(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ブロー成形体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/50 20060101AFI20240806BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20240806BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20240806BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B29C49/50
B29C33/12
B29C49/42
B29C49/04
(21)【出願番号】P 2020076470
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 優介
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-052860(JP,A)
【文献】特開昭48-052859(JP,A)
【文献】特開平01-154724(JP,A)
【文献】特開2018-004003(JP,A)
【文献】特開2016-043563(JP,A)
【文献】特開2016-150517(JP,A)
【文献】実公昭47-009594(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/50
B29C 33/12
B29C 49/42
B29C 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パリソンを包囲することで胴部の軸線方向端部から軸端部が径方向内側へ張り出した形態のブロー成形体を成形するとともに、前記パリソンの一部を偏平に潰すことで前記軸端部に連なる溶着部を形成する一対の金型と、
前記軸端部に接するように配された変位規制部材とを備え、
前記一対の金型は、
前記ブロー成形体のうち前記軸端部以外の領域を成形し、前記パリソンの軸線方向と交差する方向に型開きされる一対の金型本体と、
前記溶着部を挟み付けた状態で前記軸端部を成形する一対のスライド型とを備えて構成され、
前記一対のスライド型は、前記溶着部を挟み付けた状態のままで型締め状態の前記一対の金型本体から軸線方向へ離脱可能であり、
前記変位規制部材は、前記金型本体に対する前記軸端部の軸線方向への相対変位を規制可能で
あり、
前記変位規制部材が、前記ブロー成形体の軸線方向と平行な棒状をなし、前記胴部の軸線方向における両端部に形成された一対の前記軸端部の中心部に対し一体化し得るようになっているブロー成形体の製造装置。
【請求項2】
前記変位規制部材が、ロッドと、前記ロッドに対して着脱可能であって前記一対の軸端部と一体化される一対のリング状機能部材とを備えて構成されている請求項1記載のブロー成形体の製造装置。
【請求項3】
前記ロッドと前記一対のリング状機能部材が、前記ブロー成形体に対し同軸状をなして一体回転可能である請求項2に記載のブロー成形体の製造装置。
【請求項4】
前記軸端部の中心部外周に口金が取り付けられ、前記口金の内周面と前記軸端部の外周面との間にシールリングが取り付けられるようになっている前記ブロー成形体を製造する装置であって、
前記リング状機能部材が、前記軸端部の内周面のうち軸線方向において前記シールリングと対応する部位に配置されている請求項2又は請求項3に記載のブロー成形体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブロー成形体を製造する方法が開示されている。ブロー成形では、押出機から押し出された筒状のパリソンを、パリソンの軸線と交差する方向に型開きされる一対の金型内に収容し、収容したパリソンを、膨らませることによって金型の成形面に押し付け、所定の形状に成形する。金型内でブロー成形体の温度が融点より低い温度まで低下し、ブロー成形体の形状が安定すると、その段階で、金型を型開きしてブロー成形体を取り出し、取り出したブロー成形体を金型の外部で冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対の金型を型締めすると、パリソンの一部が金型により扁平に押し潰された溶着部となる。この溶着部は、ブロー成形体が固化した後、ブロー成形体の軸線方向端部に連なるバリとして残るので、型開きした後は、バリを除去する工程が必要となる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ブロー成形体の製造効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るブロー成形体の製造装置は、
パリソンを包囲することで胴部の軸線方向端部から軸端部が径方向内側へ張り出した形態のブロー成形体を成形するとともに、前記パリソンの一部を偏平に潰すことで前記軸端部に連なる溶着部を形成する一対の金型と、
前記軸端部に接するように配された変位規制部材とを備え、
前記一対の金型は、
前記ブロー成形体のうち前記軸端部以外の領域を成形し、前記パリソンの軸線方向と交差する方向に型開きされる一対の金型本体と、
前記溶着部を挟み付けた状態で前記軸端部を成形する一対のスライド型とを備えて構成され、
前記一対のスライド型は、前記溶着部を挟み付けた状態のままで型締め状態の前記一対の金型本体から軸線方向へ離脱可能であり、
前記変位規制部材は、前記金型本体に対する前記軸端部の軸線方向への相対変位を規制可能であることを特徴とする。
【0007】
第2の発明に係るブロー成形体の製造方法は、
一対の金型によりパリソンを包囲することで胴部の軸線方向端部から軸端部が径方向内側へ張り出した形態のブロー成形体を成形するとともに、前記ブロー成形体の成形工程では前記一対の金型により前記パリソンの一部が偏平に潰されることで前記軸端部に連なる溶着部が形成されるブロー成形体の製造方法であって、
前記一対の金型を、
前記ブロー成形体のうち前記軸端部以外の領域を成形し、前記パリソンの軸線方向と交差する方向に型開きされる一対の金型本体と、
前記溶着部を挟み付けた状態で前記軸端部を成形する一対のスライド型とを備える構成とした上で、
前記一対のスライド型を、前記溶着部を挟み付けた状態のままで型締め状態の前記一対の金型本体から軸線方向へ離脱させ、
前記スライド型の離脱過程では、前記金型本体に対する前記軸端部の軸線方向への相対変位を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
一対の金型を型締めしてブロー成形体の形状が安定した後、型締め状態の金型本体からスライド型を軸線方向に離脱させる。このとき、ブロー成形体の軸端部は、変位規制部によって軸線方向への変位を規制されているので、溶着部はスライド型とともに軸端部から分離する。本発明によれば、型開きの工程において溶着部をブロー成形体から切り離すことができるので、型開きの後にバリを切除する工程が不要であり、製造効率に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の製造装置によるブロー成形体の製造工程において、型締め状態の金型内でブロー成形体を成形した状態をあらわす正断面図である。
【
図2】ブロー成形体の製造工程において、型締め状態の金型内でブロー成形体を成形した状態をあらわす側断面図である。
【
図3】ブロー成形体の製造工程において、型締め状態の金型本体からスライド型を離脱させた状態をあらわす正断面図である。
【
図4】ブロー成形体の製造工程において、型締め状態の金型本体からスライド型を離脱させた状態をあらわす側断面図である。
【
図5】ブロー成形体の製造工程において、金型本体を型開きした状態をあらわす正断面図である。
【
図6】成形済みのブロー成形体に対して補強層を形成する工程をあらわす正断面図である。
【
図7】実施例2の製造装置によるブロー成形体の製造工程において、型締め状態の金型内でブロー成形体を成形した状態をあらわす正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1及び第2の発明は、前記変位規制部材が、前記ブロー成形体の軸線方向と略平行な棒状をなし、前記胴部の軸線方向における両端部に形成された一対の前記軸端部の中心部に対し一体化し得るようになっていてもよい。この構成によれば、スライド型が一対の軸端部から軸線方向へ離脱するときに、一対の軸端部同士が変位規制部材により離間しないように保持される。
【0011】
本発明は、前記変位規制部材が、ロッドと、前記ロッドに対して着脱可能であって前記一対の軸端部と一体化される一対のリング状機能部材とを備えて構成されていてもよい。この構成によれば、型開き工程では、一対のリング状機能部材をロッドで連結することにより、軸端部の変位を規制することができる。型開き工程の後は、ロッドをリング状機能部材から外すことにより、リング状機能部材を軸端部と一体化させた状態で所期の機能を発揮させることができる。
【0012】
本発明は、前記ロッドと前記一対のリング状機能部材が、前記ブロー成形体に対し同軸状をなして一体回転可能であってもよいよい。この構成によれば、ブロー成形体の外面に補強層を形成するためのワインディング工程において、軸端部の傾きを防止することができる。
【0013】
本発明は、前記軸端部の中心部外周に口金が取り付けられ、前記口金の内周面と前記軸端部の外周面との間にシールリングが取り付けられるようになっている前記ブロー成形体を製造する装置であって、
前記リング状機能部材が、前記軸端部の内周面のうち軸線方向において前記シールリングと対応する部位に配置されていてもよい。この構成によれば、リング状機能部材が軸端部の変形を抑制するので、シールリングによる防水機能の信頼性が高められている。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図6を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、
図1~6にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。尚、上下方向と軸線方向は同義で用いる。また、左右方向については、
図1,3,5にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0015】
本実施例の製造装置Aは、ブロー成形法によって合成樹脂製のブロー成形体10を製造するものである。ブロー成形体10は、圧力容器29を構成するライナーとして用いられる部材である。
図6に示すように、圧力容器29は、容器本体25と補強層27とを備えて構成されている。容器本体25は、ブロー成形体10、第1口金21(請求項に記載の口金)、第1インサートリング42(請求項に記載のリング状機能部材)、第2口金23(請求項に記載の口金)及び第2インサートリング45(請求項に記載のリング状機能部材)を備えて構成されている。尚、ブロー成形体10及び圧力容器29の説明における上下の向きは、製造装置Aによる成形工程時の向きを基準とする。
【0016】
ブロー成形体10は、軸線を上下方向に向けた円筒状の胴部11と、胴部11と同軸状の円形をなす第1軸端部12(請求項に記載の軸端部)と、胴部11及び第1軸端部12と同軸状の円形をなす第2軸端部17(請求項に記載の軸端部)とを有する。ブロー成形体10(ライナー)の材料としては、高密度ポリエチレン(HDPE)とエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)の混合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等が用いられる。
【0017】
第1軸端部12は、胴部11の上端から径方向中央部へ延出した形態である。第1軸端部12の外周縁部には、胴部11の上端縁から中心側に向かって斜め上方へ盛り上がるように延出した円環形の第1肩部13が形成されている。第1軸端部12の中心部には、軸線を胴部11と同軸状に向けた第1円筒部14と、第1円筒部14の上端の開口部を閉塞する円板状の閉塞部15とが形成されている。第1軸端部12のうち第1肩部13と第1円筒部14との間の領域には、平面視形状が円環形をなし、上面(外面)が凹んだ形態の第1アンダーカット部16が形成されている。
【0018】
第2軸端部17は、胴部11の下端から径方向中央部へ延出した形態である。第2軸端部17の外周縁部には、胴部11の下端縁から中心側に向かって斜め下方へ低くなるように延出した円環形の第2肩部18が形成されている。第2軸端部17の中心部には、軸線を胴部11と同軸状に向けた第2円筒部19が形成されている。第2軸端部17のうち第2肩部18と第2円筒部19との間の領域には、底面視形状が円環形をなし、下面(外面)が凹んだ形態の第2アンダーカット部20が形成されている。
【0019】
ブロー成形体10には、下面が凹んだ形態の第1口金21(請求項に記載の口金)が、第1円筒部14と閉塞部15と第1アンダーカット部16の外面を覆うような形態で取り付けられるようになっている。第1口金21の内周には、第1円筒部14の外周面に液密状に密着する第1シールリング22(請求項に記載のシールリング)が取り付けられている。ブロー成形体10の成形工程では、第1円筒部14の内周に第1インサートリング42(請求項に記載のリング状機能部材)が一体化される。
【0020】
ブロー成形体10には、円筒状をなす第2口金23(請求項に記載の口金)が、第2円筒部19と第2アンダーカット部20の外面を覆うような形態で取り付けられるようになっている。第2口金23の内周には、第2円筒部19の外周面に液密状に密着する第2シールリング24(請求項に記載のシールリング)が取り付けられている。ブロー成形体10の成形工程では、第2円筒部19の内周に円筒形の第2インサートリング45(請求項に記載のリング状機能部材)が一体化される。第2口金23には、第2インサートリング45の中心孔内に収容する形態のバルブ(図示省略)が取り付けられるようになっている。
【0021】
第1インサートリング42及び第2インサートリング45が一体化されたブロー成形体10(ライナー)に対し、第1口金21と第2口金23とバルブを組み付けることで、容器本体25が構成される。容器本体25の内部は、バルブを介して容器本体25の外部に連通可能な貯留室26となっている。貯留室26内には、高圧の気体が貯留されるようになっている。容器本体25の外面に補強層27を形成することにより、圧力容器29が構成される。
【0022】
補強層27は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスッチック等の繊維強化樹脂からなる。補強層27(繊維強化樹脂層)は、胴部11の外周の全領域、第1肩部13の全領域、第1口金21の外周面、第2肩部18の全領域及び第2口金23の外周面に亘って形成されている。
【0023】
補強層27は、フィラメントワインディング法、即ち、胴部11の軸線を中心として回転するブロー成形体10及び両口金21,23の外面に、プリプレグ繊維からなるシート状部材28を巻き付けることによって形成されている。プリプレグ繊維は、繊維束に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、又は繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたものである。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。
【0024】
ブロー成形体10の製造装置Aは、ブロー成形機30と、一対の金型31と、軸状モジュール38(請求項に記載の変位規制部材)とを備えている。ブロー成形機30は、金型31よりも上方に配置されており、ブロー成形体10の材料となる円筒状のパリソンPを、鉛直方向下向きに押し出すものである。
【0025】
一対の金型31は、型締め状態でパリソンPを所定形状のブロー成形体10に成形するものであり、ブロー成形機30の下方に配されている。一対の金型31は、左右対称な一対の金型本体32と、左右対称な一対の第1スライド型34(請求項に記載のスライド型)と、左右対称な一対の第2スライド型36(請求項に記載のスライド型)とを備えて構成されている。左側の金型本体32に左側の第1スライド型34と左側の第2スライド型36を一体化させることにより、左側の金型31が構成される。右側の金型本体32に右側の第1スライド型34と右側の第2スライド型36を一体化させることにより、右側の金型31が構成される。
【0026】
一対の金型本体32は、左右方向に接近して互いに密着した型締め位置と、左右方向へ離間した型開き位置との間で移動可能である。左右両金型本体32の互いに対向する内面には、胴部11の全領域と、第1肩部13の外周側領域と、第2肩部18の外周側領域とを成形するための主成形面33が形成されている。
【0027】
左右一対の第1スライド型34は、左右方向及び上下方向へ個別に移動することが可能である。左側の第1スライド型34は、左側の金型本体32の上面に個別に密着した状態のまま、左側の金型本体32と一体となって型締め位置と型開き位置との間で左右方向へ移動可能である。右側の第1スライド型34は、右側の金型本体32の上面に個別に密着した状態のまま、右側の金型本体32と一体となって型締め位置と型開き位置との間で左右方向へ移動可能である。型締め状態の左右第1スライド型34は、型締め状態を保ったまま、型締め位置にある左右両金型本体32から上方へ離間することが可能である。
【0028】
左右一対の第2スライド型36は、左右方向及び上下方向へ個別に移動することが可能である。左側の第2スライド型36は、左側の金型本体32の下面に個別に密着した状態のまま、左側の金型本体32と一体となって型締め位置と型開き位置との間で左右方向へ移動可能である。右側の第2スライド型36は、右側の金型本体32の下面に個別に密着した状態のまま、右側の金型本体32と一体となって型締め位置と型開き位置との間で左右方向へ移動可能である。型締め状態の左右第2スライド型36は、型締め状態を保ったまま、型締め位置にある左右両金型本体32から下方へ離間することが可能である。
【0029】
第1スライド型34の内面(下面)には、第1肩部13の内周側領域と、第1アンダーカット部16の全領域と、第1円筒部14の全領域と、閉塞部15の全領域を成形する第1成形面35が形成されている。第2スライド型36の内面(上面)には、第2肩部18の内周側領域と、第2アンダーカット部20の全領域と、第2円筒部19の全領域とを成形する第2成形面37が形成されている。
【0030】
軸状モジュール38は、軸線を上下方向に向けたロッド39と、第1インサートリング42と、第2インサートリング45とを組み付けて構成されている。ロッド39の上端部には第1雄ネジ部40が形成されている。ロッド39における第1雄ネジ部40より低い位置には、第1雄ネジ部40より大径の第2雄ネジ部41が形成されている。ロッド39内には、コンプレッサ(図示省略)に接続され、ロッド39の外周面に開口する給気孔(図示省略)が形成されている。
【0031】
第1インサートリング42は、軸線を上下方向に向けた円柱形をなす。第1インサートリング42には、非貫通形態であって第1インサートリング42の下面のみに開口する第1雌ネジ孔43が、第1インサートリング42と同軸状に形成されている。第1インサートリング42の外周面は、上端から下端に向かって外径が次第に小さくなった形態の第1テーパ面44となっている。第1インサートリング42は、第1雌ネジ孔43を第1雄ネジ部40にねじ込むことにより、ロッド39に組み付けられている。
【0032】
第2インサートリング45は、軸線を上下方向に向けた円筒形をなす。第2インサートリング45には、第2インサートリング45を同軸状に貫通した形態の第2雌ネジ孔46が形成されている。第2インサートリング45の外周面は、第1インサートリング42とは逆に、上端から下端に向かって外径が次第に大きくなった形態の第2テーパ面47となっている。第2インサートリング45は、第2雌ネジ孔46を第2雄ネジ部41にねじ込むことにより、ロッド39に組み付けられている。
【0033】
次に、ブロー成形体10の製造手順を説明する。左右一対の第1スライド型34と左右一対の第2スライド型36を、それぞれ、左右一対の金型本体32に一体化させた状態で、左右両金型31を型開き位置へ移動させる。この後、型開き状態の金型31の間にパリソンPを押し出す。所定長さのパリソンPが押し出されたら、
図1に示すように、一対の金型31を互いに接近させて型締めする。このとき、各金型31においては、金型本体32と第1スライド型34と第2スライド型36が一体となって水平移動する。型締めされると、パリソンPが一対の金型31によって包囲される。
【0034】
型締めした後は、ロッド39内の通気孔を通して加圧エアがパリソンP内に供給され、
図1,2に示すように、パリソンPが、金型31の内面(主成形面33、第1成形面35及び第2成形面37)に押し付けられ、所定の形状に成形されたブロー成形体10が得られる。ブロー成形体10が成形されると同時に、左右両第1スライド型34の間に挟み付けられた第1溶着部48(請求項に記載の溶着部)と、左右両第2スライド型36の間に挟み付けられた第2溶着部49(請求項に記載の溶着部)とが形成される。
【0035】
第1溶着部48は、第1肩部13のうち第1成形面35によってのみ成形される内周側領域と、第1アンダーカット部16の全領域と、第1円筒部14の全領域と、閉塞部15の全領域とに連なっている。第1溶着部48は、主成形面33で成形される領域には連なっていない。第2溶着部49は、第2肩部18のうち第2成形面37によってのみ成形される内周側領域と、第2アンダーカット部20の全領域と、第2円筒部19の全領域とに連なっている。第2溶着部49は、主成形面33で成形される領域には連なっていない。
【0036】
パリソンPを第1成形面35と第2成形面37に押し付けた直後は、ブロー成形体10は、外力を受けると変形し得る未硬化状態である。ブロー成形体10が未硬化状態である間に、左右一対の第1スライド型34を、型締め状態のままで、型締め状態の金型本体32から離間するように上方へ移動させる。一対の第1スライド型34を上方へ移動させると、
図3,4に示すように、両第1スライド型34に挟まれている第1溶着部48が、ブロー成形体10の第1軸端部12から引きちぎられるように分離する。
【0037】
このとき、第1軸端部12のうち第1溶着部48に連なっていた部分が、第1スライド型34及び第1溶着部48によって上方へ引っ張られるため、ドーム状に変形することが懸念される。しかし、第1円筒部14の内周に嵌合されている第1インサートリング42の第1テーパ面44は、第1スライド型34及び第1溶着部48の移動方向に向かって拡径するように傾斜しているので、第1円筒部14は、上方へ移動せずに第1インサートリング42と一体となった状態に保たれる。また、第1肩部13の外周縁部は、金型本体32の主成形面33によって上方への移動を規制されている。したがって、第1軸端部12のうち第1円筒部14と第1肩部13の外周縁部とに連なる領域(第1アンダーカット部16の全領域と第1肩部13の内周側領域)は、上方へ変位して不正な変形を生じる虞がない。
【0038】
同じくブロー成形体10が未硬化状態である間に、左右一対の第2スライド型36を、型締め状態のままで、型締め状態の金型本体32から離間するように下方へ移動させる。一対の第2スライド型36を下方へ移動させると、
図3,4に示すように、両第2スライド型36に挟まれている第2溶着部49が、ブロー成形体10の第2軸端部17から引きちぎられるように分離する。このときも、第2軸端部17のうち第2溶着部49に連なっていた部分が、第2スライド型36及び第2溶着部49によって下方へ引っ張られるため、ドーム状に変形することが懸念される。
【0039】
しかし、第2円筒部19の内周に嵌合している第2インサートリング45の第2テーパ面47は、第2スライド型36及び第2溶着部49の移動方向に向かって次第拡径するように傾斜している。これにより、第1軸端部12の場合と同様、第2軸端部17のうち第2円筒部19と第2肩部18の外周縁部とに連なる領域(第2アンダーカット部20の全領域と第2肩部18の内周側領域)は、下方へ変位して不正な変形を生じる虞がない。
【0040】
第1スライド型34と第2スライド型36を金型本体32から離脱させた後は、金型本体32内に残留しているブロー成形体10と、第1スライド型34に挟まれている第1溶着部48と、第2スライド型36に挟まれている第2溶着部49を、冷却して硬化させる。硬化した後は、金型本体32を型開きして硬化したブロー成形体10を取り出すとともに、第1スライド型34と第2スライド型36を型開きして硬化した第1溶着部48と第2溶着部49を廃棄する。以上により、ブロー成形体10の成形工程が完了する。
【0041】
第1溶着部48が第1軸端部12に連なっている状態のままでブロー成形体10が硬化した場合、第1溶着部48はバリとなって第1軸端部12の外面に残ることになる。しかし、第1溶着部48は、型開きの工程において第1軸端部12から分離されるので、ブロー成形体10の硬化後に、第1軸端部12の外面にバリが残ることはない。第2溶着部49についても、第1溶着部48と同様、型開き工程で第2軸端部17から分離されるので、ブロー成形体10の硬化後に、第2軸端部17の外面にバリが残ることはない。
【0042】
上述のように成形されて金型31から取りはずされたブロー成形体10には、軸状モジュール38(ロッド39と第1インサートリング42と第2インサートリング45)が一体化されたままである。このブロー成形体10に第1口金21、第2口金23、バルブが取り付けられると、ロッド39が一体化された容器本体25が構成される。この容器本体25の外面には補強層27が形成される。
【0043】
補強層27の形成は、フィラメントワインディング装置(図示省略)を用いて、シート状部材28をブロー成形体10と両口金21,23に巻き付けることによって行われる。第1口金21と第2口金23と軸状モジュール38のロッド39には、回転駆動部材(図示省略)が取り付けられる。回転駆動部材をモータ(図示省略)により駆動してブロー成形体10と両口金21,23を回転させるとともに、ブロー成形体10と両口金21,23に、ボビンから繰り出したプリプレグ繊維からなるシート状部材28を巻き付けていく。
【0044】
シート状部材28を巻き付ける間、第1口金21内で第1インサートリング42が傾くとすると、第1円筒部14が不正な変形を生じる。また、第2口金23内で第2インサートリング45が傾くと、第2円筒部19が不正な変形を生じることになる。この対策として、第1インサートリング42と第2インサートリング45がロッド39を介して連結されているので、第1インサートリング42と第2インサートリング45の傾きが規制れ、ひいては、第1円筒部14と第2円筒部19の不正な変形が防止される。
【0045】
補強層27の形成が完了したら、圧力容器29からロッド39を取り外す。ロッド39を外す際には、ロッド39を回転させ、第1雄ネジ部40と第2雄ネジ部41を第1インサートリング42と第2インサートリング45から同時に離脱させればよい。ロッド39を容器本体25から外すと、圧力容器29の製造工程が完了する。
【0046】
本実施例1のブロー成形体10の製造装置Aは、一対の金型31と、軸状モジュール38とを備えている。一対の金型31は、パリソンPを包囲することで胴部11の軸線方向端部から第1軸端部12と第2軸端部17が径方向内側へ張り出した形態のブロー成形体10を成形する。また、一対の金型31は、パリソンPの一部を偏平に潰すことで第1軸端部12に連なる第1溶着部48と第2軸端部17に連なる第2溶着部49とを形成する。
【0047】
また、一対の金型31は、一対の金型本体32と一対の第1スライド型34と一対の第2スライド型36とを有する。一対の金型本体32は、ブロー成形体10のうち第1軸端部12及び第2軸端部17以外の領域を成形し、パリソンPの軸線方向と交差する方向に型開きされる。一対の第1スライド型34は、第1溶着部48を挟み付けた状態で第1軸端部12を成形し、第1溶着部48を挟み付けた状態のままで型締め状態の一対の金型本体32から軸線方向へ離脱可能である。一対の第2スライド型36は、第2溶着部49を挟み付けた状態で第2軸端部17を成形し、第2溶着部49を挟み付けた状態のままで型締め状態の一対の金型本体32から軸線方向において第1スライド型34とは反対方向へ離脱可能である。
【0048】
ブロー成形体10の成形工程において、軸状モジュール38は、第1軸端部12の内面と第2軸端部17の内面とに接するように配される。第1スライド型34の離脱過程において、軸状モジュール38は、第1軸端部12が金型本体32に対して軸線方向へ相対変位することを規制する。第2スライド型36の離脱過程において、軸状モジュール38は、第2軸端部17が金型本体32に対して軸線方向へ相対変位することを規制する。
【0049】
一対の金型31を型締めしてブロー成形体10の形状が安定した後、型締め状態の金型本体32から第1スライド型34と第2スライド型36を軸線方向に離脱させる。このとき、ブロー成形体10の第1軸端部12と第2軸端部17は、軸状モジュール38によって軸線方向への変位を規制されているので、第1溶着部48は第1スライド型34とともに第1軸端部12から分離し、第2溶着部49は第2スライド型36とともに第2軸端部17から分離する。本実施例1の製造装置Aによれば、型開きの工程において第1溶着部48と第2溶着部49をブロー成形体10から切り離すことができるので、型開きの後にバリを切除する工程が不要であり、製造効率に優れている。
【0050】
また、軸状モジュール38は、ブロー成形体10の軸線方向と略平行な棒状をなし、胴部11の軸線方向における両端部に形成された第1軸端部12と第2軸端部17の中心部に対し一体化し得るようになっている。この構成によれば、第1スライド型34と第2スライド型36が第1軸端部12と第2軸端部17から軸線方向へ離脱するときに、第1軸端部12と第2軸端部17同士が軸状モジュール38により離間しないように保持される。
【0051】
また、軸状モジュール38は、ロッド39と、ロッド39に対して着脱可能であって第1軸端部12及び第2軸端部17と一体化される第1インサートリング42及び第2インサートリング45とを備えて構成されている。この構成によれば、型開き工程では、第1インサートリング42と第2インサートリング45をロッド39で連結することにより、第1軸端部12と第2軸端部17の変位を規制することができる。型開き工程の後は、ロッド39を第1インサートリング42と第2インサートリング45から外すことにより、第1インサートリング42と第2インサートリング45を、夫々、第1軸端部12及び第2軸端部17と一体化させた状態で所期の機能を発揮させることができる。
【0052】
また、ロッド39と第1インサートリング42と第2インサートリング45は、ブロー成形体10に対し同軸状をなして一体回転可能となっている。この構成によれば、ブロー成形体10の外面に補強層27を形成するためのワインディング工程において、第1軸端部12と第2軸端部17の傾きを防止することができる。
【0053】
また、第1軸端部12の中心部外周に第1口金21が取り付けられ、第1口金21の内周面と第1軸端部12の外周面との間に第1シールリング22が取り付けられるようになっている。第1インサートリング42は、第1軸端部12の内周面のうち軸線方向において第1シールリング22と対応する部位に配置されている。この構成によれば、第1インサートリング42が第1軸端部12の径方向への変形を抑制するので、第1シールリング22による防水機能の信頼性が高められている。
【0054】
また、第2軸端部17の中心部外周に第2口金23が取り付けられ、第2口金23の内周面と第2軸端部17の外周面との間に第2シールリング24が取り付けられるようになっている。第2インサートリング45は、第2軸端部17の内周面のうち軸線方向において第2シールリング24と対応する部位に配置されている。この構成によれば、第2インサートリング45が第2軸端部17の径方向への変形を抑制するので、第2シールリング24による防水機能の信頼性が高められている。
【0055】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を
図7を参照して説明する。本実施例2は、軸状モジュール50(請求項に記載の変位規制部材)を構成する第1インサートリング51(請求項に記載のリング状)と第2インサートリング53の形状を、上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0056】
第1インサートリング51の外周には、周方向の第1係止溝52が形成されている。この形状により、第1円筒部14の内周の一部が第1係止溝52に入り込む。したがって、第1スライド型34から上方へ移動して金型本体32から離間する際に、第1係止溝52におけるアンカー効果により、第1円筒部14の上方への変位が規制される。
【0057】
また、第2インサートリング53の外周には、周方向の第2係止溝54が形成されている。この形状により、第2円筒部19の内周の一部が第2係止溝54に入り込む。したがって、第2スライド型36から下方へ移動して金型本体32から離間する際に、第2係止溝54におけるアンカー効果により、第2円筒部19の上方への変位が規制される。
【0058】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1,2では、金型本体が、胴部と軸端部の一部(軸端部のうち肩部の外周縁部)とを成形するが、金型本体は、胴部のみを成形するものであってもよい。
(2)上記実施例1,2では、スライド型が軸端部のみを成形するが、スライド型は、軸端部だけでなく胴部の一部(胴部における軸線方向の端部)を成形するものであってもよい。
(3)上記実施例1,2では、スライド型が軸端部の一部のみを成形するが、スライド型は軸端部の全領域を成形するものであってもよい。
(4)上記実施例1,2では、ロッドとインサートリング(リング状機能部材)とが着脱可能であるが、ロッドとインサートリング(リング状機能部材)が分離不能な形態であってもよい。
(5)上記実施例1,2では、軸状モジュール(ロッドとリング状機能部材)が、補強層を形成するためのワインディング工程において第1軸端部と第2軸端部の傾きを防止する機能を発揮するが、軸状モジュールは、傾き防止機能を発揮しない形態であってもよい。
(6)上記実施例1,2では、ロッドとインサートリング(リング状機能部材)とを有する軸状モジュールと、金型本体の一部が、変位規制部材として機能するが、軸状モジュールと金型本体の一部のうちいずれか一方だけが変位規制部材として機能するようになっていてもよい。
(7)上記実施例1,2では、インサートリング(リング状機能部材)と円筒部(軸端部)をテーパ形状又はアンカー形状によって軸線方向への相対変位を規制したが、インサートリング(リング状機能部材)と円筒部(軸端部)の相対変位を規制する手段としては、両者の接触面(界面)を梨地状にして摩擦抵抗を大きくしてもよく、接着剤で固着してもよい。
【符号の説明】
【0059】
A…製造装置
P…パリソン
10…ブロー成形体
11…胴部
12…第1軸端部(軸端部)
17…第2軸端部(軸端部)
21…第1口金(口金)
22…第1シールリング(シールリング)
23…第2口金(口金)
24…第2シールリング(シールリング)
31…金型
32…金型本体
34…第1スライド型(スライド型)
36…第2スライド型(スライド型)
38,50…軸状モジュール(変位規制部材)
39…ロッド
42,51…第1インサートリング(リング状機能部材)
45,53…第2インサートリング(リング状機能部材)
48…第1溶着部(溶着部)
49…第2溶着部(溶着部)