(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ファイバ結合ダイオードレーザモジュールおよびその組立の方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02251 20210101AFI20240806BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240806BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01S5/02251
G02B6/42
G02B6/32
(21)【出願番号】P 2021557356
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2020024809
(87)【国際公開番号】W WO2020198406
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-11
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ワディム・チュヤノフ
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー・ミフタクトディノフ
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/142657(WO,A1)
【文献】特開2015-015433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0003484(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0226405(US,A1)
【文献】国際公開第2014/192944(WO,A1)
【文献】特開2016-164671(JP,A)
【文献】特開2003-266762(JP,A)
【文献】特開2015-135447(JP,A)
【文献】特開2008-268755(JP,A)
【文献】特開2018-082047(JP,A)
【文献】特開2016-071040(JP,A)
【文献】特開2007-240648(JP,A)
【文献】特開2015-148810(JP,A)
【文献】特開2018-155791(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180807(WO,A1)
【文献】国際公開第2002/082163(WO,A1)
【文献】特開2005-150270(JP,A)
【文献】特開平02-101405(JP,A)
【文献】特開2016-020935(JP,A)
【文献】特開2019-206031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピグテール付きダイオードレーザモジュールであって、
出力ファイバのコア端を受け入れる場所を有しているケースであって、
経路に沿ってそれぞれ平行ビームを出力する離間されたマルチモード(MM)チップ、
前記平行ビームをそれぞれの遅軸において視準するように構成される光学システムであって、
視準された前記平行ビームは、前記経路に沿って発散する複合ビームを定める、光学システム、および、
前記場所よりも上流に離間されているそれ自体の焦点面において前記複合ビームの焦点を合わせる少なくとも1つの焦点レンズ
、
を収容するケース
を備え、
前記出力ファイバのコア端は、前記焦点面から下流に
おいて前記場所に結合され、前記コア端へ結合された前記複合ビームは、前記焦点面における前記複合ビームの断面より小さい断面を有する
、ピグテール付きダイオードレーザモジュール。
【請求項2】
前記光学システムは、前記MMチップと1つの焦点レンズとの間に各々が位置付けられ、前記MMチップと前記1つの焦点レンズとに各々が光学的に結合され、
前記平行ビームを前記遅軸において視準するように各々が構成される、複数の遅軸コリメータ(SAC)を含む、請求項1に記載のピグテール付きダイオードレーザモジュール。
【請求項3】
それぞれのチップとSACとの間に結合される複数の速軸コリメータをさらに備え、前記MMチップは、少なくとも1つの列で配置され、第1の方向においてそれぞれの
前記平行ビームを発する、請求項2に記載のピグテール付きダイオードレーザモジュール。
【請求項4】
前記光学システムは、前記SACと1つの焦点レンズとの間に各々が位置付けられ、前記視準された
平行ビームを、前記第1の方向を横断する第2の方向に偏向させる、複数の角度調節可能な鏡をさらに備え、前記焦点レンズは、速軸と遅軸との両方において前記複合ビームの焦点を合わせるように構成される、請求項3に記載のピグテール付きダイオードレーザモジュール。
【請求項5】
前記1つの焦点レンズから上流に離間され、
前記複合ビームの速軸において前記複合ビームの焦点を合わせるように構成される、少なくとも1つの
第2焦点レンズをさらに備える、請求項3に記載のピグテール付きダイオードレーザモジュール。
【請求項6】
前記コア端は、前記1つの焦点レンズからそれぞれの第1のMMチップおよび最後のMMチップによって発せられる
平行ビームのそれぞれの最小の断面の距離と最大の断面の距離との間の差に対応する距離で、前記1つの焦点レンズの前記焦点面から下流に離間され、前記第1のMMチップは、
前記焦点レンズに最も近く、前記最後のMMチップは、
前記焦点レンズから最も遠い、請求項1に記載のピグテール付きダイオードレーザモジュール。
【請求項7】
前記コア端は、前記1つの焦点レンズと、前記1つの焦点レンズから下流に位置付けられる
平行ビームのそれぞれの最小の断面との間の距離の平均値に対応する距離で、前記1つの焦点レンズの前記焦点面から下流に離間され、前記MMチップは、互いと異なるそれぞれの距離において前記1つの焦点レンズから離間される、請求項1に記載のピグテール付きダイオードレーザモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファイバ結合(ピグテール付き)マルチエミッタマルチモード(MEMM)ダイオードレーザモジュールに関する。特に、開示されているものは、レンズの焦点距離を越える距離でファイバのコアから離間されている少なくとも1つのレンズを用いて構成されたピグテール付きMEMMダイオードレーザモジュールを含む、改善された光結合構成である。本開示は、開示されているモジュールを組み立てる方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
高い効率、高いパワーレベル、高いスペクトル、および指向性輝度は、材料加工、オフセット印刷、医療処置、固体レーザの励起など、多くの領域において使用されるピグテール付きダイオードレーザモジュールの魅力的な特性である。これらの特性のすべてを改善することは、あらゆる用途にとって実用上重要である。これは、レーザダイオードで励起されるファイバレーザにとって特に重要である。ファイバレーザパワーは絶え間なく増加しているが、高パワーファイバレーザは、ポンプ光の結合損失に起因して、少なくとも部分的に、依然として期待以下の性能である。開示されている結合構成は、損失を約2~3%まで低下させる。このような低下は、ごくわずかなパーセントの損失であっても大きな成功と見なされることを考えれば、意義深いことである。
【0003】
典型的な先行技術の高パワーマルチエミッタマルチモードファイバ結合ダイオードレーザモジュール10が、
図1および
図2に示されており、例えば、参照により本明細書に完全に組み込まれている、Ovtchinnikovらの米国特許第7,764,723号(「'723特許」)に開示されている。最も基本的なレベルにおいて、ダイオードレーザエミッタまたはチップ12がそれぞれの搭載部33によって支持されており、非点収差ビーム14を光路に沿って出力する。
図1において、配列における各々の個々のチップ12は互いに積み重ねられている。すべての光ビーム14が単一の非点収差複合ビーム24へと複合されるように、様々な光学部16、18、20、および22が各々のエミッタのビーム14を視準および成形する。複合ビーム24は、対物レンズ22の焦点面F-Fに位置付けられた受入コア端を有するファイバ30に向けて案内され、コア端において焦点が合わせられる。
【0004】
各々の広域MMチップ12は、第1の方向において非円形ビーム14を発する。ダイオードレーザの薄いスラブ形状のため、Z軸に沿って伝搬するそれらの放射は、光パワー密度の高度に非対称の横分布と、X軸およびY軸に沿った発散とを有する。各々のビーム14は、その遅軸において広く、その速軸において狭くなる。したがって、示されている略図は、概して、速軸と遅軸との両方においてビーム14を平行にさせる速軸コリメータ(FAC: Fast-Axis Collimator)16と遅軸コリメータ(SAC: Slow-Axis Collimator)18とを有する。複数のビーム14はさらに、鏡20のセットによって複合ビーム24へと複合され、複合ビーム24では、複数のビーム14は、鉛直平面において互いと平行な第2の方向に伝搬する。
【0005】
結果として、両方の軸で視準された複合ビーム24は、対物レンズ(OL: Objective Lens)22の焦点面F-Fに位置付けられたファイバ30のコア端31にビームスポット36が結合されるように、対物レンズ22の領域に入射し、その領域を満たす。'723特許は、できるだけ大きなビームスポット36を使用することを教示している。結果として、近接場におけるビームの発散ができるだけ最小限となり、出力ファイバ30を照らすビームの輝度が比較的良好である。
【0006】
しかしながら、上記のことは、点状の光源にのみ当てはまる。チップ12は、それぞれの光線を発する複数の点を有する。したがって、点状の源と対照的に、チップはどちらかと言えば細長くされ、さらに、拡張光源または拡張チップと称される。拡張光源からのビーム24は、少なくとも遅軸において理想的には視準されない。結果として、このような非平行のビームが、対物レンズ22によって焦点面F-Fにおける遅軸において焦点が合わせられるとき、以下で説明されるように、そのビームスポットは、ファイバのコア端への損失のないまたはほぼ損失のない結合のために過度に大きくなる可能性がある。
【0007】
図3は、個々の拡張光源12についての光線図を示している。チップ12は、6mm未満など、比較的短い焦点距離を有するSAC18の焦点面FP18に位置付けられる。光が点光源から発せられた場合、光はSAC18によって遅軸(SA)において視準され、点線で示された理想的な平行ビーム14として、OL22への距離にわたって伝搬する。結果として、点光源は、OL22の焦点面F-Fにおけるシャープな画像と、焦点面F-Fに形成される最小のビームスポットまたはビームウエスト25との両方を有することになる。焦点面は
【0008】
【0009】
として決定され、ここで、f2およびf1は、レンズ22および18のそれぞれの焦点距離であり、Δは拡張源の大きさである。しかしながら、ダイオードレーザ12は、単一のビーム14を
【0010】
【0011】
の角度において発散させる複数の発光点の配列を有し、ここで、
【0012】
【0013】
であり、OL22のリアフォーカスからおおよそ始まる。レンズ18と22との間の距離が増加するにつれて、ビームは、実線で示されているように、遅軸において漸進的に拡張し、最終的に対物レンズ22に衝突する。結果として、焦点面FP22におけるビームのウエスト25'は、理想的に視準されたビームの最小のビームスポット25より相当に大きい。同じ論理は、遅軸において発散し、
図1および
図2のモジュール10のそれぞれのチップ12によって発せられる複数のビーム14を含む複合ビーム24に適用されるべきである。当然ながら、ビーム24が感知できるほど発散するために、SAC18とOL22との間の距離は相当のものであるべきである。
【0014】
図3と併せて検討されている
図4および
図5は、それぞれ第1の距離および第2の距離でSAC18から変位させられた遅軸(SA)OL22を示しており、第1の距離(
図4)は第2の距離(
図5)より短くなっている。
図3におけるような
図4では、拡張ダイオードレーザ12のそれぞれの3つの発光スポットからの光線R1~R3(または、空間モード)は、SAOL22とSACとの間の距離が小さいため、SAOL22に衝突するときに互いと実質的に平行である。OL22は、それぞれのウエスト(断面)が最小である焦点面F-Fに入射ビームの焦点を合わせる。結果として、複合されて焦点が合わせられたビームのウエストは、あったとしても、実質的な損失なしで、焦点が合わせられたビームがコア端へと結合されるようになっている。したがって、拡張光源の画像は焦点面F-Fにおいて最もシャープであり、複合ビームのウエストは同じ面において最小となっている。
【0015】
対照的に、
図5は、SACとSAOL22との間の距離が、赤、青、および緑の同じ3つの光線または空間モードが相当に発散してSAOL22の大きな領域に衝突するのに十分に長い構成を示している。拡張源の画像は焦点面F-Fにおいて依然として最もシャープであるが、空間モードは焦点面F-Fを越えて集束し続けている。結果として、複合ビームの最小の断面が、焦点面F-Fを越えた距離Dにおいて形成される。コア端が焦点面F-Fにある状態で出力ファイバを備え付けることは、コア直径が焦点面において
図5の焦点が合わせられたビームの断面より小さいため、光の損失をもたらす。光パワー損失は、スループットの不足、モジュール構成部品の過熱、および出力ファイバの損傷をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第7,764,723号
【文献】米国特許第8,711,894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そのため、ピグテール付きMEMMダイオードレーザモジュールの改善された構成に対する必要性が存在する。
【0018】
開示されているMEMMダイオードレーザモジュールを製造する方法に対するさらなる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
開示されているMEMMピグテール付きダイオードレーザモジュールと、その製造の方法とは、出力ファイバの受入端が、遅軸対物レンズ(SAOL: Slow Axis Objective Lens)の焦点距離を越える距離で、つまりレンズの焦点面を越えてレンズから離間されるように、SAOLを備え付けることで、知られている先行技術と異なっている。この一見したところでは直観に反した構成は、本開示が、焦点面において最も高い画像品質に関心がないが、集光、つまりは輝度には関心があることを考えれば、完全に論理的である。開示されている構成では、ダイオードレーザなどの複数の拡張光源が、複合ビームが相当に発散するのに十分にSAOLからある距離に離間されているそれぞれのSACの焦点面に位置付けられている。SAOLの焦点面における焦点が合わせられたビームの断面より小さいファイバのコアによる焦点が合わせられたビームのクリッピングを防止するために、ファイバは焦点面を越えて位置付けられる。SAOLとファイバコアとの間の距離は、焦点が合わせられたビームの断面がコアへの光の実質的に損失のない結合を提供するのに十分な小ささとなるように、増加させられる。
【0020】
本開示の一態様によれば、ダイオードレーザモジュールは、第1の方向においてそれぞれの平行ビームを発するMMダイオードレーザの少なくとも1つの列を収容するケースで構成される。各々のビームは、SACが第1の方向においてそれぞれのFACから下流に離間されている状態で、それぞれのFACとSACとの対によって速軸および遅軸において視準される。開示されているモジュールは、複合ビームを構成するそれぞれの視準されたビームを第2の方向に案内する複数のビーム反射体または鏡をさらに備え、第1の方向と第2の方向とは互いに横断する。少なくとも1つのSAOLが、最後の下流の反射体から下流に位置付けられ、複合ビームの焦点を、少なくともその焦点面における遅軸において合わせるように動作する。モジュールは、上流端が第2の方向においてSAOLと位置合わせされるファイバをさらに有する。ファイバの上流端は、複合ビームが最小の断面を有する平面に備え付けられる。この平面は焦点面を越えて位置付けられる。
【0021】
SAOLからのそれぞれの光源の異なる距離に起因して、複合ビームにおけるそれぞれのビーム成分の最小の断面は、焦点面を越えて異なる距離に位置付けられる。SAOLに最も近いダイオードレーザは、焦点面を越えて最小の距離に最小の断面を有するビーム成分を出力する。上流方向においてSAOLから最も遠いダイオードレーザによって発せられるビーム成分の最小の断面は、最も近いダイオードレーザの距離より大きい距離における焦点面から下流に離間される。
【0022】
したがって、開示されている方法は、SAOLから下流の最も近いダイオードレーザおよび最も遠いダイオードレーザのそれぞれのビームの最小の断面を決定し、次にそれらの間の距離を決定するステップをさらに含む。最後に、開示されている方法は、コア端への複合ビームの実質的に損失のない結合を提供するために、SAOLをその元の場所から決定された距離で上流に変位させるステップを含む。
【0023】
上記および他の態様および特徴は、以下の図面からより容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】知られている従来技術のピグテール付きMEMMダイオードレーザモジュールを示す図である。
【
図2】知られている従来技術のピグテール付きMEMMダイオードレーザモジュールを示す図である。
【
図3】個々の拡張光源と関連付けられる光線図である。
【
図4】SACとSAOLとの間の第1の距離における個々の拡張ダイオードレーザの動作を示す光線図である。
【
図5】SACとSAOLとの間の第1の距離より大きい第2の距離における個々の拡張ダイオードレーザの動作を示す光線図である。
【
図6】開示されているピグテール付きMEMMダイオードレーザモジュールの光学的な概略図である。
【
図7】開示されているピグテール付きMEMMダイオードレーザモジュールの光学的な概略図である。
【
図8】チップが
図6および
図7におけるSAOLから離間されている距離に応じたそれぞれのビームの最小断面の所望の場所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図では、様々な図に示されている各々の同一またはほぼ同一の構成部品は、同様の符号によって表されている。明確性の目的のために、必ずしもすべての構成部品がすべての図において符号付けされていない可能性がある。
【0026】
図6および
図7を参照すると、レーザモジュール50は、第1の方向においてそれぞれの平行ビーム14を出力する複数の離間されたダイオードレーザまたはチップ12(12
1、…、12
n)を備える。チップ12は、FAC16、SAC18、および鏡20を含むビーム成形光学部と各々関連付けられている。各々のチップ12は、第1の方向において、指定されたFAC16、SAC18、および鏡20と並べられており、これら構成部品が一緒になってグループ32(
図7)を構築している。ビーム14はそれぞれ、最初にFAC16によって速軸において視準され、次にSAC18によって遅軸において視準される。速軸において、ビーム14はSMであるが、遅軸において、このビームは複数の空間モード(MM)を含む。
【0027】
ビーム14は、それぞれの鏡20によって、第1の方向を横断する第2の方向にさらに再び方向付けられ、複合ビーム24を形成する。グループ32は、熱消散材料から作られる底部15を有するケース34において包囲され、同じく熱消散材料から作られる搭載部33に各々結合されるそれぞれのチップ12を有する。グループ32(
図7)は、共通の搭載部33に、または、底部15と接触しているそれぞれ個々の搭載部33(
図2)に、備え付けられ得る。
図6および
図7にそれぞれ示されているモジュール50の構造は、全体において本明細書で参照により組み込まれている米国特許第7,764,723号および米国特許第8,711,894号からよく知られている。
【0028】
明確には、
図6は、列で備え付けられたチップ12
1~12
nを示している。典型的には、モジュール50は、
図7のチップ12の2つの列で構成され、それら2つの列は、1つの列のグループ32が第1の方向において他の列のそれぞれのグループ32と並べられないように、複合ビーム24の反対側にそれぞれ備え付けられる。出力ファイバ30は、フェルール(図示されていない)で備え付けられ、第2の方向において速軸対物レンズ26(FAOL)およびSAOL22と並べられる。
【0029】
複合ビーム24が、遅軸および速軸のそれぞれにおける最小の断面またはウエストが互いから離間される非点収差であることは、留意されるべきである。非点収差は、これらのレンズのそれぞれの焦点面が同じ平面に位置付けられるように、
図6に示されているように、SAOL22から上流にFAOL26を設置することで修正されてもよい。代替として、
図7に示されているように、特に、単一の球形、非球形、円柱形のレンズ36を使用することが可能である。
図6および
図7の概略の各々は、後でいくらかより詳細に説明されているように、複数の対物レンズまたは単一の対物レンズで構成されてもよい。しかしながら、ビーム24は、速軸に沿ってのウエストが非常に深いため(Raleighパラメータが約1mm)、非点収差のままであり得る。したがって、鏡20がファイバのコアに複合ビーム24の焦点を合わせている限り、非点収差は重要ではない場合がある。
【0030】
図6および
図7の両方におけるSAC18およびSAOL22のいずれか同士の間の距離は、より大きな出力パワーへの要求に対処するチップの数の増加と共に増加する。実験は、概して、SAC18が例えば約6mmを越える焦点距離で構成されるとき、ビームが遅軸において相当に発散することを示している。
【0031】
本開示の態様のうちの1つによれば、SAOL22は、焦点距離f2および元の焦点面Fo-Foがすべて点線で各々示されているその元の位置から、焦点距離f2および新たな焦点面Fn-Fnが実線で示されている新たな最適位置へと上流に変位される。元の位置と最適な位置との間の距離Dは、約50~500μmの範囲にあり、
図8を参照して後で検討されている開示されている方法により決定され得る。出力ファイバ30は、その受入端が元の焦点面Fo-Foに位置する元の状態のままである。FAOL26の焦点面は、SAOL22の元の焦点面Fo-Foが上流へ動かされる前に、SAOL22の元の焦点面Fo-Foと一致する。SAOL22がその元の位置から上流へ変位される所望の距離は、遅軸における複合ビームの最小の断面が元の焦点面Fo-Foにも位置するように決定される。別の言い方をすれば、SAOL22と受入コア端とは、後で説明されているように、SAOLの焦点距離と等しい距離、および新たに決定された距離Dで離間される。
図6の概略は、
図9においても見られる。
【0032】
具体的には、
図7を参照すると、ダイオードモジュール50はチップ12の追加の列を有する。前述したように、FAOLおよびSAOLとして同時に機能する1つだけのレンズ36が、図示された構成で利用される。本開示の先に検討された顕著な特徴によれば、レンズ36は、先に説明された理由のため、点線で示され、ファイバ30の受入端を含む元の位置から、決定された距離Dにおける最適な位置まで上流に動かされる。
図7の光学的な概略図は
図10にも示されている。
【0033】
図5~
図7を参照すると、ビーム14
1、…、14
nは、それぞれのチップ12
1、…、12
nによって出力され、SAOL22に衝突する前に異なる光学経路にわたって伝搬する。異なる光学経路のため、複数のビーム14によって衝突されるSAOL22の領域は変化する。最小の面積を伴う領域は、チップ12
1がSAOL22または36に最も近いため、最も短い光学経路にわたって伝搬するビーム14
1によって衝突されるが、最大の面積は、SAOL22から最も離れたチップ12
nから発せられるビーム14
nによって覆われる。結果として、ビーム14
1、…、14
nは、SAOL22の元の位置に対応し、ファイバ30の受入端を含む焦点面F-Fから下流のそれぞれの異なる距離における遅軸において「焦点が合わせられる」。モジュール10の第1のチップおよび最後のチップによって発せられるそれぞれのビーム14
1および14
nの小さいビーム断面同士の間の距離は、SAOL22がその元の位置から上流に動かされる距離Dを決定する。代替として、距離Dは、ビーム14
1、…、14
nのそれぞれの最小の断面のすべての距離の平均として決定されてもよい。
【0034】
図5~
図7を踏まえて検討されている
図8は、本開示の文脈におけるSAOLの場所の調節を説明するのを助ける。半導体技術における当業者であれば容易に理解できるように、大量生産において、MEMMダイオードレーザモジュールなどのサンプルが調整されると、後続のモジュールの各々は、サンプルの調整の間に得られたデータに従って容易に調節される。したがって、SAOLがその元の位置から上流へ動かされる決定された距離Dが一度決定されると、続いてすべての他のモジュールにおいて使用される。
【0035】
したがって、試験されたモジュールにおけるチップ12の各々、または、SAOLに最も近いものと最も離れたものとの2つだけのチップのいずれかを選択的に変えることで、ファイバ30に入射するそれぞれのビームの最小断面を決定することが可能である。
図8において見られるように、
曲線14
1
、14
n
は、
図5~
図7のそれぞれのビーム
14
1
、14
n
に対応している。各々のビームの最小の断面は、関連する曲線の底領域に対応している。したがって、SAOLから上流へ最短距離に位置付けられるチップ12
1からのビーム14
1に対応する
曲線14
1
は、最短距離において焦点面F-Fから下流において最小の断面を有する。離れたチップ12
nから発せられたビーム14
nは、
曲線14
n
に対応し、ビーム14
1の断面より大きい最小の断面を第2の距離において有する。SAOLに対するそれぞれのビーム14
1および14
nの最小の断面同士の間の距離Dは、SAOLがその元の位置から上流へ動かされるすべての後続の調整可能なモジュールについて、所望の一定の距離である。
曲線14
1
、…、14
n
は、FAOL36において複合ビームの焦点が合わせられた後のすべてのビームの挙動を示している。見て分かるように、SMビーム14
1、…、14
nは、出力ファイバ30の受入コア端と同じ平面に位置する速軸においてそれぞれのビームスポットを有する。別の言い方をすれば、速軸のビーム14は各々、SAOL22の焦点面F-Fがその最適な位置へと距離Dで動かされる前に、SAOL22の焦点面F-Fにおいて焦点が合わせられる。
【0036】
図7の単一のレンズ36を伴う構成を参照すると、遅軸におけるレンズ調節だけでなく、速軸におけるレンズ調節においても注意が払われる必要がある。距離Dでの遅軸における元の位置から最適位置へのレンズ36の変位は、レンズ36がその元の位置にあるとき、速軸における最小のビームスポットが元の焦点面F-Fに位置付けられるため、速軸における複合ビームのビームスポットに悪影響を与える。しかしながら、鏡20の角度調節は、レンズ36の動きを効果的に補正することができる。鏡20は、レンズ36がその元の位置に位置付けられるとき、レンズ36に入射するビーム14
1、…、14
nがより大きい角度に開くことでレンズ36の焦点面F-Fにおいて焦点が合わせられ得るように、角度が調節され得る。鏡の角度位置は、距離Dのように、大量生産において後続のダイオードレーザモジュールを調節するために使用できる。
【0037】
当業者は、本発明のモジュールおよび方法の上記のおよびさらに開示された特徴が、任意の可能な状況においてすべて一緒に使用できることを容易に理解する。開示されたモジュールの特定の明確な変更は、本発明の範囲を損なうことなく、レーザ技術における当業者によって容易に推測できる。例えば、開示されているチップは、複合ビームが遅軸において視準され、ファイバへと結合されるまで、それぞれの出力ビームが経路全体に沿って同じ方向に伝搬するように備え付けられ得る。これは、視準およびビーム案内の光学部を、当業者には明らかな構成で配置することで実現され得る。本発明のモジュールはFACSなしで機能することができる。したがって、最も実用的で好ましい実施形態であると考えられているものが示され開示されているが、開示されている構成および方法からの発展が当業者の頭に浮かび、本発明の精神および範囲から逸脱することなく使用され得ることは、明らかである。
【符号の説明】
【0038】
12 ダイオードレーザ、チップ
14 平行ビーム
15 底部
16 速軸コリメータ、FAC
18 遅軸コリメータ、SAC
20 鏡
22 SAOL
24 複合ビーム
26 対物レンズ、FAOL
30 出力ファイバ
32 グループ
33 搭載部
34 ケース
36 レンズ
50 レーザモジュール
D 距離
f1 焦点距離
f2 焦点距離
Fo-Fo 元の焦点面
Fn-Fn 新たな焦点面