(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02P 3/22 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H02P3/22 B
(21)【出願番号】P 2021000894
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 総
(72)【発明者】
【氏名】鹿川 力
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161924(JP,A)
【文献】特開2020-080623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0191327(US,A1)
【文献】特開昭63-034086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相電流を供給する多相配線と、
前記多相配線の相間を可変抵抗で短絡してモータを停止させるDB(ダイナミックブレーキ)回路と、
前記DB回路が動作中に前記モータを手動で動かす指令をユーザより受け付けた場合、前記可変抵抗の抵抗値を変えるDB抵抗値変更指令生成部と、
を備え
、
前記DB抵抗値変更指令生成部は、前記モータを手動で動かす際の速度及び負荷の値を前記ユーザから受け付け、受け付けた速度及び負荷の値と、前記モータを手動で動かす際の速度、負荷及び前記可変抵抗の抵抗値を示す情報を含む抵抗値テーブルとに基づいて前記可変抵抗に設定する抵抗値を取得し、取得した抵抗値を前記可変抵抗に設定する、モータ駆動装置。
【請求項2】
多相電流を供給する多相配線と、
前記多相配線の相間を抵抗で短絡してモータを停止させるDB(ダイナミックブレーキ)回路と、
前記DB回路が動作中にユーザが前記モータを手動で動かす場合、パルス信号で前記DB回路をON/OFF制御するパルス指令生成部と、
を備え、
前記パルス指令生成部は、前記モータを手動で動かす際の速度及び負荷の値を前記ユーザから受け付け、受け付けた速度及び負荷の値と、前記モータを手動で動かす際の速度、負荷及び前記パルス信号のduty比を示す情報を含むduty比テーブルとに基づいてduty比を取得し、前記パルス信号のduty比を設定する、モータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置にDB(ダイナミックブレーキ)回路を設ける技術が知られている。例えば、特許文献1参照。
図9は、モータ駆動システムの構成の一例を示す図である。
図9に示すように、モータ駆動システム1は、例えば、電源10、モータ駆動装置20、及びモータ30を有する。
【0003】
電源10は、例えば、三相交流の電源であり、後述するモータ駆動装置20を介して後述するモータ30に電力を供給する。
モータ30は、例えば、サーボモータ等であり、後述するモータ駆動装置20からの制御指示に基づいて動作する。また、モータ30は、ブレーキ31を有する。ブレーキ31も後述するモータ駆動装置20からの制御指示に基づいて動作する。
【0004】
モータ駆動装置20は、例えば、コンバータ21、コンデンサ23、インバータ25、及びDB回路27を有する。また、DB回路27は、3つの抵抗R、及び2つのスイッチSWを有する。
【0005】
コンバータ21は、電源10からの交流電力を直流電力に変換する。コンバータ21は、例えば、パワー半導体素子及びパワー半導体素子に逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路を有するダイオード整流コンバータ又はPWMコンバータで構成される。
【0006】
コンデンサ23は、コンバータ21と後述するインバータ25との間のDCリンク部に設けられている。DCリンクコンデンサ13は、コンバータ21からの直流電力、及びインバータ25からの直流電力(回生電力)を蓄える。また、コンデンサ23は、コンバータ21又はインバータ25によって変換された直流電圧を平滑化する。
【0007】
インバータ25は、コンバータ21からの直流電力を交流電力に変換し、この交流電力をモータ30に供給する。インバータ25は、例えば、パワー半導体素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードを有するブリッジ回路から構成される。インバータ25は、これらのパワー半導体素子をモータ駆動装置20に含まれるプロセッサ等の制御部(図示しない)からの指令に基づいてON/OFF制御(例えばPWM制御)することにより、直流電圧を所望の波形及び周波数の交流電圧に変換する。
【0008】
DB回路27は、非常停止時にスイッチSWを入れて、抵抗Rを介して相間を短絡するように動作する。抵抗Rを介して相間を短絡することにより、モータ40のエネルギーを素早く消費するため、DB回路27は、モータ30の回転を素早く停止させることができる。
また、DB回路27は、安全のために、非常停止中には抵抗Rを入れたままにしておく(すなわちスイッチSWをON状態にしておく)ことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、非常停止中にモータ30を手動で回す場合がある。なお、
図9に示すように、モータ30にはブレーキ31がついている場合があり、この場合にはブレーキ解除が前提となる。
例えば、ロボット等において、アームを直接動かして(すなわちモータ30を回して)教示する、いわゆるダイレクトティーチを行うことがある。
また、アームが物にぶつかっている等、緊急的にアームを動かしたい等の場合もある。
しかしながら、非常停止のまま、モータ30を励磁せずに、手動でアームを動かす場合、抵抗Rが相間に入っていると、手動でモータ30を回すことは難しいケースがある。例えば、基本的に、抵抗Rの抵抗値はモータ30のエネルギーを素早く消費されるような値に設定されている。このため、手動でモータ30を回す時に、回すのに大きな力がいることになる。
【0011】
そこで、非常停止中であっても、モータを励磁せずにモータを手動で回せることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本開示のモータ駆動装置の一態様は、多相電流を供給する多相配線と、前記多相配線の相間を可変抵抗で短絡してモータを停止させるDB(ダイナミックブレーキ)回路と、前記DB回路が動作中に前記モータを手動で動かす指令をユーザより受け付けた場合、前記可変抵抗の抵抗値を変えるDB抵抗値変更指令生成部と、を備える。
【0013】
(2)本開示のモータ駆動装置の一態様は、多相電流を供給する多相配線と、前記多相配線の相間を抵抗で短絡してモータを停止させるDB(ダイナミックブレーキ)回路と、前記DB回路が動作中に前記モータを手動で動かす場合、パルス信号で前記DB回路をON/OFF制御するパルス指令生成部と、を備える。
【0014】
(3)本開示のモータ駆動装置の一態様は、多相電流を供給する多相配線と、前記多相配線の相間を抵抗で短絡してモータを停止させるDB(ダイナミックブレーキ)回路と、前記DB回路を前記多相配線から切り離すDB回路切り離し指令生成部と、前記モータの速度を検出する検出部と、前記DB回路を切り離した後、前記検出部により検出された前記モータの速度が所定値以上となったか否かを判定し、検出された前記モータの速度が所定値以上となった場合、前記DB回路を再接続、及び/又は前記モータに設けられたブレーキを動作させ、前記モータを停止させる危険速度判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
一態様によれば、非常停止中であっても、モータを励磁せずにモータを手動で回せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るモータ駆動システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】モータ駆動装置の制御処理について説明するフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係るモータ駆動システムの構成の一例を示す図である。
【
図6】モータ駆動装置の制御処理について説明するフローチャートである。
【
図7】第3実施形態に係るモータ駆動システムの構成の一例を示す図である。
【
図8】モータ駆動装置の制御処理について説明するフローチャートである。
【
図9】モータ駆動システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
まず、本実施形態の概略を説明する。本実施形態では、モータ駆動装置は、多相配線の相間を可変抵抗で短絡してモータを停止させるDB回路と、DB回路が動作中にモータを手動で動かす指令をユーザより受け付けた場合、可変抵抗の抵抗値を変えるDB抵抗値変更指令生成部と、を有する。
【0018】
これにより、本実施形態によれば、非常停止中であっても、モータを励磁せずにモータを手動で回せることができる。
以上が本実施形態の概略である。
【0019】
次に、第1実施形態の構成について図面を用いて詳細に説明する。ここでは、モータ駆動装置は、電源から3相交流が入力される場合を例示する。なお、本発明は、モータ駆動装置は3相交流が入力される場合に限定されず、3以外の多相交流が入力されてもよく、直流が入力されてもよい。
【0020】
図1は、第1実施形態に係るモータ駆動システムの構成の一例を示す図である。なお、
図9のモータ駆動システム1の要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図1に示すように、モータ駆動システム1は、例えば、電源10、モータ駆動装置20a、及びモータ30を有する。
【0021】
電源10、モータ30、ブレーキ31は、
図9の電源10、モータ30、ブレーキ31と同様の機能を有する。
以下では、モータ30は、例えば、ロボット(図示しない)を駆動するために、当該ロボットに含まれる複数の関節軸それぞれに配置されるサーボモータ等であり、後述するモータ駆動装置20aからの制御指示に基づいて動作する。
【0022】
<モータ駆動装置20a>
モータ駆動装置20aは、例えば、コンバータ21、コンデンサ23、インバータ25、及びDB回路27a、制御部201、及び記憶部202を有する。また、制御部201は、DB抵抗値変更指令生成部210を有する。
【0023】
コンバータ21、コンデンサ23、及びインバータ25は、
図9のコンバータ21、コンデンサ23、及びインバータ25と同様の機能を有する。
【0024】
DB回路27aは、ロボット(図示しない)の非常停止時に、モータ30を速やかに停止させるためにモータ30の制動を行う。
DB回路27aは、モータ30の端子間(換言すれば、モータコイルの相間)にそれぞれ設けられた3つの可変抵抗R1と2個のスイッチSWとから構成される。2つのスイッチSWは、3つの相のうちいずれか2つの相にそれぞれ設けられる。
【0025】
スイッチSWは、例えば、b接点の電磁接触型リレー(ノーマリクローズ:コイルに電流が流れるとオープン)等の機械接点式リレーである。スイッチSWは、後述する制御部201からの指令に基づいて、ロボット(図示しない)の非常停止時にモータ30を速やかに停止させるためにON/OFF制御される。なお、スイッチSWは、安全のために、非常停止中の間、後述する可変抵抗R1を入れたままにしてもよい。
【0026】
可変抵抗R1は、非常停止時にスイッチSWがON状態になることで、相間を短絡することで、モータ30のエネルギーを素早く消費し、モータ30を素早く停止させる。可変抵抗R1の抵抗値は、後述するDB抵抗値変更指令生成部210からの制御指示に基づいて変更される。なお、可変抵抗R1の抵抗値は、非常停止時では、最大の値に設定されることが望ましい。
【0027】
記憶部202は、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等であり、各種の制御用プログラムとともに、抵抗値テーブル220を記憶してもよい。
抵抗値テーブル220は、例えば、ロボット(図示しない)のアームを直接動かして教示する等の場合に、モータ30を手動で動かすときの速度、負荷、及び可変抵抗R1の抵抗値を示す情報を含む。
図2は、抵抗値テーブル220の一例を示す図である。
図2に示すように、抵抗値テーブル220は、例えば、「速度」、「負荷」、及び「抵抗値」の格納領域を含む。
抵抗値テーブル220内の「速度」の格納領域には、モータ30を手動で動かす際の速度が格納される。
抵抗値テーブル220内の「負荷」の格納領域には、モータ30を手動で動かす際の負荷が格納される。
抵抗値テーブル220内の「抵抗値」の格納領域には、「速度」の格納領域の速度、及び「負荷」の格納領域の負荷でモータ30を手動で動かす場合に、DB回路27aの可変抵抗R1に設定される抵抗値が格納される。
【0028】
制御部201は、CPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)メモリ等を有し、これらはバスを介して相互に通信可能に構成される、当業者にとって公知のものである。
CPUはモータ駆動装置20aを全体的に制御するプロセッサである。CPUは、ROMに格納されたシステムプログラム及びアプリケーションプログラムを、バスを介して読み出し、システムプログラム及びアプリケーションプログラムに従ってモータ駆動装置20a全体を制御する。これにより、
図1に示すように、制御部201が、DB抵抗値変更指令生成部210の機能を実現するように構成される。RAMには一時的な計算データや表示データ等の各種データが格納される。また、CMOSメモリは図示しないバッテリでバックアップされ、モータ駆動装置20aの電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成される。
【0029】
DB抵抗値変更指令生成部210は、DB回路27aが動作中(すなわち、非常停止中)にモータ30を手動で動かす指令をユーザより受け付けた場合、可変抵抗R1の抵抗値を変える。
具体的には、DB抵抗値変更指令生成部210は、例えば、図示しないロボット制御装置や教示操作盤を介して、非常停止中のロボット(図示しない)のモータ30を手動で動かす際の速度及び負荷の値を、ユーザから受け付ける。DB抵抗値変更指令生成部210は、受け付けた速度及び負荷の値と、抵抗値テーブル220と、に基づいてDB回路27aの可変抵抗R1に設定する抵抗値を取得し、取得した抵抗値を可変抵抗R1に設定する。そして、DB抵抗値変更指令生成部210は、手動操作モードへ移行する。DB抵抗値変更指令生成部210は、モータ30を手動で動かすためのDB抵抗値変更指示、及びモータ30のブレーキ31を解除するDB回路解除指示を出力する。
そうすることで、モータ駆動装置20aは、非常停止中であっても、モータ30の動かしやすさをコントロールしつつ、モータ30を励磁せずにモータ30を手動で回せることができる。
なお、DB抵抗値変更指令生成部210は、ユーザからモータ30の速度及び負荷の値を受け付けたが、モータ30の速度及び負荷以外のパラメータをユーザから受け付けてもよい。
【0030】
<モータ駆動装置20aの制御処理>
次に、
図3を参照しながら、モータ駆動装置20aの制御処理の流れを説明する。
図3は、モータ駆動装置20aの制御処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、非常停止中にユーザから速度及び負荷の値を受け付ける度に実行される。
【0031】
ステップS10において、DB抵抗値変更指令生成部210は、図示しないロボット制御装置や教示操作盤を介して、非常停止中のロボット(図示しない)のモータ30を手動で動かす際の速度及び負荷の値を、ユーザから受け付ける。
【0032】
ステップS11において、DB抵抗値変更指令生成部210は、ステップS10で取得した速度及び負荷の値と、抵抗値テーブル220と、に基づいてDB回路27aの可変抵抗R1に設定する抵抗値を取得し、取得した抵抗値を可変抵抗R1に設定する。
【0033】
ステップS12において、DB抵抗値変更指令生成部210は、手動操作モードへ移行する。
【0034】
ステップS13において、DB抵抗値変更指令生成部210は、モータ30を手動で動かすためのDB抵抗値変更指示、及びモータ30のブレーキ31を解除するDB回路解除指示を出力する。
【0035】
以上のように、第1実施形態に係るモータ駆動装置20aは、非常停止中において、図示しないロボット制御装置や教示操作盤を介して、ロボット(図示しない)のモータ30を動かす際の速度及び負荷の値をユーザから受け付けた場合、受け付けた速度及び負荷の値と、抵抗値テーブル220と、に基づいてDB回路27aの可変抵抗R1に設定する抵抗値を取得し、取得した抵抗値を可変抵抗R1に設定する。
これにより、モータ駆動装置20aは、非常停止中であっても、モータ30の動かしやすさをコントロールしつつ、モータ30を励磁せずにモータ30を手動で回せることができる。
以上、第1実施形態について説明した。
【0036】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、モータ駆動装置20bは、DB回路27bをパルス信号でON/OFF制御し、ユーザから受け付けたモータ30を動かす際の速度及び負荷の値に応じてパルスのduty比を変更する点が、第1実施形態と異なる。
これにより、第2実施形態のモータ駆動装置20bは、非常停止中であっても、モータ30を励磁せずにモータ30を手動で回せることができる。
以下に、第2実施形態について説明する。
【0037】
図4は、第2実施形態に係るモータ駆動システムの構成の一例を示す図である。なお、
図1のモータ駆動システム1の要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0038】
<モータ駆動装置20b>
図4に示すように、モータ駆動装置20bは、例えば、コンバータ21、コンデンサ23、インバータ25、及びDB回路27、制御部201b、及び記憶部202bを有する。また、制御部201bは、パルス指令生成部211を有する。
コンバータ21、コンデンサ23、及びインバータ25は、第1実施形態のコンバータ21、コンデンサ23、及びインバータ25と同様の機能を有する。
【0039】
DB回路27bは、
図9のDB回路27と同様に、ロボット(図示しない)の非常停止時に、モータ30を速やかに停止させるためにモータ30の制動を行う。
図4に示すように、DB回路27bは、モータ30の端子間(換言すれば、モータコイルの相間)にそれぞれ設けられた3つの抵抗Rと2個のスイッチSWとから構成される。2つのスイッチSWは、3つの相のうちいずれか2つの相にそれぞれ設けられる。そして、2つのスイッチSWは、後述するパルス指令生成部211からのパルス信号に基づいて、ロボット(図示しない)の非常停止時にモータ30を速やかに停止させるためにON/OFF制御される。
なお、抵抗Rは、所定の抵抗値が設定された抵抗でもよく、可変抵抗でもよい。
【0040】
記憶部202bは、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等であり、各種の制御用プログラムとともに、duty比テーブル221を記憶してもよい。
duty比テーブル221は、例えば、ロボット(図示しない)のアームを直接動かして教示する等の場合に、モータ30を手動で動かすときの速度、負荷、及び後述するパルス指令生成部211が生成するパルス信号のduty比を示す情報を含む。
図5は、duty比テーブル221の一例を示す図である。
図5に示すように、duty比テーブル221は、例えば、「速度」、「負荷」、及び「duty比」の格納領域を含む。
duty比テーブル221内の「速度」の格納領域には、モータ30を手動で動かす際の速度が格納される。
duty比テーブル221内の「負荷」の格納領域には、モータ30を手動で動かす際の負荷が格納される。
duty比テーブル221内の「duty比」の格納領域には、「速度」の格納領域の速度、及び「負荷」の格納領域の負荷でモータ30を手動で動かす場合に、パルス指令生成部211が生成するパルス信号のduty比が格納される。
【0041】
制御部201bは、CPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)メモリ等を有し、これらはバスを介して相互に通信可能に構成される、当業者にとって公知のものである。
CPUはモータ駆動装置20bを全体的に制御するプロセッサである。CPUは、ROMに格納されたシステムプログラム及びアプリケーションプログラムを、バスを介して読み出し、システムプログラム及びアプリケーションプログラムに従ってモータ駆動装置20a全体を制御する。これにより、
図4に示すように、制御部201bが、パルス指令生成部211の機能を実現するように構成される。
【0042】
パルス指令生成部211は、パルス信号を生成し、DB回路27bのスイッチSWをON/OFF制御することにより、ロボット(図示しない)の非常停止時に、DB回路27bを動作させモータ30を速やかに停止させる。
また、パルス指令生成部211は、DB回路27bが動作中(すなわち、非常停止中)にモータ30を手動で動かす指令をユーザより受け付けた場合、生成するパルス信号のduty比を変える。
具体的には、パルス指令生成部211は、例えば、図示しないロボット制御装置や教示操作盤を介して、非常停止中のロボット(図示しない)のモータ30を手動で動かす際の速度及び負荷の値を、ユーザから受け付ける。パルス指令生成部211は、受け付けた速度及び負荷の値と、duty比テーブル221と、に基づいてduty比を取得し、取得したduty比を設定する。そして、パルス指令生成部211は、手動操作モードへ移行し、設定したduty比でパルス信号を生成して、生成したパルス信号をDB回路27bに出力する。
そうすることで、モータ駆動装置20bは、非常停止中であっても、モータ30の動かしやすさをコントロールしつつ、モータ30を励磁せずにモータ30を手動で回せることができる。
なお、パルス指令生成部211は、ユーザからモータ30の速度及び負荷の値を受け付けたが、モータ30の速度及び負荷以外のパラメータをユーザから受け付けてもよい。
【0043】
<モータ駆動装置20bの制御処理>
次に、
図6を参照しながら、モータ駆動装置20bの制御処理の流れを説明する。
図6は、モータ駆動装置20bの制御処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、非常停止中にユーザから速度及び負荷の値を受け付ける度に実行される。
【0044】
ステップS20において、パルス指令生成部211は、図示しないロボット制御装置や教示操作盤を介して、非常停止中のロボット(図示しない)のモータ30を手動で動かす際の速度及び負荷の値を、ユーザから受け付ける。
【0045】
ステップS21において、パルス指令生成部211は、ステップS20で取得した速度及び負荷の値と、duty比テーブル221と、に基づいてduty比を取得し、取得したduty比を設定する。
【0046】
ステップS22において、パルス指令生成部211は、手動操作モードへ移行する。
【0047】
ステップS23において、パルス指令生成部211は、モータ30のブレーキ31を解除するDB回路解除指示を出力するとともに、設定したduty比でパルス信号を生成し、生成したパルス信号でDB回路27bをON/OFF制御する。
【0048】
以上のように、第2実施形態に係るモータ駆動装置20bは、非常停止中において、図示しないロボット制御装置や教示操作盤を介して、ロボット(図示しない)のモータ30を手動で動かす際の速度及び負荷の値をユーザから受け付けた場合、受け付けた速度及び負荷の値と、duty比テーブル221と、に基づいてパルス信号のduty比を取得し、取得したduty比を設定する。
これにより、モータ駆動装置20bは、非常停止中であっても、モータ30の動かしやすさをコントロールしつつ、モータ30を励磁せずにモータ30を手動で回せることができる。
以上、第2実施形態について説明した。
【0049】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、モータ駆動装置20cは、DB回路27を切り離し、DB回路27を切り離した後、モータ30の速度が予め設定された所定値以上となった場合、DB回路27を再接続、及び/又はモータ30のブレーキ31を動作させ、モータ30を停止させる点が、第1実施形態と異なる。
これにより、第3実施形態のモータ駆動装置20cは、非常停止中であっても、モータ30を励磁せずにモータ30を手動で回せることができる。
以下に、第3実施形態について説明する。
【0050】
図7は、第3実施形態に係るモータ駆動システムの構成の一例を示す図である。なお、
図9のモータ駆動システム1の要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0051】
図7に示すように、モータ30は、ブレーキ31、及び位置検出部32を有する。
モータ30、及びブレーキ31は、
図9のモータ30、及びブレーキ31と同様の機能を有する。
位置検出部32は、例えば、エンコーダ等であり、モータ30の回転位置及び回転角度を検出する。位置検出部32は、検出したモータ30の回転位置及び回転角度の情報を、後述するモータ駆動装置20cに出力する。
【0052】
<モータ駆動装置20c>
図7に示すように、モータ駆動装置20cは、例えば、コンバータ21、コンデンサ23、インバータ25、及びDB回路27、制御部201c、及びブレーキ回路203を有する。また、制御部201cは、DB回路切り離し指令生成部212及び危険速度判定部213を有する。
コンバータ21、コンデンサ23、及びインバータ25は、
図9のコンバータ21、コンデンサ23、及びインバータ25と同様の機能を有する。
DB回路27は、
図9のDB回路27と同様に、ロボット等の非常停止時に、モータ30を速やかに停止させるためにモータ30の制動を行う。
【0053】
ブレーキ回路203は、後述する制御部201cからの制御指示に基づいて、モータ30のブレーキ31を動作させ、モータ30を停止させる。
【0054】
制御部201cは、CPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)メモリ等を有し、これらはバスを介して相互に通信可能に構成される、当業者にとって公知のものである。
CPUはモータ駆動装置20cを全体的に制御するプロセッサである。CPUは、ROMに格納されたシステムプログラム及びアプリケーションプログラムを、バスを介して読み出し、システムプログラム及びアプリケーションプログラムに従ってモータ駆動装置20c全体を制御する。これにより、
図1に示すように、制御部201が、DB回路切り離し指令生成部212、及び危険速度判定部213の機能を実現するように構成される。
【0055】
DB回路切り離し指令生成部212は、例えば、図示しないロボット制御装置や教示操作盤等を介して、非常停止中のロボット(図示しない)のモータ30を手動で動かす手動操作モードへ移行の指示をユーザから受け付けた場合、スイッチSWをOFF状態にして、DB回路27を三相配線から切り離す。この場合、DB回路切り離し指令生成部212は、ブレーキ回路203を介して、モータ30のブレーキ31を解除する。
【0056】
危険速度判定部213は、DB回路27を切り離した後、位置検出部32により検出されたモータ30の速度が予め設定された所定値以上となったか否かを判定し、検出されたモータ30の速度が所定値以上となった場合、DB回路27を再接続、及び/又はモータ30に設けられたブレーキ31を動作させ、モータ30を停止させる。
【0057】
<モータ駆動装置20cの制御処理>
次に、
図8を参照しながら、モータ駆動装置20cの制御処理の流れを説明する。
図8は、モータ駆動装置20cの制御処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、非常停止中にユーザから手動操作モードへの移行を受け付ける度に実行される。
【0058】
ステップS30において、DB回路切り離し指令生成部212は、図示しないロボット制御装置や教示操作盤を介して、非常停止中のロボット(図示しない)のモータ30を手動で動かす手動操作モードへの移行を、ユーザから受け付け、手動操作モードへ移行する。
【0059】
ステップS31において、DB回路切り離し指令生成部212は、DB回路27を解除する(切り離す)とともに、ブレーキ回路203を介して、モータ30のブレーキ31を解除する。
【0060】
ステップS32において、危険速度判定部213は、位置検出部32により検出されたモータ30の速度が所定値以上となったか否かを判定する。検出されたモータ30の速度が所定値以上となった場合、処理はステップS34に移る。一方、検出されたモータ30の速度が所定値未満の場合、処理はステップS33に移る。
【0061】
ステップS33において、危険速度判定部213は、手動操作モードが終了したか否かを判定する。手動操作モードが終了した場合、制御処理は終了する。一方、手動操作モードが終了していない場合、処理は、ステップS32に戻る。
【0062】
ステップS34において、危険速度判定部213は、DB回路27を投入(再接続)、及び/又はモータ30のブレーキ31を動作させ、モータ30を停止させる。DB回路27を切り離した後、位置検出部32により検出されたモータ30の速度が所定値以上となったか否かを判定し、検出されたモータ30の速度が所定値以上となった場合、DB回路27を再接続、及び/又はモータ30に設けられたブレーキ31を動作させ、モータ30を停止させる。
【0063】
以上のように、第3実施形態に係るモータ駆動装置20cは、非常停止中において、図示しないロボット制御装置や教示操作盤を介して、ロボット(図示しない)のモータ30を手動で動かす手動操作モードへの移行をユーザから受け付けた場合、DB回路27を切り離す。モータ駆動装置20cは、DB回路27を切り離した後、位置検出部32により検出されたモータ30の速度が予め設定された所定値以上となったか否かを判定し、検出されたモータ30の速度が所定値以上となった場合、DB回路27を再接続、及び/又はモータ30のブレーキ31を動作させ、モータ30を停止させる。
これにより、モータ駆動装置20cは、非常停止中であっても、モータ30の動かしやすさをコントロールしつつ、モータ30を励磁せずにモータ30を手動で回せることができる。
また、モータ駆動装置20cは、ソフトウェア的にコントロール可能であることから、追加のコストが発生しない。
また、モータ駆動装置20cは、モータ30を素早く手動で動かすことができ、安全も担保することができる。
以上、第3実施形態について説明した。
【0064】
以上、第1実施形態から第3実施形態について説明したが、モータ駆動装置20a、20b、20cは、上述の実施形態に限定されるものではなく、目的を達成できる範囲での変形、改良等を含む。
【0065】
<変形例>
上述の第1実施形態から第3実施形態では、モータ駆動装置20a、20b、20cは、図示しないロボット制御装置や教示操作盤等と異なる装置としたが、これに限定されない。例えば、モータ駆動装置20a、20b、20cの一部又は全部の機能を、図示しないロボット制御装置や教示操作盤等が備えるように構成されてもよい。
【0066】
なお、第1実施形態から第3実施形態に係るモータ駆動装置20a、20b、20cに含まれる各機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0067】
モータ駆動装置20a、20b、20cに含まれる各構成部は、電子回路等を含むハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。また、ハードウェアで構成する場合、上記の装置に含まれる各構成部の機能の一部又は全部を、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等の集積回路(IC)で構成することができる。
【0068】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(Non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(Tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は、無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0069】
なお、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0070】
以上を換言すると、本開示のモータ駆動装置は、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
【0071】
(1)本開示のモータ駆動装置20aは、多相電流を供給する多相配線と、多相配線の相間を可変抵抗R1で短絡してモータ30を停止させるDB(ダイナミックブレーキ)回路27aと、DB回路27aが動作中にモータ30を手動で動かす指令をユーザより受け付けた場合、可変抵抗R1の抵抗値を変えるDB抵抗値変更指令生成部210と、を備える。
このモータ駆動装置20aによれば、非常停止中であっても、モータ30を励磁せずにモータ30を手動で回せることができる。
【0072】
(2) (1)に記載のモータ駆動装置20aにおいて、DB抵抗値変更指令生成部210は、モータ30の速度又は負荷に応じて可変抵抗R1の抵抗値を設定してもよい。
そうすることで、モータ駆動装置20aは、モータ30の動かしやすさをコントロールしつつ、非常停止中にモータ30を手動で動かせることができる。
【0073】
(3)本開示のモータ駆動装置20bは、多相電流を供給する多相配線と、多相配線の相間を抵抗Rで短絡してモータ30を停止させるDB(ダイナミックブレーキ)回路27bと、DB回路27bが動作中にモータ30を手動で動かす場合、パルス信号でDB回路27bをON/OFF制御するパルス指令生成部211と、を備える。
このモータ駆動装置20bによれば、(1)と同様の効果を奏することができる。
【0074】
(4) (3)に記載のモータ駆動装置20bにおいて、パルス指令生成部211は、モータ30の速度又は負荷に応じてパルス信号のduty比を変化させてもよい。
そうすることで、モータ駆動装置20bは、(2)と同様の効果を奏することができる。
【0075】
(5) 本開示のモータ駆動装置20cは、多相電流を供給する多相配線と、多相配線の相間を抵抗で短絡してモータを停止させるDB(ダイナミックブレーキ)回路27と、DB回路27を多相配線から切り離すDB回路切り離し指令生成部212と、モータ30の速度を検出する位置検出部32と、DB回路27を切り離した後、位置検出部32により検出されたモータ30の速度が所定値以上となったか否かを判定し、検出されたモータの速度が所定値以上となった場合、DB回路27を再接続、及び/又はモータ30に設けられたブレーキ31を動作させ、モータ30を停止させる危険速度判定部213と、を備える。
このモータ駆動装置20cによれば、(1)と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 モータ駆動システム
10 電源
20a、20b、20c モータ駆動装置
21 コンバータ
23 コンデンサ
25 インバータ
27、27a、27b DB回路
201、201b、201c 制御部
202 記憶部
203 ブレーキ回路
210 DB抵抗値変更指令生成部
211 パルス指令生成部
212 DB回路切り離し指令生成部
213 危険速度判定部
30 モータ
31 ブレーキ
32 位置検出部