(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/10 20060101AFI20240806BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20240806BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F25B1/10 Q
F25B43/00 D
F25B1/00 311B
(21)【出願番号】P 2020084040
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-04-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 伊織
(72)【発明者】
【氏名】松井 大
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100695(JP,A)
【文献】特開2015-034637(JP,A)
【文献】特開平08-005203(JP,A)
【文献】特開2011-033295(JP,A)
【文献】特開2010-078165(JP,A)
【文献】特開平11-014199(JP,A)
【文献】特開平09-152192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 1/10
F25B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する成分を主成分として含む冷媒を用いる冷凍サイクル装置であって、
蒸発器と、
多段圧縮機と、
凝縮器と、
第一タンクと、
をこの順に備え、
前記多段圧縮機は、第一圧縮段と、第二圧縮段と、を有し、
前記第一タンクは、第一仕切りと、前記第一仕切りよりも上方に位置する第一上方空間と、前記第一仕切りよりも下方に位置する第一下方空間と、前記第一上方空間と前記第一下方空間とを連通させる第一連通口と、前記第一上方空間に開口する第一入口と、前記第一下方空間に開口する第一液相出口と、前記第一下方空間に開口し前記第一液相出口よりも高い位置にある第一気相出口と、を有し、
前記蒸発器と、前記第一圧縮段と、前記第二圧縮段と、前記凝縮器と、前記第一入口と、前記第一上方空間と、前記第一連通口と、前記第一下方空間と、前記第一液相出口と、をこの順に前記冷媒が循環し、
前記第一気相出口から前記第二圧縮段へと気相の前記冷媒が流れ、
気液二相の前記冷媒が、前記第一入口から前記第一上方空間に流入し、
前記第一上方空間において、気液二相の前記冷媒が減圧されて膨張することにより形成された泡が破裂することにより液滴が生成され前記液滴を前記第一仕切りの上面が受けとめることによって、気液二相の前記冷媒が気液分離され、
液相の前記冷媒が、前記第一仕切りの前記上面を伝って流れ前記第一連通口から滴下されることによって前記第一下方空間に貯留され、その後前記第一液相出口から流出し、
気相の前記冷媒が、前記第一上方空間から、前記第一連通口と前記第一下方空間とをこの順に介して、前記第一気相出口に移動する、
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する成分を主成分として含む冷媒を用いる冷凍サイクル装置であって、
蒸発器と、
多段圧縮機と、
凝縮器と、
第一タンクと、
をこの順に備え、
前記多段圧縮機は、第一圧縮段と、第二圧縮段と、を有し、
前記第一タンクは、第一仕切りと、前記第一仕切りよりも上方に位置する第一上方空間と、前記第一仕切りよりも下方に位置する第一下方空間と、前記第一上方空間と前記第一下方空間とを連通させる第一連通口と、前記第一上方空間に開口する第一入口と、前記第一下方空間に開口する第一液相出口と、前記第一下方空間に開口し前記第一液相出口よりも高い位置にある第一気相出口と、を有し、
前記蒸発器と、前記第一圧縮段と、前記第二圧縮段と、前記凝縮器と、前記第一入口と、前記第一上方空間と、前記第一連通口と、前記第一下方空間と、前記第一液相出口と、をこの順に前記冷媒が循環し、
前記第一気相出口から前記第二圧縮段へと気相の前記冷媒が流れ、
前記冷凍サイクル装置は、第二タンクをさらに備え、
前記多段圧縮機は、第三圧縮段をさらに有し、
前記第二タンクは、第二仕切りと、前記第二仕切りよりも上方に位置する第二上方空間と、前記第二仕切りよりも下方に位置する第二下方空間と、前記第二上方空間と前記第二下方空間とを連通させる第二連通口と、前記第二上方空間に開口する第二入口と、前記第二下方空間に開口する第二液相出口と、前記第二下方空間に開口し前記第二液相出口よりも高い位置にある第二気相出口と、を有し、
前記蒸発器と、前記第三圧縮段と、前記第一圧縮段と、前記第二圧縮段と、前記凝縮器
と、前記第一入口と、前記第一上方空間と、前記第一連通口と、前記第一下方空間と、前記第一液相出口と、前記第二入口と、前記第二上方空間と、前記第二連通口と、前記第二下方空間と、前記第二液相出口と、をこの順に前記冷媒が循環し、
前記第二気相出口から前記第一圧縮段へと気相の前記冷媒が流れ、
前記冷凍サイクル装置は、前記第一液相出口と前記第二入口とを接続している中間流路をさらに備え、
前記中間流路は、低位部と、前記低位部よりも高い位置にある高位部と、を有し、
前記第一液相出口と、前記低位部と、前記高位部と、前記第二入口と、をこの順に前記冷媒が流れる、
冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記冷凍サイクル装置は、前記高位部よりも低い位置において延びるバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられたバイパス弁と、をさらに備え、
前記バイパス弁の開度がゼロよりも大きい状態において、前記高位部をバイパスして、前記第一液相出口と、前記バイパス流路と、前記第二入口と、をこの順に前記冷媒が流れる、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
気液二相の前記冷媒が、前記第一入口から前記第一上方空間に流入し、
前記第一上方空間において、気液二相の前記冷媒が減圧されることにより液滴が生成され前記液滴を前記第一仕切りの上面が受けとめることによって、気液二相の前記冷媒が気液分離され、
液相の前記冷媒が、前記第一仕切りの前記上面を伝って流れ前記第一連通口から滴下されることによって前記第一下方空間に貯留され、その後前記第一液相出口から流出し、
気相の前記冷媒が、前記第一上方空間から、前記第一連通口と前記第一下方空間とをこの順に介して、前記第一気相出口に移動する、
請求項2又は3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記第一タンクを上方から観察したとき、前記第一気相出口と前記第一入口とを結ぶ第一直線に直交し前記第一入口を通る第二直線に関し、前記第一気相出口及び前記第一連通口は互いに反対側にある、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記第一仕切りは、前記
第一連通口に隣接する位置において、前記
第一連通口に近づくにつれて高さが減少している傾斜部を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、特許文献1の冷凍サイクル装置の構成図である。
図8に示す冷凍サイクル装置100は、蒸発器101と、多段圧縮機102と、凝縮器103と、第一膨張弁104aと、第二膨張弁104bと、エコノマイザ熱交換器105と、を備えている。多段圧縮機102は、第一圧縮段102a及び第二圧縮段102bを有している。具体的には、多段圧縮機102はターボ圧縮機であり、圧縮段102a及び102bは翼車である。
【0003】
冷媒は、蒸発器101で気化し、多段圧縮機102によって圧送され、その後、凝縮器103で凝縮する。凝縮器103で凝縮された冷媒は、第一流路106a及び第二流路106bのいずれかを流れる。
【0004】
第一流路106aを流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器105を流れ、第二膨張弁104bで膨張し、その後、蒸発器101に導かれる。第二流路106bを流れる冷媒は、第一膨張弁104aで膨張し、エコノマイザ熱交換器105を流れ、その後、多段圧縮機102に導かれる。
【0005】
具体的には、第二流路106bを流れる冷媒は、第一流路106aを流れる液相の冷媒とエコノマイザ熱交換器105において熱交換することによって気化する。気化により生成された気相の冷媒は、微細な液滴とともに、多段圧縮機102の圧縮過程に吸入される。具体的には、この気相の冷媒は、液滴とともに、第二圧縮段102bに吸入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、多段圧縮機の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適した技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、
常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する成分を主成分として含む冷媒を用いる冷凍サイクル装置であって、
蒸発器と、
多段圧縮機と、
凝縮器と、
タンクと、
をこの順に備え、
前記多段圧縮機は、第一圧縮段と、第二圧縮段と、を有し、
前記タンクは、仕切りと、前記仕切りよりも上方に位置する上方空間と、前記仕切りよりも下方に位置する下方空間と、前記上方空間と前記下方空間とを連通させる連通口と、前記上方空間に開口する入口と、前記下方空間に開口する液相出口と、前記下方空間に開口し前記液相出口よりも高い位置にある気相出口と、を有し、
前記蒸発器と、前記第一圧縮段と、前記第二圧縮段と、前記凝縮器と、前記入口と、前記上方空間と、前記連通口と、前記下方空間と、前記液相出口と、をこの順に前記冷媒が循環し、
前記気相出口から前記第二圧縮段へと気相の前記冷媒が流れる、
冷凍サイクル装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る技術は、多段圧縮機の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施の形態の第一タンクを側方から見た拡大図
【
図3】実施の形態の第一タンクを上方から見た拡大図
【
図6】実施の形態の第二タンクを側方から見た拡大図
【
図7】実施の形態の第二タンクを上方から見た拡大図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
図8に示す冷凍サイクル装置100の冷媒として、水を利用したとする。この場合、38℃における凝縮圧力が6.63kPaであり、6.2℃における飽和蒸気圧力が0.95kPaであるという条件下で、冷凍サイクル装置100は動作しうる。別の言い方をすると、この場合、凝縮圧力及び飽和蒸気圧力が負圧であり、それらの差圧が5.68kPaという微小な値をとるという条件下で、冷凍サイクル装置100は動作しうる。このような条件下で液体の水が飽和液線付近で沸騰するとき、水の約14500倍もの体積を有する水蒸気が発生しうる(甲藤 好朗著、「伝熱」第44巻No.187、社団法人日本伝熱学会、p.15-20、「沸騰の科学(2)」の(2)低圧沸騰を参照)。
【0012】
第一膨張弁104aを通過した後、水は、気液二相の状態でエコノマイザ熱交換器105に流入する。気液二相の水は、エコノマイザ熱交換器105で熱を受ける。これにより、気液二相の水に含まれた液相の水は、沸騰及び蒸発する。
【0013】
上記のとおり、巨視的には、エコノマイザ熱交換器105において、気液二相の水に含まれた液相の水が蒸発すると説明できる。微視的には、この液相の水は、蒸気と接触する境界面で、膨大な体積の蒸気を発生させながら蒸発する。この際、水が膜となって蒸気を包み、これにより泡が形成される。この泡が熱を受けると、泡における蒸気の体積が増加する。この体積増加に伴い、泡は、最終的には破裂する。泡が破裂すると、微小な水滴が多量に発生する。
【0014】
このようにして、エコノマイザ熱交換器105で多量の微小な水滴が発生する。一方、蒸発過程において、水の体積は急激に増加する。これらの現象が相俟って、水滴は、そのすべてが蒸気に相変化していない状態で、エコノマイザ熱交換器105から多段圧縮機102の圧縮段102bへと吸入される。圧縮段102bへの水滴の吸入は、圧縮段102bにおけるエロージョンを引き起こしうる。エロージョンは、多段圧縮機102の性能を低下させうる。
【0015】
そこで、本発明者らは、多段圧縮機の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適した技術を検討した。
【0016】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る冷凍サイクル装置は、
常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する成分を主成分として含む冷媒を用いる冷凍サイクル装置であって、
蒸発器と、
多段圧縮機と、
凝縮器と、
タンクと、
をこの順に備え、
前記多段圧縮機は、第一圧縮段と、第二圧縮段と、を有し、
前記タンクは、仕切りと、前記仕切りよりも上方に位置する上方空間と、前記仕切りよりも下方に位置する下方空間と、前記上方空間と前記下方空間とを連通させる連通口と、前記上方空間に開口する入口と、前記下方空間に開口する液相出口と、前記下方空間に開口し前記液相出口よりも高い位置にある気相出口と、を有し、
前記蒸発器と、前記第一圧縮段と、前記第二圧縮段と、前記凝縮器と、前記入口と、前記上方空間と、前記連通口と、前記下方空間と、前記液相出口と、をこの順に前記冷媒が循環し、
前記気相出口から前記第二圧縮段へと気相の前記冷媒が流れる。
【0017】
第1態様に係る技術は、多段圧縮機の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。具体的には、第1態様に係る技術は、第二圧縮段に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。
【0018】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る冷凍サイクル装置では、
気液二相の前記冷媒が、前記入口から前記上方空間に流入してもよく、
前記上方空間において、気液二相の前記冷媒が減圧されることにより液滴が生成され前記液滴を前記仕切りの上面が受けとめることによって、気液二相の前記冷媒が気液分離されてもよく、
液相の前記冷媒が、前記仕切りの前記上面を伝って流れ前記連通口から滴下されることによって前記下方空間に貯留され、その後前記液相出口から流出してもよく、
気相の前記冷媒が、前記上方空間から、前記連通口と前記下方空間とをこの順に介して、前記気相出口に移動してもよい。
【0019】
第2態様の冷媒の挙動は、タンクにおける冷媒の挙動の具体例である。
【0020】
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様に係る冷凍サイクル装置では、
前記タンクを上方から観察したとき、前記気相出口と前記入口とを結ぶ第一直線に直交し前記入口を通る第二直線に関し、前記気相出口及び前記連通口は互いに反対側にあってもよい。
【0021】
第3態様は、多段圧縮機の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。具体的には、第3態様に係る技術は、第二圧縮段に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。
【0022】
本開示の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つに係る冷凍サイクル装置では、
前記仕切りは、前記連通口に隣接する位置において、前記連通口に近づくにつれて高さが減少している傾斜部を含んでいてもよい。
【0023】
第4態様によれば、液相の冷媒が仕切りの上面を伝って連通口へとスムーズに流れやすい。
【0024】
本開示の第5態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つに係る冷凍サイクル装置では、
前記タンクを第一タンクと称し、前記仕切りを第一仕切りと称し、前記上方空間を第一上方空間と称し、前記下方空間を第一下方空間と称し、前記連通口を第一連通口と称し、前記入口を第一入口と称し、前記液相出口を第一液相出口と称し、前記気相出口を第一気相出口と称することとしたとき、
前記冷凍サイクル装置は、第二タンクをさらに備えていてもよく、
前記多段圧縮機は、第三圧縮段をさらに有していてもよく、
前記第二タンクは、第二仕切りと、前記第二仕切りよりも上方に位置する第二上方空間と、前記第二仕切りよりも下方に位置する第二下方空間と、前記第二上方空間と前記第二下方空間とを連通させる第二連通口と、前記第二上方空間に開口する第二入口と、前記第二下方空間に開口する第二液相出口と、前記第二下方空間に開口し前記第二液相出口よりも高い位置にある第二気相出口と、を有していてもよく、
前記蒸発器と、前記第三圧縮段と、前記第一圧縮段と、前記第二圧縮段と、前記凝縮器と、前記第一入口と、前記第一上方空間と、前記第一連通口と、前記第一下方空間と、前記第一液相出口と、前記第二入口と、前記第二上方空間と、前記第二連通口と、前記第二下方空間と、前記第二液相出口と、をこの順に前記冷媒が循環してもよく、
前記第二気相出口から前記第一圧縮段へと気相の前記冷媒が流れてもよい。
【0025】
第5態様は、多段圧縮機の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。具体的には、第5態様に係る技術は、第一圧縮段に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。
【0026】
本開示の第6態様において、例えば、第1から第5態様のいずれか1つに係る冷凍サイクル装置は、前記第一液相出口と前記第二入口とを接続している中間流路をさらに備えていてもよく、
前記中間流路は、低位部と、前記低位部よりも高い位置にある高位部と、を有していてもよく、
前記第一液相出口と、前記低位部と、前記高位部と、前記第二入口と、をこの順に前記冷媒が流れてもよい。
【0027】
第6態様によれば、第一圧縮段から吐出された気相の冷媒が、第一タンクの第一気相出口、第一下方空間、第一液相出口、中間流路、第二タンクの第二入口、第二上方空間、第二連通口、第二下方空間及び第二気相出口をこの順に通って第一圧縮段に戻ってくるというループが形成され難い。このため、多段圧縮機の性能を確保し易い。
【0028】
本開示の第7態様において、例えば、第1から第6態様のいずれか1つに係る冷凍サイクル装置では、
前記冷凍サイクル装置は、前記高位部よりも低い位置において延びるバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられたバイパス弁と、をさらに備えていてもよく、
前記バイパス弁の開度がゼロよりも大きい状態において、前記高位部をバイパスして、前記第一液相出口と、前記バイパス流路と、前記第二入口と、をこの順に前記冷媒が流れてもよい。
【0029】
第7態様によれば、多段圧縮機の圧縮段間の差圧が小さい小負荷条件でも、該差圧が大きい大負荷条件でも、バイパス弁の開度を調整することにより、冷凍サイクル装置を適切に動作させることができる。
【0030】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本開示が限定されるものではない。
【0031】
以下の実施の形態では、「多段圧縮機」という用語を用いることがある。以下の実施の形態では、「多段圧縮機」の「多段」は、2段以上であることを意味する。
【0032】
以下の実施の形態では、「常温」という用語を用いることがある。以下の実施の形態では、「常温」とは、日本産業規格JIS Z8703で規定されているとおり、20℃±15℃を指すものとする。
【0033】
以下の実施の形態では、「主成分」という用語を用いることがある。以下の実施の形態では、「主成分」とは、質量比で最も多く含まれた成分を意味する。
【0034】
以下の実施の形態では、「上方」及び「下方」は、それぞれ、鉛直方向における上方及び下方を意味する。「高い位置」及び「低い位置」は、鉛直方向における高い位置及び低い位置を意味する。
【0035】
以下の実施の形態では、第一、第二、第三・・・という序数詞を用いることがある。ある要素に序数詞が付されている場合に、より若番の同種類の要素が存在することは必須ではない。必要に応じて序数詞の番号を変更することができる。
【0036】
(実施の形態1)
以下、
図1を用いて、実施の形態1を説明する。
【0037】
[1-1.構成]
図1は、本実施の形態の冷凍サイクル装置200の構成図である。冷凍サイクル装置200では、常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する成分を主成分として含む冷媒が流れる。このような冷媒としては、水を主成分として含む冷媒、R1233zdを主成分として含む冷媒等が挙げられる。冷凍サイクル装置200の運転時において、冷凍サイクル装置200の内部の圧力は、例えば、大気圧よりも低い。
【0038】
冷凍サイクル装置200は、蒸発器201と、多段圧縮機202と、凝縮器204と、第一弁205と、第一タンク207と、第二タンク210と、第二弁213とを、備えている。蒸発器201と、多段圧縮機202と、凝縮器204と、第一弁205と、第一タンク207と、第二タンク210と、第二弁213とは、この順に接続されている。蒸発器201と、多段圧縮機202と、凝縮器204と、第一弁205と、第一タンク207と、第二タンク210と、第二弁213とを、この順に冷媒が流れる。
【0039】
冷凍サイクル装置200は、第一流路221と、第二流路222と、第三流路223と、第四流路224と、中間流路209と、バイパス流路214と、第五流路225と、第一気相流路208と、第二気相流路211とを備えている。第一流路221は、蒸発器201と多段圧縮機202とを接続している。第二流路222は、多段圧縮機202と凝縮器204とを接続している。第三流路223は、凝縮器204と第一弁205とを接続している。第四流路224は、第一弁205と第一タンク207とを接続している。中間流路209は、第一タンク207と第二タンク210とを接続している。バイパス流路214は、中間流路209の一部をバイパスするように、中間流路209の2つの地点を接続している。第五流路225は、第二タンク210と第二弁213とを接続している。第一気相流路208は、第二タンク210及び蒸発器201をバイパスするように、第一タンク207と多段圧縮機202とを接続している。第二気相流路211は、蒸発器201をバイパスするように、第二タンク210と多段圧縮機202とを接続している。
【0040】
冷凍サイクル装置200は、バイパス弁217を備えている。バイパス弁217は、バイパス流路214に設けられている。
【0041】
以下、冷凍サイクル装置200の構成要素について、さらに説明する。
【0042】
蒸発器201では、外部からの加熱媒体と、液相の冷媒と、が熱交換する。この熱交換によって、液相の冷媒が蒸発し、気相の冷媒が生成される。蒸発器201は、プレート式の熱交換器であってもよく、シェルアンドチューブ式の熱交換器であってもよく、噴霧式の熱交換器であってもよく、直接接触式の熱交換器であってもよい。
【0043】
第一流路221は、蒸発器201から多段圧縮機202へと気相の冷媒を導く。具体的には、第一流路221は、蒸発器201から多段圧縮機202の第三圧縮段202cへと気相の冷媒を導く。
【0044】
多段圧縮機202は、気相の冷媒を圧送する。多段圧縮機202は、複数の圧縮段を有している。これらの圧縮段は、互いに接続されている。
【0045】
本実施の形態では、多段圧縮機202は、ターボ圧縮機である。圧縮段は、翼車である。
【0046】
図1に示す例では、多段圧縮機202は、第一圧縮段202aと、第二圧縮段202bと、第三圧縮段202cと、第一連通路203aと、第二連通路203bとを有している。第三圧縮段202cと、第二連通路203bと、第一圧縮段202aと、第一連通路203aと、第二圧縮段202bとは、この順に接続されている。圧縮段202a、202b及び202cは、翼車である。
【0047】
気相の冷媒が、第三圧縮段202cで圧縮され、第二連通路203bを流れ、第一圧縮段202aで圧縮され、第一連通路203aを流れ、その後、第二圧縮段202bで圧縮される。連通路203a及び203bを、圧縮流路と称することができる。
【0048】
図1に示す例では、多段圧縮機202は、三段構成の圧縮機である。ただし、多段圧縮機202が有する圧縮段の数は、特に限定されない。
【0049】
第二流路222は、多段圧縮機202から凝縮器204へと気相の冷媒を導く。具体的には、第二流路222は、多段圧縮機202の第二圧縮段202bから凝縮器204へと気相の冷媒を導く。
【0050】
凝縮器204では、外部からの冷却媒体と、気相の冷媒と、が熱交換する。この熱交換によって、気相の冷媒が凝縮し、液相の冷媒が生成される。凝縮器204は、プレート式の熱交換器であってもよく、シェルアンドチューブ式の熱交換器であってもよく、噴霧式の熱交換器であってもよく、直接接触式の熱交換器であってもよい。
【0051】
第三流路223は、凝縮器204から第一弁205へと冷媒を導く。第三流路223において、液相の冷媒の一部は減圧により気化する。このため、第三流路223により、第一弁205に気液二相の冷媒が導かれる。
【0052】
第一弁205は、第一弁205を流れる気液二相の冷媒の流量を調整する。第一弁205を、高段側流量調整弁と称することができる。
【0053】
第四流路224は、第一弁205から第一タンク207へと気液二相の冷媒を導く。第四流路224を、高段側流路と称することができる。
【0054】
第一タンク207において、気液二相の冷媒は、気化冷却されながら気液分離される。第一タンク207を、高段側気化冷却タンクと称することができる。
【0055】
図2は、本実施の形態の第一タンク207を側方から見た拡大図である。
図2に示すように、本実施の形態では、第一タンク207は、第一仕切り207aを有している。第一仕切り207aは、第一タンク207の第一内部空間207sを、第一上方空間207uと第一下方空間207dとに仕切っている。第一仕切り207aには、第一連通口207cが設けられている。第一連通口207cを介して第一上方空間207uと第一下方空間207dとが連通している。
【0056】
第一タンク207には、第一入口207iと、第一気相出口207ogと、第一液相出口207olと、が設けられている。第一入口207iは、第四流路224に接続されているとともに、第一上方空間207uに面している。第一気相出口207ogは、第一下方空間207dに面しているとともに、第一気相流路208に接続されている。第一液相出口207olは、第一下方空間207dに面しているとともに、中間流路209に接続されている。第一気相出口207ogは、第一液相出口207olよりも高い位置に設けられている。第一仕切り207aを、高段側遮閉物と称することができる。
【0057】
図2に示すように、本実施の形態では、第一仕切り207aは、第一傾斜部207aiを有している。第一傾斜部207aiは、第一連通口207cに隣接する位置に設けられている。第一傾斜部207aiは、第一連通口207cに近づくにつれて高さが低くなっている。
【0058】
図2に示すように、本実施の形態では、第一タンク207は、第一底壁207bwと、第一天井壁207cwと、第一側壁207swと、を有している。第一側壁207swは、第一底壁207bw及び第一天井壁207cwを接続している。第一天井壁207cwに、第一入口207iが設けられている。第一側壁207swに、第一気相出口207og及び第一液相出口207olが設けられている。また、第一側壁207swは、第一連通口207cに露出している。
【0059】
図3は、本実施の形態の第一タンク207を上方から見た拡大図である。第一タンク207を上方から観察したとき、第一気相出口207ogと第一入口207iとを結ぶ直線を第一直線207xと定義し、第一直線207xに直交し第一入口207iを通る直線を第二直線207yと定義する。このとき、本実施の形態では、第一タンク207を上方から観察したとき、第二直線207yに関し、第一気相出口207og及び第一連通口207cは互いに反対側にある。具体的には、第一タンク207を上方から観察したとき、第一直線207x上において、第一気相出口207ogと、第一入口207iと、第一連通口207cとが、この順に現れる。なお、
図3では、第一仕切り207a等の図示は省略している。
【0060】
第一タンク207では、気液二相の冷媒が第一入口207iから流入する。第一タンク207において気液分離により得られた気相の冷媒は、第一気相出口207ogから流出する。第一タンク207において気液分離により得られた液相の冷媒は、第一液相出口207olから流出する。
【0061】
第一気相流路208は、第二タンク210及び蒸発器201をバイパスして、第一タンク207から多段圧縮機202へと気相の冷媒を導く。具体的には、第一気相流路208は、第一タンク207から第一連通路203aへと気相の冷媒を導く。第一気相流路208を、高段側気相流路と称することができる。第一連通路203aに導かれた気相の冷媒は、第二圧縮段202bに吸い込まれる。
【0062】
中間流路209は、第一タンク207から第二タンク210へと冷媒を導く。中間流路209において、液相の冷媒の一部は減圧により気化する。このため、中間流路209により、第二タンク210に気液二相の冷媒が導かれる。
【0063】
図4は、本実施の形態の中間流路209の拡大図である。
図4に示すように、本実施の形態では、中間流路209は、低位部209Lと、高位部209Hと、を有している。第一液相出口207olと、低位部209Lと、高位部209Hと、第二タンク210の第二入口210iとは、この順に接続されている。高位部209Hは、第一液相出口207ol、低位部209L及び第二入口210iに比べ、高い位置に設けられている。
【0064】
図4に示すように、本実施の形態では、中間流路209は上方に突出したU字部を有し、高位部209HはU字部の頂部である。ただし、中間流路209の構成は、これに限定されない。
図5は、変形例の中間流路209の拡大図である。
図5の例では、中間流路209は上方に突出した矩形部を有し、高位部209Hは矩形部の上辺部である。
【0065】
バイパス流路214は、中間流路209の一部をバイパスするように、中間流路209の2つの地点を接続している。具体的には、バイパス流路214は、高位部209Hをバイパスするように、中間流路209の2つの地点を接続している。バイパス流路214は、高位部209Hよりも低い位置において延びている。中間流路209と同様、バイパス流路214においても、液相の冷媒の一部は減圧により気化しうる。
【0066】
第二タンク210において、気液二相の冷媒は、気化冷却されながら気液分離される。第二タンク210を、低段側気化冷却タンクと称することができる。
【0067】
図6は、本実施の形態の第二タンク210を側方から見た拡大図である。
図6に示すように、本実施の形態では、第二タンク210は、第二仕切り210aを有している。第二仕切り210aは、第二タンク210の第二内部空間210sを、第二上方空間210uと第二下方空間210dとに仕切っている。第二仕切り210aには、第二連通口210cが設けられている。第二連通口210cを介して第二上方空間210uと第二下方空間210dとが連通している。
【0068】
第二タンク210には、第二入口210iと、第二気相出口210ogと、第二液相出口210olと、が設けられている。第二入口210iは、中間流路209に接続されているとともに、第二上方空間210uに面している。第二気相出口210ogは、第二下方空間210dに面しているとともに、第二気相流路211に接続されている。第二液相出口210olは、第二下方空間210dに面しているとともに、第五流路225に接続されている。第二気相出口210ogは、第二液相出口210olよりも高い位置に設けられている。第二仕切り210aを、低段側遮閉物と称することができる。
【0069】
図6に示すように、本実施の形態では、第二仕切り210aは、第二傾斜部210aiを有している。第二傾斜部210aiは、第二連通口210cに隣接する位置に設けられている。第二傾斜部210aiは、第二連通口210cに近づくにつれて高さが低くなっている。
【0070】
図6に示すように、本実施の形態では、第二タンク210は、第二底壁210bwと、第二天井壁210cwと、第二側壁210swと、を有している。第二側壁210swは、第二底壁210bw及び第二天井壁210cwを接続している。第二天井壁210cwに、第二入口210iが設けられている。第二側壁210swに、第二気相出口210ogが設けられている。第二底壁210bwに、第二液相出口210olが設けられている。また、第二側壁210swは、第二連通口210cに露出している。
【0071】
第二側壁210swではなく第二底壁210bwに第二液相出口210olが設けられていると、第二タンク210内に貯留されている液相の冷媒が少ないときであっても、第五流路225に液相の冷媒を供給し易い。ただし、第二側壁210swに第二液相出口210olが設けられていてもよい。
【0072】
図2及び
図6から理解されるように、第一底壁207bwと第一気相出口207ogの距離である第一距離は、第二底壁210bwと第二気相出口210ogの距離である第二距離よりも大きい。
【0073】
以下、第一距離>第二距離の利点について説明する。第一気相流路208における圧損を低減する観点からは、第一気相流路208は短いほうがいい。ただし、このようにすると、第一タンク207における蒸気圧は低くなり易い。第一タンク207における蒸気圧が低いと、第一タンク207と第二タンク210の間の圧力差が小さくなり易い。このような構成が採用されている場合において第一圧縮段202aの吸込み口と吐出口の間の差圧が過渡的に小さくなると、もともと小さくなり易いタンク207及び210の間の圧力差がさらに減少しうる。このことにより、中間流路209から第一タンク207への液相の冷媒の逆流が生じうる。しかし、第一距離>第二距離であれば、第一距離を確保し易い。このため、上記逆流に伴って第一タンク207の液位が上昇したとしても、液位と第一気相出口207ogとの間の距離を十分に確保し易い。
【0074】
ただし、第一距離と第二距離は、同じであってもよい。また、第一距離は、第二距離よりも小さくてもよい。
【0075】
図7は、本実施の形態の第二タンク210を上方から見た拡大図である。第二タンク210を上方から観察したとき、第二気相出口210ogと第二入口210iとを結ぶ直線を第三直線210xと定義し、第三直線210xに直交し第二入口210iを通る直線を第四直線210yと定義する。このとき、本実施の形態では、第二タンク210を上方から観察したとき、第四直線210yに関し、第二気相出口210og及び第二連通口210cは互いに反対側にある。具体的には、第二タンク210を上方から観察したとき、第三直線210x上において、第二気相出口210ogと、第二入口210iと、第二連通口210cとが、この順に現れる。なお、
図7では、第二仕切り210a等の図示は省略している。
【0076】
第二タンク210では、気液二相の冷媒が第二入口210iから流入する。第二タンク210において気液分離により得られた気相の冷媒は、第二気相出口210ogから流出する。第二タンク210において気液分離により得られた液相の冷媒は、第二液相出口210olから流出する。
【0077】
第二気相流路211は、蒸発器201をバイパスして、第二タンク210から多段圧縮機202へと気相の冷媒を導く。具体的には、第二気相流路211は、第二タンク210から第二連通路203bへと気相の冷媒を導く。第二気相流路211を、低段側気相流路と称することができる。第二連通路203bに導かれた気相の冷媒は、第一圧縮段202aに吸い込まれる。
【0078】
第五流路225は、第二タンク210から第二弁213へと液相の冷媒を導く。第五流路225を、低段液相流路と称することができる。
【0079】
第二弁213は、第一弁205を流れる液相の冷媒の流量を調整する。第二弁213を、低段側流量調整弁と称することができる。
【0080】
第一弁205、例えば、単孔型又は多孔型の可変オリフィス弁である。この点は、第二弁213及びバイパス弁217についても同様である。
【0081】
[1-2.動作]
以上のように構成された冷凍サイクル装置200について、以下、その動作及び作用を、図面を参照しながら説明する。
【0082】
[1-2-1.第一状態における動作]
冷凍サイクル装置200は、第一状態をとることができる。第一状態は、バイパス弁217の開度が相対的に小さい状態である。ここで、開度が相対的に小さいとは、開度がゼロであることを含む概念である。本実施の形態の第一状態では、バイパス弁217の開度はゼロである。本実施の形態では、冷凍サイクル装置200は、大負荷時において、第一状態をとりうる。具体的には、冷凍サイクル装置200は、定格負荷時において、第一状態をとりうる。本実施の形態では、大負荷時において、蒸発器201における蒸発後の冷媒と凝縮器204における凝縮後の冷媒との温度差が大きく、多段圧縮機202の回転数が高く、多段圧縮機202における圧縮段間の差圧が大きい。典型的には、定格負荷時において、上記の温度差、回転数及び差圧は、定格範囲にある。
【0083】
以下、第一状態にある冷凍サイクル装置200の動作について、説明する。
【0084】
蒸発器201において、貯留された液相の冷媒と、外部からの加熱媒体と、が熱交換する。この熱交換によって、液相の冷媒が蒸発し、気相の冷媒が生成される。
【0085】
次に、気相の冷媒は、多段圧縮機202において、各圧縮段によって順次圧縮される。具体的には、気相の冷媒は、第三圧縮段202cで圧縮され、第二連通路203bを流れ、第一圧縮段202aで圧縮され、第一連通路203aを流れ、その後、第二圧縮段202bで圧縮される。
【0086】
次に、凝縮器204において、気相の冷媒と、外部からの冷却媒体と、が熱交換する。この熱交換によって、気相の冷媒が凝縮し、生成された液相の冷媒が凝縮器204において貯留される。
【0087】
次に、第三流路223において、液相の冷媒の一部は減圧により気化する。このようにして、第三流路223において、気液二相の冷媒が生成される。次に、第一弁205において、気液二相の冷媒の流量が調整される。次に、気液二相の冷媒は、第四流路224を流れる。
【0088】
次に、気液二相の冷媒は、第一タンク207に流入する。第一入口207iから第一上方空間207uに流入した気液二相の冷媒は膨張する。この膨張により、液滴が生じる。具体的には、この膨張が生じたとたんに、体積の大きい気相の冷媒が生成される。この際、液が膜となって気相の冷媒を包み、これにより泡が形成される。泡における気相の冷媒の体積が増加することにより、泡は最終的には破裂する。泡が破裂すると液滴が発生する。生じた液滴を、第一仕切り207aの上面が受ける。このようにして、第一タンク207において、冷媒の気液分離が行われる。
【0089】
本実施の形態では、凝縮器204から吐出されてから第一タンク207に流入するまでに冷媒が流れる流路に、圧縮機が設けられていない。このことは、第一タンク207に気液二相の冷媒を供給することに適している。
【0090】
気液分離により得られた気相の冷媒は、第一上方空間207uから、第一連通口207cを介して第一下方空間207dに移動し、第一気相出口207ogから流出する。一方、気液分離により得られた液相の冷媒は、第一仕切り207aの第一傾斜部207aiを伝って流れ、第一連通口207cから第一下方空間207dへと滴下され、第一下方空間207dの底部において貯留される。貯留された液相の冷媒は、第一液相出口207olから流出する。
【0091】
第一気相出口207ogから流出した気相の冷媒は、第一気相流路208に流入する。その後、気相の冷媒は、第一連通路203aを介して第二圧縮段202bの吸込み口に吸入される。
【0092】
本実施の形態では、第一タンク207において、液相の冷媒は、第一仕切り207aの上面を伝って流れる。このようにすれば、液相の冷媒の表面積が大きい状態を維持しつつ液相の冷媒を移動させることができる。このため、本実施の形態によれば、沸騰現象を抑制し易い。このことは、第一連通路203aを介して第二圧縮段202bに吸い込まれるべき気相の冷媒に液滴が混入することを抑制し、これにより多段圧縮機202の性能を維持するのに適している。
【0093】
第一液相出口207olから流出した液相の冷媒は、中間流路209に流入する。中間流路209において、液相の冷媒の一部は減圧により気化する。
【0094】
ところで、仮に、第一タンク207内で気液分離により生成された液相の冷媒が、直ちに中間流路209を介して第二タンク210に流出したとする。その場合、第一タンク207では、液相の冷媒が第一下方空間207dの底部に実質的に貯留されない。第一タンク207が液相の冷媒を実質的に貯留していない状態になると、第一圧縮段202aの吐出口、第一連通路203a、第一気相流路208、第一タンク207、中間流路209、第二タンク210、第二気相流路211、第二連通路203b及び第一圧縮段202aの吸込み口の順に気相の冷媒が流れるループが形成されうる。第一圧縮段202aから吐出された気相の冷媒が第二圧縮段202bに吸い込まれるのではなくこのようなループを流れる状態にあっては、第一圧縮段202aが、多段圧縮機202の圧縮性能に貢献し難い。つまり、圧縮性能の観点から、第一圧縮段202aが実質的に“見えなく”なる。例えば、多段圧縮機202が三段構成の圧縮機である場合、二段構成の圧縮機との同程度の圧縮性能しか発揮しないという事態を招きうる。
【0095】
この点、本実施の形態では、上記のループが形成され難い。具体的には、中間流路209において、第一液相出口207olから第二入口210iに向かって順に、低位部209Lと、高位部209Hと、が現れる。このため、第一液相出口207olから中間流路209を介して第二入口210iに液相成分を含む冷媒が流れる場合において、低位部209Lと高位部209Hとの間の水位ヘッド差により、冷媒の流れを制限できる。このため、第一タンク207が冷媒を実質的に貯留していない状態になり難い。このことは、上記のようなループが形成されるのを防ぎ、多段圧縮機202の圧縮性能が低下するのを防ぐのに貢献しうる。
【0096】
中間流路209における部分的な気化により生成された気液二相の冷媒が、第二タンク210に流入する。第二入口210iから第二上方空間210uに流入した気液二相の冷媒は膨張する。この膨張により、液滴が生じる。具体的には、この膨張が生じたとたんに、体積の大きい気相の冷媒が生成される。この際、液が膜となって気相の冷媒を包み、これにより泡が形成される。泡における気相の冷媒の体積が増加することにより、泡は最終的には破裂する。泡が破裂すると液滴が発生する。生じた液滴を、第二仕切り210aの上面が受ける。このようにして、第二タンク210において、冷媒の気液分離が行われる。
【0097】
気液分離により得られた気相の冷媒は、第二上方空間210uから、第二連通口210cを介して第二下方空間210dに移動し、第二気相出口210ogから流出する。一方、気液分離により得られた液相の冷媒は、第二仕切り210aの第二傾斜部210aiを伝って流れ、第二連通口210cから第二下方空間210dへと滴下され、第二下方空間210dの底部において貯留される。貯留された液相の冷媒は、第二液相出口210olから流出する。
【0098】
第二気相出口210ogから流出した気相の冷媒は、第二気相流路211に流入する。その後、気相の冷媒は、第二連通路203bを介して第一圧縮段202aの吸込み口に吸入される。
【0099】
本実施の形態では、第二タンク210において、液相の冷媒は、第二仕切り210aの上面を伝って流れる。このようにすれば、液相の冷媒の表面積が大きい状態を維持しつつ液相の冷媒を移動させることができる。このため、本実施の形態によれば、沸騰現象を抑制し易い。このことは、第二連通路203bを介して第一圧縮段202aに吸い込まれるべき気相の冷媒に液滴が混入することを抑制し、これにより多段圧縮機202の性能を維持するのに適している。
【0100】
第二液相出口210olから流出した液相の冷媒は、第五流路225を流れる。次に、第二弁213において、液相の冷媒の流量が調整される。次に、液相の冷媒は、蒸発器201に流入する。
【0101】
[1-2-2.第二状態における動作]
冷凍サイクル装置200は、第二状態をとることができる。第二状態は、バイパス弁217の開度が相対的に大きい状態である。本実施の形態では、第二状態は、バイパス弁217の開度が全開である状態である。本実施の形態では、冷凍サイクル装置200は、小負荷時において、第二状態をとりうる。具体的には、冷凍サイクル装置200は、部分負荷時において、第二状態をとりうる。本実施の形態では、小負荷時において、蒸発器201における蒸発後の冷媒と凝縮器204における凝縮後の冷媒との温度差が小さく、多段圧縮機202の回転数が低く、多段圧縮機202における圧縮段間の差圧が小さい。部分負荷時とは、例えば、冷凍サイクル装置200の起動時、停止時等である。
【0102】
以下、第二状態にある冷凍サイクル装置200の動作について、説明する。なお、以下では、第一状態と同様の内容については、その説明を省略する。
【0103】
第二状態においても、第一状態と同様、第一液相出口207olから流出した液相の冷媒は、中間流路209に流入する。ただし、第二状態では、中間流路209に流入した冷媒は、中間流路209の途中でバイパス流路214に流入する。冷媒は、高位部209Hをバイパスするようにバイパス流路214を流れ、中間流路209に戻る。中間流路209及び/又はバイパス流路214において、液相の冷媒の一部は減圧により気化する。中間流路209及び/又はバイパス流路214を流れた冷媒は、第二タンク210に流入する。
【0104】
本実施の形態では、第一圧縮段202aの吸込み口は、第二連通路203b及び第二気相流路211を介して、第二タンク210の第二気相出口210ogに連通している。一方、第一圧縮段202aの吐出口は、第一連通路203a及び第一気相流路208を介して、第一タンク207の第一気相出口207ogに連通している。このため、多段圧縮機202における圧縮段間の差圧が小さく第一圧縮段202aの吸込み口と吐出口の間の差圧が小さい条件においては、第一タンク207の第一内部空間207sと第二タンク210の第二内部空間210sとの間も差圧が小さくなる。この場合、第一タンク207から第二タンク210へと冷媒をスムーズに流すことは難しいようにも思われる。
【0105】
しかしながら、本実施の形態では、第一タンク207は、第二タンク210よりも高い位置にある。具体的には、第一タンク207において貯留される液相の冷媒の液面が、第二タンク210において貯留される液相の冷媒の液面よりも高くなるように、第一タンク207の高さ及び第二タンク210の高さが設定されている。このようにして得られる第一タンク207と第二タンク210との間の水位ヘッド差により、第一タンク207から第二タンク210に流れる冷媒を加圧できる。このようにすれば、多段圧縮機202における圧縮段間の差圧が小さくても、第一タンク207から第二タンク210へと冷媒をスムーズに流すことができる。
【0106】
第一状態ではバイパス弁217の開度が相対的に小さいため中間流路209に冷媒が流れ易く、その中間流路209には高位部209Hが存在する。そのため、第一状態では、多段圧縮機202における圧縮段間の差圧が大きくても、第一タンク207に貯留される液相の冷媒が過度に少なくなることを防止できる。一方、第二状態では、バイパス弁217の開度が相対的に大きい。このため、多段圧縮機202における圧縮段間の差圧が小さくても、第一タンク207から第二タンク210に十分に冷媒を流すことができる。
【0107】
本実施の形態では、第一状態においてバイパス弁217の開度はゼロであり、一方、第二状態においてバイパス弁217の開度は全開である。ただし、第一状態においてバイパス弁217の開度が非ゼロであり、第二状態においてバイパス弁217の開度が非全開であってもよい。上述のとおり、一般的には、第一状態におけるバイパス弁217の開度は、第二状態におけるバイパス弁217の開度よりも小さいと説明できる。
【0108】
[1-3.効果等]
本発明者らは、常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する成分を主成分として含む気相冷媒を多段圧縮機によって圧縮することを検討した。この場合、凝縮器から蒸発器に向かって導かれる液相の冷媒の減圧により生成された気相の冷媒を多段圧縮機の圧縮段間の流路に導くことが考えられる。
【0109】
常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する成分を主成分として含む液相冷媒を減圧するとき、フルオロカーボン等の冷媒とは異なり、微小な圧力変化で大きな温度変化が生じ、膨張時には気相の冷媒が過多となりうる。例えば、冷媒が水であると、100Paの圧力損失で約1℃以上の温度変化が生じうる。また、沸騰により液体の水の体積の約14500倍の体積を有する水蒸気が発生しうる(甲藤 好朗著、「伝熱」第44巻No.187、社団法人日本伝熱学会、p.15-20、「沸騰の科学(2)」の(2)低圧沸騰を参照)。常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する成分は、このような特性を有するので、冷媒の減圧に伴い冷媒の体積の大半が気相冷媒によって占められるようになる。
【0110】
具体的には、本発明者らは、凝縮器よりも下流側かつ蒸発器よりも上流側に2つのタンクを設け、それらのタンクを用いて多段圧縮機の圧縮段間に導くべき気相の冷媒を生成するという構成を検討した。この構成においては、液相成分を含む冷媒がタンクに流入して膨張したとたんに、体積の大きい気相の冷媒が生成される。この際、液が膜となって気相の冷媒を包み、これにより泡が形成される。泡における気相の冷媒の体積が増加することにより、泡は最終的には破裂する。泡が破裂すると、微小な液滴が発生する。多段圧縮機の圧縮段間の流路には、多量の気相の冷媒と、液滴とが、温度平衡の状態で流入する。気相の冷媒とともに液滴が圧縮段に吸い込まれると、圧縮段においてエロージョンが生じうる。エロージョンは、多段圧縮機の性能を低下させうる。
【0111】
これを踏まえ、発明者らは、凝縮器から蒸発器に向かって導かれる液相成分を含む冷媒が減圧され、この減圧により液滴が生じる冷凍サイクル装置において、液滴が圧縮段間の流路に混入するのを抑制する技術について鋭意検討を重ねた。実施の形態の技術は、係る検討に基づいたものである。
【0112】
本実施の形態において、冷凍サイクル装置200は、常温において大気圧以下の飽和蒸気圧を有する成分を主成分として含む冷媒を用いる。冷凍サイクル装置200では、蒸発器201と、多段圧縮機202と、凝縮器204と、タンク207と、をこの順に備えている。多段圧縮機202は、第一圧縮段202aと、第二圧縮段202bと、を有している。タンク207は、仕切り207aと、上方空間207uと、下方空間207dと、連通口207cと、入口207iと、液相出口207olと、気相出口207ogと、を有している。上方空間207uは、仕切り207aよりも上方に位置している。下方空間207dは、仕切り207aよりも下方に位置している。連通口207cは、上方空間207uと下方空間207dとを連通させている。入口207iは、上方空間207uに開口している。液相出口207olは、下方空間207dに開口している。気相出口207ogは、下方空間207dに開口している。気相出口207ogは、液相出口207olよりも高い位置にある。蒸発器201と、第一圧縮段202aと、第二圧縮段202bと、凝縮器204と、入口207iと、上方空間207uと、連通口207cと、下方空間207dと、液相出口207olと、をこの順に冷媒が循環する。気相出口207ogから第二圧縮段202bへと気相の冷媒が流れる。この構成によれば、仕切り207aにより、気相の冷媒とともに液滴が上方空間207uから気相出口207ogへと移動するのを妨げることができる。このため、この構成は、多段圧縮機202の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。具体的には、この構成は、第二圧縮段202bに液滴が吸入されることを抑制するのに適している。液滴の吸入が抑制されることにより、第二圧縮段202bのエロージョンが抑制される。これにより、多段圧縮機202の性能低下が抑制され、冷凍サイクル装置200の能力が安定しうる。
【0113】
本実施の形態では、気液二相の冷媒が、入口207iから上方空間207uに流入する。上方空間207uにおいて、気液二相の冷媒が減圧されることにより液滴が生成され液滴を仕切り207aの上面が受けとめることによって、気液二相の冷媒が気液分離される。液相の冷媒が、仕切り207aの上面を伝って流れ連通口207cから滴下されることによって下方空間207dに貯留され、その後液相出口207olから流出する。気相の冷媒が、上方空間207uから、連通口207c及び下方空間207dをこの順に介して、気相出口207ogに移動する。
【0114】
タンク207を上方から観察したとき、気相出口207ogと入口207iとを結ぶ直線を第一直線207xと定義し、第一直線207xに直交し入口207iを通る直線を第二直線207yと定義する。このとき、本実施の形態では、タンク207を上方から観察したとき、第二直線207yに関し、気相出口207og及び連通口207cは、互いに反対側にある。この構成によれば、連通口207cを、気相出口207ogから遠い位置に設けることができる。このため、気相の冷媒とともに液滴が上方空間207uから連通口207c及び下方空間207dをこの順に介して気相出口207ogに移動するのを防止し易い。よって、この構成は、多段圧縮機202の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。具体的には、この構成は、第二圧縮段202bに液滴が吸入されることを抑制するのに適している。
【0115】
本実施の形態では、仕切り207aは、連通口207cに隣接する位置において、傾斜部207aiを含んでいる。傾斜部207aiの高さは、連通口207cに近づくにつれて減少している。この構成によれば、液相の冷媒が仕切り207aの上面を伝って連通口207cへとスムーズに流れやすい。また、この構成によれば、仕切り207aの上面を伝って連通口207cに到達した液相の冷媒が仕切り207aの下面を伝って気相出口207ogに移動するのを防止できる。このため、この構成は、多段圧縮機202の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。具体的には、この構成は、第二圧縮段202bに液滴が吸入されることを抑制するのに適している。この構成に基づく液滴吸入抑制作用は、気相出口207ogと連通口207cとの距離が確保されている場合に特に現れ易い。
【0116】
上述のとおり、タンク207を第一タンク207と称することができる。仕切り207aを第一仕切り207aと称することができる。上方空間207uを第一上方空間207uと称することができる。下方空間207dを第一下方空間207dと称することができる。連通口207cを第一連通口207cと称することができる。入口207iを第一入口207iと称することができる。液相出口207olを第一液相出口207olと称することができる。気相出口207ogを第一気相出口207ogと称することができる。
【0117】
本実施の形態では、冷凍サイクル装置200は、第二タンク210を備えている。多段圧縮機202は、第三圧縮段202cを有している。第二タンク210は、第二仕切り210aと、第二上方空間210uと、第二下方空間210dと、第二連通口210cと、第二入口210iと、第二液相出口210olと、第二気相出口210ogと、を有している。第二上方空間210uは、第二仕切り210aよりも上方に位置している。第二下方空間210dは、第二仕切り210aよりも下方に位置している。第二連通口210cは、第二上方空間210uと第二下方空間210dとを連通させている。第二入口210iは、第二上方空間210uに開口している。第二液相出口210olは、第二下方空間210dに開口している。第二気相出口210ogは、第二下方空間210dに開口している。第二気相出口210ogは、第二液相出口210olよりも高い位置にある。蒸発器201と、第三圧縮段202cと、第一圧縮段202aと、第二圧縮段202bと、凝縮器204と、第一入口207iと、第一上方空間207uと、第一連通口207cと、第一下方空間207dと、第一液相出口207olと、第二入口207iと、第二上方空間210uと、第二連通口210cと、第二下方空間210dと、第二液相出口210olと、をこの順に冷媒が循環する。第二気相出口210ogから第一圧縮段202aへと気相の冷媒が流れる。この構成は、多段圧縮機202の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。具体的には、この構成は、第一圧縮段202aに液滴が吸入されることを抑制するのに適している。
【0118】
本実施の形態では、気液二相の冷媒が、第二入口210iから第二上方空間210uに流入する。第二上方空間210uにおいて、気液二相の冷媒が減圧されることにより液滴が生成され液滴を第二仕切り210aの上面が受けとめることによって、気液二相の冷媒が気液分離される。液相の冷媒が、第二仕切り210aの上面を伝って流れ第二連通口210cから滴下されることによって第二下方空間210dに貯留され、その後第二液相出口210olから流出する。気相の冷媒が、第二上方空間210uから、第二連通口210c及び第二下方空間210dをこの順に介して、第二気相出口210ogに移動する。
【0119】
第二タンク210を上方から観察したとき、第二気相出口210ogと第二入口210iとを結ぶ直線を第三直線210xと定義し、第三直線210xに直交し第二入口210iを通る直線を第四直線210yと定義する。このとき、本実施の形態では、第二タンク210を上方から観察したとき、第四直線210yに関し、第二気相出口210og及び第二連通口210cは、互いに反対側にある。この構成によれば、第二連通口210cを、第二気相出口210ogから遠い位置に設けることができる。このため、気相の冷媒とともに液滴が第二上方空間210uから第二連通口210c及び第二下方空間210dをこの順に介して第二気相出口210ogに移動するのを防止し易い。よって、この構成は、多段圧縮機202の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。具体的には、この構成は、第一圧縮段202aに液滴が吸入されることを抑制するのに適している。
【0120】
本実施の形態では、第二仕切り210aは、第二連通口210cに隣接する位置において、第二傾斜部210aiを含んでいる。第二傾斜部210aiの高さは、第二連通口210cに近づくにつれて減少している。この構成によれば、液相の冷媒が第二仕切り210aの上面を伝って第二連通口210cへとスムーズに流れやすい。また、この構成によれば、第二仕切り210aの上面を伝って第二連通口210cに到達した液相の冷媒が第二仕切り210aの下面を伝って第二気相出口210ogに移動するのを防止できる。このため、この構成は、多段圧縮機202の圧縮過程に液滴が吸入されることを抑制するのに適している。具体的には、この構成は、第一圧縮段202aに液滴が吸入されることを抑制するのに適している。この構成に基づく液滴吸入抑制作用は、第二気相出口210ogと第二連通口210cとの距離が確保されている場合に特に現れ易い。
【0121】
本実施の形態では、冷凍サイクル装置200は、中間流路209を備えている。中間流路209は、第一液相出口207olと第二入口210iとを接続している。中間流路209は、低位部209Lと、高位部209Hと、を有している。高位部209Hは、低位部209Lよりも高い位置にある。第一液相出口207olと、低位部209Lと、高位部209Hと、第二入口210iと、をこの順に冷媒が流れる。この構成によれば、第一液相出口207olから中間流路209を介して第二入口210i液相成分を含む冷媒が流れる場合において、低位部209Lと高位部209Hとの間の水位ヘッド差により、冷媒の流れを制限できる。このため、第一タンク207が液相の冷媒を実質的に貯留していない状態になり難い。このため、第一圧縮段202aから吐出された気相の冷媒が、第一タンク207の第一気相出口207og、第一下方空間207d、第一液相出口207ol、中間流路209、第二タンク210の第二入口210i、第二上方空間210u、第二連通口210c、第二下方空間210d及び第二気相出口210ogをこの順に通って第一圧縮段202aに戻ってくるというループが形成され難い。このため、多段圧縮機202の性能を確保し易い。
【0122】
本実施の形態では、冷凍サイクル装置200は、バイパス流路214と、バイパス弁217と、を備えている。バイパス流路214は、高位部209Hよりも低い位置において延びている。バイパス弁217は、バイパス流路214に設けられている。バイパス弁217の開度がゼロよりも大きい状態において、高位部209Hをバイパスして、第一液相出口207olと、バイパス流路214と、第二入口210iと、をこの順に冷媒が流れる。この構成によれば、多段圧縮機202の圧縮段間の差圧が小さい小負荷条件でも、該差圧が大きい大負荷条件でも、バイパス弁217の開度を調整することにより、冷凍サイクル装置200を適切に動作させることができる。
【0123】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、書き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示に係る冷凍サイクル装置の技術によれば、多段圧縮機の圧縮段間に水滴が流入するのが抑制され、多段圧縮機の性能を維持することが可能になる。この技術は、冷凍サイクル装置を用いた空気調和装置、チラー、蓄熱装置等の用途にも適用可能できる。
【符号の説明】
【0125】
100 冷凍サイクル装置
101 蒸発器
102 多段圧縮機
102a 第一圧縮段
102b 第二圧縮段
103 凝縮器
104a 第一膨張弁
104b 第二膨張弁
105 エコノマイザ熱交換器
106a 第一流路
106b 第二流路
200 冷凍サイクル装置
201 蒸発器
202 多段圧縮機
202a 第一圧縮段
202b 第二圧縮段
202c 第三圧縮段
203a 第一連通路
203b 第二連通路
204 凝縮器
205 第一弁
207 第一タンク
207a 第一仕切り
207ai 第一傾斜部
207s 第一内部空間
207u 第一上方空間
207d 第一下方空間
207c 第一連通口
207bw 第一底壁
207sw 第一側壁
207cw 第一天井壁
207i 第一入口
207ol 第一液相出口
207og 第一気相出口
207x 第一直線
207y 第二直線
208 第一気相流路
209 中間流路
209L 低位部
209H 高位部
210 第二タンク
210a 第二仕切り
210ai 第二傾斜部
210s 第二内部空間
210u 第二上方空間
210d 第二下方空間
210c 第二連通口
210bw 第二底壁
210sw 第二側壁
210cw 第二天井壁
210i 第二入口
210ol 第二液相出口
210og 第二気相出口
210x 第三直線
210y 第四直線
211 第二気相流路
213 第二弁
214 バイパス流路
217 バイパス弁
221 第一流路
222 第二流路
223 第三流路
224 第四流路
225 第五流路