IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ショット アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7534338過酷な環境に対応した小型のセンサコンポーネント
<>
  • 特許-過酷な環境に対応した小型のセンサコンポーネント 図1a
  • 特許-過酷な環境に対応した小型のセンサコンポーネント 図1b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】過酷な環境に対応した小型のセンサコンポーネント
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20240806BHJP
   C03C 10/04 20060101ALI20240806BHJP
   C03C 10/06 20060101ALI20240806BHJP
   F02D 35/00 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 15/06 20240101ALI20240806BHJP
【FI】
G01N27/409 100
C03C10/04
C03C10/06
F02D35/00 368C
G01N27/41 325H
G01N27/419 327H
G01N27/416 331
G01N15/06 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021576372
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2020066792
(87)【国際公開番号】W WO2020260099
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】19181876.4
(32)【優先日】2019-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ミクス
(72)【発明者】
【氏名】マーク シュトロンチェク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ハートル
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-226332(JP,A)
【文献】特開2015-063456(JP,A)
【文献】実開平01-156455(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0162436(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
C03C 1/00-14/00
G01N 15/00-15/1492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
700℃を超える適用温度向けのセンサコンポーネントであって、前記センサコンポーネントは
金属製のフィードスルー要素(2)を備え、
前記フィードスルー要素(2)は、前記フィードスルー要素(2)の一方の面から前記フィードスルー要素(2)の他方の面まで延在するスルーホール内壁を有するスルーホールを有し、
前記フィードスルー要素(2)のスルーホール内に、絶縁要素(3)が配置されており、
前記絶縁要素(3)は、前記フィードスルー要素(2)に接合されており、前記フィードスルー要素(2)と前記絶縁要素(3)との間には物理的および/または化学的結合が存在しており
記絶縁要素(3)は、外径Da、体積Vおよび高さHを有し、寸法データは、以下:
Hは、2から20mmの範囲であり、かつ/または
Dは、2から30mmの範囲の前記フィードスルー要素(2)の外径であり、かつ/または
mmでの比V/Dは、0.2から100の範囲であり、かつ/または
比H/Dは、0.15から1.2である
またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、
センサコンポーネント。
【請求項2】
なくとも1つの機能要素(4)は、前記絶縁要素(3)内に配置されており、前記絶縁要素(3)は、前記少なくとも1つの機能要素(4)の直径に相当する内径Diを有し、
Diは、0.2から15mmの範囲であり、かつ/または
Daは、1から25mmの範囲である、
請求項1記載のセンサコンポーネント。
【請求項3】
前記絶縁要素(3)は、前記フィードスルー要素(2)に接合されている、
請求項1または2記載のセンサコンポーネント。
【請求項4】
前記絶縁要素(3)は、ガラスセラミック材料を含む、
請求項1から3までのいずれか1項記載のセンサコンポーネント。
【請求項5】
前記絶縁要素(3)の前記ガラスセラミック材料は、閉じた表面を有する、
請求項4記載のセンサコンポーネント。
【請求項6】
前記絶縁要素(3)は、一体型部品である
請求項1から5までのいずれか1項記載のセンサコンポーネント。
【請求項7】
前記絶縁要素(3)は、前記絶縁要素(3)の表面積を増大させる構造を備えた表面を有する、
請求項1から6までのいずれか1項記載のセンサコンポーネント。
【請求項8】
前記センサコンポーネントは、前記センサコンポーネントを他の要素またはデバイスに取り付けるために適合された外ねじを備えており、前記外ねじは、14mm未満の直径を有する、
請求項1から7までのいずれか1項記載のセンサコンポーネント。
【請求項9】
燃焼機関の排ガスを測定するための、ラムダセンサおよび/またはNOxセンサおよび/または粒子状物質センサおよび/または温度センサおよび/またはスートロードセンサとしての、請求項1から8までのいずれか1項記載のセンサコンポーネントの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温などの過酷な環境下で適用することができ、製造に関して合理的であり、かつセンサの小型設計を可能にするセンサコンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で使用する場合、センサコンポーネントという用語は、センサ自体、または本発明の対象となる完全なセンサの任意の部分を指す。過酷な環境とは、典型的には、高温が発生し、また腐食性および/または分解性の化学物質および/または分子を有する高温ガスのような攻撃的な媒体をも含み得る環境である。このような過酷な環境の一例としては、例えば自動車などの車両の燃焼機関の排気システムが挙げられる。
【0003】
例えば燃焼機関内のプロセスを効率的に制御するために、センサ数の増加および/または新世代の高度なセンサが必要とされている。そのため、センサの製造効率の向上とともに、そのようなセンサの小型化が望まれている。
【0004】
センサコンポーネントの既知の解決策には、複数の部品で構成されるフィードスルー要素が含まれる。通常は、絶縁粉末または焼結セラミック部品があり、それらは金属製のリングまたはスプリングによって位置が保持されている。このような部品は、センサコンポーネント内に一定の空間を必要とし、その結果、このようなセンサコンポーネントの体積が比較的大きくなり、例えば排気システムに適用する場合に必要な空間が大きくなる。
【0005】
独国特許出願公開第102013221692号明細書では、粉末封止材とさらなる封止要素とを備えたセンサ、特に酸素センサが論じられている。
【0006】
独国特許第60114305号明細書翻訳文には、複数の異なる封止材を備えたガスセンサ用封止要素が開示されている。
【0007】
米国特許第9354215号明細書には、多成分ガスセンサを保持する金属-セラミック封止体が開示されている。
【0008】
本明細書で論じるセンサの典型的な適用領域は、排ガス環境またはエンジン近傍に配置されたセンサ、温度、ガス、PM/PN(本明細書で使用する場合、例えば粒子状物質に関して)、NOx、またはスートロードセンサのようなセンサタイプである。それらは、最も有利には、長期的な機械的安定性を提供する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は特に、そのようなセンサ内に組み込まれた、より単純でより小型の設計を可能にするフィードスルーを含む。本発明は、独立請求項に記載のとおりに要約することができる。より具体的な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0010】
したがって、本発明の構想は、中に絶縁要素3が配置されたフィードスルーホール5を有するセンサコンポーネント1を含む。絶縁要素3は、少なくともスルーホール5の内壁6と接合部を形成するガラスセラミック材料を含む。当然のことながら、絶縁要素3または絶縁コンポーネント3内に機能コンポーネントを配置することができ、これらは電気的に絶縁された状態でフィードスルーホール5を通過するように供給される。センサコンポーネントのフィードスルーホール5が位置する領域は、通常、金属材料および/またはセラミック製であり、したがって、ほとんどの場合には導電性である。
【0011】
本発明によるセンサコンポーネント1は、高温用途に用いることができる。そのような用途とは、700℃を超える温度、またはさらには800℃を超える温度、またはさらには900℃を超える温度、特に700℃から1100℃の温度が生じ得る用途である。
【0012】
センサコンポーネント1は、特に、フィードスルー要素2を備えた電気的および/または電気化学的なセンサコンポーネントである。フィードスルー要素2は、フィードスルー要素2の一方の面からフィードスルー要素2の他方の面まで延在するスルーホール内壁6を有するフィードスルーホール5を有する。スルーホール内壁6は、例えば、絶縁要素3の引き抜き力を増大させるために、角度および/または構造を有することができる。
【0013】
絶縁要素3は、フィードスルー要素2のフィードスルーホール5内に配置されている。フィードスルーホール5は直径を有し、絶縁要素3は、有利にはフィードスルーホール5の内壁6に接合されているため、絶縁要素3は、外径a、内径Di、および高さHを有し、これらによってその体積Vを規定することができる。
【0014】
本発明によれば、センサコンポーネントは、議論された従来技術におけるものよりも小型であり、以下:
Hは、2から20mmの範囲であり、かつ/または
Daは、2から30mmの範囲であり、かつ/または
mmでの比V/Dは、0.2から100、好ましくは1から50、最も好ましくは2から20の範囲であり、かつ/または
比H/Dは、0.15から1.2、好ましくは0.2から1.0、最も好ましくは0.4から0.8である
またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される絶縁要素の寸法を可能にする。
【0015】
幾何学的物体の体積Vをその寸法の高さおよび直径から算出する方法は、一般に知られている。
【0016】
フィードスルー要素が絶縁要素の高さを上回る高さを有する場合、Hは、フィードスルーホールの内壁に接触している絶縁要素の高さまたは長さと定義される。
【0017】
総じて、センサコンポーネント1は、絶縁要素3内に配置される機能要素4、例えば温度センサおよび/またはラムダセンサ用の電極を備えている。有利には、機能要素4は、絶縁要素3内の所定の位置に固定され、それによって電気的に絶縁された状態に保持される。当然のことながら、絶縁要素3内に2つ以上の機能要素4を配置することも可能である。さらに、1つ以上の機能要素4は、有利には、少なくともある領域で絶縁要素3に接合されている。
【0018】
前述したように、絶縁要素3は、フィードスルーホール5の直径に相当する外径Daを有する。機能要素4は、絶縁要素3内の空間を占有し、それによって、少なくとも1つの機能要素4の直径、または複数存在する場合には機能要素4の直径の合計に相当する内径Diを有する。この機能要素4は、矩形または円形の断面領域を有することができ、例えばガスセンサに使用されるような絶縁性多層コンポーネントで構成されていてよい。
【0019】
このような実施形態では、寸法範囲は、本発明によれば次のように選択することができる:
Diは、0.2から15mmの範囲であり、かつ/または
Daは、1から25mmの範囲である。
【0020】
本発明のセンサコンポーネント1において、絶縁要素3またはコンポーネント3は、フィードスルー要素2、好ましくはフィードスルーホール5の内壁6の少なくとも一部に接合されている。これは、フィードスルー要素2と絶縁要素3との接合領域の間に結合が存在することを意味し、これは、物理的および/または化学的結合であってよい。これは、熱による製造法によって達成することができ、その際、絶縁要素は、有利には、フィードスルー要素のスルーホールにガラス化され、かつ/または焼結される。
【0021】
フィードスルー要素2が金属製である場合、絶縁要素3の熱膨張性は、フィードスルー要素2の熱膨張性よりも小さくなるように選択することができ、これにより、囲まれた絶縁要素3とともにフィードスルー要素2を冷却する間に、フィードスルー要素2はいわば絶縁要素3上に収縮し、それによって絶縁要素3に圧縮応力がかかり、圧縮封止が形成される。この圧縮封止により、良好な気密性およびより高い引き抜き力が提供される。
【0022】
好ましい実施形態では、絶縁要素3は、ガラスセラミック材料を含む。最も有利には、絶縁要素の主要な領域、または言い換えれば、絶縁要素の体積の大部分は、ガラスセラミック材料である。
【0023】
ガラスセラミック材料とは、既知の科学的定義によれば、ガラス材料(または前駆体ガラス)を起源とし、温度処理によって、結晶相および/または少なくとも増加した結晶相の体積も含む材料に変化される材料である。結晶相は、全体積の90%超、またはさらには95%および/または98%および/または99%超に達することができる。
【0024】
本開示の範囲では、ガラスセラミック材料は、少なくとも部分的に結晶化されたガラスと表記される場合もある。ガラスセラミックまたは少なくとも部分的に結晶化されたガラスは、同じ結晶相に割り当てることができる結晶もしくは晶子の空間寸法について好ましくは狭い広がりが得られ、かつ/または結晶もしくは晶子の好ましい空間配置が達成可能であるような構造が得られるように、結晶化、好ましくは制御可能な結晶化、より好ましくは制御された結晶化により得ることができる。少なくとも部分的に結晶化されたガラス(またはガラスセラミック)を得る元となる前駆体ガラスは、結晶化可能なガラスと表記される場合もある。
【0025】
したがって、結晶化の結果、結晶化可能なガラスは、少なくとも部分的に結晶化されたガラス、すなわち結晶相の割合が0.1体積%超であるガラスとなる。このような少なくとも部分的に結晶化されたガラスは、少なくとも1つの結晶相と、任意にガラス状相、例えば少なくとも部分的に結晶化可能なガラスまたは残留ガラス相と、を含む。
【0026】
一実施形態によれば、少なくとも部分的に結晶化されたガラス中の残留ガラス相の割合は、10体積%未満、好ましくは5体積%未満である。少なくとも部分的に結晶化されたガラスは、結晶の凝集体を含む。これらの結晶の凝集体は、多数の結晶または晶子で形成されている。晶子の形状は、例えば、針状または糸状または板状であってよい。好ましくは、晶子は放射状に、すなわち中心点から外側へと広がるように配置されてもよく(例えば扇形の球晶状)、刃状または板状の結晶または晶子は、残留ガラス相および/または少なくとも部分的に結晶化されたガラスと同様に互いに相互侵入するように配置されていてもよい。
【0027】
さらなる実施形態によれば、結晶化可能なガラスおよび/または少なくとも部分的に結晶化されたガラスは、酸化物ベースで、モル%単位で以下の成分を含む:
La 0.3モル%超5モル%未満、好ましくは4.5モル%以下、より好ましくは4モル%以下
Nb 0モル%から9モル%
Ta 0モル%から7モル%
ここで、
Σ(A)は、0.2モル%超9モル%以下であり、
ここで、Aは、酸化物において通常は酸化状態V+を有する元素を指し、例えば、NbもしくはTaもしくはPまたはそれらの任意の組み合わせを含み、かつ/またはそれを含み得る。
【0028】
酸化物La、Taおよび/またはNb、ならびに任意にさらなる酸化物Aを適量添加することにより、非常に信頼性の高いおよび/または温度安定性の高い接合部を形成できることが見出された。上述したように、Aは、酸化物において通常は酸化状態V+を有する元素を指す。しかし、少なくとも部分的に結晶化されたガラスに含まれるすべての原子「A」が、実際に同じ酸化状態で存在する必要はないことが理解される。
【0029】
本開示の範囲では、少なくとも部分的に結晶化されたガラスに含まれる酸化物La、NbおよびTa、ならびに任意にさらなる酸化物Aは、少なくとも結晶化の第1段階の間にこれらの酸化物が残留ガラス相に残り、したがってガラス状マトリックスを形成するという意味で「ガラスマトリックス形成酸化物」とも表記される。
【0030】
結晶化可能なまたは少なくとも部分的に結晶化されたガラスは、BiまたはPをさらに含んでいてもよい。しかし、フィードスルーの高い温度安定性が達成される場合、これらの成分は不利である。したがって、さらなる実施形態によれば、ガラスは、それぞれ500ppm未満の量で存在する不純物を除いて、ビスマスおよび/またはリンの酸化物をまったく含まない。この場合、ppmは、重量分率を意味する。
【0031】
さらなる実施形態によれば、ガラスは、それぞれ500ppm未満の量で存在する不純物を除いて、アルカリ金属および/またはホウ素の酸化物をまったく含まない。これらの成分は温度安定性の点で有害であるため、このことは有利である。さらに、これらの成分は、熱膨張性の低い望ましくない結晶相の形成を招きかねない。さらに、アルカリ金属酸化物は、少なくとも部分的に結晶化されたガラスの望ましくない低い電気抵抗性を招きかねない。
【0032】
一実施形態によれば、ガラスは、酸化物ROを含み、ここで、
Σ(RO)は、55モル%以下であり、
ここで、Rは、酸化物において通常は酸化状態II+を有する元素であり、例えば、Ca、Mg、Znまたはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0033】
すなわち、ROには、ZnOの他にアルカリ土類金属酸化物も包含される。好ましい実施形態によれば、例えばクロム含有鋼などのクロムを含む接合相手とガラスとの望ましくない反応を避けるために、ガラスは、それぞれ500ppm未満の量で存在する不純物を除いて、BaOおよび/またはSrOの酸化物をまったく含まない。
【0034】
一実施形態によれば、ガラスは、酸化物ベースで、モル%単位で、
SiO 30モル%から40モル%
Al 3モル%から12モル%
CaO 32モル%から46モル%
MgO 5モル%から15モル%
ZnO 0モル%から10モル%
および任意に
ZrO 0モル%から4モル%、好ましくは最大で3モル%、および/または
TiO 0モル%から4モル%、好ましくは最大で3モル%、および/または
MnO 0モル%から5モル%
を含む。
【0035】
任意に、一実施形態によれば、ガラスは、TiO、ZrO、MnO、およびそれらの任意の組み合わせをさらに含んでもよい。しかし、これらの成分の含有量は制限される。特に、結晶化のための種材料として知られているTiOおよびZrOは、ガラスにおいて必須ではない。さらに、これらの成分は、熱膨張性の低い望ましくない結晶相の形成を招きかねない。
【0036】
さらなる実施形態によれば、ガラスは、少なくとも35モル%で最大で46モル%のCaO、好ましくは少なくとも35モル%で43.5mo%未満および/または少なくとも5モル%で13モル%未満のMgOを含むことができる。
【0037】
一実施形態によれば、結晶化可能なまたは少なくとも部分的に結晶化されたガラスは、特にSiOと、CaOと、MgOと、Alと、任意にZnOと、を含む。
【0038】
四元系SiO-Al-CaO-MgOにおいて、高い熱膨張係数を有する結晶相、例えばオケルマナイトおよび/またはメルウィナイトのようなCaO含有量の多いカルシウム-マグネシウム-ケイ酸塩の混晶が得られることがあり、これはゲーレナイトおよび/またはオーガイトのようなAl含有相との混晶も形成し得る。さらに、追加の成分としてガラスがZnOを含む場合、ハリストナイトも存在する場合がある。
【0039】
一実施形態によれば、ガラスが存在し、これは、CaO含有量の多いCaO-MgO-ケイ酸塩、特にメソおよび/またはソロケイ酸塩の結晶または晶子を含む少なくとも部分的に結晶化されたガラスである。ネソケイ酸塩は孤立したSiO四面体を含むケイ酸塩であるのに対して、ソロケイ酸塩は、橋かけ酸素原子で結合した2つの四面体を含むケイ酸塩であり、構造要素はSiである。ネソケイ酸塩は、メルウィナイトCaMg(SiOおよび/またはメルウィナイト様結晶構造を有する混晶であり得る。さらに、ガラスは、追加的または代替的に、オケルマナイトCaMgSiまたはゲーレナイトCaAl[AlSiO]またはその混晶のようなoソロケイ酸塩を含んでいてもよい。さらに一実施形態によれば、ガラスは、オーガイトまたはオーガイト様構造を有する結晶相を含んでいてもよい。
【0040】
本開示の範囲では、混晶とは、化学組成が化合物の化学量論組成と正確には一致しない結晶を指す。例えば、「オケルマナイト混晶」に言及する場合、この混晶の化学組成はCaMgSiと一致しないことが理解されるべきである。この混晶は、化学量論組成によるものよりも多くのCaを含む場合があり、また少なくとも部分的にCaがZnに置き換わる場合もある。しかし、この混晶の結晶構造は、例えば格子定数に関してわずかな逸脱が生じることがあっても、大部分はオケルマナイトの結晶構造と一致する。
【0041】
一実施形態によれば、ガラスが存在し、これは、CaOに富むCaO-Mg-ケイ酸塩、特にCaOに富むCaO-Mg-ネソケイ酸塩および/またはソロケイ酸塩、例えばメルウィナイトおよび/またはメルウィナイト様構造を有する混晶、および追加的または代替的に、メリライト構造を有する結晶相、例えばオケルマナイトCaMgSiおよび/またはゲーレナイトCaAl[AlSiO]および/またはその混晶、および/またはオーガイト構造を有する結晶相を含む、少なくとも部分的に結晶化されたガラスである。
【0042】
少なくとも部分的に結晶化されたガラスの結晶化可能な例示的な組成を、以下の表に示す。ここで、組成は、酸化物ベースで、モル%単位で与えられる。軟化温度(SofT)、焼結温度(SinT)、球温度(Sph)、半球温度(hsph)、および溶融/融合温度(melt)など、固体灰分の融合性の特性決定に用いられる温度は、加熱顕微鏡(HM)を用いて決定されたものである。これらの温度の決定は、DIN 51730に準拠して、またはそれに基づいて行われた。線熱膨張係数(CTEまたはα)は、10-6/Kの単位で示されている。添え字は、CTEが決定された温度範囲を示している。また、Tは、ISO 7884-8に準拠したガラス転移温度であり、昇温速度5K/minで測定したときの膨張曲線の2つの分岐の接線の交点で決定される。ガラスの軟化点(E)は、ISO 7884-3に準拠して、またはそれに基づいて測定された、ガラスが107.6dPa・sの粘度を有する温度と定義される。tk・100は、結晶化可能なものが10Ω・cmの比電気抵抗を有する温度を示し、好ましくはDIN 52326に準拠した、またはそれに基づく方法で決定される。
【0043】
【表1-1】
【0044】
【表1-2】
【0045】
【表2-1】
【0046】
【表2-2】
【0047】
通常、ガラスセラミック材料は、そのガラス起源よりも高い全体溶融温度を有しており、それにより、センサコンポーネントをその製造温度よりも高い温度に曝すことが可能となる。最も有利な実施形態では、ガラスセラミック材料は、構造を形成する晶子相を有し、この晶子相では、ガラス相が粘性および/または液体にさえなったときにも個々の結晶の動きが制限される。
【0048】
従来技術と比較して、本発明は、好ましくは、閉じた表面、好ましくはガラス状の表面を有する絶縁要素のガラスセラミック材料を提供するという利点をさらに提供する。これは、絶縁要素の外面にガラス相の薄い層が存在することを意味する。例えば、複数の実施形態において、絶縁要素の表面から内部体積に向かって晶子構造に勾配があり、その際、個々の構造が異なり、かつ/または全構造内で晶子が占める体積の量が増加していることがわかる。このような勾配は、フィードスルー要素と絶縁要素との間の接合部を形成するのに有益である。
【0049】
ガラス状層および/または晶子勾配はまた、有利には閉じた表面を提供し、これは、当然のことながら、センサコンポーネントの性能に関連しないランダムな不完全性を除いて、表面が開口細孔を有しないことを意味する。絶縁コンポーネントがその体積内に細孔を含む可能性があるとしても、表面には実質的に細孔がなく、絶縁要素の体積内に細孔が存在し得る、という細孔の勾配が存在する。表面が閉じていることの利点は、排ガス中の残留物などの汚染物質が表面に付着しにくく、センサコンポーネント全体の信頼性に寄与することである。
【0050】
さらに、少なくとも部分的に結晶化されたガラスの高温での高い粘性により、角のあるコンポーネント、特に角のある機能要素を、標準的な円形またはほぼ円形の断面を有するフィードスルー要素に確実に接合できることが判明した。すなわち、正方形断面のような角のある断面を有する機能要素であっても、クラックの発生なしに、本開示によるガラスを使用して接合することができる。
【0051】
このことは、これまでは不可能であった。なぜならば、円形状のフィードスルー要素に角形状の機能要素を接合する際に角形状の機能要素の角の領域で高い応力が生じ、これがクラックの発生を招くためである。しかしこれを、本開示の実施形態によるガラスを使用することによって回避することができる。これに加えて、機械的な負荷をかけることは、さらに円形状のフィードスルー要素において角形状のコンポーネントのクラックのない接合を実現する一助となり得る。上述したように、互いに相互侵入する凝集体を形成する結晶、好ましくは結晶および晶子の含有量が多く、したがって粒界の量が多いと、張力の伝達が阻害され、クラックのない接合が可能になると想定される。
【0052】
さらに、本開示によるガラスでは、接合相手とガラスとの界面で化学結合が形成されることが判明した。接合相手、すなわち、一方では1つ以上のフィードスルー要素および/または機能要素と、他方ではガラスと、の界面におけるこの化学結合は、非常に安定した接合につながり、その結果、機能要素を引き抜くために大きな力を加える必要がある。本発明者らは、絶縁要素材料(「接合材料」と表記される場合もある)として本開示によるガラスを使用することによって、接合材料として圧縮セラミック粉末を使用する標準的な接合で観察される引き抜き力と比較して、引き抜き力が最大で10倍高くなり得ると想定している。本開示の範囲では、1つ以上の機能要素および/または1つ以上のフィードスルー要素は、「1つ以上の接合相手」とも呼ばれる場合がある。
【0053】
絶縁要素の内径Diが6mm以上であり、かつ絶縁要素の外径Daが10mm以上である場合に、機能要素の材料として鋼1.4762を用いた本開示の実施形態によるフィードスルーについて、驚くべきことに最大で10kNの引き抜き力を達成することができた。これは、フィードスルー要素、絶縁要素、および機能要素の熱膨張係数を慎重に選択および/または一致させることによって達成することができる。
【0054】
したがって、一実施形態によれば、接合相手の材料の熱膨張係数と絶縁要素の材料の熱膨張係数との差の絶対値は、5×10-6/K以下、好ましくは3×10-6/K以下、より好ましくは1×10-6/K以下である。
【0055】
この非常に有利な実施形態によれば、接合部、ひいてはセンサは、最大で1000℃、さらにはそれを上回る非常に高い温度に耐えることができる。
【0056】
本発明者らは、本開示の実施形態による接合部の高温耐久性は、相互侵入する結晶および結晶凝集体の存在と、このようにして達成された少なくとも部分的に結晶化されたガラスのテクスチャと、に起因し得るものと想定している。本発明者はさらに、少なくとも部分的に結晶化されたガラスのこの非常に有利な構造ゆえに、高温での任意の残留ガラス相の軟化さえも相殺され得ると考えている。
【0057】
本発明によるセンサコンポーネントは、有利には、好ましくは単一材料の1つのコンポーネントから構成された一体型部品であってもよいし、単一材料の複数のコンポーネントから構成された一体型部品であってもよく、その際、これらの単一材料の複数のコンポーネントを一緒に接合することで一体型部品が形成される。一体型部品は、絶縁要素を破壊しなければ分解することができない。
【0058】
絶縁要素3が、表面積を増大させる構造、好ましくは少なくとも表面積を増大させるための要素31を備えた表面を有することも、提供される。そのようなものは、隆起したおよび/もしくは押圧された構造ならびに/またはさらには角度のついた表面であり得る。センサコンポーネント1を使用する際に、物質が絶縁要素3の表面上に堆積および/または凝縮されると、センサ測定の精度が低下し、かつ/または最終的には絶縁要素の短絡を招きかねない。この構造31は、そのような短絡を防止し、かつ/またはさらにはシャドウイング効果によってそのような層の堆積を防止することができる。また、それらのエッジでの層の堆積を断つために、例えば鋭いエッジまたは小さなエッジ半径を有するエッジを上記の構造31に設けることも考慮され得る。体積Vを算出する際、それらの構造は考慮されない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1a】従来技術による既知のセンサコンポーネントを示す図。
図1b】本発明によるセンサコンポーネント1を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明およびその実用化は、包含される図面によって実証することができる。図1aは、従来技術による既知のセンサコンポーネントを示す。絶縁要素が様々な部品で構成されていることが明確にわかる。
【0061】
図1bは、本発明によるセンサコンポーネント1を示す。絶縁コンポーネント3は、一体型部品である。
【0062】
上述したDおよびHの他に、図面の記号は以下の意味を有する:
1 センサコンポーネント
2 フィードスルー要素
3 絶縁要素
31 表面積を増大させるための要素
4 機能要素
5 フィードスルーホール
6 スルーホールの内壁
7 スルーホール
8 スルーホールの内壁
9 外ねじ
【0063】
製造例は、以下の表に示す絶縁要素の寸法のサイズおよび比を有する。
【0064】
【表3】
【0065】
絶縁要素3内に機能要素4が、好ましくは少なくともある領域で絶縁要素3に接合した状態で配置されており、絶縁要素3は、フィードスルーホールの外径Daと、少なくとも1つの機能要素4の直径に相当する内径Diと、を有する。Dは、フィードスルー要素の外径である。
【0066】
フィードスルー要素2は、実施形態では、金属またはセラミック製である。適切な金属は、標準的な鋼、ステンレス鋼、防錆鋼、および高温安定フェライト系鋼などの鋼であってよく、これらは、商標名Thermaxでも知られており、例えばThermax 4016、Thermax 4742、もしくはThermax 4762、またはCrofer 22 APU、もしくはCroFer 22 H、またはNiFe系材料、例えば、NiFe45、NiFe47、またはニッケルメッキピンであるか、あるいは商標名Inconelで知られており、例えばInconel 718、またはX-750、またはCF25、Alloy 600、Alloy 625、Alloy 690、SUS310S、SUS430、SUH446、もしくはSUS316の名称で知られている鋼、または例えば、1.4828、もしくは1.4841などのオーステナイト系鋼である。よって、フィードスルー要素は、有利には、フェライト系高耐食鋼、有利に、1.4742、1.4755、1.4760、1.4762、および/またはInconel鋼(Alloy 600、Alloy 601、Alloy 625、X-750)および/またはステンレス鋼から構成されていてよい。さらに、フィードスルー要素は、アルミナ系セラミックまたはジルコニア系セラミック、例えばY安定化ジルコニアを含むセラミック、またはAl、ZrO、フォルステライト、YSZなどのセラミックなどの高温安定セラミック化合物を含むかまたはそれらからなることができる。
【0067】
機能要素4は、実質的にピンおよび/または導電体および/またはセンシング要素であってよく、特に絶縁要素の領域において、実質的に、標準的な鋼、ステンレス鋼、防錆鋼、および高温安定フェライト系鋼などの鋼であってよく、これらは、商標名Thermaxで知られており、例えばThermax 4016、Thermax 4742、もしくはThermax 4762、またはCrofer 22 APU、もしくはCroFer 22 H、またはNiFe系材料、例えば、NiFe45、NiFe47、またはニッケルメッキピンであるか、あるいは商標名Inconelで知られており、例えばInconel 718、またはX-750、またはCF25、Alloy 600、Alloy 625、Alloy 690、SUS310S、SUS430、SUH446、もしくはSUS316の名称で知られている鋼、または例えば、1.4828、もしくは1.4841などのオーステナイト系鋼、または1.4742、1.4755、1.4760、1.4762などのフェライト系高耐食鋼および/またはカンタル熱線である。さらに、機能要素は、アルミナ系セラミックまたはジルコニア系セラミック、例えばY安定化ジルコニアを含むセラミックおよび/またはAl、ZrO、フォルステライト、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)などのセラミックなどの高温安定セラミック化合物を含むかまたはそれらからなることができる。
【0068】
前述の説明および本明細書全体から明らかであるように、本発明のセンサコンポーネント1は、現在使用されているマルチピースセンサコンポーネントよりも小型である。したがって、本発明により、センサコンポーネント全体の外形寸法を小さくすることも可能である。このようなセンサコンポーネント1は、センサコンポーネントを他の要素またはデバイス、例えば燃焼機関の排気システム、例えば排気管に取り付けるために適合された外ねじを備えることができる。本発明によれば、外ねじ9は、有利には、14mm未満の直径を有する。ねじ切り加工用の標準的な測定手段および工具では、外ねじはM14よりも小さくすることができ、好ましくはM14からM6の範囲である。これにより、排気システム内のセンサコンポーネント1の数を増やすことができ、かつ/または燃焼機関の他のコンポーネントまたは構造のために限られたスペースしかない領域にセンサコンポーネント1を移動させることができる。
【0069】
本発明によるセンサコンポーネント1は、燃焼機関の排ガスの測定に有益に用いることができる。本発明によるセンサコンポーネント1は、好ましくは、ラムダセンサおよび/またはNOxセンサおよび/または粒子状物質センサおよび/または温度センサとして使用される。
【0070】
本発明の利点は、燃費向上に寄与し、燃焼機関がEURO 6のようなより厳しい排出基準を遵守することを可能にするのに役立ち得る。EURO 7の導入が見込まれる中、革新的なエンジン管理システムおよびインテリジェントな排気処理技術の必要性がさらに高まるものと思われる。より高度なセンサが必要とされるだけでなく、これらは、極端な温度や腐食環境で信頼性の高い性能を発揮する必要がある。本発明のセンサコンポーネントは、優れた堅牢性を提供すると同時に、より合理的な製造方法と設計の複雑さの軽減とを提供する。
【0071】
排ガス環境に曝される、またはエンジン近傍に設置される場合に、温度、ガス、PM/PN、NOx、またはスートロードセンサのようなセンサタイプは、腐食性の高い超高温条件下で長期間の機械的安定性を提供することが要求される。例えば排ガス用途では、センサは、950℃までの温度サイクル条件下で少なくとも50,000サイクルの良好な性能を維持する必要がある。これらの要件は、本発明によるセンサコンポーネントで満たすことができる。本発明によるセンサコンポーネントはさらに、極めて高い耐温度性に加え、例えばディーゼルおよび/またはガソリンの排ガスやAdBlueなどの化学物質に対する耐腐食性をも有している。
【0072】
さらなる利点として、絶縁要素とフィードスルー要素との直接的な封止を形成するための界面材料は不要である。
【0073】
体積の減少により、本発明による絶縁要素は、従来技術によるセンサコンポーネントに比べてセンサコンポーネント全体が速く加熱または冷却され、このことは、より迅速に熱平衡に達することを意味する。
図1a
図1b