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特許7534188医用データ処理装置、医用データ処理方法及び医用データ処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】医用データ処理装置、医用データ処理方法及び医用データ処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240806BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240806BHJP
   G06T 13/40 20110101ALI20240806BHJP
【FI】
A61B6/03 560E
A61B6/03 577
A61B5/00 G
G06T13/40
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020183315
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073363
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】上山 健一
(72)【発明者】
【氏名】大口 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】清原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】青山 岳人
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0232853(US,A1)
【文献】特表2017-535340(JP,A)
【文献】特開2019-202142(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0232386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得する第1の取得部と、
前記推定データと、前記実測のデータとの差に基づいた、治療の影響を受けないパラメータを算出する算出部と、
前記パラメータと所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定する推定部と、
を備え、
前記第1の取得部は、前記実測のデータから前記推定データを取得する際に用いられる取得用パラメータであって治療の影響を受けない取得用パラメータを用いて前記実測のデータから前記推定データを取得し、
前記算出部は、前記推定データと前記実測のデータとの差が閾値以下となる場合の前記取得用パラメータを、前記パラメータとして算出する、
医用データ処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記パラメータとして、前記推定データと前記実測のデータとに基づいて第1の生体器官の形状に関するパラメータを算出し、
前記推定部は、前記第1の生体器官の形状に関するパラメータと前記所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定する、請求項1に記載の医用データ処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記形状に関するパラメータとして、前記推定データと前記実測のデータとに基づいて前記第1の生体器官の硬さ、厚さ、繊維方向、長さ、太さ、接続位置及び数のうち少なくとも1つを示すパラメータを算出し、
前記推定部は、前記少なくとも1つを示すパラメータと前記所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定する、請求項2に記載の医用データ処理装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記推定データと前記実測のデータとに基づいて算出される評価値が予め定められた基準を満足する場合の前記推定データを推定する際に用いられる前記パラメータを算出する、請求項1~3のいずれか1つに記載の医用データ処理装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記推定データと前記実測のデータとが類似する場合の前記推定データを推定する際に用いられる前記パラメータを算出する、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記推定データと前記実測のデータとの差分が閾値以下となる場合の前記推定データを推定する際に用いられる前記パラメータを算出する、請求項4又は5に記載の医用データ処理装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記推定データを構成する点及び面、並びに、前記実測のデータを構成する点及び面に基づいて前記評価値を算出する、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記評価値が前記基準を満足するまで、前記推定データを推定する際に用いられるパラメータを繰り返し変更する、請求項4に記載の医用データ処理装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記推定データと前記実測のデータとが類似するまで、前記推定データを推定する際に用いられるパラメータを繰り返し変更する、請求項5に記載の医用データ処理装置。
【請求項10】
前記算出部は、前記差分が前記閾値以下となるまで、前記推定データを推定する際に用いられるパラメータを繰り返し変更する、請求項6に記載の医用データ処理装置。
【請求項11】
前記第1の取得部は、複数の異なるパラメータを用いて複数の前記推定データを推定することにより、前記複数の推定データを取得し、
前記算出部は、前記複数の推定データ及び前記実測のデータに基づいて、前記生体器官の状態を推定する際に用いられるパラメータを算出する、請求項1~3のいずれか1つに記載の医用データ処理装置。
【請求項12】
前記算出部は、前記推定データを推定する際に用いられる複数の前記パラメータのうち、他のパラメータと比較して、前記推定データと前記実測のデータとに基づいて算出される評価値が基準値に近づく度合いが高いパラメータを前記他のパラメータよりも優先的に変更し、
前記第1の取得部は、前記算出部により他のパラメータと比較して前記推定データと前記実測のデータとに基づいて算出される評価値が前記基準値に近づく度合いが高いパラメータが前記他のパラメータよりも優先的に変更される度に、変更されたパラメータを用いて前記推定データを推定する、請求項8に記載の医用データ処理装置。
【請求項13】
前記第1の取得部は、前記第1のタイミングとして治療前のタイミングにおける前記推定データと、前記治療前のタイミングにおける前記実測のデータとを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングとして治療後のタイミングにおける前記生体器官の状態を推定する、請求項1~12のいずれか1つに記載の医用データ処理装置。
【請求項14】
前記第1の取得部は、前記生体器官として僧帽弁の状態に関する前記推定データと、前記僧帽弁の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記僧帽弁の状態を推定する、請求項1~13のいずれか1つに記載の医用データ処理装置。
【請求項15】
前記第1の取得部は、前記生体器官の状態として前記生体器官の形態の状態に関する前記推定データと、前記生体器官の形態の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記生体器官の形態の状態を推定する、請求項1~14のいずれか1つに記載の医用データ処理装置。
【請求項16】
前記第1の取得部は、前記生体器官の状態として前記生体器官の血流の状態に関する前記推定データと、前記生体器官の血流の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記生体器官の血流の状態を推定する、請求項1~15のいずれか1つに記載の医用データ処理装置。
【請求項17】
前記第1の取得部は、前記生体器官が描出された前記第1のタイミングにおける3つ以上の時相の医用画像のうち少なくとも2つの時相の医用画像を用いて、前記推定データと前記実測のデータとを取得する、請求項1~16のいずれか1つに記載の医用データ処理装置。
【請求項18】
前記算出部は、更に、前記推定データを推定する処理を実行するための計算パラメータを変更し
前記第1の取得部は、更に、変更された計算パラメータに基づいて前記推定データを推定する、請求項1~17のいずれか1つに記載の医用データ処理装置。
【請求項19】
複数の前記推定データのそれぞれを推定する際に用いられる複数のパラメータのそれぞれと、前記複数の推定データのそれぞれと前記実測のデータとに基づく複数の前記評価値のそれぞれとを表示するように表示部を制御する表示制御部を更に備える、請求項8に記載の医用データ処理装置。
【請求項20】
前記推定部は、推定された前記生体器官の形態の状態と、予め設定された生体の循環動態に関する電気回路モデルとに基づいて、前記第2のタイミングにおける流体の状態に関する状態データを推定する、請求項15に記載の医用データ処理装置。
【請求項21】
第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得し、
前記推定データと、前記実測のデータとの差に基づいた、治療の影響を受けないパラメータを算出し、
前記パラメータと所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定する、
ことを含み、
前記推定データを取得することは、前記実測のデータから前記推定データを取得する際に用いられる取得用パラメータであって治療の影響を受けない取得用パラメータを用いて前記実測のデータから前記推定データを取得することを含み、
前記パラメータを算出することは、前記推定データと前記実測のデータとの差が閾値以下となる場合の前記取得用パラメータを、前記パラメータとして算出することを含む、
医用データ処理方法。
【請求項22】
コンピュータに、
第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得し、
前記推定データと、前記実測のデータとの差に基づいた、治療の影響を受けないパラメータを算出し、
前記パラメータと所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定する処理を実行させるための医用データ処理プログラムであって、
前記推定データを取得する処理は、前記実測のデータから前記推定データを取得する際に用いられる取得用パラメータであって治療の影響を受けない取得用パラメータを用いて前記実測のデータから前記推定データを取得することを含み、
前記パラメータを算出する処理は、前記推定データと前記実測のデータとの差が閾値以下となる場合の前記取得用パラメータを、前記パラメータとして算出することを含む、
医用データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用データ処理装置、医用データ処理方法及び医用データ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓疾患を有する被検体(患者)に対する治療方針の計画時には、医師は、治療前に得られる被検体の状態や治療対象となる心臓の形態又は流体情報を用いて、医師の知識や経験に基づいて治療方針を決定している。理想的には、医師は、治療後の被検体の状態が最適となる治療方針を計画すべきである。そのためには、治療前の被検体の状態に関する情報から治療後の被検体の状態を推定する技術が必要である。
【0003】
しかしながら、治療前の状態から治療後の状態を推定する技術の構築は困難である。一因として、心臓の形状、動作、血流等は個人差が大きいことが挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kelm, M., et al. "Model-based therapy planning allows prediction of haemodynamic outcome after aortic valve replacement." Scientific reports 7.1 (2017): 1-12.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、治療前等のタイミングの被検体の状態に関する情報から治療後等のタイミングの被検体の状態をより適切に推定することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用データ処理装置は、第1の取得部と、算出部と、推定部とを備える。第1の取得部は、第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得する。算出部は、前記推定データと、前記実測のデータとに基づいたパラメータを算出する。推定部は、前記パラメータと所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る医用データ処理システム及び医用データ処理装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る医用データ処理装置の処理回路が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態に係るステップS2の処理の一例を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るユーザインタフェースの一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るステップS4の処理の一例を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る第2の取得機能が実行する処理の一例を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る推定機能が実行する処理の一例を説明するための図である。
図8図8は、変形例4に係る表の一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るステップS6の処理の一例を説明するための図である。
図10図10は、変形例5に係るステップS6の処理の一例を説明するための図である。
図11図11は、変形例6に係る推定機能が実行する処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用データ処理装置、医用データ処理方法及び医用データ処理プログラムの実施形態及び変形例について詳細に説明する。なお、本願に係る医用データ処理装置、医用データ処理方法及び医用データ処理プログラムは、以下に示す実施形態及び変形例によって限定されるものではない。また、実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態、変形例又は従来技術との組み合わせが可能である。同様に、変形例は、処理内容に矛盾が生じない範囲で実施形態、他の変形例又は従来技術との組み合わせが可能である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用データ処理システム及び医用データ処理装置の構成例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る医用データ処理システム100は、X線CT(Computed Tomography)装置110と、医用画像保管装置120と、各部門システム130と、医用情報表示装置140と、医用データ処理装置150とを含む。ここで、各装置及びシステムは、ネットワーク160を介して通信可能に接続されている。
【0011】
X線CT装置110は、被検体の対象臓器が描出されたCT画像を生成する。具体的には、X線CT装置110は、被検体を囲む円軌道上でX線管及びX線検出器を旋回移動させることで、被検体を透過したX線の分布を表す投影データを収集する。かかる対象臓器としては、例えば、僧帽弁、心臓、肺等の生体器官が挙げられる。なお、対象臓器はこれらに限られず、生体器官であればよい。そして、X線CT装置110は、収集された投影データに基づいて、CT画像を生成する。X線CT装置110は、医用画像診断装置の一例である。
【0012】
なお、医用データ処理システム100は、X線CT装置110の他に、超音波診断装置、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、X線診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置等の他の医用画像診断装置をさらに含んでもよい。超音波診断装置は、超音波画像を生成する。MRI装置は、MRI画像を生成する。X線診断装置は、X線画像及びアンギオ画像を生成する。PET装置は、PET画像を生成する。SPECT装置は、SPECT画像を生成する。
【0013】
CT画像、超音波画像、MRI画像、X線画像、アンギオ画像、PET画像及びSPECT画像は、医用画像の一例である。
【0014】
医用画像保管装置120は、各種の医用画像を保管する。具体的には、医用画像保管装置120は、ネットワーク160を介してX線CT装置110からCT画像を取得し、取得されたCT画像を医用画像保管装置120内の記憶回路に記憶させて保管する。また、例えば、医用画像保管装置120は、PACS(Picture Archiving and Communication System)等によって実現され、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に準拠した形式でCT画像を保管する。また、医用画像保管装置120は、CT画像以外の他の医用画像を同様にして取得し、取得された他の医用画像を記憶回路に記憶させて保管してもよい。医用画像保管装置120は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0015】
各部門システム130は、電子カルテシステム、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)、放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)、診断レポートシステム、臨床検査情報システム(LIS:Laboratory Information System)、リハビリ部門システム、透析部門システム、手術部門システムなどの各種のシステムを含む。これらのシステムは、各装置と接続される。各システムと各装置との間では、各種の情報が送受信される。例えば、医用データ処理装置150は、システムによって送信された患者情報や、検査情報、治療情報等の各種の情報を受信する。
【0016】
医用情報表示装置140は、各種の医用情報を表示する。例えば、医用情報表示装置140は、ネットワーク160を介して医用画像保管装置120からCT画像や画像処理の処理結果等の医用情報を取得する。そして、医用情報表示装置140は、取得された医用情報を医用情報表示装置140内のディスプレイに表示させる。また、医用情報表示装置140は、他の医用画像等の医用情報を同様に取得してディスプレイに表示させる。例えば、医用情報表示装置140は、ワークステーションやパーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータ機器によって実現される。
【0017】
医用データ処理装置150は、医用画像に対して各種の画像処理を行う。例えば、医用データ処理装置150は、ネットワーク160を介してX線CT装置110又は医用画像保管装置120からCT画像を取得する。そして、医用データ処理装置150は、取得されたCT画像に対して各種の画像処理を行う。また、医用データ処理装置150は、CT画像以外の他の医用画像を同様に取得し、取得された他の医用画像に対して各種の画像処理を行ってもよい。また、医用データ処理装置150は、ネットワーク160を介して各部門システム130により送信された各種の情報を取得し、取得された各種の情報を用いて各種の処理を実行する。例えば、医用データ処理装置150は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0018】
図1に示すように、医用データ処理装置150は、ネットワーク(NetWork:NW)インタフェース151と、記憶回路152と、入力インタフェース153と、ディスプレイ154と、処理回路155とを備える。
【0019】
NWインタフェース151は、医用データ処理装置150と、医用データ処理装置150にネットワーク160を介して接続された他の装置又は各部門システム130との間で送受信される各種情報及び各種データの伝送及び通信を制御する。NWインタフェース151は、処理回路155に接続されている。NWインタフェース151は、他の装置又は各部門システム130により送信されたデータを受信する。この場合、NWインタフェース151は、受信されたデータを処理回路155に送信する。また、NWインタフェース151は、処理回路155により送信されたデータを受信する。この場合、NWインタフェース151は、受信されたデータを他の装置や各部門システム130に送信する。例えば、NWインタフェース151は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0020】
記憶回路152は、各種データ及び各種プログラムを記憶する。記憶回路152は、処理回路155に接続されている。記憶回路152は、処理回路155による制御を受けて、処理回路155により送信されたデータを記憶する。また、記憶回路152に記憶されているデータは、処理回路155により読み出される。例えば、記憶回路152は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0021】
入力インタフェース153は、医師等のユーザから各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。入力インタフェース153は、処理回路155に接続されている。入力インタフェース153は、ユーザから受け付けた操作を電気信号に変換して処理回路155に送信する。例えば、入力インタフェース153は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで操作を受け付けるタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力インタフェース、及び音声入力インタフェース等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース153は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路155へ送信する電気信号の処理回路も入力インタフェース153の例に含まれる。
【0022】
ディスプレイ154は、各種情報及び各種データを表示する。ディスプレイ154は、処理回路155に接続されている。ディスプレイ154は、処理回路155による制御を受けて、処理回路155により送信された各種情報及び各種データを表示する。例えば、ディスプレイ154は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。ディスプレイ154は、表示部の一例である。
【0023】
処理回路155は、医用データ処理装置150全体を制御する。例えば、処理回路155は、入力インタフェース153を介してユーザから受け付けた操作に応じて、各種処理を行う。また、例えば、処理回路155は、ネットワーク160を介してX線CT装置110又は医用画像保管装置120により送信されたCT画像を取得する。そして、処理回路155は、取得されたCT画像を記憶回路152に記憶させる。また、処理回路155は、他の医用画像についても同様に取得し、取得された他の医用画像を記憶回路152に記憶させてもよい。
【0024】
以上、本実施形態に係る医用データ処理システム100及び医用データ処理装置150の構成の一例について説明した。例えば、本実施形態に係る医用データ処理システム100及び医用データ処理装置150は、病院や診療所等の医療施設に設置され、医師等のユーザによって行われる各種の疾患についての治療計画の策定等を支援する。
【0025】
例えば、医用データ処理装置150は、被検体の治療後の生体器官の状態(形状、動き、血流、圧力等)を推定するための治療後シミュレーションを実施(実行)する。本実施形態では、治療後シミュレーションを実施する際に、医用データ処理装置150は、被検体の個人差を考慮して、治療前の被検体の状態に関する情報から治療後シミュレーションを実行する際に用いられる各種のパラメータを設定する。すなわち、医用データ処理装置150は、各被検体に対応するパラメータであって、より適切なパラメータを設定する。したがって、本実施形態に係る医用データ処理装置150は、治療前の被検体の状態に関する情報から治療後の被検体の状態をより適切に推定することができる。これにより、患者(被検体)の適切な治療選択や医師による治療時間の短縮につながり、被検体の予後の向上に寄与することができる。
【0026】
以下、医用データ処理装置150が、僧帽弁の弁膜症を患っている被検体(患者)の僧帽弁が対象領域として描出されたCT画像を用いて処理を行う場合について説明する。具体的には、医用データ処理装置150が、CT画像から得られる治療前の僧帽弁の形態情報から、治療後の僧帽弁の形態情報及び血行動態情報を推定する場合について説明する。ただし、医用データ処理装置150が、僧帽弁以外の他の生体器官に対して同様の処理を行ってもよい。
【0027】
図1に示すように、医用データ処理装置150の処理回路155は、第1の取得機能155aと、算出機能155bと、第2の取得機能155cと、推定機能155dと、表示制御機能155eとを有する。第1の取得機能155aは、第1の取得部の一例である。算出機能155bは、算出部の一例である。第2の取得機能155cは、第2の取得部の一例である。推定機能155dは、推定部の一例である。表示制御機能155eは、表示制御部の一例である。
【0028】
処理回路155は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラム(医用データ処理プログラム)の形態で記憶回路152に記憶される。そして、処理回路155は、記憶回路152に記憶された各プログラムを読み出し、読み出された各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する各処理機能を実現する。換言すると、処理回路155は、各プログラムを読み出した状態で、図1に示される各処理機能を有することとなる。
【0029】
なお、処理回路155は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、処理回路155が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路155が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、各処理機能に対応する各プログラムが単一の記憶回路152に記憶される場合の例を説明したが、各プログラムが複数の記憶回路に分散して記憶されてもよい。例えば、各処理機能に対応する各プログラムが複数の記憶回路に分散して記憶され、処理回路155が、各記憶回路から各プログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0030】
次に、医用データ処理装置150により実行される処理の手順について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る医用データ処理装置の処理回路155が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0031】
なお、処理回路155は、入力インタフェース153を介してユーザにより入力された指示であって図2に示す処理を実行するための指示を受信した場合に、図2に示す処理を実行する。また、処理回路155が、医用画像保管装置120を監視しており、新しいCT画像が医用画像保管装置120に新たに保管された場合に自動的に図2に示す処理を実行するようにしてもよい。更に、処理回路155が、医用画像保管装置120に新たに保管された新しいCT画像が予め定める条件を満足するか否かを判定し、満足する場合に図2に示す処理を実行するようにしてもよい。
【0032】
(ステップS1)
図2に示すように、まず、ステップS1では、第1の取得機能155aは、被検体のCT画像をX線CT装置110又は医用画像保管装置120より取得する。なお、本実施形態において医用データ処理装置150が処理の対象とする医用画像の種類は、CT画像に限られない。医用データ処理装置150が処理の対象とする医用画像は、処理の対象とする対象臓器の解剖構造の形態情報を含む医用画像であればどのような種類の医用画像であってもよい。例えば、処理の対象となる医用画像は、超音波画像、MRI画像、X線画像、アンギオ画像、PET画像又はSPECT画像のような他の3次元画像又は2次元画像であってもよい。また、処理の対象となる医用画像は、それらを時間方向に複数撮像することにより得られる4次元画像であってもよい。又は、処理の対象となる医用画像は、心電計、脳波計、脳磁計、心磁計、NIRS(near infrared spectroscopy(近赤外分光法))脳波計等による1次元の電気・磁気・近赤外線等の計測値の時間及び/又は空間方向の分布図等であってもよい。
【0033】
また、以下では、処理回路155が、CT画像に描出される被検体の僧帽弁を対象臓器とし、僧帽弁を6時点で撮像することにより得られた6位相(6時相)分の3次元データを含む4次元CT画像をステップS1で取得した例について説明するが、本実施形態はこれに限定されない。
【0034】
(ステップS2)
次に、ステップS2では、第1の取得機能155aは、ステップS1において取得されたCT画像における対象臓器を示す領域を特定する。以下、かかる対象臓器を示す領域を対象領域と称する。つまり、第1の取得機能155aは、本例では、対象領域として、CT画像上における僧帽弁が示すCT画像における各画素の座標情報を取得する。このようにして、ステップS2では、第1の取得機能155aは、僧帽弁の形態情報を取得する。かかる僧帽弁の形態情報は、治療前のタイミングにおける僧帽弁の形態の状態を示す実測のデータの一例である。また、僧帽弁の形態の状態は、僧帽弁の状態の一例である。
【0035】
例えば、第1の取得機能155aは、入力インタフェース153を介してユーザにより入力された対象領域の指定に基づいて、対象領域を特定してもよい。具体的には、第1の取得機能155aは、ユーザにより対象領域として指定された領域を、ステップS3以降の処理で用いられる対象領域として特定してもよい。また、第1の取得機能155aは、既知の領域抽出技術によりCT画像に描出される解剖学的構造に基づいて対象領域を特定してもよい。既知の領域抽出技術としては、例えば、CT値に基づく大津の二値化法、領域拡張法、スネーク法、グラフカット法、ミーンシフト法等がある。
【0036】
なお、対象領域を特定する手法は、医用画像から対象領域を特定できればどのような手法でもよく、上述した手法に限定されない。例えば、第1の取得機能155aは、機械学習技術(例えば、深層学習を含む機械学習技術)を用いて事前に準備された学習用データを学習することで構築された対象領域の形状モデルに基づいて対象領域を推定して特定してもよい。具体的には、第1の取得機能155aは、CT画像に当該形状モデルを適用し対象領域を出力することで、対象領域を推定する。対象領域は2次元であってもいいし、3次元であってもよい。
【0037】
また、第1の取得機能155aが医用画像全体に対してグラフカット法等の処理を実施すると、計算コストが過剰に高くなる可能性がある。このため、第1の取得機能155aは、対象臓器に関連し、且つ、対象臓器よりも大きいが医用画像全体よりは小さい領域を特定する。以下、対象臓器に関連し、且つ、対象臓器よりも大きいが医用画像全体よりは小さい領域を関連領域と称する。例えば、対象臓器が僧帽弁である場合には、関連領域は、心臓領域又は左心房と左心室の和の領域等である。そして、第1の取得機能155aは、特定された関連領域にのみ上記処理を適用し、対象領域を特定してもよい。これにより、計算コストの増大を抑制することができる。
【0038】
なお、第1の取得機能155aは、入力インタフェース153を介してユーザにより入力された関連領域の指定に基づいて、関連領域を特定してもよい。具体的には、第1の取得機能155aは、ユーザにより関連領域として指定された領域を、上記処理が適用される関連領域として特定してもよい。第1の取得機能155aは、対象領域を特定する処理を、ステップS1で取得された複数の時点で撮像された複数の位相分のCT画像(本例では、6位相分のデータ)のそれぞれに対して実施する。すなわち、第1の取得機能155aは、時点ごとに、対象領域を特定する。
【0039】
また、第1の取得機能155aは、対象領域の中で複数の特徴的な領域や複数の特性の異なる領域を個別に特定してもよい。例えば、僧帽弁は、前尖と後尖との2つの弁葉から構成される。このため、第1の取得機能155aは、前尖及び後尖それぞれを個別に特定してもよい。
【0040】
図3は、第1の実施形態に係るステップS2の処理の一例を説明するための図である。図3に示すように、第1の取得機能155aは、時点t1から時点t6までの6時点において撮像することにより得られた6つのCT画像11~16のそれぞれから6つの僧帽弁の領域21~26のそれぞれを特定する。なお、僧帽弁の領域21~26において、斜線のハッチングにより示される領域21a~26aは前尖を示す領域であり、ドットのハッチングにより示される領域21b~26bは後尖を示す領域である。
【0041】
(ステップS3)
次に、ステップS3では、算出機能155bは、後述するステップS4で実施される治療前のシミュレーション(治療前シミュレーション)に使用されるパラメータを算出し設定する。ここで、ステップS3で設定されるパラメータは、治療の影響を受けない又は受けにくいパラメータである。すなわち、ステップS3で設定されるパラメータは、治療の前後で変化しない又は変化が少ないパラメータである。また、ステップS3では、1つ又は複数のパラメータが設定される。すなわち、算出機能155bは、少なくとも1つのパラメータを設定する。パラメータは境界条件を含む。
【0042】
具体的には、算出機能155bは、弁葉に関するパラメータとして、弁の硬さ、厚さ及び繊維方向等を設定してもよい。また、算出機能155bは、腱索に関するパラメータとして、腱索の硬さ、長さ、太さ、接続位置及び数等を設定してもよい。また、算出機能155bは、心腔又は血管に関するパラメータとして、血管、左心房及び左心室等のそれぞれの硬さ、体積及び表面の平滑さの程度等を設定してもよい。また、算出機能155bは、血液に関するパラメータとして、血液の粘度、流速、カフ圧(最高血圧、最低血圧)及び全身の総血液量等を設定してもよい。本明細書では、上述した弁の硬さ、厚さ及び繊維方向等の弁葉に関するパラメータ、並びに、腱索の硬さ、長さ、太さ、接続位置及び数等の腱索に関するパラメータは、僧帽弁の形状又は形状の変化に関するパラメータとして説明する。また、上述した血管、左心房及び左心室等のそれぞれの硬さ、体積及び表面の平滑さの程度等の心腔又は血管に関するパラメータ、並びに、血液の粘度、流速、カフ圧(最高血圧、最低血圧)及び全身の総血液量等の血液に関するパラメータは、僧帽弁の動き又は動きの変化に関するパラメータとして説明する。以下、僧帽弁の形状又は形状の変化に関するパラメータを単に「形状に関するパラメータ」と表記し、僧帽弁の動き又は動きの変化に関するパラメータを単に「動きに関するパラメータ」と表記する。なお、形状に関するパラメータ、動きに関するパラメータの分類はどのようなものであってもよく本実施形態はこれに限定されない。血流に関するパラメータを別に設定してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、例えば、形状に関するパラメータが算出される対象の生体器官が、僧帽弁及び腱索である。また、本実施形態では、例えば、動きに関するパラメータが算出される対象の生体器官が、心腔、血管及び血液である。ただし、腱索は、動きに関するパラメータが算出される対象の生体器官にもなりうる。形状に関するパラメータが算出される対象の生体器官は、第1の生体器官の一例である。動きに関するパラメータが算出される対象の生体器官は、第2の生体器官の一例である。
【0044】
なお、算出機能155bは、直接パラメータを設定せずに、予め設定されたアルゴリズムに基づいて間接的な指標からパラメータを算出し設定してもよい。例えば、算出機能155bは、僧帽弁を通過する血液の流速を示すパラメータを直接設定するのではなく、間接的な指標として左心房の体積(容積)及び左心室の体積を算出し設定してもよい。例えば、算出機能155bは、左心房の体積と左心室の体積の時間方向の変化量に基づいて僧帽弁の上側(左心房側)と下側(左心室側)との間にかかる圧力較差を算出する。そして、算出機能155bは、圧力較差から血液の流速を算出し、算出された血液の流速をパラメータとして設定する。このように、算出機能155bは、血液の流速を示すパラメータを算出するための間接的な指標として左心房の体積及び左心室の体積を設定してもよい。
【0045】
上述したパラメータは一例であり、ステップS3で設定されるパラメータは上述したパラメータの種類や数に限定されない。例えば、算出機能155bにより設定されるパラメータは、生体のシミュレーションに用いられることが可能なパラメータであればどのようなパラメータであってもよい。例えば、本実施形態で用いられる生体器官の形状に関するパラメータは、生体器官の硬さ、厚さ、繊維方向、長さ、太さ、接続位置及び数のうち少なくとも1つを示すパラメータであればよい。また、本実施形態で用いられる生体器官の動きに関するパラメータは、生体器官の硬さ、体積、及び、表面の平滑さの程度、並びに、生体器官を流れる流体(例えば血液)の粘度、流速及び総量のうち少なくとも1つを示すパラメータであればよい。
【0046】
図4は、第1の実施形態に係るユーザインタフェースの一例を示す図である。図4には、パラメータを設定するためのユーザインタフェースの一例として、パラメータを設定するためのパラメータ設定用画面31が示されている。本実施形態では、ユーザが、図4に示すようなユーザインタフェースを用いて、手動でパラメータを設定可能としてもよい。例えば、算出機能155bは、図4に示すパラメータ設定用画面31を表示するようにディスプレイ154を制御する。パラメータ設定用画面31は、3つのチェックボックス32~34及び3つのテキストボックス35~37を有する。
【0047】
チェックボックス32は、僧帽弁の硬さを示すパラメータを治療前シミュレーションに用いるか否かを選択するためのものである。チェックボックス32が入力インタフェース153を介してユーザにより選択されると、図4に示すように、算出機能155bは、チェックボックス32上にチェックマークを表示させ、僧帽弁の硬さを示すパラメータが治療前シミュレーションに用いられるように設定する。一方、チェックボックス32が選択されない場合、算出機能155bは、チェックボックス32上にチェックマークを表示させず、僧帽弁の硬さを示すパラメータが治療前シミュレーションに用いられないように設定する。
【0048】
チェックボックス33は、腱索の数を示すパラメータを治療前シミュレーションに用いるか否かを選択するためのものである。チェックボックス33が入力インタフェース153を介してユーザにより選択されると、図4に示すように、算出機能155bは、チェックボックス33にチェックマークを表示させ、腱索の数を示すパラメータが治療前シミュレーションに用いられるように設定する。一方、チェックボックス33が選択されない場合、算出機能155bは、チェックボックス33にチェックマークを表示させず、腱索の数を示すパラメータが治療前シミュレーションに用いられないように設定する。
【0049】
チェックボックス34は、治療前シミュレーションにおいて乳頭筋の位置を考慮するか否かを選択するためのものである。チェックボックス34が入力インタフェース153を介してユーザにより選択されると、算出機能155bは、チェックボックス34にチェックマークを表示させ、治療前シミュレーションにおいて乳頭筋の位置を考慮するように設定する。一方、チェックボックス34が選択されない場合、図4に示すように、算出機能155bは、チェックボックス34にチェックマークを表示させず、治療前シミュレーションにおいて乳頭筋の位置が考慮されないように設定する。
【0050】
テキストボックス35は、チェックボックス32が選択された場合に、入力インタフェース153を介してユーザにより弁の硬さを示す数値が入力されることが可能な状態となる。図4の例では、ユーザにより「3」(MPa)が入力されて指定された場合が示されている。
【0051】
テキストボックス36は、チェックボックス33が選択された場合に、入力インタフェース153を介してユーザにより前尖に接続される腱索の数が入力されることが可能な状態となる。図4の例では、前尖に接続される腱索の数「10」(本)がユーザにより入力されて指定された場合が示されている。
【0052】
テキストボックス37は、チェックボックス33が選択された場合に、入力インタフェース153を介してユーザにより後尖に接続される腱索の数が入力されることが可能な状態となる。図4の例では、後尖に接続される腱索の数「15」(本)がユーザにより入力されて指定された場合が示されている。
【0053】
そして、図4の例のようにユーザにより各種のパラメータが指定された場合、算出機能155bは、ユーザにより指定された弁の硬さ「3」(MPa)並びに前尖に接続される腱索の数「10」(本)及び後尖に接続される腱索の数「15」(本)の3つのパラメータを設定する。
【0054】
なお、このようなユーザインタフェースは一例であり、各種パラメータをユーザが設定することが可能であれば、どのようなユーザインタフェースが用いられてもよい。例えば、ユーザインタフェースが各種論理式(AND,OR,NOT等)をユーザが入力することが可能となるように構成されることで、複雑な条件が設定されることができるようにしてもよい。
【0055】
また、算出機能155bは、各種パラメータを、ステップS2で特定された対象領域の中の複数の特徴的な領域のそれぞれについて別々に算出し設定してもよい。また、算出機能155bは、ユーザの手動ではなくステップS1で取得されたCT画像を解析して自動で各種パラメータを算出し設定してもよい。例えば、算出機能155bは、既知の領域抽出技術によりCT画像から心腔領域を抽出し、抽出された心腔領域から心腔の体積を自動で算出し、算出された心腔の体積を示すパラメータを設定してもよい。また、算出機能155bは、電子カルテシステム、HIS、RIS等から臨床的な情報を取得し、取得された臨床的な情報に係るパラメータを設定してもよい。または、算出機能155bは、ユーザにより手動で設定されるパラメータと自動で設定されるパラメータを混合して設定してもよい。
【0056】
更に、算出機能155bは、各種パラメータの初期値として予め定められた定数を設定してもよい。例えば、算出機能155bは、初期値として、被検体の属性に基づいて定められた定数を設定してもよい。例えば、算出機能155bは、年齢や性別に応じて異なる初期値を設定してもよい。
【0057】
また、算出機能155bは、事前定義した全てのパラメータの項目を使用しなくてもよい。例えば、算出機能155bは、使用するパラメータの項目をユーザインタフェース上で、ユーザによる手動で選択できるようにしてもよい。
【0058】
他の例では、算出機能155bは、CT画像に対して画像処理等を実行することによって自動で取得されるパラメータについては、当該画像処理の信頼度を算出し、信頼度が低いか否かを判定してもよい。具体的には、算出機能155bは、信頼度が閾値以下であるか否かを判定することにより、信頼度が低いか否かを判定してもよい。信頼度が閾値以下である場合、算出機能155bは、以下に説明する3つの処理のうち、いずれかの処理を行ってもよい。例えば、算出機能155bは、1つ目の処理として、画像処理によって得られる計算値ではなく予め定められた定数をパラメータとして設定するようにしてもよい。また、算出機能155bは、2つ目の処理として、パラメータをユーザに手動で設定させることを促すための画面をディスプレイ154に表示させてもよい。また、算出機能155bは、3つ目の処理として、自動で取得されるパラメータの項目を不使用にするように設定してもよい。なお、信頼度が閾値より大きい場合、算出機能155bは、自動で取得されたパラメータを設定する。
【0059】
また、算出機能155bが、上述したように電子カルテシステム、HIS、RIS等の各種のシステムからパラメータを取得しようとしたが、各種のシステムからパラメータを取得できない場合について説明する。この場合、算出機能155bは、上述した信頼度が閾値以下である場合に実行する処理と同様の処理を実行してもよい。例えば、算出機能155bは、予め定められた定数をパラメータとして設定するようにしてもよい。また、算出機能155bは、パラメータをユーザに手動で設定させることを促すための画面をディスプレイ154に表示させてもよい。また、算出機能155bは、各種のシステムから取得できないパラメータの項目を不使用にするように設定してもよい。
【0060】
以下、算出機能155bが、パラメータとして弁の硬さ、腱索の数(前尖及び後尖のそれぞれに接続された腱索の数)、拡張期及び収縮期のそれぞれの左心房の体積(容積)及び左心室の体積(容積)、カフ圧(最高血圧、最低血圧)を設定する場合について説明する。算出機能155bは、弁の硬さの初期値として「3」MPaを設定する。また、算出機能155bは、前尖に接続された腱索の数の初期値として「10」本を設定し、後尖に接続された腱索の数の初期値として「15」本を設定する。また、算出機能155bは、ステップS1で取得されたCT画像に対して領域抽出処理を実施することにより、拡張期及び収縮期のそれぞれの左心房の体積及び左心室の体積を取得し、取得された計4つの体積を設定する。また、算出機能155bは、電子カルテシステムからカフ圧を取得し、取得されたカフ圧を設定する。ここで、上述したように、本実施例においては、弁の硬さ及び腱索の数の各パラメータは、形状に関するパラメータであり、拡張期及び収縮期のそれぞれの左心房の体積及び左心室の体積並びにカフ圧の各パラメータは、動きに関するパラメータである。
【0061】
(ステップS4)
次に、ステップS4では、第1の取得機能155aは、ステップS3において設定されたパラメータに基づいて治療前シミュレーションを実施し、被検体の治療前における対象臓器の推定データを取得する。本実施形態では、第1の取得機能155aは、僧帽弁の治療前の動きをシミュレーションする。第1の取得機能155aは、既知の手法を用いて治療前シミュレーションを実施する。例えば、第1の取得機能155aは、有限要素法、有限差分法、イマースバウンダリー法等を用いて治療前シミュレーションを実施する。
【0062】
以下、第1の取得機能155aが、有限要素法を用いて治療前シミュレーションを実施する場合を例に挙げて説明するが、治療前シミュレーションの手法はこれに限られない。第1の取得機能155aは、物体の動作や流体に関する情報を推定することができればどのような手法を用いてもよい。例えば、第1の取得機能155aは、機械学習技術(例えば、深層学習を含む機械学習技術)を用いて事前に準備された学習用データを学習することで構築された形状モデルから対象領域の治療前の形状を推定してもよい。具体的には、第1の取得機能155aは、CT画像に当該形状モデルを適用し対象領域の治療前の形状を出力することで、対象領域の治療前の形状を推定する。
【0063】
ステップS4の具体的な処理の一例について説明する。第1の取得機能155aは、まず、ステップS2で特定された複数の時点(本実施形態では6時点)の対象領域から1つの時点の対象領域を取得する。例えば、第1の取得機能155aは、図3に示す時点t1の僧帽弁の領域21を取得する。そして、第1の取得機能155aは、取得された僧帽弁の領域21に対して、予め定められた数、サイズ、形状、要素等の条件に基づいて複数の計算格子(メッシュ)を設定する。そして、第1の取得機能155aは、各計算格子に対してステップS3で設定されたパラメータに基づき設定される数学モデル又は物理モデルを適用し、時点t2から時点t6の5つの時点の僧帽弁の形状(形態)を推定する。
【0064】
なお、第1の取得機能155aは、時点t2から時点t6までの5つの時点における形状のみを推定してもよいし、さらに細かい時間間隔(例えば、時点t1から時点t2までの間の時点等)における形状を推定してもよい。また、第1の取得機能155aは、時点t1の形状及びステップS3において設定されたパラメータと、時点t1と推定の対象となる時点との時間間隔の情報のみから時点t2から時点t6までの各時点の形状を推定してもよい。また、第1の取得機能155aは、時間方向に連続する複数の時点のそれぞれの時点の形状の推定において、ある時点において推定された形状に基づいて、その時点の次の時点の形状を推定してもよい。すなわち、第1の取得機能155aは、時点tN(Nは1から5までの整数)の形状及びステップS3において設定されたパラメータに基づいて時点t(N+1)の形状を推定してもよい。
【0065】
なお、第1の取得機能155aは、シミュレーションを実施する際に、僧帽弁の形状及びステップS3において設定されるパラメータだけでなく、対象となる被検体の臨床的な情報を用いてもよい。例えば、第1の取得機能155aは、電子カルテシステム、HIS,RIS等のシステムから対象となる臨床的な情報を特定し利用できるように制御してもよい。また、第1の取得機能155aは、入力インタフェース153を介してユーザにより入力された、被検体に対する問診やヒアリング等から得られた情報を用いてもよい。
【0066】
図5は、第1の実施形態に係るステップS4の処理の一例を説明するための図である。図5には、ステップS4において、第1の取得機能155aが、ステップS2で得られた時点t1の僧帽弁の領域21の形状に基づいて推定した時点t2´から時点t6´までの各時点の僧帽弁の形状の一例が示されている。ここで、時点t2´から時点t6´までの各時点は、時点t2から時点t6までの各時点の心位相と同一の心位相の時点である。図5に示すように、ステップS4において、第1の取得機能155aは、時点t2´の僧帽弁の形状42を推定する。同様に、ステップS4において、第1の取得機能155aは、時点t3´から時点t6´までの各時点の僧帽弁の形状43,44,45,46を推定する。
【0067】
(ステップS5)
次に、ステップS5では、算出機能155bは、ステップS4で推定された形状(以下、推定形状)とステップS2で特定された対象領域の形状(以下、実測形状)とに基づいて、予め設定された評価指標を用いて、評価する。ここで、推定形状は、治療前のタイミングにおける僧帽弁の状態に関する推定データの一例である。また、実測形状は、治療前のタイミングにおける僧帽弁の状態を示す実測のデータの一例である。また、治療前のタイミングは、第1のタイミングの一例である。
【0068】
例えば、算出機能155bは、推定形状と実測形状との全体的な形状の誤差に基づいた評価指標による評価値を算出する。算出機能155bは、以下の式(1)にしたがって、評価値として全体的な形状の誤差を算出する。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、pは位相数を表し、d(a,b)は点aと面bとの間の最小のユークリッド距離を算出する関数を表す。S(S)はn番目の位相における推定形状を表し、S(G)はn番目の位相における実測形状を表す。sSnはn番目の位相における推定形状を構成する点を表す。sGnはn番目の位相における実測形状を構成する点を表す。|S(S)|はn番目の位相における推定形状を構成する点の個数を表す。|S(G)|はn番目の位相における実測形状を構成する点の個数を表す。
【0071】
例えば、算出機能155bは、式(1)にしたがって、時点t2´から時点t6´までの各時点の僧帽弁の形状42,43,44,45,46と、時点t2から時点t6までの各時点の僧帽弁の領域22,23,24,25,26の形状との誤差(差分)を算出する。この場合、位相数pは「5」を示す。このように、算出機能155bは、推定形状を構成する点及び面、並びに、実測形状を構成する点及び面に基づいて、評価値を算出する。
【0072】
なお、上記の評価指標は一例にすぎず、本実施形態で用いられる評価指標は、上記の評価指標に限定されない。上述した例では、算出機能155bが、全体形状に基づいて評価値を算出する場合について説明した。すなわち、算出機能155bが、ステップS4で推定された僧帽弁の全体形状とステップS2で特定された僧帽弁(対象領域)の全体形状との誤差を評価値として算出する場合について説明した。
【0073】
しかしながら、算出機能155bは、特徴的な領域の形状に基づいて評価値を算出してもよい。例えば、算出機能155bは、ステップS4で推定された僧帽弁の開口部の形状や弁輪の形状と、ステップS2で特定された僧帽弁の開口部の形状や弁輪の形状との誤差を評価値として算出してもよい。
【0074】
また、算出機能155bは、特徴的な座標の位置に基づいて評価値を算出してもよい。例えば、算出機能155bは、交連部の位置に基づいて評価値を算出してもよい。具体的には、算出機能155bは、ステップS4で推定された僧帽弁の前交連部及び後交連部の位置と、ステップS2で特定された僧帽弁の前交連及び後交連部の位置との誤差を評価値として算出してもよい。
【0075】
また、上述した例では、算出機能155bが、複数の時点における複数の誤差の平均値に基づいて評価値を算出する場合について説明したが、特徴的な時点における誤差の平均値に基づいて評価値を算出してもよい。例えば、算出機能155bは、収縮期と拡張期における誤差の平均値に基づいて評価値を算出してもよい。また、算出機能155bは、各時点における誤差に重みを設定して評価値を算出してもよい。また、算出機能155bは、複数の評価指標を組み合わせて評価してもよい。また、算出機能155bは、対象となる被検体や医用画像の種類、対象臓器の種類等に応じて、複数の評価指標の中から用いられる評価指標を選択してもよい。
【0076】
算出機能155bは、予め設定された評価指標による評価値を算出した後は、算出された評価値を基準値と比較し、評価値が基準値を満足するか否かを判定する。ここで、式(1)により算出される評価値は、小さくなるほど誤差が小さくなる。したがって、算出機能155bは、式(1)により評価値を算出する場合には、評価値が基準値以下であるか否かを判定する。この場合、算出機能155bは、評価値が基準値以下である場合には、評価値が基準値を満足すると判定する。一方、算出機能155bは、評価値が基準値より大きい場合には、評価値が基準値を満足しないと判定する。なお、基準値は予め定められていてもよいし、ユーザインタフェースを用いてユーザにより設定されてもよい。ここで、例えば、評価値が基準値を満足するとは、評価値が予め定められた基準を満足することを意味し、評価値が基準値を満足しないとは、評価値が予め定められた基準を満足しないことを意味する。
【0077】
評価値が基準値を満足する場合(ステップS5:Yes)、算出機能155bは、その時のステップS3で設定されたパラメータを記憶回路152に記憶させて保管させる。このようにして、算出機能155bは、推定形状と実測形状とに基づいたパラメータであってステップS6において実施される治療後シミュレーションに用いられるパラメータを算出する。例えば、算出機能155bは、推定形状と実測形状とに基づいて算出される評価値が予め定められた基準を満足する場合の推定形状を推定する際に用いられるパラメータを、ステップS6において実施される治療後シミュレーションに用いられるパラメータとして算出する。具体的には、算出機能155bは、推定形状と実測形状とが類似する場合の推定形状を推定する際に用いられるパラメータを、ステップS6において実施される治療後シミュレーションに用いられるパラメータとして算出する。より具体的には、算出機能155bは、推定形状と実測形状との差分が閾値以下となる場合の推定形状を推定する際に用いられるパラメータを、ステップS6において実施される治療後シミュレーションに用いられるパラメータとして算出する。そして、算出機能155bは、算出されたパラメータを、後述するステップS6で治療後シミュレーションを実施する際に用いられるパラメータとして確定する。そして、算出機能155bは、ステップS6に進む。一方、評価値が基準値を満足しない場合(ステップS5:No)、算出機能155bはステップS3に戻る。
【0078】
算出機能155bは、ステップS3に戻る場合、ステップS3においてパラメータを再設定する。例えば、算出機能155bは、ステップS3において、複数のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータを変更することによりパラメータを新たに算出し、算出されたパラメータを設定する。算出機能155bは、ユーザインタフェースを介してユーザにより指定された値をパラメータとして再設定してもよい。また、算出機能155bは、前回設定したパラメータの値に基づいて自動で調整してもよい。例えば、算出機能155bは、各種パラメータに対して前回設定した値から一定の大きさ又は一定の割合だけ値を変動させることにより、各種パラメータを再設定してもよい。
【0079】
また、第1の取得機能155a及び算出機能155bは、ステップS3~S5を複数回繰り返す場合について説明する。この場合、算出機能155bは、推定形状と実測形状とに基づいて算出される評価値が基準値を満足するまで、推定形状を推定する際に用いられるパラメータを繰り返し変更する。具体的には、算出機能155bは、推定形状と実測形状とが類似するまで、推定形状を推定する際に用いられるパラメータを繰り返し変更する。より具体的には、算出機能155bは、推定形状と実測形状との差分が閾値以下となるまで、推定形状を推定する際に用いられるパラメータを繰り返し変更する。
【0080】
また、ステップS3~S5が複数回繰り返される場合、算出機能155bは、全てのパラメータを同様に調整するのではなく、複数のパラメータのうち、算出される評価値が基準値に近づくようなパラメータを推定し、推定されたパラメータを優先的に調整してもよい。例えば、算出機能155bは、繰り返されるステップS3においてパラメータを一つずつ変動させ、評価値が基準値に近づくことに対して最も効果があるパラメータを推定し、推定されたパラメータを優先的に調整してもよい。すなわち、算出機能155bは、推定形状を推定する際に用いられる複数のパラメータのうち、他のパラメータと比較して推定形状と実測形状とに基づいて算出される評価値が基準値に近づく度合いが高いパラメータを優先的に変更する。そして、第1の取得機能155aは、算出機能155bにより他のパラメータと比較して評価値が基準値に近づく度合いが高いパラメータが優先的に変更される度に、変更されたパラメータを用いて推定形状を推定する。
【0081】
また、算出機能155bは、一度設定した各種パラメータを記憶回路152に保管しておき、同じ値の組み合わせのパラメータが再び設定されないように制御してもよい。また、算出機能155bは、画像処理等によって自動で取得するパラメータを固定値として調整できないように制御してもよい。例えば、算出機能155bは、拡張期及び収縮期のそれぞれの左心房の体積及び左心室の体積や、電子カルテシステム等のシステムから取得するカフ圧等のパラメータを固定値として調整できないように制御してもよい。
【0082】
また、算出機能155bは、評価値が基準値を満足しない場合であっても、予め定められた回数又は処理時間だけ、ステップS3からステップS5の処理を繰り返したとき、ステップS6に進んでもよい。このとき、算出機能155bは、繰り返した中で最も基準値に近い評価値が算出された際のパラメータ又は最後に算出したパラメータを記憶回路152に保管してステップS6に進んでもよい。このような場合、例えば、ステップS3からS5までの処理が複数回実行される。各回のステップS4では、第1の取得機能155aは、前回までのステップS3で用いられたパラメータとは異なるパラメータを用いて推定形状を推定することにより推定形状を取得する。したがって、複数回のステップS4では、第1の取得機能155aは、複数の異なるパラメータを用いて複数の推定形状を推定することにより、複数の推定形状を取得する。また、各回のステップS5では、算出機能155bは、ステップS3で取得された推定形状と、ステップS2で取得された実測形状とに基づいて算出される評価値が基準値を満足するか否かを判定する。したがって、複数回のステップS3~S5では、算出機能155bは、複数回のステップS4で取得された複数の推定形状、及び、ステップS2で取得された実測形状に基づいて、ステップS6において僧帽弁の状態を推定する際に用いられるパラメータを算出する。
【0083】
又は、算出機能155bは、ステップS6に進まず、不図示の警告画面をディスプレイ154に表示させて処理を止めるように制御してもよい。警告画面の表示により、ユーザは、処理が停止された理由が、評価値が基準値を満足しないという理由であることを把握することができる。また、処理が停止されることにより、評価値が基準値を満足しないにも関わらず、後述するステップS6において治療後シミュレーションが実施されることを抑制することができる。
【0084】
第1の実施形態に係る医用データ処理装置150は、ステップS3からステップS5の処理により、対象の被検体に適したパラメータを設定することができる。
【0085】
(ステップS6)
ステップS6において、第2の取得機能155c及び推定機能155dは、ステップS5において評価値が基準値を満足した際のステップS3において設定されたパラメータを用いて、治療後のシミュレーション(治療後シミュレーション)を実施する。すなわち、第2の取得機能155c及び推定機能155dは、ステップS5において確定されたパラメータを用いて治療後シミュレーションを実施する。例えば、第2の取得機能155c及び推定機能155dは、ステップS4と同様に、既知の手法を用いて治療後シミュレーションを実施する。以下では、第2の取得機能155c及び推定機能155dが、僧帽弁に対して僧帽弁接合不全修復術に用いるクリップによる治療を実施した場合の治療後シミュレーションを実施する場合について説明する。
【0086】
具体的には、第2の取得機能155cは、まず、ステップS2で特定された複数の時点の対象領域から1つの時点の対象領域を取得する。例えば、第2の取得機能155cは、図3に示す時点t1の僧帽弁の領域21を取得する。そして、第2の取得機能155cは、僧帽弁の領域21に対して、予め定められた数、サイズ、形状、要素等の条件に基づいて計算格子を設定する。第2の取得機能155cは、ステップS4の計算格子の設定と同様の設定で、僧帽弁の領域21に計算格子を設定してもよいし、ステップS4の計算格子の設定とは異なる設定で、僧帽弁の領域21に計算格子を設定してもよい。なお、第2の取得機能155cは、ステップS6で計算格子を設定することなく、ステップS4で計算格子が設定された僧帽弁の領域21をそのまま用いて以下で説明する処理を行ってもよい。
【0087】
そして、第2の取得機能155cは、既知であるクリップのサイズ、重さ、張力等に基づいて予め設定されるクリップに関するパラメータと、ステップS5において確定された形状に関するパラメータとに基づいて設定される数学モデル又は物理モデルを、僧帽弁の領域21に設定された各計算格子に適用する。そして、第2の取得機能155cは、僧帽弁の領域21に設定された各計算格子に適用された数学モデル又は物理モデルを用いて、時点t1の心位相と同一の心位相の時点t1における治療後の僧帽弁の形状を推定する。このように、第2の取得機能155cは、治療後シミュレーションを実施する際に形状に関するパラメータを用いることで、より高精度に治療後シミュレーションを実施することができる。具体的には、例えば、第2の取得機能155cは、時点t1の治療後の僧帽弁の形状を精度よく推定することができる。
【0088】
図6は、第1の実施形態に係る第2の取得機能155cが実行する処理の一例を説明するための図である。図6に示すように、ステップS6において、第2の取得機能155cは、時点t1における治療前の僧帽弁の領域21の形状から、時点t1における治療後の僧帽弁の形状51を推定する。このように、第2の取得機能155cは、ステップS5において確定された形状に関するパラメータと時点t1における推定形状とに基づいて、治療前のタイミングとは異なる治療後のタイミングにおける時点t1の僧帽弁の形状51を取得する。僧帽弁の形状51は、僧帽弁の状態に関する状態データの一例である。また、治療後のタイミングは、第2のタイミングの一例である。また、時点t1及び時点t1は、所定時相の一例である。なお、ステップS6において、第2の取得機能155cではなく、推定機能155dが上述した処理を行って時点t1における治療後の僧帽弁の形状51を推定してもよい。
【0089】
なお、ユーザがユーザインタフェースを用いて、クリップのサイズやクリップが設置される僧帽弁の位置を任意に設定してもよい。例えば、第2の取得機能155cは、ユーザインタフェースを介してユーザにより指定されたクリップのサイズやクリップが設置される僧帽弁の位置をパラメータとして設定してもよい。そして、第2の取得機能155cは、パラメータとして設定されたクリップのサイズやクリップが設置される僧帽弁の位置を用いて、時点t1における治療後の僧帽弁の形状51を推定してもよい。
【0090】
次に、推定機能155dは、時点t1における僧帽弁の形状51に対してステップS5で確定された動きに関するパラメータを適用し、治療後の他の時点の僧帽弁の形状を推定する。図7は、第1の実施形態に係る推定機能155dが実行する処理の一例を説明するための図である。図7に示すように、推定機能155dは、治療後の他の時点(時点t2から時点t6までの5時点)の僧帽弁の形状52~56を推定する。すなわち、推定機能155dは、時点t1の僧帽弁の形状51と、ステップS5において確定された動きに関するパラメータとに基づいて、治療後のタイミングにおける僧帽弁の状態を複数時相に亘って推定する。ここで、時点tL(Lは1から6までの整数)は、時点tLと同一の心位相の時点である。なお、ステップS6において、推定機能155dが、時点t1における僧帽弁の形状51に対してステップS5で確定された動きに関するパラメータ及び形状に関するパラメータの両パラメータを適用し、治療後の他の時点の僧帽弁の形状を推定してもよい。また、推定機能155dが、時点t1における僧帽弁の形状51に対してステップS5で確定された形状に関するパラメータを適用し、治療後の他の時点の僧帽弁の形状を推定してもよい。
【0091】
このように、ステップS6では、医用データ処理装置150は、対象の被検体に適したパラメータを用いて治療後シミュレーションを実施する。したがって、医用データ処理装置150は、個人差を考慮した治療後シミュレーションを実施することができる。
【0092】
(ステップS7)
そして、ステップS7では、表示制御機能155eは、推定機能155dによる推定結果等を表示するようにディスプレイ154を制御する。例えば、表示制御機能155eは、時点t1から時点t6までの6時点における僧帽弁の形状51~56を表示するようにディスプレイ154を制御する。したがって、本実施形態に係る医用データ処理装置150は、治療前の被検体の状態に関する情報からより適切に推定された治療後の被検体の状態をユーザに把握させることができる。また、これにより、患者(被検体)による適切な治療選択や医師による治療時間の短縮につながり、被検体の予後の向上に寄与することができる。
【0093】
なお、第1の実施形態では、医用データ処理装置150が、治療デバイスとしてクリップを留置することにより僧帽弁の形状が変化する治療を実施した場合の治療後シミュレーションを実施する場合について説明した。しかしながら、第1の実施形態は、これに限られない。例えば、医用データ処理装置150は、外科手術の弁形成術を始めとする僧帽弁(つまり、対象臓器)自身の形状を変化させる治療を実施した場合の治療後シミュレーションを実施してもよい。この場合は、医用データ処理装置150は、1つの時点の僧帽弁の一部の形状を切除又は縫合による変形を与えることで僧帽弁の形状を推定し、その僧帽弁の形状に対してパラメータを適用することで他の時点の治療後の僧帽弁の形状を推定してもよい。
【0094】
また、医用データ処理装置150は、薬物療法のように僧帽弁の形態は変化させず血液の物性値(例えば粘性)を変化させる治療を実施した場合の治療後シミュレーションを実施してもよい。この場合は、医用データ処理装置150は、ステップS5で確定されたパラメータに対して血液の物性値のみを変化させることで治療後の状態を推定してもよい。
【0095】
なお、各ステップの処理を実施する装置が、単一の医用データ処理装置150内における各処理部として実現してもよいし、独立した装置として実現してもよい。また、各ソフトウェアが、各ステップの処理を実施してもよい。この場合、処理を実施するソフトウェアは、クラウドをはじめとするネットワークを介したサーバ上で動作してもよい。
【0096】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、ステップS6において、第2の取得機能155cが、ステップS5において確定された形状に関するパラメータを用いて、時点t1における治療後の僧帽弁の形状51を推定する場合について説明した。しかしながら、第2の取得機能155cは、形状に関するパラメータではなく、動きに関するパラメータを用いて、時点t1における治療後の僧帽弁の形状を推定してもよい。そこで、このような実施形態を第2の実施形態として説明する。第2の実施形態の説明において、上述した第1の実施形態と異なる点を主に説明し、上述した第1の実施形態と同様の構成の説明を省略する場合がある。
【0097】
第2の実施形態において、第2の取得機能155cは、既知であるクリップのサイズ、重さ、張力等に基づいて予め設定されるクリップに関するパラメータと、ステップS5において確定された動きに関するパラメータとに基づいて設定される数学モデル又は物理モデルを、僧帽弁の領域21に設定された各計算格子に適用する。そして、第2の取得機能155cは、僧帽弁の領域21に設定された各計算格子に適用された数学モデル又は物理モデルを用いて時点t1における治療後の僧帽弁の形状を推定する。このように、第2の実施形態では、第2の取得機能155cは、治療後シミュレーションを実施する際に動きに関するパラメータを用いることで、時点t2から時点t6までの治療後の僧帽弁の形状を精度よく推定することができる。
【0098】
(第3の実施形態)
なお、ステップS6において、第2の取得機能155cが、ステップS5において確定された形状に関するパラメータ及び動きに関するパラメータの両方のパラメータを用いて、時点t1における治療後の僧帽弁の形状51を推定してもよい。そこで、このような実施形態を第3の実施形態として説明する。第3の実施形態の説明において、上述した第1の実施形態と異なる点を主に説明し、上述した第1の実施形態と同様の構成の説明を省略する場合がある。
【0099】
第3の実施形態において、第2の取得機能155cは、既知であるクリップのサイズ、重さ、張力等に基づいて予め設定されるクリップに関するパラメータと、ステップS5において確定された形状に関するパラメータ及び確定された動きに関するパラメータとに基づいて設定される数学モデル又は物理モデルを、僧帽弁の領域21に設定された各計算格子に適用する。そして、第2の取得機能155cは、僧帽弁の領域21に設定された各計算格子に適用された数学モデル又は物理モデルを用いて時点t1における治療後の僧帽弁の形状を推定する。このように、第3の実施形態では、第2の取得機能155cは、治療後シミュレーションを実施する際に形状に関するパラメータ及び動きに関するパラメータを用いることで、時点t1から時点t6までの治療後の僧帽弁の形状を精度よく推定することができる。なお、ステップS6において、第2の取得機能155cは、ステップS5において確定されたパラメータを用いずに、時点t1における治療後の僧帽弁の形状51を推定してもよい。
【0100】
(変形例1)
上述した各実施形態では、医用データ処理装置150が、ステップS2において形態情報を取得し、ステップS4において形態情報を推定し、ステップS5において取得された形態情報と推定された形態情報とが類似するように治療前シミュレーションに用いられるパラメータを調整する場合について説明した。しかしながら、医用データ処理装置150が用いる情報は、形態情報に限られない。医用データ処理装置150は、形態情報に代えて、血流の流体情報を用いて同様の処理を行ってもよい。そこで、このような変形例を変形例1として説明する。変形例1の説明において、上述した各実施形態と異なる点を主に説明し、上述した各実施形態と同様の構成の説明を省略する場合がある。
【0101】
変形例1では、ステップS1において、第1の取得機能155aは、超音波画像、MRI画像又は複数時相の造影CT画像等を取得する。そして、ステップS2において、第1の取得機能155aは、血流の状態を取得する。
【0102】
具体的には、ステップS1において超音波画像が取得された場合は、ステップS2において、第1の取得機能155aは、ドップラー法に基づいて超音波画像から血流の流体情報を取得する。また、ステップS1においてMRI画像が取得された場合は、ステップS2において、第1の取得機能155aは、MRI画像に対して既知の4次元流体解析(4次元フロー解析)を行うことにより流体情報を取得する。また、ステップS1において複数時相の造影CT画像が取得された場合は、ステップS2において、第1の取得機能155aは、複数時相の造影CT画像において各種血管位置におけるCT値の変化を解析することで流体情報を取得する。そして、ステップS4において、第1の取得機能155aは、流体情報を推定する。そして、ステップS5において、算出機能155bは、取得された流体情報と推定された流体情報とが類似するように、治療前シミュレーションに用いられるパラメータを調整する。
【0103】
すなわち、変形例1では、第1の取得機能155aは、第1のタイミングにおける生体器官の状態として生体器官の血流の状態に関する推定データと、生体器官の血流の状態を示す実測のデータとを取得する。そして、第2の取得機能155cは、第2のタイミングにおける所定時相の生体器官の血流の状態を推定する。なお、変形例1では、第1の実施形態と同様に、第2の取得機能155cに代えて、推定機能155dが、第2のタイミングにおける所定時相の生体器官の血流の状態を推定してもよい。そして、推定機能155dは、第2のタイミングにおける所定時相よりも後の複数時相に亘って生体器官の血流の状態を推定する。したがって、変形例1に係る医用データ処理装置150は、治療前等のタイミングの被検体の状態に関する情報から治療後等のタイミングの被検体の状態をより適切に推定することができる。
【0104】
流体情報は、僧帽弁における血流の逆流量又は順流量であってもよい。また、変形例1に係る医用データ処理装置150は、更に、上述した各実施形態と同様に、ステップS2において形態情報を取得し、ステップS4において形態情報を推定してもよい。そして、算出機能155bは、取得された流体情報と推定された流体情報とが類似するとともに、取得された形態情報と推定された形態情報とが類似するように、パラメータを調整してもよい。この場合はステップS4やステップS6において流体構造練成(FSI解析)によりシミュレーションが実施されてもよい。
【0105】
(変形例2)
上述した各実施形態では、ステップS2において、第1の取得機能155aが、ステップS1で取得した全ての時点のCT画像(本例では6位相分のCT画像)から形態情報を取得する場合について説明した。しかしながら、ステップS2において、第1の取得機能155aは、ステップS1で取得した複数位相分のCT画像のうち一部の位相のCT画像のみから形態情報を取得してもよい。そこで、このような変形例を変形例2として説明する。変形例2の説明において、上述した各実施形態と異なる点を主に説明し、上述した各実施形態と同様の構成の説明を省略する場合がある。
【0106】
例えば、第1の取得機能155aは、収縮末期と拡張末期の2つの時点のCT画像のみから形態情報を取得してもよい。この場合、第1の取得機能155aは、形態情報を取得する時点を、予め定められた条件に基づいて決定してもよいし、ユーザインタフェースを用いてユーザに設定させてもよい。又は、第1の取得機能155aは、CT画像に対して画像処理を行うことにより、形態情報を取得する時点を自動で判定して特定してもよい。例えば、第1の取得機能155aは、DICOMヘッダに記録された心電同期の情報に基づいて収縮末期や拡張末期の時点のCT画像を特定してもよい。また、第1の取得機能155aは、CT画像に対して画像処理を行うことにより左心室の容積を算出し、算出された左心室の容積に基づいて、収縮末期や拡張末期の時点のCT画像を特定してもよい。
【0107】
すなわち、変形例2では、第1の取得機能155aは、僧帽弁が描出されたCT画像であって治療前における3つ以上の時相のCT画像のうち少なくとも2つの時相のCT画像を用いて、推定形状と実測形状とを取得する。したがって、変形例2に係る医用データ処理装置150は、より少ない処理量で、治療前等のタイミングの被検体の状態に関する情報から治療後等のタイミングの被検体の状態をより適切に推定することができる。
【0108】
(変形例3)
上述した各実施形態では、ステップS3において設定されるパラメータの項目は対象臓器や対象の被検体におけるパラメータ及び境界条件である場合について説明した。そして、上述した各実施形態では、治療前シミュレーション及び治療後シミュレーションを実行するための計算パラメータとして予め設定された条件が用いられる場合について説明した。しかしながら、算出機能155bが、治療前シミュレーション及び治療後シミュレーションを実行するための計算パラメータを変更してもよい。そこで、このような変形例を変形例3として説明する。変形例3の説明において、上述した各実施形態と異なる点を主に説明し、上述した各実施形態と同様の構成の説明を省略する場合がある。
【0109】
例えば、算出機能155bが、計算格子の設定条件(例えば、メッシュの位置、数、形状、要素の種類(1次、2次等))、収束条件(処理のステップ回数(ループ回数)や時間等)を設定してもよい。この場合、ステップS5において計算パラメータに関する判定条件を設定し、算出機能155bは、ステップS3に戻る際に、判定条件に基づいて計算パラメータを再設定するようにしてもよい。例えば、計算時間が一定以上長い場合は、算出機能155bは、ステップS3に戻る際に、計算時間が短くなるように計算格子の設定条件を変えてもよい。例えば、算出機能155bは、計算格子を粗くしたり、要素数を少なくしたりしてもよい。
【0110】
すなわち、変形例3では、算出機能155bは、更に、治療前シミュレーションを実行するための計算パラメータを変更する。そして、第1の取得機能155aは、更に、変更された計算パラメータに基づいて治療前シミュレーションを実行する。したがって、変形例3に係る医用データ処理装置150は、各被検体に対応する、より適切な計算パラメータを設定する。したがって、変形例3に係る医用データ処理装置150は、治療前の被検体の状態に関する情報から治療後の被検体の状態を更に適切に推定することができる。これにより、更に患者(被検体)の適切な治療選択や医師による治療時間の短縮につながり、被検体の予後の向上に寄与することができる。
【0111】
(変形例4)
医用データ処理装置150は、複数回ステップS3~S5を繰り返す場合、各回のステップS3~S5の処理における各種パラメータと評価指標における精度と合否判定との対応関係を示す表を表示してもよい。そこで、このような変形例を変形例4として説明する。変形例4の説明において、上述した各実施形態と異なる点を主に説明し、上述した各実施形態と同様の構成の説明を省略する場合がある。
【0112】
図8は、変形例4に係る表61の一例を示す図である。変形例4では、表示制御機能155eは、図8の表61を表示するようにディスプレイ154を制御する。表61には、各回(1回目~6回目)の「判定結果」、「精度」及び「パラメータ」の各項目が含まれている。
【0113】
「判定結果」の項目には、各回のステップS5において、上記の式(1)にしたがって算出された評価値が基準値を満足する場合(S5:Yes)には、記号「〇」が登録される。また、「判定結果」の項目には、各回のステップS5において、上記の式(1)にしたがって算出された評価値が基準値を満足しない場合(S5:No)には、記号「×」が登録される。表61は、1回目から5回目まで評価値が基準値を満足せず、6回目で評価値が基準値を満足したことを示す。
【0114】
また、「精度」の項目には、各回のステップS5において上記の式(1)にしたがって算出される評価値が登録される。本例における評価値は、推定形状と実測形状との全体的な形状の誤差である。評価値が小さくなるほど誤差が小さくなる。
【0115】
例えば、基準値が「2.5」mmである場合、1回目から5回目まで評価値が基準値よりも大きいため基準値を満足していないが、6回目の評価値が「2.3」mmであり基準値以下であることがわかる。このように、表61は、1回目から6回目までの評価値を示す。これにより、ユーザは、基準値を満足していない場合の評価値や基準値を満足している場合の評価値等の臨床的に有用な情報を把握することができる。
【0116】
また、「パラメータ」の項目には、「弁硬さ」、「腱索数」、「拡張期(容積)」、「収縮期(容積)」及び「カフ圧」の各項目が含まれる。「弁硬さ」の項目には、僧帽弁の硬さを示すパラメータが登録される。例えば、表61は、1回目の僧帽弁の硬さ「3」MPaから、2回目において「1」MPaだけ僧帽弁の硬さを上げて僧帽弁の硬さを「4」MPaに設定したところ、評価値が「6.3」mmから「4.1」mmに下がったことを示す。また、表61は、2回目の僧帽弁の硬さ「4」MPaから、3回目において「0.5」MPaだけ僧帽弁の硬さを上げて僧帽弁の硬さを「4.5」MPaに設定したところ、評価値が「5.2」mmと上がってしまい、評価値が基準値から離れたことを示す。また、表61は、3回目の僧帽弁の硬さ「4.5」MPaから、4回目において「1」MPaだけ僧帽弁の硬さを下げて僧帽弁の硬さを「3.5」MPaに設定しても、4回目の評価値が2回目の評価値と変わらない「4.1」mmであることを示す。したがって、僧帽弁の硬さを示すパラメータが「4」mm以上に設定されても、評価値が基準値に近づかず、評価値が悪化すると考えられる。また、4回目において僧帽弁の硬さを、「4」MPa以下「3」MPa以上の範囲内の「3.5」MPaに設定しても、4回目の評価値が2回目の評価値と変わらないため、弁の硬さを示すパラメータについては、ある程度最適化されたと考えられる。このため、医用データ処理装置150は、4回目以降、僧帽弁の硬さを「3.5」MPaのまま変更していない。そして、医用データ処理装置150は、4回目以降、僧帽弁の硬さを示すパラメータ以外のパラメータを変更する。具体的には、医用データ処理装置150は、4回目以降、腱索の数に関するパラメータを変更する。
【0117】
また、「腱索数」の項目には、「前尖」及び「後尖」の各項目が含まれる。「前尖」の項目には、前尖に接続される腱索の数を示すパラメータが登録される。「後尖」の項目には、後尖に接続される腱索の数を示すパラメータが登録される。表61は、4回目の前尖に接続される腱索の数「10」本から、5回目において「2」本だけ腱索の数を増やして前尖に接続される腱索の数を「12」本に設定したことを示す。また、表61は、4回目の後尖に接続される腱索の数「15」本から、5回目において「3」本だけ腱索の数を増やして後尖に接続される腱索の数を「18」本に設定したことを示す。
【0118】
このように腱索の数を増加させたことにより、評価値が「4.1」mmから「3.0」mmに下がっている。また、4回目から5回目にかけて腱索の数に関するパラメータ以外のパラメータが変更されていない。したがって、前尖に接続される腱索の数を示すパラメータ及び後尖に接続される腱索の数を示すパラメータは、評価値が基準値に近づくことに対して効果があるパラメータであると考えられる。また、腱索の数が増加すると、評価値が下がり基準値に近づくと考えられる。このため、医用データ処理装置150は、5回目の前尖に接続される腱索の数「12」本から、6回目において「1」本だけ腱索の数を増やして前尖に接続される腱索の数を「13」本に設定する。また、医用データ処理装置150は、5回目の後尖に接続される腱索の数「18」本から、6回目において「2」本だけ腱索の数を増やして後尖に接続される腱索の数を「20」本に設定する。これにより、6回目の評価値が「2.3」mmとなり、基準値を満足するようになる。
【0119】
「拡張期(容積)」の項目には、「左心房」及び「左心室」の各項目が含まれる。「拡張期(容積)」の項目に含まれる「左心房」の項目には、拡張期の左心房の容積を示すパラメータが登録される。「拡張期(容積)」の項目に含まれる「左心室」の項目には、拡張期の左心室の容積を示すパラメータが登録される。例えば、図8の例では、拡張期の左心房の容積が「120」(ml)であることを示すパラメータ、及び、拡張期の左心室の容積が「150」(ml)であることを示すパラメータが登録されている。
【0120】
「収縮期(容積)」の項目には、「左心房」及び「左心室」の各項目が含まれる。「収縮期(容積)」の項目に含まれる「左心房」の項目には、収縮期の左心房の容積を示すパラメータが登録される。「収縮期(容積)」の項目に含まれる「左心室」の項目には、収縮期の左心室の容積を示すパラメータが登録される。例えば、図8の例では、収縮期の左心房の容積が「65」(ml)であることを示すパラメータ、及び、収縮期の左心室の容積が「50」(ml)であることを示すパラメータが登録されている。
【0121】
「カフ圧」の項目には、「最高」及び「最低」の各項目が含まれる。「最高」の項目には、カフ圧の最高血圧を示すパラメータが登録される。「最低」の項目には、カフ圧の最低血圧を示すパラメータが登録される。例えば、図8の例では、カフ圧の最高血圧が「120」(mmHg)であることを示すパラメータ、及び、カフ圧の最低血圧が「95」(mmHg)であることを示すパラメータが登録されている。
【0122】
このように、ディスプレイ154に表示される表61に各種のパラメータが含まれることで、ユーザは、各種のパラメータという臨床的に有用な情報を把握することができる。
【0123】
ここで、表61は、1回目から6回目までの各回において、拡張期の左心房の容積を示すパラメータ、拡張期の左心室の容積を示すパラメータ、収縮期の左心房の容積を示すパラメータ、収縮期の左心室の容積を示すパラメータ、カフ圧の最高血圧を示すパラメータ、及び、カフ圧の最低血圧を示すパラメータは、変更されていないことを示す。
【0124】
これらのパラメータが変更されていないことの理由の一例について説明する。例えば、上述したように、拡張期の左心房の容積を示すパラメータ、拡張期の左心室の容積を示すパラメータ、収縮期の左心房の容積を示すパラメータ、及び、収縮期の左心室の容積を示すパラメータは、CT画像に対して画像処理を施すことにより算出されるパラメータである。また、上述したように、カフ圧の最高血圧を示すパラメータ、及び、カフ圧の最低血圧を示すパラメータは、電子カルテシステムから取得されるパラメータである。したがって、拡張期の左心房の容積を示すパラメータ、拡張期の左心室の容積を示すパラメータ、収縮期の左心房の容積を示すパラメータ、収縮期の左心室の容積を示すパラメータ、カフ圧の最高血圧を示すパラメータ、及び、カフ圧の最低血圧を示すパラメータの6つのパラメータは、比較的正確なパラメータであると考えられる。したがって、医用データ処理装置150は、上述した6つのパラメータをできるだけ変化させない。医用データ処理装置150は、他のパラメータをある程度の回数だけ変化させても、評価値が基準値を満足しない場合に、上述した6つのパラメータを変化させる。このため、表61の例では、上述した6つのパラメータは変更されていない。
【0125】
なお、表示制御機能155eは、表61に含まれる全ての項目を表示させずに、一部の項目を表示するようにディスプレイ154を制御してもよい。また、表示制御機能155eは、入力インタフェース153を介して入力されたユーザの指示に基づいて、表61をディスプレイ154に表示させるか、それとも表61を表示させないようにするかを切り替えてもよい。また、表示制御機能155eは、各回のステップS4において推定された僧帽弁の形状を表示するように、ディスプレイ154を制御してもよい。また、表示制御機能155eは、各回のステップS4において僧帽弁の形状に設定された計算格子(メッシュ)を表示するように、ディスプレイ154を制御してもよい。これにより、ユーザは、僧帽弁の形状及び計算格子の形状という有用な情報を把握することができる。また、表示制御機能155eは、表61をログファイルとして、ネットワーク160を介して外部の装置に送信するように、NWインタフェース151を制御してもよい。これにより、NWインタフェース151は、表61をログファイルとして外部の装置に送信する。なお、表示制御機能155eは、表61そのものではなく、表61に含まれる複数の項目が対応付けられた情報をログファイルとして外部の装置に送信するように、NWインタフェース151を制御してもよい。
【0126】
上述したように、変形例4では、表示制御機能155eは、複数の推定形状のそれぞれを推定する際に用いられる複数のパラメータのそれぞれと、複数の推定形状のそれぞれと実測形状とに基づく複数の評価値のそれぞれとを表示するようにディスプレイ154を制御する。これにより、上述したように、ユーザは、臨床的に有用な情報を把握することができる。
【0127】
(変形例5)
上述した各実施形態のステップS6では、医用データ処理装置150が、1つの時点に対して治療による僧帽弁の形状の変化を推定し、推定された1つの時点の治療後の僧帽弁の形状に対してステップS5において確定された動きに関するパラメータを適用することで他の時点の僧帽弁の形状を推定する場合について説明した。図9は、第1の実施形態に係るステップS6の処理の一例を説明するための図である。図9に示すように、医用データ処理装置150は、1つの時点t1に対して治療による僧帽弁の形状の変化を推定する。そして、医用データ処理装置150は、推定された1つの時点t1の治療後の僧帽弁の形状51に対してステップS5において確定された動きに関するパラメータを適用することで他の時点t2~t6の僧帽弁の形状52~56を推定する。
【0128】
しかしながら、ステップS6において、医用データ処理装置150は、ステップS2で特定された全ての時点の対象領域における各計算格子に対して、数学モデル又は物理モデルを適用して、各時点における治療後の僧帽弁の形状を推定してもよい。ここで、例えば、数学モデル又は物理モデルは、クリップに関するパラメータとステップS5において確定された形状に関するパラメータとに基づいて設定されるモデルである。なお、数学モデル又は物理モデルは、クリップに関するパラメータとステップS5において確定された動きに関するパラメータとに基づいて設定されるモデルであってもよい。また、数学モデル又は物理モデルは、クリップに関するパラメータとステップS5において確定された形状に関するパラメータ及び確定された動きに関するパラメータとに基づいて設定されるモデルであってもよい。また、ステップS6において、医用データ処理装置150は、ステップS2で特定された全ての時点の対象領域のうち少なくとも2つ以上の対象領域における各計算格子に対して、上述した数学モデル又は物理モデルを適用して、各時点における治療後の僧帽弁の形状を推定してもよい。そこで、このような変形例を第5の変形例として説明する。変形例5の説明において、上述した各実施形態と異なる点を主に説明し、上述した各実施形態と同様の構成の説明を省略する場合がある。
【0129】
図10は、変形例5に係るステップS6の処理の一例を説明するための図である。図10に示すように、推定機能155dは、ステップS2で特定された全ての時点t1~t6の僧帽弁の領域21~26のそれぞれに設定された各計算格子に対して、上述した数学モデル又は物理モデルを適用して、治療後の僧帽弁の形状51,52a~56aを推定する。治療後の僧帽弁の形状51,52a~56aのそれぞれは、時点t1~t6のそれぞれの僧帽弁の形状である。このように、推定機能155dは、ステップS5において確定されたパラメータと複数の時点t1~t6における複数の推定形状とに基づいて、治療後のタイミングにおける複数の時点t1~t6における僧帽弁の状態を推定する。複数の時点t1~t6及び複数の時点t1~t6は、複数の所定時相の一例である。そして、表示制御機能155eは、推定された治療後の僧帽弁の形状51,52a~56aを表示するようにディスプレイ154を制御する。
【0130】
なお、推定機能155dは、ステップS2で特定された全ての時点t1~t6のうち少なくとも2つの時点の僧帽弁の領域のそれぞれに設定された各計算格子に対して、上述した数学モデル又は物理モデルを適用して、治療後の僧帽弁の形状を推定してもよい。例えば、処理の対象が時点t2,t3の僧帽弁の領域22,23である場合について説明する。この場合、推定機能155dは、僧帽弁の領域22,23のそれぞれに設定された各計算格子に対して、上述した数学モデル又は物理モデルを適用して、治療後の僧帽弁の形状52a,53aを推定する。このように、推定機能155dは、ステップS5において確定されたパラメータに基づいて、治療後のタイミングにおける僧帽弁の状態を複数時相に亘って推定する。そして、表示制御機能155eは、推定された治療後の僧帽弁の形状52a,53aを表示するようにディスプレイ154を制御する。
【0131】
上述したように、変形例5に係る医用データ処理装置150は、各被検体に対応するパラメータであって、より適切なパラメータを設定する。したがって、医用データ処理装置150は、第1の実施形態と同様に、治療前の被検体の状態に関する情報から治療後の被検体の状態をより適切に推定することができる。
【0132】
(変形例6)
医用データ処理装置150は、上述した各実施形態のステップS6において推定される治療後の僧帽弁の形態情報を用いて、治療後の血流情報(流体情報)を更に推定する処理を実施してもよい。そこで、このような変形例を変形例6として説明する。変形例6の説明において、上述した各実施形態と異なる点を主に説明し、上述した各実施形態と同様の構成の説明を省略する場合がある。
【0133】
図11は、変形例6に係る推定機能155dが実行する処理の一例を説明するための図である。例えば、変形例6では、図11に示す電気回路モデル71が予め記憶回路152に記憶されている。電気回路モデル71は、生体(例えば人体)の循環動態を模擬するモデルである。例えば、電気回路モデル71は、生体を電気回路とみなし、血液を電流とみなし、心臓をコンデンサとみなす。推定機能155dは、電気回路モデル71に対してステップS6において推定された治療後の僧帽弁の形態情報72を入力することで、治療後の血流状態を示す血流情報73を取得する。より具体的には、電気回路モデル71は、僧帽弁の弁口面積に基づいて僧帽弁における血流の逆流量を推定することができるように設計されている。そして、推定機能155dは、電気回路モデル71に対してステップS6で算出される治療後の僧帽弁の弁口面積を入力することで治療後の僧帽弁における血流の逆流量を推定する。なお、電気回路モデル71は、既知のウインドケッセルモデルや脈波伝搬モデルに基づいて構築することができる。
【0134】
上述したように、推定機能155dは、ステップS6において推定された僧帽弁の形態の状態と、予め設定された生体の循環動態に関する電気回路モデル71とに基づいて、治療後のタイミングにおける血流(流体)の状態に関する血流情報73を推定する。血流情報73は、流体の状態に関する状態データの一例でもあり、血流の逆流量の状態を示す状態データの一例でもある。
【0135】
また、ステップS6において、推定機能155dは、治療後のタイミングにおける僧帽弁の形態情報を推定することにより、僧帽弁の形態情報を取得する。ここで、治療後のタイミングは、特定のタイミングの一例でもある。また、僧帽弁の形態情報は、生体器官の形態の状態に関する状態データの一例である。このように、ステップS6において僧帽弁の形態情報を取得する動作を行う推定機能155dは、取得部の一例でもある。
【0136】
また、推定機能155dは、電気回路モデル71を用いずに、血流情報を算出してもよい。例えば、推定機能155dは、ナビエスストークス方程式と連続の式やマクスウェル方程式や状態方程式等の必要な方程式を連立し、当該方程式に各種パラメータを入力することで、対象とする血流情報を数値的に求めることにより算出してもよい。
【0137】
(変形例7)
上述した各実施形態では、医用データ処理装置150が僧帽弁を対象臓器として設定した場合について説明したが、対象臓器はこれに限られない。そこで、医用データ処理装置150が、僧帽弁以外の生体器官を対象臓器として設定する変形例を変形例7として説明する。変形例7の説明において、上述した各実施形態と異なる点を主に説明し、上述した各実施形態と同様の構成の説明を省略する場合がある。
【0138】
例えば、医用データ処理装置150は、冠動脈を対象臓器として設定してもよい。そして、医用データ処理装置150は、冠動脈における壁せん断応力をシミュレートしてもよい。例えば、ステップS1において、第1の取得機能155aは、拡張期及び収縮期における複数の時点の医用画像を取得する。そして、ステップS2において、第1の取得機能155aは、医用画像から、拡張期における血管の径や形状の情報を取得する。そして、ステップS3において、算出機能155bは、血管壁の硬さや血流流速などのパラメータを設定する。そして、ステップS4において、第1の取得機能155aは、ステップS3において設定されたパラメータを用いて、拡張期における血管の径や形状の情報を推定する。そして、ステップS3~S5において、第1の取得機能155a及び算出機能155bは、ステップS2において取得された拡張期における血管の径や形状の情報と、ステップS4において推定された拡張期における血管の径や形状の情報とが類似するようにパラメータを調整する。そして、ステップS6において、推定機能155dは、調整されたパラメータを用いて収縮期における壁せん断応力を算出する。
【0139】
上述したように、変形例7では、第1の取得機能155aは、拡張期における冠動脈の状態に関する推定データと、拡張期における冠動脈の状態を示す実測のデータとを取得する。そして、算出機能155bは、推定データと、実測のデータとに基づいたパラメータを算出する。そして、推定機能155dは、パラメータに基づいて、収縮期における冠動脈の状態を推定する。拡張期は、第1のタイミングの一例である。収縮期は、第2のタイミングの一例である。
【0140】
また、変形例7では、第1の取得機能155aは、冠動脈の形態の状態に関する推定データと、冠動脈の形態の状態を示す実測のデータとを取得する。そして、推定機能155dは、収縮期における冠動脈の壁せん断応力を推定する。
【0141】
また、別の例では、医用データ処理装置150は、上述した治療後シミュレーションに代えて、心臓における刺激電動系に関する治療のシミュレーションを上述した治療後シミュレーションと同様の方法で実施してもよい。不整脈に対する治療方法としてアブレーション治療がある。医用データ処理装置150は、不整脈による治療前の心臓の異常を動きに一致するようにパラメータを設定する。具体的には、ステップS2において、第1の取得機能155aは、医用画像から、治療前における心臓の形態情報を取得する。そして、ステップS3において、算出機能155bは、心臓に関するパラメータを設定する。そして、ステップS4において、第1の取得機能155aは、ステップS3において設定されたパラメータを用いて、治療前における心臓の形態情報を推定する。そして、ステップS3~S5において、第1の取得機能155a及び算出機能155bは、ステップS2において取得された治療前の心臓の形態情報と、ステップS4において推定された治療前における心臓の形態情報とが類似するようにパラメータを調整する。そして、ステップS6において、推定機能155dは、調整されたパラメータを用いて、アブレーション治療によって、心臓の各位置の生体組織を焼き切った後の心臓の動き又は推定される刺激電動系の電気経路を推定する治療後シミュレーションを実施する。
【0142】
上述したように、変形例7の別の例では、第1の取得機能155aは、治療前のタイミングにおける心臓の状態に関する推定データと、治療前のタイミングにおける心臓の状態を示す実測のデータとを取得する。そして、算出機能155bは、推定データと、実測のデータとに基づいたパラメータを算出する。第2の取得機能155cは、治療後のタイミングにおける所定時相の心臓の状態に関する状態データを取得する。推定機能155dは、状態データと、算出されたパラメータとに基づいて、治療後のタイミングにおける心臓の状態を複数時相に亘って推定する。
【0143】
また、変形例7の別の例では、第1の取得機能155aは、心臓の状態として心臓の形態の状態に関する推定データと、心臓の形態の状態を示す実測のデータとを取得する。そして、第2の取得機能155cは、心臓の形態の状態に関する状態データを取得する。推定機能155dは、治療後のタイミングにおける心臓の形態の状態又は心臓の刺激電動系の電気経路を複数時相に亘って推定する。
【0144】
また、更に別の例では、医用データ処理装置150は、呼吸器における呼吸量を推定するシミュレーションを実施してもよい。例えば、医用データ処理装置150は、肺を対象臓器として設定する。そして、ステップS2において、第1の取得機能155aは、医用画像から肺の領域を特定する。すなわち、ステップS2において、第1の取得機能155aは、医用画像から、手術前における肺の形態情報を取得する。そして、ステップS3において、算出機能155bは、肺及び気管に関するパラメータを設定する。そして、ステップS4において、第1の取得機能155aは、ステップS3において設定されたパラメータを用いて、手術前の呼吸運動による肺の動きを推定し、複数の時点のそれぞれにおける肺の形態情報を推定する。そして、ステップS3~S5において、第1の取得機能155a及び算出機能155bは、ステップS2において取得された手術前の肺の形態情報と、ステップS4において推定された手術前における肺の形態情報とが類似するようにパラメータを調整する。そして、ステップS6において、推定機能155dは、調整されたパラメータを用いて、手術後の肺による呼吸量を推定する手術後シミュレーションを実施する。
【0145】
上述したように、変形例7の更に別の例では、第1の取得機能155aは、手術前のタイミングにおける肺の状態に関する推定データと、手術前のタイミングにおける肺の状態を示す実測のデータとを取得する。そして、算出機能155bは、推定データと、実測のデータとに基づいたパラメータを算出する。第2の取得機能155cは、手術後のタイミングにおける所定時相の肺の状態に関する状態データを取得する。推定機能155dは、状態データと、算出されたパラメータとに基づいて、手術後のタイミングにおける肺の状態を複数時相に亘って推定する。手術前のタイミングは、第1のタイミングの一例である。手術後のタイミングは、第2のタイミングの一例である。
【0146】
また、変形例7の更に別の例では、第1の取得機能155aは、肺の状態として肺の形態の状態に関する推定データと、肺の形態の状態を示す実測のデータとを取得する。そして、第2の取得機能155cは、肺の形態の状態に関する状態データを取得する。推定機能155dは、手術後のタイミングにおける肺の呼吸量を複数時相に亘って推定する。
【0147】
また、上述した第1の実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路152にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、各実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0148】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0149】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、治療前等のタイミングの被検体の状態に関する情報から治療後等のタイミングの被検体の状態をより適切に推定することができる。
【0150】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0151】
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0152】
(付記1)
第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得する第1の取得部と、
前記推定データと、前記実測のデータとに基づいたパラメータを算出する算出部と、
前記パラメータと所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定する推定部と、
を備える、医用データ処理装置。
(付記2)
前記算出部は、前記パラメータとして、前記推定データと前記実測のデータとに基づいて第1の生体器官の形状に関するパラメータを算出し、
前記推定部は、前記第1の生体器官の形状に関するパラメータと前記所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定してもよい。
(付記3)
前記算出部は、前記形状に関するパラメータとして、前記推定データと前記実測のデータとに基づいて前記第1の生体器官の硬さ、厚さ、繊維方向、長さ、太さ、接続位置及び数のうち少なくとも1つを示すパラメータを算出し、
前記推定部は、前記少なくとも1つを示すパラメータと前記所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定してもよい。
(付記4)
第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得する第1の取得部と、
前記推定データと、前記実測のデータとに基づいたパラメータを算出する算出部と、
前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける所定時相の前記生体器官の状態に関する状態データを取得する第2の取得部と、
前記状態データと、前記パラメータとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記生体器官の状態を複数時相に亘って推定する推定部と、
を備える、医用データ処理装置。
(付記5)
前記算出部は、前記パラメータとして、前記推定データと前記実測のデータとに基づいて第2の生体器官の動きに関するパラメータを算出し、
前記推定部は、前記状態データと前記第2の生体器官の動きに関するパラメータとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記生体器官の状態を前記複数時相に亘って推定してもよい。
(付記6)
前記算出部は、前記動きに関するパラメータとして、前記推定データと前記実測のデータとに基づいて前記第2の生体器官の硬さ、体積、及び、表面の平滑さの程度、並びに、前記第2の生体器官を流れる流体の粘度、流速及び総量のうち少なくとも1つを示すパラメータを算出し、
前記推定部は、前記状態データと前記少なくとも1つを示すパラメータとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記生体器官の状態を前記複数時相に亘って推定してもよい。
(付記7)
前記算出部は、前記推定データと前記実測のデータとに基づいて算出される評価値が予め定められた基準を満足する場合の前記推定データを推定する際に用いられる前記パラメータを算出してもよい。
(付記8)
前記算出部は、前記推定データと前記実測のデータとが類似する場合の前記推定データを推定する際に用いられる前記パラメータを算出してもよい。
(付記9)
前記算出部は、前記推定データと前記実測のデータとの差分が閾値以下となる場合の前記推定データを推定する際に用いられる前記パラメータを算出してもよい。
(付記10)
前記算出部は、前記推定データを構成する点及び面、並びに、前記実測のデータを構成する点及び面に基づいて前記評価値を算出してもよい。
(付記11)
前記算出部は、前記評価値が前記基準を満足するまで、前記推定データを推定する際に用いられるパラメータを繰り返し変更してもよい。
(付記12)
前記算出部は、前記推定データと前記実測のデータとが類似するまで、前記推定データを推定する際に用いられるパラメータを繰り返し変更してもよい。
(付記13)
前記算出部は、前記差分が前記閾値以下となるまで、前記推定データを推定する際に用いられるパラメータを繰り返し変更してもよい。
(付記14)
前記第1の取得部は、複数の異なるパラメータを用いて複数の前記推定データを推定することにより、前記複数の推定データを取得し、
前記算出部は、前記複数の推定データ及び前記実測のデータに基づいて、前記生体器官の状態を推定する際に用いられるパラメータを算出してもよい。
(付記15)
前記算出部は、前記推定データを推定する際に用いられる複数の前記パラメータのうち、他のパラメータと比較して前記評価値が基準値に近づく度合いが高いパラメータを優先的に変更し、
前記第1の取得部は、前記算出部により他のパラメータと比較して前記評価値が前記基準値に近づく度合いが高いパラメータが優先的に変更される度に、変更されたパラメータを用いて前記推定データを推定してもよい。
(付記16)
前記第1の取得部は、前記第1のタイミングとして治療前のタイミングにおける前記推定データと、前記治療前のタイミングにおける前記実測のデータとを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングとして治療後のタイミングにおける前記生体器官の状態を推定してもよい。
(付記17)
前記第1の取得部は、前記生体器官として僧帽弁の状態に関する前記推定データと、前記僧帽弁の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記僧帽弁の状態を推定してもよい。
(付記18)
前記第1の取得部は、前記生体器官の状態として前記生体器官の形態の状態に関する前記推定データと、前記生体器官の形態の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記生体器官の形態の状態を推定してもよい。
(付記19)
前記第1の取得部は、前記生体器官の状態として前記生体器官の血流の状態に関する前記推定データと、前記生体器官の血流の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記生体器官の血流の状態を推定してもよい。
(付記20)
前記第1の取得部は、前記生体器官が描出された前記第1のタイミングにおける3つ以上の時相の医用画像のうち少なくとも2つの時相の医用画像を用いて、前記推定データと前記実測のデータとを取得してもよい。
(付記21)
前記算出部は、更に、前記推定データを推定する処理を実行するための計算パラメータを変更し
前記第1の取得部は、更に、変更された計算パラメータに基づいて前記推定データを推定してもよい。
(付記22)
前記医用データ処理装置は、
複数の前記推定データのそれぞれを推定する際に用いられる複数のパラメータのそれぞれと、前記複数の推定データのそれぞれと前記実測のデータとに基づく複数の前記評価値のそれぞれとを表示するように表示部を制御する表示制御部を更に備えてもよい。
(付記23)
前記推定部は、推定された前記生体器官の形態の状態と、予め設定された生体の循環動態に関する電気回路モデルとに基づいて、前記第2のタイミングにおける流体の状態に関する状態データを推定してもよい。
(付記24)
前記推定部は、前記パラメータと複数の前記所定時相における複数の前記推定データとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記複数の所定時相の前記生体器官の状態を推定してもよい。
(付記25)
特定のタイミングにおける生体器官の形態の状態に関する状態データを取得する取得部と、
前記状態データと、予め設定された生体の循環動態に関する電気回路モデルとの両方に基づいて、前記特定のタイミングにおける流体の状態に関する状態データを推定する推定部と、
を備える、医用データ処理装置。
(付記26)
前記推定部は、前記状態データと、前記電気回路モデルとに基づいて、前記特定のタイミングにおける流体の状態に関する状態データとして血流の逆流量の状態を示す状態データを推定してもよい。
(付記27)
第1のタイミングにおける冠動脈の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記冠動脈の状態を示す実測のデータとを取得する第1の取得部と、
前記推定データと、前記実測のデータとに基づいたパラメータを算出する算出部と、
前記パラメータに基づいて、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける前記冠動脈の状態を推定する推定部と、
を備える、医用データ処理装置。
(付記28)
前記第1の取得部は、前記冠動脈の形態の状態に関する前記推定データと、前記冠動脈の形態の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記冠動脈の壁せん断応力を推定してもよい。
(付記29)
前記第1の取得部は、前記生体器官として心臓の状態に関する前記推定データと、前記心臓の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記第2の取得部は、前記所定時相の前記心臓の状態に関する前記状態データを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記心臓の状態を複数時相に亘って推定してもよい。
(付記30)
前記第1の取得部は、前記心臓の状態として前記心臓の形態の状態に関する前記推定データと、前記心臓の形態の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記第2の取得部は、前記心臓の形態の状態に関する前記状態データを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記心臓の形態の状態又は前記心臓の刺激電動系の電気経路を複数時相に亘って推定してもよい。
(付記31)
前記第1の取得部は、前記生体器官として肺の状態に関する前記推定データと、前記肺の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記第2の取得部は、前記所定時相の前記肺の状態に関する前記状態データを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記肺の状態を複数時相に亘って推定してもよい。
(付記32)
前記第1の取得部は、前記肺の状態として前記肺の形態の状態に関する前記推定データと、前記肺の形態の状態を示す前記実測のデータとを取得し、
前記第2の取得部は、前記肺の形態の状態に関する前記状態データを取得し、
前記推定部は、前記第2のタイミングにおける前記肺の呼吸量を複数時相に亘って推定してもよい。
(付記33)
第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得し、
前記推定データと、前記実測のデータとに基づいたパラメータを算出し、
前記パラメータと所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定する、
ことを含む、医用データ処理方法。
(付記34)
第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得し、
前記推定データと、前記実測のデータとに基づいたパラメータを算出し、
前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける所定時相の前記生体器官の状態に関する状態データを取得し、
前記状態データと、前記パラメータとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記生体器官の状態を複数時相に亘って推定する、
ことを含む、医用データ処理方法。
(付記35)
特定のタイミングにおける生体器官の形態の状態に関する状態データを取得し、
前記状態データと、予め設定された生体の循環動態に関する電気回路モデルとの両方に基づいて、前記特定のタイミングにおける流体の状態に関する状態データを推定する、
ことを含む、医用データ処理方法。
(付記36)
コンピュータに、
第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得し、
前記推定データと、前記実測のデータとに基づいたパラメータを算出し、
前記パラメータと所定時相における前記推定データとに基づいて、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける前記所定時相の前記生体器官の状態を推定する処理を実行させるための医用データ処理プログラム。
(付記37)
第1のタイミングにおける生体器官の状態に関する推定データと、前記第1のタイミングにおける前記生体器官の状態を示す実測のデータとを取得し、
前記推定データと、前記実測のデータとに基づいたパラメータを算出し、
前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングにおける所定時相の前記生体器官の状態に関する状態データを取得し、
前記状態データと、前記パラメータとに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記生体器官の状態を複数時相に亘って推定する処理を実行させるための医用データ処理プログラム。
(付記38)
特定のタイミングにおける生体器官の形態の状態に関する状態データを取得し、
前記状態データと、予め設定された生体の循環動態に関する電気回路モデルとの両方に基づいて、前記特定のタイミングにおける流体の状態に関する状態データを推定する処理を実行させるための医用データ処理プログラム。
【符号の説明】
【0153】
100 医用データ処理システム
150 医用データ処理装置
155 処理回路
155a 第1の取得機能
155b 算出機能
155c 第2の取得機能
155d 推定機能
155e 表示制御機能
図1
図2
図3
図4
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図11