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  • 特許-エレベーター及び乗り場ドア 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】エレベーター及び乗り場ドア
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/30 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B66B13/30 P
B66B13/30 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020086057
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178727
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石垣 遼悟
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222414(JP,A)
【文献】特開2007-153500(JP,A)
【文献】特開2016-153328(JP,A)
【文献】特開2017-105561(JP,A)
【文献】特開2018-104137(JP,A)
【文献】特開2002-220181(JP,A)
【文献】特開平8-245142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物における乗りかごが停止する乗降場の出入り口の上下方向の上部に設置される上枠と、
前記上枠に移動可能に支持されるドアハンガーと、
前記ドアハンガーに取り付けられる乗り場ドアと、を備え、
前記乗り場ドアは、
前記出入り口を開閉可能に覆うドアパネルと、
前記ドアパネルの上下方向の上端部に設けられ、予め前記ドアパネルと一体に形成されたトップフックと、
前記ドアパネルの上下方向の上端部に固定される上部梁と、を有し、
前記トップフックにおける上下方向の下方に向けて突出するフック部は、前記上枠における上下方向の上方に向けて突出する折返し部と、所定の間隔を空けて対向し、
前記上部梁には、前記ドアハンガーが固定される固定孔と、工具が挿入可能な開口部と、が形成されている
エレベーター。
【請求項2】
前記トップフックは、前記ドアパネルの上端部を折り曲げることで形成される
請求項1に記載のエレベーター。
【請求項3】
前記トップフックは、前記ドアパネルの意匠面となる正面部の上端部から垂直に屈曲する接続部を有し、
前記フック部は、前記接続部における前記正面部とは反対側の端部から上下方向の下方に向けて屈曲し、
前記折返し部は、前記正面部と前記フック部との間に配置される
請求項1に記載のエレベーター。
【請求項4】
前記フック部と前記正面部との間隔は、前記折返し部と前記正面部との間隔と、前記折返し部と前記フック部との間隔と、前記折返し部の板厚を足した長さに設定される
請求項3に記載のエレベーター。
【請求項5】
建築構造物における乗りかごが停止する乗降場の出入り口に開閉可能に設けられる乗り場ドアにおいて、
前記出入り口を開閉可能に覆うドアパネルと、
前記ドアパネルの上下方向の上端部に設けられ、予め前記ドアパネルと一体に形成されたトップフックと、
前記ドアパネルの上下方向の上端部に固定される上部梁と、を有し、
前記トップフックにおける上下方向の下方に向けて突出するフック部は、前記出入り口の上下方向の上部に設置された上枠における上下方向の上方に向けて突出する折返し部と、間隔を空けて対向し、
前記上部梁には、ドアハンガーが固定される固定孔と、工具が挿入可能な開口部と、が形成されている
乗り場ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター及び乗り場ドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のエレベーターでは、火災時に乗り場からの炎が乗り場ドアを介して昇降路に進入することを防ぐことが求められている。このようなエレベーターの耐火性能を向上させるための技術としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、乗場ドアとハンガーの間に複数の遮へい板を設けた技術が記載されている。そして、特許文献1に記載された技術では、乗場ドアと遮へい板の間に隙間を形成し遮へい板の少なくとも一つは、下方に向かって立上った立設部を有し上枠の立設部と遮へい板の立設部により相じゃくり構造を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-153328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、トップフックを示す遮へい板とドアパネルが別部品として構成されていた。そして、トップフックは、ドアパネルをドアハンガーに固定する際に、ドアパネルと共にドアハンガーに固定していた。そのため、特許文献1に記載された技術では、ドアパネルの傾きの調整を行いながら、トップフックの寸法調整も行う必要があり、ドアパネル及びトップフックの設置作業が大変煩雑なものとなっていた。
【0006】
本目的は、上記の問題点を考慮し、ドアパネル及びトップフックを容易に設置することができるエレベーター及び乗り場ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本目的を達成するため、エレベーターは、建築構造物における乗りかごが停止する乗降場の出入り口の上下方向の上部に設置される上枠と、上枠に移動可能に支持されるドアハンガーと、ドアハンガーに取り付けられる乗り場ドアと、を備えている。乗り場ドアは、出入り口を開閉可能に覆うドアパネルと、ドアパネルの上下方向の上端部に設けられ、予めドアパネルと一体に形成されたトップフックと、を有している。トップフックにおける上下方向の下方に向けて突出するフック部は、上枠における上下方向の上方に向けて突出する折返し部と、所定の間隔を空けて対向する。
【0008】
また、乗り場ドアは、上述した乗り場ドアが適用される。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のエレベーター及び乗り場ドアによれば、ドアパネル及びトップフックを容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態例にかかるエレベーターを示す概略構成図である。
図2】実施の形態例にかかる乗り場ドアを昇降路側から見た正面図である。
図3図2に示すB-B線断面図である。
図4】実施の形態例にかかる乗り場ドアを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態例にかかるエレベーター及び乗り場ドアにいて、図1図4を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
1.実施の形態例
1-1.エレベーターの構成
まず、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるエレベーターの構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本例のエレベーターの構成例を示す概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、本例のエレベーター1は、建築構造物200内に形成された昇降路110内を昇降動作する。エレベーター1は、人や荷物を載せる乗りかご120と、ロープ130と、釣合錘140と、巻上機100とを備える。昇降路110は、建築構造物200内に形成され、その頂部には機械室160が設けられている。
【0014】
巻上機100は、機械室160に配置されている。巻上機100の近傍には、反らせ車150が設けられている。そして、巻上機100には、ロープ130が巻き掛けられ、反らせ車150には、ロープ130が装架される。
【0015】
ロープ130の一端には、乗りかご120が接続されている。また、ロープ130の他端には、釣合錘140が接続されている。そして、乗りかご120は、ロープ130を介して釣合錘140に連結されている。そして、巻上機100が駆動することで、乗りかご120及び釣合錘140が互いに反対方向に昇降路110内を昇降する。
【0016】
建築構造物200の各階における乗りかご120が停止する乗り場201には、人や物が乗りかご120へ出入りするための出入り口202が設けられている。この出入り口202には、乗り場ドア210、乗り場側ドアユニット212及び乗り場側ドアシル213が設けられている。
【0017】
1-2.乗り場ドア及び乗り場側ドアユニットの構成例
次に、乗り場ドア210及び乗り場側ドアユニット212について図2から図4を参照して説明する。
図2は、乗り場ドア210を昇降路110側から見た正面図である。図3図2に示すB-B線断面図である。
【0018】
図2に示すように、出入り口202の上下方向の上端部には、乗り場側ドアユニット212が設けられている。また、出入り口202の上下方向の下端部には、乗り場側ドアシル213が設けられている。乗り場側ドアシル213は、乗り場ドア210の開閉方向に沿って延在している。
【0019】
乗り場ドア210は、乗り場側ドアユニット212と、乗り場側ドアシル213に開閉可能に支持されている。乗り場ドア210乗りかご120が停止した際に、乗りかご120に設けられたかご側ドア123(図1参照)と対向する。そして、乗り場ドア210は、かご側ドア123と共に開閉する。
【0020】
乗り場側ドアユニット212は、上枠221と、ドアレール222と、ドアハンガー223と、不図示の伝達ベルト等を有している。上枠221は、出入り口202の上端部に固定されている。図3に示すように、上枠221における上下方向の下端部には、折返し部221aが形成されている。折返し部221aは、上枠221の下端部において昇降路110側の端部に形成されている。折返し部221aは、上枠221の下端部から略垂直に屈曲している。そして、折返し部221aは、上下方向の上方に向けて突出している。
【0021】
ドアレール222は、上枠221に固定されている。ドアレール222は、乗り場ドア210の開閉方向に沿って延在している。ドアハンガー223には、移動ローラ224が回転可能に設けられている。移動ローラ224は、ドアレール222に摺動可能に係合する。このドアハンガー223には、乗り場ドア210が固定ボルト50を用いて固定される。
【0022】
図4は、乗り場ドア210を示す分解斜視図である。
図4に示すように、乗り場ドア210は、略平板状のドアパネル10と、ドアパネル10と一体に形成されたトップフック11と、上部梁12と、下部梁13と、スライダ14(図2及び図3参照)とを有している。
【0023】
ドアパネル10及びトップフック11は、略平板状の部材を折り曲げることで形成されている。ドアパネル10は、意匠面となる正面部10aと、2つの側面部10b、10bとを有している。ドアパネル10の正面部10aが出入り口202を開閉可能に覆う。
【0024】
側面部10bは、正面部10aにおける開閉方向である幅方向の両端部から略垂直に屈曲している。正面部10aにおける昇降路110側の面には、補強部材や断熱部材が配置される。
【0025】
また、正面部10aにおける上下方向の上端部には、上部梁12が固定される。上部梁12には、正面部10aにおける昇降路110側の一面に固定される。また、上部梁12は、断面形状がコの字型の部材である。上部梁12には、固定孔12aと、開口部12bが形成されている。
【0026】
固定孔12aは、上下方向と直交し、かつ開閉方向とも直交する対向方向に伸びる長孔である。固定孔12aには、固定ボルト50が螺合する。開口部12bは、固定孔12aの近傍に形成されている。そして、開口部12bには、乗り場ドア210をドアハンガー223に固定する際に、工具が挿入される。
【0027】
さらに、正面部10aにおける上下方向の下端部には、下部梁13が固定される。下部梁13は、上部梁12と同様に、正面部10aにおける昇降路110側の一面に固定される。この下部梁13には、スライダ14が取り付けられる。図3に示すように、スライダ14は、乗り場側ドアシル213に設けたガイド溝213aに摺動可能に挿入される。
【0028】
さらに、正面部10aにおける上下方向の上端部には、トップフック11が連続して形成されている。トップフック11は、ドアパネル10における正面部10aの上端部を折り曲げることで形成されている。トップフック11は、接続部11aと、フック部11bとを有している。
【0029】
接続部11aは、正面部10aの上端部から乗り場側ドアユニット212に向けて略垂直に屈曲している。また、フック部11bは、接続部11aにおける正面部10aとは反対側の端部に形成されている。フック部11bは、接続部11aから略垂直に屈曲している。そして、フック部11bは、接続部11aから上下方向の下方に向けて突出する。
【0030】
フック部11bは、上枠221の下端部に挿入されて、折返し部221aと所定の間隔L3を空けて対向する。そして、折返し部221aは、トップフック11のフック部11bとドアパネル10の正面部10aとの間に配置される。すなわち、トップフック11と上枠221により相じゃくり構造が形成される。トップフック11と上枠221が相じゃくり構造を構成することで、火災時に乗り場201からの炎や熱風が、乗り場ドア210を介して昇降路110側に進入することを防ぐことができる。
【0031】
フック部11bにおけるドアパネル10の正面部10aとの間隔L1は、予め所定の長さに設定される。フック部11bと正面部10aとの間隔L1は、予め規定された正面部10aと折返し部221aとの間隔L2及び折返し部221aとフック部11bとの間隔L3と、折返し部221aの板厚を足した長さである。
【0032】
また、上述した構成を有するトップフック11は、ドアパネル10を製造する際に、略平板状の部材を折り曲げることでドアパネル10と一体に形成される。
【0033】
2.乗り場ドアの設置作業例
次に、上述した構成を有する乗り場ドア210の設置作業例について説明する。
なお、ドアハンガー223は、予めドアレール222に移動可能に支持されている。まず、作業者は、乗り場ドア210のトップフック11を上枠221の折返し部221aに引っ掛けると共に、スライダ14を乗り場側ドアシル213のガイド溝213aに挿入する。このとき、折返し部221aは、トップフック11のフック部11bとドアパネル10の正面部10aとの間に配置される。
【0034】
次に、乗り場ドア210の正面部10aと上枠221の折返し部221aとの間隔L2が予め規定された長さとなるように、乗り場ドア210の設置位置を調整する。そして、乗り場ドア210を、固定ボルト50を介してドアハンガー223に固定する。なお、上部梁12に開口部12bを設けたことで、開口部12bから工具を挿入することができ、固定ボルト50の締結作業を容易に行うことができる。
【0035】
また、上述したように、フック部11bと正面部10aとの間隔L1は、予め規定された正面部10aと折返し部221aとの間隔L2及び折返し部221aとフック部11bとの間隔L3と、折返し部221aの板厚を足した長さに設定されている。そのため、正面部10aと上枠221の折返し部221aとの間隔L2を調整することで、折返し部221aとフック部11bとの間隔L3が予め規定された長さに自動的に調整される。
【0036】
これにより、乗り場ドア210の傾き調整及びトップフック11の寸法調整を容易に行うことができ、乗り場ドア210の設置作業にかかる時間の短縮を図ることができると共に設置作業の簡略化も図ることができる。また、トップフック11を上枠221に一時的に引っ掛けることで、設置作業中に、乗り場ドア210が倒れることを防止することができる。
【0037】
また、耐火用の乗り場ドア210は、耐火及び断熱効果を高めるために、補強リブや断熱材等が設置され、通常の乗り場ドアよりも重量が重くなっている。そのため、従来技術では、乗り場ドア210を設置するために、作業者が乗り場ドア210を支える必要があった。これに対して、本例の乗り場ドア210によれば、トップフック11を上枠221に一時的に引っ掛けることで、設置作業時に、作業者が乗り場ドア210を支える必要がなくなり、作業にかかる人員の削減を図ることができる。
【0038】
トップフック11を折り曲げてドアパネル10と一体に形成することで、乗り場ドア210の部品点数を削減することができ、乗り場ドア210の製造を容易に行うことができる。なお、トップフック11を折り曲げることでドアパネル10を一体に形成する例を説明したが、これに限定されるものではない。乗り場ドア210を製造する際に、トップフック11をドアパネル10の上端部に、リベットや溶接によって固定してもよい。このように、乗り場ドア210を設置する前に、トップフック11とドアパネル10を一体に形成することで、乗り場ドア210の設置作業を容易に行うことができる。
【0039】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0040】
上述した実施の形態例では、昇降路110の上部に機械室160を有するエレベーターを適用した例を説明したが、昇降路110の内部に機械室160を有さない機械室レスエレベーターにも適用できるものである。
【0041】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…エレベーター、 10…ドアパネル、 10a…正面部、 10b…側面部、 11…トップフック、 11a…接続部、 11b…フック部、 12…上部梁、 12a…固定孔、 12b…開口部、 13…下部梁、 14…スライダ、 50…固定ボルト、 110…昇降路、 120…乗りかご、 123…かご側ドア、 130…ロープ、 200…建築構造物、 201…乗り場、 202…出入り口、 210…乗り場ドア、 212…乗り場側ドアユニット、 213…乗り場側ドアシル、 213a…ガイド溝、 221…上枠、 221a…折返し部、 222…ドアレール、 223…ドアハンガー、 224…移動ローラ、 L1、L2、L3…間隔
図1
図2
図3
図4