟んで第1内部電極及び第2内部電極
が交互に積層された第1容量形成領域及び第2容量形成領域と、前記セラミック層より厚く、前記第1軸方向において前記第1容量形成領域及び前記第2容量形成領域に挟まれるように隣接して積層された中間セラミック層と、前記第1軸方向を向いた第1主面及び第2主面と、前記第1軸と直交する第2軸方向を向き前記第1内部電極が引き出された第1端面と、前記第2軸方向を向き前記第2内部電極が引き出された第2端面と、
前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に向いた側面と、を有するセラミック素体と、
前記第1端面を覆い、前記第1主面
及び前記側面まで延出する第1外部電極と、
前記第2端面を覆い、前記第1主面
及び前記側面まで延出する第2外部電極と、
を具備し、
前記第1外部電極及び前記第2外部電極各々は、
錫を主成分とす
る最外層を含み、前記第1端面又は前記第2端面から前記第1主面
及び前記側面まで延出する第1領域と、
前記第1端面又は前記第2端面上の前記第1領域を前記第3軸方向に沿って、前記第1容量形成領域を覆う部分と前記第2容量形成領域を覆う部分とに分断するように前記セラミック素体の前記第1端面又は前記第2端面
内の前記中間セラミック層を露出させ、前記第1領域と前記第1端面又は前記第2端面上において前記第1軸方向に隣接して配置された第2領域と、を有する
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
実装基板と、
第1軸方向に
セラミック層を挟んで第1内部電極及び第2内部電極
が交互に積層された第1容量形成領域及び第2容量形成領域と、前記セラミック層より厚く、前記第1軸方向において前記第1容量形成領域及び前記第2容量形成領域に挟まれるように隣接して積層された中間セラミック層と、前記第1軸方向を向いた第1主面及び第2主面と前記第1軸と直交する第2軸方向を向き前記第1内部電極が引き出された第1端面と前記第2軸方向を向き前記第2内部電極が引き出された第2端面と
、前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に向いた側面とを有するセラミック素体と、前記第1端面を覆い、前記第1主面
及び前記側面まで延出する第1外部電極と、前記第2端面を覆い、前記第1主面
及び前記側面まで延出する第2外部電極と、を有する積層セラミック電子部品と、
前記第1外部電極及び前記第2外部電極と前記実装基板とを接続するはんだと、
を具備し、
前記第1外部電極及び前記第2外部電極各々は、
錫を主成分とす
る最外層を含み、前記第1端面又は前記第2端面から前記第1主面
及び前記側面まで延出する第1領域と、
前記第1端面又は前記第2端面上の前記第1領域を前記第3軸方向に沿って、前記第1容量形成領域を覆う部分と前記第2容量形成領域を覆う部分とに分断するように前記セラミック素体の前記第1端面又は前記第2端面
内の前記中間セラミック層を露出させ、前記第1端面又は前記第2端面上において、前記第1領域と前記第1軸方向に隣接して配置された第2領域と、を有する
回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品及びそれを実装した回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴って、積層セラミック電子部品の低背化が求められている。特許文献1には、セラミック本体と、セラミック本体に配置された複数の第1及び第2内部電極と、第1及び第2内部電極とそれぞれ電気的に接続された第1及び第2外部電極と、を含む、低背型の積層セラミックコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層セラミックコンデンサは、例えば、外部電極が基板にはんだ付けされることで、基板に実装される。この際、はんだが外部電極の高さ方向に濡れ上がり、外部電極の周縁部に達することがあった。これにより、はんだを含めた高さ寸法が積層セラミック電子部品の高さ寸法よりも大きくなり、実装スペースが増加することがあった。さらに、セラミック本体(セラミック素体)の高さ及び内部電極の積層数が規制され、高容量化等の高機能化が妨げられていた。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、省スペースに実装でき、かつ高機能化が可能な積層セラミック電子部品及びそれを実装した回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、第1外部電極と、第2外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、第1軸方向にセラミック層を挟んで第1内部電極及び第2内部電極が交互に積層された第1容量形成領域及び第2容量形成領域と、上記セラミック層より厚く、上記第1軸方向において上記第1容量形成領域及び上記第2容量形成領域に挟まれるように隣接して積層された中間セラミック層と、上記第1軸方向を向いた第1主面及び第2主面と、上記第1軸と直交する第2軸方向を向き上記第1内部電極が引き出された第1端面と、上記第2軸方向を向き上記第2内部電極が引き出された第2端面と、上記第1軸及び上記第2軸と直交する第3軸方向に向いた側面と、を有する。
上記第1外部電極は、上記第1端面を覆い、上記第1主面及び上記側面まで延出する。
上記第2外部電極は、上記第2端面を覆い、上記第1主面、及び上記側面まで延出する。
上記第1外部電極及び上記第2外部電極各々は、
錫を主成分とする最外層を含み、上記第1端面又は上記第2端面から上記第1主面及び上記側面まで延出する第1領域と、
上記第1端面又は上記第2端面上の上記第1領域を上記第3軸方向に沿って、上記第1容量形成領域を覆う部分と上記第2容量形成領域を覆う部分とに分断するように上記セラミック素体の上記第1端面又は上記第2端面内の上記中間セラミック層を露出させ、上記第1領域と上記第1端面又は上記第2端面上において上記第1軸方向に隣接して配置された第2領域と、を有する。
【0007】
上記構成では、第1領域がはんだと反応し易い錫を主成分とする最外層を含み、第1端面又は第2端面から第1主面まで延出するように配置される。これにより、実装時に、第1主面と実装基板とを対向して配置することで、第1主面近傍においてはんだと最外層とを十分に反応させることができ、はんだと第1及び第2外部電極を確実に接合させることができる。また、上記構成では、錫を主成分とする最外層を含まない第2領域が、第1領域と第1軸方向に隣接して配置される。これにより、第2領域において第1軸方向に沿ったはんだの濡れ上がりを抑制でき、第2主面上へはんだが到達することを抑制できる。したがって、実装後において、はんだを含む積層セラミック電子部品の第1軸方向の高さ寸法を規制することができ、積層セラミック電子部品を省スペースに実装できる。さらに、実装スペースに対してセラミック素体の第1軸方向の高さ寸法を十分に確保することができ、実装スペースを最大限に活用して、積層セラミック電子部品の高機能化を実現することができる。
【0014】
本発明の他の形態に係る回路基板は、実装基板と、積層セラミック電子部品と、はんだと、を具備する。
上記積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、第1外部電極と、第2外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、第1軸方向にセラミック層を挟んで第1内部電極及び第2内部電極が交互に積層された第1容量形成領域及び第2容量形成領域と、上記セラミック層より厚く、上記第1軸方向において上記第1容量形成領域及び上記第2容量形成領域に挟まれるように隣接して積層された中間セラミック層と、上記第1軸方向を向いた第1主面及び第2主面と、上記第1軸と直交する第2軸方向を向き上記第1内部電極が引き出された第1端面と、上記第2軸方向を向き上記第2内部電極が引き出された第2端面と、上記第1軸及び上記第2軸と直交する第3軸方向に向いた側面と、を有する。
上記第1外部電極は、上記第1端面を覆い、上記第1主面及び上記側面まで延出する。
上記第2外部電極は、上記第2端面を覆い、上記第1主面及び上記側面まで延出する。
上記はんだは、上記第1外部電極及び上記第2外部電極と上記実装基板とを接続する。
上記第1外部電極及び上記第2外部電極各々は、
錫を主成分とする最外層を含み、上記第1端面又は上記第2端面から上記第1主面及び上記側面まで延出する第1領域と、
上記第1端面又は上記第2端面上の上記第1領域を上記第3軸方向に沿って、上記第1容量形成領域を覆う部分と上記第2容量形成領域を覆う部分とに分断するように上記セラミック素体の上記第1端面又は上記第2端面内の上記中間セラミック層を露出させ、上記第1端面又は上記第2端面上において、上記第1領域と上記第1軸方向に隣接して配置された第2領域と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、省スペースに実装でき、かつ高機能化が可能な積層セラミック電子部品及びそれを実装した回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミック電子部品を模式的に示す斜視図である。
【
図2】上記積層セラミック電子部品のA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミック電子部品のB-B'線に沿った断面図である。
【
図5】上記積層セラミック電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】上記積層セラミック電子部品の製造過程を示す斜視図である。
【
図7】上記積層セラミック電子部品を実装した回路基板を示す模式的な断面図である。
【
図8】上記第1実施形態の比較例に係る積層セラミック電子部品を実装した回路基板を示す模式的な断面図である。
【
図11】上記積層セラミック電子部品の変形例を示す、
図7に対応する拡大断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【
図15】上記積層セラミック電子部品を実装した回路基板を示す模式的な断面図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【
図19】上記積層セラミック電子部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図20】上記積層セラミック電子部品の製造過程を示す斜視図である。
【
図21】上記積層セラミック電子部品を実装した回路基板を示す模式的な断面図である。
【
図22】本発明の第4実施形態に係る積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【
図25】上記積層セラミック電子部品を実装した回路基板を示す模式的な断面図である。
【
図26】本発明の第5実施形態に係る積層セラミック電子部品を示す側面図である。
【
図27】本発明の第6実施形態に係る回路基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0018】
<第1の実施形態>
[積層セラミックコンデンサの全体構成]
図1~3は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0019】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。外部電極14,15はそれぞれ、セラミック素体11の表面に形成されている。
【0020】
セラミック素体11は、略直方体形状を有する。つまり、セラミック素体11は、X軸方向を向いた一対の端面11a,11bと、Y軸方向を向いた一対の側面11c,11dと、Z軸方向を向いた一対の主面11e,11fと、を含む。端面11a,11bは、Y軸方向及びZ軸方向に沿って延びる。側面11c,11dは、Z軸方向及びX軸方向に沿って延びる。主面11e,11fは、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる。
【0021】
セラミック素体11の端面11a,11b、側面11c,11d、及び主面11e,11fはいずれも、平坦面として構成される。本実施形態に係る平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、所定の範囲に存在する緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。
【0022】
セラミック素体11は、例えば各面を接続する稜部を含む。第1主面11eと、第1端面11a又は第2端面11bと、を接続する稜部を、第1稜部11gとする。第2主面11fと、第1端面11a又は第2端面11bと、を接続する稜部を、第2稜部11hとする。各稜部は、例えば面取りされていてもよい。
【0023】
積層セラミックコンデンサ10のサイズとしては、例えばX軸方向の寸法が0.2mm~2.0mm、Y軸方向の寸法が0.2mm~2.0mmである。積層セラミックコンデンサ10は、X軸方向及びY軸方向のどちらに長手を有していてもよく、
図1~3に示す例では、Y軸方向に長手を有している。積層セラミックコンデンサ10のZ軸方向の寸法は、例えば100μm以下であり、低背型に構成されている。なお、積層セラミックコンデンサ10の各寸法は、各方向に沿って最も大きい部分の寸法とする。
【0024】
セラミック素体11は、容量形成部111と、カバー部112と、サイドマージン部113と、を有する。容量形成部111は、セラミック素体11のY軸及びZ軸方向における中央部に配置されている。カバー部112は容量形成部111をZ軸方向から覆い、サイドマージン部113は容量形成部111をY軸方向から覆っている。
【0025】
より詳細に、カバー部112は、容量形成部111のZ軸方向両側にそれぞれ配置されている。サイドマージン部113は、容量形成部111のY軸方向両側にそれぞれ配置されている。カバー部112及びサイドマージン部113は、主に、容量形成部111を保護するとともに、容量形成部111の周囲の絶縁性を確保する機能を有する。
【0026】
容量形成部111は、複数の第1内部電極12と、複数の第2内部電極13と、がセラミック層16(
図3参照)を介してZ軸方向に交互に積層されている。内部電極12,13は、いずれもX軸方向及びY軸方向に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。
【0027】
内部電極12,13はそれぞれ、電気の良導体により形成される。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金が用いられる。なお、主成分とは、組成比で50%以上を占める成分のことを言うものとする。
【0028】
図2に示すように、第1内部電極12は、セラミック素体11の第1端面11aに引き出され、第1外部電極14に接続されている。第2内部電極13は、セラミック素体11の第2端面11bに引き出され、第2外部電極15に接続されている。これにより、内部電極12,13がそれぞれ異なる外部電極14,15と導通している。
【0029】
セラミック層16は、誘電体セラミックスによって形成されている。積層セラミックコンデンサ10では、内部電極12,13間の各セラミック層16の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0030】
また、上記誘電体セラミックスは、チタン酸バリウム系以外にも、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)系、酸化チタン(TiO2)系などであってもよい。
【0031】
カバー部112及びサイドマージン部113も、誘電体セラミックスによって形成されている。カバー部112及びサイドマージン部113を形成する材料は、絶縁性セラミックスであればよいが、容量形成部111と同様の組成系の材料を用いることにより、製造効率が向上するとともに、セラミック素体11における内部応力が抑制される。
【0032】
上記の構成により、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15の間に電圧が印加されると、容量形成部111において内部電極12,13の間の複数のセラミック層16に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14、15の間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0033】
[外部電極の構成]
図2に示すように、第1外部電極14は、第1端面11aを覆い、少なくとも第1主面11eまで延出している。本実施形態において、第1外部電極14は、第1端面11aを覆い、両主面11e,11f及び両側面11c,11dまで延出している。第2外部電極15は、第2端面11bを覆い、少なくとも第1主面11eまで延出している。本実施形態において、第2外部電極15は、第2端面11bを覆い、両主面11e,11f及び両側面11c,11dまで延出している。
【0034】
各外部電極14,15は、第1端面11a又は第2端面11bから第1主面11eまで延出する第1領域17と、第1領域17と端面11a,11b上においてZ軸方向に隣接して配置された第2領域18と、を有する。「第2領域18が第1領域17と隣接する」とは、後述する例に示すように、第2領域18の周囲が第1領域17に取り囲まれている態様も含むものとする。
【0035】
第2領域18は、本実施形態において、外部電極14,15のZ軸方向における中央部に配置される。「外部電極14,15のZ軸方向における中央部」は、外部電極14,15をZ軸方向に3等分した場合の中央の領域を意味する。第2領域18は、Y軸方向に沿って延びる帯状(溝状)に構成される。第2領域18は、少なくとも端面11a,11b上の領域に形成されればよく、本実施形態においては、端面11a,11b上の領域から両側面11c,11d上の領域まで延出している。
【0036】
各外部電極14,15は、本実施形態において、第2領域18を挟んでZ軸方向に並んで配置された2つの第1領域17を有する。2つの第1領域17は、例えば、第2領域18によって完全に分断されている。
【0037】
本実施形態において、これらの第1領域17は、第1端面11a又は第2端面11bから第1主面11e及び第2主面11fまで延出している。より詳細に、一方の第1領域17は、外部電極14,15のZ軸方向における中央部から第1稜部11gを通って第1主面11eまで延出している。他方の第1領域17は、外部電極14,15のZ軸方向における中央部から第2稜部11hを通って第2主面11fまで延出している。
【0038】
本実施形態では、第2領域18が、第1領域17よりも薄く形成され、第1領域17から陥凹した構成を有する。第2領域18は、後述するように、はんだの濡れ上がりを規制する領域として構成される。
【0039】
図4は、
図2の一部を示す拡大図である。なお、外部電極14,15の構成は同様であるため、
図4では第2外部電極15の図示を省略している。
【0040】
第1領域17は、本実施形態において、第1内層171と、第1最外層172と、を含む。第1内層171は、セラミック素体11上に配置される。第1最外層172は、錫を主成分とし、第1内層171上に配置される。
【0041】
第1内層171は、1又は複数の層を含み、本実施形態では、複数の層を含んでいる。第1内層171は、例えば、セラミック素体11上に配置された第1層171aと、第1層171a上に配置された第2層171bと、を含む。第1層171aは、1又は複数の層を含み、例えば、メッキ下地膜と、メッキ膜と、を含んでいる。第2層171bは、第1内層171における最外層を構成し、例えばメッキ膜で構成される。
【0042】
第1層171aのメッキ下地膜は、例えばディップ法、印刷法などにより導電性ペーストを塗布し、焼き付けることにより形成される。メッキ下地膜は、銅、ニッケル、パラジウム、白金、銀、金等を主成分とすることができる。
【0043】
第1層171aのメッキ膜は、例えば錫以外の、銅、ニッケル、白金、パラジウム、銀、金などを主成分とすることができる。なお、第1層171aのメッキ膜は、省略されてもよい。
【0044】
第2層171bは、例えば錫以外の、銅、ニッケル、白金、パラジウム、銀、金などを主成分とするメッキ膜である。一例として、第2層171bは、ニッケルを主成分とするニッケルメッキ膜である。
【0045】
第1最外層172は、本実施形態において、錫を主成分とする錫メッキ膜として構成される。第1最外層172は、外部電極14のZ軸方向における中央部において上下に分断されている。
【0046】
第2領域18は、本実施形態において、セラミック素体11上に配置された第2内層181と、第2内層181上に配置された第2最外層182と、を含む。本実施形態の第2領域18は、第1領域17の第1内層171と共通の層構造を有する。
【0047】
第2内層181は、例えば、第1領域17の第1層171aと共通の層構造を有する。すなわち、第2内層181は、1又は複数の層を含み、例えば、セラミック素体11上に配置されたメッキ下地膜と、メッキ下地膜上に配置されたメッキ膜と、を含んでいる。当該メッキ下地膜は、第1層171aのメッキ下地膜と連続した層を構成する。当該メッキ膜は、第1層171aのメッキ膜と連続した層を構成する。なお、第2内層181のメッキ膜は、省略されてもよい。
【0048】
第2最外層182は、錫を主成分としない。なお、「ある層が錫を主成分としない」とは、当該層における錫の組成比が5%以下であることを意味する。第2最外層182は、例えば錫以外の、銅、ニッケル、白金、パラジウム、銀、金などを主成分とする。一例として、第2最外層182は、ニッケルを主成分とするニッケルメッキ膜である。第2最外層182は、本実施形態において、第1内層171の少なくとも一部と連続して形成され、具体的には、第1内層171の第2層171bと連続して形成される。つまり、第2最外層182は、第2層171bと連続した一つの層を構成する。
【0049】
以下、上記構成の積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明する。
【0050】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図5は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図6は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図5に沿って、
図6を適宜参照しながら説明する。
【0051】
(ステップS11:セラミック素体作製)
ステップS11では、容量形成部111を形成するための第1セラミックシートS1及び第2セラミックシートS2と、カバー部112を形成するための第3セラミックシートS3と、を準備する。そして、
図6に示すように、これらのセラミックシートS1,S2,S3を積層して焼成し、セラミック素体11を作製する。
【0052】
セラミックシートS1,S2,S3は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。
第1セラミックシートS1には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極12uが形成され、第2セラミックシートS2には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極13uが形成されている。セラミックシートS1,S2において、内部電極12u,13uのY軸方向周縁には、内部電極12u,13uが形成されていない、サイドマージン部113に対応する領域が設けられている。第3セラミックシートS3には内部電極が形成されていない。
【0053】
図6に示す未焼成のセラミック素体11uでは、セラミックシートS1,S2が交互に積層され、そのZ軸方向上下面にカバー部112に対応する第3セラミックシートS3が積層される。未焼成のセラミック素体11uは、セラミックシートS1,S2,S3を圧着することにより一体化される。なお、セラミックシートS1,S2,S3の枚数は
図6に示す例に限定されない。
【0054】
なお、以上では1つのセラミック素体11に相当する未焼成のセラミック素体11uについて説明したが、実際には、個片化されていない大判のシートとして構成された積層シートが形成され、セラミック素体11uごとに個片化される。
【0055】
未焼成のセラミック素体11uを焼結させることにより、
図1~3に示すセラミック素体11が作製される。焼成温度は、セラミック素体11uの焼結温度に基づいて決定可能である。例えば、誘電体セラミックスとしてチタン酸バリウム系材料を用いる場合には、焼成温度を1000~1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0056】
(ステップS12:外部電極形成)
ステップS12では、第1領域17及び第2領域18を有する外部電極14,15を形成する。本実施形態の外部電極14,15は、第1領域17及び第2領域18に共通する層を形成した後、第1領域17の第1最外層172を形成する。
【0057】
まず、端面11a,11b上に、第1領域17の第1層171aと第2領域の第2内層181とに共通するメッキ下地膜を形成する。メッキ下地膜は、例えば第1端面11a又は第2端面11bから両主面11e,11f及び両側面11c,11dまで延出するように設けられる。メッキ下地膜は、例えばディップ法、印刷法などにより導電性ペーストを塗布し、焼き付けることにより形成される。
【0058】
続いて、メッキ下地膜の全体にわたって、1又は複数のメッキ膜を形成する。各メッキ膜は、錫以外の、銅、ニッケル、白金、パラジウム、銀、金などを主成分とし、例えば電解メッキ法により形成される。当該メッキ膜の最外層は、第1領域17の第1内層171の第2層171bと、第2領域18の第2最外層182とを構成する層であり、例えばニッケルメッキ膜で形成される。
【0059】
そして、第1領域17の第2層171b上に、錫を主成分とする錫メッキ膜を形成する。この錫メッキ膜は、第1最外層172を構成する。錫メッキ膜は、例えば電解メッキ法により形成される。錫メッキ膜の形成前には、例えば、第2領域18の第2最外層182に、錫メッキ膜が形成されない処理を行う。これにより、第1領域17の第2層171b上のみに錫メッキ膜が形成される。
【0060】
錫メッキ膜が形成されない処理としては、例えば、第1領域17の第2層171b上にマスクを形成し、第2領域18の第2最外層182を酸化させる酸化処理を行ってもよい。酸化処理は、自然酸化でもよいし、酸素雰囲気下におけるプラズマ処理でもよい。酸化処理された第2最外層182には、錫メッキ膜が形成されない。このため、酸化処理後に上記マスクを除去して錫メッキ処理を行うことで、第1領域17の第2層171b上のみに錫メッキ膜が形成される。
【0061】
あるいは、錫メッキ膜が形成されない処理として、第2領域18の第2最外層182上にマスクを形成してもよい。マスクが形成された領域には、錫メッキ膜が形成されない。このため、マスクの形成後に錫メッキ処理を行うことで、第1領域17に対応する領域のみに、錫メッキ膜が形成される。当該マスクは、錫メッキ膜の形成後、除去され得る。
【0062】
以上の工程により、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10が製造される。
さらに、積層セラミックコンデンサ10は、外部電極14,15がはんだ付けされることによって基板に実装される。
【0063】
[回路基板の構成]
図7は、本実施形態の回路基板100を示す図であり、
図2に対応する断面図である。
【0064】
図7に示すように、回路基板100は、第1基板(実装基板)101と、積層セラミックコンデンサ10と、外部電極14、15と第1基板101とを接続するはんだHと、を備える。さらに、
図7に示す回路基板100は、第2基板102と、第1基板101及び第2基板102を接続する接続部材Cと、を備える。
【0065】
第1基板101は、積層セラミックコンデンサ10を実装する実装基板として構成される。第1基板101は、実装面103aを含む基板本体103と、実装面103aに配置された部品実装用ランド104と、実装面103aに配置された基板接続用ランド105と、実装面103aにおけるランド104,105の周囲に配置されたソルダーレジスト106と、を含む。基板本体103には、図示しない回路が形成される。実装面103aは、本実施形態において、Z軸方向に直交するように配置される。ランド104,105は、実装面103a上の接続端子として構成される。ソルダーレジスト106は、絶縁性の樹脂皮膜として構成される。
【0066】
第2基板102は、第1基板101に対してZ軸方向に対向して配置された基板として用いられる。第2基板102は、実装面103aと対向する対向面107aを含む基板本体107と、対向面107aに配置された基板接続用ランド108と、対向面107aにおける基板接続用ランド108の周囲に配置されたソルダーレジスト109と、を含む。基板本体107には、図示しない回路が形成される。対向面107aは、本実施形態において、実装面103aとZ軸方向に対向し、例えばZ軸方向に直交するように配置される。基板接続用ランド108は、対向面107a上の接続端子として構成される。ソルダーレジスト109は、絶縁性の樹脂皮膜として構成される。
【0067】
接続部材Cは、本実施形態において、ボール状のはんだとして構成される。接続部材Cは、第1基板101の基板接続用ランド105と、第2基板102の基板接続用ランド108とを接続し、実装面103a及び対向面107aの間にZ軸方向における間隙を形成する。
【0068】
回路基板100は、以下のように製造される。まず、第1基板101上の部品実装用ランド104にはんだペーストが塗布され、当該はんだペースト上に積層セラミックコンデンサ10が配置される。これにより、外部電極14,15の主面11e上の面がはんだペーストに接した状態となる。なお、典型的には、はんだ付け時において、第1基板101の実装面103aが鉛直方向上方を向くように配置される。
【0069】
続いて、基板接続用ランド105にはんだペーストが塗布される。そして、基板接続用ランド105上のはんだペーストが第2基板102の基板接続用ランド108と接触するように、第2基板102が配置される。これにより、第2基板102が第1基板101と対向して配置される。この状態でリフロー炉において加熱され、ランド104,105上のはんだペーストが加熱されて溶融する。
【0070】
はんだペーストの溶融に伴い、積層セラミックコンデンサ10が部品実装用ランド104側に沈み込む。これにより、部品実装用ランド104上のはんだペーストは、外部電極14,15の第1主面11e上の面から端面11a,11b上の面に濡れ上がる。その後、当該はんだペーストが冷却されて固化することで、外部電極14,15と第1基板101とを接続するはんだHが形成される。同様に、基板接続用ランド105上のはんだペーストも溶融した後固化し、第1基板101及び第2基板102の基板接続用ランド105,108を接続する接続部材Cが形成される。
【0071】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、
図4に示すように、第1稜部11gを覆うように配置された第1領域17が、錫を主成分とする第1最外層172を含む。実装時には、はんだペーストが、第1稜部11gから第2稜部11hに向かって第1最外層172上を濡れ上がる。第1最外層172は、錫を主成分とするため、はんだペーストと反応して溶融し、はんだHが固化した際にはんだHと十分に接合される。したがって、第1最外層172を含む第1領域17により、はんだHとの接合信頼性を十分に確保することができる。
【0072】
一方で、本実施形態の外部電極14,15は、第1領域17と端面11a,11b上においてZ軸方向に隣接して配置される第2領域18を有する。第2領域18は、錫を主成分とする最外層を含まず、はんだHとの反応が抑制される。これにより、第2領域18においてはんだペーストの濡れ上がりを抑制することができ、第2稜部11hへのはんだペーストが到達することを防止することができる。したがって、実装後において、はんだHが外部電極14,15の第2主面11f上の領域に形成されることを防止することができる。
【0073】
図8は、本実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサ20を実装した回路基板200を示す模式的な断面図である。
図8に示すように、積層セラミックコンデンサ20は、第2領域を有さない外部電極24,25を備える。つまり、外部電極24,25全体が、本実施形態の第1領域17と同様に構成され、錫を主成分とする第1最外層272と、第1内層271とを含む。
【0074】
図9は、
図8の一部を示す拡大図である。
積層セラミックコンデンサ20では、実装時に、第1稜部11gから第2稜部11hに向かってはんだペーストが濡れ上がり、はんだペーストが外部電極24,25の第2主面11f上の面まで到達し得る。特に、積層セラミックコンデンサ20が低背型の場合、Z軸方向における高さ寸法が小さいため、はんだペーストが第2主面11f上の面まで容易に到達する。
【0075】
図9に示すように、積層セラミックコンデンサ20のZ軸方向における高さ寸法を、部品高さ寸法t'1とする。はんだHのZ軸方向における高さ寸法を、はんだ高さ寸法t'2とする。この例では、外部電極24,25の第2主面11f上の面にはんだHが形成されているため、はんだ高さ寸法t'2が、部品高さ寸法t'1よりもZ軸方向に厚みt'3だけ大きくなる。このため、はんだHによって実装された積層セラミックコンデンサ20の実質的な高さ寸法は、実際の部品高さ寸法t'1よりも厚みt'3だけ大きい、はんだ高さ寸法t'2となる。
【0076】
このため、回路基板200では、部品高さ寸法t'1よりも大きいはんだ高さ寸法t'2を考慮して第1基板101と第2基板102との対向距離を設定する必要がある。これにより、回路基板200全体の厚みを低減することが難しくなり、回路基板200が搭載される電子機器の小型化が妨げられるおそれがある。
【0077】
また、外部電極24,25の第2主面11f上の面におけるはんだHが、第2基板102のソルダーレジスト109等の構造物と接触しやすい。このため、積層セラミックコンデンサ20に外的な衝撃が付加されて、クラック等の損傷が生じる恐れもある。
【0078】
さらに、第1基板101と第2基板102との対向距離が規定されている場合、積層セラミックコンデンサ20のはんだ高さ寸法t'2を当該対向距離以下に設定する必要がある。このため、はんだHの厚みt'3の分だけ部品高さ寸法t'1を小さく設定する必要がある。これにより、セラミック素体11の高さ寸法を制限せざるを得ず、積層セラミックコンデンサ20の内部電極12,13の積層数が制限され、高容量化が難しくなる。これに伴って、各セラミック層16の厚みも狭小化し、バイアス特性の低下や、信頼性の低下といった問題も生じ得る。
【0079】
一方、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15がはんだHの濡れ上がりを規制する第2領域18を有する。これにより、はんだHが外部電極14,15の第2主面11f上の面まで到達することを抑制できる。
【0080】
図10は、
図7の一部を示す拡大図である。
図10に示すように、積層セラミックコンデンサ10のZ軸方向における高さ寸法を、部品高さ寸法t1とする。はんだHのZ軸方向における高さ寸法を、はんだ高さ寸法t2とする。本実施形態では、第2領域18によるはんだの濡れ上がり抑制作用によって、はんだHが第2主面11f上の面まで到達しない。このため、はんだ高さ寸法t2が、部品高さ寸法t1よりも小さくなる。つまり、はんだHによって実装された場合でも、積層セラミックコンデンサ10の実質的な高さ寸法は、実際の部品高さ寸法t1に一致する。
【0081】
このため、回路基板100では、部品高さ寸法t1のみを考慮して第1基板101と第2基板102との対向距離を設定することができる。これにより、回路基板100のZ軸方向における厚みを低減でき、回路基板100が搭載される電子機器の小型化に貢献することができる。
【0082】
また、回路基板100には、積層セラミックコンデンサ10の実質的な高さ寸法を増加させるはんだHが存在しない。このため、第1基板101及び第2基板102の対向距離が狭くなった場合でも、積層セラミックコンデンサ10が第2基板102の構造物と接触することを抑制でき、積層セラミックコンデンサ10の損傷を防止することができる。
【0083】
さらに、第1基板101と第2基板102との対向距離が規定されている場合でも、はんだHの厚みt'3を考慮せずに、積層セラミックコンデンサ10の部品高さ寸法t1を、当該対向距離に応じて十分に確保することができる。これにより、積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11の高さ寸法を十分に確保することができる。したがって、内部電極12,13の積層数を増加させることができ、高容量化を実現できる。また、セラミック層16の厚みの狭小化に伴うバイアス特性の低下や、信頼性の低下も抑制することができる。
【0084】
さらに、積層セラミックコンデンサ10の部品高さ寸法t1を十分に確保することができるため、積層セラミックコンデンサ10の抗折強度を十分に確保することができる。積層セラミックコンデンサの抗折強度とは、積層セラミックコンデンサのX軸方向両端部又はY軸方向両端部を架台等によってZ軸方向に支持し、積層セラミックコンデンサ10のX-Y平面内における中央部を押圧子によってZ軸方向下方に押圧することにより測定される強度である。当該抗折強度の値は、積層セラミックコンデンサに損傷が生じた場合の、押圧子に付加された荷重の大きさの値とすることができる。実際に、回路基板100,200における第1基板101と第2基板102の対向距離を同一に設定した場合、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10の抗折強度は、比較例に係る積層セラミックコンデンサ20の抗折強度の1.4倍程度に増加した。
【0085】
つまり、積層セラミックコンデンサ10では、低背型であっても、機械的強度を高めることができる。したがって、実装後の基板撓みや外部からの衝撃等に対しても、信頼性の高い構成とすることができる。
【0086】
また、本実施形態では、第2領域18がY軸方向に延びるように構成される。これにより、第2領域18が、外部電極14,15の端面11a,11b側の領域をZ軸方向へ濡れ上がるはんだと広い範囲で接することができ、はんだの濡れ上がりをより効果的に抑制することができる。さらに、第2領域18によって第1領域17が完全に分断されていることで、はんだのZ軸方向への濡れ上がりをより確実に抑制することができる。
【0087】
加えて、本実施形態では、第2領域18が外部電極14,15のZ軸方向における中央部に配置され、第1領域17が、第1端面11a又は第2端面11bから両主面11e,11fまで延出している。これにより、第1主面11eを第1基板101に対向させて実装した場合と、第2主面11fを第1基板101に対向させて実装した場合と、のいずれの場合においても、上記作用効果を得ることができる。これにより、積層セラミックコンデンサ10における実装姿勢の自由度を高め、実装時における取り扱い性を高めることができる。
【0088】
[変形例]
第1領域17及び第2領域18の各層は、上述の例の他にも、種々の構成を採り得る。
【0089】
例えば、第2領域18の第2内層181が、第1領域17の第1層171aに含まれるメッキ下地膜と連続する層で構成され、第2最外層182が、第1領域17の第1層171aに含まれるメッキ膜と連続する層で構成されてもよい。
【0090】
あるいは、
図11に示すように、第2領域18は、第2最外層182を有し、第2内層を有していなくてもよい。例えば、第2最外層182は、メッキ下地膜として構成される導電性ペーストの焼き付け膜でもよく、第1領域17の第1層171aのメッキ下地膜と連続して形成されてもよい。この場合、第1領域17において、第1内層171の第1層171aはメッキ下地膜として構成され、第2層171bは、錫を主成分としない1又は複数のメッキ膜として構成され得る。
【0091】
<第2実施形態>
[積層セラミックコンデンサの構成]
図12は、本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ30を示す斜視図である。
図13は、
図12のC-C'線に沿った断面図である。なお、
図3に対応するY-Z平面に平行に切断した断面については、第1実施形態と同様であるため、図示を省略する。
また、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
積層セラミックコンデンサ30は、セラミック素体11と、第1外部電極34と、第2外部電極35と、を備える。第1外部電極34は、本実施形態において、第1端面11aを覆い、両主面11e,11f及び両側面11c,11dまで延出している。第2外部電極35は、本実施形態において、第2端面11bを覆い、両主面11e,11f及び両側面11c,11dまで延出している。
【0093】
各外部電極34,35は、第1稜部11g及び第2稜部11hを覆う第1領域37と、第1領域37とZ軸方向に隣接して配置された第2領域38と、を有する。
【0094】
第2領域38は、本実施形態において、外部電極34、35のZ軸方向における中央部に配置される。第2領域38は、Y軸方向に沿って延びる帯状に構成される。第2領域38は、例えば、端面11a,11b上の領域に形成されている。本実施形態では、第2領域38が第1領域37から突出した構成を有する。
【0095】
第1領域37は、端面11a,11bから両主面11e,11f及び両側面11c,11d上の領域まで延出している。第1領域37は、本実施形態において、端面11a,11b上の領域のみ、第2領域38によってZ軸方向上下に分断されている。第1領域37は、第1稜部11g及び第2稜部11hの双方を覆っている。
【0096】
図14は、
図13の一部を示す拡大図である。なお、外部電極34,35の構成は同様であるため、
図14では第2外部電極35の図示を省略している。
【0097】
第1領域37は、本実施形態において、第1内層371と、錫を主成分とする第1最外層372と、を含む。
【0098】
第1内層371は、セラミック素体11上に配置される。第1内層371は、1又は複数の層を含み、本実施形態では、複数の層を含んでいる。第1内層371は、第1実施形態の第1内層171と同様に、メッキ下地膜と、1又は複数のメッキ膜と、を含む。
【0099】
第1最外層372は、第1内層371上に配置される。第1最外層372は、第1実施形態の第1最外層172と同様に、錫を主成分とする錫メッキ膜として構成される。
【0100】
第2領域38は、本実施形態において、第2内層381と、錫含有層382と、錫を主成分としない第2最外層383と、を含む。
【0101】
第2内層381は、セラミック素体11上に配置され、第1領域37の第1内層371と共通の層構造を有する。すなわち、第2内層381は、1又は複数の層を含み、例えば、メッキ下地膜と、1又は複数のメッキ膜と、を含んでいる。
【0102】
錫含有層382は、錫を主成分とし第2内層381上に配置される。錫含有層382は、第1最外層372と連続して形成され、錫を主成分とする錫メッキ膜として構成される。
【0103】
第2最外層383は、はんだと反応性の高い錫を主成分としない。このため、第2領域38は、はんだの濡れ上がりを規制する領域として構成される。第2最外層383は、錫以外を主成分としていれば組成は特に限定されず、例えば錫以外の金、白金等の金属、酸化銅等の金属酸化物、セラミックス、ダイアモンドライクカーボン等を主成分とすることができる。
【0104】
第2最外層383の形成方法は、特に限定されず、その組成に応じて、スパッタリング法、蒸着法、印刷法等の方法が適宜選択される。第2最外層383は、例えば、第1領域37の第1最外層372上にマスクを形成した後、上記方法により形成される。当該マスクは、例えば第2最外層383が形成された後に除去される。
【0105】
[回路基板の構成]
図15は、本実施形態の回路基板300を示す図であり、
図13に対応する断面図である。
【0106】
図15に示すように、回路基板300は、第1基板(実装基板)101と、積層セラミックコンデンサ30と、外部電極34、35と第1基板101とを接続するはんだHと、を備える。さらに、
図15に示す回路基板300は、第2基板102と、第1基板101及び第2基板102を接続する接続部材Cと、を備える。はんだHは、積層セラミックコンデンサ30の外部電極34,35の第1領域37から第2領域38に達するまで形成される。
【0107】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態においても、外部電極34,35が第2領域38を有するため、外部電極34,35上におけるはんだの濡れ上がりが規制される。これにより、はんだ高さ寸法を低減でき、回路基板300における積層セラミックコンデンサ30の実質的な高さ寸法を規制できる。したがって、積層セラミックコンデンサ30の実装スペースを削減できるとともに、回路基板300及びそれが実装される電子機器の小型化に貢献できる。また、各積層セラミックコンデンサ30の実質的な高さ寸法を規制できるため、回路基板300における、積層セラミックコンデンサ30と他の構造物との接触を抑制でき、積層セラミックコンデンサ30の損傷を防止できる。さらに、セラミック素体11の高さ寸法を十分に確保できることから、積層セラミックコンデンサ30の高容量化やバイアス特性の向上に寄与できるとともに、積層セラミックコンデンサ30の機械的強度を十分に確保することができる。
【0108】
加えて、第2領域38がY軸方向に延びるように構成されることで、はんだのZ軸方向への濡れ上がりを効果的に抑制することができる。また、第2領域38が外部電極34,35のZ軸方向における中央部に配置され、第1領域37が両主面11e,11fまで延出していることで、積層セラミックコンデンサ30における実装姿勢の自由度を高めることができる。
【0109】
<第3実施形態>
[積層セラミックコンデンサの構成]
図16は、本発明の第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサ40を示す斜視図である。
図17は、
図16のD-D'線に沿った断面図である。
【0110】
積層セラミックコンデンサ40は、セラミック素体41と、第1外部電極44と、第2外部電極45と、を備える。第1外部電極44は、本実施形態において、第1端面41aを覆い、両主面41e,41f及び両側面41c,41dまで延出している。第2外部電極45は、本実施形態において、第2端面41bを覆い、両主面41e,41f及び両側面41c,41dまで延出している。
【0111】
セラミック素体41は、容量形成部411と、カバー部412と、サイドマージン部(図示せず)と、を有する。カバー部412は、容量形成部411のZ軸方向両側にそれぞれ配置されている。サイドマージン部は、容量形成部411のY軸方向両側にそれぞれ配置されている。
【0112】
容量形成部411は、第1容量形成領域411aと、第2容量形成領域411bと、中間セラミック層46cと、を含む。第1容量形成領域411aは、第1セラミック層46aを介してZ軸方向に交互に積層された第1内部電極12及び第2内部電極13を含む。第2容量形成領域411bは、第2セラミック層46bを介してZ軸方向に交互に積層された第1内部電極12及び第2内部電極13を含む。第2容量形成領域411bは、中間セラミック層46cを介して第1容量形成領域411aとZ軸方向に接続される。中間セラミック層46cは、第1セラミック層46a及び第2セラミック層46bよりもZ軸方向における厚み寸法が厚く構成される。
【0113】
各外部電極44,45は、稜部41g,41hを覆う第1領域47と、第1領域47とZ軸方向に隣接して配置された第2領域48と、を有する。本実施形態では、第2領域48が、電極を構成する導電体層を有していない。
【0114】
第2領域48は、本実施形態において、外部電極44、45のZ軸方向における中央部に配置され、例えば、中間セラミック層46cの周縁に配置される。第2領域48は、Y軸方向に沿って延びる帯状(溝状)に構成される。第2領域48は、例えば、端面41a,41b上の領域に形成されている。
【0115】
第1領域47は、端面41a,41b上の領域から両主面41e,41f及び両側面41c,41d上の領域まで延出している。第1領域47は、本実施形態において、端面41a,41b上の領域のみ、第2領域48によってZ軸方向上下に分断されている。
【0116】
図18は、
図17の一部を示す拡大図である。なお、外部電極44,45の構成は同様であるため、
図18では第2外部電極45の図示を省略している。
【0117】
第1領域47は、本実施形態において、第1内層471と、第1最外層472と、を含む。
【0118】
第1内層471は、セラミック素体41上に配置される。第1内層471は、1又は複数の層を含む。第1内層471は、本実施形態では、第1実施形態の第1内層171と同様に、メッキ下地膜と、1又は複数のメッキ膜と、を含む。
【0119】
第1最外層472は、錫を主成分とし、第1内層471上に配置される。第1最外層472は、第1実施形態の第1最外層172と同様に、錫を主成分とする錫メッキ膜として構成される。
【0120】
第2領域48は、錫を主成分とする最外層を含まず、本実施形態において、電極層を含まない。つまり、本実施形態の第2領域48からは、セラミック素体41の端面41a,41bが露出している。このため、第2領域48は、はんだとの反応性が低く、はんだの濡れ上がりを規制する領域として構成される。
【0121】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
図19は、積層セラミックコンデンサ40の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図20は、積層セラミックコンデンサ40の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ40の製造方法について、
図19に沿って、
図20を適宜参照しながら説明する。
【0122】
(ステップS31:第1セラミック素体作製)
ステップS31では、第1容量形成領域411aを形成するための第1セラミックシートS1及び第2セラミックシートS2と、カバー部412及び中間セラミック層46cの一部を形成するための第3セラミックシートS3と、を準備する。そして、
図20Aに示すように、これらのセラミックシートS1,S2,S3を積層して、未焼成の第1セラミック素体41uaを作製する。各セラミックシートS1,S2,S3は、第1実施形態と同様の構成を有する。なお、セラミックシートS1,S2,S3の枚数は
図20Aに示す例に限定されない。
【0123】
図20Aに示す未焼成の第1セラミック素体41uaでは、セラミックシートS1,S2が交互に積層された積層体が形成され、そのZ軸方向上面に、第1主面41e側のカバー部412に対応する第3セラミックシートS3が積層される。当該積層体のZ軸方向下面には、中間セラミック層46cの一部を構成する第3セラミックシートS3が配置される。未焼成の第1セラミック素体41uaは、セラミックシートS1,S2,S3を圧着することにより一体化される。
【0124】
(ステップS32:第2セラミック素体作製)
ステップS32では、第2容量形成領域411bを形成するための第1セラミックシートS1及び第2セラミックシートS2と、カバー部412及び中間セラミック層46cの一部を形成するための第3セラミックシートS3と、を準備する。そして、
図20Bに示すように、これらのセラミックシートS1,S2,S3を積層して、未焼成の第2セラミック素体41ubを作製する。各セラミックシートS1,S2,S3は、第1実施形態と同様の構成を有する。なお、セラミックシートS1,S2,S3の枚数は
図20Bに示す例に限定されない。
【0125】
図20Bに示す未焼成の第2セラミック素体41ubでは、セラミックシートS1,S2が交互に積層された積層体が形成され、そのZ軸方向下面に第2主面41f側のカバー部412に対応する第3セラミックシートS3が積層される。当該積層体のZ軸方向上面には、中間セラミック層46cの一部を構成する第3セラミックシートS3が配置される。未焼成の第2セラミック素体41ubは、セラミックシートS1,S2,S3を圧着することにより一体化される。
【0126】
なお、以上では1つのセラミック素体41に相当する未焼成のセラミック素体41ua,41ubについて説明したが、実際には、個片化されていない大判のシートとして構成された積層シートが形成され、未焼成のセラミック素体41ua,41ubごとに個片化される。
【0127】
(ステップS33:導電性ペースト塗布)
ステップS33では、未焼成の第1セラミック素体41uaのX軸方向における端面を覆い、Z軸方向上面及びY軸方向における両側面まで延出するように、メッキ下地膜となる導電性ペーストを塗布する。同様に、未焼成の第2セラミック素体41ubのX軸方向における端面を覆い、Z軸方向下面及びY軸方向における両側面まで延出するように、メッキ下地膜となる導電性ペーストを塗布する。このとき、未焼成の第1セラミック素体41uaのZ軸方向下面及び未焼成の第2セラミック素体41ubのZ軸方向上面には、導電性ペーストを塗布しないようにする。
【0128】
(ステップS34:接合)
ステップS34では、未焼成の第1セラミック素体41uaと未焼成の第2セラミック素体41ubとをZ軸方向に接合する。例えば、未焼成の第1セラミック素体41uaのZ軸方向下面にセラミックペーストを塗布し、当該セラミックペーストを未焼成の第2セラミック素体41ubのZ軸方向上面に接触させる。これにより、第1セラミック素体41uaのZ軸方向下面が、このセラミックペーストを介して未焼成の第2セラミック素体41ubのZ軸方向上面と接合される。
【0129】
(ステップS35:焼成)
ステップS35では、接合された未焼成の第1セラミック素体41ua及び未焼成の第2セラミック素体41ubを焼成し、セラミック素体41を作製する。これにより、第1セラミック素体41uaに対応する領域に、第1容量形成領域411aが形成される。第2セラミック素体41ubに対応する領域に、第2容量形成領域411bが形成される。また、導電性ペーストも焼成され、メッキ下地膜が形成される。
【0130】
ここで、セラミック素体41のZ軸方向中央部には、第3セラミックシートS3及び接合用のセラミック材料からなる中間セラミック層46cが形成される。セラミック素体41には、中間セラミック層46cの周縁に沿って、メッキ下地膜の途切れた領域が形成されている。
【0131】
(ステップS36:外部電極形成)
ステップS36では、メッキ下地膜上に1又は複数のメッキ膜を形成することで、外部電極44,45を形成する。各メッキ膜は、錫以外の、銅、ニッケル、白金、パラジウム、銀、金などを主成分とし、例えば電解メッキ法により形成される。メッキ下地膜及び1又は複数のメッキ膜は、第1内層471を構成する。続いて、1又は複数のメッキ膜上に、錫を主成分とする錫メッキ膜を形成する。この錫メッキ膜は、第1最外層472を構成する。
【0132】
本実施形態では、中間セラミック層46cの周縁に、メッキ下地膜の途切れた領域が形成される。このため、メッキ下地膜を下地として形成されるメッキ膜は、メッキ下地膜の途切れた領域には形成されない。これにより、メッキ下地膜又はメッキ膜等のいずれの電極層を含まない第2領域48が形成される。
【0133】
なお、ステップS36の前には、Z軸方向上側のメッキ下地膜とZ軸方向下側のメッキ下地膜が電気的に分断された状態にある。そこで、メッキ膜の形成前に、これらの分断されたメッキ下地膜を接続するため、例えば、側面41c,41dにおけるメッキ下地膜の途切れた領域に導電性薄膜を形成する。導電性薄膜は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等により形成される。この導電性薄膜もメッキ下地膜の機能を有することから、この導電性薄膜上に各メッキ膜が形成され得る。これにより、
図16に示すように、側面41c,41d上に、Z軸方向に沿って連続した第1領域47を形成することができる。導電性薄膜の主成分は限定されないが、例えば導電性ペーストと同一の材料を用いることができる。
【0134】
[回路基板の構成]
図21は、本実施形態の回路基板400を示す図であり、
図17に対応する断面図である。
【0135】
図21に示すように、回路基板400は、第1基板(実装基板)101と、積層セラミックコンデンサ40と、外部電極44、45と第1基板101とを接続するはんだHと、を備える。さらに、
図21に示す回路基板100は、第2基板102と、第1基板101及び第2基板102を接続する接続部材Cと、を備える。
はんだHは、積層セラミックコンデンサ40の外部電極44,45の第1領域47から第2領域48に達するまで形成される。
【0136】
[本実施形態の作用効果]
図17及び
図21に示すように、積層セラミックコンデンサ40では、外部電極44,45の第2領域48が電極層を含まない。これにより、はんだの濡れ上がりが第2領域48でより確実に抑制される。この結果、はんだ高さ寸法を低減でき、回路基板400における積層セラミックコンデンサ40の実質的な高さ寸法を規制できる。したがって、積層セラミックコンデンサ40の実装スペースを削減できるとともに、回路基板400及びそれが実装される電子機器の小型化に貢献できる。また、各積層セラミックコンデンサ40の実質的な高さ寸法を規制できるため、回路基板400における、積層セラミックコンデンサ40と他の構造物との接触を抑制でき、積層セラミックコンデンサ40の損傷を防止できる。さらに、セラミック素体41の高さ寸法を十分に確保できることから、積層セラミックコンデンサ40の高容量化やバイアス特性の向上に寄与できるとともに、積層セラミックコンデンサ40の機械的強度を十分に確保することができる。
【0137】
加えて、第2領域48がY軸方向に延びるように構成されことで、はんだのZ軸方向への濡れ上がりをより効果的に抑制することができる。また、第2領域48が外部電極44,45のZ軸方向における中央部に配置され、第1領域47が両主面41e,41fまで延出していることで、積層セラミックコンデンサ40における実装姿勢の自由度を高めることができる。
【0138】
<第4実施形態>
図22は、本発明の第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサ50を示す斜視図である。
図23は、
図22のE-E'線に沿った断面図である。
【0139】
積層セラミックコンデンサ50は、セラミック素体11と、第1外部電極54と、第2外部電極55と、を備える。第1外部電極54は、本実施形態において、第1端面11aを覆い、両主面11e,11f及び両側面11c,11dまで延出している。第2外部電極55は、本実施形態において、第2端面11bを覆い、両主面11e,11f及び両側面11c,11dまで延出している。
【0140】
図24は、
図23の一部を示す拡大図である。なお、外部電極54,55の構成は同様であるため、
図24では第2外部電極55の図示を省略している。
各外部電極54,55は、第1稜部11gを覆う第1領域57と、第1領域57とZ軸方向に隣接して配置された第2領域58と、を有する。本実施形態では、第2領域58が第1領域57よりも薄く構成される。
【0141】
第2領域58は、本実施形態において、第1端面11a又は第2端面11bから第2主面11fまで延出している。第2領域58は、例えば、外部電極54,55のZ軸方向中央部から下側全体にわたって配置される。一方、第1領域57は、第1端面11a又は第2端面11bから第1主面11eまで延出しており、外部電極54,55のZ軸方向中央部から上側全体にわたって配置される。
【0142】
第1領域57は、第1実施形態の第1領域17と同様の層構造を有する。すなわち、第1領域57は、第1内層571と、第1最外層572と、を含む。
【0143】
第1内層571は、セラミック素体11上に配置される。第1内層571は、例えば、セラミック素体11上に配置された第1層571aと、第1層571a上に配置された第2層571bと、を含む。第1層571aは、1又は複数の層を含み、例えば、メッキ下地膜と、メッキ膜と、を含んでいる。第2層571bは、第1内層571における最外層を構成し、例えばニッケルを主成分とするニッケルメッキ膜として構成される。
【0144】
第1最外層572は、錫を主成分とする錫メッキ膜として構成され、第1内層571上に配置される。
【0145】
第2領域58も、第1実施形態の第2領域18と同様の層構造を有する。すなわち、第2領域58は、セラミック素体11上に配置された第2内層581と、第2内層581上に配置された第2最外層582と、を含む。
【0146】
第2内層581は、例えば、第1領域57の第1層571aと同様の層構造を有する。すなわち、第2内層581は、1又は複数の層を含み、本実施形態では、セラミック素体11上に配置されたメッキ下地膜と、メッキ下地膜上に配置されたメッキ膜と、を含んでいる。
【0147】
第2最外層582は、錫を主成分としないメッキ膜として構成され、第1内層571の第2層571bと連続して形成される。第2最外層582は、例えばニッケルを主成分とするニッケルメッキ膜として構成される。
【0148】
このような外部電極54,55は、例えば以下のように形成される。まず、メッキ下地膜及びメッキ膜を、端面11a,11bを覆い、かつ両主面11e,11f及び両側面11c,11dまで延出するように形成する。これらのメッキ下地膜及びメッキ膜は、第1領域57の第1内層571、並びに第2領域58の第2内層581及び第2最外層582を構成する。そして、当該メッキ膜の第2最外層582上に、錫メッキ膜が形成されない処理を行う。そして、第1領域57の第1最外層572に対応する錫メッキ膜を、第1内層571上に形成する。これにより、第1領域57の第1最外層572が形成される。
【0149】
図25は、本実施形態の回路基板500を示す図であり、
図23に対応する断面図である。
【0150】
図25に示すように、回路基板500は、第1基板(実装基板)101と、積層セラミックコンデンサ50と、外部電極54、55と第1基板101とを接続するはんだHと、を備える。さらに、
図25に示す回路基板500は、第2基板102と、第1基板101及び第2基板102を接続する接続部材Cと、を備える。はんだHは、積層セラミックコンデンサ50の外部電極54,55の第1領域57から第2領域58に達するまで形成される。
【0151】
[本実施形態の作用効果]
図25に示すように、外部電極54,55が第2領域58を有するため、外部電極54,55上におけるはんだの濡れ上がりが規制される。これにより、はんだ高さ寸法を低減でき、回路基板500における積層セラミックコンデンサ50の実質的な高さ寸法を規制できる。したがって、積層セラミックコンデンサ50の実装スペースを削減できるとともに、回路基板500及びそれが実装される電子機器の小型化に貢献できる。また、各積層セラミックコンデンサ50の実質的な高さ寸法を規制できるため、回路基板500における、積層セラミックコンデンサ50と他の構造物との接触を抑制でき、積層セラミックコンデンサ50の損傷を防止できる。さらに、セラミック素体11の高さ寸法を十分に確保できることから、積層セラミックコンデンサ50の高容量化やバイアス特性の向上に寄与できるとともに、積層セラミックコンデンサ50の機械的強度を十分に確保することができる。
【0152】
加えて、本実施形態では、第2領域58が第1端面11a又は第2端面11bから第2主面11fまで延出している。これにより、はんだが第2主面11f上の領域まで到達することをより確実に防止できる。したがって、はんだ高さ寸法が部品高さ寸法よりも大きくなることをより確実に防止できる。
【0153】
<第5実施形態>
図26は、本発明の第5実施形態に係る積層セラミックコンデンサ60をX軸方向から見た側面図である。本実施形態では、第2領域の配置例について説明する。
【0154】
積層セラミックコンデンサ60は、セラミック素体11と、第1外部電極64と、第1外部電極64と同様に構成された第2外部電極65と、を備える。本実施形態の外部電極64,65は、第1稜部11gを覆う第1領域67と、第1領域67とZ軸方向に隣接して配置された第2領域68と、を有する。なお、
図26における第2領域68は、説明のため斜線のハッチングで示している。
【0155】
図26Aに示すように、第2領域68は、例えば、外部電極64,65のY軸方向における一部に延びていてもよい。
あるいは、
図26B及び
図26Cに示すように、第2領域68は、Y軸方向に離間して複数配置されていてもよい。この場合、第2領域68は、
図26Bに示すように、Y軸方向に延びる帯状に構成されてもよいし、
図26Cに示すように、ドット状等の平面形状を有していてもよい。
【0156】
積層セラミックコンデンサ60も、例えば、第1実施形態と同様の回路基板に実装され得る。
【0157】
これらの第2領域68によっても、外部電極64,65上におけるはんだの濡れ上がりが規制される。これにより、はんだ高さ寸法を低減でき、回路基板における積層セラミックコンデンサ60の実質的な高さ寸法を規制できる。したがって、積層セラミックコンデンサ60の実装スペースを削減できるとともに、回路基板及びそれが実装される電子機器の小型化に貢献できる。また、回路基板の構造物による積層セラミックコンデンサ60の損傷を防止できる。さらに、セラミック素体11の高さ寸法を十分に確保できることから、積層セラミックコンデンサ60の高容量化やバイアス特性の向上に寄与できるとともに、積層セラミックコンデンサ60の機械的強度を十分に確保することができる。
【0158】
<第6実施形態>
[回路基板の構成]
図27は、本発明の第6実施形態に係る回路基板700を示す断面図である。本実施形態の回路基板700は、第1基板101及び第2基板702の間に、さらに枠状のコア基板を有する。
【0159】
図27に示すように、回路基板700は、第1基板(第1実装基板)101と、2つの積層セラミックコンデンサ10と、外部電極14、15と第1基板101とを接続するはんだHと、を備える。さらに、
図27に示す回路基板700は、第2基板(第2実装基板)702と、第3基板703と、第1基板101及び第3基板703、並びに第2基板702及び第3基板703をそれぞれ接続する接続部材Dと、を備える。
【0160】
第1基板101は、一方の積層セラミックコンデンサ10を実装する。第1基板101は、Z軸方向に向いた第1実装面103aを含む基板本体103と、実装面103aに配置された部品実装用ランド104と、実装面103aに配置された基板接続用ランド105と、実装面103aにおけるランド104,105の周囲に配置されたソルダーレジスト106と、を含む。基板本体103には、図示しない回路が形成される。
【0161】
第2基板702は、他方の積層セラミックコンデンサ10を実装する。第2基板702は、第1実装面103aとZ軸方向に対向する第2実装面707aを含む基板本体707と、第2実装面707aに配置された部品実装用ランド708と、第2実装面707aに配置された基板接続用ランド709と、第2実装面707aにおけるこれらのランド708,709の周囲に配置されたソルダーレジスト710と、を含む。基板本体707には、図示しない回路が形成される。
【0162】
第3基板703は、第1基板101及び第2基板702の間に配置され、部品収容のための空間が形成されたコア基板として構成される。第3基板703は、枠状の基板本体711と、基板本体711をZ軸方向に貫通して形成されたスルーホール712と、を含む。スルーホール712には、銅等の導電性材料が埋め込まれている。スルーホール712は、例えば基板本体711の側壁に沿って複数配置されている。
【0163】
接続部材Dは、第3基板703のスルーホール712と、第1基板101の基板接続用ランド105及び第2基板702の基板接続用ランド709をそれぞれ接続する。接続部材Dは、例えばはんだで形成される。
【0164】
2つの積層セラミックコンデンサ10のうち、一方の積層セラミックコンデンサ10は、第1基板101の部品実装用ランド104上に、はんだHを介して実装される。他方の積層セラミックコンデンサ10は、第2基板702の部品実装用ランド708上に、はんだHを介して実装される。
【0165】
このような回路基板700の製造時においては、第1基板101の部品実装用ランド104上及び第2基板702の部品実装用ランド708上にはんだペーストが塗布され、当該はんだペースト上に積層セラミックコンデンサ10が配置される。そして、はんだペーストが加熱され、溶融する。この際、はんだペーストが外部電極14,15をZ軸方向に濡れ上がり、はんだHが形成される。はんだHは、積層セラミックコンデンサ10の外部電極14,15の第1領域17から第2領域18に達するまで形成される。
【0166】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態においても、外部電極14,15が第2領域18を有するため、外部電極14,15上におけるはんだの濡れ上がりが規制される。これにより、はんだ高さ寸法を低減でき、回路基板700における積層セラミックコンデンサ10の実質的な高さ寸法を規制できる。したがって、積層セラミックコンデンサ10の実装スペースを削減できるとともに、回路基板700及びそれが実装される電子機器の小型化に貢献できる。また、各積層セラミックコンデンサ10の実質的な高さ寸法を規制できるため、2つの積層セラミックコンデンサ10同士や、これらと他の構造物との接触を抑制でき、積層セラミックコンデンサ10の損傷を防止できる。さらに、セラミック素体11の高さ寸法を十分に確保できることから、積層セラミックコンデンサ10の高容量化やバイアス特性の向上に寄与できるとともに、積層セラミックコンデンサ10の機械的強度を十分に確保することができる。
【0167】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0168】
第1領域及び第2領域の各層は、上述の例に限定されない。例えば、第1領域は、錫を主成分とする第1最外層を含んでいればよく、第1最外層の下層には、1又は複数の任意の導電体層を含んでいればよい。また、第2領域は、錫を主成分とする最外層を含んでいなければよく、第2領域が導電体層を含む場合は、1又は複数の任意の導電体層を含んでいればよい。
【0169】
第2領域の配置は、端面上において第1領域とZ軸方向に隣接していればよく、上記各実施形態で説明した態様に限定されない。例えば、第2領域は、外部電極のZ軸方向における中央部に配置されておらず、第1稜部又は第2稜部の近傍に配置されていてもよい。
【0170】
また、外部電極は、端面から少なくとも第1主面まで延出していればよく、第2主面には延出していない構成でもよい。
【0171】
積層セラミックコンデンサ10は、低背型でなくてもよく、積層セラミックコンデンサ10の形状及びサイズは、上述の例に限定されない。
【0172】
上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明は一対の外部電極を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0173】
10,30,40,50,60…積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
11,41…セラミック素体
11a,41a…第1端面
11b,41b…第2端面
11e,41e…第1主面
11f,41f…第2主面
12…第1内部電極
13…第2内部電極
14,34,44,54,64…第1外部電極
15,35,45,55,65…第2外部電極
17,37,47,57,67…第1領域
172,372,472,572…第1最外層
18,38,48,58,68…第2領域
182,383,582…第2最外層
100,300,400,500,700…回路基板