(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両足操舵装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/12 20060101AFI20240806BHJP
B62D 1/185 20060101ALI20240806BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240806BHJP
G05G 1/08 20060101ALI20240806BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240806BHJP
G05G 1/46 20080401ALI20240806BHJP
G05G 11/00 20060101ALI20240806BHJP
G05G 1/54 20080401ALI20240806BHJP
【FI】
B62D1/12
B62D1/185
B62D5/04
G05G1/08 A
G05G1/30 E
G05G1/46
G05G11/00
G05G1/54
(21)【出願番号】P 2021092555
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】村山 貴洋
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-097878(JP,U)
【文献】特開2011-209962(JP,A)
【文献】特開2016-155394(JP,A)
【文献】米国特許第05598742(US,A)
【文献】米国特許第05086870(US,A)
【文献】特開平07-299097(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0065009(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/12
B62D 1/185
B62D 5/04
G05G 1/08
G05G 1/30
G05G 1/46
G05G 11/00
G05G 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって操作される操舵部と、
前記操舵部の操作に応じて車輪が転舵されるように前記操舵部の操作力を前記車輪に伝達する伝達部と、
前記伝達部における第1接続部に接続され、前記操舵部の操作力を補助する補助力が入力される補助部と、
前記伝達部における第2接続部に接続され、運転者の足の操作による旋回指令が入力される足操舵機構と、
前記補助部に取り付けられ、前記足操舵機構を支持する支持部材と、を備え、
前記第2接続部は、前記第1接続部と前記操舵部との中間位置よりも前記第1接続部側に設けられることを特徴とする車両足操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両足操舵装置において、
前記足操舵機構は、運転者の足の操作によって駆動される無端伝動部材を有し、
前記第2接続部は、前記無端伝動部材が巻回される回転体を有することを特徴とする車両足操舵装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両足操舵装置において、
前記伝達部は、前記操舵部から前記補助部にかけて延在する回転軸を有し、
前記操舵部から前記第2接続部までの前記回転軸の長さを変更する長さ変更部をさらに備えることを特徴とする車両足操舵装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両足操舵装置において、
前記操舵部と前記第2接続部との間に、前記操舵部を操作不能に固定するロック機構をさらに備えることを特徴とする車両足操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足によって操舵する車両足操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、上肢を使わずに下股だけで車両の運転操作を可能にした装置が知られている(例えば非特許文献1参照)。この非特許文献1記載の装置では、ブレーキペダルの左方に配置された操舵用のペダルを前後に漕ぐことで、ステアリング軸を回転させ、車輪を転舵するように構成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】モーターファン「ホンダ:テックマチックシステム/フランツシステム」https://motor-fan.jp/tech/10011054(令和3年4月9日閲覧)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1記載の装置は、操舵用のペダルの右側に、ペダルの操作をステアリング軸に伝達するための動力伝達部が配置されるため、運転者の足元が狭くなる。しかしながら、運転者の快適性を向上するためには、運転者の足元のスペースをできるだけ拡大することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である車両足操舵装置は、運転者によって操作される操舵部と、操舵部の操作に応じて車輪が転舵されるように操舵部の操作力を前記車輪に伝達する伝達部と、伝達部における第1接続部に接続され、操舵部の操作力を補助する補助力が入力される補助部と、伝達部における第2接続部に接続され、運転者の足の操作による旋回指令が入力される足操舵機構と、補助部に取り付けられ、足操舵機構を支持する支持部材と、を備える。第2接続部は、第1接続部と操舵部との中間位置よりも第1接続部側に設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運転者の足元スペースが狭まることが抑制され、運転者の快適性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の実施形態に係る車両足操舵装置の全体構成を示す斜視図であり、足操舵機構が露出された状態を示す図。
【
図1B】本発明の実施形態に係る車両足操舵装置の全体構成を示す斜視図であり、足操舵機構がカバーによって覆われた状態を示す図。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両足操舵装置を構成する伝達部の要部構成を示す断面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両足操舵装置を構成する足操舵機構のうちの操作入力部の構成を示す斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両足操舵装置を構成する足操舵機構のうちの第1足操作伝達部の構成を示す斜視図。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両足操舵装置を構成するギアユニットの構成を示す斜視図。
【
図6】本発明の実施形態に係る車両足操舵装置を構成する足操舵機構のうちの第2足操作伝達部の構成を示す斜視図。
【
図7】
図6の第2足操舵伝達部の要部の分解斜視図。
【
図10】
図6のブラケットにプレートを固定した状態を示す斜視図。
【
図11】本発明の実施形態に係る車両足操舵装置を有する車両のブレーキペダルとアクセルペダルの位置関係を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1A~
図11を参照して本発明の一実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る車両足操舵装置は、上肢の不自由な運転者が、足の操作によって車両を運転操作することを可能にする装置である。この装置は、ステアリングホイールの操作を車輪に伝達する伝達部の途中に、足の操作による旋回指令が入力されるように構成される。より詳しくは、ステアリングホイールの回転操作力が入力されるステアリング軸に、足の操作による回転操作力が入力されるように構成される。
【0009】
すなわち、上肢の不自由な運転者により、足の操作によって車両が運転操作される場合であっても、同一の車両を他の運転者が運転操作することがある。このため、車両には、ステアリングホイールの操作による通常の操舵機構がそのまま残され、足の操作による操舵機構(足操舵機構)が追加される。
【0010】
図1A,
図1Bは、それぞれ本発明の実施形態に係る車両足操舵装置100の全体構成を示す斜視図である。特に、
図1Aは、足操舵機構が露出された状態を示し、
図1Bは、足操舵機構がカバー3によって覆われた状態を示す。なお、以下では、図示のように前後方向(車両長さ方向)、左右方向(車幅方向)および上下方向(車両高さ方向)を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。前後方向は車両の進行方向に相当する。
【0011】
図1Aに示すように、車両足操舵装置100は、運転者によって操作されるステアリングホイール1と、ステアリングホイール1の操作に応じて車輪(前輪)が転舵されるようステアリングホイール1の操作力を車輪に伝達する伝達部10と、伝達部10に接続され、ステアリングホイール1の操作力を補助する補助力が入力される操舵補助ユニット2と、伝達部10に接続され、運転者の足の操作による旋回指令が入力される足操舵機構20と、を備える。すなわち、車両足操舵装置100は、通常の車両操舵装置に、足操舵機構20が追加されて構成される。
図1Bに示すように、車両足操舵装置100の通常の使用時には、足操舵機構20がカバー3によって覆われる。なお、
図1Bには、カバー3の左方に配置された左足用の靴4が示される。
【0012】
図1Aに示すように、ステアリングホイール1は、略円形のハンドル部1aと、ハンドル部1aと一体に設けられ、ハンドル部1aの中央から略前方に延びる軸線CL0に沿って延在する軸部(不図示)とを有する。なお、軸線CL0は、厳密にはハンドル部1aから前方かつ下方に傾斜して延びるが、便宜上、前後方向に延びるものとして説明することがある。ステアリングホイール1の軸部には、軸線CL0を中心としてステアリングホイール1と一体に回転可能にステアリング軸11が連結される。
【0013】
図2は、伝達部10の要部構成を示す断面図であり、主にステアリング軸11から操舵補助ユニット2までの構成を示す。
図2に示すように、ステアリング軸11は、全体が軸線CL0を中心とした略円筒状を呈する。ステアリング軸11の前端部の内周面には、軸線CL0を中心とした略円筒形状の中間軸12が嵌合される。より詳しくは、ステアリング軸11と中間軸12とは、ステアリング軸11の内周面と中間軸12の外周面とにそれぞれ形成されたスプラインを介して一体に回転可能に、かつ、軸方向に相対移動可能に連結される。
【0014】
ステアリング軸11と中間軸12の径方向外側には、軸線CL0を中心とした前後一対のパイプ(前パイプ13、後パイプ14)が設けられる。より詳しくは、後パイプ14の内周面に前パイプ13の外周面が軸方向に相対移動可能に嵌合される。後パイプ14の後端部は、ベアリング15を介してステアリング軸11の外周面に支持される。これにより後パイプ14とステアリング軸11とが軸方向に一体に移動可能となるとともに、後パイプ14内をステアリング軸11が回転可能となる。
【0015】
ベアリング15の周囲にはステアリングコラム16が設けられる。ステアリングコラムの前方には、キースイッチのオフ時にステアリング軸11を回転不能にロックするロック機構17が設けられる。ステアリングコラム16とロック機構17とは、ステアリング軸11および後パイプ14と一体に軸方向に移動する。すなわち、本実施形態の車両足操舵装置100は、ステアリングホイール1(
図1A)と一体のステアリング軸11を、後パイプ14とともに前後方向に移動する伸縮機構7を有する。伸縮機構7は、スプライン結合されたステアリング軸11と中間軸12等により構成され、伸縮機構7を介してステアリングホイール1から操舵補助ユニット2までの長さ、すなわちステアリングホイール1の前後方向の位置を調整することができる。
【0016】
図2では図示を省略するが、中間軸12の前端部は、操舵補助ユニット2から軸線CL0に沿って後方に突出された回転軸に一体に結合され、中間軸12の回転が操舵補助ユニット2に入力される。
図1Aに示すように、操舵補助ユニット2は、電動モータを有する電動パワーステアリングユニットにより構成され、電動モータによるアシスト力が中間軸12に付与される。中間軸12の回転は、インタミディエイト軸18を介して不図示のタイロッドに伝達され、これにより車輪が転舵される。
【0017】
足操舵機構20は、運転者の足の操作力が入力される操作入力部21と、操作入力部21に入力された操作力が伝達される第1足操作伝達部22と、第1足操作伝達部22に伝達された操作力が伝達される第2足操作伝達部23とを有する。運転者の足の操作力は、操作入力部21、第1足操作伝達部22および第2足操作伝達部23を介して中間軸12に伝達され、これにより中間軸12が回転駆動される。
【0018】
図3は、操作入力部21の構成を示す斜視図である。操作入力部21は、運転者の左側足元に設けられる。
図3に示すように、操作入力部21は、左右方向に延在する軸線CL1を中心に回転可能に設けられたスプライン軸210と、スプライン軸210の左端部に結合されたクランク軸211とを有する。スプライン軸210の右側には、軸線CL1を中心とした略円板状のスプロケット212がスプライン軸210と一体に回転可能に設けられる。スプライン軸210とスプロケット212とは、スプロケット212の右側に配置されたベアリング213により、軸線CL1を中心に回転可能に支持される。
【0019】
クランク軸211は、軸線CL1から下方に延在する縦ロッド部211aと、縦ロッド部211aの下端部から左方に延在する横ロッド部211bとを有する。横ロッド部211bの上方には、略前後方向に延在するペダル214が設けられる。横ロッド部211bは、ペダル214の前側底面に設けられた略円筒形状の貫通孔214aを貫通し、これによりペダル214が横ロッド部211bを支点にして前後方向に揺動可能に支持される。ペダル214の上面には、ペダル全体を覆うように、運転者の左足の大きさに合わせた靴4(点線)が固定される。靴4は、横ロッド部211bを支点にして揺動しながらペダル214と一体となって前後方向に移動可能である。
【0020】
ペダル214の後端部の下方には、左右方向の軸線を中心に回転可能にローラ215が設けられる。ローラ215の下方には、前後方向にレール216が延設される。レール216はボルト217によりフロアに固定される。ローラ215は、運転者の足の前後方向の移動に伴い、レール216の上面に沿って転動しながら移動する。レール216は、左足の前後方向の移動に合わせるように、後端部から屈曲部216aまでほぼ水平に延在し、屈曲部216aよりも前方では上方に傾斜して延在する。運転者によりペダル214が前方または後方に漕がれると、クランク軸211が軸線CL1を中心に揺動し、これによりスプロケット212が時計方向(矢印R1方向)または反時計方向(矢印R2方向)に回転する。
【0021】
図4は、第1足操作伝達部22の構成を示す斜視図である。第1足操作伝達部22は、操作入力部21から上方に延設される。
図4に示すように、第1足操作伝達部22は、上下一対のスプロケット221,212を巻回する金属製のロアチェーン222を有する。なお、ロアチェーン222は、便宜上、ベルト状に示す。スプロケット221は、スプロケット212の上方かつ後方に配置される。ロアチェーン222の右方には、軸線CL0(
図1A)よりも左方においてベース板223が立設され、ベース板223にベアリング213が支持される。ベース板223は、側面視で上方にかけて後方に傾斜して延設される。ベース板223の下端部には、ベースサポート224が固定され、ベースサポート224の下端部がボルト225によりフロアに固定される。
【0022】
ベース板223の上端部には、右方に向けて水平面223aが延設される。スプロケット221は、水平面223aの上方に配置されたギアユニット24により回転可能に支持される。ベース板223には、前後方向に移動可能なスプロケット226aを有するテンショナー226が取り付けられる。ロアチェーン222は、スプロケット226aの移動により外方(前方)に押し当てられ、これによりロアチェーン222のたるみ量が調整される。
図4において、クランク軸211の揺動により下側のスプロケット212が矢印R1方向または矢印R2方向に回転すると、ロアチェーン222が駆動され、上側のスプロケット221が矢印R1方向または矢印R2方向に回転する。
【0023】
図5は、ベース板223の水平面223aの上方に配置されたギアユニット24の構成を示す斜視図である。
図5に示すように、ギアユニット24は、ケース240から水平方向に突設された一対の回転軸、すなわち、左右方向に延在する軸線CL2を中心にして回転する回転軸241と、軸線CL2に直交して前後方向に延在する軸線CL3を中心にして回転する回転軸242とを有する。回転軸241の左端部にはスプロケット221(
図4)が回転軸241と一体に回転可能に支持される。回転軸242の後端部にはスプロケット231(
図6)が回転軸242と一体に回転可能に支持される。
【0024】
ケース240の内部には、互いに噛合する一対の傘歯車(第1傘歯車、第2傘歯車)が収容される。第1傘歯車は、回転軸241の右端部に回転軸241と一体に回転可能に支持され、第2傘歯車は、回転軸242の前端部に回転軸242と一体に回転可能に支持される。第1足操作伝達部22(
図4)から入力されたトルクによりスプロケット221が矢印R1方向または矢印R2方向に回転すると、その回転は一対の傘歯車を介してスプロケット231に伝達され、スプロケット231が矢印R1方向または矢印R2方向に回転する。
【0025】
図6は、第2足操作伝達部23の構成を示す斜視図である。第2足操作伝達部23は、第1足操作伝達部22の上方かつ右側後方に設けられる。
図6に示すように、第2足操作伝達部23は、上下一対のスプロケット231,232を巻回する金属製のアッパチェーン233を有する。なお、アッパチェーン233は、便宜上、ベルト状に示す。ギアユニット24の後方には、上下左右方向に延在する略板状のブラケット234が配置される。ブラケット234は、その下端部から後方に折り曲げられた底板部234aを有する。底板部234aは、ベース板223の水平面223a(
図3)とギアユニット24のケース240との間に介装され、ギアユニット24はブラケット234(底板部234a)を介して支持される。
【0026】
ギアユニット24の回転軸242(
図5)は、ブラケット234の右端部を貫通して後方に突出し、その突出部にスプロケット231が支持される。ブラケット234には、スプロケット231の上方にアイドラ歯車235が回転可能に支持される。さらにブラケット234の左端部には、スプロケット231とほぼ同一高さに、左右方向に移動可能なスプロケット236aを有するテンショナー236が取り付けられる。アッパチェーン233は、スプロケット236aの移動により外方(左方)に押し当てられ、これによりアッパチェーン233のたるみ量が調整される。したがって、アッパチェーン233は、上下のスプロケット231,232だけでなく、アイドラ歯車235とスプロケット236aとを併せて巻回するように設けられる。
【0027】
ギアユニット24を介して入力されたスプロケット231の回転は、アッパチェーン233を介してスプロケット232に伝達される。
図6には、ブラケット234の上部を貫通して後方に突出された中間軸12(
図2)が示される。スプロケット232は、中間軸12の周囲に中間軸12と一体に回転可能に設けられる。より詳しくは、中間軸12は、軸線CL0に沿って延在し、スプロケット232は、左右方向におけるスプロケット231とスプロケット236aとの間、すなわちブラケット234の左右方向中央部であり、かつ、アイドラ歯車235よりも上方に、軸線CL0を中心に回転可能に配置される。
【0028】
ブラケット234の右端部には、中間軸12とほぼ同一高さにおいて、後方に向けてステイ234bが突設される。ステイ234bの右外側にカバー3(
図1B)が設けられる。なお、ブラケット234の右端部ではなく左端部にステイ234bが突設されてもよく、ブラケット234の左右両端部にステイ234bが突設されてもよい。ブラケット234の後面には、ブラケット234とは別体である複数のカラー26が、ボルト26aを介してスプロケット232の周囲に取り付けられる(
図10参照)。カラー26は、アッパチェーン233の上方かつ軸線CL0の左右両側に設けられるとともに、アッパチェーン233の下方かつ軸線CL0の左右両側に設けられる。なお、
図10に示すように、ボルト26aは、プレート130、カラー26を貫通し、ブラケット234に螺合される。
【0029】
図7は、第2足操作伝達部23の要部の分解斜視図、特にスプロケット232の周囲の部品の構成を示す分解斜視図である。
図8は、
図7の部品の組立状態を示す組立斜視図であり、
図9は、
図8に対応する
図2の要部拡大図である。なお、
図7では、ブラケット234の図示を省略する。
【0030】
図9に示すように、操舵補助ユニット2の後端部には、軸線CL0を中心とした円環部2aが設けられる。円環部2aの外周面には、ホルダ27が圧入される。ホルダ27は、その後端部から径方向外側に延在する略リング状の板部270を有し、板部270の後面に、
図8に示すようにボルト270aを介してブラケット234が固定される。
図7に示すように、中間軸12の外周面には、円環部2aの所定距離だけ後方から中間軸12の後端部にかけてスプライン12aが形成される。中間軸12の外周面には、スプライン12aに係合するスプライン溝を有する一対の反割れ状のブロック28が装着される。
【0031】
各ブロック28の外周面には、キーブロック281の取付用の略矩形状の凹部28aと、バンド282の取付用の略円弧状の溝28bと、前後一対のスナップリング283の取付用の略円弧状の前後一対の溝28cとが設けられる。スプロケット232の内周面には、キーブロック281に対応した一対の凹部232aが設けられる。バンド282は、一対の把持部282aに挟持力を作用することで拡径し、挟持力を除去することで弾性変形により縮径する、略リング状の金属製のホースクリップにより構成される。
【0032】
中間軸12へのスプロケット232の取付は以下のようにして行う。まず、中間軸12の外周面のスプライン12aに上下一対のブロック28を係合装着した後、中間軸12に沿って後方から一方のスナップリング283を挿入し、前側の溝28cに係合する。次いで、上下一対のブロック28の凹部28aに、それぞれキーブロック281を嵌合する。この状態で、前側のスナップリング283の後端面に当接するまでスプロケット232を中間軸12に沿って後方から挿入する。このとき、スプロケット232の凹部232aには一対のキーブロック281を嵌合する。
【0033】
次いで、中間軸12に沿って他方のスナップリング283を後方から挿入し、後側の溝28cに係合する。これにより、ブロック28とキーブロック281とを介してスプロケット232が中間軸12に固定される。このとき、前後一対のスナップリング283によりスプロケット232の軸方向の位置が拘束される。最後に、中間軸12に沿って後方からバンド282を挿入した後、溝28bにバンド282を係合し、バンド282によって一対のブロック28を締結する。なお、スプロケット232の内周面によってブロック28は拘束されるため、バンド282を省略することもできる。
【0034】
図8,
図9に示すように、スプロケット232は、ブラケット234の後端面から所定距離だけ後方の所定位置に配置される。換言すると、スプロケット232が軸方向所定位置に配置されるように、ブロック28が中間軸12のスプライン12aの最前部をまたいで係合される。スプロケット232は、操舵補助ユニット2の近傍に配置されるが、溶接などの手段を介さずに固定される。このため、各種センサを有して取り扱いに注意を要する操舵補助ユニット2に対し、溶接時の熱による影響が及ぶことを防止できる。なお、通常の車両操舵装置においては、スプロケット232が不要であり、この場合には、
図9に示す前パイプ13が前方に延長されて円環部2aに嵌合される。
【0035】
図10は、ブラケット234の後方に、上下左右方向に延在するプレート130を固定した状態を示す斜視図である。
図10に示すように、ブラケット234の後方には、周方向4箇所のカラー26(
図6)を介して、ボルト26aによりプレート130が結合される。これにより、
図9に示すように、円環部2aの後端面に面した、ブラケット234とプレート130との間の所定長さの空隙SPに、スプロケット232が配置される。その結果、
図10に示すように、ブラケット234とプレート130とに干渉することなく、スプロケット232にアッパチェーン233を巻回することができる。
【0036】
図9に示すように、プレート130には、軸線CL0を中心とした略円形の貫通孔130aが開口され、貫通孔130aの縁部に前パイプ13の前端部が溶接によって接合される。伸縮機構7(
図2)を介した後パイプ14の前方への移動は、後パイプ14の前端部(より詳しくは前端部のリテイナー)がプレート130の後面に当接することにより規制される。
【0037】
図2において、軸方向の位置P0は、操舵補助ユニット2が接続される中間軸12の後端部(接続位置P1)とステアリングホイール1の取付部(取付位置P2)との中間位置である。
図2に示すように、本実施形態では、スプロケット232が中間位置P0よりも前方(操舵補助ユニット側)の介入位置P3、より詳しくは、操舵補助ユニット2に支持されるブラケット234の後端面に面した空隙SPに配置される。スプロケット232の下方には足操舵機構20(
図1A)が設けられるが、スプロケット232を操舵補助ユニット2のすぐ後方に配置することで、足操舵機構20を車両前方側に配置することができる。例えば操舵補助ユニット2と干渉しない範囲における最前部に配置することができる。このため、足操舵機構20を設けたことにより運転者の足元空間は狭められるが、その狭められる程度が抑えられ、運転者の快適性が向上する。
【0038】
足操舵機構20の右側には、ブレーキペダルとアクセルペダルとが設けられる。
図11は、ブレーキペダル101とアクセルペダル102の位置関係を示す正面図である。
図1Aに示すように、本実施形態では、ステアリングホイール1の中心を通って略前後方向に延在する軸線CL0の下方に、カバー3によって覆われた足操舵機構20が設けられる。このため、
図11の矢印に示すように、ブレーキペダル101とアクセルペダル102の位置が、通常の車両操舵装置を有する車両における位置よりも、それぞれ右方に移動される。これにより、運転者は、足操舵機構20に操作を阻害されることなく、右足でブレーキペダル101とアクセルペダル102を操作することができる。
【0039】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両足操舵装置100は、運転者によって操作されるステアリングホイール1と、ステアリングホイール1の操作に応じて車輪(前輪)が転舵されるようにステアリングホイール1の操作力を車輪に伝達する伝達部10と、伝達部10を構成する中間軸12の前端部(接続部)に接続され、ステアリングホイール1の操作力を補助する補助力が入力される操舵補助ユニット2と、中間軸12に設けられたスプロケット232に接続され、運転者の足の操作による旋回指令が入力される足操舵機構20と、を備える(
図1A,
図2)。スプロケット232は、操舵補助ユニット2の接続部(接続位置P1)とステアリングホイール1の取付部(取付位置P2)との中間位置P0よりも、操舵補助ユニット2の接続部側(介入位置P3)に設けられる(
図2)。
【0040】
この構成により、車両足操舵装置100の特有の構成である足操舵機構20が車両前側に寄せて配置されるようになる。このため、足操舵機構20が中間位置P0ないし中間位置P0よりも後方(取付位置P2側)にある場合に比べ、運転者の足元のスペースが拡大する。したがって、運転者の快適性が向上する。
【0041】
(2)足操舵機構20は、運転者の足の操作によって駆動されるアッパチェーン233を有する(
図6)。スプロケット232は、アッパチェーン233が巻回される歯車である。これにより、伝達部10の中間軸12を流用しながら、運転者の足の操作によって伝達部10の中間軸12を回転するように構成することができる。その結果、コストの大幅な増加を抑えることができる。
【0042】
(3)伝達部10は、ステアリングホイール1から操舵補助ユニット2にかけて延在するステアリング軸11と中間軸12とを有する(
図2)。車両足操舵装置100は、ステアリングホイール1の取付部から操舵補助ユニット2の接続部までの長さを変更する伸縮機構7をさらに備える(
図2)。これにより、運転者が足の操作で車両を運転する場合に、ステアリングホイール1を運転者側から前方に退避することができる。一方、他の運転者がステアリングホイール1を操作して車両を運転する場合には、運転者にとって操作しやすい位置にステアリングホイール1を移動することができる。
【0043】
(4)車両足操舵装置100は、ステアリングホイール1の取付部と操舵補助ユニット2の接続部との間に、ステアリングホイール1を操作不能に固定するロック機構17をさらに備える(
図2)。ロック機構17は足操舵機構20の後方に設けられるが、足操舵機構20は操舵補助ユニット2側に配置されるので、ロック機構17を足操舵機構20と干渉することなく容易に設けることができる。
【0044】
(5)車両足操舵装置100は、操舵補助ユニット2の後端部に設けられた円環部2aに取り付けられ、足操舵機構20を支持するホルダ27およびブラケット234をさらに備える(
図8,
図9)。足操舵機構20は乗員の足元から中間軸12にかけて上下方向にわたって配置されるため、上部を安定して支持する必要がある。この点、ホルダ27およびブラケット234を介して足操舵機構20の上部を安定的に支持することができる。
【0045】
本実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、操舵部としてのステアリングホイール1が、中間軸12に対し伸縮可能に設けられたステアリング軸11の前端部に固定されるようにしたが、操舵部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、ステアリング軸11と中間軸12とを含むように伝達部10を構成したが、操舵部の操作に応じて車輪が転舵されるように操舵部の操作力を車輪に伝達するであれば、伝達部10の構成はいかなるものでもよい。上記実施形態では、中間軸12の前端部(第1接続部)に、ステアリングホイール1の操作力を補助する補助力が入力される操舵補助ユニット2を接続するようにしたが、第1接続部は上述したものに限らない。上記実施形態では、操舵補助ユニット2を、電動モータを有する電動パワーステアリングとして構成したが、補助部は油圧パワーステアリングであってもよい。
【0046】
上記実施形態では、中間軸12のスプライン12aの前端部(第2接続部)、すなわち操舵補助ユニット2の接続位置P1とステアリングホイール1の取付位置P2との間の介入位置P3にスプロケット232を介装し、スプロケット232を介して足操舵機構20を伝達部10に接続するようにした。より詳しくは、ブラケット234とプレート130との間の空隙SPに第2接続部を設けたが、接続位置P1と取付位置P2との間の中間位置P0よりも接続位置P1側に設けられるのであれば、第2接続部は上述したものに限らない。上記実施形態では、操作入力部21と第1足操作伝達部22と第2足操作伝達部23とにより足操舵機構20を構成したが、伝達部10(第2接続部)に接続され、運転者の足の操作による旋回指令が入力されるように構成されるのであれば、足操舵機構はいかなるものでもよい。
【0047】
上記実施形態では、スプロケット232を巻回する金属製のアッパチェーン233を足操舵機構20に用いたが、金属ベルト等、他の無端伝動部材を用いてもよい。したがって、無端伝動部材が巻回される回転体もスプロケット232に限らない。上記実施形態では、ステアリング軸11と中間軸12とを回転軸として構成するとともに、伸縮機構7により回転軸の長さを変更可能に構成したが、長さ変更部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、操舵補助ユニット2に取り付けられたホルダ27とブラケット234とを介して足操舵機構20を支持するようにしたが、支持部材の構成は上述したものに限らない。
【0048】
上記実施形態の車両足操舵装置は、運転席が右側に位置する車両に適用したが、本発明の車両足操舵装置は、運転席が左側に位置する車両においても同様に適用することができる。また、本発明の車両足操舵装置は、乗用車やトラック等の各種車両に適用することができる。
【0049】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 ステアリングホイール、2 操舵補助ユニット、7 伸縮機構、10 伝達部、11 ステアリング軸、12 中間軸、17 ロック機構、20 足操舵機構、27 ホルダ、100 車両足操舵装置、232 スプロケット、233 アッパチェーン、234 ブラケット、P0 中間位置、P1 接続位置、P2 取付位置、P3 介入位置