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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】端子カバー
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/70 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H01R4/70 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020147665
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042299
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高井 伸綱
(72)【発明者】
【氏名】勝又 正範
(72)【発明者】
【氏名】今尾 有宏
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-067979(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0053739(KR,A)
【文献】特開2016-213086(JP,A)
【文献】特開2011-198585(JP,A)
【文献】実開昭61-117466(JP,U)
【文献】特開平04-341771(JP,A)
【文献】特開平08-162182(JP,A)
【文献】実開平05-043471(JP,U)
【文献】特開2006-324068(JP,A)
【文献】特開2001-296708(JP,A)
【文献】特表2012-532811(JP,A)
【文献】米国特許第05681185(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1817985(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/70
H01R 9/00
H01R 9/15-9/28
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に設けられた端子を取り囲むように互いに組み付けられる第1カバー及び第2カバーを備える、端子カバーであって、
前記第1カバーは、
前記第2カバーに向けて突出し且つ当該第1カバーと前記第2カバーとの組付方向に沿って延びるレール突起と、前記レール突起から突出して前記組付方向と直交する幅方向への前記第2カバーの移動を規制する規制部と、を有するガイドレールを有し、
前記第2カバーは、
前記組付方向に沿って延び且つ前記ガイドレールを受け入れるレール溝と、前記レール溝に設けられ且つ前記規制部に係合して前記方向への移動が規制される被規制部と、を有し、
前記第1カバーの前記幅方向の両側の各々に、上下一対の前記レール突起及び上下一対の前記規制部が、前記組付方向及び前記幅方向と直交する上下方向に間隔を空けて設けられ、
前記第2カバーの前記幅方向の両側の各々に、上下一対の前記レール突起に対応する前記レール溝と、上下一対の前記規制部に対応する上下一対の前記被規制部と、が設けられ
前記第1カバーと前記第2カバーとの間に、前記端子と相手側端子との接続箇所を収容可能な空間が画成される、
端子カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の端子カバーにおいて、
前記第1カバーは、
前記上下一対の前記レール突起に挟まれる位置に設けられる係止部を、更に有し、
前記第2カバーは、
前記係止部に係合して前記組付方向における当該第2カバーの移動が規制される被係止部を、更に有する、
端子カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに組み付けられる第1カバー及び第2カバーを備える端子カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載されるバッテリ等と各種の電装品(例えば、エンジン始動に用いるスタータ等)とが、電線を用いて電気的に接続されている。この種の電線を電装品に取り付けるにあたり、電線の端末に設けられた端子と電装品に設けられた相手側端子との接続箇所を、端子カバーで覆う場合がある。端子カバーは、接続箇所を物理的衝撃から保護することや、接続箇所を周辺部材から隔離して絶縁すること等を目的に用いられている。例えば、従来の端子カバーの一つは、端子に固定される本体部と、本体部に組み付けられて端子を覆う蓋部と、を有している(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-324068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の端子カバーは、一般に、通常の使用環境下で想定される程度の大きさの外力が及ぼされても容易には端子から外れない(即ち、意図しない分離が生じない)ように設計されている。しかし、例えば、車両の衝突時などにおいて端子カバーに過大な外力が及ぼされると、端子カバーの蓋部が本体部から分離し、端子同士の接続箇所が端子カバーの外部に露出する可能性がある。このような露出は、端子カバーが接続箇所を適正に保護および絶縁する観点において好ましくない。そこで、外力に対する端子カバーの耐久性を出来る限り高めることが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子同士の接続箇所を覆った状態を強固に維持可能な端子カバーの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子カバーは、下記[1]~[]を特徴としている。
[1]
電線の端末に設けられた端子を取り囲むように互いに組み付けられる第1カバー及び第2カバーを備える、端子カバーであって、
前記第1カバーは、
前記第2カバーに向けて突出し且つ当該第1カバーと前記第2カバーとの組付方向に沿って延びるレール突起と、前記レール突起から突出して前記組付方向と直交する幅方向への前記第2カバーの移動を規制する規制部と、を有するガイドレールを有し、
前記第2カバーは、
前記組付方向に沿って延び且つ前記ガイドレールを受け入れるレール溝と、前記レール溝に設けられ且つ前記規制部に係合して前記方向への移動が規制される被規制部と、を有し、
前記第1カバーの前記幅方向の両側の各々に、上下一対の前記レール突起及び上下一対の前記規制部が、前記組付方向及び前記幅方向と直交する上下方向に間隔を空けて設けられ、
前記第2カバーの前記幅方向の両側の各々に、上下一対の前記レール突起に対応する前記レール溝と、上下一対の前記規制部に対応する上下一対の前記被規制部と、が設けられ
前記第1カバーと前記第2カバーとの間に、前記端子と相手側端子との接続箇所を収容可能な空間が画成される、
端子カバーであること。
[2]
上記[1]に記載の端子カバーにおいて、
前記第1カバーは、
前記上下一対の前記レール突起に挟まれる位置に設けられる係止部を、更に有し、
前記第2カバーは、
前記係止部に係合して前記組付方向における当該第2カバーの移動が規制される被係止部を、更に有する、
端子カバーであること
【0007】
上記[1]の構成の端子カバーによれば、第1カバーが有するレール突起を第2カバーが有するレール溝に挿入するように、第1カバーと第2カバーとを相対的にスライドさせることで、第1カバーと第2カバーとが互いに組み付けられる。第1カバーと第2カバーとが組み付けられた際、レール突起から突出する規制部と、レール溝に設けられる被規制部と、が係合する。これにより、組付方向と直交する幅方向に第2カバーが第1カバーに対して移動することが規制される。よって、例えば、第2カバーに周辺の部材が勢いよく衝突等した場合において、第2カバーに変形や位置ズレが生じようとしても、規制部と被規制部との係合により、そのような変形や位置ズレが抑制される。換言すると、レール突起とレール溝とが適正に噛み合わされた状態が維持される。その結果、規制部および被規制部が設けられない場合に比べ、第1カバーと第2カバーとが組み付けられた状態がより強固に維持されることになる。したがって、本構成の端子カバーは、端子同士(例えば、車両のバッテリに繋がる電線の端末の端子と、スタータに設けられた柱状の端子と)の接続箇所を覆った状態を強固に維持可能である。
更に、上記[1]の構成の端子カバーによれば、接続箇所の大きさに応じて必要な大きさの空間を端子カバー内に設けることができる。ここで、端子カバー内に大きな空間がある場合、第2カバーに外力が及ぶと、その空間内に向けて第2カバーが撓むように変形し得る。しかし、仮にそのような変形が生じたとしても、規制部と被規制部との働きにより、第1カバーと第2カバーとが組み付けられた状態が強固に維持されることになる。
【0008】
なお、本構成の端子カバーは、例えば、第1カバー及び第2カバーの一方が端子に装着され、その一方に他方が取り付けられることで、端子を取り囲むように配置されることになる。ここで、レール突起は、それらのうちの端子に装着される方(即ち、第1カバー及び第2カバーの一方)に設けられてもよいし、それらのうちの端子に装着されない方(即ち、第1カバー及び第2カバーの他方)に設けられてもよい。レール溝についても同様である。更に、規制部は、例えば、組付方向に延びる突条であってもよいし、不連続な突起等であってもよい。被規制部についても同様である。
【0009】
上記[2]の構成の端子カバーによれば、係止部(例えば、ロックアーム)と被係止部(例えば、係止用の孔)との係合により、第1カバーと第2カバーとが組み付けられた状態が強固に維持されることになる。更に、一対のレール突起に係止部が挟まれることで、レール突起が係止部を保護する保護壁としても働くことになり、外力が係止部に及ぶことが抑制される。よって、係止部が被係止部から意図せず分離することが抑制される。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、端子同士の接続箇所を覆った状態を強固に維持可能な端子カバーを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る端子カバー、端子カバーにより取り囲まれる端子、及び、端子に接続される相手側の端子を有する電装品、を分解した状態を示す斜視図である。
図2図2(a)は、電装品の端子に接続された端子に装着されたロアカバーにアッパカバーを組み付ける際の様子を示す斜視図であり、図2(b)は、アッパカバーの背面図であり、図2(c)は、図2(a)に示す、端子に装着されたロアカバーの背面図である。
図3図3は、図1に示す端子カバーが、電装品の端子に接続された端子を取り囲むように端子に組み付けられた状態を示す斜視図である。
図4図4(a)は、図3に示す端子カバー及び電装品の側面図であり、図4(b)は、図3に示す端子カバー及び電装品の背面図である。
図5図5(a)は、図4のA-A断面図であり、図5(b)は、図5(a)のB-B断面図である。
図6図6は、図5(a)に示すレール突起とレール溝との係合箇所の拡大図であり、図6(a)は、ロアカバー側の規制部とアッパカバー側の被規制部との係合によってアッパカバーの側壁部が開く変形が抑制される様子を説明するための図であり、図6(b)は、一対のレール突起に挟まれているロックアームに外力が及ぶことが抑制される様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る端子カバー1について説明する。端子カバー1は、例えば、図1及び図3に示すように、車両に搭載されるバッテリ(図示省略)から延びる電線5の端末に接続された端子4と、電装品6(例えば、スタータモータ)に設けられた柱状の端子53と、の接続箇所を取り囲むように端子4に組み付けられて使用される。これにより、端子カバー1は、当該接続箇所を車両に搭載された周辺部材の衝突から保護し且つ当該接続箇所を周辺部材から隔離して絶縁する等の機能を発揮する。
【0015】
以下、説明の便宜上、図1図6に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、端子カバー1を構成する後述するロアカバー2とアッパカバー3との組付方向と一致し、幅方向は、組付方向に交差する交差方向と一致し、上下方向は、車両に搭載された周辺部材が端子カバー1に衝突する可能性がある方向と一致している。
【0016】
図1及び図3に示す例では、端子4は、貫通孔42が形成された平板部41を有し、平板部41には、外周縁の異なる2箇所からそれぞれ下方に延びる2つの回り止め片43が設けられている。電装品6が有する円柱状の筐体の上面に設けられた突部51の上面には、上方に更に突出する直方体状の台座部52が設けられており、台座部52の上面の中央部から柱状の端子53が突出している。端子53は、所謂スタッドボルドである。
【0017】
端子カバー1は、図1図3に示すように、互いに組み付けられるロアカバー2とアッパカバー3とで構成される。以下、端子カバー1を構成する各部材について順に説明する。
【0018】
まず、ロアカバー2について説明する。樹脂製のロアカバー2は、図1に示すように、前後方向に延びる底壁部11と、底壁部11の幅方向両側縁から上方に突出し且つ前後方向に延びる一対の側壁部12と、底壁部11の略円弧状の前端縁から上方に突出し且つ略円弧状に延びて一対の側壁部12の前端部の双方と連続する前壁部13と、を有する。このため、ロアカバー2は、大略的には、後方且つ上方に開口し且つ前後方向に延びる箱状の形状を有している。ロアカバー2に、電線5に接続された端子4が装着されることになる。
【0019】
一対の側壁部12のうち、幅方向一側の側壁部12(図1において紙面奥側の側壁部12)は、前後方向の一部分を除いて、幅方向他側の側壁部12と比べて上方への突出高さが大きくされている。以下、幅方向一側の側壁部12のうち突出高さが幅方向他側の側壁部12の突出高さと同等である前記一部分を「非延出部12a」と呼ぶ。底壁部11の前端部には、上下方向に貫通する略円形の貫通孔14が形成されている(図5(b)も参照)。
【0020】
幅方向一側の非延出部12aからは、略矩形平板状の電線押え片15が延出している。電線押え片15は、非延出部12aに繋がる基端縁15aを中心に、幅方向一側へ倒れた図1に示す閉位置と、上方へ起立する開位置との間を回動可能となっている。電線押え片15の延出端部には、電線押え片15の閉位置にて幅方向他側の側壁部12の上端部に設けられた係止部12b(図1参照)と係合可能な被係止部15b(図1参照)が設けられている。
【0021】
一対の側壁部12のそれぞれの幅方向外側面には、上下方向に間隔を空けて前後方向に延びる一対のガイドレール16が設けられている。図2(c)に示すように、各側壁部12について、上下一対のガイドレール16は、側壁部12から幅方向外側に突出し且つ前後方向に延びる一対のレール突起17と、一対のレール突起17の突出端部から上下方向外側へ突出し且つ前後方向に延びる一対の規制部18と、で構成されている。即ち、上下一対のガイドレール16の各々は、前後方向からみて、規制部18の突出向きが互いに逆向きのL字状の形状を有している。
【0022】
幅方向一側の側壁部12については、非延出部12aより上方の位置にて一対のガイドレール16が設けられていることに起因して、前後方向における非延出部12aに対応する位置には一対のガイドレール16が存在しない。換言すれば、幅方向一側の一対のガイドレール16は、前後方向の一部分にて不連続な前後方向に延びる一対の突条を構成している。なお、幅方向他側の一対のガイドレール16は、前後方向に亘って連続する前後方向に延びる一対の突条を構成している。幅方向一側の側壁部12の突出高さが幅方向他側の側壁部12の突出高さより大きいことに起因して、幅方向一側の一対のガイドレール16は、幅方向他側の一対のガイドレール16より上方に位置している(図2(c)参照)。
【0023】
一対の側壁部12のそれぞれの幅方向外側面には、一対のガイドレール16の間の位置(一対のガイドレール16に挟まれた位置)にて、前端を固定端とし後端を自由端として前後方向に延びる片持ち梁状のロックアーム19が設けられている。各ロックアーム19は、幅方向に弾性変形可能である。各ロックアーム19の前後方向中央部の幅方向外側面には、幅方向外側に突出する係止突起21が形成されている。底壁部11の略円弧状の前端縁には、外周縁の2箇所からそれぞれ下方に延びる2つの回り止め片22が設けられている。以上、ロアカバー2について説明した。
【0024】
次いで、アッパカバー3について説明する。樹脂製のアッパカバー3は、図1及び図2(b)に示すように、前後方向に延びる上壁部31と、上壁部31の幅方向両側縁から下方に突出し且つ前後方向に延びる一対の側壁部32と、上壁部31の略円弧状の前端縁から下方に突出し且つ略円弧状に延びて一対の側壁部32の前端部の双方と連続する前壁部33と、を有する。
【0025】
このため、アッパカバー3は、大略的には、後方且つ下方に開口し且つ前後方向に延びる箱状の形状を有している。幅方向一側の一対のガイドレール16が幅方向他側の一対のガイドレール16より上方に位置することに起因して、幅方向一側の側壁部32が幅方向他側の側壁部32より上方に位置し、且つ、上壁部31が幅方向一側に向けて上る向きに傾斜している(図2(b)参照)。
【0026】
一対の側壁部32のそれぞれの幅方向内側面には、図2(b)に示すように、上下一対のレール突起17に対応して、幅方向外側へ窪み且つ前後方向に延びるレール溝34と、上下一対の規制部18に対応して、レール溝34の底部(幅方向外側端部)にて上下方向に窪み且つ前後方向に延びる一対の被規制部35と、が形成されている。即ち、各側壁部32について、レール溝34及び上下一対の被規制部35は、前後方向からみて、T字状の溝を構成している。
【0027】
各側壁部32には、図1及び図2(a)に示すように、ロアカバー2の対応する側壁部12の係止突起21に対応して、幅方向に貫通する係止孔36が形成されている。以上、アッパカバー3について説明した。
【0028】
次いで、電線5の端末に接続された端子4と電装品6の端子53との接続箇所を取り囲むように端子カバー1を端子4に組み付ける手順について説明する。まず、電線5が接続された端子4をロアカバー2に対して固定する。このため、ロアカバー2の電線押え片15を開位置に維持した状態で、図2(a)に示すように、端子4の平板部41の貫通孔42がロアカバー2の貫通孔14(図1参照)から露出するように、電線5に接続された端子4を上方から、ロアカバー2に装着する。次いで、電線押え片15を閉位置に回動させて、電線押え片15の被係止部15bを係止部12bに係合させる。これにより、電線押え片15が端子4を上から押えた状態で閉位置に維持されることで、端子4がロアカバー2に対して固定される。
【0029】
次いで、端子4が固定されたロアカバー2を、電装品6の上方に配置し、電装品6の端子53が、ロアカバー2の貫通孔14から露出する端子4の貫通孔42(図1参照)を挿通するように、ロアカバー2及び電装品6を上下方向に互いに近づける。次いで、ロアカバー2の2つの回り止め片22(図1参照)が電装品6の突部51の対応する側壁にそれぞれ当接し、且つ、端子4の2つの回り止め片43(図1参照)が電装品6の台座部52の対応する側壁にそれぞれ当接するように、ロアカバー2の底壁部11を突部51の上面に当接させる(図5(b)も参照)。これにより、ロアカバー2及び端子4の電装品6に対する回動が規制される。
【0030】
次いで、図2(a)に示すように、端子4の貫通孔42から上方に突出する電装品6の端子53にナット7を取り付けて、ナット7を規定トルクで端子53(スタッドボルト)に対して締め付ける。このとき、ロアカバー2及び端子4の電装品6に対する回動が規制されているので、ナット7の回転に連動したロアカバー2及び端子4の共回りが発生しない。以上により、図2(a)に示すように、端子4と電装品6の端子53とが締結固定されて互いに接続されると共に、ロアカバー2、端子4及び電装品6が一体化される。
【0031】
次いで、アッパカバー3をロアカバー2に組み付ける。このため、アッパカバー3をロアカバー2の前方に配置し、図2(a)の白矢印に示すように、アッパカバー3をロアカバー2に対して後方にスライドさせて、アッパカバー3の各レール溝34及び各被規制部35に、ロアカバー2の対応する一対のレール突起17及び対応する規制部18をそれぞれ挿入・嵌合させていく(図5(a)参照)。
【0032】
このスライド作業は、一対のロックアーム19の一時的な幅方向内側への弾性変形を経て、一対のロックアーム19の係止突起21がアッパカバー3の一対の係止孔36に係止されるまで、継続される(図4(a)及び図5(b)参照)。そして、一対の係止突起21が一対の係止孔36に係止されることで、アッパカバー3のロアカバー2への組み付け作業が完了し、端子カバー1の端子4への組み付けが完了する(図3図5参照)。
【0033】
アッパカバー3のロアカバー2への組付完了状態(即ち、端子カバー1の端子4への組付完了状態)では、係止突起21と係止孔36との係止により、アッパカバー3のロアカバー2に対する前方へのスライドが規制されて、ロアカバー2とアッパカバー3とが組み付けられた状態が強固に維持される。
【0034】
アッパカバー3のロアカバー2への組付完了状態では、端子4と電装品6の端子53との接続箇所が、ロアカバー2とアッパカバー3との間に取り囲まれ、且つ、ロアカバー2とアッパカバー3との間に当該接続箇所を収容する空間S(図5(b)参照)が形成される。これにより、当該接続箇所は、車両に搭載された周辺部材の衝突から保護され、且つ、周辺部材から隔離して絶縁される。
【0035】
アッパカバー3のロアカバー2への組付完了状態では、図5(a)に示すように、レール突起17から突出する規制部18と、レール溝34に設けられる被規制部35と、が係合することで、幅方向(組付方向に交差する交差方向)に、アッパカバー3の側壁部32がロアカバー2の側壁部12に対して移動することが規制される。
【0036】
これにより、例えば、アッパカバー3の上壁部31に上方から車両に搭載された周辺部材が衝突等した場合において、図6(a)の白矢印に示すように、アッパカバー3の側壁部32が、ロアカバー2の側壁部12に対して開くように(幅方向外側に変位するように)変形しようとしても、レール突起17とレール溝34との係合により、レール突起17とレール溝34とが噛み合わされた状態が維持される。
【0037】
更には、図6(b)の白矢印に示すように、上下一対のレール突起17とレール溝34との嵌合箇所を上下方向に挟む方向から外力が作用した場合において、ロックアーム19が上下一対のレール突起17に挟まれているため、当該外力がロックアーム19自体に及ぶことが抑制される。
【0038】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る端子カバー1によれば、ロアカバー2が有するレール突起17をアッパカバー3が有するレール溝34に挿入するように、ロアカバー2とアッパカバー3とを相対的にスライドさせることで、ロアカバー2とアッパカバー3とを互いに組み付けることができる。ロアカバー2とアッパカバー3とが組み付けられた際、レール突起17から突出する規制部18と、レール溝34に設けられる被規制部35と、が係合することで、組付方向(前後方向)に交差する交差方向(幅方向)に、アッパカバー3がロアカバー2に対して移動することが規制される。これにより、例えば、アッパカバー3に周辺の部材が衝突等した場合において、アッパカバー3の側壁部32に変形や位置ズレが生じようとしても、レール突起17とレール溝34との係合(特に、規制部18と被規制部35との係合)により、レール突起17とレール溝34とが適正に噛み合わされた状態が維持される。その結果、規制部18および被規制部35が設けられない場合に比べ、ロアカバー2とアッパカバー3とが組み付けられた状態がより強固に維持されることになる。したがって、本実施形態に係る端子カバー1は、車両のバッテリに繋がる電線5の端末に接続された端子4と、電装品6(スタータ等)に設けられた端子53との接続箇所を覆った状態を強固に維持可能である。
【0039】
更に、本実施形態に係る端子カバー1によれば、ロアカバー2側のロックアーム19の係止突起21と、アッパカバー3側の係止孔36との係合により、ロアカバー2とアッパカバー3とが組み付けられた状態が強固に維持されることになる。更に、ロックアーム19が一対のレール突起17に挟まれることで、外力が意図せずロックアーム19に及ぶことが抑制される。
【0040】
更に、本実施形態に係る端子カバー1によれば、端子4と端子53との接続箇所の大きさに応じて必要な大きさの空間S(図5(b)参照)を端子カバー1内に設けることができる。更に、端子カバー1内に大きな空間Sがある場合において、アッパカバー3に外力が及んだとき、その空間S内に向けてアッパカバー3が撓むように変形したとしても、規制部18と被規制部35との働きにより、ロアカバー2とアッパカバー3とが組み付けられた状態がより強固に維持される。
【0041】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0042】
上記実施形態では、ロアカバー2が端子4に装着され、ロアカバー2にアッパカバー3が組み付けられることで、端子4を取り囲むように端子カバー1が端子4に組み付けられている。これに対し、アッパカバー3が端子4に装着され、アッパカバー3にロアカバー2が組み付けられることで、端子4を取り囲むように端子カバー1が端子4に組み付けられてもよい。
【0043】
更に、上記実施形態では、レール突起17及び規制部18がロアカバー2に設けられ、レール溝34及び被規制部35がアッパカバー3に設けられている。これに対し、レール突起17及び規制部18がアッパカバー3に設けられ、レール溝34及び被規制部35がロアカバー2に設けられていてもよい。
【0044】
更に、上記実施形態では、ロアカバー2の各側壁部12に、上下一対のガイドレール16(レール突起17+規制部18)が設けられている。これに対し、ロアカバー2の各側壁部12に、単一のガイドレール16(レール突起17+規制部18)が設けられていてもよい。
【0045】
ここで、上述した本発明に係る端子カバー1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電線(5)の端末に設けられた端子(4)を取り囲むように互いに組み付けられる第1カバー(2)及び第2カバー(3)を備える、端子カバー(1)であって、
前記第1カバー(2)は、
前記第2カバー(3)に向けて突出し且つ当該第1カバー(2)と前記第2カバー(3)との組付方向に沿って延びるレール突起(17)と、前記レール突起(17)から突出して前記組付方向に交差する交差方向への前記第2カバー(3)の移動を規制する規制部(18)と、を有するガイドレール(16)を有し、
前記第2カバー(3)は、
前記組付方向に沿って延び且つ前記ガイドレール(16)を受け入れるレール溝(34)と、前記レール溝(34)に設けられ且つ前記規制部(18)に係合して前記交差方向への移動が規制される被規制部(35)と、を有する、
端子カバー(1)。
[2]
上記[1]に記載の端子カバー(1)において、
前記第1カバー(2)は、
一対の前記レール突起(17)を有し、前記一対の前記レール突起(17)に挟まれる位置に設けられる係止部(19)を、更に有し、
前記第2カバー(3)は、
前記係止部(19)に係合して前記組付方向における当該第2カバー(3)の移動が規制される被係止部(36)を、更に有する、
端子カバー(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の端子カバー(1)において、
前記第1カバー(2)と前記第2カバー(3)との間に、前記端子(4)と相手側端子(53)との接続箇所を収容可能な空間(S)が画成される、
端子カバー(1)。
【符号の説明】
【0046】
1 端子カバー
2 ロアカバー(第1カバー)
3 アッパカバー(第2カバー)
4 端子
5 電線
16 ガイドレール
17 レール突起
18 規制部
19 ロックアーム(係止部)
34 レール溝
35 被規制部
36 係止孔(被係止部)
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6