(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】共硬化性ペイント用フィルムの使用による、複合基板からの下地フィルム及びプライマーの排除
(51)【国際特許分類】
B32B 27/38 20060101AFI20240806BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240806BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240806BHJP
C09D 7/48 20180101ALI20240806BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240806BHJP
【FI】
B32B27/38
B32B27/40
B32B27/18 A
B32B27/26
C09D175/04
C09D7/48
C09J7/38
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020122802
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-05-17
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】マーク アール.ブレイ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ディー.ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ケアスター ラーソン-スミス
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512076(JP,A)
【文献】国際公開第2010/077849(WO,A1)
【文献】特表2012-512056(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0151239(US,A1)
【文献】特開平02-169634(JP,A)
【文献】特表2017-526799(JP,A)
【文献】特開2013-094884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 70/00-70/88
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
C08G 59/00-59/72
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層の共硬化性ポリウレタン系被覆材料を含む、共硬化性エポキシ系複合材料であって、
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料は、前記共硬化性エポキシ系複合材料に直接的に配置されて、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料を形成するとともに、
UV安定剤と、
硬化促進剤と、を含むものである、
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、厚み
が2ミルか
ら3ミルである場合において
、200nmか
ら800nmの波長域のUV透過率が0%である、共硬化性エポキシ系複合材料。
【請求項2】
前記共硬化性エポキシ系複合材料は、炭素繊維強化エポキシ材料、ガラス繊維強化エポキシ材料、ホウ素繊維強化エポキシ材料、アラミド繊維強化エポキシ材料、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【請求項3】
前記共硬化性エポキシ系複合材料は、250°Fから370°Fの温度で、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と共硬化するよう構成されている、請求項1又は2に記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【請求項4】
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に接触するように設けられた少なくとも1つの粘着層をさらに含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【請求項5】
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に配置された少なくとも1つのスクリム層をさらに含む、請求項1~4のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【請求項6】
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に配置された少なくとも1つのスクリム層と、
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に接触するように設けられた少なくとも1つの粘着層と、
をさらに含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【請求項7】
前記共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化性エポキシ系複合材料との間に介在する表層材層を含まず、
前記共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化性エポキシ系複合材料との間に介在するプライマー層を含まない、
請求項1~6のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【請求項8】
硬化後の前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、Tgが50°Fから250°Fである、請求項1~7のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【請求項9】
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、前記共硬化性エポキシ系複合材料にフィルムとして付着される、請求項1~8のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料を含む複合材料部材。
【請求項11】
共硬化されたポリウレタン系被覆材料と、
共硬化されたエポキシ系複合材料と、を含んで構成される、共硬化されたポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料であって、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料の層は、UV安定剤を含むものであり、
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、厚み
が2ミルか
ら3ミルである場合において
、200nmか
ら800nmの波長域のUV透過率が0%である、共硬化されたポリウレタン系被覆付きエポキシ系複合材料。
【請求項12】
前記共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料の層と前記共硬化されたエポキシ系被覆材料との間に介在する表層材層を含まず、
前記共硬化されたエポキシ系複合材料は、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化されたエポキシ系被覆材料との間に介在するプライマー層を含まない、
請求項10又は11に記載の共硬化されたエポキシ系複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、材料層の追加を容易にするための材料表面処理の分野に関する。より具体的には、本開示は、複合材料から成る部品や部材のUV劣化を抑制するための材料表面処理の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料の使用は、様々な構造体の製造において増加し続けている。構造体の製造において、最終的な構造体の総重量(又は、最終的な構造体の部材の重量)が材料選択における考慮事項である場合、複合材料は、少なくとも比強度の点で、例えば、金属、合金などの高密度材料の代替材料として有利である。
【0003】
複合材料は、複数の複合材料層を積層して、一般に「プリプレグ」と呼ばれる積層体に形成されることが多い。プリプレグは、例えば、エポキシ樹脂含有材料などのような、マトリックス材料を予め含むよう「予備含侵」させた複合繊維である。繊維は、織物状であることが多く、これらの繊維をマトリックス材料で互いに結合させ、また、製造工程においては他の部材に結合させる。複合マトリックス材料は、取り扱い容易性のために、半硬化(partially cured)されていることが多い。そのようなマトリックス材料は、硬化の進行や完全硬化を防ぐために冷蔵又は冷凍保存する必要があり、このような複合マトリックス材料は、Bステージ材料と呼ばれる。つまり、Bステージプリプレグは、周囲温度による加熱でも重合が進行する可能性があるので、冷所保存される。プリプレグは、多量の繊維を含侵させて構成し、次いで長期間にわたって冷所保存した後に硬化させることが可能である。プリプレグは、典型的には、平たんな作業面に沿って形成される。次いで、プリプレグプライの積層体は、必要に応じて、マンドレルとも呼ばれる成形ツール(shaping or forming tool)を利用して、所望の形状に成形される。
【0004】
複合材料には、複合材料及び/又は複合材料面に所望の性質を付与し、或いは、複合材料及び/又は複合材料面を保護するための後処理、又は「再加工」を行うことが一般的である。例えば、UV緩和剤又はUV遮断剤を含むプライマー及びペイントを複合材料面に塗布すれば、複合材料が、例えば、より大型の構造体を作製するための構成材料として使用される場合に、紫外線(UV)に晒されることで生じうる酸化及び/又は変色から複合材料面を保護することができる。
【0005】
また、例えば、材料層を複合材料面に被膜として形成すれば、複合材料の特性を変化させることが可能である。例えば、複合材料面に既に一層以上の被覆が施されており、これに塗装やシール材などの被覆層をさらに追加する場合、複合材料にプライマー又は他の被覆層を形成すれば、後に追加される層への接着性を高めることができる。ただし、複合材料面に複数の被覆材料を積層することは、労力と時間を要するものであり、また、このように複数の被覆層を有する複合材料を用いると、大型部材及び大型構造体の重量が大幅に増加する可能性がある。
【0006】
加えて、1つ以上の複合材被覆層に次の被覆層を形成する場合、次の層の形成前に複合材料面に個別に表面処理工程が必要な場合がある。ときには、1つ以上の次の被覆層を追加する前に、先に形成した1つ以上の被覆の一部を除去又は再加工する必要がある。複合材料面の加工処理中に、複合材料面にそのような中間的な再加工を行うことは、労力、時間、及び費用を要するものである。
【発明の概要】
【0007】
本開示の態様によれば、共硬化された被覆付き共硬化性エポキシ系複合材料が開示される。当該共硬化された被覆付き共硬化性エポキシ系複合材料は、共硬化された共硬化性エポキシ系複合材料と、前記共硬化性エポキシ系複合材料に配置された少なくとも1層の共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と、を含み、これにより、前記共硬化された被覆付き共硬化性エポキシ系複合材料が形成される。前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、UV安定剤及び硬化制御剤を含み、前記UV安定剤及び前記硬化制御剤は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に導入されている。
【0008】
別の態様では、前記共硬化性エポキシ系複合材料は、繊維強化エポキシ系複合材料を含み、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を含む。
【0009】
さらに別の態様によれば、前記共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と共硬化して、共硬化されたポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料を形成する。この際に、両方の材料は、約250°Fから約370°Fの温度で共硬化する。
【0010】
本開示の方法は、さらに、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料に共硬化処理条件を適用することと、前記共硬化性ポリウレタン系被覆層と、前記共硬化性エポキシ樹脂系複合材料とを、共硬化処理条件にしたがって共硬化させて、共硬化されたポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料を形成することと、を含む。この際に、前記共硬化処理条件は、硬化温度が400°Fを超えないことを含む。
【0011】
別の態様では、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆層に接触するように設けられた少なくとも1つの粘着層をさらに含む。
【0012】
別の態様では、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料は、少なくとも1つの共硬化性ポリウレタン系被覆層に設けられた少なくとも1つのスクリム層をさらに含む。
【0013】
別の態様では、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料は、前記共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化された共硬化性エポキシ系被覆材料との間に介在する表層材層を含まない。
【0014】
さらに別の態様では、前記ポリウレタン系被覆付き共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と、剥離性中間被覆層と、の間に介在するよう付加されたプライマー層を含まない。
【0015】
さらに別の態様では、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層の電気抵抗値は、少なくとも1000kΩである。
【0016】
別の態様では、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層の平均厚みが約2ミルから約3ミルである場合において、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層の200nmから800nmの可視波長域のUV透過率は0%である。
【0017】
別の態様では、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層の平均厚みが約2ミル超である場合において、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層の200nmから800nmの可視波長域のUV透過率は0%である。
【0018】
さらに別の態様によれば、ポリウレタン系被覆材料で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料を作製する方法が開示されている。前記方法は、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層を共硬化性エポキシ系複合材料に直接に配置して、共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料を形成することを含む。この際に、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、UV安定剤及び硬化制御剤を含むものであり、前記UV安定剤と前記硬化制御剤は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆層に導入されるものとする。
【0019】
さらに別の態様では、前記ポリウレタン系被覆層を前記共硬化性エポキシ系複合材料に直接に付着させるステップにおいて、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、前記エポキシ系複合材料にフィルムとして付着される。
【0020】
別の態様では、前記共硬化性ポリウレタン系被覆層と共硬化性エポキシ系複合材料とのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのスクリム層を付着させることをさらに含む。
【0021】
別の態様では、前記共硬化性ポリウレタン系被覆層と共硬化性エポキシ系複合材料とのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの粘着層を付着させることをさらに含む。
【0022】
さらに別の態様では、共硬化されたポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料を作製する方法が開示されている。前記方法は、ポリウレタン系被覆材料で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料を準備することを含む。前記共硬化性エポキシ系複合材料は、共硬化性エポキシ系複合材料と、前記共硬化性エポキシ系複合材料に配置された少なくとも1つの共硬化性ポリウレタン系被覆材料層とを含むものであり、これにより、前記ポリウレタン系被覆材料で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料が形成されている。前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、UV安定剤及び硬化制御剤を含むものであり、前記UV安定剤及び前記硬化制御剤は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に導入されている。
【0023】
本開示の方法は、さらに、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料に共硬化処理条件を適用することと、前記共硬化性ポリウレタン系被覆層と、前記共硬化性エポキシ樹脂系複合材料とを、共硬化処理条件にしたがって共硬化させて、共硬化されたポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料を形成することと、を含む。この際に、前記共硬化処理条件は、硬化温度が約250°Fから約370°Fの範囲であることを含む。
【0024】
本開示の方法は、さらに、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料に共硬化処理条件を適用することと、前記共硬化性ポリウレタン系被覆層と、前記共硬化性エポキシ樹脂系複合材料とを、共硬化処理条件にしたがって共硬化させて、共硬化されたポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料を形成することと、を含む。この際に、前記共硬化処理条件は、硬化温度が400°Fを超えないことを含む。
【0025】
さらに別の態様によれば、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆された前記共硬化性エポキシ系複合材料を含む部材と、そのような部材を含む、より大型の構造体が開示されている。
【0026】
さらに別の態様によれば、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料で被覆された前記共硬化されたエポキシ系複合材料を含む部材、及びそのような部材を含んで成るより大型の構造体が開示されている。
【0027】
上述の特徴、機能、及び利点は、種々の態様において個別に達成可能であり、また、さらに別の態様と組み合わせることも可能である。その詳細は、以下の説明及び図面を参照すれば明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここまでは、本開示の様々な態様を一般的な用語を用いて説明してきたが、以下の説明においては、添付図面を参照する。なお、これらの図面は、必ずしも正確な縮尺で描かれているとは限らない。
【0029】
【
図1】本開示の一態様における共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆されたエポキシ系複合材料を示す。
【
図2】本開示の一態様における共硬化性及び/又は共硬化されたエポキシ系複合材料を示す図である。
【
図3】本開示の一態様における共硬化性及び/又は共硬化されたエポキシ系複合材料にベースコート層及びトップコート層がさらに設けられた状態を示す図である。
【
図4】本開示の一態様における「非装飾用」の共硬化性エポキシ系複合材料を示す図である。
【
図5A】本開示の一態様における共硬化性エポキシ系複合材料に粘着層が設けられた状態を示す図である。
【
図5B】本開示の一態様における共硬化性エポキシ系複合材料に粘着層が設けられた状態を示す図である。
【
図5C】本開示の一態様における共硬化性エポキシ系複合材料の塗装アセンブリに粘着層が設けられた状態を示す図である。
【
図6A】本開示の一態様における共硬化性エポキシ系複合材料にスクリム層が設けられた状態を示す図である。
【
図6B】本開示の一態様における共硬化性エポキシ系複合材料にスクリム層が設けられた状態を示す図である。
【
図7A】本開示の一態様における共硬化性エポキシ系複合材料に粘着層及びスクリム層が設けられた状態を示す図である。
【
図7B】本開示の一態様における共硬化性エポキシ系複合材料に粘着層及びスクリム層が設けられた状態を示す図である。
【
図8】本開示の一態様における共硬化されたエポキシ系複合材料を含む航空機を示す図である。
【
図9】本開示の一態様における方法の概要を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の一態様における方法の概要を示すフローチャートである。
【
図11】本開示の一態様における方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示の態様によれば、例えば、共硬化性エポキシ系複合材料などの共硬化性エポキシ系材料を被覆する共硬化性ポリウレタン系被覆として、UV防止剤及び硬化制御剤を含む共硬化性ポリウレタン系被覆を用いることにより、単一の被覆層によって、当該共硬化性エポキシ系材料のUV保護を強化するとともに、例えば、ペイント剥離剤、及び再塗装処理による化学的劣化に対する耐性を高めることができる。
【0031】
本開示の共硬化性ポリウレタン系被覆材料は、必要に応じて、例えば、共硬化性ポリウレタン系被覆フィルムに加工することができるので、例えば、共硬化性エポキシ系複合材料に正確かつ容易に配置可能である。これにより、被覆材料の均一性を高めることができる。換言すると、本開示の態様による前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料は、予め選択可能な平均厚みで実質的に一定な被覆フィルムに加工可能であって、例えば、はけ塗り、吹き付け、或いは、部品や部材を浸漬するなどによって塗布される液状の被覆材料や塗料に比べて被覆領域の制御が容易なものを含む。
【0032】
本開示の態様によれば、共硬化性ポリウレタン系被覆及び被覆材料は、被覆フィルムの形態のものを含み、ロール状に作製して、使用時まで保存しておくことが可能であり、例えば、ロールされた状態又は他の所望の状態から必要量を供給することができる。よって、(例えば、噴霧により供給される液状塗料又は他の被覆材料に比べて)保存、供給、使用などが容易であり、均一性、正確さ、取り扱い容易性、塗布の容易性などを向上させることができる。加えて、共硬化により最終的に形成されるポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料の総重量(及び、当該共硬化されたポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料を含む部材の総重量)を低減することができる。
【0033】
加えて、本開示のポリウレタン系被覆は、共硬化された状態で、1000kΩ超の電気抵抗率を有するよう構成できる。或いは、共硬化前のポリウレタン系被覆に導電性材料を注入して、所望及び所定の電気抵抗率(又は導電率など)を実現するよう構成することができる。
【0034】
加えて、本開示の共硬化性ポリウレタン系被覆は、共硬化後のポリウレタン系被覆材料及び被覆材料フィルムとトップコートやシール材などとの接合を促進する粘着力を有する。
【0035】
本開示の態様によれば、共硬化性エポキシ系複合材料に対して、適切に調整された共硬化性ポリウレタン系材料の被覆を用いることにより、エポキシ系複合材料に複数の被覆層を設ける処理が不要になる。本開示の態様によれば、前記共硬化性ポリウレタン系材料は、単一の被覆層として設けることが可能である。さらに別の態様によれば、前記共硬化性エポキシ系複合材料は、炭素繊維強化エポキシ材料、ガラス繊維強化エポキシ材料、ホウ素繊維強化エポキシ材料、アラミド繊維強化エポキシ材料、他の高強度エポキシ材料、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである。
【0036】
エポキシ系複合部品などの複合部品は、作製中に、例えば、大気中の紫外線(UV)放射に晒されると、エポキシ系複合材料表面が酸化し始める可能性がある。複合材料がUV放射に晒されることを少なくとも一因として、複合材料の表面特性が変化することを防ぐため、エポキシ系複合材料の表面は、例えば、UV遮断剤を含むプライマー層で被覆される場合が多い。しかしながら、UV放射を軽減又は遮断する薬剤を複合材料表面に付着させる処理は、製造を複雑にし、少なくとも製造時間の増加、再加工時間の増加、全体の製造コストの増加、被覆された部材、組立品、小組立品、及びそれらを含む構造体の総重量の増加などが生じる。また、そのような複合材料をさらに加工するには、複合材料に付着させたUV遮断剤の層を除去する必要がある場合が多く、製造工程の増加につながる。加えて、プライマー層にペイント層やトップコートをさらに設けるためには、プライマー層を加工する必要がある場合が多い。このように、エポキシ系複合材料に追加する個々の層を加工すると、製造時間、再加工時間、全体の製造コスト、総重量などが増加することになる。
【0037】
エポキシ系複合材料は、複合材料に塗布されたペイント及び保護被膜などの「塗装積層体(paint stack)」よりも「長持ち」する場合が多い。よって、塗装積層体又はその一部(例えば、ベースコート、シール材、トップコート、クリアコートなど、また、下層である表面フィルム(surfacing film)の少なくとも一部など)については、その残存部分を除去した上で再度設けるか、或いは、再加工することが必要になる。さらに、仮に、適切な再加工を行わず、表面フィルム及び/又はエポキシ系複合材料の表面がUV劣化した状態で放置すると、後から塗装したペイントの接着に悪影響が生じる可能性がある。この問題は、一般的には、下層の塗装積層体をUV劣化から保護するスプレー表面仕上げ剤(spray surfacer)の層を追加することによって解決できる。しかしながら、スプレー表面仕上げ剤の層を追加すると、当該塗装積層体を含む構造体の重量がさらに増加する上に、加工時間、再加工時間などが長くなる。また、例えば、材料、工数、非稼働時間(time out-of-service)など、必要なリソースが増えるので、全体的なコストがさらに増加する。加えて、例えば、作業員などによる剥離作業を実施する場合には、必要な労働力に関する人間工学的な課題(ergonomic concerns)も発生する。
【0038】
本開示の態様によれば、
図1は、共硬化された共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料を作製するためのシステムを示す。
図1に示すように、共硬化システム10は、共硬化性ポリウレタン系被覆材料12を含み、これを加工して形成された共硬化性ポリウレタン系被覆フィルム14がロール状にされ、一部が引き出された状態が示されている。つまり、本開示の態様によれば、共硬化性ポリウレタン系被覆フィルム14は、
図1には示されていないものの、例えば、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層を基板に積層し、当該フィルムを乾燥させた後に、フィルム同士を重ね合わせるように巻くことで、例えば、ロール状のフィルムとして作製することができる。図示の共硬化システム10では、次に、共硬化性ポリウレタン系被覆フィルム14の一部が共硬化性エポキシ系複合材料16の近くに配置される。共硬化システム10では、次に、共硬化性エポキシ系複合材料16の表面に、共硬化性ポリウレタン系被覆フィルム14を接触させ、又は配置して、共硬化性エポキシ系複合材料16を被覆する。これにより、共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料18(本明細書では「共硬化性被覆付き複合材料18」とよぶこともあり同義である)が形成される。
【0039】
本態様では、「共硬化性」材料とは、他の材料と一緒に硬化可能な材料であると定義され、上述の2つの共硬化性材料は、所定の硬化処理条件(curing regimen)(所定の温度、圧力、上昇温度/昇温率(ramp up temperatures/rates)、持続時間(dwell periods)など)に定められた共通の硬化条件下で硬化して、「共硬化された」複合体を形成することができる。なお、本明細書において、共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料は、「共硬化性被覆付き複合材料」とよぶこともあり、同義である。
【0040】
図1にさらに示すように、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層12は、UV安定剤12b及び硬化制御剤12cを導入又は混合したポリウレタン材料12aを含む。本態様によれば、共硬化性ポリウレタン系被覆材料12は、単一の共硬化性ポリウレタン系被覆材料に複数の特性を持たせるように配合することができるので、単一の被覆層によって、所定の共硬化性エポキシ系複合材料との共硬化を促進するとともに、所定のUV保護機能、並びに所定のペイント剥離剤及び他の化学薬剤に対する耐薬品性を付与又は向上させることができる。これにより、少なくとも、下層であるエポキシ系複合材料又は他の被覆の耐用寿命を大幅に延長することができ、また、下層であるエポキシ系複合材料の耐用寿命にUV放射が与える悪影響によるエポキシ系複合材料の再加工の必要性を大幅に低減することができる。
【0041】
加えて、ポリウレタン系被覆材料層12は、エポキシ系複合材料に対する共硬化性だけでなく、UV波長に対する優れた耐性も備えるように配合されるので、当該ポリウレタン層によってUV放射の透過を抑制して、下層であるエポキシ系複合材料の劣化を防止することができる。本態様によれば、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、USB2000+UV-VIS分光計(オーシャンオプティクス、フロリダ州ウィンターパーク)で測定したところ、当該ポリウレタン系被覆の平均膜厚が約2ミルから約3ミルの範囲であれば、約200nmから800nmの波長域のUVの透過率は、0mW/cm2になる。本態様によれば、エポキシ系複合剤樹脂のUV劣化を抑制することで実現される利点には、限定するものではないが、変色の防止、複合材料の耐用寿命の延長、保守頻度(service intervals)の低減などがある。
【0042】
UV安定剤12bは、ポリウレタン材料12aに対する親和性を有する(compatible)とともに、ポリウレタン材料12aから析出しない任意の耐UV性材料である。そのようなUV安定剤としては、限定するものではないが、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、カーボンブラック、及び二酸化チタンが含まれ、固相又は液相にてポリウレタン材料に添加性UV安定剤がさらに好ましい。
【0043】
硬化制御剤12cは、共硬化性ポリウレタン系被覆材料と共硬化性エポキシ系複合材料との共硬化を促進するために含まれる。具体的には、前記硬化制御剤は、硬化温度が約400°Fを超えず、任意ではあるが、約45psiから約100psiの範囲の圧力下で硬化させるという硬化処理条件において、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に対して、約250°Fから約370°Fの温度範囲において、エポキシ系複合材料との共硬化を促進する化学的特性を付与するものである。
【0044】
本開示の共硬化性ポリウレタン系被覆材料は、エポキシ複合材料の塗装又は被覆のための中間層として用いられる場合、当該被覆材料により実現される効果は、下側のエポキシ系複合材料にも及ぶ。例えば、本開示の態様によれば、本開示の共硬化性ポリウレタン系被覆を用いることにより、従来であれば、基板を塗装するために以前は必要であった多くの工程を大幅に省略することができる。この結果、省略される層について必要であった材料コスト、個々の層の設置や加工の工数などのリソース(例えば、個々の層に前処理として行う表面処理、層の形成工程、例えば、化学薬剤の塗布や物理的な研磨などの表面処理などを含む後処理としての表面処理、形成した層の検査など)を大幅に低減することができる。
【0045】
より具体的には、本開示の共硬化性ポリウレタン系被覆材料層をエポキシ系複合材料の塗装に用いる用途には、例えば、ビークル及び航空機製造に用いられるエポキシ系複合材料の塗装又は被覆が含まれるが、これらに限定されるものではない。本開示の共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料を用いることにより、(エポキシ系複合材料の塗装において)一般的に必要な少なくとも以下の工程を省略することができる。即ち、研磨と、スプレー用下地フィルム又は下地剤の塗布と、表面活性剤(surface activation chemicals and agent)の塗布及び除去と、別個の細部作成用プライマー層(detail primer layer)の形成と、形成した細部作成用プライマー層の再活性化と、アセンブリ用プライマー層(assembly primer layer)の形成といった工程を省略することができる。加えて、省略された層の形成について一般的に必要な検査工程も省略することができる。
【0046】
本開示の態様によれば、少なくとも、1)共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆で被覆された、共硬化された共硬化性エポキシ系複合材料と、2)前記共硬化されたポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料を含む、より大型の部材や構造体と、に関する処理において、相当数の工程を省略することができる。これにより、材料、製造時間、再加工時間、非稼働時間、修理・再表面処理時間、及び全体の製造コスト、並びに、将来的な保守コストなどを大幅に節約することができる。
【0047】
さらに、
図2に示すように、共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料18(
図1に示す)に、当該共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料18を硬化させるための硬化処理条件を適用することで、共硬化されたポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料19が形成される。本開示の態様によれば、共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料18に適用する硬化処理条件は、共硬化性ポリウレタン系被覆フィルム14と共硬化性エポキシ系複合材料16との両方を硬化させるように組み合わせることができる。そのような共硬化処理条件における硬化温度は、容易に理解されるように、約250°Fから約370°Fの範囲が想定され、共硬化温度の上限閾値である400°Fを超えないことを要件とし、適切な昇温期間及び設定温度での持続時間を設け、圧力は、約45psiから約110psiとする。
【0048】
図2に示すように、共硬化されたポリウレタン系被覆付きエポキシ系複合材料19に、剥離性中間被覆層22が成膜又は積層される。これにより、剥離性中間被覆層を有する共硬化されたポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料20が形成される。剥離性中間被覆層22は、選択的に剥離層として形成可能であり、後から成膜する被覆層(剥離性中間被覆層の上に順次積層される、例えば、各種のトップコート層、クリアコート層などの被膜及び被覆層)の除去を容易にする。なお、本明細書において、これら被覆層のそれぞれ及び全体を「ペイント層」と呼ぶ。
【0049】
塗装体(painted object)は、複合基材を含み、当該複合基材は、複合材料に塗布される装飾用又は非装飾用のペイント層よりも耐用寿命が長くなるように設計及び加工することが可能である。したがって、剥離性中間被覆層に積層されるペイント層(例えば、剥離性中間被覆層に重ねて設けられるベースコート層及びトップコート層など)を、剥離剤及び剥離プロセスによって、剥離性中間被覆層の下側の層を剥離することなく、塗装積層体から除去又は「剥離」することができる。
【0050】
さらに別の態様では、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層は、ペイント剥離薬剤及び他の剥離プロセスにおける化学的侵蝕(chemical attack)に十分に耐えうる耐薬品性を有する。このように、本開示の態様によれば、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料は、UV放射を遮断して、下側の共硬化されたエポキシ系複合材料をUV劣化から保護することができる。加えて、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層は、下側のエポキシ複合材料への浸潤(infiltration)を防ぐので、共硬化されたエポキシ系複合材料をペイント剥離工程における劣化から保護することができる。
【0051】
さらに別の態様によれば、
図3では、共硬化されたポリウレタン系被覆付きエポキシ系複合材料19に剥離性中間被覆層22が設けられており、この剥離性中間被覆層22にアセンブリトップコート層(assembly topcoat layer)32が積層され、このアセンブリトップコート層32にベースコート層(basecoat layer)34が積層されて、塗装アセンブリ(painted assembly)30(本明細書では「塗装積層体」ともよび、同義である)が形成されている。塗装アセンブリ30は、例えば、航空機の描画塗装(aircraft livery)などに使用される装飾用被膜の一態様である。そのような航空機カラーリングは、例えば民間航空機における様々な表面、例えば、胴体部、尾部などに適用することができる。その詳細については、
図8に示す態様を参照して後述する。
【0052】
図3にさらに示すように、本開示の態様では、修理、表面の再加工、又は他の塗装関連の再加工の際に、剥離性中間被覆層22、アセンブリトップコート層32、及びベースコート層34を塗装アセンブリ30から除去可能であるとともに、共硬化されたポリウレタン系被覆付きエポキシ系複合材料19が、塗装剥離剤及び塗装剥離プロセスによる影響を殆ど受けないことが望ましい。
【0053】
さらに別の態様によれば、前記共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、装飾用又非装飾用のペイントで被覆されたエポキシ系複合材料の作製及び保護に有用である。
図4は、非装飾用トップコート層42を、共硬化されたポリウレタン系被覆付きエポキシ系複合材料19に積層するか、或いは、共硬化されたポリウレタン系被覆付きエポキシ系複合材料19に配置するかして形成された非装飾用塗装アセンブリ40を示している。このような非装飾系塗装アセンブリは、例えば、ビークルにおける非装飾部分(例えば、航空機、地上車、水上船、宇宙船など)、又は商業的な識別や細かな装飾が不要なビークルに形成することができる。そのような非装飾用塗装アセンブリは、ベースコート層、クリアコート層などを含まない場合がある。
【0054】
加えて、本態様によれば、共硬化性エポキシ系複合材料と共硬化されたポリウレタン系被覆は、後に繰り返し行われる再塗装や再加工手順において繰り返されるオートクレーブ処理に耐えうる堅牢性を備える。つまり、いくつかの現行の再塗装手順とは異なり、本開示の共硬化されたポリウレタン系被覆は、修理及びオートクレーブ処理を繰り返し行っても、交換、除去、又は再塗装の必要がない。したがって、本態様では、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層の上に設けられた被覆層(例えば、トップコート層、ベースコート層、クリアコート層、中間被覆層など)については、除去又は修復を行うことが想定される。
【0055】
本開示の態様によれば、少なくとも本開示の共硬化性ポリウレタン系被覆を共硬化性エポキシ系複合材料に設けることにより、当該共硬化されたポリウレタン系被覆は、単独で、少なくとも下地フィルム層と、下地フィルム層に設けるスプレー用下地層と、当該スプレー用下地層に設けるプライマー層との機能を実現する。なお、本出願において、下地フィルム層と、下地フィルム層に設けるスプレー用下地層と、スプレー用下地層に設けるプライマー層と、のそれぞれ及び全体を「省略層(obviated layer)」と呼ぶ。
【0056】
このように、前記省略層を不要にして排除した構成により、例えば航空機などの大型の複合構造体における被膜全体(例えば、ペイント及びペイントの関連被覆層など)の厚みを、約42%から約62%減少させることができる。このように、前記省略層を排除することで大幅な軽量化が実現され、これにより、例えば、航空機の製造コストを低減することができ、また、燃料コストの低減という形で、航空機の耐用年数にわたって運用コストを大幅に削減することができ、さらに、最大積載容量の増加及び航続距離の増加などへの寄与も実現される。より具体的には、本開示の態様によれば、本開示の共硬化されたポリウレタン系被覆材料層は、範囲約2ミルから約3ミルの平均膜厚を有するフィルムである。前記省略層を合わせると、その合計の厚みは、典型的には約4.3ミルから約5.8ミルに及ぶ。個々の省略層の典型的な平均厚みについて記載すると、1)下地フィルムの典型的な平均厚みは、約2.6ミルであり、2)スプレー用下地層の典型的な平均厚みは、約1ミルから約2ミルであり、3)プライマー層の典型的な平均厚みは、約0.7ミルから約1.2ミルである。本開示の態様によれば、本開示の共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層を前記省略層の代わりに用いることで、例えば、航空機の面全体において、例えば、約100ポンドから約370ポンドに及ぶ重量を低減することができる。
【0057】
本開示の共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料は、例えば、エポキシ系複合材料基板に表面塗装を行う場合に、後に繰り返し行われるオートクレーブ処理による過酷な条件に耐えうるという利点を有する。これに加えて、被覆された複合基板の耐用年数の期間中に繰り返し行われる修理及び表面再加工で使用されるペイント剥離剤が被覆層にもたらす典型的な劣化に対する耐性も有する。つまり、典型的な複合材料の再塗装手順では、省略層である少なくとも1つ以上の層を、塗装「積層体」からを剥離することが必要な場合が多い。例えば、典型的な手順によれば、省略層である下地フィルム層は、ペイント剥離用の化学薬剤に抵抗してエポキシ系複合材料を保護する機能を有するが、スプレー下地層及びプライマー層とともに、当該下地フィルム層もある程度剥離されてしまう。このような典型的な処理とは異なり、本開示の態様では、共硬化された及び共硬化性ポリウレタン系被覆は、下地フィルム、スプレー用下地、及びプライマーとして機能するだけでなく、剥離用の化学薬剤に対する耐性も備えている。したがって、本開示の共硬化されたポリウレタン系被覆材料層は、修理の前に行われる表面再加工/剥離作業によっても、塗装積層体から剥離されてしまうことがない。本開示の共硬化されたポリウレタン系被覆の耐薬品性を、ASTMのD3363-05(2011)e2の方法で測定したところ、ペイント剥離剤であるベンジルアルコールに直接晒した後、48時間経過した時点で、HB以上の鉛筆硬度に対する耐性を示した。
【0058】
ペイント剥離剤としては、ペイント又は他の被覆材料に相溶することなく、これを軟化させ、或いは制御可能に破壊する化学薬剤が使用可能であり、例えば、リン酸エステル水性液(phosphate ester hydraulic fluid)、ベンジルアルコール、テルペン溶液(terpene solution)などがある。本開示の共硬化されたポリウレタン系被覆材料は、ペイント剥離剤として使用可能な化学薬剤に対する耐薬品性を備えるよう配合されている。例として、本態様の共硬化されたポリウレタン系被覆材料をボンデライトS-ST1270-6に約48時間晒したところ、平均厚みが約2ミルから約3ミルである共硬化されたポリウレタン系被覆材料層の表面に、視認可能なピンホールは確認されなかった。
【0059】
さらに別の態様によれば、当該態様の共硬化性ポリウレタン系被覆材料は、さらに粘着性を備えるように構成できるので、(例えば、不規則な形状、輪郭など)複雑な表面形状を有する表面に容易に付着させることができる。加えて、例えば、構造体の下側の面などのように、重力の作用が妨げとなって、しわ、畳みじわ、隙間、逆折りなどが発生しないように被覆フィルムを輪郭形状や他の表面形状などに自然に「追随(drape)」させる作業が困難な領域においても、当該共硬化性ポリウレタン系被覆材料を容易に付着させたり、一時的及び/又は最終的に配置したりすることができる。
【0060】
本開示の態様において、また、本願の目的において、「粘着」なる用語は、材料を所定の位置に維持又は保持できる適切なレベルの粘着力であるとともに、当該材料の取り外しを複数回行うことが可能なレベルの粘着力であると理解される。これにより、例えば、航空機又は航空機の組立品や小組立品などのより大型の部材や構造体における所望の位置に、当該材料を最終配置することが容易になる。
【0061】
共硬化性ポリウレタン系被覆材料は、所望の粘着力を有するフィルムとして作製可能なものであり、そのような共硬化性ポリウレタン系被覆材料フィルムも、粘着層で加工することによって作製可能である。適切な粘着層は、例えば、噴霧する形態又はフィルム状などの所望の形態で、共硬化性ポリウレタン系被覆材料フィルムに設けることができる。本態様の共硬化性ポリウレタン系被覆材料に適した粘着材料層としては、限定するものではないが例えば、エポキシ系感圧接着剤、アクリル系感圧接着剤、ポリウレタン系感圧接着剤などの感圧接着剤がある。
【0062】
本開示のさらに別の態様において、
図5A、
図5B及び
図5Cは、粘着層と組み合わせた共硬化性ポリウレタン系フィルムの実施例を示す。
図5Aに示す共硬化性ポリウレタン系被覆材料14は、粘着材料層52aに関連付けられ、設けられ、或いは、積層される。これにより、粘着層付き共硬化性ポリウレタン系フィルム50aが形成される。
図5Bに示す共硬化性ポリウレタン系被覆材料14は、粘着材料層52aに関連付けられ、設けられ、或いは、積層される。これにより、粘着層付き共硬化性ポリウレタン系フィルム50bが形成される。
図5Cは、別の態様を示しており、共硬化性ポリウレタン系被覆材料14は、第1の粘着材料層52aに関連付けられ、設けられ、或いは、積層される。さらに、この共硬化性ポリウレタン系被覆材料14に、第2の粘着材料層52aが積層される。これにより、2つの粘着層52aの間に共硬化性ポリウレタン系被覆材料14が介在する構成にて、2つの粘着層を備える共硬化性ポリウレタン系フィルム50cが形成される。さらに別の態様では、所望の数の接着層を、共硬化性ポリウレタン系被覆材料に接触させて、また、1つ以上の共硬化性ポリウレタン系被覆材料フィルム層の1つ以上の側面に接触させて設けることができる。
【0063】
必要であれば、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に、スクリム層を追加、又は関連付けることができる。スクリム層は、複合材料の製造に使用可能な補強層であって、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維などがある。スクリム層は、織布又は不織布で構成することができ、ガーゼ状の材料であってもよい。本開示の態様によれば、塗装積層体にスクリム層が含まれると、複合基板に保護層及び/又は補強構造が追加されるとともに、エポキシ系複合材料と共硬化されたポリウレタン系被覆材料層の性能を向上させることができる。
【0064】
図6A及び
図6Bは、スクリム層を含む態様を示している。
図6Aでは、共硬化性ポリウレタン系被覆材料14にスクリム層62aを組み合わせており、これにより、単層のスクリム層を備える共硬化性ポリウレタン系被覆材料60aが形成される。
図6Bは、限定するものではないが、複数の(例えば、2つの)共硬化性ポリウレタン系被覆材料層14の間にスクリム層62aが配置されることにより、スクリム層付き共硬化性ポリウレタン系被覆材料60bが形成される。さらに別の態様では、所望の数のスクリム層は、共硬化性ポリウレタン系被覆材料に接触させて、また、1つ以上の共硬化性ポリウレタン系被覆材料フィルム層の1つ以上の側面に接触させて設けることができる。
【0065】
さらに別の態様では、スクリム層及び粘着層の両方を共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に設けることができる。
図7A及び
図7Bは、限定するものではないが、本開示の共硬化性ポリウレタン系被覆材料層14にスクリム層62a及び粘着層52aを組み合わせた例を示す。
図7Aに示すように、第1の共硬化性ポリウレタン系被覆材料14は、フィルム層であってもよく、粘着材料層52aに関連付けられ、設けられ、或いは、積層される。次いで、この第1の共硬化性ポリウレタン系被覆材料14に、スクリム材料層62aが積層される。第2の共硬化性ポリウレタン系被覆材料層14もフィルム層であってもよく、スクリム材料層62aに積層される。よって、第1と第2の共硬化性ポリウレタン系被覆材料層14の間にスクリム材料層62aが介在する配置となる。これにより、スクリム層及び粘着層付きの共硬化性ポリウレタン系フィルムの積層体70aが形成される。
【0066】
図7Bに示すように、
図7Aの共硬化性ポリウレタン系被覆材料の積層体70aは、第2の共硬化性ポリウレタン系被覆材料に積層された第2の粘着層52aをさらに含む。これにより、2つの共硬化性ポリウレタン系被覆層14の各々に粘着層が「接合」された構成にて、1層のスクリム層と2層の粘着層を備える共硬化性ポリウレタン系フィルム積層体70が形成される。さらに別の態様では、所望の数のスクリム層及び/又は粘着層を、1つ又は複数の共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に接触させて、また、1つ又は複数の共硬化性ポリウレタン系被覆材料フィルム層の1つ以上の側面(例えば、内側、外側)に接触させて設けることができる。
【0067】
共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と、共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層で被覆された共硬化された共硬化性エポキシ系複合材料とは、部材(例えば、複合材料部材)、組立品、小組立品などの製造に用いることができ、また、そのような部材(例えば、複合材料部材)、組立品、小組立品を含む、より大型の固定構造物及び/又はビークルに利用可能である。そのような大型の固定構造物としては、例えば、ビル、橋、トラス構造などがある。また、大型のビークルとしては、例えば、有人及び無人の航空機、有人及び無人の宇宙船、有人及び無人の回転翼機、有人及び無人のホバークラフト、有人及び無人の地上車、有人及び無人の水上船、有人及び無人の水中船、有人及び無人の衛星など、また、それらの組み合わせがある。
【0068】
図8は、限定するものではないが、ビークル80として航空機を示している。
図8に示すように、ビークル80は、本開示の共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層で被覆可能な共硬化された共硬化性エポキシ系複合材料を設けることができる面、面部材(surface assemblies and sub-assemblies)などを有する。
図8に示すように、ビークル80は、胴体部セクション82を有する胴体部81と、翼セクション84を有する翼83と、尾部/垂直安定板セクション86を有する尾部/垂直安定板85と、を含む。共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と、共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料層で被覆された共硬化された共硬化性エポキシ系複合材料とは、少なくとも
図8に示す部材、組立品、小組立品などの製造に用いることができる。
【0069】
図9、
図10及び
図11は、限定するものではないが、本開示の態様による方法の概略を示すフローチャートである。
図9は、限定するものではないが例として方法100の概要を示しており、当該方法は、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層を、共硬化性エポキシ系複合材料に付着させること102を含む。この際に、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、UV安定剤及び硬化剤を含み、当該被覆材料は、約200nmから約800nmの波長域のUVに耐性を有するものとする。方法100は、さらに、共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料を形成すること104を含み、任意の工程として、当該共硬化性ポリウレタン系被覆材料層をフィルムとして付着させること106を含み、当該フィルムは単層であってもよい。
【0070】
図10は、限定するものではないが例として、方法200の概要を示しており、当該方法は、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層を、共硬化性エポキシ系複合材料に付着させること102を含む。この際に、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、UV安定剤及び硬化剤を含み、当該被覆材料は、約200nmから約800nmの波長域のUVに耐性を有するものとする。方法200は、さらに、共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料を形成すること104を含み、任意の工程として、当該共硬化性ポリウレタン系被覆材料層をフィルムとして付着させること106を含む。前記フィルムは単層であってもよい。さらに、任意の工程として、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料に少なくとも1つの粘着層を付着させること106を含む。さらに、任意の工程として、少なくとも1つの粘着層を、前記ポリウレタン系被覆材料と前記エポキシ系複合材料とのうちの少なくとも1つに付着させること108を含む。さらに、任意の工程として、少なくとも1つのスクリム材料層を、前記ポリウレタン系被覆材料と前記エポキシ系複合材料とのうちの少なくとも1つに付着させること110を含む。
【0071】
図11は、限定するものではないが例として、方法300を示しており、当該方法は、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料を準備すること202を含む。この際に、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料は、UV安定剤を含み、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、約200nmから約800nmの波長域のUVに対する耐性を有するものとする。前記方法は、さらに、共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料を、約250°Fから約370°Fの硬化温度で共硬化させること204を含む。これにより、共硬化されたポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料が形成される。この際に、前記硬化温度は、400°Fを超えないものとする。本開示の態様によれば、
図11に概要を示す方法300において、
図9及び/又は
図10に示す共硬化された共硬化性ポリウレタン系被覆材料で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料を用いることができる。
【0072】
さらに別の態様によれば、少なくとも
図9、
図10及び/又は
図11に概要を示す方法において、前記ポリウレタン系被覆材料で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化性又は共硬化されたポリウレタン系被覆材料と前記共硬化性又は共硬化されたエポキシ系複合材料との間に介在する表層材層を含まない。
【0073】
さらに別の態様によれば、少なくとも
図9、
図10及び/又は
図11に概要を示す方法において、前記ポリウレタン系被覆材料で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化性又は共硬化されたポリウレタン系被覆材料と前記共硬化性又は共硬化されたエポキシ系複合材料との間に介在するプライマー層を含まない。
【0074】
さらに、本開示は、以下の付記による実施例も包含する。
【0075】
付記1.少なくとも一層の共硬化性ポリウレタン系被覆材料(14)を含む、共硬化性エポキシ系複合材料(16)であって、
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料は、前記共硬化性エポキシ系複合材料に直接的に配置されて、共硬化性ポリウレタン系被覆材料層で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料(18)を形成するとともに、
所定量のUV安定剤(12b)と、
所定量の硬化制御剤(12c)と、を含むものである、共硬化性エポキシ系複合材料。
【0076】
付記2.前記UV安定剤及び前記硬化制御剤は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に導入されている、付記1に記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【0077】
付記3.前記共硬化性エポキシ系複合材料は、炭素繊維強化エポキシ材料、ガラス繊維強化エポキシ材料、ホウ素繊維強化エポキシ材料、アラミド繊維強化繊維材料、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである、付記1又は2に記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【0078】
付記4.前記共硬化性エポキシ系複合材料は、約250°Fから約370°Fの温度で、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と共硬化するよう構成されている、付記1~3のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【0079】
付記5.前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に接触するように設けられた少なくとも1つの粘着層(52)をさらに含む、付記1~4のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【0080】
付記6.前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に配置された少なくとも1つのスクリム層(62a)をさらに含む、付記1~5のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【0081】
付記7.前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に配置された少なくとも1つのスクリム層と、
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層に接触するように設けられた少なくとも1つの粘着層と、
をさらに含む、付記1~6のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【0082】
付記8.前記共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化性エポキシ系複合材料との間に介在する表層材層を含まず、
前記共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化性エポキシ系複合材料との間に介在するプライマー層を含まない、
付記1~7のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【0083】
付記9.前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、厚みが約2ミルから約3ミルである場合において、約200nmから約800nmの波長域のUV透過率が0%であり、Tgが約50°Fから約250°Fである、付記1~8のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【0084】
付記10.前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、前記共硬化性エポキシ系複合材料にフィルム(14)として付着される、
付記1~9のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料。
【0085】
付記11.付記1~10のいずれか1つに記載の共硬化性エポキシ系複合材料を含む複合材料部材。
【0086】
付記12.共硬化されたポリウレタン系被覆材料(14a)と、
共硬化されたエポキシ系複合材料(16a)と、を含んで構成される、共硬化されたポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料(19)であって、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料の層は、所定量のUV安定剤を含むものである、
共硬化されたポリウレタン系被覆付きエポキシ系複合材料(19)。
【0087】
付記13.前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層の平均厚みが約2ミルから約3ミルである場合において、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層のUV透過率は0%である、付記12に記載の共硬化されたエポキシ系複合材料。
【0088】
付記14.前記共硬化性エポキシ系複合材料は、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化されたエポキシ系被覆材料との間に介在する表層材層を含まず、
前記共硬化されたエポキシ系複合材料は、前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化されたエポキシ系被覆材料との間に介在するプライマー層を含まない、
付記12又は13に記載の共硬化されたエポキシ系複合材料。
【0089】
付記15.前記共硬化されたポリウレタン系被覆材料層の電気抵抗値は、1000kΩ超である、付記12~14のいずれか1つに記載の共硬化されたエポキシ系複合材料。
【0090】
付記16.付記12~15のいずれか1つに記載の共硬化されたエポキシ系複合材料を含む複合材料部材(82)(84)(86)。
【0091】
付記17.付記16に記載の複合材料を含むビークル(80)であって、有人航空機、無人航空機、有人宇宙船、無人宇宙船、有人回転翼機、無人回転翼機、有人地上車、無人地上車、有人水上船、無人水上船、有人水中船、衛星、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるビークル。
【0092】
付記18.共硬化性ポリウレタン系被覆材料層(14)を共硬化性エポキシ系複合材料(16)に直接に付着させること(102)と、
共硬化性ポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料(18)を形成すること(104)と、を含み、前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層は、
UV安定剤(12b)と、
硬化制御剤(12c)と、を含むものである、方法(100)(200)。
【0093】
付記19.前記ポリウレタン系被覆材料層を前記共硬化性エポキシ系複合材料に直接に付着させることは、
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層をフィルムとして付着させること(106)をさらに含む、付記18に記載の方法。
【0094】
付記20.前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化性エポキシ系複合材料とのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの粘着層(52)を付着させること(108)をさらに含む、付記18又は19に記載の方法。
【0095】
付記21.前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化性エポキシ系複合材料とのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのスクリム層(62a)を付着させること(110)をさらに含む、
付記18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
付記22.共硬化されたエポキシ系複合材料(19)を形成する方法(300)であって、
UV防止剤(12b)及び硬化制御剤(12c)を含む共硬化性ポリウレタン系被覆材料層(14)で被覆された共硬化性エポキシ系複合材料(16)を準備すること(202)と、
前記共硬化性ポリウレタン系被覆材料層と前記共硬化性エポキシ系複合材料とを、約250°Fから約370°Fの温度で共硬化して、共硬化されたポリウレタン被覆付きエポキシ系複合材料(19)を形成すること(204)と、を含む方法。
【0097】
なお、当然ながら、本開示の態様は、本開示の本質的な特徴から逸脱することなく、上述した説明とは別の態様で実施することが可能である。本態様は、あらゆる点において単なる例示であり、限定的なものではないと考えられるべきである。また、請求項の意味範囲及び均等範囲に含まれる変更はすべて請求項に包含される。