(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】プラスチック光ファイバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G02B6/44 311
G02B6/44 321
(21)【出願番号】P 2021551389
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037213
(87)【国際公開番号】W WO2021066030
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019179420
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康彰
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 武士
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-144878(JP,A)
【文献】特開2006-091887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0196595(US,A1)
【文献】特開2018-097133(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109222(WO,A1)
【文献】特開平07-151944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0289979(US,A1)
【文献】米国特許第08044110(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70
G02B 6/02- 6/036
6/10
6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化型樹脂および顔料を含有する硬化性組成物中で、前記顔料を分散させる工程と、
前記硬化性組成物をプラスチック光ファイバー本体の周面に塗布して、硬化性組成物の硬化物からなるカラーリング材を形成する工程とを備え、
前記硬化性組成物の25℃における粘度が、
2,550mPa・s以上、3,000mPa・s以下であり、
前記顔料を分散させる工程では、軸線を有する円筒形状を有する密閉容器に前記硬化性組成物を投入し、前記密閉容器を、鉛直線に対して交差する前記軸線を中心にして、前記
円筒形状を有する前記密閉容器の周壁の内面の周速が0.02m/秒以上、0.2m/秒以下となるように、回転させ、
前記密閉容器の前記周壁の前記軸線は、水平線に対して、5度以下で、傾斜し、
前記顔料を分散させる工程では、前記顔料の分散時間が、5分以上、2時間以下であり、
前記プラスチック光ファイバー本体は、コア部と、クラッド部と、オーバークラッド部とを中心から外側に向かって順に備え、
前記カラーリング材を形成する工程では、前記硬化性組成物を前記オーバークラッド部の周面に塗布することを特徴とする、プラスチック光ファイバーの製造方法。
【請求項2】
前記密閉容器の一の端壁は、0.01m/秒以下で、上下方向に移動する、請求項1に記載のプラスチック光ファイバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光ファイバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コアを含むファイバ本体の周面に、顔料および紫外線硬化性樹脂を含有する硬化性組成物を塗布した後、その硬化物からなるインク層を形成する方法が知られている。(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の光ファイバは、インク層の色や柄などによって、識別されることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、顔料は、硬化性組成物中で沈降し易く、つまり、硬化性組成物中で顔料が不均一に存在し易い。かかる硬化性組成物を、ファイバ本体に塗布後、成形すれば、インク層の識別性が不十分になるという不具合がある。
【0006】
一方、硬化性組成物を十分に均一にするために、攪拌羽根を有する攪拌機で硬化性組成物を攪拌すれば、攪拌中に、気泡が硬化性組成物に形成され易く、かかる硬化性組成物を、ファイバ本体に塗布後、成形すれば、インク層が、上記した性能を十分に発揮できない、とくに、気泡に起因する欠損を生じるという不具合がある。
【0007】
本発明は、カラーリング材の識別性に優れ、カラーリング材の欠損を抑制できるプラスチック光ファイバーの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、活性エネルギー線硬化型樹脂および顔料を含有する硬化性組成物中で、前記顔料を分散させる工程と、前記硬化性組成物をプラスチック光ファイバー本体の周面に塗布して、硬化性組成物の硬化物からなるカラーリング材を形成する工程とを備え、前記硬化性組成物の25℃における粘度が、2,000mPa以上、3,000mPa以下であり、前記顔料を分散させる工程では、軸線を有する円筒形状を有する密閉容器に前記硬化性組成物を投入し、前記密閉容器を、鉛直線に対して交差する前記軸線を中心にして、前記円筒の内面の周速が0.02m/秒以上、0.2m/秒以下となるように、回転させる、プラスチック光ファイバーの製造方法を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプラスチック光ファイバーの製造方法では、特定粘度の硬化性組成物を、鉛直線に対して交差する軸線を有する円筒形状を有する密閉容器に投入し、密閉容器を軸線を中心にして、円筒の内面が周速が0.02m/秒以上、0.2m/秒以下という低速となるように、回転させる。そのため、顔料を硬化性組成物中で均一に存在させながら、気泡の混入を抑制できる。その結果、カラーリング材の識別性に優れ、および、カラーリング材の欠損を抑制できるプラスチック光ファイバーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1A~
図1Bは、本発明のプラスチック光ファイバーの製造方法の一実施形態の工程図であり、
図1Aは、プラスチック光ファイバー本体を準備する工程、
図1Bは、カラーリング材を形成する工程を示す。
【
図3】
図3A~
図3Bは、回転装置の変形例(周壁の軸線が傾斜する変形例)の側面図であり、
図3Aが、密閉容器の一の端壁が、他の端壁より、上側に位置する態様、
図3Bが、密閉容器の一の端壁が、他の端壁より、下側に位置する態様を示す。
【
図4】
図4は、回転装置の変形例(周壁の軸線がスイングする変形例)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明のプラスチック光ファイバーの製造方法の一実施形態)
本発明のプラスチック光ファイバーの製造方法の一実施形態により得られるプラスチック光ファイバーを
図1Bを参照して説明する。
【0012】
プラスチック光ファイバー1は、長尺方向(
図1Bにおける紙面奥行き方向に相当)に延びるファイバーである。プラスチック光ファイバー1は、長尺方向に直交する方向に沿う断面において、略円形状を有する。プラスチック光ファイバー1は、プラスチック光ファイバー本体2と、カラーリング材3とを備える。
【0013】
プラスチック光ファイバー本体2は、長尺方向に沿って光を伝送する光伝送路である。プラスチック光ファイバー本体2は、光の伝送方向に直交する断面において略円形状を有する。
【0014】
プラスチック光ファイバー本体2は、例えば、コア部4と、クラッド部5と、オーバークラッド部6とを、断面視において、中心から外側に向かって順に備える。
【0015】
コア部4は、断面視略円形状を有する。コア部4は、断面視において、プラスチック光ファイバー本体2の中心を含む。
【0016】
クラッド部5は、コア部4の外周面に配置されている。クラッド部5は、コア部4およびオーバークラッド部6に挟まれている。クラッド部5は、断面視略円環形状を有する。
クラッド部5の屈折率は、コア部4の屈折率より低い。
【0017】
オーバークラッド部6は、クラッド部5の外周面に配置されている。オーバークラッド部6は、プラスチック光ファイバー本体2の外周面を形成する。オーバークラッド部6は、断面視略円環形状を有する。
【0018】
なお、プラスチック光ファイバー本体2は、プラスチック光ファイバー1の用途および目的に応じて、ダブルクラッド構造を有することができる。この場合には、
図1の仮想線で示すように、クラッド部5は、第1クラッド部51と、第1クラッド部51の外周面に配置される第2クラッド部52とを備える。つまり、クラッド部5は、第1クラッド部51と第2クラッド部52との2層構造を有する。第1クラッド部51の屈折率が、コア部4の屈折率より低い。第2クラッド部52の屈折率は、第1クラッド部51の屈折率より低い。オーバークラッド部6の屈折率は、第2クラッド部52の屈折率より低い。
【0019】
プラスチック光ファイバー本体2の材料は、プラスチックである。プラスチックとしては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂(フッ素化アクリル樹脂を含む)、例えば、ポリカーボネート樹脂(ポリエステル変性ポリカーボネート樹脂などの変性ポリカーボネート樹脂を含む)、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シクロオレフィン樹脂などのオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。プラスチック光ファイバー本体2の材料は、コア部4、クラッド部5およびオーバークラッド部6が必要とする屈折率に応じて、適宜、選択される。
【0020】
とりわけ、オーバークラッド部6は、好ましくは、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂が挙げられ、とりわけ好ましくは、高い信頼性の観点から、変性ポリカーボネート樹脂が、シクロオレフィン樹脂が挙げられる。
【0021】
プラスチック光ファイバー本体2は、透明である。プラスチック光ファイバー本体2の全光線透過率は、例えば、85%以上、好ましくは、90%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0022】
プラスチック光ファイバー本体2の直径は、例えば、10μm以上、10mm以下である。
【0023】
カラーリング材3は、プラスチック光ファイバー本体2の外周面に配置されている。具体的には、カラーリング材3は、オーバークラッド部6の外周面に接触している。カラーリング材3は、プラスチック光ファイバー1の外周面を形成する。
【0024】
カラーリング材3は、有色である。また、カラーリング材3の全光線透過率は、例えば、85%未満、好ましくは、80%以下であり、また、例えば、10%以上である。
【0025】
カラーリング材3は、活性エネルギー線硬化型アクリレートおよび顔料を含有する硬化性組成物の硬化物からなる。硬化性組成物は、後で詳述する。
【0026】
カラーリング材3の厚みは、特に限定されず、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、100μm以下である。また、プラスチック光ファイバー本体2の直径に対するカラーリング材3の厚みの比は、例えば、0.0001以上、好ましくは、0.001以上であり、また、例えば、1以下、好ましくは、0.5以下である。
【0027】
次に、プラスチック光ファイバー1の製造方法を、
図1A~
図2Bを参照して説明する。
【0028】
図1Aに示すように、この方法では、まず、プラスチック光ファイバー本体2を準備する。プラスチック光ファイバー本体2は、例えば、溶融押出法などにより、製造する。溶融押出法では、コア部4、クラッド部5およびオーバークラッド部6が、同時に形成される。
【0029】
続いて、硬化性組成物を準備する。硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化型樹脂と、顔料とを含む。
【0030】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートなどが挙げられる。なお、硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートと、活性エネルギー線開始剤とを含むことができる。
【0031】
顔料としては、特に限定されず、例えば、白色顔料、黒色顔料、黄色顔料、緑色顔料、赤色顔料、青色顔料などが挙げられる。顔料の平均粒子径は、例えば、1nm以上、100μm以下である。
【0032】
上記した各原料の配合割合は、プラスチック光ファイバー1の用途および目的によって適宜設定される。硬化性組成物における活性エネルギー線硬化型樹脂の割合が、例えば、50質量%以上、好ましくは、75質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下である。活性エネルギー線硬化型樹脂100質量部に対する顔料の質量部数は、例えば、1質量部以上、例えば、25質量部以下である。
【0033】
硬化性組成物は、市販品を用いることができ、例えば、オプティカル ファイバー カラーリングインクシリーズ(Phichem社製)などが用いられる。
【0034】
硬化性組成物の25℃における粘度は、2,000mPa以上、3,000mPa以下である。また、硬化性組成物の25℃における粘度は、好ましくは、2,200mPa以上、好ましくは、2,800mPa以下である。
【0035】
硬化性組成物の25℃における粘度が、2,000mPa以上、3,000mPa以下であれば、後述するように、硬化性組成物中、顔料を均一に分散できる。
【0036】
硬化性組成物の粘度は、JIS K5600-2-3(2014)に準拠して、コーン・プレート粘度計により、求められる。
【0037】
この方法では、次いで、顔料を、硬化性組成物中で分散させる。
【0038】
顔料を硬化性組成物中で分散させるには、
図2A~
図2Bに示すように、例えば、密閉容器10と、回転装置20とを準備する。
【0039】
密閉容器10は、円筒形状を有する。密閉容器10は、例えば、周壁11と、2つの端壁12とを有する。周壁11は、円筒である。周壁11は、空洞を内部に有しており、かかる空洞を軸線A1が通過する。2つの端壁12のそれぞれは、周壁11の軸線方向両端部のそれぞれに配置されており、空洞の軸線方向両端のそれぞれを閉塞する。なお、密閉容器10は、図示しないが、本体および蓋から構成されていてもよい。
【0040】
回転装置20は、2つのローラ21と、軸受け22とを備える。
【0041】
2つのローラ21のそれぞれの軸線A2は、鉛直線に対して交差しており、具体的には、水平方向に沿う。2つのローラ21の軸線A2は、平行である。2つのローラ21は、互いに対向配置される。2つのローラ21の軸線方向両端部は、軸受け22に接続されている。ローラ21の表面層は、例えば、ゴムなどの弾性体からなる。
【0042】
軸受け22は、2つのローラ21を回転可能に支持する。なお、軸受け22は、一のローラ21に駆動力を付与可能なモータに接続されている。一方、他のローラ21は、密閉容器10を介して従動する。
【0043】
硬化性組成物を密閉容器10に密閉し、次いで、密閉容器10を回転装置20にセットする。具体的には、本体に硬化性組成物を注ぎ、次いで、蓋で本体を閉塞して、密閉容器10内に硬化性組成物を密閉する。続いて、密閉容器10の周壁11を、2つのローラ21の周面に接触させる。密閉容器10を2つのローラ21の上側から配置する。密閉容器10の周壁11は、断面視において、2つのローラ21の周面のそれぞれに対して、点接触する。
【0044】
これによって、密閉容器10の周壁11の軸線A1は、鉛直線に対して交差する。具体的には、密閉容器10の周壁11の軸線A1は、水平方向に沿う。
【0045】
続いて、回転装置20のモータ(図示せず)を駆動して、一のローラ21を回転させる。すると、密閉容器10および他のローラ21が従動して回転する。
【0046】
密閉容器10は、周壁11の軸線A1を中心にして、回転する。
【0047】
周壁11の内面の周速CVは、0.02m/秒以上、0.2m/秒以下であり、また、好ましくは、0.175m/秒以下、より好ましくは、0.15m/秒以下、さらに好ましくは、0.1m/秒以下、とりわけ好ましくは、0.12m/秒以下、さらには、0.1m/秒以下、さらには、0.05m/秒以下が好適である。
【0048】
周壁11の内面の周速CVは、ローラ21の外径および回転数(rpm)と、周壁11の内径および外径とから求められる。具体的には、ローラ21の直径が42mm、周壁11の内径が90mm、外径が96mmである場合には、ローラ21の回転数は、10rpm以上、100rpm以下であり、また、好ましくは、85rpm以下、より好ましくは、70rpm以下、さらに好ましくは、60rpm以下、とりわけ好ましくは、50rpm以下、さらには、25rpm以下、さらには、15rpm以下が好適である。
【0049】
周壁11の内面の周速CVが0.2m/秒を越えれば、硬化性組成物に気泡が混入する。一方、周壁11の内面の周速CVが0.02m/秒未満であれば、顔料が硬化性組成物中で不均一となる。密閉容器10の回転によって、硬化性組成物において、周壁11の内面の近傍に位置する領域は、周壁11の移動方向に沿って流動する。これによって、顔料が、硬化性組成物全体では緩やかに分散される一方、気泡の混入を抑制できる。
【0050】
密閉容器10の回転時間、つまり、硬化性組成物における顔料の分散時間は、特に限定されず、例えば、5分以上、好ましくは、15分以上であり、また、例えば、2時間以下、好ましくは、1時間以下である。
【0051】
回転装置20は、市販品を用いることができ、例えば、アズワン社製のビッグローターシリーズなどが用いられる。
【0052】
なお、硬化性組成物の粘度の主因子となる活性エネルギー線硬化型樹脂が、硬化性組成物の主成分として上記した高い配合割合(50質量%以上)で含有されていることから、顔料が分散された後の硬化性組成物の粘度は、顔料が分散される前の硬化性組成物と実質的に変動しない。
【0053】
この方法では、その後、硬化性組成物を、プラスチック光ファイバー本体2の外周面に塗布し、その後、硬化性組成物に活性エネルギー線を照射する。
【0054】
硬化性組成物の塗布では、公知の塗布装置が用いられる。
【0055】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線(UVA(長波長側紫外線)、UVB(短波長側紫外線)などを含む)、α線、β線、γ線、X線などが挙げられる。好ましくは、紫外線が挙げられる。
【0056】
活性エネルギー線の照射では、光源と、光源と対向配置される照射室とを備える照射装置が用いられる。
【0057】
この方法では、外周面が硬化性組成物に塗布されたプラスチック光ファイバー本体2を、照射装置の照射室に通過させる。
【0058】
これによって、硬化性組成物が硬化した硬化物を生成する。これにより、硬化物からなるカラーリング材3がプラスチック光ファイバー本体2の外周面に成形される。
【0059】
(一実施形態の作用効果)
そして、このプラスチック光ファイバー1の製造方法では、特定粘度の硬化性組成物を、密閉容器10に投入し、密閉容器10を軸線A1を中心にして、周壁11の内面の周速が0.02m/秒以上、0.2m/秒以下という低速となるように、回転させる。そのため、顔料を硬化性組成物中で均一に存在させながら、気泡の混入を抑制できる。その結果、カラーリング材3の識別性に優れ、および、カラーリング材3の欠損を抑制できるプラスチック光ファイバー1を製造できる。
【0060】
(変形例)
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0061】
上記した顔料を分散させる方法では、密閉容器10の周壁11の軸線A1は、水平方向に沿うが、鉛直線に対して交差すればよく、例えば、
図3Aで示すように、水平線HLに対して傾斜することもできる。この変形例では、ローラ21の軸線A2が、鉛直線および水平線HLに対して傾斜する。周壁11の軸線A1と、水平線HLとの成す傾斜角αは、例えば、5度以下、好ましくは、3度以下である。
【0062】
また、
図3A~
図3Bに示すように、密閉容器10の回転しながら、密閉容器10の周壁11の軸線A1がスイングするように、一の端壁12を上下方向において繰り返し移動させることができる。一の端壁12の移動速度は、硬化性組成物に気泡が混入しない程度(超低速)に設定され、例えば、一の端壁12の上下方向の移動速度が、例えば、0.01m/秒以下、好ましくは、0.001m/秒以下である。
【0063】
回転装置20は、ローラ21を備えるが、例えば、
図4に示すように、周壁11の軸方向両端部を把持する2つの把持部24を回転可能に備えることもできる。
【0064】
周壁11は、円筒形状を有すればよく、図示しないが、円筒部と、円筒部の先端に連続するテーパ部とを有してもよい。テーパ部は、先側(軸線方向一方側)に向かうに従って開口断面積が小さくなる形状を有する。
【0065】
また、プラスチック光ファイバー1は、断面視略円形状であるが、その形状は特に限定されず、例えば、図示しないが、断面略矩形状であってもよい。
【0066】
図1では、プラスチック光ファイバー本体2は、コア部4、クラッド部5およびオーバークラッド部6を備えるが、例えば、図示しないが、オーバークラッド部6を備えず、コア部4およびクラッド部5のみを備えてもよい。
【0067】
また、この製造方法では、塗布前の硬化性組成物における顔料を上記した回転装置20などの、気泡の混入が抑制される方法で、分散しているが、例えば、ディスパーなどの攪拌羽根で、上記した硬化性組成物をせん断混合し、その後、例えば、1時間以上、好ましくは、24時間以上、静置して、脱泡した後、回転装置20で、硬化性組成物の顔料を再分散することもできる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0069】
参考例1
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(三菱ケミカル社製)からなるコア部4と、フッ素化PMMA(ダイキン社製FM450)からなるクラッド部5と、XYLEXX7300CL(製品名、SABICInnovativePlastics社製、ポリエステル変性ポリカーボネート樹脂)からなるオーバークラッド部6とを含み、外径470μmのプラスチック光ファイバー本体2を、溶融押出法で、製造した。
【0070】
硬化性組成物であるオプティカル ファイバー カラーリングインク アクア(活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートおよび青色顔料含有、Phichem社製)を準備した。
【0071】
続いて、準備した硬化性組成物500mLを、容量1000mL(内径90mm、外径96mm)の密閉容器10に投入し、続いて、密閉容器10を、回転装置20にセットした。回転装置20は、ビッグローター(型番BR-2、アズワン社製)である。密閉容器10の周壁11の軸線A1、および、ローラ21の軸線A2は、いずれも水平方向に沿う。
【0072】
続いて、密閉容器10の周壁11の内周面の周速が0.055m/秒(ローラ21の回転数27rpm)となるように、一のローラ21を回転させた。これによって、顔料を硬化性組成物中で、30分間、分散させた。
【0073】
その後、硬化性組成物を密閉容器10から取り出し、その直後に、硬化性組成物をプラスチック光ファイバー本体の外周面に塗布し、続いて、紫外線を硬化性組成物に照射して、硬化性組成物を硬化させて、厚み20μmのカラーリング材を成形した。
【0074】
参考例2~10および比較例1
表1の記載に従って、硬化性組成物の種類、周壁11の内面の周速CVを変更した以外は、参考例1と同様に処理して、プラスチック光ファイバー1を得た。
【0075】
比較例2
回転装置20に代えて、直径が0.07mの攪拌羽根を備えるディスパー(型番BL300、新東科学社製)で硬化性組成物を攪拌した以外は、参考例2と同様に処理して、プラスチック光ファイバー1を得た。攪拌羽根の回転数は、15rpmで、攪拌羽根の先端周速は、0.055m/秒であった。
【0076】
参考例11
比較例2のディスパーで硬化性組成物を攪拌し、その後、24時間静置して脱泡した後、参考例1と同様の方法で顔料を硬化性組成物中で再分散させ、続いて、参考例1と同様に処理して、プラスチック光ファイバー1を得た。
【0077】
比較例3
硬化性組成物を攪拌せず、不均一な状態で、プラスチック光ファイバー本体の外周面に塗布した以外は、参考例2と同様に処理して、プラスチック光ファイバー1を得た。
【0078】
評価
各参考例および各比較例について、以下の事項を評価した。
【0079】
(硬化組成物の粘度)
分散後、塗布前の硬化組成物の25℃における粘度を、JIS K5600-2-3(2014)に準拠して、コーン・プレート粘度計により、求めた。コーン・プレート粘度計(E型粘度計)は、東機産業社製の型番「RE80」を用いた。
【0080】
(カラーリング材の欠損の有無)
50mのプラスチック光ファイバー1のカラーリング材3を目視で、検査した。下記の基準に基づいて、カラーリング材3の欠損を評価した。
×:カラーリング材3において、気泡による欠損が確認された。
○:カラーリング材3において、気泡による欠損が確認されなかった。
【0081】
(カラーリング材の識別性)
カラーリング材3を目視することにより、下記の基準に基づいて、識別性を評価した。
×:顔料の不均一に起因する孔を確認できた。
○:上記した孔を確認できなかった。
【0082】
【0083】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
プラスチック光ファイバーは、各種光学伝送に用いられる。
【符号の説明】
【0085】
1 プラスチック光ファイバー
2 プラスチック光ファイバー本体
3 カラーリング材