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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】保管容器、冷蔵庫及び熟成度推定装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20240806BHJP
   F25D 29/00 20060101ALI20240806BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20240806BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20240806BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240806BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20240806BHJP
【FI】
F25D23/00 301L
F25D23/00 302Z
F25D29/00 Z
F25D11/00 101B
A23L3/36 Z
A23L5/00 Z
G01N21/27 A
G01N21/3563
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020068618
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165604
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】中野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】松永 健吾
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 浩一
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096712(JP,A)
【文献】特開2017-072344(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150214(WO,A1)
【文献】特開2019-109026(JP,A)
【文献】特開2016-057022(JP,A)
【文献】特開2001-041640(JP,A)
【文献】特開2020-024081(JP,A)
【文献】特開2018-013464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0097776(US,A1)
【文献】特開2019-219076(JP,A)
【文献】特開2018-112364(JP,A)
【文献】特開2016-133296(JP,A)
【文献】特開2012-042173(JP,A)
【文献】特開平11-264642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
F25D 29/00
F25D 11/00
A23L 3/36,5/00
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納物を収納空間に収納する保管容器本体と、
前記収納空間内の収納物の状態の検知結果を出力する検知ユニットと、
前記検知ユニットから前記検知結果を取得して、前記収納物の熟成度を3段階以上に区分するように、前記検知結果に基づいて推定部に推定させる情報処理ユニットと、
を備え、
前記検知ユニットは、
ドーパントとして無機酸、有機酸、及びイオン性液体の少なくとも1つを含む物質吸着膜を含み、
前記物質吸着膜は、
少なくとも前記収納物の熟成の進行により増加する旨味成分に起因する物質である揮発性アミノ酸と、前記収納物の腐敗の進行に応じてガスの濃度が高くなる物質であるヒスタミンとを吸着する、
保管容器。
【請求項2】
前記検知ユニットは、
前記保管容器本体に設けられ、自保管容器または自保管容器を収容する冷蔵庫に設けられたファンを止めた状態における前記検知結果を出力する、
請求項1に記載の保管容器。
【請求項3】
前記検知ユニットによる検知開始前に前記ファンを所定期間動作させる、
請求項2に記載の保管容器。
【請求項4】
前記ファンは、前記所定期間の動作中に、前記収納物である食品を保管する平均温度よりも高い温度の空気を送る、
請求項3に記載の保管容器。
【請求項5】
前記ファンは前記収納空間の内外を連通させる開口部に設けられている、
請求項2に記載の保管容器。
【請求項6】
前記収納空間を満たす空気の温度を調整する温度調整ユニットと、
前記収納空間を満たす空気を循環させるファンユニットと
請求項2から請求項5の何れか1項に記載の保管容器に係る前記検知ユニットによって得られた画像に基づいて評価項目を決定し、前記評価項目の測定に適した環境になるように前記温度調整ユニット又は前記ファンユニットを制御する制御部と、
を備え
前記検知ユニットは、前記収納物の画像を生成するカメラをさらに含む
冷蔵庫。
【請求項7】
請求項2から請求項5の何れか1項に記載の保管容器を収納可能な貯蔵部を内部に形成する筐体と、
前記保管容器の周囲を満たす空気の温度を調整する温度調整ユニットと、
前記保管容器の周囲を満たす空気を循環させるファンユニットと、
前記保管容器に係る前記検知ユニットによって得られた画像に基づいて評価項目を決定し、前記評価項目の測定に適した環境になるように前記温度調整ユニット又は前記ファンユニットを制御して、前記保管容器内の前記収納物の熟成度を推定する制御部と、
を備え、
前記検知ユニットは、前記収納物の画像を生成するカメラをさらに含む
冷蔵庫。
【請求項8】
請求項2から請求項5の何れか1項に記載の保管容器と通信可能な通信ユニットと、
前記保管容器に係る前記検知ユニットによって得られた画像に基づいて評価項目を決定し、前記保管容器内の前記収納物の熟成度を推定する推定部と、
を備え、
前記検知ユニットは、前記収納物の画像を生成するカメラをさらに含む
熟成度推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、保管容器、冷蔵庫及び熟成度推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収納物である食品を熟成させるための装置(冷蔵庫)が知られている。熟成によって旨味が増す食品がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-96712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、収納物を熟成させる際に、収納物の熟成度をより正確に検出できることが望まれるが、その熟成度を正確に検出できないことがあった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、収納物の熟成度をより正確に検出することができる保管容器、冷蔵庫及び熟成度推定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の保管容器は、保管容器本体と、検知ユニットと、情報処理ユニットとを持つ。前記保管容器本体は、収納物を収納空間に収納する。前記検知ユニットは、前記収納空間内の収納物の状態の検知結果を出力する。前記情報処理ユニットは、前記検知ユニットから前記検知結果を取得して、前記収納物の熟成度を3段階以上に区分するように、前記検知結果に基づいて推定部に推定させる。前記検知ユニットは、ドーパントとして無機酸、有機酸、及びイオン性液体の少なくとも1つを含む物質吸着膜を含む。前記物質吸着膜は、少なくとも前記収納物の熟成の進行により増加する旨味成分に起因する物質である揮発性アミノ酸と、前記収納物の腐敗の進行に応じてガスの濃度が高くなる物質であるヒスタミンとを吸着する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の冷蔵庫の構成図。
図2A】実施形態の保管容器の断面図。
図2B】実施形態の保管容器の構成図。
図3】実施形態の熟成に関する処理のフローチャート。
図4】実施形態の状態判定処理のフローチャート。
図5図4示す状態判定処理の評価項目について説明するための図。
図6】果物が発する香気成分について説明するための図。
図7】実施形態のバナナの画像の画像処理を説明するための図。
図8】実施形態の食肉の画像の画像処理を説明するための図。
図9】CNNにより構成された第1学習モデルを模式的に示す構成図。
図10】第1学習モデルに用いられるニューラルネットワークの一部を模式的に示す構成図。
図11】実施形態の判定処理部を模式的に示す構成図。
図12】実施形態の熟成度推定処理部を模式的に示す構成図。
図13】実施形態の熟成度推定処理部を模式的に示す構成図。
図14】実施形態の表面状態検出部と熟成度推定処理部の構成図。
図15】第2の実施形態の保管装置と冷蔵庫の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の保管容器、冷蔵庫及び熟成度推定装置を、図面を参照して説明する。以下の説明では、実施形態の「食品」とは、保管容器に保管され、熟成対象の「収納物」のことである。同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本明細書で「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。本明細書で「YY1又はYY2」とは、「YY1」のみが存在する場合、又は「YY2」のみが存在する場合に限定されず、「YY1」及び「YY2」の両方が存在する場合も含む。これは、「又は」で繋がれる要素が3つ以上の場合も同様である。本明細書で「ZZ1とZZ2とのうち少なくとも一方」とは、「ZZ1」及び「ZZ2」の両方が前提として存在する場合に限定されず、「ZZ1」のみしか存在しない場合、又は「ZZ2」のみしか存在しない場合も含む。「XX」、「YY1」、「YY2」、「ZZ1」、及び「ZZ2」は、それぞれ、任意の要素(例えば任意の情報、機能、または構成)である。本明細書で「熟成度」とは、「熟成」の度合いのことであり、段階的な値でその程度を示す。
【0009】
(第1の実施形態)
[1.保管容器及び冷蔵庫の全体構成]
図1から図13を参照し、実施形態の保管容器1及び冷蔵庫2について説明する。
【0010】
最初に、冷蔵庫2について説明する。図1は、冷蔵庫2の構成図である。
冷蔵庫2は、例えば、筐体20、図示されない扉、制御基板21と、温度センサ22と、冷却部26と、操作パネル27とを備えている。
【0011】
筐体20は、例えば、図示しない内箱、外箱、及び断熱部を有する。内箱は、筐体20の内面を形成する部材である。外箱は、筐体20の外面を形成する部材である。内箱と外箱との間には、発泡ウレタンのような発泡断熱材を含む断熱部が設けられている。筐体20の内部には、貯蔵室20S(貯蔵部)が設けられている。筐体20は、例えば、貯蔵室20Sの前面側に、貯蔵室20Sに対して食材の出し入れを可能にする開口を有する。開口は、図示されない扉によって開閉可能に閉じられる。扉は、例えば断熱構造を有している。扉の一部を断熱構造の合わせガラス又は透過性樹脂で構成することで、扉を開けずに貯蔵室20S内を確認することができる。例えば、貯蔵室20Sは、1又は複数の保管容器1を収納可能に構成されている。
【0012】
貯蔵室20Sには、貯蔵室20Sの冷気の温度を検出する温度センサ22が設けられている。温度センサ22の出力は、後述の制御基板21に接続されている。
【0013】
冷却部26は、貯蔵室20S内を冷却する。冷却部26は、例えば、圧縮機261と、ファン262と、冷凍サイクル装置(不図示)とを含む。冷凍サイクル装置は、例えば冷媒ガスを用いた冷凍機を形成する。例えば、冷凍サイクル装置の冷媒循環管路には、圧縮機261と、図示しない凝縮器と、ドライヤと、キャピラリーチューブと、冷却器とがそれぞれ設けられている。
【0014】
圧縮機261(温度調整ユニット)は、例えば、冷蔵庫2の底部の機械室に設けられ、貯蔵室20Sの冷却に用いられる冷媒ガスを圧縮する。冷媒ガスは、圧縮機261を起点に、凝縮器、ドライヤ、キャピラリーチューブ、冷却器の順に循環させられる。冷却器は、例えば、図示しないダクトに配置されている。冷却器は、圧縮機261により循環される冷媒ガスが供給され、ダクト空間を流れる冷気を冷却する。
【0015】
ファン262(ファンユニット)は、例えば、上記のダクト空間を通じて貯蔵室20Sの冷気を循環させる。ダクト空間の冷気が冷却器によって冷却されて貯蔵室20Sに供給されることにより、貯蔵室20S内の食品OBJが冷却される。例えば、ファン262は、貯蔵室20S内の冷気が対流するような風量を供給するように作動してもよい。
【0016】
なお本明細書で「冷却する」とは、冷却器に圧縮機261から冷媒が供給されている状態を意味する。ただし、本明細書で「冷却する」とは、ファン262が駆動される場合に限定されない。例えば、「冷却する」とは、ファン262の駆動が停止された状態で圧縮機261から冷却器に冷媒が送られ、冷却器と貯蔵室20Sとの間の伝熱により貯蔵室20Sの温度が低下する場合なども含む。
【0017】
制御基板21は、例えば、通信ユニット23と、貯蔵庫制御部24と、貯蔵庫記憶部25とを備える。
【0018】
通信ユニット23は、例えば、無線で通信可能に構成されていて、無線通信によって接続される通信相手先と貯蔵庫制御部24との間を中継する。通信相手先には、例えば、保管容器1、ユーザが利用する携帯端末などが含まれる。通信ユニット23は、保管容器1又は携帯端末と直接通信してもよく、冷蔵庫2が配置された位置に設けられた無線アクセスポイントなどを中継して通信してもよい。
【0019】
貯蔵庫記憶部25は、例えば、半導体メモリ、磁気記録装置などを含む。貯蔵庫記憶部25には、例えば、貯蔵庫制御部24による冷蔵庫2の制御に必要とされる各種情報、プログラムなどの記憶領域が割り当てられている。
【0020】
貯蔵庫制御部24は、後述する保管容器1と通信して、保管容器1が検出した状態に関する情報を収集する。貯蔵庫制御部24は、貯蔵室20S内の冷気の温度が所望の温度になるように、また、貯蔵室20S内の冷気の湿度が所望の湿度になるように、冷却部26を制御して貯蔵室20S内の冷気の温度と湿度を調整する。
【0021】
例えば、貯蔵庫制御部24は、温度センサ22によって検出された温度に基づいて、冷却部26を制御して貯蔵室20S内の冷気の温度を調整する。上記の貯蔵室20S内の冷気の温度制御は、予め定められた上限温度と下限温度により規定される温度範囲が定められていて、その温度範囲内の温度になるように行われる。貯蔵庫制御部24は、後述する湿度センサ36によって検出された湿度に基づいて、冷却部26を制御して貯蔵室20S内の冷気の湿度を調整する。上記の貯蔵室20S内の冷気の湿度制御は、予め定められた上限湿度と下限湿度により規定される湿度範囲が定められていて、その湿度範囲内の所望の湿度になるように行われる。
【0022】
操作パネル27は、例えば、液晶型表示ユニットなどの表示ユニットを備える。操作パネル27は、貯蔵庫制御部24に接続され、貯蔵庫制御部24の制御によって表示部に各種情報を出力させる。操作パネル27は、表示部の表示目に設けられたタッチパネルによってユーザの操作を検出し、検出結果を貯蔵庫制御部24に出力する。
【0023】
次に、保管容器1について説明する。図2Aは、実施形態の保管容器1の断面図である。図2Bは、実施形態の保管容器1の構成図である。
保管容器1は、例えば、保管容器本体10と、検知ユニット3と、情報処理ユニット4と、出力処理ユニット5と、記憶部6と、排気部7とを備える。
【0024】
保管容器本体10は、食品OBJを収納可能な容器であり、内側に収納空間10Sを有する。例えば、保管容器本体10は、樹脂で形成されている。保管容器本体10は、略方形の底11と、底11の周囲(辺)からそれぞれ立ち上がる側面12aから12dを有している。側面12aから12dの上端は、収納空間10Sへの食品OBJの出し入れが可能な大きさの開口部を形成している。側面12aから12dの上端によって形成される開口部には、開口部を塞ぐ蓋13が設けられていてもよく、設けられていなくてもよい。蓋13は、閉じられた状態で、収納空間10Sと、保管容器本体10の外部との間で通気性を有していてもよく、密閉するように形成されていてもよい。例えば、蓋13には、収納空間10Sと、保管容器本体10の外部とをつなぐ開孔13hがあり、開孔13hには、排気部7が設けられている。
【0025】
排気部7は、保管容器本体10の収納空間10S内の空気を入れ替えるための排気機構を含む。例えば、排気部7は、保管容器本体10又は蓋13に設けられたファンである。排気部7を所定時間作動させることにより、収納空間10S内の空気を、その外部の空気と入れ替えることができる。排気部7は、後述する検知ユニット3のリフレッシュ処理に用いられる。リフレッシュ処理について後述する。
【0026】
「食品OBJを収納可能」とは、保管容器本体10の収納空間10S内に対象の食品OBJが収まることにかぎらず、例えば、保管容器本体10の蓋13を閉めた状態で対象の食品OBJが蓋13にあたらないこと、保管容器本体10の収納空間10S内に配置された食品OBJが後述する検知ユニット3と干渉しないこと、保管容器本体10の収納空間10S内に配置された食品OBJの状態を検知ユニット3が検知するために必要とされる空間が、食品OBJの周りに確保されていることなどを総称する。
【0027】
保管容器1に収納する食品OBJは、例えば、食肉、野菜又は果物などの食品(食材)を含む。保管容器1に収納された食品は、熟成するまでの所定の期間保管される。以下の説明では、食品OBJのことを単に「食品」と呼ぶ。
【0028】
検知ユニット3は、例えば、保管容器本体10の収納空間10S内の状態を検出するように設けられ、収納空間10Sに配置された食品の状態に応じて変化する物理量を検出する。例えば、検知ユニット3は、各種の物理量をそれぞれ検出するための複数種類のセンサ本体と、その物理量をデータに変換して出力する変換ユニットとを含む。検知ユニット3は、検出した物理量に応じた各種データを、後段の情報処理ユニット4に出力する。
【0029】
例えば、検知ユニット3は、カメラ31と、赤外分光ユニット32と、ガスセンサ33と、重量センサ34と、接触センサ35(不図示)と、湿度センサ36とを備える。このうち、検知ユニット3は、上記の各センサの内、食品の種類に応じて一部又は全部を備えてもよい。各センサの種類と測定対象の食品との対応関係については後述する。
【0030】
検知ユニット3の各センサの出力端子は、情報処理ユニット4の入力端子(不図示)に、電気的に接続されている。これに代わり、検知ユニット3の各センサが無線通信ユニットを有していて、情報処理ユニット4に無線通信を用いて通知してもよい。
【0031】
以下、検知ユニット3の各センサについて順に説明する。
カメラ31は、可視光領域に感度を有する撮像素子を含み、食品の像などを含むカラー画像のデータを生成する。例えば、カメラ31は、可視光領域に感度を有する光センサを含み、食品の反射光を特定の波長領域を透過する光学フィルタによって波長を選別して、透過した波長の光の強度に基づいて食品の色を検出してもよい。なお、カメラ31は、食品の色を検出する光センサであってもよい。この場合、検出する色に対応する光センサを複数設けるとよい。
【0032】
赤外分光ユニット32は、赤外線を食品に照射して、食品の表面からの赤外線を検出し、赤外分光法によって赤外線スペクトル(IRスペクトル)を検出する。赤外分光ユニット32は、そのIRスペクトルに関する測定データを出力する。一般的に、有機分子は、遠赤外領域の赤外線が照射されると、赤外線のエネルギーがその分子の回転エネルギーに変換されて、多数の線スペクトルを生成する。赤外分光法では、これを利用して、その反射光に含まれるスペクトル(IRスペクトル)を検出して、その吸収域の波長(波長帯)に対応する分子構造が、食品の表面の測定範囲に存在することを検出する。赤外分光ユニット32は、非接触式センサの一例である。赤外分光ユニット32は、検出対象の食品に赤外光を照射して反射光を検出可能な位置に設けられている、例えば、蓋13の食品側の面は、その一例である。
【0033】
ガスセンサ33は、収納空間10S内の所望のガスを検出するための1又は複数種類の検出部(不図示)を備える。ガスセンサ33は、各検出部が検出したガスの測定データを出力する。ガスセンサ33は、においセンサと呼ばれることがある。ガスセンサの例は後述する。
【0034】
重量センサ34は、例えば保管容器本体10の底11の外側に、保管容器本体10の重量を受けるように保管容器本体10の底に設けられた圧力センサであり、保管容器本体10と食品の合計の重量又は食品の重量に対応する測定データを出力する。
【0035】
接触センサ35は、食品に接触した状態で、食品の成分を検出し、検出した成分の含有量(成分量)を示す測定データを出力する。接触センサ35が検出可能な食品の成分は、その種類により異なる。接触センサ35は、保管容器本体10の内側、又は保管容器本体10の開口部側に配置される。ユーザが接触センサ35を食品に接触させるように配置してもよく、蓋13の食品側の面に係止された接触センサ35が、蓋13を閉じた状態になると降下して食品に接触するように形成されていてもよい。
【0036】
湿度センサ36は、抵抗変化型又は容量変化型の電子式のセンサ本体(不図示)を含み、収納空間10S内の空気の湿度を検出し、検出した湿度の測定データを出力する。
【0037】
情報処理ユニット4は、検知ユニット3による検知結果のデータを受け、検知結果のデータが示す状態に基づいて、食品の熟成度を識別する。情報処理ユニット4は、食品の熟成度の識別結果を、未熟成段階、熟成初期段階、熟成後期段階、過熟成段階(廃棄段階)などの複数の段階に分けて熟成度を段階的に示してもよい。熟成初期段階、熟成後期段階、及び過熟成段階(廃棄段階)と、未熟成段階、熟成初期段階、及び熟成後期段階とは、3段階の区分の一例であり、これらの組み合わせに制限されない。情報処理ユニット4による処理の詳細は、後述する。
【0038】
出力処理ユニット5は、情報処理ユニット4による識別の結果(結果情報)を、所定の出力部に出力させる。出力処理ユニット5は、例えば、液晶型表示ユニット又は有機EL型表示ユニットの表示ユニット(不図示)を備えていてもよい。この場合、出力処理ユニット5は、情報処理ユニット4による識別の結果(結果情報)を表示ユニットに出力させる。
【0039】
出力処理ユニット5は、例えば、無線で通信可能な無線通信部(不図示)を含み、無線通信によって接続される通信相手先と情報処理ユニット4との間を中継する。通信相手先には、例えば、冷蔵庫2の貯蔵庫制御部24、ユーザが利用する携帯端末などが含まれる。出力処理ユニット5は、冷蔵庫2の通信ユニット23を経由して貯蔵庫制御部24と通信してもよく、さらに携帯端末などの外部装置と直接通信してもよく、冷蔵庫2が配置された位置に設けられた無線アクセスポイントなどを中継して通信してもよい。
【0040】
記憶部6は、例えば、半導体メモリなどを含む。記憶部6には、保管容器1の各部の制御に必要とされる各種情報、プログラムなどの記憶領域が割り当てられている。記憶部6に格納される各種情報には、検知ユニット3によって検出する項目を規定する評価項目テーブルと、検知ユニット3によって検出された各種測定データと画像データとが含まれる。
【0041】
以下、実施形態の情報処理ユニット4の一例について説明する。
情報処理ユニット4は、例えば、画像データ取得部41と、食品種別判定部42と、表面状態検出部43と、データ取得部44と、熟成度推定処理部45と、測定制御部46とを備える。
【0042】
画像データ取得部41は、検知ユニット3のカメラ31から画像データを取得して、記憶部6に、時刻情報が付与された時系列の画像データとして格納する。画像データ取得部41は、後述の食品種別判定部42に画像データを供給する。
【0043】
食品種別判定部42は、カメラ31によって撮影された画像に基づいて食品の種別を検出し、その結果を、表面状態検出部43、熟成度推定処理部45及び測定制御部46に供給する。
【0044】
表面状態検出部43は、カメラ31によって撮影された食品の画像IMから食品の表面の状態を検出する。例えば、表面状態検出部43は、カメラ31によって撮影された画像を記憶部6から読み出して用いる。表面状態検出部43は、食品種別判定部42による食品の種別の検出結果を用いて、食品の表面の状態を検出する際の識別条件などを変更してもよい。表面状態検出部43は、食品の表面の状態の検出の結果を熟成度推定処理部45に供給する。
【0045】
データ取得部44は、検知ユニット3におけるカメラ31以外のセンサから、各種データを取得して、記憶部6に時系列の測定データとして格納する。
【0046】
熟成度推定処理部45は、記憶部6に格納された時系列の画像データと測定データと、食品種別判定部42による食品の種別の検出結果と、表面状態検出部43による食品の表面の検出結果とに基づいて、食品の熟成度を検出する。熟成度推定処理部45のより具体的な処理を後述する。
【0047】
測定制御部46は、検知ユニット3からの画像データ又は各センサによる測定データを所定の周期で取得するように、検知ユニット3と情報処理ユニット4の各部を制御する。測定制御部46は、例えば、食品種別判定部42によって識別された食品の種別に基づいて、検知ユニット3による検知項目を選択する。検知ユニット3による検知項目を選択することにより、必要とされる最小限の測定データに基づいて判定することができ、関連性が低いデータのノイズを除くことができる。また、後述する判定処理の演算負荷を軽減できる。
【0048】
さらに、測定制御部46は、保管容器1が配置された周囲の環境が所望の環境になるように、各センサによる測定データを貯蔵庫制御部24に送り、貯蔵庫制御部24の制御に利用させる。例えば、測定制御部46は、貯蔵庫制御部24に対して、湿度の測定値に関する測定データを供給して、湿度の制御に利用させる。貯蔵庫制御部24による制御の項目には、保管容器1が配置された周囲の通風量、湿度などが含まれる。
【0049】
(食品の熟成の概要)
保管容器1は、収納空間10Sに配置された食品(食材)を保管する。ここでいう食品(食材)とは、食肉、野菜、果物などであり、加熱加工を施す前のものである。食肉が熟成された状態の肉を熟成肉と呼ぶ。野菜と果物が「熟れる」ことと、食肉が熟成されることとを、纏めて「熟成」と呼ぶことがある。保管容器1は、食品を収納空間S内に保管している間に熟成させる。
【0050】
例えば、生肉(食肉)を熟成させる方法として、ドライエイジングと、ウエットエイジングの2通りの方法が知られている。ドライエイジングとは、例えば、保管容器1内の温度を1℃前後に維持し、湿度を70から80%の範囲内に維持して、生肉に風を当てて乾燥させながら熟成させる方法である。ドライエイジングによって生肉を熟成させると、肉の水分が蒸発して肉に含まれる水分量が少なくなるため、単位体積(単位重量)あたりのアミノ酸(旨み成分を含む)の密度(重量比率)が高くなる。また、熟成の過程でたんぱく質が分解して肉質がやわらかくなり、これに伴ってアミノ酸量が増加する。これに対し、ウエットエイジングとは、生肉(食肉)を密閉した状態にして、その状態を保ちながら熟成させる方法である。そのため、ウエットエイジングでは、食肉の水分を保持させながら熟成できるため、よりやわらかい肉質にすることができる。保管容器1は、上記のドライエイジングと、ウエットエイジングの2通りに適用可能である。ウエットエイジングの場合には、密閉性を有する蓋13を利用する。
【0051】
野菜と果物には、熟成させると、糖度が増加し、旨味成分が増加するものがある。保管容器1は、野菜と果物の熟成にも適用可能である。
【0052】
(熟成度を検出する処理の基本的な手順)
図3は、実施形態の熟成度を検出処理のフローチャートである。
【0053】
まず、ユーザは、食品を、保管容器1の収納空間S内に配置して、例えば、蓋13を閉じた状態で食品を保管容器1に保管する。例えばユーザは、食品が保管された保管容器1を、冷蔵庫2の貯蔵室20S内に収納する。
【0054】
保管容器1の情報処理ユニット4は、食品が収納空間S内に保管されたことを検出する。情報処理ユニット4は、これに応じて、食品の種類と、保管したときとを決定する(ステップS10)。例えば、情報処理ユニット4の食品種別判定部42は、カメラ31が生成した画像のデータを利用して、食品の種類と、保管したとき(タイミング)とを識別するとよい。測定制御部46は、例えば、保管容器1の食品を入れ替えたときにこのステップの処理を実施する。保管容器1の食品を入れ替えないときには、このステップを省略する。
【0055】
情報処理ユニット4の測定制御部46は、検知ユニット3の状態、及び保管容器1内の状態を初期化するためのリフレッシュ処理を実施する(ステップS12)。
【0056】
測定制御部46は、ステップS12のリフレッシュ処理から所定時間経過した後に、食品の種類に対応する検知ユニット3の各センサユニットを起動させる(ステップS14)。
【0057】
画像データ取得部41とデータ取得部44は、検知ユニット3からそれぞれデータを取得する(ステップS16)。例えば、画像データ取得部41は、カメラ31から画像データを取得して、取得した画像データを記憶部6に追加する。データ取得部44は、検知ユニット3から各種測定データを取得して、取得した測定データを記憶部6に追加する。
【0058】
情報処理ユニット4は、上記のステップS16において取得したデータに基づいて、食品の状態が、収納した段階から変化しているか否かを検出する(ステップS18)。
【0059】
例えば、情報処理ユニット4は、検知ユニット3に含まれる1又は複数種類のセンサを用いて、食品の熟成度に応じて変化する因子を所定の周期で検知する。食品の状態が、収納した段階から変化していない場合には、このフローチャートに関する一連の処理を終える。例えば、上記の場合、情報処理ユニット4は、食品が熟成初期の段階まで至っていないと判定する。食品の熟成度に関する情報を外部に出力させることが必要とされない場合には、測定制御部46は、食品の熟成度に関する情報を外部に出力させない。
【0060】
食品の状態が、収納した段階から変化している場合には、測定制御部46は、食品の状態を判定する処理(状態判定処理)を熟成度推定処理部45に実施させて(ステップS20)、その処理の結果の熟成度に関する情報を、出力処理ユニット5から外部に出力させる(例えば、外部の表示部に表示させる)(ステップS30)。情報処理ユニット4は、上記の処理を終えると、このフローチャートに関する一連の処理を終える。このフローチャートの処理は、予め定められた周期で実行される。例えば、その周期は、1日に数回から数10回実行するように規定する。より具体的には、周期を1時間にしてもよい。
【0061】
図4を参照して、図3のフローチャートにおけるステップS20の処理に関するより具体的な例について説明する。図4は、実施形態の状態判定処理のフローチャートである。図4のフローチャートにおいて、図3のフローチャートと同じ符号が付された処理は、図3のフローチャートの各ステップの処理と同じである。前述の通り、すでに、食品の種類は、カメラ31の画像データに基づいて識別されている。この識別結果に基づいて、食品の種類の識別に適した検知ユニット3内のセンサが選択される。選択されたセンサの測定データ又は画像データを利用して、以下の処理が行われる。
【0062】
ここでは、ステップS18の判定において、肯定的な結果が得られて、食品の状態が収納段階から変化していると判定された場合について説明する。
【0063】
熟成度推定処理部45は、食品の状態が第1条件を満たしているか否かを判定する(ステップS21)。例えば熟成後期の段階にあるか否かを識別する第1閾値が予め定められている。この第1閾値を用いた判定により上記の判定の結果が肯定的になるときに、食品の状態が第1条件を満たしているものとする。換言すれば、このステップS21の処理によって、熟成度推定処理部45は、食品の状態が熟成後期の段階に入っているか否かを判定する。
【0064】
食品の状態が第1条件を満たしていない場合には、熟成度推定処理部45は、食品の状態が熟成初期の段階にあると判定して(ステップS22)、処理をステップS30に進める。
【0065】
食品の状態が第1条件を満たしている場合には、熟成度推定処理部45は、食品の状態が第2条件を満たしているか否かを判定する(ステップS23)。例えば腐敗状態の段階にあるか否かを識別する第2閾値が予め定められている。この第2閾値を用いた判定により上記の判定の結果が肯定的になるときに、食品の状態が第2条件を満たしているものとする。換言すれば、このステップS23の処理によって、熟成度推定処理部45は、食品の状態が腐敗状態の段階にあるか否かを判定する。
【0066】
食品の状態が第2条件を満たしていない場合には、熟成度推定処理部45は、食品の状態が、まだ熟成後期の段階にあると判定して(ステップS24)、処理をステップS30に進める。食品の状態が第2条件を満たしている場合には、熟成度推定処理部45は、食品の状態が腐敗状態の段階にあると判定して(ステップS25)、処理をステップS30に進める。
【0067】
熟成度推定処理部45は、上記のステップS21からS25の処理により、食品の状態を、熟成初期の段階と、熟成後期の段階と、腐敗状態の段階とに区分することができる。
【0068】
上記の処理に用いる第1条件に係る第1閾値と、第2条件に係る第2閾値とについて、のより具体的な事例を示して説明する。
【0069】
図5は、図4示す状態判定処理の評価項目について説明するための図である。
図5に示す評価項目テーブルには、食品の種類、識別番号(No)、カメラ、ガス、重量、湿度、物質、重みの項目が含まれる。食品の種類は、熟成させる対象の食品の種類のデータが格納される。識別番号(No)には、評価項目を特定する測定条件を識別可能な識別情報が格納される。カメラ、ガス、重量、湿度、及び物質の各項目は、検知ユニット3を利用して取得する各種測定データの種類を示す。上記の項目に「〇」印がつけられた欄の測定データを評価項目とすることが示される。
物質の欄には、接触と非接触の2つの欄が設けられている。接触の欄は、接触センサ35を用いた測定を示し、非接触の欄は、赤外分光ユニット32を用いた測定を示す。
【0070】
「重み」の項目は、評価項目を特定するものではないが、各種測定データを利用した解析に用いられる重み係数を識別するための識別情報が格納されている。これについては、後述する。
【0071】
(食品が発するガスの量から熟成度を検出する処理)
食品が発するガスの量から熟成度を検出する処理について説明する。
熟成度によって発生するガスの量が変化する食品として、果物が挙げられる。果物は、種別に固有の香気成分を発することが知られている。そのような果物は、熟成が進むほどその発生量が多くなる傾向がある。香気成分には、例えば、エステル系のガスなどが含まれる。
【0072】
図6は、果物が発する香気成分について説明するための図である。
図6に示すように、レモンが発する香気成分には、シトラールが含まれる。
バナナが発する香気成分には、酢酸イソペンチル(酢酸3-メチルブチル)が含まれる。
リンゴが発する香気成分には、吉草酸イソペンチル(ペンタン酸3-メチルブチル)とエチレンが含まれる。
メロンが発する香気成分には、cis-6-ノネナールが含まれる。
カシスが発する香気成分には、4-メトキシ-2-メチルブタン-2-チオールが含まれる。
ブドウが発する香気成分には、アントラニル酸メチル(2-アミノ安息香酸メチル)が含まれる。
チャリーが発する香気成分には、ベンズアルデヒドが含まれる。
イチゴが発する香気成分には、2、5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンが含まれる。
【0073】
上記の香気成分は、代表的な一例を示すものである。上記の香気成分は、果物の種類によって異なる。また、上記の果物は、上記の香気成分以外のガスを発することがある。
【0074】
次に、リンゴの熟成度を示す因子としてエチレン(エチレンガス)を利用する事例について説明する。情報処理ユニット4は、熟成度の検出対象をリンゴに定め、検知ユニット3に保管容器1内の空気中のエチレンの濃度を測定させて、1時間ごとの測定の結果を取得する。エチレンが保管容器1内で検出されなかった場合には、情報処理ユニット4は、リンゴが保管容器1に入っていない、又は熟成度を詳細に判定する段階のリンゴが保管容器1に入っていないと判定する。未熟成のリンゴは、熟成度を詳細に判定する段階にないとする。
【0075】
所定の濃度以上のエチレンが検出されていて、その濃度が1ppm未満の場合には、情報処理ユニット4は、そのリンゴが熟成初期の段階にあると判定する。エチレンの濃度が1ppm以上10ppm未満の場合には、情報処理ユニット4は、そのリンゴが熟成後期の段階にあると判定する。エチレンの濃度が10ppm以上の場合には、情報処理ユニット4は、そのリンゴが腐敗しているか又は食べることができない状態にあると判定する。
【0076】
上記のリンゴの場合において、前述の図4に示した処理の中の第1条件が満たされることとは、例えばエチレンの濃度が1ppm以上存在することであり、同様に第2条件が満たされることとは、エチレンの濃度が10ppm以上存在することである。このように第1条件と第2条件を定めることにより、前述の図4に示した処理を適用できる。具体的な数値は一例であり、これを変更することに制限はない。
【0077】
なお、リンゴを熟成させるには、その水分量が保たれるように湿度が管理された環境で、比較的低温で保存するとよい。例えば、リンゴを保管容器1の収納空間S内に配置して、保管容器1の開口部を蓋13で塞いで保管容器1を密閉状態にして、その中でリンゴを保管するとよい。
【0078】
なお、前述の図6に示した揮発性甘味物質(香気成分)の空気中の濃度を用いて、同様の処理により、他の果物の熟成度を検知することができる。
【0079】
果物を例示して説明したが、食肉などの場合には、熟成の進行により増加する旨味成分に起因する物質(揮発性アミノ酸)と、腐敗の進行に応じてガスの濃度が高くなる物質(アンモニアガス又はヒスタミン)とが生じることがある。これらのガスの濃度を利用して熟成度を判定する場合に、前述の図4に示した処理の中の第1条件が満たされることを、熟成の進行により増加する旨味成分に起因する物質が所定値以上存在することにしてよく、同様に第2条件が満たされることを、腐敗の進行に応じてガスの濃度が高くなる物質が所定値以上存在することにするとよい。
【0080】
ガスセンサ33のより具体的な一例について説明する。
ガスセンサ33は、ガスセンサ本体と、ガスセンサ本体の表面を覆う物質吸着膜とを含む。例えば、物質吸着膜は、π電子共有高分子膜を有する薄膜である。π電子共有高分子膜は、例えば、ドーパントとして無機酸、有機酸、及びイオン性液体のうち少なくとも1種類を含む。この物質吸着膜に所定の物質が吸着すると、これによる物理的、化学的又は電気的特性の変化が生じる。ガスセンサ33は、この変化を検出することで、所定の物質の吸着状況を検出する。
【0081】
ガスセンサ33のπ電子共有高分子膜の種類を代えることにより、吸着する物質が代わる。互いに種類が異なるπ電子共有高分子膜を有する複数のガスセンサ33を、共通の基板上に配置して、測定対象の空気にさらすことで、π電子共有高分子膜の種類に応じた物質がそれぞれの膜に吸着される。その吸着状況から、存在する物質の種類を検出することができる。
【0082】
上記の測定原理の素子を用いたガスセンサ33は、検出結果を電気的な信号にして出力する。
【0083】
なお、ガスセンサ33の検出精度を高めるには、ガスセンサ33の周辺の空気の流れを止めて検出するとよい、このために、気体を撹拌するファンを止めた状態で測定することにより、安定した状態で検出することができる。さらに、測定を開始する前に、ファンを所定期間作動させて、ガスセンサ33のπ電子共有高分子膜に吸着した物質(分子)を離脱させることで、π電子共有高分子膜に残留する物質の量を軽減させることができる。π電子共有高分子膜から吸着した物質を離脱させるには、温度が高いほど有効な場合がある。
【0084】
上記のように測定精度を高めるためには、食品を保管する温度(平均温度)よりも比較的高い温度の空気を、所定期間に亘ってガスセンサ33に送って、ガスセンサ33をリフレッシュさせるとよい。
【0085】
なお、上記のファンは、例えば、冷蔵庫2の冷却部26に設けられたファン262であってもよく、保管容器1の排気部7のファンであってもよい。冷蔵庫2の貯蔵庫制御部24と、保管容器1の測定制御部46は、互いに連携して、冷却制御の冷却部26の作動状態における冷却期間と、検知ユニット3による検知を実施させる期間とが重ならないように、時間を整合させるとよい。
【0086】
(食品の色から熟成度を検出する画像処理)
食品の色から熟成度を検出する処理について説明する。
保管容器1に保管されているバナナは、熟成すると、その皮の色が、緑色から黄色、さらに茶色と徐々に変化する。カメラ31は、食品のバナナが配置された領域を撮像し、1時間ごとの画像から、例えばバナナの色を検知する。検出開始時から各画像におけるバナナの色が変化しない場合は、バナナの熟成が進んでいないと判定する。バナナの色が緑色から黄色になった場合には、熟成初期と判定する。バナナの色が茶色くなった場合には、熟成後期と判定する。それ以上茶色く(黒く)変化した場合には、腐敗もしくは食べられる状態でないと判定する。
【0087】
葉物野菜の場合には、緑色が淡くなり、黄色くなる。そのためバナナと同様の検知方法(画像処理を用いた検知手段)で、熟成度を判定できる。
【0088】
食肉の場合には、熟成が進むと食肉の表面がカビに覆われることがあるため、食肉の赤色系の表面に白色又は緑色が検出されるようになったり、その白色又は緑色の範囲が増加したりするため、白色又は緑色が検出された範囲の変化に基づいて判定することができる。
【0089】
なお、この色の変化の検出では、必ずしも画像内の食品の位置又は範囲を特定しなくてもよい。例えば、画像の全部が食品の像で覆われていてもよく、食品の背景が画像の一部に映っていてもよい。その背景が画像に含まれる場合には、色の検出に対する影響を低減するために、背景部分の色が、無彩色であるか又は検出対象の食品の色とは異なる色相であることが望ましい。上記は、食肉の熟成の推定に適した検知手段の一例である。
【0090】
本実施形態の表面状態検出部43は、例えば、色差空間変換処理部431(図11)と、判定処理部432(図11)とを備える。色差空間変換処理部431は、後段の判定処理部432の識別が容易になるように、カラー画像の表色系を変換するなどの処理を実施する。判定処理部432は、色差空間変換処理部431によって変換された情報に基づいて判定する。以下、これらの処理の一例について説明する。
【0091】
図7図8を参照して、色の変化を検出する画像処理の一例を示す。最初に、バナナの事例について説明する。図7は、実施形態のバナナの画像の画像処理を説明するための図である。
【0092】
図7(a1)から(a3)に示されたIM11、・・・、IM15、・・・、IM18、・・・の各画像は、カメラ31によって連続して検出されたバナナの画像の一例である。IM11、・・・、IM15、・・・、IM18、・・・の各画像は、連続して検出された画像の中から、所定の周期に対応する画像を抽出したものであり、撮影した時刻t11、t15、t18に対応する識別情報が各画像に関連付けられている。IM11、・・・、IM15、・・・、IM18、・・・の各画像を纏めて示す場合には、単にIMと呼ぶ。時刻t11、t15、t18に対応するバナナの像の色は、それぞれ緑色、黄色、茶色であるとする。
【0093】
色差空間変換処理部431は、各画像の中に複数の抽出ポイントを定め、各抽出ポイントの位置の色又は各抽出ポイントの位置を基準にした所定の範囲の色を検出し、検出した色を抽出ポイントの色として決定する。例えば、色差空間変換処理部431は、1つの画像の中に100個の抽出ポイントを、等しい間隔で格子状に配置する。この場合、色差空間変換処理部431によって、時刻t11の画像IM11のバナナの像にあたった抽出ポイントの色は緑色と識別される。同様に、画像IM15のバナナの像にあたった抽出ポイントの色は黄色と識別され、時刻t18の画像IM15のバナナの像にあたった抽出ポイントの色は茶色と識別される。
【0094】
画像の色を識別する手法として、様々な表色系が知られている。RGB表色系、マンセル表色系などは、その一例である。また、放送用に用いられている色差信号直交座標系が知られている。ここでは、図7(b1)と(c1)とを参照して、後者の一例である色差信号直交座標系の信号YCbCrについて説明する。信号YCbCrは、輝度の情報(Y)と色差の情報(CbとCr)とを用いて色を識別する。
【0095】
この図7(b1)に示すグラフのCb(横軸)とCr(縦軸)にとる座標系上には、基準の色(赤R、緑G、青B、シアンC、マゼンタM、黄Y)の点が配置される。基準の色は、それぞれ1点に集約されるが、自然の色の場合には、ある点の周辺に分散する。この座標系の原点は、白、グレー、黒などの無彩色が対応付けられる。原点から遠くなるほど濃い色が対応付けられる。この図7(c1)に示すグラフは、輝度の情報(Y)に対する分布(縦軸)が示されている。この座標系の原点が黒になり、横軸が大きくなるほど輝度(Y)が高い白になる。
【0096】
例えば、図7(b1)にバナナの初期段階の色の分布を示すと、基準の色(緑G)の点に近いGr-Gの範囲に、バナナに対応する各抽出ポイントの色を示す点が分布する。
【0097】
なお、画像IMには、食品(バナナ)の背景が含まれることがある。色差空間変換処理部431は、食品の背景を、画像処理により、背景の色を無彩色化したり、背景側に位置すると識別された抽出ポイントのデータを無効化したり」してもよい。例えば、上記の画像処理には、食品が配置されていないときの画像との差を利用する背景差分の手法、又は保管容器1の内側の色を、食品の色とは異なる特定の色にしておいてクロマキーなどの手法を適用してよい。以下の説明では、背景にあたる抽出ポイントの色を示す点の分布を省略して説明する。
【0098】
バナナの熟成が進み緑色から黄色に変わる過程では、その中間の色が検出される。さらに熟成が進むと、各抽出ポイントの色の分布が、緑色に対応する領域Gr-Gから黄色に対応する領域Gr-Yになった状態を図7(b2)に示す。この図7(b2)に示す段階になると、緑色であったバナナが黄色くなった状態にある。
【0099】
上記のように各抽出ポイントの色の分布が移動する。色差空間変換処理部431は、各抽出ポイントの色を示す点の座標上の位置情報を用いた統計的な処理により、各画像を撮像した時点kのバナナの色を(YCbCr)kとして数値化する。例えば、統計的な処理とは、所定の個数又は所定の範囲内の抽出ポイントの色を選択して、それらの点の分布の重心(CbwとCrw)、座標軸ごとの平均値、座標軸ごとの中心値、座標軸ごとの最大値と最小値、座標軸ごとの分布、座標軸ごとの分布範囲の幅(最大値-最小値に相当)などを、その画像が撮像された時点の食品の色の特徴量としてもよい。図7(b1)から(b3)では、各点の分布の重心を模式化して示している。
【0100】
バナナの熟成を検出する場合に、前述の図4に示した処理の中の第1条件が満たされることとは、バナナの色が緑色から黄色に変わることであり、同様に第2条件が満たされることとは、バナナの色が黄色から茶色に代わることである。これを数値化した表現で換言すると、例えば、第1条件が満たされることとは、各抽出ポイントの色の分布が、緑色に対応する領域Gr-Gから黄色に対応する領域Gr-Yになったことであり、同様に第2条件が満たされることとは、黄色に対応する領域Gr-Yから茶色に対応する領域Gr-Brになったことである。より具体的には、第1条件が満たされることは、抽出ポイントの分布の重心の値Crwが、色差の情報Crの第1閾値(例えば、0)を超えて正になることであり、第2条件が満たされることとは、抽出ポイントの分布の重心の値Crwが、色差の色差の情報(CbとCr)によって示される茶色の領域内に入ることである。判定処理部432は、上記のように定められた第1条件と第2条件を、前述の図4に示した処理を適用してよい。上記の具体的な数値は一例であり、これを変更することに制限はない。
【0101】
次に、図8を参照して、食肉の事例について説明する。図8は、実施形態の食肉の画像の画像処理を説明するための図である。
【0102】
図8(a1)から(a3)に示されたIM21、・・・、IM25、・・・、IM28、・・・の各画像は、カメラ31によって連続して検出された食肉の画像の一例である。上記の各画像は時刻t21、t25、t28に撮像されたものとする。上記の各画像を纏めて示す場合には、単にIMと呼ぶ。時刻t21、t25、t28に対応する食肉の色は、それぞれ生肉の赤、乾燥が進んで黒ずんだ赤、表面がカビに覆われて白又は緑に変化する。
【0103】
色差信号直交座標系を用いて、食肉の色(Cb,Cr)の分布を図8(b1)から図8(b3)に示し、食肉の輝度(Y)の分布を図8(c1)から図8(c3)に示す。なお、図8(b1)から図8(b3)内で向かって右側に、色差Crの分布(横軸)を示すグラフを追加している。
【0104】
図8(b1)から図8(b3)と、図8(c1)から図8(c3)とに示すように、食肉の表面の色、明るさが変化することにより、各図に示す点の分布が変化する。前述のバナナの場合と同様に、この座標系を用いることで、色差空間変換処理部431は、食肉の表面の色の変化を数値化することができ、判定処理部432は、その変化を識別することが可能になる。
【0105】
本実施形態の表面状態検出部43は、上記のような表色系を用いた色空間に、画像から抽出した色に対応する点を配置して、各点の座標空間内の位置情報を数値解析することで、その画像内の食物の色から食物の状態の変化を識別する。上記の色差信号直交座標系は、一例であり、これに制限されることなく他の表色系を用いてもよい。表面状態検出部43のより具体的な事例については後述する。
【0106】
上記のように、カメラによって得られた1枚の画像に基づいて、食品の状態を大別することができる。ただし、食品の種類により、カメラによって得られた1枚の画像の情報だけでは、食品の状態を詳細に判定することは難しい場合がある。例えば、食肉の熟成度を詳細に検出することは、表面状態検出部43の検出結果を用いた判定が難しい場合の一例である。上記の場合、複数の検知方法によって得られた測定データを組み合わせて複合的に熟成度を判定するとよい。
【0107】
(食品の重量の変化から熟成度を検出する処理)
食品の重量の変化から熟成度を検出する処理について説明する。
保管容器1に保管されている牛肉は熟成すると含有している水分が蒸発し、牛肉の重量が軽くなる。熟成度推定処理部45は、重量センサ34が例えば1時間ごとに検知した牛肉(食肉)の重量のデータを用いて、その熟成度を検出する。検出開始時から重量の測定値が変化しない場合は、熟成度推定処理部45は、熟成が進んでいないと判定する。測定値による重量が10%以上軽くなった場合には、熟成度推定処理部45は、熟成初期になったと判定する。牛肉の重量が10%以上軽くなるような段階では、牛肉の表面がカビや皮膜で覆われるため、水分の蒸発は抑制される。熟成度推定処理部45は、水分の蒸発がなくなった時点から所定期間(10日間ほど)が経過した時点で、熟成が進んだ熟成後期にあると判定してよい。熟成度推定処理部45は、それ以上の日数が経過した場合には腐敗と判定するとよい。
【0108】
この場合に、前述の図4に示した処理の中の第1条件が満たされることとは、食品の重量が第1閾値(10%)以上軽くなることであり、同様に第2条件が満たされることとは、食品の重量の変化(変化量又は変化率)が第2閾値未満になってから所定期間が経過することである。例えば、上記の所定期間には、数日程度必要とされるときがある。
【0109】
(食品の周囲の空気の湿度の変化から熟成度を検出する処理)
食品の周囲の空気の湿度の変化から熟成度を検出する処理について説明する。
上記の「食品の重量の変化から熟成度を検出する」場合にも関連するが、食肉(食品)
の表面の状態又は食肉に含有される水分量が変化すると食肉からの水分の蒸発は抑制される。そのため、食肉からの水分の蒸発量によって、食肉の周囲の空気の湿度が変化する。湿度センサ36が、食肉の周囲の空気の湿度を定期的に検出して、熟成度推定処理部45は、この湿度の変化から間接的に食品の水分量の変化を検出する。食肉の場合には、熟成度推定処理部45は、上記の「食品の重量の変化から熟成度を検出する」処理に準じて判定を行うとよい。
【0110】
(食品に含有される成分の量から熟成度を検出する処理)
食品に含有される成分の量から熟成度を検出する処理について説明する。
熟成するとグルタミン酸やイノシン酸の含有量が変化する食品がある。グルタミン酸とイノシン酸は、旨味成分の一種である。
【0111】
そこで、検知部として、例えばアミノ酸(グルタミン酸)の検知が可能なセンサを用いて、1時間ごとの食品のアミノ酸の量を検知する。
【0112】
例えば、検知部によって検出されたアミノ酸の量が、収納初期の量に比べ5%増加したときに熟成初期、10%増加したときに熟成後期、15%以上増加したときに腐敗と判定するように判定基準を定める。
【0113】
牛肉を例に挙げて、より具体的な一例を示す。牛肉の熟成が進むと表面のたんぱく質がアミノ酸に変化する、さらに時間が進むと表面にカビが発生する。そのため、牛肉の表面の化学成分を検出することで、牛肉の熟成度を検出することができる。牛肉の質量に対するグルタミン酸の量が収納初期に30 mg/100 gであったとする。熟成度推定処理部45は、この収納初期の検出値を基準値にして、基準値の5%増の31.5 mg/100 gまでグルタミン酸が増加した場合に熟成初期と判定し、その後、基準値の10%増の33 mg/100 gまでグルタミン酸が増加したときに、熟成後期と判定する。
【0114】
イノシン酸についても同様に、予め定められた1又は複数の閾値を用いて、食品の質量に対する含有量に基づいて熟成初期、熟成後期、腐敗を識別するとよい。グルタミン酸の場合と同様に、熟成度推定処理部45は、牛肉の質量に対するイノシン酸の量を、食品の熟成の判定に利用するとよい。
【0115】
また、食品の熟成が進むと、同時にヒスタミン、アンモニアなどの最終代謝産物も、食品内に蓄積していく。例えば、ヒスタミンの量が多くなった食品は、食に適さない。そこで、熟成度推定処理部45は、検知部にヒスタミンの検知が可能なセンサを用いて、1時間ごとに食品のヒスタミンの量を検知する。食品の重量に対するヒスタミンの量が規定の値を超えた場合には、食に適さない状態にあるため食品が腐敗したと判定する。
【0116】
この場合に、前述の図4に示した処理の中の第1条件が満たされることとは、検出されたアミノ酸(グルタミン酸)の量が、収納初期の量に比べ第1変化量(10%)以上増加することであり、同様に第2条件が満たされることとは、第1に、検出されたアミノ酸(グルタミン酸)の量が、収納初期の量に比べ第2変化量(15%)以上増加することであり、第2に、食品の重量に対するヒスタミンの量が規定の値を超えることである。安全性の観点から、第2条件におけるアミノ酸(グルタミン酸)の変化量の条件と、ヒスタミンの量の条件の何れかが満たされたときに、熟成度推定処理部45は、上記の第2条件が満たされたとするとよい。
【0117】
牛肉の他にも熟成させると旨味成分が増加する食品がある。例えば、鶏肉の場合、グルタミン酸の量が増加する。例えば、鶏肉のグルタミン酸の量が収納初期に30 mg/100 gであったとする。熟成度推定処理部45は、72時間後のグルタミン酸の量が60 mg/100 gになっているときには、その量が100%増になり、予め定められた規定値(15%)を超えていて過度に熟成された状態にあることから、この鶏肉を腐敗と判定する。
【0118】
熟成度推定処理部45は、鶏肉についても同様に、ヒスタミンの量に基づいて腐敗を判定してもよい。鶏肉のヒスタミンの量が初期0 mg/100 gであり、72時間後のヒスタミンの量が30 mg/100 gであれば、熟成度推定処理部45は、ヒスタミンの量が規定値を超えたために腐敗であると判定する。この規定値は、例えば、食品の安全性を確保するように予め定められた値である。
【0119】
熟成度推定処理部45は、食品の旨味成分に基づく判定処理に、グルタミン酸の量に基づく判定とイノシン酸の量に基づく判定の何れか一方を用いてもよく、その両方を用いてもよい。上記の旨味成分に基づく判定と、ヒスタミンの量に基づく判定とを適宜組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0120】
上記の食品に含有される成分の量から熟成度を検出する処理に用いる検知部には、例えば、接触式の接触センサ35、又は非接触式の赤外分光ユニット32を用いるとよい。
【0121】
例えば、接触センサ35は、接触して測定するため測定時に電極膜に物質が付着する。物質がついたままの状態で測定を行うと、接触センサ35は、物質があるものと誤検知することがある。そのため、接触センサ35の接触面をクリーンに保つことが必要であり、適宜リフレッシュして測定を行う。
【0122】
赤外分光ユニット32は、食品の成分を識別可能なIRスペクトル分析の結果を出力する。例えば、赤外分光ユニット32は、赤外線を食品に照射して、食品からの反射光に基づいた赤外線の波長領域のスペクトル(IRスペクトル)を検出する。
【0123】
情報処理ユニット4は、例えば、食品の反射光のスペクトルの変化に係る情報に基づいて食品の熟成度を熟成度推定処理部45に推定させる。
【0124】
<食品の種別の識別>
保管容器1は、例えば、予め食品の種類を識別する。食品の種類は、大分類で肉類、果物、野菜などに分類され、中分類で大分類に属する食品の種別が分類され、小分類で中分類に特定される食品の種別の部位、種類などが分類される。この識別を細分化するほど、熟成度の判定精度を高めることができる。
【0125】
食品の種別の識別方法には、カメラ31の画像IMを用いた画像認識処理を用いてもよい。カメラ31の画像IMを用いた画像認識処理には、認識対象の食品の種類の画像を用いて学習させた学習済みモデルを用いた画像認識の手法を適用してよい。
【0126】
ここでは、食品種別判定部42は、画像認識によって、例えば、牛肉、鶏肉などの食肉と、リンゴ、バナナなどの果実と、葉物野菜とを分類する。
【0127】
次に、食品種別判定部42について説明する。食品種別判定部42は、予め学習された第1学習モデル420を用いて、カメラ31により撮影された画像IMに基づき食品の種別を判定する。詳しく述べると、第1学習モデル420は、カメラ31により撮影された画像IMから、その画像IMに写っている食品の種類の識別結果を出力するように学習されたニューラルネットワークである。第1学習モデル420は、熟成度の識別対象にする食品が写った画像IMと、その画像IMに対応する正解情報(食品の種別)とが対応付けられたデータセットを教師データとして学習されている。本実施形態では、第1学習モデル420がコンボリューションネットワーク(CNN)により構築される例について説明する。
【0128】
図9は、CNNにより構成された第1学習モデル420を模式的に示す構成図である。第1学習モデル420は、入力層421、複数の隠れ層422、及び出力層423を含む。複数の隠れ層422は、畳み込み層422A、プーリング層422B、不図示のReLU(Rectified Linear Unit)層などを含む。畳み込み層422Aは、画像に対する畳み込み演算(画像に対するフィルタ処理)を行う。プーリング層422Bは、画像を縮小する処理を行う。ReLU層は、演算結果の負の値を0にする処理を行う。畳み込み層422A、プーリング層422B、及びReLU層により1つの中間層が形成されており、この中間層が何層にも重ねられている。隠れ層422の最終段には、全結合層422Cが設けられている。入力層421に対する入力データとして1枚の画像IMが与えられる。
【0129】
図10は、第1学習モデル420に用いられるニューラルネットワークの一部を模式的に示す構成図である。xは、各層のユニット(ノード)の値を示す。例えば、第1学習モデル420に画像IMが入力される場合、入力層421におけるxは、画素値に相当する値になる。各ユニットの値は、1つ前の層のユニットの出力に重みwを乗算して加算した値を所定の関数fで計算したものである。これらを式で表すと次のようになる。
【0130】
【数1】
【0131】
ここで、bは、バイアス項である。関数fとしては、ReLUやシグモイド関数などが用いられる。上記式(1)の計算を入力層421から出力層423まで繰り返すことで、第1学習モデル420による判定結果が求まる。「学習」とは、重みw及びバイアス項bなどを適切な値に調整することを意味する。学習は、確率的勾配降下法、誤差逆伝搬法などを用いて行われる。すなわち、各層の重みw及びバイアス項bにランダムな値を与え、教師データとなるデータセットを入力層421に与える。
【0132】
なお、学習段階では、各種食品の画像を用いることで、特定の食品の種類の正解データは、他の食品の種類の不正解データになる。このように各種食品の画像を用いれば、正解データだけでなく、不正解データも与えることができる。識別処理の前処理として画像を加工してもよい。例えば、ランダムな領域のクリッピングや左右反転、回転、輝度の変更、コントラストの変更、白色化などがその一例である。
【0133】
(表面状態検出処理)
次に、表面状態検出部43について説明する。
表面状態検出部43に判定処理部432は、予め学習された第2学習モデルを含む。判定処理部432は、その第2学習モデルを用いて、カメラ31により撮影された画像IMに基づき食品の表面の状態を検出する。詳しく述べると、第2学習モデルは、カメラ31により撮影された画像IMから、その画像IMに写っている食品の表面の状態から食品の熟成度の識別結果を出力するように学習されたニューラルネットワークである。第2学習モデルとして、フィードフォワード型多層ニューラルネットワーク(DNN)を用いて構築する事例について説明する。
【0134】
図11は、実施形態の判定処理部432を模式的に示す構成図である。
DNN内のニューロンは、前述の図10の構成例を適用する。判定処理部432は、画像IMに基づいた輝度の情報(Y)と色差の情報(CbとCr)とに基づいて、第2学習モデルを用いて3段階にクラス分けする。第2学習モデルの第1隠れ層LH1のノード数は6つであり、第2隠れ層LH2のノード数は3つである。各層間は、全結合層で形成されている。第2隠れ層LH2は、第1隠れ層LH1の演算結果を用いて、例えば3つの状態値を生成する。出力層LOは、第2隠れ層LH2によって生成された3つの状態値を用いてクラス分けの結果を得る。なお、各隠れ層のノード数を、必要とされる個数に変更してもよい。第1隠れ層LH1として、輝度の情報(Y)と色差の情報(CbとCr)との種類ごとに2つのノードを対応付けて設けて、入力層LIと第1隠れ層LH1との間の結合を制限して、共通する熟成度のノード同士を選択的に結合してもよい。
【0135】
判定処理部432の第2学習モデルは、熟成度の識別対象にする食品が写った画像IMと、その画像IMに対応する正解情報(食品の種別ごとの熟成度)とが対応付けられたデータセットを教師データとして学習されている。
【0136】
なお、第2学習モデルの構成を、図11に太線で示したノードとノード間の結合まで縮退しても、前述の図7に示したバナナの判定の事例に適用可能である。ノード数と結合数を多くするほど、より細かな条件の判定が可能になる。
【0137】
(熟成度推定処理)
次に、熟成度推定処理部45について説明する。
図12図13は、実施形態の熟成度推定処理部45を模式的に示す構成図である。熟成度推定処理部45は、予め学習された第3学習モデル451、452を用いて、各種測定データに基づいて食品の熟成度を検出する。詳しく述べると、第3学習モデル451、452は、各種測定データから食品の熟成度の識別結果を出力するように予め学習される。例えば、第3学習モデル451、452の学習には、各種測定データと、その各種測定データに対応する正解情報(食品の種別ごとの熟成度)とが対応付けられたデータセットを教師データとして用いる。本実施形態では、第3学習モデル451、452を、DNNを用いて構築する事例について説明する。最初に示すモデルの事例は、フィードフォワード型DNNの一例である。DNN内のニューロンは、前述の図10の構成例を適用する。
【0138】
第3学習モデル451、452は、食品の種別ごとに設けられ、食品の種別に対応するように教師付き学習がなされたものである。例えば、その学習において、確率的勾配降下法、誤差逆伝搬法などを使用して、評価の誤差を低減し評価の精度を高めるように特性を最適化するとよい。なお比較的規模が小さい場合には、入力層LIから出力層LOに向かって、各層の特性を逐次最適化してもよい。
【0139】
なお、第3学習モデル451、452の入力層LIのノード数は、判定に用いる入力データの種別数により決定される。入力層LIの各ノードには、カメラ31以外の検知ユニット3の各センサによって検出された測定データがそれぞれ入力される。出力層LOのノード数は1である。第3学習モデル451、452は、熟成度の判定結果を出力する。入力層LIと出力層LOの間に複数の隠れ層(例えば、隠れ層LH1、LH2)が設けられている。各隠れ層のノード数は、入力層LIのノード数と出力層LOのノード数よりも多い。
【0140】
(第3学習モデル451の実施例)
図12に示す第3学習モデル451は、1種類の測定データを用いて3段階にクラス分けした結果を得る場合に適用されるとよい。第3学習モデル451の入力層LIのノード数は1つであり、第1隠れ層LH1のノード数は2つであり、第2隠れ層LH2のノード数は3つである。第3学習モデル451の第1隠れ層LH1は、互いに異なる条件を用いて測定データに対する演算を行い、第2隠れ層LH2は、第1隠れ層LH1の演算結果を用いて、3つの状態値を生成する。出力層LOは、第2隠れ層LH2によって生成された3つの状態値を用いてクラス分けの結果を得る。この第3学習モデル451を用いることで、1種類の測定データを用いた前述の図4のステップS21からS25の処理と同等の結果を得ることができる。なお、図4の処理の中で判定に用いる第1条件と第2条件を、第3学習モデル451の第1隠れ層LH1の重みw及びバイアス項bの値を調整して規定することができる。
【0141】
(第3学習モデル452の第1実施例)
図13に示す第3学習モデル452は、第1実施例として互いに独立した複数種類の測定データを用いて3段階にクラス分けした結果を得る場合に適用されるとよい。例えば、図13に示す第3学習モデル452の第1隠れ層LH1のノード数は6つであり、第2隠れ層LH2のノード数は3つである。第2隠れ層LH2は、第1隠れ層LH1の演算結果を用いて、3つの状態値を生成する。出力層LOは、第2隠れ層LH2によって生成された3つの状態値を用いてクラス分けの結果を得る。例えば、第3学習モデル452の各層のノードの間は、階層ごとに互いに結合された全結合層で形成されている。なお、各隠れ層のノード数を必要とされる個数に変更してもよく、各隠れ層の層数を必要とされる層数に変更してもよい。
【0142】
第3学習モデル452を用いることで、互いに独立した複数種類の測定データを用いた前述の図4のステップS21からS25までの処理と同等の結果を得ることができる。この場合の測定データには、複数種類のセンサから得られた測定データを適用できる。例えば、食肉の熟成度を識別する際の測定データとして、アミノ酸の量と、ヒスタミンの量と、収納物(食品)の重量の変化の情報などを用いることができる。
【0143】
また、第3学習モデル452であれば、図4の処理の中で判定に用いた第1条件と第2条件を規定する測定データの種類を変えたり、測定データの種類の組み合わせを変えたりすることができる。例えば、第1条件をアミノ酸の量に基づいて規定して、第2条件をアミノ酸の量と、ヒスタミンの量と、収納物の重量の変化の情報などを用いて規定することができる。
【0144】
(第3学習モデル452の第2実施例)
前述の図13を参照して第3学習モデル452の第2実施例について説明する。
第3学習モデル452は、第2実施例として、特定の種別の時系列の測定データを用いて、3段階にクラス分けした結果を得る場合に適用されるとよい。前述の第1実施例との違いは、時系列の測定データの数値を入力変数に追加した点にある。本実施例の入力層LIのノード数は過去の測定データの個数に合わせて構成される。例えば、過去の測定データが1つの場合には、入力層LIのノード数は2つであり、第1隠れ層LH1のノード数は任意の個数であり、第2隠れ層LH2のノード数は3つである。第3学習モデル451の第1隠れ層LH1の演算に、測定データの初期段階の数値と現時点の数値を変数に用いた演算が可能になる。演算に用いる重みwの値により、測定データの初期段階の数値と現時点の数値の偏差又は平均値の情報が利用できる。
【0145】
例えば、10日分の測定データの変化を検出するために、1日1つの測定データを用いる場合には、入力層LIのノード数は10個になる。例えば、演算に用いる重みWの規定の仕方で、10日分の測定データの値に変化がない、測定データの偏差が所定値より小さい、又は偏差の大きさの変化の傾向などの情報が利用可能になる。
【0146】
(第3学習モデルの他の実施例)
上記の第3学習モデル451、452として、フィードフォワード型多層ニューラルネットワークを例示したが、本実施形態にリカレントニューラルネットワーク(RNN)により構築してもよい。RNNは、隠れ層の状態値を、前段の隠れ層のノードの入力変数として扱うノードを有する。これにより、後段の隠れ層の状態値に応じて演算を変えることが可能になる。例えば、前述の時系列の測定データを扱う場合に、RNNを用いて実現してもよい。
【0147】
(情報処理ユニット4の実施例)
図14を参照して、複数の測定データと画像IMとを用いて、食品の熟成度を検出する事例について説明する。
図14は、実施形態の表面状態検出部43と熟成度推定処理部45の構成図である。
表面状態検出部43は、判定処理部432に代えて判定処理部432Aを備える。判定処理部432Aは、判定処理部432(第2学習モデル)の出力層LOを除いたものである。
【0148】
熟成度推定処理部45は、第3学習モデル452A-1、452A-2と、第3隠れ層HL3と、出力層LOとを備える。第3学習モデル452A-1、452A-2は、第3学習モデル452の出力層LOを除いたものである。
【0149】
第3学習モデル452A-1は、成分に関する複数種類の測定データ(アミノ酸k、ヒスタミンk、・・・。kは、現時点を示す。)を入力データに用いる。第3学習モデル452A-2は、現在と過去の重量に関する測定データ(初期段階の重量0、・・・、現時点の重量k)を入力データに用いる。
【0150】
第3隠れ層LH3のノード数は3つである。第3隠れ層LH3は、判定処理部432の第2隠れ層LH2と、判定処理部432の第3学習モデル452A-1、452A-2の各第2隠れ層LH2の各演算結果を用いて、3つの状態値を生成する。例えば、第3隠れ層HL3の入力側は、判定処理部432の第2隠れ層LH2と、判定処理部432の第3学習モデル452A-1、452A-2の各第2隠れ層LH2とに対して、共通する熟成度のノード同士が選択的に接続される。出力層LOは、第3隠れ層LH3によって生成された3つの状態値を用いてクラス分けの結果を得る。
【0151】
上記は、食肉(牛肉)の熟成度の検出に適したの熟成度推定処理部45を有する情報処理ユニット4の一実施例である。このような構成によれば、測定データの種類ごとに設けられたモデルをそれぞれ最適化して、各モデルのクラス分けの結果を組み合わせて判定することができる。比較的学習が容易な構成であるが、モデルが測定データの種類ごとに分かれているため、境界条件の設定の自由度に制限が生じる場合がある。なお、境界条件の設定の自由度を高めるためには、測定データの種類ごとにモデルを分けずに、DNNを構成するとよい。
【0152】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の冷蔵庫2の貯蔵庫制御部24Aは、保管容器1の情報処理ユニット4に代わり、食品の熟成度の解析に係る一部の処理を実施する。
【0153】
図15は、第2の実施形態の保管容器1Aと冷蔵庫2Aの概略構成図である。
保管容器1Aの情報処理ユニット4Aは、保管容器1の情報処理ユニット4に対して、例えば、食品種別判定部42と、表面状態検出部43と、データ取得部44と、熟成度推定処理部45とを備えていない。
【0154】
冷蔵庫2Aは、貯蔵庫制御部24に代わる貯蔵庫制御部24Aと、貯蔵庫記憶部25に代わる貯蔵庫記憶部25Aとを備える。
貯蔵庫制御部24Aは、前述の貯蔵庫制御部24に対して、食品種別判定部42と、表面状態検出部43と、データ取得部44と、熟成度推定処理部45と、連携処理部241とを備える。
貯蔵庫記憶部25Aに格納される情報には、保管容器1Aから取得した各種測定データと画像データとがさらに含まれる。
【0155】
情報処理ユニット4Aは、検知ユニット3から、各種測定データと画像データとを取得すると、上記の各種測定データと画像データを、出力処理ユニット5を介して冷蔵庫2Aに対して転送する。これにより、情報処理ユニット4Aは、食品の熟成度を3段階以上の区分に分けて、各種測定データと画像データとに基づいて冷蔵庫2Aの貯蔵庫制御部24A(推定部)によって推定させる。
【0156】
貯蔵庫制御部24Aの連携処理部241は、情報処理ユニット4Aから送信された各種測定データと画像データとを取得する。連携処理部241は、取得した各種測定データと画像データとを貯蔵庫記憶部25Aに追加する。食品種別判定部42と、表面状態検出部43と、データ取得部44と、熟成度推定処理部45とは、貯蔵庫記憶部25Aに追加された各種測定データと画像データに基づいて、それぞれの処理を実施する。連携処理部241は、上記の各部の処理により食品の熟成度の推定結果を得て、その推定結果を操作パネル27に表示させる。なお、連携処理部241は、冷蔵庫2の冷却制御のタイミングを避けるように、検知ユニット3の測定のタイミングを決定して保管容器1Aにおける測定データの取得を制御するとよい。
【0157】
これにより、冷蔵庫2Aは、保管容器1Aに保管されている食品の熟成度を、より正確に検出することができる。
【0158】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態の冷蔵庫2Aは、保管容器1Aとは別体の装置(熟成度推定装置)である。冷蔵庫2Aが食品の熟成度の解析に係る一部の処理を実施する事例を示したが、冷蔵庫2Aは、ネットワークに接続された所謂サーバ(熟成度推定装置)として機能してもよい。また、これに代わり、ネットワークに接続された所謂サーバ(熟成度推定装置)が、食品の熟成度の解析に係る一部の処理を実施してもよい。サーバに関する図示を省略するが、サーバは、冷蔵庫2Aから冷却部26の制御を省略したものに相当する。
その際に、サーバと別体の冷蔵庫2Aと、保管容器1Aは、必要に応じて冷蔵庫2Aの制御のタイミング又は測定タイミングを変更して、保管容器1Aにおける熟成度の検出の精度を高めるとよい。
【0159】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、保管容器1に係る情報処理ユニット4は、収納空間10S内の食品の状態の検知結果を取得して、食品の熟成度を3段階以上に区分するように、上記の検知結果に基づいて食品の熟成度を推定部に推定させることで、食品の熟成度をより正確に検出することができる。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0161】
なお、出力処理ユニット5は、情報処理ユニット4による識別の結果(結果情報)を通信によって、例えば外部の端末装置又は他の制御ユニットに出力する。例えば、外部の端末装置は、PC又はスマートフォンなどであってよい。
【符号の説明】
【0162】
1、1A…保管容器、2、2A…冷蔵庫、3…検知ユニット、4、4A…情報処理ユニット、5…出力処理ユニット、6…記憶部、7…排気部、10…保管容器本体、20…筐体、21…制御基板、22…温度センサ、23…通信ユニット、24、24A…貯蔵庫制御部、25、25A…貯蔵庫記憶部、26…冷却部、27…操作パネル、31…カメラ、32…赤外分光ユニット、33…ガスセンサ、34…重量センサ、35…接触センサ、36…湿度センサ、41…画像データ取得部、42…食品種別判定部、43…表面状態検出部、44…データ取得部、45…熟成度推定処理部、46…測定制御部。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15