IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西岡 直美の特許一覧

<>
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図1
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図2
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図3
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図4
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図5
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図6
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図7
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図8
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図9
  • 特許-衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】衣服及び輪ゴム止め鼓ボタン
(51)【国際特許分類】
   A44B 1/18 20060101AFI20240806BHJP
   A44B 1/20 20060101ALI20240806BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A44B1/18 Z
A44B1/20
A41D27/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020158929
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052503
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】516220402
【氏名又は名称】西岡 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】西岡 直美
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-117805(JP,U)
【文献】登録実用新案第3182378(JP,U)
【文献】登録実用新案第3104515(JP,U)
【文献】実開昭55-157411(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0005862(US,A1)
【文献】登録実用新案第3038348(JP,U)
【文献】100均キットとお気に入りの生地で簡単かわいい「くるみボタン」のヘアゴムを手作り!,日本,2015年09月02日,https://cheersmama.jp/?p=23289
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 1/18
A44B 1/20
A41D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側を装飾面としたボタン本体と、
前記ボタン本体に形成された貫通穴と、
前記貫通穴に挿通される環状の伸縮性を有する紐部材と、
前記紐部材を前記貫通穴に挿通して前記紐部材の環状部分を前記ボタン本体に掛け回して形成される係止部と
を有し、
前記ボタン本体は扁平な形状をなし、
前記貫通穴は前記扁平な形状のボタン本体の表裏を貫通するように2個以上形成され、
前記係止部は前記紐部材の一端を一つの貫通穴に挿通し、その一端をボタン本体の表側において他の貫通穴に挿通した後にこの一端を前記ボタン本体に掛け回して形成されている
ことを特徴とする輪ゴム止め鼓ボタン。
【請求項2】
前記環状の紐部材は樹脂製の部材を含み、
前記ボタン本体も樹脂で形成される
ことを特徴とする請求項に記載の輪ゴム止め鼓ボタン。
【請求項3】
前記ボタン本体は前記ボタン本体の裏面から突出した突出部を有し、
前記貫通穴は前記突出部を貫通されて形成され、
前記係止部は前記紐部材の一端を貫通穴に挿通した後にこの一端を前記ボタン本体に掛け回して形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の輪ゴム止め鼓ボタン。
【請求項4】
請求項乃至のいずれかに記載された輪ゴム止め鼓ボタンが閉止される部分に用いられていることを特徴とする衣服。
【請求項5】
下身頃と上身頃とを前立て部分で合わせてボタンで係止する衣服であって、
前記下身頃及び前記上身頃の両方の前立て部分にそれぞれ形成されたボタンホールと、
前記下身頃及び前記上身頃の対応するそれぞれのボタンホールに係合される鼓ボタンと
を備えた衣服であって、
前記鼓ボタンとして請求項1乃至3に記載された輪ゴム止め鼓ボタンが用いられていることを特徴とする衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男女兼用(ユニセックス)に適した衣服及び鼓ボタンに係り、Yシャツやジャケット、コート等、下身頃と上身頃とを前立て部分(開閉部分)で合わせてボタンで係止する衣服、及びこのような衣服において袖や身頃の開閉部分に使用する輪ゴム止め鼓ボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Yシャツやジャケット、コート等の衣服において、袖や身頃の開閉部分に使用する衣服用ボタンは、表側を装飾的に加工したプラスチックや金属類をボタン本体とし、その表裏に貫通された孔に糸などで衣服の布地に縫い付けられて用いられる(例えば、特許文献1)。このように縫い付けられたボタンは、閉止する部位の他方の布に開けられたボタン穴にボタン本体を通すことで係合され開閉部分を閉止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-11512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のボタンでは、手洗いなどのときに袖をまくったり、衣服を着脱する際には、ボタンをボタン穴から外して袖口を拡げて、手を通したり抜いたりする必要があり、その作業が繁雑であった。また、衣服の製作時にあっては、ボタンを衣服に縫い付ける工程が複雑であり、その作業には熟練を要するという問題もあった。さらに、ボタンを用いた衣服には欧州由来の左上前は男性用、右上前は女性用といった国や地域、時代に因るしきたりや慣習があり、ボタンを縫い付ける下身頃が右側になるのか左側になるのかを縫製時に決めなければならず、男女兼用、所謂ユニセックスが広まりつつある昨今では不自由であり、時代のニーズに沿わないという指摘もある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、手洗いなどのときに袖をたくし上げたり衣服を着脱する際のボタンをボタン穴に対して挿入・脱外する作業を簡略化して衣服の袖まくりや着脱を容易なものにするとともに、衣服の製作時におけるボタンを縫い付ける工程を簡略化できる衣服及び輪ゴム止め鼓ボタンを提供することを目的とする。また、本発明は、ユニセックス時代に適合する左右上前身頃を自由自在に変更可能とする衣服及び輪ゴム止め鼓ボタンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、表側を装飾面としたボタン本体と、ボタン本体に形成された貫通穴と、貫通穴に挿通される環状の伸縮性を有する紐部材と、紐部材を貫通穴に挿通して紐部材の環状部分をボタン本体に掛け回して形成される係止部とを有する輪ゴム止め鼓ボタンである。このボタン本体はボタン本体の裏面から突出した突出部を有し、貫通穴は突出部を貫通されて形成され、係止部は紐部材の一端を貫通穴に挿通した後にこの一端をボタン本体に掛け回して形成されている。
【0007】
なお、上記発明では上記鼓ボタンとして本発明の輪ゴム止め鼓ボタンを用いることができ、この鼓ボタンは、環状の紐部材が樹脂製の部材を含み、ボタン本体も樹脂で成形することができる。
【0008】
また、本発明は、上記輪ゴム止め鼓ボタンが閉止される部分に用いられていることを特徴とする衣服である。この衣服は、下身頃と上身頃とを前立て部分で合わせてボタンで係止するものであり、下身頃及び上身頃の両方の前立て部分にそれぞれ形成されたボタンホールと、下身頃及び上身頃の対応するそれぞれのボタンホールに係合される鼓ボタンとを備えたことを特徴とする。
【0009】
さらに、上記発明において、環状の紐部材は樹脂製の環状部材を繊維部材で覆って構成されていることが好ましい。また、上記発明において、ボタン本体は扁平な形状をなし、貫通穴は扁平な形状のボタン本体の表裏を貫通するように2個以上形成され、係止部は紐部材の一端を一つの貫通穴に挿通し、その一端をボタン本体の表側において他の貫通穴に挿通した後にこの一端をボタン本体に掛け回して形成されていることが好ましい
【発明の効果】
【0010】
本発明の衣服によれば、Yシャツのように下身頃と上身頃とを前立て部分で合わせてボタンで係止する衣服において、下身頃及び上身頃のそれぞれに形成されたボタンホールに鼓ボタンを係合させて係止するため、左右の身頃を上身頃とするか下身頃とするかを自由自在に変更可能とすることができ、昔からのしきたりや習慣を尊重しつつ、男性用及び女性用とを区別することなく縫製できユニセックス時代に適合させるとともに、製造コストの削減やデザインの多様化を図ることができる。
【0011】
また、本発明の衣服によれば、Yシャツのように下身頃と上身頃とを合わせてボタンで係止する衣服において、下身頃及び上身頃のそれぞれに形成されたボタンホールに鼓ボタンを係合させて係止するため、前身頃の開閉が容易になるとともに、鼓ボタンごと取り替えられることから、シャツとボタンの組み合わせを自由に選択でき、ファッションの幅を広げることができる。
【0012】
さらに、本発明の輪ゴム留め鼓ボタンによれば、輪ゴムなどの環状の伸縮性を有する紐部材を貫通穴に挿通して紐部材の環状部分をボタン本体に掛け回して係止部を形成するため、手洗いなどのときに肘の方向へずり上げたり(たくし上げたり)、衣服を着脱する際のボタンをボタン穴から脱外する作業を簡略化できる。また、衣服の製作時におけるボタンを縫い付ける工程を簡略化でき、特に、鼓ボタンだけど分業化したり、衣服の制作時における作業を簡略化したりすることによって、例えば障害者等の習熟した技術を有さない者であっても製作作業に就くことができ、本発明の社会的な貢献も期待される。
【0013】
これについて詳述すると、特に、昨今では新型コロナウィルスやその他感染症の影響を受けて、手洗いの頻度が増し、さらに石けんを付けて数十秒かけて丁寧な手洗いが推奨されている。このため、手洗い時に袖口を肘のあたりまで「ずり上げ(たくし上げ)」て止めておきたいところであるが、従来の糸で縫い止めた袖口ボタンでは、肘の曲げ伸ばしに筋肉の太さの増減に対応できずすぐにずり落ちてしまう。また、袖口ボタンを外して捲り上げる作業が必要となり煩雑となる。
【0014】
これに対して、本実施形態では、袖口のボタン本体を外さずに紐部材の伸縮性の活用で、袖口を肘の方向へずり上げる(たくし上げる)ことにより、肘の曲げ伸ばし時における筋肉の太さ変化にも対応でき、好きな位置に係止させることができる。また、手洗い等が済んだ後には、袖口をつまんで手首方向に引っ張れば元通りの状態に復帰させることができ、手洗い時の作業が非常に簡単になる。
【0015】
また、袖口のボタン操作は、ほぼ着用後の片手操作となるために大変煩わしい操作である。特に不器用な人にとっては、毎朝の出勤前繁忙時に、洗濯ノリの効いたYシャツの袖口ボタンを止める作業は、両手では不可能であるために困難を極めたものとなりがちである。これに対し、本実施形態によれば、Yシャツ着用前に、輪ゴム止め鼓ボタンを両手で袖口の両ボタン穴に差し込み完成状態にセットしておいて、着用のときに手のひらを細めた腕を突き抜く。これによって、輪ゴム止め鼓ボタンのゴムが数センチ伸びるので、楽に着ることができて袖口は完成形となる。脱ぐときも輪ゴム止め鼓ボタンのゴムを片方の手で伸ばして手首を抜くだけですみ、袖口は最初のセット状態に戻り、反復動作が楽に可能となる。
【0016】
さらに一着をシーズン通して着るようなカフス付きウールジャケットや革ジャケットなどは袖口に輪ゴム止め鼓ボタンを一度セットしたままで数十回の着脱が可能であり、さらなる便利さが得られる。
【0017】
また、快活的な着こなし時に、袖口を前腕筋上にずり上げ(たくし上げ)て止めておきたいが、肘の曲げ伸ばしに伴い袖口はすぐにずり落ちてしまう。捲り上げはボタンを外したりの手間も掛かる上に無雑作感に欠ける。これに対し、本実施形態によれば、輪ゴム止め鼓ボタンが有する紐部材の数センチの伸縮性が前腕筋の拡大縮小の範囲を吸収することから、前腕筋上で止まり続けることができ、無雑作感を向上させつつ利便性を高めることができる。
【0018】
さらに、本実施形態によれば、以下のようなメリットが期待できる。
例えば、鼓ボタンの伸縮性によって、ボタンを含む衣服に関するデザインの多様化や高機能化を図る。これにより、ユニセックス用、子供服用などに応用したり、ボタンの取り替えが容易となるため、例えば、真っ赤な靴と白いシャツに真っ赤なボタンを組み合わせたり、ボタンと帽子や腕時計の皮バンドとを組み合わせたり、ボタンだけで赤、青、黄色などを組み合わせたり、ボタン糸の色のバリエーションを広げたり等というように組み合わせの多様性・交換性を高めてコーディネートの幅をもたせてファッション性を発展させることができる。
【0019】
また、衣服の前面の上前身頃も下前身頃も両方ともボタンホールだけになり、衣服の基本構造も変化させることができ、デザイン性のバリエーションの幅を広げることができる。さらに、ボタンを外してクリーニングやアイロンがけが楽になるため、クリーニング時やアイロンがけ時に輪ゴム止め鼓ボタンの紐部材が劣化するのを回避して、その寿命を長くできる。
【0020】
さらには、衣類製作工程において、輪ゴム止め鼓ボタンに係る工程だけを分業化が可能となる。このため、例えば各国の障害者施設に分業の一端を繋げていくNPO等の組織を立ち上げ、衣類製作工程を国際的に分業化及び連携化するとともに、各国障害者施設への長期安定的な仕事として各国の衣類用ボタンを大量に使用する企業などとコラボレーションを構築して、製品企画、製造販売の各段階において社会福祉との連携を絡めるようにして本発明の公益的な利用機会を拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る輪ゴム止め鼓ボタンを採用したシャツ(前身頃を開いた状態)を示す正面図及び背面図である。
図2】実施形態に係る輪ゴム止め鼓ボタンを採用したシャツ(前身頃を閉じた状態)を示す正面図及び背面図である。
図3】実施形態に係る輪ゴム止め鼓ボタンをセットする工程を示す説明図である。
図4】実施形態に係る輪ゴム止め鼓ボタンをセットする工程を示す説明図である。
図5】実施形態に係る輪ゴム止め鼓ボタンの使用状態を示す斜視図である。
図6】変更例に係る輪ゴム止め鼓ボタンを示す斜視図である。
図7】変更例に係る輪ゴム止め鼓ボタン(4つ穴)を示す斜視図である。
図8】変更例に係る輪ゴム止め鼓ボタンを採用したシャツを示す正面図である。
図9】変更例に係る輪ゴム止め鼓ボタンを採用したシャツを示す背面図である。
図10】変更例に係る輪ゴム止め鼓ボタンの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下にこの発明の輪ゴム止め鼓ボタン及び衣服の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。図1及び図2に本実施形態に係る輪ゴム止め鼓ボタンを採用したYシャツを示し、図3図5に本実施形態に係る輪ゴム止め鼓ボタンの取付け工程及び使用状態を示す。なお、図1における両前身頃にはボタンホールのみ設けられ、輪ゴム留め鼓ボタンは分離独立されている。また、図2では、左上前にして輪ゴム留め鼓ボタンをセットし、男物とした場合を例示している。
【0023】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るYシャツ1は、下身頃1aと上身頃1bとを前立て部分で合わせてボタンで係止する衣服であって、下身頃1a及び上身頃1bの両方の前立て部分にそれぞれ形成されたボタンホール10a及び10bと、下身頃1a及び上身頃1bの対応するそれぞれのボタンホール10a及び10bに係合される鼓ボタン2及び4とを有している。
【0025】
Yシャツ1は、綿やナイロン等で縫製されたYシャツであり、袖口1cや前身頃の下身頃1a及び上身頃1bの左右開閉部分である前立て部分や、その袖口1cの開閉部分を閉止するための輪ゴム止め鼓ボタン10が用いられている。なお、図1及び図2における両前身頃にはボタンホール10a及び10bのみが設けられ、前立て部分を閉止するために用いられるボタン類は一切付いていない。またYシャツ1において輪ゴム留め鼓ボタン10は分離独立されており、Yシャツ1を左上前にするか右上前とするかにかかわらず、輪ゴム留め鼓ボタン10をボタンホール10a及び10bに通すことで前立て部分を閉止することができる。なお、図1及び図2では、Yシャツ1を左上前にして輪ゴム留め鼓ボタン10をセットし、男物として仕立てた場合を例示している。
【0026】
輪ゴム止め鼓ボタン10は一対の鼓ボタン2及び4を紐部材3によって連結して構成されており、これら鼓ボタン2及び4は、図5に示すように、表側が装飾的に加工されたプラスチックや金属類で形成されたボタン本体20及び40を基体とし、輪ゴムなどの環状の紐部材3によってこれらボタン本体20及び40を連結して用いられ、下身頃1a及び上身頃1bの生地のそれぞれに形成されたボタンホール10a及び10bにそれぞれ係合されて下身頃1a及び上身頃1bを前立て部分で閉止させる。同図に示す使用状態の例にあっては、輪ゴム止め鼓ボタン10を構成する鼓ボタン2及び5が、閉止されるそれぞれの生地のボタンホール10a及び10bに挿通されて、袖口1cや身頃1a,1bの開閉部分を相互に引きつけて閉止するようになっている。
【0027】
詳述すると、鼓ボタン2は、表側を装飾面としたボタン本体20と、このボタン本体20に形成された貫通穴2a,2bと、これらの貫通穴2a,2bに挿通される環状の伸縮性を有する紐部材3とから構成される。図2図5に示した例においてボタン本体20は、扁平な円柱形の形状をなし、円形の貫通穴2a,2bがこの扁平なボタン本体20の中央部分の表裏を貫通するように2個並んで配置されている。なお、本実施形態では、ボタン本体20及び40は、同形のものを一対として用いるが、本発明はこれに制限されるものとではなく、異なる大きさ、形状、デザインとしたり、2個組み合わせて一つのデザインやコンセプトを表現するようにしてもよい。
【0028】
環状の紐部材3としては、例えば輪ゴムなどの天然ゴムや合成樹脂製の伸縮性・弾力性を有する環状部材である。なお、この環状の紐部材3としては、例えば、天然ゴム等の輪ゴムを芯として糸やゴム糸等の弾性糸などの繊維部材で覆って構成したものを採用することもできる。
【0029】
そして、紐部材3を貫通穴2a,2bに挿通して、紐部材3の環状部分をボタン本体20に掛け回して、ボタン本体20の背面側と、身頃1a又は1bの生地との間に係止部が形成されている。本実施形態において係止部は、図3及び図4に示すように、紐部材3の一端3aを一つの貫通穴2aに挿通し、その挿通した一端3aをボタン本体20の表側において他の貫通穴2bに挿通した後にこの一端3aをボタン本体20に掛け回して形成されている。
【0030】
また、鼓ボタン4は、輪ゴム止め鼓ボタン2と同形の円柱形をなすボタン本体40と、ボタン本体40に形成された貫通穴4a,4bと、これらの貫通穴4a,4bに挿通される環状の伸縮性を有する紐部材3とから構成される。図4及び図5に示した例においてボタン本体40は、扁平な円柱形の形状をなし、円形の貫通穴4a,4bがこの扁平なボタン本体40の中央部分の表裏を貫通するように2個並んで配置されている。
【0031】
そして、紐部材3を貫通穴4a,4bに挿通して、紐部材3他端側の環状部分をボタン本体40に掛け回して、ボタン本体40の裏面側に係止部が形成されている。本実施形態において係止部は、図4及び図5に示すように、紐部材3の他端3bを一つの貫通穴4aに挿通し、その挿通した他端3bをボタン本体40の表側において他の貫通穴4bに挿通した後にこの他端3bをボタン本体40に掛け回して形成されている。
【0032】
(輪ゴム止め鼓ボタンの製造工程)
以上説明した構成を有する輪ゴム止め鼓ボタン10を製造する工程について説明する。ここでは、一対の鼓ボタン2及び4を紐部材3で相互に連結して製作する場合を例に説明する。
【0033】
先ず、図3(a)に示すように、紐部材3の一端3aを一つの貫通穴2aに挿通する。次いで、同図(b)に示すように、その挿通した一端3aをボタン本体20の表側において他の貫通穴2bに挿通し、その後に、同図(c)に示すように、この一端3aをボタン本体20の上面側から下面側へと掛け回し、同図(d)に示すように、他端3bを下方へ引っ張って一端3aを引き締めて係止部を形成する。
【0034】
そして、図4(a)に示すように、紐部材3の他端3bを一つの貫通穴4aに挿通し、その挿通した他端3bを他方のボタン本体40の下側において他の貫通穴4bに挿通する。その後に、同図(b)及び(c)に示すように、この他端3bをボタン本体40の下面側から上面側(一方のボタン本体20側)へと掛け回し、同図(d)に示すように、ボタン本体40を下方へ引っ張って他端3bを引き締めて係止部を形成する。
【0035】
このように連結された鼓ボタン2及び4は、図5に示すような使用状態にあっては、一方の鼓ボタン2が下身頃1aのボタンホール10aに挿通され、他方の鼓ボタン4が上身頃1b側のボタンホール10bに挿通されて、袖口1cの開閉部分を閉止する。
【0036】
(変更例)
なお、以上説明した実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、図6に示すような、ボタン本体50の裏面から突出した円柱形の突出部50aを有するボタン5とすることができる。この場合、突出部50aの側面から反対側の側面へと貫通させて貫通穴50bを形成する。そして、係止部は紐部材3の一端3a(又は3b)を貫通穴50bに挿通した後にこの一端3a(又は3b)をボタン本体50に掛け回して形成する。
【0038】
また、上述した実施形態において鼓ボタン2及び4は、ボタン穴が二つ開けられた形状としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図7に示すように、ボタン穴が4つ開けられた形状としてもよい。この場合には、図3(a)~(d)と同様にして紐部材3の一端3aを一つの貫通穴2aに挿通し、その挿通した一端3aをボタン本体21の表側において他の貫通穴2bに挿通する。
【0039】
その後に、この一端3aをボタン本体20の上面側から下面側へと掛け回して他端3bを下方へ引っ張って一端3aを引き締めて係止部を形成する。次いで、他方の鼓ボタン4の、ボタン本体41の貫通穴4aに、紐部材3の他端3bを挿通し、その挿通した他端3bを他方のボタン本体41の下側において他の貫通穴4cに挿通する。さらに、この他端3bを一方のボタン本体21の貫通穴2cに挿通し、その挿通した他端3bをボタン本体21の表側において他の貫通穴2dに挿通する。
【0040】
そして、紐部材3の他端3bを、他方のボタン本体41の貫通穴4dに挿通し、その挿通した他端3bをボタン本体41の下側において他の貫通穴4bに挿通する。その後に、この他端3bをボタン本体41の下面側から上面側(一方のボタン本体20側)へと掛け回し、ボタン本体41を下方へ引っ張って他端3bを引き締めて係止部を形成する。このように連結された鼓ボタン2及び4は、4つの貫通穴2a~2d及び4a~4dの間を紐部材3を往復させることによって連結力を増加できる。
【0041】
さらに、上述した実施形態では同形状の鼓ボタン2及び4を、それぞれ上身頃1b、下身頃1aのボタンホール10a及び10bに通して用いる場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図8及び図9に示すように、上下の身頃1a及び1bの前立て部分(合わせ部分)などの部位において、一方の鼓ボタン(ここでは鼓ボタン4)を抜け防止用のボタンとして用いて、一方を下身頃に縫い付けるようにしてもよい。この場合には防止用のボタンとして用いられる方の鼓ボタンの径や厚さを小さめにしてもよい。なお、図8及び図9に示した例では、左右の身頃の上下が図1及び図2で示した例とは逆になっており、右上前の女性用としてゴム留め鼓ボタンがセットされた状態を例示している。
【0042】
詳述すると、図8及び図9に示すように、一方の身頃(ここでは下身頃1a)の生地裏面において紐部材3の他端3bを、抜け防止用の鼓ボタン4の一つの貫通穴4aに挿通し、その挿通した他端3bをボタン本体40の下側において他の貫通穴4bに挿通する。紐部材3の一端3aを、通し穴10cを通じて下身頃1aの生地を貫通させ、その一端3aに表側となる鼓ボタン2を括り付けることにより、鼓ボタン2は下身頃1aの生地に縫い付けられることとなる。このように縫い付けられた鼓ボタン2は、図10に示すような使用状態にあっては、他方の閉止される側の上身頃1bの生地に形成されたボタンホール10aに挿通されて身頃の開閉部分を閉止する。
【0043】
(作用・効果)
本実施形態によれば、Yシャツ1は、下身頃1aと上身頃1bとを合わせてボタンで係止するタイプの衣服であり、下身頃1a及び上身頃1bのそれぞれに形成されたボタンホール10a及び10bに、鼓ボタン2及び4を係合させて係止するため、左右の身頃を上身頃とするか下身頃とするかを自由自在に変更可能とすることができる。この結果、本実施形態によれば、昔からのしきたりや習慣を尊重しつつ、男性用及び女性用とを区別することなく縫製できユニセックス時代に適合させるとともに、製造コストの削減や、デザインの多様化を図ることができる。
【0044】
さらに、Yシャツ1は、下身頃1aと上身頃1bとを合わせてボタンで係止するタイプの衣服であり、下身頃1a及び上身頃1bのそれぞれに形成されたボタンホール10a及び10bに、鼓ボタン2及び4を係合させて係止するため、前身頃の開閉が容易となり、着衣及び脱衣を楽に行えるようになるとともに、鼓ボタン2及び4を適宜取り替えられることから、シャツとボタンの組み合わせを自由に選択でき、ファッションの幅を広げることができる。
【0045】
また、本実施形態では、輪ゴムなどの環状の伸縮性を有する紐部材3を貫通穴2a,2b,4a,4bに挿通して紐部材3の環状部分をボタン本体20,40,50に掛け回して係止部を形成するため、シャツやジャケットやコート等の袖口に使うとその利便性が発揮される。例えば、手洗い時などに、袖口1cを肘のあたりまで「ずり上げ(たくし上げ)」て止めておくことができ、肘の曲げ伸ばしよって腕の筋肉の太さが増減するようなときであっても、それに対応させて、袖口1cがずり落ちてしまうのを防ぐことができる。
【0046】
また、輪ゴム止め鼓ボタン10をボタン穴から脱外する作業を簡単にするとともに、このとき袖口ボタンを外して捲り上げるなどの煩雑な作業を不要にしたり、Yシャツ1の着脱を容易にしたりできる。さらに、本発明によれば、Yシャツ1の製作時における鼓ボタン2や鼓ボタン4を縫い付ける工程を簡略化できる。特に、Yシャツ1の製作時における作業を簡略化することにより、例えば障害者等の習熟した技術を有さない者であっても製作作業に就くことができ、本発明の社会的な貢献も期待される。
【0047】
特に、昨今では新型コロナウィルスやその他感染症の影響を受けて、手洗いの頻度が増し、さらに石けんを付けて数十秒かけて丁寧な手洗いが推奨されている。このため、手洗い時に袖口1cを肘のあたりまで「ずり上げ(たくし上げ)」て止めておきたいところであるが、従来の糸で縫い止めた袖口ボタンでは、肘の曲げ伸ばしに筋肉の太さの増減に対応できずすぐにずり落ちてしまう。また、袖口ボタンを外して捲り上げる作業が必要となり煩雑となる。
【0048】
これに対して、本実施形態では、袖口1cのボタン本体20,40,50を外さずに紐部材3の伸縮性の活用で、袖口1cを肘の方向へずり上げる(たくし上げる)ことにより、肘の曲げ伸ばし時における筋肉の太さ変化にも対応でき、好きな位置に係止させることができる。また、手洗い等が済んだ後には、袖口1cをつまんで手首方向に引っ張れば元通りの状態に復帰させることができ、手洗い時の作業が非常に簡単になる。
【0049】
また、袖口1cのボタン操作は、ほぼ着用後の片手操作となるために大変煩わしい操作である。特に不器用な人にとっては、毎朝の出勤前繁忙時に、洗濯ノリの効いたYシャツの袖口ボタンを止める作業は、両手では不可能であるために困難を極めたものとなりがちである。これに対し、本実施形態によれば、Yシャツ着用前に、鼓ボタン10を両手で両袖口1cのボタンホール10aと10bに差し込み袖口1cは閉じた状態にセットしておいて、着用のときに手のひらを細めた腕を突き抜く。これによって、鼓ボタン10のゴム(紐部材3)が数センチ伸びるので、楽に着ることができて袖口は完成形となる。脱ぐときも輪ゴム止め鼓ボタン10のゴムを片方の手で伸ばして手首を抜くだけですみ、袖口は最初のセット状態に戻り、反復動作が楽に可能となる。
【0050】
さらに一着をシーズン通して着るようなカフス付きウールジャケットや革ジャケットなどは袖口に鼓ボタン10を一度セットしたままで数十回の着脱が可能でありさらなる便利さが得られる。
【0051】
また、快活的な着こなし時に、袖口を前腕筋上にずり上げ(たくし上げ)て止めておきたいが、肘の曲げ伸ばしに伴い袖口はすぐにずり落ちてしまう。捲り上げはボタンを外したりの手間も掛かる上に無雑作感に欠ける。これに対し、本実施形態によれば、鼓ボタン10が有する紐部材3の数センチの伸縮性が前腕筋の拡大縮小の範囲を吸収することから、前腕筋上で止まり続けることができ、無雑作感を高めつつ利便性を高めることができる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、以下のようなメリットが期待できる。
例えば、紐部材3の伸縮性によって、ボタンを含む衣類に関するデザインの多様化や高機能化を図る。これにより、ユニセックス専用(男女兼用)、子供服、マタニティーウエアなどに応用したり、ボタンの取り替えが容易となるため、例えば、真っ赤な靴と白いシャツに真っ赤なボタンを組み合わせたり、ボタンと帽子や腕時計の皮バンドとを組み合わせたり、ボタンだけで赤、青、黄色などを組み合わせたり、ボタン糸の色のバリエーションを広げたり等というように組み合わせの多様性・交換性を高めてコーディネートの幅をもたせてファッション性を発展させることができる。
【0053】
また、衣服の前面の上前身頃も下前身頃も両方ともボタンホールだけになり、衣服の基本構造も変化させることができ、デザイン性のバリエーションの幅を広げることができる。さらに、ボタンを外してクリーニングやアイロンがけが楽になるため、クリーニング時やアイロンがけ時に輪ゴム止め鼓ボタン10の紐部材3が劣化するのを回避して、その寿命を長くできる。
【0054】
さらには、衣類製作工程において、輪ゴム止め鼓ボタン10に係る工程だけを分業化が可能となる。このため、例えば各国の障害者施設に分業の一端を繋げていくNPO等の組織を立ち上げ、衣類製作工程を国際的に分業化及び連携化するとともに、各国障害者施設への長期安定的な仕事として各国の衣服用ボタンを大量に使用する企業などとコラボレーションを構築して、製品企画、製造販売の各段階において社会福祉との連携を絡めるようにして本発明の公益的な利用機会を拡大させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…Yシャツ
1a…下身頃
1b…上身頃
1c…袖口
2,4…鼓ボタン
2a~2d…貫通穴
3…紐部材
3a…一端
3b…他端
4a~4d…貫通穴
5…ボタン
10…輪ゴム止め鼓ボタン
10a,10b…ボタンホール
10c…通し穴
20,40,50…ボタン本体
41…ボタン本体(4つ穴)
50a…突出部
50b…貫通穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10