(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ガス処理槽用のマンホール、及び、ガス処理槽
(51)【国際特許分類】
B01D 47/10 20060101AFI20240806BHJP
B65D 90/10 20060101ALI20240806BHJP
B01D 53/77 20060101ALI20240806BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B01D47/10 Z
B65D90/10 Z
B01D53/77
B01D53/18 170
(21)【出願番号】P 2021061811
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】596032177
【氏名又は名称】住友金属鉱山エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】小南 雅広
【審査官】中村 泰三
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 47/00-18
B01D 53/14-18、34-96
B65D 90/10
F25J 13/00-24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部圧力が負圧に保持されている状態で運転されるガス処理槽に設置して用いる、ガス処理槽用のマンホールであって、
通気用の貫通孔が形成されている本体蓋部と、
前記貫通孔と連通して通気用の気道が形成されるように前記本体蓋部に連接されている通気管と、を備え、
前記通気管には、前記気道の閉止及び開放を行う、開閉栓が、設置されている、
ガス処理槽用のマンホール。
【請求項2】
内部圧力が負圧に保持されている状態で運転されるガス処理槽であって、
請求項1に記載のガス処理槽用のマンホールが、ヒンジ部によって回動可能に設置されている、
ガス処理槽。
【請求項3】
前記ガス処理槽が湿式スクラバーである、請求項2に記載のガス処理槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理槽用のマンホール、及び、ガス処理槽に関する。本発明は、詳しくは、排ガス処理用の湿式スクラバー等、内部圧力が負圧に保持された状態で使用するガス処理槽に設置する、ガス処理槽用のマンホール、及び、それが設置されてなるガス処理槽に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガスから有害成分等を除去する装置として、各種の湿式スクラバーが用いられている。この湿式スクラバーは、排ガス中の有害成分やダストを、吸収液の液滴や液膜中に捕集して無害化するものである(特許文献1参照)。そして、このようなスクラバーには、内部点検用のマンホールが設置されている(特許文献1の
図5参照)。そして、スクラバーの内部を点検する場合には、この内部点検用のマンホールを開放して、点検作業者が内部に入って各種の保守作業が行われている。
【0003】
ここで、上記の湿式スクラバーも含め、多くのガス処理槽は、内部圧力が負圧に保持された状態で使用される。従って、このようなガス処理槽においては、必要に応じて作業員が出入りするマンホールは、閉止時には、槽内外の圧力差により、槽本体に強い力で吸引されている状態となっている。従って、これを開放するには圧力に抗する大きな力が必要となる。又、開放の動作の初動段階で大きな力が必要となる一方で、開放動作開始直後に上記の圧力差が急激に消失して、想定外の勢いで開くマンホールが作業者に衝突してしまう事故も起こっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて考案されたものであり、内部圧力が負圧に保持された状態で運転されるガス処理槽のマンホールの開放作業を、容易且つ安全に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、内部圧力が負圧に保持された状態で運転されるガス処理槽に設置する、ガス処理槽用のマンホールについて、その本体蓋部に、以下に詳細を説明する通気機構を付加することによって、上記課題を解決することができることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
(1) 内部圧力が負圧に保持されている状態で運転されるガス処理槽に設置して用いる、ガス処理槽用のマンホールであって、通気用の貫通孔が形成されている本体蓋部と、前記貫通孔と連通して通気用の気道が形成されるように前記本体蓋部に連接されている通気管と、を備え、前記通気管には、前記気道の閉止及び開放を行う、開閉栓が、設置されている、ガス処理槽用のマンホール。
【0008】
(1)のマンホールによれば、内部圧力が負圧に保持された状態で運転されるガス処理槽のマンホールの開放作業を容易且つ安全に行えるようにすることができる。
【0009】
(2) 内部圧力が負圧に保持されている状態で運転されるガス処理槽であって、(1)に記載のガス処理槽用のマンホールが、ヒンジ部によって回動可能に設置されている、ガス処理槽。
【0010】
(2)のガス処理槽においては、上述の通気用の構造を含むマンホールの全重量がヒンジ部によって安定的に保持されている状態でマンホールが開閉されるので、内部圧力が負圧に保持された状態のガス処理槽におけるマンホールの開閉作業を容易にし、当該作業時におけるマンホールの意図しない急激な開放による事故も防止することができる。
【0011】
(3) 前記ガス処理槽用が湿式スクラバーである(2)に記載のガス処理槽。
【0012】
(3)のガス処理槽は、従来の湿式スクラバーを、マンホール開閉作業が容易で、且つ、当該作業の安全性も高い、湿式スクラバーとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部圧力が負圧に保持された状態で運転されるガス処理槽のマンホールの開放作業を、容易且つ安全に行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のガス処理槽用のマンホールを設置してなるガス処理槽の全体構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明のガス処理槽用のマンホールの斜視図である。
【
図3】本発明のガス処理槽用のマンホールの正面図である。
【
図4】本発明のガス処理槽用のマンホールの側面図である。
【
図5】本発明のガス処理槽用のマンホール(他の実施形態)の正面図である。
【
図6】本発明のガス処理槽用のマンホール(他の実施形態)の側面図である。
【
図7】本発明のマンホールの動作原理を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ガス処理槽用のマンホール>
本発明のガス処理槽用のマンホールは、内部圧力が負圧に保持された状態で運転されるガス処理槽に設置して用いるマンホールである。ここで、本明細書における、「マンホール」とは、上記のガス処理槽の槽本体の開口部を閉止可能な形状を有し、同部分において開閉可能な設置態様で設置されている蓋部材である。そのサイズは、具体的には、開放時に作業員が開口部から槽内に出入りできる程度のサイズのもの(円形のマンホールであれば直径600mm~1200mm程度)であることが想定されている。
【0016】
本発明のガス処理槽用のマンホールは、「内部圧力が負圧に保持された状態で運転されるガス処理槽」全般に広く適用可能である。そのようなガス処理槽として、工業炉等から排出される排ガス中のダストを洗浄液により湿式分離する湿式スクラバーや、或いは、そのような排ガスからイオン化されたダストを電気エネルギーによって分離回収する電気集塵機を、本発明の好ましい適用対象の具体例として挙げることができる。中でも、本発明のガス処理槽用のマンホールは、特許文献1にも記載されているように定期的な点検作業が比較的頻繁に必要となる塔型のガス処理槽である湿式スクラバーへの適用によって特に大きな効果を享受することができる。
【0017】
図2~4には本発明のガス処理槽用のマンホールの好ましい実施形態の一例であるマンホール1が示されている。マンホール1は、ガス処理槽2の槽本体21の外殻に作業員の出入り口として形成されている開口部を、閉止可能な形状からなる本体蓋部11に、開閉栓14を有する通気管13が連接されている構成からなるものである。本体蓋部11は、その表面の一部領域を貫通して通気用の貫通孔12が形成されていて、通気管13は、この貫通孔12と連通して通気用の気道を形成している。そして、通気管13のマンホール1への接合部分とは反対側の末端の近傍部に、上記の通気用の気道となる通気管13の管内の空気の流路を、必要に応じて閉止し、又は、必要に応じて開放する開閉栓14が設置されている。マンホール1は、この開閉栓14により、上記の通気用の気道の閉止及び開放を行うことができる。
【0018】
マンホール1の主たる部分を構成する本体蓋部11は、
図2~4に示すように外縁が円形の円盤状の部材であってもよいし、或いは、
図5及び
図6に示すようにマンホール1Aの本体蓋部11Aのように外縁が矩形状の板状の部材とすることもできる。
【0019】
本体蓋部11は、略中央部に、貫通孔12が形成されている。貫通孔12の開口面積は、特に限定はされないが、例えば、直径600mm~1200mm程度の円盤状の部材からなる本体蓋部においては、開口径300mm~600mm程度の貫通孔が形成されている例を、好ましい貫通孔のサイズの一例として挙げることができる。
【0020】
貫通孔12と連通して通気用の気道を形成する通気管13は、一例として上記サイズの貫通孔と連通して通気用の気道を形成可能なものであればサイズや形状は特段限定されないが、マンホール1を設置するガス処理槽2の設置場所の物理的条件等に応じて、適宜最適なサイズ・形状に設計、形成すればよい。一例として、貫通孔12近傍で鉛直上方に向けて折り曲げた管や、
図2~4に示すように、更に、その管を下向きに再度折り曲げた形状の通気管13を、好ましい形状を有する通気管の一例として挙げることができる。通気管13を
図2~4に示すような二段階の折り曲げ形状とすることによって、外気の導入時に、雨水等の水分や周辺に存在する粉塵等の通気管13内への侵入と滞留を防ぐことができる。又、通気管の末端付近に設置する開閉栓14の位置と、マンホール1の本体蓋部11の位置を近接させることができるため、マンホール開閉作業の作業容易性を高めることもできる。
【0021】
開閉栓14は、通気管13の気道を必要に応じて任意のタイミング速やかに閉止又は開閉することができる公知の各種のバルブ機構等により構成することができる。
【0022】
尚、例えば、
図5に示すように、本体蓋部11には、貫通孔12が形成されていない領域にマンホール1Aを閉止したままの状態で内部を視認可能な点検用の覗き窓15を設けてもよい。
【0023】
<ガス処理槽>
本発明のガス処理槽は、例えば、湿式スクラバー等、
図1に示すように内部圧力が負圧に保持された状態で運転するガス処理槽2に、上記構成からなるマンホール1を設置してなるガス処理槽である。マンホール1は、設置対象とするガス処理槽2の槽本体21の外殻部に形成されている作業員の出入り口に設置される。ガス処理槽2へのマンホール1の設置は、ヒンジ部によって本体蓋部11を回動可能に設置する設置構造によることが好ましい。
【0024】
ここで、
図1に示すように、ガス処理槽2は、通常、搭型の槽本体21、吸気管22、排気管23、及び、排気ファン24を有する。そして、常に、排気ファン24を稼働させることによって、槽本体21内の内圧を負圧に維持した状態で運転される。又、点検作業等のためにマンホールを開放する場合においても、ガス処理槽2においては、通常、槽本体21内への排ガスの過剰な滞留を防ぐ等、安全維持上の理由から、排気ファン24を稼働させた状態、即ち、槽本体21の内圧の負圧状態を維持している。このように、槽本体21の内部と外部で圧力差がある場合、その圧力差が解放しようとするマンホールの本体蓋部の表面積に比例して、マンホールをガス処理槽2の槽本体21の内部に向けて押し付ける圧力として作用する。従って、従来のマンホールの開放作業の初動時には、この圧力に抗する大きな力が必要となる(
図7(A)参照)。
【0025】
これに対して、本発明のマンホール1を設置したガス処理槽2においては、閉止時の密閉性は従来のマンホールと同等であるが、開放作業時に、本体蓋部11の開放作業に先行して、先ず、予備作業として、開閉栓14を開放して、貫通孔12及び通気管13によって構成する通気用の気道から外気を槽本体21の内部に導入することにより、マンホール1の本体蓋部11にかかる上記の圧力を低減することができる(
図7(B)参照)。このような作動によって、本発明のマンホール1を設置したガス処理槽2においては、本体蓋部11の開放作業を容易に行えるようにすることができ、更には、開放作業の初動後における意図しない急激な開放をも防止して、マンホール1を設置したガス処理槽2における開放作業の安全性も向上させることもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 マンホール
11 本体蓋部
12 貫通孔
13 通気管
14 開閉栓
15 覗き窓
2 ガス処理槽
21 槽本体
22 吸気管
23 排気管
24 排気ファン