(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】X線検出器及びX線CT装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20240806BHJP
【FI】
A61B6/42 530R
(21)【出願番号】P 2020083646
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-02-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】叶井 絵梨
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博明
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-067555(JP,A)
【文献】特開2007-319199(JP,A)
【文献】特開2005-057281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のX線検出素子が列方向及びチャネル方向に配列され、アノードとカソードとの間に電圧が負荷される直接変換型のX線検出器であって、
前記X線検出素子の前記列方向又は前記チャネル方向の端部の前記X線検出素子からのデータを画像データの補正に利用し、前記端部以外のX線検出素子からのデータを前記画像データの生成に利用する制御を行う制御部を備
え、
前記端部のX線検出素子と前記端部以外のX線検出素子とには、略同一の電圧が負荷される、
X線検出器。
【請求項2】
前記複数のX線検出素子を備えるともに前記列方向又は前記チャネル方向に配列された複数のX線検出器モジュールを備え、
前記複数のX線検出器モジュールのうち、前記列方向又は前記チャネル方向の端部のX線検出器モジュールが前記端部のX線検出素子を備え、前記端部のX線検出器モジュール以外のX線検出器モジュールが前記端部以外のX線検出素子を備える、
請求項
1に記載のX線検出器。
【請求項3】
前記複数のX線検出素子を備えるともに前記列方向又は前記チャネル方向に配列された複数のX線検出器モジュールを備え、
前記複数のX線検出器モジュールのうち、前記列方向又は前記チャネル方向の端部のX線検出器モジュールが、前記端部のX線検出素子と前記端部以外のX線検出素子のうち一部のX線検出素子とを備え、前記端部のX線検出器モジュール以外のX線検出器モジュールが前記端部以外のX線検出素子のうち前記一部のX線検出素子を除くX線検出素子を備える、
請求項
1に記載のX線検出器。
【請求項4】
前記端部のX線検出器モジュールの前記列方向又は前記チャネル方向の寸法は、前記端部のX線検出器モジュール以外のX線検出器モジュールの前記列方向又は前記チャネル方向の寸法よりも大きい、請求項
3に記載のX線検出器。
【請求項5】
前記端部のX線検出器モジュールの前記列方向又は前記チャネル方向の寸法と、前記端部のX線検出器モジュール以外のX線検出器モジュールの前記列方向又は前記チャネル方向の寸法とは同一である、請求項
3に記載のX線検出器。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一つに記載のX線検出器を備えるX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線検出器及びX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光子計数型検出器は、列方向(スライス方向)及びチャネル方向に2次元状に配置された複数のX線検出素子を備える。ここで、列方向における両端部のX線検出素子は、列方向における両端部のX線検出素子以外のX線検出素子に比べて、X線検出素子の特性が良好でない場合がある。同様に、チャネル方向における両端部のX線検出素子は、チャネル方向における両端部のX線検出素子以外のX線検出素子に比べて、X線検出素子の特性が良好でない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7479639号明細書
【文献】米国特許第6724855号明細書
【文献】米国特許第4135247号明細書
【文献】米国特許第8044362号明細書
【文献】米国特許第9886925号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、端部のX線検出素子の特性の悪化を抑制することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るX線検出器は、複数のX線検出素子が列方向及びチャネル方向に配列され、アノードとカソードとの間に電圧が負荷される直接変換型のX線検出器である。X線検出器は、制御部を備える。制御部は、X線検出素子の列方向又はチャネル方向の端部のX線検出素子からのデータを画像データの生成に利用せずに、端部以外のX線検出素子からのデータを画像データの生成に利用する制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、比較例に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係るX線CT装置のX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態に係るX線CT装置のX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第3の実施形態の変形例に係るX線CT装置のX線検出器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら、X線検出器及びX線CT装置の実施形態について詳細に説明する。また、本願に係るX線検出器及びX線CT装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する場合がある。
【0008】
また、以下の実施形態で説明するX線CT装置は、フォトンカウンティングCTを実行可能な装置である。例えば、以下の実施形態で説明するX線CT装置は、X線検出器(光子計数型検出器)を用いて被検体を透過したX線の光子(X線光子)を計数することで、X線CT画像データを再構成可能な装置である。また、例えば、以下の実施形態で説明するX線検出器は、X線光子をエネルギーに比例する電荷に直接変換する直接変換型の検出器である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
【0010】
ここで、
図1においては、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向及びX軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、
図1は、説明のために架台装置10を複数方向から描画したものであり、X線CT装置1が架台装置10を1つ有する場合を示す。
【0011】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS(Data Acquisition System)18とを有する。
【0012】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0013】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、コリメータ17、DAS18等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム13は、
図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。
【0014】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線の分布が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工したフィルタである。
【0015】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、
図1においては、X線管11とコリメータ17との間にウェッジ16が配置される場合を示すが、X線管11とウェッジ16との間にコリメータ17が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ16は、X線管11から照射され、コリメータ17により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0016】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管11が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
【0017】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う。例えば、制御装置15は、回転フレーム13の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30及び天板33の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置15は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させる。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0018】
X線検出器12は、光子計数型検出器であり、X線管11から照射されて被検体Pを透過したX線に由来する光子であるX線光子が入射するごとに、当該X線光子のエネルギー値を計測可能な信号を出力する。X線光子は、例えば、X線管11から照射され被検体Pを透過したX線の光子である。X線検出器12は、X線光子が入射するごとに、1パルスの電気信号(アナログ信号)を出力する複数のX線検出素子を有する。電気信号(パルス)の数を計数することで、各X線検出素子に入射したX線光子の数を計数することが可能である。また、この信号に対して、処理の演算処理を行なうことで、当該信号の出力を引き起こしたX線光子のエネルギー値を計測することができる。例えば、X線検出器12は、X線検出素子が、チャネル方向にN列、スライス方向にM列配置された面検出器である。なお、例えば、チャネル方向とは、X線管11を中心とする円周方向である。また、例えば、スライス方向とは、上述したZ軸方向に沿う方向、すなわち、Z軸方向と平行な方向である。スライス方向は、列方向又はrow方向とも称される。
【0019】
X線検出素子は、例えば、例えば、CdTe(テルル化カドミウム:cadmium telluride)やCdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛:cadmium Zinc telluride)などの半導体素子(半導体検出素子)にアノード電極及びカソード電極が配置されたものである。すなわち、本実施形態に係るX線検出器12は、入射したX線光子を、直接、電気信号に変換する直接変換型の検出器である。
【0020】
X線検出器12は、X線検出素子と、X線検出素子に接続されて、X線検出素子が検出したX線光子を計数する読み出し回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)とを複数有する。ASICは、X線検出素子が出力した個々の電荷を弁別することで、検出素子に入射したX線光子の数を計数する。また、ASICは、個々の電荷の大きさに基づく演算処理を行なうことで、計数したX線光子のエネルギーを計測する。さらに、ASICは、X線光子の計数結果をデジタルデータとしてDAS18に出力する。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。例えば、
図2に示すように、X線検出器12は、複数のX線検出器モジュール12aと、複数のX線検出器モジュール12bとを有する。なお、
図2では、X線の照射範囲を破線11aで示し、X線の照射方向を破線の矢印11bで示している。
図2に示すように、X線は、所定のファン角及び所定のコーンで、広がって照射される。なお、ファン角の角度(ファン角度)は、チャネル方向に沿う角度であり、コーン角の角度(コーン角度)は、スライス方向に沿う角度である。
【0022】
複数のX線検出器モジュール12a,12bは、スライス方向及びチャネル方向に沿って2次元状に配置されている。例えば、複数のX線検出器モジュール12bは、スライス方向の両端部にチャネル方向に沿って配置される。
図2の例では、スライス方向の一方の端部にチャネル方向に沿って9個のX線検出器モジュール12bが配置され、スライス方向の他方の端部にチャネル方向に沿って9個のX線検出器モジュール12bが配置されている。
【0023】
そして、一方の端部に配置されたX線検出器モジュール12bと、他方の端部に配置されたX線検出器モジュール12bとの間に、チャネル方向に沿って配置された複数のX線検出器モジュール12aから構成される列が、スライス方向に沿って複数配置されている。
図2の例では、チャネル方向に沿って配置された9個のX線検出器モジュール12aから構成される列が、スライス方向に沿って4列配置されている。X線検出器モジュール12a,12bの詳細については後述する。
【0024】
図1の説明の戻り、DAS18は、X線検出器12から入力された計数処理の結果に基づいて検出データを生成する。検出データは、例えば、サイノグラムである。サイノグラムは、X線管11の各位置において各X線検出素子に入射した計数処理の結果を並べたデータである。サイノグラムは、ビュー方向及びチャネル方向を軸とする2次元直交座標系に、計数処理の結果を並べたデータである。DAS18は、例えば、X線検出器12におけるスライス方向の列単位で、サイノグラムを生成する。ここで、計数処理の結果は、エネルギービンごとのX線の光子数を割り当てたデータである。DAS18は、生成した検出データをコンソール装置40へ転送する。DAS18は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0025】
DAS18が生成したデータは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば、固定フレーム等。
図1での図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム13を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0026】
寝台装置30は、撮影対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0027】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0028】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、X線CT装置1に含まれる回路が各種の機能を実現するためのプログラムを記憶する。メモリ41は、X線CT装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0029】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、ディスプレイ42は、表示部の一例である。
【0030】
入力インターフェース43は、操作者から各種の入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。また、例えば、入力インターフェース43は、スキャン条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像データから後処理画像を生成する際の画像処理条件等の入力操作を操作者から受け付ける。
【0031】
例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置40とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。
【0032】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443及び画像処理機能444を実行する。ここで、例えば、
図1に示す処理回路44の構成要素である制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443及び画像処理機能444が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41内に記録されている。処理回路44は、例えば、プロセッサであり、メモリ41から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、
図1の処理回路44内に示された各機能を有することとなる。
【0033】
なお、
図1においては、制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443及び画像処理機能444の各処理機能が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0034】
制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、各種処理を制御する。具体的には、制御機能441は、架台装置10で行なわれるCTスキャンを制御する。例えば、制御機能441は、X線高電圧装置14、X線検出器12、制御装置15、DAS18及び寝台駆動装置32の動作を制御することで、架台装置10における計数結果の収集処理を制御する。一例を挙げると、制御機能441は、位置決め画像(スキャノ画像)を収集する位置決めスキャン及び診断に用いる画像を収集する撮影(本スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。
【0035】
また、制御機能441は、メモリ41が記憶する各種画像データに基づく画像などをディスプレイ42に表示させる。
【0036】
前処理機能442は、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正、散乱線補正、ダークカウント補正等の前処理を施すことにより投影データを生成する。
【0037】
再構成処理機能443は、前処理機能442にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。再構成処理機能443は、再構成したCT画像データをメモリ41に格納する。
【0038】
ここで、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果から生成された投影データには、被検体Pを透過することで減弱されたX線のエネルギーの情報が含まれている。このため、再構成処理機能443は、例えば、特定のエネルギー成分のCT画像データを再構成することができる。また、再構成処理機能443は、例えば、複数のエネルギー成分それぞれのCT画像データを再構成することができる。
【0039】
また、再構成処理機能443は、例えば、各エネルギー成分のCT画像データの各画素にエネルギー成分に応じた色調を割り当て、エネルギー成分に応じて色分けされた複数のCT画像データを重畳した画像データを生成することができる。また、再構成処理機能443は、例えば、物質固有のK吸収端を利用して、当該物質の同定が可能となる画像データを生成することができる。再構成処理機能443が生成する他の画像データとしては、単色X線画像データや密度画像データ、実効原子番号画像データ等が挙げられる。
【0040】
CT画像データを再構成する場合には被検体の周囲一周、360°分の投影データが、またハーフスキャン法でも180°+ファン角度分の投影データが必要とされる。いずれの再構成方式に対しても本実施形態へ適用可能である。
【0041】
画像処理機能444は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像やレンダリング処理による3次元画像等の画像データに変換する。画像処理機能444は、変換した画像データをメモリ41に格納する。
【0042】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明した。ここで、
図3を参照して、比較例に係るX線CT装置のX線検出器について説明する。
図3は、比較例に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。なお、比較例に係るX線検出器100は、直接変換型の検出器である。
【0043】
図3に示すように、比較例に係るX線検出器100は、半導体素子101、カソード(カソード電極)102、アノード(アノード電極)103,104及びASIC107を含むX線検出器モジュールを複数備える。
図3の例では、スライス方向に沿ってX線検出器モジュールが4個配置されている。
【0044】
以下の説明では、4つの半導体素子101を区別して説明する場合には、4つの半導体素子101のそれぞれを、半導体素子101a~101dのそれぞれと表記する。また、4つのカソード102を区別して説明する場合には、4つのカソードのそれぞれを、カソード102a~102dのそれぞれと表記する。また、4つのアノード103を区別して説明する場合には、4つのアノード103のそれぞれを、アノード103a~103dのそれぞれと表記する。また、4つのアノード104を区別して説明する場合には、4つのアノード104のそれぞれを、アノード104a~104dのそれぞれと表記する。
【0045】
図3の例では、1つのX線検出器モジュールにおいて、1つのX線検出素子は、例えば、半導体素子101、カソード102及びアノード103により構成される。また、1つのX線検出素子は、例えば、半導体素子101、カソード102及びアノード104により構成される。1つのX線検出素子が1つの画素(ピクセル)に対応してもよいし、複数のX線検出素子が1つの画素に対応してもよい。以下の説明では、1つのX線検出素子が1つの画素に対応する場合について説明する。
【0046】
カソード102は、電源110に接続されている。このため、1つのX線検出器モジュールには電源110によりバイアス電圧が印加される。このように、X線検出素子にバイアス電圧が負荷(印加)されることで、X線検出素子は、X線光子が入射するごとに、1パルスの電気信号を出力することが可能な状態となる。また、X線検出器モジュールは、バイアス電圧が印加されることで、電界を発生する。
【0047】
ASIC107は、X線検出素子に接続されている。具体的には、ASIC107は、アノード103又はアノード104に接続されている。ASIC107は、X線検出素子が出力した個々の電荷を弁別することで、検出素子に入射したX線光子の数を計数する。また、ASIC107は、個々の電荷の大きさに基づく演算処理を行なうことで、計数したX線光子のエネルギーを計測する。そして、ASIC107は、X線光子の計数結果をデジタルデータとしてDAS(図示せず)に出力する。
【0048】
ここで、
図3において、記号「×」は、スライス方向における両端部の2つの画素を示し、記号「○」は、スライス方向における両端部の画素以外の6つの画素を示す。具体的には、1つ目の記号「×」が示す画素は、半導体素子101a、カソード102a及びアノード103aにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。2つ目の記号「×」が示す画素は、半導体素子101d、カソード102d及びアノード104dにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。
【0049】
また、1つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子101a、カソード102a及びアノード104aにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。2つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子101b、カソード102b及びアノード103bにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。3つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子101b、カソード102b及びアノード104bにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。4つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子101c、カソード102c及びアノード103cにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。5つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子101c、カソード102c及びアノード104cにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。6つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子101d、カソード102d及びアノード103dにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。
【0050】
ここで、記号「×」が示す画素の特性は、記号「○」が示す画素の特性よりも良好ではない場合がある。この理由の一例について説明する。例えば、
図3において、アノード104aを含むX線検出素子において発生する電界の分布(電界分布)は、このX線検出素子の
図3中右側に隣接するX線検出器モジュール(半導体素子101bを含むX線検出器モジュール)において発生した電界の影響を受ける。また、アノード103bを含むX線検出素子において発生する電界の分布は、このX線検出素子の
図3中左側に隣接するX線検出器モジュール(半導体素子101aを含むX線検出器モジュール)において発生した電界の影響を受ける。
【0051】
また、アノード104bを含むX線検出素子において発生する電界の分布は、このX線検出素子の
図3中右側に隣接するX線検出器モジュール(半導体素子101cを含むX線検出器モジュール)において発生した電界の影響を受ける。また、アノード103cを含むX線検出素子において発生する電界の分布は、このX線検出素子の
図3中左側に隣接するX線検出器モジュール(半導体素子101bを含むX線検出器モジュール)において発生した電界の影響を受ける。
【0052】
また、アノード104cを含むX線検出素子において発生する電界の分布は、このX線検出素子の
図3中右側に隣接するX線検出器モジュール(半導体素子101dを含むX線検出器モジュール)において発生した電界の影響を受ける。また、アノード103dを含むX線検出素子において発生する電界の分布は、このX線検出素子の
図3中左側に隣接するX線検出器モジュール(半導体素子101cを含むX線検出器モジュール)において発生した電界の影響を受ける。
【0053】
そして、
図3に示す4つのX線検出器モジュールには、共通の電源110により同一の電圧が印加される。このため、記号「○」が示す6つの画素に対応する6つのX線検出素子において発生する電界の分布は、同一又は略同一となる。
【0054】
一方、アノード103aを含むX線検出素子の
図3中左側に、X線検出器モジュールが存在しない。このため、アノード103aを含むX線検出素子において発生する電界の分布は、このX線検出素子を含むX線検出器モジュール以外のX線検出器モジュールにおいて発生した電界の影響を受けにくい。
【0055】
同様に、アノード104dを含むX線検出素子の
図3中右側に、X線検出器モジュールが存在しない。このため、アノード104dを含むX線検出素子において発生する電界の分布は、このX線検出素子を含むX線検出器モジュール以外のX線検出器モジュールにおいて発生した電界の影響を受けにくい。
【0056】
これらのことから、記号「○」が示す6つの画素に対応する6つのX線検出素子に発生する電界の分布と、記号「×」が示す両端部の画素に対応する2つのX線検出素子に発生する電界の分布とが異なる。したがって、記号「×」が示す画素の特性は、記号「○」が示す画素の特性よりも良好ではない場合がある。
【0057】
そこで、第1の実施形態では、X線検出器12は、画像データの生成に寄与する複数の画素(又は画素に対応するX線検出素子)のうち、画素の特性の悪化を抑制することができるように、以下に説明するように構成されている。
【0058】
ここで、
図4を参照して、第1の実施形態に係るX線CT装置のX線検出器について説明する。
図4は、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【0059】
図4に示すように、第1の実施形態に係るX線検出器12は、半導体素子21、カソード22、アノード23,24及びASIC27を含むX線検出器モジュール12aを複数備える。
図4の例では、スライス方向に沿ってX線検出器モジュール12aが4個配置されている。
【0060】
更に、X線検出器12は、半導体素子51、カソード52及びアノード53を含むX線検出器モジュール12bを複数備える。
図4の例では、スライス方向の両端部にX線検出器モジュール12bが配置されている。
【0061】
以下の説明では、4つの半導体素子21を区別して説明する場合には、4つの半導体素子21のそれぞれを、半導体素子21a~21dのそれぞれと表記する。また、4つのカソード22を区別して説明する場合には、4つのカソード22のそれぞれを、カソード22a~22dのそれぞれと表記する。また、4つのアノード23を区別して説明する場合には、4つのアノード23のそれぞれを、アノード23a~23dのそれぞれと表記する。また、4つのアノード24を区別して説明する場合には、4つのアノード24のそれぞれを、アノード24a~24dのそれぞれと表記する。
【0062】
また、2つの半導体素子51を区別して説明する場合には、2つの半導体素子51のそれぞれを、半導体素子51a,51bのそれぞれと表記する。また、2つのカソード52を区別して説明する場合には、2つのカソード52のそれぞれを、カソード52a,52bのそれぞれと表記する。また、2つのアノード53を区別して説明する場合には、2つのアノード53のそれぞれを、アノード53a,53bのそれぞれと表記する。
【0063】
図4の例では、1つのX線検出器モジュール12aにおいて、1つのX線検出素子は、例えば、半導体素子21、カソード22及びアノード23により構成される。また、1つのX線検出素子は、例えば、半導体素子21、カソード22及びアノード24により構成される。1つのX線検出素子が1つの画素に対応してもよいし、複数のX線検出素子が1つの画素に対応してもよい。以下の説明では、1つのX線検出素子が1つの画素に対応する場合について説明する。
【0064】
カソード22は、電源60に接続されている。電源60は、X線検出器モジュール12aにバイアス電圧を印加する。より具体的には、電源60は、カソード22とアノード23,24との間にバイアス電圧を印加する。X線検出素子にバイアス電圧が負荷されることで、X線検出素子は、X線光子が入射するごとに、1パルスの電気信号を出力することが可能な状態となる。バイアス電圧は、電圧の一例である。
【0065】
ASIC27は、X線検出素子に接続されている。具体的には、ASIC27は、アノード23又はアノード24に接続されている。ASIC27は、X線検出素子が出力した個々の電荷を弁別することで、検出素子に入射したX線光子の数を計数する。また、ASIC27は、個々の電荷の大きさに基づく演算処理を行なうことで、計数したX線光子のエネルギーを計測する。そして、ASIC27は、X線光子の計数結果をデジタルデータとしてDAS18に出力する。
【0066】
また、
図4の例では、1つのX線検出器モジュール12bにおいて、1つのX線検出素子は、例えば、半導体素子51、カソード52及びアノード53により構成される。以下の説明では、1つのX線検出素子が1つの画素に対応する場合について説明する。なお、X線検出器モジュール12bが複数のX線検出素子を備えてもよい。この場合、複数のX線検出素子が1つの画素に対応してもよい。X線検出器モジュール12bのサイズは、X線検出器モジュール12aのサイズと同一であってもよいし、異なっても良い。
【0067】
カソード52は、電源55に接続されている。電源55は、X線検出器モジュール12bにバイアス電圧を印加する。より具体的には、電源55は、カソード52とアノード53との間にバイアス電圧を印加する。X線検出素子にバイアス電圧が負荷されることで、X線検出素子は、X線光子が入射するごとに、1パルスの電気信号を出力することが可能な状態となる。以下、2つの電源55を区別して説明する場合には、2つの電源55のそれぞれを、電源55a,55bのそれぞれと表記する。
【0068】
ここで、第1の実施形態に係るアノード53は接地されており、X線検出器モジュール12bのアノード53には読み取り回路であるASIC(例えばASIC27)が接続されていない。このため、X線検出器モジュール12bからの信号は、画像データの生成に用いられない。そのため、X線検出器モジュール12bは、ダミーの検出器モジュールとも称される。第1の実施形態では、X線検出器モジュール12bは、画像データの生成に寄与せず、バイアス電圧が印加されることにより電界を発生することで特定のX線検出素子の特性の悪化を抑制する。
【0069】
図4において、記号「○」は、スライス方向における両端部の画素以外の8つの画素を示す。
【0070】
具体的には、1つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子21a、カソード22a及びアノード23aにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。2つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子21a、カソード22a及びアノード24aにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。3つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子21b、カソード22b及びアノード23bにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。4つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子21b、カソード22b及びアノード24bにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。
【0071】
5つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子21c、カソード22c及びアノード23cにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。6つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子21c、カソード22c及びアノード24cにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。7つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子21d、カソード22d及びアノード23dにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。8つ目の記号「○」が示す画素は、半導体素子21d、カソード22d及びアノード24dにより構成されるX線検出素子に対応する画素である。
【0072】
ここで、記号「○」が示す8つの画素のうち、
図3中左側に位置するアノード23aを含むX線検出素子に対応する画素について説明する。仮に、半導体素子51a、カソード52a及びアノード53aを含むX線検出器モジュール12bが設けられていない場合には、上述した比較例で説明した理由と同様の理由で、この画素の特性は悪化してしまう場合がある。
【0073】
しかしながら、第1の実施形態では、このX線検出器モジュール12bが設けられて電界を発生するため、アノード23aを含むX線検出素子に対応する画素の特性は、記号「○」が示す8つの画素のうちのスライス方向の端部ではない6つの画素の特性と同等となる。すなわち、半導体素子51a、カソード52a及びアノード53aを含むX線検出器モジュール12bは、アノード23aを含むX線検出素子に対応する画素の特性が、上述した6つの画素の特性と同等となるような電界を発生する。このような電界が発生するように、例えば、電源60により印加されるバイアス電圧の大きさと、電源55aにより印加されるバイアス電圧の大きさとが同一又は略同一である。
【0074】
アノード24dを含むX線検出素子に対応する画素の特性も、半導体素子51b、カソード52b及びアノード53bを含むX線検出器モジュール12bが電界を発生するため、上述した6つの画素の特性と同等となる。したがって、例えば、電源60により印加されるバイアス電圧の大きさと、電源55bにより印加されるバイアス電圧の大きさとが同一又は略同一である。
【0075】
なお、電源60により印加されるバイアス電圧の大きさと、電源55a,55bにより印加されるバイアス電圧の大きさとが同一でなく異なっていても良い。この場合には、アノード23aを含むX線検出素子に対応する画素の特性及びアノード24dを含むX線検出素子に対応する画素の特性は、上述した6つの画素の特性と完全には同等とはならない。しかしながら、アノード23aを含むX線検出素子に対応する画素の特性及びアノード24dを含むX線検出素子に対応する画素の特性は、X線検出器モジュール12bが設けられない場合と比較して、良好となる。
【0076】
したがって、第1の実施形態に係るX線検出器12及びX線CT装置1によれば、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、スライス方向における端部のX線検出素子の特性の悪化を抑制することができる。
【0077】
以上、第1の実施形態について説明した。第1の実施形態に係るX線検出器12は、複数のX線検出素子が列方向及びチャネル方向に配列され、アノード23,24,53とカソード22,52との間に電圧が負荷される直接変換型のX線検出器である。そして、ASIC27は、X線検出素子のスライス方向の端部のX線検出素子からのデータを読み出さずに、端部以外のX線検出素子からのデータを読み出す制御を行う。すなわち、ASIC27は、X線検出素子のスライス方向の端部のX線検出素子からのデータを画像データの生成に利用せずに、端部以外のX線検出素子からのデータを画像データの生成に利用する制御を行う。したがって、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、スライス方向における端部のX線検出素子の特性の悪化を抑制することができる。ASIC27は、制御部の一例である。
【0078】
また、第1の実施形態では、端部のX線検出素子と端部以外のX線検出素子には、同一のバイアス電圧が負荷される。このため、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、スライス方向における端部のX線検出素子の特性と端部以外のX線検出素子の特性とを合わせることができる。
【0079】
また、第1の実施形態では、X線検出器12は、複数のX線検出素子を備えるともにスライス方向及びチャネル方向に2次元状に配列された複数のX線検出器モジュール12a,12bを備える。そして、複数のX線検出器モジュール12a,12bのうち、スライス方向の端部のX線検出器モジュール12bが端部のX線検出素子を備える。また、複数のX線検出器モジュール12a,12bのうち、端部のX線検出器モジュール12b以外のX線検出器モジュール12aが端部以外のX線検出素子を備える。このようなX線検出器モジュール12bは、良品である必要はなく、端材で構わない。このため、X線検出器12の歩留まりの改善が期待できる。
【0080】
また、X線検出器モジュール12bがスライス方向の端部に設けられている。このため、第1の実施形態によれば、スライス方向に隣接するX線検出器モジュール12bとX線検出器モジュール12aとの間のチャージシェア量と、スライス方向に隣接する2つのX線検出器モジュール12aの間のチャージシェア量とを同等にすることができる。また、第1の実施形態によれば、X線検出器モジュール12bが散乱線を吸収することができる。
【0081】
なお、第1の実施形態において、X線検出器モジュール12bに代えて、X線検出器モジュール12bが発生する電界の分布と同様の電界の分布を発生させる部材が用いられても良い。このような部材を用いても、X線検出器モジュール12bを用いた場合と同様の効果が得られる。
【0082】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ダミーのX線検出器モジュールであるX線検出器モジュール12bを用いる場合について説明したが、X線検出器モジュール12bを用いなくてもよい。そこで、このような実施形態を第2の実施形態及び第3の実施形態として説明する。まず、第2の実施形態について説明し、次に、第3の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の説明では、主に、第1の実施形態と異なる点について説明し、第1の実施形態と同様の構成の説明については省略する場合がある。
【0083】
図5は、第2の実施形態に係るX線CT装置のX線検出器の構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係るX線CT装置2は、X線検出器12に代えて
図5に示すX線検出器72を備える点が、第1の実施形態に係るX線CT装置1と異なる。また、第2の実施形態に係るX線検出器72は、X線検出器モジュール12bを備えない点で、第1の実施形態に係るX線検出器12と異なる。また、第2の実施形態に係るX線検出器72は、2つのX線検出器モジュール12aに代えて2つのX線検出器モジュール12cを備える点で、X線検出器12と異なる。
図5の例では、スライス方向の両端部にX線検出器モジュール12cが配置されている。
【0084】
X線検出器モジュール12cは、半導体素子61、カソード62及びアノード23,24,63を含む。X線検出器モジュール12cのスライス方向の寸法(幅)「w2」は、X線検出器モジュール12aのスライス方向の寸法「w1」よりも大きい。そのため、X線検出器モジュール12cでは、アノード23,24に加えて、更に、端部側にアノード63が設けられている。
【0085】
以下の説明では、2つの半導体素子61を区別して説明する場合には、2つの半導体素子61のそれぞれを、半導体素子61a,61bのそれぞれと表記する。また、2つのカソード62を区別して説明する場合には、2つのカソード62のそれぞれを、カソード62a,62bのそれぞれと表記する。また、2つのアノード63を区別して説明する場合には、2つのアノード63のそれぞれを、アノード63a,63bのそれぞれと表記する。
【0086】
図5の例では、1つのX線検出器モジュール12cにおいて、1つのX線検出素子は、例えば、半導体素子61、カソード62及びアノード23により構成される。また、1つのX線検出素子は、例えば、半導体素子61、カソード62及びアノード24により構成される。また、1つのX線検出素子は、例えば、半導体素子61、カソード62及びアノード63により構成される。1つのX線検出素子が1つの画素に対応してもよいし、複数のX線検出素子が1つの画素に対応してもよい。以下の説明では、1つのX線検出素子が1つの画素に対応する場合について説明する。
【0087】
カソード62は、電源60に接続されている。電源60は、X線検出器モジュール12cにバイアス電圧を印加する。より具体的には、電源60は、カソード62とアノード23,24,63との間にバイアス電圧を印加する。X線検出素子にバイアス電圧が負荷されることで、X線検出素子は、X線光子が入射するごとに、1パルスの電気信号を出力することが可能な状態となる。
【0088】
ここで、アノード63は接地されており、アノード63には読み取り回路であるASICが接続されていない。このため、アノード63からの信号は、画像データの生成に用いられない。例えば、第2の実施形態では、アノード63aを含むX線検出素子は、バイアス電圧が印加されることにより電界を発生することで、アノード23aを含むX線検出素子の特性の悪化を抑制する。また、アノード63bを含むX線検出素子は、バイアス電圧が印加されることにより電界を発生することで、アノード24dを含むX線検出素子の特性の悪化を抑制する。
【0089】
したがって、第2の実施形態に係るX線検出器72及びX線CT装置2によれば、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、スライス方向における端部のX線検出素子の特性の悪化を抑制することができる。
【0090】
以上、第2の実施形態について説明した。第2の実施形態に係るX線検出器72は、複数のX線検出素子を備えるともにスライス方向及びチャネル方向に配列された複数のX線検出器モジュール12a,12cを備える。そして、複数のX線検出器モジュール12a,12cのうち、スライス方向の端部のX線検出器モジュール12cが、端部のX線検出素子(アノード63を含むX線検出素子)を備える。また、X線検出器モジュール12cが、端部以外のX線検出素子のうち一部のX線検出素子を備える。このような端部以外のX線検出素子のうちの一部のX線検出素子としては、例えば、アノード23aを含むX線検出素子、アノード24aを含むX線検出素子、アノード23dを含むX線検出素子、及び、アノード24dを含むX線検出素子が挙げられる。また、端部のX線検出器モジュール12c以外のX線検出器モジュール12aが、端部以外のX線検出素子のうち一部のX線検出素子を除くX線検出素子を備える。すなわち、X線検出器モジュール12aは、アノード23bを含むX線検出素子、アノード24bを含むX線検出素子、アノード23cを含むX線検出素子、及び、アノード24cを含むX線検出素子を備える。このような構成によれば、上述したように、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、スライス方向における端部のX線検出素子の特性の悪化を抑制することができる。
【0091】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態の説明では、主に、第1の実施形態と異なる点について説明し、第1の実施形態と同様の構成の説明については省略する場合がある。
【0092】
図6は、第3の実施形態に係るX線CT装置のX線検出器の構成の一例を示す図である。第3の実施形態に係るX線CT装置3は、X線検出器12に代えて
図6に示すX線検出器82を備える点が、第1の実施形態に係るX線CT装置1と異なる。また、第3の実施形態に係るX線検出器82は、X線検出器モジュール12bを備えない点で、第1の実施形態に係るX線検出器12と異なる。また、第3の実施形態に係るX線検出器82は、2つのX線検出器モジュール12aに代えて2つのX線検出器モジュール12dを備える点で、X線検出器12と異なる。
図6の例では、スライス方向の両端部にX線検出器モジュール12dが配置されている。
【0093】
X線検出器モジュール12dは、半導体素子21、カソード22及びアノード23,24を含む。X線検出器モジュール12dのスライス方向の寸法「w1」は、X線検出器モジュール12aのスライス方向の寸法「w1」と同一である。
【0094】
第3の実施形態では、アノード23a,24dは接地されており、アノード23a,24dには読み取り回路であるASICが接続されていない。このため、アノード23a,24dからの信号は、画像データの生成に用いられない。例えば、第3の実施形態では、アノード23aを含むX線検出素子は、バイアス電圧が印加されることにより電界を発生することで、アノード24aを含むX線検出素子の特性の悪化を抑制する。また、アノード24dを含むX線検出素子は、バイアス電圧が印加されることにより電界を発生することで、アノード23dを含むX線検出素子の特性の悪化を抑制する。
【0095】
したがって、第3の実施形態に係るX線検出器82及びX線CT装置3によれば、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、スライス方向における端部のX線検出素子の特性の悪化を抑制することができる。
【0096】
以上、第3の実施形態について説明した。第3の実施形態によれば、上述したように、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、スライス方向における端部のX線検出素子の特性の悪化を抑制することができる。
【0097】
なお、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態において、スライス方向の端部のX線検出素子にASIC27を接続し、ASIC27が、端部のX線検出素子が出力する信号(データ)を読み取り、読み取られた信号に対して処理を施してDAS18に出力してもよい。なお、このような信号は、前処理機能442による散乱線補正及びダークカウント補正に用いられても良い。
【0098】
図7は、第3の実施形態の変形例に係るX線CT装置のX線検出器の構成の一例を示す図である。例えば、
図7に示すように、ASIC27がアノード23aに接続されても良いし、ASIC27がアノード24dに接続されても良い。そして、ASIC27が、アノード23a,24dが出力する信号を読み取り、読み取られた信号に対して処理を施してDAS18に出力してもよい。上述したように、このような信号は、前処理機能442による散乱線補正及びダークカウント補正に用いられても良い。
【0099】
同様に、第1の実施形態において、X線検出器モジュール12bにASIC27を接続し、ASIC27がX線検出器モジュール12bが出力する信号を読み取り、読み取られた信号に対して処理を施してDAS18に出力してもよい。また、第2の実施形態において、ASIC27がアノード63に接続されても良い。そして、ASIC27が、アノード63が出力する信号を読み取り、読み取られた信号に対して処理を施してDAS18に出力してもよい。
【0100】
また、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態において、適宜「スライス方向」を「チャネル方向」に読み替えて、X線検出器12,72,82を構成してもよい。これにより、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、チャネル方向における端部のX線検出素子の特性の悪化を抑制することができる。
【0101】
上述した実施形態において図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0102】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0103】
ここで、上述した実施形態で説明した方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、ROM(Read Only Memory)やメモリ等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、後述する各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0104】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、画像データの生成に寄与する複数のX線検出素子のうち、スライス方向又はチャネル方向における端部のX線検出素子の特性の悪化を抑制することができる。
【0105】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0106】
1,2,3 X線CT装置
12,72,82 X線検出器