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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】複層塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20240806BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20240806BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/14 L
B05D7/14 M
B05D7/24 301F
B05D7/24 302P
B05D7/24 302T
B05D7/24 303A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020051358
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146314
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】逸見 周作
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188285(JP,A)
【文献】特開2019-081128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00- 43/00
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装面積が1m以上の被塗物上に、
(1)少なくとも1種の水性ベース塗料組成物を塗装し、ベース塗膜を形成する工程、
(2)該ベース塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装し、クリヤー塗膜を形成する工程、
を含む複層塗装方法であって、
前記水性ベース塗料組成物として色が異なる2種以上の水性ベース塗料組成物を用いて塗装するものであり、
塗装面積が1m 以上の被塗物が、鉄道車両、トラック、バスであり、
前記被塗物が補修面ではなく、新規塗装であり、
色が異なる2種以上の水性ベース塗料組成物を用いた塗装は、第一の水性ベース塗料組成物を塗装し、第一ベース塗膜を形成する工程、及び該第一ベース塗膜上に異なった色の第二の水性ベース塗料組成物を部分的に塗装し第二ベース塗膜を形成する工程を含み、
水性ベース塗料組成物の塗装から次工程のクリヤー塗装をするまでの間に加熱乾燥工程がなく、次工程の塗料組成物を塗装する時のベース塗膜がJIS K 5600-1-1(2004)に規定された硬化乾燥状態であり、
前記ベース塗料組成物が、塗装直前に主剤成分(I)及び希釈剤成分(II)を混合して調整する多成分系の水性ベース塗料組成物であって、
主剤成分(I)が、ウレタン樹脂エマルション(A)、アクリル樹脂エマルション(B)、着色顔料(C)及び水を含み、希釈剤成分(II)が、粘性調整剤及び水を含むことを特徴とする複層塗装方法。
【請求項2】
塗装面積が1m以上の被塗物上に、
(1)少なくとも1種の水性ベース塗料組成物(ただし、水性メタリック塗料組成物を除く)を塗装し、ベース塗膜を形成する工程、
(2)該ベース塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装し、クリヤー塗膜を形成する工程、
を含む複層塗装方法であって、
前記ベース塗料組成物が、塗装直前に主剤成分(I)及び希釈剤成分(II)を混合して調整する多成分系の水性ベース塗料組成物であって、
主剤成分(I)が、ウレタン樹脂エマルション(A)、アクリル樹脂エマルション(B)、着色顔料(C)及び水を含み、希釈剤成分(II)が、粘性調整剤及び水を含むことを特徴とする複層塗装方法。
【請求項3】
前記被塗物が鋼板にプライマーサーフェーサーを塗装した塗装面であることを特徴とする請求項1に記載の複層塗装方法。
【請求項4】
前記クリヤー塗料組成物が、二液型のウレタン硬化型塗料組成物であることを特徴とする請求項1又は3に記載の複層塗装方法。
【請求項5】
前記着色顔料(C)が、光輝性顔料を含有することを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
【請求項6】
前記水性ベース塗料組成物が、架橋剤成分を含有しないことを特徴とする請求項1及び3~5のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
【請求項7】
前記アクリル樹脂エマルション(B)が、1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物を共重合成分として含むことを特徴とする請求項1及び3~6のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
【請求項8】
前記アクリル樹脂エマルション(B)が、酸価4mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1及び3~7のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車車体、トラック、バス、鉄道車両、産業機器、建物、構造物等の大面積(1m以上)の塗装面(新規塗装又は塗り替え)に、水性ベース塗料及びクリヤーを塗装する場合に、乾燥工程を含む作業工程の削減及び時間の短縮が可能で、ダストムラ、及びタレなどがなく、良好な仕上がり性が得られる複層塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種被塗物への塗装において、従来は溶剤型塗料が広く採用されてきたが、近年は環境負荷軽減の観点から、低溶剤型ないしは無溶剤型の塗料への置換が求められている。そのような塗料としては、水性塗料、粉体塗料、パウダースラリー塗料などが既に実用化されているが、塗装作業性の向上という観点から水性塗料への置換が進みつつある。
エアースプレー塗装機などの水性塗料を微粒化(霧化)して行う塗装において、被塗物が大面積(1m以上)の場合、被塗物に塗着しなかった飛散ダストが未乾燥の塗膜に付着して仕上がり肌などが低下する問題があった。
これは自動車補修などの小面積(1m未満であり、実際は0.5m未満が多い)の塗装では想定していない不具合であり、大面積塗装の場合は大きな問題であった。
また、ダストによる仕上がり性低下を改善するために塗着塗膜の乾燥性を遅らせる塗料設計にすると短時間で塗り重ねができなかった。
【0003】
その対策として、例えば、特許文献1(特開2001-316612号公報)には、水希釈性樹脂を含む特殊効果顔料含有組成物と、無機層状ケイ酸塩、水希釈性ポリウレタン樹脂及び水を含み顔料を含有しない組成物で構成された水性コーティング組成物(水性ベース塗料組成物)が記載され、さらにその上にクリアコートを塗装することが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の塗料組成物及び塗装方法は、垂れ抵抗性に優れ、乾燥時間を大幅に削減できるものの、乾燥性が十分ではなく、特に2層以上塗り重ねる場合は乾燥工程を省くことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-316612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、塗装面積が1m以上の塗装面に水性ベース塗料組成物及びクリヤー塗料組成物を塗装する場合に、乾燥工程を含む作業工程の削減及び時間の短縮が可能で、ダストムラ、及びタレなどがなく、良好な仕上がり性が得られる塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
塗装面積が1m以上の被塗物上に、(1)少なくとも1種の水性ベース塗料組成物を塗装し、ベース塗膜を形成する工程、(2)該ベース塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装し、クリヤー塗膜を形成する工程、を含む複層塗装方法であって、前記ベース塗料組成物が、塗装直前に主剤成分(I)及び希釈剤成分(II)を混合して調整する多成分系の水性ベース塗料組成物であって、主剤成分(I)が、ウレタン樹脂エマルション(A)、アクリル樹脂エマルション(B)、着色顔料(C)及び水を含み、希釈剤成分(II)が、粘性調整剤及び水を含むことを特徴とする複層塗装方法。
によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の塗装方法を提供するものである。
項1.塗装面積が1m以上の被塗物上に、
(1)少なくとも1種の水性ベース塗料組成物を塗装し、ベース塗膜を形成する工程、
(2)該ベース塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装し、クリヤー塗膜を形成する工程、
を含む複層塗装方法であって、
前記ベース塗料組成物が、塗装直前に主剤成分(I)及び希釈剤成分(II)を混合して調整する多成分系の水性ベース塗料組成物であって、
主剤成分(I)が、ウレタン樹脂エマルション(A)、アクリル樹脂エマルション(B)、着色顔料(C)及び水を含み、希釈剤成分(II)が、粘性調整剤及び水を含むことを特徴とする複層塗装方法。
項2.前記水性ベース塗料組成物として色が異なる2種以上の水性ベース塗料組成物を用いて塗装するものであり、水性ベース塗料組成物の塗装から次工程の塗装をするまでの間に加熱乾燥工程がなく、次工程の塗料組成物を塗装する時のベース塗膜が硬化塗膜状態であることを特徴とする前記項1に記載の複層塗装方法。
項3.前記被塗物が鋼板にプライマーサーフェーサーを塗装した塗装面であることを特徴とする前記項1又は2に記載の複層塗装方法。
項4.被塗物が補修面ではなく、大面積の新規塗装又は全面の塗り替え塗装であることを特徴とする前記項1~3のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
項5.前記被塗物が鉄道車両であることを特徴とする前記項1~4のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
項6.前記クリヤー塗料組成物が、二液型のウレタン硬化型塗料組成物であることを特徴とする前記項1~5のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
項7.前記着色顔料(C)が、光輝性顔料を含有することを特徴とする前記項1~6のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
項8.前記水性ベース塗料組成物が、架橋剤成分を含有しないことを特徴とする前記項1~7のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
項9.前記アクリル樹脂エマルション(B)が、1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物を共重合成分として含むことを特徴とする前記項1~8のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
項10.前記アクリル樹脂エマルション(B)が、酸価25mgKOH/g以下であることを特徴とする前記項1~9のいずれか1項に記載の複層塗装方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複層塗装方法により得られた塗膜は、ダストムラ、及びタレなどがなく、良好な仕上がり性を有する。乾燥工程を含む作業工程の削減及び時間の短縮が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の複層塗装方法は、
塗装面積が1m以上の被塗物上に、
(1)少なくとも1種の水性ベース塗料組成物を塗装し、ベース塗膜を形成する工程、
(2)ベース塗膜の上に、クリヤー塗料組成物を塗装し、クリヤー塗膜を形成する工程、
を含む複層塗装方法であって、
前記ベース塗料組成物が、塗装直前に主剤成分(I)及び希釈剤成分(II)を混合して調整する多成分系の水性ベース塗料組成物であって、
主剤成分(I)が、ウレタン樹脂エマルション(A)、アクリル樹脂エマルション(B)、着色顔料(C)及び水を含み、希釈剤成分(II)が、粘性調整剤及び水を含むことを特徴とする複層塗装方法である。
【0010】
なお、本願の塗装方法は、大面積の被塗物に、後述する方法により塗装するものであって、フィルムなどの膜を作成してから被塗物に貼り付けるものではない。
【0011】
被塗物
本方法を適用する被塗物は、大きさや形状等は特に制限されないが、塗装面積が1m以上の大面積である素材のものであり、工業用の乾燥炉等に入らない被塗物、若しくは乾燥炉に入れて乾燥したとしても素材到達温度が60℃未満(例えば、設定温度80℃未満)となる塗装面積の被塗物が好適である。
【0012】
例えば、建機・大型車両、産業用機器、風力発電機用ブレード、航空機等が挙げられ、より具体的には、鉄道車両、バス、トラックの車体やその部品等が挙げられ、特に鉄道車両が好ましい。また、被塗物に旧塗膜があっても良いが、特に新規塗装又は全面の塗り替え塗装が好適であり、被塗物が一部分の補修面ではないことが好ましい。
【0013】
上記被塗物の素材の具体例としては、金属素材として、例えば、鋼板、亜鉛めっき、ステンレス、アルミニウム等が挙げられ、また、プラスチック素材として、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料等が挙げられる。また、これら金属素材やプラスチック素材を複合したもの等も被塗物として挙げることができる。これらの素材に応じて適宜、研磨処理、脱脂処理や表面処理、パテ組成物やプライマーサーフェーサーなどを塗装し、下地調整したものであってもよい。
なかでも、プライマーサーフェーサーを塗装した被塗物であることが好ましい。
【0014】
(1)少なくとも1種の水性ベース塗料組成物を塗装し、ベース塗膜を形成する工程
本発明の複層塗装方法は、前記被塗物上に、少なくとも1種の水性ベース塗料組成物を塗装して、ベース塗膜を形成する。
上記水性ベース塗料組成物は1種又は2種以上を塗装することができ、ベース塗料の塗装が2種以上の場合は、少なくとも一部を塗り重ねることが好ましい。
本発明においては、特に、水性ベース塗料組成物が2種以上であり、被塗物正面から見て2色以上の多色(ツートーン以上の塗色)塗装であることが意匠性の観点から好ましい。
【0015】
上記の多色塗装の場合、被塗物上の塗装する箇所は特に制限されず、例えばツートーン模様や2色以上のラインカラー模様、ストライプ模様、文字書き等の複雑な形状の模様も含むことができる。本方法のツートーン以上とは、例えばこれら模様となるように2色以上の多色に塗り分けられたものを含むことができる。その一部分を塗装により塗り分ける際に、マスキングを用いても良い。
【0016】
上記マスキング材料としては、例えば市販のテープ等を用いることができる。マスキングテープを用いて塗装することにより、未塗装部分との色境界ができ、意匠性に優れるものが得られる。
【0017】
本方法において、水性ベース塗装からマスキング貼り付けまでの時間は、前記水性ベース塗料組成物の塗布量等によって異なるが、仕上り性のバランスの点から、ベース塗膜の乾燥膜厚が5~30μmの範囲内、かつ、相対湿度70%以下の場合、24時間以下(好ましくは8時間以下、さらに好ましくは3時間以下)の乾燥が可能であり、具体的には30分~120分程度でマスキングテープの貼り付けが可能である。このように短時間で次工程の作業ができることで時間短縮が可能となり、例えば1日でツートーンの多色塗装が可能である。
【0018】
本方法は、加熱乾燥をすることなくマスキングしたとしても、塗膜が硬化塗膜状態であればテープ跡等によって仕上り性を損なうことなく意匠性に非常に優れる。
【0019】
なお、本明細書において、硬化塗膜状態とは、JIS K 5600-1-1(2004)に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600-1-1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態を含むものである。
【0020】
本発明の水性ベース塗料組成物は、回転霧化塗装、スプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装等公知の塗装手段で塗装することができるが、塗膜の仕上がり外観の点からスプレー塗装を行うことが好ましい。
【0021】
同一塗料の塗装回数としては、一回でもよいが、仕上がり外観と隠ぺい性を両立させる点から同一塗料を複数回、例えば2~6回程塗り重ねて塗装をすることが望ましい。
【0022】
上記塗り重ね塗装の場合、必要に応じて各塗装の間にフラッシュオフ(塗装後塗膜を常温で静置)、常温でのエアーブローや60℃以下、10分以下の予備加熱などの工程を設けてもよい。
【0023】
水性ベース塗料組成物の塗装が終了した後の乾燥は、特に制限されるものではないが、次工程のマスキング、第二の水性ベース塗装、又は後述のクリヤー塗装をする場合、ベース塗膜は硬化塗膜状態になっていることが好ましく、そのために、例えば、20~100℃、好ましくは40~80℃の温度条件で、5~60分間乾燥させることができる。
ベース塗膜の膜厚は、一般には乾燥膜厚として、5~100μm、特に10~60μmの範囲内が適している。
【0024】
水性ベース塗料組成物
本発明における水性ベース塗料組成物の主剤成分(I)は、ウレタン樹脂エマルション(A)、アクリル樹脂エマルション(B)、着色顔料(C)及び水を含むものである。
【0025】
<ウレタン樹脂エマルション(A)>
本発明においてウレタン樹脂エマルション(A)としては当該分野で公知のものを制限なく使用することができ、例えば、ポリイソシアネート、ポリオール及びカルボキシル基含有ジオールを反応させてなるウレタンプレポリマーを水中に分散することにより得られる樹脂エマルションを挙げることができる。
【0026】
ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4-(又は-2,6-)ジイソシアネート、1,3-(又は1,4-)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、4,4´-トルイジンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルエーテルイソシアネート、(m-もしくはp-)フェニレンジイソシアネート、4,4´-ビフェニレンジイソシアネート、3,3´-ジメチル-4,4´-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4-フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネ-ト化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン-4,4´,4´´-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、4,4´-ジメチルジフェニルメタン-2,2´,5,5´-テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビュ-レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0027】
上記ポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン-プロピレン(ブロック又はランダム)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ジカルボン酸(アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等)との縮重合させたポリオール、例えばポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ-3-メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルポリオール;ポリカプロラクトンポリオール、ポリ-3-メチルバレロラクトンポリオール;ポリカーボネートポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、1,6ヘキサンジオール等の低分子量グリコール類;等が挙げられ、単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0028】
上記カルボキシル基含有ジオールとしては、例えばジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸等が挙げられる。
【0029】
上記ウレタンプレポリマーの製造は、従来公知の方法に基づいて行うことができる。
【0030】
上記ウレタン樹脂エマルション(A)は中和剤により中和されたものであってもよい。中和剤としては、カルボキシル基を中和することができるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2-メチル2-アミノ-1-プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア等を挙げることができる。
【0031】
上記ウレタン樹脂エマルション(A)は、ベース塗膜の中研ぎ性が良好であることから、分子中に環状構造を有するものであることが望ましい。
【0032】
より好ましくは、ウレタン樹脂エマルション(A)を構成するポリイソシアネートが、その成分の一部として脂環族ジイソシアネート化合物に由来する化合物を含むものであることが適している。
【0033】
また、ウレタン樹脂エマルション(A)は、エマルションの貯蔵安定性、ベース塗膜の耐水性及び塗り重ねなじみ性の観点から、固形分酸価が20mgKOH/g以下、好ましくは5~16mgKOH/gの範囲内のものであることが望ましい。
【0034】
尚、本明細書において、固形分とは不揮発分を意味するものであり、試料から、水、有機溶剤等の揮発する成分を除いた残さを意味し、試料の質量に固形分濃度を乗じて算出することができる。固形分濃度は、試料約3グラムを、105℃、3時間乾燥させた残さの質量を、乾燥前の質量で除することにより測定することができ、また、100分率で示す場合もある。
【0035】
上記ウレタン樹脂エマルション(A)の平均粒子径としては、0.01~1μm、特に0.03以上で且つ0.5μm未満の範囲内にあることが好適である。
【0036】
本明細書において、ウレタン樹脂エマルション(A)及び後述のアクリル樹脂エマルション(B)の平均粒子径は、測定温度20℃において、コールターカウンター法によって測定された体積平均粒子径の値である。コールターカウンター法による測定は、例えば、「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製、商品名)を用いて行うことができる。
【0037】
<アクリル樹脂エマルション(B)>
本発明において、アクリル樹脂エマルション(B)としては、(メタ)アクリロイル基含有重合性不飽和モノマーを必須成分とし、その他重合性不飽和モノマーを必要に応じて共重合した共重合体が水に分散されてなるものである。
【0038】
具体的にはアクリル樹脂エマルション(B)の平均粒子径としては0.01~1.0μm、好ましくは0.05以上で且つ0.5μm未満の範囲内にある。
【0039】
このようなアクリル樹脂エマルション(B)としては、例えば水及び分散安定剤の存在下で上記重合性不飽和モノマー成分と重合開始剤を用いて、1段階で又は多段階で乳化重合することにより得られるものを好適に使用することができる。
【0040】
本発明において、アクリル樹脂エマルション(B)は、単層型でもコアシェル型などの複層型であってもよいが、単層型であることが塗り重ね馴染み性などの点から適している。
【0041】
アクリル樹脂エマルション(B)の共重合成分となりうる重合性不飽和モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α-メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4~7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0042】
また、アクリル樹脂エマルション(B)を乳化重合せしめるときに用いる分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性乳化剤及びラジカル重合性二重結合を有するアニオン性又はカチオン性の反応性乳化剤を挙げることができる。
【0043】
反応性乳化剤とは、分子中にノニオン性基、アニオン性基及びカチオン性基のいずれか1種以上の基と重合性不飽和基を共に有する乳化剤であり、重合性不飽和基としては具体的には、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等が挙げられる。市販品としては「ラテムル」(商品名、花王(株)製)、「エレミノール」(商品名、三洋化成(株)製)、「アクアロン」(商品名、第一工業製薬(株)製)、「アデカリアソープ」(商品名、旭電化(株)製)、「ANTOX」(商品名、日本乳化剤(株)製)等を挙げることができる。
【0044】
重合開始剤としては、従来公知のものを制限なく使用することができ、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-アミルパーオキサイド、ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物系重合開始剤;2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2´-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、1,1´-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、アゾクメン、2,2´-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2´-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、4,4´-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2´-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2´-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2´-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1´-アゾビス(1-シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2´-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕、ジメチル-2,2´-アゾビスイソブチレート等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。
【0045】
本発明では、主剤成分(I)に含まれるアクリル樹脂エマルション(B)として、1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物を共重合成分として含むものであることがベース塗膜の耐水性と中研ぎ性の観点から適している。
【0046】
上記1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物としては、上記例示の化合物が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができ、その共重合量としては、アクリル樹脂エマルション(B)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーの質量を基準として0.1~10質量%、好ましくは0.5~5質量%の範囲内とすることができる。
【0047】
また、アクリル樹脂エマルション(B)としては、ベース塗膜の耐水性や塗り重ね馴染み性の観点から、固形分酸価が25mgKOH/g以下が好ましく、12mgKOH/g以下であることがより好ましく、7mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、4mgKOH/g以下の範囲内のものであることが特に好ましい。
また、塗り重ね馴染み性の観点から、ガラス転移温度(以下Tgと略す場合がある)は、乾燥性向上の観点から、40℃未満が好ましく、-100~0℃がさらに好ましく、-70~-20℃の範囲内であることが特に好ましい。本明細書において、樹脂の静的ガラス転移温度は、例えば、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、示差走査熱量計「DSC-50Q型」(島津製作所製、商品名)を用いて、3℃/分の昇温速度で-100℃~150℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側における最初のベースラインの変化点を静的ガラス転移温度とすることによって、測定することができる。
【0048】
<着色顔料(C)>
本発明において、着色顔料(C)としては、特に制限されず塗料分野で公知の着色顔料が使用できる。具体例としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、モノアゾレッド、キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット、アルミニウム、酸化アルミニウム、金属蒸着フィルムフレーク、雲母、金属酸化物で表面被覆した雲母、雲母状酸化鉄、グラファイト顔料、ホログラム顔料などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を使用することができる。
なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、金属蒸着フィルムフレーク、雲母、金属酸化物で表面被覆した雲母、雲母状酸化鉄などの光輝性顔料を含有することが好ましい。
【0049】
上記着色顔料(C)は、単独で主剤成分(I)中に混合してもよく、あるいは分散樹脂と混合して分散し、ペースト化して主剤成分(I)中に混合してもよい。
【0050】
≪主剤成分(I)≫
本発明において、主剤成分(I)はウレタン樹脂エマルション(A)、アクリル樹脂エマルション(B)、着色顔料(C)及び水を含有する。樹脂成分としては、ウレタン樹脂エマルション(A)及びアクリル樹脂エマルション(B)を必須成分として含むものであり、両者の固形分合計量が主剤成分(I)に含まれる樹脂固形分中50質量%以上、好ましくは80質量%以上の範囲内にあることが、ベース塗膜の初期付着性と耐水性の観点から好ましい。
【0051】
また、ウレタン樹脂エマルション(A)及びアクリル樹脂エマルション(B)の使用割合としては、ウレタン樹脂エマルション(A)/アクリル樹脂エマルション(B)固形分質量割合で95/5~5/95、好ましくは80/20~20/80の範囲内がベース塗膜の耐水付着性の観点から適している。
【0052】
また、着色顔料(C)の配合量としては、乾燥性の観点から、主剤成分(I)に含まれる樹脂固形分を基準として1~200質量%、好ましくは5~170質量%の範囲内が適当である。
【0053】
上記主剤成分(I)は、(A)及び(B)以外の水性樹脂;(C)以外の顔料;粘性調整剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤、分散助剤、防腐剤、シランカップリング剤、消泡剤、硬化触媒、有機溶剤、中和剤など、水性塗料調製の際に通常用いられる塗料用添加剤;などの他の成分を含んでいてもよい。
【0054】
上記(A)及び(B)以外の水性樹脂としては、水溶性アクリル樹脂を含有することが好ましい。本明細書において水溶性アクリル樹脂は、例えば、酸基含有重合性不飽和モノマー及び/又はポリアルキレングリコール基含有重合性不飽和モノマーと、水酸基含有重合性不飽和モノマーと、その他の重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー成分を、親水性有機溶剤の存在下で重合開始剤により重合させることにより得られる樹脂を挙げることができる。
【0055】
上記酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩等のスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上併用して用いることができる。
【0056】
特に酸基含有重合性不飽和モノマーとしてカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとリン酸基含有重合性不飽和モノマーを併用することによって、本発明組成物を塗り重ねたときの馴染み性が向上する効果がある。
【0057】
ポリアルキレングリコール基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、ポリアルキレングリコール基の末端がメトキシ基やエトキシ基であっても良い。
また、ポリアルキレングリコール基の分子量としては、100~10000が好ましく、500~5000がより好ましい。これらは1種又は2種以上併用して用いることができる。
【0058】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数2~8個のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;Nーメチロールアクリルアミド;アリルアルコール;炭素数2~8個のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン変性アクリルモノマー等が挙げられ、これらは1種又は2種以上併用して用いることができる。
【0059】
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
また、上記水溶性アクリル樹脂は、酸基の一部又は全部を中和剤により中和することが望ましい。かかる中和剤としては、酸基を中和することができるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2-メチル2-アミノ-1-プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア等を挙げることができる。
【0061】
上記水溶性アクリル樹脂としては、一般に固形分酸価が5~150mgKOH/g、好ましくは10~100mgKOH/g、固形分水酸基価が10~150mgKOH/g、好ましくは20~100mgKOH/g、重量平均分子量が3,000~10,0000好ましくは5,000~70,000の範囲内であることが望ましい。
【0062】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G-4000H×L」、「TSKgel G-3000H×L」、「TSKgel G-2500H×L」、「TSKgel G-2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0063】
重合に用いられる親水性有機溶剤としては、厳密に区別されるものではないが、例えば、20℃において水100g中に少なくとも20g溶解する有機溶剤を挙げることができ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系有機溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert-ブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル系有機溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系有機溶剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0064】
上記水溶性アクリル樹脂を使用する場合、その配合量としては、主剤成分(I)に含まれる樹脂固形分中に1~30質量%、好ましくは1~20質量%の範囲内にあることができる。
【0065】
上記着色顔料(C)以外の顔料としては、例えば、バリタ粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などの体質顔料が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。
【0066】
本発明では、主剤成分(I)を安定に貯蔵でき、後述の希釈剤成分(II)と塗装直前に混合することで得られる水性ベース塗料組成物がムラやタレなどの発生のない良好な仕上がり外観の塗膜を形成できるように主剤成分(I)が粘性調整剤を含むことができる。
【0067】
上記粘性調整剤としては、従来公知のものを制限なく使用することができ、具体的にはポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系粘性調整剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系粘性調整剤;ウレタン会合型粘性調整剤;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、マイカおよびベントナイト等の無機系粘性調整剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系粘性調整剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系粘性調整剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系粘性調整剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系粘性調整剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系粘性調整剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系粘性調整剤等が挙げられる。なかでも、ポリアクリル酸系粘性調整剤が好ましい。
【0068】
該ポリアクリル酸系粘性調整剤の有効成分酸価としては、例えば30~350mg/KOH、好ましくは100を超えて且つ300mg/KOH以下の範囲内であることができる。市販品として、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0069】
本明細書において、有効成分とは、試料から、水、有機溶剤などの希釈剤を除いた残渣を意味する。
【0070】
ポリアクリル酸系粘性調整剤の配合量としては、主剤成分(I)に含まれる樹脂固形分を基準として0.5~20質量%、好ましくは1~10質量%程度である。
【0071】
上記主剤成分(I)の固形分濃度は、一般に10~50質量%、好ましくは15~40質量%の範囲内に調整されることが塗装作業性と隠蔽性、及び仕上がり外観の観点から適している。
【0072】
また、上記主剤成分(I)の粘度としては、特に制限されるものではないが、貯蔵安定性及び後述の希釈剤成分(II)等との混合性の点から、100~3000mPa・sec、好ましくは600~2000mPa・secの範囲内であることができる。
【0073】
本明細書において、粘度は、試料を25℃に調製してから10分以内に、粘度計デジタル式ビスメトロン粘度計VDA型(芝浦システム株式会社製)を用いて回転速度60rpmにて測定した値とする。
【0074】
≪希釈剤成分(II)≫
本発明において、希釈剤成分(II)は水を含むものであり、さらに少なくとも1種の粘性調整剤を含むことが好ましい。
【0075】
本発明では上記主剤成分(I)に希釈剤成分(II)を塗装直前に混合することで、塗装環境に応じて水性ベース塗料組成物のレオロジー特性を制御することができるものであり、水性ベース塗料組成物をこのように構成することで各成分の貯蔵安定性を保ち、塗膜がタレることなく、ムラなどの発生のない仕上がり外観に優れたベース塗膜を形成することができるものである。
【0076】
希釈剤成分(II)に含むことができる粘性調整剤としては、微粉末の粘性調整剤が好ましく、上記主剤成分(I)に含まれる粘性調整剤の説明で例示した有機系微粉末の粘性調整剤や無機系微粉末の粘性調整剤などを好適に使用できる。
【0077】
上記無機系微粉末の粘性調整剤としては、公知のものを制限なく使用でき、例えば、粘土鉱物、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、タルク、酸化亜鉛、カオリン、及び酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0078】
有機系微粉末または無機系微粉末の平均粒子径としては、好ましくは0.01~25.0μmであり、より好ましくは0.5~10μmであり、さらに好ましくは1.0~8.0μmの範囲内である。上記の平均粒子径は、体積基準の平均粒子径(D50)のことであり、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される粒度分布の50%の値である。
【0079】
希釈剤成分(II)中の粘性調整剤の含有量としては、微粒子の固形分として0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましい。
【0080】
本発明においては希釈剤成分(II)には無機系粘性調整剤が適している。
【0081】
かかる無機系粘性調整剤としては、当該分野で公知のものを制限なく使用することができ、例えば層状ケイ酸塩等の鉱物が挙げられ、これらは天然、合成品、加工処理品のいずれであってもよい。具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、マイカおよびベントナイト等が挙げられる。これらは有機溶剤や水等の希釈媒体で希釈されたものであってもよい。
【0082】
市販品としては「Bentone 27」、「Bentone34」、「Bentone 38」、「Bentone SD-1」、「Bentone SD-2」、「Bentone SD-3」、「Bentone52」、「Bentone 57」(以上いずれもRheox社製、商品名)、「Tixogel VP」、「Tixogel TE」、「Tixogel UN」、「Tixogel EZ100」、「Tixogel MP100」、「Tixogel MP250」(以上いずれもSud Chemical社製、商品名)、「Claytone 40」、「Claytone 34」、「ClaytoneHT」、「Claytone APA」、「Claytone AF」、「ClaytoneHY」(以上いずれもSouthern Clay Products社製、商品名)、「Laponite RD」、「LaponiteRDS」、「Laponite HW」、「Laponite EP」、「Laponite S482」、「LaponiteOG」、「Laponite LV」(以上いずれもRochwood Additives Limited社製、商品名)などを挙げることができる。
【0083】
希釈剤成分(II)中における無機系粘性調整剤の有効成分含有量としては、希釈剤成分(II)の質量を基準として0.1~3.0質量%、好ましくは0.3~2.0質量%の範囲内が適当である。
【0084】
上記希釈剤成分(II)は、水性樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、ポリマー微粒子、表面調整剤、分散助剤、防腐剤、シランカップリング剤、消泡剤、硬化触媒、有機溶剤、中和剤など、水性塗料調製の際に通常用いられる塗料用添加剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0085】
また、上記希釈剤成分(II)の粘度としては、特に制限されるものではないが、貯蔵安定性及び前述の主剤成分(II)等との混合性の点から、10~300mPa・sec、好ましくは10~250mPa・sec、の範囲内であることができる。
【0086】
≪水性ベース塗料組成物≫
本発明では主剤成分(I)と希釈剤成分(II)はそれぞれ別々に保管されるものであり、塗装業者が塗装直前に各成分を攪拌混合し、必要に応じて水などで粘度調整することにより本発明の水性ベース塗料組成物を調製することができる。尚、本明細書において、塗装直前とは、塗装業者や塗装現場により一概に定義できるものではないが、例えば、塗装を行う3時間前までの間を挙げることができる。
【0087】
上記水性ベース塗料組成物における主剤成分(I)及び希釈剤成分(II)の質量比としては塗装環境等により適宜調整できるが、一般に、これら主剤成分(I)100質量部を基準として希釈剤成分(II)が30~400質量部、好ましくは40~350質量部範囲内である。
【0088】
また、本発明では必要に応じてポリイソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤、メラミン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、カルボジイミド硬化剤などの硬化剤を上記主剤成分(I)及び希釈剤成分(II)のいずれかに含ませること、あるいは別個の成分として使用することもできるが、ポットライフ(塗料の可使時間)の関係から、ポリイソシアネート硬化剤などの架橋剤成分を使用しない塗料組成物であることが好ましい。
【0089】
上記の通り得られる本発明の水性ベース塗料組成物の固形分濃度は、一般に5~50質量%、好ましくは10~40質量%の範囲内にあることが塗装作業性と隠蔽性、及び仕上がり外観の観点から適している。
【0090】
また、上記水性ベース塗料組成物の塗装時の粘度としては、特に制限されるものではないが、50~800mPa・sec、好ましくは100~600mPa・secの範囲内にあることで塗装作業性が良好であり、さらにはベース塗膜の仕上がり外観の点から適している。
【0091】
(2)ベース塗膜の上に、クリヤー塗料組成物を塗装し、クリヤー塗膜を形成する工程
本方法は、以上述べた工程(1)により少なくとも1種のベース塗膜を形成したあと、次いでクリヤー塗料組成物を塗り重ねてクリヤー塗膜を形成する。
【0092】
クリヤー塗料組成物
本発明の方法に用いられるクリヤー塗料組成物としては、最上層(トップコート)として用いる透明の塗料組成物が好ましく、例えば水酸基などの架橋性官能基を有するアクリル樹脂と(ブロック)ポリイソシアネート硬化剤やメラミン樹脂などの架橋剤とを主成分とする硬化型塗料、あるいはセルロースアセテートブチレート変性のアクリル樹脂を主成分とするラッカー塗料などが好適に使用できる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂を含有する主剤とポリイソシアネート硬化剤とを塗装直前に混合する二液型のウレタン硬化型クリヤー塗料組成物が好ましい。塗装直前とは、8時間以内が好ましく、5時間以内がより好ましい。
上記クリヤー塗料組成物に用いられる溶媒は、特に制限はなく、有機溶媒でも水性溶媒でも好適に使用できるが、有機溶媒型のクリヤー塗料組成物が最も好ましい。
ここで「有機溶媒型のクリヤー塗料組成物」とは、塗料組成物中の溶媒成分として水分が1質量%以下であり、大部分が有機溶媒の塗料組成物のことである。
【0093】
本方法において、最上層にトップクリヤー塗装をすることにより、意匠性、仕上り性及び耐汚染性が向上する。特に、クリヤー塗料組成物としてポリイソシアネート硬化剤を含む二液型のウレタン硬化型塗料組成物を用いた場合、クリヤー塗膜からベース塗膜中にイソシアネート成分が染み込み、ベース塗料組成物中に含有される水酸基含有樹脂の水酸基と反応して、ベース塗料に架橋剤成分を用いなくとも付着性及び強靭な膜を形成することができるため好適である。
【0094】
また上記クリヤー塗料組成物には、必要に応じて、重合体微粒子、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤などの塗料用添加剤を配合することができる。該クリヤー塗料組成物による塗膜は、乾燥膜厚で10~100μmの範囲が適当である。
【0095】
クリヤー塗料組成物の塗装方法としては、例えば、回転霧化塗装、スプレー塗装、ローラー塗り、刷毛塗り、流し塗り等の公知の手段で塗装することができるが、仕上がり性の観点から、スプレー塗装が好適である。
クリヤー塗装の塗装回数は特に制限されることなく、1回又は複数回塗り重ねても良い。
【0096】
乾燥方法としては、加熱乾燥又は常温乾燥のどちらでもよく、必要に応じてセッティング及び/又はエアブロー(風乾燥)を行なってもよい。乾燥方法としては、硬化を促進することができるため、また、乾燥時間を短くすることができることから、加熱乾燥又は強制乾燥することがより好ましい。
【0097】
加熱乾燥をする場合は、例えば、30~80℃、好ましくは35~70℃、特に40~60℃の環境下、5~120分好ましくは10~100分乾燥することができる。
【0098】
本発明の方法において、1種以上の水性ベース塗装後の加熱乾燥を実質的に行わず、トップクリヤー塗装後に加熱乾燥を1回行う場合、途中の乾燥工程を省くことができる。特に2種以上の水性ベース塗料組成物を塗装する場合は乾燥工程を大幅に省くことができるため好ましい。
【0099】
発明の一実施形態に係る塗装方法の内容を図面に基づき説明する。本実施形態では、鉄道等のボディーの外面にラインカラー塗装を施す場合を例にとって、以下にその内容を説明する。
【0100】
下記フローチャートは、発明の一実施形態に係る塗装方法の流れを説明するためのフローチャートであり、ツートーン塗装(ベース塗膜が2種類)のものである。
【0101】
<塗装方法のフローチャート>
(WO)被塗物(必要に応じて素地調整)
(W1)第一の水性ベース塗料組成物を塗装
(W2)常温で塗膜乾燥
(W3)〔テープ貼り付け(マスキング作業)〕
(W4)第二の水性ベース塗料組成物を塗装
(W5)常温で塗膜乾燥
(W6)〔テープ除去(マスキング除去)〕
(W7)トップクリヤー塗料組成物を塗装
(W8)加熱乾燥
(W9)冷却
上記フローチャートに示すように、この塗装方法は、必要に応じて素地調整を施した被塗物上に、
(W1)第一の水性ベース塗料組成物を塗装し、第一ベース塗膜を形成する工程、
(W4)該第一ベース塗膜上に異なった色の第二の水性ベース塗料組成物を部分的に塗装し第二ベース塗膜を形成する工程、
(W7)次いで全面にトップクリヤー塗料組成物を塗り重ね、次いで加熱乾燥する工程、を含み、
必要に応じて、第一ベース塗膜を形成した後、第一ベース塗膜層上の一部をマスキングシートでマスキングする工程と、第一ベース塗膜を形成し、次いで乾燥した後、マスキングを除去する工程とを備えても良い。
【0102】
作業項目数としては、塗装工程、乾燥工程、マスキング作業(貼付)、マスキング作業(除去)、乾燥工程(乾燥)、乾燥工程(加熱乾燥後の冷却)をそれぞれ1つの作業項目としてカウントすると、上記フローチャートの場合は、素地調整を除くと作業項目数としては9となる。
【0103】
なお、例えば、水性ベース塗料組成物が1種類(別の実施形態に係る塗装方法)の場合は、(W3)~(W6)の工程が省かれることになる。
また、水性ベース塗料組成物が3種類(3色)以上の場合は、塗色が増える度に(W3)~(W6)工程を繰り返すことになり、マスキング工程(貼り付け、除去)は必要に応じて行うことができる。
【0104】
以上述べたように、本発明の方法によりツートーン以上に塗り分けられた塗膜を有する塗装物を得ることができる。得られた塗膜は複層塗膜であり、合計乾燥膜厚は、塗色数によって異なるが、例えば、上記フローチャートの第一ベース塗膜、第二ベース塗膜、クリヤー塗膜の全てが塗り重なった3層であった場合の乾燥膜厚の最大合計膜厚は、15~160μmの範囲内、好ましくは28~150μmの範囲内とすることができる。本発明の方法により得られる複層塗膜は、ベース塗膜を少なくとも1回塗装し、最後にクリヤー塗膜を形成する。
【実施例
【0105】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0106】
<ウレタン樹脂エマルションの製造>
製造例1
反応容器に、数平均分子量2000のポリブチレンアジペート115.5部、数平均分子量2000のポリカプロラクトンジオール115.5部、ジメチロールプロピオン酸23.2部、1,4-ブタンジオール14.5部およびイソホロンジイソシアネート120.1部を重合容器に仕込み、撹拌下に窒素気流中、85℃で7時間反応せしめてNCO含有量4.0%のプレポリマーを得た。次いで該プレポリマーを50℃まで冷却し、アセトン165部を加え均一に溶解した後、撹拌下にトリエチルアミン15.7部を加え、50℃以下に保ちながら脱イオン水600部を加え、得られた水分散体を50℃で2時間保持し水伸長反応を完結させた後、減圧下70℃以下でアセトンを留去し、トリエチルアミンと脱イオン水でpHを8.0に調整し、固形分酸価が17mgKOH/g、固形分30%、平均粒子径が0.15μmのウレタン樹脂エマルション(A-1)を得た。
【0107】
<アクリル樹脂エマルションの製造>
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部、「Newcol707SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、固形分30%)2.5部およびモノマー混合物(スチレン9部、n-ブチルアクリレート39部、2-エチルヘキシルアクリレート40部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10部、メタクリル酸1部、アリルメタクリレート1部)のうちの1部を加え、窒素気流で攪拌混合し、60℃で3%過硫酸アンモニウム水溶液3部を加えた。次いで、80℃に昇温して前記モノマー混合物の残りの99部、「Newcol707SF」2.5部、3%過硫酸アンモニウム4部および脱イオン水100部からなるプレエマルションを4時間かけて定量ポンプを用いて反応容器に加え、添加終了後1時間熟成を行った。その後、脱イオン水33部を加え、ジメチルエタノールアミンでpH7.5に調整し、ガラス転移温度が-44℃、平均粒子径が100nm、酸価6.5mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/g、固形分30%の単層型のアクリル樹脂エマルション(B-1)を得た。
【0108】
製造例3
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部、「Newcol707SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、固形分30%)2.5部およびモノマー混合物(スチレン9部、n-ブチルアクリレート39部、2-エチルヘキシルアクリレート40部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10部、メタクリル酸1部、メチルメタクリレート1部)のうちの1部を加え、窒素気流で攪拌混合し、60℃で3%過硫酸アンモニウム水溶液3部を加えた。次いで、80℃に昇温して前記モノマー混合物の残りの99部、「Newcol707SF」2.5部、3%過硫酸アンモニウム4部および脱イオン水100部からなるプレエマルションを4時間かけて定量ポンプを用いて反応容器に加え、添加終了後1時間熟成を行った。その後、脱イオン水33部を加え、ジメチルエタノールアミンでpH7.5に調整し、ガラス転移温度が-44℃、平均粒子径が100nm、酸価6.5mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/g、固形分30%の単層型のアクリル樹脂エマルション(B-2)を得た。
【0109】
製造例4
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部、「Newcol707SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、固形分30%)2.5部およびモノマー混合物(スチレン9部、n-ブチルアクリレート36部、2-エチルヘキシルアクリレート40部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10部、メタクリル酸4部、アリルメタクリレート1部)のうちの1部を加え、窒素気流で攪拌混合し、60℃で3%過硫酸アンモニウム水溶液3部を加えた。次いで、80℃に昇温して前記モノマー混合物の残りの99部、「Newcol707SF」2.5部、3%過硫酸アンモニウム4部および脱イオン水100部からなるプレエマルションを4時間かけて定量ポンプを用いて反応容器に加え、添加終了後1時間熟成を行った。その後、脱イオン水33部を加え、ジメチルエタノールアミンでpH7.5に調整し、ガラス転移温度が-39℃、平均粒子径が100nm、酸価26mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/g、固形分30%の単層型のアクリル樹脂エマルション(B-3)を得た。
【0110】
製造例5
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部、「Newcol707SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、固形分30%)2.5部およびモノマー混合物(スチレン9部、n-ブチルアクリレート39.5部、2-エチルヘキシルアクリレート40部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10部、メタクリル酸0.5部、アリルメタクリレート1部)のうちの1部を加え、窒素気流で攪拌混合し、60℃で3%過硫酸アンモニウム水溶液3部を加えた。次いで、80℃に昇温して前記モノマー混合物の残りの99部、「Newcol707SF」2.5部、3%過硫酸アンモニウム4部および脱イオン水100部からなるプレエマルションを4時間かけて定量ポンプを用いて反応容器に加え、添加終了後1時間熟成を行った。その後、脱イオン水33部を加え、ジメチルエタノールアミンでpH7.5に調整し、ガラス転移温度が-44℃、平均粒子径が100nm、酸価3mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/g、固形分30%の単層型のアクリル樹脂エマルション(B-4)を得た。
【0111】
製造例6
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部、「Newcol707SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、固形分30%)2.5部およびモノマー混合物(スチレン9部、n-ブチルアクリレート39部、メチルメタクリレート40部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10部、メタクリル酸1部、アリルメタクリレート1部)のうちの1部を加え、窒素気流で攪拌混合し、60℃で3%過硫酸アンモニウム水溶液3部を加えた。次いで、80℃に昇温して前記モノマー混合物の残りの99部、「Newcol707SF」2.5部、3%過硫酸アンモニウム4部および脱イオン水100部からなるプレエマルションを4時間かけて定量ポンプを用いて反応容器に加え、添加終了後1時間熟成を行った。その後、脱イオン水33部を加え、ジメチルエタノールアミンでpH7.5に調整し、ガラス転移温度が7℃、平均粒子径が100nm、酸価6.5mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/g、固形分30%の単層型のアクリル樹脂エマルション(B-5)を得た。
【0112】
製造例7
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部、「Newcol707SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、固形分30%)2.5部およびモノマー混合物(スチレン9部、n-ブチルメタクリレート39部、メチルメタクリレート40部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10部、メタクリル酸1部、アリルメタクリレート1部)のうちの1部を加え、窒素気流で攪拌混合し、60℃で3%過硫酸アンモニウム水溶液3部を加えた。次いで、80℃に昇温して前記モノマー混合物の残りの99部、「Newcol707SF」2.5部、3%過硫酸アンモニウム4部および脱イオン水100部からなるプレエマルションを4時間かけて定量ポンプを用いて反応容器に加え、添加終了後1時間熟成を行った。その後、脱イオン水33部を加え、ジメチルエタノールアミンでpH7.5に調整し、ガラス転移温度が46℃、平均粒子径が100nm、酸価6.5mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/g、固形分30%の単層型のアクリル樹脂エマルション(B-6)を得た。
【0113】
製造例8
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水120部及び「アデカリアソープSR-1025」(商品名、ADEKA社製、乳化剤、有効成分25%)0.8部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの5%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液2.5部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行った。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液3.8部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%のコアシェル型のアクリル樹脂エマルション(B-7)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は、酸価17.2mgKOH/g、水酸基価27.2mgKOH/gであった。
【0114】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水54部、「アデカリアソープSR-1025」3.1部、アリルメタクリレート1部、スチレン10部、n-ブチルアクリレート35部、メチルメタクリレート10部、エチルアクリレート20部及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート1部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0115】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水50部、「アデカリアソープSR-1025」1.8部、過硫酸アンモニウム0.04部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.3部、メタクリル酸2.6部、エチルアクリレート8部及びメチルメタクリレート7.1部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0116】
<アルミニウム顔料ペーストの製造>
製造例9
攪拌混合容器にアルミニウム顔料ペースト「Hydrolan2156」(エカルト社製、シリカ被覆アルミニウムフレーク顔料ペースト、顔料含有量60%)45.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテル34.5部、リン酸基含有樹脂溶液(注1)20部(固形分10部)を添加し、攪拌混合してアルミニウム顔料ペースト(C-1)を得た。
(注1)リン酸基含有樹脂溶液:攪拌器、温度調節器および冷熱器を備えた反応容器に、メトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n-ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)20部、ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注2)15部、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t-ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間で上記の混合溶剤に加え、さらにt-ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間で滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。
(注2)リン酸基含有重合性モノマー:反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41.1部を入れ、空気通気下でグリシジルメタクリレート42.5部を2時間で滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ-ル5.9部を加えて、固形分50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。
【0117】
<主剤の製造>
製造例10
製造例9で得たアルミニウム顔料ペースト(C-1)100部(樹脂固形分10部)を攪拌混合容器中に加え、1時間攪拌した後、製造例1で得たウレタン樹脂エマルション(A-1)150部(樹脂固形分45部)とさらに製造例2で得たアクリル樹脂エマルション(B-1)150部(樹脂固形分45部)を混合し、「プライマルASE60」(注3)17.8部を添加し、さらに1時間攪拌を続け、ジメチルエタノールアミンでpHを調整した後に脱イオン水を添加し、固形分20%の主剤(I-1)を得た。この主剤(I-1)の粘度とpHは、それぞれ1000mPa・secと8.0に調整をした。
(注3)「プライマルASE60」:商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤、酸価270mgKOH/g、有効成分28%。
【0118】
製造例11~20
主剤の原料配合を下記表1とする以外は全て製造例10と同様にして主剤(I-2)~(I-11)を得た。なお、下記表1中の数値は固形分である。
【0119】
【表1】
【0120】

<希釈剤の製造>
製造例21
撹拌混合容器に、水995部、「LaponiteRD」(注4)5部を添加し、撹拌混合して希釈剤(II-1)を得た。
(注4)「LaponiteRD」:商品名、(RochwoodAdditivesLimited社製、無機系増粘剤、合成ヘクトライト。
【0121】
製造例22
撹拌混合容器に、水985部、「エポスターMA1002」(注5)15.0部、を添加し、撹拌混合して希釈剤(II-2)を得た。
(注5)「エポスターMA1002」:商品名、日本触媒製、平均粒子径2.5μm、ポリメタクリル酸メチル系架橋物。
【0122】
<水性ベース塗料組成物の製造>
製造例23~37
得られた主剤(I-1)~(I-11)及び希釈剤(II-1)~(II-3)を下記表2に示す配合組成で手攪拌によって十分に混合し、メタリック塗色の水性ベース塗料組成物(X-1)~(X-15)を得た。
【0123】
【表2】
【0124】
(注)表中(製造例37)の希釈剤II-3は「脱イオン水100%」である。
【0125】
製造例38 水性ベース塗料組成物(Y-1)
リン酸基含有樹脂溶液20部(樹脂固形分10部)(注6)、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)60部、「カーボンMA-100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1部、「バリエースB-35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)15部、「MICRO ACE S-3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末、平均一次粒子径4.8μm)3部、及び脱イオン水51部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで3時間分散してグレー色の顔料分散ペーストを得た。
【0126】
次いで、上記顔料分散ペーストと、製造例1で得たウレタン樹脂エマルション(A-1)150部(樹脂固形分45部)と、さらに製造例2で得たアクリル樹脂エマルション(B-1)150部(樹脂固形分45部)とを混合し、「プライマルASE60」(注3)17.8部を添加し、さらに1時間攪拌を続け、ジメチルエタノールアミンでpHを調整した後、脱イオン水を添加し、固形分20%の主剤(I-12)を得た。この主剤(I-12)の粘度とpHを測定したところ、それぞれ1200mPa・secと8.0であった。
【0127】
さらに、上記主剤(I-12)100部と希釈剤(II-1)100部とを手攪拌によって十分に混合し、グレー塗色の水性ベース塗料組成物(Y-1)を得た。
【0128】
(注6)リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n-ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4-ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注7)15部、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t-ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt-ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
【0129】
(注7)リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ-ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0130】
<クリヤー塗料用アクリル樹脂の製造>
製造例39
温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えたガラス製4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート170部及びメチルシクロヘキサン120部を入れ、撹拌しながら窒素気流下145℃まで昇温した。145℃に達したところで下記混合モノマー溶液を4時間かけて滴下し、さらに滴下終了後145℃の温度に1時間保持した。その後、酢酸イソブチルで樹脂固形分65%に希釈し、アクリル樹脂溶液を得た。
<混合モノマー溶液>
スチレン 250部
t-ブチルメタクリレート 90部
イソボルニルアクリレート 350部
2-エチルヘキシルアクリレート 30部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 280部
ジ-t-アミルパーオキサイド 50部
得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は5700、ガラス転移温度78℃、樹脂固形分あたりの水酸基価121mgKOH/gであった。
【0131】
<クリヤー塗料組成物の製造>
製造例40
製造例39で得られたクリヤー塗料用アクリル樹脂溶液60.5部、Solus-2100(商品名、イーストマン ケミカル社製、セルロースアセテートブチレート、数平均分子量5000)4.1部、ジブチル錫ジラウレート0.05部、酢酸ブチル13.4部、及びメチルシクロヘキサン22.0部を混合して主剤を作成した。続いて、塗装直前に関西ペイント社製硬化剤「マルチ硬化剤標準形」(商品名、ポリイソシアネート化合物含有)33.3部を混合し、さらに関西ペイント社製シンナー「レタンPGエコシンナー20」(商品名、希釈シンナー)により不揮発分が40質量%となるように希釈して、二液型ウレタン硬化型クリヤー塗料組成物を作成した。
【0132】
<複層塗装方法>
実施例(1-1)
2m×10m×2.0mmの大きさのブリキ板に「ノンクロムプライマー」(商品名、関西ペイント社製、2液プライマー)を乾燥膜厚20μmになるようにスプレー塗装し、20℃で10分間乾燥させ、更に「レタンPGエコフリートWRプラサフ2」(商品名、関西ペイント社製、2液ウレタンプライマーサーフェーサー)を乾燥膜厚50μmになるようにスプレー塗装し、50℃30分間乾燥させ、P600ペーパーで研磨、脱脂を行った。この塗装板上に、グレー塗色の水性ベース塗料組成物(Y-1)を全面に乾燥膜厚15μmとなるようスプレー塗装し、室温(気温23℃、湿度50%RH)の条件下、1時間放置した。その後、ツートーン模様となるようマスキングテープにてマスキングをし、マスキングされていない部分を製造例23で得られたメタリック塗色の水性ベース塗料組成物(X-1)で乾燥膜厚15μmとなるようにスプレー塗装し、室温(気温23℃、湿度50%RH)の条件下、1時間放置した。放置後マスキングを除去し、トップクリヤー塗料「レタンPGエコクリヤーHX(Q)」(商品名、関西ペイント製、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含む二液型ウレタンクリヤー)を乾燥膜厚40μmとなるようにスプレー塗装した。その後、塗板を大型乾燥炉に想定した50℃(素材到達温度45℃)の乾燥炉へ30分間入れ加熱乾燥させ試験板(ツートーン塗色)を得た。
【0133】
実施例(1-1)の作業手順を下記フローチャートで示す。作業項目数としては9である。(被塗物の準備を除く)
なお、実施例(1-1)の水性ベース塗料組成物(Y-1)と水性ベース塗料組成物(X-1)は、それぞれ第一の水性塗料組成物と第二の水性塗料組成物のことである。
【0134】
<実施例(1-1)のフローチャート>
(WO)被塗物
(W1)水性ベース塗料組成物(Y-1)を塗装
(W2)室温で1時間乾燥
(W3)テープ貼り付け(マスキング作業)
(W4)水性ベース塗料組成物(X-1)を塗装
(W5)室温で1時間乾燥
(W6)テープ除去(マスキング除去)
(W7)トップクリヤー塗料組成物を塗装
(W8)加熱乾燥(50℃で30分間)
(W9)冷却

実施例(1-2)~(1-12)及び比較例(1-1)~(1-3)
第二のベース塗料組成物を下記表3の水性ベース塗料組成物とする以外は実施例(1-1)と同様にして複層塗装を行い、ツートーン塗色の塗装板を得た。
【0135】
【表3】
【0136】
実施例(2-1)
2m×10m×2.0mmの大きさのブリキ板に下地調整として市販のラッカープライマーサーフェーサーを40μm塗装し、室温にて30分乾燥後に#400耐水研磨紙で研磨した。この塗装板上に、製造例23で得られた水性ベース塗料組成物(X-1)を全面に乾燥膜厚15μmとなるようにスプレー塗装し、室温(気温23℃、湿度50%RH)の条件下、1時間放置した。その後、トップクリヤー塗料組成物として製造例40で得られたクリヤー塗料組成物を乾燥膜厚30μmとなるようスプレー塗装した。その後塗板を、大型乾燥炉を想定した50℃(素材到達温度45℃)の乾燥炉へ30分入れ加熱乾燥させ試験板(単色)を得た。
【0137】
実施例(2-1)の作業手順を下記フローチャートで示す。作業項目数としては5である。(被塗物の準備を除く)
<実施例(2-1)のフローチャート>
(WO)被塗物
(W1)水性ベース塗料組成物(X-1)を塗装
(W2)室温で1時間乾燥
(W7)トップクリヤー塗料組成物を塗装
(W8)加熱乾燥(50℃で30分間)
(W9)冷却

実施例(2-2)~(2-12)及び比較例(2-1)~(2-3)
水性塗料組成物を下記表4の水性ベース塗料組成物とする以外は実施例(2-1)と同様にして複層塗装を行い、メタリック塗色の塗装板を得た。
【0138】
【表4】
【0139】
<評価試験>
実施例(1-2)~(1-12)及び比較例(1-1)~(1-3)で得られた試験板(塗装板)を目視で観察し、下記基準にて評価した。
「◎」「〇」「△」が合格であり、1つでも「×」があるものは不合格である。
【0140】
【表5】
【0141】
乾燥性
実施例(1-2)~(1-12)及び比較例(1-1)~(1-3)において、各試験板のマスキングテープを貼り付けした部位を観察し、下記基準で評価した。
◎:テープ剥離時、クリヤー塗膜形成後ともにテープ跡がほとんど見られない、
○:テープ剥離時にはテープ跡が残るが、クリヤー塗膜形成後にはテープ跡が見られない、
△:貼り付けた部分全てのテープ跡が残っているが、クリヤー塗膜形成後、若干テープ跡が目立たなくなる、
×:貼り付けた部分全てのテープ跡が強く残っている。
【0142】
耐ダストムラ性
実施例(1-2)~(1-12)及び比較例(1-1)~(1-3)で得られた各試験板の塗膜外観(ダスト部の状態)を下記基準により評価した。
◎:スプレー直後にダスト部が被塗物に均一に濡れ広がり、塗面状態が非常に良好である、
〇:スプレー直後にダスト部が被塗物に均一に濡れ広がり、塗面状態が良好である、
△:スプレー直後にダスト部が被塗物に若干濡れ広げ難く、塗面状態がやや不良である、
×:スプレー直後にダスト部が被塗物に塗り広げ難く、塗面状態が不良である。
【0143】
耐タレ性
あらかじめ被塗物であるブリキ板の中央部に直径1cmの穴を設けた被塗物に塗装した試験板を作成し、実施例(1-2)~(1-12)及び比較例(1-1)~(1-3)で得られた試験板(穴あり)を塗装直後に垂直に設置した。耐タレ性の評価は、穴下部からのタレ長さにより評価した。
◎:タレの発生なし。
○:タレ長さ2mm未満のタレ有り。
△:タレ長さ2mm以上、かつ4mm未満のタレ有り。
×:タレ長さ4mm以上のタレ有り。
【0144】
仕上がり性(光沢)
実施例(1-2)~(1-12)及び比較例(1-1)~(1-3)で得られた各試験板の仕上がり性(水平)を目視で観察し、下記基準にて評価した。
◎:光沢が非常にあり、非常に良好である。
○:光沢が良好である。
△:光沢はやや不良である。
×:光沢が非常に低く、不良である。