(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】患者(外科的介入高さ)と流体供給ポンプとの間の高さレベルの差を確認するための方法
(51)【国際特許分類】
A61M 3/02 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A61M3/02 126
(21)【出願番号】P 2020560142
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(86)【国際出願番号】 DE2019000118
(87)【国際公開番号】W WO2019210894
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】102018003519.1
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518248192
【氏名又は名称】ヴェー.オー.エム. ワールド オブ メディシン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】クリストマン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】カルステンス,ヤン ヘンドリックス
(72)【発明者】
【氏名】シャプイ,ハンス-ヨアヒム
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538516(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209639(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(10)と流体供給ポンプ(5)の間の高さレベルの差を確認することを可能とする装置であって、
搬送ローラホイール(4)と、圧力センサ(6)を備えた前記流体供給ポンプ(5)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、圧力値の正負を問わず測定可能であり、チューブセクション(7)内部の流体の圧力を測定する前記圧力センサ(6)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、前記圧力センサ(6)からの情報に基づいて、前・後回転、あるいは停止することで、チューブ内の流体移動を制御する、前記搬送ローラホイール(4)と、
前記搬送ローラホイール(4)のモータに接続され、前記搬送ローラホイールが後転する時に、前記モータに流れる電流を測定する、電流センサ(12)と、
前記流体供給ポンプ(5)よりも上方に配置され、前記対象物(10)に注入することを目的とする流体を貯蔵するリザーバ(1)と、
前記リザーバ(1)に接続しているスパイク(2)と、
前記リザーバ(1)または前記スパイク(2)と、前記搬送ローラホイール(4)の間における、チューブユニットのチューブセクション(3)と、
任意で設けられる、出口弁とのコネクタ(8)と、
前記対象物(10)に導入され、その端部から流体が供給される医療器具(9)と、
前記流体供給ポンプ(5)と、コネクタ(8)または医療器具(9)の間における、チューブユニットの前記チューブセクション(7)と、を備え、
動作前の流体接続経路は、完全には満たされておらず、流体接続経路の容積が公知であり、
前記流体接続経路が流体で満たされた後、前記圧力センサ(6)が測定する静水圧P
hydは、前記搬送ローラホイール(4)と前記対象物(10)との間の高さレベルh
patの判断に有用であり、
P
hyd
が正の値であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より上方にあり(h
pat
>0)、
P
hyd
の値が0であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)と同じ高さあるいはより下方に存在し(h
pat
=0)、
P
hyd
の値が負であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より下方に存在し(h
pat
<0)、
P
hydと、前記電流センサ(12)が示す電流値を基に算出される
、前記流体供給ポンプ(5)の前における水柱の部分的圧力を表す圧力値P
wat
を加算して前記対象物(10)の腔内圧力P
cav
とする、ということを特徴とする装置。
【請求項2】
対象物(10)と流体供給ポンプ(5)の間の高さレベルの差を確認することを可能とする装置であって、
搬送ローラホイール(4)と、圧力センサ(6)を備えた前記流体供給ポンプ(5)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、正の圧力値のみ測定可能であり、チューブセクション(7)内部の流体の圧力を測定する前記圧力センサ(6)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、前記圧力センサ(6)からの情報に基づいて、前・後回転、あるいは停止することで、チューブ内の流体移動を制御する、前記搬送ローラホイール(4)と、
前記搬送ローラホイール(4)のモータに接続され、前記搬送ローラホイールが後転する時に、前記モータに流れる電流を測定する、電流センサ(12)と、
前記流体供給ポンプ(5)よりも上方に配置され、前記対象物(10)に注入することを目的とする流体を貯蔵するリザーバ(1)と、
前記リザーバ(1)に接続しているスパイク(2)と、
前記リザーバ(1)または前記スパイク(2)と、前記搬送ローラホイール(4)の間における、チューブユニットのチューブセクション(3)と、
任意で設けられる、出口弁とのコネクタ(8)と、
前記対象物に導入され、その端部から流体が供給される医療器具(9)と、
前記流体供給ポンプ(5)と、コネクタ(8)または医療器具(9)の間における、チューブユニットの前記チューブセクション(7)と、を備え、
動作前の流体接続経路は、完全には満たされておらず、流体接続経路の容積が公知であり、
前記搬送ローラホイール(4)の1度目の後転時に、前記電流センサ(12)が示す電流値を基に算出される
、前記流体供給ポンプ(5)の前における水柱の部分的圧力を表す圧力値をP
watとし、
前記流体接続経路が流体で満たされた後、前記圧力センサ(6)が測定する静水圧P
hydが正の値であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より上方にあり(h
pat>0)、
P
hydの値が0であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)と同じ高さあるいはより下方に存在し(h
pat=0またはh
pat<0)、前記搬送ローラホイール(4)が2度目の後転を行い、前記電流センサ(12)が示す電流値
は、前記流体供給ポンプ(5)のトルクに比例し、このトルクはP
wat
とP
hyd
の合計圧力を表わし、この合計圧力から、すでに知られている圧力P
wat
を減算することによって、前記静水圧P
hyd及び前記高さレベルh
patの算出が可能となり、
P
hyd
が正の値であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より上方にあり(h
pat
>0)、
P
hyd
の値が0であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)と同じ高さあるいはより下方に存在し(h
pat
=0)、
P
hyd
の値が負であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より下方に存在し(h
pat
<0)、
P
hyd
及びP
wat
を加算して前記対象物(10)の腔内圧力P
cav
とする、ということを特徴とする装置。
【請求項3】
対象物(10)と流体供給ポンプ(5)の間の高さレベルの差を確認することを可能とする装置であって、
搬送ローラホイール(4)と、圧力センサ(6、11)を備えた前記流体供給ポンプ(5)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、圧力値の正負を問わず測定可能であり、チューブセクション(7)内部の流体の圧力を測定する前記圧力センサ(6)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、リザーバ(1)と前記搬送ローラホイール(4)間のチューブセクション(3)内部の流体の圧力を測定する圧力センサ(11)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、前記圧力センサ(6)からの情報に基づいて、前回転、あるいは停止することで、チューブ内の流体移動を制御する、前記搬送ローラホイール(4)と、
電流センサ(12)と、
前記流体供給ポンプ(5)よりも上方に配置され、前記対象物(10)に注入することを目的とする流体を貯蔵する前記リザーバ(1)と、
前記リザーバ(1)に接続しているスパイク(2)と、
前記リザーバ(1)または前記スパイク(2)と、前記搬送ローラホイール(4)の間における、チューブユニットの前記チューブセクション(3)と、
任意で設けられる、出口弁とのコネクタ(8)と、
前記対象物に導入され、その端部から流体が供給される医療器具(9)と、
前記流体供給ポンプ(5)と、コネクタ(8)または医療器具(9)の間における、チューブユニットの前記チューブセクション(7)と、を備え、
動作前の流体接続経路は、完全には満たされておらず、流体接続経路の容積が公知であり、
前記圧力センサ(6)が最初に0以外の圧力値を示すときの、前記圧力センサ(11)が示す
、前記流体供給ポンプ(5)の前における水柱の部分的圧力を表す圧力値をP
watとし、
前記流体接続経路が流体で満たされた後、前記圧力センサ(6)が測定する静水圧P
hydは、前記搬送ローラホイール(4)と前記対象物(10)との間の高さレベルh
patの判断に有用であり、
P
hyd
が正の値であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より上方にあり(h
pat
>0)、
P
hyd
の値が0であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)と同じ高さあるいはより下方に存在し(h
pat
=0)、
P
hyd
の値が負であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より下方に存在し(h
pat
<0)、
P
hyd
及びP
wat
を加算して前記対象物(10)の腔内圧力P
cav
とする、ということを特徴とする装置。
【請求項4】
対象物(10)と流体供給ポンプ(5)の間の高さレベルの差を確認することを可能とする装置であって、
搬送ローラホイール(4)と、圧力センサ(6、11)を備えた前記流体供給ポンプ(5)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、正の圧力値のみ測定可能であり、チューブセクション(7)内部の流体の圧力を測定する前記圧力センサ(6)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、リザーバ(1)と前記搬送ローラホイール(4)間のチューブセクション(3)内部の流体の圧力を測定する前記圧力センサ(11)と、
前記流体供給ポンプ(5)に設けられ、前記圧力センサ(6)からの情報に基づいて、前・後回転、あるいは停止することで、チューブ内の流体移動を制御する、前記搬送ローラホイール(4)と、
前記搬送ローラホイール(4)のモータに接続され、前記搬送ローラホイールが後転する時に、前記モータに流れる電流を測定する、電流センサ(12)と、
前記流体供給ポンプ(5)よりも上方に配置され、前記対象物(10)に注入することを目的とする流体を貯蔵する前記リザーバ(1)と、
前記リザーバ(1)に接続しているスパイク(2)と、
前記リザーバ(1)または前記スパイク(2)と、前記搬送ローラホイール(4)の間における、チューブユニットの前記チューブセクション(3)と、
任意で設けられる、出口弁とのコネクタ(8)と、
前記対象物に導入され、その端部から流体が供給される医療器具(9)と、
前記流体供給ポンプ(5)と、コネクタ(8)または医療器具(9)の間における、チューブユニットの前記チューブセクション(7)と、を備え、
動作前の流体接続経路は、完全には満たされておらず、流体接続経路の容積が公知であり、
前記圧力センサ(6)が最初に0以外の圧力値を示すときの、前記圧力センサ(11)が示す
、前記流体供給ポンプ(5)の前における水柱の部分的圧力を表す圧力値をP
watとし、
前記流体接続経路が流体で満たされた後、前記圧力センサ(6)が測定する静水圧P
hydが正の値であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より上方にあり(h
pat>0)、
P
hydの値が0であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)と同じ高さあるいはより下方に存在し(h
pat=0またはh
pat<0)、前記搬送ローラホイール(4)が2度目の後転を行い、前記電流センサ(12)が示す電流値
は、前記流体供給ポンプ(5)のトルクに比例し、このトルクはP
wat
とP
hyd
の合計圧力を表わし、この合計圧力から、すでに知られている圧力P
wat
を減算することによって、前記静水圧P
hyd及び前記高さレベルh
patの算出が可能となり、
P
hyd
が正の値であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より上方にあり(h
pat
>0)、
P
hyd
の値が0であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)と同じ高さあるいはより下方に存在し(h
pat
=0)、
P
hyd
の値が負であれば、前記対象物(10)は前記搬送ローラホイール(4)より下方に存在し(h
pat
<0)、
P
hyd
及びP
wat
を加算して前記対象物(10)の腔内圧力P
cav
とする、ということを特徴とする装置。
【請求項5】
装置の構成部品どうしが適切に接続され、かつ装置内の医療器具(9)と対象物が適切に接続されている場合において、
前記圧力センサ(6)がゼロでない圧力値を表すまで、前記
流体供給ポンプ(5)は流体を供給し、
前記圧力センサ(6)が一定の圧力を表したまま、前記
流体供給ポンプ(5)がさらにチューブの容積以上の流体を供給し、
前記チューブの容積より多い流体を前記
流体供給ポンプ(5)が供給すると、前記圧力センサ(6)が圧力増加を検知すること、によって、流体の排出を適切に検出することを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
誤って弁が閉じられている場合において、
前記圧力センサ(6)がゼロでない圧力値を表すまで、前記流体供給ポンプ(5)は流体を供給し、
前記チューブの容積に相当する量の流体を前記流体供給ポンプ(5)が供給していないにも関わらず、前記圧力センサ(6)によって検出された圧力値が大幅に増加していること、によって、誤って弁が閉じられていることを検出することを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記医療器具(9)が対象物(10)の誤った位置に導入されている場合、あるいは搬送チューブ(7)と医療器具(9)の間の接続が閉じられていない場合において、
前記圧力センサ(6)がゼロでない圧力値を表すまで、前記流体供給ポンプ(5)は流体を供給し、
前記圧力センサ(6)が一定の圧力を表したまま、前記流体供給ポンプ(5)がさらにチューブの容積以上の流体を供給し、
前記チューブの容積より多い流体を前記流体供給ポンプ(5)が供給しても、前記圧力センサ(6)が圧力増加を検知しないこと、によって、前記医療器具(9)が対象物(10)の誤った位置に導入されていること、あるいは搬送チューブ(7)と医療器具(9)の間の接続が閉じられていないことを検知することを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記流体供給ポンプ(5)が利用する、前記流体接続経路の容積は、プロセスを開始する前に、チューブセットに提供される情報キャリアから読み取ることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記情報キャリアは、RFIDチップ、磁気テープ、バーコード、またはEPROMであることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用流体ポンプと患者の体腔との間の高さレベルの差を判断して、出口端部において作用する流体圧を修正するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲手術(MIS)の分野において、体腔を拡張するために、流体(例えば洗浄水溶液)を体腔内にポンプで送り込むことが知られている。このため圧力は、組織を拡張するために十分大きくなければならないが、組織を損傷させるほど大きすぎてはならない。したがって、体腔内の圧力を測定することは非常に重要である。別の理由(例えば必要な空間及び汚染の危険)のため、体腔内に圧力センサは存在しない。したがって、ポンプにおける圧力測定の結果を使用する必要がある。しかしポンプで測定された圧力は、ポンプの圧力センサが体腔と同じ高さにあるときのみ、体腔内の圧力と一致する。圧力センサと体腔との間に高さレベルの差がある場合、圧力センサによって測定された値は、体腔内の実際の圧力値と一致しない。この差は、高さの差に比例する。患者に対するポンプの位置付けによる差の可能性は、先行技術のポンプでは考慮されていない。したがって、手術を開始する前にポンプと患者の体腔との間の高さレベルの差を判断し、測定した圧力値を必要に応じて修正する方法が必要となる。
【0003】
米国特許出願公開第2015/0290387号明細書は、血圧に依存した圧力制御を伴う送気法のためのデバイスを開示している。米国特許出願公開第2008/0243054号明細書は、体腔を洗浄するためのデバイスを開示している。洗浄液の圧力及びフローは、洗浄される体腔内の圧力に基づいて調整される。ポンプと患者の体腔との間の高さレベルの差を、手術を開始する前に判断することは、これらの書類のいずれにも言及されていない。
【0004】
しかし、医療の分野における特定の状況のために意図された、本発明による高さ検出のための方法を適用する条件は、人体の治療自体を表わさないので、以下で説明する副次的条件を満たす必要がある。本発明による方法が利用される条件は、以下のとおりである:流体供給ポンプ(5)(以降ではポンプと呼ぶ)において、例えば患者(10)の体腔内を拡張するために、流体によって加えられることになる所望の目標圧力が、事前に決められる。このような体腔は、例えば関節腔もしくは腹腔などの自然体腔、または診断及び/もしくは治療目的のために拡張される、人為的に生成された体腔であってよい。拡張は、体腔内に流体を供給することによって実現かつ維持される、所定の目標圧力を用いて生じる。このような流体をリザーバ(1)から体腔内に供給するために、本発明によると、ぜん動ポンプがポンプ(5)として使用される。
【0005】
圧力測定のための測定デバイスとして、ポンプ(5)に少なくとも1つの圧力センサ(6)が設けられ、供給圧Pdrvを判断する。流体ライン(7)の出口端部または手術領域(流体によって拡張される体腔と同じ意味を有する)が、ポンプ(5)と同じ高さレベルではない事例において、チューブセクション(7)内の流体の静水圧(Phyd)は、体腔圧Pcavを変えるか、または圧力センサによって測定された値Pdrvに作用することになる。したがって、圧力センサの値は、体腔圧Pcavの調整のためのさらなる補正がなくては、使用することはできない。体腔圧Pcavは、調整されることになる目標数量であり、所定の目標圧に保持されることになる。
【0006】
本発明による方法が利用されることになる開始状況は、供給デバイスと出口端部との間の高さレベルの差によって、及び出口端部の状況によって、様々な想定場面において実行することができる。高さに関する想定場面は、適用の経時的変化、すなわち本発明による方法の初めの適用から、リザーバへの流体接続が解除されて新しいチューブ(3、7)が流体供給ポンプ(5)の中にもたらされるまでに、適用の変化はないものと想定する。
【0007】
本発明による解決策の目的は、患者の高さレベルhpatを判断することである(患者(10)は、ポンプ(5)よりも高く、または低く位置付けられ得る)。それによって、圧力センサ(6)によって制御される目標値を、実際の状況に従って補正することができる。この補正がなければ、患者(10)の体腔における圧力Pcavを、正確に目標値に調整することはできない。
【0008】
患者(10)がポンプ(5)よりも高く位置付けられた事例(
図1)において、チューブセクション(7)内における流体の静水圧(P
hyd)は、オフセット異常としてセンサ(6)に影響し、先行技術に従って控除することができる。本発明によると、圧力検出または高さ検出のための代替の解決策が説明される。cm水柱の圧力は、所定のcmの高さレベルの差に変換することができる。
【0009】
患者(10)がポンプ(5)よりも低く位置付けられた事例(
図3)において、チュー
ブセクション(7)内における流体の静水圧(P
hyd)は、患者(10)の体腔圧P
c
avに対するオフセットとしてセンサ(6)に影響する。この事例も、圧力センサ(6)
が周囲圧力に対して負の圧力値を判断できる限り、圧力センサ(6)によって検出され得
る。正圧のみしか判断できない圧力センサ(6)が使用される場合、上記の事例は、測定
によって直接判断することはできない。本発明によると、代替の解決策が、圧力検出また
は高さ検出のために説明される。
【0010】
先行技術の流体供給ポンプにおいて、高低差の修正は、流体供給ポンプ(5)のシステム設定において、値(hpat)を事前設定/入力することによって提供される。先行技術による、この高さ設定は、正の高さしか入力できない。これは、手術領域/患者(10)がポンプ(5)よりも高い事例のみ対象にする。この値に基づき、センサ(6)における流水圧(Phyd)は、補正(オフセット補正)、すなわち測定値Pdrvから控除される。この方法は、国際公開第2005/089832号及び国際公開第2005/042065号でも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2015/0290387号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0243054号明細書
【文献】国際公開第2005/089832号
【文献】国際公開第2005/042065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現在までのところ、1回または数回の測定に基づいて患者の高さレベルhpatを判断する方法はない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
デバイスの使用に関して、特定の行為が使用者に課せられる場合があるが、これは製造者によって確認することができず、製造者は安全な適用のための責任があるので、全ての考えられる想定場面に有効である、本発明による技術的方法が取り入れられる。初めに、様々な想定場面を説明する。
【0014】
原則として、拡張される体腔を意味する、搬送ローラホイール(4)の上方または下方の患者(10)の位置は、区別される必要がある。
【0015】
追加の事例として、チューブセクション(7)を介したセンサ(6)からの接続、出口弁(8)及び器具(9)を伴うコネクタのいずれが、雰囲気に通じるかを判断する必要がある。器具(9)が患者の閉じられた体腔内に導入される事例において、静水圧(Phyd)は、体腔内の圧力Pcavとは区別されなければならない。
【0016】
静水圧または患者の高さ(hpat)を判断するために、圧力値の測定に基づく本発明の方法を使用することができる。
【0017】
このため、この種の圧力センサをいくつポンプに設けるかを、まずは確認する必要がある。一般に、圧力センサは、ポンプの後ろの供給方向に設けられる。この圧力センサは、単方向または双方向測定、すなわち正の圧力値のみ、または正の圧力値及び負の圧力値の両方、のいずれかを表わすことを可能にできる。いくつかのポンプモデルは、リザーバ(1)とポンプ(5)との間に追加の圧力センサを備える。
【0018】
静水圧(Phyd)を生じさせる患者の高さレベルhpatを判断するための、本発明による解決策は、下記2つの適用の間で区別する必要がある。
I)患者(手術領域)(10)は、ポンプ(5)の圧力センサ(6)よりも高いレベル(hpat>0)にある。
II)患者(手術領域)(10)は、ポンプ(5)の圧力センサ(6)よりも低いレベル(hpat<0)にある。
【0019】
本明細書では、圧力センサ(6)と搬送ローラホイール(4)の液圧の有効高さとの間には、高さの相対差がないものと想定する。「高さの相対差がない」値とは、3cm水柱以下である。
【0020】
さらに、下記の異なる事例の処置が存在する。
a)利用する器具(9)は、患者(10)または手術領域の体腔の外側にあり、出口端部は雰囲気または周囲圧力に通じている。
b)利用する器具(9)は、すでに手術領域の体腔内に導入されており、(増加したか、または未知である)体腔圧Pcavが出口端部に作用している。
c)流体接続部に設けられた出口弁(8)が閉鎖されているか、またはチューブセクション(7)が接続を断たれている。
【0021】
この課題の解決策のため、本特許出願は、独立請求項1~4による方法の、変形を教示する。本発明による別の改善は、従属請求項5~7によって教示される。
【0022】
本発明の主要要素は、ポンプのトルクを判断することによって、チューブシステム内の圧力を判断することである。このトルクは、電流を測定することによって判断される。本発明のこの実施形態は、独立請求項9で教示される。
【0023】
変形1:本発明の実施形態は、
図2に示される。リザーバ(1)は、チューブ接続部(3)を介して、本発明によるローラホイールポンプ(5)に接続される。この供給ポンプは、チューブ(7)を介して医療器具(9)に接続される。この医療器具(9)は、患者(10)の体腔内に導入される。これは、患者の体腔(10)内における水柱の静水圧を判断するためのものである。圧力P
cavは、供給ポンプの前における水柱の部分的圧力P
watと、供給ポンプの後ろにおける水柱の圧力P
hydとによって構成される。圧力P
watは、ポンプの上方のリザーバに依存し、圧力部分P
hydは、ポンプ(5)の搬送ホイールの上方または下方の、患者の高さレベルh
patに依存する。患者の高さが搬送ホイールの下方にあるとき、圧力P
wat及びP
hydを加算して体腔内の合計圧力P
cavとする。患者が搬送ホイール面の上方にあるとき、圧力P
watは圧力P
hydによって減算される。したがって患者の高さレベルh
patの判断は、原則的に圧力P
wat及びP
hydの測定によって可能である。
【0024】
最も簡単な事例において(
図2参照)、ポンプは2つの圧力センサを備える。すなわち、供給ポンプ(5)の前に1つの圧力センサ(11)、及び供給ポンプ(5)の後ろに1つの圧力センサ(6)である。圧力センサ(6)が双方向の圧力センサであるとき、圧力センサ(11)及び(6)の両方の圧力を、直接読み取ることができる。これらの圧力値から、患者の高さを直ちに判断することができる。
【0025】
この事例において、医療器具(9)を伴う搬送チューブ(7)が体腔内に導入されているかどうか、及び弁(8)が開いているかどうか、を確認することのみが必要とされる。医療器具が体腔内に導入されているかどうか、及び弁が開いているかどうか、という検出の部分的プロセスは、以下のように実施することができる。
【0026】
検出のために重要なのは、搬送チューブ(7)におけるチューブの容積の認識である。本発明によると、ポンプを作動するよう設置する前に、この容積を判断し、それをポンプに記憶させることが提案される。通常の臨床事例において、同一のチューブセットが常に使用され、そのためチューブの容積は1回しか判断する必要がない。本発明の好ましい実施形態において、チューブの容積は、例えばRFIDトランスポンダなどのチューブセットに装着されたメモリに記憶される。チューブセットをポンプに設置するとき、RFIDトランスポンダは読み出され、チューブの容積はポンプで利用可能となる。代替として、他の電気/電子、磁気、または光学(バーコードなど)伝達要素を通しても、伝達し得る。
【0027】
チューブの容積をポンプのメモリに記憶した後、供給を開始することができる。ゼロではない圧力センサ(6)の圧力値を表わすことによって、ポンプは、搬送チューブ(7)に充填を開始した情報を受け取る。供給された流体量は、ポンプの回転に比例するので、搬送チューブ(7)の中に供給される液体量は、正確に判断することができる。
【0028】
医療器具がすでに体腔内に適合されている、望ましい事例において、弁(8)は開けられ、圧力センサ(6)は、チューブが完全に充填されるまで、例えば供給された量がチューブの容積に相当するまで、実質的に一定の圧力を表わす。実際には、僅かに一定値の前後(例えば±3cm水柱)のポンプのぜん動のために、圧力は変動する。一定値の前後の、このような僅かな変動は、本明細書では説明目的で一定であると考慮する。液体が体腔に到達次第、体腔の望ましい拡張の結果として、圧力がゆっくり高まる。この事例において、探られる静水圧Phydは、供給された量がチューブの容積に相当した後に測定される圧力である。
【0029】
弁が閉じられている事例において、供給ポンプ(5)はチューブを完全に充填する能力はない。なぜなら、チューブ内に存在する空気は逃げることができず、そのため圧縮されるためである。システムのこの条件は、チューブの容積に相当する液体量を供給する前にすでに示され、大きい圧力増加が発生する。この事例において、患者の高さの測定は可能ではない。ポンプは、この事例では警報信号を送る。弁が開けられたとき、状況は上述の事例に相当する。
【0030】
搬送チューブの端部または医療器具の端部が、患者の体腔内にあるべきではない事例において、圧力センサ(6)によって測定された圧力は、チューブ端部が配置される高さに依存する。圧力センサは、チューブの容積に相当する液体量を供給した後、さらに供給しても増加しない圧力を表わす。この事例においても、ポンプの警報信号がもたらされる。搬送チューブを医療器具に接続した後、または医療器具を患者の体腔内に導入した後に、上記と同様に測定され得る上述の状況が、再び実現される。
【0031】
変形2:搬送ホイールの後ろに1つのみの圧力センサ(6)を備えるポンプの事例において(
図1参照)、上述のプロセスは、以下のように変更される。
【0032】
圧力Pwatを判断するため、圧力センサ(6)が圧力を検出するまで、接続されたリザーバを用いて、初めに液体が供給される。この圧力表示は、チューブが少なくとも圧力センサ(6)の位置まで充填された手がかりとしての役割を担う。この時点において、供給は止められ、搬送ホイール(4)は停止する。次に、「後進供給」が開始され、例えばローラホイールは反対方向に回転する。この後進供給において、モータのトルクが判断される。このため、電流センサ(12)は、後進供給の間に電流フローを測定する役割を担う。電流フローはトルクに比例する。トルクは、一定部分及び可変部分から成る。この一定部分は、チューブ(3、7)の材料特性と組み合わせた、ポンプ(5)の転がり抵抗から形成される。臨床環境において使用される、一定のチューブ材料を用いることで、ここでは一定性を想定することができる。トルクの第2の構成要素は、静水圧Pwatであり、それに抗ってポンプ(5)は動作する必要がある。したがって、公知のポンプ及びチューブ材料を用いて、圧力Pwatを、電流センサ(12)で電流フローを測定することによって判断することができる。
【0033】
圧力センサ(6)が上述のような双方向圧力センサである事例において、圧力部分Pwatを判断した後、方法は上述(変形1)のように実施される。
【0034】
変形3:圧力センサ(6)が、正の圧力のみを測定できるが、負の圧力は測定できない単方向圧力センサである事例において、上述の方法は以下のように変更する必要がある。
【0035】
初めに、圧力Pwatは、変形1または変形2と同じように判断される。次に、ローラホイール(4)の作用によって、チューブの容積に相当する液体量が供給される。変形1で説明したように、医療器具が体腔内にあるかどうか、及び弁(8)が開いているかどうか、が判断される。弁(8)が開いているとき、医療器具(9)は体腔内にあり、チューブの容積に相当する量が供給され、圧力センサは正の圧力値を検出し、このときこの圧力値は圧力Phydに相当する。したがって、体腔は搬送ホイールの上方に位置付けられている。測定された圧力から、搬送ホイールの上方にある患者の高さを直ちに判断することができる。しかし、圧力センサ(6)が圧力を表示しないとき(圧力ゼロ)、患者は、供給ポンプの高さと同じか、または供給ポンプより下方に位置付けられている。この事例において、圧力値Phydは以下のように判断することができる。
【0036】
チューブの容積に相当する液体量を供給した後、供給ポンプは停止され、「後進供給」が搬送ホイールの後転によって生じる。上述の変形2と同じ方法で、電流フローは電流センサ(12)によって測定される。電流フローは、(上述の一定部を追加した)トルクに比例する。このトルクは合計圧力に比例する。この事例において、トルクは、例えばPwat+Phydの合計液注の圧力を表わす。合計圧力から、すでに知られている圧力Pwatを減算することによって、圧力Phydが判断される。これは同様に、供給ポンプの下方にある患者の体腔の高さを表わす。
【発明の効果】
【0037】
本発明による方法の特別な利点は、患者の高さを正確に測定するために必要なデータを、迅速かつ正確に判断できることである。簡易な方法で、ポンプの搬送ホイールが患者の体腔と同じ高さにあるかどうか、または所望の位置から大幅な逸脱があるかどうか、を判断することができる。同時に、(例えば弁の閉鎖、またはチューブが医療器具に接続されていない、などの)誤った動作がある場合、警報が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】患者(10)がポンプ(5)よりも高く位置付けられ、搬送ホイールの後ろに1つのみの圧力センサ(6)を備えるポンプの事例を示す図である。
【
図2】患者(10)がポンプ(5)よりも高く位置付けられた事例を示す図である。
【
図3】患者(10)がポンプ(5)よりも低く位置付けられた事例を示す図である。
【
図4】ポンプ(5)が流体を供給する際の圧力及び体積フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
静水圧(Phyd)を生じさせる患者の高さレベルhpatを判断するための、本発明による解決策は、下記2つの事例の間で区別をつけなければならない。
I)患者(手術領域)(10)は、ポンプ(5)の圧力センサ(6)よりも高いレベル(hpat>0)にある。
II)患者(手術領域)(10)は、ポンプ(5)の圧力センサ(6)よりも低いレベル(hpat<0)にある。
【0040】
本明細書では、圧力センサ(6)と搬送ローラホイール(4)の静水圧の有効高さとの間には、高さの相対差がないと想定する。「高さの相対差がない」値とは、3cm水柱以下である。
【0041】
さらに、下記の異なる事例の処置が存在する。
a)利用する器具(9)は、患者(10)または手術領域の体腔の外側にあり、出口端部は雰囲気または周囲圧力に通じている。
b)利用する器具(9)は、すでに手術領域の体腔内に導入されており、(より高い未知の)体腔圧Pcavが出口端部に作用している。
c)流体接続部における出口弁(8)が閉鎖されているか、またはチューブセクション(7)が接続を断たれている。
【0042】
事例I)a)において、ポンプ(5)の流体は、チューブ(3、7)及び医療器具(9)を流体で充填するために、リザーバ(1)から供給される。センサ(6)における圧力は一定の値に到達する。すなわちセンサ(6)における圧力は、ひと桁台の低いパーセンテージ範囲の中間値で変化するのみで、そのときチューブ(3、7)及び器具(9)は充填される。この事例において、ポンプ(5)は停止される。ポンプ(5)が停止した後に測定された一定の圧力値(Pdrv)は、静水圧(Phyd)に相当する。センサ値Pdrvから値Phydを静的控除することによって、静水圧(Phyd)は補正される。
【0043】
事例II)a)において、ポンプ(5)の流体は、チューブ(3、7)及び医療器具(9)を充填するために、リザーバ(1)から供給される。センサ(6)における圧力は一定の値に到達し、そのときチューブ(3、7)及び器具は充填される。この事例において、ポンプ(5)は停止される。測定された一定の圧力値(Pdrv)は静水圧(Phyd)に相当し、このとき周囲圧力に対する正負の圧力を測定することができる、双方向圧力センサが使用される。この事例において、体腔内の静水圧(Phyd)を判断するため、及び測定誤差を補正するために、固定値Phydをセンサ値Pdrvに加算することができる。
【0044】
事例II)a)において、単方向センサによって静水圧(Phyd)を判断するために、方法を拡張する必要がある。単方向センサは、周囲圧力よりも上の値、すなわち正の値しか測定できない。チューブ(3、7)及び器具(9)が流体で充填された後、かつ圧力センサ(6)が一定の測定値を判断した後で、ポンプ(5)は停止される。次に、ポンプ(5)は供給方向の反対に作動され、チューブセクション(7)の流体を引き込む。ポンプモータのトルク測定によって、必要な力、またはチューブの内径を考慮したポンプ(5)における引き込み圧(Pm)を、控除することができる。本明細書は、トルク~力~圧力である。トルクの判断は、ポンプ(5)の搬送ローラホイール(4)におけるモータ電流の測定によって下され得る。チューブ(3、7)及び器具(9)からの流体が送り返される際の、必要な引き込み圧が公知であるとき、それによって静水圧(Phyd)を計算することができる。これは、リザーバ(1)からポンプレベルまでの静水圧Pwatの高さを事前に認識する必要がある。計算は以下によって成される。
Pm-Pwat=Phyd
【0045】
リザーバ(1)の静水圧Pwatを測定するとき、以下の2つの可能性が存在する。第1に、搬送ローラホイール(4)とリザーバ(1)との間における、第2の圧力センサ(11)の使用すること。第2に、流体供給ポンプ(5)のトルク測定を介して、圧力Pwatの測定によって判断すること。第2の事例において、チューブセクション(7)及び器具(9)における静水圧(Phyd)が判断される前に、当初の測定プロセスが必要とされる。ポンプ(5)は、流体をリザーバ(1)からチューブセクション(3)の中に供給するために、チューブ内に流体がない状態で始動される。そのとき、流体が搬送ローラホイール(4)または圧力センサ(6)の箇所に到達し、水が、ポンプ(5)と患者(10)との間のチューブセクション(7)の中に供給されるとき、圧力増加が圧力センサ(6)において検出される。ポンプ(5)は停止され、供給方向は変更される(大量の流体が存在しない、ポンプ(5)と患者(10)との間のチューブセクション(7)において、ポンプ(5)は流体をリザーバ(1)へ送り戻す)。流体をチューブセクション(7)から、リザーバ(1)とポンプ(5)との間のチューブセクション(3)に供給するために、ポンプ(5)の必要なモータトルクは、圧力Pwatに比例する。比例係数は、利用するチューブセクション(3)の内径を測定することによって、事前に決定することができる。これに関する処置は、相関関係の事前測定であり、ポンプ(5)を作動させるとき、比例係数の指定は検出されたチューブセットに依存する。データの検出及び送信は、例えばチューブセットにおけるRFIDチップによって実行し得る。
【0046】
代替の実施形態において、チューブの内径、またはチューブ内径から計算されたチューブセクション(3)におけるチューブ断面積、及びモータトルクから、圧力Pwatしたがって搬送ローラホイール(4)とリザーバ(1)の流体レベルとの間の高さレベルを、数学的に判断することができる:
Pwat=モータトルク/(搬送ローラホイール(4)の半径×チューブセクション(3)におけるチューブ断面積)
【0047】
I)b)及びII)b)の事例において、事例I)a)及び事例II)a)からの方法を、変更して使用することができる。まず、ポンプ(5)と患者(10)との間のチューブセクション(7)は、センサ(6)における圧力が一定になるまで、ポンプ(5)を介して流体が充填される。器具(9)が患者の閉じられた体腔の中に導入されているとき(
図4のt
0時点)、ポンプ(5)が流体を供給する限り、圧力は増加し続け、一定の値に到達しない(
図4において、フロー(体積フロー)qの曲線=一定)。圧力信号の検出される経過から、事例I)b)及び事例II)b)が存在するものと結論付けることができる。この事例において、t
0時点におけるセンサ(6)の圧力値は、静水圧P
watとして指定される。
【0048】
単方向圧力センサを利用すべき場合、ポンプはt0時点で停止されなければならず、静水圧Pwatを計算するために、事例II)b)における上述の方法を実施すべきである。
【0049】
事例I)c)及び事例II)c)において、初めに値を判断することはできない。デバイスを使用する前、したがって補正のための高さ検出の使用を必要とする前に、事例a)による状況が生じることになる。なぜなら使用者は、チューブが充填され、それに応じて高さ検出が成されることを確認しているからである。通常の使用において、事例b)は、事例c)の後には生じ得ないものと想定される。それにもかかわらず、これが生じる場合、圧力低下の開始値は、高さレベルhpatの差として使用されることになる。
【0050】
患者(10)と流体供給ポンプ(5)との間の高さレベルhpatの差を判断するための、本発明による方法は、以下のとおりである。
【0051】
当初の状況は、上に配置されたリザーバ(1)を備える流体供給ポンプ(5)の提供であり、本出願によるデバイスの流体接続経路が設けられるが、まだ充填されない。ポンプデバイスはオンにされ、作動準備が整い、自己テストが完了する。
【0052】
第1のステップにおいて、流体供給ポンプ(5)は、リザーバ(1)の貫通流体接続を通して流体を供給し、圧力センサ(6)が圧力の変化を検出すると直ちに、供給を停止する。この状況における圧力の変化は、供給された水柱によって生じる。したがって、圧力センサの測定値によって、空のチューブ(3、7)の条件下で、液柱がリザーバ(1)から流体供給ポンプ(5)へ拡がり、残りには空気が充填される状況を検出することができる。
【0053】
圧力センサ(11)が、搬送ローラホイール(4)の少し前か、または搬送ローラホイール(4)の上方に液圧で装着される場合、言及した供給の停止は、この任意の圧力センサ(11)で測定された値が、さらなるプロセスのために維持されることによって成り立つ。それは、必ずしも搬送ローラホイール(4)の停止を意味しない。
図1~
図3に示されるもの以外の圧力センサが利用できない場合、搬送ローラホイール(4)は後転する。チューブセクション(3)からリザーバ(1)まで(後進供給のためにも)供給するために必要なモータ電流の測定から、発生したトルクが導出される。このトルクは力として、搬送ローラホイールの径を用いて計算され、かつ圧力値(力/表面積)として、事前に知られているチューブ断面の有効面積と共に用いて計算される。そこから、リザーバ(1)の流体レベルと搬送ローラホイール(4)の液圧の有効高さとの間の高さが得られる。
【0054】
リザーバ(1)に向かう搬送ローラホイール(4)における液圧の有効高さと、患者(10)に向かう搬送ローラホイール(4)における液圧の有効高さとの間には、適用できる場合、事前に判断される必要がある差が存在する。
【0055】
リザーバ(1)の流体レベルと流体供給ポンプ(5)との間の、圧力Pwatまたは高さ値が判断された後、チューブ及び器具を充填するプロセスが続けられる。すなわちポンプ(5)は、患者(10)の方向に流体を供給し続ける。供給は、チューブセクション(7)が完全に充填されるまで続けられる。流体が、チューブセクション(7)または器具(9)の開口端部から出るとき、充填段階/供給は終了する。それは、上述(実施形態)の圧力増加の終了によって、または供給量が、供給セグメントと出口端部との間のチューブセクション(7)におけるチューブ容積よりも大きくなる(代替の実施形態)ことによって、検出される。これは、実際にポンプが、この時点から一定の体積フローで供給することを意味し、そこで圧力センサ(6)における一定の圧力値が得られ、この圧力値は、供給された量に関して評価される。代替の実施形態において、供給された量が評価され、供給された量は、搬送ローラホイール(4)の回転、及び事前に知られている回転当たりの供給量から判断される。流体供給ポンプ(5)は停止され、圧力センサ(6)の圧力値が評価される。圧力値が正であるとき、この圧力値は、搬送ローラホイール(4)と患者(10)との間の高さレベルを判断し、それによって、この事例においてはポンプ(5)が患者(10)の高さレベルの下方にあることが想定される。
【0056】
圧力値が負であるとき、この圧力値はPhydとして使用されるか、または高さレベルhpatの差が判断され、それによって、この事例においてはポンプ(5)が患者(10)の高さレベルの上方にあることが想定される。
【0057】
圧力値が0(ゼロ)のとき、この事例においては圧力センサ(6)は負の値を測定できず、ポンプ(5)は患者(10)の高さレベルの上方にあると想定される。この事例のとき、搬送ローラホイール(4)は後転され、チューブセクション(7)からリザーバ(1)への供給(すなわち後進供給)に必要なモータ電流が測定され、そこから発生したトルクが導出される。このトルクは力として、搬送ローラホイールの径を用いて計算され、かつ圧力値(力/表面積)として、事前に知られているチューブ断面の有効面積と共に用いて計算される。それが、搬送ローラホイール(4)と患者(10)の高さレベルとの間の高さレベルをもたらす。
【0058】
所定の時間後に、圧力値が一定値にならないとき、出口端部が体腔内に設置されていると想定される。所定の時間とは、チューブの供給率及び断面積、ならびに任意で、気泡を洗浄するための短い追加によって与えられた、チューブの充填時間のことである。出口端部がすでに体腔内にある事例において、患者の高さレベルh
patを判断するために、本発明によって圧力増加が評価される。この評価は、
図4で例示的に示されるような進行を検出することと、ポンプ(5)と患者(10)との間の高さレベルh
patの差を判断するために、t
0時点の値を静水圧P
watとして使用するか、または導出することと、から成る。本明細書では、流体の一定の体積フローが生成されることが必要である。
【0059】
本発明によると、チューブセクション(7)または器具(9)の開口端部があるかどうかのテストも提供される。なぜなら、閉じられ得る出口弁(8)とのコネクタが提供され、クランプがチューブに装着され得るからである。この方法は、供給された流体量と共に圧力値を考慮する。体積フローが供給されるとき、圧力は、圧力センサ(6)において一定値に向かって動き、この事例において、チューブセクション(7)は周囲圧力に通じていると想定される。供給が停止されたとき圧力は低下し、圧力センサ(6)における測定値は減少する。これらの測定値が、フロー及び圧力の進行において生じるとき、この事例においてチューブセクション(7)の端部は、周囲圧力に通じていると想定される。
【0060】
フロー値がゼロのとき、及び圧力が安定を保つか僅かに低下するとき、この事例においてチューブセクション(7)の端部は周囲圧力に対して閉じられていると想定される。チューブ充填プロセスがちょうど終了した事例において、コネクタ(8)における出口弁は閉じられているか、またはクランプがチューブセクション(7)を締め付けていると想定される。この事例において、ポンプ(5)の使用をさらに進めると、使用者はチューブ充填プロセスを確認することになる。これは、コネクタ(8)の出口弁が短く開け閉めされ、いくらかの流体が逃げることを意味する。圧力センサ(6)は、コネクタ(8)における出口弁を開けることによって、圧力低下を検出し、そこで意図されるように、予め設定された圧力を維持するために、流体供給ポンプ(5)の供給が開始される。流体供給ポンプ(5)が状況を検出するので、すでに説明したように、静水圧の圧力値は、圧力センサ(6)または後進供給によって判断される。いわゆる遡及的に、供給開始における圧力値、もしくは、まだ閉じられている弁(8)の圧力値を、値Pwatと捉えるか、または、患者の高さレベルhpatがそこから判断される。
【0061】
出口端部は、搬送ローラホイール(4)の背部における流体ラインの、周囲圧力または体腔への移行部を指す。これは、チューブセクション(7)の端部、または出口弁(8)の端部もしくは器具(9)の端部であってよく、本発明による方法が適用されるときに、周囲圧力がどこに作用するかに依存する。
【符号の説明】
【0062】
hpat 患者の高さレベル=搬送ローラホイール(4)と患者(10)との間の液圧の有効高さレベル
P 圧力
Pm 引き込み圧
Pcav 体腔圧
Pdrv 供給圧
Phyd チューブ内における流体の静水圧
1 流体のリザーバ
2 リザーバとチューブ3との間の接続を形成するスパイクであり、通常、締め付けデバイスが容器の交換のために提供され得る
3 リザーバ1またはスパイク2と、搬送ローラホイール4との間におけるチューブセットのチューブセクションであり、流体ラインでもある
4 搬送ローラホイール
5 流体供給ポンプ、またはポンプデバイスもしくはポンプ
6 圧力センサであり、双方向設計(周囲圧力に対する負の圧力も測定)、または単方向設計(周囲圧力より高い圧力値のみを測定)
7 流体供給ポンプ5と、コネクタ8または器具9への接続部との間における、チューブセクションであり、流体ラインでもある
8 任意で設けられる、出口弁とのコネクタ
9 器具であり、拡張されることになる体腔の中に導入され、その端部から、供給された流体は体腔の中に出て、スリーブ(トロカール)と内視鏡またはシェーバとの組み合わせであることが多い
10 患者=手術領域=手術エリア=キャビティ=体腔
11 任意選択の圧力センサであり、液圧的に搬送ローラホイール4よりも僅かに上方にある
12 流体供給ポンプ5の搬送ローラホイール4を動かすモータにおける、電流センサ(図示せず)