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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】消音装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/02 20060101AFI20240806BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240806BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F01N1/02 E ZHV
F01N13/08 A
F01N3/24 J
F01N1/02 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021144189
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037431
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊介
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159020(WO,A1)
【文献】特開2021-105377(JP,A)
【文献】特開2002-242666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/02
F01N 13/08
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を排気ガスが通過する内管、及び、前記内管の外周を囲うように配置される外管を備える二重管構造の排気管と、前記排気管の上流又は下流に連結され、消音を行うための空間である第1消音空間を有する空間形成部材と、を備える消音装置であって、
前記内管は、排気ガスの流れ方向に並ぶ第1内管と第2内管とを有し、前記第1内管の前記第2内管側の端部及び前記第2内管の前記第1内管側の端部のいずれか一方が他方の内部に挿入されるように配置され、
前記第1内管は、前記空間形成部材及び前記第2内管の間に配置され、
前記第1内管と前記第2内管との間に形成された隙間には、保持部材が配置され、
前記第2内管と前記外管との間に形成される消音を行うための空間である第2消音空間は、前記第1内管と前記外管との間に形成される第3消音空間を介して前記第1消音空間と連通し、
前記流れ方向と垂直な断面における前記第1消音空間の断面積は、前記流れ方向と垂直な断面における前記第2消音空間の断面積よりも大きく、
前記空間形成部材は、前記第1内管と連結する連結パイプと、前記連結パイプの外周を囲うように配置される外郭部材と、を備える二重管構造であり、
前記第1消音空間は、前記外郭部材と前記連結パイプとの間に形成される空間であり、
前記第1消音空間には、前記連結パイプと前記外郭部材との間に配置される介在物がない、消音装置。
【請求項2】
請求項1に記載の消音装置であって、
前記第2消音空間及び前記第3消音空間にも、前記内管と前記外管との間に配置される介在物がない、消音装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の消音装置であって、
前記空間形成部材は、排気ガスを浄化する触媒を有する触媒装置と一体に形成されている、消音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外管と内管とを備え、外管と内管との間の空間を用いてヘルムホルツ共鳴器及びサイドブランチ型消音器としての消音機能が付加された二重管構造の消音器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6676662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した二重管構造の消音器において、例えば、二重管の長さを長くしたり、二重管の断面積を大きくしたりすることで低周波の消音効果を高めることも可能であるが、車両への搭載要件やパイプの加工性等に問題が発生し得る。
【0005】
本開示の一局面は、二重管構造を用いて、低周波の消音効果を高めることができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、二重管構造の排気管と、空間形成部材と、を備える消音装置である。排気管は、内部を排気ガスが通過する内管、及び、内管の外周を囲うように配置される外管を備える。空間形成部材は、排気管の上流又は下流に連結され、消音を行うための空間である第1消音空間を有する。内管は、排気ガスの流れ方向に並ぶ第1内管と第2内管とを有し、第1内管の第2内管側の端部及び第2内管の第1内管側の端部のいずれか一方が他方の内部に挿入されるように配置される。第1内管は、空間形成部材及び第2内管の間に配置される。第1内管と第2内管との間に形成された隙間には、保持部材が配置される。第2内管と外管との間に形成される消音を行うための空間である第2消音空間は、第1内管と外管との間に形成される第3消音空間を介して第1消音空間と連通する。排気ガスの流れ方向と垂直な断面における第1消音空間の断面積は、排気ガスの流れ方向と垂直な断面における第2消音空間の断面積よりも大きい。
【0007】
このような構成では、第1消音空間と第2消音空間とが連通するように空間形成部材と排気管とが連結される。すなわち、空間形成部材と排気管との連結部分において、第1消音空間と第2消音空間とが分断されずに、第1消音空間と第2消音空間とが連続した空間が形成される。このため、第1消音空間、第2消音空間及び第1消音空間と第2消音空間とを繋ぐ空間である第3消音空間によって、より大きな空間を共鳴室として利用できる。これにより、二重管構造を用いて、低周波の消音効果を高めることができる。
【0008】
本開示の一態様では、空間形成部材は、第1内管と連結する連結パイプと、連結パイプの外周を囲うように配置される外郭部材と、を備える二重管構造であってもよい。第1消音空間は、外郭部材と連結パイプとの間に形成される空間であってもよい。このような構成によれば、空間形成部材として、例えば二重管構造のマフラを用いることができる。このように、空間形成部材及び排気管が共に二重管構造であるため、広範囲で輻射熱が低減可能である。これにより、空間形成部材及び排気管の近傍に、例えばバッテリーのような温度上昇が好ましくない装置が配置された場合にも、当該装置への熱害を低減することができるため、当該装置の設置可能な範囲が拡大する。その結果、バッテリーが搭載される例えばハイブリッド車両において、空間形成部材及び排気管の近傍に配置されるバッテリーの拡大が可能である。
【0009】
本開示の一態様では、空間形成部材は、排気ガスを浄化する触媒を有する触媒装置と一体に形成されていてもよい。このような構成によれば、空間形成部材と触媒装置とが一体に形成された触媒一体型のマフラを用いることができるため、車両の床下における排気システムの省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】共鳴二重管の上流側にマフラが連結される構成の消音装置を示す模式的な断面図である。
図2図1の消音装置におけるマフラと共鳴二重管との連結部分の拡大断面図である。
図3】第1消音空間と第2消音空間とが分断された状態でマフラと共鳴二重管とが連結される比較例の連結部分の拡大断面図である。
図4】本実施形態の構成である実施例及び比較例における周波数と消音量との関係を示すグラフである。
図5】消音装置が備えるマフラが触媒装置を有しない構成を示す模式的な断面図である。
図6】消音装置が備えるマフラの連結パイプに複数の連結孔が設けられた構成を示す模式的な断面図である。
図7】共鳴二重管の外管がマフラの外郭部材の内部に挿入される構成の消音装置を示す模式的な断面図である。
図8図7の消音装置におけるマフラと共鳴二重管との連結部分の拡大断面図である。
図9】共鳴二重管の下流側にマフラが連結される構成の消音装置を示す模式的な上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1に示す消音装置100は、内燃機関の排気ガス流路を構成する排気システムに用いられる排気騒音を低減する装置である。消音装置100は、例えば、バッテリー200が搭載されるハイブリッド車両等に設けられる。なお、消音装置100は、バッテリー200が搭載されない車両に設けられていてもよい。消音装置100は、マフラ1と、共鳴二重管2と、保持部材3と、を備える。図1に示す例では、消音装置100の近傍に配置されるバッテリー200の形状に合わせて共鳴二重管2が屈曲した形状を有する。本実施形態では、共鳴二重管2の上流側にマフラ1が配置される。
【0012】
マフラ1は、外郭部材11と、第1内管12と、連結パイプ13と、触媒装置14と、上流側コーン15と、セパレータ19と、を備える。本実施形態では、マフラ1は、排気ガスGを浄化する触媒141を有する触媒装置14と一体に形成されている触媒一体型のマフラである。マフラ1は、第1内管12及び第1内管12に連結する連結パイプ13と、第1内管12及び連結パイプ13の外周面を囲うように配置される外郭部材11と、を備える二重管構造を有する。マフラ1は、外郭部材11と連結パイプ13との間に形成される消音を行うための空間である第1消音空間16を有する。マフラ1は、第1消音空間16によって消音効果を発揮する。
【0013】
図1及び図2に示すように、外郭部材11は、当該外郭部材11の下流側の端部がマフラ1の中心軸に向かって縮径するように形成された円筒状の金属製のパイプである。具体的には、外郭部材11は、上流側から順に、第1直管部111と、第1円錐台部112と、第2直管部113と、を有する。第1直管部111及び第2直管部113は、それぞれ直径が変化しない、つまり直管状の部分である。なお、第1直管部111の径は、第2直管部113の径よりも大きい。第1円錐台部112は、第1直管部111の下流側の端部から第2直管部113の上流側の端部に向かって断面積が徐々に縮小する円錐台状の部分である。第1直管部111の内部には、触媒装置14が配置される。第1直管部111の上流側の端部の開口には、マフラ1よりも上流側に配置される排気管と接続する上流側コーン15が設けられている。マフラ1よりも上流側に配置される排気管を流れる排気ガスGが上流側コーン15を介して外郭部材11内に導入される。
【0014】
第1内管12及び連結パイプ13は、内部を排気ガスGが通過する金属製のパイプである。第1内管12及び連結パイプ13は、外郭部材11内において、排気ガスGの流れ方向に並ぶように配置される。第1内管12は、連結パイプ13よりも下流側に配置される。
【0015】
第1内管12は、直径が変化しない直管状のパイプであり、外郭部材11の第2直管部113の内部に配置される。第2直管部113と第1内管12との間には、第1消音空間16と連通する第1の隙間17が形成される。第1内管12の下流側の端部121は、外郭部材11の第2直管部113の下流側の端部113Aよりも下流側に突出する。つまり、第1内管12の下流側の端部121は、第2直管部113に囲われないように配置される。
【0016】
連結パイプ13は、第3直管部131と、第2円錐台部132と、を有する。第3直管部131は、直径が変化しない、つまり直管状の部分である。第2円錐台部132は、第3直管部131の下流側の端部から第1内管12の上流側の端部に向かって断面積が徐々に縮小する円錐台状の部分である。連結パイプ13は、外郭部材11の第1直管部111及び外郭部材11の第1円錐台部112の内部に配置される。連結パイプ13の上流側の端部は、セパレータ19と連結する。セパレータ19は、排気ガスGの流れ方向に交差、より好ましくは直交するように設けられる壁部191と、壁部191の中央に形成された開口部192と、を有している。開口部192は、下流側に向かうに従って縮径して突出している。開口部192の下流側の端部には、上述した連結パイプ13の上流側の端部が連結される。また、排気ガスGの流れ方向において、セパレータ19の上流側に空間を介して触媒装置14が設けられる。これにより、触媒装置14を通過した排気ガスGがセパレータ19、連結パイプ13及び第1内管12を通ってマフラ1から排出され、共鳴二重管2の内部に導入される。
【0017】
共鳴二重管2は、第2内管21と、外管22と、を備える二重管構造の排気管である。共鳴二重管2は、第2内管21と外管22との間に形成される消音を行うための空間である第2消音空間23を有する。共鳴二重管2は、第2消音空間23によって消音効果を発揮する。また、共鳴二重管2は、二重管構造により、排気ガスGの輻射熱が低減可能である。
【0018】
第2内管21は、内部を排気ガスGが通過する金属製のパイプである。具体的には、マフラ1から排出された排気ガスGが、第2内管21における上流側の端部211の開口から第2内管21内に導入され、第2内管21における下流側の端部212の開口から排出される。第2内管21は、上流側の端部211及び下流側の端部212がそれぞれ拡径した形状を有する。
【0019】
外管22は、第2内管21の外周面を囲うように配置される金属製のパイプである。外管22の下流側の端部222は、外管22の内周面が第2内管21の外周面と当接可能に縮径した形状を有する。第2内管21の上流側の端部211と外管22との間には、第2消音空間23と連通する第2の隙間24が形成される。第2の隙間24は、周方向全周にわたって形成されていても、周方向のうち一部分の範囲に形成されていてもよい。なお、第2の隙間24が周方向のうち一部分の範囲に形成されている場合、周方向の残りの範囲では第2内管21と外管22とが直接接していてもよく、あるいは第2内管21と外管22との間に介在物を介在させてもよい。介在物としては、後述する保持部材3と同様のものであってもよい。外管22は、排気ガスGの流れ方向において、第2内管21よりも長さを有する。外管22の上流側の端部221は、第2内管21の上流側の端部211よりも外側に突出する。つまり、第2内管21は、外管22の上流側の端部221よりも内側に配置された状態で外管22によって覆われている。
【0020】
図2に示すように、マフラ1の下流側の端部が共鳴二重管2の内部に挿入されることで、マフラ1と共鳴二重管2とが連結される。具体的には、マフラ1の外郭部材11の第2直管部113における下流側の端部113Aが、共鳴二重管2の外管22における上流側の端部221の内部に挿入されるように、外郭部材11と外管22とが重なって配置される。第2直管部113の下流側の端部113Aの外周面と、外管22の上流側の端部221の内周面と、は当接する。外郭部材11の第2直管部113と外管22とが溶接等によって固定されることで、マフラ1と共鳴二重管2との連結が固定される。
【0021】
また、マフラ1の第1内管12における下流側の端部121が、共鳴二重管2の第2内管21における上流側の端部211の内部に挿入されるように、第1内管12と第2内管21とが重なって配置される。第1内管12における下流側の端部121の外周面と、第2内管21における上流側の端部211の内周面と、の間には、第3の隙間25が形成されており、当該第3の隙間25には、保持部材3が配置される。第1内管12と第2内管21とは、保持部材3によってスライド可能に保持されている。
【0022】
保持部材3は、第1内管12と第2内管21との間の第3の隙間25において、周方向全体に沿って延びる。具体的には、保持部材3は、第1内管12と第2内管21との間に形成されるリング状の第3の隙間25を周方向において低減できるように、リング状である。つまり、保持部材3は、第1内管12と第2内管21との間の第3の隙間25を閉塞するように配置されている。なお、保持部材の形状はリング状に限定されるものではなく、例えば、保持部材は、周方向において、当該保持部材が一部ない領域を有してもよい。保持部材3は、脱落防止のため、第1内管12における下流側の端部121の外周面、又は、第2内管21における上流側の端部211の内周面に溶接等によって固定される。なお、保持部材3は、第1内管12における下流側の端部121の外周面、又は、第2内管21における上流側の端部211の内周面に、例えば突起を設ける等の他の方法で脱落防止が行われてもよい。保持部材3は、排気ガスGの通過を制限可能に形成されている。本実施形態では、保持部材3には、密度の高い材質である、例えばステンレス繊維を成形加工したリング部材、例えばワイヤメッシュが用いられる。なお、保持部材3としてステンレス繊維を用いることで、シール性が向上し、排気ガスGの通過を制限しやすくすることが可能である。
【0023】
上述したように、マフラ1と共鳴二重管2とが連結されることで、マフラ1が有する第1消音空間16と、共鳴二重管2が有する第2消音空間23と、が第1の隙間17及び第2の隙間24を介して連通する。排気ガスGの流れ方向、すなわちマフラ1の中心軸に垂直な断面における第1消音空間16の断面積は、共鳴二重管2の中心軸に垂直な断面における第2消音空間23の断面積よりも大きい。
【0024】
[2.比較例との対比]
次に、本開示の効果を確認するために行った実施例1と比較例1との比較について説明する。
【0025】
実施例1は、図1及び図2に示す本実施形態の消音装置100である。比較例1は、図3に示す、マフラ1bが有する第1消音空間16bと、共鳴二重管2bが有する第2消音空間23bと、が連通しない状態、すなわち分断された状態で、マフラ1bと共鳴二重管2bとが連結される構成の消音装置100bである。図3に示すように、マフラ1bの第1消音空間16bは、外郭部材11bと第1内管12bとの間に形成される隙間に配置される1つ目の保持部材3bによって閉塞される。また、共鳴二重管2bの第2消音空間23bは、第2内管21bと外管22bとの間に形成される隙間に配置される2つ目の保持部材3bによって閉塞される。連結パイプ13bは、当該連結パイプ13bの内側と外側とを連通する複数の連通孔133を有してもよい。なお、消音装置100bにおける他の構成は、本実施形態の消音装置100の構成と大きく変わらないため、詳細な構成の説明は省略する。
【0026】
比較例1と実施例1とにおける、周波数(横軸)と消音量(縦軸)との関係を、図4に示す。比較例1では、マフラ1bの第1消音空間16bと、共鳴二重管2bの第2消音空間23bと、がそれぞれ個々に共鳴室として機能する。このため、比較例1では、マフラ1bと共鳴二重管2bとの異なる消音特性による消音効果が得られる。一方、実施例1では、マフラ1の第1消音空間16と、共鳴二重管2の第2消音空間23と、が第1の隙間17及び第2の隙間24を介して連続する空間が1つの大きな共鳴室として機能し得る。これにより、実施例1では、比較例1と比較してより大きな空間を共鳴室として利用することができるため、より低周波の消音効果を得ることができる。換言すると、実施例1は、第1消音空間16と第2消音空間23とを繋ぐ第1の隙間17及び第2の隙間24も共鳴室として機能するため、共鳴室として機能する部分が比較例1よりも増えるため、より低周波の消音効果を得ることができる。
【0027】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)本実施形態では、マフラ1の第1消音空間16と、共鳴二重管2の第2消音空間23と、が第1の隙間17及び第2の隙間24を介して連通するように、マフラ1と共鳴二重管2とが連結される。すなわち、マフラ1と共鳴二重管2との連結部分において、第1消音空間16と第2消音空間23とが分断されずに、第1消音空間16と第2消音空間23とが連続した空間が形成される。このため、第1消音空間16、第2消音空間23、第1の隙間17及び第2の隙間24によって、より大きな空間を共鳴室として利用できる。これにより、排気ガスGの輻射熱が低減可能な二重管構造を用いて、低周波の消音効果を高めることができる。
【0028】
(3b)本実施形態では、第1内管12と第2内管21との間に配置される保持部材3によって、第1内管12と第2内管21とがスライド可能に保持されている。このため、第1内管12と第2内管21との間に生じる熱膨張差及び熱収縮差による影響を低減することができる。
【0029】
(3c)本実施形態では、第1内管12が第2内管21の内部に挿入されることで重なって配置されることで互いに支え合うことができるため、外郭部材11及び外管22の内部における第1内管12及び第2内管21の位置の変動が抑制される。すなわち、外郭部材11と第1内管12との間の第1の隙間17及び外管22と第2内管21の上流側の端部211との間の第2の隙間24にスペーサ等を有しなくても、外郭部材11及び外管22に対する第1内管12及び第2内管21の位置を保ちやすくすることができる。つまり、図3に示す2つの保持部材3bを有する比較例1と比較して、保持部材の数を減らすことができる。その結果、第1内管12及び第2内管21の位置が変動して外郭部材11及び外管22に当たることにより発生し得る異音を生じにくくすることができる。
【0030】
(3d)本実施形態では、マフラ1及び共鳴二重管2が共に二重管構造であるため、広範囲で輻射熱が低減可能である。また、第1内管12が第2内管21の内部に挿入されることで重なって配置され、第1内管12と第2内管21との間に形成される第3の隙間25に保持部材3が配置される。このため、二重管構造における第2内管21と外管22との間の隙間、具体的には第2の隙間24及び第2消音空間23に排気ガスが流入しにくくなり、共鳴二重管2の輻射熱が低減可能である。これにより、マフラ1及び共鳴二重管2の近傍に配置される温度上昇が好ましくないバッテリー200への熱害を低減することができるため、バッテリー200の設置可能な範囲が拡大する。その結果、バッテリー200が搭載される例えばハイブリッド車両において、マフラ1及び共鳴二重管2の近傍に配置されるバッテリー200の拡大が可能である。
【0031】
(3e)本実施形態では、マフラ1が触媒装置14と一体に形成された触媒一体型のマフラであるため、車両の床下における排気システムの省スペース化を図ることができる。
(3f)本実施形態では、保持部材3は、排気ガスの通過を制限可能に形成されているため、保持部材3のシール性が向上し、第1内管12から第2内管21に流れる排気ガスが第2消音空間23に流出しにくくなる。このため、共鳴二重管2において、ヘルムホルツ共鳴器としての機能を高めることができる。また、共鳴二重管2において、排気ガスによる輻射熱をより低減することができる。
【0032】
なお、マフラ1の外郭部材11及び連結パイプ13が空間形成部材の一例に相当し、第1内管12、第2内管21及び外管22が排気管の一例に相当し、第1の隙間17及び第2の隙間24が第3消音空間に相当する。
【0033】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0034】
(4a)上記実施形態では、触媒装置14と一体に形成されている触媒一体形のマフラ1を例示したが、マフラの構成はこれに限定されるものではない。例えば、マフラは、触媒装置14と別体に形成されていてもよい。図5に示す消音装置100cのように、マフラ1cの外郭部材11の内部に触媒装置が配置されていなくてもよい。
【0035】
(4b)図6に示す消音装置100dのように、マフラ1dが備える連結パイプ13dは、当該連結パイプ13dの内側と外側とを連通する1つ以上の孔、好ましくは複数の連通孔133を有してもよい。以下、連通孔133が複数の場合について説明するが、1つの孔でも効果が得られる。連結パイプ13dに設けられる複数の連通孔133によって、連結パイプ13dの内部を通過する排気ガスが複数の連通孔133を通って外郭部材11と連結パイプ13dとの間の空間に拡がることにより、拡張による消音効果が得られる。また、複数の連通孔133によって、車両のエンジンの脈動に起因する音を抑制することができる。
【0036】
(4c)連結パイプ13と第1内管12とは、一体でも別体であってもよい。
(4d)上記実施形態では、マフラ1と共鳴二重管2との連結部分において、マフラ1の外郭部材11の第2直管部113における下流側の端部113Aが、共鳴二重管2の外管22における上流側の端部221の内部に挿入される構成を例示した。しかし、マフラ1と共鳴二重管2との連結方法はこれに限定されるものではない。例えば、図7及び図8に示す消音装置100eのように、共鳴二重管2の外管22における上流側の端部221が、マフラ1eの外郭部材11eの第2直管部113eにおける下流側の端部113Eの内部に挿入される構成であってもよい。このように、マフラと共鳴二重管との連結方法は限定されないため、外郭部材と外管とが溶接等によって固定される場合に、マフラ側からの溶接パターン又は共鳴二重管側からの溶接パターンなど、保有している設備によって、連結方法を変えて溶接に対応することができる。
【0037】
(4e)上記実施形態では、共鳴二重管2の上流側にマフラ1が配置される構成の消音装置100を例示したが、共鳴二重管とマフラとの配置はこれに限定されるものではない。例えば、図9に示す消音装置100fのように、共鳴二重管2fの下流側にマフラ1fが配置される構成であってもよい。共鳴二重管2fとマフラ1fとは、本実施形態の共鳴二重管2とマフラ1と同様に、マフラ1fの内部に形成される第1消音空間と、共鳴二重管2fの内部に形成される第2消音空間と、が連通するように連結されている。
【0038】
(4f)上記実施形態では、二重管構造のマフラ1を例示したが、マフラは、第1消音空間16を有する二重管構造以外の構成であってもよい。例えば、マフラは、管状以外の形状である筐体と排気管とを備え、当該筐体内に第1消音空間を有する構成であってもよい。
【0039】
(4g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0040】
1,1b~1f…マフラ、2,2b,2f…共鳴二重管、3,3b…保持部材、11,11b,11e…外郭部材、12,12b…第1内管、13,13b,13d…連結パイプ、14…触媒装置、15…上流側コーン、16,16b…第1消音空間、17…第1の隙間、19…セパレータ、24…第2の隙間、25…第3の隙間、21,21b…第2内管、22,22b…外管、23,23b…第2消音空間、100,100b~100f…消音装置、111…第1直管部、112…第1円錐台部、113,113e…第2直管部、113A,113E,121,211,212,221,222…端部、131…第3直管部、132…第2円錐台部、133…連通孔、141…触媒、191…壁部、192…開口部、200…バッテリー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9