(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ナノファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
D01D 5/26 20060101AFI20240806BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20240806BHJP
D01D 5/04 20060101ALI20240806BHJP
D06H 7/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240806BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240806BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240806BHJP
A61Q 19/00 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
D01D5/26
D04H1/4382
D01D5/04
D06H7/00
A61K8/81
A61K8/85
A61K47/34
A61K47/32
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020118796
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019133558
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 淳二
(72)【発明者】
【氏名】甘利 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】東城 武彦
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-114560(JP,A)
【文献】特開2007-191849(JP,A)
【文献】特開2007-154007(JP,A)
【文献】特開2014-034739(JP,A)
【文献】特開2008-285793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0302119(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00-13/02
D04H1/00-18/04
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維からなるナノファイバを含む繊維堆積シートから
、平面視の面積が0.25mm
2
以上2500mm
2
以下である細片を得、
前記細片に剪断力を加えて該細片を解繊するとともに該細片を構成するナノファイバを切断して短繊維化する工程を有し、
前記繊維堆積シートとして坪量が3g/m
2以上55g/m
2以下であるものを用い
、
前記細片の前記解繊及び前記ナノファイバの前記短繊維化を湿式で行う、ナノファイバの製造方法。
【請求項2】
前記ナノファイバの構成樹脂が、ポリエステル及びアクリル樹脂から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
電界紡糸法によって製造された前記ナノファイバの堆積物を圧密化して得られた密度0.05g/cm
3以上0.3g/cm
3以下の前記繊維堆積シートから前記細片を得る、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記短繊維化されたナノファイバの繊維長の変動係数は、40%以上100%以下である請求項1ないし
3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
連続繊維からなるナノファイバを含む繊維堆積シートから
、平面視の面積が0.25mm
2
以上2500mm
2
以下である細片を得、
前記細片に剪断力を加えて該細片を解繊するとともに該細片を構成するナノファイバを切断して短繊維化し、
短繊維化された前記ナノファイバと流動体とを混合する工程を有
し、
前記繊維堆積シートとして坪量が3g/m
2
以上55g/m
2
以下であるものを用い、
前記細片の前記解繊及び前記ナノファイバの前記短繊維化を湿式で行う、短繊維含有流動体の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の製造方法で得られた短繊維化された前記ナノファイバと流動体とを混合する工程を有する短繊維含有流動体の製造方法。
【請求項7】
前記流動体が、ヒトの身体に施用可能な生理学的安全性を有する乳化液からなる請求項
5又は
6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界紡糸法は、ナノサイズの直径の繊維を簡便に製造できる技術として注目を浴びている。一般的に、電界紡糸法では、原料樹脂液を吐出するためのノズルと、ノズルから所定距離を隔てた位置に対向して設置された捕集用電極との間に高電圧を印加した状態下に原料樹脂液を吐出する。ノズルから吐出された原料樹脂液は、クーロン力で延伸されながら冷却固化することによって、より細径の繊維が形成されるものである。この方法で製造される繊維は原理上、無限長を有する連続繊維からなる。
【0003】
ところでナノファイバはその微細な繊維径を利用して様々な分野への応用が期待されている。ナノファイバを利用する場合には、紡糸されたままの状態、すなわち連続繊維の状態で利用する場合と、該連続繊維を短繊維化した状態で利用する場合とが考えられる。ナノファイバを短繊維化した状態で利用するためには、紡糸されたままの状態である連続繊維を切断する作業が必要となる。そこで特許文献1には、電界紡糸法によって製造されたナノファイバの不織布を水中に分散させ、該不織布に超音波を照射することでナノファイバを粉砕し、極短繊維含有水溶液を得る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で採用している超音波の照射によるナノファイバの短繊維化は、エネルギー効率が高いとはいえない。したがって同文献に記載の方法は工業的に大量のナノファイバを処理することに適していない。また同文献には、どのような坪量や面積のナノファイバの不織布を超音波の照射に付しているのかが不明であるところ、不織布の坪量や面積によっては、短繊維化の効率が低下したり、不織布の取り扱い性が悪くなったりすることがある。したがって本発明の課題は、ナノファイバを工業的に容易に短繊維化し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、連続繊維からなるナノファイバを含む繊維堆積シートから細片を得、
前記細片に剪断力を加えて該細片を解繊するとともに該細片を構成するナノファイバを切断して短繊維化する工程を有し、
前記繊維堆積シートとして坪量が3g/m2以上55g/m2以下であるものを用いる、ナノファイバの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、ナノファイバを工業的に容易に短繊維化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の製造方法を実施するための装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の製造方法を実施するための別の装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の製造方法を実施するために好適に用いられる装置が模式的に示されている。同図に示す装置1は、ナノファイバの原反を細片化する細片化部10、細片化された原反を解繊し且つ短繊維化する短繊維化部20、流動体を調製する調製部30、及び短繊維化したナノファイバと流動体とを混合する混合部40を備えている。
【0010】
細片化部10においては、ナノファイバの原反11が供給される。原反11は、オフラインで製造されたものであってもよく、あるいはインラインで製造されたものであってもよい。原反11は、好適には電界紡糸法によって製造されたものであり、原理上連続繊維であるナノファイバの堆積物からなる。電界紡糸法は、溶液法と溶融法とに大別される。溶液法では、繊維の原料となる各種のポリマーを、該ポリマーの溶解が可能な溶媒に溶解させて溶液となし、該溶液を吐出して繊維を形成する。溶融法では、熱可塑性ポリマーをその融点以上に加熱して溶融液となし、該溶融液を吐出して繊維を形成する。本製造方法では、溶液法及び溶融法のいずれで製造された原反であっても使用できる。
【0011】
本発明においてナノファイバとは、繊維径を円相当直径で表したときに、その繊維径が好ましくは0.1μm以上であり、更に好ましくは0.25μm以上であり、また好ましくは6μm以下であり、一層好ましくは4μm以下であり、更に好ましくは3μm以下であり、更に一層好ましくは2μm以下である繊維のことである。ナノファイバの繊維径は、例えば走査型電子顕微鏡観察による二次元画像から繊維の塊、繊維の交差部分、ポリマー液滴といった欠陥を除いた繊維を任意に300本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引いたときの横断長を測定し、これらの算術平均値とする。
【0012】
原反11が溶液法又は溶融法のいずれで製造された場合であっても、原反11を構成するナノファイバは原理上無限長である。また、原反11を構成するナノファイバは、その交点において結合しておらず、堆積のみによって原反11としての形態を維持している。換言すれば原反11は繊維堆積シートから形成されている。ナノファイバがその交点において結合していないとは、ナノファイバを構成する樹脂が溶融・固化することで、ナノファイバどうしが融着している状態や、接着剤によってナノファイバどうしが接合している状態を排除する趣旨である。尤も、ナノファイバのすべての交点においてナノファイバどうしが結合していないことは要せず、複数あるナノファイバの交点のうちの少数の交点が不可避的に結合していることは許容される。例えば、ナノファイバの交点を100箇所観察したときに、10箇所又はそれ以下の交点が結合していることは許容される。
【0013】
原反11は細片化部10において細片化される。細片化とは、原反11をそれよりも小さな切片の状態にすることである。原反11から形成された細片13のサイズは、その面積で表して0.25mm2以上であることが好ましく、1mm2以上であることが更に好ましく、9mm2以上であることが一層好ましく、25mm2以上であることが更に一層好ましい。また、面積は2500mm2以下であることが好ましく、1600mm2以下であることが更に好ましく、400mm2以下であることが一層好ましい。具体的には、細片13は、平面視の面積が好ましくは0.25mm2以上2500mm2以下であり、更に好ましくは1mm2以上2500mm2以下であり、一層好ましくは9mm2以上1600mm2以下であり、更に一層好ましくは25mm2以上400mm2以下である。細片13の面積をこの範囲内に設定することで、後述する短繊維化部20でのナノファイバの短繊維化を首尾よく行うことができる。この面積は10個以上の細片の面積の平均値である。
【0014】
原反11から形成された細片13の面積が上述の範囲であることに加えて、細片13はその最大長さが0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることが更に好ましく、3mm以上であることが一層好ましく、5mm以上であることが更に一層好ましい。また、最大長さは50mm以下であることが好ましく、40mm以下であることが更に好ましく、20mm以下であることが一層好ましい。細片13の最大長さをこの範囲に設定することで、短繊維化部20でのナノファイバの短繊維化を一層首尾よく行うことができる。細片13の最大長さとは、細片13を平面視したときの最大横断長のことであり、50個以上の測定結果の平均値である。
【0015】
原反11の細片化は種々の方法で行うことができる。例えば
図1に示すとおりカッター14を用いて原反11を切断することで細片13を得ることができる。この場合、原反11の搬送方向及びそれに直交する方向に沿って原反11を切断することで、矩形の細片13を得ることができる。そのような切断が可能なカッターの構造は公知である。
【0016】
原反11の細片化を粉砕によって行うこともできる。粉砕には、例えば液媒体を用いたメディア粉砕機、メディアレス粉砕機を用いた湿式粉砕機などの公知の装置を用いることができる。
【0017】
本発明においては、原反11の細片化の方法によらず、細片化に付す原反11として坪量が調整されたものを用いることが好ましい。細片化に付す原反11の坪量は、細片化のための原反11の取り扱い性の向上の観点、及び後述する短繊維化部20での短繊維化されたナノファイバの製造性の観点から、3g/m2以上であることが好ましく、原反11の製造性の観点から5g/m2以上であることが更に好ましく、原反11の製造性をより向上させる観点から7g/m2以上であることが一層好ましい。また、細片化に付す原反11の坪量は、同様の観点から55g/m2以下であることが好ましく、更に同様の観点から50g/m2以下であることが更に好ましく、40g/m2以下であることが一層好ましく、原反11の製造性の観点から30g/m2以下であることが一層好ましい。具体的には、細片化に付す原反11の坪量は、3g/m2以上55g/m2以下であることが好ましく、3g/m2以上50g/m2以下であることが更に好ましく、5g/m2以上40g/m2以下であることが一層好ましく、7g/m2以上30g/m2以下であることが更に一層好ましい。
【0018】
原反11を細片化するのに先立ち、該原反を圧密化することが好ましい。圧密化は、例えば
図1に示すとおり、ナノファイバの堆積物からなる原反11を、周面が平滑な一対のプレスロール12,12間に通して押圧することで達成することができる。ナノファイバの堆積物を圧密化して原反11となすことで、該原反の取り扱い性が一層向上する。この観点から、一対のロール12,12によるプレスの程度を調整して、原反11の密度を好ましくは0.08g/cm
3以上、更に好ましくは0.1g/cm
3以上に高める。また、原反11の密度を好ましくは0.25g/cm
3以下、更に好ましくは0.2g/cm
3以下とする。原反11の密度は、原反11の坪量及び厚みから算出される。厚みは40N/m
2の荷重下で測定される。
【0019】
このようにして原反11の細片13が得られたら、該細片13を短繊維化部20に供給する。短繊維化部20においては、細片13が解繊されて一本一本のナノファイバにほぐされるとともに、細片13を構成するナノファイバ(このナノファイバは連続繊維ではなく、ある程度の長さに既に切断された状態になっている。)が短繊維化される。この操作は湿式で行うことができる。
【0020】
細片13の解繊及びナノファイバの短繊維化を湿式で行う場合には、本製造方法は細片13を分散媒に投入する工程を備え、細片13を分散媒に分散させて分散液21となした状態下に、該分散液21に剪断力を加える。なお、「分散媒に投入する」とは、既に細片13が投入された分散液21に投入する場合も含む。また、この場合、分散液21を得てから剪断力を加えてもよいし、剪断力を加えながら細片13を分散媒又は分散液に投入してもよい。この目的のために、例えば
図1に示すとおり、分散液21をタンク22内に貯留し、該分散液21を撹拌翼等の撹拌手段23によって撹拌することで、該分散液21に剪断力を加える。分散液21に剪断力が加わることで、該分散液21に含まれる細片13の解繊が起こり、一本一本の繊維へとほぐれる。これと同時にほぐれた繊維が剪断力によって切断されて短繊維化が起こる。
【0021】
細片13の解繊を湿式で行う場合、細片13の使用量は、細片13と分散媒との混合物を100質量%としたとき、好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.002質量部以上、一層好ましくは0.004質量%以上とする。また、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、一層好ましくは5質量%以下とする。具体的には、細片13と分散媒との混合物を100質量%としたとき、細片の質量比は、好ましくは0.001質量%以上10質量%以下、更に好ましくは0.002質量%以上7質量%以下、一層好ましくは0.004質量%以上5質量%以下とする。このような割合で細片13及び分散媒を用いることで、細片13の解繊を一層首尾よく行うことができるとともに、細片13を構成するナノファイバの短繊維化を一層首尾よく行うことができる。
【0022】
細片13及び分散媒を含む分散液21に加える剪断力は、細片13の解繊が十分に行われ、且つナノファイバの短繊維化が十分に行われるように調整される。分散液21に加える剪断力は、該剪断速度の尺度としてディスパー翼(翼の直径40mm)を用いた場合、その値が52[s-1]以上であることが好ましく、78[s-1]以上であることが更に好ましく、104[s-1]以上であることが一層好ましい。また、523[s-1]以下であることが好ましく、471[s-1]以下であることが更に好ましく、418[s-1]以下であることが一層好ましい。
【0023】
分散液21に剪断力が加わることで該分散液21は乱流状態となる。この乱流状態下に細片13の解繊及びナノファイバの短繊維化が起こる。このことに起因して短繊維化されたナノファイバは、その長さがまちまちとなり、繊維長の分布がブロードになりやすくなる。短繊維化されたナノファイバの繊維長の分布の程度を変動係数(以下、「CV値」ともいう。)で表した場合、該CV値は、40%以上であることが好ましく、42%以上であることが更に好ましく、45%以上であることが一層好ましい。またCV値は、100%以下であることが好ましく、95%以下であることが更に好ましく、90%以下であることが一層好ましい。具体的にはCV値は、40%以上100%以下であることが好ましく、42%以上95%以下であることが更に好ましく、45%以上90%以下であることが一層好ましい。CV値は、後述する方法で繊維長を測定し、測定結果から算出する。具体的には、CV値は(測定した繊維の長さの標準偏差)/(平均繊維長)×100[%]で求まる値である。
【0024】
細片13を解繊する場合、すべての細片13が一本一本のナノファイバにほぐされていることは要せず、短繊維化後のナノファイバが用いられる場面において不都合が生じない程度に一部未解繊の細片13が残存していることは許容される。
【0025】
細片13に剪断力を加えることでナノファイバを短繊維化する程度は、短繊維化後のナノファイバの具体的な用途に応じて適切に調整すればよい。例えば短繊維化後のナノファイバを、クリーム、ゲル、乳液等の流動体に添加して、該流動体の性質を変化させたい場合には、短繊維化後のナノファイバの平均繊維長を20μm以上とすることが好ましく、30μm以上とすることが更に好ましく、40μm以上とすることが一層好ましい。また短繊維化後のナノファイバの平均繊維長を300μm以下とすることが好ましく、250μm以下とすることが更に好ましく、200μm以下とすることが一層好ましい。具体的には、短繊維化後のナノファイバの平均繊維長を20μmm以上300μm以下とすることが好ましく、30μm以上250μm以下とすることが更に好ましく、40μm以上200μm以下とすることが一層好ましい。ナノファイバの平均繊維長は、例えば走査型電子顕微鏡観察によって、繊維の長さに応じて250倍ないし750倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(例えば、繊維の塊、繊維の交差部分)を除いた繊維を任意に100本選び出し、繊維の長手方向に線を引き繊維長を直接読み取ることで測定され、10本以上の測定結果の相加平均値である。
【0026】
細片13の解繊を湿式で行う場合に用いられる分散媒としては、細片13を構成するナノファイバの構成樹脂に対する貧溶媒を用いることが好ましい。例えばナノファイバの構成樹脂が水不溶性である場合には、分散媒として水を含むものを用いることが好ましい。尤も分散媒は水だけに限られず、細片13の解繊及びナノファイバの短繊維化を首尾よく行える限り他の分散媒を用いてもよい。そのような分散媒の選択は、当業者の通常の知識の範囲内のものである。
【0027】
分散媒は一種を単独で用いてもよく、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上の分散媒を組み合わせた混合分散媒を用いる場合、各分散媒どうしは互いに相溶性を有していてもよく、あるいは相溶性を有していなくてもよい。混合分散媒がいずれの場合であっても、短繊維化部20における処理が完了した時点、すなわちナノファイバの短繊維化が完了した時点で、短繊維化したナノファイバが単一相からなる分散媒中に分散した状態になっていることが好ましい。相溶性を有する二相以上の分散媒を用いる場合には、混合分散媒は当然単一相のものとなる。一方、互いに相溶性のない二相以上の分散媒を用いる場合、例えば水と油とからなる混合分散媒を用いる場合には、該混合分散媒に剪断力を加える前の状態では該混合分散媒は水相と油相とに相分離するが、該混合分散媒に分散剤(すなわち界面活性剤)を加えることで、ナノファイバの短繊維化が完了した時点では、分散液からなる単一相の分散媒を得ることができる。なお、本発明でいう単一相とは、分散媒をマクロ的に観察した場合に適用される用語である。したがって例えば分散液はミクロ的に見れば水相と油相とは相分離しており厳密には単一相ではないかも知れないが、マクロ的に見れば相分離していないので、本発明にいう単一相に該当する。分散剤は、短繊維化部20に供給してもよく、あるいは調製部30に供給してもよい。分散剤を短繊維化部20に供給した場合には、該短繊維化部20において細片13が分散媒に分散しやすくなり、解繊が促進されるという利点がある。
【0028】
ナノファイバの短繊維化が完了した時点で、短繊維化した繊維が単一相からなる分散媒中に分散した状態になっていることの利点は以下に述べるとおりである。すなわち、短繊維化した繊維が単一相からなる分散媒中に分散していると、該繊維と分散媒との分離が比較的容易である。あるいは、短繊維化した繊維を、単一相からなる分散媒に分散させた状態で使用できる場面が比較的多い。これに対して、例えば短繊維化を完了した後に分散媒が二相に相分離していると、相分離のために用いた分散媒を除去するための時間や手間を要する。単一相からなる分散媒中に分散した状態とは、分散媒が目視で単一であり、例えば室温にて1日後、好ましくは数日後においても目視で単一と把握される状態をいう。繊維が分散しているとは、少なくとも短繊維化処理後において分散媒の全体に繊維が散らばっている状態を目視で確認できることをいう。
【0029】
細片13を分散媒に分散させた状態で剪断力を加える場合には、該細片13を分散媒の全体に分散させた状態とすることが好ましい。このような状態にしておくことで、細片13に剪断力を効率的に加え、生産性を高めることができる。また、短繊維化されたナノファイバの繊維長の分布をブロードなものとすることができる。例えば、ナノファイバを短繊維化するときに二相の分散媒が相溶状態になく、該ナノファイバが二相の分散媒の界面に偏在している状態で剪断力を加えた場合に比べて、剪断力を加えることが可能となり、生産性を向上させることが可能となり、また、短繊維化されたナノファイバの繊維長の分布を広範とすることができる。繊維長さのばらつきを大きくすることで、ナノファイバの短繊維を例えば化粧料に適用した際の皮膚への密着性、及びナノファイバによる被膜ネットワークの形成性を向上させることができる。
【0030】
以上の操作によって、短繊維化されたナノファイバが得られる。該ナノファイバは次いで、分散媒と分離された乾燥状態で、別の工程に供されるか又は製品として出荷される。あるいは、短繊維化されたナノファイバは、分散媒中に分散した分散液21の状態で、別の工程に供されるか又は製品として出荷される。
図1には、短繊維化されたナノファイバをその分散液の状態で別の工程に供する工程が示されている。
【0031】
図1に示すとおり、本発明の製造方法に用いられる装置1は流動体を調製する調製部30を備えている。調製部30では、短繊維化されたナノファイバと混合される流動体31が調製される。流動体31の調製は、上述した細片13を得る工程や、細片13に剪断力を加える工程とは独立して行うことができる。
【0032】
調製部30において調製される流動体31の種類に特に制限はなく、各種の液体、粘性液、ゲルなどが挙げられる。流動体31は単一成分から構成されているものであってもよく、多成分の混合物であってよい。流動体31が多成分の混合物である場合、各成分は均一に混合された状態になっていてもよく、あるいは分散状態になっていてもよい。流動体31がいずれの態様であっても、調製部30で調製される流動体31はマクロ的に見て均一な状態になっている(分散状態はマクロ的に見て均一な状態である。)。
【0033】
調製部30において調製された流動体31は、先に説明した短繊維化されたナノファイバと、混合部40において混合される。この目的のために、例えば
図1に示すとおり、短繊維化されたナノファイバの分散液21と、流動体31とを、タンク42内に貯留し、撹拌翼等の撹拌手段によって両者を撹拌することで、両者を混合する。これによって、短繊維化されたナノファイバと流動体31との混合物からなる短繊維含有流動体が得られる。流動体31が、例えばヒトの身体に施用可能な生理学的安全性を有する乳化液からなる場合、具体的にはW/O乳化物(クリーム等)、O/W乳化物(乳液等)、ゲル状物、液状油、化粧水からなる化粧料や、皮膚外用剤、軟膏である場合には、短繊維化されたナノファイバを含む化粧料や軟膏が得られる。かかる化粧料、皮膚外用剤又は軟膏を例えばヒトの皮膚に塗布すると、短繊維化されたナノファイバを含まない化粧料、皮膚外用剤又は軟膏を塗布した場合に比べて、塗膜の耐擦過性が高くなり、塗膜の持続性が向上するという有利な効果が奏される。また均一な厚みの塗膜を形成しやすいという利点や、塗膜に毛管力を付与できるという利点もある。
【0034】
次に、本発明の別の実施形態を、
図2を参照しながら説明する。
図2に示す装置1は、ヒトの身体に施用可能な生理学的安全性を有する分散液中に、短繊維化されたナノファイバを添加するために用いられるものである。同図に示す装置は、
図1に示す装置と同様に、ナノファイバの原反を細片化する細片化部10を備えている。細片化部10の構成は、
図1に示す装置と同じなので、ここではその説明を省略する。
図2に示す装置は、細片化部10の下流に分散・短繊維化部50を備えている。分散・短繊維化部50では、細片13が解繊されて一本一本の繊維にほぐされるとともに、細片13を構成するナノファイバが短繊維化される。これとともに、分散・短繊維化部50には水相と油相と分散剤(すなわち界面活性剤)とが供給され(図示せず)、これらから分散液が調製される。
【0035】
分散・短繊維化部50における操作は以下に述べるとおりである。まず、分散・短繊維化部50を構成するタンク51内に水相と油相と分散剤(すなわち界面活性剤)とが供給される。水相及び油相がタンク51内に充填された後、撹拌翼等の撹拌手段52によってタンク51内を撹拌して、水相と油相とを分散させる。そして、分散完了前又は分散完了後に、タンク内に細片13を供給する。供給された細片13は、分散液又は分散途中の液中に分散され、分散状態下に剪断力が加わる。細片13に剪断力が加わることで該細片13は解繊されて一本一本のナノファイバにほぐされるとともに、ナノファイバの短繊維化が生じる。
【0036】
以上のとおり、
図2に示す実施形態においては、互いに相溶性のない二相の分散媒である水相と油相とを含む混合分散媒に細片13を分散させた状態下に剪断力を加えて該細片13を解繊するとともに該細片13を構成するナノファイバを切断して短繊維化できる。しかも水相と油相とからなる混合分散媒が均一化して単一相となり、短繊維化されたナノファイバが、単一相、すなわち分散液からなる分散媒中に分散した状態の流動体が得られる。したがって本実施形態によれば、
図1に示す実施形態に比べて少ない工程数で、短繊維含有流動体を得ることが可能である。なお、
図2に示す実施形態では、互いに相溶性のない二相の分散媒を用いた例を挙げたが、本発明はこれに限られず、互いに相溶性のない二相以上の分散媒を用いてもよい。また単一成分又は相溶性のある多成分からなる混合物を分散媒として用いてもよい。
【0037】
以上の各実施形態に用いられるナノファイバの構成樹脂としては、分散媒の種類に応じ水不溶性のものと水溶性のものを用いることができる。水不溶性の樹脂とは、1気圧・23℃の環境下において、樹脂1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬した樹脂の0.5g超が溶解しない性質を有するものをいう。水溶性の樹脂とは、1気圧・23℃の環境下において、樹脂1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬した樹脂の0.5g以上が溶解する性質を有するものをいう。水不溶性の樹脂としては、例えば被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、各種のポリペプチド(コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、カゼイン等)などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーのうち、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリアクリロニトリル樹脂、(アクリル酸アルキル・オクチルアミド)共重合体及びポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。とりわけ、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリメタクリル酸樹脂から選ばれる1種又は2種以上をナノファイバの構成樹脂として用いることが好ましい。また、pH領域に応じて水溶性の性質と水不溶性の性質とを兼ね備え、且つ水以外の分散媒に可溶な樹脂を用いることが、ナノファイバの製造の容易さ、並びに細片の解繊の容易さ及びナノファイバの短繊維化の容易さの点から好ましい。そのような樹脂としては、メタクリル酸とメタクリル酸エステルとの共重合体が挙げられる。また、ポリ乳酸を代表とする生分解性ポリエステル樹脂は更に好ましい。
【0038】
以上の各実施形態に用いられる分散剤としては、各種の界面活性剤、例えば陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、及び非イオン界面活性剤が挙げられる。
陰イオン界面活性剤としては、例えばラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム等の炭素数8以上の脂肪酸を由来とする脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン塩;N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム等のN-アシルメチルタウリン塩;N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ラウロイルミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等のN-アシル脂肪酸グルタミン酸塩;ジ―2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、及びステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド等から選ばれるアルキルトリメチルアンモニウムブドマイド;ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアラキルジメチルアンモニウムクロリド、及びジベヘニルジメチルアンモニウムクロリド等から選ばれるアルキルジメチルアンモニウムクロリド;並びにベンザルコニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩、ジメチルジステアリルアンモニウム塩が挙げられる。
両性界面活性剤としては、水添大豆リン脂質などのレシチンが挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えばエチレングリコールモノステアリン酸エステル等のエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール(2)モノステアリン酸エステル等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール(5)デシルペンタデシルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテル;ポリエチレングリコール(5)硬化ヒマシ油モノイソラウレート等のポリエチレングリコール硬化ヒマシ油;プロピレングリコール脂肪酸エステル;グリセリンモノイソステアリン酸エステル等のモノグリセリンモノ脂肪酸エステル;グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンジラウリン酸エステル等のモノグリセリンジ脂肪酸エステル;グリセリンモノイソステアリルエーテル等のグリセリンアルキルエーテル;ソルビタンモノステアリン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸ジアルカノールアミド、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0039】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、細片13を湿式で解繊する場合に撹拌手段23を用いたが、これに代えてインラインミキサ、ビーズミル、ボールミルなどを用いることもできる。
【0040】
また前記実施形態は、短繊維化されたナノファイバを、ヒトの身体に施用可能な生理学的安全性を有する分散液に混合する方法に関するものであったが、短繊維化されたナノファイバを混合する対象となる流動体は前記分散液に限られない。例えば工業的な用途に用いられる樹脂や接着剤等に短繊維化されたナノファイバを混合してもよい。あるいは、ヒトが食用可能な生理学的安全性を有する分散液等の流動体に、短繊維化されたナノファイバを混合してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0042】
〔実施例1〕
(1)ナノファイバの原反の製造
ナノファイバを構成する樹脂として、メタクリル酸コポリマーを用いた。この樹脂は7以下のpHの水に不溶であり、且つエタノールに溶解する性質を有するものである。この樹脂を30%含み、ジメチルアセトアミドを70%含む原料液を用いて、電界紡糸法によってナノファイバの堆積物からなる繊維堆積シートを製造した。ナノファイバの直径は300nmであった。電界紡糸法の実施条件は、電圧35kV、ノズルの先端と対向電極との離間距離200mm、吐出量2ml/hとした。この繊維堆積シートを圧密化してその密度を高めた原反を得た。原反の坪量及び密度は、以下の表1に示すとおりであった。
【0043】
(2)原反の切断
(1)で得られた原反を、鋏を用いて一辺が5mmの正方形に切断し、複数の細片を製造した。
【0044】
(3)細片の解繊
0.005%の細片に対して99.995%の水を容器内で混合し、撹拌翼によって剪断力を加えた。撹拌翼は翼径40mmで、回転数6000rpmで剪断力を加えた。用いた槽の内径は12cmとした。撹拌を室温で30分間にわたって行い、細片を解繊するとともに、解繊によって生じたナノファイバを切断して短繊維化した。このようにして、濃度0.005%であるナノファイバの分散液を得た。短繊維化されたナノファイバの平均繊維長及び繊維長の変動係数(CV値)は以下の表1に示すとおりであった。
【0045】
〔実施例2ないし4並びに比較例1及び2〕
実施例1において、表1に示す坪量及び密度を有する原反を製造した。それ以外は実施例1と同様にして短繊維化されたナノファイバの分散液を得た。
【0046】
〔実施例5ないし8並びに比較例3及び4〕
実施例1ないし4並びに比較例1及び2において、細片の解繊を20分に短縮した。それ以外はこれらの実施例及び比較例と同様にして短繊維化されたナノファイバの分散液を得た。
【0047】
〔実施例9及び10〕
実施例5において、細片の形状を一辺が0.5mmの正方形に変更した(実施例9)。また、実施例1において、細片の形状を一辺が0.5mmの正方形に変更した(実施例10)。それら以外はこれらの実施例と同様にして短繊維化されたナノファイバの分散液を得た。
【0048】
〔実施例11及び12〕
実施例1において、ナノファイバを構成する樹脂としてPLAを用い、この樹脂を18%含み、クロロホルムとジメチルホルムアミド(80:20重量比)82%含む原料液を用いて、表3に示す坪量及び密度を有する原反を製造した。ナノファイバの直径は1μmであった。また、細片の解繊を20分に短縮した。それら以外は実施例1と同様にして短繊維化されたナノファイバの分散液を得た。
【0049】
〔実施例13及び14〕
実施例1において、ナノファイバを構成する樹脂としてAMPHOMER28-4910(アクリル樹脂)(アクゾノーベル社製)を用い、この樹脂を18%含み、エタノールを70%含む原料液を用いて、表3に示す坪量及び密度を有する原反を製造した。ナノファイバの直径は700nmであった。また、細片の解繊を10分に短縮した。それら以外は実施例1と同様にして短繊維化されたナノファイバの分散液を得た。
【0050】
〔実施例15ないし18〕
実施例1において、ナノファイバを構成する樹脂としてメタクリル酸コポリマーを用い、表4に示す坪量及び密度を有する原反を製造した。それ以外は実施例1と同様にして複数の細片を製造した。
得られた細片を以下のようにして解繊した。0.033%の細片に対して、99.967%の乳化液を容器内で混合し、撹拌翼によって剪断力を加えた。撹拌翼は翼径40mmで、回転数6000rpmで剪断力を加えた。用いた槽の内径は12cmとした。撹拌を室温で表4に示す時間にわたって行い、細片を解繊するとともに、解繊によって生じたナノファイバを切断して短繊維化した。このようにして、濃度0.033%であるナノファイバの短繊維含有流動体を得た。短繊維化されたナノファイバの平均繊維長及び繊維長の変動係数(CV値)は以下の表4に示すとおりであった。ここで乳化液の組成は、安息香酸ヒマシ油が5%、グリセリンが3%、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマーが0.38%、ポリソルベート60が0.53%、精製水が91.057%であった。
【0051】
〔評価〕
実施例及び比較例において、以下の評価1及び2を行った。それらの結果を以下の表1及び2に示す。
【0052】
〔評価1〕
細片の解繊の状態を、解繊後の分散液の状態を目視で観察して以下の基準で評価した。A:細片の未解繊物がほとんど観察されない。
B:細片は解繊したが、一部に未解繊物が観察される。
C:ほとんどの細片が解繊していない。
【0053】
〔評価2〕
細片を得るためのナノファイバの原反の取り扱いやすさを、ナノファイバの原反を手で持ち以下の基準で評価した。
A:取り扱いに困難性はない。
C:原反が手に纏わり付き、切断に使用できない。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
表1ないし表4に示す結果から明らかなとおり、各実施例の方法によれば、ナノファイバの原反から、短繊維化されたナノファイバを容易に製造できることが判る。また、実施例5と実施例9との比較及び実施例1と実施例10との比較から、解繊時間が同一である場合には、細片のサイズが小さい方ほど、短繊維化されたナノファイバの繊維長が短くなることが判る。
【符号の説明】
【0059】
1 短繊維化されたナノファイバの製造装置
10 細片化部
11 ナノファイバの原反
12 プレスロール
13 細片
14 カッター
20 短繊維化部
21 分散液
30 調製部
31 流動体
40 混合部
50 分散・短繊維化部