(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】仮設足場における足場板の位置決め係止装置
(51)【国際特許分類】
E04G 7/34 20060101AFI20240806BHJP
E04G 5/08 20060101ALI20240806BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
E04G7/34 303B
E04G5/08 Z
F16B5/07 B
(21)【出願番号】P 2020211276
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】嶋岡 大介
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-017834(JP,A)
【文献】特開2007-217874(JP,A)
【文献】実開昭56-054128(JP,U)
【文献】特開2015-075156(JP,A)
【文献】特開平09-195501(JP,A)
【文献】実開昭59-171154(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0099661(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00- 7/34
F16B 5/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横向きに設置された支持管の軸方向の所定位置(P)に足場板のフック手段を搭載することにより構築される仮設足場において、
前記支持管(1a)は、フック手段(8)を前記所定位置(P)に位置決め係止する規制手段(11)を設けており、
前記規制手段は、前記所定位置(P)に搭載されたフック手段(8)の側面に臨むストッパ部(13)を備えた規制ピン(12)により構成され、
前記規制ピン(12)は、前記ストッパ部が支持管の上面から所定高さだけ突出する突出位置(M1)と、該突出位置から下方に移動した後退位置(M2)との間で、摺動自在として該支持管に支持され、常時は、スプリング手段(15)により突出位置(M1)に保持され、ストッパ部(13)に下向きの外力が作用したときは、スプリング手段に抗して後退位置(M2)に移動するように構成されて成ることを特徴とする仮設足場における足場板の位置決め係止装置。
【請求項2】
前記規制ピン(12)は、該ピンの軸線(X)が支持管(1a)の軸方向に対して直交するように配置され、スプリング手段(15)により突出位置(M1)に保持された状態で、支持管の上面から突出するストッパ部(13)の周面により、支持管(1a)の上面から所定高さ位置まで前記軸線と平行に延びる受止め部(13a)を形成すると共に、該受止め部からストッパ部の頂部に向けて傾斜するガイド部(13b)を形成しており、
前記ガイド部(13b)に支持管(1a)の軸方向に向かう外力が作用したとき、規制ピンを前記スプリング手段に抗して後退位置(M2)に移動させるように構成されて成ることを特徴とする請求項1に記載の仮設足場における足場板の位置決め係止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場において、横向きに設置された支持管の軸方向の所定位置に足場板のフック手段を搭載する際、フック手段を所定位置に位置決め状態で係止するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に仮設足場は、横架材を架設することにより連結された一対を1組とする支柱を連結状態で列設することにより構築され、隣り合う横架材の間に足場板を搭載することにより作業床を形成している。
【0003】
前記横架材は、両端に設けた緊結手段を介して支柱に固着されている。足場板は、桁側と妻側を有する長方形に形成され、妻側の両端部に設けた一対のフック手段を前記横架材の軸部に形成された支持管に搭載し、落下錠を介して係止される。
【0004】
ところで、足場板のフック手段は、前記支持管の所定位置に搭載された状態において、支持管の軸方向には固定されていない。このため、外力を受けると支持管の軸方向に位置ずれ移動可能な状態とされている。
【0005】
その結果、一対のフック手段のうち、一方のフック手段が支持管の一方の軸端に向けて移動すると、該フック手段が緊結手段に干渉し、反対に、他方のフック手段は、支柱から離れる方向に移動し、足場板の桁側の隙間を広げてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、支持管に搭載されたフック手段の位置ずれ移動を防止するためのストッパが提案されているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3047369号公報
【文献】実用新案登録第3201488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に示される従来技術は、支持管の上面から突出する突起物を設けることによりストッパを形成し、該ストッパをフック手段の側面に当接させることにより位置ずれ移動を阻止するように構成されている。
【0009】
しかしながら、フック手段を支持管に搭載する際、フック手段がストッパの上に載せられる可能性がある。周知のように、フック手段は、側部に落下錠を設けており、落下錠を上動位置に待機させた状態でフック手段を支持管に搭載した後、落下錠を下動させると、落下錠が支持管を下側から抱持するように構成されている。
【0010】
ところが、フック手段がストッパの上に載せられた状態では、落下錠により支持管を下側から抱持することができない。つまり、フック手段は支持管に対して係止されておらず、脱落可能な状態とされている。このため、万一、このような状態のまま足場構築を完了すると、極めて危険である。
【0011】
そこで、このような危険を招来することがないように構成した足場板の位置決め係止装置を提供することが必要であり、この点に本発明の課題がある。
【0012】
また、上記とは別の問題として、ストッパは、支持管に搭載されたフック手段の両側面のうち一方の側面(所定側面)に当接可能に臨まされ、これによりフック手段を所定位置に位置決め係止するように構成されている。しかしながら、フック手段を支持管に搭載する際、フック手段の所定側面でない反対側の側面がストッパに臨まされる可能性があり、この場合、作業者は、フック手段を移動させ、所定側面がストッパに臨むように位置を変更させる必要がある。
【0013】
ところが、このようにフック手段を移動させるためには、足場板と共にフック手段を持ち上げ、ストッパを乗り越えさせなければならず、煩雑な作業が強いられる。
【0014】
そこで、このようなフック手段の移動を容易に行い得るように構成した足場板の位置決め係止装置を提供することが必要であり、この点に本発明の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決した仮設足場における足場板の位置決め係止装置を提供するものであり、その手段として構成したところは、横向きに設置された支持管の軸方向の所定位置に足場板のフック手段を搭載することにより構築される仮設足場において、前記支持管は、フック手段を前記所定位置に位置決め係止する規制手段を設けており、前記規制手段は、前記所定位置に搭載されたフック手段の側面に臨むストッパ部を備えた規制ピンにより構成され、前記規制ピンは、前記ストッパ部が支持管の上面から所定高さだけ突出する突出位置と、該突出位置から下方に移動した後退位置との間で、摺動自在として該支持管に支持され、常時は、スプリング手段により突出位置に保持され、ストッパ部に下向きの外力が作用したときは、スプリング手段に抗して後退位置に移動するように構成されて成る点にある。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、前記規制ピンは、該ピンの軸線が支持管の軸方向に対して直交するように配置され、スプリング手段により突出位置に保持された状態で、支持管の上面から突出するストッパ部の周面により、支持管の上面から所定高さ位置まで前記軸線と平行に延びる受止め部を形成すると共に、該受止め部からストッパ部の頂部に向けて傾斜するガイド部を形成しており、前記ガイド部に支持管の軸方向に向かう外力が作用したとき、規制ピンを前記スプリング手段に抗して後退位置に移動させるように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、規制ピン12は、スプリング手段15により突出位置M1に保持された状態から、スプリング手段15に抗して後退位置M2まで下動可能に構成されている。その結果、足場板3の取付けに際し、フック手段8が所定位置Pから逸れて、規制ピン12の上に載せられたときでも、フック材8aを支持管1aに対して上方から覆い被せた状態で、落下錠8bを下降させることにより支持管1aの下側に係止させることができ、足場板の取付け状態における安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の1実施形態に係る位置決め係止装置を実施した横架材と、支柱と、足場板を分解状態で示す斜視図である。
【
図2】
図1の分解状態から各部材を組付けた状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の1実施形態に関し、(A)は支持管から規制手段を分解した状態を示す斜視図、(B)は支持管に設けられた規制手段の規制ピンが突出位置に保持された状態を示す断面図、(C)は規制ピンのストッパ部を示す部分拡大図、(D)は規制ピンが後退位置に移動させられた状態を示す断面図である。
【
図4】フック手段を支持管の所定位置に搭載したときの作用を示し、(A)はフック手段を支持管の所定位置に臨ませた状態を示す正面図、(B)はフック手段を支持管の所定位置に搭載し落下錠を係止させた状態を示す正面図、(C)は(B)のA-A線断面図である。
【
図5】フック手段を支持管に搭載する際に規制ピンのストッパ部に載せられたときの作用を示し、(A)はフック手段がストッパに載せられた状態を示す正面図、(B)は(A)のB-B線断面図、(C)はフック手段を所定位置に移動すると共に落下錠を係止させた状態を示す正面図、(D)は(C)のC-C線断面図である。
【
図6】フック手段を支持管に搭載する際にフック手段が規制ピンのストッパ部に関して所定位置の反対側に搭載されたときの作用を示し、(A)はフック手段が所定位置の反対側に搭載された状態を示す正面図、(B)は(A)のD-D線断面図、(C)はフック手段を持ち上げた状態を示す正面図、(D)は(C)のE-E線に沿う一部断面図、(E)はフック手段によりストッパ部のガイド部を押圧した状態を示す一部断面図、(F)は規制ピンが後退位置に移動させられた状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、仮設足場は、横架材1を架設することにより連結された一対を1組とする支柱2を連結状態で列設することにより構築され、隣り合う横架材1、1の間に足場板3を搭載することにより、作業床を形成するように構成されている。
【0021】
前記横架材1は、両端に設けた緊結手段4を介して支柱2に固着され、図例では、横架材1の端部に設けた連結金具5の上下顎部により、支柱2に固設されたフランジ6を挟んだ状態で、楔7を打ち込むことにより緊結する楔緊結方式を示しているが、これに限定されるものではない。
【0022】
足場板3は、桁側と妻側を有する長方形のものに形成され、妻側の両端部に設けた一対のフック手段8、8を前記横架材1の軸部により形成された支持管1aに搭載することにより、隣り合う横架材1、1の支持管1a、1aの間に架設される。
【0023】
フック手段8は、断面円形の支持管1aに対して上方から覆い被せられるフック材8aと、該フック材8aの片側の側面に添設された落下錠8bにより構成されている。
図4に示すように、落下錠8bは、フック材8aの側部に設けた保持ピン9、9を落下錠8bの制御孔10、10に挿通することにより保持されている。
【0024】
そこで、落下錠8bは、
図4(A)に示すように、制御孔10により持ち上げられた状態で姿勢を保持し、フック材8aの下側を開口し、フック材8aを支持管1aに対して搭載可能とする。そして、
図4(B)に示すように、支持管1aにフック材8aを搭載した状態で、落下錠8bを指先等で押してやると、制御孔10に制御されながら下降し、支持管1aを下側から抱持する。
【0025】
このような構成において、本発明は、支持管1aの軸方向の所定位置Pに搭載されたフック手段8に関して、該所定位置Pに位置決め係止するための規制手段11を支持管1aに設けている。
【0026】
この点について、支持管1aは、図示実施形態では横架材1の軸部により構成されているが、横架材1に限らず、足場板3のフック手段8を搭載させるためのブラケット等が含まれる概念であることを理解されたい。
【0027】
図3に示すように、規制手段11は、前記所定位置Pに搭載されるフック手段8の側面に臨むストッパ部13を備えた規制ピン12により構成され、支持管1aの上下方向の直径方向に形成された上下孔14a、14bに挿通されており、
図3(B)に示すように、ストッパ部13が支持管1aの上面から所定高さだけ突出させられた突出位置ないし突出姿勢M1と、
図3(D)に示すように、前記突出位置から下方に移動した後退位置M2との間で、摺動自在として該支持管1aに支持されており、常時は、スプリング手段15により突出位置M1に保持されている。そこで、規制ピン12は、ストッパ部13に下向きの外力が作用したときは、スプリング手段15に抗して後退し、後退位置M2に移動するように構成されている。
【0028】
図示実施形態の場合、規制ピン12は、ピン本体部12aの上端部にストッパ部13を形成し、下端部に設けた小径部12bにスプリング手段15を構成するコイルスプリングを外挿し、ピン本体部12aを上孔14aに挿通すると共に、小径部12bを下孔14bに挿通し、スプリング手段15を圧縮した状態で、小径部12bから延設されたボルト軸部12cを下孔14bから挿出させ、ナット16を螺着している。尚、ナット16の螺着作業を容易とするため、ピン本体部12aの上端部(ストッパ部13の頂面)には、六角穴等の工具係合部17が設けられている。
【0029】
図3(C)に示すように、規制ピン12は、該ピンの軸線Xが支持管1aの軸方向に対して直交するように配置され、スプリング手段15により突出位置M1に保持された状態で、支持管1aの上面から突出するストッパ部13の周面により、支持管1aの上面から所定高さ位置まで前記軸線Xと平行に延びる受止め部13aを形成すると共に、該受止め部13aからストッパ部13の頂部に向けて傾斜するガイド部13bを形成している。従って、ガイド部13bに対して支持管1aの軸方向に向かう外力が作用したとき、規制ピン12は、スプリング手段15に抗して後退位置M2に移動させられるように構成されている。
【0030】
規制ピン12は、ナット16が下孔14bの下側に当接した位置により、突出位置M1を規定され、その位置から下降して、下孔14bの上側で小径部12bのスプリング手段15が最大限圧縮された状態により、後退位置M2が規定されている。
【0031】
この点に関して、図示実施形態の場合、後退位置M2とされたとき、ストッパ部13の受止め部13aは、支持管1aの上面よりも下方に移動されるが、ガイド部13bは、上端部分を支持管1aの上面から僅かに突出している。しかしながら、突出位置M1から後退位置M2までの移動ストロークは、小径部12bの軸長と、コイルスプリングの巻数により変更することが可能であり、後退位置M2としたとき、ガイド部13bの頂端が支持管1aの上面と面一とされ又は上孔14aに没入されるように構成しても良い。
【0032】
(通常時の作用)
図2及び
図4に示すように、足場板3の取付けに際し、通常は、フック手段8を支持管1aの所定位置Pに向けて搭載することが予定されている。
【0033】
図4(A)に示すように、落下錠8bを持ち上げた状態で制御孔10により保持させ、下側を開口したフック材8aを予定通り所定位置Pに臨ませたときは、その状態で上方から支持管1aに搭載すれば良い。そこで、
図4(B)に示すように、落下錠8bを下降させ、支持管1aを下側から抱持することにより、フック手段8は、支持管1aに対して脱落不能に係止される。
【0034】
この状態で、
図4(C)に示すように、フック手段8の矢印NGで示す位置ずれ移動方向に関して、規制ピン12のストッパ部13の受止め部13aがフック材8aの側面に対向して係止し、位置ずれ移動が阻止されている。つまり、フック材8aが支持管1aの軸方向に移動しようとしても、フック材8aの側面は受止め部13aにより受止められるので、規制ピン12は、後退位置M2に向けて移動することはない。
【0035】
(予定外の取付け時における作用その1)
図5は、足場板3の取付けに際して、予定外として、フック手段8が規制ピン12のストッパ部13の上に載せられた場合を示している。
【0036】
図5(A)(B)に示すように、規制ピン12は、スプリング手段15に抗して、後退位置M2に移動するので、フック材8aは、支持管1aに上方から覆い被せられる。このため、フック手段8は、
図5(A)に鎖線で示すように、落下錠8bを下降させることができ、これにより支持管1aを下側から抱持することができるので、フック手段8は、規制ピン12に載せられた状態でも、支持管1aに対して脱落不能に係止される。
【0037】
従って、この状態のまま足場構築作業を完了しても、特に危険を招来することはない。作業者が気づいたときは、
図5(C)(D)に示すように、規制ピン12の上に載せられたフック手段8を所定位置Pに向けて押動すれば良く、押動されるや否や、規制ピン12は、スプリング手段15により自動的に突出位置M1まで上動し、ストッパ部13をフック材8aの側面に臨ませ、位置決め係止することができる。
【0038】
(予定外の取付け時における作用その2)
図6は、足場板3の取付けに際して、予定外として、フック手段8が規制ピン12の両側位置のうち、所定位置Pの反対側に位置して搭載された場合を示している。
【0039】
図6(A)(B)に示すように、フック手段8は、フック材8aを支持管1aに搭載し、落下錠8bを下降させ、支持管1aの下側を抱持した状態で係止している。
【0040】
この状態から、フック手段8を所定位置Pに移動させるためには、
図6(C(D)に示すように、落下錠8bを少しだけ上昇させ、フック手段8を少しだけ持ち上げ、この状態で、
図6(E)に示すようにフック手段8を所定位置Pに向けて移動させると、フック材8aの側面がストッパ部13のガイド部13bを押圧することにより、
図6(F)に示すように、規制ピン12を後退位置M2に下動させる。これにより、フック材8aは、規制ピン12の上を通過して所定位置Pに移動することができ、移動するや否や、規制ピン12は、スプリング手段15により自動的に突出位置M1まで上動するので、ストッパ部13をフック材8aの側面に臨ませ、位置決め係止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 横架材
1a 支持管
2 支柱
3 足場板
4 緊結手段
5 連結金具
6 フランジ
7 楔
8 フック手段
8a フック材
8b 落下錠
9 保持ピン
10 制御孔
11 規制手段
12 規制ピン
12a ピン本体部
12b 小径部
12c ボルト軸部
13 ストッパ部
13a 受止め部
13b ガイド部
14a 上孔
14b 下孔
15 スプリング手段
16 ナット
17 工具係合部
P 所定位置
M1 突出位置
M2 後退位置