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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】電熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/40 20060101AFI20240806BHJP
   F24H 9/1818 20220101ALI20240806BHJP
   F24H 9/20 20220101ALI20240806BHJP
【FI】
H05B3/40 A
F24H9/1818
F24H9/20 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021108232
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023005935
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聡
(72)【発明者】
【氏名】志賀 広貴
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-289333(JP,A)
【文献】特開平10-284230(JP,A)
【文献】特開平11-129734(JP,A)
【文献】特開2002-343540(JP,A)
【文献】米国特許第4278876(US,A)
【文献】米国特許第4730099(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/40
F24H 9/1818
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に熱媒体が流通する流通配管と、電熱ヒータとが伝熱金属に埋設されたヒータユニットと、
前記ヒータユニットが取り付けられるヒータ取付板と、
前記ヒータユニットと前記ヒータ取付板とを固定する取付脚とを有した電熱装置において、
前記ヒータ取付板には、前記電熱ヒータの過昇温を防止するサーモスタットと、
前記取付脚と前記ヒータ取付板との接触面から前記ヒータ取付板に伝わった前記電熱ヒータの熱の拡散を防止する熱拡散防止部とを設け、
前記熱拡散防止部は、前記接触面から前記接触面と前記サーモスタットとを結んだ直線と略直交する方向への拡散を防止するように配置され、
前記熱拡散防止部は、前記ヒータ取付板に開口された開口部、または、前記ヒータ取付板に埋め込まれた断熱性能を有した部材であることを特徴とする電熱装置。
【請求項2】
前記熱拡散防止部は、前記直線を線対称の軸とし、一対となって設けられていることを特徴とする請求項1記載の電熱装置。
【請求項3】
前記熱拡散防止部は、前記接触面と前記サーモスタットよりも外側に前記直線と直交する方向にさらに配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の電熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、暖房や融雪、風呂の保温等の熱源として使用される電熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものに於いては、例えば特開2002-289333号公報に開示されている如く、流通パイプと電熱ヒータとをアルミから成る伝熱金属内に埋設することで、伝熱性能の向上を図り、流通パイプ内を流通する熱媒体を加熱して温度を上昇させる加熱装置が知られていた。
【0003】
また、この種のものにおいて、電熱ヒータの温度が過昇温度に達すると、安全のため電熱ヒータの加熱を停止させるサーモスタットは、ネジ等の固定具で伝熱金属に直接固定するものが知られている(引用文献では温度センサが固定されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-289333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の加熱装置において、電熱ヒータをON/OFFを繰り返すと材質の異なるネジと伝熱金属との熱膨張率差によって、ネジが緩み、サーモスタットが外れてしまという課題があった。
【0006】
また、サーモスタットを伝熱金属とは異なる位置に固定させることで、ネジの緩みを防止しようとすると、サーモスタットに達するまでに電熱ヒータの熱が拡散してしまい、サーモスタットが正確に温度を検知できなくなる可能性があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は上記課題を解決するために、内側に熱媒体が流通する流通配管と、電熱ヒータとが伝熱金属に埋設されたヒータユニットと、前記ヒータユニットが取り付けられるヒータ取付板と、前記ヒータユニットと前記ヒータ取付板とを固定する取付脚とを有した電熱装置において、前記ヒータ取付板には、前記電熱ヒータの過昇温を防止するサーモスタットと、前記取付脚と前記ヒータ取付板との接触面から前記ヒータ取付板に伝わった前記電熱ヒータの熱の拡散を防止する熱拡散防止部とを設け、前記熱拡散防止部は、前記接触面から前記接触面と前記サーモスタットとを結んだ直線と略直交する方向への拡散を防止するように配置され、前記熱拡散防止部は、前記ヒータ取付板に開口された開口部、または、前記ヒータ取付板に埋め込まれた断熱性能を有した部材である。
【0008】
また、前記熱拡散防止部は、前記直線を線対称の軸とし、一対となって設けられている。
【0009】
また、前記熱拡散防止部は、前記接触面と前記サーモスタットよりも外側に前記直線と直交する方向にさらに配置されている。
【発明の効果】
【0011】
このように、ヒータ取付板には、前記電熱ヒータの過昇温を防止するサーモスタットと、前記取付脚と前記ヒータ取付板との接触面から前記ヒータ取付板に伝わった前記電熱ヒータの熱の拡散を防止する熱拡散防止部とを設け、前記熱拡散防止部は、前記接触面と前記サーモスタットを結んだ直線と並行に並ぶように配置されると共に、前記直線を線対称のとして一対となっているので、接触面から拡散される熱が直線の方向に伝わるように促すことができ、サーモスタットに電熱ヒータの熱を効率よく伝え、正確な温度を検知させることができる。
【0012】
また、サーモスタットを伝熱金属とは異なるヒータ取付板にネジ等の固定具によって固定しているので、熱膨張率差によって固定具が緩んで、サーモスタットが脱落してしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態の電熱装置の分解斜視図
図2】第一実施形態の電熱装置の斜視図
図3】第一実施形態の熱拡散防止部の形状を説明する図。
図4】第一実施形態の電熱装置の要部拡大斜視図
図5】第二実施形態の熱拡散防止部の形状を説明する図。
図6】第三実施形態の熱拡散防止部の形状を説明する図。
図7】第四実施形態の熱拡散防止部の形状を説明する図。
図8】第四実施形態の熱拡散防止部の形状の別案を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次にこの発明に係る電熱装置を図1~4に示すように第一実施形態を説明する。
電熱装置1は、ヒータユニット2と、ヒータユニット2が取り付けられるヒータ取付板3と、取付脚4とで構成されている。
【0015】
取付脚4には、ヒータユニット2とヒータ取付板3とを固定するための固定部材5が内包されており、固定部材5は、ボルト5a、ワッシャ5b、スリーブ5cを有して構成されている。
【0016】
ヒータユニット2は、ステンレスパイプをU字状に折り曲げて形成し、内方を熱媒体が流通する流通配管6と、同じくU字状に折り曲げられた200V、1KWのシーズヒータから成る電熱ヒータ7とを、流通配管6が電熱ヒータ7を覆うように外周に位置した状態で、アルミから成る伝熱金属8内にダイキャストで埋設して形成されている。
【0017】
また、取付脚4は、アルミから成る伝熱金属8と同じ素材で構成されており、電熱ヒータ7からの熱は伝熱金属8を介して取付脚4に伝わる。電熱ヒータ7の熱を取付脚4に伝えるため、取付脚4を伝熱金属8と一体に形成しても、別体で形成してもよいが、熱を伝えやすい金属で形成することが好ましい。
【0018】
また、Aはヒータ取付板3と取付脚4の接触面であり、電熱ヒータ7からの熱は取付脚4を介して接触面Aから放射状にヒータ取付板3に広がっていく。
【0019】
9はネジ等の固定具によってヒータ取付板3に取付けられ、ヒータ取付板3に伝わった電熱ヒータ7の熱の温度が過昇温度に達したかどうか検知するサーモスタットで、過昇温度になったと判定した場合は電熱ヒータ7への通電をOFFするものである。
【0020】
10は接触面Aから放射状に広がる電熱ヒータ7の熱の拡散を防止する熱拡散防止部であり、サーモスタット9の方向に熱が伝わるようにしている。
【0021】
この熱拡散防止部10は、例えば、長穴のスリットを開口した開口部や、間隔を空けながら繰り返し開口した開口部などで熱の拡散を防止している。
【0022】
次に、接触面Aからの熱の拡散を防止する第一実施形態の熱拡散防止部10について図3に基づいて説明する。
【0023】
熱拡散防止部10は、接触面Aを挟むように設けた長穴のスリットであり、接触面Aとサーモスタット9を結んだ直線Tと並行に並ぶように配置していると共に、直線Tを線対称の軸として、一対に設けられている。
【0024】
また、接触面Aとサーモスタット9との距離をPとし、直線Tと熱拡散防止部10との距離をQとしたとき、距離Pの長さよりも距離Qの方が短くされている。
【0025】
このように、ヒータ取付板3には、電熱ヒータ7の過昇温を防止するサーモスタット9と、取付脚4とヒータ取付板3との接触面Aからヒータ取付板3に伝わった電熱ヒータ7の熱の拡散を防止する熱拡散防止部10としての長穴スリットとを設け、長穴スリットは、接触面Aとサーモスタット9を結んだ直線Tと並行に並ぶように配置されると共に、直線Tを線対称の対称軸となって一対設けられているので、接触面Aから拡散される熱が直線Tの方向に伝わるように促すことができ、サーモスタット9に電熱ヒータ7の熱を効率よく伝え、正確な温度を検知させることができる。
【0026】
また、サーモスタット9の固定具には、ヒータ取付板3と熱膨張率が等しい材質(ここでは、鉄)を用いているので、熱膨張率差によってサーモスタット9の固定具が緩んで、サーモスタット9が脱落してしまうのを防止する効果を両立することができる。
【0027】
また、距離Pの長さよりも距離Qの方が短くされているので、接触面Aから放射状に熱が拡散され、サーモスタット9より先に熱拡散防止部10に到達するが、それ以降の熱は、拡散が防止されていない直線Tの方向に熱が拡散されていくように促すことができる。
【0028】
また、第二実施形態では、形状の異なる熱拡散防止部10について図5に基づいて説明する。
熱拡散防止部10は、間隔を空けながら繰り返し開口した複数の穴であり、接触面Aと前記サーモスタットを結んだ直線Tと並行に並ぶように配置していると共に、直線Tは線対称の対称軸となっている。
【0029】
このように、熱拡散防止部10を長穴スリットを間隔を空けながら繰り返し開口した複数の穴にしたことで、第一実施形態の熱の拡散防止としての効果は落ちるものの、長穴スリットに比べると、間隔を空けながら繰り返し開口した複数の穴の方がヒータ取付板3の耐久性が高く、取付脚4をヒータ取付板3に固定する際にヒータ取付板3の割れを抑制することができる。
【0030】
また、第三実施形態では、形状の異なる熱拡散防止部10について図6に基づいて説明する。
熱拡散防止部10は、接触面Aを挟むように設けた長穴のスリットであり、接触面Aと前記サーモスタットを結んだ直線Tと並行に並ぶように配置し、さらに直線Tと直交すると共に、接触面Aとサーモスタット9よりも外側に長穴のスリットを設けた。
【0031】
また、この直線Tと直交する長穴のスリットは、第二実施形態のように間隔を空けながら繰り返し開口した複数の穴でもよい。
【0032】
また、この接触面Aとサーモスタット9よりも外側に長穴のスリットは、接触面A側でもサーモスタット9側でも良い。また、接触面A側とサーモスタット9側の両方に設けることもできるが、少なくとも接触面A付近のヒータ取付板3が長穴スリット間で破断して脱落してしまわないように十分に強度が確保できる場合に限るようにする。
【0033】
このように、熱拡散防止部10としての長穴スリット(または、間隔を空けながら繰り返し開口した複数の穴)を直線Tと並行に並ぶように配置し、さらに直線Tと直交すると共に、接触面Aとサーモスタット9よりも外側に長穴のスリットを設けたことで、第一実施形態のように接触面Aから放射状に拡散され、サーモスタット9がある方向と、対向する方向とのうち対向して拡散されていた熱の拡散も防止することができ、より効率的にサーモスタット9に熱を伝えることができる。
【0034】
また、図6では、接触面Aの外側に直線Tに直交する長穴スリットを設けているが、サーモスタット9の外側に長穴を設けることで、サーモスタット9に到達した熱がサーモスタット9のさらに先で過剰に拡散してしまうのを防止することができる。
【0035】
また、第四実施形態では、形状の異なる熱拡散防止部10について図7に基づいて説明する。
熱拡散防止部10は、接触面Aを挟むように設けた長穴のスリットであり、接触面Aと前記サーモスタットを結んだ直線Tを線対称の対称軸とし、接触面Aを上向きとしたハの字状に配置された。
【0036】
このように、接触面Aを上向きとしたハの字状にすることで、第一実施形態に比べて早く熱拡散防止部10への方向の熱の拡散を防止し、熱拡散防止部方向の熱の拡散をサーモスタット9側に誘導することで効率よくサーモスタット9に熱を伝えることができる。
【0037】
また、図8のようにサーモスタット9を上向きとしたハの字状でも良く、図7に比べると、熱の拡散を防止する時間は遅くなるが、拡散が防止された熱をサーモスタット9側に絞っていくことができるので、熱の拡散をサーモスタット9側に集中させることができる。
【0038】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で改変する事を妨げるものではなく、例えば、第三実施形態と第四実施形態は、長穴スリットで説明したが、第二実施形態のように間隔を空けながら繰り返し開口した複数の穴でも良い。
【0039】
また、熱拡散防止部10をハの字状にした第四実施形態に、直線Tと直交する長穴スリットの第三実施形態を組み合わせることも可能である。
【0040】
また、熱拡散防止部10は、長穴スリットと、間隔を空けながら繰り返し開口した複数の穴で説明したが、これに限られるものではなく、熱の拡散を防止するような断熱性能を有した部材を埋め込むことで熱の拡散を防止しても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 電熱装置
2 ヒータユニット
3 ヒータ取付板
4 取付脚
5 流通配管
6 電熱ヒータ
7 伝熱金属
8 サーモスタット
9 熱拡散防止部
A 接触面
T 直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8