(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】増強された硝酸塩組成物および使用法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/06 20060101AFI20240806BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20240806BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240806BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K33/06
A61K33/30
A61K31/194
A61P9/12
A61P21/00
A61K9/48
(21)【出願番号】P 2021544571
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 US2020016274
(87)【国際公開番号】W WO2020160509
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-19
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316009027
【氏名又は名称】サーモライフ インターナショナル, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】THERMOLIFE INTERNATIONAL,LLC
【住所又は居所原語表記】1220 E Hill St, Signal Hill, CA 90755 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ニコライディス, アレクサンドロス
(72)【発明者】
【氏名】クレイマー, ロナルド
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/019663(WO,A1)
【文献】特表2010-519335(JP,A)
【文献】特開2014-122162(JP,A)
【文献】特表2014-513527(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0123654(US,A1)
【文献】特表2012-529909(JP,A)
【文献】B. PEJIN et al.,MINERAL CONTENT OF A MOSS TEA FOR HYPERTENTION,Italian Journal of Food Science,イタリア,Codon Publications,2013年,vol.25,235-237
【文献】Boris Pejin et al.,Heavy metal content of a medicinal moss tea for hypertension,Natural Product Research,Taylor & Francis,2012年,vol.26, No.23,2239-2242
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00- 33/44
A61P 1/00- 43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの消費のための組成物であって、前記組成物は、
元素マグネシウム、元素カルシウム、
および元素亜
鉛からなる群より選択される元素金属;ならびに
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源、
を含
み、前記組成物が固体形態である、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、
1mg~800mgの間の前記元素金属;および
30mg~2000mgの間の硝酸アニオン(NO
3
-)を提供する前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源
を含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、
5mg~400mgの間の前記元素金属;および
50mg~600mgの間の硝酸アニオン(NO
3
-)を提供する前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源
を含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記元素金属は、元素マグネシウムである、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記元素金属は、元素カルシウムである、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記元素金属は、元素亜鉛である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
酸をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、50mg~20,000mgの間の前記酸を含む、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、300mg~1000mgの間の前記酸を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、食事補充物である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、薬学的に受容可能な添加剤をさらに含む、請求項
9または10に記載の組成物。
【請求項12】
前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源は、硝酸マグネシウムまたはプロリン硝酸塩である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
元素金属および硝酸アニオン(NO
3
-)供給源を含む、被験体において血圧を低減するための組み合わせ物であって、前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源は、前記被験体に
固体形態で共投与されることを特徴と
し、前記元素金属が、元素マグネシウム、元素カルシウム、および元素亜鉛からなる群より選択される、組み合わせ物。
【請求項14】
血圧が前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の共投与の5分以内に低減される、請求項
13に記載の組み合わせ物。
【請求項15】
血圧が前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の共投与後に少なくとも1時間の間低減される、請求項
13または14に記載の組み合わせ物。
【請求項16】
血圧が前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の共投与後に2時間超の間低減されたままである、請求項
13または14に記載の組み合わせ物。
【請求項17】
血圧が前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の共投与後に6時間超の間低減されたままである、請求項
13または14に記載の組み合わせ物。
【請求項18】
前記被験体は、正常血圧または高血圧である、請求項
13~17のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項19】
元素金属および硝酸アニオン(NO
3
-)供給源を含む、被験体において高血圧を処置するための組み合わせ物であって、前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源は、前記被験体に
固体形態で共投与されることを特徴と
し、前記元素金属が、元素マグネシウム、元素カルシウム、および元素亜鉛からなる群より選択される、組み合わせ物。
【請求項20】
元素金属および硝酸アニオン(NO
3
-)供給源を含む、被験体において身体トレーニング活動の間の運動能力を改善する、ならびに/またはスタミナ、筋力、持久力、および/もしくは疲労困憊するまでの時間を増大させるための組み合わせ物であって、前記身体トレーニング活動の30分前以内に前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源が、前記被験体に
固体形態で共投与されることを特徴と
し、前記元素金属が、元素マグネシウム、元素カルシウム、および元素亜鉛からなる群より選択される、組み合わせ物。
【請求項21】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源および元素金属を含む、被験体において血圧を低減する、高血圧を処置する、運動能力を改善する、ならびに有酸素運動能、スタミナ、筋力、持久力、および/または疲労困憊するまでの時間を増大させるにあたって硝酸アニオン(NO
3
-)の有効性を増大させるための組み合わせ物であって、有効量の前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源と有効量の前記元素金属とが、前記被験体に
固体形態で共投与されることを特徴とし、ここで前記元素金属は、元素マグネシウム、元素カルシウム、
および元素亜
鉛からなる群より選択される、組み合わせ物。
【請求項22】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の前記有効量は、投与の5分以内に血管拡張を引き起こすために十分な量である、請求項
21に記載の組み合わせ物。
【請求項23】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の前記有効量は、単独で投与された場合に、投与の5分以内に血管拡張を引き起こすために十分な硝酸アニオン(NO
3
-)の量より少なく、元素金属の前記有効量は、投与の5分以内に血管拡張を引き起こすにあたって、硝酸アニオン(NO
3
-)の前記有効量を支援するために十分な量である、請求項
21に記載の組み合わせ物。
【請求項24】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の前記有効量および元素金属の前記有効量は、硝酸アニオン(NO
3
-)単独の相当量の投与より大きな血圧低減を引き起こすために十分な量である、請求項
21に記載の組み合わせ物。
【請求項25】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の前記有効量および元素金属の前記有効量は、硝酸アニオン(NO
3
-)単独の相当量の投与より大きな運動能力の増大を引き起こすために十分な量である、請求項
21に記載の組み合わせ物。
【請求項26】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の前記有効量および元素金属の前記有効量は、硝酸アニオン(NO
3
-)単独の相当量の投与より大きな血管拡張を増大のために十分な量である、請求項
21に記載の組み合わせ物。
【請求項27】
投与される元素金属の前記量は、1mg~800mgの間であり、投与される硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の前記量は、30mg~2000mgの間の硝酸アニオン(NO
3
-)を提供する、請求項
13~26のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項28】
投与される元素金属の前記量は、4mg~400mgの間であり、投与される硝酸アニオン(NO
3
-)供給源の前記量は、50mg~600mgの間の硝酸アニオン(NO
3
-)を提供する、請求項
13~26のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項29】
前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源および前記元素金属が、被験体に酸と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項13~28のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項30】
前記酸は、前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源および前記元素金属とともに共投与される、請求項29に記載の組み合わせ物。
【請求項31】
前記酸は、クエン酸である、請求項29または30に記載の組み合わせ物。
【請求項32】
投与される酸の前記量は、50mg~20,000mgの間である、請求項
29~31のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項33】
投与される酸の前記量は、300mg~1000mgの間である、請求項
29~31のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項34】
元素金属を含む、被験体において血圧を低減するための
固体組成物であって、前記組成物は、硝酸アニオン(NO
3
-)供給源とともに前記被験体に共投与されることを特徴と
し、前記元素金属が、元素マグネシウム、元素カルシウム、および元素亜鉛からなる群より選択される、
固体組成物。
【請求項35】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源を含む、被験体において血圧を低減するための
固体組成物であって、前記組成物は、元素金属とともに前記被験体に共投与されることを特徴と
し、前記元素金属が、元素マグネシウム、元素カルシウム、および元素亜鉛からなる群より選択される、
固体組成物。
【請求項36】
元素金属を含む、被験体において高血圧を処置するための
固体組成物であって、前記組成物は、硝酸アニオン(NO
3
-)供給源とともに前記被験体に共投与されることを特徴と
し、前記元素金属が、元素マグネシウム、元素カルシウム、および元素亜鉛からなる群より選択される、
固体組成物。
【請求項37】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源を含む、被験体において高血圧を処置するための
固体組成物であって、前記組成物は、元素金属とともに前記被験体に共投与されることを特徴と
し、前記元素金属が、元素マグネシウム、元素カルシウム、および元素亜鉛からなる群より選択される、
固体組成物。
【請求項38】
元素金属を含む、被験体において身体トレーニング活動の間の運動能力を改善する、ならびに/またはスタミナ、筋力、持久力、および/もしくは疲労困憊するまでの時間を増大させるための
固体組成物であって、前記身体トレーニング活動の30分前以内に前記組成物が、硝酸アニオン(NO
3
-)供給源とともに前記被験体に共投与されることを特徴と
し、前記元素金属が、元素マグネシウム、元素カルシウム、および元素亜鉛からなる群より選択される、
固体組成物。
【請求項39】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源を含む、被験体において身体トレーニング活動の間の運動能力を改善する、ならびに/またはスタミナ、筋力、持久力、および/もしくは疲労困憊するまでの時間を増大させるための
固体組成物であって、前記身体トレーニング活動の30分前以内に前記組成物が、元素金属とともに前記被験体に共投与されることを特徴と
し、前記元素金属が、元素マグネシウム、元素カルシウム、および元素亜鉛からなる群より選択される、
固体組成物。
【請求項40】
硝酸アニオン(NO
3
-)供給源を含む、被験体において血圧を低減する、高血圧を処置する、運動能力を改善する、ならびに有酸素運動能、スタミナ、筋力、持久力、および/または疲労困憊するまでの時間を増大させるにあたって硝酸アニオン(NO
3
-)の有効性を増大させるための
固体組成物であって、前記組成物は、有効量の前記硝酸アニオン(NO
3
-)供給源において、有効量の元素金属とともに前記被験体に共投与されることを特徴とし、ここで前記元素金属は、元素マグネシウム、元素カルシウム、
および元素亜
鉛からなる群より選択される、
固体組成物。
【請求項41】
元素金属を含む、被験体において血圧を低減する、高血圧を処置する、運動能力を改善する、ならびに有酸素運動能、スタミナ、筋力、持久力、および/または疲労困憊するまでの時間を増大させるにあたって硝酸アニオン(NO
3
-)の有効性を増大させるための
固体組成物であって、前記組成物は、有効量の前記元素金属において、有効量の硝酸アニオン(NO
3
-)供給源とともに前記被験体に共投与されることを特徴とし、ここで前記元素金属は、元素マグネシウム、元素カルシウム、
および元素亜
鉛からなる群より選択される、
固体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月1日出願の米国仮特許出願第62/800,361号、および2019年6月25日出願の米国仮特許出願第62/866,540号(これらの開示の全体は、参考として援用される)の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
出願人らは、2007年に、硝酸の塩(NO3
-、これはまた、本明細書で硝酸アニオンとして記載される)の投与が、運動能力を増大させる、血流を増大させる、および血管拡張を改善することができることを発見した。出願人らの発見以来、研究コミュニティは、このような無機硝酸塩に由来する多数の利益(例えば、運動疲労の改善、疲労困憊するまでの時間の増大、運動中の酸素消費の低減、代謝ストレス関連疾患を有する被験体の酸素消費の低減、妨害されたグルコース代謝の改善、体脂肪率の減少(従って、肥満および肥満前段階を発生させる可能性を低減することにおける有用性)、脂肪肝疾患の改善、筋力の増大、および胃潰瘍を処置する可能性)を発見した。留意すべきことに、硝酸塩研究の新たな潮流によって、硝酸または亜硝酸のナトリウム塩またはカリウム塩の摂取は血圧を上昇させるという相関関係の以前の観察に反して、硝酸の塩の投与は、血圧の低減を実際に生じることが示された。
【0003】
これらの発見は、硝酸塩を含む多数の補充物製剤の開発に導いた。出願人らは、硝酸の塩とアミノ酸とを組み合わせて、アミノ酸の溶解度、薬物動態、および血管拡張特性を改善するという驚くべき利益を発見した(米国特許第7,777,074号)。別のグループは、硝酸塩をプロバイオティクス生物またはポリフェノールとともに使用することを企図した(米国特許第9,180,140号)。現在、市場に出ている無機硝酸塩補充の最も普及している形態は、アミノ酸の硝酸塩(米国特許第7,777,074号に開示される)および野菜抽出物(ここでその硝酸塩含有量は、濃縮または単離プロセスを経て増大され、それはまた、単なる野菜の摂取と比較した場合、硝酸塩のバイオアベイラビリティーの増大を生じる)。
【0004】
無機硝酸塩の有益な効果を探索するという現在の流行から、200超の臨床試験が生じたが、その利益を完全に利用することを妨げるある特定の欠点がなお存在することが明らかになっている。1つのこのような欠点は、硝酸塩が、その完全な効果が現れる数時間前に、被験体に投与されなければならないことである。多数のグループは、摂取した無機硝酸塩が身体活動に対してその完全な有益な効果に達するために少なくとも3時間かかることを見出した(米国特許第9,180,140号; Hoonら, Int J Sport Nutr Exerc Metab., 2013, 23(5):522-32;およびKapilら, Hypertension., 2010, 56(2):274-81)。また、大部分の研究において使用される硝酸塩の、心血管系に対する効果を誘発する用量は、硝酸塩の現在受容可能な1日摂取量(これは現在、3.7mg/kgまたは75kgの個体に対して277mg(約4.46mmolの無機硝酸塩)という上限を有する)より高かった。これは、規制機関に懸念をもたらし、安全性の問題を提起し、適切に投与される硝酸塩製品の発売を禁止する可能性がある。
【0005】
よって、より少量の硝酸塩を含み、無機硝酸塩がより迅速に作用することを可能にする、理想的には、摂取された無機硝酸塩のミリモルあたりの有効性を増大させる無機硝酸塩の新たな製剤を開発する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,777,074号明細書
【文献】米国特許第9,180,140号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Hoonら, Int J Sport Nutr Exerc Metab., 2013, 23(5):522-32
【文献】Kapilら, Hypertension., 2010, 56(2):274-81
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本開示は、元素金属および硝酸アニオン(NO3
-)供給源を含むヒト摂取用の組成物に関する。元素金属は、アルカリ土類金属、アルカリ金属、または遷移金属である。いくつかの実施形態において、元素金属は、元素マグネシウム、元素カルシウム、元素リチウム、元素亜鉛、または元素鉄である。いくつかの局面において、硝酸アニオン供給源は、硝酸塩、例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、または硝酸マグネシウムである。ある特定の実現において、組成物は、酸をさらに含む。本明細書で開示される組成物の摂取は、血圧(拡張期血圧および収縮期血圧の両方)が低減される大きさおよび速度を増大させ、これは、硝酸塩の受容可能な1日摂取量レベルより多くを摂取することなく達成される。
【0009】
本開示はまた、被験体において血圧を低減する、高血圧を処置する、および/または運動能力を改善する方法に関する。被験体において運動能力を改善する方法のいくつかの局面において、被験体における有酸素運動能、スタミナ、筋力、持久力、および/または疲労困憊するまでの時間が、増大される。方法は、被験体に元素金属の有効量を投与する工程および被験体に、硝酸アニオン(NO3
-)供給源の有効量を投与する工程を包含する。いくつかの実現において、投与される元素金属は、元素マグネシウム、元素カルシウム、元素リチウム、元素亜鉛、または元素鉄である。いくつかの実現において、被験体は、被験体への本明細書で開示される組成物の投与を介して、元素金属および硝酸アニオン(NO3
-)供給源の有効量を投与される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ヒトの消費のための組成物であって、前記組成物は、
元素マグネシウム、元素カルシウム、元素リチウム、元素亜鉛、および元素鉄からなる群より選択される元素金属;ならびに
硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源、
を含む組成物。
(項目2)
酸をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記組成物は、
1mg~800mgの間の前記元素金属;および
30mg~2000mgの間の硝酸アニオン(NO
3
-
)を提供する前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源
を含む、項目1または2に記載の組成物。
(項目4)
前記組成物は、
5mg~400mgの間の前記元素金属;および
50mg~600mgの間の硝酸アニオン(NO
3
-
)を提供する前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源
を含む、項目1または2に記載の組成物。
(項目5)
前記元素金属は、元素マグネシウムである、項目1~4のいずれか1項に記載の組成物。
(項目6)
前記元素金属は、元素カルシウムである、項目1~4のいずれか1項に記載の組成物。
(項目7)
前記元素金属は、元素亜鉛である、項目1~4のいずれか1項に記載の組成物。
(項目8)
前記組成物は、50mg~20,000mgの間の前記酸を含む、項目2~7のいずれか1項に記載の組成物。
(項目9)
前記組成物は、300mg~1000mgの間の前記酸を含む、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記組成物は、固体である、項目1~9のいずれか1項に記載の組成物。
(項目11)
前記組成物は、食事補充物である、項目1~10のいずれか1項に記載の組成物。
(項目12)
前記組成物は、薬学的に受容可能な添加剤をさらに含む、項目10または11に記載の組成物。
(項目13)
前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源は、硝酸マグネシウムまたはプロリン硝酸塩である、項目1~12のいずれか1項に記載の組成物。
(項目14)
被験体において血圧を低減する方法であって、前記方法は、前記被験体に、元素金属および硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源を共投与する工程を包含する方法。
(項目15)
血圧が前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の共投与の5分以内に低減される、項目14に記載の方法。
(項目16)
血圧が前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の共投与後に少なくとも1時間の間低減される、項目14または15に記載の方法。
(項目17)
血圧が前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の共投与後に2時間超の間低減されたままである、項目14または15に記載の方法。
(項目18)
血圧が前記元素金属および前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の共投与後に6時間超の間低減されたままである、項目14または15に記載の方法。
(項目19)
前記被験体は、正常血圧または高血圧である、項目14~18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
被験体において高血圧を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に、元素金属および硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源を共投与する工程を包含する方法。
(項目21)
被験体において身体トレーニング活動の間の運動能力を改善する、ならびに/またはスタミナ、筋力、持久力、および/もしくは疲労困憊するまでの時間を増大させる方法であって、前記方法は、前記被験体に、前記身体トレーニング活動の30分前以内に元素金属および硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源を共投与する工程を包含する方法。
(項目22)
被験体において血圧を低減する、高血圧を処置する、運動能力を改善する、ならびに有酸素運動能、スタミナ、筋力、持久力、および/または疲労困憊するまでの時間を増大させるにあたって硝酸アニオン(NO
3
-
)の有効性を増大させる方法であって、前記方法は、前記被験体に、有効量の硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源と有効量の元素金属とを共投与する工程を包含し、ここで前記元素金属は、元素マグネシウム、元素カルシウム、元素リチウム、元素亜鉛、および元素鉄からなる群より選択される、方法。
(項目23)
硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の前記有効量は、投与の5分以内に血管拡張を引き起こすために十分な量である、項目22に記載の方法。
(項目24)
硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の前記有効量は、単独で投与された場合に、投与の5分以内に血管拡張を引き起こすために十分な硝酸アニオン(NO
3
-
)の量より少なく、元素金属の前記有効量は、投与の5分以内に血管拡張を引き起こすにあたって、硝酸アニオン(NO
3
-
)の前記有効量を支援するために十分な量である、項目22に記載の方法。
(項目25)
硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の前記有効量および元素金属の前記有効量は、硝酸アニオン(NO
3
-
)単独の相当量の投与より大きな血圧低減を引き起こすために十分な量である、項目22に記載の方法。
(項目26)
硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の前記有効量および元素金属の前記有効量は、硝酸アニオン(NO
3
-
)単独の相当量の投与より大きな運動能力の増大を引き起こすために十分な量である、項目22に記載の方法。
(項目27)
硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の前記有効量および元素金属の前記有効量は、硝酸アニオン(NO
3
-
)単独の相当量の投与より大きな血管拡張を増大のために十分な量である、項目22に記載の方法。
(項目28)
被験体に酸を投与する工程をさらに包含する、項目14~27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記酸は、前記硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源および前記元素金属とともに共投与される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記酸は、クエン酸である、項目28または29に記載の方法。
(項目31)
投与される元素金属の前記量は、1mg~800mgの間であり、投与される硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の前記量は、30mg~2000mgの間の硝酸アニオン(NO
3
-
)を提供する、項目14~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
投与される元素金属の前記量は、4mg~400mgの間であり、投与される硝酸アニオン(NO
3
-
)供給源の前記量は、50mg~600mgの間の硝酸アニオン(NO
3
-
)を提供する、項目14~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
投与される酸の前記量は、50mg~20,000mgの間である、項目28~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
投与される酸の前記量は、300mg~1000mgの間である、項目28~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記組成物は、項目1~13のいずれか1項に記載の組成物である、項目33または34に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1A~Dは、無機硝酸塩の投与が血圧を下げることを示すKapilら(Kapilら, Hypertension., 2010, 56(2):274-81)の結果を再現する。
図1Aおよび1Bは、それぞれ、収縮期血圧および拡張期血圧に対する24mmol KNO
3の効果を示す(n=20。コントロールは、24mmol KCl)。
図1Cおよび1Dは、それぞれ、収縮期血圧および拡張期血圧に対するより低量のKNO
3(4mmolおよび20mmol)の効果を示す(n=6)。データは、平均±SEMとして表される。統計的有意性は、2元配置ANOVAに関してP<0.001の場合に§§§;Bonferroniの事後検定に関してP<0.05の場合に*、P<0.01の場合に**、およびP<0.001の場合に***;ならびに1元配置ANOVA、続いてDunnettのベースライン(t=0)との検定後比較に関してP<0.05の場合に†によって印を付けた群間の比較において示される。
【0011】
【
図2】
図2A~Bは、継続期間によって影響を及ぼされるのではなく、投与される無機硝酸塩の投与量によって影響を及ぼされる内皮機能に対する無機硝酸塩の効果を報告するLaraら(Laraら, Eur J Nutr, 2016, 55(2):451-59)の結果を再現する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本開示の詳細な局面および適用は、以下に続く技術の詳細な説明において以下に記載される。具体的に注記されない限り、本明細書および請求項中の文言および語句は、適用可能な分野の当業者に、それらの平易な、通常の、および慣用の意味を示すことが意図される。
【0013】
以下に続く説明において、および説明目的で、多くの具体的な詳細が、本開示の種々の局面の完全な理解を提供するために示される。しかし、本明細書で開示される技術の実現が、これらの具体的な詳細なしで実行され得ることは、関連分野の当業者によって理解される。開示される技術が適用され得る多くの異なるおよび代替の構成、デバイスおよび技術が存在することは、注記されるべきである。本明細書で開示される技術の全範囲は、以下に記載される例に限定されない。
【0014】
単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「上記、この、その(the)」は、文脈が別段明らかに規定しなければ、複数形も含む。従って、例えば、「1つの工程(a step)」への言及は、1またはこれより多くのこのような工程への言及を含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「約」とは、所定の値の5%以下の偏差、例えば、所定の値の3%、2%、1%、0.5%、または0.1%の偏差を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「受容可能な」とは、その最も広い意味において使用される語句であり、米国食品医薬品局(FDA)標準、米国薬局方(USP)標準、食品グレードの材料に関する米国農務省(USDA)標準、栄養補充物産業の一般的に受容される標準、産業上の標準、植物学上の標準、または任意の個人によって確立された標準を満たす組成物の成分を記載し得る。これらの標準は、組成物の成分の局面の受容可能な範囲(例えば、可食性、毒性、薬理学的効果、または組成物の実装において使用される化学物質、組成物、もしくは調製物の任意の他の局面)を示し得る。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」とは、成分または構成要素の混合物、および異なる成分または構成要素を含むカプセルの組み合わせの両方を指す。よって、ある特定の実施形態において、組成物は、一緒にパッケージされる別個のカプセルを包含し、一緒に摂取されることが意味される。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「元素金属」とは、金属元素の電荷的に中性の状態、言い換えると、その元素形態にあり、かつ塩形態にも荷電した形態にもない金属を指す(例示的な塩形態および荷電した形態としては、金属の酸化物、炭酸塩、塩化物、乳酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、グリシネート、およびグルコン酸塩が挙げられる)。よって、本明細書で使用される場合、元素金属と同金属の塩とは、異なる構成要素である。組成物が元素金属を含むという記載は、金属塩の存在によって満たされ得ず、逆もまた然りである。例えば、クエン酸マグネシウムからなる組成物は、クエン酸マグネシウムが、いくらかの量の元素マグネシウムを提供するという何らかの記載があったとしても、元素マグネシウムを含む組成物ではない。本明細書で記載される元素金属として、元素マグネシウム、元素カルシウム、元素リチウム、元素亜鉛、および元素鉄が挙げられる。
【0019】
本開示は、硝酸塩の利益が被験体において観察され得る時間を短縮する、硝酸アニオン(NO3
-)供給源を有する組成物に関する。本明細書で記載される組成物は、硝酸アニオン(NO3
-)供給源および元素金属を含む。本開示はまた、被験体に有益な効果を提供するにあたって、例えば、硝酸アニオン(NO3
-)(および従って、開示される組成物)の投与の5分もしくはそれ未満以内で、被験体において血管拡張をまたは被験体において血圧の低下を引き起こすにあたって、硝酸アニオン(NO3
-)の有効性を増大させる組成物および方法に関する。他の局面において、組成物は、被験体において、同じ量の硝酸アニオン(NO3
-)単独の投与より大きな血圧低減またはより大きな血管拡張増大を引き起こす。なお他の局面において、組成物は、被験体において同じ量の硝酸アニオン(NO3
-)単独の投与より大きな運動能力の増大(例えば、有酸素運動能、スタミナ、筋力、持久力、または疲労困憊するまでの時間を通じて決定される場合の)を引き起こす。
【0020】
いくつかの局面において、硝酸アニオン(NO3
-)供給源は、硝酸塩である。硝酸塩の一日摂取量の上限は、世界保健機関によって最初に確立されたものであり、3.7mg 無機硝酸塩/kg体重である。これは、平均成人(62kgという平均(世界的な)成人体重に基づく)につき約229mg、または約3.7mmol 無機硝酸塩の総摂取量という上限に相当する。
【0021】
図1A~Dおよび
図2Bに示されるように、経口投与した無機硝酸塩が拡張期血圧および収縮期血圧の両方を低減する能力を示す研究のうちの大部分は、受容可能な一日摂取量レベルより高い用量で補充的な硝酸塩を投与した。Kapilらによって報告されるように、収縮期血圧および拡張期血圧を低減するための無機硝酸塩の有効用量は、受容可能な1日摂取量を十分に超える。これは、無機硝酸塩のこのような使用の安全性に対して疑問を提起し得る。このような多量の無機硝酸塩を投与した場合にすら、安静状態の間の血圧の平均低減が収縮期血圧に関しては4.1mmHgおよび拡張期血圧に関しては2.0mmHgに過ぎなかったという事実もまた、懸念される。
【0022】
マグネシウム補充は、無機硝酸塩のものと類似の主張される利益(例えば、血圧を低減する、運動能力を増大させる、または筋痙攣を防止する、および筋力を増大させる)のために長く使用されてきたが、マグネシウム補充(10mmol(240mg)の1日に接種されるマグネシウム)に関する研究のメタ分析から、血圧の低減に対するその効果が、収縮期血圧に関しては0.6mmHgおよび拡張期血圧に関しては0.8mmHgの平均であったに過ぎないことが見出された(Jeeら, Am J Hypertens. 2002, 15(8):691-6.)。従って、マグネシウムおよび無機硝酸塩の血圧に対する効果が相加的であるのであれば、収縮期血圧に関しては約4.3mmHgおよび拡張期血圧に関しては約2.3mmHgまでの低減が予測され得るに過ぎない。元素マグネシウム(Mg)と硝酸アニオン(NO3
-)供給源との組み合わせは、硝酸塩単独または代表的な形態のマグネシウム補充単独の投与より大きくかつ迅速な血圧の低減を生じることが、驚くべきことに発見された。
【0023】
マグネシウム補充の実質的に全てが、マグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム)の形態において、または酸化マグネシウムの形態において行われる。これは、元素マグネシウムが、前述のマグネシウム塩および天然において見出される他の塩形態と比較して高価であることが理由である。元素マグネシウムはまた、安全性および安定性の懸念に起因して、マグネシウム補充の形態として意図的に避けられる。少量の凝集した元素マグネシウム(例えば、粉末化形態にあるか、または薄片に削がれている)は、可燃性が高いが、塊またはバルクで発火させることは困難である。元素マグネシウムはまた、水または空気中の水分と容易に反応して、高度に反応性でかつ可燃性のガス(例えば、水素)を放出し得る。しかし、本明細書で開示されるように、元素マグネシウムは、硝酸の塩を有する組成物に成功裡にかつ安全に組み込まれ、ヒト被験体に投与された。
【0024】
元素マグネシウムと硝酸アニオン(NO3
-)供給源との投与は、収縮期血圧および拡張期血圧において30mmHgまでの低減を生じた(実験1~9を参照のこと)。記載される組成物を摂取して数分以内に、被験体は、身体全体の血流がより良好であるという感覚を報告した。対照的に、無機硝酸塩とマグネシウム補充のための代表的な塩との組み合わせを投与した被験体は、類似の感覚を報告しなかった。血流がより良好であるという感覚は、競技者には「ポンプ」といわれており、部分的に心理的ではあるが、その組成物が何らかの効果を有するという感覚があるだけで、その組成物の生理学的な利益を十分に増強し得る。
【0025】
硝酸アニオン(NO3
-)供給源と他の元素金属(例えば、元素カルシウムおよび元素亜鉛)との共投与がまた、特に、血圧の低減における硝酸アニオン(NO3
-)の有効性を増大することもまた、驚くべきことに発見された。カルシウム補充が、血圧に対して何らかの効果を有するとは予測されないが、元素カルシウムおよび血圧単独に変化を引き起こさない硝酸アニオン(NO3
-)供給源の量の共投与は、投与の1時間以内に、拡張期血圧、収縮期血圧、および平均血圧の低減を実際に生じた(実施例10を参照のこと)。高用量の亜鉛は、血圧を増大させることが実際に示されている。しかし、元素亜鉛を同じ低量の硝酸アニオン(NO3
-)供給源と共投与した場合、拡張期血圧、収縮期血圧、および平均血圧はまた、投与の1時間以内に低減した(実施例10を参照のこと)。
【0026】
実施例において示されるように、開示される組成物の摂取からの生理学的効果は、組成物の接種後15分、早ければ5分以内に起こった。特に、収縮期血圧および拡張期血圧は、組成物の摂取後15分以内に低減した。収縮期血圧に関しては、低減は、投与後少なくとも1時間持続した。いくつかの実装において、収縮期血圧の低減は、少なくとも2時間およびさらには少なくとも6時間にわたって持続した。硝酸アニオン(NO3
-)と元素金属との共投与は、硝酸アニオン(NO3
-)の生理学的活性を増強することから、本開示は、被験体において血圧を低減する、高血圧を処置する、および/または運動能力を改善する方法であって、方法は、被験体に、元素金属および硝酸アニオン(NO3
-)供給源を共投与する工程を包含する方法に関する。いくつかの局面において、被験体において運動能力を改善する方法は、被験体において有酸素運動能、スタミナ、筋力、持久力、および/または疲労困憊するまでの時間を増大させる。
【0027】
この時間枠は、代表的には運動前補充物を投与する時と一致する。大部分の運動前補充物は、トレーニングのおよそ30分前に摂取されるべきであると推奨されるが、ユーザーはしばしば、それら補充物をトレーニングの直前に摂取する。従って、開示される組成物は、競技者および運動前補充物の他のユーザーの習慣とより適合する。硝酸塩補充の利益を最大化するために、トレーニングの3時間前にそれら硝酸塩補充物を忘れずに摂取する必要があるのに代えて、特許請求された組成物はトレーニングの数分前、例えば、5分前に摂取する必要があるのみである。特許請求された組成物の摂取と無機硝酸塩に帰する生理学的効果との間の最小限の遅れは、トレーニング開始時のウォームアップ期間によって容易に満足され得る。よって、運動能力を改善する、またはスタミナ、筋力、持久力、および/もしくは疲労困憊するまでの時間を増大させる方法のある特定の実装において、被験体は、元素金属および硝酸アニオン(NO3
-)供給源を、身体活動またはトレーニングの30分前以内に共投与される。
【0028】
開示される組成物の迅速かつ強力な作用のため、これらの組成物は、硝酸塩の効果が有益であり、迅速な効果が望ましい全ての状況のために使用され得る。これらの状況としては、例えば、刺激物(例えば、オクトドリン、アンフェタミン、メタンフェタミン、コカイン、カフェイン、ジメチルアミルアミン(DMAA)など)によって引き起こされる血圧の増大を低減するかまたはその増大に対抗すること、および高血圧を有するかまたは高血圧の危機にある被験体のための処置として、が挙げられる。本明細書で開示される組成物はまた、運動能力を改善する、ならびに/または身体トレーニング活動の間のスタミナ、筋力、持久力、および/もしくは疲労困憊するまでの時間を増大させるために適している。
【0029】
組成物
本明細書で開示される組成物は、元素金属および硝酸アニオン(NO3
-)供給源を含む。元素金属は、アルカリ土類金属またはアルカリ金属である。いくつかの実施形態において、元素アルカリ土類金属は、元素マグネシウム、元素カルシウム、または元素リチウムである。いくつかの局面において、組成物は、硝酸アニオン(NO3
-)供給源の有効量および上素金属の有効量を含み、ここで元素金属の有効量は、有益な効果を提供するにあたって、硝酸アニオン(NO3
-)の有効性を支援し、増強する。よって、いくつかの実施形態において、硝酸アニオン(NO3
-)供給源の有効量は、被験体において血管拡張を引き起こす、血圧を低減する、または運動能力を増大させるために十分な量である。他の実施形態において、上成物中の硝酸アニオン(NO3
-)供給源の有効量は、被験体において血管拡張を引き起こす、血圧を低減する、または運動能力を増大させるために単独で必要とされる硝酸アニオン(NO3
-)の量より少ないが、元素金属の有効量は、被験体において血管拡張を引き起こす、血圧を低減する、または運動能力を増大させるにあたって、硝酸アニオン(NO3
-)供給源を支援するために十分な量である。
【0030】
ある特定の実施形態において、組成物は、1~約900mg 元素マグネシウムおよび硝酸アニオン(NO3
-)供給源を含み、ここで無機硝酸塩供給源は、約5~約2000mgの硝酸アニオン(NO3
-)を提供する。いくつかの局面において、硝酸アニオン(NO3
-)供給源は、約30mg~2000mgの硝酸アニオン(NO3
-)、約50mg~約2000mgの硝酸アニオン(NO3
-)、約5mg~約1000mgの硝酸アニオン(NO3
-)、約30mg~約1000mgの硝酸アニオン(NO3
-)、約50mg~約1000mgの硝酸アニオン(NO3
-)、約5mg~約600mgの硝酸アニオン(NO3
-)、約30mg~約600mgの硝酸アニオン(NO3
-)、約50mg~約600mgの硝酸アニオン(NO3
-)、約5mg~約500mgの硝酸アニオン(NO3
-)、約30mg~約500mgの硝酸アニオン(NO3
-)、または約50mg~約500mgの硝酸アニオン(NO3
-)を提供する。ある特定の実施形態において、硝酸アニオン(NO3
-)供給源は、硝酸塩、例えば、硝酸マグネシウムまたはプロリン硝酸塩である。
【0031】
いくつかの局面において、組成物における硝酸アニオン(NO3
-)供給源 対 元素金属のモル比は、少なくとも2:1である。元素金属および硝酸アニオン(NO3
-)供給源の用量は、被験体の体重、年齢、および健康状態に従って調節され得る。代表的には、正常血圧の被験体は、高血圧の被験体より少ない元素金属および硝酸アニオン(NO3
-)を必要とし、低血圧の被験体は、正常血圧の被験体よりさらに少ない元素金属および硝酸アニオン(NO3
-)を必要とする。いくつかの実施形態において、組成物中の元素金属の量は、1mg~800mgの間、または5mg~400mgの間である。いくつかの実施形態において、硝酸アニオン(NO3
-)供給源の量は、30mg~2000mgの間または50mg~600mgの間である。1つの実施形態において、組成物は、100mgの元素金属および250mgの硝酸マグネシウム六水和物(60.5mgの硝酸アニオン(NO3
-)および23.6mgのMgに相当)を含む。
【0032】
組成物中の元素金属は、任意の形態、例えば、粉末または粒子であり得る。組成物中に含まれ得る硝酸アニオン(NO3
-)供給源の形態は、例えば、アミノ酸またはアミノ酸誘導体の硝酸塩(例えば、クレアチン硝酸塩、アルギニン硝酸塩、カルニチン硝酸塩、n-アセチルカルニチン硝酸塩、シトルリン硝酸塩、およびプロリン硝酸塩)、無機硝酸塩(例えば、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、および硝酸リチウム、またはそれらの混合塩、共結晶製剤ならびに水和物)、または天然の硝酸塩供給源である。天然の硝酸塩供給源については、硝酸塩は、濃縮されているおよび/または天然の供給源から単離されている。そして天然の硝酸供給源の例としては、ビートジュース、ビートジュース粉末、濃縮ビートジュース粉末、セロリ粉末、およびレッドスピナッチ抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実現において、天然の硝酸塩供給源の硝酸塩含有量は、十分な量の硝酸塩を提供するように標準化される。いくつかの局面において、組成物は、複数の硝酸アニオン(NO3
-)供給源を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、組成物中の元素金属は、水の中では溶解性に乏しいが、胃の酸性環境の中で溶解性である適切な物質(例えば、酸化マグネシウム、セルロースポリマー、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸カルシウム)、または水酸化アルミニウムで覆われるかまたは微小被包化される。
【0034】
いくつかの実施形態において、プロリン硝酸塩は、組成物中の硝酸アニオン(NO3
-)供給源である。いくつかの実施形態において、硝酸マグネシウムは、組成物中の硝酸アニオン(NO3
-)供給源である。このような実施形態において、硝酸マグネシウムは、無水物であってもよいし、水和されていてもよい。硝酸マグネシウムの水和の程度は、亜硝酸マグネシウム1分子あたり1~6個の間の水分子である。特定の実施形態において、硝酸マグネシウム六水和物は、組成物中の硝酸塩である。
【0035】
いくつかの実施形態において、開示される組成物は、酸をさらに含む。酸は、特許請求された組成物の摂取の際に胃のpHが酸性のままであることを担保するために添加される。酸構成要素は、ヒトの消費に適切な任意の酸(例えば、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、または酒石酸)であり得る。いくつかの局面において、酸は、固体形態(例えば、粉末)である。従って、組成物中の酸の量は、いくつかの実施形態において、50mg~20,000mgの間、50mg~2000mgの間、50mg~1000mgの間、100mg~20,000mgの間、100mg~2000mgの間、100mg~1000mgの間、200mg~20,000mgの間、200mg~2000mgの間、200mg~1000mgの間、300mg~20,000mgの間、300mg~2000mgの間、300mg~1000mgの間、500mg~20,000mgの間、500mg~2000mgの間、または500mg~1000mgの間である。いくつかの局面において、組成物の酸構成要素は、酢である。いくつかの実現において、開示される組成物は、酸を含まないが、組成物は、酸とともに投与される。例えば、組成物は、2~6の間のpHを有する酸性溶液(例えば、希釈した酢またはクエン酸の溶液)とともに共投与される。いくつかの局面において、酸性溶液は、希釈した酢酸、硝酸、硫酸などである。
【0036】
開示される組成物は、カプセル、錠剤、丸剤、液体、液体懸濁物、蒸気、粉末、顆粒、粉体(pulverulence)、またはこれらの組み合わせの形態であり得る。好ましい実施形態において、開示される組成物は、固体形態である。いくつかの実施形態において、元素金属および硝酸アニオン(NO3
-)供給源、およびいくつかの局面において酸は、カプセルまたは錠剤の中に合わせられる。他の実施形態において、酸は、元素金属および硝酸アニオン供給源とは別個の錠剤またはカプセルにある。硝酸アニオン(NO3
-)供給源および元素金属の共投与の増強された活性は、被験体が硝酸アニオン(NO3
-)供給源および元素金属を別個に摂取する場合に、例えば、硝酸アニオン(NO3
-)供給源および元素金属の別個のカプセルの共投与を介して、低減されない。よって、いくつかの局面において、本明細書で記載される組成物は、硝酸アニオン(NO3
-)供給源を含むカプセルおよび元素金属を含むカプセルを含む。酸をさらに含む組成物の実施形態において、組成物は、酸を含むカプセルをさらに含む。
【0037】
開示される組成物の粉末化形態が、摂取前に水に投与される場合にその効力を失うことは、注目に値する。よって、組成物の粉末化形態の投与は、水への曝露を最小限にするように気をつけるべきである。例えば、被験体は、粉末化組成物を水に溶解し、その混合物を飲む代わりに、粉末化組成物を摂取し、次いで、水で流し込むべきである。また、組成物がアルカリ性混合物(7より高いpH)(例えば、重曹と混合した水)中に添加される場合、それは、摂取前の少なくとも10分間(これは、代表的には、個人が、運動前ドリンクを混合し、これを消費するために十分な時間である)その有効性を保持し得る。
【0038】
1つの実施形態において、組成物は、100mgの元素金属、250mgの硝酸マグネシウム六水和物(60.5mgの硝酸アニオン(NO3
-)および23.6mgのMg+を提供する)、および600mgの無水クエン酸を含む1つのカプセルである。別の実施形態において、組成物は、1~2g アマランサス(10~90% 硝酸塩を提供する)、50~1000mg ビタミンC、50~1000mg 酸化マグネシウム、10~1000mg L-システイン、50~1000mg テアニン、5~100mg 元素亜鉛、0.5~30mg 葉酸/5-MTHF、および1~500mcg モリブデン酸カリウムを含む。
【0039】
別の実施形態において、組成物は、3つのカプセルを含み、ここでカプセルのうちの2つは、各々、硝酸アニオン(NO3
-)供給源および元素金属を含む一方で、残りのカプセルは、酸を含む。例えば、硝酸アニオン(NO3
-)供給源および元素金属を含むカプセルは、プロリン硝酸塩および元素マグネシウムを含む一方で、酸を含むカプセルは、クエン酸を含む。特定の実施形態において、組成物は、2つのカプセルを含み、各々、250~750mg プロリン硝酸塩および5~200mg 元素マグネシウムを含み、1つのカプセルは、250~1250mg クエン酸を含む。別の例として、組成物は、複数のカプセルを含み、それらは、合わせた場合に、1~2g アマランサス(10~90% 硝酸塩を提供する)、50~1000mg ビタミンC、50~1000mg 酸化マグネシウム、10~1000mg L-システイン、50~1000mg テアニン、5~100mg 元素亜鉛、0.5~30mg 葉酸/5-MTHF、および1~500mcg モリブデン酸カリウムを提供する。好ましい実装において、ビタミンCは、他の構成要素として別個にカプセル中にある。
【0040】
いくつかの局面において、組成物は、錠剤中に水分が入らないようにするために適切な薬学的に受容可能なコーティングおよび/または添加剤をさらに含む。薬学的に受容可能なコーティングの非限定的な例としては、ワックス、ポリマー、固体脂肪酸などが挙げられる。添加剤の非限定的な例としては、キャリア、賦形剤、結合剤、着色剤、矯味矯臭剤、保存剤、緩衝化剤、希釈剤、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの局面において、添加剤は、薬学的に受容可能な添加剤または受容可能な食品添加剤である。
【実施例】
【0041】
本開示は、限定として解釈されるべきではない以下に続く実施例によってさらに例証される。本出願全体を通じて引用された全ての参考文献、特許、および公開された特許出願の内容、ならびに図面は、全ての目的のためにそれらの全体において本明細書に参考として援用される。
【0042】
全ての被験体の血圧を、標準的な電子式カフ型血圧計を使用して測定した。血圧は、被験体が安静時にある間に測定した。被験体の全てに関して、実施例2における被験体を除いて、血圧を被験体が着座した状態で測定した。
【0043】
実験1:
35歳の中程度高血圧の男性被験体に、100mgの元素マグネシウム、250mgの硝酸マグネシウム、および650mgのクエン酸を含むカプセルを経口投与した。彼の血圧を、カプセルの摂取前、およびカプセル摂取の15分後、30分後、45分後、60分後、および120分後に測定した。その結果を、以下の表に記録する。組成物の投与は、最大収縮期血圧において33mmHg(24%)および拡張期血圧において46mmHg(45%)の血圧の迅速な低下を生じた。収縮期血圧の低減は、容易に1時間にわたって持続した一方で、拡張期血圧の低下は、少なくとも2時間持続した。
【表1】
【0044】
実験2
55歳の正常血圧の男性被験体に、200mg 硝酸マグネシウム、50mg 元素マグネシウムおよび350mgのクエン酸を含むカプセルを与えた。彼の血圧を、カプセルを摂取する前、ならびにカプセル摂取の15分後、30分後、45分後、60分後、および120分後に、被験体がベッドに横になっている間に測定した。彼の血圧測定値を、以下の表に記録する。33mmHg(25%)の最大低減が、被験体の収縮期血圧において観察され、収縮期血圧の低下は、少なくとも6時間維持された。
【表2】
【0045】
実験3
高度なトレーニングをしている体重270ポンドの27歳男性に、150mgの元素マグネシウム、300mg 硝酸マグネシウム六水和物、および550mg クエン酸を含むカプセルを経口投与した。彼の血圧測定値を、以下の表に記録する。38mmHg(35%)の最大低減を、拡張期血圧において観察し、28mmHg(21%)の低減を、収縮期血圧に関して観察した。その低減は、少なくとも1時間持続した。
【表3】
【0046】
実験4
体重120ポンドの正常血圧の33歳女性に、25mg 元素マグネシウム、100mg 硝酸マグネシウム六水和物、および900mg クエン酸を含むカプセルを与えた。彼女の血圧測定値を、以下の表に記録する。比較的低用量のマグネシウムにもかかわらず、収縮期血圧に関しては10mmHg(10%)および拡張期血圧に関しては9mmHg(13%)までの顕著な血圧低減がなお観察された。
【表4】
【0047】
実験5
元素マグネシウムが、血圧低減のための時間を短縮するために重要であるか否かを試験するために、500mg 硝酸マグネシウム六水和物および500mg クエン酸を含むカプセル、ならびに合計400mgのマグネシウムを提供するように酸化マグネシウムおよびクエン酸マグネシウムを含む別のカプセルを、正常血圧の32歳女性に同時に経口投与した。両方のカプセルの合計マグネシウム用量は、約435mgである。彼女の血圧測定値を、以下の表に記録する。他の試験したカプセルと比較して、投与したカプセル中の硝酸塩およびマグネシウムの用量は遙かに高かったにもかかわらず、経験した血圧の低下はより小さく、それほど持続しなかった。
【表5】
【0048】
実験6
無機硝酸塩と元素マグネシウムとの間で何らかの化学反応が胃の中で起こったことが、血圧に対して観察される影響にとって重要か否かを試験するために、元素マグネシウムを、被験体への投与の前に、無機硝酸塩と水の中で混合する。具体的には、100mgの元素マグネシウム、300mgの硝酸マグネシウム六水和物、および1gのクエン酸を、水の中に添加し、5分間十分に撹拌し、その後、混合物を男性被験体に投与した。彼の血圧測定値は、以下の表に記録する。
【表6】
【0049】
実験7
運動によって引き起こされる筋持久力および筋充血に対する効果を試験するために、高度なトレーニングをしている右利きの27歳男性の上腕二頭筋周長を、100mg 元素マグネシウム、400mg 硝酸マグネシウム六水和物、および500mg クエン酸を含むカプセルの投与ありおよびなしの両方で、運動前および疲労困憊するまで運動した後に測定した。彼の運動前の左および右の上腕二頭筋は、それぞれ、運動前に46cmおよび45cmの周長を有した。被験体は、疲労困憊するまで、右腕で50ポンドのダンベルを使用して上腕二頭筋の曲げ伸ばしを行うように指示された。彼は、どうにか19回反復し、右上腕二頭筋周長は、筋充血に起因して、46cmへと増大した(1cmまたは約2.2%の増大)。被験体に、元素マグネシウムおよび硝酸塩を含むカプセルを経口投与した。カプセル投与の15分後に、左腕で上腕二頭筋の曲げ伸ばし運動を反復するように頼んだ。被験体は、カプセルの投与後に、左腕でどうにか24回上腕二頭筋の曲げ伸ばした。運動後の左上腕二頭筋周長は、47.5cm(1.5cmまたは約3.3%の増大)であった。従って、元素マグネシウム-無機硝酸塩補充物の投与は、運動誘導性充血に起因して、上腕二頭筋周長において50%超の増大を生じた。
【0050】
実験8
高度なトレーニングをしている240ポンドの37歳男性の持ち上げ最大重量およびサイクリングマシンで疲労困憊するまでの時間を、本明細書で記載される組成物の補充がない被験体(ベースライン)と、150mg 元素マグネシウム、350mg 硝酸マグネシウム六水和物、および500mg クエン酸を含むカプセルを運動を行う15分前に摂取した被験体との間で比較した。1週間の休薬期間を隔てて、ベースラインおよびカプセルの摂取の効果についてのデータ収集を行った。サイクリング運動に関しては、被験体が最高難度に設定したマシーンで疲労困憊に達する時間を記録した。
【表7】
【0051】
実験9
元素マグネシウムが、血圧のみに影響を及ぼし得るか否かを試験するために、100mgの元素マグネシウムを含むカプセルを、35歳の正常血圧の男性被験体に与えた。彼の血圧を、カプセルを摂取する前、ならびにカプセルを摂取して5分後、15分後、30分後、45分後および60分後に測定した。その結果を、以下の表に記録する。元素マグネシウム単独では、収縮期血圧のわずかな低減を生じたに過ぎず(投与の15分後に14mmHg(12%)の最大の低減)、その低減は短命であった。驚くべきことに、拡張期血圧は、観察の期間の大部分に関して増大した。
【表8】
【0052】
実験10
元素マグネシウムが、元素形態にある他の金属の代わりに使用され得るか否かを決定するために、100mg 元素カルシウム、250mgの硝酸マグネシウム六水和物(60.5mgの無機硝酸塩および23.6mgのマグネシウムを提供)、および600mg 無水クエン酸を含むカプセルを製剤化した。カプセルを、体重220ポンドの35歳、正常血圧の男性被験体に投与した。彼の血圧測定値を、以下の表に記録する。
【表9】
【0053】
認められ得るように、収縮期血圧の急激かつ顕著な減少、拡張期血圧の全体的な減少および平均血圧の持続した減少が再度あった。カルシウム自体は、マグネシウムとは異なり、1.5g/日の用量ですら、血圧に対して特筆すべき効果を有しないことは注記されるべきである(Weinbergerら, Am J Hypertens. 1993, 6(9):799-805)。さらに、この補充物中に提供される硝酸塩およびマグネシウムの用量は、以前の報告に基づけば、血圧に対して何らかの効果を有し得るには低すぎた。
【0054】
別の日に、100mg 元素亜鉛、250mg 硝酸マグネシウム六水和物、および600mg クエン酸を含むカプセルも製剤化し、同じ被験体に投与した。亜鉛含有カプセルの投与後の彼の血圧測定値を、以下の表に記録する。
【表10】
【0055】
亜鉛は高用量において血圧を増大させることが公知にもかかわらず、カプセルの投与は、収縮期血圧、拡張期血圧、および平均血圧の低減を生じた。よって、元素金属と無機硝酸塩との共投与は、血圧を低減するにあたって、無機硝酸塩の有効性を大きく増大させる。
【0056】
実験11
10名の健常被験体に、100mg 元素マグネシウム、1g プロリン硝酸塩、および1g クエン酸を含む組成物を、運動の5分前に投与した。筋への血流および血管拡張を、ドップラー超音波測定によって評価し、被験体に組成物を投与しなかった場合の同じ測定と比較した(以下の表を参照のこと)。
【表11】
【0057】
組成物は、疲労困憊するほどの運動の5分前に投与した場合、4.9 IU(ベースライン)から、5.2 IU(投与後および運動前)へと、5.6 IU(運動後)へと血流を増大させ、値は、モニタリング期間の残り全体で継続して5.0 IUを超えた。類似の傾向が血管拡張(上腕動脈直径)についても観察された。よって、血流および血管拡張に対する組成物の効果は、強くかつ長期間持続性である。
【0058】
実験12
12名の被験体に、100mg 元素マグネシウム、1g プロリン硝酸塩、および1g クエン酸を含む組成物を与えた。組成物を被験体に投与すると、有酸素運動能、疲労困憊するまでの時間、および筋力が、投与後たった5分で統計的に有意な量で増大した。有酸素運動能、疲労困憊するまでの時間、および筋力の増大した量は、無機硝酸塩のみの投与による増大の量より遙かに大きかった。
引用参考文献(これらは、それらの全体において本明細書に全て参考として援用される)
・Hoon et al., Int J Sport Nutr Exerc Metab., 2013, 23(5):522-32.
・Jee et al., Am J Hypertens. 2002, 15(8):691-6.
・Kapil et al., Hypertension., 2010, 56(2):274-81.
・Lara et al., Eur J Nutr, 2016, 55(2):451-59.
・Weinberger et al., Am J Hypertens. 1993, 6(9):799-805.