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  • 特許-故障検知方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】故障検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/12 20210101AFI20240806BHJP
   G01K 7/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G01K11/12 D
G01K7/00 311
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021047101
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146242
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
(72)【発明者】
【氏名】五所尾 康博
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145737(JP,A)
【文献】特開2004-251766(JP,A)
【文献】特開平5-307087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用される処理液の温度を温度センサで測定して第1測定値を取得する第1ステップと、
前記温度センサで温度を測定した前記処理液の光透過特性を測定して第2測定値を取得する第2ステップと、
前記第2測定値から前記処理液の温度を推定して推定値を求める第3ステップと、
前記第1測定値と前記推定値との差により前記温度センサの故障を判断する第4ステップと
を備える故障検知方法。
【請求項2】
請求項1記載の故障検知方法において、
前記第4ステップは、前記第1測定値と前記推定値との差の絶対値が、設定されている閾値を超えた場合に、前記温度センサが故障していると判断する
ことを特徴とする故障検知方法。
【請求項3】
請求項1記載の故障検知方法において、
前記第4ステップは、
前記温度センサが前記処理液の温度を測定する第1箇所と、前記処理液の光透過特性を測定する第2箇所との間の距離に応じた、前記第1箇所における前記処理液の温度と前記第2箇所における前記処理液の温度との温度差を、前記推定値に加算した値と前記第1測定値との差の絶対値が、設定されている閾値を超えた場合に、前記温度センサが故障していると判断する
ことを特徴とする故障検知方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の故障検知方法において、
前記第3ステップは、各々異なる複数の温度における前記処理液の複数の光透過特性と、前記複数の光透過特性を測定したときの対応する前記複数の温度との関係より求められる回帰式に、前記第2測定値を代入することで前記推定値を求める
ことを特徴とする故障検知方法。
【請求項5】
請求項4記載の故障検知方法において、
前記光透過特性は、前記処理液の分光スペクトルであり、
分光スペクトルより求めることができる設定した波長間隔の複数の波長毎の前記処理液の吸光度を前記第2測定値とし、
前記回帰式は、前記第2測定値と前記処理液の温度との関係を示すものである
ことを特徴とする故障検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度測定装置で用いられる温度センサの故障を検知する故障検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程においては、様々な溶液が処理液として使用され、処理液に使用に関しては、製品の歩留の向上、安全性や作業効率などの観点から、濃度管理が重要である。この種の濃度測定として、処理液の吸光度の温度特性を事前に測定しておき、例えば、使用時には、処理液の吸光度を測定すると共に温度を計測し、測定された吸光度を、計測された温度で補正する技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4231757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術では、処理液の吸光度の温度特性を補正するため、温度センサで温度を計測する必要がある。しかし温度センサが故障した場合、正しい濃度を算出できない。また、この種の処理液を使用する場合、一般には、濃度に加えて温度も管理するため、温度センサが故障すると、処理液の品質が保証できず、ひいては、処理液を用いて処理した製品の品質が保証できなくなる。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、濃度測定装置で用いられる温度センサの故障が把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る故障検知方法は、使用される処理液の温度を温度センサで測定して第1測定値を取得する第1ステップと、温度センサで温度を測定した処理液の光透過特性を測定して第2測定値を取得する第2ステップと、第2測定値から処理液の温度を推定して推定値を求める第3ステップと、第1測定値と推定値との差により温度センサの故障を判断する第4ステップとを備える。
【0007】
上記故障検知方法の一構成例において、第4ステップは、第1測定値と推定値との差の絶対値が、設定されている閾値を超えた場合に、温度センサが故障していると判断する。
【0008】
上記故障検知方法の一構成例において、第4ステップは、温度センサが処理液の温度を測定する第1箇所と、処理液の光透過特性を測定する第2箇所との間の距離に応じた、第1箇所における処理液の温度と第2箇所における処理液の温度との温度差を、推定値に加算した値と第1測定値との差の絶対値が、設定されている閾値を超えた場合に、温度センサが故障していると判断する。
【0009】
上記故障検知方法の一構成例において、第3ステップは、各々異なる複数の温度における処理液の複数の光透過特性と、複数の光透過特性を測定したときの対応する複数の温度との関係より求められる回帰式に、第2測定値を代入することで推定値を求める。
【0010】
上記故障検知方法の一構成例において、光透過特性は、処理液の分光スペクトルであり、分光スペクトルより求めることができる設定した波長間隔の複数の波長毎の処理液の吸光度を第2測定値とし、回帰式は、第2測定値と処理液の温度との関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、処理液の光透過特性から推定される温度と、温度センサで測定した温度との差をもとに温度センサの故障を判断するので、濃度測定装置で用いられる温度センサの故障が把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る故障検知方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る故障検知方法について図1を参照して説明する。
【0014】
まず、第1ステップS101で、使用される処理液の温度を温度センサで測定して第1測定値を取得する。次に、第2ステップS102で、温度センサで温度を測定した処理液の光透過特性を測定して第2測定値を取得する。
【0015】
次に、第3ステップS103で、第2測定値から処理液の温度を推定して推定値を求める。第3ステップS103では、各々異なる複数の温度における処理液の複数の光透過特性と、複数の光透過特性を測定したときの対応する複数の温度との関係より求められる、光透過特性を変数とした回帰式に、第2測定値を代入することで推定値を求めることができる。
【0016】
例えば、光透過特性は、処理液の分光スペクトルであり、分光スペクトルより求めることができる設定した波長間隔の複数の波長毎の処理液の吸光度を第2測定値とし、回帰式は、第2測定値と処理液の温度との関係を示すものとすることができる。
【0017】
まず、複数の温度を、m個の温度とし、温度T0、T1、T2、・・、Tj、・・、Tm-1で、処理液の分光スペクトルS0、S1、S2、・・、Sj、・・、Sm-1を測定する。次に、温度T0における分光スペクトルS0を基準とし、温度Tj(j=1、2、・・・、m-1)における分光スペクトルSjについて、設定した波長間隔のn個の波長毎に、吸光度Xij(i=1、2、・・・、n)を求める。
【0018】
このようにして温度Tjについて求めた吸光度Xijを用い、温度Tを目的変数とし、測定される吸光度Xを説明変数として、多変量解析などにより、回帰係数b0、回帰係数biを決定して、回帰式「推定値=b0+b11+b22+b33+・・+bii+・・+bnn」を作成する。この回帰式の吸光度Xi(i=1、2、・・・、n)に、第2測定値として得られる設定した波長間隔のn個の波長毎の吸光度を代入することで、推定値を算出することができる。
【0019】
次に、第4ステップS104で、第1測定値と推定値との差により温度センサの故障を判断する。例えば、第1測定値と推定値との差の絶対値が、設定されている閾値を超えた場合に、温度センサが故障していると判断する。また、温度センサが処理液の温度を測定する第1箇所と、処理液の光透過特性を測定する第2箇所とが離れている場合、第1箇所と第2箇所とでは、処理液の温度が変化して異なる場合がある。このような場合、第1箇所と第2箇所との間の距離に応じた、第1箇所における処理液の温度と第2箇所における処理液の温度との温度差を、推定値に加算した値と第1測定値との差の絶対値が、設定されている閾値を超えた場合に、温度センサが故障していると判断することができる。
【0020】
なお、上述した第3ステップS103、第4ステップS104は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)と、主記憶装置と、外部記憶装置と、ネットワーク接続装置となどを備えたコンピュータ機器を用い、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUを動作させる(プログラムを実行する)ことで、実施可能である。上記プログラムは、上述した実施の形態で示した第3ステップS103、第4ステップS104をコンピュータが実行するためのプログラムである。ネットワーク接続装置は、ネットワークに接続する。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させることもできる。
【0021】
以上に説明したように、本発明によれば、処理液の光透過特性から推定される温度と、温度センサで測定した温度との差をもとに温度センサの故障を判断するので、濃度測定装置で用いられる温度センサの故障が把握できるようになる。
【0022】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
図1