(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】粒子捕集装置、及び粒子測定装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/53 20060101AFI20240806BHJP
B03C 3/41 20060101ALI20240806BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20240806BHJP
B03C 3/16 20060101ALI20240806BHJP
G01N 27/60 20060101ALI20240806BHJP
G01N 15/06 20240101ALI20240806BHJP
G01N 15/00 20240101ALI20240806BHJP
【FI】
B03C3/53
B03C3/41 A
B03C3/40 A
B03C3/16 Z
G01N27/60 C
G01N15/06 D
G01N15/00 C
(21)【出願番号】P 2020077243
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】巻嶋 優治
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰
(72)【発明者】
【氏名】福田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】北林 功一
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-329552(JP,A)
【文献】特開2003-329587(JP,A)
【文献】特開2019-162596(JP,A)
【文献】特開2021-045732(JP,A)
【文献】特開2008-295937(JP,A)
【文献】国際公開第2008/156135(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
G01N 27/60
G01N 15/00
G01N 15/60
C12M 1/34
G01N 33/483
G01N 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通路を流通する空気中の粒子を帯電させて捕集する粒子捕集装置であって、
高電圧が印加される電極と、
前記電極によって帯電された粒子が捕集される導電性の液体と、
接地され、前記液体が保持される保持部材と、
を備え、前記電極の先端部は、前記液体の液面よりも空気の流通方向の上流側の前記流通路において、該液面から一定の距離を隔てた位置に配置され
、
前記電極よりも空気の流通方向の下流側に、高電圧が印加される反発部を備え、該反発部は、前記電極によって帯電された粒子が流通する開口部を備え、前記液体の液面から一定の距離を隔てた位置において、該液面に沿うように配置されていることを特徴とする粒子捕集装置。
【請求項2】
前記電極は、繊維を束ねた束状部を有する線電極で構成されていることを特徴とする請求項
1に記載の粒子捕集装置。
【請求項3】
前記電極は、前記流通路の吸込部の内周に沿って等間隔に配列され、該各電極の先端部は、該吸込部より前記液体の液面側に突出して設けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の粒子捕集装置。
【請求項4】
前記電極の先端部と前記液体の液面との距離は、前記反発部と該液面との距離よりも長く、前記電極と前記反発部に印加される電圧は同じであることを特徴とする請求項
1に記載の粒子捕集装置。
【請求項5】
前記液体の主成分は水であり、
前記保持部材上の該液体は、厚さ1mm以下の液膜で形成され、液体の蒸発を抑制する蒸発防止剤を含んでいることを特徴とする請求項1~
4のいずれかの請求項に記載の粒子捕集装置。
【請求項6】
前記蒸発防止剤を含んだ前記液体は、水よりも粘性が高いことを特徴とする請求項
5に記載の粒子捕集装置。
【請求項7】
前記蒸発防止剤は、グリセリン(グリセロール)であることを特徴とする請求項
5に記載の粒子捕集装置。
【請求項8】
前記保持部材上の液体は、抗酸化剤を含んでいることを特徴とする請求項1~
7のいずれかの請求項に記載の粒子捕集装置。
【請求項9】
前記抗酸化剤は、ビタミンC又はぶどう糖であることを特徴とする請求項
8に記載の粒子捕集装置。
【請求項10】
前記電極より空気の流通方向の上流側に、エレクトロスプレー部を備え、該エレクトロスプレー部の先端部は前記液体の液面側に向けて配置されていることを特徴とする請求項1~
9のいずれかの請求項に記載の粒子捕集装置。
【請求項11】
前記エレクトロスプレー部及び前記電極の支持体は、前記
流通路の吸込部
内に配置されていることを特徴とする請求項
10に記載の粒子捕集装置。
【請求項12】
前記保持部材を覆うように形成され、該保持部材に着脱可能な筐体を備え、前記電極及び前記反発部は該筐体に支持されていることを特徴とする請求項
1~
11のいずれかの請求項に記載の粒子捕集装置。
【請求項13】
前記保持部材は内部に空間を有する筐体内に配置され、該筐体には、該保持部材に保持された前記液体に対向する位置に吸込口が設けられ、該吸込口より空気の流通方向の下流側には、該吸込口から該筐体内に流入した空気が前記液体の液面に沿って周囲に拡散するように前記流通路が形成されていることを特徴とする請求項1~
12のいずれかの請求項に記載の粒子捕集装置。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれかの請求項に記載の粒子捕集装置を備える粒子測定装置であって、
前記粒子捕集装置より空気の流通方向の下流側において前記流通路に連通するケースを備え、該ケースには、吸引ファンと、外部に空気を吹き出す排気口が設けられていることを特徴とする粒子測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の粒子を帯電させて捕集する粒子捕集装置、該粒子捕集装置を備える粒子測定装置、及び空気中の粒子を捕集する粒子捕集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製薬工場や食品工場、病院、居住空間などで空気中に浮遊する微生物による汚染状況を調べるために測定装置が利用されている。 例えば特許文献1のように、針電極と平板電極とを設けたコロナ放電電極を備え、平板電極に微粒子付着部材を載置した状態で表面に微粒子を付着させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の技術には、以下のような問題がある。
【0005】
(1)培地によって微粒子が捕集されるため、培地に捕集された粒子を、次工程(例えばPCR処理)で使用する場合、粒子を培地から掻き取りして溶液に溶かす工程が必要となり、手間(工数)を要する。
【0006】
(2)装置内に導入される空気中の微粒子は、必ずしも単体の針電極によって生成される帯電エリアを通過するとは限らないため、帯電性能を向上させることが難しい(特許文献1の
図6等参照)。
【0007】
(3)針電極の下流側には、反発部に相当する仕組みがなく、いわゆる一段式の電気集塵方式であるため、捕集性能を向上させることが難しい。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、粒子捕集後の次工程を容易に行うことができ、帯電性能と捕集性能に優れる粒子捕集装置、粒子測定装置、及び粒子捕集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の第1の粒子捕集装置は、流通路を流通する空気中の粒子を帯電させて捕集する粒子捕集装置であって、高電圧が印加される電極と、前記電極によって帯電された粒子が捕集される導電性の液体と、接地され、前記液体が保持される保持部材と、を備え、前記電極の先端部は、前記液体の液面よりも空気の流通方向の上流側の前記流通路において、該液面から一定の距離を隔てた位置に配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の粒子捕集装置によれば、空気中の粒子は、必ず電極と液面との間に生成される帯電エリアを通過して帯電された後、液面に接触して捕集されるので、導電性の液体を有効に活用することができると共に、帯電効率を向上させることができる。また、粒子は導電性の液体に捕集されるので、粒子捕集後の次工程(例えば、PCR処理等)を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第2の粒子捕集装置は、上記した第1の粒子捕集装置において、前記電極よりも空気の流通方向の下流側に、高電圧が印加される反発部を備え、該反発部は、前記電極によって帯電された粒子が流通する開口部を備え、前記液体の液面から一定の距離を隔てた位置において、該液面に沿うように配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の粒子捕集装置によれば、空気中の帯電された粒子が、開口部を経由して、液面に沿って流通するため、粒子を液面に効率よく捕集することができる。
【0013】
本発明の第3の粒子捕集装置は、上記した第1又は第2の粒子捕集装置において、前記電極は、繊維を束ねた束状部を有する線電極で構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の粒子捕集装置によれば、線電極は、針電極に比べて低電圧で帯電エリアを生成することができるので、例えば、携帯性に優れるバッテリー等により稼動が可能である。加えて、電極が繊維を束ねた束状部を有する線電極を使用しているため、汚れが付着し難く、例えば、放電している線電極が汚れにより放電できなくなったとしても、交番作用により別の線電極が放電を開始するので、優れた耐久性を実現することができる。
【0015】
本発明の第4の粒子捕集装置は、上記した第1~第3のいずれかの粒子捕集装置において、前記電極は、前記流通路の吸込部の内周に沿って等間隔に配列され、該各電極の先端部は、該吸込部より前記液体の液面側に突出して設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の粒子捕集装置によれば、電極の先端部が、吸込部より液面側に突出しているため、電極によって生成される帯電エリアに吸込部が影響を及ぼすことなく、吸込部から流出する空気中の粒子を確実に帯電させることができる。
【0017】
本発明の第5の粒子捕集装置は、上記した第2の粒子捕集装置において、前記電極の先端部と前記液体の液面との距離は、前記反発部と該液面との距離よりも長く、前記電極と前記反発部に印加される電圧は同じであることを特徴とする。
【0018】
本発明の第5の粒子捕集装置によれば、液面からの電極と反発部の距離を上記したように配置することで、電極と反発部に印加される高電圧を同じに設定することができ、給電部分の共通化を図ることができると共に、電極及び反発部にバランス良く給電することができる。
【0019】
本発明の第6の粒子捕集装置は、上記した第1~第5のいずれかの粒子捕集装置において、前記液体の主成分は水であり、
前記保持部材上の該液体は、厚さ1mm以下の液膜で形成され、液体の蒸発を抑制する蒸発防止剤を含んでいることを特徴とする。
【0020】
本発明の第6の粒子捕集装置によれば、液体の液量を少なく抑えることで、次工程(例えば、PCR処理等)での検体濃度の低下を防止することができる。また、液体に蒸発防止剤が混合されていることにより、液体の蒸発を防止し、液量が少なくても安定的に粒子を捕集することができる。
【0021】
本発明の第7の粒子捕集装置は、上記した第6の粒子捕集装置において、前記蒸発防止剤を含んだ前記液体は、水よりも粘性が高いことを特徴とする。
【0022】
本発明の第7の粒子捕集装置によれば、装置の姿勢が多少傾いたとしても、液体を保持部材上に、保持することができるため、安定的に粒子を捕集することができる。
【0023】
本発明の第8の粒子捕集装置は、上記した第6の粒子捕集装置において、前記蒸発防止剤は、グリセリン(グリセロール)であることを特徴とする。
【0024】
本発明の第8の粒子捕集装置によれば、捕集後の次工程(例えば、PCR処理等)に悪影響を及ぼすことがない。また、流通性(市場性)に優れ、容易に入手することができる。
【0025】
本発明の第9の粒子捕集装置は、上記した第1~第8のいずれかの粒子捕集装置において、前記保持部材上の前記液体は、抗酸化剤を含んでいることを特徴とする。
【0026】
本発明の第9の粒子捕集装置によれば、液体に捕集された粒子のDNA(核酸)のストレスを緩和し、粒子のDNAの損傷を防止することができる。
【0027】
本発明の第10の粒子捕集装置は、上記した第9の粒子捕集装置において、前記抗酸化剤は、ビタミンC又はぶどう糖であることを特徴とする。
【0028】
本発明の第10の粒子捕集装置によれば、流通性(市場性)に優れ、比較的安価で入手容易な抗酸化剤を使用することができる。
【0029】
本発明の第11の粒子捕集装置は、上記した第1~第10のいずれかの粒子捕集装置において、前記電極より空気の流通方向の上流側に、エレクトロスプレー部を備え、該エレクトロスプレー部の先端部は前記液体の液面側に向けて配置されていることを特徴とする。
【0030】
本発明の第11の粒子捕集装置によれば、エレクトロスプレー部から噴霧される液滴により液体の補充を行うことができると共に、空間電荷の効果により粒子の捕集効率を高めることができる。
【0031】
本発明の第12の粒子捕集装置は、上記した第11の粒子捕集装置において、前記エレクトロスプレー部及び前記電極の支持体は、前記吸込部内の前記流通路に配置されていることを特徴とする。
【0032】
本発明の第12の粒子捕集装置によれば、吸込部内の空間を有効に活用することで、装置の小型化を実現することができる。
【0033】
本発明の第13の粒子捕集装置は、上記した第2~第12のいずれかの粒子捕集装置において、前記保持部材を覆うように形成され、該保持部材に着脱可能な筐体を備え、前記電極及び前記反発部は該筐体に支持されていることを特徴とする。
【0034】
本発明の第13の粒子捕集装置によれば、筐体を取り外すことにより、液体の上方が開放状態となるので、液体の取扱いを容易に行うことができる。 また、粒子捕集前に保持部材に液膜を形成したり、粒子捕集後の液体を採取したりすることを容易に行うことができる。
【0035】
本発明の第14の粒子捕集装置は、上記した第1~第13のいずれかの粒子捕集装置において、前記保持部材は内部に空間を有する筐体内に配置され、該筐体には、該保持部材に保持された前記液体に対向する位置に吸込口が設けられ、該吸込口より空気の流通方向の下流側には、該吸込口から該筐体内に流入した空気が前記液体の液面に沿って周囲に拡散するように前記流通路が形成されていることを特徴とする。
【0036】
本発明の第14の粒子捕集装置によれば、吸込口から流入した空気は、吸込口から液面の周囲に拡散するように流通するので、液面全体を有効に活用することができる。また、筐体と液面との間を流通路とすることで、筐体の内部空間を有効に活用することができる。
【0037】
本発明の粒子測定装置は、上記した第1~第14のいずれかの粒子捕集装置を備える粒子測定装置であって、前記粒子捕集装置より空気の流通方向の下流側において前記流通路に連通するケースを備え、該ケースには、吸引ファンと、外部に空気を吹き出す排気口が設けられていることを特徴とする。
【0038】
本発明の粒子測定装置によれば、帯電性能と捕集性能に優れる粒子捕集装置を備えているので、空気中の粒子(微生物、細菌、ウィルスを含む)を捕集し易くなり、粒子の状態の測定や分析を効率的に行うことができる。
【0039】
本発明の第1の粒子捕集方法は、導電性の液体を保持部材に供給する液体供給工程と、前記液体供給工程の後に粒子を含む空気を吸い込む空気吸込み工程と、高電圧を印加することにより前記空気吸込み工程で吸い込んだ空気中の粒子を帯電させる粒子帯電工程と、前記液体供給工程で前記保持部材に供給された前記液体に前記粒子帯電工程で帯電された粒子を捕集させる粒子捕集工程と、を含むことを特徴とする。
【0040】
本発明の第2の粒子捕集方法は、上記した第1の粒子捕集方法において、前記粒子は、微生物や細菌やウィルスを含むことを特徴とする。
【0041】
本発明の第3の粒子捕集方法は、上記した第1又は第2の粒子捕集方法において、前記粒子帯電工程を行っている間に前記液体を前記保持部材に補充する液体補充工程を含むことを特徴とする。
【0042】
本発明の第4の粒子捕集方法は、上記した第3の粒子捕集方法において、前記液体補充工程は、前記粒子捕集工程の開始から所定時間が経過した時に行うことを特徴とする。
【0043】
本発明の第1~第4の粒子捕集方法によれば、空気中の粒子は、必ず帯電された後、保持部材に供給された液体に接触して捕集されるので、液体を有効に活用することができると共に、帯電効率を向上させることができる。また、空気中の粒子は保持部材の液体に捕集されるので、粒子捕集後の次工程における各処理(例えば、PCR処理等)を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、粒子捕集後の次工程における処理を容易に行うことができ、帯電性能や捕集性能の向上を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を斜め上方から示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を斜め上方から内部を透視して示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を斜め下方から示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置及び粒子測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置の作用を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付した図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下において説明する各実施形態は本発明の好適な具体例であって、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0047】
[粒子捕集装置]
まず、
図1~
図5を参照しつつ、本発明の実施形態に係る粒子捕集装置について説明する。ここで、
図1は本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を斜め上方から示す分解斜視図、
図2は本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を示す断面図、
図3は本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を斜め上方から内部を透視して示す分解斜視図、
図4は本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を斜め下方から示す分解斜視図、
図5は本発明の実施形態に係る粒子捕集装置及び粒子測定装置の構成を示すブロック図、
図6は本発明の実施形態に係る粒子捕集装置の作用を示すタイムチャートである。
【0048】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図1において矢印で示した前後、左右及び上下の向きを基準として、各図における向きを設定する。また、「流通方向」とは、空気が流れる方向を指し、「上流」及び「下流」並びにこれらに類する用語は、空気の流通方向における「上流」及び「下流」並びにこれらに類する概念を指すこととする。
【0049】
本実施形態に係る粒子捕集装置1は、空気中の粒子を帯電させて捕集するための装置であり、粒子捕集装置1の捕集対象となる空気中の粒子には、塵埃の他に、微生物、細菌、ウィルスのようなバイオ粒子などが含まれる。粒子捕集装置1は、筐体2と、ベース部3と、吸込部4と、エレクトロスプレー部5と、放電部6と、反発部7と、フレーム8と、制御装置9と、を備えて構成されている。
【0050】
<筐体>
筐体2は、非導電性の樹脂、陶器又は磁器により製造されている。このため、碍子が不要となり、部品点数を削減することができ、経済性を高めることができる。筐体2は、円筒状の上部11と、上部11と同心で上部11より大径の扁平な有天円筒状の下部12と、を備えて構成されている。なお筐体2を含め、後述する空気の流通路90を形成する円形状の構造部は、多角形状や楕円筒状等、他の形状であっても良い。
【0051】
図2に示されているように、上部11の内部には、円柱状の空間S1が形成されている。下部12の上面13には、空間S1に対応する中心位置に丸穴14が形成され、この丸穴14を介して、下部12の内部は上部11の内部(空間S1)と連通している。
【0052】
下部12の上面には、丸穴14の周囲に下方に突出する突出部15が円環状に形成されている。突出部15により囲まれた扁平な円柱状の空間S2は上部11の空間S1より径方向に大きく形成されている。なお、
図2中に点線で示されているように、丸穴14の外周縁から突出部15の内周側下端まで傾斜部16が形成されていても良い。また、下部12の外周壁17の下端には外鍔部18が円環状に形成されている。
【0053】
<ベース部>
ベース部3は、長方形の板状に形成され、筐体2はベース部3上にネジ等によって着脱可能に取り付けられている。
図1に良く示されているように、ベース部3には、円形の位置決め穴19と、位置決め穴19の周囲に形成された複数個(
図1では6個)の円弧状の排気穴20と、が形成されている。
【0054】
<吸込部>
図2に良く示されているように、吸込部4は、筐体2の上部11の内部に収納される筒状部21と、筒状部21の上部から上方外側に漏斗状に延出する吸込口22と、を備え、吸込口22の下端には筒状部21に連通する丸穴23が形成されている。筒状部21の上端には、段差部24が形成されている。この段差部24が筐体2の上部11の上端に当接することで、筒状部21は、その下端が筐体2の上面13の下面と同一面を形成する位置に保持される。
【0055】
<エレクトロスプレー部(帯電液滴発生部)>
エレクトロスプレー部(帯電液滴発生部)5は、吐出ノズル25と、吐出ノズル25を支持する支持部材26と、 吐出ノズル25に高電圧を給電するための給電用部材27と、吐出ノズル25に液体を供給するための供給タンク28と、供給タンク28と吐出ノズル25とを接続するチューブ(流路)29と、により構成されている。
【0056】
吐出ノズル25は、鋭い先端部25aを備えており、吸込部4の筒状部21の中心位置において先端部25aを下方に向けた姿勢で支持部材26に支持されている。支持部材26は、吸込口22の下端部に水平に配置され、吸込口22の丸穴23に沿うように形成される円形部30と、円形部30の内側に形成される十字部31と、により構成され、吐出ノズル25は十字部31の交差する中心部に支持されている。円形部30の内側には、十字部31によって4個の扇状の開口部32が形成されており、吸込口22内に吸い込まれた空気は、これらの開口部32を介して筐体2内に流入するようになっている。
【0057】
給電用部材27は、細長い板状を成し、支持部材26から外側径方向に水平に延出して吸込口22の下端部を貫通した後、筐体2の上部11の外壁面に沿って鉛直下方に折曲している。給電用部材27には、給電接続部33を介して電圧供給部37b(
図5参照)から所定の高電圧(V2)が印加される。給電接続部33は、給電用部材27に電気的に接触する給電バネ34と、給電バネ34を支持する給電用碍子35と、を有しており、
図2中に点線で示されているように、保護ケース36に収納されている。給電用碍子35は、磁器又は陶器もしくは電気絶縁性に優れる樹脂で形成されている。なお、給電用碍子35は筐体2に固定されているが、図では固定状態は省略している。
【0058】
供給タンク28には、水(純水又は滅菌水又は蒸留水)に蒸発防止剤を混合した液体が貯留されている。前記蒸発防止剤は、粘性が高いグリセリン(グリセロール)であり、例えば、水とグリセリンの混合濃度は50%程度で、粘度は6である。また、液体に、抗酸化剤(ビタミンC)若しくは/及び、ぶどう糖を混合しても良い。ビタミンCとぶどう糖は、DNA(核酸、RNAも含む)のストレスを緩和し、損傷を防止する効果がある。抗酸化剤(ビタミンC)若しくは/及び、ぶどう糖の混合濃度は、数%程度である。なお、供給タンク28に貯留される液体は、水のみであっても良い。さらに、供給タンク28内の液体に、特定の微生物を増幅させるための酵素を混合しても良い。いずれにせよ、供給タンク28から供給される液体は、導電性を有している。
【0059】
<放電部>
放電部6は、複数の放電用電極40と、各放電用電極40を支持する支持体41と、支持体41に高電圧を給電するための給電用部材42と、を備えている。各放電用電極40は、繊維状の線電極43を束ねてブラシ状に形成された束状部44を備えている。線電極43は、直径12μmの非磁性のステンレス繊維で形成されている。このため、線電極43が束状部44から離間しやすく、放電性能を高めるこができる。例えば、磁性を備えたフェライト系では、線電極43が束状部44より離間し難いため、束状部44との電界干渉による影響が大きく、強電界のコロナ放電を発生させることが難しい。
【0060】
1つの放電用電極40は、例えば、約100本の線電極43が束ねられることで形成されている。なお、放電用電極40は、直径5~25μmの線電極43を10~200本束ねて形成されていても良い。
【0061】
放電用電極40に印加される電圧は、数kVであり、具体的には後述の通り、平均電界強度0.3~0.6kV/mmの範囲となる電圧である。特に、微生物や細菌やウィルスのようなバイオ粒子を捕集する場合、電極に印加される電圧は、バイオ粒子の細胞を破壊しないような電圧(例えば数kV)に設定されるのが望ましい。
【0062】
放電用電極40の長さ(支持体41から突出している長さ)は、数mmであり、具体的には3~7mmの範囲である。このため、比較的低電圧でも、安定して放電することができる。
【0063】
放電用電極40には、直流でプラスの高電圧が印加される。このように直流方式を採用することで、他の方式(交流、パルス)に比べて、比較的簡単な構成とすることができる。また、高電圧の印加方式として、プラス荷電方式を採用することで、マイナス荷電方式に比べて、オゾンの生成を抑制することができるので、特に微生物や細菌やウィルスのようなバイオ粒子に与える影響を少なくすることができる。
【0064】
支持体41は、円筒形状を有し、ステンレス(SUS304)で形成され、線電極43と同じ材質が使用されている。支持体41に固定されている線電極43と支持体41は、同じ材質(ステンレス)を使用することで、異種金属の接触による電解腐食(電食)を防止することができる。
【0065】
支持体41の上端部には、外側径方向に水平に延出する複数の折り曲げ部45が形成されている。各折り曲げ部45は細長い板状を成し、吸込部4の筒状部21を貫通した後、筐体2の上部11に係止することで、支持体41を、その下端が筒状部21の下端と同じ高さとなる位置に保持する。
【0066】
給電用部材42は、細長い板状を成し、支持体41の上端部から外側径方向に水平に延出して吸込部4の筒状部21及び筐体2の上部11を貫通した後、鉛直下方に折曲し、筐体2の下部12の突出部15を貫通している。給電用部材42には、給電接続部46を介して電圧供給部37a(
図5参照)から所定の高電圧(V1)が印加される。給電接続部46は、給電用部材42に電気的に接触する給電バネ48と、給電バネ48を支持する給電用碍子49と、を有しており、
図2中に点線で示されているように、保護ケース36に収納されている。給電用碍子49は、磁器又は陶器もしくは電気絶縁性に優れる樹脂で形成されている。なお、給電用碍子49は筐体2に固定されているが、図では固定状態は省略している。
【0067】
複数の放電用電極40は、支持体41の下端部から下方鉛直方向に向かって延びた状態で設けられている。 複数の放電用電極40は、すべて略同じ長さに形成され、複数の放電用電極40の先端部(下端部)は略揃えられている。 複数の放電用電極40は、支持体41の周方向に沿って所定のピッチで間欠的に(例えば、60度間隔で)配置されている。これにより、吸込口22から吸引された空気中の粒子を偏り無く均一に帯電させることができるようになっている。
【0068】
<反発部>
反発部7は、ドーナツ状の平板により形成され、空間S2に対応する位置に丸穴51が形成されている。反発部7は、筐体2の突出部15の下面に固定されており、給電用部材42の下端に電気的に接続されている。反発部7と放電用電極40は給電用部材42が共通しているため、反発部7に印加される高電圧(V1)は、放電用電極40と同じ値(数kV)に設定されている。なお、反発部7の外形の円形状は多角形状でも楕円形状出会っても良い。また、丸穴51についても、空間S2に対応する形状であれば良い。
【0069】
<フレーム>
フレーム8は、筐体2と同様に、非導電性の樹脂、陶器又は磁器により製造されている。このため、碍子が不要となり、部品点数を削減することができ、経済性を高めることができる。フレーム8は、円筒状の外周部52と、外周部52と同心の円形開口部53を有する底部54と、を備えて構成されている。
【0070】
外周部52の内周面には、高さ方向の中央付近に、内鍔部55が周方向に連続して形成されている。内鍔部55は、反発部7の外周部を下方から支持するように設けられている。なお、反発部7が筐体2の突出部15に支持されている場合は、内鍔部55は必ずしも形成されていなくても良い。
【0071】
また、外周部52の内鍔部55より下方には、複数(例えば、12個)の円形の通気口56が周方向に一定間隔で形成されている。
図2に示されているように、外周部52の内鍔部55より下方部分で囲まれた扁平な円筒状の空間S3は突出部15により囲まれた空間S2より径方向に大きく形成されている。さらに、外周部52は、内鍔部55より上方部分が筐体2の突出部15の外周面に合致するように形成されており、外周部52と筐体2の下部12の外周壁17との間には円筒状の空間S4が形成されている。空間S4は、ベース部3の複数個の排気穴20と連通している。
【0072】
底部54には、反発部7に対向するように、接着等の固定手段によって、保持部材であるプレート57が固定されている。プレート57は、導電性を有する円板により形成されており、例えば、アルミ板により形成されている。プレート57とフレーム8の底部54との間は、液漏れ防止のため、シール処理が施されている。
【0073】
フレーム8の底部54には、円形開口部53の外周部に沿うように縁部58が形成されている。底部54の縁部58がベース部3の位置決め穴19に係合することで、フレーム8がベース部3の所定位置に配置されるようになっている。
【0074】
プレート57の下面には、接地用バネ59が位置決め穴19を介して弾性的に接触している。接地用バネ59は接地用碍子60に支持されており、プレート57は、接地用バネ59及び接地用碍子60を介して、アース(GND)に接続されている。なお、接地用碍子60はベース部3に固定されているが、図では固定状態は省略している。
【0075】
プレート57には、液体(機能液)が保持される。プレート57上の液体は、液膜になるように、高さが1mm以下であり、好適には、0.5mm以下である。空気中からバイオ粒子を捕集するには、液膜(液層)で十分である。 捕集される液体の液量を少なく抑えることで、次工程(例えば、PCR処理)での検体濃度の低下を 防止することができる。 また液膜であれば、装置の姿勢が多少傾向いたとしても、液体が外部に漏れ出す恐れはない。液膜には、予め微生物を特定するための酵素(試薬)は、混合しておかなくても良い。捕集後の工程であるPCR処理の前に酵素を入れる方が、酵素が弱らないので、より好ましい。
【0076】
図2に示されているように、放電用電極40の先端部(下端部)とプレート57上の液面との距離Yは、反発部7とプレート57上の液面との距離Xよりも大きく設定されている。 例えば、平均電界強度が数kV/mmの場合、Y≒2×Xの距離に設定されている(X≒10mm、Y≒ 20mm、)。 なお、距離Xは、異常放電が生じない距離に設定されている。具体的には、平均電界強度は0.3~0.6kV/mmが好適である。
【0077】
このように、距離Y>距離Xに設定することにより、確実にバイオ粒子を含む全ての粒子は、帯電エリアを通過して帯電された後、液体内に捕集される。加えて、放電用電極40の先端部から生成される円錐状の帯電エリア(帯電領域)EAを拡げ、有効に活用することができるため、より多くの微生物を帯電させることができる。
【0078】
また、吐出ノズル25に印加される高電圧(V2)は、放電用電極40及び反発部7に印加される高電圧(V1)よりも高く設定されている。 その理由は、吐出ノズル25は、放電用電極40及び反発部7よりも液面(GNDに相当)から遠い距離に配置されているためである。本実施形態では、吐出ノズル25に印加される電圧(V2)は、放電用電極40及び反発部7に印加される電圧(V1)の約2倍の電圧が印加される。
【0079】
<制御装置>
図5に示されているように、制御装置9は、制御部70を備えており、制御部70は、CPU71と記憶部72とインターフェース部73とがバス74により相互に接続されて構成されている。制御部70には、インターフェース部73を介して、表示部75、設定操作部76、運転・停止スイッチ77、安全スイッチ78、差圧センサ79、風速センサ80、吸引ファン81、電圧供給部37a,37bなどが接続されている。
【0080】
表示部75は、測定日時や測定条件などを表示し、設定操作部76は、プレート57の大きさを入力したりする。設定操作部76からプレート57の大きさが入力されると共に吸引ファン81による吸引風量が設定されると、CPU71により、エレクトロスプレー部5の噴射時間が所定時間(
図6のT1)に設定される。
【0081】
吸引ファン81は、吸引源であり、差圧センサ79は、フィルタ(図示省略)の目詰り度合いを測定する。風速センサ80は、放電用電極40を通過する風速を測定し、安全スイッチ78は、ベース部3から筐体2を取り外した時に高電圧V1、V2の印加を停止するように作動する。
【0082】
<空気の流通路>
図2において矢印で示すように、粒子捕集装置1の内部には、上部中央の吸込口22から流入して下降した空気が、空間S1、S2,S3を通り、プレート57上の液膜に沿って外側に拡散した後、通気口56から空間S4を通り、排気穴20から外部に排出するように空気の流通路90が形成されている。
【0083】
[粒子測定装置]
次に、主に
図2及び
図5を参照しつつ、本発明の実施形態に係る粒子測定装置100について説明する。
【0084】
粒子測定装置100は、粒子捕集装置1のベース部3の下方にケース(図示省略)を備えている。前記ケースの内部は粒子捕集装置1の空気の流通路90に連通しており、該ケースには、吸引ファン81及びフィルタ(例えばHEPAフィルタ、図示省略)が収納されていると共に、外部に空気を吹き出す排気口(図示省略)が設けられている。
【0085】
[粒子捕集装置及び粒子測定装置の作用]
次に、
図2、
図5及び
図6を参照しつつ、粒子捕集装置1及び粒子測定装置100の作用について説明する。
【0086】
まず、運転スイッチ77がON操作されると、CPU71は、電圧供給部37bから給電接続部33を介してエレクトロスプレー部5に高電圧V2を印加させる。高電圧V2を印加されたエレクトロスプレー部5は、プレート57に向けて、所定時間(T1)、液滴をスプレーし、液滴を帯電させる。より具体的には、吐出ノズル25に高電圧V2を印加させると、吐出ノズル25の先端から吐出される帯電された微細な液滴が、 プレート57上に向かってスプレーされる。
【0087】
なお、エレクトロスプレー部5がスプレーする際には、予め供給タンク28内において純水と蒸発防止剤(例えばグリセリン)と抗酸化剤とが混合された液体をスプレーしても良いし、又は、純水をスプレーした後、蒸発防止剤(例えばグリセリン)をスプレーし、最後に抗酸化剤(例えばビタミンC)を、それぞれ個々にスプレーしても良い。さらに、純水のみをスプレーしても良いし、純水に蒸発防止剤を加えた液体をスプレーしても良いし、その他の組み合わせで混合した液体をスプレーしても良い。
【0088】
エレクトロスプレー部5のスプレーの量と頻度は、液膜の厚さを維持する程度に調整される。これは、蒸発防止剤が含まれた液体(機能液)が所定厚の液膜(液層)を形成している状態においても、高電圧の印加されたコロナ放電によるイオン風の影響により、使用時間が経過するにしたがって徐々に液体の蒸発が発生するため、これを補う量が供給される。別途センサーを設けたり、コロナ放電の印加電圧や電流値の変化より液膜の厚み(液層の高さ)を検出・推定し、後述する制御部70でスプレー供給状態をフィードバック制御したりしてもよい。
【0089】
エレクトロスプレー部5による液滴のスプレーが終了すると、CPU71からの指令により、電圧供給部37aから給電用部材46を介して放電部6(放電用電極40)及び反発部7に高電圧V1が印加され、吸引ファン81が駆動して、空気中の粒子の捕集処理が開始される。
【0090】
吸引ファン81の駆動により、バイオ粒子や塵埃等の粒子を含む含塵空気は、吸込口22から粒子捕集装置1の内部に吸い込まれた後、下降気流(ダウンフロー)となり、筐体2内を下降する。
【0091】
このように吸込口22から筐体2内を含塵空気が下降する際、筐体2内の空間S1、S2、S3の内径が次第に大きくなっていくため、含塵空気は、プレート57の液面に沿って周囲に拡散し、放電用電極40と液面との間を通過する。この間、放電部6(放電用電極40)及び反発部7に高電圧V1が印加されているため、束状部44から離間した線電極43は強電界となり、線電極43の下端部(先端部)と液面との間で、コロナ放電が発生する。コロナ放電は、各放電用電極40の下端部(先端部)と液面との間に略円錐状の帯電エリアEAを形成し、帯電エリアEAを流れる空気中の粒子を帯電させる。帯電した粒子は、液面に引き寄せられて吸着され、プレート57上の液体に捕集される。
【0092】
また、放電用電極40と液面との間を通過した含塵空気は、反発部7と液面との間を通過する。この間、含塵空気中の帯電された粒子は反発部7から反発し、液面側に寄せられてプレート57上の液体に捕集される。
【0093】
この時、筐体2の内部には、吸込口22から流入して下降した空気が外側径方向に拡散するように空気の流通路90が形成されているため、放電用電極40と反発部7との電界干渉による影響を抑制し、高い放電性能(荷電 性能)を発揮することができると共に、空気の流通抵抗を軽減することができる。また、エレクトロスプレー部5から液面に向かってスプレーされる液滴が、反発部7に付着する虞もない。
【0094】
粒子の捕集処理の開始から所定時間(T2)が経過すると、CPU71は、プレート57上の液膜が少なくなったと判定し、電圧供給部37bから給電接続部33を介してエレクトロスプレー部5に高電圧V2を印加させる。高電圧V2を印加されたエレクトロスプレー部5は、プレート57に向けて、所定時間(T3)、液滴をスプレーする。
【0095】
なお、この時のエレクトロスプレー部5が液滴をスプレーするタイミングを、高電圧V2を印加して吸引ファン81を回転させて粒子を捕集している間とすることにより、粒子の捕集性能を向上させることができる。 また、粒子を捕集している状態では、連続的にスプレーしても良いし、間欠的にスプレーしても良い。さらに、液体の補充のため、吸引ファン81が停止している状態でスプレーしても良い。このように、帯電された微細な液滴をプレート57上の液面に向かってスプレーすることで、液体の補充と共に、空間電荷の効果を得ることができ、粒子の捕集効率を向上させることができる。
【0096】
また、粒子の捕集開始から例えば時間(T4)が経過し、前記フィルタの差圧が所定値(例えば、
図6中の0Pa からPPaまで)上昇したことを差圧センサ79が検知するか、或いは、空気の風速が所定値(例えば、
図6中のSp1からSp2まで)低下したことを風速センサ80が検知すると、CPU71は、前記フィルタが目詰りしたと判定し、吸引ファン81の回転数を(例えば、
図6中の通常回転から該通常回転より高い高回転まで)上昇させ、風量を一定に保持するように制御し、風量の低下を防止する。
【0097】
このように、放電用電極40や反発部7を通過する含塵空気の風速が所定の範囲(
図6の風速Sp1からSp2の範囲)内になるように、制御部70により吸引ファン81の回転数が制御されているため、捕集性能に悪影響を及ぼすことがない。なお、
図6に示す実施例では、吸引ファン81の回転数は吸引ファン81の運転信号により、通常回転と高回転の2段階に制御されているが、インバータ等を使用して多段階(数段階)に吸引ファン81の回転数を制御しても良い。
【0098】
その後、反発部7と液面との間を通過して粒子が除去された清浄空気は、フレーム8の外周部52の通気口56から空間S4を通過した後、ベース部3の排気穴20を通って、前記ケース内に流入する。そして、清浄空気は、該ケース内において前記フィルタを通過した後、前記排気口から外部に排出される。
【0099】
このようにして含塵空気中の粒子を液体に捕集する工程が終了すると、筐体2がベース部3から取り外され、比較的少量の液体を必要なだけ吸い取ることのできるピペットやスポイト等の器具によって、プレート57上の液体が吸い取られる(液体を採取する工程)。このように筐体2をベース部3から取り外せば、液体の上方が開放状態となるので、液体の取扱を容易に行うことができる。 さらに、スポイト等によりプレート57上に液膜を形成したり、粒子を捕集した後の液体を採取したりすることを容易に行うことができる。
【0100】
また、次の工程では、ピペットやスポイト内の液体がマトリックス状の検査キット(採取キット)や試験管などに吐出された後、プライマー(酵素)が混合される(液体にプ ライマーを混合する工程)。なお、前記検査キット(採取キット)には、予めプライマーが入れられていても良い。
【0101】
さらに、次の工程では、回収容器(サンプリング容器)である検査キット(採取キット)や試験管などが検査装置(PCR装置)にかけられて液体が分析される (分析する工程)。
【0102】
なお、上記した本発明の実施形態では、放電用電極40にコロナ放電が生成される高電圧を印加しているが、コロナ放電が生成されない高電圧(コロナ放電電圧よりも低い電圧)を印加してすべての粒子を帯電させる誘導帯電であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の技術は、空気中の微生物や細菌やウィルスを捕集して、微生物や細菌やウィルスの数を測定するエアーサンプラーや浮遊菌測定装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 粒子捕集装置
2 筐体
4 吸込部
5 エレクトロスプレー部
7 反発部
22 吸込口
40 放電用電極(電極)
43 線電極
44 束状部
51 丸穴(開口部)
57 プレート(保持部材)
81 吸引ファン
90 流通路
100 粒子測定装置