(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】止水弁及び水栓
(51)【国際特許分類】
F16K 31/44 20060101AFI20240806BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F16K31/44 B
E03C1/042 C
(21)【出願番号】P 2020078134
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】国枝 秀樹
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-140920(JP,A)
【文献】特開2008-291984(JP,A)
【文献】実開昭52-156328(JP,U)
【文献】特開2008-256141(JP,A)
【文献】特開2012-021374(JP,A)
【文献】特開2008-256055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
F16K 31/44 - 31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、
前記ケースの軸方向に沿って押圧操作される押ボタンと、
前記ケース内に配置されて前記押ボタンの押圧操作に伴って回転するとともに、前記押ボタンの押し込み位置への移動に伴い前記ケースの軸方向における第1位置に移動し、前記押ボタンの突出位置への移動に伴い前記ケースの軸方向における第2位置に移動する回転体と、
前記ケース内に配置されて、前記回転体の前記第1位置及び前記第2位置のいずれか一方への移動に伴い止水位置及び吐水位置のいずれか一方へ移動するとともに、前記回転体の前記第1位置及び前記第2位置のいずれか他方への移動に伴い止水位置及び吐水位置のいずれか他方へ移動する弁部材とを備える止水弁であって、
前記押ボタンは、有底筒状の外筒体と、当該外筒体に内嵌された内筒体とを有し、
前記内筒体は、円筒状の周壁と、当該周壁の他端側の端部に設けられたフランジ部とを有し、
前記回転体は、前記外筒体と、前記内筒体のフランジ部との間に挟み込まれており、
前記押ボタンは、前記回転体に係合することによって前記ケースの軸方向における前記回転体との相対位置の変化を規制する規制部を有することを特徴とする止水弁。
【請求項2】
請求項
1に記載の止水弁と、水栓本体とを備える水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水弁及び水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、止水弁について記載している。
図12に示すように、止水弁100は、筒状のケース101と、ケース101の軸方向に沿って押圧操作される押ボタン102と、押ボタン102の押圧操作に伴って回転するとともにケース101の軸方向に沿って移動する回転体103と、回転体103の移動に伴って止水位置又は吐水位置に移動する弁部材(図示省略)とを備えている。
【0003】
回転体103は、押ボタン102の押し込み位置への移動に伴いケース101の軸方向における第1位置に移動し、押ボタン102の突出位置への移動に伴いケース101の軸方向における第2位置に移動する。弁部材が、回転体103の第1位置への移動に伴い止水位置に移動するとともに、回転体103の第2位置への移動に伴い吐水位置に移動することにより、吐止水を切り替えることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等の止水弁100において、押ボタン102は、ケース101の軸方向における押ボタン102を押し込む方向に対しては、回転体103に係合して回転体103とともに移動するように構成されている。しかし、押ボタン102が突出する方向に対しては、押ボタン102は回転体103に係合していないため、押し込み位置にある状態から押ボタン102のみが突出方向に移動することが起こり得る。
【0006】
押ボタン102の突出方向が鉛直方向の上方である場合は、押ボタン102は自重によって押し込み位置に保持されるものの、押ボタン102の突出方向が鉛直方向に対して交差している場合は、押ボタン102のみが突出位置に移動することが起こり得る。そのため、押ボタンの位置を視認して止水弁の操作状態を判断することが難しくなる虞があるという課題を有している。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、止水弁の操作状態を容易に判断し得る止水弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための止水弁は、筒状のケースと、前記ケースの軸方向に沿って押圧操作される押ボタンと、前記ケース内に配置されて前記押ボタンの押圧操作に伴って回転するとともに、前記押ボタンの押し込み位置への移動に伴い前記ケースの軸方向における第1位置に移動し、前記押ボタンの突出位置への移動に伴い前記ケースの軸方向における第2位置に移動する回転体と、前記ケース内に配置されて、前記回転体の前記第1位置及び前記第2位置のいずれか一方への移動に伴い止水位置及び吐水位置のいずれか一方へ移動するとともに、前記回転体の前記第1位置及び前記第2位置のいずれか他方への移動に伴い止水位置及び吐水位置のいずれか他方へ移動する弁部材とを備える止水弁であって、前記押ボタンは、前記回転体に係合することによって前記ケースの軸方向における前記回転体との相対位置の変化を規制する規制部を有することを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、押ボタンは、回転体に係合することによってケースの軸方向における回転体との相対位置の変化を規制する規制部を有するため、押ボタンのみが突出位置に移動することが抑制されている。押ボタンの位置を視認して止水弁の操作状態を判断することができるため、押ボタンの突出方向が鉛直方向に対して交差している場合であっても、止水弁の操作状態を容易に判断することができる。
【0009】
上記止水弁について、前記押ボタンは、底壁と、前記底壁に接続された周壁とを有し、前記回転体は、前記周壁に外嵌されており、前記規制部は、前記周壁に設けられていることが好ましい。この構成によれば、押ボタンの周壁を好適に利用して回転体の回転を許容しつつ、周壁に設けられた規制部によってケースの軸方向における押ボタンと回転体の相対位置の変化を規制することができる。
【0010】
上記止水弁について、前記規制部は、前記周壁の全周に設けられていることが好ましい。この構成によれば、押ボタンと回転体の相対位置の変化をより安定して規制することができる。
【0011】
上記止水弁について、前記押ボタンは、前記ケースの軸方向に沿って複数の部材が組み合わされて構成されており、前記回転体は、前記複数の部材に挟み込まれていることが好ましい。この構成によれば、規制部を容易に設けることができる。
【0012】
上記止水弁と、水栓本体を備える水栓であることが好ましい。この構成によれば、上記止水弁の効果を奏する水栓とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の止水弁及び水栓によれば、止水弁の操作状態を容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】押ボタンと、押ボタンに組み付けられる部材の組み付け前の斜視図。
【
図6】押ボタンと、押ボタンに組み付けられる部材の組み付け後の斜視図。
【
図9】押ボタンが突出位置にある時の、(a)は押ボタンと回転体の斜視図、(b)は回転体の係合歯の位置を示す展開図。
【
図10】押ボタンを最奥まで押し込んだ時の、(a)は押ボタンと回転体の斜視図、(b)は回転体の係合歯の位置を示す展開図。
【
図11】押ボタンが押し込み位置にある時の、(a)は押ボタンと回転体の斜視図、(b)は回転体の係合歯の位置を示す展開図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
止水弁の実施形態を説明する。
止水弁は、水栓を構成する水栓本体に取り付けて用いられる。
図1、2に示すように、水栓10は、浴室の壁面11に設置されている。水栓10は、壁面11側に向かって、中央に位置する水栓本体12を有している。水栓本体12の左側には、温度調節ハンドル13が回動可能に取り付けられているとともに、水栓本体12の右側には、流量調節ハンドル14が回動可能に取り付けられている。水栓本体12は、中央手前側に第1ボタン15a及び第2ボタン15bを備えている。水栓本体12は、手前側から取り付けられたカバー17であるトップカバー17aと、奥側から取り付けられたカバー17であるバックカバー17bとによって覆われている。トップカバー17aには貫通孔が2つ設けられており、この貫通孔から第1ボタン15a及び第2ボタン15bが露出している。ここで、左側の貫通孔を第1ボタン孔17a1、右側の貫通孔を第2ボタン孔17a2とする。
【0016】
第1ボタン孔17a1から露出した第1ボタン15aを操作することにより、カラン用の吐水管18からの吐止水を切り替えることができるように構成されている。また、第2ボタン孔17a2から露出した第2ボタン15bを操作することにより、シャワー用のホース19を経由したシャワーヘッド(図示省略)からの吐止水を切り替えることができるように構成されている。
【0017】
なお、本実施形態における左側及び右側は、壁面11側に向かって水栓10を見た場合の左側及び右側である。説明の便宜上、水栓10の上下、左右、前後方向を
図1に示す方向として規定する。
【0018】
図2に示すように、水栓本体12は筒状に構成されている。水栓本体12の軸方向における中央部には、前側に開口部が2つ設けられている。各開口部は、水栓本体12の軸方向である左右方向に沿って並設されている。各開口部の周囲には、前側に延びる周壁12cを有しており、周壁12cの内周にネジ溝12dが形成されている。
【0019】
2つの開口部のうち、左側の開口部である第1開口部12aには、固定ナット16を用いて止水弁20(以下、「第1止水弁20a」ともいう。)が取り付けられ、右側の開口部である第2開口部12bには、固定ナット16を用いて止水弁20(以下、「第2止水弁20b」ともいう。)が取り付けられている。
【0020】
第1止水弁20aと第2止水弁20bは同じ構造を有しているため、以下では第1止水弁20aについて説明し、第2止水弁20bについては説明を省略する。
第1止水弁20aについて説明する。
【0021】
図2、3に示すように、第1止水弁20aは円柱状に構成されており、内部に弁ユニット(図示省略)が設けられている。第1止水弁20aは、軸方向における一端側の端部に押ボタン30を有している。押ボタン30にはボタンカバー31が取り付けられ、押ボタン30とボタンカバー31とによって第1ボタン15aが構成されている。ボタンカバー31は、押ボタン30の動きに完全に追従するように固定されており、ボタンカバー31と押ボタン30が軸方向に離れることが抑制されている。ボタンカバー31を押圧することにより、弁ユニットを操作することができるように構成されている。
【0022】
第1止水弁20aを構成する部材について説明する。
図4に示すように、第1止水弁20aは、ケース40と、押ボタン30と、回転体50と、弁ユニット60とを備える。
【0023】
ケース40について説明する。
図4、7に示すように、ケース40は筒状に構成され、周壁41と、周壁41の一端側の端部に設けられた天壁42とを有している。天壁42の中央部には貫通孔42aが設けられている。この貫通孔42aは、後述する押ボタン30の外筒体33の外径よりも若干大きく構成されている。天壁42における貫通孔42aの周縁には、略等間隔となる4箇所に凹溝42bが形成されている。この凹溝42bに、後述する押ボタン30の外筒体33に設けられた凸部34aが挿通する。
【0024】
ケース40の周壁41の内周には、径方向の内側に突出したガイド部45が設けられている。このガイド部45に後述する回転体50の係合歯52が係合する。ガイド部45の詳細については後述する。
【0025】
ケース40の周壁41には、後述する弁ユニット60の流路形成部材70に設けられた爪71bと、背圧室形成部材85に設けられた爪89とが係合する係合孔41aが設けられている。
【0026】
押ボタン30について説明する。
図4に示すように、押ボタン30は、円形の底壁33aと、底壁33aに接続された周壁33bとを有する有底筒状の外筒体33を有する。また、押ボタン30は、外筒体33に内嵌された内筒体37を有する。
【0027】
外筒体33について説明する。
図4、7に示すように、外筒体33の周壁33bは、周壁33bの一端側の端部から略中央部までの第1壁部34と、第1壁部34から周壁33bの他端側の端部までの第2壁部35とで構成されている。
【0028】
第1壁部34と第2壁部35の間には全周に亘って切れ目なく段差部36が設けられており、第2壁部35の外径は、第1壁部34の外径よりも小さく構成されている。第2壁部35は、縮径部と言い換えることができる。第1壁部34と第2壁部35の内径は、軸方向に沿って略一定に構成されている。
【0029】
第1壁部34には、周方向において略等間隔となる位置に外方へ突出する凸部34aが4つ設けられている。この凸部34aは、周壁33bの軸方向に沿って延びている。この凸部34aがケース40の凹溝42bに挿通することにより、ケース40の周方向に対する押ボタン30の回転が抑制される。
【0030】
第1壁部34の径方向に対向する2箇所には、後述する内筒体37の周壁37aに設けられた爪37eが係合する係合孔34bが設けられている。
図5に示すように、段差部36は、周壁33bの他端側に対向する端面を有している。この端面には、周壁の軸方向に突出した複数の山形状の凹凸36aが設けられている。この凹凸36aの表面は、後述のように、回転体50の凹凸53aと嵌合して回転体50を一方向に回転させる滑り面として機能する。
【0031】
内筒体37について説明する。
図4に示すように、内筒体37は、円筒状の周壁37aと、周壁37aの他端側の端部に設けられたフランジ部37bとを有する。フランジ部37bは、周壁37aの全周に亘って切れ目なく設けられ、周壁37aの外方に突出するとともに、周壁37aの内方にも突出するように設けられている。そのため、周壁37aの他端側の開口部37cの内径は、周壁37aの一端側の開口部37dの内径よりも小さくなっている。
【0032】
内筒体37の周壁37aにおける径方向に対向する2箇所には、外方に突出した爪37eが設けられている。周壁37aの外径は、外筒体33の周壁33bの内径よりも若干小さく構成されており、フランジ部37bの外径は、外筒体33の周壁33bの内径よりも若干大きく構成されている。
【0033】
外筒体33の周壁33bに内筒体37の周壁37aが内嵌された状態で、外筒体33と内筒体37は組み合わされている。外筒体33の周壁33b、内筒体37の周壁37a、及び、内筒体37のフランジ部37bによって押ボタン30の周壁が構成されている。
【0034】
回転体50について説明する。
図4、5に示すように、回転体50は、円環状の環状部51と、環状部51の周方向において略等間隔となる位置から外方へ突出する4つの係合歯52とを有している。環状部51の内周には全周に亘って段差部51bが設けられており、段差部51bから環状部51の他端側の端部51cまでの内径が大きくなっている。
【0035】
環状部51のうち、軸方向における一端側の端部51aから段差部51bまでを第1環状部53とし、段差部51bから軸方向における他端側の端部51cまでを第2環状部54とする。具体的には、
図5において、回転体50の周方向に沿う破線で示した段差部51bよりも左側の一端部側を第1環状部53とし、段差部51bよりも右側の他端部側を第2環状部54とする。第2環状部54の内周において、内径が大きくなった箇所を拡径部54aという。
【0036】
第1環状部53の内径は、押ボタン30の外筒体33の周壁33bにおける第1壁部34の外径よりも小さく、第2壁部35の外径よりも大きく構成されている。また、第1環状部53の内径は、押ボタン30の内筒体37におけるフランジ部37bの外径よりも小さく構成されている。
【0037】
第2環状部54の内径は、押ボタン30の内筒体37のフランジ部37bの外径よりも若干大きく構成されている。
図5に示すように、回転体50の軸方向における第1環状部53の長さT1は、押ボタン30の軸方向における第2壁部35の長さT2よりも短く構成されている。
【0038】
また、第2環状部54の軸方向における拡径部54aの長さT3は、内筒体37の軸方向におけるフランジ部37bの長さT4(フランジ部37bの厚さと言い換えることができる)よりも長く構成されており、内筒体37のフランジ部37bの全体が拡径部54aに収容されるように構成されている。
【0039】
第1環状部53の軸方向における一端側の端部51aには、第1環状部53の軸方向に突出した複数の山形状の凹凸53aが設けられている。
回転体50の係合歯52の一端側の端部には、第1環状部53の凹凸53aと連続して傾斜面52aが設けられている。
【0040】
弁ユニット60について説明する。
図4に示すように、弁ユニット60は、流路形成部材70と、ダイヤフラム75と、弁部材80と、背圧室形成部材85と、台座部材90と、軸部材95とを有している。
【0041】
流路形成部材70について説明する。
図4、7に示すように、流路形成部材70は、外周壁71と内周壁72とを備える2重筒状に構成されている。外周壁71の軸方向における一端側と他端側とに、Oリング73が2つ装着されている。2つのOリング73の間には、外周壁71を貫通する開口部71aが設けられている。この開口部71aは、外周壁71の周方向に沿って4つ並設されている。
【0042】
外周壁71の軸方向におけるOリング73よりも一端側には、径方向に対向する2箇所に外方に突出した爪71bが設けられている。外周壁71の一端側の端部には、後述するダイヤフラム75のフランジ部が外嵌される凹部71cが設けられている。
【0043】
流路形成部材70の他端側の端部には底壁74が設けられている。底壁74の中央部には貫通孔74aが設けられており、この貫通孔74aの周縁に内周壁72の他端側の端部が接続されている。
【0044】
流路形成部材70の軸方向において、内周壁72の一端側の端部72aは、外周壁71の一端側の端部71dよりも流路形成部材70の他端側に位置している。言い換えれば、内周壁72の一端側の端部72aは、外周壁71の一端側の端部71dよりも奥側(他端側)に引っ込んだ形状を有している。後述のように、内周壁72の一端側の端部72aは、ダイヤフラム75の板状部77が当接する弁座として機能する。
【0045】
図2に示すように、止水弁20が水栓本体12に取り付けられた状態において、流路形成部材70は、水栓本体12を流通する流路と連結される。具体的には、水栓本体12の内部を流通する湯水は、流路形成部材70の外周壁71の開口部71aから流路形成部材70に流入する。さらに、内周壁72の一端側の端部72aから内周壁72内に流入した後、底壁74の貫通孔74aから流出して、再び、水栓本体12内を流通する。
【0046】
ダイヤフラム75について説明する。
図4に示すように、ダイヤフラム75は、円形のフランジ部76と、フランジ部76の内周側に位置する円形の板状部77と、フランジ部76の内周縁と板状部77の外周縁とを繋ぐ湾曲部78とを有している。湾曲部78は、フランジ部76の軸方向に突出するように湾曲した形状を有している。板状部77の中央部には第1貫通孔77aが設けられている。板状部77の周縁部には、第1貫通孔77aの内径よりも小さな内径を有する第2貫通孔77bが設けられている。第1貫通孔77aに、後述する弁部材80の第1突出部81aが挿入される。第2貫通孔77bに、後述する弁部材80の第2突出部81dが挿入される。後述のように、ダイヤフラム75の板状部77は、主弁として機能する。
【0047】
弁部材80について説明する。
図4、7に示すように、弁部材80は、円形の底壁81と、底壁81の周縁から底壁81の厚さ方向に延びる周壁82とを有している。周壁82の軸方向における一端側の端部であって、底壁81側とは反対側の端部にはフランジ部83が形成されている。
【0048】
底壁81における周壁82が設けられた側とは反対側の中央部には、底壁81の厚さ方向に沿って延びる円筒状の第1突出部81aが設けられている。第1突出部81aは、ダイヤフラム75の第1貫通孔77aに挿入される首部81bと、首部81bよりも外径が大きい鍔部81cとを有している。鍔部81cの先端は先細形状となっている。
【0049】
底壁81における第1突出部81aよりも外周側には、同じく底壁81の厚さ方向に延びる円筒状の第2突出部81dが設けられている。第2突出部81dの内周は、底壁81を貫通している。
【0050】
弁部材80の底壁81における周壁82が設けられた側の中央部には、周壁82と間隔をおいて、周壁82の延びる方向と同じ方向に突出した円筒状の第3突出部81eが形成されている。第3突出部81eの先端は先細形状となっている。第1突出部81aと第3突出部81eの内周は、互いに連通している。後述のように、第3突出部81eの先端は副弁座として機能する。
【0051】
図4、7に示すように、第1突出部81aの首部81bがダイヤフラム75の第1貫通孔77aに挿入され、第1突出部81aの鍔部81cがダイヤフラム75の第1貫通孔77aを貫通した状態で弁部材80とダイヤフラム75は接続される。また、弁部材80の第2突出部81dが、ダイヤフラム75の第2貫通孔77bを貫通した状態とする。
【0052】
背圧室形成部材85について説明する。
図4、7に示すように、背圧室形成部材85は、円筒状の周壁86と、周壁86の一端側の端部に設けられた天壁87とを有している。天壁87の中央部には、貫通孔87aが設けられている。天壁87における周壁86が設けられた側とは反対側には、周壁86の外径よりも小さな外径を有する第1円筒部87bが設けられている。第1円筒部87bの一端側には、第1円筒部87bの外径よりも小さな外径を有する第2円筒部87cが設けられている。第1円筒部87b及び第2円筒部87cの内径は、軸方向に沿って略一定に構成されており、天壁87の貫通孔87aに連通している。第1円筒部87bと第2円筒部87cの内周における境界部分には、他の箇所よりも内径が小さくなった縮径部87dが設けられている。後述のように、第2円筒部87cの内周には、Oリング88が装着される。また、縮径部87dの内径は、後述の軸部材95の本体部95aが挿通できる程度の大きさに構成されている。
【0053】
図4に示すように、背圧室形成部材85の周壁86、及び、第1円筒部87bにおける径方向に対向する2箇所には、それぞれ外方に突出した爪89が設けられている。周壁86に設けられた爪89は、ケース40の周壁41に設けられた係合孔41aに係合する。背圧室形成部材85の第1円筒部87bに設けられた爪89は、後述する台座部材90に設けられた係合孔91aに係合する。
【0054】
図7に示すように、背圧室形成部材85の周壁86の他端側の端部86aは、ダイヤフラム75のフランジ部76を挟持した状態で、流路形成部材70の外周壁71の一端側の端部71dに嵌合するように構成されている。この状態で、背圧室形成部材85の内周と、ダイヤフラム75に接続された弁部材80との間に背圧室S(
図8参照)が形成される。
【0055】
台座部材90について説明する。
図4に示すように、台座部材90は、円筒状の周壁91と、周壁91の一端側の端部に設けられた天壁92とを有している。周壁91には、背圧室形成部材85の第1円筒部87bに設けられた爪89が係合する係合孔91aが設けられている。
【0056】
図4、7に示すように、天壁92における周壁91が設けられた側とは反対側には、天壁92の厚さ方向に延びる外縦壁93が設けられている。外縦壁93は、周壁91の外径よりも小さな外径を有する円筒状に構成されている。外縦壁93の内径は、押ボタン30の内筒体37のフランジ部37bの外径よりも若干大きく構成されている。
【0057】
外縦壁93の内側には、天壁92の厚さ方向に延びる内縦壁94が設けられている。内縦壁94は、外縦壁93と同心軸の円筒状に構成されている。内縦壁94の内径は、後述する軸部材95の外径よりも若干大きく構成されている。
【0058】
後述のように、内縦壁94の外周には第2バネ部材98が取り付けられ、台座部材90は、第2バネ部材98の台座として機能する。また、外縦壁93の一端側の端部93aは、回転体50の第2環状部54の他端側の端部51cが当接する当接部として機能する。
【0059】
軸部材95について説明する。
図4、7に示すように、軸部材95は、円柱状の本体部95aと、本体部95aの一端側の端部に設けられたフランジ部95bを有している。軸部材95の他端側の端部には、円柱状の弾性部材96が外嵌された状態で接続される接続部95cを有している。なお、円柱状の弾性部材96は、弁部材80の副弁座に当接する副弁として機能する。
【0060】
本体部95aの外径は、押ボタン30の内筒体37における他端側の開口部37cの内径よりも若干小さく構成されている。また、軸部材95のフランジ部95bの外径は、押ボタン30の内筒体37の周壁37aの内径よりも若干小さく、且つ、内筒体37の他端側の開口部37cの内径よりも若干大きく構成されている。また、軸部材95のフランジ部95bの外径は、内筒体37の内部に取り付けられる第1バネ部材97の外径よりも大きく構成されている。
【0061】
止水弁20を構成する各部材の組み付け手順について説明する。
図4、7に示すように、まず、ダイヤフラム75の第1貫通孔77aに弁部材80の第1突出部81aを挿入するとともに、ダイヤフラム75の第2貫通孔77bに弁部材80の第2突出部81dを挿入して、ダイヤフラム75と弁部材80を接続する。
【0062】
次に、ダイヤフラム75のフランジ部76を、流路形成部材70の一端側の凹部71cに外嵌する。
次に、背圧室形成部材85の周壁86の他端側の端部86aが、ダイヤフラム75のフランジ部76を挟持するように背圧室形成部材85を取り付ける。背圧室形成部材85の第2円筒部87cの内周にOリング88を装着する。
【0063】
次に、背圧室形成部材85の第1円筒部87bに設けられた爪89を、台座部材90に設けられた係合孔91aに係合させて、背圧室形成部材85に台座部材90を取り付ける。
【0064】
次に、台座部材90の内縦壁94に第2バネ部材98を取り付ける。
図5、6に示すように、次に、軸部材95の他端側の端部に弾性部材96を取り付ける。軸部材95の本体部95aの他端側を、押ボタン30の内筒体37の一端側から内筒体37の周壁37a内に挿入して、内筒体37の他端側の開口部37cを通過させる。さらに、軸部材95のフランジ部95bの一端側に第1バネ部材97を配置する。
【0065】
押ボタン30の内筒体37における周壁37aの一端側から、回転体50を外嵌させる。さらに、内筒体37の周壁37aの一端側を押ボタン30の外筒体33の周壁33bに内嵌する。内筒体37の周壁37aに設けられた爪37eを、外筒体33の第1壁部34の係合孔34bに係合させる。
【0066】
図7に示すように、この状態で、軸部材95のフランジ部95bの一端側に配置された第1バネ部材97は、外筒体33の底壁33aに当接した状態となる。
次に、台座部材90の内縦壁94に取り付けた第2バネ部材98の内周に軸部材95を挿通させる。さらに、軸部材95の他端側を、台座部材90の内縦壁94の内周に挿通させる。
【0067】
次に、軸部材95の他端側を、背圧室形成部材85の第2円筒部87cに装着したOリング88の内周を挿通させるとともに、背圧室形成部材85の第1円筒部87bの内周を挿通させる。
【0068】
次に、ケース40の周壁41に設けられた係合孔41aに、流路形成部材70と背圧室形成部材85に設けられた爪71b、89を係合させてケース40を取り付ける。この際、押ボタン30の外筒体33に設けられた4つの凸部34aを、ケース40の天壁42に設けられた4つの凹溝42bに挿通させる。
【0069】
以上の手順によって止水弁20を構成する各部材は組み付けられる。各部材の組み付け手順は、上記手順に限定されず、適宜順番を入れ替えて行ってもよい。
各部材が組み付けられた状態で、押ボタン30は、ケース40の軸方向に沿って外筒体33と内筒体37とが組み合わされた状態となる。そして、回転体50の第1環状部53が、押ボタン30の外筒体33の段差部36と、内筒体37のフランジ部37bとの間に挟み込まれた状態となる。ここで、押ボタン30の外筒体33における第2壁部35の長さT2が、回転体50の第1環状部53の長さT1よりも長いことにより、回転体50の第1環状部53は、外筒体33の段差部36と、内筒体37のフランジ部37bとの間に挟持されることなく挟み込まれ、第2壁部35に遊嵌された状態となっている。そのため、回転体50は、外筒体33の第2壁部35上を回転することが許容される。
【0070】
止水弁20の動作機構について説明する。
図7に示すように、押ボタン30が突出位置にある状態において、ダイヤフラム75の板状部77は、流路形成部材70の内周壁72の一端側の端部72aに当接していない。この状態を、弁部材80が吐水位置にある状態という。
【0071】
弁部材80が吐水位置にあることにより、矢印で示すように、水栓本体の内部を流通する湯水は、流路形成部材70の外周壁71の開口部71aから流路形成部材70内に流入する。さらに、内周壁72の一端側の端部72aから内周壁72内に流入した後、底壁74の貫通孔74aから流出して、再び、水栓本体内を流通する。
【0072】
図8に示すように、押ボタン30が押し込み位置にある状態では、押ボタン30の外筒体33の底壁33aに当接した第1バネ部材97の反発力によって、軸部材95は止水弁20の他端側である流路形成部材70側に移動する。そして、軸部材95の他端側に取り付けられた弾性部材96が、弁部材80の第3突出部81eに当接する。さらに、軸部材95が流路形成部材70側に移動すると、軸部材95とともに弁部材80も移動して、弁部材80の第1突出部81aが、流路形成部材70の内周壁72の一端側から内周壁72内に挿通される。具体的には、弁部材80の第1突出部81aにおける鍔部81cが、流路形成部材70の内周壁72の一端側の端部72aから内周壁72内に挿通される。さらに、主弁として機能するダイヤフラム75の板状部77が、流路形成部材70の内周壁72の一端側の先端に当接する。この状態を、弁部材80が止水位置にある状態という。
【0073】
弁部材80が止水位置にあることにより、流路形成部材70から水栓本体への湯水の流通は抑制される。また、矢印で示すように、流路形成部材70の外周壁71の開口部71aから流路形成部材70内に流入した湯水は、弁部材80の第2突出部81d内を流通して、背圧室S内に充填される。背圧室Sが湯水で充填されると、それ以上、流路形成部材70への湯水の流入は抑制される。背圧室Sが湯水で充填されることにより、背圧室S内の水圧が上昇して、弁部材80に対して、流路形成部材70側に向かって圧力を付与することができる。これにより、弁部材80の止水状態を効率良く維持することが可能になる。
【0074】
再度、押ボタン30が突出位置に移動した際は、軸部材95の他端側の弾性部材96が、弁部材80の第3突出部81eから離間する。背圧室S内に充填されていた湯水が、弁部材80の第1突出部81aの内部を流通するとともに、流路形成部材70の内周壁72内に流入して、底壁74の貫通孔74aから流出する。これに伴い、背圧室S内の水圧が低下して、背圧室S側から弁部材80に付与されていた圧力が低下する。流路形成部材70の外周壁71の開口部71aから流入する湯水の圧力によって、弁部材80は吐水位置に移動する。
【0075】
押ボタン30と回転体50の動作機構について説明する。
図9(a)は、押ボタン30が突出位置にある状態を示しており、便宜上、ケース40を省略している。なお、
図10(a)、
図11(a)も同様にケース40を省略している。
【0076】
図9(b)は、
図9(a)の回転体50の周辺を側面視したものであり、平面上に展開して表している。
図9(b)では、ケース40の周壁41の内周に設けられたガイド部45を破線で表している。
図10(b)、
図11(b)も同様である。
【0077】
図9(b)に示すように、ガイド部45は、ケース40の軸方向に延びるガイド溝46と、ガイド溝46同士の間に位置する係合溝47とを有している。
ガイド溝46は、ケース40の周方向において略等間隔となる位置に4つ設けられている。ガイド溝46は、ケース40の軸方向の一端側に底部46aを有するとともに、ケース40の軸方向の他端側に開放端部46bを有している。
【0078】
係合溝47は、両隣のガイド溝46のうちの一方の開放端部46bから延びる第1傾斜部47bと、第1傾斜部47bにおける開放端部46b側とは反対側の端部からケース40の軸方向に沿って他端側に延びる垂直部47cとを有している。また、係合溝47は、垂直部47cの他端側の端部から、両隣のガイド溝46のうちの他方の開放端部46bに延びる第2傾斜部47dを有している。
【0079】
ここで、係合溝47における第1傾斜部47bと垂直部47cとが交わる地点を、係合溝47の底部47aとする。
第1傾斜部47bと第2傾斜部47dは、ケース40の周方向に対して若干傾斜している。第1傾斜部47bの傾斜角度は、回転体50の係合歯52に設けられた傾斜面52aの傾斜角度と略等しくなるように構成されている。
【0080】
第1傾斜部47bと第2傾斜部47dは、回転体50の係合歯52と係合して回転体50を一方向に回転させる滑り面として機能する。
図9(a)、(b)に示すように、押ボタン30が突出位置に保持された状態、すなわち、弁部材80が吐水位置に保持された態において、回転体50の係合歯52は、ガイド溝46の底部46aに当接する位置にある。
【0081】
ここで、回転体50の係合歯52がガイド溝46の底部46aに当接した位置を、ケース40の軸方向における第1位置とする。
押ボタン30の外筒体33の段差部36に設けられた山形状の凹凸36aは、回転体50の第1環状部53に設けられた山形状の凹凸53aに若干の距離をおいて対向している。また、押ボタン30の段差部36に設けられた凹凸36aの頂点は、回転体50の第1環状部53に設けられた凹凸53aの頂点に対して、若干ずれた位置(
図9(b)では、左側)となるように配置されている。
【0082】
図10(a)、(b)に示すように、押ボタン30を押圧操作して、ケース40の軸方向における他端側に移動させると、まず初めに、外筒体33の段差部36における凹凸36aが、回転体50の凹凸53aに当接し、凹凸36aに押されることによって回転体50が移動する。次いで、回転体50の第2環状部54の他端側の端部51cが、台座部材90の外縦壁93の一端側の端部93aに当接する。さらに、押ボタン30の内筒体のフランジ部(図示省略)が、台座部材90の外縦壁93の内周に収容されて、押ボタン30の外筒体33の段差部36に設けられた凹凸36aが、回転体50の第1環状部53に設けられた凹凸53aに当接する。この状態が、押ボタン30が最奥まで押し込まれた状態となる。
【0083】
押ボタン30が最奥まで押し込まれると、回転体50の係合歯52が軸方向に移動してガイド溝46から離脱することにより、回転体50は回転可能となる。そして、押ボタン30の段差部36に設けられた凹凸36aが滑り面として機能して、回転体50が一方向(
図10(b)における右側)に回転する。回転体50が一方向に回転することにより、押ボタン30の段差部36の凹凸36aと、回転体50の第1環状部53の凹凸53aとがより噛み合った状態となる。
【0084】
図11(a)、(b)に示すように、押ボタン30の押圧操作を解除すると、台座部材90に取り付けた第2バネ部材98から、押ボタン30の内筒体37の他端側に付与される反発力によって、押ボタン30は突出位置に向かって移動する。この際、回転体50の係合歯52は、ガイド部45の係合溝47における第1傾斜部47bに係合する。さらに、係合溝47の第1傾斜部47bが滑り面として機能することにより、回転体50が一方向(
図11(b)における右側)に回転して、回転体50の係合歯52が、係合溝47の底部47aに当接する。
【0085】
ここで、回転体50の係合歯52が、係合溝47の底部47aに当接した位置を、ケース40の軸方向における第2位置とする。
係合溝47の第1傾斜部47bは、ガイド溝46の底部46aよりもケース40の軸方向における他端側に位置するため、押ボタン30は突出位置までは戻らず、押し込み位置で保持される。押ボタン30が押し込み位置で保持されることにより、弁部材80は止水位置で保持された状態となる。
【0086】
再度、押ボタン30を押圧操作して、回転体50の第2環状部54の他端側の端部51cを、台座部材90の外縦壁93の一端側の端部93aに当接させると、回転体50はさらに一方向に回転する。押圧操作を解除すると、回転体50の係合歯52はガイド部45の係合溝47における第2傾斜部47dに係合する。係合溝47の第2傾斜部47dが滑り面として機能することにより、回転体50はさらに一方向に回転して、回転体50の係合歯52は、ガイド溝46の底部46aに当接する位置である第1位置に戻り、押ボタン30は突出位置に復帰する。
【0087】
以上の動作機構によって押ボタン30は回転する。この動作機構は、一般に、スラストロック機構や、ボールペンノック式機構と呼ばれる。
本実施形態の作用について説明する。
【0088】
図5、6に示すように、ケース40の軸方向において、回転体50の第1環状部53が、押ボタン30の外筒体33の段差部36と、内筒体37のフランジ部37bとの間に挟み込まれているため、押ボタン30と回転体50とは、ケース40の軸方向における相対位置の変化が規制されている。すなわち、回転体50に対して押ボタン30の相対位置が変化しようとすると、押ボタン30の外筒体33の段差部36、又は、内筒体37のフランジ部37bが回転体50の第1環状部53に係合することによって、押ボタン30の相対位置の変化が規制される。これにより、押ボタン30が押し込み位置にある状態、すなわち、回転体50がケース40の軸方向における第2位置にある状態において、押ボタン30のみが突出位置に移動することを抑制することができる。押ボタン30の外筒体33の段差部36と、内筒体37のフランジ部37bは、回転体50に係合することによってケース40の軸方向における回転体50との相対位置の変化を規制する規制部として機能する。
【0089】
なお、上記相対位置の変化には、押ボタン30を押圧操作した際に、押ボタン30の外筒体33の段差部36に設けられた凹凸36aが、回転体50の第1環状部53に設けられた凹凸53aに当接するように移動することに伴う相対位置の変化は含まないものとする。
【0090】
本実施形態の効果について説明する。
(1)押ボタン30の外筒体33の段差部36と、内筒体37のフランジ部37bは、回転体50の第1環状部53に係合することによってケース40の軸方向における回転体50との相対位置の変化を規制する規制部として機能する。押ボタン30のみが突出位置に移動することが抑制されるため、押ボタン30の位置を視認して止水弁20の操作状態を判断することができる、したがって、押ボタン30の突出方向が鉛直方向に対して交差している場合であっても、止水弁20の操作状態を容易に判断することができる。
【0091】
(2)回転体50は、押ボタン30の外筒体33の第2壁部35に外嵌されている。押ボタン30の外筒体33の第2壁部35を好適に利用して回転体50の回転を許容しつつ、規制部によってケース40の軸方向における押ボタン30と回転体50の相対位置の変化を規制することができる。
【0092】
(3)規制部として機能する押ボタン30の外筒体33の段差部36が、周壁33bの全周に亘って切れ目なく設けられているとともに、同じく規制部として機能する内筒体37のフランジ部37bが、周壁37aの全周に亘って切れ目なく設けられている。したがって、規制部によって、押ボタン30と回転体50の相対位置の変化をより安定して規制することができる。
【0093】
(4)押ボタン30は、ケース40の軸方向に沿って外筒体33と内筒体37が組み合わされて構成されており、回転体50は、外筒体33と内筒体37の間に挟み込まれている。したがって、回転体50の軸方向における両側に規制部を容易に設けることができる。
【0094】
(5)ボタンカバー31は、押ボタン30の動きに完全に追従するように固定されており、ボタンカバー31と押ボタン30が軸方向に離れることが抑制されている。したがって、第1ボタン15aや第2ボタン15bの押し込み時に、ボタンカバー31を押ボタン30と共に押し込み位置に保持することができるため、止水弁20の操作状態を容易に判断することができる。
【0095】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・本実施形態では、回転体50が第1位置にある時に、弁部材80は吐水位置に保持され、回転体50が第2位置にある時に、弁部材80は止水位置に保持されていたが、この態様に限定されない。回転体50が第1位置にある時、すなわち、押ボタン30が突出位置にある時に弁部材80が止水位置に保持され、回転体50が第2位置にある時、すなわち、押ボタン30が押し込み位置にある時に弁部材80が吐水位置に保持されるように構成されていてもよい。
【0096】
・本実施形態では、規制部として機能する押ボタン30の外筒体33の段差部36が、周壁33bの全周に亘って切れ目なく設けられているとともに、規制部として機能する内筒体37のフランジ部37bが、周壁37aの全周に亘って切れ目なく設けられていたが、この態様に限定されない。押ボタン30の外筒体33の段差部36は、外筒体33の周壁33bの一部のみに設けられていてもよい。また、内筒体37のフランジ部37bは、内筒体37の周壁37aの一部のみに設けられていてもよい。
【0097】
・本実施形態では、押ボタン30は、ケース40の軸方向に沿って外筒体33と内筒体37とが組み合わされて構成されていたが、この態様に限定されない。押ボタン30は、外筒体33と内筒体37に加えて、さらに別の部材が組み合わされていてもよい。すなわち、押ボタン30は、3つ以上の部材が組み合わされて構成されていてもよい。
【0098】
・押ボタン30は、1つの部材で構成されていてもよい。すなわち、本実施形態における外筒体33と内筒体37とが1つの部材で構成されていてもよい。押ボタン30が1つの部材で構成されている態様では、例えば、回転体50を径方向に分割可能な2つの部材で構成し、2つの部材を組み合わせることによって、押ボタン30の周壁33bに外嵌してもよい。もしくは、内筒体37に代えて、外筒体33の第2壁部35に径方向外側に突出する爪を設け、押ボタン30の外筒体33の段差部36と、第2壁部35の爪との間に回転体50を挟み込むように配置してもよい。この態様では、第2壁部35の爪を、第2壁部35の周方向に沿って複数設けるとともに、径方向内側に弾性変形可能に設けることによって、第2壁部35の他端側から回転体50を押し込んで、外嵌させることができる。
【0099】
・本実施形態において、押ボタン30にはボタンカバー31が取り付けられ、押ボタン30とボタンカバー31とによって第1ボタン15aが構成されていたが、この態様に限定されない。押ボタン30とボタンカバー31とが一体となって一つの部材で構成されていてもよい。押ボタン30とボタンカバー31とが一つの部材で構成されている態様では、押ボタン30の底壁33aは省略されていてもよい。
【0100】
・ボタンカバー31は省略されていてもよい。この態様では、押ボタン30のみによって第1ボタンが構成されていてもよい。第2ボタン15bも同様である。
・本実施形態では、回転体50の第2環状部54の他端側の端部51cが、台座部材90の外縦壁93の一端側の端部93aに当接することによって、回転体50が回転するように構成されていたが、この態様に限定されない。例えば、台座部材90に取り付けた第2バネ部材98が、常時、回転体50の第2環状部54の他端側の端部51cに当接することによって、回転体50が回転するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0101】
20…止水弁、30…押ボタン、40…ケース、50…回転体、80…弁部材。