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特許7534170モータの温度を検出する温度検出装置及びモータ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】モータの温度を検出する温度検出装置及びモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/25 20060101AFI20240806BHJP
   H02P 29/62 20160101ALI20240806BHJP
【FI】
G01K7/25 A
H02P29/62
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020160973
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054019
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】平山 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-274372(JP,A)
【文献】特開昭48-025574(JP,A)
【文献】特開平07-055588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H02P 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に応じて2つの電極端子の間の抵抗値が変化する温度検出素子の前記2つの電極端子を介して出力される電圧を測定する測定部と、
前記温度検出素子の感知温度と出力電圧との関係を示す温度-電圧特性が規定されたテーブルに従い、前記測定部により測定された電圧から温度情報を取得する取得部と、
設定された補正量を用いて前記取得部による取得処理を補正し、前記取得部から補正後の温度情報を出力させる補正部と、
設定モードにおいて前記測定部により測定された電圧に応じて前記補正量を設定する設定部と、
を備え、
前記測定部は、前記温度検出素子に前記2つの電極端子のうちの1つを介して直列接続される第1の分圧抵抗と、前記第1の分圧抵抗に直列接続されかつ前記2つの電極端子を介して前記温度検出素子に並列接続される第2の分圧抵抗とを有し、
前記設定部は、前記設定モードにおいて、前記温度検出素子が前記測定部から取り外された状態で前記測定部により測定された前記第2の分圧抵抗の両端に現れる電圧に応じて、前記補正量を設定する、温度検出装置。
【請求項2】
温度変化に応じて2つの電極端子の間の抵抗値が変化する温度検出素子の前記2つの電極端子を介して出力される電圧を測定する測定部と、
前記温度検出素子の感知温度と出力電圧との関係を示す温度-電圧特性が規定されたテーブルに従い、前記測定部により測定された電圧から温度情報を取得する取得部と、
設定された補正量を用いて前記取得部による取得処理を補正し、前記取得部から補正後の温度情報を出力させる補正部と、
設定モードにおいて前記測定部により測定された電圧に応じて前記補正量を設定する設定部と、
を備え、
前記取得部は、前記補正量に対応した前記温度-電圧特性が規定された前記テーブルを、複数の異なる前記補正量について記憶する記憶部を有し、
前記補正部は、前記設定部により設定された前記補正量に応じて、前記記憶部に記憶された複数の前記テーブルの中から前記取得部による取得処理において用いられるテーブルを選択する、温度検出装置。
【請求項3】
温度変化に応じて2つの電極端子の間の抵抗値が変化する温度検出素子の前記2つの電極端子を介して出力される電圧を測定する測定部と、
前記温度検出素子の感知温度と出力電圧との関係を示す温度-電圧特性が規定されたテーブルに従い、前記測定部により測定された電圧から温度情報を取得する取得部と、
設定された補正量を用いて前記取得部による取得処理を補正し、前記取得部から補正後の温度情報を出力させる補正部と、
設定モードにおいて前記測定部により測定された電圧に応じて前記補正量を設定する設定部と、
を備え、
前記補正部は、前記設定部により設定された前記補正量に応じて、前記取得部による取得処理において用いられる前記テーブルを補正する、温度検出装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記温度検出素子に前記2つの電極端子のうちの1つを介して直列接続される第1の分圧抵抗と、前記第1の分圧抵抗に直列接続されかつ前記2つの電極端子を介して前記温度検出素子に並列接続される第2の分圧抵抗とを有し、
前記設定部は、前記設定モードにおいて、前記温度検出素子が前記測定部から取り外された状態で前記測定部により測定された前記第2の分圧抵抗の両端に現れる電圧に応じて、前記補正量を設定する、請求項2または3に記載の温度検出装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記温度検出素子に前記2つの電極端子のうちの1つを介して直列接続される第1の分圧抵抗と、前記設定モードにおいて前記温度検出素子に代えて前記第1の分圧抵抗に直列接続されかつ前記設定モード以外において前記第1の分圧抵抗との直列接続が解除される第3の分圧抵抗とを有し、
前記設定部は、前記設定モードにおいて、前記測定部により測定された前記第3の分圧抵抗の両端に現れる電圧に応じて、前記補正量を設定する、請求項2または3に記載の温度検出装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記取得部により前記テーブルに従い温度情報が取得される際に用いられる前記測定部により測定された電圧を、前記補正量に応じて補正する、請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記設定モードを開始する指令を受信する受信部を有し、前記受信部が前記指令を受信したとき、前記補正量を設定する処理を開始する、請求項1~6のいずれか一項に記載の温度検出装置。
【請求項8】
モータの駆動を制御するモータ制御部と、
請求項1~7のいずれか一項に記載の温度検出装置と、
を備え、
前記温度検出装置は、前記モータの近傍に設けられた前記温度検出素子の前記2つの電極端子を介して出力される電圧に基づいて、前記補正後の温度情報を取得する、モータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの温度を検出する温度検出装置及びモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械やロボット内に設けられるモータに過剰な負荷がかかったり、モータ内の巻線に異常な高周波電流が流れると、モータは発熱する。また、モータの近傍に設けられる冷却装置の性能が不十分であると、モータの発熱を抑制することができない。モータが過剰に発熱すると、モータ内の磁石に熱減磁が発生したりモータ内の巻線が焼損することがある。このため、モータの近傍に設けられた温度検出素子を介して温度検出装置にてモータの温度情報を取得し、この温度情報に基づいてモータの過剰な発熱に対する様々な対応がとられている。
【0003】
温度検出素子としては、サーミスタや測温抵抗体といった温度に応じて2つの電極端子の間に現れる抵抗値が変化する素子が挙げられる。本願明細書においては、温度検出素子とは、温度に応じて抵抗が変化する素子を指すものとする。温度検出素子の2つの電極端子を介して電流が流れると、2つの電極端子の間には当該抵抗値に対応した電圧が発生する。2つの電極端子の間における電圧値の変化はすなわち抵抗値の変化である。温度検出素子の感知温度と出力電圧との間には一定の関係があるが、温度検出素子に接続された温度検出装置は、この関係を用いて、温度検出素子の出力電圧から温度情報を取得する。
【0004】
例えば、電動モータと、この電動モータを制御する制御装置とを備える電動モータ装置において、前記電動モータにおける励磁コイルに、この励磁コイルの温度を検出する温度検出素子が設けられ、前記制御装置は、前記励磁コイルに流す電流を求める電流検出手段と、前記励磁コイルにおける複数の領域に対して、前記電流検出手段で求められる前記励磁コイルの電流と、この励磁コイルにおける発熱および放熱特性を含む情報とから、前記励磁コイルにおける複数の領域の推定温度をそれぞれ算出するコイル温度推定手段と、前記温度検出素子で検出される前記励磁コイルの温度と、前記コイル温度推定手段で推定された前記複数の領域の推定温度のうち前記温度検出素子に位置が最も近い領域の推定温度との比較結果に基づいて、前記励磁コイルにおける複数の領域の温度分布または局所的な最大温度を推定する温度分布等推定手段と、を有することを特徴とする電動モータ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
例えば、ワイヤレスデータ通信を行うウェアラブル体温計に着脱自在に取り付けられ、標的対象の体温を感知して温度を測定するための温度センサの補正方法において、温度センサ毎に元抵抗値をサンプリングし、その元抵抗値を取得する元抵抗値取得行程と、取得した前記元抵抗値と標準温度計で計測した抵抗値との差に基づいて、前記温度を補正するための補正係数を算出する算出行程と、前記補正係数を測定機器の記憶媒体に記憶する記憶行程と、前記補正係数を体温計本体に送信する行程と、を備えることを特徴とする温度センサの補正方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
例えば、複数のパターン配線が形成された絶縁基板と、前記絶縁基板の表面上に実装された複数の電子部品と、各々が、前記絶縁基板の表面上または内部に取り付けられ、取り付け箇所の前記絶縁基板の温度に応じて電気特性が変化する複数の温度検出素子と、前記絶縁基板の表面上に実装され、専用のパターン配線を介して各前記温度検出素子に接続され、各前記温度検出素子の電気特性を検出可能な制御チップとを備え、前記制御チップは、各前記温度検出素子の電気特性から得られる前記絶縁基板の温度分布に基づいて、前記複数の電子部品のうち発熱源となっている電子部品を推定するように構成される、プリント基板が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
例えば、内燃機関搭載体に搭載された内燃機関の運転状態を制御する制御部を備えた内燃機関制御装置において、前記制御部は、前記内燃機関の雰囲気温度を取得し、前記内燃機関のインジェクタの抵抗値から前記インジェクタの温度であるインジェクタ温度を取得し、前記雰囲気温度及び前記インジェクタ温度から前記内燃機関の吸気温度上昇量を算出し、前記雰囲気温度に前記吸気温度上昇量を加算することで前記内燃機関の吸気温度を算出する、ことを特徴とする内燃機関制御装置が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-058131号公報
【文献】国際公開第2019/026323号
【文献】特開2015-046496号公報
【文献】特開2018-053743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
温度検出素子の出力電圧は、温度検出素子に接続された温度検出装置内の電圧測定回路によって測定される。電圧測定回路は、温度検出素子の2つの電極端子のうちの1つに接続される抵抗と、温度検出素子の2つの電極端子から出力される信号の差分を適切な信号レベルに増幅するオペアンプと、オペアンプから出力されるアナログ信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換部とを備える。
【0010】
モータの近傍に設けられる温度検出素子には、例えばPTCサーミスタ、NTCサーミスタ、白金測温抵抗体などがある。温度検出素子の温度変化に伴う出力電圧の変化は、素子の種類によって様々である。このため、温度検出素子の種類に応じて電圧測定回路をそれぞれ用意しなければならず、効率が悪い。
【0011】
一方で、1つの電圧測定回路にてより多くの種類の温度検出素子の出力電圧が検出可能であれば、効率が良い。1つの電圧測定回路にてより多くの種類の温度検出素子の出力電圧を検出可能とするためには、当該電圧測定回路が測定できる電圧のダイナミックレンジを広くとることが必要である。しかしながら、電圧測定回路が測定できる電圧のダイナミックレンジを広くとると、温度検出素子の特性によってはダイナミックレンジに対する電圧の変化量が小さくなることがあり、その結果として温度検出の分解能が低下してしまうという問題がある。
【0012】
また、温度検出素子の電圧値を測定する電圧測定回路を構成する抵抗、オペアンプ及びアナログディジタル変換部といった各部品には、当該部品の個体ごとの特性のバラツキや経年的な特性のバラツキが存在する。このため、同種類の部品を用いて同一規格の電圧測定回路を複数製造したとしても、電圧測定回路ごとの測定精度にバラツキが発生し、また、時間を経るごとにそのバラツキも拡大する。このような電圧測定回路を構成する各部品の特性のバラツキは、上述した1つの電圧測定回路にてより多くの種類の温度検出素子の出力電圧を検出可能としようとした場合に発生する温度検出の分解能の低下の問題を、より顕著なものにしてしまう。したがって、温度検出素子の出力電圧を測定する回路を構成する各部品の特性のバラツキの影響を受けずに温度を正確に検出することができる温度検出装置及びモータ駆動装置の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様によれば、温度検出装置は、温度変化に応じて2つの電極端子の間の抵抗値が変化する温度検出素子の2つの電極端子を介して出力される電圧を測定する測定部と、温度検出素子の感知温度と出力電圧との関係を示す温度-電圧特性が規定されたテーブルに従い、測定部により測定された電圧から温度情報を取得する取得部と、設定された補正量を用いて取得部による取得処理を補正し、取得部から補正後の温度情報を出力させる補正部と、設定モードにおいて測定部により測定された電圧に応じて補正量を設定する設定部と、を備え、測定部は、温度検出素子に2つの電極端子のうちの1つを介して直列接続される第1の分圧抵抗と、第1の分圧抵抗に直列接続されかつ2つの電極端子を介して温度検出素子に並列接続される第2の分圧抵抗とを有し、設定部は、設定モードにおいて、温度検出素子が測定部から取り外された状態で測定部により測定された第2の分圧抵抗の両端に現れる電圧に応じて、補正量を設定する。
【0014】
また、本開示の一態様によれば、モータ駆動装置は、モータの駆動を制御するモータ制御部と、上記温度検出装置と、を備え、温度検出装置は、モータの近傍に設けられた温度検出素子の2つの電極端子を介して出力される電圧に基づいて、補正後の温度情報を取得する。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、温度検出素子の出力電圧を測定する回路を構成する各部品の特性のバラツキの影響を受けずに温度を正確に検知することができる温度検出装置及びモータ駆動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態による温度検出装置及びこれを備えるモータ駆動装置を示す図である。
図2】本開示の一実施形態による温度検出装置における測定部の第1の形態を示す図であって、(A)は通常モードにおける測定部と温度検出素子との接続関係を示し、(B)は設定モードにおける測定部と温度検出素子との接続関係を示す。
図3】本開示の一実施形態による温度検出装置における測定部の第2の形態を示す図であって、(A)は通常モードにおける測定部と温度検出素子との接続関係を示し、(B)は設定モードにおける測定部と温度検出素子との接続関係を示す。
図4】温度検出素子の感知温度と抵抗値との関係を示す温度-抵抗値特性を例示する図である。
図5】温度検出素子の感知温度と出力電圧との関係を示す温度-電圧特性を例示する図である。
図6】本開示の一実施形態による温度検出装置及びこれを備えるモータ駆動装置における補正処理の第1の形態を説明する示す図である。
図7】複数の異なる補正量のそれぞれに対応した温度-電圧特性を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照して、モータの温度を検出する温度検出装置及びモータ駆動装置について説明する。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施をするための一つの例であり、図示された実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本開示の一実施形態による温度検出装置及びこれを備えるモータ駆動装置を示す図である。
【0019】
本開示の一実施形態による温度検出装置1は、モータ200の近傍に設けられた温度検出素子300を介して、モータ200の温度を検出する。温度検出素子300は、温度変化に応じて2つの電極端子の間の抵抗値が変化する素子である。温度検出素子300の例としては、例えばPTCサーミスタ、NTCサーミスタ、白金測温抵抗体などがある。温度検出素子300の設置場所としては、例えばモータ200の鉄芯コアや巻線などのような発熱しやすい部位の近傍がある。あるいは、モータ200の近傍に設けられる冷却装置の稼働状況を確認する目的で、当該冷却装置の近傍に温度検出素子300を設けてもよい。
【0020】
本開示の一実施形態によるモータ駆動装置100は、温度検出装置1と、モータ制御部2と、上位制御部3とを備える。また、モータ駆動装置100は、オプションとして表示部4を備える。
【0021】
上位制御部3は、モータ200の速度(速度フィードバック)、モータ200の巻線に流れる電流(電流フィードバック)、所定のトルク指令、及びモータ200の動作プログラムなどに基づいて、モータ200の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御するための駆動指令を生成し、モータ制御部2へ送信する。また、上位制御部3は、温度検出装置1で検出された温度情報を受信する。上位制御部3は、受信した温度情報を表示部4に表示させるための表示データに変換し、表示部4へ送信する。また、上位制御部3は、例えば、受信した温度情報を駆動指令の生成処理に用いてもよく、あるいはその他の処理に用いてもよい。
【0022】
表示部4は、上位制御部3から受信した表示データに基づいて、モータ200の温度を表示する。表示部4の例としては、単体のディスプレイ装置、上位制御部3に付属のディスプレイ装置、モータ制御部2に付属のディスプレイ装置、モータ駆動装置100に付属のディスプレイ装置、並びに、パソコン及び携帯端末に付属のディスプレイ装置などがある。またあるいは、表示部4に代えて、温度検出装置1で検出した温度情報を、例えば音声、スピーカ、ブザー、チャイムなどのような音を発する音響機器にて出力させてもよい。これにより、作業者は、モータ200の温度を迅速かつ確実に把握することができる。よって、作業者は、例えば、モータ駆動装置100を緊急停止させたり、モータ200を交換または修理するといった対応をとることが容易となる。
【0023】
モータ制御部2は、上位制御部3から受信した駆動指令に基づきモータ200の駆動電力を生成することでモータ200の駆動を制御する。このため、モータ制御部2は、モータ200の駆動電力を生成するための主電力変換回路(図示せず)と主電力変換回路の電力生成処理を制御するための制御回路(図示せず)とを備える。モータ制御部2内の主電力変換回路は、例えば、モータ200が交流モータである場合は、例えば交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換する整流器とこの直流電力を交流電力に変換して交流の駆動電力をモータ200に供給するインバータとで構成される。あるいは、モータ制御部2内の主電力変換回路は、例えばバッテリから供給される直流電力を交流電力に変換して交流の駆動電力をモータ200に供給するインバータで構成される。また、モータ制御部2内の主電力変換回路は、モータ200が直流モータである場合は、例えば、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して直流の駆動電流をモータ200に供給する整流器や、バッテリから印加される直流電圧を適切な直流電圧に変換して直流の駆動電流をモータ200に供給するDCDCコンバータで構成される。なお、ここで定義したモータ制御部2の構成はあくまでも一例であって、例えば、電源やバッテリなどの用語を含めてモータ制御部2の構成を定義してもよい。また例えば、モータ制御部2内の制御回路を上位制御部3と一体のものとして構成してもよい。
【0024】
本開示の一実施形態による温度検出装置1は、測定部11と、取得部12と、補正部13と、設定部14とを備える。
【0025】
測定部11の入力端子には、温度検出素子300の2つの電極端子が接続される。測定部11は、温度検出素子300の2つの電極端子を介して出力される電圧を測定する。測定部11により測定された電圧に関するデータは、設定モードではない通常のモードにおいては取得部12へ送られ、設定モードにおいては設定部14へ送られる。「設定モード」とは、温度検出素子300の2つの電極端子を介して出力される電圧に応じた補正量を設定するモードのことを指す。「通常モード」とは、温度検出素子300が接続された温度検出装置1が、当該温度検出素子300を介して温度情報を検出するモードのことを指す。
【0026】
設定部14は、例えば設定モードを開始する指令である設定開始指令を受信する受信部31を有し、受信部31が設定開始指令を受信したとき、補正量を設定する処理を開始する。設定部14は、設定モードにおいて測定部11により測定された電圧に応じて補正量を設定する。設定部14で設定された補正量に関するデータは、補正部13に送られる。なお、設定開始指令は、モータ駆動装置100または温度検出装置1の電源が投入されたときに自動的に設定部14の受信部31に入力されるようにしてもよい。あるいは、設定開始指令は、例えば、作業者が温度検出装置に接続された入力装置(図示せず)を操作することによって設定部14の受信部31に入力されるようにしてもよい。入力装置は、単体としての入力装置、上位制御部3に付属の入力装置、モータ制御部2に付属の入力装置、モータ駆動装置100に付属の入力装置、並びに、パソコン及び携帯端末に付属の入力装置などであってもよい。入力装置の例としては、例えばキーボード、タッチパネル、マウス、及び音声認識装置などがある。
【0027】
取得部12は、温度検出素子300の感知温度と出力電圧との関係を示す温度-電圧特性が規定されたテーブルに従い、測定部11により測定された電圧から温度情報を取得する。すなわち、取得部12は、測定部11により測定された電圧の値を、テーブルを用いて温度情報に変換する処理を行う。
【0028】
補正部13は、設定部14により設定された補正量を用いて取得部12による取得処理を補正し、取得部12から補正後の温度情報を出力させる。このように補正部13が動作するのは通常モード時である。取得部12から出力された補正後の温度情報は、上位制御部3へ送られる。
【0029】
続いて、測定部11の回路構成の形態について、いくつか列記する。第1の形態及び第2の形態のいずれにおいても、通常モードにおいて温度検出素子300は測定部11に接続され、設定モードにおいて温度検出素子300は測定部11から取り外される。設定モードが終わり通常モードに移行すると、温度検出素子300を測定部11にいつでも取り付けることができる。
【0030】
図2は、本開示の一実施形態による温度検出装置における測定部の第1の形態を示す図であって、(A)は通常モードにおける測定部と温度検出素子との接続関係を示し、(B)は設定モードにおける測定部と温度検出素子との接続関係を示す。
【0031】
第1の形態による測定部11は、第1の分圧抵抗21と、第2の分圧抵抗23と、オペアンプ24と、アナログディジタル変換部22とを有する。また、第1の形態による測定部11は、オプションとして第4の分圧抵抗27を有する。
【0032】
第1の形態による測定部11における第1の分圧抵抗21は、通常モードにおいて温度検出素子300の2つの電極端子のうちの1つを介して温度検出素子300に直列接続される。第2の分圧抵抗23は、第1の分圧抵抗21に直列接続され、かつ通常モードにおいて温度検出素子300の2つの電極端子を介して温度検出素子300に並列接続される。第2の分圧抵抗23に温度検出素子300が並列接続される限りにおいて、第1の分圧抵抗21と第2の分圧抵抗23とは入れ替えて直列接続されてもよい。このように、第1の形態による測定部11においては、第1の分圧抵抗21と第2の分圧抵抗23とが直列接続された分圧回路が構成されるが、図2(A)に示す例ではこの分圧回路に対して、オプションの第4の分圧抵抗27がさらに直列接続されている。
【0033】
第1の分圧抵抗21と第2の分圧抵抗23と第4の分圧抵抗27とが直列接続されて構成される分圧回路には、所定の電圧(例えば5[V])が印加される。上記所定の電圧は、例えば制御電源(図示せず)から供給される。通常モードにおいて温度検出素子300は測定部11に接続され、設定モードにおいて温度検出素子300は測定部11から取り外される。したがって、図2(A)に示す通常モードにおいては、第1の分圧抵抗21と、並列接続された温度検出素子300と第2の分圧抵抗23との合成抵抗と、第4の分圧抵抗27とによって、上記所定の電圧が分圧されることになる。一方、図2(B)に示す設定モードにおいては、第1の分圧抵抗21と、第2の分圧抵抗23と、第4の分圧抵抗27とによって、上記所定の電圧が分圧されることになる。通常モード及び設定モードのいずれにおいても、第2の分圧抵抗23の両端に現れる各電位が、オペアンプ24に入力される。
【0034】
第1の形態による測定部11において、差動増幅回路であるオペアンプ24は、第2の分圧抵抗23の両端に現れる各電位の差分を取ることで第2の分圧抵抗23の両端に現れる電圧に関するアナログ信号を抽出し、これをアナログディジタル変換部22の入力に適した信号レベルに増幅する。オペアンプ24から出力された電圧に関するアナログ信号はアナログディジタル変換部22へ送られる。
【0035】
第1の形態による測定部11におけるアナログディジタル変換部22は、オペアンプ24から出力された電圧に関するアナログ信号をディジタル信号形式のデータに変換して出力する。アナログディジタル変換部22から所定のビット数(例えば12ビット)のディジタル信号が出力されるよう、アナログディジタル変換部22には基準信号REFが入力される。アナログディジタル変換部22から出力された電圧に関するディジタル信号データは、図2(A)に示す通常モードにおいては取得部12へ送られ、図2(B)に示す設定モードにおいては設定部14へ送られる。設定モードにおいてアナログディジタル変換部22から出力された電圧に関するディジタル信号データは、後述するように設定モードにおける設定部14において補正量の設定処理に用いられる。
【0036】
図3は、本開示の一実施形態による温度検出装置における測定部の第2の形態を示す図であって、(A)は通常モードにおける測定部と温度検出素子との接続関係を示し、(B)は設定モードにおける測定部と温度検出素子との接続関係を示す。
【0037】
第2の形態による測定部11は、第1の分圧抵抗21と、第3の分圧抵抗25と、スイッチ26と、オペアンプ24と、アナログディジタル変換部22とを有する。
【0038】
第2の形態による測定部11における第1の分圧抵抗21は、通常モードにおいて温度検出素子300の2つの電極端子のうちの1つを介して温度検出素子300に直列接続される。
【0039】
第2の形態による測定部11において、スイッチ26と第3の分圧抵抗25とは直列接続される。直列接続されたスイッチ26及び第3の分圧抵抗25に、温度検出素子300の2つの電極端子を介して温度検出素子300が並列接続されることによって、分圧回路が構成される。直列接続されたスイッチ26及び第3の分圧抵抗25に温度検出素子300が並列接続される限りにおいて、第1の分圧抵抗21と第3の分圧抵抗25とは入れ替えて直列接続されてもよい。図3(A)に示す通常モードにおいてはスイッチ26は開状態にあり、したがって第3の分圧抵抗25と第1の分圧抵抗21との電気的接続は解除される。図3(B)に示す設定モードにおいてはスイッチ26は閉状態にあり、したがって第3の分圧抵抗25と第1の分圧抵抗21とは電気的に接続される。スイッチ26は、例えば、設定モードを開始する指令である設定開始指令を設定部14内の受信部31が受信したとき、開状態から閉状態に切り替えられる。また例えば、設定モードを終了する指令である設定終了指令を設定部14内の受信部31が受信したとき、閉状態から開状態に切り替えられる。スイッチ26の例としては、リレー、半導体スイッチング素子、及び、電磁接触器などがある。半導体スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO、トランジスタなどがある。ここで、スイッチ26の閉状態におけるオン抵抗値は0[Ω]とする。
【0040】
第1の分圧抵抗21とスイッチ26と第3の分圧抵抗25とが直列接続されて構成される分圧回路には、所定の電圧(例えば5[V])が印加される。上記所定の電圧は、例えば制御電源(図示せず)から供給される。図3(A)に示す通常モードにおいては、温度検出素子300は測定部11に接続されかつスイッチ26は開状態にあり、第1の分圧抵抗21と温度検出素子300とによって上記所定の電圧が分圧されることになる。よって、通常モードにおいては、温度検出素子300の2つの電極端子に現れる各電位が、オペアンプ24に入力される。一方、図3(B)に示す設定モードにおいては、温度検出素子300は測定部11から取り外されかつスイッチ26は閉状態にあり、第1の分圧抵抗21と第3の分圧抵抗25とによって上記所定の電圧が分圧されることになる。よって、設定モードにおいては、第3の分圧抵抗25の両端に現れる各電位が、オペアンプ24に入力される。
【0041】
第2の形態による測定部11において、差動増幅回路であるオペアンプ24は、通常モードにおいては温度検出素子300の2つの電極端子に現れる各電位の差分を取ることで温度検出素子300の2つの電極端子の間に現れる電圧に関するアナログ信号を抽出し、これをアナログディジタル変換部22の入力に適した信号レベルに増幅する。また、オペアンプ24は、設定モードにおいては第3の分圧抵抗25の両端に現れる各電位の差分を取ることで第3の分圧抵抗25の両端に現れる電圧に関するアナログ信号を抽出し、これをアナログディジタル変換部22の入力に適した信号レベルに増幅する差動増幅回路である。オペアンプ24から出力された電圧に関するアナログ信号はアナログディジタル変換部22へ送られる。
【0042】
第2の形態による測定部11におけるアナログディジタル変換部22の動作については、図2を参照して説明した第1の形態による測定部11におけるアナログディジタル変換部22の動作と同様である。
【0043】
上述した第1の形態または第2の形態による測定部11が設定モードにおいて出力するディジタル信号形式の電圧に応じて、設定部14は、取得部12による取得処理の補正に用いられる補正量を設定する。
【0044】
ここで、温度検出素子300の特性について説明する。
【0045】
図4は、温度検出素子の感知温度と抵抗値との関係を示す温度-抵抗値特性を例示する図である。図5は、温度検出素子の感知温度と出力電圧との関係を示す温度-電圧特性を例示する図である。なお、図4及び図5に示す温度検出素子300の特性に係る数値及び曲線の形状はあくまでも一例である。
【0046】
図4及び図5では、温度検出素子300として、一例として、温度上昇に伴い抵抗値が減少する素子A、温度上昇に伴い抵抗値が増加する素子B、及び温度上昇に伴い抵抗値が増加する素子Cを例示している。素子Bと素子Cとでは、温度上昇に伴う抵抗の増加率が異なる。測定部11に温度検出素子300(素子A、素子Bまたは素子C)が接続された通常モードにおいて、上述したように第1の分圧抵抗21を含む分圧回路に所定の電圧(例えば5[V])が印加されると、アナログディジタル変換部22からは、温度検出素子300に関係する電圧についてのディジタル信号が出力される。温度検出素子300の感知温度が変化すると、温度検出素子300の2つの電極端子の間の抵抗値が変化し、これに伴い、アナログディジタル変換部22から出力される温度検出素子300に関係する電圧についてのディジタル信号も変化する。このように、温度検出素子300の抵抗値の変化と温度検出素子300の2つの電極端子の間における電圧値の変化とは、一対一で対応している。したがって、温度-抵抗値特性(図4)に対応した温度-電圧特性(図5)が得られる。
【0047】
温度検出素子300の種類(例えば素子A、素子Bまたは素子C)ごとに、温度-抵抗値特性及び温度-電圧特性は異なる。このため、取得部12については、測定部11に接続された温度検出素子300の種類に対応した温度-電圧特性が規定されたテーブルが保持されるように構成しておく。取得部12は、通常モードにおいて、測定部11に接続された温度検出素子300の種類に対応した温度-電圧特性が規定されたテーブルに従い、測定部11により測定された電圧から温度情報を取得する処理を実行する。
【0048】
通常モードにおける取得部12による温度情報を取得する処理は、補正部13により、設定部14により設定された補正量を用いて補正される。この補正量は、設定モードにおいて測定部11により測定された電圧(実測値)に応じて、次のように設定される。
【0049】
例えば、第1の形態による回路構成を有する測定部11では、図2(B)に示すように設定モードにおいては、上記所定の電圧(例えば5[V])が、第1の分圧抵抗21と第2の分圧抵抗23と第4の分圧抵抗27との直列接続にて構成される分圧回路にて分圧される。このとき、第2の分圧抵抗23の両端に現れる電圧は測定部11にて測定され、この電圧(実測値)に関するディジタル信号データは、設定部14に送られる。設定部14は、電圧の実測値の理論値に対する割合(=実測値÷理論値)を算出する。なお、理論値(ティピカル値)は、上記所定の電圧の値と、第1の分圧抵抗21、第2の分圧抵抗23及び第4の分圧抵抗27の各抵抗値と、に基づいて事前に算出することができる。この理論値は、補正量の計算に用いるために設定部14内に予め保持しておく。
【0050】
また例えば、第2の形態による回路構成を有する測定部11では、図3(B)に示すように設定モードにおいては、上記所定の電圧(例えば5[V])が、第1の分圧抵抗21と第3の分圧抵抗25とが直列接続されて構成される分圧回路にて分圧される。このとき、第3の分圧抵抗25の両端に現れる電圧を測定部11にて実測し、この電圧(実測値)に関するディジタル信号データは、設定部14に送られる。設定部14は、電圧の実測値の理論値に対する割合(=実測値÷理論値)を算出する。なお、理論値(ティピカル値)は、上記所定の電圧の値と、第1の分圧抵抗21及び第3の分圧抵抗25の各抵抗値と、に基づいて事前に算出することができる。この理論値は、補正量の計算に用いるために設定部14内に予め保持しておく。
【0051】
温度検出素子300の電圧値を測定する測定部11を構成する分圧抵抗21、23、25及び27、オペアンプ24、並びにアナログディジタル変換部22といった各部品には、当該部品の個体ごとの特性のバラツキや経年的な特性のバラツキが存在する。測定部11を構成する各部品に特性のバラツキが存在しない場合は、設定モードにおいて測定部11から出力される電圧の実測値は理論値と一致する。しかしながら実際には、部品の個体ごとの特性のバラツキや経年的な特性のバラツキが存在するので、設定モードにおいて測定部11から出力される電圧の実測値は理論値からずれたものとなる。そこで、本開示の一実施形態では、測定部11を構成する各部品に特性のバラツキに起因する電圧の実測値の理論値からのずれを、電圧の実測値の理論値に対する割合(=実測値÷理論値)として捉え、設定部14は、当該割合の逆数(=理論値÷実測値)を補正量として設定する。測定部11を構成する各部品に特性のバラツキに起因する測定部11から出力される電圧の実測値と理論値とのずれがないときは、補正量は「1.0」となり、取得部12により取得された温度情報は補正されることなくそのまま出力される。一方、測定部11を構成する各部品の特性のバラツキに起因して電圧の実測値が理論値からプラス方向にずれると、補正量は「1.0」より小さい値となり、よって、補正部13による補正処理により、取得部12により取得された温度情報がより小さい値となって出力される。また、測定部11を構成する各部品の特性のバラツキに起因して電圧の実測値が理論値からマイナス方向にずれると、補正量は「1.0」より大きい値となり、よって、補正部13による補正処理により、取得部12により取得された温度情報がより大きい値となって出力される。このように、電圧の実測値の理論値に対する割合(=実測値÷理論値)は、測定部11を構成する各部品の特性のバラツキを示す指標といえるので、本開示の一実施形態では、電圧の実測値の理論値に対する割合の逆数(=理論値÷実測値)で規定される補正量を用いて取得部12による温度情報の取得処理を補正することで、測定部11を構成する各部品の特性のバラツキの影響を排除する。一例をあげると次の通りである。
【0052】
例えば、設定部14は、設定モードにおいて測定部11により測定された電圧の実測値の理論値に対する割合が「1.0」のとき、測定部11を構成する各部品に特性のバラツキに起因する測定部11から出力される電圧の実測値と理論値とのずれはなく、このとき当該割合の逆数である「1.0/1.0=1.0」を補正量として設定する。また例えば、設定部14は、設定モードにおいて測定部11により測定された電圧の実測値の理論値に対する割合が「0.9」のとき、その逆数である「1.0/0.9=1.1」を補正量として設定する。また例えば、設定部14は、設定モードにおいて測定部11により測定された電圧の実測値の理論値に対する割合が「1.25」のとき、その逆数である「1/1.25=0.8」を補正量として設定する。
【0053】
設定部14は、上述のようにして設定した補正量を補正部13に通知する。通常モードにおいて、補正部13は、補正量に関する補正指示データを取得部12に送り、当該補正量を用いて取得部12による取得処理を補正し、取得部12から補正後の温度情報を出力させる。
【0054】
続いて、補正部13による補正処理の形態について、いくつか列記する。第1の形態、第2の形態及び第3の形態のいずれにおいても、補正部13が動作するのは通常モード時である。
【0055】
まず、補正処理の第1の形態について、図6及び7を参照して説明する。
【0056】
図6は、本開示の一実施形態による温度検出装置及びこれを備えるモータ駆動装置における補正処理の第1の形態を説明する示す図である。
【0057】
補正処理の第1の形態では、複数の異なる補正量のそれぞれについて、当該補正量に対応した温度-電圧特性が規定されたテーブルを事前に用意しておく。取得部12は、これら複数のテーブルを記憶する記憶部32を有する。補正部13は、取得部12に対し、記憶部32に記憶された複数のテーブルの中から設定部14により設定された補正量に対応するテーブルを選択するよう指示する。
【0058】
図7は、複数の異なる補正量のそれぞれに対応した温度-電圧特性を例示する図である。なお、図7に示す温度検出素子300の特性に係る数値及び曲線の形状はあくまでも一例である。測定部11を構成する各部品に特性のバラツキが存在しない理想的な場合は、設定モードにおいて測定部11から出力される電圧の実測値は理論値と一致するが、このときの温度-電圧特性を例えばA0とする。測定部11を構成する各部品の特性のバラツキに起因して電圧の実測値が理論値からずれると、電圧の実測値の理論値に対する割合が変化し、設定すべき補正量も変化する。理想的な温度-電圧特性A0に沿った各電圧値に設定部14で設定された補正量を乗じることで補正後の電圧値が得られることから、複数の異なる補正量のそれぞれに対応した温度-電圧特性を求めることができる。ここでは一例として、A-2、A-1、A1及びA2とする。測定部11を構成する各部品の特性のバラツキの大きさに応じて電圧の実測値が理論値からプラス方向にずれるほど、補正部13によって選択される温度-電圧特性は、A0から離れてA1からA2へと変化していく。測定部11を構成する各部品の特性のバラツキの大きさに応じて電圧の実測値が理論値からマイナス方向にずれるほど、補正部13によって選択される温度-電圧特性は、A0から離れてA-1からA-2へと変化していく。補正処理の第1の形態では、複数の異なる補正量のそれぞれについて、理想的な温度-電圧特性A0に沿った各電圧値に当該補正量を乗じて得られる温度-電圧特性が規定されたテーブルを事前に用意する。当該補正量に対応した温度-電圧特性が規定されたテーブルは、記憶部32に予め記憶しておく。通常モードにおいて、補正部13は、取得部12に対し、記憶部32に記憶された複数のテーブルの中から設定部14により設定された補正量に対応するテーブルを選択するための補正指示データを取得部12に送る。補正指示データを受けた取得部12は、補正量に対応するテーブルを選択し、このテーブルに従い、測定部11により測定された電圧から温度情報を取得する処理を実行する。これにより、取得部12からは、補正後の温度情報が出力される。なお、設定部14により設定された補正量に対応するテーブルが記憶部32に記憶されていない場合は、取得部12は、設定部14により設定された補正量に最も近い補正量に対応したテーブルを選択すればよい。
【0059】
続いて、補正処理の第2の形態について説明する。
【0060】
補正処理の第2の形態では、測定部11を構成する各部品に特性のバラツキが存在しない理想的な場合における温度-電圧特性(例えば図7でいえばA0)が規定されたテーブルを事前に用意し、記憶部32に記憶しておく。補正部13は、取得部12に対し、設定部14により設定された補正量に応じて、記憶部32に記憶された温度-電圧特性が規定されたテーブルを補正するよう指示する補正指示データを取得部12に送る。補正指示データを受けた取得部12は、記憶部32に記憶された温度-電圧特性に沿った各電圧値に設定部14で設定された補正量を乗じることで、温度と補正後の電圧値との関係を示す温度-電圧特性が規定されたテーブルを作成し、このテーブルに従い、測定部11により測定された電圧から温度情報を取得する処理を実行する。これにより、取得部12からは、補正後の温度情報が出力される。
【0061】
続いて、補正処理の第3の形態について説明する。
【0062】
補正処理の第3の形態では、測定部11を構成する各部品に特性のバラツキが存在しない理想的な場合における温度-電圧特性(例えば図7でいえばA0)が規定されたテーブルを事前に用意し、記憶部32に記憶しておく。補正部13は、取得部12に対し、設定部14により設定された補正量に応じて、取得部12により温度-電圧特性が規定されたテーブルに従い温度情報が取得される際に用いられる測定部11により測定された電圧の値を、補正量に基づいて補正するよう指示する補正指示データを取得部12に送る。補正指示データを受けた取得部12は、測定部11により測定された電圧の値に設定部14で設定された補正量を乗じて補正後の電圧を求め、温度-電圧特性が規定されたテーブルに従い、当該補正後の電圧から温度情報を取得する処理を実行する。これにより、取得部12からは、補正後の温度情報が出力される。
【0063】
上述した取得部12、補正部13、設定部14、上位制御部3、及びモータ制御部2内の制御回路は、演算処理装置のみで構成されてもよく、あるいはアナログ回路と演算処理装置との組み合わせで構成されてもよく、あるいはアナログ回路のみで構成されてもよい。取得部12、補正部13、設定部14、上位制御部3、及びモータ制御部2内の制御回路を構成し得る演算処理装置には、例えばIC、LSI、CPU、MPU、DSPなどがある。例えば、取得部12、補正部13、設定部14、上位制御部3、及びモータ制御部2内の制御回路をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、取得部12、補正部13、設定部14、上位制御部3、及びモータ制御部2内の制御回路の各機能を実現することができる。またあるいは、取得部12、補正部13、設定部14、上位制御部3、及びモータ制御部2内の制御回路を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。またあるいは、取得部12、補正部13、設定部14、上位制御部3、及びモータ制御部2内の制御回路を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ記録媒体として実現してもよい。また、取得部12、補正部13、設定部14、上位制御部3、及びモータ制御部2内の制御回路は、例えば工作機械の数値制御装置内に設けられてもよく、ロボットを制御するロボットコントローラ内に設けられてもよい。
【0064】
また、記憶部32は、例えばEEPROM(登録商標)などのような電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAMなどのような高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリなどで構成される。
【0065】
以上説明したように、本開示の一実施形態による温度検出装置1は、温度検出素子300の感知温度と出力電圧との関係を示す温度-電圧特性が規定されたテーブルに従い測定部11により測定された電圧から温度情報を取得する処理を、温度検出素子300が取り外された設定モードにおいて測定部11により測定された電圧(実測値)に応じて設定された補正量で補正する。この補正量は、温度検出素子300が取り外された設定モードにおいて測定部11により測定された電圧の実測値の理論値に対する割合の逆数(=理論値÷実測値)として設定される。温度検出素子300が取り外された設定モードにおいて測定部11により測定された電圧の実測値の理論値に対する割合は、測定部11を構成する各部品の特性のバラツキを示す指標であるといえるので、通常モードにおいて、この割合の逆数を補正量として用いて取得部12による温度情報の取得処理を補正することで、測定部11を構成する各部品の特性のバラツキの影響を排除する。
【0066】
同一の測定部11にてより多くの種類の温度検出素子300の出力電圧を検出可能とする場合には、検出しようとする温度検出素子300に対応した温度-電圧特性が規定されたテーブルを取得部12内に保持しておき、上述の第1~第3の形態による補正処理のいずれかを実行する。本開示の一実施形態による温度検出装置1によれば、測定部11を構成する各部品の特性のバラツキを示す割合の逆数を補正量として用いて取得部12による温度情報の取得処理を補正することで、同種類の部品を用いて同一規格の測定部11を複数製造したときに発生する測定部11ごとの測定精度のバラツキや経年的なバラツキの影響を排除し温度を正確に検出することができる。これにより、同一の測定部11にてより多くの種類の温度検出素子の出力電圧を検出可能としようとした場合に発生し得る温度検出の分解能の低下も回避することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 温度検出装置
2 モータ制御部
3 上位制御部
4 表示部
11 測定部
12 取得部
13 補正部
14 設定部
21 第1の分圧抵抗
22 アナログディジタル変換部
23 第2の分圧抵抗
24 オペアンプ
25 第3の分圧抵抗
26 スイッチ
27 第4の分圧抵抗
31 受信部
32 記憶部
100 モータ駆動装置
200 モータ
300 温度検出素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7