(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】小型フォームファクタ挿抜式トランシーバの改造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/00 20060101AFI20240806BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240806BHJP
H04B 10/50 20130101ALI20240806BHJP
H04B 10/66 20130101ALI20240806BHJP
【FI】
H05K7/00 G
H05K9/00 R
H04B10/50
H04B10/66
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020070477
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-02-08
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】エリック ユエンジュン チャン
(72)【発明者】
【氏名】デニス ジー.コシンツ
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-505899(JP,A)
【文献】特表2013-543665(JP,A)
【文献】特開2002-353898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0168963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H05K 9/00
H04B 10/50
H04B 10/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型フォームファクタ挿抜式(SFP)トランシーバを改造するための方法であって、
前記SFPトランシーバ(2)からカバー(38)を取り外すことと、
前記SFPトランシーバ(2)のプリント回路基板(PCB)(40)を前記SFPトランシーバ(2)の金属ベース(36)から分離させることと、
ピンホルダ(62)によって複数の金属ピン(60a、60b)が互いに離間して保持された状態にて、当該複数の金属ピン(60a、60b)を、前記PCB(40)上の複数の接触パッド(24)にはんだ付けすることと、
前記金属ベース(36)の底部(68)に貫通穴(66)を形成することと、
前記ピンホルダ(62)を前記貫通穴(66)に差し込むように、前記PCB(40)を前記金属ベース(36)に載置することと、
前記PCB(40)に別のカバー(80)を被せることと、
前記別のカバー(80)を前記金属ベース(36)に取り付けることと、を含む方法。
【請求項2】
はんだ付けした前記接触パッド(24)上に、非導電性の防湿シーラント(64)を付着させることさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の金属ピン(60a、60b)は、第1列と第2列(58a、58b)の金属ピンを含んでおり、前記複数の接触パッド(24)は、第1列と第2列(22a、22b)の接触パッドを含んでおり、前記第1列(58a)の金属ピンは、前記第1列(22a)の接触パッドにはんだ付けされ、前記第2列(58b)の金属ピンは、前記第2列(22b)の接触パッドにはんだ付けされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
航空機(102)に搭載されたライン交換可能ユニットのPCB(30)に、前記複数の金属ピン(60a、60b)の遠位端をはんだ付けすることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属ベース(36)の前記底部(68)に、第1及び第2の金属製ガイドピン(48a、48b)を取り付けることをさらに含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の金属ピン(60a、60b)の前記遠位端、並びに、前記第1及び第2の金属製ガイドピン(48a、48b)の遠位端を、航空機(102)に搭載されたライン交換可能ユニットのPCB(30)にはんだ付けすることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
貫通穴(66)が形成された底部(68)を有する金属ベース(36)と、
複数の接触パッド(24)が設けられた端部を有するとともに、前記金属ベース(36)に支持されたプリント回路基板(PCB)(40)と、
非導電性材料から成るピンホルダ(62)、及び、前記ピンホルダ(62)によって互いに離間して保持された複数の金属ピン(60a、60b)を含むピンヘッダ(26)と、
前記金属ベース(36)に取り付けられたカバー(80)と、を含
む小型フォームファクタ挿抜式(SFP)トランシーバ(2)であって、
前記ピンホルダ(62)が前記貫通穴(66)に差し込まれているとともに、前記複数の金属ピン(60a、60b)の各々が、前記複数の接触パッド(24)における対応する1つの接触パッドにはんだ付けされた第1部分、及び、前記貫通穴(66)に挿通された第2部分を有している
、SFPトランシーバ。
【請求項8】
前記カバー(80)は、前記PCB(40)を電磁干渉から保護する材料から成る、請求項7に記載
のSFPトランシーバ(2)。
【請求項9】
前記複数の接触パッド(24)を覆う非導電性の防湿シーラント(64)をさらに含む、請求項7又は8に記載
のSFPトランシーバ(2)。
【請求項10】
前記複数の金属ピン(60a、60b)は、第1列と第2列(58a、58b)の金属ピンを含み、前記複数の接触パッド(24)は、第1列と第2列(22a、22b)の接触パッドを含み、前記第1列(58a)の金属ピンは、前記第1列(22a)の接触パッドにはんだ付けされており、前記第2列(58b)の金属ピンは、前記第2列(22b)の接触パッドにはんだ付けされている、請求項7~9のいずれか1つに記載
のSFPトランシーバ(2)。
【請求項11】
前記金属ベース(36)の前記底部(68)に取り付けられた第1及び第2の金属製ガイドピン(48a、48b)をさらに含む、請求項7~10のいずれか1つに記載
のSFPトランシーバ(2)。
【請求項12】
光ファイバネットワーク(126)と、
前記光ファイバネットワーク(126)に光学的に結合されているとともに、複数の接触パッド(24)を有す
る小型フォームファクタ挿抜式(SFP)トランシーバ(2)と、
前
記SFPトランシーバ(2)の前記複数の接触パッド(24)のそれぞれに電気的に接続された複数のスルーホールビアを有する第1プリント回路基板(PCB)(30)を含む電子デバイス(132)と、を含むデータ伝送システム(124)であって、
前
記SFPトランシーバ(2)が、さらに、
貫通穴(66)が形成された底部(68)を有する金属ベース(36)と、
前記複数の接触パッド(24)が設けられた端部を有するとともに、前記金属ベース(36)に支持された第2プリント回路基板(PCB)(40)と、
非導電性材料から成るピンホルダ(62)、及び、前記ピンホルダ(62)によって互いに離間して保持された複数の金属ピン(60a、60b)を含むピンヘッダ(26)と、
前記金属ベース(36)に取り付けられたカバー(80)と、を含んでおり、
前記ピンホルダ(62)が、前記貫通穴(66)に差し込まれているとともに、前記複数の金属ピン(60a、60b)の各々が、前記複数の接触パッド(24)における対応する1つの接触パッドにはんだ付けされた第1部分、前記貫通穴(66)に挿通された第2部分、及び、前記複数のスルーホールビアにおける対応する1つのスルーホールビアにはんだ付けされた第3部分を有している、データ伝送システム。
【請求項13】
前
記SFPトランシーバ(2)は、前記複数の金属ピン(60a、60b)にはんだ付けされた前記複数の接触パッド(24)を覆う非導電性の防湿シーラント(64)をさらに含む、請求項12に記載のデータ伝送システム(124)。
【請求項14】
前
記SFPトランシーバ(2)は、前記金属ベース(36)の前記底部(68)に取り付けられた第1及び第2の金属製ガイドピン(48a、48b)をさらに含み、前記第1及び第2の金属製ガイドピン(48a、48b)は、前記電子デバイス(132)の前記第1PCB(30)にはんだ付けされている、請求項12又は13に記載のデータ伝送システム(124)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、概して、電気部品間の通信を可能にする光ファイバネットワークに関する。より具体的には、本開示の技術は、アビオニクス光データバス(optical avionics data bus)で相互に接続された電気アビオニクス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速のアビオニクスデータネットワークにおいて、電気配線の代わりに光ファイバケーブルを使用すれば、重量、コスト、電磁干渉、及び、電気配線の複雑さを大幅に低減することができる。現在の航空機では、ライン交換可能ユニット(LRU)(例えば、アビオニクスコンピュータ及びセンサユニットなど)は、通常、筐体内に他のLRUとの光ファイバ通信を可能にするトランシーバを備える。LRUの筐体上に設けられた光コネクタにより、外部の光ファイバケーブルをLRUに接続することができる。
【0003】
より具体的には、アビオニクス光データバスに接続された各LRUは、一般的に、他のLRUと光ファイバ通信を行うために、電気-光トランスミッタ及び光-電気レシーバ(以下、まとめて「双方向光電変換トランシーバ(optical-electrical bidirectional transceiver)」と記載する)を有する光電変換メディアコンバータを備える。電気-光トランスミッタは、電気信号を光信号に変換し、光-電気レシーバは、光信号を電気信号に変換する。LRU筐体に設けられた光コネクタは、LRUへの光ファイバケーブルの接続を可能にする。
【0004】
従来のアビオニクス光ファイバシステムでは、非挿抜式の小型フォームファクタ(non-pluggable small form factor)双方向光電変換トランシーバ(以下、「SFFトランシーバ」とする)が従来のアビオニクスシステムのLRUの内部に用いられている。しかしながら、光ファイバ業界では、現在、非挿抜式SFFトランシーバの使用を段階的に廃止し、小型フォームファクタ挿抜式(small form factor pluggable)双方向光電変換トランシーバ(以下、「SFPトランシーバ」)に置き換えていく傾向にある。本明細書において、「挿抜式」なる用語が第1部品の機能を特徴づける形容詞として用いられている場合、第1部品又は第2部品の一方の雄型部品(例えば、ピン又はプラグ)を、第1部品又は第2部品の他方の雌型部品(例えば、レセプタクル又はソケット)に挿抜することで、第1部品を第2部品に装着し、また、後から取り外しできることを意味する。
【0005】
現在、光ファイバ通信システムの多くがアップグレードされており、業界では、SFFトランシーバを用いた新たな技術や設計の導入を行っていない。市販のSFPトランシーバには、デジタル診断監視及び組み込みテストなど、最新の光ファイバ通信システムに合わせた高度な機能が組み込まれている。また、SFPトランシーバは、光ファイバ業界で広く採用されているパッケージであるので、SFPトランシーバのコストは、スケールメリットによって非常に低く抑えられている。トランシーバの開発に関する業界のこのような動向は、航空機プラットフォームに新たな光ファイバシステムを導入する際には、問題となる。例えば、新たなアビオニクス光ファイバシステムにおける多くのLRUにおいてSFPトランシーバを設置する必要がある。
【0006】
従来のいくつかのアビオニクス光ファイバシステムでは、10ピン(2×5)のデュアルインラインパッケージのSFFトランシーバが採用されている。SFFパッケージは、LRUのプリント回路基板(PCB)にはんだ付けして恒久的に取り付けることができるので、振動による脱落の心配がない。しかしながら、現在多用されているSFPトランシーバパッケージは、はんだピンを備えておらず、PCBに設けられた20ピンソケットに差し込んで連結する設計になっている。したがって、トランシーバは、PCBに恒久的に取り付けられるのではない。このような設計のSFPは、航空機以外の環境では使用可能であるが、航空機プラットフォームにおいては、振動によってSFPトランシーバが脱落したり、水分・湿度に晒されることによってSFPトランシーバの接触パッドが腐食したりする懸念があるため、許容されない。
【0007】
上述の課題に対して、異なる航空機プラットフォームごとにSFPトランシーバをカスタマイズし、密閉式のパッケージとして作製する対策が考えられる。ただし、このような対策には、多くの費用がかかると予想される。また、密閉式のSFPパッケージは、光ファイバ業界においてSFPトランシーバに関するマルチソースアグリーメントの対象様式ではないので、密閉式パッケージを作製できる業者を見つけることが難しいことも予想される。SFPトランシーバを部分的に高耐久化する先行技術もあるが、これは、SFPトランシーバのPCBをコンフォーマルコーティング(conformal coating)で被覆するだけであり、SFPトランシーバをLRUのPCBにはんだ付けすることは含んでいない。
【発明の概要】
【0008】
以下に詳細を記載する主題は、低コストの小型フォームファクタ挿抜式双方向光電変換トランシーバ(以下、「SFPトランシーバ」)を、高い耐久性でアビオニクスシステムに設置可能な構成に改造する方法に関する。本明細書において「高耐久化/高い耐久性」なる用語が用いられている場合、振動又は湿度の影響に対する耐性を高めるようにデバイスを補強することを意味する。より具体的には、本開示の主題は、SFPトランシーバをデュアルインラインパッケージに改造して耐久性を高める方法に関する。このように改造されたSFPトランシーバは、航空機システムにおけるライン交換可能ユニット(LRU)のプリント回路基板(PCB)に直接はんだ付けすることができるので、航空機の運航中の振動によってSFPトランシーバが外れてしまうという懸念を解消することができる。加えて、本方法は、SFPトランシーバの接触パッドを保護する封止プロセスを含み、これにより、水分と湿度に長く晒される接触パットの腐食の懸念を解消することができる。本明細書が提案する改造方法は、挿抜式トランシーバパッケージをデュアルインラインのトランシーバパッケージに改造するものである。本方法によるプロダクトとして、厳しい航空機環境における過酷な使用に耐えうるように、高い耐久性で設置可能なSFPトランシーバが得られる。
【0009】
いくつかの実施形態では、SFPトランシーバのPCBに設けられた接触パッドにピンヘッダをはんだ付けするとともに、取り付けたピンを挿通させる穴をSFPトランシーバの底部に形成することで、挿抜式トランシーバパッケージをデュアルインラインのトランシーバパッケージに改造する。一態様では、20個の接触パッドを有するSFPトランシーバを、20本のピンを配列したデュアルインラインパッケージに改造する。このように改造されたSFPトランシーバは、航空機システムのLRUのPCB(例えば、インターフェースPCB)に、直接はんだ付けすることが可能である。また、本明細書で提案する方法は、SFPトランシーバの接触パッドを封止するプロセスをさらに含む。加えて、SFPパッケージに一対のガイドピン(alignment pin)を設けて機械的な支持を強化して、上述したように大きな振動を受ける航空機環境における耐性をさらに高めている。さらに、SFPパッケージに金属製のカバーを被せて、SFPトランシーバを電磁干渉(EMI)から保護するように改善している。
【0010】
本明細書において用いられる「デュアルインライン」なる用語は、互いに離間した2組の要素(例えば、金属ピン)を別々の線に沿って配列した構成を意味する。典型的には、2つの線は、互いに平行で直線的である。しかしながら、直線的であることも、平行であることも必須の要件ではなく、LRUのPCBに配置された接触パッドに対して金属ピンが適切にアライメントされていればよい。
【0011】
本明細書において提案する方法は、以下を含む多くの利点を有する。(1)最新のアビオニクス光ファイバシステムに必要な高耐久化SFPトランシーバのコストを低減することができる。(2)SFPトランシーバのPCBに配置された金属製の接触パッドを封着するので、SFPトランシーバに高価な密閉型パッケージを使用する必要を排除できる。(3)最新の航空機プラットフォームに用いられるSFPトランシーバの信頼性を高めることができる。(4)航空機システムに用いられるSFPトランシーバのEMI保護を実現することができる。
【0012】
次に、環境から受ける悪影響(例えば、振動及び湿度)に対する耐性を高めるようにSFPトランシーバを改造する方法について、様々な実施形態を説明する。これらの実施形態のうちの1つ以上は、下記の1つ以上の態様によって特徴づけできるであろう。
【0013】
以下に詳細に説明する主題の一態様は、小型フォームファクタ挿抜式(SFP)トランシーバを改造するための方法に関する。前記方法は、前記SFPトランシーバからカバーを取り外すことと、前記SFPトランシーバのプリント回路基板(PCB)を前記SFPトランシーバの金属ベースから分離させることと、ピンホルダによって複数の金属ピンが互いに離間して保持された状態にて、当該複数の金属ピンを、前記PCB上の複数の接触パッドにはんだ付けすることと、前記金属ベースの底部に貫通穴を形成することと、前記ピンホルダを前記貫通穴に差し込むように、前記PCBを前記金属ベースに載置することと、前記PCBに別のカバーを被せることと、前記別のカバーを前記金属ベースに取り付けることと、を含む。
【0014】
直前の段落に記載した方法の一実施形態によれば、前記別のカバーは、前記PCBを電磁干渉から保護する材料から成る。この実施形態による方法は、さらに、はんだ付けした前記接触パッド上に、非導電性の防湿シーラントを付着させることと、前記金属ベースの前記底部に、第1及び第2の金属製ガイドピンを取り付けることと、を含む。
【0015】
以下に詳細に説明する主題の別の態様は、改造型小型フォームファクタ挿抜式(SFP)トランシーバに関する。前記改造型SFPトランシーバは、貫通穴が形成された底部を有する金属ベースと、複数の接触パッドが設けられた端部を有するとともに、前記金属ベースに支持されたプリント回路基板と、非導電性材料から成るピンホルダ、及び、前記ピンホルダによって互いに離間して保持された複数の金属ピンを含むピンヘッダと、前記金属ベースに取り付けられたカバーと、を含む。前記ピンホルダは、前記貫通穴に差し込まれており、前記複数の金属ピンの各々は、前記複数の接触パッドにおける対応する1つの接触パッドにはんだ付けされた第1部分、及び、前記貫通穴に挿通された第2部分を有する。前記カバーは、前記PCBを電磁干渉から保護する材料から成る。
【0016】
一実施形態によれば、直前の段落に記載した前記改造型SFPトランシーバは、さらに、前記複数の接触パッドを覆う非導電性の防湿シーラントと、前記金属ベースの前記底部に取り付けられた第1及び第2の金属製ガイドピンと、を含む。提案する一態様において、前記複数の金属ピンは、第1列と第2列の金属ピンを含み、前記複数の接触パッドは、第1列と第2列の接触パッドを含み、前記第1列の金属ピンは、前記第1列の接触パッドにはんだ付けされており、前記第2列の金属ピンは、前記第2列の接触パッドにはんだ付けされている。
【0017】
以下に詳細に説明する主題のさらに別の態様は、データ伝送システムに関する。前記データ伝送システムは、光ファイバネットワークと、前記光ファイバネットワークに光学的に結合されているとともに、複数の接触パッドを有する改造型小型フォームファクタ挿抜式(SFP)トランシーバと、前記改造型SFPトランシーバの前記複数の接触パッドのそれぞれに電気的に接続された複数のスルーホールビアを有する第1プリント回路基板(PCB)を含む電子デバイスと、を含む。前記改造型SFPトランシーバは、さらに、貫通穴が形成された底部を有する金属ベースと、前記複数の接触パッドが設けられた端部を有するとともに、前記金属ベースに支持された第2プリント回路基板(PCB)と、非導電性材料から成るピンホルダ、及び、前記ピンホルダによって互いに離間して保持された複数の金属ピンを含むピンヘッダと、前記金属ベースに取り付けられたカバーと、を含む。前記ピンホルダは、前記貫通穴に差し込まれている。前記複数の金属ピンの各々は、前記複数の接触パッドにおける対応する1つの接触パッドにはんだ付けされた第1部分、前記貫通穴に挿通された第2部分、及び、前記複数のスルーホールビアにおける対応する1つのスルーホールビアにはんだ付けされた第3部分を有する。
【0018】
直前の段落に記載した前記データ伝送システムの一実施形態によれば、前記改造型SFPトランシーバは、さらに、前記複数の金属ピンにはんだ付けされた前記複数の接触パッドを覆う非導電性の防湿シーラントを含む。前記改造型SFPトランシーバは、さらに、前記金属ベースの前記底部に取り付けられた第1及び第2の金属製ガイドピンを含む。前記第1及び第2の金属製ガイドピンは、前記電子デバイスの前記第1PCBにはんだ付けされている。提案する一態様において、前記電子デバイスは、航空機に装着されたライン交換可能ユニットである。
【0019】
以下に、環境から受ける悪影響に対する耐性を高めるようにSFPトランシーバを改造する方法の他の態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
先のセクションに記載した特徴、機能、及び、利点は、様々な実施形態において個別に実現することも、さらに別の実施形態と組み合わせることも可能である。以下に、上述の態様及び他の態様を説明することを目的として、添付図面を参照して様々な実施形態を説明する。以下に簡単な説明を示すが添付図面は、いずれも正確な縮尺で描かれているものではない。
【0021】
【
図1】光データ通信ネットワークを含むデータ処理システムが航空機に搭載された状態を三次元で示す切り欠き図である。
【
図2】同じ波長の光を送信及び受信する設計のデュアルファイバ双方向SFPトランシーバのいくつかの特徴を示すブロック図である。
【
図3】従来の航空機システムに用いた典型的なデュアルファイバ双方向SFPトランシーバのいくつかの特徴示すブロック図である。
【
図4】端部要素/レセプタクルの組立体を断面で示す図である。
【
図5】光ファイバを光電子デバイスに光学的に結合するために、
図4の端部要素に挿入可能な光ファイバケーブルの一部を示す側面図である。
【
図6】本開示の方法に従って改造する前のSFPトランシーバを三次元で示す図である。
【
図7-13】一実施形態による改造プロセスの各段階におけるSFPトランシーバ又はその部品を三次元で示す図である。
【
図14】一実施形態によって高耐久化されたSFPトランシーバを三次元で示す図である。
【
図15】一実施形態によって高耐久化されたSFPトランシーバをLRUのPCBにはんだ付けした状態を三次元で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
環境から受ける悪影響に対する耐性を高めるようにSFPトランシーバを改造する方法の例示的な実施形態を以下に説明する。ただし、実施に際して必要なすべての特徴が本明細書に記載されているわけではない。当業者には認識されるように、実施形態を実際に開発する際は、例えば、システム関連の要件及びビジネス関連の要件の遵守など、実施態様毎に異なる開発者の目的を達成するべく決定される各実施に固有の事項が多数ある。そのような開発努力は、複雑で、時間を要するものではあるが、本開示の利益に基づけば、当業者が定常的に行うことができる範疇に過ぎないことは理解されよう。
【0023】
以下に、航空機に搭載されたライン交換可能ユニット間における光通信を可能にするための光ファイバネットワークについて、様々な実施形態を説明する。ただし、これらは、あくまでも例示を目的とするものである。本明細書に開示する光ファイバネットワークの実施態様は、航空機を環境とするものには限定されず、他の種類の輸送体、又は、他の種類の光ファイバネットワーク(例えば、地上長距離伝送、データセンタ間、及び、一般家庭や企業向けの光ファイバ通信の用途など)にも用いられる。
【0024】
光ファイバネットワークは、銅線ネットワークに比べて高速で軽量であるとともに、電磁干渉を受けにくいという長所を有する。光ファイバネットワークは、小型化、軽量化、及び、省電力化を目的として、多くの民間航空機モデルに採用されている。一般的に、複数のライン交換可能ユニット(LRU)は、航空機システム内における通信が行えるように接続される。例えば、航空機データバスを介して、複数のLRUが輸送体(例えば、航空機)の前方セクションに接続され、複数のLRUが輸送体の後方セクションに接続される。
【0025】
以降の説明において図面を参照するが、類似の要素は、異なる図面においても同じ参照符号を用いて示されている。
【0026】
図1は、航空機102のネットワーク環境100を示している。航空機102は、本開示のコネクタが使用されるプラットフォームの一例である。
図1に示す例では、航空機102は、胴体部108に取り付けられた右翼104及び左翼106を有する。航空機102は、さらに、右翼104に取り付けられたエンジン110、及び、左翼106に取り付けられたエンジン112を有する。航空機102は、さらに、機首部114及び尾翼部116を有する。尾翼部116は、右側水平安定板118、左側水平安定板120、及び、垂直安定板122を含む。
【0027】
図1に示す航空機102は、機内データ通信及び処理システム124をさらに含み、これは、光ファイバネットワーク126及び複数のデバイス127を含む。複数のデバイスは、例えば、操縦室ディスプレイ128、飛行制御コンピュータ130、及び、他の部品の形態であって、光ファイバネットワーク126に接続(且つ光学的に結合)されている。他の種類のデバイス127は、LRU132、134、136、138、140、142、144、146及び148の形態を取りうる。また、これらのLRUは、様々な形態を取りうる。例えば、LRUは、コンピュータ、センサ、機内エンターテインメントシステム、及び、他の適当な種類のデバイスである。デバイス127内では電気信号が使用されるので、光ファイバネットワーク126から伝達された光信号は、通常、光電変換メディアコンバータ(
図1には示されていない)を用いて電気信号に変換される。光電変換メディアコンバータ(以下、「双方向光電変換トランシーバ」)は、LRUの外部にあっても、内部にあってもよい。
【0028】
1つのLRUの内部に1つ以上の光電変換トランシーバが設けられる構成のLRU(以下、「光電変換LRU」)の場合、航空機に搭載されたラックに機械的な組み立て手法によって光電変換LRUを装着してもよい。これにより、LRUを物理的に支持するとともに、自己検索(self-indexing)することができる。各光電変換LRUは、内部に双方向光電変換トランシーバを含んでおり、これは、LRUの筐体に機械的に接続された嵌め合わせコネクタ(mating connector)によって、光ファイバネットワーク126の光アビオニクスデータバスに光学的に結合される。嵌め合わせコネクタは、LRUを航空機システムに光接続するとともに、LRUを構造的に支持する。
【0029】
高速(1ギガビット/秒超)の単波長トランシーバには、送信側(Tx)出力光信号に1つのファイバを用い、受信側(Rx)入力光信号に別のファイバを用いる構成のものがある。トランスミッタは、レーザドライバと送信器(Tx)との集積回路に接続された高速レーザダイオードを有する。レシーバは、増幅器と受信器(Rx)との集積回路に接続された高帯域検出器を有する。
【0030】
図2は、SFPトランシーバ2の一例のいくつかの特徴を示す図である。このSFPトランシーバは、当業界におけるマルチソースアグリーメント(MSA)規格に準拠してパッケージングされており、より具体的には、SFP規格に従って構成されている。この実施例では、SFPトランシーバ2は、送信と受信の両方で同一の波長λ
1の光を用いる単波長デュアルファイバトランシーバである。〔本明細書において、コヒーレントなレーザ光について用いる「波長」なる用語は、狭いスペクトル幅のレーザ光の中心波長を意味する。〕
図2に一部を示すSFPトランシーバ2は、以下に詳細を説明する方法に従って高耐久化することができる。
【0031】
図2に示すように、SFPトランシーバ2は、レーザ装置4及び光検出器8を含む。レーザ装置4は、シングルモード分布帰還型(DFB)レーザ、マルチモード・ファブリペロー(FP)レーザ、又は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を用いて実装して、高い光出力と低いモーダルノイズを実現することができる。光検出器8は、高応答性p型-i型-n型(PIN)フォトダイオード又はアバランシェフォトダイオードを用いて実装して、高い応答性を実現することができる。SFPトランシーバ2は、さらに、レーザドライバ・送信回路6及び検出増幅器・受信回路10を含み、これらは、両面PCB(
図2には示されていないが、
図3のPCB40を参照のこと)に対して面実装されている。
【0032】
レーザ装置4は、関連付けられたLRU(
図2には示されていない)のインターフェースPCB30から送信側電力信号線12a及び12bのそれぞれを介して差動送信信号Tx
+及びTx-が入力されると、レーザドライバ・送信回路6によって駆動されて、波長λ
1の光を出射する。送信側電力信号線12a及び12bの端子は、LRUのインターフェースPCB30に設けられたそれぞれの接触パッド32aにはんだ付けされている。レーザドライバ・送信回路6は、これら差動信号を、レーザ装置4による送信用データを表すデジタル信号に変換する電気回路を有している。
【0033】
一方、光検出器8は、波長λ1の光を受光すると、受光した光を電気デジタル信号に変換して、検出増幅器・受信回路10に供給する。検出増幅器・受信回路10は、これらの電気デジタル信号を、受信データを表す電気差動受信信号Rx+及びRx-に変換する電気回路を含む。電気差動受信信号Rx+及びRx-は、それぞれの電気信号線14a及び14bを介して、LRUのインターフェースPCB30に送信される。受信用電気信号線14a及び14bの端子は、LRUのインターフェースPCB30に設けられたそれぞれの接触パッド32bにはんだ付けされている。
【0034】
レーザ装置4は、光ファイバ18aに光学的に結合され、これに対し、光検出器8は、光ファイバ18bに光学的に結合される。光ファイバ18a及び18bは、いずれも、同一の材料から成るコアを有し、この材料は、ファイバを経由して伝送される波長λ
1の光の光損失を最小限に抑えるように選択された屈折率を有するものである。
図2に一部を示すSFPトランシーバ2は、トランシーバ電力供給線16を介して電圧V
CCの電力を受け取る。
【0035】
図3は、PCB40に実装された双方向光サブアセンブリ(bidirectional optical sub-assembly)を含むSFPトランシーバ2のいくつかの部品を示すブロック図である。光サブアセンブリは、レーザ装置4及び光検出器8を含む。レーザ装置4は、シングルモード分布帰還型レーザ、マルチモード・ファブリペローレーザ、又は、垂直共振器面発光レーザを用いて実装して、高い光出力と低いモーダルノイズを実現することができる。光検出器8は、高応答性p型-i型-n型(PIN)フォトダイオード又はアバランシェフォトダイオードを用いて実装して、高い応答性を実現することができる。
【0036】
図3に示すように、レーザ装置4は、関連付けられたライン交換可能ユニット(図示せず)から送信側電力信号線(
図3には示していない)を介して差動送信信号がデータ入力端子56に入力されると、(PCB40に面実装された)レーザドライバ42によって駆動されて光を出射する。レーザドライバ42は、これら電気差動信号を、レーザ装置4による送信用データを表す電気デジタル信号に変換する電気回路を有する。一方、光検出器8は、光を受光すると、受光した光を電気信号に変換して、検出増幅器・受信回路に供給する。この検出増幅器・受信回路は、検出した光を増幅するトランスインピーダンス増幅器50、及び、出力光をデジタル化する制限増幅器52を含む。制限増幅器52は、電気信号を変換して、受信データを表すデジタル電気差動受信信号を出力する。この電気差動受信信号は、データ出力端子54と、
図3には示していない受信側電気信号線と、を介してLRUのインターフェースPCB30に送信される。
【0037】
図3に示すSFPトランシーバ2は、一対のLCレセプタクル44及び46をさらに含み、これらは、各光ファイバ(
図3には示されていないが、
図5の光ファイバ18を参照)の端部を挿入可能なサイズ及び構成を有する。LCレセプタクル46は、光ファイバの端部が挿入されると、当該端部が、レーザ装置4に整列して対向するような位置に配置されている。換言すると、LCレセプタクル46に挿入された光ファイバは、レーザ装置4から光パルスを受けるように光学的に結合される。同様に、LCレセプタクル44は、光ファイバの端が挿入されると、当該端が、光検出器8に整列して対向するような位置に配置されている。換言すると、LCレセプタクル44に挿入された光ファイバは、光子を電子に変換する光検出器8の表面に対してレーザパルスを出射するように光学的に結合される。
【0038】
レーザ装置4及び光検出器に加えて、光サブアセンブリは、2つの筐体(以下、「OSA筐体」)を有する。各OSA筐体は、一体成形された2つのレセプタクルから成り、具体的には、光ファイバの端部を収容するLCレセプタクルと、当該光ファイバの前記端部に光学的に結合される光学部品を収納する第2レセプタクルと、を含む。
【0039】
図4の例に示すように、送信側OSA筐体70は、端部要素(terminus)28の第1端部92を挿入可能な大きさの第1円筒状通路96を有するLCレセプタクル46と、(第1円筒状通路96よりも直径が大きい)第2円筒状通路98を有する送信器レセプタクル74と、を含む。送信器レセプタクル74は、レーザ装置4を収納したトランジスタアウトライン(TO)キャン(transistor outline (TO) can)72を挿入可能な大きさに構成されている。LCレセプタクル46と送信器レセプタクル74は、一体成形により構成してもよいし、或いは、剛性結合により構成してもよい。同様に、検出器側のOSA筐体(
図4には示していない)は、光検出器8を収納したTOキャンを挿入するための検出器レセプタクルと一体的成形されたLCレセプタクル44を含む。
【0040】
引き続き
図4を参照すると、端部要素28は、さらに、本体部90及び第2端部94を含む。端部要素28の第2端部94は、
図5に示す光ファイバケーブル20の被覆部を挿入するための円筒状ケーブル通路76を有する。端部要素28の本体部90及び第1端部92は、光ファイバケーブル20を構成する光ファイバ18における非被覆部分を挿入するための共通の円筒状ファイバ通路78を有している。したがって、
図5に示す光ファイバケーブル20が
図4に示す端部要素28に挿入されると、光ファイバ18の端面は、TOキャン72に形成された窓(
図4には示していない)に設置されたレンズに整列して対向するよう配置される。このように物理的に整列させることにより、レーザ装置4(
図3を参照)は、光ファイバ18(
図5を参照)と光学的に結合される。OSA筐体70は、金属材料(例えば、ステンレス鋼)から成る。端部要素28は、半硬質の熱可塑性材料又は金属材料(例えば、ステンレス鋼)で構成してもよい。商業的に入手可能な光ファイバケーブル20の一つは、ポリマーコア及びフッ素化ポリマクラッドから成る光ファイバ18と、ポリエチレンから成る被覆86を有する。光検出器8と光ファイバとは、
図4に示すサブアセンブリと同様のOSA筐体及び端部要素によって光学的に結合させることができる。
【0041】
図6は、高耐久化前のSFPトランシーバ2を三次元で示す図である。SFPトランシーバ2は、金属ベース36と、PCB40と、PCB40の表面に実装された様々な光学部品及び電気部品(
図3に示した部品など)と、カバー38と、を含む。SFPトランシーバ2は、電気的な接続を確立するために、PCB40上に列22a及び22bの2列で配置された電気接触パッド24を有する。列22a及び列22bは、それぞれ10個の接触パッド24を含む。これら2つの列22a及び22bの接触パッド24は、PCB40の後端部に配置されている。列22aの接触パッド24は、PCB40の上面に配置されており、列22bの接触パッド24は、PCB40の下面に配置されている。SFPトランシーバ2が、他の何らかのデバイス(例えば、メディアコンバータなど)のPCBに装着されたソケットに差し込んで接続されると、電気的な接触が形成されるので、当該他のデバイスとSFPトランシーバ2とが通信可能に接続される。このような挿抜式構造は、航空機以外の用途であれば、大きな振動及び高い湿度の心配がないので、良好に使用可能である。
【0042】
本開示の高耐久化プロセスによれば、20個の接触パッドを有する高耐久化されていないSFPパッケージを、20本のピンが配置されたデュアルインラインパッケージに改造するとともに、パッケージの底部に一対のガイドピンを設けるものである。これらの特徴が追加されていることにより、SFPトランシーバ2は、航空機のPCBにはんだ付けして永続的に固定することができる。さらに、SFPトランシーバの接触パッドを封止するステップと、SFPパッケージの上からEMI保護カバーを被せるステップと、一対の金属製ガイドピンを底部に設置するステップと、を追加することにより、SFPトランシーバを高い耐久性でPCBのLRUに取り付けることができる。これらのプロセスによれば、低コストのSFPトランシーバを過酷な航空機環境に使用することが可能になる。
【0043】
図7~
図13は、一実施形態による高耐久化プロセスの各段階におけるSFPトランシーバ又はその部品を三次元で示す図である。
【0044】
(1)
図6は、標準的な市販(COTS)のSFPトランシーバ2の分解前の様子を示す。
【0045】
(2)高耐久化前のSFPトランシーバ2を分解するべく、トランシーバのカバー38の側面にある2つのクリップ39(
図6では、その内の一方だけが見えている)の係合を解除して、カバー38を取り外す(即ち、金属ベース36から分離させる)。
【0046】
(3)カバー38を取り外したら、続いて、SFPトランシーバ2のPCB40を金属ベース36から取り外す。上述したように、PCB40の後端には、接触パッド24が列22a及び列22bの2列で設けられている。PCB40の厚みは、通常、約0.04インチ(40ミル)である。各接触パッド24のサイズは、約0.6mm×3.8mmである。
【0047】
(4)
図7は、PCB40の接触パッド24の近傍に配置されたピンヘッダ26を3次元で示す図である。ピンヘッダ26は、第1列58aを構成する10個の90度金属ピン60a(以下、「金属ピン60a」)と、第2列58bを構成する10個の90度金属ピン60b(以下、「金属ピン60b」)と、を含む。ピンヘッダ26は、非導電性材料(例えば、プラスチック)から成るピンホルダ62をさらに含む。ピンホルダ62には、2列の穴が開いており、各列には10個の穴が配列されている。これらの穴には、2列に配列された金属ピン60a及び60bの垂直部分が挿入、保持される。列58aにおける金属ピン60aの垂直部分の長さは、列58bにおける金属ピン60bの垂直部分よりも、PCB40の厚みと略同じ分だけ長くなっている。この結果、金属ピン60aの水平部分と金属ピン60bの水平部分は、この例では、40ミルであるPCB40の厚みと略同じ間隔で離間している。金属ピン60a及び60bの直径と横方向の間隔は、PCB40に配置された接触パッド24の幅及び横方向の間隔と一致している。金属ピン60a及び60bの近位端(接触パッド24に取り付けられるピン端部)は、概ね、垂直面に沿って配置され、金属ピン60a及び60bの遠位端(ピンホルダ62の下側に配置されるピン端部)は、概ね、水平面に沿って配置される(
図7では、金属ベース36は、水平に配置されていると想定する)。
【0048】
(5)ピンヘッダ26を、
図7に示した位置から移動させて、(
図8A及び
図8Bに示すように)列58aの金属ピン60aのそれぞれを、列22aの接触パッド24に接触(当接)させ、列58bの金属ピン60bのそれぞれを、列22aの接触パッド24に接触(当接)させる。この移動は、金属ピン60a及び60bの水平部分を、PCB40の後端側から滑らせることで行われる。次いで、列58aの金属ピン60aのそれぞれを、列22aの接触パッド24にはんだ付けし、列58bの金属ピン60bのそれぞれを、列22bの接触パッド24にはんだ付けする。
図8A及び
図8Bは、PCB40の接触パッド24に金属ピン60a及び60bをはんだ付けした後のピンヘッダ26を三次元で示す図である。提案する一実施態様では、金属ピンは、温度サイクル及び振動に対して優れた耐性を有する金-スズ(AuSn)合金、又は、スズ-銀(AgSn)合金などの、航空機グレードのはんだ合金(
図8A及び
図8Bには示していない)を用いてはんだ付けされる。
【0049】
(6)PCB40にピンヘッダ26をはんだ付けした後、トランシーバ改造プロセスの次のステップにおいて、接触パッド24の上面及び下面、並びに、金属ピン60a及び60bの当接部分に、非導電性防湿シーラント(non-conductive moisture sealant)64のレイヤを形成する。
図9は、非導電性防湿シーラント64を形成した後のピンヘッダ/PCBの組立体を三次元で示す図である。非導電性防湿シーラント64は、航空機環境において、金属製の接触パッド24及びはんだを腐食から保護する。このシーラントは、標準的なチップオンボードのPCB電子部品実装プロセスにおいて使用されるエポキシのグロップトップ剤(epoxy glob top material)でもよく、当該プロセスは、例えば、1998年5月25~28日に米国ワシントン州シアトルにて開催された第48回Electronic Components and Technology ConferenceのIEEE1998議事録の410ぺージに記載の、Chan他による「High performance, low-cost chip-on-board (COB) FDDI transmitter and receiver for avionics applications」において開示されている。
【0050】
(7)SFPトランシーバ2のPCB40に対する上述の改造に加えて、SFPトランシーバ2の金属ベース36に、金属ピン60a及び60bの垂直部分を挿通するための開口を設ける改造を行ってもよい。
図10は、金属ベース36の底部68に貫通穴66を形成した後の金属ベース36を三次元で示す図である。貫通穴66のサイズ及び形状は、ピンホルダ62のサイズ及び形状と合致するように設計されている。ピンホルダ62は、改造後のPCB40及び改造後の金属ベース36を改めて組み立てると、貫通穴66に嵌め込まれる。金属ベース36は、4つの支柱82a~82dを有し、これらは、PCB40と金属ベース36が組み立てられた状態において、PCB40を支持するように設計されている。PCBは、支柱82a~82dに当該PCB40を載置することができるように特別に設計された凹みスロット(recess slot)を有しており、PCBを「挿抜して着脱する(plugging-in and removal)」動作が可能である。
【0051】
(8)貫通穴66の形成前又は後に、2つの金属製ガイドピン48a及び48bを、金属ベース36の底部68に形成された各穴に圧入(又は、その他の機械的プロセス)して嵌め込む。
図11は、貫通穴66を形成し、且つ、金属製ガイドピン48a及び48bを装着した後の金属ベース36を三次元で示す図である。2つの金属製ガイドピン48a及び48bは、はんだ付けプロセスにおいて、金属ピン60a及び60bの遠位端を、LRUのPCB(
図11には示されていないが、
図15のLRUインターフェースPCB30を参照)のスルーホールビア(PTH:printed through hole)上に整列させるように案内する。例えば、2つの金属製ガイドピン48a及び48bそれぞれの遠位端は、LRUのPCBに形成されたスルーホールビアに挿入される。また、2つの金属製ガイドピン48a及び48bのそれぞれも、LRUのPCB上の2つのスルーホールビアにはんだ付けされる。これにより、大きな揺れや衝撃を受ける環境においても、改造後のSFPトランシーバがLRUのPCBから脱落することを防止できる。
【0052】
(9)PCB40及び金属ベース36に上述の改造を行った後、周知の方法で、PCB40を再び金属ベース36に取り付ける。先ず、ピンヘッダ26を貫通穴66に挿通することで、可塑性のピンホルダ62を開口に圧入する。この動作の間に、PCB40は、PCB支柱82a~82dに載置される。宇宙グレードの非導電性エポキシ(図示せず)を用いて、PCB40を金属ベース36の支柱82a~82dに固定する。
図12は、金属製ガイドピン48a及び48b(個数は2つ)と、金属ベース36の底部68の面よりも下方に突出する金属ピン60a及び60b(個数は20)と、を用いて改めて組み立てた後の金属ベース36及びPCB40を三次元で示す図である。
【0053】
(10)PCB40の金属ベース36を改めて組み立てた後は、
図13に示すように、金属カバー80をPCB40の上から被せて、金属ベース36に固定する。金属カバー80は、金属ベース36側面の保持クリップ(retaining clip)、及び、宇宙グレードの非導電性エポキシ(
図13には示していない)によって、パッケージ上面に固定される。上述の改造プロセスを行うことで、デュアルインライン配置の金属ピンを備える高耐久化SFPトランシーバ1を構成することができる。このように高耐久化したSFPトランシーバ1は、航空機システムに含まれるLRUのPCBにはんだ付けして永続的に取り付けることが可能である。金属カバー80は、SFPトランシーバのPCB40をEMIから遮蔽するよう機能する。
【0054】
図14は、一実施形態の改造プロセス完了後の高耐久化SFPトランシーバ1を三次元で示す図である。改めて組み立てたSFPトランシーバ1は高耐久化されており、航空機LRUのPCBにはんだ付けして恒久的に取り付け可能な状態であるとともに、防湿シール保護(非導電性防湿シーラント64)、振動保護用の金属製ガイドピン48a及び48b、並びに、EMI保護を実現する金属カバー80を備える。
【0055】
図15は、一実施形態によりLRUインターフェースPCB30にはんだ付けされた高耐久化SFPトランシーバ1の側面図である。2つの金属製ガイドピン48a及び48bの遠位端、並びに、20本の金属ピン60a及び60bが、金属製のLRUインターフェースPCB30にはんだ付けされている(
図15には、はんだは示されていない)。これらの2つの金属製ガイドピン48a及び40bによれば、金属ピン60a及び60bがLRUインターフェースPCB30に設けられたスルーホールビアに対して整列するようにSFPパッケージをアライメントできるとともに、SFPパッケージをLRUインターフェースPCB30に確実に保持することができる。したがって、大きな振動及び高い湿度に対するSFPパッケージ全体の機械的な設計の耐性をさらに高めることができる。
【0056】
要約すると、本明細書で提案するSFPトランシーバの改造プロセスによれば、挿抜式パッケージのSFPトランシーバをデュアルインラインパッケージに改造してすることができ、これにより、航空機LRUのPCBにはんだ付けして確実に固定することが可能に構成とすることができるとともに、電気的接点に耐水保護シールを設け、EMI保護機能を有する上部カバーを設け、大きな振動と過酷な温度サイクルに対する機械的な保護を与える2つのガイドピンと、を備えるように構成することができる。この改造プロセスは、非常に低コストでありながら、航空機システムに求められる厳密な性能要件及び環境要件を満たすことができる。
【0057】
様々な実施形態において、環境の悪影響に対する耐性を高めるSFPトランシーバの改造方法を説明したが、当業者であれば、本開示の教示から逸脱することなく、様々な変形が可能であること、及び、実施形態の要素を均等物で置き換えることが可能であることが理解されよう。加えて、本開示の概念及び着想を特定の状況に合わせて実施するためにも、様々な変形が可能である。したがって、請求の範囲に包含される主題は、記載した実施形態に限定されるものではない。
【0058】
さらに、本開示は、以下の付記による実施例も包含する。
【0059】
付記1.小型フォームファクタ挿抜式(SFP)トランシーバを改造するための方法であって、前記SFPトランシーバからカバーを取り外すことと、前記SFPトランシーバのプリント回路基板(PCB)を前記SFPトランシーバの金属ベースから分離させることと、ピンホルダによって複数の金属ピンが互いに離間して保持された状態にて、当該複数の金属ピンを、前記PCB上の複数の接触パッドにはんだ付けすることと、前記金属ベースの底部に貫通穴を形成することと、前記ピンホルダを前記貫通穴に差し込むように、前記PCBを前記金属ベースに載置することと、前記PCBに別のカバーを被せることと、前記別のカバーを前記金属ベースに取り付けることと、を含む方法。
【0060】
付記2.前記別のカバーは、前記PCBを電磁干渉から保護する材料から成る、付記1に記載の方法。
【0061】
付記3.はんだ付けした前記接触パッド上に、非導電性の防湿シーラントを付着させることさらに含む、付記1又は2に記載の方法。
【0062】
付記4.前記複数の金属ピンは、第1列と第2列の金属ピンを含んでおり、前記複数の接触パッドは、第1列と第2列の接触パッドを含んでおり、前記第1列の金属ピンは、前記第1列の接触パッドにはんだ付けされ、前記第2列の金属ピンは、前記第2列の接触パッドにはんだ付けされる、付記1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
付記5.前記第1列の接触パッドは、前記PCBの上面に配置されており、前記第2列の接触パッドは、前記PCBの下面に配置されている、付記4に記載の方法。
【0064】
付記6.前記複数の金属ピンの遠位端は、同一平面上にある、付記4又は5に記載の方法。
【0065】
付記7.航空機に搭載されたライン交換可能ユニットのPCBに、前記複数の金属ピンの前記遠位端をはんだ付けすることをさらに含む、付記6に記載の方法。
【0066】
付記8.前記金属ベースの前記底部に、第1及び第2の金属製ガイドピンを取り付けることをさらに含む、付記1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
付記9.前記複数の金属ピンの前記遠位端、並びに、前記第1及び第2の金属製ガイドピンの遠位端を、航空機に搭載されたライン交換可能ユニットのPCBにはんだ付けすることをさらに含む、付記8に記載の方法。
【0068】
付記10.貫通穴が形成された底部を有する金属ベースと、複数の接触パッドが設けられた端部を有するとともに、前記金属ベースに支持されたプリント回路基板(PCB)と、非導電性材料から成るピンホルダ、及び、前記ピンホルダによって互いに離間して保持された複数の金属ピンを含むピンヘッダと、前記金属ベースに取り付けられたカバーと、を含む改造型小型フォームファクタ挿抜式(SFP)トランシーバであって、前記ピンホルダが、前記貫通穴に差し込まれており、前記複数の金属ピンの各々が、前記複数の接触パッドにおける対応する1つの接触パッドにはんだ付けされた第1部分、及び、前記貫通穴に挿通された第2部分を有している、改造型SFPトランシーバ。
【0069】
付記11.前記カバーは、前記PCBを電磁干渉から保護する材料から成る、付記10に記載の改造型SFPトランシーバ。
【0070】
付記12.前記複数の接触パッドを覆う非導電性の防湿シーラントをさらに含む、付記10又は11に記載の改造型SFPトランシーバ。
【0071】
付記13.前記複数の金属ピンは、第1列と第2列の金属ピンを含み、前記複数の接触パッドは、第1列と第2列の接触パッドを含み、前記第1列の金属ピンは、前記第1列の接触パッドにはんだ付けされており、前記第2列の金属ピンは、前記第2列の接触パッドにはんだ付けされている、付記10~12のいずれか1つに記載の改造型SFPトランシーバ。
【0072】
付記14.前記第1列の接触パッドは、前記PCBの上面に配置されており、前記第2列の接触パッドは、前記PCBの下面に配置されている、付記13に記載の改造型SFPトランシーバ。
【0073】
付記15.前記複数の金属ピンの遠位端は、同一平面上にある、付記13又は14に記載の改造型SFPトランシーバ。
【0074】
付記16.前記金属ベースの前記底部に取り付けられた第1及び第2の金属製ガイドピンをさらに含む、付記10~15のいずれか1つに記載の改造型SFPトランシーバ。
【0075】
付記17.光ファイバネットワークと、前記光ファイバネットワークに光学的に結合されているとともに、複数の接触パッドを有する、付記10~16のいずれか1つに記載の改造型SFPトランシーバと、を含むデータ伝送システムであって、前記改造型SFPトランシーバの前記PCBが、前記複数の接触パッドが設けられた端部を有するとともに前記金属ベースに支持された第2プリント回路基板(PCB)であり、さらに、前記改造型SFPトランシーバの前記複数の接触パッドに電気的に接続された複数のスルーホールビアを有する第1プリント回路基板(PCB)を備える電子デバイスを含む、データ伝送システム。
【0076】
付記18.光ファイバネットワークと、前記光ファイバネットワークに光学的に結合されているとともに、複数の接触パッドを有する改造型小型フォームファクタ挿抜式(SFP)トランシーバと、前記改造型SFPトランシーバの前記複数の接触パッドのそれぞれに電気的に接続された複数のスルーホールビアを有する第1プリント回路基板(PCB)を含む電子デバイスと、を含むデータ伝送システムであって、前記改造型SFPトランシーバが、さらに、貫通穴が形成された底部を有する金属ベースと、前記複数の接触パッドが設けられた端部を有するとともに、前記金属ベースに支持された第2プリント回路基板(PCB)と、非導電性材料から成るピンホルダ、及び、前記ピンホルダによって互いに離間して保持された複数の金属ピンを含むピンヘッダと、前記金属ベースに取り付けられたカバーと、を含んでおり、前記ピンホルダが、前記貫通穴に差し込まれており、前記複数の金属ピンの各々が、前記複数の接触パッドにおける対応する1つの接触パッドにはんだ付けされた第1部分、前記貫通穴に挿通された第2部分、及び、前記複数のスルーホールビアにおける対応する1つのスルーホールビアにはんだ付けされた第3部分を有している、データ伝送システム。
【0077】
付記19.前記改造型SFPトランシーバは、前記複数の金属ピンにはんだ付けされた前記複数の接触パッドを覆う非導電性の防湿シーラントをさらに含む、付記17又は18に記載のデータ伝送システム。
【0078】
付記20.前記改造型SFPトランシーバは、前記金属ベースの前記底部に取り付けられた第1及び第2の金属製ガイドピンを含み、前記第1及び第2の金属製ガイドピンは、前記電子デバイスの前記第1PCBにはんだ付けされている、付記17~19のうちの1つに記載のデータ伝送システム。
【0079】
付記21.前記電子デバイスは、航空機に装着されたライン交換可能ユニットである、付記17~20のうちの1つに記載のデータ伝送システム。
【0080】
以下に記載する方法についての請求項は、一部又はすべてのステップが特定の順序で実行される旨を明確に指定するか、そのような状況を明確に記載する文言がなければ、請求項に記載のステップをアルファベット順に実行すること(請求項がアルファベットで順序付けされている場合、これらは、単に、先行するステップを参照するために使用されているに過ぎない)や、記載順に実行することを要件とすると解釈されるべきではない。また、方法についての請求項は、請求項の文言においてそのような解釈を除外する旨の明確な記載がない限り、2つ以上のステップを同時又は交互に実行することを排除するものでもない。