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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】故障予兆システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/30 20060101AFI20240806BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G01N33/30
G01N27/06 Z
G01N27/22 B
G01N27/00 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020071624
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167791
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】宮内 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】大内田 俊
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021502(WO,A1)
【文献】特開2001-235498(JP,A)
【文献】特開2019-078718(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03242118(EP,A1)
【文献】特開2006-308515(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110287980(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110766059(CN,A)
【文献】特開2009-002693(JP,A)
【文献】特開2012-181169(JP,A)
【文献】特開2007-310611(JP,A)
【文献】特開2004-354082(JP,A)
【文献】特開2019-067136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に装着された油状態センサと、
予め収集した前記油状態センサのセンサ出力と作動油の状態を示す複数のパラメータの値との相関関係情報と前記センサ出力とに基づいて、前記作動油の状態を示す複数のパラメータの値を求めるパラメータ算出部と、
前記パラメータの値から前記機器の故障を予兆し、故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力する故障予兆判定部と、
を備え、
前記故障予兆判定部は、前記機器が故障した状態か否か、または、故障する予兆にある状態か否かを目的変数とし、前記パラメータを説明変数として、機械学習により生成された第2の学習モデルを用いて、前記パラメータ算出部が算出した前記パラメータの値から前記機器の故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力し、前記第2の学習モデルとして、決定木構造のアルゴリズムを用いて、故障予兆の原因として推測される前記パラメータの寄与度を演算し、出力することを特徴とする機器の故障予兆システム。
【請求項2】
前記パラメータ算出部は、予め測定された前記パラメータの値を教師データとした機械学習により生成された第1の学習データを用いて、前記油状態センサのセンサ出力から前記パラメータの値を求めることを特徴とする請求項1に記載の機器の故障予兆システム。
【請求項3】
前記故障予兆判定部は、予め設定された値よりも低い寄与度の前記パラメータについて、次回以降の前記寄与度を演算する処理を実行しないことを特徴とする請求項1または2に記載の機器の故障予兆システム。
【請求項4】
前記油状態センサは、前記作動油の比誘電率および導電率を含む前記作動油の電気的特性を出力し、前記パラメータ算出部は、前記比誘電率および前記導電率に基づいて、全酸価、汚染度、金属元素、水分のパラメータを算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の機器の故障予兆システム。
【請求項5】
機器に装着された油状態センサと、
予め収集した前記油状態センサのセンサ出力と作動油の状態を示す複数のパラメータの値との相関関係情報と前記センサ出力とに基づいて、前記作動油の状態を示す複数のパラメータの値を求めるパラメータ算出部と、
前記パラメータの値から前記機器の故障を予兆し、故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力する故障予兆判定部と、
を備え、
前記故障予兆判定部は、前記機器が故障した状態か否か、または、故障する予兆にある状態か否かを目的変数とし、前記パラメータを説明変数として、機械学習により生成された第2の学習モデルを用いて、前記パラメータ算出部が算出した前記パラメータの値から前記機器の故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力し、さらに、
故障予兆情報の取得処理過程で用いた情報により、第3の学習モデルを生成する学習モデル生成部を備え、前記故障予兆判定部は、前記第2の学習モデルを前記第3の学習モデルに更新して、故障予兆判定を実行することを特徴とする機器の故障予兆システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障予兆システムに関する。
【背景技術】
【0002】
機器に用いられる作動油は、機器の使用に伴って酸化し、徐々に劣化していく。そのため、機器の故障や機器の寿命が短くなるのを避けるために、作動油の劣化状態を適切に推定し、適切なタイミングで作動油の補充や交換を行うことが求められる。
【0003】
上記のような要求に応えるため、機器に使用中の作動油を採取してから、作動油の劣化度を判定するまでに要する時間を短縮する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-20864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、機器に使用中の作動油を採取することが前提となっている。そのため、作動油の採取時には、機器の動作を停止する必要があり、生産性や作業効率に影響を与えるという問題がある。
また、上記の問題に関連して、機器に使用中の作動油を採取することを前提とすると、頻繁に、作動油の状態を評価することができないため、判定時間を短縮しても、予知保全を的確に行うことが困難であるという問題がある。
さらに、特許文献1に記載の技術は、作動油の劣化度を推定するものの、機器の故障までも判定するものではない。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、リアルタイムに処理を行うことにより作動油の状態のみならず機器の故障予兆情報を出力する故障予兆システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、機器に装着された油状態センサと、前記油状態センサのセンサ出力と作動油の状態を示す複数のパラメータの値との相関関係情報と前記センサ出力とに基づいて、前記作動油の状態を示す複数のパラメータの値を求めるパラメータ算出部と、前記パラメータの値から前記機器の故障を予兆し、故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力する故障予兆判定部と、を備えたことを特徴とする機器の故障予兆システムを提案している。
【0008】
本システムでは、機器に装着された油状態センサからの情報により、油状態および機器の故障をリアルタイムに監視することができるため、適切な作動油の交換時期の判断や機器の故障を早期に判定することができる。
また、本システムでは、パラメータ算出部が、油状態センサのセンサ出力と作動油の状態を示す複数のパラメータの値との相関関係情報と前記センサ出力とに基づいて、作動油の状態を示す複数のパラメータの値を求め、故障予兆判定部が、パラメータの値から機器の故障を予兆し、故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力する。
つまり、作動油の状態を予測した上で、ユーザに対して、故障予兆情報を通知するため、故障予兆情報の根拠を作動油の状態の予測結果からユーザに提示することができる。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記パラメータ算出部は、予め測定された前記パラメータの値を教師データとした機械学習により生成された第1の学習データを用いて、前記油状態センサのセンサ出力から前記パラメータの値を求める機器の故障予兆システムを提案している。
【0010】
本システムのパラメータ算出部は、例えば、収集したデータに基づいて数学的に算出したセンサ出力と作動油の状態を示すパラメータとの相関関数を格納しており、予め測定されたパラメータの値を教師データとした機械学習により生成された第1の学習データを用いて、油状態センサのセンサ出力からパラメータの値を求める。
そのため、機器の累積使用時間等によるセンサ出力値の変化に伴って、相対的に、作動油の状態を示すパラメータの値がどのように変化するのかを予測することができる。
【0011】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記故障予兆判定部は、前記機器が故障した状態か否か、または、故障する予兆にある状態か否かを目的変数とし、前記パラメータを説明変数として、機械学習により生成された第2の学習モデルを用いて、前記パラメータ算出部が算出した前記パラメータの値から前記機器の故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力する機器の故障予兆システムを提案している。
【0012】
本システムの故障予兆判定部は、機器が故障した状態か否か、または、故障する予兆にある状態か否かを目的変数とし、パラメータを説明変数として、機械学習により生成された第2の学習モデルを用いて、パラメータ算出部が算出したパラメータの値から機器の故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力する。
つまり、故障予兆判定部は、例えば、機器が故障した状態か否か、または、故障する予兆にある状態か否かを目的変数とし、パラメータを説明変数として、機械学習により生成された第2の学習モデルを基に、パラメータ算出部が算出したパラメータの値から機器の故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力する。
そのため、短時間で、確度の高い機器の故障予兆情報を出力することができる。
【0013】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記故障予兆判定部は、前記第2の学習モデルとして、決定木構造のアルゴリズムを用いて、故障予兆の原因として推測される前記パラメータの寄与度を演算し、出力する機器の故障予兆システムを提案している。
【0014】
本システムの故障予兆判定部は、第2の学習モデルとして、決定木構造のアルゴリズムを用いて、故障予兆の原因として推測される前記パラメータの寄与度を演算し、出力する。
そのため、複数の作動油の状態を示すパラメータごとの予測結果(機器の故障予兆の有無、故障時期)に関する寄与度を出力することができる。
【0015】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記故障予兆判定部は、予め設定された値よりも低い寄与度の前記パラメータについて、次回以降の前記寄与度を演算する処理を実行しない機器の故障予兆システムを提案している。
【0016】
本システムの故障予兆判定部は、予め設定された値よりも低い寄与度の前記パラメータについて、次回以降の寄与度を演算する処理を実行しない。
つまり、リアルタイムの処理において、作動油の状態を示す、あるパラメータの寄与度が予め設定された値よりも低い寄与度の前記パラメータについて、回以降の寄与度を演算する処理を実行しない。
そのため、システムの処理負担を軽減することができる。
【0017】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記油状態センサは、前記作動油の比誘電率および導電率を含む前記作動油の電気的特性を出力し、前記パラメータ算出部は、前記比誘電率および前記導電率に基づいて、全酸価、汚染度、金属元素、水分のパラメータを算出する機器の故障予兆システムを提案している。
【0018】
本システムの油状態センサは、作動油の比誘電率および導電率を含む作動油の電気的特性を出力する。また、パラメータ算出部は、比誘電率および導電率に基づいて、全酸価、汚染度、金属元素、水分のパラメータを算出する。
そのため、油状態センサにより、比誘電率、導電率を含む作動油の電気的特性を得ることにより、作動油の状態を示すパラメータの値を予測することができる。
【発明の効果】
【0019】
上記の故障予兆システムによれば、リアルタイムに処理を行うことにより作動油の状態のみならず機器の故障予兆情報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係る故障予兆システムの構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るパラメータ算出部の構成を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る故障予兆判定部の構成を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る故障予兆システムの処理を示すフローチャート図である。
図5】第1の実施形態に係るパラメータ算出部の相関関数格納部に格納される相関関係を例示する図である。
図6】第2の実施形態に係る故障予兆システムの処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
以下、図1から図5を用いて、本発明の第1の実施形態に係る故障予兆システム1について説明する。
【0022】
(故障予兆システム1の構成)
図1から図3を用いて、本発明の第1の実施形態に係る故障予兆システム1の構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る故障予兆システム1は、油状態センサ10と、パラメータ算出部20と、故障予兆判定部30と、を含んで構成されている。
【0024】
油状態センサ10は、例えば、作動油の油状態を検出する油状態センサであり、センシング対象の機器100の作動油内にセンシング部材が浸漬されるように装着され、例えば、作動油の比誘電率や導電率を含む情報を取得する。
また、油状態センサ10は、例えば、後述するパラメータ算出部20と無線あるいは、ネットワークで接続されており、油状態センサ10が取得した情報を逐次出力あるいは、パラメータ算出部20からの要求に応じて、取得した情報を出力する。
【0025】
パラメータ算出部20は、油状態センサ10のセンサ出力と作動油の状態を示す複数のパラメータの値との相関関係情報とセンサ出力とに基づいて、作動油の状態を示す複数のパラメータの値を求める。
なお、作動油の状態を示すパラメータは、全酸価、汚染度、金属元素、水分を含むパラメータを例示することができる。
ここで、パラメータ算出部20は、単体の装置であってもよいし、例えば、クラウド上のサーバ等であってもよい。
【0026】
故障予兆判定部30は、相関関係を有するパラメータの値から機器100の故障予兆情報をリアルタイムに出力する。
ここで、故障予兆判定部30は、相関関係を有するパラメータの値を入力し、機械学習を実行して機器100の故障予兆情報を出力する。
また、例えば、故障予兆情報とし、故障時期、作動油の状態を示すパラメータの寄与度を含む情報を例示することができる。
故障予兆判定部30は、単体の装置であってもよいし、例えば、クラウド上のサーバ等であってもよい。
また、故障予兆判定部30とパラメータ算出部20をまとめた単体の装置であってもよいし、例えば、クラウド上のサーバ等であってもよい。
【0027】
(パラメータ算出部20の構成)
パラメータ算出部20は、図2に示すように、算出部21と、相関関数格納部22と、制御部23と、を含んで構成されている。
【0028】
算出部21は、油状態センサ10から得られる情報、例えば、比誘電率や導電率を含むセンサ情報と後述する相関関数格納部22に格納された相関関数とに基づいて、作動油の油状態を示すパラメータの値を算出する。
【0029】
相関関数格納部22は、油状態センサ10から得られるセンサ情報と、作動油の油状態を示すパラメータとの相関関係を示す相関関数を格納する。
相関関数は、収集された膨大なデータから数学的回帰により算出されたものであり、例えば、比誘電率と全酸価との相関関数、比誘電率と汚染度との相関関数、比誘電率と水分との相関関数、導電率と汚染度との相関関数、導電率と金属元素との相関関数、導電率と水分との相関関数を含む。
【0030】
制御部23は、ROM(Read Only Memory)等に格納された制御プログラムにしたがって、算出部21の動作を制御する。
【0031】
(故障予兆判定部30の構成)
故障予兆判定部30は、図3に示すように、故障予兆判定アルゴリズム31と、学習モデル格納部32と、制御部33と、情報記憶部34と、を含んで構成されている。
【0032】
故障予兆判定アルゴリズム31は、故障予兆判定部30における機械学習を実行するためのアルゴリズムであり、パラメータ算出部20において算出される作動油の油状態を示すパラメータの値を入力とし、後述する学習モデルを用いた機械学習を実行し、例えば、故障時期、作動油の状態を示すパラメータの寄与度を含む故障予兆情報と、故障を未然に防止するための対応メッセージを出力する。
なお、故障予兆判定アルゴリズム31としては、例えば、決定木構造をなすブースティングを例示することができる。
【0033】
学習モデル格納部32は、予め生成した学習モデルを格納する。ここで、学習モデルとは、入力データを元に、ルールやパターン(出力)を学習したデータである。
【0034】
制御部33は、ROM(Read Only Memory)等に格納された制御プログラムにしたがって、故障予兆判定部30の動作を制御する。
また、制御部33のROM等の記憶素子等には、故障予兆情報に対する、故障を未然に防止するための対応メッセージ等が記憶されている。
なお、制御部33は、すべての機器100について故障予兆判定を実行させる。つまり、同じ機種であって、使用期間も同程度の機器100についても故障予兆判定を実行させる。
【0035】
情報記憶部34は、パラメータ算出部20から入力した情報と故障予兆判定アルゴリズム31から出力される故障予兆情報とを紐付けたデータベースを記憶する。
【0036】
(故障予兆システムの処理)
図4および図5を用いて、本発明の第1の実施形態に係る故障予兆システムの処理について説明する。
【0037】
パラメータ算出部20の制御部23は、例えば、予め定めた時間間隔で油状態センサ10からの出力をモニタし、油状態センサ10から得られたセンサ情報、例えば、比誘電率、導電率を含む情報を算出部21に出力する(ステップS101)。
【0038】
パラメータ算出部20の算出部21は、制御部23から入力した情報、例えば、比誘電率や導電率を含むセンサ情報と後述する相関関数格納部22に格納された相関関数とに基づいて、作動油の油状態を示すパラメータの値を算出する(ステップS102)。
【0039】
なお、相関関数格納部22には、例えば、図5に示すような比誘電率と全酸価との相関関数をはじめとする比誘電率と汚染度との相関関数、比誘電率と水分との相関関数、導電率と汚染度との相関関数、導電率と金属元素との相関関数、導電率と水分との相関関数等が格納されている。
算出部21は、例えば、比誘電率や導電率を含むセンサ情報と相関関数格納部22に格納された相関関数とに基づいて、作動油の油状態を示すパラメータ、例えば、全酸価、汚染度、金属元素、水分を含むパラメータの値を算出して、故障予兆判定部30に出力する。
【0040】
故障予兆判定部30の制御部33は、パラメータ算出部20の算出結果を故障予兆判定アルゴリズム31に取り込む。
故障予兆判定アルゴリズム31は、パラメータ算出部20において算出される作動油の油状態を示すパラメータの値を入力とし、学習モデルを用いた機械学習を実行して、例えば、故障時期、作動油の状態を示すパラメータの寄与度を含む故障予兆情報と、故障を未然に防止するための対応メッセージ等とをリアルタイムに図示しない表示部に表示、あるいはユーザ端末等に出力する(ステップS103)。
【0041】
なお、パラメータ算出部20から出力された情報と故障予兆判定アルゴリズム31から出力される故障予兆情報とは、データベースの形式で情報記憶部34に記憶される。
【0042】
(作用効果)
以上、説明したように、本実施形態に係る故障予兆システム1は、機器100に装着された油状態センサ10のセンサ出力と作動油の状態を示す複数のパラメータの値とセンサ出力との相関関係情報とに基づいて、パラメータ算出部20が、作動油の状態を示す複数のパラメータの値を求め、故障予兆判定部30が、パラメータの値から機器100の故障を予兆し、故障予兆の原因として推測されるパラメータを特定して故障予兆情報をリアルタイムに出力する。
そのため、機器100に装着された油状態センサ10センサ出力と作動油の状態を示す複数のパラメータの値とセンサ出力の相関関係情報とに基づいて、作動油の油状態および機器100の故障をリアルタイムに監視することができるため、適切な作動油の交換時期の判断や機器100の故障を早期に判定することができる。
また、本実施形態に係る故障予兆システム1では、パラメータ算出部20が、作動油の状態を示す複数のパラメータの値を求め、故障予兆判定部30が、パラメータの値から機器100の故障を予兆し、故障予兆の原因として推測されるパラメータを特定して故障予兆情報をリアルタイムに出力する。
つまり、作動油の状態を予測した上で、ユーザに対して、故障予兆情報を通知するため、故障予兆情報の根拠を作動油の状態の予測結果からユーザに提示することができる。
また、本実施形態に係る故障予兆システム1は、故障予兆情報として、故障時期、作動油の状態を示すパラメータの寄与度を含む情報と、故障を未然に防止するための対応メッセージと、をリアルタイムに図示しない表示部に表示、あるいはユーザ端末等に出力することから、ユーザに迅速な行動を促すことができる。
【0043】
本実施形態に係る故障予兆システム1における前記パラメータ算出部は、予め測定されたパラメータの値を教師データとした機械学習により生成された第1の学習データを用いて、油状態センサのセンサ出力からパラメータの値を求める。
つまり、本実施形態に係る故障予兆システム1におけるパラメータ算出部20は、例えば、収集したデータに基づいて数学的に算出したセンサ出力と作動油の状態を示すパラメータとの相関関数を格納しており、予め測定されたパラメータの値を教師データとした機械学習により生成された第1の学習データを用いて、油状態センサのセンサ出力からパラメータの値を求める。
そのため、機器100の累積使用時間等によるセンサ出力値の変化に伴って、相対的に、作動油の状態を示すパラメータの値がどのように変化するのかを予測することができる。
【0044】
本実施形態に係る故障予兆システム1における故障予兆判定部は、機器が故障した状態か否か、または、故障する予兆にある状態か否かを目的変数とし、パラメータを説明変数として、機械学習により生成された第2の学習モデルを用いて、パラメータ算出部が算出したパラメータの値から機器の故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力する。
すなわち、本実施形態に係る故障予兆システム1における故障予兆判定部は、例えば、機器が故障した状態か否か、または、故障する予兆にある状態か否かを目的変数とし、パラメータを説明変数として、機械学習により生成された第2の学習モデルを基に、パラメータ算出部が算出したパラメータの値から機器の故障予兆の原因として推測される前記パラメータを特定して出力する。
そのため、短時間で、確度の高い機器の故障予兆情報を出力することができる。
【0045】
本実施形態に係る故障予兆システム1における制御部33は、すべての機器100について、すなわち、同じ機種であって、使用期間も同程度の機器100についても故障予兆判定を実行させる。
一般に、同じ機種の機器100については、よく似た故障予兆傾向が現れると考えられるが、故障予兆は、ユーザの使用状に応じて、作動油の状態を示すパラメータの寄与度が異なる。
そのため、本実施形態に係る故障予兆システム1において、例えば、同じ機種であって、使用期間も同程度の機器100についても故障予兆判定を実行させることにより、各機器100ごとの故障予兆情報をユーザに報知することができる。
【0046】
なお、故障予兆システム1に学習モデルを生成する機能を追加し、故障予兆情報の取得処理プロセスで用いた情報や故障予兆情報により、学習モデルを生成し、故障予兆情報の取得処理プロセスに用いる学習モデルを更新してもよい。
このように、新たに得られた情報を用いて、学習モデルをアップデートすることにより、故障予兆システム1における故障予兆情報の生成精度を向上させることができる。
【0047】
<第2の実施形態>
以下、図6を用いて、本発明の第2の実施形態に係る故障予兆システム1Aについて説明する。
【0048】
(故障予兆システム1Aの構成)
本発明の第2の実施形態に係る故障予兆システム1Aの構成について説明する。
【0049】
本実施形態に係る故障予兆システム1Aは、油状態センサ10と、パラメータ算出部20と、故障予兆判定部30Aと、を含んで構成されている。
なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は、省略する。
【0050】
故障予兆判定部30Aは、相関関係を有するパラメータの値から機器100の故障予兆情報をリアルタイムに出力する。
なお、故障予兆判定部30Aは、寄与度が設定した値よりも低いパラメータについて、次回以降の寄与度に関する機械学習を実行しない。
【0051】
(故障予兆判定部30Aの構成)
故障予兆判定部30Aは、故障予兆判定アルゴリズム31と、学習モデル格納部32と、制御部33Aと、情報記憶部34と、を含んで構成されている。
なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は、省略する。
【0052】
制御部33Aは、ROM(Read Only Memory)等に格納された制御プログラムにしたがって、故障予兆判定部30Aの動作を制御する。
なお、制御部33Aは、情報記憶部34に記憶されたパラメータ算出部20から入力した情報と故障予兆判定アルゴリズム31から出力される故障予兆情報とを紐付けたデータベースに基づいて、寄与度が設定した値よりも低いパラメータを検出し、当該パラメータについて、次回以降の寄与度に関する機械学習を実行しないように故障予兆判定部30Aを制御する。
【0053】
(故障予兆システム1Aの処理)
図6を用いて、本発明の第2の実施形態に係る故障予兆システム1Aの処理について説明する。
【0054】
パラメータ算出部20の制御部23は、例えば、予め定めた時間間隔で油状態センサ10からの出力をモニタし、油状態センサ10から得られたセンサ情報、例えば、比誘電率、導電率を含む情報を算出部21に出力する(ステップS201)。
【0055】
パラメータ算出部20の算出部21は、制御部23から入力した情報、例えば、比誘電率や導電率を含むセンサ情報と後述する相関関数格納部22に格納された相関関数とに基づいて、作動油の油状態を示すパラメータの値を算出する(ステップS202)。
【0056】
故障予兆判定部30Aの制御部33Aは、情報記憶部34に記憶されたパラメータ算出部20から入力した情報と故障予兆判定アルゴリズム31から出力される故障予兆情報とを紐付けたデータベースに基づいて、寄与度が設定した値よりも低いパラメータの有無を判定する(ステップS203)。
【0057】
このとき、故障予兆判定部30Aの制御部33Aは、データベースに寄与度が設定した値よりも低いパラメータが無いと判定した場合(ステップS203の「NO」)には、パラメータ算出部20の算出結果のすべてを故障予兆判定アルゴリズム31に取り込むように制御を実行し、故障予兆判定アルゴリズム31は、パラメータ算出部20において算出される作動油の油状態を示すパラメータの値を入力とし、学習モデルを用いた機械学習を実行して、例えば、故障時期、作動油の状態を示すパラメータの寄与度を含む故障予兆情報と、故障を未然に防止するための対応メッセージと、をリアルタイムに図示しない表示部に表示、あるいはユーザ端末等に出力する(ステップS205)。
【0058】
一方で、故障予兆判定部30Aの制御部33Aは、データベースに寄与度が設定した値よりも低いパラメータが有ると判定した場合(ステップS203の「YES」)には、パラメータ算出部20の算出結果のうち、寄与度が設定した値よりも低いパラメータの算出結果を除くパラメータの算出結果を故障予兆判定アルゴリズム31に取り込むように制御を実行し、故障予兆判定アルゴリズム31は、パラメータ算出部20において算出される作動油の油状態を示すパラメータの値を入力とし、学習モデルを用いた機械学習を実行して、例えば、故障時期や作動油の状態を示すパラメータの寄与度を含む故障予兆情報と、故障を未然に防止するための対応メッセージと、をリアルタイムに図示しない表示部に表示、あるいはユーザ端末等に出力する(ステップS204)。
【0059】
(作用効果)
以上、説明したように、本実施形態に係る故障予兆システム1Aにおける故障予兆判定部30Aの制御部33Aは、情報記憶部34に記憶されたパラメータ算出部20から入力した情報と故障予兆判定アルゴリズム31から出力される故障予兆情報とを紐付けたデータベースに基づいて、寄与度が設定した値よりも低いパラメータの有無を判定し、データベースに寄与度が設定した値よりも低いパラメータが有ると判定した場合(ステップS203の「YES」)には、パラメータ算出部20の算出結果のうち、寄与度が設定した値よりも低いパラメータの算出結果を除くパラメータの算出結果を故障予兆判定アルゴリズム31に取り込むように制御を実行し、故障予兆判定アルゴリズム31は、パラメータ算出部20において算出される作動油の油状態を示すパラメータの値を入力とし、学習モデルを用いた機械学習を実行して、例えば、故障時期、作動油の状態を示すパラメータの寄与度を含む故障予兆情報と、故障を未然に防止するための対応メッセージと、をリアルタイムに図示しない表示部に表示、あるいはユーザ端末等に出力する。
そのため、情報記憶部34に記憶されたパラメータ算出部20から入力した情報と故障予兆判定アルゴリズム31から出力される故障予兆情報とを紐付けたデータベースに基づいて、寄与度が設定した値よりも低いパラメータが有る場合には、故障予兆判定部30Aの処理負荷を軽減することができる。
【0060】
(変形例1)
第1の実施形態および第2の実施形態では、パラメータ算出部20は、油状態センサ10から得られる情報、例えば、比誘電率や導電率を含むセンサ情報と後述する相関関数格納部22に格納された膨大なデータからの数学的回帰により算出される相関関数とに基づいて、作動油の油状態を示すパラメータの値を算出するとした。
しかしながら、パラメータ算出部20は、膨大なデータから特定のアルゴリズムを用いて得られた比誘電率や導電率を含むセンサ情報と作動油の油状態を示すパラメータの値との相関関係から、当該パラメータの値を算出するようにしてもよい。
このようにすることにより、比誘電率や導電率を含むセンサ情報と作動油の油状態を示すパラメータの値との関係が関数では表現できない分布をしている場合であっても、確度を高めてパラメータの値を算出することができる。
【0061】
また、変形例1では、パラメータ算出部20と故障予兆判定部30、30Aとに異なるアルゴリズムを適用して、故障予兆判定を実行することを例示したが、例えば、誘電率が高いデータ等のように、ある特有のデータに限定するという条件の下であれば、パラメータ算出部20と故障予兆判定部30、30Aとを1つのアルゴリズムで運用してもよい。
また、第1の実施形態および第2の実施形態では、故障予兆判定部30、30Aに機械学習による分類アルゴリズムを適用することを例示したが、理論ベースあるいはルールベースのアルゴリズムを適用してもよい。
【0062】
(変形例2)
また、故障予兆判定部30は、機器100が今までに作動油の状態を示すパラメータの寄与度の機会学習を実行した機器100と同一の機種であっても、寄与度の機械学習を実行するようにしてもよい。
【0063】
つまり、同一の機種の機器であっても、その使用方法や使用環境等の使用条件が異なれば、異なった寄与度が得られ、故障モードが異なる場合も想定される。
そのため、同一の機種の機器であっても、寄与度の機会学習を実行することにより、その機器の真の故障予兆情報をユーザに通知することができる。
【0064】
なお、故障予兆システム1、1Aの処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを故障予兆システム1、1Aに読み込ませ、実行することによって本発明の故障予兆システム1、1Aを実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0065】
「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0066】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0067】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1;故障予兆システム
1A;故障予兆システム
10;油状態センサ
20;パラメータ算出部
21;算出部
22;相関関数格納部
23;制御部
30;故障予兆判定部
30A;故障予兆判定部
31;故障予兆判定アルゴリズム
32;学習モデル格納部
33;制御部
33A;制御部
34;情報記憶部
100;機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6