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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】センサ点検システム及びセンサ点検方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240806BHJP
【FI】
G06Q10/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021016926
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119654
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】工藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】今本 健二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直
【審査官】深津 始
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003765(JP,A)
【文献】特開2015-184243(JP,A)
【文献】特開2010-122790(JP,A)
【文献】特開2019-207585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -G06Q 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機械またはその周辺環境の状態を検知するセンサを点検するセンサ点検システムであって、
前記センサは、前記機械に搭載されたセンサであり、前記機械に使用されていない状態で実施可能な点検項目を有し、
一時的な稼働の停止を含み得る前記機械による一連の全体稼働について時間情報を含む稼働計画を保持する稼働計画記憶部と、
前記機械が前記全体稼働を開始した後に停止する停止時間を前記稼働計画から推定する停止時間推定部と、
前記停止時間推定部によって推定された停止時間の間に実施完了が可能な点検項目を、所要時間を紐付けて予め用意された前記センサに対する複数の点検項目のうちから選定して、前記センサの点検計画を作成する点検計画部と、
前記点検計画部によって作成された点検計画に従って前記センサを点検する点検実行部と、
を備えることを特徴とするセンサ点検システム。
【請求項2】
前記センサに対する複数の点検項目のそれぞれに点検の優先順位が設定されている場合、前記点検計画部は、前記停止時間推定部によって推定された停止時間の間に実施完了が可能な点検項目のうちから、優先順位が高いものを優先して前記点検計画に追加する
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ点検システム。
【請求項3】
前記稼働計画記憶部は、前記機械に関する状況の変化に応じて、保持する稼働計画を変更可能であり、
前記稼働計画が変更された場合、前記停止時間推定部は、変更後の稼働計画に基づいて停止時間を再推定し、前記点検計画部は、前記再推定された停止時間に基づいて前記点検計画を再作成し、前記点検実行部は、前記再作成された点検計画に従って前記センサを点検する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンサ点検システム。
【請求項4】
前記点検計画部は、前記点検実行部が前記センサを点検する前に、前記作成した点検計画をユーザに提示し、
前記稼働計画記憶部は、前記点検計画が提示されたユーザから現在の稼働計画に対する変更が入力されると、前記入力に応じて前記稼働計画を変更し、
前記稼働計画が変更された場合、前記停止時間推定部は、変更後の稼働計画に基づいて停止時間を再推定し、前記点検計画部は、前記再推定された停止時間に基づいて前記点検計画を再作成し、前記点検実行部は、前記再作成された点検計画に従って前記センサを点検する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンサ点検システム。
【請求項5】
前記センサが使用中であるか否かに基づいて当該センサが点検可能な状態であるか否かを判定する点検可否判定部をさらに備え、
前記点検実行部は、前記点検可否判定部によって前記センサが点検可能と判定された場合に、前記点検計画に従って前記センサを点検する
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のセンサ点検システム。
【請求項6】
前記点検計画部によって作成された点検計画、または前記点検実行部によって実行された前記センサの点検結果の少なくとも何れかを所定の出力装置から出力可能である
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のセンサ点検システム。
【請求項7】
前記停止時間推定部による前記停止時間の推定、及び前記点検計画部による前記点検計画の作成は、前記機械による前記全体稼働の開始前に実行される
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載のセンサ点検システム。
【請求項8】
所定の機械またはその周辺環境の状態を検知するセンサを点検するセンサ点検システムによるセンサ点検方法であって、
前記センサは、前記機械に搭載されたセンサであり、前記機械に使用されていない状態で実施可能な点検項目を有し、
前記センサ点検システムが、
一時的な稼働の停止を含み得る前記機械による一連の全体稼働について時間情報を含む稼働計画を保持し、
前記機械が前記全体稼働を開始した後に停止する停止時間を前記稼働計画から推定し、
前記推定された停止時間の間に実施完了が可能な点検項目を、所要時間を紐付けて予め用意された前記センサに対する複数の点検項目のうちから選定して、前記センサの点検計画を作成し、
前記作成した点検計画に従って前記センサを点検する
ことを特徴とするセンサ点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ点検システム及びセンサ点検方法に関し、機械に搭載されたセンサを点検するセンサ点検システム及びセンサ点検方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野や鉄道分野における自動運転化に向け、自動運転の基盤技術とされる障害物検知機能や自己位置推定機能のために、LiDAR(Light Detection And Ranging)やGNSS(Global Navigation Satellite System)等のセンサの活用が進んでいる。上記の障害物検知機能や自己位置推定機能において、センサの健全性は検知性能等の安全性に直結することから、センサ及びセンサを用いた各機能の健全性を定期的に点検する必要がある。
【0003】
例えば特許文献1には、センサを用いた機能を点検する診断手法として、鉄道車両における車体振動制御系の各種構成要素が健全に作動しているか否かの判断を、営業運転に入る前に、個別に毎日実施する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-267216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された診断方法では、営業運転の開始後にセンサや各機能の健全性に異常が発生した場合に、営業運転が終了するまで当該異常を発見できないおそれがあり、特に、非常時等の特殊な状況に使用時期が限定されるセンサや機能については、異常の発見が遅れる可能性が高かった。また、一般的には、営業運転中には、センサが使用されているため、当該センサの点検が実施できないという課題もあった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、センサ及びセンサを用いた機能の安全性を高めるために、運転開始後であってもセンサを点検することが可能なセンサ点検システム及びセンサ点検方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、所定の機械またはその周辺環境の状態を検知するセンサを点検するセンサ点検システムであって、前記センサは、前記機械に搭載されたセンサであり、前記機械に使用されていない状態で実施可能な点検項目を有し、一時的な稼働の停止を含み得る前記機械による一連の全体稼働について時間情報を含む稼働計画を保持する稼働計画記憶部と、前記機械が前記全体稼働を開始した後に停止する停止時間を前記稼働計画から推定する停止時間推定部と、前記停止時間推定部によって推定された停止時間の間に実施完了が可能な点検項目を、所要時間を紐付けて予め用意された前記センサに対する複数の点検項目のうちから選定して、前記センサの点検計画を作成する点検計画部と、前記点検計画部によって作成された点検計画に従って前記センサを点検する点検実行部と、を備えるセンサ点検システムが提供される。
【0008】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、所定の機械またはその周辺環境の状態を検知するセンサを点検するセンサ点検システムによるセンサ点検方法であって、前記センサは、前記機械に搭載されたセンサであり、前記機械に使用されていない状態で実施可能な点検項目を有し、前記センサ点検システムが、一時的な稼働の停止を含み得る前記機械による一連の全体稼働について時間情報を含む稼働計画を保持し、前記機械が前記全体稼働を開始した後に停止する停止時間を前記稼働計画から推定し、前記推定された停止時間の間に実施完了が可能な点検項目を、所要時間を紐付けて予め用意された前記センサに対する複数の点検項目のうちから選定して、前記センサの点検計画を作成し、前記作成した点検計画に従って前記センサを点検するセンサ点検方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転開始後であってもセンサを点検できることにより、センサ及びセンサを用いた機能の異常を早期に発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るセンサ点検システム100の構成例を示すブロック図である。
図2】稼働計画の一例を示す図である。
図3】点検項目データの一例を示す図である。
図4】センサ点検処理の処理手順例を示すフローチャートである。
図5】点検計画の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を詳述する。
【0012】
(1)構成
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ点検システム100の構成例を示すブロック図である。センサ点検システム100は、センサ搭載機械101に搭載されたセンサ108を点検するシステムであって、センサ搭載機械101における運転の一時停止のタイミング(例えば、センサ搭載機械101が鉄道車両に関する機械である場合、駅停止時や信号機停止時の時間内)にセンサ108の点検を実施することによって、運転開始後であっても点検を可能とし、センサ108及びセンサ108を用いる各機能(例えば、障害物検知機能や自己位置推定機能)の異常を早期に発見できるシステムである。
【0013】
図1に示したように、センサ点検システム100は、稼働計画記憶部102、停止時間推定部103、点検可否判定部104、点検項目記憶部105、点検計画部106、及び点検実行部107を備えて構成され、例えば、プロセッサ、メモリ、記憶デバイス、及び入出力デバイスを有する計算機によって実現される。なお、図1のセンサ点検システム100は、センサ108を搭載したセンサ搭載機械101の内部に設置されているが、本実施形態においてセンサ点検システム100の設置場所は、センサ搭載機械101の外部であってもよい。センサ搭載機械101の外部に設置される場合、センサ点検システム100は、無線を用いて、点検実行部107からの点検指示をセンサ搭載機械101及びセンサ108に送信し制御することで、センサ108の点検を実施することができる。
【0014】
センサ搭載機械101は、センサ108が搭載された車両等の機械である。なお、センサ搭載機械101について、本実施形態では鉄道や自動車といった移動体を例にとって説明するが、本発明を適用可能な機械はこれらに限定されるものではなく、家電や工場内設備等の固定された機械であってもよい。
【0015】
稼働計画記憶部102は、センサ搭載機械101の稼働計画を保持する。稼働計画は、例えば、鉄道の場合は事前に作成された運行ダイヤや運転曲線が挙げられ、自動車の場合は、信号機の切り替わり時間の統計データや計測データが挙げられる。また例えば、信号機情報活用運転システム(TSPS:Traffic Signal Prediction Systems)において道路交通情報提供装置である光ビーコン等を経由して信号機情報を取得できる場合には、それらの信号機情報を用いて信号機の稼働計画を直接取得するようにしてもよい。
【0016】
図2は、稼働計画の一例を示す図である。図2には、稼働計画の一例として、列車の運行ダイヤ210が例示されている。図2の運行ダイヤ210は、横軸に時刻、縦軸に列車の位置を示している。運行ダイヤ210において、具体的には、時刻B~時刻C、及び時刻D~時刻Eの時間帯は、列車が稼働している時間帯、すなわち駅間を運転中の時間帯となり、時刻A~時刻B、時刻C~時刻D、時刻E~時刻Fの時間帯は、列車が稼働していない時間帯、すなわち駅で停止中の時間帯となっている。
【0017】
停止時間推定部103は、稼働計画記憶部102の保持された稼働計画、及びセンサ108の状態に基づいて、センサ搭載機械101やセンサ108の停止時間を推定する機能を有する。
【0018】
例えば鉄道の場合、稼働計画記憶部102に図2の運行ダイヤ210が保持されているとすると、停止時間推定部103は、運行ダイヤ210で予定された駅での停止時間(時刻A~時刻B、時刻C~時刻D、時刻E~時刻Fの時間帯)をセンサ搭載機械101の停止時間として推定する。また、停止時間推定部103は、駅での停止時間をより正確に推定するために、運行ダイヤ以外にも、乗車率等、停止時間に影響を及ぼす情報を用いて、停止時間を推定するようにしてもよい。
【0019】
また、例えば自動車の場合、停止時間推定部103は、稼働計画記憶部102に保持された信号機の切り替わり時間に基づいて、前方の信号機による停止時間を推定する。また、停止時間推定部103は、自車両の前方に他の車両や障害物が存在し、信号機が進行色に切り替わっても自車両が稼働するまでに更に所要時間が必要となる場合には、この所要時間を推定して停止時間に含めるようにしてもよい。
【0020】
点検可否判定部104は、センサ108の点検可否を判定する機能を有する。点検可否判定部104は、判定対象のセンサ108が不使用となっている場合に点検可能(可)と判定し、判定対象のセンサ108が使用中の場合に点検不可(否)と判定する。なお、センサ搭載機械101が稼働している場合であっても、判定対象のセンサ108が制御に用いられていない時間帯があれば、点検可否判定部104は、これらの時間帯も点検可能と判定することができる。詳細は後述するが、センサ点検システム100では、点検計画部106が決定した点検計画に沿ってセンサ108の点検を実施する前に、点検可否判定部104が当該センサ108の点検可否を判定することにより、点検実行部107が実際に当該センサ108の点検を実施するか否かが決定される。
【0021】
点検項目記憶部105は、センサ108に対して実施する可能性がある複数の点検項目について、各点検項目に関するデータ(点検項目データ)を保持する。各点検項目データは、予め用意(設定)されて点検項目記憶部105に保持されるとするが、システムの稼働中に任意に変更または更新可能としてもよい。
【0022】
図3は、点検項目データの一例を示す図である。図3に示した点検項目データ220は、番号221、項目222、地点223、時間帯224、所要時間225、及び点検内容226を有して構成されるリストである。番号221は、各点検事項(点検項目)に割り当てられる整理番号であって、各点検項目を一意に識別する。項目222は、点検項目が属する分類を示す。項目222は重複してもよい。地点223は、点検を実施する地点を示し、時間帯224は、点検を実施する時間帯を示す。所要時間225は、点検に要する所要時間を示し、点検内容226は、具体的な点検の内容を示す。なお、点検を実施する地点223は、駅に限定されるものではなく、例えばセンサ108がカメラの場合は、キャリブレーションに用いるチェッカーボードが存在する場所、センサ108がLiDARの場合は、キャリブレーションに用いる反射板が存在する場所、センサ108がGNSSの場合は、位置補正用地上子等のように正確な位置把握が可能な場所等が考えられる。また、点検項目データに含まれる情報は、図3の点検項目データ220の例に限定されるものではなく、例えば、点検項目の優先順位を示す情報や、点検周期を示す情報等を含んでもよい。
【0023】
点検計画部106は、停止時間推定部103によって推定された停止時間と、点検項目記憶部105に保持された点検項目データとに基づいて、センサ108に対して実施する点検項目の計画(点検計画)を作成する機能を有する。なお、点検計画部106は、センサ点検後にセンサ108を再起動するために必要な時間を停止時間に加算して、点検計画を作成するようにしてもよい。
【0024】
ここで、点検計画部106によって決定される点検計画の具体的な点検内容について補足する。例えば、障害物検知機能に関する点検の場合、具体的な点検内容としては、所定フォーマットのデータが出力されることを確認するといったセンサ108の起動確認、センサ108が既知の物体を検出することによる検知対象物の検知可否確認、周辺に物体が存在しない場所でセンサ108が誤検知しないかを確認する診断、検知対象物までのセンサ108による距離推定精度の評価、センサ108の起動時間やロジック処理時間の確認、センサ108に付着した汚れの確認等が挙げられる。また例えば、自己位置推定機能に関する点検の場合、具体的な点検内容としては、上述したセンサ108の起動確認や誤検知確認等に加えて、センサ108が出力するセンサデータの信号強度の確認や、上空に存在する観測衛星の計画上の位置と実際の位置との照合等が挙げられる。
【0025】
また、点検計画部106による点検計画の具体的な決定方法としては例えば、停止時間内に実施可能な点検項目を抽出した上で、抽出した点検項目のうちから点検を実施する地点(地点223)を参考にして優先順位を決定し、停止時間の各時間帯に該当する点検項目を割り振る方法が考えられる。また、点検の優先順位は、地点に基づいて決定されることに限定されず、例えば、前回点検からの経過時間が長い機能が優先されるとしてもよいし、安全性、運行、または稼働率への影響が大きい機能が優先される、等としてもよい。また、点検項目記憶部105に保持される点検項目データに予め優先順位が設定されてもよい。
【0026】
点検実行部107は、点検可否判定部104によって点検可と判定された場合に、点検計画部106が作成した点検計画に従って、センサ108における点検を実行する機能を有する。
【0027】
センサ108は、センサ搭載機械101に搭載されたセンサであって、センサ搭載機械101の状態またはセンサ搭載機械101の周辺環境の状態を検知して所要のデータを計測する機能を有する。センサ108は、具体的には例えば、LiDARやGNSSであるが、これらに限らず、家電や工場内設備としての機械(センサ搭載機械101)に搭載された加速度センサや温度センサ等であってもよい。
【0028】
以上、センサ点検システム100の構成及び各構成の機能について説明したが、センサ点検システム100は上述した以外の構成を備えてもよく、また、各構成は上述した以外の機能を有してもよい。例えば、センサ点検システム100は、システムで取り扱う各種情報、具体的には、点検計画部106で作成された点検計画、点検可否判定部104による点検可否の結果を反映させた点検計画(実際に実施する点検項目の計画)、または、点検実行部107によって実施されたセンサ108の点検の結果等の情報を、ディスプレイやプリンタ等の出力装置に出力する機能を有することが考えられる。
【0029】
(2)センサ点検処理
図4は、センサ点検処理の処理手順例を示すフローチャートである。センサ点検処理は、センサ点検システム100によって実行され、任意のタイミングで処理を開始できる。
【0030】
図4によればまず、停止時間推定部103が、稼働計画記憶部102に保持された稼働計画に基づいて、センサ搭載機械101の停止時間を推定する(ステップS11)。停止時間の推定では、センサ108から取得されるセンサ状態を考慮してもよい。そしてステップS11において、停止時間推定部103は、推定した停止時間を点検計画部106に出力する。
【0031】
次に、点検計画部106が、ステップS11で停止時間推定部103から入力された停止時間と、点検項目記憶部105に保持された点検項目データとに基づいて、センサ108に対して実施する点検項目の計画(点検計画)を決定する(ステップS12)。そしてステップS12において、点検計画部106は、決定した点検計画を点検実行部107に出力する。
【0032】
図5は、点検計画の一例を示す図である。図5に示した点検計画情報230は、図2に示した運行ダイヤ210(稼働計画)と図3に示した点検項目データ220とに基づいて作成された点検計画の情報をリスト形式で示したデータである。点検計画情報230は、番号231、項目232、地点233、時間帯234、所要時間235、点検内容236、及び点検割当237を有して構成される。なお、点検計画情報230を構成するデータ項目のうち、番号231~点検内容236は、図3に例示した点検項目データ220における同名のデータ項目(番号221~点検内容226)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0033】
点検割当237には、各点検項目(番号231)に割り当てられた実施の時間帯が示される。なお、図5では、点検割当237の時間帯に対応する運行ダイヤ210も示されているが、運行ダイヤ210は点検計画情報230の一部として扱われてもよいし、稼働計画を示すデータとして別個に扱われてもよい。
【0034】
また、前述したように、本実施形態では、作成した点検計画をディスプレイ等の出力装置に出力することができることから、図5に示した点検計画情報230(及び運行ダイヤ210)は、点検計画の出力画面(表示画面)の一例と考えてもよい。図5のような表示画面が提示されることにより、ユーザは、センサ108の点検計画を確認することができる。
【0035】
具体的には、図5の点検計画情報230によれば、具体的には、駅Aでの停止中に「#1」の点検項目(項目1)及び「#2」の点検項目(項目2)の実施が計画されていることが示される。また、駅Bでの停止中には、「#2」の点検項目(項目2)及び「#3」の点検項目(項目3)の実施が計画され、駅Cでの停止中には、「#2」の点検項目(項目2)及び「#4」の点検項目(項目4)の実施が計画されていることが示される。
【0036】
図4の説明に戻る。ステップS12で点検計画が決定された後は、点検可否判定部104が、センサ108が点検を実行可能な状況であるか否かの点検可否を判定する(ステップS13)。点検可否判定部104が点検可と判定した場合は(ステップS13のYES)、ステップS14に進む。一方、点検可否判定部104が点検不可と判定した場合は(ステップS13のNO)、センサ点検システム100はセンサ108の点検を実施することなくセンサ点検処理を終了する。
【0037】
ステップS14では、点検実行部107が、ステップS12で決定された点検計画に従って、センサ108における点検を実行する。点検実行部107は、ステップS14でセンサ108の点検を実行した後、点検結果を示す情報を出力するようにしてもよく、また、センサ108の点検において異常を検知した場合には、所定の警告を報知する等してもよい。これらの処理の終了後、センサ点検システム100は、センサ点検処理を終了する。
【0038】
なお、上述したセンサ点検処理でステップS11やステップS12の処理を実施するタイミングとしては、センサ搭載機械101が稼働を停止するタイミング、若しくはセンサ108が不使用となるタイミングの直前が考えられるが、本実施形態では、これらのタイミングに限定されるものではなく、例えば、車両(例えば電車)が車庫内に格納されているときや運転開始前などの所定のタイミングに、予め実施するようにしてもよい。このように予めステップS11,S12の処理を実施することにより、点検計画の作成処理に時間が掛かる場合でも、センサ108の点検計画を事前に作成しておくことができ、点検計画の作成が車両の運行に影響を与えないようにする効果に期待できる。
【0039】
(3)点検計画の再作成
また、本実施形態に係るセンサ点検システム100では、センサ点検処理の派生例として、点検計画部106が点検計画を再作成できるようにしてもよい。以下に、点検計画の再作成について、いくつかの具体例を挙げながら詳しく説明する。
【0040】
点検計画を再作成する第1の方法は、点検計画が作成された後に、センサ搭載機械101に関する状況(例えば運行状況)が変化して停止時間が変化した場合に、点検計画部106が点検計画を再作成するものである。停止時間の変化を認識する方法としては、例えば、稼働計画記憶部102に保持された稼働計画(例えば運行ダイヤ)の変更を確認することが考えられる。この場合、停止時間推定部103が、稼働計画記憶部102に保持される稼働計画が変更された場合に、改めて停止時間を再推定し、再推定した停止時間に基づいて、点検計画部106が点検計画を再作成すればよい。
【0041】
なお、第1の方法において停止時間の変化を認識する方法は、上記した稼働計画の変更の確認に基づくものに限定されず、他にも例えば、出発信号の進行現示、ドアの開時間の変更、または、車載カメラによって計測した乗客の混雑率等に基づいて、センサ点検システム100が停止時間の変化を認識するものであってもよい。
【0042】
具体的には、出発信号の進行現示への変化が予定よりも遅い場合、ドアの開時間が予定よりも長い場合、あるいは乗客の混雑率が通常よりも高い場合には、停止時間推定部103は、通常よりも長い停止時間を再推定する。そして、再推定した停止時間が先の点検計画の作成時に用いられた停止時間よりも長くなる場合は、点検計画部106は点検計画の再作成を行い、このとき、先の作成時に優先順位が次点であった点検項目を、再作成する点検計画に追加する。なお、再作成する点検計画に追加する点検項目は次点の1つに限定されず、優先順位の高い方から順に、停止時間の増加分に収まる複数の点検項目を追加するようにしてもよい。
【0043】
また、出発信号の進行現示への変化が予定よりも早い場合、ドアの開時間が予定よりも短い場合、あるいは乗客の混雑率が通常よりも低い場合には、停止時間推定部103は、通常よりも短い停止時間を再推定する。そして、再推定した停止時間が先の点検計画の作成時に用いられた停止時間よりも短くなる場合は、点検計画部106は点検計画の再作成を行い、このとき、先に作成した点検計画において優先順位が低かった1以上の点検項目を、再作成する点検計画から除外する。
【0044】
点検計画を再作成する第2の方法は、センサ108の点検が実施される前に点検計画がユーザに提示され、ユーザから稼働計画を変更する入力がなされた場合に、点検計画部106が点検計画を再作成するものである。ユーザによる稼働計画の変更は、例えば、駅における車両の停止時間を変更すること等が考えられる。このような稼働計画の変更が行われた場合、停止時間推定部103が、変更された稼働計画に基づいて停止時間を再推定する。そして、点検計画部106が、再推定された停止時間に基づいて点検計画を再作成することにより、点検計画に含まれる点検項目を変更することができる。
【0045】
具体的には例えば、優先順位の高い点検項目P(所要時間60秒)と優先順位が低い点検項目Q(所要時間30秒)とがあり、稼働計画では駅Aでの停止時間が40秒であるとき、駅Aでの停止中に点検項目Qを実施する点検計画が作成されたとする。ここで、点検計画を確認したユーザが、点検項目Qではなく点検項目Pの実施を希望する場合には、駅Aでの停止時間を60秒以上に延長する変更を行うことにより、再作成後の点検計画では、点検項目Pの実施を予定することができる。すなわち、第2の方法は、例えば、ユーザの要望に沿った点検計画を作成しようとする際に有用な方法である。さらに、第2の方法では、点検計画をユーザに提示する際に、稼働計画をどのように変更すればどの点検項目を実施可能であるか等のサポート情報を合わせて提供できるようにしてもよい。
【0046】
また、センサ点検システム100は、上述した点検計画の再作成の有無に拘わらず、点検計画(あるいは(再作成後の点検計画)をユーザに提示した場合には、当該点検計画に従ってセンサ108の点検を実施してよいかの最終判断を、ユーザに行わせるようにしてもよい。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態に係るセンサ点検システム100によれば、駅停止時や信号機待ちの停止時といった運転の一時停止のタイミングの時間内にセンサの点検を実施することにより、運転開始後であってもセンサの点検が可能になるため、センサ及びセンサを用いる各機能の異常を早期に発見することができ、センサ及び各機能の安全性を高めることができる。
【0048】
特に、非常時等の特殊な状況に使用時期が限定される機能や、当該機能で用いられるセンサの場合は、点検の機会が少ないことが多いにも拘わらず、異常が発生した場合の影響が大きいという特徴を有することが一般的であるが、本実施形態に係るセンサ点検システム100によれば、このようなセンサや機能に対しても、運転開始前だけでなく、運転開始後の一時停止のタイミングにセンサの点検を実施可能なことから、異常を早期に発見して安全性を高める効果に期待できる。
【0049】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0050】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0051】
また、図面において制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0052】
100 センサ点検システム
101 センサ搭載機械
102 稼働計画記憶部
103 停止時間推定部
104 点検可否判定部
105 点検項目記憶部
106 点検計画部
107 点検実行部
108 センサ
210 運行ダイヤ
220 点検項目データ
230 点検計画情報
図1
図2
図3
図4
図5