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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】豆乳含有飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/65 20210101AFI20240806BHJP
   A23C 11/10 20210101ALI20240806BHJP
   A23L 11/60 20210101ALI20240806BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20240806BHJP
【FI】
A23L11/65
A23C11/10
A23L11/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020062309
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021158948
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】山口 航
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-181664(JP,A)
【文献】特開昭59-179033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00-23/00
A23L 2/00- 2/84
A23L 11/00-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸味料としてリン酸を含有し、
クエン酸酸度が0.1~0.5質量%であり、
大豆固形分濃度が0.1~0.5質量%であり、
大豆たんぱく質の濃度が0.05~0.3質量%である、豆乳含有飲料。
【請求項2】
さらに有機酸を含有する、請求項1に記載の豆乳含有飲料。
【請求項3】
有機酸が、乳酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1つの有機酸を含む、請求項2に記載の豆乳含有飲料。
【請求項4】
豆乳含有飲料のクエン酸酸度中、酸味料としてのリン酸由来のクエン酸酸度が20%以上を占める、請求項1~3のいずれか1項に記載の豆乳含有飲料。
【請求項5】
マグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比が5~40である、請求項1~のいずれか1項に記載の豆乳含有飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆乳含有飲料に関し、より詳しくは、豆乳風味が向上した豆乳含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、多種多様なターゲットに合わせた様々な乳性飲料が開発されている。一方で、乳アレルギーの問題や近年の健康志向や嗜好性の多様化などを背景に、乳性飲料に代わる、新しい豆乳含有飲料の開発も進められている。これまで、豆乳は栄養価の高い植物性ミルクとして親しまれており、常温で保存可能な製品も多数販売されている。しかしながら、豆乳及び豆乳含有飲料は、独特な大豆臭があるため、例えば清涼飲料水に豆乳を多量に含有させると、所望の止渇性を提供することが困難であった。このような課題に対し、例えば、豆乳にフルーツの味わいを付与して飲みやすくする工夫がなされているが、豆乳本来の味わいも損なわれてしまう可能性がある。
【0003】
そこで、様々な手段で豆乳含有飲料の豆乳風味を向上させることが試みられている。
例えば、特許文献1には、豆乳中のフィチン酸を酵素処理により分解した後、乳酸菌で発酵することで、風味良好な発酵豆乳を提供する技術が記載されており、大豆由来たんぱく質あたりの遊離リン酸含有量が0.5~5重量%である乳酸菌発酵豆乳について開示されている。
また、引用文献2には、発泡性の豆乳入り飲料に、酸味料としてグルコン酸、フィチ
ン酸、リン酸、酢酸等を添加しうることが開示されている。
このように、豆乳又は豆乳含有飲料の風味を向上又は改善する手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2006/043478号
【文献】特開2015-27284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、豆乳風味が向上した豆乳含有飲料、及びこのような豆乳含有飲料を提供するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、豆乳含有飲料の風味を向上や改善するための新しい手段等について鋭意検討するなかで、予想外にも、飲料全体の酸度に着目しつつ、酸味料としてのリン酸や各有機酸の配合量を調整して、無調整豆乳や豆乳含有飲料に加えた場合に、豆乳含有飲料の風味をより良くできること、又は、当該風味を強化できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
〔1〕酸味料としてリン酸を含有し、クエン酸酸度が0.1~0.5質量%である、豆乳含有飲料。
〔2〕さらに有機酸を含有する、前記〔1〕に記載の豆乳含有飲料。
〔3〕有機酸が、乳酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1つの有機酸を含む、前記〔2〕に記載の豆乳含有飲料。
〔4〕豆乳含有飲料のクエン酸酸度中、酸味料としてのリン酸由来のクエン酸酸度が20%以上を占める、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の豆乳含有飲料。
〔5〕大豆固形分濃度が、0.1~0.5質量%である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の豆乳含有飲料。
〔6〕大豆たんぱく質濃度が、0.05~0.3質量%である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに1項記載の豆乳含有飲料。
〔7〕マグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比が5~40である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の豆乳含有飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、豆乳風味が向上した豆乳含有飲料、及びこのような豆乳含有飲料を提供するための手段を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、豆乳に元来含まれているリン酸とは別に、酸味料としてのリン酸(H3PO4)を含有させた豆乳含有飲料であって、飲料全体のクエン酸酸度が0.1~0.5質量%である豆乳含有飲料に関する。本発明において、豆乳含有飲料全体のクエン酸酸度は、本実施例に記載の方法で規定される。飲料全体のクエン酸酸度に着目しながら、酸味料としてのリン酸を適量添加することで本発明に係る豆乳含有飲料を得ることができる。本発明に係る豆乳含有飲料は、酸味料としてのリン酸を適量含有することで、豆乳の甘さと酸味のバランスを調整しつつ、豆乳風味が向上する、かつ/又は豆乳風味を強化することができる。
【0009】
本発明の豆乳含有飲料においては、リン酸のほか、後述するクエン酸や乳酸等の酸味料等の量を調整して、飲料全体のクエン酸酸度が、0.1~0.5質量%となるように設定される。さらに、当該豆乳含有飲料全体のクエン酸酸度は、0.15~0.45質量%であることがより好ましく、0.2~0.4質量%であることが特に好ましい。
本発明の豆乳含有飲料のクエン酸酸度を上記範囲に調整することによって、豆乳含有飲料に求められる爽やかな酸味や後味をもたらしつつ、豆乳風味を向上、改善、及び/又は強化するという利点をもたらす。また、本発明において、豆乳含有飲料のクエン酸酸度中、酸味料として添加したリン酸に由来するクエン酸酸度は、20%以上を占めることが好ましく、30%以上を占めることがより好ましい。豆乳含有飲料のクエン酸酸度中、酸味料としてのリン酸由来のクエン酸酸度が20%以上を占めることにより、豆乳風味の向上効果がもたらされる。本発明において、豆乳含有飲料中の酸味料としてのリン酸由来のクエン酸酸度は、本実施例に記載の方法で計算した値とすることができる。
本発明の豆乳含有飲料において、酸味料としてのリン酸は、例えば、液状のリン酸(85%)として添加することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、さらに酸味料として別途添加された有機酸を含有してもよい。当該豆乳含有飲料において、当該有機酸は、豆乳由来の成分を含んでもよいが、酸味料として別途添加された成分の添加量(配合量)に基づいて後述する各有機酸由来のクエン酸酸度を検討することが好ましい。本発明に係る豆乳含有飲料において、当該有機酸の種類は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されないが、例えば乳酸(C363)、クエン酸(クエン酸(結晶)(C687・H2O)、及び無水クエン酸(C687)を含む)、リンゴ酸(C465)、グルコン酸(C6127)、L-酒石酸(C466)及びフマル酸(C444)などを用いることができるが、豆乳風味との相性の観点から乳酸及び/又はクエン酸を含むことが特に好ましい。
【0011】
本発明の豆乳含有飲料におけるリン酸、及び有機酸、特にクエン酸及び乳酸の含有量は、飲料全体のクエン酸酸度が0.1~0.5質量%である限りにおいて、特に限定されないが、例えば、豆乳含有飲料におけるリン酸濃度は、0.03~0.12質量%であることが好ましく、0.04~0.1質量%であることがより好ましく、クエン酸濃度は、0.05~0.1質量%であることが好ましく、0.06~0.9質量%であることがより好ましく、乳酸濃度は、0.08~0.13質量%であることが好ましく、0.09~0.12質量%であることがより好ましい。本発明のリン酸、及び有機酸、特にクエン酸及び乳酸の含有量は、例えば豆乳含有飲料の製造に用いられる原材料に基づいて理論値計算した値とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、例えば、平成30年3月29日農林水産省告示第683号に記載される豆乳、調製豆乳、又は豆乳飲料を含むものであれば特に限定はされない。また、本発明に係る豆乳含有飲料は原料として豆乳粉末を混合したものであってもよい。また、本発明に係る豆乳含有飲料においては、大豆固形分濃度は0.1~0.5質量%であることが好ましく、0.2~0.4質量%であることがより好ましい。当該大豆固形分濃度は、当該豆乳含有飲料の製造に用いられる原材料に基づいて算出に従い決定することができる。また、本発明に係る豆乳含有飲料において、大豆固形分に含まれる大豆たんぱく質の濃度は、特に限定されないが、たんぱく質の安定性と風味の観点から、例えば0.05~0.3質量%であることが好ましく、0.1~0.2質量%であることが特に好ましい。本発明においては、例えば豆乳含有飲料約5gを量りとり、ケルダール法により窒素の量を求め、これに5.71を乗じて得た値の試料重量に対する百分比を当該大豆たんぱく質の濃度とすることができる。また、本発明に係る豆乳含有飲料において、大豆固形分濃度(質量%)に対するリン酸濃度(質量%)の比率が、0.1~1.0であることが好ましく、0.2~0.8であることがより好ましい。
【0013】
また、本発明の豆乳含有飲料のマグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比が、5~40であることが好ましく、10~30であることがより好ましい。ここで、マグネシウム濃度(mg/100ml)対大豆固形分濃度(質量%)の比とは、豆乳含有飲料中のマグネシウム濃度(mg/100ml)の数値を、豆乳含有飲料中の大豆固形分濃度(質量%)の数値で割ったものである。本発明の豆乳含有飲料のマグネシウム濃度を上述のように設定した場合に、豆乳風味の改善効果及び/又は強化効果に好ましい影響をもたらす。本発明の豆乳含有飲料において、当該比が5未満である場合、豆乳含有飲料の風味向上などに十分に寄与することができない恐れがあり、40を超えると、苦味や渋味等のミネラル味が強くなる恐れがある。本発明のマグネシウム濃度は、例えば飲料中のマグネシウム塩等の添加量から理論値計算した値とすることができる。なお、豆乳含有飲料中のマグネシウム濃度は、例えば原子吸光光度法による常法の分析により測定することもできる。
本発明の豆乳含有飲料のマグネシウム濃度は、豆乳由来のマグネシウムのほか、マグネシウム塩を添加して調整することができる。マグネシウム塩としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化マグネシウム・6水和物、L-グルタミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、リン酸一水素マグネシウムなどを使用することができる。本発明の豆乳含有飲料のマグネシウムは、主に塩化マグネシウム・6水和物由来であることが好ましい。
【0014】
ここで、本発明に係る豆乳含有飲料は、pHが4.6以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以上であることが好ましく、3.3以上であることがより好ましい。pHが4.6を超える場合には、大豆たんぱく質の安定性が損なわれ、沈殿が増加する恐れがあり、pHが2.6未満であると酸味を強く感じるため、飲みやすさが低下する恐れがある。
【0015】
本発明に係る豆乳含有飲料として好ましい態様は、限定はされないが、例えば、リン酸と乳酸又はクエン酸とを、飲料全体のクエン酸酸度が0.1~0.5質量%になる量で含有し、当該飲料全体のクエン酸酸度中のリン酸由来のクエン酸酸度が20%以上を占め、pHが3.0~4.0であり、大豆固形分濃度が0.2~0.4質量%である、豆乳入り清涼飲料水が挙げられる。
【0016】
本発明に係る豆乳含有飲料の糖度は、ブリックス(Brix又はBxとも表記する)値と同義とする。すなわち、本発明において糖度は、20℃における糖用屈折計の示度とし、例えば、商品名「デジタル屈折計Rx‐5000」(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。当該糖度は、3~12°Bxであることが好ましく、5~10°Bxであることがより好ましい。
本発明に係る豆乳含有飲料の糖度は、公知の甘味料を使用することで上記の値に調整することができる。たとえば、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、及び麦芽糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類;キシリトール、D-ソルビトール等の低甘味度甘味料;タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、及びサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料を単独で、又は適宜2種類以上を組み合わせて調整することが好ましく、ショ糖や果糖ぶどう糖液糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームで調整することが豆乳含有飲料に求められる自然な甘みや爽やかな酸味といった嗜好性の観点から特に好ましい。
【0017】
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、たんぱく質の安定化剤を含有することが好ましい。安定化剤としては、食品や飲料に用いることができる増粘多糖類であれば特に制限無く用いることができるが、特に大豆多糖類が好ましい。増粘多糖類は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用しても良い。特に限定されないが、使用される増粘多糖類としては、例えば、大豆多糖類やペクチンなどが挙げられる。
大豆多糖類とは、大豆から得られる水溶性の多糖類であり、主な成分はヘミセルロースであり、さらにガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロース、フコース、グルコース等の糖類から構成される。この大豆多糖類は、大豆から大豆油や分離大豆たんぱく質を製造する際に生成するオカラ(繊維状の絞りかす)から抽出、精製、殺菌して得ることができる。また、大豆多糖類としては市販のものを用いてもよく、例えば、商品名「SM-700」、商品名「SM-900」、商品名「SM-1200」(いずれも三栄源エフ・エフ・アイ社製)が挙げられる。
当該豆乳含有飲料への安定化剤の配合割合は、その種類等に応じて本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定できる。該配合割合は、例えば、たんぱく質の安定性の維持を良好なものとし、良好な風味を維持するためには、飲料の全質量を基準として、その下限は通常2g/L、好ましくは4g/Lであり、その上限は通常8g/L、好ましくは6g/Lとすることができる。安定化剤の配合割合を高くすると、安定化剤特有の風味やテクスチャーが強くなるおそれがある。
【0018】
また、本発明に係る豆乳含有飲料に、例えば、必要に応じて、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルを含有させることによって、味を調整してもよい。
本発明に用いる水は特に限定されず、例えば、イオン交換水を用いることができる。
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、原料(豆乳など)を乳酸菌や酵母等を用いて発酵して得られる、液状又は糊状の発酵豆乳飲食品等を含むものであってもよい。
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、一般的に使用されうる、上述していない甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含有させてもよい。
本発明の豆乳含有飲料は、豆乳入りの飲料であれば特に限定されないが、例えば、無調整豆乳、調製豆乳、豆乳飲料、清涼飲料水、コーヒー飲料、茶系飲料、果実飲料、スポーツ飲料、健康飲料、又はアルコール飲料等が挙げられる。
【0019】
また、本発明に係る豆乳含有飲料は、乳成分を含んでいてもよい。当該乳成分は、例えば、獣乳及び植物乳のいずれの原料乳を由来とするものであってもよい。獣乳としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳及び馬乳等が挙げられる。乳成分の形態としては、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳たんぱく濃縮物、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳、生クリーム、及び発酵乳が挙げられる。また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。なかでも、脱脂乳が好ましく、ハンドリングのよさから脱脂粉乳を用いることが特に好ましい。また、乳成分としては、単一種類の原料由来であっても、数の種類の原料由来であってもよい。
また、本発明の豆乳含有飲料の風味等を損なわない範囲で、必要に応じて任意の酸性成分として、果汁、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の果汁や、ブドウ、モモ、リンゴ、バナナ等の果汁を添加してもよい。
【0020】
本発明に係る豆乳含有飲料は、豆乳や上述したリン酸、乳酸及び/又はクエン酸、マグネシウム塩、甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を適宜混合することで得られる。本発明の豆乳含有飲料においては、その製造工程において、適宜必要に応じて、均質化処理や殺菌処理を加えて行なうことができる。
均質化処理は、通常、ホモゲナイザーを用いて行うことができる。均質化条件は特に限定されず、常法に従うことができる。
殺菌処理の方法は特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。
殺菌処理後の本発明の豆乳含有飲料を容器に充填する方法としては、例えば、飲料を容器にホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで飲料を冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法により行うことができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が何ら限定されるものでない。
【実施例
【0021】
以下の実施例及び比較例の各種原料(成分)については、以下のものを用いた。
調製豆乳(大豆固形分18%の豆乳及び酸化防止剤からなる)
果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)
大豆多糖類
ペクチン
50%乳酸
無水クエン酸
クエン酸三ナトリウム
85%リン酸
マグネシウム塩(塩化マグネシウム・6水和物)
イオン交換水(残部を構成する溶媒)
【0022】
各成分の含有値の分析値又は計算値を得るための方法については、以下の通りとした。
≪1 糖度(Bx°)≫
糖度測定は20℃のサンプルに対して、商品名「デジタル屈折計Rx‐5000」(アタゴ社製)を用いて、測定を行った。
【0023】
≪2 酸度(Ac(無水クエン酸))(質量%(w/w%))≫
飲料サンプル全体のクエン酸酸度は下記の滴定法で測定した。具体的には、クエン酸酸度は、フェノールフタレイン指示薬と水酸化ナトリウムとを用いて、以下の手順で滴定することにより求めた。
(1)200mL三角フラスコに対して5~15gの飲料を正確に秤量し、水を用いて50mL程度まで希釈する。
(2)希釈した前記飲料に対して1%フェノールフタレイン指示薬を数滴加えて撹拌する。
(3)三角フラスコ内の希釈飲料溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら、25mL容ビューレットに入れた0.1Mの水酸化ナトリウムを前記飲料溶液に滴下し、滴定試験を実施する。この滴定試験は、三角フラスコ内の飲料溶液の色が、30秒間赤色を持続した点を終点とする。
(4)クエン酸酸度(%)の値を、滴定試験の結果に基づき次式によって算出する。
クエン酸酸度(%)=A×f×(100/W)×0.0064 式(1)
[式(1)において、Aは、0.1M水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)を、fは、0.1M 水酸化ナトリウム溶液の力価を、Wは、サンプルの質量(g)を示す。また、式(1)において乗算している「0.0064」という値は、1mLの0.1M水酸化ナトリウム溶液に相当する無水クエン酸の質量(g)を指す。]
なお、前記滴定試験においては、フェノールフタレイン指示薬に代えて、水素イオン濃度計を用いて実施してもよい。この場合、滴定試験の終点は、三角フラスコ内の飲料溶液のpHが8.1になった時とする。
なお、「その他の原料由来Ac」は、各原料の酸度を合算することによって算出した値である。
【0024】
≪3 pH≫
pHは、pHメーター計を用いて、測定を行った。
≪4 大豆固形分濃度(質量%(w/w%))≫
大豆固形分濃度は、各飲料サンプル製造に用いられる原材料に基づいて算出した。
≪5 大豆たんぱく質の濃度(質量%(w/w%))≫
大豆固形分に含まれる大豆たんぱく質の濃度は、各飲料サンプル製造に用いられる原材料に基づいて算出した。
【0025】
≪6 マグネシウム濃度測定 Mg(mg/100ml)≫
マグネシウム濃度(Mg濃度)は、飲料中のマグネシウム塩の添加量から理論値計算し
【0026】
豆乳含有飲料へ添加する酸味料の種類(組み合わせ)や、その添加量による効果の違いについて検討した。
[対照例]
0.26質量%の大豆固形分(脂質を含む)となるように調製豆乳を配合し、下記表1に示すBx、クエン酸酸度、pHとなるように安定剤(大豆多糖類、ぺクチン);酸味料(50%乳酸、及びクエン酸三ナトリウム);果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)を加えた、調合液を製造した。得られた調合液を95℃瞬間殺菌にて殺菌した後、PETボトルに充填して容器詰の飲料サンプルを得た。
【0027】
[実施例1~4]
0.26質量%の大豆固形分(脂質を含む)となるように調製豆乳を配合し、下記表1に示すBx、クエン酸酸度、pHとなるように安定剤(大豆多糖類、ぺクチン);酸味料(85%リン酸とクエン酸三ナトリウム;或いは、85%リン酸と50%乳酸又は無水クエン酸とクエン酸三ナトリウム);果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)を加えた、調合液を製造した。得られた調合液を95℃瞬間殺菌にて殺菌した後、PETボトルに充填して容器詰の飲料サンプルを得た。
【0028】
[比較例1~3]
0.26質量%の大豆固形分(脂質を含む)となるように調製豆乳を配合し、下記表1に示すBx、クエン酸酸度、pHとなるように安定剤(大豆多糖類、ぺクチン);酸味料(無水クエン酸とクエン酸三ナトリウム;或いは、50%乳酸と無水クエン酸とクエン酸三ナトリウム);果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)を加えた、調合液を製造した。得られた調合液を95℃瞬間殺菌にて殺菌した後、PETボトルに充填して容器詰の飲料サンプルを得た。
【0029】
【表1】
【0030】
<官能試験1>
対照例、実施例1~4、及び比較例1~3で得られた各飲料サンプルを4℃に冷やし、5名の専門パネリストが「対照例」の飲料サンプルを基準として官能評価し、その評点を平均化した。官能評価基準は、下記表2に示したものに従った。
【0031】
【表2】
【0032】
官能試験1においては、「対照例」を基準とし、このスコアを4点に調整した。専門パネリストに各飲料サンプルの「豆乳風味の良さ」、「豆乳風味の強さ」、「酸味の良さ」、「後味の良さ」を1~7点の7段階評価してもらい、専門パネリスト5名の評点の平均値の小数第2位を四捨五入したものを最終評点とした。なお、「酸味の良さ」は、鋭い酸味が無く、飲みやすいかどうかを指標としている。各専門パネリスト間の評価には、ばらつきはなかった。官能試験1の官能評価結果は表3に示される。
【0033】
【表3】
【0034】
表3の結果から、酸味料としてリン酸を添加してクエン酸酸度を設定した豆乳含有飲料において、豆乳風味の良さや後味の良さを向上させる傾向にあることが確認された。また、豆乳含有飲料において、酸味料としてリン酸と無水クエン酸又は乳酸とを併用することによって、豆乳風味の良さ及び強さ、並びに酸味及び後味の良さが改善される傾向にあることが確認された。また、酸味料としてクエン酸を用いるか、クエン酸と乳酸とを併用する比較例1~3では、豆乳風味の向上は認められなかった。
【0035】
豆乳含有飲料へ添加する好ましい酸味料の組み合わせに、マグネシウムを添加した場合の効果について検討した。
[実施例5]
0.26質量%の大豆固形分(脂質を含む)となるように調製豆乳を配合し、下記表4に示すBx、クエン酸酸度、pHとなるように安定剤(大豆多糖類、ぺクチン);酸味料(85%リン酸と50%乳酸とクエン酸三ナトリウム);果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)を加えた、調合液を製造した。得られた調合液を95℃瞬間殺菌にて殺菌した後、PETボトルに充填して容器詰の飲料サンプルを得た。
[実施例6]
マグネシウム濃度が5.26mg/100mlになるように、調合液にマグネシウム塩を添加した以外は、実施例5と同様にして飲料サンプルを得た。
なお、表4及び表5の対照例は、表1及び表3のと同じ組成物である。
【0036】
【表4】
【0037】
<官能試験2>
対照例、実施例5及び実施例6で得られた各飲料サンプルを4℃に冷やし、官能試験1と同様にして、5名の専門パネリストが「対照例」の飲料サンプルを基準として官能評価し、その評点を平均化した。官能試験2の官能評価結果は表5に示される。
【0038】
【表5】
【0039】
表5の結果から、酸味料としてリン酸と無水クエン酸又は乳酸とを併用することによって、豆乳風味の良さ及び強さ、並びに酸味及び後味の良さが改善されることが確認された。さらに、実施例5と実施例6を対比すると、マグネシウムを適量添加することによって、さらに豆乳風味の良さを改善できる傾向にあることが確認された。