(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】金属と有機材料との間の接着強度を増加させる方法
(51)【国際特許分類】
C09J 5/00 20060101AFI20240806BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240806BHJP
C09J 5/02 20060101ALI20240806BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C09J5/00
C23C26/00 A
C09J5/02
H05K3/38 E
(21)【出願番号】P 2021551809
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2020055192
(87)【国際公開番号】W WO2020178146
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-22
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・タン
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ミヒャリク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティーナ・ベロヴァ-マグリ
(72)【発明者】
【氏名】ウォンジン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ティン・シャオ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・メルシュキー
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ・ケーニヒスマン
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172759(JP,A)
【文献】特開2015-010079(JP,A)
【文献】特開2014-240522(JP,A)
【文献】特開平6-279461(JP,A)
【文献】特開平7-286160(JP,A)
【文献】特開2008-24757(JP,A)
【文献】特開平6-279456(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3310137(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00ー 5/10
C09J 9/00ー201/10
C23C 24/00- 30/00
H05K 1/14
H05K 3/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、金属合金又は金属酸化物の表面と有機材料の表面との間の接着強度を増加させる方法であって、
(i)基板の少なくとも1つの面に金属、金属合金又は金属酸化物を含む基板を提供する工程と、
(ii)前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を
A)式(I)のアゾールシラン化合物と
【化1】
[式中、XはNH
2、NH(NH
2)、NH(NHU)、SH、SCH
3、OCH
3、NHU又はSUを示し、
Yは、NH、N(NH
2)、N(NHU)又はSを示し、
Uは独立してCH
2-CH(OH)-CH
2-O-(CH
2)
n-Si(OR)
3を示し、Rは独立して(CH
2-CH
2-O)
m-Zであり、独立して
nは、1~12の範囲の整数であり、
mは0、1、2、3又は4であり、
ZはH又はC1~C5アルキルを示す]、
及び/又は
B)アゾールシランオリゴマーが少なくとも1つのケイ素-酸素-ケイ素部分を含むように、式(I)のアゾールシラン化合物を水の存在下で互いに反応させることによって得られ、
アゾールシランオリゴマーを形成するための反応に使用される式(I)の化合物において、
Xは、H、CH
3、NH
2、NH(NH
2)、NH(NHU)、SH、SCH
3、OCH
3、NHU又はSUを示し、
Y及びUは上記の意味を有する、アゾールシランオリゴマーと接触させる工程
と、
(iii)工程(ii)中にアゾールシラン化合物及び/又はアゾールシランオリゴマーと接触する金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分が、塗布される有機材料と接触するように有機材料を塗布する工程とをこの順序で含む、方法。
【請求項2】
式(I)のアゾールシラン化合物及び/又はアゾールシランオリゴマーの水性溶液が工程(ii)で使用され、水性溶液が、水性溶液の総質量に基づいて
、少なくとも51質量%の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性溶液が、1つ又は1つより多くの水混和性有機溶媒を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は1つより多くの水混和性有機溶媒が、C1~C4アルコール、グリコールエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される水混和性有機溶媒を含
む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アゾールシラン化合物及びアゾールシランオリゴマーを合わせた総量が、水性溶液の総質量に基づいて5質量%以下である、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性溶液が4.8~8.6の範
囲のpHを有する、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(ii)を実行する前に、
(i-a)前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を、エッチング洗浄溶
液と接触させる工程を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(ii)を実行する前に、
(i-b)前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を
、鉄(III)塩又は鉄(III)錯体を含
むエッチング洗浄溶液と接触させる工程を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)を実行する前に、
(i-c)前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を、アルカリ水性溶液と接触させる工程を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)で塗布される有機材料が有機ポリマーである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも接触部分に前記有機材料を積層することによって、有機材料が工程(iii)で塗布される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(iii)の後に、
(iv)前記基板及び有機材料を、142℃~420℃の範
囲の温度で熱処理を施す更なる工程を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(ii)の後、工程(i-a)の後、工程(i-b)の後及び/又は工程(i-c)の後に、前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分をすすぐ工程が実施され、前記金属、金属合金又は金属酸化物が
、水ですすがれる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(ii)の後、工程(i-a)の後、工程(i-b)の後及び/又は工程(i-c)の後に、前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を乾燥させる工程が実施される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記金属、金属合金又は金属酸化物が、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、スズ、鉄、銀、金、前述の金属の少なくとも1つを含む合金又は前述の金属の少なくとも1つの金属酸化物である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、金属合金又は金属酸化物の表面と有機材料の表面との間の接着強度を増加させる方法であって、主な工程として、前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を特定のアゾールシラン化合物、特定のアゾールシランオリゴマー又は前記化合物及び/又は前記オリゴマーを含む混合物と接触させる工程を含む、方法に関する。更に、本発明は、金属、金属合金又は金属酸化物の表面と有機材料の表面との間の接着強度を増加させる方法における、前記特定のアゾールシラン化合物、前記特定のアゾールシランオリゴマー又は前記混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)基板の製造に使用されるセミアディティブプロセスビルドアップシーケンス(Semi Additive Process build up sequence)では、重要なタスクの1つは、本質的に自然の接着力がない隣接する層間に強力な接着結合を形成することである。ここでの基本的な課題は、最終製品の性能に悪影響を与えることなく、ビルドアップ層又は最終的なはんだマスクコーティングのいずれかで使用される金属トレースと誘電体材料との間に強力な結合を形成することである。
【0003】
以前、最も一般的に使用されていた接着促進剤系は、金属表面の高度な粗化を提供していた。この粗面は、誘電体材料(例えば有機樹脂系)と金属トレースとの機械的結合を形成するための要諦として作用することができる。しかし、最小量の金属の除去のために金属表面積を最大に増加させることに基づくこの種の系は、現在はもはや許容しがたい。導体の特徴がますます小さくなるにつれて、所望の線及び空間の許容範囲まで信頼できる構造を形成することはますます困難になり、したがって、高度の表面粗化に基づく接着促進工程を導入することは全く望ましくない。
【0004】
更に、信号完全性と表面粗化との間に強い関係がある5Gシステムの出現により、第2の課題に直面している。電気信号の周波数及びデータ転送の速度が増加すると、電気信号の経路は金属トレースの最外表面(outer most skin)に移動する。明らかに、この「外表面」がビルドアップ層との接着力を増加させるために高度に粗化されている場合、信号の一部が損失したり失速したりする危険性がはるかに高い。そのような損失があると、必要な高周波数範囲で動作する能力も損なわれる。
【0005】
これらの課題を克服するために、金属表面をエッチング及び/又は粗化することなく、両方の材料間の接着を増加させる金属表面及び/又は誘電体材料の処理方法を開発することが望ましい。
【0006】
アゾールシラン化合物は、電子部品の製造、特に表面処理溶液、例えば、更なる処理工程の準備としての金属表面及び有機材料の表面処理に頻繁に利用される。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0368935(A1)号は、アゾールシラン化合物及びアゾールシラン化合物を用いた表面処理溶液、表面処理方法及びそれらの使用に関する。
【0008】
特開2018016865は、シラン化合物を含むトリアゾール表面処理剤を開示している。
【0009】
特開2014240522は、銅表面処理液、表面処理方法及びそれらの利用に言及している。
【0010】
特開平6-279461は、プリント回路用の銅張積層板に使用される銅箔の表面処理剤に言及している。
【0011】
論文「Corrosion protection of copper with 3-glycidoxypropyltrimethoxysilane-based sol-gel coating through 3-amino-5-mercapto-1,2,4-triazole doping」、Journal of Research on Chemical Intermediates、第42巻、第2号、1315~1328ページ、2015は、銅表面上にゾルゲルコーティングを形成することによる中性媒質中の銅の腐食保護に関する研究を開示している。この論文では、銅上の3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールドープ3-グリジドキシプロピルトリメトキシシラン系のゾルゲルコーティングが、銅へのチオレート結合を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許出願公開第2016/0368935(A1)号
【文献】特開2018016865
【文献】特開2014240522
【文献】特開平6-279461
【非特許文献】
【0013】
【文献】「Corrosion protection of copper with 3-glycidoxypropyltrimethoxysilane-based sol-gel coating through 3-amino-5-mercapto-1,2,4-triazole doping」、Journal of Research on Chemical Intermediates、第42巻、第2号、1315~1328ページ、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、上記の問題に基づいて、好ましくはエッチング及び/又は金属表面の粗化をせずに、両方の材料間の接着が増加する金属表面及び/又は誘電体材料の処理方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的は、金属、金属合金又は金属酸化物の表面と有機材料の表面との間の接着強度を増加させる方法であって、
(i)基板の少なくとも1つの面に金属、金属合金又は金属酸化物を含む基板を提供する工程と、
(ii)前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を
A)式(I)のアゾールシラン化合物と
【0016】
【0017】
[式中、XはNH2、NH(NH2)、NH(NHU)、SH、SCH3、OCH3、NHU又はSUを示し、
Yは、NH、N(NH2)、N(NHU)又はSを示し、
Uは独立してCH2-CH(OH)-CH2-O-(CH2)n-Si(OR)3を示し、Rは独立して(CH2-CH2-O)m-Zであり、独立して
nは、1~12の範囲の整数であり、
mは0、1、2、3又は4であり、
ZはH又はC1~C5アルキルを示す]、
及び/又は
B)アゾールシランオリゴマーが少なくとも1つのケイ素-酸素-ケイ素部分を含むように、式(I)のアゾールシラン化合物を水の存在下で互いに反応させることによって得られ、
アゾールシランオリゴマーを形成するための反応に使用される式(I)の化合物において、
Xは、H、CH3、NH2、NH(NH2)、NH(NHU)、SH、SCH3、OCH3、NHU又はSUを示し、
Y及びUは上記の意味を有する、アゾールシランオリゴマーと接触させる工程
と、
(iii)工程(ii)中にアゾールシラン化合物及び/又はアゾールシランオリゴマーと接触する金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分が、塗布される有機材料と接触するように有機材料を塗布する工程とをこの順序で含む、方法によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
独自の実験により、驚くべきことに、金属、金属合金又は金属酸化物と有機材料との間の接着強度は、金属、金属合金又は金属酸化物をエッチング又は顕著に除去せずに増加できることが示された。金属、金属合金又は金属酸化物の総表面積は増加せず、むしろ本発明の方法の工程(ii)の間、一定のままである。言い換えれば、工程(ii)の後、金属、金属合金又は金属酸化物の総表面積は、工程(ii)の開始時と比較して実質的に同じである。これにより、本発明の方法は、粗化によって総表面積を増加させることを目的とする多くの既知の方法、特にエッチング方法と区別される。したがって、本発明の方法は、非エッチング法である。
【0019】
独自の実験により、驚くべきことに、式(I)のアゾールシラン化合物及びアゾールシランオリゴマーの側鎖(U)のOH基により、極性溶媒への溶解度が増加することも示された(OH基が水素で置換された式(I)の化合物又はアゾールシランオリゴマーと比較して)。結果として、過剰なアゾールシラン化合物又はアゾールシランオリゴマーは、工程(ii)の後に従来の湿式化学法によって除去することができ、プラズマ処理を実行する必要はない。
【0020】
工程(i)において、金属、金属合金又は金属酸化物が金属、金属合金又は金属酸化物回路を含み、好ましくは金属、金属合金又は金属酸化物回路である、本発明の方法が好ましい。このような場合、金属、金属合金又は金属酸化物合金が構造化されている。これは、好ましくは、有機材料が、同じ側に非導電性(好ましくは有機性)領域及び導電性金属、金属合金又は金属酸化物領域を同時に露出することを意味する。これは、本発明の方法の文脈において最も好ましい。
【0021】
工程(i)において、金属、金属合金又は金属酸化物が基板上に少なくとも1つの層を形成する、本発明の方法が好ましい。上記のように、この層又はこれらの層は、構造化することができ、回路を形成するか又は回路であり得る。
【0022】
工程(i)(及び/又は好ましくは工程(ii)の後)において、金属、金属合金又は金属酸化物回路が、線幅が100μm以下、好ましくは75μm以下、より好ましくは55μm以下の線を含む、本発明の方法が好ましい。場合によっては、本発明の方法が好ましく、工程(i)(及び/又は好ましくは工程(ii)の後)において、金属、金属合金又は金属酸化物回路が、線幅が30μm以下の、好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下線を含む、本発明の方法が好ましい。
【0023】
式(I)のアゾールシラン化合物及び/又はアゾールシランオリゴマーの水性溶液が工程(ii)で使用される、本発明による方法が好ましい。そのような場合、水性溶液が、水性溶液の総質量に基づいて、少なくとも51質量%の水を含む場合が好ましい。前記溶液中に、水は、水性溶液の総質量に基づいて、56質量%~88質量%の範囲の総量で存在し、好ましくは、60質量%~84.8質量%の範囲の総量で、より好ましくは65質量%~82.2質量%の範囲の総量で存在する水性溶液が好ましい。
【0024】
アゾールシラン化合物及びアゾールシランオリゴマーを水性溶液に十分に可溶化するために、1つ又は1つより多くの水混和性有機溶媒が存在する。前記溶液中に、1つ又は1つより多くの水混和性有機溶媒が、水性溶液の総質量に基づいて、6質量%~44質量%の範囲の総量で存在し、好ましくは8質量%~43.9質量%の範囲の総量で、より好ましくは13質量%~39.7質量%の範囲の総量で、最も好ましくは、16質量%~34.5質量%の範囲の総量で存在する、本発明の溶液が好ましい。
【0025】
本発明の文脈において、アゾールシラン化合物と同様にアゾールシランオリゴマー及び本発明の工程(ii)で使用される溶液は、最初はハロゲン化物を持たない。これは、一方では、ハロゲン原子を含む抽出物が利用されないため、前記化合物及びオリゴマーは、それぞれがそれ自体でハロゲン化物原子を持たず、他方では、直接の合成環境にハロゲン化物イオンが存在しないことを意味する。しかしながら、いくつかの場合において、本発明の水性溶液は、正確に定義された量のハロゲン化物イオンを含むことが好ましい。したがって、場合によっては、本発明の工程(ii)で使用される水性溶液が、ハロゲン化物イオン、好ましくは塩化物イオンを更に含むことが好ましい。
【0026】
しかしながら、他の場合には、本発明の工程(ii)で使用される(水)溶液は、塩化物イオンを実質的に含まないことが好ましく、好ましくは含まず、より好ましくはハロゲン化物イオンを実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0027】
上記のように、水性溶液が1つ又は1つより多くの水混和性有機溶媒を更に含む、本発明による方法が好ましい。そのような場合、1つ又は1つより多くの水混和性有機溶媒が、C1~C4アルコール、グリコールエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される水混和性有機溶媒を含む場合が好ましく、好ましくは、
- C1~C3アルコール、
- HO-(CH2-CH2-O)m-Z(式中、
mは1、2、3又は4であり、好ましくは1又は2であり、
ZはC1~C5アルキルを示し、好ましくはC3~C5アルキルを示す)、
及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは
メタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択され、更により好ましくは
ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
いずれの場合も、アルコールよりもグリコールエーテルの方が好ましい。グリコールエーテルは、典型的には、前記アルコールと比較して改善された安定化を提供する。更に、アルコールは一般にグリコールエーテルと比較して低い引火点を示し、このことは火災危険性の観点からアルコールを潜在的に危険なものにしている。発火を防ぐために、通常、比較的高い引火点が望ましい。したがって、グリコールエーテルは典型的には、望ましい溶解性、安定性及び安全性を提供する。
【0029】
(水)溶液の総質量に基づいて、アゾールシラン化合物及びアゾールシランオリゴマーを合わせた総量が5質量%以下である、本発明による方法が好ましい。
【0030】
上記の用語「5質量%以下」には、ゼロ質量%は含まれない。これは、前記総量が常に>0質量%であり、好ましくは少なくとも0.1質量%であることを意味する。
【0031】
好ましくは、すべてのアゾールシラン化合物(本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)及びすべてのアゾールシランオリゴマー(本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)を合わせた総量は、水性溶液の総質量に基づいて、0.1質量%~4質量%の範囲にあり、好ましくは、0.2質量%~3質量%の範囲にあり、より好ましくは、0.3質量%~2.2質量%の範囲にあり、更により好ましくは0.4質量%~2.0質量%の範囲にあり、最も好ましくは0.5質量%~1.8質量%の範囲にある。
【0032】
独自の実験により、1つ又は1つより多くのアゾールシラン化合物及び1つ又は1つより多くのアゾールシランオリゴマーの個々の存在が経時的に変化することが示された。新たに調製された水性溶液では、典型的には、アゾールシラン化合物の総質量は、アゾールシランオリゴマーの総質量よりも高い。しかしながら、水性溶液を利用すると、経時的に前記アゾールシランオリゴマーの総質量は劇的に増加し、場合によっては前記アゾールシランオリゴマーの総質量が前記アゾールシラン化合物の総質量よりも高くなる点までにさえ増加する可能性がある。更に、水性溶液の取り扱いはまた、前記化合物及びオリゴマーの総質量にもそれぞれ影響を与える。例えば、水性溶液を利用する際の著しい引き出し(drag out)及び対応する新たな水性溶液の補充は、典型的には、アゾールシラン化合物対アゾールシランオリゴマーに関して定常状態条件をもたらす。
【0033】
本発明による方法の工程(ii)において、1つ又は複数のアゾールシランオリゴマーを単離し、アゾールシランオリゴマーのみを使用することも可能である。
【0034】
水性溶液が4.8~8.6の範囲、好ましくは4.8~8.0の範囲のpHを有する、本発明による方法が好ましい。
【0035】
本発明の文脈において、pHは、20℃の温度を基準としている。
【0036】
pHが5.6~7.9の範囲にあり、より好ましくは5.8~7.7の範囲にあり、最も好ましくは6.5~7.5の範囲にある水性溶液がより好ましい。4.8~8.6の範囲のpHは、アゾールシラン化合物のオリゴマー化を少なくともある程度支持し、望ましい。独自の実験により、pHがpH4.8を著しく下回る場合又はpH8.0を著しく上回る場合、望ましくない強析出がしばしば観察されることが示された。更に、溶液の総質量に基づいて、すべてのアゾールシラン化合物及びすべてのアゾールシランオリゴマーの総量が5質量%以下であり、前記溶液が主に水性溶液であると、十分に安定な溶液が得られる。これは、水性環境におけるそのような総量及びそのようなpHにより、析出を著しく回避できることを意味する。
【0037】
本発明による方法により、金属と有機材料との間の接着強度(例えば、剥離強度)は、エッチング洗浄工程を使用せずに増加させることができる。ただし場合によっては、特に金属表面の表面粗さが回路の品質に影響を与えない場合は、更にエッチング洗浄工程を実施できる。この場合、金属と有機材料との間の接着強度を更に一層高めることができる。
【0038】
工程(ii)を実行する前に、(i-a)前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分をエッチング洗浄溶液、好ましくは1つ又は1つより多くの酸及び/又は1つ又は1つより多くの酸化剤を含むエッチング洗浄溶液、より好ましくは無機酸及び過酸化物の混合物(好ましくは硫酸及び過酸化水素の混合物)を含むエッチング洗浄溶液と接触させる工程を更に含む、本発明による方法が好ましい。
【0039】
本発明によれば、酸化剤が過酸化物である場合が好ましく、より好ましくは、過酸化物が過酸化水素である。
【0040】
本発明によれば、エッチング洗浄溶液が、酸及び/又は1つ又は1つより多くの酸化剤に加えて腐食抑制剤を含む場合が好ましい。
【0041】
工程(ii)を実行する前に、(i-b)前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を(好ましくは第2の)エッチング洗浄溶液と接触させる工程を更に含む、本発明による方法が好ましい。工程(i-a)の後に工程(i-b)が実行される場合、使用されるエッチング洗浄溶液は、第2のエッチング洗浄溶液である。工程i-bが先行のエッチング洗浄工程を伴わずに実行される場合、使用されるエッチング洗浄溶液は、第1のエッチング洗浄溶液である。
【0042】
本発明によれば、第2のエッチング洗浄溶液は、鉄(III)塩又は鉄(III)錯体を含み、より好ましくは、第2のエッチング洗浄溶液は、硫酸第二鉄(Fe2(SO4)3)、塩化第二鉄(FeCl3)、臭化鉄(FeBr3)、硝酸第二鉄(Fe(NO3)3)、酢酸第二鉄(Fe(OC(O)CH3)3)、(Fe(OH)3)又はそれらの混合物を含み、更により好ましくは、第2のエッチング洗浄溶液は、硫酸第二鉄(Fe2(SO4)3)を含む。第二鉄イオンは、好ましくは1~100g/l、好ましくは1~50g/l、より好ましくは1~30g/lの範囲の濃度で含まれる。
【0043】
本発明によれば、第2のエッチング洗浄溶液は、好ましくは、鉄(III)塩又は鉄(III)錯体に加えて、酸、好ましくは硫酸を含む。
【0044】
本発明によれば、工程i-a及び/又はi-b中の典型的な金属、金属合金又は金属酸化物の除去は200nm未満であり、得られる表面粗さは最大100nmである。
【0045】
工程(ii)を実行する前に、(i-c)前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分をアルカリ水性溶液、好ましくは水酸化ナトリウム水性溶液と接触させる工程を更に含む、本発明による方法が好ましい。アルカリ水性溶液が金属錯化剤を含む場合が好ましい。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、工程i-cで使用されるアルカリ水性溶液が、亜塩素酸ナトリウムを更に含む場合が好ましい。工程i-bにおいて鉄(III)塩又は鉄(III)錯体が使用されない場合又は工程i-bが本発明による方法中に実施されない場合、工程i-cで使用されるアルカリ水性溶液中の亜塩素酸ナトリウムの使用が特に好ましい。
【0047】
工程(i-a)、(i-b)及び(i-c)の順序は異なってもよい。本発明による方法は、以下の順序、(i-a)、(i-b)、(i-c)又は(i-a)、(i-c)、(i-b)又は(i-b)、(i-a)、(i-c)又は(i-b)、(i-c)、(i-a)又は(i-c)、(i-a)、(i-b)又は(i-c)、(i-b)、(i-a)で実行することができる。(i-a)、(i-b)、(i-c)の順序が好ましい。本発明による方法において、工程(i-a)、(i-b)、(i-c)のうち、いずれも実行されないか、1つ又は2つが実行されることも可能である。
【0048】
工程(iii)で塗布される有機材料が有機ポリマーである、本発明による方法が好ましい。
【0049】
有機材料を少なくとも金属、金属合金又は金属酸化物の接触部分に積層することによって、有機材料が工程(iii)で塗布される、本発明による方法が好ましい。
【0050】
工程(iii)の後に、(iv)基板及び有機材料に、142℃~420℃の範囲、好ましくは、145℃~300℃の範囲、より好ましくは150℃~220℃の範囲の温度で熱処理を施す更なる工程を含む、本発明による方法が好ましい。
【0051】
工程(ii)の後、工程(i-a)の後、工程(i-b)の後及び/又は工程(i-c)の後、金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分のすすぐ工程が実施され、金属、金属合金又は金属酸化物が好ましくは水ですすがれる、本発明による方法が好ましい。工程(ii)の後のすすぎ中に使用される水が、4~10の範囲、好ましくは5~9の範囲、より好ましくは6~8の範囲、最も好ましくは6.5~7.5の範囲のpH値を有する場合が好ましい。
【0052】
工程(ii)の後、工程(i-a)の後、工程(i-b)の後及び/又は工程(i-c)の後、金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を乾燥させる工程が実施される、本発明による方法が好ましい。
【0053】
金属、金属合金又は金属酸化物が銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、スズ、鉄、銀、金、前述の金属(又は前述の金属のみを含む合金)の少なくとも1つを含む合金又は前述の金属の少なくとも1つの金属酸化物である、本発明による方法が好ましい。金属が銅であり、金属合金が銅を含み、金属酸化物が酸化銅であるか又は酸化銅を含む、本発明による方法が特に好ましい。
【0054】
(i)基板の少なくとも1つの面に金属、金属合金又は金属酸化物を含む基板を提供する工程と、
(i-a)任意選択で、前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分をエッチング洗浄溶液、好ましくは1つ又は1つより多くの酸及び/又は1つ又は1つより多くの酸化剤を含むエッチング洗浄溶液、より好ましく無機酸及び過酸化物の混合物を含むエッチング洗浄溶液と接触させ、次いで任意選択で、金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を(好ましくは水で)すすぐ工程と、
(i-b)任意選択で、前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を第2のエッチング洗浄溶液と接触させ、第2のエッチング洗浄溶液は、好ましくは、硫酸第二鉄及び硫酸を含み、次いで任意選択で、金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を(好ましくは水で)すすぐ工程と、
(i-c)任意選択で、前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分をアルカリ水性溶液と接触させ、次いで任意選択で、金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を(好ましくは水で)すすぐ工程と、
(ii)前記金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を
A)式(I)のアゾールシラン化合物と
【0055】
【0056】
[式中、
XはNH2、NH(NH2)、NH(NHU)、SH、SCH3、OCH3、NHU又はSUを示し、
Yは、NH、N(NH2)、N(NHU)又はSを示し、
Uは独立してCH2-CH(OH)-CH2-O-(CH2)n-Si(OR)3を示し、Rは独立して(CH2-CH2-O)m-Zであり、独立して
nは、1~12の範囲の整数であり、
mは0、1、2、3又は4であり、
ZはH又はC1~C5アルキルを示す]、
及び/又は
B)アゾールシランオリゴマーが少なくとも1つのケイ素-酸素-ケイ素部分を含むように、式(I)のアゾールシラン化合物を水の存在下で互いに反応させることによって得られ、
アゾールシランオリゴマーを形成するための反応に使用される式(I)の化合物において、
Xは、H、CH3、NH2、NH(NH2)、NH(NHU)、SH、SCH3、OCH3、NHU又はSUを示し、
Y及びUは上記の意味を有する、アゾールシランオリゴマーと接触させ、
次いで任意選択で、金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分を(好ましくは水で)すすぐ工程と、
(iii)工程(ii)中にアゾールシラン化合物及び/又はアゾールシランオリゴマーと接触する金属、金属合金又は金属酸化物の少なくとも1つの部分が、塗布された有機材料と接触するように有機材料を塗布する工程と、
(iv)任意選択で、基板及び有機材料に、142℃~420℃の範囲、好ましくは145℃~300℃の範囲、より好ましくは150℃~220℃の範囲の温度で熱処理を施し、
好ましくは、金属は銅であり、金属合金は銅を含み、金属酸化物は酸化銅であるか又は酸化銅を含む工程とをこの順序で含む、本発明による方法が特に好ましい。
【0057】
基板が非導電性基板であり及び/又は有機材料が非導電性有機材料、好ましくは非導電性有機ポリマーである、本発明による方法が好ましい。
【0058】
XがNH2、NH(NH2)、SH、SCH3又はOCH3、好ましくはNH2、NH(NH2)、SH、SCH3又はOCH3、より好ましくはNH2、NH(NH2)、SH、SCH3、最も好ましくはNH2を示す、本発明による方法が好ましい。
【0059】
U中のnは、1~8の範囲、好ましくは2~6の範囲、より好ましくは3~4の範囲の整数であり、最も好ましくはnは3である、本発明による方法が好ましい。
【0060】
本発明による非常に好ましい方法において、アゾールシラン化合物は、式(I-I)又は(I-II)の化合物である
【0061】
【0062】
[式中、Rは独立して(CH2-CH2-O)m-Zであり、
独立して
mは0、1又は2、好ましくは0又は2であり、
Zは、H、CH3、CH2-CH3、(CH2)2-CH3又は(CH2)3-CH3、好ましくはH、CH3又は(CH2)3-CH3を示し、
Bは、独立してH及びNH2からなる群から選択され、好ましくは、BはHである]。
【0063】
式(I-II)の化合物が非常に好ましい。
【0064】
本発明の文脈において、特定の変数と組み合わせた「独立して~である」(又は同様の表現)という用語は、第1の化合物におけるそのような変数の選択された特徴が、第2の化合物における同じ変数(例えば、(I-I)及び(I-II)における変数B)の選択された特徴から独立していることを意味し、1つの化合物が同じ変数を少なくとも2回含む場合(例えば、(I-II)における変数B)、互いに独立して選択されるため、異なることができる。例えば、式(I-II)の化合物において、Bは、式(I-I)の化合物中のBから独立して選択される。したがって、両方のBは異なることができる。更に、式(I-II)の化合物において、環アゾールの窒素に結合したBは、外部アミン基のBから独立して選択される。したがって、この場合も、式(I-II)の化合物において両方のBは異なることができる。この原則は、他の「独立して」という用語にも同様に適用される。
【0065】
本発明による非常に好ましい方法において、アゾールシラン化合物は、式(Ia)又は(Ib)の化合物である
【0066】
【0067】
[式中、Rは独立して(CH2-CH2-O)m-Zであり、
独立して
mは0、1又は2、好ましくは0又は2であり、
Zは、H、CH3、CH2-CH3、(CH2)2-CH3又は(CH2)3-CH3、好ましくはH、CH3又は(CH2)3-CH3を示す]。
【0068】
本発明の方法で使用されるアゾールシラン化合物で最も好ましいYは、それぞれ窒素を含み、本発明の方法で使用されるアゾールシラン化合物は、好ましくは、それぞれ上記で定義されている式(Ib)及び(I-II)の化合物である。
【0069】
アゾールシランオリゴマーが、アゾールシラン二量体、アゾールシラン三量体及びアゾールシラン四量体からなる群から選択される、本発明による方法が好ましい。したがって、本発明による方法で使用されるアゾールシランオリゴマーは、水の存在下で、好ましくは本明細書全体に記載されている、より好ましくは好ましいと記載されている式(I)によるアゾールシラン化合物を反応させることによって得られる。アゾールシラン化合物の相互のこの反応は、オリゴマー化と呼ばれる。
【0070】
上記のオリゴマー化は、様々なシリコン原子で少なくともいくつかのOH基を形成するために、加水分解のために少なくとも少量の水を必要とする。好ましくは、アゾールシランオリゴマーは、それぞれの反応組成物の総質量に基づいて、少なくとも2質量%の水の存在下で、前記アゾールシラン化合物を相互に反応させることによって得られる。
【0071】
本発明の文脈において、「アゾールシランオリゴマー」という用語は、少なくとも2つのモノマーの組み合わせ、すなわち、上記の少なくとも2つのアゾールシラン化合物の相互の反応を含む。更に、この用語には、3、4、5、6、7、8、9及び10個までのモノマーを含む。オリゴマーが、アゾールシラン二量体、アゾールシラン三量体、アゾールシラン四量体、アゾールシラン五量体、アゾールシラン六量体、アゾールシラン七量体及びアゾールシラン八量体からなる群から選択される、上記のアゾールシランオリゴマーが好ましい。オリゴマーが、アゾールシラン二量体、アゾールシラン三量体及びアゾールシラン四量体からなる群から選択される、本発明の方法で使用されるアゾールシランオリゴマーがより好ましい。後者は、代替としてオリゴマーが、それぞれ1つ、2つ又は3つのケイ素-酸素-ケイ素部分を含む、アゾールシランオリゴマーが好ましいことを意味する。
【0072】
上記のアゾールシラン化合物に基づいて、本発明の多種多様なオリゴマーを形成することができる。したがって、本発明のオリゴマーは、それらが互いに反応することによって最もよく適切に記載される。
【0073】
本発明の文脈において、値と組み合わせた「少なくとも」という用語は、この値又はこの値よりも大きいことを示す(且つそれと交換可能である)。例えば、上記の「少なくとも1つのシリコン-酸素-シリコン部分」は、「1つ又は1つより多くのシリコン-酸素-シリコン部分」を示す(且つそれと交換可能である)。最も好ましくは、「少なくとも1つ」は、「1つ、2つ、3つ又は3つより多い」を示す(且つそれらと交換可能である)。
【0074】
アゾールシランオリゴマーが、式(II)の化合物である本発明による方法が好ましい
【0075】
【0076】
[式中、Rは独立して(CH2-CH2-O)m-Zを示し、
mは0、1、2、3又は4、好ましくは0、1又は2であり、ZはH又はC1~C5アルキルを示し、
kは1、2又は3であり、好ましくは1又は2であり、
Mは独立して式(IIa)の部分を示し、
【0077】
【0078】
式(IIa)において、
Xは、H、CH3、NH2、NH(NH2)、SH、SCH3又はOCH3、好ましくはCH3、NH2、NH(NH2)、SH、SCH3又はOCH3、より好ましくはNH2、NH(NH2)、SH又はSCH3を示し、最も好ましくはNH2を示し、
Yは、NH、N(NH2)又はS、好ましくはNHを示し、
nは、1~12の範囲、好ましくは1~8の範囲、より好ましくは2~6の範囲、更により好ましくは3~4の範囲の整数を示し、最も好ましくはnは3である]。
【0079】
式(IIa)の上記の部分において、破線は、部分全体を式(II)に示されるシリコン原子と結合させる共有結合を示す。
【0080】
いくつかの場合においてのみ、kが1~7の範囲、好ましくは1~5の範囲の整数である、本発明による方法で使用されるアゾールシランオリゴマーが更に好ましい。ただし、最も好ましくは、kは、1、2又は3、好ましくは1又は2である。
【0081】
好ましくは、本発明による方法で使用されるアゾールシランオリゴマーは、ホモオリゴマーである。これは、好ましくは同一のモノマーが相互に組み合わされてオリゴマーを形成することを意味する。
【0082】
代替として、本発明による方法で使用されるアゾールシランオリゴマーにおいて、少なくともケイ素-酸素-ケイ素骨格を形成しないすべての部分(すなわち、アゾール部分及びアゾール部分をシリコン原子に結合しているエーテル部分)は、それらの化学式が同一であるのが好ましい。このような場合、mは好ましくは独立して定義されない。
【0083】
本発明の方法の工程(ii)で使用されるアゾールシラン化合物及びアゾールシランオリゴマーは、混合物として存在することができる。典型的には、有機溶媒は混合物の溶解性を促進する。したがって、本発明による方法の工程(ii)において、
(a)- 1つ又は1つより多くのアゾールシラン化合物(本明細書全体で記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)、
及び/又は(好ましくは及び)
- 1つ又は1つより多くのアゾールシランオリゴマー(本明細書全体で記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)、
と
(b)- 1つ又は1つより多くの有機溶媒及び/又は水とを含む、好ましくはそれからなる混合物も使用できる。
【0084】
好ましくは、混合物は、ハロゲン化物イオンを実質的に含まない、好ましくは含まない。
【0085】
本発明の文脈において、発明主題(例えば、化合物、材料等)を「実質的に含まない」という用語は、前記発明主題が全く存在しない又は本発明の意図された目的に影響を与えることなく、ごくわずかで妨げにならない量(程度)でのみ存在することを意味する。例えば、そのような発明主題は、例えば、不可避的な不純物として、意図せずに添加又は利用される可能性がある。「実質的に含まない」は、好ましくは、混合物の総質量(前記混合物について定義されている場合)に基づいて、0(ゼロ)ppm~50ppmを示し、好ましくは0ppm~25ppm、より好ましくは0ppm~10ppm、更により好ましくは0ppm~5ppm、最も好ましくは0ppm~1ppmを示す。ゼロppmは、それぞれの発明主題が全く含まれていないことを示し、最も好ましい。
【0086】
すべてのアゾールシラン化合物(本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)及びすべてのアゾールシランオリゴマー(本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)が、それぞれ、前記溶液中のすべてのアゾールシラン化合物及びオリゴマーの総質量の少なくとも70質量%を表し、好ましくは、少なくとも80質量%を表し、より好ましくは少なくとも90質量%を表し、更により好ましくは少なくとも93質量%を表し、最も好ましくは少なくとも95質量%を表し、更に最も好ましくは少なくとも98質量%を表す、本発明の工程(ii)で使用される(本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)溶液又は混合物が好ましい。本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されているものを除いて、他のアゾールシラン化合物又はオリゴマーが存在しないことが最も好ましい。これはまた、アゾールシラン化合物及びアゾールシランオリゴマーが一緒になった絶対総量(まさに上記に定義されている)が、他のアゾールシラン化合物及びアゾールシランオリゴマーが溶液中に存在しないという条件で、非常に好ましく適用されることを意味する。したがって、混合物は、他のアゾールシラン化合物及びアゾールシランオリゴマーを実質的に含まない、好ましくは含まない。
【0087】
更に、すべてのアゾールシラン化合物(本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)及びすべてのアゾールシランオリゴマー(本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)が、それぞれ、前記混合物又は溶液中に少なくとも1つのシリコン原子を含むすべての化合物の少なくとも51モル%を表し、好ましくは少なくとも60モル%を表し、より好ましくは少なくとも70モル%を表し、最も好ましくは少なくとも80モル%を表し、更に最も好ましくは少なくとも90モル%を表す、混合物又は溶液(本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)が好ましい。
【0088】
1つ又は1つより多くの有機溶媒が、アセトン、1,3-ジオキソラン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、プロプ-2-エン-1-オール、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N、N-ジメチルホルムアミド、2-ブトキシエタノール、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、N-メチル-2-ピロリドン、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、ガンマ-ブチロラクトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イプシロン-カプロラクトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロチオフェン-1-オキシド、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレンカーボネート、スルホラン、グリセロール及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む、混合物が好ましい。
【0089】
1つ又は1つより多くの有機溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む、混合物が非常に好ましい。
【0090】
いくつかの場合において、1つ又は1つより多くの有機溶媒が、グリコールエーテルからなる群から選択される溶媒、好ましくはジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む、混合物が非常に好ましい。
【0091】
上記の式(I)のアゾールシラン化合物は、
(a)式(III)のアゾール化合物を提供する工程と
【0092】
【0093】
[式中、XはH、CH3、NH2、NH(NH2)、SH、SCH3又はOCH3を示し、
YはNH、N(NH2)又はSを示す]、
(b)式(IV)のシラン化合物を提供する工程と
【0094】
【0095】
[式(IV)において、
Rは(CH2-CH2-O)m-Zを示し、独立して
mは0、1、2、3又は4であり、
ZはC1~C5のアルキルを示し、
nは、1~12の範囲の整数である]、
(c)上記で定義された式(I)の化合物が生じるように、溶媒中で前記アゾール化合物を前記シラン化合物と反応させる工程と、
(d)任意選択で、工程(c)で得られた式(I)の化合物を、Rの少なくとも1つが(CH2-CH2-O)m-Zであり、m=ゼロ及びZ=Hであるように加水分解する工程とを含む方法によって合成することができる。
【0096】
工程(d)は任意であり、本発明の方法の工程(d)で得られた化合物を加水分解するために少なくともいくらかの水の存在を含む。好ましくは、そのような水は、工程(c)の後に、更なる工程、例えば工程(d)において添加される。このような化合物が望ましい場合(m=ゼロ及びZ=H)、工程(d)は任意ではない。
【0097】
工程(c)の溶媒は、1つ又は1つより多くの有機溶媒であり、本発明の方法の工程(c)の後に、本発明による混合物が得られる(混合物については、上記を参照されたい)。混合物に関する前述のことは、本発明の合成方法にも同様に適用される。
【0098】
式(III)の化合物の式(IV)の化合物に対する総モル比が、1:0.85~1:1.3の範囲、好ましくは1:0.90~1:1.25の範囲、より好ましくは1:0.95~1:1.2の範囲、最も好ましくは1:1.0~1:1.15の範囲である合成経路が有益である。総モル比が1:1.3よりも著しく高い場合、合成生成物は十分に安定ではない。総モル比が1:0.85よりも著しく低い場合、合成生成物中に未反応の抽出物があまりに多く存在するが、望ましい化学種がアゾール及びシラン部分を含むアゾールシラン化合物であるため、これは望ましくない。
【0099】
工程(c)において、温度が50℃~90℃の範囲、好ましくは60℃~85℃の範囲にある合成経路が有益である。
【0100】
工程(a)において、式(III)のアゾール化合物が懸濁液として提供される合成経路が有益である。これは、アゾール化合物及び少なくとも1つの溶媒が前記懸濁液を形成するように、式(III)の前記アゾール化合物を前記少なくとも1つの溶媒に懸濁することが好ましいことを意味する。そのために、少なくとも1つの溶媒は、1つ又は1つより多くの有機溶媒であることが好ましく、好ましくは、1つ又は1つより多くの水混和性有機溶媒である。非常に好ましくは、前記懸濁液を形成するために利用される少なくとも1つの溶媒は、工程(c)で利用される溶媒と同一である。最も好ましくは、式(III)のアゾール化合物は、C1~C4アルコール、グリコールエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、
- C1~C3アルコール、
- HO-(CH2-CH2-O)m-Z[式中、
mは1、2、3又は4であり、好ましくは1又は2であり、
ZはC1~C5アルキルを示し、好ましくはC3~C5アルキルを示す]、
及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは
メタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは
ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される、1つ又は1つより多くの溶媒に懸濁される。
【0101】
工程(c)において、反応が1時間~48時間、好ましくは3時間~24時間、より好ましくは5時間~20時間実行される合成経路が有益である。
【0102】
本発明はまた、金属、金属合金又は金属酸化物の表面と有機材料の表面との間の接着強度を増加させる方法における、アゾールシラン化合物(本明細書全体に記載され、好ましくは好ましいと記載されている)及び/又はアゾールシランオリゴマー(本明細書全体に記載されている、好ましくは好ましいと記載されている)の特定の使用に関する。
【0103】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって更に説明される。
【実施例】
【0104】
A)アゾールシラン化合物の合成
1)式(Ia)のアゾールシラン化合物の合成
【0105】
【0106】
第1の工程において、3.68g(27.1mmol)の5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール(式(III)のアゾール化合物であって、XはNH2を示し、YはSを示す)を70mlのメタノールで懸濁し、アゾール懸濁液が得られた。
【0107】
第2の工程において、6.59g(27.1mmol)の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(式(IV)のシラン化合物であって、RはCH3を示し、nは3である)を20mlのメタノールに溶解することによって作製された溶液をアゾール懸濁液に加えた。結果として、反応懸濁液が得られた。
【0108】
第3の工程において、反応懸濁液を18時間加熱還流(温度約65℃)した。その間、懸濁液は透明な溶液に変わり、アゾール化合物が完全に使い果たされたことを示した。その後、溶媒(メタノール)を除去し、約10g(収率100%)の黄色の高粘度物質が生成物として得られたが、主に式(Ia)のアゾールシラン化合物であった。このようにして得られた生成物は、ハロゲン化物を含まず、更なる精製をせずに利用された。
【0109】
1H NMR: (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.24 (s, 2H), 5.22 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 3.81 (dq, J = 7.1, 5.2 Hz, 1H), 3.51 - 3.43 (m, 8H), 3.41 - 3.30 (m, 5H), 3.30 - 3.13 (m, 2H), 3.05 (dd, J = 13.1, 7.1 Hz, 1H), 1.59 - 1.44 (m, 2H), 0.68 - 0.51 (m, 2H)
ESI-MS: m/z: 369.08 (100.0%), 370.09 (11.9%), 371.08 (9.0%)
【0110】
NMRとESI-MSの両方によって、式(Ia)のアゾールシラン化合物の存在が確認される。理論上のモル質量は369g/molである。
【0111】
2)式(Ib)のアゾールシラン化合物の合成
【0112】
【0113】
第1の工程において、3.36g(28.4mmol)の5-アミノ-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール(式(III)のアゾール化合物であって、XはNH2を示し、YはNHを示す)を70mlのメタノールで懸濁し、アゾール懸濁液が得られた。
【0114】
第2の工程において、6.91g(28.4mmol)の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(式(IV)のシラン化合物であって、RはCH3を示し、nは3である)を20mlのメタノールに溶解することによって作製された溶液をアゾール懸濁液に加えた。結果として、反応懸濁液が得られた。
【0115】
第3の工程において、反応懸濁液を18時間加熱還流(温度約65℃)した。その間、懸濁液は透明な溶液に変わり、アゾール化合物が完全に使い果たされたことを示した。その後、溶媒(メタノール)を除去し、約10g(収率100%)の黄色の高粘度物質が生成物として得られたが、主に式(Ib)のアゾールシラン化合物であった。このようにして得られた生成物は、ハロゲン化物を含まず、更なる精製をせずに利用された。
【0116】
1H NMR: (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.03 (s, 2H), 5.33 - 5.08 (m, 1H), 3.87 - 3.75 (m, 1H), 3.54 - 3.25 (m, 13H), 3.22 - 3.08 (m, 1H), 2.97 (dd, J = 13.3, 7.0 Hz, 1H), 1.55 (dddd, J = 12.7, 11.1, 6.6, 3.5 Hz, 2H), 0.67 - 0.50 (m, 2H)
ESI-MS: m/z: 352.12 (100.0%), 353.13 (11.9%)
【0117】
NMRとESI-MSの両方によって、式(Ib)のアゾールシラン化合物の存在が確認される。理論上のモル質量は352g/molである。
【0118】
上記の式(Ib)のアゾールシラン化合物の合成は、式(III)のアゾール化合物と式(IV)のシラン化合物との間のモル比を1:1.1及び1:0.9等、様々なモル比で更に実行した。
【0119】
3)DEGBEにおける式(Ib)のアゾールシラン化合物の合成
第1の工程において、3.36g(28.4mmol)の5-アミノ-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール(式(III)のアゾール化合物であって、XはNH2を示し、YはNHを示す)を35mlのジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE)で懸濁し、アゾール懸濁液が得られた。
【0120】
第2の工程において、6.91g(28.4mmol)の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(式(IV)のシラン化合物であって、RはCH3を示し、nは3である)を10mlのDEGBEに溶解することによって作製された溶液をアゾール懸濁液に加えた。結果として、反応懸濁液が得られた。
【0121】
第3の工程において、反応懸濁液を80℃に15時間加熱した。その間、懸濁液は透明な溶液に変わり、アゾール化合物が完全に使い果たされたことを示した。その後、DEGBE中約18質量%の濃度の反応生成物が得られた。このようにして得られた生成物は、ハロゲン化物を完全に含まず、更なる精製をせずに利用された。更に、例えば上記の実施例1及び実施例2に記載したように、溶媒の変更又は除去は必要なかった。
【0122】
ESI-MSによって、シリコン原子に結合した3つのメトキシ基を含む化合物の形成が確認される。更に、それぞれのメトキシ基の代わりに1つ、2つ又は3つのDEGBE部分を含む化合物も同定されている。
【0123】
4)DEGBEにおける式(x)のアゾールシラン化合物の合成
【0124】
【0125】
式(Ib)のアゾールシラン化合物を合成するための実施例3に記載の合成手順を実施したが、5-アミノ-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオールの代わりに、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールを使用した。
【0126】
5)式(y)のアゾールシラン化合物の合成
【0127】
【0128】
1.88g(16.2mmol)の5-アミノ-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオールを30mlのDMFに加えた。次いで、3.5g(16.2mmol)(3-イソシアナトプロピル)トリメトキシシランの10mlDMF溶液を滴下して加えた。添加後、反応混合物を60℃に6時間加熱した。次いで、溶媒を真空により除去した。結果として、黄色がかった粘性の油として5.4gの生成物が得られ、これを続いて21.6gのDEGBEに溶解して、20質量%の溶液を得た。
【0129】
B)試料調製
試料1~8(それぞれがいくつかの同一の試験片を含む)を、以下のように調製した(要約については以下の表1を更に参照されたい)。
【0130】
工程(i):少なくとも1つの面に銅表面を有する基板を提供する工程
銅表面(150mm×75mm×35μm、中国長春より供給)を有する銅箔を使用した。単純化された実験室条件下では、基板のない銅箔が実施例に使用される。
【0131】
工程(i-a):エッチング洗浄溶液で銅表面を洗浄する工程
第1の工程において、試料1~8のすべての銅箔の銅表面を、180ml/LのSoftClean UC168、200ml/LのCupraEtch Starter、75ml/LのHydrox(すべてAtotech社の製品)及び545ml/LのDI水を含む硫酸/H2O2溶液を使用して、30℃で30秒間洗浄し、エッチング洗浄された銅表面を得た。エッチング洗浄により、重い酸化物並びに保護層及び/又は変色防止剤及び/又は界面活性剤等の他の化合物を除去した。エッチング洗浄後、エッチング洗浄された銅表面を約30秒間水ですすいだ。結果として、エッチング洗浄され、すすがれた銅表面が得られた。
【0132】
市販の銅箔は銅表面に保護層を有するため、この工程は、保護層を除去するために実験室の条件下で実施する必要がある。
【0133】
工程(i-c):銅表面をアルカリ水性溶液で処理する工程
第2の工程において、試料1~4、6、7及び8のすべての基板の銅表面を、100mL/LのBondFilm(登録商標)Cleaner ALKの水性溶液で処理した(アルカリ水性溶液、50℃、30秒)。処理後、すべての銅箔の処理された銅表面を冷水で約30秒間すすいだ。試料5の銅箔の銅表面は、この工程では処理しなかった。
【0134】
工程(ii):銅表面を式(I)のアゾールシラン化合物及びアゾールシランオリゴマーと接触させる工程
試料2~8のすべての基板の銅表面を、約1質量%のアゾールシラン化合物と溶媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE)とDI水とを含む、新たに作製した塗布液に25℃で60秒間浸漬した。塗布液のpHは7であった(硫酸で調整)。3つの異なる塗布液が調製されており、それぞれが異なるアゾールシラン化合物を含んでおり、
試料2、5及び6の場合:実施例3で合成した式(Ib)のアゾールシラン化合物
試料3の場合:実施例4で合成した式(x)のアゾールシラン化合物
試料4及び7の場合:米国特許出願公開第2016/0368935(A1)号の実施例1~4に記載されている3-アミノ-5-[6-(トリメトキシシリル)ヘキシルチオ]-1,2,4-トリアゾール
試料8の場合:特開2014240522の式(Ia-7)に開示されている式(y)の化合物を使用した。
【0135】
その後、得られたすべての銅箔の銅表面を冷水で約30秒間すすぎ、乾燥させた。結果として、試料2~8のすべての銅箔のシラン化及び乾燥された銅表面が得られた。
【0136】
工程(ii-a):アニーリング工程
次いで、シラン化された銅表面を含む試料1~8の銅箔を、130℃で30分間アニーリングして、残留している水分を表面から除去した。続いて、銅表面を含むこれらの基板に、ビルドアップフィルムを積層した(下記を参照)。
【0137】
工程(iii):基板の銅表面に有機材料を塗布する工程
積層工程において、真空ラミネータを使用することによって、20~25℃の範囲の室温及び相対湿度50~60%で、クリーンルーム内で全試料の銅箔に絶縁膜(試料1~5及び8の味の素ビルドアップフィルムGXT31又は試料6、7の味の素ビルドアップフィルムGZ41)を真空積層した。
【0138】
真空積層の条件は次のとおりである:100℃、真空:3hPaで30秒、圧力:0.5MPaで30秒。
【0139】
積層後、積層銅表面が得られた。
【0140】
【0141】
剥離強度試験による接着性評価
積層後に得られた各試料(1~8)について、剥離強度を求めた。
(1)初期、
(2)96時間のHAST後(HAST条件:130℃、85%rh、HASTチャンバ:EHS-221M)。
【0142】
剥離強度を求めるために、各試験片から、剛性板が絶縁膜に面するように、それぞれの銅箔を剛性板(銅箔と同一のサイズ)に接着することにより、いくつかの帯形の切片を調製した。結果として、構造的に強化された絶縁膜を備えた銅表面が得られた。
【0143】
次いで、得られた構造的に強化された絶縁膜を備えた銅表面を、190℃のオーブンで90分間硬化させた。
【0144】
その後、構造的に強化された絶縁膜を備えた各銅表面を、前記帯形の切片(10×100mm、Bugard穿孔/ルーティング(drilling/routing))に薄切りした。
【0145】
帯形の切片を剥離力測定機(Roell Zwick Z010)にかけ、銅表面をそれぞれの構造的に強化された絶縁膜から剥離するために必要な剥離強度(角度:90°、速度:50mm/分)を個別に評価した。典型的には、層間剥離を回避するために必要な剥離強度が高いほど、接着性は良くなる。
【0146】
試料2~8の剥離強度を下記表2に示す。
【0147】
【0148】
比較試料4、7及び8の初期剥離強度は、本発明による試料2及び6の初期剥離強度よりも高いが、比較例の剥離強度は、試料2及び6の剥離強度がほぼ一定のままであるのに対して、HAST後に急激に低下する。
【0149】
試料1の剥離強度値は、例2の剥離強度値よりも低下している。
【0150】
試料3の剥離強度値は、例2及び6の剥離強度値よりも低下している。
【0151】
試料8は比較的許容できる初期剥離強度を示したが、HAST後の許容しがたい低下が観察された。更に、式(y)のアゾールシラン化合物は、概して著しく不安定であるように見受けられる。合成後、特にアゾールシラン化合物を強アルカリ性pH条件下(例えばpH12)で保存した場合、著しい析出が生じた。シラン官能基の早期重合を最小限にするために、保存目的で、典型的には、pH12が式(I)のアゾールシラン化合物に適用される。しかしながら、そのような強アルカリ性条件下では、式(I)のアゾールシラン化合物には存在しない式(y)のアゾールシラン化合物のアミド官能基が著しく分解されることが見受けられる。更に、pH7(典型的には、安定したシランコーティング層を保証する)で、アゾールシラン化合物の約1質量%の作用濃度を有する塗布液で利用された場合でさえ、著しい析出が再び観察された。したがって、式(y)のアゾールシラン化合物は、市販の製品/用途での長期の利用には不適切であるように見受けられる。