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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】免疫グロブリンを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/12 20060101AFI20240806BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07K16/12
A61K39/395 D
A61P11/00
A61P31/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020500018
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2018022701
(87)【国際公開番号】W WO2018170297
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-09-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】15/460,147
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522369544
【氏名又は名称】エーディーエムエー バイオマニュファクチャリング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】モンド,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン,アダム エス.
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】深草 亜子
【審判官】天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0322263(US,A1)
【文献】国際公開第2007/017859(WO,A1)
【文献】Journal of Clinical Pathology,2007年,Vol.60,pp.345-350
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K16/00-16/46
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから選択される50%以上の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)血清型に対して少なくとも1:256のオプソニン貪食作用抗体力価を有する免疫グロブリンを調製する方法であって、
(a)血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから選択される50%以上の肺炎連鎖球菌血清型に対して少なくとも1:256のオプソニン貪食作用抗体力価を含むプールされた血漿を得るために、13血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、19A、19F、18C、および23F)の多価肺炎連鎖球菌結合型ワクチンで初回免疫付与された後、23血清型(1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19F、19A、20、22F、23F、および33F)の多価多糖類肺炎連鎖球菌ワクチンで追加免疫付与された18歳~60歳の健康な成人のヒト血漿ドナー由来の血漿をプールする工程と、
(b)工程(a)に従ってプールされた血漿から免疫グロブリンを調製する工程と、
(c)工程(b)に従って得られた上記免疫グロブリンを静脈内注射できるようにする工程と、を含む、方法。
【請求項2】
上記免疫グロブリンが溶液中に提供され、該免疫グロブリンを静脈内注射できるようにするために上記溶液のpHおよびイオン強度が調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記プールされた血漿は、1000人以上の異なる免疫付与されたヒト血漿ドナー由来の血漿をプールして作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
肺炎連鎖球菌感染症の予防または治療のために、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから選択される肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型に対して増強されたオプソニン貪食作用殺菌活性を有する免疫グロブリンを調製する方法であって、
(a)13血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、19A、19F、18C、および23F)の多価肺炎連鎖球菌結合型ワクチンで初回免疫付与された後、23血清型(1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19F、19A、20、22F、23F、および33F)の多価多糖類肺炎連鎖球菌ワクチンで追加免疫付与された健康な成人のヒト血漿ドナーから採取した血漿をプールする工程と、
(b)上記プールされた血漿から免疫グロブリンを調製する工程と
を含み、
上記免疫グロブリンは、1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた血漿から調製される免疫グロブリン中に存在する上記肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価と比較して、3倍以上高い、上記血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから選択される肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価を有する方法。
【請求項5】
上記1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた血漿から調製される免疫グロブリン中に存在する上記肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価と比較して、上記肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価が5倍以上高い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた血漿から調製される免疫グロブリン中に存在する上記肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価と比較して、上記肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価が10倍以上高い、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)によって引き起こされる、または、肺炎連鎖球菌に関連する感染症を治療するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、肺炎球菌感染症を予防または治療するためのヒト高度免疫グロブリンおよびその組成物を提供する。本発明は、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する免疫グロブリンを産生する方法、上記免疫グロブリンを含有する組成物、および肺炎球菌感染症(例えば、上気道感染症((例えば、免疫不全対象における)例えば、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎など))の予防および治療のための組成物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
免疫系には多くの構成要素があり、それらの全てが協働して外来侵入病原体を拒絶する。ほとんどの人々は、ウイルス、細菌、および真菌を含む、人々に一般的に感染する多種多様な感染性生物から自身を防御するために役立つ完全な免疫系を有しているが、多数の個人には免疫障害や免疫不全がある。
【0003】
原発性免疫不全(PID)は、感染症に対する感受性増大の臨床結果を伴う、先天性または適応免疫系の個々の構成要素の欠損を特徴とする200を超える遺伝性疾患群である。例えば、抗体を作製する身体機能を損なう液性免疫系の欠陥により、人は多くの感染症に感染しやすくなる。原発性免疫不全とみなされるためには、免疫不全の原因が本質的に二次的なものであってはならない(例えば、他の疾患、薬物処置、または毒素への環境曝露によって引き起こされるものであってはならない)。ほとんどの原発性免疫不全は遺伝性疾患であり、小児で診断されるが、それほど重度ではない形態は成人期まで認識されないことがある。おおよそ500人中1人が原発性免疫不全で生まれる。
【0004】
免疫グロブリンの静脈内注入は、感染症に対して自身を防御するように免疫不全個体の能力を再構築することが示されている。免疫グロブリンは多くのドナーからプールされるので、防御が模索されなければならない多くの感染性生物に対する抗体力価は大きく異なり、免疫不全個体における感染症の場合の免疫の必要性を満たすのに十分な場合もあるし、十分でない場合もある。
【0005】
ほとんどの市販の免疫グロブリンは、血液および血漿プロダクト産業により集められ、処理され、販売用に流通されたヒト血漿に由来する。臨床的に使用された最初の精製ヒト免疫グロブリンG(IgG)製剤は、1940年代に産生された免疫血清グロブリンであった(Cohn,E.J.,et al、”J. Am Chem. Soc.、68:459-475(1946)およびOncely,J.L.et al.、J.Am Chem Soc.71:541-550(1949))。この方法によって産生されたガンマグロブリンは、高分解能サイズ排除クロマトグラフィーによって分析すると、高分子量を有する分子分布を示す。
【0006】
標準免疫グロブリン(IVIG)は、人間の皮膚上に遍在する非常に一般的な共生生物である表皮ブドウ球菌(S.Sepidermidis)に対するオプソニン活性についてロット間変動を有することが示されている(L.A.ClarkおよびC.S.F.Easmon、J.Clin.Pathol.39:856(1986))。例えば、ClarkおよびEasmonによる研究において、試験したIVIGロットの3分の1は、補体を用いる乏しいオプソニン活性を示し、14個中2個のみが補体を用いないオプソニン性を有していた。従って、IVIGロットが大規模な血漿ドナープールから作製されたという事実にもかかわらず、表皮ブドウ球菌に対する良好なオプソニン抗体は均一には存在しなかった。
【0007】
IVIGは一般に、免疫不全患者における重度の下気道感染症を予防するのに成功している。IVIGを受けている免疫不全患者は、肺炎連鎖球菌(S.pneumonia)によって引き起こされる重篤な細菌感染症を予防するのに十分なレベルの肺炎連鎖球菌抗体だけでなく、許容可能なレベルの全免疫グロブリンを有するように見える。しかしながら、この事実にもかかわらず、上記免疫不全患者のうちかなりの割合の患者が、衰弱させ、生活の質を低下させ、有効でない抗生物質の使用を増加させ、そしてまた、医療費を増大させてしまう上気道感染症および非気道感染症を経験する(例えば、Favre et al.、Allergy 2005 60:385-390参照)。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる感染症の治療のための組成物および方法に関する。特に、本発明は、肺炎球菌感染症を予防または治療するためのヒト免疫グロブリンおよびその組成物を提供する。本発明は、(例えば、多数の肺炎連鎖球菌血清型に対して)オプソニン活性を有する高力価の抗肺炎球菌抗体を含有する免疫グロブリンを産生する方法、上記抗肺炎球菌抗体を含有する組成物、および肺炎球菌感染症の予防および治療のために上記組成物の使用方法を提供する。本発明はさらに、(例えば、標準IVIGの定期的な注入では十分に防御されなかった免疫不全対象に対する、本発明の免疫グロブリン組成物(例えば、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する組成物)の投与によって、)該免疫不全対象における肺炎球菌感染症(例えば、上気道感染症(例えば、咽頭炎、中耳炎、副鼻腔炎など))を予防または治療する方法を提供する。
【0009】
一実施形態において、本発明の目的は、対照サンプルと比較した場合に、オプソニン活性を有する、高められた力価の抗肺炎球菌特異的抗体を含む、血漿ドナー(例えば、本明細書に記載される方法に従って一つ以上の肺炎球菌ワクチンを接種されたヒト血漿ドナー(例えば、健康なヒト血漿ドナー))から本発明の方法に従って調製される新規免疫グロブリン組成物を提供することである。
【0010】
本発明は、利用される対照サンプルの種類によって限定されることはない。例えば、一実施形態において、対照サンプルは、ワクチン接種前の一人または複数人の健康なヒト血漿ドナーから調製される(例えば、上記ヒト血漿ドナーの抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価の免疫付与前レベルが、免疫付与後の抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価の増加を測定するためのベースラインとして使用されるように調整される)免疫グロブリンである。別の実施形態において、対照サンプルは、抗肺炎球菌ワクチンを接種されていないランダムヒト血漿ドナー(例えば、100人、300人、500人、または1000以上のランダムヒト血漿ドナー)から得られる血漿サンプルの混合物から調製される(例えば、ワクチン非接種ヒト血漿ドナーの抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価のレベルが、本発明の方法に従ってワクチン接種されたヒト血漿ドナー中に存在する抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価の増加を測定するためのベースラインとして使用されるように調製される)免疫グロブリンである。当業者は、他の対照サンプルも利用され得ることを理解するであろう。本発明は、存在する抗体のオプソニン(例えば、オプソニン貪食作用)力価を測定するために使用される方法またはアッセイによって限定されない。実際に、本明細書(例えば、実施例1)に記載されるものを含むが、これに限定されない、種々のアッセイが使用され得る。
【0011】
一実施形態において、本発明のさらなる目的は、オプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する新規免疫グロブリン組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体(例えば、「抗肺炎球菌高度免疫グロブリン」)を含有する新規な静脈内注射用免疫グロブリン組成物、および((例えば、免疫不全患者における)例えば、肺炎球菌感染症を予防および/または治療するために)該新規な静脈内注射用免疫グロブリン組成物を産生および利用する方法を提供することである。この文脈における「高力価」という用語は、対照サンプルにおいて確認されるものよりも2倍以上、例えば3倍、5倍、7倍、10倍、15倍、または20倍以上高い量のオプソニン抗肺炎球菌抗体の存在を意味する。
【0012】
したがって、本発明の高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する新規免疫グロブリン組成物(例えば、抗肺炎球菌高度免疫グロブリン)は、標準/従来の免疫グロブリン製剤(例えば、標準の従来のIVIG)とは異なり、かつ、組成物中に存在する(例えば、ELISAによって測定される)結合抗肺炎球菌抗体の総量とは無関係に、多数の肺炎連鎖球菌血清型に対して機能的かつ広範に反応し、肺炎連鎖球菌の食作用および殺傷を増強する高力価のオプソニンヒト抗肺炎球菌抗体を有する(例えば、インビトロおよび/またはインビボで(例えば、上記抗体はオプソニン貪食作用を有する))点で、他のIVIG製剤(例えば、他の高度免疫IVIG製剤)と異なる。
【0013】
これは、本明細書中で生成および開示されたデータが、ワクチン接種ドナーから調製された血漿または免疫グロブリン中に存在する、全抗肺炎球菌IgG抗体力価とオプソニン抗肺炎球菌抗体の力価との間に一貫した相関関係、または、予測可能な相関関係がないことを示したので、驚くべきことである。本明細書中に開示されるワクチン接種ドナー血漿由来の血漿または該血漿から調製された免疫グロブリン中に存在する、結合抗肺炎球菌IgG抗体力価の総量とオプソニン抗肺炎球菌抗体の力価との間に大幅な不一致があることが驚くべきことに特定されたため、本発明のさらなる目的は、対照サンプルと比較して、有意に高められた機能的オプソニン抗肺炎球菌抗体力価を有する血漿および/または免疫グロブリン組成物(例えば、抗肺炎球菌高度免疫グロブリン)を提供することである((例えば、ワクチン接種ドナー血漿から採取された血漿および/または免疫グロブリンをプールすることによって、または、有意に高められた力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体ドナー血漿および/または免疫グロブリンと共にプールされた場合に総オプソニン力価を非防御レベルに希釈しない、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を有し得ないワクチン非接種ドナーから得られた免疫グロブリンと共に、ワクチン接種ドナー血漿をプールすることによって、)上記結合抗肺炎球菌抗体力価の総量に関わらず提供する)。有意に高められた、機能的および広範に反応するオプソニン抗肺炎球菌抗体力価を含む、血清/血漿、該血清/血漿から調製される免疫グロブリン(例えば、高度免疫グロブリン)が、本発明に包含される。一実施形態において、本発明は、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも約55%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対する抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価について、対照サンプル(抗肺炎球菌ワクチンを接種されていないランダムヒト血漿ドナー(例えば、100人、300人、500人、または1000人以上のランダムヒト血漿ドナー)から得られた血漿サンプルの混合物から調製される免疫グロブリン)中に存在する上記血清型に対する抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、または10倍以上である、高められた記抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価を含む、血漿/血清、および/または、該血漿/血清から調製される免疫グロブリンを提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23から選択される肺炎連鎖球菌血清型の70%以上に対して特異的な、広範に反応するオプソニン抗体の力価について、抗肺炎球菌ワクチンを接種されていないランダムヒト血漿ドナー(例えば、100人、300人、500人、または1000人以上のランダムヒト血漿ドナー)から得られた血漿サンプルの混合物から調製された対照サンプル(例えば、免疫グロブリン)中に存在する、上記肺炎連鎖球菌血清型に対して特異的なオプソニン抗体の力価と比較して、2倍以上(例えば、3~25倍以上)高いオプソニン抗体の力価を含有する高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物を提供する。別の実施形態において、(例えば、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対して、)1:64から1:8192までの間の抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価を含有する、血漿/血清、および/または、該血漿/血清から調製される免疫グロブリンを提供する。
【0015】
また、従来のIVIGの定期的な注入に十分に反応しない免疫不全患者において、インビボで免疫を増強し、かつ/または、感染(例えば、上気道感染症)を予防的および治療的に阻害する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する新規免疫グロブリン組成物(例えば、抗肺炎球菌高度免疫グロブリン)を提供することも本発明の目的である。
【0016】
また、(例えば、市販の標準/従来のIVIGを生成するために使用される)正常ドナーの標準免疫グロブリンプールは、一貫性のある、再現可能な、完全防御レベルの、肺炎連鎖球菌に対するオプソニン抗体を有さないが、本発明の高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する高度免疫グロブリン組成物(例えば、抗肺炎球菌高度免疫グロブリン)は、静脈内投与した場合、食細胞による肺炎連鎖球菌に対する食作用および肺炎連鎖球菌の殺傷を促進する特異的な機能的(例えば、単に結合するだけではない)抗体を直ちに提供する。これも、本発明の別の有利な目的である。本発明の高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物内に存在する機能的オプソニン抗体は、肺炎連鎖球菌に対して上記食作用および/または殺傷を促進するが、本発明は、該肺炎連鎖球菌の血清型または血清型の数によって限定されない。実際に、本発明の組成物(例えば、高度免疫血漿組成物および/または高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物)が、肺炎連鎖球菌の血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fの12の血清型のうちの少なくとも7の血清型、8の血清型、9の血清型、10の血清型、11の血清型、または12の血清型のすべてに対して広範に反応するオプソニン抗体を含むことが、本発明のさらなる目的である。すなわち、本発明は、(例えば、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから選択される肺炎球菌血清型の少なくとも約55%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対するオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価について、)対照サンプルに存在するオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価よりも少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、または10倍以上高い、高められたオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価を含む組成物および該組成物を得る方法を提供する。一実施形態において、本発明は、対照サンプル中に存在する肺炎連鎖球菌血清型に対して特異的なオプソニン抗体の力価よりも2倍以上(例えば、3~25倍以上)高い、血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23から選択される肺炎連鎖球菌血清型の70%以上に対して特異的な、広範に反応するオプソニン抗体の力価を含有する高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物を提供する(上記対照サンプルは、(例えば、ヒト血漿ドナーの血清型特異的オプソニン抗体力価の免疫付与前レベルが免疫付与後の血清型特異的オプソニン抗体力価の増加を測定するためのベースラインとして使用されるように)例えば、抗肺炎球菌ワクチンを接種されていないランダムヒト血漿ドナー(例えば、100人、300人、500人、または1000人以上のランダムヒト血漿ドナー)から得られた血漿サンプルの混合物から調製される免疫グロブリン、または、ワクチン接種前の一人または複数人の健康なヒト血漿ドナーから調製される免疫グロブリンである)。別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン(例えば、高度免疫グロブリン(例えば、IVIG))組成物を提供する。上記免疫グロブリン組成物は、該免疫グロブリン組成物が由来する一以上の血漿ドナーに免疫付与するために利用されたワクチンまたは複数のワクチン中に存在する各血清型の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、95%、または98%以上に対して高力価の広範に反応するオプソニン抗体を含む。
【0017】
本発明のさらなる利点および目的は、(例えば、肺炎連鎖球菌の成長を阻害すること、および/または、患者の血液から肺炎連鎖球菌を除去することによって)患者(例えば、免疫不全患者(例えば、PIDD患者))における肺炎球菌感染症を治療または予防するために、肺炎連鎖球菌に対して特異的な広範に反応するオプソニン抗体を含有する高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物を上記患者に対して提供することである。本発明の別の利点および目的は、(例えば、患者の血液からの肺炎連鎖球菌の除去を向上すること、または、高めることによって)患者(例えば、免疫不全患者(例えば、PIDD患者))における肺炎球菌感染症を治療するために、肺炎連鎖球菌に対して特異的な広範に反応するオプソニン抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物を上記患者に対して提供することである。本発明のさらなる利点および目的は、従来のIVIG治療では予防できない、患者(例えば、免疫不全患者(例えば、PIDD患者))における上気道感染症を予防するために、肺炎連鎖球菌に対して特異的な広範に反応するオプソニン抗体を含有する本発明の高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物を上記患者に対して提供することである。本発明は、鼻副鼻腔炎(副鼻腔炎)、中耳炎、咽頭炎、喉頭蓋炎、喉頭気管炎、および喉頭気管気管支炎を含み得るが、これらに限定されない、予防および/または治療される上気道感染症の種類によって限定されない。同様に、咳、くしゃみ、鼻汁、鼻づまり、鼻水、発熱、のどのかゆみまたは痛み、および鼻呼吸を含むが、これらに限定されない、上気道感染症の徴候または症状を予防および/または治療する際に、組成物および該組成物を使用する(例えば、投与する)方法が使用される。
【0018】
一実施形態において、本発明は、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有するプールされた血漿サンプル(例えば、複数のドナー(例えば、一つ以上の肺炎球菌ワクチンを接種されたドナー)由来の血漿)を含む組成物を得るための組成物および方法を提供する。
【0019】
従って、本発明の目的は、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する組成物(例えば、血液、血漿、および/または、免疫グロブリン(例えば、高度免疫グロブリン)組成物)を生成する方法を提供することである。一実施形態において、一人または複数人の健康な成人ヒト対象(例えば、既知の内科的疾患を有さないヒト対象)に、肺炎球菌免疫原、組換え肺炎球菌タンパク質、または、それらの組み合わせを投与する。いくつかの実施形態において、肺炎連鎖球菌免疫原は、肺炎連鎖球菌細胞膜糖(例えば、多糖)である。いくつかの実施形態において、上記肺炎連鎖球菌免疫原は、一つまたは複数の肺炎連鎖球菌タンパク質(例えば、組換えタンパク質または単離タンパク質)を含む肺炎連鎖球菌ワクチンである。いくつかの実施形態において、肺炎連鎖球菌免疫原は、(例えば、担体および/またはアジュバント(例えば、タンパク質または他の担体分子)に結合された)結合型ワクチンである。いくつかの実施形態において、肺炎連鎖球菌免疫原は、非結合型ワクチンである。いくつかの実施形態において、上記結合型ワクチンまたは非結合型ワクチンは、(例えば、同数の異なる肺炎連鎖球菌血清型に由来する)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または、23以上の異なる免疫原を含む。いくつかの実施形態において、上記一つ以上の異なる肺炎連鎖球菌血清型は、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7A、7B、7C、7D、7E、7F、8、9A~9V、12、14、18C、19A~19F、23A~23F、および25を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記一つ以上の異なる肺炎連鎖球菌血清型は、90を超える異なる既知の肺炎連鎖球菌血清型の任意の一つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、上記一つ以上の異なる肺炎連鎖球菌の血清型が新たに特定される。
【0020】
さらに他の実施形態において、一人または複数人の健康なヒト対象(例えば、既知の内科的疾患を有さないヒト対象)に、市販の肺炎球菌ワクチン中に存在する肺炎球菌免疫原、組換え肺炎球菌タンパク質、またはそれらの組み合わせを投与する。本発明は、市販の肺炎球菌ワクチンの種類によって限定されない。実際、肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13またはPREVNAR13、Wyeth Pharmaceuticals、Collegeville、PA)、SYNFLORIX、および/または肺炎球菌多糖類ワクチン(PPSV23またはPNEUMOVAX23、Merck Sharp & Dohme Corp、North Wales、PA)を含むがこれらに限定されない、本技術分野で既知の任意の肺炎球菌ワクチンを利用することができる。一実施形態において、一人または複数人の健康なヒト対象は、第一抗肺炎球菌ワクチンを用いる第一または初回ワクチン接種を受け、その後、上記第一抗肺炎球菌ワクチンまたは第二の異なる抗肺炎球菌ワクチンを用いる追加ワクチン接種を受ける。例えば、一実施形態において、一人または複数人の健康なヒト対象は、第一抗肺炎球菌ワクチン(例えば、PREVNAR)を用いる第一または初回ワクチン接種/免疫付与を受け、次いで、第二抗肺炎球菌ワクチン(例えば、PNEUMOVAX23)を用いる追加ワクチン接種/免疫付与(例えば、初回ワクチン接種/免疫付与後の2週間目、4週間目、6週間目、8週間目、10週間目、12週間目以降)を受ける。連続ワクチン接種後のある時点で(例えば、連続ワクチン接種後2週間目、4週間目、6週間目、8週間目、10週間目、12週間目以降)、血清/血漿を、ワクチン接種された健康なヒト血漿ドナーから採取する。上記ワクチン接種ドナー由来の血漿を(該血漿同士で互いに、および/またはワクチン非接種ドナー由来の血漿と共に)プールし、続いて、(例えば、本発明の抗肺炎球菌高度免疫グロブリンを生成するために)上記血漿から免疫グロブリンを単離および/または精製してもよい。血漿を採取する方法ならびに免疫グロブリンを抽出する方法は、当業者に周知である。
【0021】
一実施形態において、本発明は、以下の高度免疫グロブリンを調製する方法を提供する。(i)(肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも約55%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対する)力価について、対照サンプル中に存在する、上記血清型に対する抗肺炎球菌特異的オプソニン貪食作用抗体力価と比較して、高力価(例えば、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、または10倍以上である力価)の肺炎連鎖球菌に対するオプソニン貪食作用抗体を有する高度免疫グロブリン。(ii)血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23から選択される肺炎連鎖球菌血清型の70%以上に対して特異的な力価であって、対照サンプル中に存在する同じ肺炎連鎖球菌血清型に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体の力価よりも2倍以上(例えば、3~25倍以上)高い力価を有する高度免疫グロブリン。(iii)(例えば、本明細書に記載されるオプソニン貪食殺傷アッセイにより測定される(肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対して、)少なくとも1:256である)1:64から1:8192までの間の力価を有する高度免疫グロブリン。上記方法は、(a)18歳~60歳の健康な成人のヒト血漿ドナーに多価肺炎連鎖球菌ワクチンで初回免疫付与を行った後、該初回ワクチンと同じ、または、異なり得る追加多価肺炎連鎖球菌ワクチンで免疫付与を行う工程と、(b)上記追加免疫付与の後に血漿ドナーから血漿を採取する工程と、(c)肺炎連鎖球菌に対して高力価のオプソニン貪食作用抗体力価を含むプールされた血漿を得るために、ワクチンを接種された上記ドナー由来の血漿をプールする工程と、(d)上記プールされた血漿から免疫グロブリンを調製する工程とを含む。さらに他の実施形態において、この方法は、得られた上記免疫グロブリンを静脈内注射できるようにする工程を含む。上記免疫グロブリンは溶液中に提供できる。さらに/または、該免疫グロブリンを静脈内注射できるようにするために、上記溶液のpHおよびイオン強度を調整することもできる。本発明は、本明細書中に記載される方法に従ってワクチン接種された個体の数によって限定されない。例えば、100人、200人、300人、400人、500人、600人、700人、800人、900人、1000人、1100人、1200人、1300人、または1400人以上の健康な成人ヒト血漿ドナーにワクチン接種し、該ドナーから血漿を採取することができる。一実施形態において、上記プールされた血漿は、1000人以上の異なるワクチン接種された健康な成人ヒト血漿ドナー由来のプールされた血漿から作製される。一実施形態において、上記プールされた血漿は、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも約55%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対するオプソニン貪食作用抗体力価について、対照サンプル(例えば、1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた血漿から調製される免疫グロブリン)中に存在する上記血清型に対するオプソニン貪食作用抗肺炎球菌特異的抗体力価と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、または10倍以上であるオプソニン貪食作用抗体力価を含む。別の実施形態において、上記プールされた血漿は、血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23から選択される肺炎連鎖球菌血清型の70%以上に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価について、対照サンプル(例えば、1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた血漿から調製される免疫グロブリン)中に存在する同じ肺炎連鎖球菌血清型に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体の力価と比較して、2倍以上(例えば、3~25倍以上)高いオプソニン貪食作用抗体力価を含む。さらに別の実施形態において、上記プールされた血漿は、本明細書に記載される、または、本技術分野において既知のオプソニン貪食殺傷アッセイにより測定される(例えば、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対して、)1:64から1:8192までの間のオプソニン貪食作用抗体力価を含む。
【0022】
本発明はまた、上記の方法に従って調製される免疫グロブリン(例えば、高度免疫グロブリン)を提供する。このように調製される免疫グロブリン(例えば、高度免疫グロブリン)は、種々の方法において使用できる。例えば、上記免疫グロブリンは、対象における肺炎連鎖球菌感染症を治療する方法(例えば、治療有効量の上記免疫グロブリンを上記対象に投与する工程を含む方法)において用いることができる。上記免疫グロブリンはまた、対象に免疫療法を提供する方法(例えば、治療有効量の上記免疫グロブリンを上記対象に投与する工程を含む方法)においても使用できる。
【0023】
本発明はまた、一実施形態において、肺炎連鎖球菌感染症の予防または治療のために、肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型に対して増強されたオプソニン貪食作用殺菌活性を有する高度免疫グロブリンを調製する方法を提供する。この方法は、(a)健康な成人のヒト血漿ドナーに多価肺炎連鎖球菌結合型ワクチンで初回免疫付与を行った後、上記初回ワクチンとは異なる多価多糖類肺炎連鎖球菌ワクチンで追加免疫付与を行う工程と、(b)免疫付与された上記血漿ドナーから上記血漿を採取し、プールする工程と、(c)上記プールされた血漿から免疫グロブリンを調製する工程とを含み、上記免疫グロブリンは、対照サンプル中(例えば、1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた血漿から調製される免疫グロブリン中)に存在する上記肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価よりも2倍以上(例えば、3~25倍以上)高い、上記肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価を有する。本発明はまた、上記の方法に従って調製される高度免疫グロブリンを提供する。このように調製される高度免疫グロブリンは、様々な方法で使用することができる。例えば、上記高度免疫グロブリンは、対象における肺炎連鎖球菌感染症を治療する方法であって、治療有効量の上記高度免疫グロブリンを上記対象に投与する工程を含む方法において用いることができる。上記高度免疫グロブリンはまた、対象に免疫療法を提供する方法であって、治療有効量の上記高度免疫グロブリンを上記対象に投与する工程を含む方法においても使用できる。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明は、オプソニン貪食殺傷アッセイ(例えば、本明細書に記載される、または、本技術分野において既知のオプソニン貪食殺傷アッセイ)と共にインビトロ抗原結合アッセイ(例えば、ELISA)を使用して、全抗肺炎球菌結合抗体用の血漿(例えば、血漿または免疫グロブリンのプール;免疫グロブリンまたは免疫グロブリン製剤)をスクリーニングする工程を含む、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する組成物(例えば、血液、血漿、および/または、免疫グロブリン(例えば、高度免疫グロブリン)組成物)を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、オプソニン貪食作用殺傷アッセイ(例えば、実施例1に記載されるアッセイ)を使用して、全オプソニン抗肺炎球菌抗体用の血漿(例えば、血漿または免疫グロブリンのプール;免疫グロブリンまたは免疫グロブリン製剤)をスクリーニングする工程を含む、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する組成物(例えば、血液、血漿、および/または、免疫グロブリン組成物)を調製する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、インビトロ抗原結合アッセイ(例えば、ELISA)を使用して全抗肺炎球菌結合抗体用の血漿(例えば、血漿または免疫グロブリンのプール;免疫グロブリンまたは免疫グロブリン製剤)をスクリーニングする工程と、該スクリーニング工程に続く、オプソニン貪食作用殺傷アッセイ(例えば、実施例1に記載されるアッセイ)を使用して全オプソニン抗肺炎球菌抗体用の血漿(例えば、血漿または免疫グロブリンのプール;免疫グロブリンまたは免疫グロブリン製剤)をスクリーニングする工程とを含む、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する組成物(例えば、血液、血漿、および/または、免疫グロブリン組成物)を調製する方法を提供する。さらに他の実施形態において、防御の有効性は、肺炎連鎖球菌感染症の動物モデルを使用して、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含む組成物(例えば、血液、血漿、および/または免疫グロブリン組成物)の防御活性を分析する(例えば、罹患率、死亡率、および/または細菌排除を測定する)ことによって、インビボで実証することができる。本発明は、存在する抗体のオプソニン貪食作用の力価を測定するために使用される方法またはアッセイによって限定されない。実際に、本明細書(例えば、実施例1)に記載されるものを含むが、それらに限定されない、種々のアッセイが使用され得る。
【0025】
本発明は、一実施形態において、一つ以上の抗肺炎球菌ワクチンを接種されたドナー(例えば、50、100、300、500、または1000以上のドナー(例えば、健康な成人ヒト血漿ドナー))から血漿サンプルを得る工程と、プールされた血漿組成物を生成するために上記血漿サンプルを(例えば、該血漿サンプル同士で互いにおよび/またはワクチン非接種ドナー由来の血漿と共に)プールする工程とを含む、組成物を生成する方法を提供する。さらに他の実施形態において、免疫グロブリンは、プールされた血漿サンプルから調製される(例えば、免疫グロブリンは、本明細書中に記載されているものを含む、本技術分野において既知の任意の方法を用いて、血漿から分画され、精製され、そして/または単離される)。さらに他の実施形態において、本発明の免疫グロブリンは、(例えば、溶液中における免疫グロブリンの提供、pHの調整、イオン強度の調整などを介して)静脈内注射できるようにされる。本明細書中に記載されるように、一実施形態において、本発明のプールされた血漿組成物は、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも約55%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対するオプソニン貪食作用抗体力価について、対照サンプル(例えば、1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた血漿から調製される免疫グロブリン)中に存在する上記血清型に対する抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、または10倍以上であるオプソニン貪食作用抗体力価を含む。別の実施形態において、上記プールされた血漿組成物は、血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23から選択される肺炎連鎖球菌血清型の70%以上に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価について、対照サンプル(例えば、1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた血漿から調製される免疫グロブリン)中に存在する同じ肺炎連鎖球菌血清型に対して特異的なオプソニン抗体の力価と比較して、2倍以上(例えば、3~25倍以上)高いオプソニン貪食作用抗体力価を含む。さらに別の実施形態において、上記プールされた血漿組成物は、本明細書に記載されるオプソニン貪食殺傷アッセイにより測定される(例えば、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対して、)1:64から1:8192までの間のオプソニン貪食作用抗体力価を含む。
【0026】
一実施形態において、(例えば、ワクチン接種ドナーおよび/またはワクチン非接種ドナー由来の)血漿サンプルは、(例えば、プールの前または後に、)血液由来病原体がいないことを確認するためにスクリーニングされる。いくつかの実施形態において、血漿および/または抗体サンプルは、提供または購入された生物由来物質(例えば、血液または血漿)の形態でドナー対象から得られる。いくつかの実施形態において、血漿および/または抗体サンプル(例えば、血液、血漿、単離抗体など)は、市販の供給源から得られる。いくつかの実施形態において、血漿および/または抗体サンプル、献血、または提供血漿は、病原体についてスクリーニングされ、特定の病原体が存在すれば、消毒または廃棄される。いくつかの実施形態において、ドナーサンプルを他のドナーサンプルと共にプールする前にスクリーニングが行われる。他のいくつかの実施形態において、サンプルのプール後にスクリーニングが行われる。抗体、血液、および/または血漿は、任意の適切な対象から得られ得る。いくつかの実施形態において、抗体、血液、および/または血漿は、最近(例えば、1年以内、6ヶ月以内、2ヶ月以内、1ヶ月以内、2週間以内、1週間以内、3日以内、2日以内、1日以内に)一つ以上の肺炎球菌ワクチンを接種された対象、または一つ以上の肺炎球菌ワクチンに曝された対象から得られる。
【0027】
いくつかの実施形態において、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有すると(例えば、本明細書に記載の方法に従って)特定された血液、血漿および/または免疫グロブリンサンプルを組み合わせて(例えば、プールして)、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含む本発明の組成物(例えば、高度免疫グロブリン)を生成する。
【0028】
血漿、抗体サンプル、プールされた血漿組成物および/またはそれら由来の免疫グロブリンから得るための任意の適切な方法は、本発明の範囲に含まれる。さらに、抗体サンプルおよび/または血漿プールを産生、製造、精製、分画、濃縮等するための任意の適切な方法は、本発明の範囲に含まれる。抗体サンプルを収集し、血漿プールを産生するための例示的な技術および手順は、例えば、以下の文献に記載されている。米国特許第4,174,388号;米国特許第4,346,073号;米国特許第4,482,483号;米国特許第4,587,121号;米国特許第4,617,379号;米国特許第4,659,563号;米国特許第4,665,159号;米国特許第4,717,564号;米国特許第4,717,766号;米国特許第4,801,450号;米国特許第4,863,730号;米国特許第5,505,945号;米国特許第5,582,827号;米国特許第6,692,739号;米国特許第6,962,700号;米国特許第6,984,492号;米国特許第7,045,131号;米国特許第7,488,486号;米国特許第7,597,891号;米国特許第6,372,216号;米国特許出願公開第2003/0118591号;米国特許出願公開第2003/0133929;米国特許出願公開第2005/0053605号;米国特許出願公開第2005/0287146号;米国特許出願公開第2006/0110407号;米国特許出願公開第2006/0198848号;米国特許出願公開第2006/0222651号;米国特許出願公開第2007/0037170号;米国特許出願公開第2007/0249550号;米国特許出願公開第2009/0232798号;米国特許出願公開第2009/0269359号;米国特許出願公開第2010/0040601号;米国特許出願公開第2011/0059085号;および米国特許出願公開第2012/0121578。参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。本発明の実施形態は、上記に列挙された参考文献からの技術、方法、または組成物の任意の適切な組み合わせを利用し得る。
【0029】
本発明の単離された免疫グロブリンは、IgG画分またはアイソタイプであり得るが、単離された免疫グロブリンは、任意の特定の画分またはアイソタイプに限定されない。上記単離された免疫グロブリンは、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEまたはそれらの任意の組み合わせであり得る。また、上記単離された免疫グロブリンは、純粋にまたは抗原的にヒト免疫グロブリンであることも好ましい。
【0030】
一実施形態において、本発明の高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含む組成物は、約6.0~7.8(例えば、5.0~6.0、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6. 7.7、または7.8以上)のpHを有する滅菌溶液である。別の実施形態において、本発明の高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含む組成物は、免疫グロブリン調製のための米国FDA規格に従って調製される(例えば、37CFR§§640.100;640.101;640.102;640.103;640.104、2013年4月1日を参照)。一実施形態において、本発明の高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体(例えば、本明細書中、特に実施例において記載される高度免疫グロブリン)を含む組成物は、免疫不全症を有する患者を治療するためにFDAによって推奨される、ジフテリア菌、麻疹ウイルス、およびポリオウイルスに対する抗体力価の少なくとも最低レベルを有する(例えば、37CFR§640.104参照)。
【0031】
一実施形態において、上記プールされた血漿組成物には、(例えば、(例えば、米国食品医薬品局によって推奨される、)本技術分野において既知の任意の方法を用いて検出される)検出可能なレベルのヒト免疫不全ウイルス(HIV)1(HIV-1)、HIV-2、梅毒トレポネーマ、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、サルマラリア原虫、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、プリオン、西ナイルウイルス、パルボウイルス、クルーズトリパノソーマ、SARSコロナウイルス、および/またはワクシニアウイルスが不在である。一実施形態において、本発明のプロセスまたは組成物において使用される個々の血漿サンプルはそれぞれ、FDA承認血液施設においてのみ収集され、そしてヒト免疫不全ウイルス(HIV)1(HIV-1)、HIV-2、梅毒トレポネーマ、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、サルマラリア原虫、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、プリオン、西ナイルウイルス、パルボウイルス、クルーズトリパノソーマ、SARSコロナウイルス、および/またはワクシニアウイルスについての血清学的検査(例えば、FDA承認血清学的検査)によって試験される。別の実施形態において、本発明の個々の血漿サンプルおよび/またはプールされた血漿組成物は、核酸検査(NAT)を用いてHIV-1、HIV-2、HBV、HCV、または他の感染性物質(例えば、病原体)の有無について試験され、病原体が存在しないことが確認された場合にのみ、本発明の処理または組成物に使用される。
【0032】
本発明は、本発明の組成物(例えば、プールされた血漿サンプルおよび/またはそれを含む免疫治療組成物)を投与される、または、該組成物を用いて治療される対象のタイプ(例えば、哺乳類、非ヒト霊長類、ヒトなど)によって限定されない。例えば、本発明は高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する組成物(例えば、血液、血漿、および/または免疫グロブリン(例えば、高度免疫グロブリン)組成物)を受ける患者のタイプによって限定されない。本発明の目的は、本明細書に記載の免疫不全患者に本発明の組成物を提供および/または投与することである。
【0033】
一実施形態において、プールされた血漿は、1000人~3000人以上(例えば、1000人より多い、1250人、1500人、1750人、2000人、2500人、3000人、3500人、または4000人以上)のヒト対象から得られた血漿サンプルを含む。一実施形態において、プールされた血漿サンプルを含む組成物は、薬学的に許容可能な担体(例えば、天然および/または非天然担体)をさらに含む。一実施形態において、上記プールされた血漿組成物は、(例えば、対象への静脈内投与用の)免疫グロブリンを調製するために利用される。一実施形態において、上記プールされた血漿組成物および/または免疫グロブリンは、組成物を投与された対象に対して、1000人以上のランダムなヒト対象から得られた血漿サンプルの混合物および/または該混合物から調製される免疫グロブリンの投与によって達成できない治療的利点を提供する(例えば、従来のIVIGで予防または治療されない対象における上気道感染症を予防または治療する)。本発明は、提供される治療的利点の種類によって限定されない。実際に、本明細書に記載されるものを含めて、様々な治療的利点が達成され得る。
【0034】
一実施形態において、本発明の上記プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンは、該組成物を投与された対象における感染症(例えば、上気道感染症)の発生率を減少させる。別の実施形態において、本発明のプールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンは、(例えば、感染症(例えば、上気道感染症)を治療するために)本発明の上記プールされた血漿および/または免疫グロブリンを投与される対象が抗生物質を投与される必要がある日数を減らす。さらに別の実施形態において、本発明のプールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンは、対象における血中オプソニン抗肺炎球菌抗体のトラフレベルを増加させる(例えば、肺炎連鎖球菌に対して特異的なオプソニン抗体力価のレベルを増加させる(例えば、それによって、本発明の上記プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンの投与予定日と次の投与予定日の間に、(例えば、従来のIVIGを投与される対象において維持されない)防御レベルの抗肺炎球菌特異的抗体を提供する))。
【0035】
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるあろう。しかし、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者には明らかになるため、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、説明の目的のためのみに記載されているものと理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】以下の時点で採取した個々のワクチン接種ドナー血清中の肺炎球菌血清型特異的IgG抗体結合力価を示す:初回PREVNARワクチン接種の直前(接種前(Pre))、4週目の二次PNEUMOVAX23接種の直前(4週目)、8週目、10週目、12週目および16週目。4週目、8週目、10週目、および12週目の平均肺炎球菌血清型特異的IgG抗体結合力価ならびに接種前および接種後12週目のプールされた血清のIgG肺炎球菌血清型特異的IgG抗体結合力価を示す。また、接種前と接種後12週目との間の肺炎球菌血清型特異的IgG抗体結合力価の増加倍数(fold increase)も示す。
図2】以下の時点で採取した個々のワクチン接種ドナー血清中の肺炎球菌血清型特異的オプソニン殺傷(OPK)力価を示す:初回PREVNARワクチン接種の直前(接種前)、4週目の二次PNEUMOVAX23接種の直前(4週目)、8週目、10週目、12週目および16週目(種々の肺炎球菌血清型に特異的)。4週目、8週目、10週目、および12週目の平均肺炎球菌血清型特異的オプソニン力価ならびに接種前および接種後12週目のプールされた血清の肺炎球菌血清型特異的オプソニン力価を示す。また、接種前と接種後12週目との間の肺炎球菌血清型特異的OPK力価の増加倍数も示す。
図3】以下の時点で採取した、40人の対象からプールされたプールドナー血清中の肺炎球菌血清型特異的IgG抗体結合力価を示す:初回PREVNARワクチン接種の直前(接種前)、8週目、10週目、12週目および16週目、および5ヶ月目。
図4】以下の時点で採取した、プールドナー血清中の肺炎球菌血清型特異的IgG抗体結合濃度の増加倍数を示す:初回PREVNARワクチン接種の直前(接種前)、8週目、10週目、12週目および16週目、および5ヶ月目(*=ベースライン)。
図5】以下の時点で採取した、40人の対象からプールされたプールドナー血清中の肺炎球菌血清型特異的オプソニン殺傷(OPK)力価を示す:初回PREVNARワクチン接種の直前(接種前)、8週目、10週目、12週目および16週目、および5ヶ月目。
図6】上に示した時点で採取した、40個体からプールされたプールドナー血清からの精製免疫グロブリン(IG)中の肺炎球菌血清型特異的IgG抗体結合濃度を示す。
図7】上に示した時点で採取した、40個体からプールされたプールドナー血清からの精製IgG中の肺炎球菌血清型特異的OPK力価を示す。
図8】複数の異なる従来の市販のIVIG中に存在する機能的/オプソニン抗体のOPK血清型特異的力価に対する、ワクチン接種ドナー由来のプールヒト血清中に存在する機能的/オプソニン抗体のOPK血清型特的力価の比較を示す。各列は、一つの固有の肺炎連鎖球菌血清型を表す。各行は、固有のサンプルを表す。サンプルA~Iは、従来の市販のIVIGの異なるロットを表す。「IVIG平均」は、等量の各従来の市販のIVIGを含むプールされたサンプル中に存在する機能的/オプソニン抗体の平均OPK血清型特異的力価である。「ワクチン接種前ドナー血清」は、実施例1に記載のワクチン接種前のプールヒトドナー血清中に存在する機能的/オプソニン抗体のOPK血清型特異的力価を表す。「ワクチン接種ドナー血清」は、実施例1に記載のワクチン接種後12週間目のプールヒトドナー血清中に存在する機能的/オプソニン抗体のOPK血清型特異的力価を表す。「市販のIVIGと比較した増加力価倍数(Fold Titer Increase)」は、等量の各従来の市販のIVIGを含有するプールサンプル中に存在する機能的/オプソニン抗体の平均OPK血清型特異的力価に対する、実施例1に記載の、ワクチン接種後12週間目のプールヒトドナー血清中に存在する機能的/オプソニン抗体のOPK血清型特異的力価の増加倍数を表す。
図9A】血清型1に対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9B】血清型3に対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9C】血清型4に対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9D】血清型5に対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9E】血清型6Bに対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9F】血清型7Fに対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9G】血清型9Vに対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9H】血清型14に対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9I】血清型18Cに対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9J】血清型19Aに対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9K】血清型19Fに対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図9L】血清型23Fに対する高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する、本発明の高度免疫グロブリン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価と比較した、IVIGの9つの異なる市販ロット(サンプルA~I)中に存在する肺炎連鎖球菌血清型特異的オプソニン抗体力価を示す。
図10】従来のIVIGの注入後のトラフで、抗肺炎連鎖球菌結合抗体が防御レベル(1.2mg/ml)未満に低下する、原発性免疫不全症を有する対象の割合(パーセンテージ)を示す。〔定義〕 本明細書中において、用語「対象」は、任意のヒトまたは動物(例えば、非ヒト霊長類、齧歯動物類、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマなど)を指す。
【0037】
本明細書中において、用語「サンプル」は、その最も広い意味で使用され、そして、任意の供給源から得られる物質を包含する。この用語「サンプル」は、例えば、生物学的供給源から得られる物質(例えば、動物(ヒトを含む)から得られる物質)を指すために使用され得、さらに、任意の流体、固体および組織を包含する。本発明の特定の実施形態において、生物学的サンプルは、血液および血液製剤(例えば、血漿、血清など)を含む。しかしながら、これらの例が、本発明で使用されるサンプルの種類を限定するものと解釈してはならない。
【0038】
本明細書中において、用語「抗体」は、通常、同一の2対のポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリン分子を指す。ポリペプチド鎖の各対は、一つの「軽」(L)鎖と一つの「重」(H)鎖を有する。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、それぞれ、抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA、および、IgEと定義する。軽鎖および重鎖内では、可変領域および定常領域が約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約3つ以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中ではHCVRまたはVと略される)と重鎖定常領域とにより構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中でLCVRまたはVと略される)と軽鎖定常領域とにより構成される。軽鎖定常領域は、一つのドメインCLを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1構成要素(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。VおよびV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存性の高い領域が散在している。VおよびVはそれぞれ、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VおよびV)は、それぞれ、抗体結合部位を形成する。用語「抗体」は、単量体抗体の二量体、三量体、または高次多量体のような、抗体マルチマー(多量体型抗体)の一部である抗体を包含する。さらに、用語「抗体」は、非抗体部分に連結された、または、付着した、またはそうでなければ、物理的にもしくは機能的に関わる抗体を包含する。さらに、用語「抗体」は、抗体を産生する任意の特定の方法によって限定されない。例えば、用語「抗体」は、とりわけ、組換え抗体、合成抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、および多特異性抗体を含む。
【0039】
本明細書中において、抗体の「抗体誘導体」または「誘導体」という用語は、分子であって、該分子が由来する抗体が結合するのと同じ抗原に結合することができ、かつ追加の分子実体に連結された抗体と同じまたは類似のアミノ酸配列を有する分子を指す。上記抗体誘導体に含まれる抗体のアミノ酸配列は、全長抗体であってもよく、または全長抗体の任意の一部分または複数の部分であってもよい。追加の分子実体は、化学的分子または生物学的分子であり得る。追加の分子実体の例には、化学基、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(酵素、抗体など)、および化学化合物が含まれる。上記追加の分子実体は、検出剤、標識、マーカー、医薬品または治療剤としての使用などの任意の有用性を有し得る。抗体のアミノ酸配列は、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合、または他の方法によって、追加の実体に付着または連結されていてもよい。用語「抗体誘導体」はまた、キメラ抗体、ヒト化抗体、および保存アミノ酸置換、付加、および挿入などの抗体のアミノ酸配列の修飾から生じる分子を包含する。
【0040】
本明細書中において、用語「抗原」および「免疫原」は、適応免疫反応を誘導できる任意の物質を指すために互換的に使用される。抗原は、全細胞(例えば、細菌細胞)、ウイルス、真菌、またはその抗原部分もしくは抗原成分であり得る。抗原の例としては、微生物病原体、細菌、ウイルス、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ペプチド、糖ペプチド、リポペプチド、トキソイド、炭水化物、腫瘍特異的抗原、およびそれらの抗原部分または抗原成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書中において、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、全長抗体の一つ以上の部分であって、該抗体が結合するのと同じ抗原に結合する能力を保持する、上記全長抗体の一つ以上の部分を指す。
【0042】
本明細書中において、用語「免疫グロブリン(immunoglobulin、immune globulin)」、「免疫グロブリン分子」および「IG」は、(1)抗体、(2)抗体の抗原結合フラグメント、および(3)抗体の誘導体(それぞれ本明細書中で定義される)を包含する。本明細書中に記載されるように、免疫グロブリンは、(例えば、対象への投与のために)プールされた血漿組成物から調製され得る(例えば、プールされた血漿組成物から分画、単離、精製、濃縮などされ得る)。本明細書中において、用語「静脈内注射用免疫グロブリン(IVIG)」は、多数(例えば、250人、500人、または1000人以上)のランダムなヒトドナーの血漿から調製される従来の免疫グロブリン(例えば、HIZENTRA、Immune Globulin Subcutaneous、CSL Behring)を指す。一方で、(例えば、本明細書中および実施例において記載されるような)用語「抗肺炎球菌免疫グロブリン」または「抗肺炎球菌免疫IVIG」または「抗肺炎球菌高度免疫グロブリン」は、対照サンプルと比較して、高められた抗肺炎球菌特異的オプソニン抗体力価を含む、本発明の方法に従って血漿ドナー(例えば、ヒト血漿ドナー)(例えば、本明細書に記載される方法に従って、一つ以上の抗肺炎球菌ワクチンを接種された多数(例えば、250人、500人、または1000人以上)のヒト血漿ドナー(例えば、健康なヒト血漿ドナー))から調製される免疫グロブリンを指す。
【0043】
用語「オプソニン貪食作用抗体」および「オプソニン抗体」は、細菌または他の異物(例えば、細胞または細胞プロダクト)が食細胞の作用を受けやすい状態に活発にさせるように機能する抗体(例えば、オプソニン抗体は、変化する際に、細菌をコーティングして、細菌細胞をコーティングするオプソニン抗体と食細胞の表面に存在する受容体との間の相互作用によって、細菌細胞が食細胞に反応しやすい状態にさせる)を指すために、本明細書中では互換的に使用される。例えば、オプソニン抗肺炎球菌抗体は、肺炎連鎖球菌の表面に結合して、該表面を覆い、そして該細菌が食細胞による食作用/殺傷を受けやすい状態にさせる抗体である。
【0044】
用語「オプソニン貪食作用抗体力価」および「オプソニン抗体力価」は、本明細書中において、(例えば、感染および/または疾患に対する防御と相関する)機能的に活性なオプソニン貪食作用抗体の力価を指すために互換的に使用される。例えば、(例えば、本明細書中に記載されるOPKアッセイによって測定される)オプソニン抗肺炎球菌抗体力価は、サンプル中の肺炎連鎖球菌に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体の力価(例えば、(例えば、ELISAアッセイによって測定される、)サンプル中に存在する肺炎連鎖球菌に結合可能な抗体の総量とは独立し、かつ異なる力価)である。
【0045】
本明細書中において、用語「高度免疫グロブリン」は、特定の生物(例えば、肺炎連鎖球菌)に対して高力価の抗体(例えば、オプソニン抗体)を有するドナーの血漿から調製される免疫グロブリンを指す。例えば、本明細書中において、「抗肺炎球菌高度免疫グロブリン」は、肺炎連鎖球菌に結合可能な抗体の総力価または量とは関係なく(例えば、該総力価または量から独立し、かつそれとは異なる)高められたオプソニン抗肺炎球菌抗体力価を含む免疫グロブリンである。
【0046】
本明細書中に記載されるように、高められたオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価は、(i)肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも約55%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対する力価にであって、対照サンプル中に存在する、上記血清型に対するオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、または10倍以上である力価であるか、(ii)血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23から選択される肺炎連鎖球菌血清型の70%以上に対して特異的な力価であって、対照サンプル中に存在する同じ肺炎連鎖球菌血清型に対して特異的なオプソニン抗体の力価よりも2倍以上(例えば、3~25倍以上)高い力価であるか、(iii)本明細書に記載されるオプソニン貪食殺傷アッセイにより測定される(肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対して、)1:64から1:8192までの間の力価であるか、または、(iv)例えば、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから選択される肺炎球菌血清型の少なくとも約55%以上に対するオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価について、対照サンプルに存在するオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、または5倍以上高い力価である(すなわち、対照サンプルと比較して、上記肺炎球菌血清型の7/12、8/12、9/12、10/12、11/12、または、12/12に対して特異的なオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価が少なくとも2倍、3倍、4倍、または5倍以上増加している力価)。本発明は、利用される対照サンプルの種類によって限定されることはない。例えば、一実施形態において、対照サンプルは、ワクチン接種前の一人または複数人の健康なヒト血漿ドナーから(例えば、ヒト血漿ドナーのオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価の免疫付与前レベルが免疫付与後のオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価の増加を測定するためのベースラインとして使用されるように)調製される免疫グロブリンである。別の実施形態において、対照サンプルは、抗肺炎球菌ワクチンを接種されていない1000以上のランダムヒト血漿ドナーから得られた血漿サンプルの混合物から(例えば、ワクチン非接種ヒト血漿ドナーのオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価のレベルが本発明の方法に従ってワクチン接種されたヒト血漿ドナー中に存在するオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価の増加を測定するためのベースラインとして使用されるように)調製される免疫グロブリンである。当業者は、他の対照サンプルも利用され得ることを理解する。高められたオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価はまた、殺菌を測定するために使用される力価、および/または、肺炎連鎖球菌感染症に対する防御のための免疫グロブリン製剤の有効性を予測するための正確な代用物として使用される力価であり得る。
【0047】
本明細書中において、用語「薬学的に許容可能な」は、生理学的に許容でき、かつ、ヒトに投与された場合、許容できないアレルギー反応または同様の有害反応を通常生じない分子実体および組成物を指す。
【0048】
PNEUMOVAX(Merck Sharp&Dohme Corp、North Wales、PA)は、肺炎球菌莢膜多糖類の精製品からなる肺炎球菌多糖類ワクチンを指す。PPSV23は、以下の23種類の肺炎球菌細菌由来の多糖類抗原を含む:1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19F、19A、20、22F、23F、および33F。PPSV23は、一用量当たり25μgの各抗原を含み、防腐剤として0.25%のフェノールを含む。
【0049】
PREVNAR-13(Wyeth Pharmaceuticals、Collegeville、PA)は、CRM197として知られるジフテリア毒素の非毒性変異体に結合した肺炎連鎖球菌の13血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、19A、19F、18C、および23F)の精製された莢膜多糖類を含む肺炎球菌結合型ワクチンを指す。一用量の0.5ミリリットル(mL)PCV13は、12の血清型の各々からの約2.2マイクログラム(μg)の多糖および血清型6Bからの約4.4μgの多糖を含み、CRM197の総濃度が約34μgである。上記ワクチンは、0.02%ポリソルベート80(P80)、リン酸アルミニウム(AlPO4)アジュバントとして0.125ミリグラム(mg)のアルミニウム、および5mLのコハク酸緩衝液を含む。上記ワクチンはチメロサール防腐剤を含まない。
【0050】
本明細書中において、用語「抗体サンプル」は、ドナー(例えば、天然供給源)から採取されるか、またはドナーによって提供されるか、または合成、組換え、他のインビトロ供給源から得られるか、または市販の供給源から得られる抗体含有組成物(例えば、流体(例えば、血漿、血液、精製抗体、血液または血漿画分、血液または血漿成分など))を指す。上記抗体サンプルは、ドナーの病原菌暴露/抗原暴露(例えば、自然暴露またはワクチン接種による暴露)に基づいて、または合成、組換え、またはインビトロ環境で産生されるように操作された抗体に基づいて、特定の抗体または抗体セットの高められた力価を示し得る。本明細書において、抗体Xの力価が高められた抗体サンプルは、「X上昇抗体サンプル」と呼ぶ。例えば、肺炎連鎖球菌に対する抗体の力価が高められた抗体サンプルは、「肺炎連鎖球菌上昇抗体サンプル」と呼ばれる。
【0051】
本明細書中において、用語「単離抗体」または「単離結合分子」は、抗体または結合分子の供給源において、それが通常結びつく少なくとも一つの混入物質から識別され、分離される抗体または結合分子を指す。単離抗体の例としては、以下の抗体が挙げられる。(1)その抗体の天然状態において、該抗体に付く一つ以上の天然結合成分と会合していない抗体、(2)その抗体の起源由来の他のタンパク質を実質的に含まない抗体、または、(3)組換え技術、インビトロ、または無細胞で発現されるか、または、合成的に産生され、産生された環境から取り出される抗体。
【0052】
本明細書中において、用語「プールされた血漿」、「プールされた血漿サンプル」および「プールされた血漿組成物」は、2つ以上の血漿サンプルの混合物および/または該混合物から調製される組成物(例えば、免疫グロブリン)を指す。プールされた血漿中の特定の抗体または抗体セットの高められた力価は、該プールされた血漿を構成する抗体サンプルの高められた力価を反映する。例えば、血漿サンプルは、(例えば、肺炎球菌ワクチンを用いて)ワクチン接種された対象から得ることができ、その結果、固体群全体において確認される抗体レベルと比較して、病原体(肺炎連鎖球菌)に対して高い抗体力価(例えば、高い全結合抗体力価および/または高いオプソニン抗体力価)を有する。血漿サンプルをプールすると、(例えば、特定の病原体に対して特異的な抗体の力価が高められている)プールされた血漿組成物が生成される。本明細書において、抗体X(例えば、「X」は微生物病原体である)の力価が高められたプールされた血漿を「X上昇抗体プール」と呼ぶ。例えば、肺炎連鎖球菌に対する結合抗体の力価が高められたプールされた血漿は、「肺炎連鎖球菌上昇抗体サンプル」と呼ばれる。プールされた血漿組成物は、本技術分野において既知の方法(例えば、分画、精製、単離など)によって、(例えば、後で対象に投与される)免疫グロブリンを調製するのに用いることができる。本発明は、プールされた血漿組成物および該プールされた血漿組成物から調製される免疫グロブリンの両方が予防的および/または治療的利点を対象に提供するために、該対象に投与され得ることを実現する。したがって、用語「プールされた血漿組成物」は、プールされた血漿/プールされた血漿サンプルから調製される免疫グロブリンを指し得る。
【0053】
本明細書中において、用語「スパイクされた抗体プール」は、合成的に、組換え的に、または他のインビトロ手段を介して産生される、抗体または他の免疫グロブリンでスパイクされたか、または、抗体または他の免疫グロブリンと組み合されたプールされた血漿を指す。
【0054】
本明細書中において、用語「精製された」または「精製する」は、タンパク質(例えば、抗体)または核酸のような、目的の成分から混入物質の一部を除去する任意のプロセルの結果を意味する。これにより、サンプルにおける精製成分の割合が増加する。
【0055】
本明細書中において、用語「免疫治療剤」は、哺乳動物の免疫反応(例えば、特異的または一般的反応)を増強できる化学物質または生物学的物質を指す。本明細書中において、用語「ドナー」は生物学的サンプル(例えば、血液、血漿など)を提供する主体(対象(subject))を指す。(例えば、(例えば、FDA血液製剤諮問委員会によって発行された)血液製剤の安全性基準を評価するための米国食品医薬品局(FDA)のガイドラインを使用して、)ドナー/ドナーサンプルは、特定の病原体の有無についてスクリーニングされ得る。例えば、FDAガイドラインに従って、一つ以上の血液由来病原体(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1(HIV-1)、HIV-2;梅毒トレポネーマ(梅毒);熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、サルマラリア原虫(マラリア);B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV);プリオン(クロイツフェルト・ヤコブ病);西ナイルウイルス;パルボウイルス;クルーズトリパノソーマ;SARSコロナウイルス(SARS);ワクシニアウイルス、またはFDAなどの規制機関によって通常スクリーニングされる、または、スクリーニングされることが推奨される他の病原体)が存在しないことを検証するために、ドナー/ドナーサンプルはスクリーニングされ得る。
【0056】
本明細書中において、用語「免疫刺激量」は、免疫反応を刺激することができるワクチン(例えば、抗肺炎球菌ワクチン)の量を指す。免疫反応は、外来の実体に反応して、免疫グロブリンまたは抗体の体内産生をもたらす一連の生物学的効果を含む。従って、免疫反応は、B細胞表面Ig受容体分子の刺激による、インビボでの、または、培養におけるB細胞の活性化を指す。免疫反応の測定は、当業者の通常の技術の範囲内のものであり、P.Tijssen、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Practice and Theory of Enzyme Immunoassays、(Burdon&van Knippenberg eds、3rd ed、1985)Elsevier、New YorkおよびAntibodies:A Laboratory Manual、(Harlow&Lane eds、1988)、Cold Spring Harbor Laboratory Pressにより連続して記載された方法だけではなく、向流免疫電気泳動法(GIEP)、放射免疫測定法、放射性免疫沈降法、酵素免疫測定法(ELISA)、ドットブロットアッセイ、およびサンドイッチアッセイ(米国特許第4,376,110号および第4,486,530号参照)を用いた、抗体レベルの測定を含む(これらの全ては、参考として援用される)。上記免疫反応の測定はまた、抗体産生に先行し得るか、または抗体産生の増加をシグナル伝達し得るB細胞活性化事象の検出または判定を包含する。このような測定には、B細胞増殖アッセイ、リン酸化アッセイ、細胞質内遊離カルシウム濃度のアッセイ、および本技術分野において既知のB細胞活性化を判定する他の方法が含まれる。代表的なアッセイは、以下の文献において提供されている:Mongini et al.、J.Immunol.159:3782-91(1997);Frade、et al.、BBRC 188:833-842(1992);Tsokos et al.、J.Immunol.144:1640-1645(1990);Delcayre et al.、BBRC159:1213-1220(1989);およびNemerow et al.、J. Immunol.135:3068-73(1985)。これらの各々は、参考として援用される。好ましい実施形態において、本発明の実施は、免疫反応の促進、増強、または刺激を含む。これらの作用は、以前には存在しなかった免疫反応を起こすること;所望の免疫反応を最適化または増加させること;増加したアイソタイプスイッチング、記憶反応、またはそれらの両方を特徴とする二次反応を起こすまたは増加させること;病原体に対する統計的に増加した免疫防御効果を提供すること;低減用量または制限用量の抗原から、同等以上の体液性免疫反応、または他の程度のB細胞活性化を発生させること;同等量の抗原に応えて、増加した体液性免疫反応、または他の程度のB細胞活性化を発生させること;または、インビボまたはインビトロでのB細胞活性化に対する親和性閾値を低下させることを指す。好ましくは、免疫刺激量は、対象(例えば、ドナー)における免疫反応を刺激することができるワクチンの量を指し、そして、(例えば、本明細書中に記載される組成物および方法で治療される対象における肺炎球菌感染症の治療的および/または予防的処置のために)上記対象から本発明の組成物および方法において使用するための血漿、血清または他の血液成分が採取される。
【0057】
用語「バッファー」または「緩衝剤」は、溶液に添加された場合、該溶液をpHの変化に耐えさせる材料を指す。
【0058】
用語「還元剤」および「電子供与体」は、第2の材料の原子のうちの一つ以上の原子の酸化状態を還元するために第2の材料に電子を供与する材料を指す。
【0059】
用語「一価塩」は金属(例えば、Na、K、またはLi)が溶液中で正味1+電荷(すなわち、電子よりも一つ多い陽子)を有する任意の塩を指す。
【0060】
用語「二価塩」は、金属(例えば、Mg、Ca、またはSr)が溶液中で正味2+電荷を有する任意の塩を指す。
【0061】
用語「キレーター」または「キレート剤」は、金属イオンに結合するために利用可能な孤立電子対を有する原子を一つより多く有する任意の材料を指す。
【0062】
用語「溶液」は、水性混合物または非水性混合物を指す。
【0063】
本明細書中において、用語「アジュバント」は、免疫反応を刺激することができる任意の物質をいう。いくつかのアジュバントは、免疫系の細胞の活性化を引き起こすことができる(例えば、アジュバントは、免疫細胞にサイトカインを産生および分泌させることができる)。免疫系の細胞の活性化を引き起こすことができるアジュバントの例としては、QS21(HPLD分画で21番目のピークに溶出する糖脂質;Aquila Biopharmaceuticals、Inc.、Worcester、MA.)のような、キラヤ・サポナリア(Q.saponaria)の木の樹皮から精製されるサポニン;ポリ(ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン(PCPPポリマー;Virus Research Institute、USA);モノホスホリル脂質A(MPL;Ribi ImmunoChem Research、Inc.、Hamilton、Mont.)、ムラミルジペプチド(MDP;Ribi)、および、トレオニルムラミルジペプチド(t-MDP;Ribi)のようなリポ多糖類の誘導体;OM-174(脂質Aに関連するグルコサミン二糖;OM Pharma SA、Meyrin、Switze rland);コレラ毒素(CT)、およびリーシュマニア伸長因子(精製したリーシュマニアのタンパク質;Corixa Corporation, Seattle,Wash.)が挙げられるが、これらに限定されない。従来のアジュバントは、本技術分野において周知であり、例えば、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム塩(「ミョウバン」)を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、(例えば、Th1および/またはTh2型反応に対して免疫反応を歪曲するために)一つ以上のアジュバントと共に投与される。いくつかの実施形態において、US2005158329;US2009010964;US2004047882;またはUS6262029(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるアジュバントが利用される。
【0064】
本明細書中において、用語「免疫反応を誘導するのに有効な量」(例えば、肺炎球菌ワクチンの免疫反応を誘導するのに有効な量)は、(例えば、対象に投与される場合に)対象において免疫反応を刺激する、発生させるおよび/または引き起こすために必要とされる投薬レベルを指す。有効量は、一回以上の(例えば、同じまたは異なる経路を介する)投与、塗布、または投薬で投与することができ、特定の剤形または投与経路に限定されることを意図しない。
【0065】
本明細書中において、用語「前記対象が免疫反応を生じるような条件下」は、(例えば、先天性または後天性)免疫反応の任意の定性的または定量的な誘導、生成、および/または刺激を指す。
【0066】
本明細書中において、用語「免疫反応」は、対象の免疫系による反応を指す。例えば、免疫反応は、Toll様受容体(TLR)活性化、リンホカイン(例えば、サイトカイン(例えば、Th1またはTh2型サイトカイン)またはケモカイン)の発現および/または分泌、マクロファージ活性化、樹状細胞活性化、T細胞活性化(例えば、CD4+またはCD8+T細胞)、NK細胞活性化、および/またはB細胞活性化(例えば、抗体生成および/または分泌)における検出可能な変化(例えば、増加)を含むが、これらに限定されない。免疫反応のさらなる例としては、(i)MHC分子へ免疫原(例えば、抗原(例えば、免疫原性ポリペプチド))が結合して、細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)反応を誘発すること、(ii)B細胞反応(例えば、抗体産生)、および/または、Tヘルパー・リンパ球反応、および/または、免疫原性ポリペプチドが由来する抗原に対する遅延型過敏症(DTH)反応を誘発すること、(iii)免疫系の細胞(例えば、任意の発達段階(例えば、形質細胞)の例えば、T細胞、B細胞)の増殖(例えば、細胞集団の増殖)、ならびに(iv)抗原提示細胞による抗原のプロセシングおよび提示の増加が挙げられる。免疫反応は、対象の免疫系が外来性として認識する免疫原(例えば、微生物(例えば、病原体)由来の非自己抗原、または外来性として認識される自己抗原)に対するものであり得る。従って、本明細書中で使用される場合、「免疫反応」は、先天性免疫反応(例えば、Toll受容体シグナル伝達カスケードの活性化)、細胞媒介性免疫反応(例えば、T細胞(例えば、抗原特異的T細胞)および免疫系の非特異的細胞によって媒介される反応)、および体液性免疫反応((例えば、血漿、リンパ、および/または組織液への抗体の生成および分泌を介する)、例えば、B細胞によって媒介される反応)を含むが、これらに限定されない、任意の種類の免疫反応をさすものと理解されるものである。用語「免疫反応」は、抗原および/または免疫原に反応する対象の免疫系の能力のすべての態様(例えば、免疫原(例えば、病原体)に対する初期反応ならびに適応免疫反応の結果である後天性(例えば、記憶)反応の両方)を包含することを意図している。
【0067】
本明細書中において、用語「薬学的に許容可能な担体」は、リン酸緩衝食塩水、水、および種々のタイプの湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、ラウリル硫酸ナトリウム、等張性および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、ポリエチルグリコール、他の天然および非天然に存在する担体などを含むが、これらに限定されない、任意の標準的な薬学的担体をいう。上記組成物はまた、安定剤および防腐剤を含むことができる。担体、安定剤およびアジュバントの例は、本技術分野において記載されており、既知である(例えば、Martin、Remington’s Pharmaceutical Sciences、15th Ed、Mack PublCo.、Easton、Pa(1975)参照(参照により本明細書に組み込まれる))。
【0068】
本明細書中において、用語「薬学的に許容可能な塩」は、ターゲットの対象において生理学的に許容される本発明の組成物の(例えば、酸または塩基との反応によって得られる)任意の塩を指す。本発明の組成物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基由来であり得る。酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。シュウ酸のような他の酸は、それら自体は薬学的に許容されないが、本発明の組成物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において使用され得る。塩基の例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NW (式中、WはC1-4アルキルである)の化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
塩の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、ウンデカン酸塩など。塩の他の例には、Na、NH 、およびNW (式中、WはC1-4アルキルである)などの適切なカチオンを用いて構成された本発明の化合物の陰イオンが含まれる。治療的使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容可能であるものと想定される。しかし、薬学的に許容されない酸と塩基との塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において使用され得る。
【0070】
治療的使用のために、本発明の組成物の塩は、薬学的に許容可能であるものと想定される。しかし、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される組成物の調製または精製において使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0071】
肺炎連鎖球菌は、世界中で死および病的状態の主因となっている。その主要な毒性因子は、莢膜多糖類である。老齢および(例えば、本明細書中に記載される原発性免疫不全から生じる)抗体免疫不全は、肺炎球菌感染症の主要な危険因子である。世界保健機関(WHO)は、毎年160万人が肺炎球菌疾患で死亡すると推定している。90を超える既知の莢膜血清型の大部分は重篤な疾患を引き起こし得るが、限られた数の既知の莢膜血清型が侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)の症例の大部分を引き起こす。肺炎連鎖球菌に対する免疫は、補体および血清型特異的オプソニン抗体の存在下での細菌の食作用に媒介される。大規模臨床試験における異なる肺炎球菌ワクチンに対する血清学的反応の評価により、新しいワクチンをリリースするために必要とされる防御の関連要因が提供された。IPD疾患に対する防御を予測するために、WHOは、肺炎球菌結合型ワクチン(すべての血清型)に対して0.2μg/mL~0.35μg/mLの基準閾値を推奨している。また、多糖類ワクチンについて現在のガイドラインは、1.3μg/mLである。防御の指標であり、臨床上の有効性と相関するものとしてFDAによって受け入れられている、より正確な代理マーカーは、オプソニン抗体力価である。オプソニン抗体力価は、ワクチンの試用の必要性を置き換えてしまったほど十分に正確であることが分かっている。例えば、ワクチン接種された個体における1:8のオプソニン力価は、一般に、肺炎連鎖球菌の種々の血清型に対する防御の関連要因であるとみなされる。ワクチンが特定の血清型に対して1:8のオプソニン力価を誘発する場合、ワクチン接種されていない個体と比較してワクチン接種された個体における感染症の数が減少することを実証する臨床試験がない場合においても、そのワクチンは、臨床的に有効であるとみなすことができる。
【0072】
原発性免疫不全(PID)は、感染症に対する感受性増大の臨床結果を伴う、先天性または適応免疫系の個々の構成要素の欠損を特徴とする200を超える遺伝性疾患群である。最も頻繁な免疫不全は抗体欠損症である。抗体欠損症(aka低ガンマグロブリン血症(aka hypogammaglobinaemia))を有する患者の主な臨床的特徴は、最も頻出する検出菌である肺炎連鎖球菌による気道の反復性感染症である(例えば、FriedおよびBonilla、Clin Microbiol Rev.2009;22:396-414;Busse他、J Allergy ClinImmunol.2002;109:1001-1004参照)。
【0073】
少なくとも過去数十年間、ヒト多価静脈内免疫グロブリン(IVIG、本明細書中では「従来のIVIG」とも呼ぶ)の長期投与が、免疫不全(例えば、抗体欠乏)患者において感染症の重症度および頻度を低減させるための主要な治療であった(例えば、Salehzadeh他、J Microbiol Immunol Infect 2010,43(1):11-17;ファーブル他、Allergy 2005 60:385-390参照)。IVIGの注入は、免疫グロブリンG(IgG)濃度ピークを急速にもたらし、その後、IgGは経時的に減少する。次の注入の直前のIgGレベル(すなわち、トラフレベル)を監視して、特定の注入レジメンの妥当性を評価する。一般に、IVIGで治療されたPID患者は、3週間毎または4週間毎に注入を受ける。3週間毎または4週間毎のIVIG注入は一般に、PID患者における重篤な下気道感染症の予防に成功しているが、治療中に、合併症および関連疾病を伴う上気道感染症に悩み続けるPID患者がかなりの割合存在する。これは、IVIGを受けている免疫不全患者の大部分が許容可能なレベルの総免疫グロブリンならびに許容可能なレベルの抗肺炎連鎖球菌IgGをトラフで有するように見えるという事実にもかかわらず、である(例えば、Favre et al.、Allergy 2005 60:385-390参照)。さらに、抗生物質が使用されてきたが、効果がないことがよくある。
【0074】
従って、外因性プールヒトIVIGの投与は、免疫不全(例えば、抗体欠損症)を有する患者に対して臨床医学において重要な治療であり、そして重篤な下気道感染症の発生を予防してきたように見える。しかし、全く対照的に、従来のIVIG療法は、PID患者において発生する、生命への脅威が少ない(例えば、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる)上気道感染症のかなりの発生の予防または治療に失敗している(例えば、Favre et al.、Allergy 2005 60:385-390;Simao-Gurge他、Allergo Immnopathol 2017,45:55-62参照)。すなわち、従来のIVIGの定期的な注入によって達成される総IgG濃度は、PID患者における重篤な下気道感染を予防するが、PID患者においてあまり臨床的に重篤ではない上気道感染症からの実質的かつ顕著な病的状態が依然として存在する。上記上気道感染症は、肺炎連鎖球菌によって引き起こされ、そこから、顕著な健康合併症、生活の質の低下、および感染を制御する試みにおいて患者に広域抗生物質の見境ない使用を生じてしまうものである。
【0075】
肺炎連鎖球菌によって引き起こされる感染症を治療するための組成物および方法が本明細書に開示される。特に、本発明は、肺炎球菌感染症を予防または治療するためのヒト高度免疫グロブリンおよびその組成物を提供する。本発明は、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する高度免疫グロブリンを産生する方法、上記高度免疫グロブリンを含有する組成物、および肺炎球菌感染症の予防および治療のための上記組成物の使用方法を提供する。本発明はさらに、免疫不全対象に対する、本発明の高度免疫グロブリン組成物(例えば、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する組成物)の投与によって、該免疫不全対象における肺炎球菌感染症(例えば、上気道感染症(例えば、気管支炎、耳炎、副鼻腔炎など))を予防または治療する方法を提供する。
【0076】
本明細書(例えば、実施例)において詳細に記載されるように、本発明は、従来の免疫グロブリン製剤ならびに他のIVIG製剤(例えば、他の高度免疫IVIG製剤)とは驚くほど、かつ、有意に異なる、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する新規の高度免疫グロブリン組成物を提供する。特に、実施例2~4に記載されるように、本発明の方法に従って調製される高度免疫グロブリンは、組成物中に存在する(例えば、ELISAによって測定される)結合抗肺炎球菌抗体の総量とは無関係に、多数の肺炎連鎖球菌血清型に対して機能的かつ広範に反応し、インビトロで肺炎連鎖球菌の食作用および殺傷を増強する(例えば、オプソニン貪食作用を有する)高められた力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を有することが、驚くべきことに、見出された。すなわち、本発明の実施形態の開発中に行われた実験は、肺炎連鎖球菌の莢膜多糖類に対する総IgG結合抗体が、ワクチン接種された宿主の血清から調製される免疫グロブリン中に存在する機能的オプソニン抗体の量と相関せず、その量を予測しないことを予想外に特定した(例えば、実施例2~4参照)。従って、低レベルの結合抗体が、高レベルの防御オプソニン抗体と関連し得、そしてその逆もまた同様である。従って、免疫グロブリン製剤のみにおける全抗体レベルの測定は、その製剤の防御有効性を予測しない、つまり、上記総抗体レベルは、上記製剤の防御有効性と相関しない。従って、一実施形態において、本発明は、(例えば、ワクチン接種ドナー由来の血漿または該血漿から調製された免疫グロブリン中に存在する、全抗肺炎球菌IgG抗体力価とオプソニン抗肺炎球菌抗体の力価との間の相関関係の欠如の特定により、)IgGの総量のみが分かっている血漿および/または免疫グロブリン組成物ではなく、所望の機能的オプソニン抗体力価を含有する血漿および/または免疫グロブリン組成物の特定および特性評価を実現する。
【0077】
さらに、血清型特異的オプソニン力価における顕著な変動性が従来のIVIGの種々の市販ロットにおいて見出された(例えば、図9A~9L、各図におけるサンプルA~Iは市販のIVIGを表す)。そして、一つの血清型に対する力価の上昇は、他の血清型のいずれに対する力価の上昇をも予測しなかった、すなわち、他の血清型のいずれに対する力価の上昇とも相関しなかった。これは、任意の個々の従来のIVIGにおける個々の強化反応が、肺炎連鎖球菌に対する一般的な増強免疫反応を反映せず、むしろ非常に特異的な血清型に対する散発的な増強反応を反映したことを示した(例えば、Malgorzata他、Clin Diagn Lab Immunol 2004,11(6):1158-1164参照)。極めて対照的に、本発明に従って免疫付与されたドナーから調製された免疫グロブリン内で観察されたオプソニン抗体力価は、例外なく全ての血清型に対して増強されたことが認められた(例えば、実施例5、図8、および図9A~9L、本発明のサンプルHIG-「高度免疫グロブリン」参照)。血清型に依存して、免疫付与されたドナー由来の免疫グロブリンにおけるオプソニン抗肺炎球菌抗体力価は、種々の異なる市販ロットの免疫グロブリンと比較して、3~256倍増加した(例えば、実施例5および図8、高度免疫ドナー血清と対比した市販/従来のIVIGサンプルA~I参照)。したがって、いくつかの実施形態において、高められたオプソニン抗肺炎球菌抗体力価を含有する組成物(例えば、血液、血漿、および/または免疫グロブリン組成物)を生成するための本発明の組成物および方法は、多数の肺炎球菌血清型(例えば、9、10、11、12、13、14、または、15以上の血清型)に対して特異的なオプソニン抗肺炎球菌抗体力価、および/または従来の市販の免疫グロブリンと比較して有意に高められた(例えば、3~256倍以上)オプソニン抗体力価を含む不均一組成物を提供する。
【0078】
したがって、本明細書に開示されるワクチン接種ドナー血漿由来の血漿または該血漿から調製される免疫グロブリン中に存在する総抗肺炎球菌結合IgG抗体力価とオプソニン抗肺炎球菌抗体の力価との間の不一致の特定により、本発明のさらなる目的は、((例えば、総抗肺炎球菌結合抗体力価に関わらず)例えば、少なくとも1:64~約1:8192の)所望の高められた機能的オプソニン抗肺炎球菌抗体力価を含む血漿および/または免疫グロブリン組成物(例えば、抗肺炎球菌高度免疫グロブリン)を提供することである(例えば、高められた力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を有するものと特定された、ワクチン接種ドナー血漿および/または免疫グロブリンから採取された血漿および/または免疫グロブリンを(i)該血漿および/または免疫グロブリン同士で互いにプールすること、または、(ii)高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体ドナー血漿および/または免疫グロブリンと共にプールされた場合に、対照サンプルと比較して、総オプソニン力価を望ましくないレベルに希釈しない、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を有しない場合があるワクチン接種ドナー血漿および/または免疫グロブリンと共にプールすることにより、上記血漿および/または免疫グロブリン組成物を提供すること)。
【0079】
また、本開示は、(例えば、市販の標準/従来のIVIGを生成するために使用される)正常ドナーの標準/従来の免疫グロブリンプールは複数の血清型の肺炎連鎖球菌に対して確実かつ一貫性がある高レベルのオプソニン抗体を有さないが、一方で、複数の血清型に対する、広範に反応する、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する本発明の免疫グロブリン組成物(例えば、抗肺炎球菌高度免疫グロブリン)は、静脈内投与された場合、食細胞による食作用および複数の肺炎連鎖球菌血清型の殺傷を促進する特異的な機能的抗体を直ちに提供するという発見をも記載する。本発明は、本発明の高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物内に存在する機能的オプソニン抗体が上記オプソニン食作用および/または殺傷を促進する肺炎連鎖球菌の血清型または血清型の数によって限定されない。実際に、本発明は、肺炎連鎖球菌の血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fの12の血清型のうちの少なくとも9の血清型、10の血清型、11の血清型、または12の血清型のすべてに対して広範に反応する、オプソニン抗体を含む、本発明の組成物(例えば、高度免疫血漿組成物および/または高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物)を提供する(例えば、実施例2~5参照)。すなわち、本発明は、(例えば、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、および23Fから選択される肺炎球菌血清型の少なくとも75%に対して、)対照サンプルに存在するオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価よりも少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、または10倍以上高い、高められたオプソニン抗肺炎球菌特異的抗体力価を含む組成物および該組成物を得る方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物を提供する。上記高度免疫グロブリン組成物は、上記免疫グロブリンが由来する一以上の血漿ドナーに免疫付与するために利用されるワクチンまたは複数のワクチン中に存在する各血清型の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、95%、または98%以上に対して高力価の広範に反応するオプソニン抗体を含む。
【0080】
本発明のさらなる利点および目的は、(例えば、肺炎連鎖球菌の成長を阻害すること、および/または、患者の血液から肺炎連鎖球菌を除去することによって)該患者(例えば、免疫不全患者(例えば、PIDD患者))における肺炎球菌感染症を(例えば、治療的に、および/または、予防的に)処置するために、肺炎連鎖球菌に対して特異的な広範に反応するオプソニン抗体を含有する高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物を上記患者に対して提供することである。また、本発明は、(例えば、患者の血液からの肺炎連鎖球菌の除去を向上すること、または、高めることによって)該患者(例えば、免疫不全患者(例えば、PIDD患者))における肺炎球菌感染症を治療するために、肺炎連鎖球菌に対して特異的な広範に反応するオプソニン抗体を含有する高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物をも上記患者に対して提供する。さらに、本発明は、従来のIVIG治療では予防できない患者(例えば、免疫不全患者(例えば、PIDD患者))における上気道感染症を予防するために、肺炎連鎖球菌に対して特異的な広範に反応するオプソニン抗体を含有する高度免疫グロブリン(例えば、IVIG)組成物をも上記患者に対して提供する。本発明は、予防および/または治療される上気道感染症の種類によって限定されない。また、本発明は、鼻副鼻腔炎(副鼻腔炎)、中耳炎、咽頭炎、喉頭蓋炎、喉頭気管炎、および喉頭気管気管支炎を含み得るが、これらに限定されない。同様に、組成物および該組成物を使用する(例えば、投与する)方法は、咳、くしゃみ、鼻汁、鼻づまり、鼻水、発熱、のどのかゆみまたは痛み、および鼻呼吸を含むが、これらに限定されない、上気道感染症の徴候または症状を予防および/または治療する際に使用される。
【0081】
本発明は、(例えば、予防的に、および/または、治療的に)処置される連鎖球菌感染症の種類によって限定されない。実際に、細菌の連鎖球菌群によって引き起こされる任意の連鎖球菌感染症が処置され得る。(血清型として知られる、)肺炎連鎖球菌(肺炎連鎖球菌)細菌には90を超える異種系統があり、そのうちのいくつかは他のものよりも重篤な感染症を引き起こす。肺炎球菌感染症の症状は、感染症の種類によって異なる可能性がある。一般的な症状には38℃ (100.4F)の高温(発熱)、疼痛および/または頭痛が含まれる。肺炎球菌感染症は、通常、(1)非侵襲性肺炎球菌感染症(これらは主要な器官または血液の外部で発生し、それほど重篤ではない傾向がある)と(2)侵襲性肺炎球菌感染症(これらは主要な器官または血液の内部で発生し、より重篤である傾向がある)との2つのカテゴリーのうちの1つに分類される。本発明の組成物および該組成物を使用する方法は、非侵襲性肺炎球菌感染症と侵襲性肺炎球菌感染症の両方を(例えば、治療的および/または予防的に)処置する際に使用される。
【0082】
一実施形態において、本発明は、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有するプールされた血漿サンプル(例えば、複数のドナー(例えば、一つ以上の肺炎球菌ワクチンを接種されたドナー)由来の血漿)を含む組成物を得るための組成物および方法を提供する。従って、本発明の目的は、高力価のオプソニン抗肺炎球菌抗体を含有する組成物(例えば、血液、血漿、および/または免疫グロブリン組成物)を生成する方法を提供することである。一実施形態において、一人または複数人の健康な成人ヒト対象(例えば、既知の内科的疾患を有さないヒト対象)に、肺炎球菌免疫原、組換え肺炎球菌タンパク質、または、それらの組み合わせを投与する。いくつかの実施形態において、肺炎連鎖球菌免疫原は、肺炎連鎖球菌細胞膜糖(例えば、多糖)である。いくつかの実施形態において、肺炎連鎖球菌免疫原は、(例えば、担体および/またはアジュバント(例えば、タンパク質または他の担体分子)に結合された)結合型ワクチンである。いくつかの実施形態において、肺炎連鎖球菌免疫原は、非結合型ワクチンである。いくつかの実施形態において、上記結合型ワクチンまたは非結合型ワクチンは、(例えば、肺炎連鎖球菌の同数の異なる血清型に由来する)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または、23以上の異なる免疫原を含む。いくつかの実施形態において、上記肺炎連鎖球菌の一つ以上の異なる血清型は、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7A、7B、7C、7D、7E、7F、8、9A~9V、12、14、18C、19A~19F、23A~23F、および25を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記肺炎連鎖球菌の一つ以上の異なる血清型は、特定されている90を超える異なる肺炎連鎖球菌血清型のいずれか一つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、上記一つ以上の異なる肺炎連鎖球菌の血清型が新たに特定される。
【0083】
一人または複数人の健康なヒト対象(例えば、既知の内科的疾患を有さないヒト対象)に、市販の肺炎球菌ワクチン中に存在する肺炎球菌免疫原、組換え肺炎球菌タンパク質、またはそれらの組み合わせを投与できる。本発明は、市販の肺炎球菌ワクチンの種類によって限定されない。実際、肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13またはPREVNAR13、Wyeth Pharmaceuticals、Collegeville、PA)、SYNFLORIX、および/または肺炎球菌多糖類ワクチン(PPSV23またはPNEUMOVAX23、Merck Sharp & Dohme Corp、North Wales、PA)を含むがこれらに限定されない、本技術分野において既知の任意の肺炎球菌ワクチンを利用することができる。一実施形態において、一人または複数人の健康なヒト対象は、第一抗肺炎球菌ワクチンを用いる第一または初回ワクチン接種を受け、その後、上記第一抗肺炎球菌ワクチンまたは第二の異なる抗肺炎球菌ワクチンを用いる追加ワクチン接種を受ける。例えば、一実施形態において、一人または複数人の健康なヒト対象は、第一抗肺炎球菌ワクチン(例えば、PREVNAR)を用いる第一または初回ワクチン接種/免疫付与を受け、次いで、第二抗肺炎球菌ワクチン(例えば、PNEUMOVAX23)を用いる追加ワクチン接種/免疫付与(例えば、初回ワクチン接種/免疫付与後の2週間目、4週間目、6週間目、8週間目、10週間目、12週間目以降)を受ける。連続ワクチン接種後のある時点で(例えば、連続ワクチン接種後2週間目、4週間目、6週間目、8週間目、10週間目、12週間目以降)、血清/血漿を、ワクチン接種された健康なヒト血漿ドナーから採取する。上記ワクチン接種ドナー由来の血漿を(該血漿同士で互いに、および/またはワクチン非接種ドナー由来の血漿と共に)プールし、続いて、上記血漿から免疫グロブリンを採取してもよい。血漿ならびに免疫グロブリンを採取する方法は、当業者に周知である。
【0084】
一実施形態において、本発明は、以下の高度免疫グロブリンを調製する方法を提供する。(i)(肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも約55%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対する)力価について、対照サンプル中に存在する、上記血清型に対するオプソニン貪食作用抗肺炎球菌特異的抗体力価と比較して、高力価(例えば、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、または10倍以上である力価)の肺炎連鎖球菌に対するオプソニン貪食作用抗体を有する高度免疫グロブリン。(ii)血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23から選択される肺炎連鎖球菌血清型の70%以上に対して特異的な力価であって、対照サンプル中に存在する同じ肺炎連鎖球菌血清型に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体の力価よりも2倍以上(例えば、3~25倍以上)高い力価を有する高度免疫グロブリン。(iii)本明細書に記載されるオプソニン貪食殺傷アッセイにより測定される(肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対して、))1:64から1:8192までの間の力価を有する高度免疫グロブリン。上記方法は、(a)18歳~60歳の健康な成人のヒト血漿ドナーに初回多価肺炎連鎖球菌ワクチンで免疫付与を行った後、該初回ワクチンとは異なる追加多価肺炎連鎖球菌ワクチンで免疫付与を行う工程と、(b)上記追加免疫付与の後に血漿ドナーから血漿を採取する工程と、(c)肺炎連鎖球菌に対して高力価のオプソニン貪食作用抗体力価を含むプールされた血漿を得るために、ワクチンを接種された上記ドナー由来の血漿をプールする工程と、(d)上記プールされた血漿から免疫グロブリンを調製する工程とを含む。さらに他の実施形態において、この方法は、得られた上記免疫グロブリンを静脈内注射できるようにする工程を含む。上記免疫グロブリンは溶液中に提供できる。さらに/または、該免疫グロブリンを静脈内注射できるようにするために上記溶液のpHおよびイオン強度を調整することもできる。本発明は、本明細書中に記載される方法に従ってワクチン接種された個体の数によって限定されない。例えば、100人、200人、300人、400人、500人、600人、700人、800人、900人、1000人、1100人、1200人、1300人、または1400人以上の健康な成人ヒト血漿ドナーにワクチン接種し、該ドナーから血漿を採取することができる。一実施形態において、上記プールされた血漿は、1000人以上の異なるワクチン接種された健康な成人ヒト血漿ドナー由来のプールされた血漿から作製される。一実施形態において、上記プールされた血漿は、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも約55%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対するオプソニン貪食作用抗体力価について、対照サンプル(例えば、1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた、血漿または血漿から調製される免疫グロブリン)中に存在する上記血清型に対するオプソニン貪食作用抗肺炎球菌特異的抗体力価と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、または10倍以上であるオプソニン貪食作用抗体力価を含む。別の実施形態において、上記プールされた血漿は、血清型4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23から選択される肺炎連鎖球菌血清型の70%以上に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価について、対照サンプル(例えば、1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた、血漿または血漿から調製される免疫グロブリン)中に存在する同じ肺炎連鎖球菌血清型に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体の力価と比較して、2倍以上(例えば、3~25倍以上)高いオプソニン貪食作用抗体力価を含む。さらに別の実施形態において、上記プールされた血漿は、本明細書に記載されるオプソニン貪食殺傷アッセイにより測定される(例えば、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fの少なくとも50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、または85%以上)に対して、)1:64から1:8192までの間のオプソニン貪食作用抗体力価を含む。本発明はまた、上記の方法に従って調製される高度免疫グロブリンを提供する。このように調製される高度免疫グロブリンは、種々の方法において使用できる。例えば、上記高度免疫グロブリンは、対象における肺炎連鎖球菌感染症を治療する方法(例えば、治療有効量の上記高度免疫グロブリンを上記対象に投与する工程を含む方法)において用いることができる。上記高度免疫グロブリンはまた、対象に免疫療法を提供する方法(例えば、治療有効量の上記高度免疫グロブリンを上記対象に投与する工程を含む方法)においても使用できる。
【0085】
本発明はまた、一実施形態において、肺炎連鎖球菌感染症の予防または治療のために、肺炎連鎖球菌(例えば、血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fの)の少なくとも7つの血清型に対して増強されたオプソニン貪食作用殺菌活性を有する免疫グロブリンを調製する方法を提供する。この方法は、(a)健康な成人のヒト血漿ドナーに多価肺炎連鎖球菌結合型ワクチンで初回免疫付与を行った後、上記初回ワクチンとは異なる多価多糖類肺炎連鎖球菌ワクチンで追加免疫付与を行う工程と、(b)免疫付与された上記血漿ドナーから上記血漿を採取し、プールする工程と、(c)上記プールされた血漿から免疫グロブリンを調製する工程とを含み、上記免疫グロブリンは、対照サンプル中(例えば、1000人以上のランダムなワクチン非接種のヒト血漿ドナーからプールされた血漿から調製される免疫グロブリン中)に存在する上記肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価よりも2倍以上高い、上記肺炎連鎖球菌の少なくとも7つの血清型の各々に対して特異的なオプソニン貪食作用抗体力価を有する。本発明はまた、上記の方法に従って調製される免疫グロブリンを提供する。このように調製される免疫グロブリンは、様々な方法で使用することができる。例えば、上記免疫グロブリンは、対象における肺炎連鎖球菌感染症を治療する方法であって、治療有効量の上記免疫グロブリンを上記対象に投与する工程を含む方法において用いることができる。上記免疫グロブリンはまた、対象に免疫療法を提供する方法であって、治療有効量の上記免疫グロブリンを上記対象に投与する工程を含む方法においても使用できる。
【0086】
本発明の実施形態の開発中に行われた実験により、IVIGで治療されている患者のうちのかなりの人数が、防御的とみなされる濃度未満に低下するトラフ抗肺炎連鎖球菌抗体濃度を有することが見つけられた。例えば、図10に示されるように、従来のIVIGで治療されている原発性免疫不全症を有する患者のかなりの割合(パーセンテージ)が、トラフにおいて防御レベル未満(1.2μg/ml未満)に低下する血清型特異的レベルの総抗肺炎連鎖球菌結合抗体を有するものと判定された。
【0087】
血清から分画および/または単離され、静脈内注入に使用されるすべての免疫グロブリンは、免疫グロブリンが粘膜表面で防御不能となる原因となり得る(例えば、それによって、従来のIVIGを受けている免疫不全患者における上気道感染症の増加につながる)測定可能なIgAを、たとえ含んでいたとしても、ほとんど含有しない。したがって、本発明を実施するためにメカニズムは必要ではなく、かつ、本発明はいかなる特定の作用メカニズムにも限定されないが、いくつかの実施形態において、(例えば、本発明の高度免疫グロブリン組成物において提供される)高濃度の広範に反応するオプソニン抗肺炎連鎖球菌抗体を含有する本発明の高度免疫グロブリン組成物は、粘膜全体にわたって、より高濃度の機能的で広範に反応するオプソニン抗肺炎球菌IgGの勾配拡散を許容する。これにより、粘膜保護でき、そして(例えば、高濃度の広範に反応するオプソニン抗肺炎連鎖球菌抗体を有しないために、勾配拡散がほとんどない、または全くない従来のIVIGであって、その従来IVIGで処置された免疫不全患者において高い発生率で上気道感染症を生じてしまう従来のIVIGと比較して)上気道感染の発生率を減少できる。
【0088】
したがって、本発明は、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7A、7B、7C、7D、7E、7F、8、9A~9V、12、14、18C、19A~19F、23A~23F、および25を含むが、これらに限定されない、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23以上の異なる肺炎連鎖球菌血清型に対して高められた力価の特異的なオプソニン抗体を含む高度免疫グロブリンであって、本明細書に記載される方法のいずれかに従って調製される高度免疫グロブリンを提供する。本発明を実施するためにメカニズムの理解は必要ではなく、かつ、本発明はいかなる特定の作用メカニズムにも限定されないが、ワクチン接種ドナー血清のプールは、(例えば、いかなる血清型間の変動、および/または、プール中の希釈の程度かかわらず)健康な成人ヒト血漿ドナーにワクチン接種するために利用される一つ以上のワクチンに存在する全ての血清型に対する、所望のレベル(例えば、治療的および/または予防的防御レベル)の広範に反応するオプソニンIgGを提供する。したがって、いくつかの実施形態において、血清型特異的オプソニンIgG濃度における個々の差はいずれも、血清をプールすることによって、これらの抗体の防御レベルを損なうことなく標準化され得る。血清からの免疫グロブリンの精製は、いずれの肺炎球菌血清型特異的オプソニンIgGの不足も、その機能的活性の不足のいずれをも引き起こさなかった。
【0089】
精製免疫グロブリンの調製。一実施形態において、高力価の肺炎球菌特異的オプソニン抗体を含有する精製免疫グロブリンが調製される。この文脈における用語「高力価」は、2倍以上の量(例えば、1000個のランダムサンプルの正常集団において確認されるものよりも10~20倍以上に至る高い量)の抗体の存在を意味する。
【0090】
血液製剤は、(i)(例えば、本発明のプロセスを介して)ワクチン接種され、高力価の肺炎球菌特異的オプソニン抗体を有するドナー由来の免疫グロブリンの選択および精製、または(ii)本発明の方法に従ってワクチン接種された多数の個体(例えば、100、200、200~500、500~1000、または1000以上の対象)由来のドナー免疫グロブリンの組み合わせによって調製され得る。
【0091】
プラズマフェレーシス(Plasmapheresis)は、ワクチン接種ドナーから血清/血漿を採取するために使用され得る。用語「プラズマフェレーシス」は、動物から血液を取り出し、その細胞成分と血漿成分とに分離し、その後、細胞を動物に戻し、血漿を保持する技術を意味する。大容量プラズマフェレーシスは、除去された血漿が適切な流体で置換されることを必要とする。これが行われる場合、この技術は、血漿交換としてよく知られている。血漿中に見られる任意の成分が、血漿交換によって除去され得る。市販販売のためにこのようにして抽出された血漿は、本発明の好ましい実施形態における使用のために利用可能である。
【0092】
いくつかの実施形態において、少量の血液を繰り返し採取することによって、例えば、ヒトから一ヶ月に一回採血することによって、同じドナー群を特定し、維持することが好ましい。上記採血の頻度は、安全に採血され得る量に影響を及ぼし得る。一般に、ドナーの健康を損なうことなく、時間をかけて最大量の血液を採取することが望ましい。これは、高い頻度で少量の採血をすること、または低頻度で可能な最大量を採血することを指示し得る。ドナーの血液量は、疾病管理センター(Center for Disease Control)から入手できる標準的な公式によって推定し得る。血液および血漿収集の方法は、一般に標準的であり、当業者に周知である。所望の結果を達成する任意の方法を使用することができる。
【0093】
血漿単離後、免疫グロブリン(抗体)は、他の細胞プロダクトから精製され得る。これは、Cohn分画、イオン交換、親和性精製などの免疫グロブリン精製の当業者に合知られている種々のタンパク質単離手順によって達成され得る。抗体を調製および特徴づけるための手段は、本技術分野において周知である。例えば、IgG(アイソタイプに依存する)を結合させるために血清サンプルをタンパク質Aまたはタンパク質Gセファロースカラムに通すことができる。次いで、結合した抗体を、例えば、pH5.0クエン酸緩衝液で溶出することができる。Abを含有する溶出画分を等張緩衝液に対して透析する。あるいは、溶出液も、抗免疫グロブリン-セファロースカラムに通される。次いで、Abを3.5M塩化マグネシウムで溶出することができる。次いで、このようにして精製されたAbは、例えば、標的細胞のアイソタイプ特異的ELISAおよび免疫蛍光染色アッセイによって結合活性について試験されることができる、または(例えば、本明細書中に記載されるオプソニン殺傷アッセイの一つ以上を使って)オプソニン(オプソニン貪食作用)活性について試験されることができる。
【0094】
一実施形態において、(例えば、本明細書に記載の方法に従って免疫付与された複数の対象(例えば、100、200、200~500、500~1000、または1000以上の対象)から)血漿サンプルを採取し、混合した場合、該血漿サンプルから得られた(例えば、単離および/または分画した)混合血漿または免疫グロブリンは、麻疹、ジフテリアおよび/またはポリオに対する血清防御抗体力価を含有する(例えば、麻疹、ジフテリアおよびポリオの感染症の予防、または、これらからの防御のために、同じ血清レベルの麻疹、ジフテリアおよびポリオに対して特異的な抗体から得られた混合血漿組成物または免疫グロブリンを投与された対象を実現する、麻疹、ジフテリアおよび/またはポリオに対する抗体力価を含有する)。別の実施形態において、血漿サンプルが複数のワクチン接種された対象から混合される場合、該血漿サンプルからから得られた(例えば、分画した)混合血漿または免疫グロブリンは、麻疹、ジフテリア、ポリオおよび/または破傷風に対する血清防御抗体力価を含有する(例えば、麻疹、ジフテリア、ポリオおよび/または破傷風の感染の予防、または、これらからの防御のために、同じ血清レベルの麻疹、ジフテリア、ポリオおよび/または破傷風に対して特異的な抗体から得られた混合血漿組成物または免疫グロブリンを投与された対象を実現する、麻疹、ジフテリア、ポリオおよび/または破傷風に対する抗体力価を含有する((例えば、免疫不全症の治療および/または免疫不全対象における感染症の治療または予防のために)例えば、米国食品医薬品局によって推奨される抗体力価レベルを満たす)。一実施形態において、上記混合/プールされた血漿は、1000~3000以上(例えば、1000人より多い、1250人、1500人、1750人、2000人、2500人、3000人、3500人、または4000人以上のヒト対象)から得られた血漿サンプルを含む。一実施形態において、上記プールされた血漿は、(例えば、対象への静脈内投与用の)免疫グロブリンを調製するために利用される。一実施形態において、上記プールされた血漿および/または免疫グロブリンは、該プールされた血漿および/または免疫グロブリンを投与された対象に対して、1000人以上のランダムなヒト対象から得られた血漿サンプルの混合物(または該混合物から調製される免疫グロブリン)の投与によっては達成できない治療的利点を提供する。本発明は、提供される治療的利点の種類によって限定されない。実際に、本明細書に記載されるものを含めて、様々な治療的利点(肺炎球菌感染症(例えば、上気道感染症)の治療)が達成され得る。一実施形態において、上記プールされた血漿および/または免疫グロブリンは、1000人以上のランダムなヒト対象から得られた血漿サンプルの混合物または該混合物から調製される免疫グロブリンと比較して、増強された抗肺炎球菌オプソニン貪食作用特性を有する。例えば、一実施形態において、上記プールされた血漿は10以上の異なる肺炎球菌血清型(例えば、10、10~20、20~30、またはそれ以上の血清型)に対して増強された抗肺炎球菌オプソニン貪食作用特性を有する。さらに他の実施形態において、上記増強された抗肺炎球菌オプソニン貪食作用特性は、1000人以上のランダムな(例えば、ワクチン非接種の)ヒト対象から得られた血漿サンプルの混合物を投与された対象においてよりも長く、かつ該対象において達成できない期間、上記組成物を投与された対象において感染症を減少および/または予防する。一実施形態において、上記プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンは、該組成物を投与された対象における感染症の発生率を減少させる。別の実施形態において、上記プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンは、(例えば、感染症を治療するために)上記プールされた血漿および/または免疫グロブリンを投与される対象が抗生物質を投与される必要がある日数を減らす。さらに別の実施形態において、上記プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンは、対象における血中抗肺炎球菌オプソニン貪食作用抗体のトラフレベルを増加させる(例えば、10以上の肺炎球菌血清型に対して特異的な抗オプソニン貪食作用抗体力価のレベルを増加させる(例えば、それによって、1000人以上のランダムなヒト対象から得られた血漿サンプルの混合物または該混合物から調製される免疫グロブリンを投与された対象において、維持されない防御レベルの抗肺炎球菌オプソニン貪食作用抗体を、上記プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンの一投与予定日と次投与予定日との間、提供する))。一実施形態において、プールされた血漿サンプルを含む組成物は、薬学的に許容可能な担体(例えば、本技術分野において既知の任意の天然または非天然担体)をさらに含む。一実施形態において、本発明に係るプールされた血漿から調製される免疫グロブリンを投与された対象は、免疫グロブリンの投与後少なくとも1日~14日(例えば、14日、15日、16日、17日、18日、または19日以上)の時点で、少なくとも2倍、3倍、4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、または少なくとも9倍以上の抗肺炎球菌オプソニン貪食作用抗体力価の平均増加倍数を示す。本発明は、対象に投与される免疫グロブリンの量によって限定されない。一実施形態において、対象は100mg/kg~5000mg/kgの免疫グロブリンを一回、または2日以上(例えば、2日、3日、または4日以上の連続日数)の期間連日投与される。別の実施形態において、このような用量が断続的に、例えば、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎などに投与される。一実施形態において、対象は、1日目に750mg/kg~1500mg/kgの免疫グロブリンを投与され、2日目に750mg/kg~1500mg/kgの免疫グロブリンを投与される。一実施形態において、対象は、1日目に1500mg/kgの免疫グロブリンを投与され、2日目に750mg/kgの免疫グロブリンを投与される。別の実施形態において、対象は、1日目に750mg/kgの免疫グロブリンを投与され、2日目に750mg/kgの免疫グロブリンを投与される。一実施形態において、 対象は、1日目に免疫グロブリンを投与され、任意に、2日目に免疫グロブリンを投与され、次いで、21日ごとに免疫グロブリンを再投与される。一実施形態において、対象は、1日目に免疫グロブリンを投与され、任意に、2日目に免疫グロブリンを投与され、次いで、28日ごとに免疫グロブリンを再投与される。一実施形態において、上記プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンは、該組成物を投与された対象における肺炎球菌感染症の発生率を減少させる。さらに別の実施形態において、上記プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンは、対象において、血中抗肺炎球菌オプソニン貪食作用抗体のトラフレベルを増加させ、かつ、血中抗麻疹、抗ジフテリア、抗ポリオおよび/または抗破傷風特異的抗体のトラフレベルを増加させる(例えば、複数の肺炎球菌血清型および麻疹、ジフテリア、ポリオ、および/または、破傷風に対して特異的な抗肺炎球菌オプソニン貪食作用抗体力価のレベルを増加させる(例えば、それによって、上記プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリンの一投与予定日と次投与予定日との間に、1000人以上のランダムなヒト対象(例えば、ワクチン非接種対象)から得られた血漿サンプルの混合物または該混合物から調製される免疫グロブリンを投与されされた対象においては維持されない防御レベルの抗肺炎球菌オプソニン貪食作用抗体および抗麻疹、抗ジフテリア、抗ポリオおよび/または抗破傷風特異的抗体を提供する))。
【0095】
いくつかの実施形態において、血漿および/または抗体サンプルは、提供および/または購入された体液サンプル、例えば、個々の血液または血液成分サンプル(例えば、血漿)を含有する。これらのサンプルは、(例えば、プール前または後に)病原体または他の不純物の有無について精製および/またはスクリーニングされ得る。複数のドナー抗体サンプル(例えば、ドナー血漿サンプルまたは他の抗体含有サンプル)は、プールされた血漿サンプルを作製するために、一緒にプールされ得る。いくつかの実施形態において、上記プール抗体サンプルは、精製され、スクリーニングされ、かつ/または濃縮される。一実施形態において、サンプル(例えば、1000以上のサンプル)のプールは、可能な限り少ない数のサンプル(例えば、本明細書中に記載される組成物および方法によって生成されたサンプル)を使用するが、標準化され、かつ、高められた所望のレベルの抗肺炎球菌オプソニン貪食作用抗体をなお維持するように行われる。
【0096】
本明細書中に記載されるように、本発明の特定の実施形態は、対象内に高められたレベルの抗肺炎球菌オプソニン貪食作用抗体を生成するために、免疫原性物質(例えば、ワクチン)を投与された対象由来の血漿を利用する。本発明は、特異的抗体の発現を誘発するために対象(例えば、ドナー)に投与するために使用されるワクチンおよび/または抗原(例えば、肺炎連鎖球菌抗原)の種類によって限定されない。いくつかの実施形態において、上記抗原は、肺炎連鎖球菌抗原またはその断片もしくは成分である。いくつかの実施形態において、上記抗原は、(例えば、担体またはタンパク質と結合されていない、または結合されている)一つまたは複数の多糖類である。いくつかの実施形態において、上記抗原(例えば、肺炎連鎖球菌抗原)は、特異的抗体(例えば、肺炎連鎖球菌の複数の異なる血清型に対して特異的な抗体)を誘発することができる成分を含むワクチンである。いくつかの実施形態において、ワクチンは、市販のワクチンである。本発明は、ワクチンによって限定されない。実際、PREVNAR、SYNFLORIX、PNEUMOVAX、ならびに本技術分野において既知の他のワクチンを含むが、これらに限定されない、様々なワクチン(例えば、肺炎連鎖球菌ワクチン)が利用され得る。同様に、本発明は、投与/免疫付与のタイプまたは経路によって限定されない。実際に、任意の免疫付与経路/タイプが利用され得る。そのような免疫付与経路/タイプは、米国特許出願公開第2008026002号、第2007009542号;第2002094338;第2005070876号;第2002010428号;第2009047353号;第2008066739号;および第2002038111号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法を含むが、これらに限定されない。同様に、本発明は、ワクチン製剤(例えば、肺炎連鎖球菌ワクチン)によって限定されない。実際、米国特許出願公開第2002107265号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものを含むが、これらに限定されない、任意の製剤を利用することができる。いくつかの実施形態において、上記ワクチンは、追加の抗原が添加される多価ワクチンである(例えば、US2007161088;US2006121059参照(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。いくつかの実施形態において、抗原は、ワクチン(例えば、結合型ワクチン)において使用される前に精製される(例えば、US2008286838参照(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。肺炎球菌結合型ワクチンの製造工程において有用な微生物の培養方法は、US2010290996(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。あるいは、いくつかの実施形態において、担体タンパク質に結合されていない抗原(例えば、肺炎連鎖球菌抗原)が利用される(例えば、US2009136547参照(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。いくつかの実施形態において、免疫モジュレーターが利用される(例えば、US2004156857;US5985264;およびWO11041691参照(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。いくつかの実施形態において、治療用抗体は、WO05070458;US2009191217;およびWO10094720(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法に従って、抗原(例えば、肺炎連鎖球菌抗原)および/またはワクチンを投与されたドナーにおいて産生される。いくつかの実施形態において、抗原(例えば、ワクチン(例えば、結合型ワクチンまたは非結合型ワクチン))が、感染症微生物に対して有用な抗体(例えば、血清および/または血漿中に存在する抗体)を生成するために使用される(例えば、US2003099672;WO0062802に記載されているもの(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
【0097】
いくつかの実施形態において、多糖類ワクチンが使用される(例えば、複数の肺炎連鎖球菌血清型(例えば、23の肺炎連鎖球菌血清型:1、2、3、4、5、6b、7F、8,9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19F、19A、20、22F、23F、および33Fのうちの1つ、2つ、3つ、または4つ以上、または23全てからの精製多糖類を含む)多糖類ワクチン)。本発明を実施するためにメカニズムの理解は必要ではなく、かつ、本発明はいかなる特定の作用メカニズムにも限定されないが、いくつかの実施形態において、T細胞の補助なしに特異的な(例えば、肺炎連鎖球菌特異的な)免疫グロブリンを生成および分泌するためにB細胞(例えば、形質細胞)を刺激する抗原(例えば、肺炎連鎖球菌抗原)またはワクチンが、本発明において使用される。
【0098】
いくつかの実施形態において、担体および/またはアジュバント(例えば、ジフテリアトキソイドCRM197)に共有結合した(例えば、複数の肺炎連鎖球菌血清型由来の)莢膜多糖類を含有する結合型ワクチンが利用される。メカニズムの理解は本発明を実施するために必要ではなく、かつ、本発明は任意の特定の作用メカニズムに限定されないが、いくつかの実施形態において、特異型2ヘルパーT細胞との相互作用および/または記憶B細胞(例えば、肺炎連鎖球菌特異的記憶B細胞)の産生により、特異的な(例えば、肺炎連鎖球菌特異的な)免疫グロブリン(例えば、肺炎連鎖球菌特異的IgMおよび/またはIgG)を生成および分泌するためにB細胞(例えば、形質細胞)を刺激する抗原(例えば、肺炎連鎖球菌抗原)またはワクチンが、本発明において使用される。
【0099】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、ドナーにおいて高レベルのオプソニン貪食作用抗肺炎球菌抗体を刺激する方法を提供し、該方法は、免疫学的に有効な量の抗原組成物(例えば、肺炎連鎖球菌抗原組成物)を含有する薬学的に許容可能な組成物を動物(例えば、ヒト)に投与する工程を含む。上記組成物は、部分的または有意に精製された抗原を含むことができる(例えば、肺炎連鎖球菌抗原(例えば、天然または組換え供給源から得られた多糖類、タンパク質および/またはペプチドエピトープ)を含むことができる(上記天然または組換え供給源は、天然に得られ得る、または、化学的に合成され得る、もしくは、上記のようなエピトープをコードするDNAセグメントを発現する組換え宿主細胞からインビトロで産生され得る))。
【0100】
免疫付与の有効性を判定する方法(例えば、肺炎連鎖球菌特異的抗体力価のレベルを測定する方法)は、本技術分野で知られている。そして、任意の既知の方法が免疫付与の効果を評価するために利用され得る(例えば、オプソニン貪食作用抗肺炎球菌抗体を誘発する効果(例えば、本明細書中に記載される、または、本技術分野で既知のオプソニン貪食殺傷アッセイ))。いくつかの実施形態において、ワクチン(例えば、肺炎球菌結合型ワクチン)の有効性の評価用の検出方法が、例えば、US2005260694;US4308026;US4185084;またはUS2005208608(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように使用される。
【0101】
いくつかの実施形態において、特異的抗体力価(例えば、高められたオプソニン貪食作用抗肺炎球菌抗体力価)を有するサンプルおよび/またはプールを特定するキットおよび方法が提供される。一実施形態において、適切な量の検出試薬(例えば、本技術分野で知られている、複数の抗体に対して特異的な抗体、抗原、または他の試薬)が、固体支持体上に固定され、そして検出可能な薬剤で標識される。抗体は、既知の方法によって、種々の固体基材に固定化され得る。適切な固体支持体基材は、スティック、ビーズ、カップ、フラットパック(flat packs)、または他の固体支持体によって支持されるか、またはそれらに付着された膜またはコーティングを有する材料を含む。他の固体基材としては、細胞培養プレート、ELISAプレート、チューブ、およびポリマー膜が挙げられる。上記抗体は、蛍光色素、放射性標識、ビオチン、または、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよび2-ガラクトシダーゼなどの別の酵素などの検出可能な薬品で標識することができる。上記検出試薬が酵素であれば、該検出試薬を検出するための手段を上記キットに付属させることができる。検出可能な薬品を検出するための適切な手段は、検出可能な薬剤としての酵素と該酵素に触れると変色する酵素基質とを使用する。さらに、該キットは、上記アッセイの生成物を評価するための手段、例えば、カラーチャートまたは数値基準チャートも含むことができる。サンプルおよびプールを特徴付けるためのいくつかの適切な方法が、参照により本明細書に組み込まれる参考文献に提供される。本発明は、高められた力価を有するものとしてサンプルおよびプールを特徴付けるために使用される方法によって限定されない。血漿、免疫グロブリン、および/またはそれらのプール中の抗肺炎球菌オプソニン貪食作用抗体のレベルを測定するためのアッセイもまた、(例えば、実施例に記載されるように)使用され得る。
【0102】
特定の実施形態において、一つ以上の混入物質から抗体が精製および/または単離された組成物(例えば、抗体サンプル、プールされた血漿サンプル、免疫グロブリンなど)が提供される。ヒト免疫グロブリンは、1940年代にF.J.Cohnによって初めて大規模に単離された。いくつかの実施形態において、Cohn(Cohn他、JAmChemSoc.1946;68:459-475;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって提供された技術または変更されたCohn技術は、本明細書中の免疫グロブリンの調製に利用される。いくつかの実施形態において、実質的に未修飾、未変更、非変性の、および/または天然ままの高純度の免疫グロブリン分子を産生するために、様々な精製および単離方法gは利用される。例示的な技術が、例えば、米国特許第4,482,483号に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、組成物(例えば、抗体プール)は>50%(例えば、>60%、>70%、>80%、>90%、>95%、>99%)の免疫グロブリンを有する。例えば、標準的なタンパク質精製および単離技術、ならびに生物学的流体(例えば、血漿)の分画を含む、種々の方法が、このような組成物を産生するために利用され得る。免疫治療薬で使用するための抗体の分画の記載は、例えば、米国特許第4,346,073号および本明細書中に提供される他の参考文献から入手できる(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。特定の実施形態において、免疫グロブリンは、分別沈殿法、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、限外濾過、親和性クロマトグラフィー、またはそれらの任意の適切な組み合わせによって精製される(例えば、米国特許第7,597,891号;米国特許第4,256,631号;米国特許第4,305,870号;Lullau et al、JBiol.Chem.1996;271:16300-16309;Corthesy、Biochem.Soc.Trans.1997;25:471-475;およびCrottet他、Biochem.J.1999;341:299-306参照(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる) )
本発明の組成物(例えば、プールされた血漿および/または該プールされた血漿から調製される免疫グロブリン)は、非経口投与、皮下投与、腹腔内投与、肺内投与、および局所治療用に所望であれば病巣内の投与を含む任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与又は皮下投与が含まれる。さらに、本発明の組成物は、パルス注入によって、特に減少していく用量で、投与され得る。投薬は、部分的に投与が急性であるか慢性であるかどうか次第で、任意の適切な経路によるもの、例えば、注射(例えば、静脈内注射または皮下注射)によるものであり得る。
【0103】
本発明の組成物は、良好な医療行為に合致する方法で製剤、投薬、および/または投与され得る。この文脈において考慮すべき要素には、治療されている特定の疾患、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および医師に知られた他の要素が含まれる。本発明の組成物は、問題の疾患を予防または治療するために現在使用されている一つ以上の薬剤と共に製剤される必要はないが、任意にそのような薬剤と共に製剤される。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、疾患または治療の種類、および上記の他の要素に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載されるものと同じ用量および投与経路、または本明細書に記載される用量の約1%~99%、または経験的/臨床的に適切であると判断される任意の用量および任意の経路で使用される。
【0104】
疾患の予防または治療のために、本発明の組成物の適切な投薬量は、(単独で、または一つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合、)治療される疾患の種類、抗体の型、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、総体的な健康、同時に投与される他の薬物との相互作用、疾患の重症度および経過、抗体が予防目的または治療目的のどちらのために投与されるか、以前の治療、および患者の病歴を含む、多くの要素に依存し得る。
【0105】
正確な投薬量は、治療される患者を考慮して、個々の医師によって決定され得る。用量および投与は、十分なレベルの活性部分(例えば、血漿プール)を提供するために、または所望の効果を維持するために調節される。考慮され得るさらなる要素には、疾患状態の重症度;患者の年齢、体重、および性別;食事、投与の時間および頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、ならびに治療に対する耐性/反応が含まれる。長時間作用性薬学的組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス率に応じて、3~4日毎、週毎、または2週間毎、4週間毎、6週間毎、8週間以上毎に投与し得る。
【0106】
本発明の組成物は一度に、または一連の処置にわたって患者に投与され得る。疾患の種類および重症度によって、本発明の組成物約1μg/kg~5000mg/kg(例えば、0.5mg/kg~1500mg/kg)が、例えば、一回以上の別々の投与によるか、または連続注入によるかにかかわらず、患者への投与の初回の候補投薬量となることができる。本明細書中に記載されるように、さらなる薬物または薬剤(例えば、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤など)、他の免疫グロブリン組成物(例えば、従来のIVIG)、抗炎症薬および/または治療化合物など)は、本発明のプールされた血漿組成物と同時に投与され得る。このような薬剤の例示的な1日の用量は、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲を取りうる。数日以上にわたる反復投与については、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで、一般に治療を持続することができる。本発明の組成物の一つの例示的な用量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲を取るであろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kgまたは10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)の用量を患者に一回以上投与することができる。このような用量は、間欠的に、例えば、毎週、または2週間もしくは3週間毎に投与され得る。医師は、本発明の組成物の治療的投与を容易に監視することができ、そして、より高い用量またはより低い用量の組成物が投与されるべきかどうかを決定することができる。
【0107】
本発明の組成物は、生理食塩水などの薬学的に許容可能な担体中で患者に投与(例えば、静脈内投与、経口投与、筋肉内投与、皮下投与など)され得る。そのような方法は、当業者に周知である。
【0108】
従って、本発明のいくつかの実施形態において、本発明の組成物は、単独で、または他の薬物と組み合わせて、または賦形剤または他の薬学的に許容可能な担体と混合された医薬組成物において、患者に投与され得る。本発明の一実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、薬学的に不活性である。治療される状態に応じて、医薬組成物は、製剤され、全身的または局所的に投与され得る。製剤および投与のための技術は、最新版の「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co、Easton Pa)から取得し得る。適切な経路は、例えば、経口投与または経粘膜投与;ならびに(筋肉内投与、皮下投与、髄内投与、髄腔内投与、脳室内投与、静脈内投与、腹腔内投与、または鼻腔内投与を含む)非経口送達を含み得る。
【0109】
注射用に、本発明の組成物は、水性溶液中、好ましくはハンクス溶液、リンガー溶液、または生理学的緩衝生理食塩水のような生理学的に適合できる緩衝液中に製剤され得る。組織または細胞投与用に、浸透されるべき特定のバリアに適切な浸透剤が、製剤において使用される。このような浸透剤は、本技術分野において一般的に知られている。
【0110】
他のいくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、医薬組成物)は、経口投与に適した用量で、本技術分野において周知の薬学的に許容可能な担体を使用して製剤することができる。このような担体は、上記医薬組成物が、治療を受ける患者による経口摂取及び鼻腔摂取用に、錠剤、丸薬、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリ-、懸濁液などとして製剤されることを可能にする。
【0111】
本発明における使用に適した医薬組成物は、活性成分が意図された目的を達成し得る有効量で含まれている組成物を含む。例えば、本発明の組成物の有効量は、対象における細菌の成長の阻害および/または殺傷をもたらす量であり得る。有効量の決定は、特に本明細書中に提供される開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0112】
活性成分に加えて、医薬組成物は、本発明の組成物を医薬的に使用可能な製剤へ加工するのを容易にする賦形剤および補助剤を有する適切な薬学的に許容可能な担体を含有することができる。
【0113】
本発明の医薬組成物は、既知の方法で(例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉砕、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥の処理プロセスの手段によって)製造され得る。
【0114】
非経口投与のための医薬製剤は、水溶性の形態の上記組成物の水性溶液を含む。さらに、上記組成物の懸濁液は、必要に応じて油性注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクル(vehicles)には、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームがある。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意に、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために上記組成物の溶解度を増加させる適切な安定剤または薬剤をも含有し得る。
【0115】
薬学的に許容可能な担体中で製剤された本発明の組成物は、調製され、適切な容器に入れられ、指示された状態の治療のためにラベル付けされてもよい。ラベル上に示される状態は、ウイルスまたは細菌感染症の治療または予防を含み得る。
【0116】
医薬組成物は、塩として提供することができ、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されない多くの酸を用いて形成することができる。塩は、対応する遊離塩基形態である水性溶媒または他のプロトン性溶媒により溶けやすい傾向がある。他の場合において、好ましい製剤は、使用前に緩衝液と組み合わせた、4.5~5.5のpH範囲の1mM~50mMヒスチジン、0.1~2%スクロース、2%~%マンニトール中の凍結乾燥粉末であってもよい。
【0117】
本発明の組成物(例えば、抗肺炎球菌高度免疫グロブリン)は、免疫治療薬および/または抗炎症薬の効果を増強するために、追加の薬剤(例えば、抗体、抗体断片、抗体様分子、モノクローナル抗体、抗菌剤、他の免疫グロブリン組成物(例えば、従来のIVIG)、または他のタンパク質もしくは小分子)と組み合わせることができる。このような追加の薬剤は、組換え、合成、インビトロなどで産生され得る。本発明は、抗肺炎球菌高度免疫グロブリンが同時投与および/または組み合わされる追加の薬剤の種類によって限定されない。いくつかの実施形態において、組換えまたは合成抗体(例えば、ヒト化モノクローナル)または(例えば、特定の病原体または抗原に対する)抗体断片が、同時投与および/または添加される。さらに、特定の細菌およびウイルスに対する抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナルなど)が、同時投与でき、かつ/または、組成物に添加することができる。いくつかの実施形態において、種々の治療剤(例えば、抗炎症剤、化学療法剤)、安定剤、緩衝剤などは、例えば、有効性、安定性、投与性、作用の持続時間、使用範囲などをさらに増強するために、同時投与および/または抗肺炎球菌高度免疫グロブリンに添加される。一実施形態において、抗肺炎球菌高度免疫グロブリンは、従来のIVIGと同時投与される(((例えば、予防的および/または治療的に)(例えば、肺炎連鎖球菌、ジフテリア菌、麻疹ウイルス、および/または、ポリオウイルスによって引き起こされる)感染症を治療するために)例えば、原発性免疫不全疾患を有する患者に同時投与される)。
【0118】
組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分配剤のような担体を任意に含み得る。微生物の作用が、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって、確実に防止できる。例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことも望ましい。吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によって、免疫グロブリンの持続的吸収が可能となる。
【0119】
いくつかの実施形態において、本発明の抗肺炎球菌高度免疫グロブリンは、治療的、防御的、予防的 、および/または他の利益を提供するために対象に投与される。
【0120】
本発明の抗肺炎球菌高度免疫グロブリンの投与が治療的または予防的に使用される疾患および条件は、以下のものを含むが、それらに限定されない:従来分類不能型免疫不全症、IgA欠損症、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、インフルエンザによる気道感染症、RSウイルスによる気道感染症、ライノウイルスによる気道感染症、アデノウイルスによる気道感染症などの細菌およびウィルス感染症;ジアゼなどの原虫感染症、イースト菌感染症; 慢性リンパ性白血病;多発性骨髄腫;マクログロブリン血症;慢性気管支炎;気管支拡張症;喘息;骨髄移植に伴う免疫抑制;シクロホスファミド投与に伴う免疫抑制;アザチオプリン投与に伴う免疫抑制;メトトレキサート投与に伴う免疫抑制;クロラムブシル投与に伴う免疫抑制;ナイトロジェン・マスタード投与に伴う免疫抑制;6-メルカプトプリン投与に伴う免疫抑制;チオグアニン投与に伴う免疫抑制;重症複合免疫不全症;アデノシンデアミナーゼ欠損症;MHCクラスI欠損症(裸リンパ球症候群)およびMHCクラスII欠損症;プリン・ヌクレオシド・ホスホリラーゼ欠損症;ディジョージ症候群;乳児の一過性低ガンマグロブリン血症;X連鎖無ガンマグロブリン血症;成長ホルモン不全を伴うX連鎖無ガンマグロブリン血症;トランスコバラミンII欠損症;胸腺腫を伴う免疫不全症;エプスタイン・バー・ウイルスに対する遺伝的反応異常を伴う免疫不全症;IgMの増加を伴う免疫グロブリン欠損症;P鎖欠損 症;毛細血管拡張性運動失調症;限局性白皮症を伴う免疫不全症;リウマチ性関節炎によるものなどの選択的IgA欠損症の続発症;若年性関節リウマチ;全身性エリテマトーデス;甲状腺炎;悪性貧血;皮膚筋炎;クームス陽性溶血性貧血;特発性アジソン病;脳血管炎および特発性血小板減少性紫斑病。
【0121】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、対象に投与された場合、抗炎症効果を提供する。プールされた免疫グロブリンは、受動的に投与された場合に抗炎症作用を提供することが示されている(例えば、NimmerjahnおよびRavetch、AnnuRevImmunol.2008.26:513-33.;Ramakrishna他、Plos Pathogens.2011.7:6:e1002071.参照;参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、本発明の抗抗肺炎球菌高度免疫グロブリンは、ランダムなヒト対象(例えば、1000人以上のランダムなヒト対象)から得られた血漿サンプルの混合物の抗炎症作用と比較して、増強された(例えば、10%増強、20%増強、50%増強、2倍増強、3倍増強、5倍増強、または10倍以上の増強)抗炎症作用を発揮する。メカニズムの理解は本発明を実施するために必要ではなく、そして本発明は任意の特定の作用メカニズムに限定されないが、一実施形態において、本発明の抗肺炎球菌高度免疫グロブリンが少なくとも1000のドナー由来の血漿を含むため、従来のIVIGと比較して、本発明のプールされた血漿組成物は、有意に増強された抗炎症作用を示す(例えば、限られた数のドナーから調製された従来の高度免疫グロブリンとの比較において(例えば、一実施形態において、異なるプールされた血漿サンプルの数が多いほど、より有益な抗炎症作用(例えば、より大きな組織病理学的利益(例えば、上皮細胞死の減少))が観察される))。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の組成物は単独で投与されるが、他の実施形態において、該組成物は、固体支持体と一緒に、または代わりに、一つ以上の薬学的に許容可能な担体および任意で他の治療薬と共に、上記で定義されるような少なくとも一つの活性成分/薬剤を含む医薬製剤中に存在することが好ましい。各担体は製剤の他の成分と適合性があり、対象に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0123】
一実施形態において、本明細書で提供される抗肺炎球菌高度免疫グロブリンは、一つ以上の生物活性のある薬剤をさらに含有する。本発明は、生物活性のある薬剤/材料の種類に限定されない。実際に、抗体、抗毒素材料、抗炎症剤、抗癌剤、抗菌剤、治療剤、抗ヒスタミン剤、サイトカイン、ケモカイン、ビタミン、ミネラルなどを含むがこれらに限定されない、様々な生物活性のある薬剤/材料を使用することができる。一実施形態において、上記生物活性のある薬剤は、抗毒素剤である。一実施形態において、上記抗毒素剤は、ウイルス、細菌または真菌毒素に対して特異性を有する単一特異性、二重特異性または多特異性抗体である。さらに他の実施形態において、細菌または真菌毒素は、ボツリヌス神経毒素、破傷風毒素、大腸菌毒素、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)毒素、ビブリオ(Vibrio)RTX毒素 、ブドウ球菌毒素、シアノバクテリア毒素、およびマイコトキシンから選択される。別の実施形態において、上記免疫治療組成物は、単一または複数の特異性を有する単一または複数のモノクローナル抗体の一部(aliquot)をさらに含む(例えば、免疫原性組成物は、一つ以上の抗体または生物活性物質(例えば、任意の特異性のモノクローナル抗体、抗毒素剤など)でスパイクされ得る)。本発明は、免疫原性組成物に添加される(例えば、スパイクされる)一つ以上の抗体の種類によって限定されない。実際に、(例えば、病原体または病原体生成物に特異的な)任意の一つ以上の抗体が使用され得る。この任意の一つ以上の抗体には、本技術分野で既知の(例えば、一つまたは複数の抗原に対して特異的な)標準抗体、二重特異性抗体、多特異性抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
本発明は、本発明の組成物および方法で治療される対象のタイプによって限定されない。実際に、感染症を発症する危険性のある対象を含むが、これらに限定されない、種々の対象がそのように治療され得る(例えば、上気道または他の種類の感染症(例えば、それによって、感染症の危険性が高まっている対象における感染症を発症する危険性を減少させる))。一実施形態において、本発明の組成物で治療される対象は、原発性免疫不全疾患(PIDD)を有する、または、有すると診断される。別の実施形態において、上記対象は、末期腎疾患(ESRD)患者;免疫抑制療法中の癌患者、AIDS患者、糖尿病患者、新生児、移植患者、免疫抑制療法中の患者、PIDDおよび他の免疫不全症を有する患者、機能不全免疫系を有する患者、自己免疫疾患患者、長期介護施設内の高齢者、免疫抑制療法中の自己免疫疾患を有する患者、移植患者、侵襲的外科治療を受けている患者、火傷患者、または急性ケア環境におけるその他患者である。
【実施例
【0125】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態および態様を実証し、さらに説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではない。
【0126】
〔実施例1:高度免疫血漿ドナー、高度免疫血清および該高度免疫血清から調製された免疫グロブリンの生成〕
本発明の実施形態の開発中に、多種多様な肺炎球菌血清型に対する高度免疫血漿/血清を有する高度免疫血漿ドナーを発生させることを目指して、実験が行われた。これらの実験の例を以下に示すが、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0127】
18歳~45歳の間の健康なヒト(男性および女性)対象を、免疫付与するために選択した。特に、各対象は、研究に参加し、そしてワクチン接種されたヒト血漿ドナーとして機能するために、任意の既知の内科的疾患を持っていないことが要求された。
【0128】
各研究参加者に、以下のワクチン接種レジメンを実施した:0日目に、PREVNAR(PCV13)の初回ワクチン接種/初回分(製造業者の指示に従って0.5mLの筋肉注射)、続いて4週目にPNEUMOVAX23の二次ワクチン接種(製造業者の指示に従って0.5mLの筋肉注射)。以下の時点に各参加者から血液を採取した(10mL):初回PREVNARワクチン接種の直前、4週目の二次PNEUMOVAX23ワクチン接種の直前、8週目、10週目、12週目および16週目。各血液サンプルから血清サンプルを調製し、アリコートし、-70℃±10℃で保存した。上記血清サンプルを用いて様々な研究(例えば、以下に記載のもの)を行った。
【0129】
血清型特異的抗肺炎球菌多糖類(PS)抗体の定量化(IgG試験)。肺炎球菌血清型(ST)特異的IgGを、以前に記載された方法を採用して定量した(例えば、Lai他、2005 J Immunolo Meth 296:135-147参照)。簡潔にいえば、スペクトル的に異なるルミネックスビーズ(luminex beads)を、ATCCから得られた肺炎球菌(Pnc)ST特異的莢膜多糖類(PS)に結合させた。試験血清サンプルをPS結合ビーズと共に混合し、上記ST特異的IgGをヒト標準血清89SFで定量した。上記血清サンプル中の血清型特異的濃度をμg/mLとして表した。
【0130】
オプソニン貪食殺傷アッセイ(OPK) 血清サンプル中の機能的抗体濃度(力価)を、前述の方法(例えば、Romero-Steiner他、1997 Clin Diagn Lab ImmunolJul;4(4):415-22参照)を採用して試験した。簡潔にいえば、多形核(PMN)系統に分化したHL-60細胞(ヒト前骨髄球性白血球)をエフェクター細胞として使用した。生きている肺炎連鎖球菌血清型特異的株を標的として使用し、乳児ウサギ補体(PELFREEZE、Inc、Rogers、AR)をオプソニン貪食作用殺傷用の補体源として使用した。4℃±2℃で保存した試薬を、アッセイを行う前に室温にした。96ウェルプレートの行Aを除く各ウェルに、以下アッセイ緩衝液として既知の、ゼラチン含むHBSS(+)10μLを添加した。未希釈の品質コントロール血清20μLをウェルA1~A3に添加し、希釈したサンプル物質20μLをウェルA4~A12に添加した。QC血清および未知のサンプルを1:2ずつ連続希釈した。補体対照ウェルおよび細胞対照ウェルは、この時点で10μLのアッセイ緩衝液を有する。
【0131】
作業中の肺炎連鎖球菌細菌懸濁液を20μL当たり8.0×105コロニーの濃度に希釈した。対照ウェルを含む上記プレートの各ウェルに、20μLの上記細菌懸濁液を加えた。200rpmに設定したプレートシェーカー上で上記プレートを室温で30分間インキュベートした。凍結した乳児ウサギ補体10μLを、細胞対照を除く全てのウェルに添加した。細胞対照は、その代わりに10μLのアッセイ緩衝液を受けた。200rpmに設定したプレートシェーカー上で上記プレートを室温で15分間インキュベートした。 分化したHL60PMN40μLをプレート上の全てのウェルに添加した。細胞の濃度を、ウェル当たり100,000個の細胞が添加されるように決定した。200rpmに設定したプレートシェーカー上で上記プレートを室温で30分間インキュベートした。
【0132】
マルチチャンネルピペットを使用して、一行の各ウェルから5μLを、チョコレート寒天を含有する150mm×15mmペトリ皿に同時に添加した。上記皿は、サンプルのまとまりが平行な列で寒天プレートを流れ落ちることができるように斜めに傾けられた。上記皿は、37℃および5%CO2で一晩インキュベートされた。翌日、プレートを写真撮影し、コロニー形成単位(CFU)を計数した。殺菌は、ウェル内の殺菌パーセントとして計算した(ウェル当たりのCFU/平均補体対照CFU×100)。補体対照と比較して標的細菌を50%より多く(>50%)殺傷する希釈の逆数をOPK力価として報告した。最初の希釈が1:8であったので、力価のない血清サンプルは、計算目的のために1:4と報告された。
【0133】
〔実施例2:免疫付与した個体における肺炎球菌血清型特異的全機能的抗体反応の特定および特性評価〕
異なる時点(初回PREVNARワクチン接種の直前、4週目の二次PNEUMOVAX23ワクチン接種の直前、8週目、10週目、12週目および16週目)で、研究参加者から個々の血清サンプルを採取した。肺炎球菌(Pnc)血清型(ST)特異的IgG濃度について、血清を分析した(上記実施例1のIgG試験参照)。個々の血清サンプルに加えて、接種前および接種後12週目の各参加者から等量の血清をプールすることによって、プールされた血清を生成し、プールされた血清サンプルもまた、IgG試験結果に対するプールの効果を評価するために特性評価された。さらに、実施例1に記載されたオプソニン貪食殺傷アッセイ(OPK)を利用して、機能的抗体反応について、個々の血清サンプルとプールされた血清サンプルとの両方を試験した。
【0134】
肺炎球菌血清型特異的IgG濃度/力価。PREVNAR-PNEUMOVAX23で初回-追加免疫付与した各個体(n=10)由来の血清サンプルをPnc ST特異的IgGについて分析した。Pnc ST特異的IgG力価を図1に示す。上記血清サンプル中のIgG反応について、ドナー間およびST間変動を記録した。9/10のドナーがPnc STに対して強いIgG反応を起こすことが見られたが、ST特異的反応には差異が存在する。ドナーのうち、7/10がPNEUMOVAX23ワクチン接種後4週目にピークIgG濃度を有し(PNEUMOVAX23追加免疫反応、初回ワクチン接種後8週目)、それから、IgG濃度は、徐々に下がっていったが、12週目でもベースラインの数倍を超えたままであった。これらの変動にもかかわらず、すべてのドナーは、Pnc ST特異的IgG濃度が免疫系の防御レベルを超える(>0.2μg/mL)ことを明らかにした(例えば、Balmer他、Clin Exp Immunol.2003 Sep;133(3):364-9参照)。プールされた血清中のIgG濃度は、ベースライン(接種前)と比較して、試験期間の終わり(12週目)にIgG濃度の2.2~30倍の増加を示した。これらの中で、血清型ST1について、IgG反応の最大増加が記録され、血清型ST23FおよびST4が続いた。血清型ST19AがIgG濃度の最小倍増加(2.2倍)を示し、それにST3(2.6倍)およびST14(3.2倍)が続いた。
【0135】
機能的/オプソニン抗体力価(OPK)。図2は、種々のPnc STに対して特異的なドナー血清中のOPK力価に関するデータを示す。ベースラインのOPK力価は、IgG濃度に依存する。機能的抗体力価の増加倍数は、4~256倍の範囲であった(図2を参照)。驚くべきことに、IgGの総量(例えば、図1に示す)が全機能的オプソニン抗体の量と相関しないことが発見された。例えば、血清型ST14は、総IgG力価において最も低い増加のみを有した(3.2倍、図1参照)。しかしながら、血清型ST14は、機能的反応(オプソニン抗体力価)においてベースラインよりも256倍高いという最大増加を有した。
【0136】
〔実施例3:プールヒト血清中の全機能的肺炎球菌血清型抗体の定量〕
ワクチン接種前1ヶ月からワクチン接種後5ヶ月までの間、1ヶ月間隔でワクチン接種したヒト血漿ドナー(n=34)血清サンプルを採取した。これらの6つの時点で、血清サンプルをプールし、Pnc ST特異的IgG濃度(IgG試験)および上記実施例1に記載のOPKを用いて機能的抗体について分析した。抗体濃度(血清型特異的IgGおよびOPK)およびワクチン接種前のベースラインに対する増加倍数を測定した。
【0137】
ワクチン接種した(PREVNAR-PNEUMOVAX23で初回-追加免疫付与した)個体由来の血清サンプルを、ワクチン接種前1ヶ月からワクチン接種後5ヶ月の間の各1ヶ月間隔でプールし、各時点からのプールされた血清をPnc ST特異的IgGについて分析した。各時点で採取した。プールドナー血清中のPnc ST特異的IgG力価を図3に示す。ワクチン接種後プールされた免疫血清中の平均IgG濃度は、4.4μg/mL~37.59μg/mLの範囲にあった。12週目の終点と比較した総IgG濃度の減少は、おそらく、追加ワクチン接種後4週目に観察されたスパイク後のIgGレベルの徐々の低下によるものであり、経時的なIgG濃度の減少を発生した。それにもかかわらず、ベースラインを超えるIgG濃度の増加倍数(図4参照)は、ST1、ST23F、およびST4に対するより高い反応を伴う、図1に示されるものと同様のパターンを示した。
【0138】
OPK。種々のPnc STに対して特異的なプールドナー血清中のOPK力価を図5に示す。ST1についての平均免疫付与後OPK力価は例外的に高かった(36044)が、他の全てのSTは最低値の低対数力価を有した。12週目に試験した個々の血清サンプルにおいて高いOPK力価が記録されたが(図2参照)、該力価は他の血清型と比べて対数的に高くなかった。
【0139】
〔実施例4:精製ヒトIgG中の全機能的肺炎球菌血清型抗体の特定および特性評価〕
研究参加者(n=34)から異なる時点で採取した血清サンプルを、個々の時点(接種前、4週目、8週目、10週目、12週目、16週目、および5ヶ月目)のそれぞれでプールし、IgGを、標準的なタンパク質A免疫吸着カラムを用いてプールしたサンプルから精製した。Pnc ST特異的IgG濃度(IgG試験)および実施例1に記載したようにOPKを用いて機能的抗体について精製したIgGを分析した。抗体濃度(血清型特異的IgG)および機能的抗体力価(OPK)を特性化した。さらに、個々の結果の回帰分析に基づいて、インビトロ技術と生体外(ex vivo)技術との間の関係を理解するために、結果の特性評価を行った。
【0140】
肺炎球菌血清型特異的IgG濃度。PREVNAR-PNEUMOVAX23を用いた初回-追加免疫付与レジメンでワクチン接種した個体由来の血清サンプルを、ワクチン接種前1ヶ月からワクチン接種後5ヶ月まで1ヶ月間隔でプールし、各時点からのプールされた血清およびIgGを精製した。 Pnc ST特異的IgGについて、上記プールされた血清を分析した。上記プールされた血清のPnc ST特異的IgGを図6に示す。ワクチン接種後プールされた免疫血清中の平均IgG濃度は、3.2μg/mL~23.3μg/mLの範囲にあり、IgG濃度の経時的減少を発生した。それにもかかわらず、ベースラインを超えるIgG濃度の増加倍数(図4参照)は、ST1、ST23F、およびST4に対するより高い反応を伴う、図1に示されるものと同様のパターンを示した。
【0141】
OPK:種々のPnc STに対して特異的なプールドナー血清中のOPK力価を図7に示す。免疫付与後の平均OPK力価は213~5826.7の範囲にあり、ST7Fの力価(5826.7)が最も高く、次いでST23Fの力価(4778.7)およびST5の力価(4096)が高かった。
【0142】
〔実施例5:ワクチン接種ドナー由来のプールヒト血清中に存在するOPK血清型力価と、従来の市販のIVIG中に存在するOPK血清型力価との比較〕
OPKアッセイ。上記実施例1に記載したOPKアッセイを使用した。4℃±2℃で保存した試薬を、アッセイを行う前に室温にした。96ウェルプレートの行Aを除く各ウェルに、以下アッセイ緩衝液として知られる、ゼラチン含むHBSS(+)10μLを添加した。未希釈の品質コントロール血清20μLをウェルA1~A3に添加し、希釈したサンプル物質20μLをウェルA4~A12に添加した。QC血清および未知のサンプルを1:2ずつ連続希釈した。補体対照ウェルおよび細胞対照ウェルは、この時点で10μLのアッセイ緩衝液を有する。
【0143】
作業中の肺炎連鎖球菌細菌懸濁液を20μL当たり8.0×105コロニーの濃度に希釈した。対照ウェルを含む上記プレートの各ウェルに、20μLの上記細菌懸濁液を加えた。200rpmに設定したプレートシェーカー上で上記プレートを室温で30分間インキュベートした。凍結した乳児ウサギ補体10μLを、細胞対照を除く全てのウェルに添加した。細胞対照は、その代わりに10μLのアッセイ緩衝液を受けた。200rpmに設定したプレートシェーカー上で上記プレートを室温で15分間インキュベートした。分化したHL60PMN40μLをプレート上の全てのウェルに添加した。細胞の濃度を、ウェル当たり100,000個の細胞が添加されるように決定した。200rpmに設定したプレートシェーカー上で上記プレートを室温で30分間インキュベートした。
【0144】
マルチチャンネルピペットを使用して、一行の各ウェルから5μLを、チョコレート寒天を含有する150mm×15mmペトリ皿に同時に添加した。上記皿は、サンプルのまとまりが平行な列で寒天プレートを流れ落ちることができるように斜めに傾けられた。上記皿は、37℃および5%CO2で一晩インキュベートされた。翌日、プレートを写真撮影し、コロニー形成単位(CFU)を計数した。殺菌は、ウェル内の殺菌パーセントとして計算した(ウェル当たりのCFU/平均補体対照CFU×100)。
【0145】
図8は、9つの異なる従来の市販のIVIG中に存在する機能的/オプソニン抗体のOPK血清型特異的力価に対する、ワクチン接種ドナー由来のプールヒト血清中に存在する機能的/オプソニン抗体のOPK血清型特的力価の比較を示す。各列は、一つの固有の肺炎連鎖球菌血清型を表す。各行は、固有のサンプルを表す。サンプルA~Iは、従来の市販のIVIGを表す。
【0146】
図8に示すように、血清型特異的オプソニン力価における顕著な変動性が、IVIGの市販ロットにおいて発見された。さらに、一つの血清型に対する力価の上昇は、他の血清型のいずれに対する力価の上昇をも予測しなかった、すなわち、他の血清型のいずれに対する力価の上昇とも相関しないことが発見された。これは、個々の強化反応は、肺炎連鎖球菌に対する一般的な増強免疫反応を反映せず、むしろ非常に特異的な血清型に対する散発的な増強反応を反映したことを示唆した。極めて対照的に、免疫付与されたドナー由来の免疫グロブリンを用いて観察されたオプソニン抗体力価は、例外なく全ての血清型に対して増強されたことが認められた。さらに、免疫付与されたドナー由来の免疫グロブリンにおけるオプソニン抗肺炎球菌抗体力価は、上記市販ロットの免疫グロブリンと比較して、3~256倍増加していた。したがって、いくつかの実施形態において、高められたオプソニン抗肺炎球菌抗体力価を含有する組成物(例えば、血液、血漿、および/または免疫グロブリン組成物)を生成するための本発明の組成物および方法は、複数の肺炎球菌血清型(例えば、9、10、11、12、13、14、または、15以上の血清型)の全てに対して特異的なオプソニン抗肺炎球菌抗体力価、および/または従来の市販の免疫グロブリンと比較して有意に高められたオプソニン抗体力価(例えば、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、または10x以上のオプソニン抗体力価)を含む均一組成物を提供する。

図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
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図9K
図9L
図10