(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】接触接着剤
(51)【国際特許分類】
C08F 8/30 20060101AFI20240806BHJP
C08F 2/26 20060101ALI20240806BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20240806BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240806BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08F8/30
C08F2/26 Z
C08F265/06
C09J11/06
C09J133/06
(21)【出願番号】P 2021515535
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2019073790
(87)【国際公開番号】W WO2020057999
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-02
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517189571
【氏名又は名称】シントマー ドイチェラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ケプケ オラフ
(72)【発明者】
【氏名】アンテス ダニー
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-215874(JP,A)
【文献】特開2005-350580(JP,A)
【文献】特開2008-133433(JP,A)
【文献】特開2003-286324(JP,A)
【文献】特開平07-102149(JP,A)
【文献】特開昭58-198579(JP,A)
【文献】特開2011-219656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08K
C08L
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I
)
(a) 少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレート、
(b) 少なくとも1つの追加の官能基がエチレン性不飽和基とは異なっている、少なくとも1つの追加の官能基を含む、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物、及び
(c) 任意に少なくとも1種のポリエチレン性不飽和化合物、
を含
み、かつ(d)アルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系を含むモノマー混合物(但し、モノマー混合物は、エチレン性不飽和酸を含まない)のpH7.5以上
の水性媒体中でのフリーラジカル乳化重合
の反応生成物
であって、
モノマー混合物は、
(a) 80~99.5重量%のアルキル(メタ)アクリレート、
(b) 0.5~10重量%の少なくとも1つの追加の官能基がエチレン性不飽和基とは異なっている少なくとも1つの追加の官能基を含む、エチレン性不飽和化合物、及び
(c) 0~10重量%のポリエチレン性不飽和化合物
(但し、重量パーセントはモノマーの総量に基づく) を含む、生成物、及び
(II) (b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を含む、フリーラジカル重合によって重合することができない化合物
、但し、(II)の官能基が、ヒドラジド、オキシムエーテル、ヒドロキシルアミン及びアミン基から選択される、
を含むポリマーラテックス組成物。
【請求項2】
反応
生成物(I)の水性媒体は0.3~5重量%のカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤(但し、重量パーセンテージはモノマーの総量に基づく)を含む、請求項
1に記載のポリマーラテックス組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤系(d)がアルキルカルボン酸塩及び任意に非イオン性界面活性剤を含むアニオン性界面活性剤から
なる、請求項1~
2のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物。
【請求項4】
前記ポリマーラテックス組成物が、(II)ラジカル重合によって重合可能ではなく、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応可能な少なくとも2つの官能基を含む化合物を0.1~5重量%(但し、重量パーセント
はモノマーの総量に基づく)を含む、請求項1~
3のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物。
【請求項5】
前記ポリマーラテックス組成物のpHが9~1
3の範囲である、請求項1~
4のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物。
【請求項6】
界面活性剤系(d)に含まれるアルキルカルボン酸
塩が、脂肪酸、
ロジン酸、ヒドロキシアルカン酸、エポキシアルカン酸、シアノアルカン酸、ジテルペンカルボン酸の第三級アミノ塩、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、及びジテルペンカルボン酸の不均化、部分水素化及び重合生成物からなる群から選択さ
れる、請求項1~
5のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物。
【請求項7】
前記反応生成物が、動的走査熱量測定(DSC)によって決定される-10℃以下のガラス転移温度Tgを有する、請求項1~
6のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物。
【請求項8】
前記ポリマーラテックス組成物の固形分が45~65重量%の範囲である、請求項1~
7のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1つのポリマーラテックス組成物を含む、一液型水性接触接着剤。
【請求項10】
剪断力を加えることによって
、請求項1~
9のいずれか1つのポリマーラテックス組成物を凝固させる方法。
【請求項11】
(I) (d)アルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系の存在下、
(a) 少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレート、
(b) 少なくとも1つの追加の官能基はエチレン性不飽和基とは異なっている、少なくとも1つの追加の官能基を含む、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物、及び
(c) 任意選択で少なくとも1つのポリエチレン性不飽和化合物を含むモノマー混合物(ここで、モノマー混合物は、エチレン性不飽和酸を含まない)、
但し、モノマー混合物は、
(a) 80~99.5重量%のアルキル(メタ)アクリレート、
(b) 0.5~10重量%の少なくとも1つの追加の官能基がエチレン性不飽和基とは異なっている少なくとも1つの追加の官能基を含む、エチレン性不飽和化合物、及び
(c) 0~10重量%のポリエチレン性不飽和化合物
(但し、重量パーセントはモノマーの総量に基づく) を含む、
を7.5以上のpHで水性媒体中でのフリーラジカル乳化重合により重合され、
(II) フリーラジカル重合によって重合可能ではなく、かつ(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応可能な少なくとも2つの官能基を含む化合物が、フリーラジカル乳化重合の前又は後にポリマーラテックス組成物に添加される、
但し、(II)の官能基が、ヒドラジド、オキシムエーテル、ヒドロキシルアミン及びアミン基から選択される、ポリマーラテックス組成物を調製する方法。
【請求項12】
界面活性剤系(d)に含まれるアルキルカルボン酸塩が、脂肪酸、ロジン酸、ヒドロキシアルカン酸、エポキシアルカン酸、シアノアルカン酸、ジテルペンカルボン酸の第三級アミノ塩、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、及びジテルペンカルボン酸の不均化、部分水素化及び重合生成物からなる群から選択される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~
8のいずれかに記載のポリマーラテックス組成物と一緒に接着された少なくとも2つの基材を含む物品。
【請求項14】
物品が、衣類及び履物を含む織物及び革製品、家具部材及びマットレスからなる群から選択される、請求項1
3に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーラテックス組成物、ポリマーラテックス組成物を調製する方法、及び前記ポリマーラテックス組成物を含む物品に関する。特に、しかし排他的ではなく、本発明は、前記ポリマーラテックス組成物を含む一液型水性接触接着剤にも関する。さらに、本発明は、前記ポリマーラテックス組成物を凝固させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間、環境への配慮から、多くの確立された製品の再評価が余儀なくされてきた。数十年間商業的に入手可能であったエラストマーポリマーをベースとする接触接着剤は、このカテゴリーに入る。
【0003】
本明細書で使用されるとき、用語「接触接着剤」は、典型的には1つ以上の表面、典型的には一緒に接着される2つの表面に適用される接着剤を指す。接着剤は、透明な接着剤層を形成するためにいくらかの乾燥時間が与えられ、即時の耐久性のある結合ではないにしても、速く作用する結合を形成するように圧力と接触させられる。接触接着剤が一緒に加圧されると、接着された片は、さらなる処理、例えば切断のための準備が整う。接触接着剤は、所望の接着を達成するために接着硬化が必要とされないように配合される。
【0004】
いくつかの接触接着剤は、基材への塗布後約20秒~5分以内に取り扱い強度を示す接着基材を提供することができる。充分な強度の結合は基材を一緒に保持し、機能不全を引き起こすかもしれない新鮮な接着領域上のその後の力に抵抗するために作出される。塗布及び接着の直後にそのような取扱い強度を提供する接着剤は、典型的には「速硬化性」接着剤と呼ばれる。
【0005】
これまで、ほとんどの接触接着剤は、クロロプレンポリマーをベースとする一液型接触接着剤であった。そのような一液型接触接着剤(1-K)は単一の供給源(すなわち、容器)を用いて適用することができることが好都合である。クロロプレン系接着剤は一般に、迅速な結合強度の発生、良好な粘着性、優れた耐熱性、耐水性及び耐薬品性を有する自己接着性を有すると考えられている。クロロプレンポリマーに基づく接触接着剤は、そうでなければ凝固するので、典型的には塩基性pH(すなわち、少なくとも8)でのみ安定である。クロロプレンは揮発性であり、易可燃性であり、ハロゲン含有であり、健康及び環境に有害であると考えられる。クロロプレンの重合生成物はさらにアレルギー反応を引き起こすことがある。さらに、クロロプレンの生産は著しく、クロロプレンポリマーをベースとする接触接着剤の生産のためのコストの増加をもたらす。
【0006】
したがって、配合の容易さ、ならびに迅速な結合強度の発生、優れた耐熱性、耐水性及び耐薬品性を有する良好な粘着性、自己接着性を示し、かつクロロプレンポリマーをベースとする接触接着剤と同等又はそれより良好な特性を有する代替接触接着剤を開発することが強く求められている。クロロプレンポリマーをベースとする接触接着剤の特性に類似した特性を有する配合物を有することは、最終用途においてほとんど変更する必要がないので、使用者/消費者にとって有利である。
【0007】
米国特許第5,543,455号は乳化アクリルポリマーを含む水性接着剤を記載しており、前記アクリルポリマーは5~50の酸価を有し、前記アクリルポリマーのモノマー固形分に基づいて0.5~5重量%のN-メチロールアクリルアミド含有量を有する。水性接着剤はまた、エラストマーのラテックス、例えば天然ゴム、ネオプレンなどのゴムラテックス、及び水性分散体を安定化するのに十分な量のアニオン性界面活性剤を含むことがさらに開示される。N-メチロールアクリルアミドは必須モノマーであり、乳化アクリルポリマーはラテックス接着剤として良好な結合を与えないので、エラストマーラテックスは良好な結合に必要であることが開示されている。
【0008】
欧州特許第2 246 403 A1号は10℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する架橋性バインダー樹脂を含む水性、床又は接触接着剤配合物を記載しており、前記配合物の揮発性有機化合物(VOC)濃度は0.5重量%未満である。架橋性バインダーは、好ましくはカルボニル官能基を有するべきである。配合物は、任意選択で架橋剤を含むことができることがさらに開示されている。接着剤配合物のグル-ライン(glue-line)は2つの基材の接着が達成され得る前に、比較的長時間(15~60分)乾燥させる必要があることが記載されている。
【0009】
米国特許第4,948,822号は、水性エマルジョン形態のコア-シェルポリマーを含む水性形態の積層接着剤を開示している。接着剤組成物はコア及びシェルを含むアクリルコポリマーに基づき、潜在的に反応性の官能性コモノマー、例えば、グリシジルメタクリレートがコア中に配置され、第1のコモノマーと反応性の第2の官能性コモノマーがシェル中に配置される。さらに、コア-シェルポリマーは-10℃~-35℃のTgを有すると述べられている。ポリマーを調製する際に使用されるコアモノマー対シェルモノマーの重量比は、約2:1~5:1の範囲であると記載されている。典型的には、接着剤をフィルム上にコーティングし、室温で乾燥させる(又は適度な熱で乾燥させる)。次に、「ホットニップローラ」を通過させることにより、接着剤被覆膜を所望の基材にラミネートし、したがって製造期間が長くなる。
【0010】
EP 2 831 189 B1は、コア-シェルポリマー成分と、外側シェル上のペンダント官能基の少なくとも1つと反応することができる多官能性成分とを含む、エマルジョンの形態の速硬化性一液型水性接着剤に関する。コア-シェルポリマー成分は第1のガラス転移温度を有する(メタ)アクリレートコポリマーを含む内側コアと、少なくとも1つのペンダント官能基を含有し、第1のガラス転移温度以下の第2のガラス転移温度を有する(メタ)アクリレートコポリマーを含む外側シェルとを含むと記載されている。接着剤エマルジョンは、6.5以下のpHを有することが開示されている。十分な取扱い強度を得ることができない。
【0011】
先行技術は、凝固剤のような種々の添加剤を含まず、クロロプレンポリマーのようなハロゲン化ポリマーを含まず、迅速な結合強度の発生、高い初期粘着性、優れたクリープ及び耐熱性に関して優れた挙動を依然として得ることができる、水性系の、好ましくは一液型/パック接着剤を提供しない。
【0012】
したがって、本発明の目的は保存安定性であるが、急速な接着強度発現を提供し、かつ高い初期粘着性を有する、水性接触接着剤に適したポリマーラテックス組成物を提供することである。従って、典型的には、ポリクロロプレンのようなハロゲン化ポリマーを含まず、結合されるいずれかの一方又は両方の基材に適用することができ、最初に再配置することができる結合基材を提供する、一液型水性接触接着剤として使用されるポリマーラテックス組成物を提供することも望ましい。さらに、制御された方法で凝固され得るポリマーラテックス組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
この目的は驚くべきことに、以下を含むポリマーラテックス組成物によって達成された:
(I) (d)アルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系存在下で
(a) 少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレート、
(b) 少なくとも1つの追加の官能基がエチレン性不飽和基とは異なっている、少 なくとも1つの追加の官能基を含む、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合 物、及び
(c) 任意に少なくとも1種のポリエチレン性不飽和化合物
を含むモノマー混合物(但し、モノマー混合物は、エチレン性不飽和酸を含まない)のpH7.5以上で行われる水性媒体中でのフリーラジカル乳化重合によって得られた反応生成物、
(II) (b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの 官能基を含む、フリーラジカル重合によって重合することができない化合物。
【0014】
驚くべきことに、本発明のポリマーラテックス組成物はシステムの制御された凝固を達成するために容易に不安定化される一方で、良好な貯蔵安定性を確保するために十分に安定化される分散系を提供することが見出された。ここで、用語「保存安定性」は、25℃で180日間貯蔵した後でさえ、一貫した特性及び性能を提供することができるポリマーラテックス組成物を指す。本発明のポリマーラテックス組成物は、ハロゲン含有モノマーを組み込むことなく配合を可能にする。ポリマーラテックスコンポジションは速硬化性であり、高度の初期の粘着性を有するが、同時に、結合された基材を再配置する可能性を提供する。さらに、ポリマーラテックス組成物は十分に確立されたクロロプレン系接着剤と同様であり、これは、所望又は必要であれば、両方の接着剤系を組み合わせることを可能にする。本発明のポリマーラテックス組成物は、柔軟かつ単純な系が容易な凝固を可能にするので、広範囲の用途を提供する。有利には、化学凝固剤を必要とせずにポリマーラテックス組成物に剪断力を適用することによって凝固を達成することができる。これにより、環境への影響が低減された多くの製品にポリマーラテックス組成物を使用することが可能になる。
【0015】
さらに、本発明は、(I)モノマー混合物が(d)アルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系の存在下、7.5以上のpHで水性媒体中でフリーラジカル乳化重合によって重合される、本発明のポリマーラテックス組成物の調製方法に関する。本発明のモノマー混合物は(a)少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート、(b)少なくとも1つの追加の官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物を含み、少なくとも1つの追加の官能基はエチレン性不飽和基とは異なり、(c)任意に少なくとも1つのポリエチレン性不飽和化合物を含む。本発明のモノマーは、エチレン性不飽和酸を含まない。本発明のポリマーラテックス組成物の製造方法は、(II)フリーラジカル重合によって重合可能ではなく、フリーラジカル乳化重合の前又は後に、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を含む化合物のポリマーラテックス組成物への付加をさらに含む。
【0016】
本発明はまた、本発明のポリマーラテックス組成物を含む一液型水性接触接着剤に関し、従って、好ましくは噴霧により剪断力を加えることによって本発明のポリマーラテックス組成物を凝固させる方法に関する。
【0017】
さらに、本発明は、本発明のポリマーラテックス組成物と一緒に接着された少なくとも2つの基材を含む物品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1. (I) (d)アルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系存在下で
(a) 少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレート、
(b) 少なくとも1つの追加の官能基がエチレン性不飽和基とは異なっている、 少なくとも1つの追加の官能基を含む、少なくとも1つのエチレン性不飽和 化合物、及び
(c) 任意に少なくとも1種のポリエチレン性不飽和化合物
を含むモノマー混合物(但し、モノマー混合物は、エチレン性不飽和酸を含まない)のpH7.5以上で行われる水性媒体中でのフリーラジカル乳化重合によって得られた反応生成物:
(II) (b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの 官能基を含む、フリーラジカル重合によって重合することができない化合物
を含むポリマーラテックス組成物。
【0019】
2.態様1に記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、モノマー混合物が
(a) 80~99.5重量%のアルキル(メタ)アクリル酸、
(b) 0.5~10重量%の少なくとも1つの追加の官能基がエチレン性不飽和基とは異なっている、少なくとも1つの追加の官能基を含むエチレン性不飽和化合物、
(c) 0~10重量%のポリエチレン性不飽和化合物
(但し、重量パーセントばモノマーの総量に基づく) を含む。
【0020】
3. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、反応混合物(I)は0.3~5重量%のカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤(但し、重量パーセントばモノマーの総量に基づく)を含む:。
【0021】
4. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、前記界面活性剤系(d)がアルキルカルボン酸塩及び任意に非イオン性界面活性剤を含むアニオン性界面活性剤からなり、それによって、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との比が、存在する場合、1:0.2~1:0.01、より好ましくは1:0.15~1:0.05、最も好ましくは1:0.10~0.07の範囲である。
【0022】
5.先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、前記ポリマーラテックス組成物が、
(II) 0.1~5重量%の、ラジカル重合によって重合可能ではなく、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応可能な少なくとも2つの官能基を含む化合物(但し、重量パーセントばモノマーの総量に基づく)を含む。
【0023】
6. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、前記ポリマーラテックス組成物のpHが9~13、好ましくは10~11.4の範囲である。
【0024】
7. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、アルキルカルボン酸塩(d)が、脂肪酸、ロシン酸、ヒドロキシアルカン酸、エポキシアルカン酸、シアノアルカン酸、ジテルペンカルボン酸の第三級アミノ塩、、アンモニウム塩アルカリ金属塩、及びジテルペンカルボン酸の不均化、部分水素化及び重合生成物からなる群から選択され、好ましくはオレイン酸塩又はエライジン酸の第三級アミノ塩、アンモニウム塩、及びアルカリ金属塩、ステアリン酸塩、ミリステート、パルミテート、ラウレート、ウンデカネート、リノレート、カプリレート、ノナネート、カプリネート、トール油、トール油から得られるジテルペンカルボン酸、松樹脂及び根の樹脂とその不均衡、部分水素化及び重合生成物からなる群から選択され、より好ましくは、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ウンデカン酸カリウム、リノール酸ナトリウム、リノール酸カリウム、カプリル酸カリウム、ノナン酸カリウム、カプリン酸カリウム、及び不均化ロジン酸カリウムからなる群より選択される。
【0025】
8. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、前記少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0026】
9. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、(b)の追加の官能基が、ヒドロキシル基、エポキシ基、グリシジル基、ケトン基、アルデヒド基及びアセトアセテート基、好ましくはケトン基及びアルデヒド基から選択される。
【0027】
10. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、前記少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(b)が、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルカプロラクトンアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクロレイン、メタクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ビニルアミルケトン、ジアセトンアクリルアミド、及び2-[(2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル)オキシ]エチル3-オキソブタノエートからなる群から選択される。
【0028】
11. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、ポリエチレン性不飽和化合物(c)が、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル、ポリカルボン酸のアリルエステル、アリル(メタ)アクリレート、及びジビニルベンゼンからなる群から選択される。
【0029】
12. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、(II)の官能基が、ヒドラジド、オキシムエーテル、ヒドロキシルアミン及びアミン基から選択される。
【0030】
13. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、フリーラジカル重合(II)によって重合できない化合物が、アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、9,10-ジヒドロ-9,10-エタノアントラセン-11,12-ジカルボン酸ジヒドラジド、バリンジヒドラジド、オルトフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、レマイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、キシリレンジアミン、シクロヘキサンジアミン及び1,6-ヘキサンジアミンからなる群から選択される。
【0031】
14. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、前記反応生成物が、動的走査熱量測定(DSC)によって決定される-10℃以下のガラス転移温度Tgを有する。
【0032】
15. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、前記反応生成物が、動的光散乱(DLS)によって測定される200~400nm、好ましくは220~350nmの強度加重平均粒子径(z-平均)を有する。
【0033】
16. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、前記ポリマーラテックス組成物の固形分が45~65重量%の範囲である。
【0034】
17. 先行する態様のいずれか1つに記載のポリマーラテックス組成物であって、ここで、ポリマーラテックスの粘度が、明細書に定義されるように決定された1000 mPas以下である。
【0035】
18. 先行する態様のいずれか1つのポリマーラテックス組成物を含む、一液型水性接触接着剤。
【0036】
19. 剪断力を加えることによって、好ましくは噴霧によって、先行する態様のいずれか1つのポリマーラテックス組成物を凝固させる方法。
【0037】
20. (I) (d)アルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系の存在下、 (a) 少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレート、
(b) 少なくとも1つの追加の官能基はエチレン性不飽和基とは異なっている、少なくとも1つの追加の官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物、及び
(c) 任意選択で少なくとも1つのポリエチレン性不飽和化合物を含むモノマー混合物、
ここで、モノマー混合物は、エチレン性不飽和酸を含まない、
が7.5以上のpHで水性媒体中でのフリーラジカル乳化重合により重合され、
(II) フリーラジカル重合によって重合可能ではなく、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応可能な少なくとも2つの官能基を含む化合物が、フリーラジカル乳化重合の前又は後にポリマーラテックス組成物に添加される、ポリマーラテックス組成物を調製する方法。
【0038】
21. 態様20の方法であって、ここで
(I) (a)は、態様8におけるように定義される、及び/又は
(b)は、態様9又は10におけるように定義される、及び/又は
(c)は、態様11におけるように定義される、及び/又は
(d)は、態様7におけるように定義される、及び/又は
(II)は、態様12又は13におけるように定義される。
【0039】
22. 態様1~17のいずれかに記載のポリマーラテックス組成物と一緒に接着された少なくとも2つの基材を含む物品。
【0040】
23. 互いに接着された前記2つの基材が、互いに同一であるか、又は異なっている、態様22に記載の物品。
【0041】
24. 態様22又は23に記載の物品であって、基材が木材、金属、布、紙、皮革、人工皮革、泡状物、熱可塑性プラスチック、エラストマー、コンクリート、岩石、ガラス、セラミック、繊維ガラス、及び高圧積層体を構築するために使用される材料からなる群から選択され得る、好ましくは、基材が木材、金属、皮革、人工皮革、泡状物、熱可塑性及びエラストマーからなる群から選択され得る、物品。
【0042】
25. 態様24に記載の物品であって、前記金属が、冷間圧延鋼、亜鉛めっき鋼及びアルミニウムからなる群から選択され、及び/又は前記発泡体はポリウレタン(PU)発泡体、ポリエチレン(PE)発泡体、ラテックスゴム発泡体、及びエチレン-酢酸ビニル(EVA)発泡体からなる群から選択され、及び/又は熱可塑性物質はアクリルポリマー、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及びアクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択され、及び/又はエラストマーはポリイソプレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリエーテルブロックアミド、クロロスルホン化ポリエチレン及びエチレンビニルアセテートからなる群から選択される。
【0043】
26. 物品が、衣類及び履物を含む織物及び革製品、家具片、及びマットレスからなる群から選択される、態様22~25のいずれかに記載の物品。
【発明の詳細】
【0044】
以下、本発明をより詳細に説明する。本発明は、(I)モノマー混合物を7.5以上のpHで水媒体中でフリーラジカルエマルジョン重合することにより得られる反応生成物を含むポリマーラテックス組成物に関する。水性媒体中でのフリーラジカル乳化重合は、少なくとも7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5のpHで行うことができる。従って、水性媒体中でのフリーラジカル乳化重合は、13.0、12.8、12.6、12.4、12.2、12.0、11.8、11.6、11.4、11.2、11.0以下のpHで行うことができる。明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されていることを理解されたい。したがって、明示的に開示される下側及び上限範囲の例示的な範囲は、7.7~13.0、8.0~12.4、8.2~12.0、8.5~11.4であり得る。本発明によれば、エマルジョン反応混合物のpH値は、実施例に記載されるように決定され得る。
【0045】
本発明のモノマー混合物は(a)少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート、(b)少なくとも1つの追加の官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物、少なくとも1つの追加の官能基がエチレン性不飽和基とは異なる、及び(c)任意に少なくとも1つのポリエチレン性不飽和化合物を含む。本発明のモノマーは、エチレン性不飽和酸を含まない。従って、本発明のモノマー混合物は重合性酸を含まない。本明細書において、「重合性酸」という用語は、エチレン性不飽和基及び酸官能基を有するモノマーを指す。エチレン性不飽和酸の例は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、3-(アクリロイルオキシ)プロパン酸及びフマル酸のようなビニルカルボン酸である。
【0046】
さらに、本願の反応生成物(I)は、(d)アルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系の存在下で得られる。本発明のポリマーラテックス組成物は、(II)フリーラジカル重合によって重合可能ではなく、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を含む化合物をさらに含む。好ましくは、本発明のポリマーラテックス組成物のモノマー混合物はブタジエン及び/又はクロロプレンを含まない。
【0047】
本発明のポリマーラテックス組成物のモノマー混合物は(a)80~99.5重量%のアルキル(メタ)アクリル酸を含むことができる。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。本明細書において、「モノマーの総量」という用語は、フリーラジカル乳化重合によって重合されるモノマーを指す。本発明のモノマー混合物は、少なくとも81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%のアルキル(メタ)アクリレートを含むことができる。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。本発明のモノマー混合物は99%以下、98.5重量%以下、98重量%以下、97.5重量%以下、97重量%以下のアルキル(メタ)アクリル酸を含むことができる。重量パーセントはモノマーの総量に基づく。明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されていることを理解されたい。したがって、明示的に開示される下側及び上限範囲の例示的な範囲は、83重量%~99重量%、85重量%~98重量%、90重量%~97重量%、95重量%~99重量%であり得る。
【0048】
本発明によれば、少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート(a)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択することができる。
【0049】
本発明のポリマーラテックス組成物のモノマー混合物は(b)少なくとも1つの追加の官能基を含む0.5~10重量%のエチレン性不飽和化合物を含むことができる。ここで、少なくとも1つの追加の官能基はエチレン性不飽和基とは異なる。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。本発明のモノマー混合物は少なくとも0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%の少なくとも1つの追加の官能基を含むエチレン性不飽和化合物を含むことができる。ここで、少なくとも1つの追加の官能基はエチレン性不飽和基とは異なる。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。本発明のモノマー混合物は9.5重量%、9重量%、8.5重量%、8重量%、7.5重量%、7重量%、6.5重量%、6重量%、5.5重量%、5重量%、4.5重量%、4重量%、3.5重量%、3重量%、2.5重量%、2重量%以下の少なくとも1つの追加の官能基を含むエチレン性不飽和化合物を含むことができる。ここで、少なくとも1つの追加の官能基はエチレン性不飽和基とは異なる。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されることが理解されるのであろう。したがって、明示的に開示される下限及び上限範囲の例示的な範囲は、0.5重量%~9重量%、0.5重量%~6重量%、0.5重量%~4重量%、0.5重量%~2重量%、0.7重量%~9重量%、1.0重量%~8重量%、1.3重量%~5.5重量%、1.5重量%~3重量%であり得る。
【0050】
本発明によれば、(b)の追加の官能基は水酸基、エポキシ基、ケトン基、アルデヒド基及びアセトアセテート基から選択することができる。好ましくはケトン基及びアルデヒド基からのものである。少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物(b)は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルカプロラクトンアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクロレイン、メタクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ビニルアミルケトン、ジアセトンアクリルアミド、及び2-[(2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル)オキシ]エチル3-オキソブタノエートからなる群から選択することができる。
【0051】
本発明のポリマーラテックス組成物のモノマー混合物は、(c)0~10重量%のポリエチレン性不飽和化合物を含むことができる。重量パーセントはモノマーの総量に基づく。本発明のモノマー混合物は少なくとも0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%のポリエチレン性不飽和化合物を含むことができ、重量パーセントはモノマーの総量に基づく。本発明のモノマー混合物は、9.5重量%、9重量%、8.5重量%、8重量%、7.5重量%、7重量%、6.5重量%、6重量%、5.5重量%、5重量%、4.5重量%、4重量%、3.5重量%、3重量%、2.5重量%、2重量%、1.5重量%、1.0重量%、0.9重量%、0.8重量%、0.7重量%以下のポリエチレン性不飽和化合物を含むことができる。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されることが理解されるのであろう。したがって、明示的に開示される下限及び上限範囲の例示的な範囲は、0.1重量%~9重量%、0.1重量%~1.5重量%、0.1重量%~1.0重量%、0.1重量%~0.7重量%、0.3重量%~8重量%、0.5重量%~7重量%、0.7重量%~5.5重量%、1.0重量%~3重量%であり得る。
【0052】
本発明のポリエチレン性不飽和化合物(c)は、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル、ポリカルボン酸のアリルエステルアリル(メタ)アクリレート、及びジビニルベンゼンからなる群から選択することができる。ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートからなる群から選択することができる。。ポリカルボン酸のアリルエステルは、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、及びアジピン酸ジアリルからなる群から選択することができる。
【0053】
本発明によれば、反応混合物(I)は、カルボン酸塩を含む0.3~5重量%のアニオン性界面活性剤をさらに含む。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。反応混合物(I)は、カルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を少なくとも0.35重量%、0.4重量%、0.45重量%、0.5重量%含むことができる。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。本発明のモノマー混合物は、4.5重量%、4重量%、3.5重量%、3重量%、2.5重量%、2重量%、1.5重量%以下のカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含むことができる。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されることが理解されるのであろう。したがって、明示的に開示される下側及び上限範囲の例示的な範囲は、0.35重量%~4.5重量%、0.4重量%~3.5重量%、0.45重量%~2.5重量%、0.5重量%~1.5重量%とすることができる。
【0054】
本発明の界面活性剤系(d)は、アルキルカルボン酸塩及び任意に非イオン性界面活性剤を含むアニオン性界面活性剤からなることができる。アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との比は存在する場合、好ましくは1:0.5~1:0.01、好ましくは1:0.375~1:0.02、より好ましくは1:0.2~1:0.03の範囲、さらにより好ましくは1:0.15~1:0.05、最も好ましくは1:0.1~1:0.07である。好ましくは、本発明の界面活性剤系(d)はアルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤からなる。
【0055】
ここで、アルキルカルボン酸塩(d)は、脂肪酸、ロシン酸、ヒドロキシアルカン酸、エポキシアルカン酸、シアノアルカン酸、ジテルペンカルボン酸の第三級アミノ塩、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びジテルペンカルボン酸の不均化、部分水素化及び重合生成物からなる群から選択することができる。好ましくは、本発明のカルボン酸塩(d)がオレイン酸塩又はエライジン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び第三級アミノ塩、ステアリン酸塩、ミリステート、パルミテート、ラウレート、ウンデカネート、リノレート、カプリレート、ノナネート、カプリネート、トール油、トール油から得られるジテルペンカルボン酸、松樹脂及び 根の樹脂とその不均衡、部分水素化及び重合生成物からなる群から選択することができる。特に、本発明のカルボン酸塩(d)は、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ウンデカン酸カリウム、リノール酸ナトリウム、リノール酸カリウム、カプリル酸カリウム、ノナン酸カリウム、カプリン酸カリウム、及び不均化ロジン酸カリウムからなる群から選択することができる。
【0056】
本発明に使用され得る非イオン性界面活性剤は、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、デンプン、ゼラチン、部分的に鹸化されたポリ(ビニルアルコール)、部分的に鹸化されたポリ(メチルメタクリレート)、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルキルエトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、脂肪アミンエトキシレート 、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、及びポリ(ビニルピロリドン-co-ビニルアセテート)からなる群から選択され得る。
【0057】
本明細書において、ポリマーラテックス組成物は(II)0.1~5重量%の化合物を含むことができ、これは、ラジカル重合によって重合可能ではなく、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を含む。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。本発明のポリマーラテックス組成物は少なくとも0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%、0.35重量%、0.4重量%、0.45重量%、0.5重量%の化合物を含むことができる。この化合物はラジカル重合によって重合可能ではなく、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を含む。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。本発明のポリマーラテックス組成物は4.5重量%、4重量%、3.5重量%、3重量%、2.5重量%、2重量%、1.5重量%、1重量%以下の化合物を含むことができる。この化合物はラジカル重合によって重合可能ではなく、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を含む。重量パーセントは、モノマーの総量に基づく。明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されることが理解されるのであろう。したがって、明示的に開示される下側及び上限範囲の例示的な範囲は、0.15重量%~4.5重量%、0.15重量%~1.5重量%、0.3重量%~3.5重量%、0.4重量%~2重量%、0.5重量%~1.5重量%であり得る。
【0058】
ラジカル重合では重合できず、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応可能な少なくとも2つの官能基を含む、(II)化合物の官能基は、ヒドラジド、オキシムエーテル、ヒドロキシルアミン及びアミン基から選択することができる。好ましくは、フリーラジカル重合(II)によって重合可能でない化合物がアジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、9,10-ジヒドロ-9,10-エタノアントラセン-11,12-ジカルボン酸ジヒドラジド、バリンジヒドラジド、オルトフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、キシリレンジアミン、シクロヘキサンジアミン及び1,6-ヘキサンジアミンからなる群から選択することができる。
【0059】
本発明のポリマーラテックス組成物は、水溶液であることが好ましい。本発明の水性ポリマーラテックス組成物には、必要に応じて非水性溶媒を少量用いてもよい。非水性溶媒の量は3重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、最も好ましくは1重量%以下、特に0.5重量%以下であってよい。これはポリマーラテックス組成物の固形分に基づく。好適な非水性溶媒の例としてはトルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール及びエタノールなどの一価アルコール、ならびに多価アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーラテックスコンポジションは、好ましくは非水性溶媒を含まない。
【0060】
フリーラジカル乳化重合によって反応生成物(I)を得るのに有用な重合開始剤は、モノマー混合物の重合を開始する開始剤である。この開始剤は加熱又は電磁放射線、特にUV光に暴露されると、フリーラジカルを生成する。ここで、重合開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、カリウム、アンモニウムなどの過酸化物化合物、ペルオキシ炭酸塩及びペルオキシホウ酸塩、過酸化ベンゾイル、過酸化t-ブチル、過酸化ラウロイル、及びアゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチル)などのアゾ化合物 ブタンニトリル、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、及び4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)からなる群から選択することができる。過酸化化合物は、場合によってはピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、Bruggolit FF6(L. Brueggemann GmbH & Co. KGから商業的に入手可能) などのブルゴライト(Bruggolite)及び亜硫酸水素カリウムなどの好適な還元剤と組合せて有利に使用することができる。本発明(I)は、0.02~6重量%、好ましくは0.05~3重量%、より好ましくは0.1~1重量%の重合開始剤を含むことができる。モノマーの総量に基づく。
【0061】
上述の成分に加えて、本発明のポリマーラテックス組成物は、腐食阻害剤、顔料、染料、酸化防止剤、UV安定剤、充填剤、防腐剤、殺生物剤、増粘剤及び消泡剤などの添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤は、存在する場合、従来の濃度で使用され、本発明のポリマーラテックス組成物によって提供される利点に影響を及ぼさない。
【0062】
本発明のポリマーラテックス組成物は、実施例に記載されるように決定される9~13、好ましくは10~11.4の範囲のpHを有することができる。ポリマーラテックス組成物のpHは、少なくとも9.2、9.4、9.6、9.8、10であり得る。従って、ポリマーラテックス組成物のpHは、13.0、12.8、12.6、12.4、12.2、12.0、11.8、11.6、11.4、11.2、11.0以下であり得る。当業者は、明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されていることを理解するのであろう。したがって、明示的に開示される下側及び上限範囲の例示的な範囲は、7.7~13.0、8.0~12.4、8.2~12.0、8.5~11.4であり得る。
【0063】
本発明のポリマーラテックス組成物の反応生成物は実施例に記載されるように、動的走査熱量測定(DSC)によって決定される-10℃以下のガラス転移温度Tgを有することが好ましい。反応生成物は実施例に記載されるように、動的走査熱量測定(DSC)によって決定される-12℃、-15℃、-17℃、-20℃以下のTgを有することができる。反応生成物は実施例に記載されるように、動的走査熱量測定(DSC)によって決定される、少なくとも-80℃、-75℃、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、-50℃、-45℃のTgを有することができる。明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が、本明細書に開示される。したがって、明示的に開示されている下限と上限の範囲の例は、-80℃~-12℃、-65℃~-15℃、-55℃~-17℃、-45℃~-20℃である。
【0064】
本発明の生成物はさらに、実施例に記載されるように、動的光散乱(DLS)によって測定される200~400nm、好ましくは220~350nmの強さ加重平均粒径(z-平均)を有することができる。
【0065】
本発明のポリマーラテックス組成物の固形分は、45~65重量%の範囲であることが好ましい。ポリマーラテックス組成物の固形分は、少なくとも47重量%、50重量%、52重量%、55重量%であり得る。従って、ポリマーラテックス組成物の固形分は、64重量%、63重量%、62重量%、61重量%、60重量%以下とすることができる。明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されることが理解されるのであろう。したがって、明示的に開示される下側及び上限範囲の例示的な範囲は、47重量%~63重量%、50重量%~62重量%、53重量%~60重量%であり得る。
【0066】
本発明のポリマーラテックス組成物は、ブルックフィールド粘度計、23℃、60rpmでLVTを使用することによって測定して、1000 mPas以下、好ましくは800 mPas以下、より好ましくは600 mPas以下の粘度を示すことができる。スピンドル2が典型的に使用される。本発明のポリマーラテックス組成物の粘度に応じて、スピンドル2の代わりにスピンドル1又は3を使用しなければならないことがある。スピンドル1は10mPas~90mPasの範囲の粘度に使用され、スピンドル2は50mPas~450mPasの範囲の粘度に使用され、スピンドル3は200mPas~1800mPasの範囲の粘度に使用される。粘度測定は、装置の%トルク値が10 ~100 の間にある場合にのみ実行される。FSR (フルスケール範囲)は、測定可能な最大値(トルクスケールで100%)を表す。測定できる最小粘度は、FSRの10%(トルクスケールの10に相当)である。ブルックフィールド粘度計(スピンドル2を用いて23℃で60rpmでLVT)によって粘度を測定した場合、読み取り値が10%未満である場合、スピンドル1を代わりに測定に使用する。ブルックフィールド粘度計、スピンドル2を用いて23℃、60rpmでのLVTにより粘度を測定したときに、測定値が100%を超える場合は、代わりにスピンドル3を用いて測定する。
【0067】
本発明のポリマーラテックス組成物は、広範囲の基材を接着するために使用され得る。本発明による好適な基材は、木、金属、布帛、紙、皮革、人工皮革、泡状物、熱可塑性樹脂、エラストマー、コンクリート、大理石及び花こう岩のような岩石、ガラス、セラミック、ガラス繊維、カウンタートップのような高圧ラミネートを構成するために使用される材料からなる群から選択することができる。金属の好適な例は、好ましくは冷間圧延鋼、亜鉛めっき鋼及びアルミニウムからなる群から選択され得る。布帛の好適な例は、好ましくは織物又は非織形態の天然布帛及び合成布帛からなる群から選択することができる。発泡体の好適な例は、好ましくはポリウレタン(PU)発泡体、ポリエチレングリコール(PE)発泡体、ラテックスゴム発泡体、及びエチレン酢酸ビニル(EVA)発泡体からなる群から選択され得る。熱可塑性プラスチックの好適な例は、好ましくはアクリルポリマー、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンからなる群から選択され得る。エラストマーの好適な例は、好ましくはポリイソプレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリエーテルブロックアミド、クロロスルホン化ポリエチレン及びエチレンビニルアセテートからなる群から選択され得る。
【0068】
特定の用途では、接触させる基材の一方又は両方に接着剤エマルジョンを適用し、コーティングされた基材を一緒に加圧した後、室温(20℃)で迅速に接着結合が形成されることが必要である。接着結合は基材を一緒に保持し、新鮮なグルーラインに対するその後の力に抵抗するのに充分な取扱い強度を提供しなければならない。本出願のポリマーラテックス組成物は例えば、噴霧、刷毛塗り、拭き取り、塗布、ならびにグラビア及びカーテン塗布のような機械的プリント方法を含む、当業者に公知の種々の方法で基材に適用され得る。
【0069】
従って、本発明はまた、本発明のポリマーラテックス組成物と一緒に接着された少なくとも2つの基材を含む物品に関する。ここで、接着される基材は、同じであっても異なっていてもよい。本発明による好適な基材は、上述の通りであることに留意されたい。好ましくは、本発明の基材が木材、金属、皮革、人工皮革、発泡体、熱可塑性樹脂、及びエラストマからなる群から選択することができる。
【0070】
本発明によれば、物品は好ましくは一緒に接着された発泡体と発泡体、一緒に接着された発泡体と金属、一緒に接着された発泡体と木、一緒に接着された発泡体とエラストマー、一緒に接着された発泡体と熱可塑性樹脂、一緒に接着された皮革とエラストマー、一緒に接着された発泡体と人工皮革、一緒に接着された皮革と熱可塑性樹脂、一緒に接着された人工皮革と熱可塑性樹脂、一緒に接着された人工皮革とエラストマー、一緒に接着された皮革と皮革、一緒に接着された皮革と人工皮革、一緒に接着された人工皮革と人工皮革を含む。。
【0071】
本明細書において、物品は、好ましくは衣類及び履物を含む織物及び革製品、家具片、及びマットレスからなる群から選択されてもよい。
【0072】
本発明はさらに、上記のような本発明のポリマーラテックス組成物を凝固させる方法を指す。本発明によれば、ポリマーラテックス組成物は、剪断力を加えることによって、好ましくは本発明のポリマーラテックス組成物を噴霧することによって凝固される。ここで、ポリマーラテックス組成物は20℃の温度でハーク・レオストレス(Haake Rheostress)600によって測定されるように、少なくとも60s-1のせん断速度を適用するとすでに凝固する。測定のために、測定カップ(HS)をマーキングまで本発明のポリマーラテックス組成物で満たし、シリンダー(HS25)を、カップの底部とシリンダーとの間に8mmの距離を提供するシステムによって自動的に調節する。シリンダーとカップとの間のギャップは25μmである。測定は、30分以内に33s-1/分の剪断速度を増加させることによって行われる。測定の停止基準は10,000Pa以上のせん断応力である。従って、本発明のポリマーラテックス組成物は、好ましくは60s-1から10.000s-1、より好ましくは60s-1から8.000s-1、最も好ましくは60s-1から6.000s-1の範囲の剪断速度を20℃の温度でハーク・レオストレス(Haake Rheostress) 600により測定することにより凝固される。
【0073】
ポリマーラテックス組成物は、基材上に噴霧することができる。本発明による好適な基材は、上記の通りである。凝固は、好ましくは室温(20℃)で行われる。ポリマーラテックス組成物は、好ましくは一液型(1-K)接着剤として単一容器から噴霧される。スプレーのために適用される圧力は、好ましくは30KPa~150KPaの範囲であり得る。本発明によるポリマーラテックス組成物は、例えばスプレーガン「Walther Pilot III 2K」及び圧力容器「Walther MDG」を用いてスプレーガンを用いてスプレーすることができる。
【0074】
本発明のポリマーラテックス組成物の凝固は、ポリマーラテックス組成物を2成分(2-K)接着剤としての電解質水溶液と接触させることによっても得ることができる。電解質水溶液との接触は、攪拌しながら電解質水溶液をポリマーラテックス組成物に添加することにより行ってもよい。さらに、電解質水溶液との接触は、電解質水溶液と本発明のポリマーラテックス組成物とを、基材上の2つの別々の容器から共スプレーすることによって行うことが好ましい。
【0075】
本発明で用いることができる電解質水溶液は、ポリマーラテックスを凝固させることができる特性を有する有機酸(塩)又は無機酸(塩)の水溶液である。本発明に用いることができる電解質水溶液の濃度は、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも1.0重量%、最も好ましくは少なくとも2.0重量%である。電解質水溶液の例は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムカリウム 硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸バリウム、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、硫酸ミョウバン及び鉄ミョウバン水溶液のような無機塩の水溶液、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸のような無機酸の水溶液、及び酢酸、クエン酸、ギ酸などの有機リン酸とこれらの水溶液及び酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ギ酸ナトリウム及びギ酸カルシウムのような有機塩の水溶液である。凝固は、好ましくは凝固剤を使用せずに剪断力を加えることによって達成されることに留意されたい。実際には先行技術とは異なり、凝固は環境に影響を及ぼす可能性がある化学物質の使用を軽減する化学添加剤を使用するのではなく、物理的な力によるものである。
【0076】
従って、本発明はまた、上記のような本発明のポリマーラテックス組成物を含む一液性(1-K)水性接触接着剤に関する。
【0077】
さらに、本発明は、上記のような本発明のポリマーラテックス組成物の調製法に関する。本発明によれば、本方法は、(I)モノマー混合物が(d)アルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系の存在下、7.5以上のpHで水性媒体中でフリーラジカル乳化重合によって重合されることを含む。水性媒体のpHは、少なくとも7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5であり得る。従って、水性媒体のpHは、13.0、12.8、12.6、12.4、12.2、12.0、11.8、11.6、11.4、11.2、11.0以下であり得る。明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されることが理解されるのであろう。したがって、明示的に開示される下側及び上限範囲の例示的な範囲は、7.7~13.0、8.0~12.4、8.2~12.0、8.5~11.4であり得る。本発明によれば、エマルジョン反応混合物のpH値は、実施例に記載されるように決定され得る。
【0078】
本発明のモノマー混合物は(a)少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート、(b)少なくとも1つの追加の官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物を含み、少なくとも1つの追加の官能基はエチレン性不飽和基とは異なり、(c)任意に少なくとも1つのポリエチレン性不飽和化合物を含む。本発明のモノマーは、エチレン性不飽和酸を含まない。本発明のポリマーラテックス組成物の製造方法は(II)フリーラジカル重合によって重合可能ではなく、フリーラジカル乳化重合の前又は後に、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を含む化合物のポリマーラテックス組成物への付加をさらに含む。好ましくは、本発明のモノマーがブタジエン及び/又はクロロプレンを含まない。
【0079】
好適な(a)アルキル(メタ)アクリレート、(b)少なくとも1つの追加の官能基を含むエチレン性不飽和化合物であって、少なくとも1つの追加の官能基がエチレン性不飽和基とは異なっている:(c) ポリエチレン性不飽和化合物、(d)アルキルカルボン酸塩を含むアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系フリーラジカル重合によって重合可能ではなく、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を含む化合物が理解される。さらに、それらの好適な質量範囲(重量%)は、上記のように選択することができる。
【0080】
フリーラジカル重合は、好ましくは50℃以上、好ましくは70℃以上で行われる。好適な重合時間は、好ましくは1~12時間、より好ましくは2~6時間の範囲である。
【0081】
一般に、モノマー混合物は、界面活性剤系(d)と共に水中に分散される。重合は、上記のような重合開始剤によって開始することができる。乳化重合は、モノマー混合物、界面活性剤系(d)及び水の全分散液を反応容器に入れるバッチ法であってもよい。これは、モノマー混合物の一部を界面活性剤系(d)及び水と一緒に反応容器に添加し、重合を開始させる増分法であってもよく、又は2つ以上の反応容器の連鎖を使用する連続反応であってもよい。界面活性剤(d)を含むモノマー混合物の残りの部分はもしあれば、ある期間にわたって反応容器に添加することができる。本発明によれば、この方法は、好ましくは粒子サイズを制御するために開始前に少量のシード重合物を反応容器に添加するシード法であってもよい。フリーラジカル重合によって重合可能ではなく、(b)の少なくとも1つの追加の官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を含む化合物は、重合の前後に反応容器に添加することができることが理解されるのであろう。
【0082】
本発明に適したシードは例えば、本発明に従って製造されるラテックスに基づくラテックスからなり得る。さらに、本発明に応じて、スタンダードスチレンブタジエンシード、ポリスチレンシード又は(メタ)アクリレートシードを使用することができる。ここで、シードは、重合反応の開始時にその場で形成することができる。最初に導入されるシードの粒子サイズは、好ましくは20~50nmの範囲、より好ましくは25~35nmの範囲である。使用されるシードの量は製造されるラテックスのサイズに依存し、モノマーの総量に基づいて、0.01~5重量%、好ましくは0.1~2重量%であり得る。
【0083】
本発明は、一般的に記載されているが、さらなる理解は例示の目的のみのために本明細書中に提供される特定の具体例を参考にすることによって得られ得、そして特に明記されない限り、限定することを意図されない。
【実施例】
【0084】
材料
以下の略語は、実施例においても遵守される:
BA アクリル酸ブチル
MMA メタクリル酸メチル
2-EHA アクリル酸2-エチルヘキシル
IBOA アクリル酸イソボルニル
DAAM ジアセトンアクリルアミド
HEMA ヒドロキシエチルメタクリレート
ADH アジピン酸ジヒドラジド
NH4 -オレイト オレイン酸アンモニウム
K-オレイン酸塩 オレイン酸カリウム
MAA メタクリル酸
TBHP tert-ブチルヒドロペルオキシド
SFS ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム
アクリル酸シード アクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル共重合体シード(水中 30重量%、強度加重平均粒子径32nm、DLSにより測定)
発泡立方体 ポリウレタンフォーム
【0085】
試験方法
全固形分量(TSC)の測定:
全固形分の定量は重量法に基づいており、分散液1~2gを分析天秤で秤量し、タール状のアルミニウム皿に入れる。皿を、一定の質量に達するまで、循環空気オーブン中で120℃で1時間保存する。室温(23℃)に冷却した後、最終重量を再び測定する。固形分含量は、以下のように計算される:
【0086】
【数1】
ここで、m
initial = 初期重量、m
final = 乾燥後の重量。
【0087】
pH
フリーラジカル乳化重合の水性媒体及び本発明のポリマーラテックス組成物のpHを、Schott CG840pHメーターを用いて測定した。pH 4及びpH 7の緩衝液で2点較正した後、電極を23℃の分散液に浸漬した。ディスプレイ上の一定値をpH値として記録した。
【0088】
粒径
粒子サイズは、ゼタサイザーナノS動的光散乱(DLS)装置(Malvern Instruments, Incorporated, Westborough, MAから入手可能)を用いて測定した。フリーラジカル乳化重合により得られた反応生成物4滴を脱イオン水約200mLで希釈した。一部をポリスチレンキュベットに移した。装置ソフトウェアが提供する強度加重平均粒子径(z-平均)を記録した。
【0089】
ガラス転移温度(Tg)
ラテックス粒子の実際のガラス転移温度(Tg)は、ASTM 3418-08に従う手順を使用して、Perkin Elmer DSC4000を用いた示差走査熱量測定(DSC)によって決定した。中間点温度Tmgを20℃/分の昇温速度で測定することにより、ガラス転移温度を測定した。測定温度範囲は-100℃~180℃であった。
【0090】
粘度
粘度は、スピンドル2を用いてブルックフィールドLVT粘度計を用いて23℃で測定した。約350mlの液体(気泡を含まない)をビーカーに充填し、粘度計の紡錘体をマークまで浸漬した。その後、粘度計のスイッチが入り、約1分後に値が一定になるまで記録される。装置のトルク%値は10~100であった。粘度は60rpmで測定した。
【0091】
噴射性
1-K適用のために、ポリマーラテックス組成物Ex-1、CE-1~CE-3を、スプレーガン「Walter Pilot III 2K」及び圧力容器「Walther MDG 2」を使用して噴霧した。ラテックス組成物を圧力容器に充填し、容器の圧力を約100kPaに設定した。
【0092】
2-K適用のために、CaCl2水溶液(水中10重量%)をさらに使用した。CaCl2水溶液(10重量%)を圧力容器「ウォルサーMDG 1」に充填し、容器の圧力を約50kPaに設定した。
【0093】
スプレーノズルの目詰まりや目詰まりが認められ、噴霧性に関する主観的評価が行われた。
【0094】
接着強度測定
接着強度とは、接着剤組成物を塗布した後に、発泡体対発泡体結合を形成することを指す。30×30×30mmの立方体に切断された発泡体のサンプルを基材として使用した。2つの立方体の上面に45~180mgのポリマーラテックス組成物を室温で噴霧した。第1の立方体の噴霧面を第2の立方体の噴霧面に置き、0.9kgの重量を立方体対の頂部に置いた。10秒後、重りを接着された立方体の対から取り除き、導線を接着された立方体の対の第1の立方体に固定した。接着強度を測定するために、第1の立方体に固定された導線を発条秤で引っ張り、接着された立方体対の第2の立方体を固定した。最大力は、第1のキューブが接着されたキューブ対の噴霧された表面上で第2のキューブから分離されるまで、発条秤を用いて測定された。試料は、0.9kgの規定負荷時間後に測定した。最大力を、5分、10分、30分、60分及び24時間後に直ちに(10秒後)測定した。立方体を、ポリマーラテックス組成物を適用する前後に重み付けして、使用されるポリマーラテックス組成物の量を決定した。
【0095】
以下の実施例において報告される全ての量は特に明記しない限り、重量部で与えられる
【0096】
ポリマーラテックス組成物の調製
実施例1(実施例1):
201部の脱イオン水と7.71部のアクリル酸シードとの混合物を、還流冷却器、機械的撹拌器、温度プローブ及び計量ポンプを備えた2Lガラス反応器中で撹拌し、加熱した。混合物の温度が77℃に達したとき、2.3部のアンモニア(25重量%アンモニアを含む水溶液)及び15.53部の脱イオン水中の1.73部の過硫酸ナトリウムの開始剤溶液を反応容器に1回のショットで添加した。5分間混合した後、32.78部の脱イオン水中に1.73部の過硫酸アンモニアを含有する開始剤溶液と、1028.1部のBA、104.7部のMMA、11.5部のHEMA、57.5部のDAAM、10.35部のオレイン酸アンモニア、0.57部のリン酸カリウム及び383.5部の脱イオン水を含有するプレエマルジョンとを、270分間にわたって反応容器に供給した。供給の最初の30分間で、温度を連続的に80℃に上昇させた。0.2部のアンモニア(25重量%アンモニアを含む水溶液)を、供給開始後60分、180分、245分及び345分後に4回のシングルショットで添加した。プレエマルジョン添加工程の終了後、反応混合物を撹拌し、80℃で60分間維持した。混合物を室温まで冷却した。その間に、7.99部の脱イオン水中の0.88部のSFSの溶液を60分で反応混合物に供給した。1.25部のTBHP(水中70重量%)を、SFS供給の開始時に1ショットで添加した。終了後、分散液を100μmメッシュを通して濾過し、pHをアンモニアで10に調整した。その後、25.88部の水中の2.88部のADHのソリューションを分散液に添加した。
【0097】
この分散液を、固形分、粘度、粒径及びガラス転移を測定することによって特性決定した。
【0098】
比較例1(CE-1):
201.5部の脱イオン水と7.5部のアクリル酸シードとの混合物を、還流冷却器、機械的撹拌器、温度プローブ及び計量ポンプを備えた2Lガラス反応器中で撹拌し、加熱した。混合物の温度が77℃に達したとき、2.24部のアンモニア(25重量%アンモニアを含む水溶液)及び15.12部の脱イオン水中の1.68部の過硫酸ナトリウムの開始剤溶液を反応容器に1回のショットで添加した。5分間混合した後、32.78部の脱イオン水中に1.73部の過硫酸アンモニアを含有する開始剤溶液、及び1006.9部のBA、101.9部のMMA、11.2部のHEMA、4.48部のオレイン酸カリウム、0.56部のリン酸カリウム及び418.5部の脱イオン水を含有するプレエマルジョンを、270分間にわたって反応容器に供給した。供給の最初の30分間で、温度を連続的に80℃に上昇させた。0.2部のアンモニア(25重量%アンモニアを含む水溶液)を、供給開始後60分、180分、245分及び345分後に4回のシングルショットで添加した。プレエマルジョン添加工程の終了後、反応混合物を撹拌し、80℃で60分間維持した。混合物を室温まで冷却した。その間に、7.45部の脱イオン水中の0.39部のSFSの溶液を60分で反応混合物に供給した。0.74部のTBHP(水中70重量%)を、SFS供給の開始時に1ショットで添加した。終了後、分散液を100μmメッシュを通して濾過し、pHをアンモニアで10に調整した。
【0099】
この分散液を、固形分、粘度、粒径及びガラス転移を測定することによって特性決定した。
【0100】
比較例2(CE-2):
197.9部の脱イオン水と7.37部のアクリル酸シードとの混合物を、還流冷却器、機械的撹拌器、温度プローブ及び計量ポンプを備えた2Lガラス反応器中で撹拌し、加熱した。混合物の温度が77℃に達したとき、2.2部のアンモニア(25重量%アンモニアを含む水溶液)及び14.85部の脱イオン水中の1.65部の過硫酸ナトリウムの開始剤溶液を反応容器に1回のショットで添加した。5分間混合した後、31.35部の脱イオン水中に1.65部の過硫酸アンモニアを含有する開始剤溶液と、1071.4部のBA、17.61部のMMA、11部のHEMA、9.9部のオレイン酸アンモニア、0.55部のリン酸カリウム及び412.8部の脱イオン水を含有するプレエマルジョンとを、270分間にわたって反応容器に供給した。供給の最初の30分間で、温度を連続的に80℃に上昇させた。0.2部のアンモニア(25重量%アンモニアを含む水溶液)を、供給開始後60分、180分、245分及び345分後に4回のシングルショットで添加した。プレエマルジョン添加工程の終了後、反応混合物を撹拌し、80℃で60分間維持した。混合物を室温まで冷却した。一方、9.9部の脱イオン水中の1.1部のD-イソアスコルビン酸の溶液を60分で反応混合物に供給した。0.47部のTBHP(水中70重量%)をD-イソアスコルビン酸供給の開始時に1ショットで添加し、D-イソアスコルビン酸供給の30分後に同じ量を1ショットで添加した。終了後、分散液を100μmメッシュを通して濾過し、pHをアンモニアで10に調整した。
【0101】
この分散液を、固形分、粘度、粒径及びガラス転移を測定することによって特性決定した。
【0102】
比較例3(CE-3):
19.46部の脱イオン水、0.08部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、0.04部の炭酸水素ナトリウム緩衝液、2.37部の2-EHA、及び1.63部のIBOAの混合物を、還流冷却器、温度プローブ、機械的撹拌器、計量ポンプ、及び供給漏斗を備えた5つ口反応器フラスコ中で窒素下で撹拌及び加熱した。混合物の温度が74℃に達したとき、0.34部の脱イオン水中の0.04部の過硫酸アンモニウムの開始剤溶液を、単一ショットでフラスコに添加した。反応物を78℃に30分間保持して、シード乳化を得た。次に、0.09部の過硫酸カリウム及び0.69部の脱イオン水を含有する開始剤溶液を1ショットで添加した。2分間混合した後、21.73部品の脱イオン水、0.40部品のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、11.64部品の2-EHA、4.34部品のBA、及び14.01部品のスチレンを含有するプレエマルジョンを、140分間にわたり精密ポンプを介して反応容器に供給した。この添加工程の終了後、反応物質を78℃で20分間加熱した。次に、0.03部の過硫酸カリウムと0.57部の脱イオン水とを含む開始剤溶液を1ショットで添加した。2分間混合した後、2回の追加の供給物を70分間かけて反応器フラスコに同時に滴下した。一方の供給は4.04部の脱イオン水及び0.38部のDAAMを含む水溶液であり、他方の供給は、12.35部のBA、0.75部のMAA、及び4.38部のMMAを含むモノマー混合物であった。これらの添加が完了した後、反応混合物を撹拌し、78℃で45分間維持した。得られたエマルジョンを25℃に冷却し、100μmメッシュを通して濾過した。次に、ADHの10重量%水溶液0.9重量部をアクリル酸分散液50重量部に添加した。
【0103】
【0104】
1-K及び2-K適用
1-K適用のために、ポリマーラテックス組成物Ex-1、CE-1~CE-3を、スプレーガン「Walther Pilot III 2K」及び圧力容器「Walther MDG 2」を使用して噴霧した。ラテックス組成物を圧力容器に充填し、容器の圧力を約100kPaに設定した。
【0105】
2-K適用のために、CaCl2水溶液(水中10重量%)をさらに使用した。CaCl2溶液を圧力容器「ウォルサーMDG 1」に充填し、圧力を約50kPaに設定し、「ウォルサーパイロットIII 2K」を用いてポリマーラテックス組成物とCaCl2溶液を同時に噴霧した。
【0106】
【0107】
本発明は個々の実施形態を説明するが、本発明は説明した実施形態の組合せを包含することを意図していることに留意されたい。