(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】インストルメントパネル
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20240101AFI20240806BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
B60R16/02 620B
(21)【出願番号】P 2021047292
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木下 雄一
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-091406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00-37/20
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルであって、
車体に固定されるインパネ本体と、
前記インパネ本体の空所を車両後方から覆うとともに、車両前後方向で乗員と対向するカバーと、
を備え、
前記インパネ本体は、車幅方向に配策されるワイヤハーネスを保持するためのハーネス保持部を有し、
前記ハーネス保持部は、前記インパネ本体の前記空所を前記車幅方向に沿って延びているとともに、その長手方向の少なくとも一箇所に脆弱部を有し、
前記脆弱部は、前記ハーネス保持部の他の部位に比して、その断面積が小さく、
前記脆弱部は、前記ハーネス保持部の上縁から下縁に向けて延びる第1の切欠きを有し、
前記第1の切欠きの下端は、前記ハーネス保持部に保持されたワイヤハーネスの中心よりも車両下方に位置する、
インストルメントパネル。
【請求項2】
インストルメントパネルであって、
車体に固定されるインパネ本体と、
前記インパネ本体の空所を車両後方から覆うとともに、車両前後方向で乗員と対向するカバーと、
を備え、
前記インパネ本体は、車幅方向に配策されるワイヤハーネスを保持するためのハーネス保持部を有し、
前記ハーネス保持部は、前記インパネ本体の前記空所を前記車幅方向に沿って延びているとともに、その長手方向の少なくとも一箇所に脆弱部を有し、
前記脆弱部は、前記ハーネス保持部の他の部位に比して、その断面積が小さく、
前記カバーは、前記ハーネス保持部の脆弱部に向けて延びる側壁を有する、
インストルメントパネル。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記ハーネス保持部の上縁から下縁に向けて延びる第1の切欠きを有する、請求項
2に記載のインストルメントパネル。
【請求項4】
前記脆弱部は、前記ハーネス保持部の下縁から上縁に向けて延びる第2の切欠きを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のインストルメントパネル。
【請求項5】
前記ハーネス保持部は、その長手方向において左右一対の二箇所に前記脆弱部を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のインストルメントパネル。
【請求項6】
前記ハーネス保持部に対して前記ワイヤハーネスを固定するクリップをさらに備え、
前記脆弱部は、前記クリップよりも前記ハーネス保持部の一端側に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載のインストルメントパネル。
【請求項7】
前記ハーネス保持部は、前記カバーに対して反対側に位置する背面で、前記ワイヤハーネスを保持する、請求項1から6のいずれか一項に記載のインストルメントパネル。
【請求項8】
前記ハーネス保持部は、前記インパネ本体と一体で形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のインストルメントパネル。
【請求項9】
前記ハーネス保持部の車両前方には、ダクトが配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載のインストルメントパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、インストルメントパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に前方衝突が発生したときに、乗員がインストルメントパネルに強く接触するおそれがある。このような場合は、インストルメントパネルが変形することによって、乗員がインストルメントパネルから受ける反力を低減することが求められる。例えば特許文献1に、この種の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インストルメントパネルは、車内空間の確保、乗員の前方視界拡大の観点から、その高さを低くすることも有効である。しかしながら、インストルメントパネルの内部には、ワイヤハーネスや空調用のダクトといった、多くの部材が収容されている。インストルメントパネルの高さを低くすると、インストルメントパネルの容積も減少するので、それらの部材を配置する自由度は制限される。他の設計要件も考慮した結果、インストルメントパネルの近傍に、ワイヤハーネスを配策せざるを得ないこともある。この場合、上述したインストルメントパネルの変形が、ワイヤハーネス及びそれを保持する構造によって、意図せず阻害されるおそれがある。本明細書では、このような問題を少なくとも部分的に解決し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するインストルメントパネルは、インパネ本体と、カバーと、を備える。インパネ本体は、車体に固定される。カバーは、前記インパネ本体の空所を車両後方から覆うとともに、車両前後方向で乗員と対向する。前記インパネ本体は、車幅方向に配策されるワイヤハーネスを保持するためのハーネス保持部を有する。前記ハーネス保持部は、前記インパネ本体の前記空所を前記車幅方向に沿って延びているとともに、その長手方向の少なくとも一箇所に脆弱部を有する。前記脆弱部は、前記ハーネス保持部の他の部位に比して、その断面積が小さい。
【0006】
上記した構成によると、車両に前方衝突が発生したときに、乗員がカバーと接触することが想定される。この場合、乗員と接触したカバーが、インパネ本体の空所に入り込むことで、インストルメントパネルは大きく変形することができる。なお、インパネ本体の空所には、ワイヤハーネスが配策されており、ワイヤハーネスを保持するハーネス保持部が、当該空所を横切るように設けられている。しかしながら、ハーネス保持部には、その断面積が局所的に縮小された脆弱部が設けられている。従って、インパネ本体の空所に入り込むカバーが、仮にハーネス保持部と干渉したときでも、ハーネス保持部が脆弱部において変形又は破断することによって、カバーの変位が過剰に制限されることがない。このように、インストルメントパネルの近傍に、ワイヤハーネスを配策した場合でも、例えばカバーが強く押されたときは、カバーをインパネ本体に向けて移動させることで、インストルメントパネルを十分に変形させることができる。
【0007】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例のインストルメントパネル10の正面図を示す。
【
図3】
図2の矢印IIIに示す方向から見たときの矢視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態では、前記脆弱部が、前記ハーネス保持部の上縁から下縁に向けて延びる第1の切欠きが設けられていてもよい。インストルメントパネルの高さを低くした場合、カバーに押されるハーネス保持部には、上方からの力が加わりやすい。このとき、ハーネス保持部に、その上縁から下縁に向けて延びる第1の切欠きが設けられていると、第1の切欠きを起点に脆弱部がより変形または破断しやすい。
【0010】
本技術の一実施形態では、前記第1の切欠きの下端は、前記ハーネス保持部に保持されたワイヤハーネスの中心よりも車両下方に位置してもよい。このような構成によると、カバーに押されたハーネス保持部が、その上部を車両前方に倒すように変形しやすい。これにより、脆弱部には、引張荷重だけでなく、捩り荷重も加えられる。その結果、脆弱部が第1の切欠きの下端を起点に変形または破断しやすくなる。
【0011】
本技術の一実施形態では、前記脆弱部は、前記ハーネス保持部の下端から車両上方に延びる第2の切欠きを有してもよい。このような構成によると、脆弱部の断面積がさらに小さくなるため、脆弱部がさらに変形または破断しやすくなる。
【0012】
本技術の一実施形態では、前記ハーネス保持部は、その長手方向において左右一対の二箇所に前記脆弱部を有してもよい。このような構成によると、ハーネス保持部がカバーで押されたときに、左右一対の脆弱部の間に位置する区間が変位又は回転しやすくなり、それぞれの脆弱部の変形量が増す、または破断しやすくなる。
【0013】
本技術の一実施形態では、前記ハーネス保持部に対して前記ワイヤハーネスを固定するクリップをさらに備えてもよい。その場合、前記脆弱部は、前記クリップよりも前記ハーネス保持部の一端側に位置してもよい。このような構成によると、ハーネス保持部が脆弱部において変形又は破断したときに、ハーネス保持部に保持されたワイヤハーネスが、ハーネス保持部とともに移動する。これにより、カバーの移動がワイヤハーネスによって阻害されることをさけることができる。
【0014】
本技術の一実施形態では、前記カバーは、前記ハーネス保持部の脆弱部に向けて延びる側壁を備えていてもよい。言い換えると、前記カバーが側壁を備える場合、前記脆弱部は、その側壁の位置に合わせて設けられてもよい。このような構成によると、ハーネス保持部がカバーによって押されたときに、カバーからの荷重が脆弱部に集中することで、脆弱部がさらに変形または破断しやすくなる。
【0015】
本技術の一実施形態では、前記ハーネス保持部は、前記カバーに対して反対側に位置する背面で、前記ワイヤハーネスを保持してもよい。このような構成によると、インストルメントパネルの外側から見たときに、ワイヤハーネスがハーネス保持部によって覆われた位置関係となることから、インストルメントパネルが車両に組み付けられる際に、ワイヤハーネスに傷がつきにくい。
【0016】
本技術の一実施形態では、前記ハーネス保持部の上縁及び下縁の少なくとも一方は、前記脆弱部に隣接する区間にリムが設けられていてもよい。このような構成によると、ハーネス保持部の耐力が、脆弱部の位置でより大きく低下することから、脆弱部がさらに変形または破断しやすくなる。また、ハーネス保持部の剛性が向上するため、ワイヤハーネスが安定して保持される。
【0017】
本技術の一実施形態では、前記ハーネス保持部は、前記インパネ本体と一体で形成されてもよい。これにより、別体でハーネス保持部を設ける構成に比して、簡易な構成によりワイヤハーネスを保持することができる。
【0018】
本技術の一実施形態では、前記ハーネス保持部の車両前方に、ダクトが配置されてもよい。このような構成によると、ダクトをクロスメンバの上方に配置させる必要がなくなるため、インストルメントパネルの上下方向の大きさを縮小することができる。さらに、ダクトの内部は空洞であるため、衝突時には、ダクトが変形して衝突のエネルギーを吸収することで、インストルメントパネルから乗員へ加えられる反力を、小さくすることができる。
【0019】
(実施例)
図面を参照して実施例のインストルメントパネルについて説明する。
図1は、実施例のインストルメントパネル10(以下、I/P10と称することがある)の正面図であり、I/P10が搭載された車両2のキャビンに位置する乗員から見たI/P10の形状を示す。また、
図1では、主にI/P10の運転席周辺の形状のみが示され、助手席周辺の形状が省略されている。なお、狭義の「インストルメントパネル」は、計器28を意味するが、本明細書における「インストルメントパネル10」は、車両2の車幅方向の一方の端から他方の端まで、運転席および助手席の車両前方側に配置されている部品を意味する。
【0020】
また、以下では、車両2の車両上方(すなわち、図中矢印Upの方向)を単に「上」と記載し、その反対側の車両下方を単に「下」と記載することがある。同様に、車両2の車幅方向では、車両2のキャビンに位置する乗員から見た左方向(すなわち、図中矢印Left方向)を単に「左」と記載し、その反対側を単に「右」と記載することがある。同様に、車両2の車両前方向(すなわち、図中矢印Frの方向)を単に「前」と記載し、その反対側の車両後方を単に「後」と記載することがある。
【0021】
図1に示されるように、車両2は、I/P10に加え、さらに、ピラートリム4と、コンソール6と、ステアリング8と、フロントウィンドウ9と、クロスメンバ30と、ワイヤハーネス32と、ダクト34と、を備える。車両2の乗員は、フロントウィンドウ9を介して、車両2の前方の状況を視認する。フロントウィンドウ9が配置される開口は、I/P10の上面と、ピラートリム4の内側の面と、によって画定される。
【0022】
クロスメンバ30は、車幅方向に延びており、車両2の車体を構成する部材である。クロスメンバ30は、車体の右側と左側とを連結する。クロスメンバ30は、典型的には、超高張力鋼板で形成されるパイプ材である。I/P10の内側に配置されたクロスメンバ30は、インパネリインフォースメントとも呼ばれることがある。
【0023】
I/P10は、インパネ本体12と、コラムカバー20と、アンダーカバー22と、センターカバー24と、計器28と、複数のエアアウトレット26と、を備える。インパネ本体12は、クロスメンバ30に固定される。インパネ本体12は、樹脂で構成されている。インパネ本体12は、I/P10の土台となる部品である。インパネ本体12は、空所12aを備える。空所12aは、ステアリング8に接続されるステアリングシャフト36(
図2参照)等を下方から通過させるため、その下側が開放される。空所12aの高さ方向の中央部には、ハーネス保持部14が設けられている。ハーネス保持部14の詳細については、
図3を参照して後述する。空所12aは、コラムカバー20、アンダーカバー22によって車両後方から覆われる。インパネ本体12は、センターカバー24等によっても覆われるが、一部ではキャビン側(すなわち、
図1の紙面手前側)に露出する。
【0024】
コラムカバー20は、I/P10とステアリング8との間に位置する樹脂製のカバーであり、上下方向に分割された2つの部品で構成される。アンダーカバー22は、インパネ本体12の運転席側の下部を覆う樹脂製のカバーである。センターカバー24は、I/P10の中央部に位置する樹脂製のカバーであり、その中央には、乗員に車両2の位置情報等、様々な情報を提供するディスプレイ25が配置される。計器28は、車両2の走行速度等、様々な情報を乗員に提供するメータである。エアアウトレット26は、I/P10の内側で車両2の車幅方向の中央部に配置される空調機(図示省略)から供給された空気を、ダクト34を介してキャビン内に吹出す開口である。
【0025】
図1に示されるように、I/P10の内側には、クロスメンバ30に加え、ワイヤハーネス32、ダクト34、が配置される。ワイヤハーネス32は、車両2のフロアパネル上に配策されるメインハーネス(図示省略)から分岐して、I/P10の内側を通過し、例えば、ディスプレイ25等に電力、信号等を供給し、またはディスプレイ25等に入力された信号を出力する。
【0026】
図2を参照して、I/P10の内側の構造について説明する。I/P10の内側では、ステアリングシャフト36が空所12aを前後方向に延びる。ステアリングシャフト36は、ブラケット38を介して、クロスメンバ30に保持される。ステアリングシャフト36は、ステアリング8を回転可能に保持するシャフトであり、その前端は、車両2のフロアパネル(図示省略)に保持される。コラムカバー20は、I/P10とステアリング8との間で、ステアリングシャフト36を覆う。その結果、コラムカバー20は、ステアリング8を操舵する乗員(図示省略)と車両前後方向で対向する。すなわち、本実施例では、コラムカバー20が、「カバー」の一例である。
【0027】
図2に示されるように、クロスメンバ30の後方(すなわち、
図2の紙面右側)には、ダクト34が配置される。ダクト34の後方には、ワイヤハーネス32が配置される。このように、クロスメンバ30の後方にダクト34とワイヤハーネス32とを隣接させることによって、I/P10の上下方向の高さを縮小することができる。その結果、I/P10の上面の位置が低くなるため、フロントウィンドウ9を上下方向で大きくすることができる。これにより、乗員に対して、広い車内空間、広い視界を提供することができる。
【0028】
図1に示されるように、ワイヤハーネス32は、クロスメンバ30に沿って車幅方向に延びる。ワイヤハーネス32は、複数の電線を束ねて構成される。このため、クロスメンバ30に沿って延びるワイヤハーネス32は、その中央部で下方に垂れ下がりやすい。ワイヤハーネス32は、ハーネス保持部14に対して固定される。これにより、ワイヤハーネス32の垂れ下がりが抑制される。
【0029】
車両2に前面衝突が発生した場合、乗員(図示省略)は、慣性力によって前方に移動する。その際、乗員は、ステアリング8、コラムカバー20と接触する。乗員が前方にさらに移動すると、コラムカバー20は、空所12aに入り込み、ハーネス保持部14に後方から当接する。仮に、ハーネス保持部14の剛性が高く、コラムカバー20の前方への移動がハーネス保持部14によって制限されると、I/P10が十分に変形することができない。
【0030】
図3を参照して、ハーネス保持部14の詳細について説明する。
図3は、
図2の矢印IIIの方向に沿ってハーネス保持部14を見た矢視図である。
図3では、理解を助けるため、ダクト34、クロスメンバ30の図示が省略されている。ハーネス保持部14は、インパネ本体12と一体で形成されており、インパネ本体12の右側と中央側を連結する。ハーネス保持部14は、空所12aを横切る。ハーネス保持部14は、一対のクリップ33R,33Lを備える。一対のクリップ33R,33Lは、ワイヤハーネス32をハーネス保持部14に固定する樹脂製のクリップである。
【0031】
ハーネス保持部14の長手方向(すなわち、
図3の紙面左右方向)の両側の端部には、一対の脆弱部40R,40Lが設けられている。右側の脆弱部40Rは、ハーネス保持部14の上端から下方に延びる第1の切欠き41Rと、ハーネス保持部14の下端から上方に延びる第2の切欠き42Rと、を備える。同様に、左側の脆弱部40Lは、第1の切欠き41Lと、第2の切欠き42Lと、を備える。その結果、一対の脆弱部40R,40Lは、ハーネス保持部14の他の部位に比して、その断面積が小さくなる。
【0032】
先に述べたように、車両2(
図1参照)に前面衝突が発生した場合、乗員に押されたコラムカバー20は、ハーネス保持部14と当接する。この際、ハーネス保持部14は、コラムカバー20から前向きの荷重を受ける。断面積が小さい一対の脆弱部40R,40Lは、コラムカバー20から荷重を受けた場合に、変形または破断しやすい。そのため、コラムカバー20は、一対の脆弱部40R,40Lを変形または破断させながら、さらに前方へ移動する。このように、本実施例のI/P10は、一対の脆弱部40R,40Lによって、十分に変形することができる。
【0033】
また、一対の脆弱部40R及び40Lのそれぞれは、一対のクリップ33R,33Lの外側に位置している。別言すれば、一対のクリップ33R,33Lは、一対の脆弱部40R,40Lに比して、ハーネス保持部14の長手方向(すなわち、
図3の紙面左右方向)の中央側に位置する。すなわち、一対の脆弱部40R,40Lは、一対のクリップ33R,33Lよりもハーネス保持部14の一端側に位置する。これにより、ハーネス保持部14が一対の脆弱部40R,40Lにおいて変形又は破断したときに、ハーネス保持部14に保持されたワイヤハーネス32が、ハーネス保持部14とともに移動する。これにより、コラムカバー20の移動がワイヤハーネス32によって阻害されることをさけることができる。
【0034】
図4を参照して、左側の脆弱部40Lの詳細について説明する。なお、本明細書では、左側の脆弱部40Lについて主に説明するが、右側の脆弱部40Rも、同様の構造を有する。
【0035】
ハーネス保持部14の前側の面には、背面18が設けられる。背面18は、クロスメンバ30(
図2参照)と対向する。クリップ33Lは、ハーネス保持部14の下端を下方から挟持する。これにより、クリップ33Lがハーネス保持部14の背面18に固定される。背面18は、クリップ33Lを介してワイヤハーネス32を保持する面である。背面18にワイヤハーネス32を保持することで、I/P10の外側(すなわち、
図4の紙面右側)から見たときに、ワイヤハーネス32がハーネス保持部14によって覆われる。これにより、例えばI/P10を車両2の車体に組み付ける際に、ワイヤハーネス32が、作業者、I/P10の構成部品等と接触しにくい。すなわち、ワイヤハーネス32に傷がつきにくい。
【0036】
また、ハーネス保持部14の上縁には、前後方向に延びるリム16が設けられる。リム16は、一対の脆弱部40R,40Lの間に位置する。すなわち、リム16は、一対の脆弱部40R,40Lに隣接する区間に設けられる。リム16は、ハーネス保持部14の剛性を向上させる。リム16は、車幅方向に延びるハーネス保持部14がその長手方向で屈曲する変形を特に抑制する。これにより、ハーネス保持部14は、ワイヤハーネス32を安定して保持することができる。また、ハーネス保持部14のリム16が設けられる区間の剛性を向上させることで、リム16が設けられる区間と、一対の脆弱部40R,40L
との剛性の差異が大きくなる。これにより、ハーネス保持部14の耐力が、一対の脆弱部40R,40Lの位置でより大きく低下するため、一対の脆弱部40R,40Lがより変形または破断しやすくなる。さらに、リム16は、ワイヤハーネス32の上方を覆うように伸びている。これにより、I/P10の組付け時に、ワイヤハーネス32が作業者、I/P10の構成部品等とさらに接触しにくくなる。
【0037】
先に述べたように、脆弱部40Lは、第1の切欠き41Lと、第2の切欠き42Lと、を備える。
図4に示されるように、第1の切欠き41Lの上下方向の長さは、第2の切欠き42Lの上下方向の長さに比して長い。第1の切欠き41Lの第1の下端44Lは、ワイヤハーネス32の中心32cよりも下方に位置する。このため、衝突発生時に、コラムカバー20がハーネス保持部14に荷重F1を加えた場合に、ハーネス保持部14が、その上端部を前側に倒すように(
図4の矢印R1参照)回転しやすい。その結果、脆弱部40Lには、荷重F1によって前方に押されることによる引張荷重に加え、矢印R1の方向に回転することによる捩り荷重が加えられる。その結果、脆弱部40Lの下端44Lを起点に変形または破断しやすくなる。
【0038】
図5を参照して、車両2(
図1参照)に前面衝突が発生した場合に、乗員からI/P10に加えられる荷重の伝わり方について説明する。なお、コラムカバー20と、ハーネス保持部14との間には、他の部品も存在し得る。しかしながら、
図5では、衝突時のI/P10の変形への寄与が大きい部品のみを示している。
図5に示されるように、コラムカバー20は、ハーネス保持部14の一対の脆弱部40R,40Lに向けて前後方向に延びる一対の側壁20R,20Lを備える。前面衝突が発生し、乗員が慣性力によって前方に移動すると、ステアリング8(
図2参照)を介して荷重F2が後方からコラムカバー20に伝えられる。その結果、コラムカバー20がインパネ本体12のハーネス保持部14に当接するように前方に移動する。
【0039】
これにより、
図5に示されるように、荷重F2が一対の側壁20R,20Lに分散され、一対の荷重F3としてハーネス保持部14に伝えられる。ここで、前後方向に延びる一対の側壁20R,20Lは、車幅方向に延びるハーネス保持部14に比して、前後方向の荷重に対して変形しにくい。このため、一対の側壁20R,20Lは、前後方向の荷重をハーネス保持部14に伝えやすい。さらに、コラムカバー20の一対の側壁20R,20Lは、ハーネス保持部14の一対の脆弱部40R,40Lに向かって延びている。このため、前方に移動したコラムカバー20の一対の側壁20R,20Lは、一対の脆弱部40R,40Lと当接する。その結果、コラムカバー20に伝えられた荷重F3は、一対の荷重F3として、一対の脆弱部40R,40Lに集中する。その結果、一対の脆弱部40R,40Lは、変形または破断しやすくなる。
【0040】
また、コラムカバー20の一対の側壁20R,20Lに脆弱部を設けることも考えられるが、
図1に示されるように、コラムカバー20は、キャビン側に露出する部品であり、乗員と接触することがある。このため、コラムカバー20に脆弱部を設けると、衝突時以外の接触により、コラムカバー20が変形または破断するおそれがある。本実施例のI/P10は、インパネ本体12のコラムカバー20に覆われる部位に一対の脆弱部40R,40Lを設けることで、衝突時以外に一対の脆弱部40R,40Lが変形または破断することを防止することができる。
【0041】
その後、変形または破断したハーネス保持部14が、ワイヤハーネス32とともに前方に移動する。ハーネス保持部14の前方には、ダクト34が配置されている。これにより、前方に移動したハーネス保持部14およびワイヤハーネス32は、荷重F4をダクト34に加える。ダクト34は、中空の樹脂部品であるため、荷重F4によって変形する。ハーネス保持部14およびワイヤハーネス32は、ダクト34を変形させながらさらに前方に移動する。この際、ダクト34は、変形することで、衝突時に発生したエネルギーを吸収する。これにより、I/P10から乗員に加えられる反力を小さくすることができる。
【0042】
このように、本明細書が開示するI/P10は、インパネ本体12のハーネス保持部14に一対の脆弱部40R,40Lを設けることによって、ワイヤハーネス32が空所12aを横切る場合であっても、十分に変形することができる。
【0043】
以上、実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上述した実施例の変形例を以下に列挙する。
【0044】
(変形例1)上述した実施例では、空所12aの下側が開放されていたが、変形例の空所12aは、その全周が閉じられた開口であってもよい。また、さらなる変形例では、空所12aの上側が開放されていてもよいし、左側が開放されていてもよいし、右側が開放されていてもよい。
【0045】
(変形例2)上述した実施例では、ハーネス保持部14は、車幅方向に空所12aを横切る。変形例では、ハーネス保持部14は、空所12aを上下方向に通過してもよい。
【0046】
(変形例3)脆弱部40Rは、各切欠き41R,42Lによって断面積を小さくしなくてもよい。例えば、変形例では、脆弱部40Rは、その板厚が他の部位に比して薄い薄肉部を有することで、断面積を小さくしてもよい。さらなる変形例では、脆弱部40Rは、切欠き及び薄肉部の双方を備えてもよい。
【0047】
(変形例4)上述した実施例では、車両2の運転席に位置する乗員に対して本明細書が開示する技術を適用したが、変形例では、助手席に位置する乗員に対して本明細書が開示する技術を適用してもよい。その場合、例えば、グローブボックスが「カバー」の一例である。
【0048】
(変形例5)脆弱部40Rは、第2の切欠き42Rを備えなくてもよい。また、別の変形例では、脆弱部40Rは、第1の切欠き41Rを備えなくてもよい。その場合、第2の切欠き42Rの上端は、ワイヤハーネス32の中心32cよりも上方に位置してもよい。本変形例のハーネス保持部14は、その下端を前方に持ち上げるように回転する。
【0049】
(変形例6)脆弱部は、ハーネス保持部14の長手方向に一対に配置されなくてもよい。例えば、ハーネス保持部14は、右側の脆弱部40Rのみを備えてもよい。また、ハーネス保持部14は、左右で異なる形状の脆弱部40R,40Lを備えてもよい。
【0050】
(変形例7)ハーネス保持部14は、ワイヤハーネス32を一対のクリップ33R,33Lによって保持しなくてもよい。変形例では、例えば、ハーネス保持部14は、ハーネス保持部14に設けられた開口にワイヤハーネス32を通過させることで、ワイヤハーネス32を保持しなくてもよい。また、ワイヤハーネス32は、一つのクリップ33Rによって、ハーネス保持部14に保持されてもよい。
【0051】
(変形例8)一対の脆弱部40R,40Lは、一対の側壁20R,20Lと前後方向で対向しなくてもよい。また、一対の脆弱部40R,40Lのうちどちらかの脆弱部のみが、側壁と対向してもよい。
【0052】
(変形例9)ワイヤハーネス32は、ハーネス保持部14の後面に保持されてもよい。すなわち、ハーネス保持部14は、背面18を備えなくてもよい。
【0053】
(変形例10)ハーネス保持部14は、リム16を備えなくてもよい。さらなる変形例では、リム16は、車両後方に延びてもよいし、ハーネス保持部14の下端に設けられてもよい。
【0054】
(変形例11)上述した実施例では、ハーネス保持部14は、インパネ本体12と一体で形成されているが、変形例では、ハーネス保持部14は、インパネ本体12とは別体の部品で構成されてもよい。
【0055】
(変形例12)ハーネス保持部14とクロスメンバ30との間には、ダクト34が配置されなくてもよい。その場合、例えば、ダクト34に代えて、衝突時のエネルギーを吸収するEA材が配置されてもよい。
【0056】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0057】
2 :車両
4 :ピラートリム
6 :コンソール
8 :ステアリング
9 :フロントウィンドウ
10 :インストルメントパネル
12 :インパネ本体
12a :空所
14 :ハーネス保持部
16 :リム
18 :背面
20 :コラムカバー
20L,20R:側壁
22 :アンダーカバー
24 :センターカバー
25 :ディスプレイ
26 :エアアウトレット
28 :計器
30 :クロスメンバ
32 :ワイヤハーネス
32c :中心
33L,33R:クリップ
34 :ダクト
36 :ステアリングシャフト
38 :ブラケット
40L,40R:脆弱部
41L,41R:第1の切欠き
42L,42R:第2の切欠き
44L :第1の下端