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特許7534339体液中の分析物の濃度を判定する方法、および体液中の分析物の濃度を判定するために構成されたモバイル装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】体液中の分析物の濃度を判定する方法、および体液中の分析物の濃度を判定するために構成されたモバイル装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01N21/78 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021577152
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2020067444
(87)【国際公開番号】W WO2020260246
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】19182555.3
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルク、マックス
(72)【発明者】
【氏名】ヘイラー、フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】リンブルク、ベルント
(72)【発明者】
【氏名】スクリディーナ、ダリア
(72)【発明者】
【氏名】チュルク、フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンケルケンパー、モマ
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/023376(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/081541(WO,A1)
【文献】特開2009-245429(JP,A)
【文献】特開2005-202749(JP,A)
【文献】国際公開第2007/079843(WO,A2)
【文献】特開2016-163722(JP,A)
【文献】国際公開第2019/081460(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0024049(US,A1)
【文献】特表2015-533211(JP,A)
【文献】特開2007-188465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ(112)を有するモバイル装置(110)を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法であって、
a)前記カメラ(112)を使用することによってオブジェクト(118)の少なくとも1つの関心領域(116)の一連の較正画像(114)を取得することであって、前記較正画像(114)は、輝度がそれぞれ異なる、一連の較正画像(114)を取得することと、
b)ステップa)において取得された前記一連の較正画像(114)の各々から、前記モバイル装置(110)のトーンマッピング関数に特徴的な少なくとも1つの主要な較正数値(137)を導出することと、
c)ステップa)において取得された前記一連の較正画像(114)からの前記主要な較正数値(137)を考慮に入れることによって、前記モバイル装置(110)の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数(120)を判定することと、
d)光学試験ストリップ(124)の試験フィールド(122)の少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得することであって、前記試験フィールド(122)には前記体液が塗布されている、試験フィールド(122)の少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得することと、
e)前記モバイル装置(110)の前記可能性のあるトーンマッピング関数(120)を考慮に入れることによって、前記試験フィールド(122)の前記分析画像から前記体液中の前記分析物の濃度を判定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップd)~e)が繰り返し実行され、ステップa)~c)が、ステップd)~e)の複数の繰り返しに対して最初に一度だけ、またはステップd)~e)を実行する前に毎回、または所定の頻度で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オブジェクト(118)が前記光学試験ストリップ(124)を含み、前記分析画像が前記一連の較正画像(114)の一部として取得されるように、前記分析画像が前記較正画像(114)のうちの少なくとも1つと一致する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記関心領域(116)が、白色フィールド、黒色フィールド(139)、灰色フィールド、グレースケールステップウェッジ(142)からなる群の少なくとも1つの要素を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各較正画像(114)が少なくとも2つの関心領域(116)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記2つの関心領域(116)間の物理的輝度比が知られている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各較正画像(114)について、前記主要な較正数値(137)が、前記較正画像(114)の前記関心領域(116)の少なくとも1つの輝度値から導出される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記較正画像(114)の前記輝度が、露出時間(136)、前記カメラ(112)のイメージセンサの光感度、光源の光強度のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータ値を変更することによって、ステップa)において変更される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)が、各較正画像(114)について少なくとも1つのサンプリング点(140)を判定することを含み、前記サンプリング点(140)が、前記主要な較正数値(137)および前記パラメータ値を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)が、前記一連の較正画像(114)の前記サンプリング点(140)についての相関関係を判定すること、所定の相関関係のセットから相関関係を選択することであって、選択された相関関係が前記一連の較正画像(114)の前記サンプリング点(140)に適合する、相関関係を選択することのうちの少なくとも1つによって前記可能性のあるトーンマッピング関数(120)を判定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップc)が、前記一連の較正画像(114)の前記サンプリング点(140)についての適合曲線を判定すること、所定の相関関係のセットから関数を選択することであって、選択された関数が前記一連の較正画像(114)の前記サンプリング点(140)に適合する、関数を選択することのうちの少なくとも1つによって前記可能性のあるトーンマッピング関数(120)を判定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ステップe)が、前記試験フィールド(122)の少なくとも1つの部分を示す前記分析画像の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの輝度値(138)から少なくとも1つの主要な分析数値(186)を導出することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
各主要な分析数値(186)から、反転された前記可能性のあるトーンマッピング関数(120)を前記主要な分析数値(186)に適用することによって、少なくとも1つの可能性のある分析物測定数値が導出される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップe)において、前記分析物の濃度が、前記体液が塗布された前記試験フィールド(122)と前記オブジェクト(118)の前記関心領域(116)との間の輝度比から判定される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法ステップb)、c)およびe)を実行させる、コンピュータ実行可能命令を備えるコンピュータプログラム。
【請求項16】
コンピュータプログラムがモバイル装置(110)のプロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法ステップb)、c)およびe)を実行させる、コンピュータ実行可能命令を備えるコンピュータプログラム。
【請求項17】
カメラ(112)およびプロセッサ(180)を有するモバイル装置(110)であって、前記プロセッサ(180)が、
i.)前記カメラ(112)を使用することによって、オブジェクト(118)の少なくとも1つの関心領域(116)の一連の較正画像(114)を取得するようにユーザに促すステップであって、前記較正画像(114)は、輝度がそれぞれ異なる、ユーザに促すステップと、
ii.)ステップi)において取得された前記一連の較正画像(114)の各々から、前記モバイル装置(110)のトーンマッピング関数に特徴的な少なくとも1つの主要な較正数値(137)を導出するステップと、
iii.)ステップi)において取得された前記一連の較正画像(114)からの前記主要な較正数値(137)を考慮に入れることによって、前記モバイル装置(110)の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数(120)を判定するステップと、
iv.)光学試験ストリップ(124)の試験フィールド(122)の少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得するように前記ユーザに促すステップであって、前記試験フィールド(122)には体液が塗布されている、前記ユーザに促すステップと、
v.)前記モバイル装置(110)の前記可能性のあるトーンマッピング関数(120)を考慮に入れることによって、前記試験フィールド(122)の前記分析画像から前記体液中の分析物の濃度を判定するステップと、
を実行するように構成されている、モバイル装置(110)。
【請求項18】
体液中の分析物の濃度を判定するキット(182)であって、前記キット(182)が、
請求項17に記載の少なくとも1つのモバイル装置(110)と、
少なくとも1つの試験フィールド(122)を有する少なくとも1つの光学試験ストリップ(124)と、
を備える、キット(182)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法に関する。本発明は、さらに、コンピュータプログラムに関する。本発明は、さらに、カメラおよびプロセッサを有するモバイル装置であって、プロセッサが、体液中の分析物の濃度を判定するために実行するように構成された、モバイル装置に関する。本発明は、さらに、体液中の分析物の濃度を判定するキットであって、カメラおよびプロセッサを有する少なくとも1つのモバイル装置と、少なくとも1つの試験フィールドを有する少なくとも1つの光学試験ストリップとを備えるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断の分野では、多くの場合、血液、間質液、尿、唾液、または他の種類の体液などの体液の試料から1つ以上の分析物を検出する必要がある。検出される分析物の例は、グルコース、トリグリセリド、乳酸塩、コレステロール、またはこれらの体液に通常存在する他のタイプの分析物である。分析物の濃度および/または存在に応じて、必要に応じて適切な処置が選択されることができる。範囲を狭めることなく、本発明は、血糖測定に関して具体的に説明される。しかしながら、本発明は、試験ストリップを使用する他のタイプの分析測定にも使用されることができることに留意されたい。
【0003】
一般に、当業者に知られている装置および方法は、1つ以上の試験化学物質を含む試験ストリップを利用し、これは、検出される分析物の存在下で、光学的に検出可能な検出反応などの1つ以上の検出可能な検出反応を実行することができる。これらの試験化学物質に関しては、例えば、J.Hoenes et al.:The Technology Behind Glucose Meters:Test Strips,Diabetes Technology&Therapeutics,Volume 10,Supplement 1,2008,S-10からS-26の参照がなされることができる。他のタイプの試験化学的性質が可能であり、本発明を実行するために使用されることができる。
【0004】
通常、これらの変化から検出されるべき少なくとも1つの分析物の濃度を抽出するために、試験化学的性質における1つ以上の光学的に検出可能な変化がモニタリングされる。試験フィールドの光学特性の少なくとも1つの変化を検出するために、様々なタイプの検出器、具体的にはカスタマイズされた検出器が当該技術分野で知られている。したがって、試験フィールドに光を当てるための様々なタイプの光源、および様々なタイプの検出器が知られている。
【0005】
さらに、対応する試験要素に含まれる試験化学物質の変化を光学的に検出する目的で特別に開発されたカスタマイズされた検出器を使用することに加えて、最近の開発は、スマートフォンなどの広く利用可能な装置を使用することを目的としている。しかしながら、スマートフォンなどのカメラを有する消費者電子機器が分析物濃度を判定ために使用される場合、特に精度に関して新たな課題が生じる。これは、特に、例えばより心地よい画像を得るためにスマートフォンによって一般に使用されている補正関数によるなど、画像データの処理が原因である可能性がある。前記画像データ処理ステップは、通常、画像データの様々な態様に関係する。特に、それらは、画像データに基づく分析物濃度の判定の精度に影響を与える可能性がある。画像データの処理の例は、例えば、米国特許出願公開第2011/0298819号明細書、米国特許第9,230,509号明細書、米国特許出願公開第2017/0330529号明細書および米国特許第9,842,381号明細書において見出すことができる。
【0006】
米国特許出願公開第2014/072189号明細書は、比色試験ストリップの分析および疾病管理のためのシステムおよび方法を開示している。システムは、モバイル装置に動作可能に連結されているアクセサリを含むことができ、モバイル装置は、比色試験ストリップの画像を取得および/または分析する。照明ボックスアクセサリは、モバイル装置に着脱可能に取り付けられることができ、またはモバイル装置に取り付けられたままにされることができるが、一般的な写真撮像目的のために照明ボックスアクセサリをカメラの視野から取り除かれる機能を有する。他の実施形態では、既知の較正色および試薬領域を含む画像が、周囲の照明条件の変化をモデル化し、色補正関数を判定するために、以前の較正画像と比較するために照明ボックスなしで取得される。補正は、検出された試薬領域の色に適用されて、検出された試薬領域の色と参照チャート上の参照色とを一致させることができる。必要に応じて、情報は、フィードバックを提供するため、ならびに分析のために医療提供者に送信されるために処理および表示されることができる。
【0007】
Oliver Burggraaffら:「Standardized spectral and radiometric calibration of consumer cameras」、ARXIV.ORG、CORNELL UNIVERSITY LIBRARY、201、OLIN LIBRARY CORNELL UNIVERSITY、ITHACA、NY 14853、2019年6月7日は、消費者向けカメラ、特にオンボードスマートフォンおよびUAVが、現在科学機器として一般に使用されている旨を開示している。しかしながら、それらのデータ処理パイプラインは、定量的放射測定用に最適化されておらず、それらの較正は、科学カメラの較正よりも複雑である。標準化された較正方法論の欠如は、装置間の相互運用性を制限し、絶えず変化する市場では、最終的にはそれらを使用するプロジェクトの寿命を制限する。この刊行物は、線形性、バイアス変動、読み出しノイズ、暗電流、ISO感度およびゲイン、フラットフィールド、ならびにRGBスペクトル応答を含む、消費者向けカメラのスペクトルおよび放射測定較正用の標準化された方法論およびデータベース(SPECTACLE)を提示している。これは、専門家以外の人に適したゴールデンスタンダードのグラウンドトゥルース方法および自分でできる方法を含む。この方法論を7つの大衆的なカメラに適用すると、著者は、RAWでは高い線形性を見出したが、JPEGデータでは見出さず、ピクセル間のゲイン変動が400%を超え、大規模なバイアスおよび読み出しノイズパターン、重要なISO感度正規化関数、視野にわたる最大2.79倍変動する平坦視野補正係数、およびスペクトル応答の類似点および相違点の双方と相関があった。さらに、これらの結果は、カメラモデル間で大きく異なり、標準化および集中データベースの重要性が浮き彫りになった。
【0008】
光学試験ストリップを使用して分析物濃度を判定する分野において、スマートフォンなどのカメラを有する消費者電子機器を使用することは、かなり最近の開発であり、依然として多くの課題に直面している。したがって、カスタマイズされた検出器を使用すると、画像データは、通常、未処理の形式で利用可能である。あるいは、データに適用されるプロセスステップは、一般に知られており、分析物濃度の判定を容易にするために選択されることができる。しかしながら、スマートフォンなどのカメラを有する消費者電子機器を使用することに基づいて体液中の分析物の濃度を判定する方法は、通常、利用可能な画像データが処理されたかどうかおよび/またはどのように処理されたかについての知識なしに対処しなければならない。
【発明の概要】
【0009】
したがって、体液中の分析物の濃度を判定する方法および装置を提供することが望ましく、これは、消費者電子モバイル装置、具体的にはスマートフォンまたはタブレットコンピュータなどの分析測定専用ではない多目的モバイル装置などのモバイル装置を使用する方法および装置の上述した技術的課題に対処する。
【0010】
独立請求項の特徴を備えた体液中の分析物の濃度を判定する方法、コンピュータプログラムおよびモバイル装置、ならびに体液中の分析物の濃度を判定するキットによって対処される。単独で、または任意の組み合わせで実現されることができる有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
以下において使用される場合、用語「有する(have)」、「備える(comprise)」もしくは「含む(include)」またはこれらの任意の文法的変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つ以上のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
【0012】
さらに、特徴または要素が1回または複数回存在することができることを示す「少なくとも1つ」、「1つ以上」という用語または同様の表現は、通常、それぞれの特徴または要素を導入するときに一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を指すとき、それぞれの特徴または要素が1回または複数回存在することができるという事実にもかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という表現は繰り返されない。
【0013】
さらに、以下において使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意の特徴であり、決して特許請求の範囲を制限することを意図したものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実施されることができる。同様に、「本発明の実施形態において」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関する制限がなく、本発明の範囲に関する制限がなく、およびそのような方法で導入された特徴を、本発明の他の任意または非任意の特徴と組み合わせる可能性に関する制限がない任意の特徴であることを意図する。
【0014】
本発明の第1の態様では、カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法が開示される。本方法は、具体的には所与の順序で実行されることができる以下のステップを含む。それでも、異なる順序も可能とすることができる。さらに、2つ以上の方法ステップを完全にまたは部分的に同時に実行することができてもよい。さらに、1つ以上、さらには全ての方法ステップを1回または繰り返し実行することができてもよい。本方法は、本明細書に記載されていない追加の方法ステップを含むことができる。一般に、カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法は、以下のステップを含む。
a)カメラを使用することによってオブジェクトの少なくとも1つの関心領域の一連の較正画像を取得するステップであって、較正画像は、輝度がそれぞれ異なる、一連の較正画像を取得するステップ、
b)ステップa)において取得された一連の各較正画像から、モバイル装置のトーンマッピング関数に特徴的な少なくとも1つの主要な較正数値を導出するステップ、
c)ステップa)において取得された一連の較正画像からの主要な較正数値を考慮に入れることによって、モバイル装置の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数を判定するステップ、
d)光学試験ストリップの試験フィールドの少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得するステップであって、試験フィールドには体液が塗布されている、試験フィールドの少なくとも1つの分析画像を取得するステップ、および
e)モバイル装置のトーンマッピング関数の可能性を考慮に入れることによって、試験フィールドの分析画像から体液中の分析物の濃度を判定するステップ。
【0015】
ここに記載したステップを含むカメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する開示された方法は、体液中の分析物の濃度を判定する方法とも呼ばれることができる。
【0016】
本明細書で使用される「分析物」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、例えば、ブドウ糖、トリグリセリド、乳酸塩またはコレステロールなどの分子などの任意の化学的、生化学的、または生物学的物質、成分または化合物を指すことができる。
【0017】
分析物測定または分析物濃度の判定と呼ばれることもある本明細書で使用される「分析物の濃度を判定する」という用語は、広義の用語であり、当業者に対してその通常的および慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試料中の少なくとも1つの分析物の定量的および/または定性的判定を指すことができる。例として、分析測定の結果は、分析物の濃度および/または判定されるべき分析物の存在または非存在とすることができる。
【0018】
本明細書で使用される「体液」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、血液、間質液、尿、唾液などの少なくとも1つの体液を含む液体試料を指すことができる。
【0019】
本明細書で使用される「モバイル装置」という用語は、広義の用語であり、当業者に対してその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、モバイル電子装置、より具体的には、少なくとも1つのプロセッサを備えるモバイル通信装置を指すことができる。モバイル装置は、具体的には携帯電話またはスマートフォンとすることができる。追加的または代替的に、以下にさらに詳細に概説されるように、モバイル装置はまた、タブレットコンピュータまたは少なくとも1つのカメラを有する任意の他のタイプのポータブルコンピュータを指す場合がある。
【0020】
本明細書で使用される「カメラ」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、1つ以上の画像などの空間分解光学データを記録するように構成された装置を指すことができる。カメラは、具体的には、例えばCCDおよび/またはCMOSチップなどのカメラチップまたは撮像チップなどの1つ以上の撮像装置を備えることができる。カメラ、特に撮像装置は、ピクセルなどのイメージセンサの一次元または二次元アレイを備えることができる。例として、カメラは、各次元に少なくとも10ピクセルなど、少なくとも1つの次元に少なくとも10ピクセルを含むことができる。しかしながら、他のカメラも使用可能であることに留意されたい。本発明は、特に、ノートブックコンピュータ、タブレット、または具体的にはスマートフォンなどの携帯電話などのモバイルアプリケーションで通常使用されるカメラに適用可能であるものとする。したがって、具体的には、カメラは、少なくとも1つのカメラに加えて、1つ以上のデータプロセッサなどの1つ以上のデータ処理装置を含むモバイル装置の一部とすることができる。しかしながら、他のカメラも使用可能である。カメラは、少なくとも1つのカメラチップまたは撮像チップに加えて、例えば1つ以上のレンズなどの1つ以上の光学素子などのさらなる素子を含むことができる。例として、カメラは、カメラに対して固定的に調整されている少なくとも1つのレンズを有する、固定焦点カメラとすることができる。しかしながら、代替的に、カメラはまた、自動または手動で調整されることができる1つ以上の可変レンズを含んでもよい。
【0021】
本明細書で使用される「画像」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、空間的に分解された光学データのセットを指すことができる。空間的に分解された光学データのセットは、具体的には、オブジェクトの領域に関する光学情報を含むことができる。画像はまた、例えば、空間的に分解された光学データのより大きなセットの空間的に分解された光学データのサブセットなど、より大きな画像の部分画像とすることができる。したがって、オブジェクトの画像は、それ自体で画像と見なすことができる複数の2つ以上の部分画像に細分割されることができる。
【0022】
空間的に分解された光学データのセットは、特に、例えばモバイル装置によって特定の露出時間の画像を取得することによって、同時に生成、取得、または記録されることができる。本明細書ではデータセットとも呼ばれる、空間的に分解された光学データのセットは、2段階プロセスで生成されることができる。第1のステップでは、空間的に分解された光学データは、画像を取得するときに、CCDまたはCMOSチップなどの撮像装置によって生成、取得、または記録されることができる。このデータセットはまた、第1のデータセット、生データまたは未処理データと呼ばれることもある。第1のデータセットは、モバイル装置のユーザにとって利用可能でないかまたはアクセス可能でない場合がある。第2のステップでは、第1のデータセットは、第1のデータセットに基づくかまたはそれから導出される第2のデータセットを作成するように、例えばモバイル装置の少なくとも1つのプロセッサによって、1つまたはいくつかの処理ステップに供されることができる。特に、モバイル装置のトーンマッピング関数が第1のデータセットに適用されて、第2のデータセットを作成することができる。第2のデータセットはまた、処理済データと呼ばれることもある。第2のデータセットは、特に、例えば画面上の画像のグラフィカル表現のためにモバイル装置によって使用されることができる。第2のデータセットは、例えばモバイル装置のユーザにとってモバイル装置上でさらに利用可能および/またはアクセス可能とすることができる。画像は、特に、第2のデータセットを含むことができる。第1のデータセットを作成するために使用される撮像装置は、例えばCCDおよび/またはCMOSチップなど、モバイル装置のカメラの撮像装置とすることができる。空間的に分解された光学データのセットは、具体的にはデジタルデータセットとすることができる。特に、第1のデータセットおよび第2のデータセットは、それぞれデジタルデータセットとすることができる。画像に含まれる空間的に分解された光学データセットは、例えば画像ファイルの形式で、モバイル装置から、具体的にはモバイル装置のカメラ、カメラのプロセッサ、またはモバイル装置の別のプロセッサからの出力データセットとして受信されることができる。本発明の文脈において、画像は、特に、較正画像および分析画像の形式で取得されることができる。
【0023】
特に、第1のデータセットは、撮像装置、具体的には例えばカメラチップのピクセルなどのイメージセンサに由来する、カウントとも呼ばれる複数の電子読み取り値を含むことができる。したがって、第1のデータセットは、複数の数値を含むことができ、各数値は、カメラチップのピクセルによって検出されたカウントの数を表すことができる。特に、各ピクセルは、例えば3つの数値などの複数の数値によって表されることができ、3つの数値は、それぞれ、赤色、緑色および青色チャネルにおけるカウントの数を表すことができる。RGB色空間以外の色空間におけるカウントの表現も可能であり、「RGB」は、「赤緑青」を表す。第2のデータは、処理ステップ、特にトーンマッピング関数を適用することによって第1のセットに由来する複数の数値から受信または推定されることができる複数の数値を含むことができる。したがって、例として、画像は、データの一次元または二次元アレイを含むことができる。空間的に分解された光学データは、例えば、撮像されるオブジェクトの色および/または輝度に関する情報を含むことができる。
【0024】
本明細書で使用される「一連の較正画像」の文脈で使用されるような「一連の画像」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、複数の画像を指すことができる。複数の画像のうちの画像は、同時にまたは所定の時系列などの異なる時間に取得されることができる。一連の画像のうちの画像は、同時に取得されたまたは異なる時間に取得された1つの同一のオブジェクトの画像、またはオブジェクトの異なる部分の画像とすることができる。したがって、例として、一連の較正画像は、グレースケールステップウェッジの一連の異なるフィールドまたは領域とすることができるか、さらにはグレースケールステップウェッジのより大きな画像の部分画像とすることができる。他の可能性が存在する。
【0025】
上述したように、および以下にさらに記載されるように、ピクセルという用語は、カメラのイメージセンサ、具体的にはカメラの撮像装置を指すことができる。各ピクセルは、例えばカウントの形式で光学情報を生成することができる。この光学情報は、具体的には処理された形式で、第1のデータセットおよび第2のデータセットの一部とすることができる。したがって、「ピクセル」に言及する場合、カメラチップの単一ピクセルによって生成されたまたは単一ピクセルから導出された画像情報の単位、または直接カメラチップの単一ピクセルのいずれかが参照される。
【0026】
本明細書で使用される「較正画像」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、装置または方法の設定に関する情報をチェック、査定、評価または収集するプロセスで、および/または装置または方法の設定を調整、変更または補正するプロセスで取得および/または使用されることができる画像を指すことができる。特に、較正の結果として、装置または方法の設定は、目標設定と一致させることができる。したがって、較正画像、特に一連の較正画像は、具体的には、モバイル装置の設定、具体的にはトーンマッピング関数に関する情報を取得するために、より具体的には、さらに以下に詳細に記載されるように、可能性のあるトーンマッピング関数を判定するために使用されることができる。
【0027】
本明細書で使用される「一連の較正画像」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、複数の少なくとも2つの較正画像を指すことができ、較正画像は、時間的に連続した方法で、1つの同じカメラなどの1つの同じ撮像装置によって取得される。したがって、例として、一連の較正画像は、2つの画像、3つの画像、5つの画像、または10以上の画像などのそれ以上の画像を含むことができる。具体的には、一連の画像は、短い間隔で取得されることができ、間隔は、異なる場合もあれば一定の値を有する場合もある。間隔は、具体的には100ミリ秒から1秒、より具体的には200ミリ秒から800ミリ秒、最も具体的には250ミリ秒から500ミリ秒の値を有することができる。したがって、例として、一連の較正画像は、1秒の時間スパン内で取得されることができる5つの画像を含むことができる。一連の較正画像は、ユーザが気付かないうちに取得されることができる。カメラの設定は、以下にさらに詳細に記載されるようにパラメータ値を変更することなどによって、制御された方法で画像ごとに変更されることができる。一連の較正画像のうちの画像は、輝度がそれぞれ異なる。
【0028】
本明細書で使用される「輝度」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、例えば1つまたはいくつかのピクセルなどの画像またはそのサブセクションを特徴付けるプロパティを指すことができ、プロパティは、画像を生成するとき、具体的には空間的に分解された光学データの第1のセットを生成するときに撮像装置に衝突する光強度を定量化、表現または関連付ける。具体的には、画像の輝度は、RGB色空間が使用されている場合、赤色、緑色、および青色座標の算術平均として定量化されることができる。あるいは、各色チャネルが輝度値を提供することができる。特に、画像またはそのサブセクションの輝度は、輝度値と呼ばれる数値によって表されることができる。輝度値は、画像に含まれる空間的に分解された光学データセットの一部とすることができる。あるいは、輝度値は、画像に含まれる空間的に分解された光学データセットから導出可能であってもよい。撮像装置によって生成された輝度値は、処理済輝度値を生成する処理ステップに供されることができる。具体的には、処理済輝度値の数値は、例えば撮像装置によって生成された元の輝度値などの輝度値の数値とは異なることができる。区別する目的で、元の輝度値は、具体的には、撮像装置によって生成された輝度値と呼ばれることがある。処理済輝度値、例えばトーンマッピング関数などの処理関数を元の輝度値に適用した後の画像の輝度値は、特にカメラによって取得された画像の輝度値と呼ばれることがある。特に、処理済輝度値は、画像の空間的に分解された光学データセットの一部とすることができるかまたはそれから導出可能とすることができる。
【0029】
本明細書で使用される「関心領域」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、オブジェクトのセクションまたはセグメントまたはパーティションを指すことができ、セクション、セグメントまたはパーティションは、特定の目的のために識別される。したがって、関心領域は、例えば、オブジェクトの区切られた表面領域とすることができる。あるいは、関心領域は、画像のデータのサブセットを指してもよく、サブセットは、オブジェクトのセクション、セグメントまたはパーティションを表す。例として、関心領域は、特定の情報を含むことができるか、または情報はそれから推論可能とすることができる。
【0030】
本明細書で使用される「主要な較正数値」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、装置または方法の設定に関する情報をチェック、査定、評価または収集するプロセス、および/または装置または方法の設定を調整、変更または補正するプロセスで使用されることができる少なくとも1つの数値を指すことができる。特に、主要な較正数値は、較正画像の関心領域の数値輝度値とすることができるか、またはそれを含むことができる。
【0031】
本明細書で使用される「トーンマッピング関数」という用語は、広義の用語であり、当業者に対してその通常的および慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、撮像装置によって生成、検出または記録されることができる第1の輝度値に第2の輝度値を割り当てることができる任意の相関関係を指すことができる。割り当ては、例えば、少なくとも1つの係数による乗算または別のタイプの数学演算などの少なくとも1つの数学演算を含むことができる。第1の輝度値は、第1のデータセットまたは生データの一部とすることができる。第2の輝度値は、第2のデータセットまたは処理済データの一部とすることができる。特に、第2の輝度値は、画像、特に画像ファイルによって構成される空間的に分解された光学データセットの一部とすることができる。トーンマッピング関数によって判定された第2の輝度値は、特に、画像のグラフィカル表現のために使用されることができる。相関関係は、特に、関数、具体的には、連続または不連続関数、曲線、ルックアップテーブル、演算子、または第1の輝度値と第2の輝度値との間の相関関係を説明する任意の他の手段とすることができる。トーンマッピング関数は、特に、いわゆるガンマ補正、特に、sRGB色空間のsRGBガンマ補正とすることができ、「sRGB」は、「標準赤緑青」を表す。ガンマ補正は、ガンマ補正関数と呼ばれることもある。トーンマッピング関数は、反転可能とすることができる。トーンマッピング関数は、単調増加関数、特に厳密に単調増加関数とすることができる。あるいは、トーンマッピング関数は、単調減少関数、特に厳密に単調減少関数とすることができる。トーンマッピング関数は、非線形とすることができる。モバイル装置によって使用されるトーンマッピング関数は、知られていなくてもよく、および/またはモバイル装置のユーザにとってアクセス可能でなくてもよい。
【0032】
本明細書で使用される「可能性のあるトーンマッピング関数」という用語は、広義の用語であり、当業者に対してその通常的および慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、特定のプロセスまたは例えばモバイル装置などの特定の装置によって使用される可能性が高いトーンマッピング関数を指すことができる。あるいは、可能性のあるトーンマッピング関数は、特定のプロセスまたは例えばモバイル装置などの特定の装置によって実際に使用されるトーンマッピング関数を近似するトーンマッピング関数を指してもよい。特に、可能性のあるトーンマッピング関数は、画像の空間的に分解された光学データのセットの一部とすることができる第2の輝度値を撮像装置によって生成された第1の輝度値に割り当てるためにモバイル装置によって使用される可能性が高いトーンマッピング関数とすることができる。あるいは、可能性のあるトーンマッピング関数は、第1の輝度値に第2の輝度値を割り当てるためにモバイル装置によって実際に使用されるトーンマッピング関数を近似してもよい。可能性のあるトーンマッピング関数は、反転可能とすることができる。反転された可能性のあるトーンマッピング関数は、画像、特に較正画像および/または分析画像に適用されることができる。特に、反転された可能性のあるトーンマッピング関数は、カメラの撮像装置によって生成された可能性のある生データまたは未処理データを判定するために、較正画像および分析画像の空間的に分解された光学データセットのデータに適用されることができる。具体的には、反転された可能性のあるトーンマッピング関数は、少なくとも1つの可能性のある較正測定値を判定するために主要な較正数値に適用されることができる。さらに、反転された可能性のあるトーンマッピング関数は、少なくとも1つの可能性のある分析測定数値を判定するために、以下にさらに記載される主要な分析数値に適用されることができる。
【0033】
本明細書で使用される「関数を判定する」という用語は、広義な用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、先行するプロセスまたは所定の基準にしたがってまたはそれに基づいて関数を指定または規定することを指すことができる。したがって、可能性のあるトーンマッピング関数を判定することは、特に関数の適合性をチェックした後、例えば所定の関数のセットから、関数を計算すること、関数を近似すること、関数を適合させること、関数を外挿すること、および/または関数を選択することを含むことができる。可能性のあるトーンマッピング関数を判定するための他のプロセスも実行可能であるとすることができる。具体的には、他の分析的、非分析的、および反復的なプロセスが使用されて、可能性のあるトーンマッピング関数を判定することができる。
【0034】
本明細書で使用される「画像を分析する」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分析物の濃度を判定するプロセスで使用されることができる画像を指すことができる。ステップd)は、光学試験ストリップの試験フィールドの少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得することを含み、試験フィールドには体液が塗布される。具体的には、2つ、3つ、5つまたはそれ以上の分析画像など、複数の分析画像が取得されることができる。
【0035】
本明細書で使用される「試験フィールド」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、そこに含まれる試験化学物質を有する試験フィールドの少なくとも1つの層を有する1つ以上の材料層を有する例えば円形、多角形または矩形の領域などの少なくとも1つの試験化学物質のコヒーレント量を指すことができる。他の層は、反射特性などの特定の光学特性を提供し、試料を拡散するための拡散特性を提供し、または細胞成分などの試料の粒状成分から分離するためなどの分離特性を提供するために試験フィールドに存在することができる。
【0036】
本明細書で使用される「光学試験ストリップ」という用語は、広義の用語であり、当業者に対してその通常的および慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの試験フィールドがそれに適用されるかまたはそれに一体化された少なくとも1つのストリップ状のキャリアを含む任意の要素または装置を指すことができ、要素は、分析物を検出するか、または体液などの液体試料、具体的には体液の試料中の分析物の濃度を判定するために構成される。光学試験ストリップはまた、試験ストリップまたは試験要素と呼ばれることもある。これらの試験ストリップは、一般に広く使用されており、入手可能である。1つの試験ストリップは、その中に含まれる同一または異なる試験化学物質を有する単一の試験フィールドまたは複数の試験フィールドを担持することができる。光学試験ストリップ、特に試験化学物質を含む試験フィールドは、具体的には、少なくとも1つの分析物の存在下で検出反応、特に着色反応、具体的には着色反応を受けることができ、色形成は、分析物の濃度に関連、例えば比例することができる。分析物の存在、非存在および/または濃度は、検出反応によって検出可能とすることができるため、検出反応はまた、分析物検出反応と呼ばれることもある。本発明の範囲内で使用されることもできる試験要素および試薬に関するいくつかの基本原理は、例えば、J.Honesら:Diabetes Technology and Therapeutics,Vol.10,Supplement 1,2008,pp.10-26に記載されている。
【0037】
ステップd)~e)は、繰り返し実行されることができる。特に、ステップa)~c)は、ステップd)~e)の複数の繰り返しに対して最初に一度だけ、またはステップd)~e)を実行する前に毎回、または所定の頻度で実行されることができる。頻度は、以下のうちの少なくとも1つとすることができる:時間的頻度、ステップd~e)の所定の繰り返し回数によって定義される頻度。
【0038】
ステップa)は、オブジェクトの少なくとも1つの関心領域の一連の較正画像を取得することを含む。この一連は、少なくとも2つの較正画像、具体的には少なくとも3つの較正画像、より具体的には少なくとも5つの較正画像を含むことができる。オブジェクトは、以下からなる群の少なくとも1つの要素を含むことができる:光学試験ストリップ、紙、具体的には白紙。具体的には、オブジェクトは、光学試験ストリップを含むことができ、分析画像は、分析画像が一連の較正画像の一部として取得されることができるように、較正画像の少なくとも1つと一致することができる。さらに、一連の較正画像は、体液が試験フィールドに塗布された状態で取得されることができ、較正画像の少なくとも1つは、試験フィールドの一部を含むことができる。オブジェクトの関心領域は、以下からなる群の少なくとも1つの要素を含むことができる:白色フィールド、黒色フィールド、灰色フィールド、グレースケールステップウェッジ。特に、オブジェクトは、少なくとも2つの関心領域、具体的には、1つの黒色フィールドまたは1つの第1の灰色フィールドおよび1つの白色フィールドまたは1つの第2の灰色フィールドを含むことができる。第1の灰色のフィールドおよび第2の灰色のフィールドは、灰色の色合いが互いに異なることができる。さらに、各較正画像は、少なくとも2つの関心領域、具体的には、1つの黒色フィールドまたは1つの第1の灰色フィールドおよび1つの白色フィールドまたは1つの第2の灰色フィールドを含むことができる。さらに、2つの関心領域間の物理的な輝度比は、知られていることができる。
【0039】
ステップb)は、ステップa)において取得された一連の各較正画像から、モバイル装置のトーンマッピング関数に特徴的な少なくとも1つの主要な較正数値を導出することを含む。特に、各較正画像について、主要な較正数値は、較正画像の関心領域の少なくとも1つの輝度値から導出されることができる。特に、主要な較正数値は、較正画像の関心領域の少なくとも1つの輝度値を含むことができるか、またはそれとすることができる。輝度値は、特に、上述したように第2の輝度値とすることができる。主要な較正数値は、具体的には、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:較正画像の関心領域の輝度値のうちの少なくとも1つ、較正画像の関心領域の複数の輝度値から導出された少なくとも1つの平均輝度値。一連の較正画像のうちの較正画像は、輝度がそれぞれ異なる。ステップa)において、較正画像の輝度は、能動的に、具体的には段階的に変更されることができる。較正画像の輝度は、ステップa)において、以下のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータ値を変更することによって変更されることができる:露出時間、カメラのイメージセンサの光感度、具体的にはイメージセンサのISO感度、光源、具体的にはモバイル装置、特にカメラのLEDの光強度。露出時間を変更することは、カメラのイメージセンサの光感度を変更するよりも、より安定した信頼できる結果、具体的には画像のデータセットの輝度値のより明確な段階的変更を生み出すことがわかった。露出時間は、特に、0.1ミリ秒から100ミリ秒、具体的には0.2ミリ秒から25ミリ秒、より具体的には0.5ミリ秒から15ミリ秒とすることができる。
【0040】
本明細書で使用される「パラメータ値」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、プロセスまたは装置に影響を与える変数または量の値を具体的に指すことができる。パラメータ値は、プロセスまたは装置の設定に特徴的とすることができ、その結果または生成物に影響を与えることができる。
【0041】
パラメータ値は、パラメータ値によって取得された較正画像の関心領域の輝度値が所定の輝度値範囲の一部とすることができるように選択されることができる。輝度値の範囲は、特に、ADCとも呼ばれるアナログ-デジタル変換器などのモバイル装置のカメラの少なくとも1つの構造的特徴、および/または画像の解像度によって判定されることができる。パラメータ値は、輝度値が、ADCによって変換可能なカウントの最大値の10%から100%、具体的には10%から90%、より具体的には20%から90%とすることができるように選択されることができる。8ビットの解像度の画像の場合、輝度パラメータ値は、輝度値が25カウントから255カウント、具体的には25カウントから230カウント、より具体的には50カウントから230カウントとすることができるように選択されることができる。特に、パラメータ値は、カメラのイメージセンサによって検出された輝度値に本質的に比例することができる。
【0042】
ステップc)は、ステップa)において取得された一連の較正画像からの主要な較正数値を考慮に入れることによって、モバイル装置の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数を判定することを含む。ステップc)は、各較正画像について、少なくとも1つのサンプリング点、具体的には少なくとも1対の値を判定することをさらに含むことができ、サンプリング点は、較正画像のうちの1つから導出された主要な較正数値および前記較正画像を取得するために使用されるパラメータ値を含むことができる。
【0043】
本明細書で使用される「サンプリング点」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、値の対によって定義可能な点を指すことができ、その点は、例えば、関数、曲線または別のタイプの相関関係を計算、チェック、または近似することによって、判定の際に寄与することができる。特に、サンプリング点が使用されて、可能性のあるトーンマッピング関数を判定することができる。較正画像に関連するサンプリング点は、具体的には、較正画像の輝度値、具体的には、較正画像の空間的に分解された光学データのセットの一部とすることができるかまたはそれから導出することができる処理済輝度値、および較正画像の生成に使用されるパラメータ値、具体的には露出時間を含むことができる。
【0044】
ステップc)は、一連の較正画像のサンプリング点についての相関関係、特に適合曲線を判定すること、所定の相関関係のセットから相関関係、特に関数を選択することであって、選択された相関関係が一連の較正画像のサンプリング点に適合する、相関関係、特に関数を選択することのうちの少なくとも1つによって可能性のあるトーンマッピング関数を判定することをさらに含むことができる。特に、所定の関数のセットは、sRGBガンマ補正を含むことができ、「sRGB」は、「標準赤緑青」を表す。
【0045】
ステップe)は、モバイル装置のトーンマッピング関数の可能性を考慮に入れることによって、試験フィールドの分析画像から体液中の分析物の濃度を判定することを含む。ステップe)は、特に、試験フィールドの少なくとも1つの部分を示す分析画像の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの輝度値から少なくとも1つの主要な分析数値を導出することを含むことができる。
【0046】
本明細書で使用される「主要な分析数値」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分析プロセス、具体的には体液中の分析物の濃度の判定に使用されることができる少なくとも1つの数値を指すことができる。特に、主要な分析数値は、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:試験フィールドを示す分析画像の部分の輝度値のうちの少なくとも1つ、試験フィールドを示す分析画像の部分の複数の輝度値から導出された少なくとも1つの平均輝度値。
【0047】
さらに、各主要な分析数値から、反転された可能性のあるトーンマッピング関数を主要な分析数値に適用することによって、可能性のある分析物測定数値が導出されることができる。可能性のある分析物測定数値は、少なくとも1つの可能性のある輝度値を含むことができ、可能性のある輝度値は、体液が塗布されている試験フィールドの部分を撮像するときに例えばカメラのイメージセンサなどの撮像装置によって検出された輝度値に近似することができる。さらに、ステップe)において、分析物の濃度は、可能性のある分析物測定数値と分析物の濃度との間の所定の相関関係を使用することによって、可能性のある分析物測定数値から判定されることができる。
【0048】
ステップc)は、ステップa)において取得された一連の較正画像からの主要な較正数値を考慮に入れることによって、モバイル装置の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数を判定することを含む。ステップc)は、反転された可能性のあるトーンマッピング関数を主要な較正数値に適用して、各主要な較正数値について少なくとも1つの可能性のある較正測定数値を判定することをさらに含むことができ、可能性のあるトーンマッピング関数を判定することは、所定のトーンマッピング関数の群から所定のトーンマッピング関数を選択することを含む。
【0049】
可能性のある較正測定数値は、少なくとも1つの可能性のある輝度の値を含むことができ、可能性のある輝度値は、オブジェクト、具体的には光学試験ストリップの関心領域を撮像するときにカメラの例えばイメージセンサなどの撮像装置によって検出された輝度値に近似することができる。選択された所定のトーンマッピング関数は、特に、sRGBガンマ補正とすることができる。さらに、試験点、特に試験値の対の間の関係の線形性がチェックされることができ、各試験点は、可能性のある較正測定数値およびパラメータ値を含むことができる。選択された所定のトーンマッピング関数は、試験点間の関係が線形として分類される場合、可能性のあるトーンマッピング関数として確認されることができる。試験点間の関係が非線形として分類される場合、試験点間の残余相関関係、特に適合曲線が判定されることができ、選択された所定のトーンマッピング関数および残余相関関係が一緒に試験点に適合することができる。試験点間の残余相関関係は、特に放物線、放物線関数または放物線近似によって近似されることができる。具体的には、ステップc)において、可能性のあるトーンマッピング関数は、選択された所定のトーンマッピング関数および残余相関関係の双方を考慮に入れることによって判定されることができる。特に、可能性のあるトーンマッピング関数は、2つのステップを含むことができ、それらは、連続して実行または適用されることができる。特に、可能性のあるトーンマッピング関数は、第1のステップにおいて画像のデータセットのデータに適用されることができるsRGBガンマ補正と、第2のステップにおいて適用されることができる例えば放物線相関関係などの残留相関関係とを含むことができる。
【0050】
追加的または代替的に、選択された所定のトーンマッピング関数は、複数の所定のトーンマッピング関数などの所定のトーンマッピング関数のセットから選択されることができる。特に、複数の所定のトーンマッピング関数から、線形関係に最も近い試験点間の関係をもたらすトーンマッピング関数が選択されることができる。
【0051】
追加的または代替的に、可能性のあるトーンマッピング関数は、具体的には適合曲線によって、試験点間の残余相関関係を判定することによって導出されることができる。例えば、残余相関関係、例えば適合曲線は、具体的には任意の関数、例えば多項式適合などの多項式関数によって近似されることができる。
【0052】
要約すると、以下の3つの方法は、具体的には、ステップc)において可能性のあるトーンマッピング関数を判定するために使用されることができる。
(A)sRGBトーンマッピング関数など、少なくとも1つの所定のトーンマッピング関数を選択し、反転された所定のトーンマッピング関数を主要な較正数値に適用することにより、一連の可能性のある較正測定数値を生成し、その後、可能性のある較正測定数値とパラメータ値との間の残余非線形性を補正するために放物線関数などの残余相関関数を適用し、可能性のあるトーンマッピング関数が、所定のトーンマッピング関数および反転された残余相関関数の組み合わせである、
(B)反転されたトーンマッピング関数が主要な較正数値に適用されるときにトーンマッピング関数のセットからトーンマッピング関数を選択するなど、少なくとも1つの選択基準を使用することにより、トーンマッピング関数のセットから可能性のあるトーンマッピング関数を選択することにより、可能性のある較正測定数値を生成し、可能性のある較正測定数値とパラメータ値との間の最良の線形関係をもたらす。
(C)パラメータ値と主要な較正数値とを相関させる適合関数および/または適合曲線を生成することにより、可能性のあるトーンマッピング関数を判定する。具体的には、適合関数は、それがパラメータ値と主要な較正数値とをリンクすることができるように生成されることができる。
【0053】
これらの方法はまた、最初に方法(B)を適用し、続いて方法(A)の残余補正ステップを適用することによって残余誤差を補正することなどによって組み合わせられることができる。さらに、可能性のあるトーンマッピング関数を判定する他の方法が可能とすることができる。
【0054】
体液中の分析物の濃度を判定する方法は、さらに、以下のステップf)を含むことができる。
f)モバイル装置のトーンマッピング関数を線形トーンマッピング関数、具体的には、例えば元の輝度値、および例えば処理済輝度値などのカメラによって取得された画像の輝度値などのイメージセンサによって検出された輝度値間の比例性によって特徴付けられるトーンマッピング関数に設定する。
【0055】
ステップf)は、具体的にはステップa)の前に行うことができる。特に、トーンマッピング関数が設定されるトーンマッピング関数は、カメラによって取得された画像の輝度値、例えば、処理済輝度値が、例えば元の輝度値などのイメージセンサによって検出された輝度値に等しいようなものとすることができる。特に、トーンマッピング関数が設定されるトーンマッピング関数は、処理済輝度値が元の輝度値と等しいようなものとすることができる。したがって、トーンマッピング関数を輝度値に適用することにより、例えば、輝度値が変化しないままであり、それにより、元の輝度値に等しい処理済輝度値を生成するように、トーンマッピング関数が選択されることができる。さらに、サンプリング点間の関係の線形性がチェックされることができ、各サンプリング点は、較正画像のうちの1つから導出された主要な較正数値と、前記較正画像を取得するために使用されるパラメータ値とを含むことができる。トーンマッピング関数が設定された線形トーンマッピング関数は、サンプリング点間の関係が線形として分類される場合、可能性のあるトーンマッピング関数としてさらに判定されることができる。
【0056】
この場合、分析画像から導出可能な主要な分析数値は、カメラの撮像装置によって検出された輝度値に比例する、具体的には等しくすることができる。したがって、体液中の分析物の濃度は、主要な分析数値から判定されることができる。
【0057】
ステップe)は、モバイル装置のトーンマッピング関数の可能性を考慮に入れることによって、試験フィールドの分析画像から体液中の分析物の濃度を判定することを含む。ステップe)において、分析物の濃度は、具体的には、体液が塗布された試験フィールドとオブジェクトの関心領域との間の輝度比を考慮に入れることによって判定されることができる。体液が塗布された試験フィールドとオブジェクトの関心領域との間の輝度比は、特に、少なくとも1つの分析画像について少なくとも1つの偏差係数とすることができるかまたはそれに等しくすることができる。分析画像は、例えば、分析画像を取得するために使用されるパラメータ値、および少なくとも1つの輝度値を含む主要な分析数値によって特徴付けられることができる。偏差係数は、分析画像のパラメータ値と、可能性のあるトーンマッピング関数を表す曲線上の点のパラメータ値との間の比を具体的に表すことができる。曲線上の点は、例えば、パラメータ値と、主要な分析数値と同じ値、具体的には輝度値を含む主要な較正数値とによって特徴付けられることができる。可能性のあるトーンマッピング関数は、具体的には半対数方式で表されることができ、パラメータ値は、対数方式で表されることができる一方で、輝度値は、線形、具体的には非対数方式で表されることができる。
さらに、複数の少なくとも2つ、具体的には3つ、より具体的には5つの分析画像が使用されることができ、各分析画像に対して少なくとも1つの偏差係数が判定されることができ、少なくとも1つの平均偏差係数が複数の偏差係数から判定されることができる。
さらにまた、オブジェクトは、光学試験ストリップを含むことができ、各分析画像は、分析画像が一連の較正画像の一部として取得されるように、較正画像の1つと一致することができる。
【0058】
体液が塗布された試験フィールドと例えば白色フィールドなどの関心領域との輝度比は、基準輝度比に関連して設定されることができる。基準輝度比は、例えば、体液が塗布されていない試験フィールドと関心領域との間の輝度比とすることができる。具体的には、基準輝度比は、体液を塗布する前の乾燥試験フィールドと例えば白色フィールドなどの関心領域との間の輝度比とすることができるか、またはそれを含むことができる。この場合、体液が塗布されていない試験フィールドの画像は、一連の較正画像の一部として、または別個の画像として取得されることができる。あるいは、基準輝度比は、光学試験ストリップ上の基準フィールドと関心領域との間の輝度比であってもよい。特に、基準輝度比は、体液の塗布前の試験フィールドの色を表すフィールドなどの基準フィールドと、例えば白色フィールドなどの関心領域との間の輝度比とすることができるか、またはそれを含むことができる。この場合、基準輝度比は、分析画像から推定されることができる。2つの輝度比、例えば体液が塗布された試験フィールドとオブジェクトの関心領域との間の輝度比、および基準輝度比の比から、分析物の濃度は、以下のうちの少なくとも1つを使用することによって判定されることができる:コード曲線、ルックアップテーブル、ニューラルネットワーク。
【0059】
この方法で使用されるモバイル装置は、ストレージ装置とも呼ばれる少なくとも1つの記憶装置を備えることができる。ステップc)において判定された可能性のあるトーンマッピング関数は、モバイル装置の少なくとも1つの記憶装置に記憶されることができる。特に、ステップa)~c)を繰り返し実行した後、複数の判定された可能性のあるトーンマッピング関数は、記憶装置に記憶されることができる。ステップc)において判定された可能性のあるトーンマッピング関数は、記憶装置に記憶された可能性のあるトーンマッピング関数のうちの少なくとも1つと比較されることができる。さらに、記憶された可能性のあるトーンマッピング関数の少なくとも1つからのステップc)において判定された可能性のあるトーンマッピング関数の偏差が所定の閾値を超える場合、ステップc)において判定された可能性のあるトーンマッピング関数は破棄されることができる。さらに、統計データ、例えばステップc)において可能性のあるトーンマッピング関数を判定するために使用されることができる、少なくとも1つの適合パラメータの平均値および/または標準偏差は、記憶された複数の可能性のあるトーンマッピング関数から推定されることができる。統計データは、具体的には、評価するために、具体的には最近判定された可能性のあるトーンマッピング関数を受け入れるかまたは拒否するために使用されることができる。最新のトーンマッピング曲線の少なくとも1つの適合パラメータが適合パラメータの平均から所定の閾値以上逸脱している場合、最新のトーンマッピング関数は拒否されることができる。最新のトーンマッピング曲線の少なくとも1つの適合パラメータが適合パラメータの平均から所定の閾値未満だけ逸脱している場合、最新のトーンマッピング関数は受け入れられることができる。可能性のあるトーンマッピング関数の判定における統計データの使用は、特に有利とすることができる。光の反射は、使用できない較正画像および/または使用できないまたは誤った可能性のあるトーンマッピング関数につながる可能性があり、これは、統計データを使用することによってそのようにより容易に識別されることができる。
【0060】
カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法の方法ステップb)、c)およびe)は、コンピュータ実装されることができる。さらに、ステップa)およびd)は、コンピュータによって促されることができる。
【0061】
以下では、体液中の分析物の濃度を判定する方法の異なる任意の実施形態が記載されている。
【0062】
一実施形態では、可能性のあるトーンマッピング関数は、各較正画像から少なくとも1つのサンプリング点を判定することによって判定されることができ、各サンプリング点は、較正画像から導出された主要な較正数値および較正画像の取得時に使用されるカメラのパラメータ値を含むことができる。次に、可能性のあるトーンマッピング関数は、サンプリング点を使用してステップc)において判定されることができる。具体的には、一連の較正画像のサンプリング点にしたがった相関関係、特に適合曲線は、可能性のあるトーンマッピング関数として判定されることができる。追加的または代替的に、相関関係、特に関数は、所定の相関関係のセットからの可能性のあるトーンマッピング関数として選択されることができ、選択された相関関係は、一連の較正画像のサンプリング点に適合する。次に、少なくとも1つの主要な分析数値は、ステップe)の一部として試験フィールドの少なくとも一部を示す分析画像の少なくとも一部の少なくとも1つの輝度値から導出されることができる。主要な分析数値は、具体的には、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:試験フィールドを示す分析画像の部分の輝度値のうちの少なくとも1つ、試験フィールドを示す分析画像の部分の複数の輝度値から導出された少なくとも1つの平均輝度値。さらに、各主要な分析数値から、反転された可能性のあるトーンマッピング関数を主要な分析数値に適用することによって、少なくとも1つの可能性のある測定数値が導出されることができる。可能性のある測定数値は、具体的には、少なくとも1つの可能性のある輝度値を含むことができ、可能性のある輝度値は、カメラのイメージセンサによって検出された輝度値に近似することができる。次に、ステップe)において、分析物の濃度は、可能性のある測定数値と分析物の濃度との間の所定の相関関係を使用することによって、可能性のある測定数値から判定されることができる。
【0063】
さらなる実施形態では、方法のステップc)は、相関関係、特に関数を、所定の相関関係のセットからの可能性のあるトーンマッピング関数として選択または仮定することによって、可能性のあるトーンマッピング関数を判定することを含むことができる。可能性のあるトーンマッピング関数として選択または仮定される相関関係は、特にsRGBガンマ補正とすることができる。次に、反転された可能性のあるトーンマッピング関数を主要な較正数値に適用して、各主要な較正数値について少なくとも1つの可能な測定数値を判定することによって、選択または仮定がチェックされることができる。次に、試験点、特に値の試験対の間の関係の線形性が、ステップc)の一部としてチェックされることができ、各試験点は、可能な測定数値およびパラメータ値を含むことができる。次に、選択または仮定される所定のトーンマッピング関数は、試験点間の関係が線形として分類される場合、ステップc)の一部として、可能性のあるトーンマッピング関数として判定または確認されることができる。分類は、厳密に線形の関係からの偏差を定量化する閾値に依存することができる。さらに、試験点間の関係が非線形として分類される場合、試験点間の残余相関関係、特に適合曲線が判定されることができ、残余相関関係は、試験点に適合することができる。試験点間の残余相関関係は、特に以下の少なくとも1つによって近似されることができる:放物線;放物線関数;放物線適合。次に、ステップc)において判定された可能性のあるトーンマッピング関数は、例えば2段階プロセスにおいて適用されることができる2つの関数を含むことができる。特に、ステップc)において、可能性のあるトーンマッピング関数は、選択された所定のトーンマッピング関数および残余相関関係の双方を考慮に入れることによって判定されることができる。
【0064】
さらなる実施形態では、本方法は、上述したように、ステップf)をさらに含むことができる。したがって、モバイル装置のトーンマッピング関数は、線形トーンマッピング関数、具体的には、イメージセンサによって検出された輝度値とカメラによって取得された画像の輝度値との間の比例性によって特徴付けられるトーンマッピング関数に設定されることができる。ステップf)は、モバイル装置がステップf)において記載されるようにトーンマッピング関数の設定を可能にする場合、モバイル装置によって実際に使用されるトーンマッピング関数が知られることができるように、特に方法のステップa)の先に行うことができる。ステップc)の一部として、較正画像の1つから導出された主要な較正数値と、前記較正画像を取得するために使用されるパラメータ値とを含むサンプリング点が形成されることができる。さらに、サンプリング点間の関係の線形性がチェックされることができる。したがって、モバイル装置のトーンマッピング関数が実際にステップf)において線形トーンマッピング関数に設定されることができるかどうかが特にチェックまたは試験されることができる。サンプリング点間の関係が線形として分類される場合、モバイル装置のトーンマッピング関数がステップf)において設定されることができる線形トーンマッピング関数は、ステップc)において可能性のあるトーンマッピング曲線として判定されることができる。分類は、厳密に線形の関係からの偏差を定量化する閾値に依存することができる。モバイル装置のトーンマッピング関数が設定可能である場合、ステップc)において判定された可能性のあるトーンマッピング関数は、特に、モバイル装置によって実際に使用されるトーンマッピング関数とすることができる。さらに、トーンマッピング関数が線形トーンマッピング関数、具体的には入力データを出力するトーンマッピング関数に設定されている場合、ステップe)は、反転可能トーンマッピング関数の適用なしに分析画像から導出された主要な分析数値を使用することによって、または反転可能トーンマッピング関数を主要な分析数値に適用することによって分析物の濃度を判定することを含むことができる。
【0065】
本発明のさらなる態様では、コンピュータプログラムが開示され、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムがコンピュータ、具体的にはモバイル装置のプロセッサによって実行されると、コンピュータに、上述したようにまたは以下にさらに記載されるように、カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法の方法ステップb)、c)およびe)ならびに任意にf)を実行させるコンピュータ実行可能命令を備える。用語および定義に関して、カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法の文脈で開示される用語および定義が参照されることができる。コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、方法のステップa)にかかる一連の較正画像の取得を促させるコンピュータ実行可能命令をさらに備えることができる。コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、方法のステップd)にかかる少なくとも1つの分析画像の取得を促させるコンピュータ実行可能命令をさらに備えることができる。
【0066】
本発明のさらなる態様では、プロセッサが以下のステップを実行するように構成されている、カメラおよび少なくとも1つのプロセッサを有するモバイル装置が開示されている。
i.)カメラを使用することによってオブジェクトの少なくとも1つの関心領域の一連の較正画像を取得するようにユーザに促すステップであって、較正画像は、輝度がそれぞれ異なる、ユーザに促すステップ;
ii.)ステップi.)において取得された一連の各較正画像から、モバイル装置のトーンマッピング関数に特徴的な少なくとも1つの主要な較正数値を導出するステップ;
iii.)ステップi.)において取得された一連の較正画像からの主要な較正数値を考慮に入れることによって、モバイル装置の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数を判定するステップ;
iv.)光学試験ストリップの試験フィールドの少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得するようにユーザに促すステップであって、試験フィールドには体液が塗布されている、ユーザに促すステップ;および
v.)モバイル装置の可能性のあるトーンマッピング関数を考慮に入れることによって、試験フィールドの分析画像から体液中の分析物の濃度を判定するステップ。
【0067】
用語および定義に関して、カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法の文脈で開示される用語および定義が参照されることができる。モバイル装置、具体的にはプロセッサは、上述したようなまたは以下にさらに記載されるようなカメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法のステップを実行するように構成されることができる。
【0068】
本明細書で使用される「促すこと」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、アクションを呼び出す、勧めるまたは要求することを指すことができる。特に、ユーザは、例えばモバイル装置の画面上でおよび/または可聴信号を介してメッセージを受信することによって写真を撮るなどのアクションを実行するように促されることができる。他の形式の促しが実行可能であってもよい。
【0069】
本発明のさらなる態様では、体液中の分析物の濃度を決定するキットであって、
-上述したようにまたは以下にさらに記載されるように、カメラおよび少なくとも1つのプロセッサを有する少なくとも1つのモバイル装置と、
-少なくとも1つの試験フィールドを有する少なくとも1つの光学試験ストリップと、を備える、キットが開示される。
【0070】
特に、光学試験ストリップは、上述したようなまたは以下にさらに記載されるような光学試験ストリップとすることができる。具体的には、光学試験ストリップは、少なくとも1つの関心領域を含むことができる。
【0071】
用語および定義に関して、カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法の文脈で開示される用語および定義が参照されることができる。光学試験ストリップは、特に、少なくとも1つの関心領域を含むことができる。
【0072】
本発明の異なる態様で上記開示された方法および装置は、当該技術分野において記載されている方法および装置に比べて多くの利点を有する。カメラを有するモバイル装置は、通常、カメラの撮像装置によって取得された生データにトーンマッピング関数を適用して、生データに基づいて処理済データセットを生成する。処理済データは、一般に、カメラによって取得された画像のグラフィカル表現を表示するために使用される。トーンマッピング関数は、一般に非線形関数である。ほとんどの場合、使用されるトーンマッピング関数も生データも、例えばユーザまたはアプリケーションの開発者にとってアクセス可能または利用可能ではない。代わりに、処理済データセットは、一般に、例えば画像ファイルの形式でユーザおよび/またはアプリケーションの開発者にとってアクセス可能である。さらに、ユーザまたはアプリケーション開発者がモバイル装置のトーンマッピング関数を特定のもの、例えば既知のトーンマッピング関数に設定することは大抵の場合に不可能である。光学試験ストリップの試験フィールドの少なくとも一部の分析画像が使用されて、試験フィールドに塗布された体液中の分析物の濃度を判定する場合、処理済データを使用した分析物の濃度の判定は、具体的にはモバイル装置によって使用されるトーンマッピング関数の非線形性に起因して不正確な分析物の濃度につながることがある。したがって、可能性のあるトーンマッピング関数を判定し、分析物の濃度を判定するときに可能性のあるトーンマッピング関数を考慮に入れることは、当該技術分野において知られている方法と比較して、判定された分析物の濃度の精度を高めることができる。
【0073】
さらに、本発明の異なる態様で上記開示された方法および装置は、その高い柔軟性のために特に有利とすることができ、これは、多数のモバイル装置によるこの方法の使用を可能にすることができる。通常、異なるスマートフォンなどの異なるモバイル装置は、特定のモバイル装置による特定の方法の使用を許可または妨害する可能性のある異なる制限を伴うことがある。本発明にかかる方法は、その柔軟性のために、多数のモバイル装置によって使用されることができる。具体的には、これは、例えば血糖値を測定するために、ユーザがそれらのモバイル装置を変更し、同じ使い慣れた方法を使い続けることができるため、優れた使いやすさを意味する。
【0074】
要約すると、さらに可能な実施形態を除外することなく、以下の実施形態が想定されることができる。
【0075】
実施形態1:カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を決定する方法であって、
a)カメラを使用することによってオブジェクトの少なくとも1つの関心領域の一連の較正画像を取得することであって、較正画像は、輝度がそれぞれ異なる、一連の較正画像を取得することと、
b)ステップa)において取得された一連の各較正画像から、モバイル装置のトーンマッピング関数に特徴的な少なくとも1つの主要な較正数値を導出することと、
c)ステップa)において取得された一連の較正画像からの主要な較正数値を考慮に入れることによって、モバイル装置の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数を判定することと、
d)光学試験ストリップの試験フィールドの少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得することであって、試験フィールドには体液が塗布されている、試験フィールドの少なくとも1つの分析画像を取得することと、
e)モバイル装置のトーンマッピング関数の可能性を考慮に入れることによって、試験フィールドの分析画像から体液中の分析物の濃度を判定することと、を含む、方法。
【0076】
実施形態2:分析物がグルコースである、先行する実施形態に記載の方法。
【0077】
実施形態3:体液が血液である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態4:ステップd)~e)が繰り返し実行され、ステップa)~c)が、ステップd)~e)の複数の繰り返しに対して最初に一度だけ、またはステップd)~e)を実行する前に毎回、または所定の頻度で実行される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態5:頻度が、時間的頻度、ステップd~e)の所定の繰り返し回数によって定義される頻度のうちの少なくとも1つである、先行する実施形態に記載の方法。
【0080】
実施形態6:一連が、少なくとも2つの較正画像、具体的には少なくとも3つの較正画像、より具体的には少なくとも5つの較正画像を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
実施形態7:オブジェクトが、光学試験ストリップ、紙、具体的には白紙からなる群の少なくとも1つの要素を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態8:オブジェクトが光学試験ストリップを含み、分析画像が一連の較正画像の一部として取得されるように、分析画像が較正画像のうちの少なくとも1つと一致する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態9:一連の較正画像が、体液が試験フィールドに塗布された状態で取得され、較正画像の少なくとも1つが、試験フィールドの一部を含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0084】
実施形態10:関心領域が、白色フィールド、黒色フィールド、灰色フィールド、グレースケールステップウェッジからなる群の少なくとも1つの要素を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態11:各較正画像が、少なくとも2つの関心領域、具体的には1つの黒色フィールドおよび1つの白色フィールド、具体的には1つの黒色フィールドまたは1つの第1の灰色フィールドおよび1つの白色フィールドまたは1つの第2の灰色フィールドを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態12:2つの関心領域間の物理的輝度比が知られている、先行する実施形態に記載の方法。
【0087】
実施形態13:各較正画像について、主要な較正数値が、較正画像の関心領域の少なくとも1つの輝度値から導出される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態14:主要な較正数値が、較正画像の関心領域の輝度値のうちの少なくとも1つ、較正画像の関心領域の複数の輝度値から導出された少なくとも1つの平均輝度値のうちの少なくとも1つを含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0089】
実施形態15:ステップa)において、較正画像の輝度が、能動的に、具体的には段階的に変更される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態16:較正画像の輝度が、ステップa)において、露出時間、カメラのイメージセンサの光感度、具体的にはイメージセンサのISO感度、光源、具体的にはモバイル装置、特にカメラのLEDの光強度のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータ値を変更することによって変更される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態17:パラメータ値が、パラメータ値によって取得された較正画像の関心領域の輝度値が所定の輝度値範囲の一部であるように選択される、先行する実施形態に記載の方法。
【0092】
実施形態18:パラメータ値が、カメラのイメージセンサによって検出された輝度値に本質的に比例する、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態19:ステップc)が、各較正画像について、少なくとも1つのサンプリング点、具体的には少なくとも1対の値を判定することを含み、サンプリング点が主要な較正数値およびパラメータ値を含む、3つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態20:ステップc)が、一連の較正画像のサンプリング点についての相関関係、特に適合曲線を判定すること、所定の相関関係のセットから相関関係、特に関数を選択することであって、選択された相関関係が一連の較正画像のサンプリング点に適合する、相関関係、特に関数を選択することのうちの少なくとも1つによって可能性のあるトーンマッピング関数を判定することを含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0095】
実施形態21:所定の関数のセットがsRGBガンマ補正を含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0096】
実施形態22:ステップe)が、試験フィールドの少なくとも1つの部分を示す分析画像の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの輝度値から少なくとも1つの主要な分析数値を導出することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態23:主要な分析数値が、試験フィールドを示す分析画像の部分の輝度値のうちの少なくとも1つ、試験フィールドを示す分析画像の部分の複数の輝度値から導出された少なくとも1つの平均輝度値のうちの少なくとも1つを含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0098】
実施形態24:各主要な分析数値から、反転された可能性のあるトーンマッピング関数を主要な分析数値に適用することによって、少なくとも1つの可能性のある分析物測定数値が導出される、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態25:可能性のある分析物測定数値が、少なくとも1つの可能性のある輝度値を含み、可能性のある輝度値が、体液が塗布されている試験フィールドの部分を撮像するときにカメラのイメージセンサによって検出された輝度値に近似する、先行する実施形態に記載の方法。
【0100】
実施形態26:ステップe)において、分析物の濃度が、可能性のある分析物測定数値と分析物の濃度との間の所定の相関関係を使用することによって、可能性のある分析物測定数値から判定される、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態27:方法のステップc)が、反転された可能性のあるトーンマッピング関数を主要な較正数値に適用して、各主要な較正数値について少なくとも1つの可能性のある較正測定数値を判定することを含み、トーンマッピング関数が、所定のトーンマッピング関数の群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施形態28:選択された所定のトーンマッピング関数がsRGBガンマ補正である、先行する実施形態に記載の方法。
【0103】
実施形態29:試験点、特に値の試験対の間の関係の線形性がチェックされ、各試験点が可能性のある較正測定数値およびパラメータ値を含む、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
実施形態30:試験点間の関係が線形として分類される場合、選択された所定のトーンマッピング関数が可能性のあるトーンマッピング関数として判定される、先行する実施形態に記載の方法。
【0105】
実施形態31:試験点間の関係が非線形として分類される場合、試験点間の残余相関関係、特に適合曲線が判定され、残余相関関係が試験点に適合する、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態32:試験点間の残余相関関係が、以下のうちの少なくとも1つによって近似される、先行する実施形態に記載の方法:放物線、放物線関数、放物線適合。
【0107】
実施形態33:ステップc)において、可能性のあるトーンマッピング関数が、選択された所定のトーンマッピング関数および残余相関関係の双方を考慮に入れることによって判定される、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態34:方法が、さらに、
f)モバイル装置のトーンマッピング関数を線形トーンマッピング関数、具体的には、例えば元の輝度値、および例えば処理済輝度値などのカメラによって取得された画像の輝度値などのイメージセンサによって検出された輝度値間の比例性によって特徴付けられるトーンマッピング関数に設定することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態35:ステップf)がステップa)に先行する、先行する実施形態に記載の方法。
【0110】
実施形態36:サンプリング点間の関係の線形性がチェックされ、各サンプリング点が、較正画像のうちの1つから導出された主要な較正数値と、前記較正画像を取得するために使用されるパラメータ値とを含む、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態37:サンプリング点間の関係が線形として分類される場合、線形トーンマッピング曲線が可能性のあるトーンマッピング曲線として判定される、先行する実施形態に記載の方法。
【0112】
実施形態38:ステップe)において、分析物の濃度が、体液が塗布された試験フィールドとオブジェクトの関心領域との間の輝度比から判定される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態39:体液が塗布された試験フィールドとオブジェクトの関心領域との間の輝度比が、少なくとも1つの分析画像についての少なくとも1つの偏差係数であるかまたはそれに等しく、分析画像が、少なくとも1つの輝度値および分析画像を取得するために使用されるパラメータ値を含む主要な分析数値によって特徴付けられ、偏差係数が、分析画像のパラメータ値と、可能性のあるトーンマッピング関数を表す曲線上の点のパラメータ値との間の比を表し、曲線上の点がパラメータ値および輝度値によって特徴付けられ、曲線上の点の輝度値および主要な分析数値が同一である、先行する実施形態に記載の方法。
【0114】
実施形態40:可能性のあるトーンマッピング関数が半対数方式で表され、パラメータ値が対数方式で表される一方で、輝度値が線形、具体的には非対数方式で表される、先行する実施形態に記載の方法。
【0115】
実施形態41:複数の少なくとも2つ、具体的には3つ、より具体的には5つの分析画像が使用され、各分析画像に対して少なくとも1つの偏差係数が判定され、少なくとも1つの平均偏差係数が複数の偏差係数から判定される、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
実施形態42:オブジェクトが光学試験ストリップを含み、分析画像が一連の較正画像の一部として取得されるように、各分析画像が少なくとも1つの較正画像と一致する、先行する実施形態に記載の方法。
【0117】
実施形態43:ステップc)において判定された可能性のあるトーンマッピング関数が、モバイル装置の少なくとも1つの記憶装置に記憶される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
実施形態44:ステップa)~c)を繰り返し実行した後、複数の判定されたトーンマッピング関数が記憶装置に記憶される、先行する実施形態に記載の方法。
【0119】
実施形態45:ステップc)において判定されたトーンマッピング関数が、記憶装置に記憶されたトーンマッピング関数のうちの少なくとも1つと比較される、先行する実施形態に記載の方法。
【0120】
実施形態46:記憶されたトーンマッピング関数の少なくとも1つからのステップc)において判定されたトーンマッピング関数の偏差が所定の閾値を超える場合、ステップc)において判定されたトーンマッピング関数が破棄される、先行する実施形態に記載の方法。
【0121】
実施形態47:方法ステップb)、c)およびe)がコンピュータ実装される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
実施形態48:さらに、ステップa)およびd)がコンピュータによって促される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
実施形態49:コンピュータプログラムがコンピュータ、具体的にはモバイル装置のプロセッサによって実行されると、コンピュータに、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法ステップb)、c)およびe)ならびに任意にf)を実行させる、コンピュータ実行可能命令を備えるコンピュータプログラム。
【0124】
実施形態50:コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、方法のステップa)にかかる一連の較正画像の取得を促させるコンピュータ実行可能命令をコンピュータプログラムがさらに含む、先行する実施形態に記載のコンピュータプログラム。
【0125】
実施形態51:コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、方法のステップd)にかかる少なくとも1つの分析画像の取得を促させるコンピュータ実行可能命令をコンピュータプログラムがさらに含む、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【0126】
実施形態52:カメラおよびプロセッサを有するモバイル装置であって、プロセッサが、
i.)カメラを使用することによってオブジェクトの少なくとも1つの関心領域の一連の較正画像を取得するようにユーザに促すステップであって、較正画像は、輝度がそれぞれ異なる、ユーザに促すステップと、
ii.)ステップi.)において取得された一連の各較正画像から、モバイル装置のトーンマッピング関数に特徴的な少なくとも1つの主要な較正数値を導出するステップと、
iii.)ステップi.)において取得された一連の較正画像からの主要な較正数値を考慮に入れることによって、モバイル装置の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数を判定するステップと、
iv.)光学試験ストリップの試験フィールドの少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得するようにユーザに促すステップであって、試験フィールドには体液が塗布されている、ユーザに促すステップと、
v.)モバイル装置の可能性のあるトーンマッピング関数を考慮に入れることによって、試験フィールドの分析画像から体液中の分析物の濃度を判定するステップと、を実行するように構成されている、モバイル装置。
【0127】
実施形態53:モバイル装置、具体的にはプロセッサが、カメラを有するモバイル装置を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法に言及する先行する請求項のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように構成されている、先行する実施形態に記載のモバイル装置。
【0128】
実施形態54:体液中の分析物の濃度を判定するキットであって、
-モバイル装置に言及する先行する請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つのモバイル装置と、
-少なくとも1つの試験フィールドを有する少なくとも1つの光学試験ストリップと、を備える、キット。
【0129】
実施形態55:光学試験ストリップが少なくとも1つの関心領域をさらに含む、先行する実施形態に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0130】
さらなる任意の特徴および実施形態は、好ましくは従属請求項と併せて、実施形態の後続の説明においてより詳細に開示される。その中で、それぞれの任意の特徴は、当業者が理解するように、独立した方法で、ならびに任意の実行可能な組み合わせで実現されることができる。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって制限されない。実施形態は、図に概略的に示されている。その中で、これらの図の同一の参照符号は、同一または機能的に同等の要素を指す。
図では以下のとおりである:
【0131】
図1】体液中の分析物の濃度を判定する方法のフローチャートを示している。
図2】方法のステップc)に記載されるように判定された可能性のあるトーンマッピング関数を示している。
図3】グレースケールステップウェッジ(3A)と、グレースケールステップウェッジを使用して取得された一連の較正画像から判定された複数のサンプリング点(3B)とを示している。
図4】一連の較正画像(4A)と、図4Aに示される一連の較正画像から部分的に判定された可能性のあるトーンマッピング関数(4B)とを示している。
図5】それぞれが複数の異なる可能性のあるトーンマッピング関数を示しており、5Aでは、露出時間が変更されるとともに、5Bでは、可能性のあるトーンマッピング関数が基づく較正画像の生成のためにカメラのISO感度が変更されている。
図6】ステップc)において記載されたように判定された可能性のあるトーンマッピング関数(6A)、sRGBガンマ補正の補正後の図6Aの可能性のあるトーンマッピング関数(6B)、および図6Bに示す曲線に近似する放物線適合(6C)を示している。
図7】ステップc)において記載されたように判定された可能性のあるトーンマッピング関数、ならびに分析画像のデータセットの一部としてのカメラの露出時間および試験フィールドの対応する輝度値によって判定された値の対(7A)と、対数目盛の輝度値で示された図7Aのデータ(7B)とを示している。
図8】モバイル装置および光学試験ストリップを備えるキットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0132】
本発明の第1の態様では、カメラ112を有するモバイル装置110を使用することによって体液中の分析物の濃度を判定する方法が開示される。図1は、方法のフローチャートを示しており、モバイル装置110の構成要素は、図8に示されている。本方法のさらなる詳細は、図2から図7Bに示されている。以下では、これら全ての図が参照される。
【0133】
本方法は、具体的には所与の順序で実行されることができる以下のステップを含む。それでも、異なる順序も可能とすることができる。さらに、2つ以上の方法ステップを完全にまたは部分的に同時に実行することができてもよい。さらに、1つ以上、さらには全ての方法ステップを1回または繰り返し実行することができてもよい。本方法は、本明細書に記載されていない追加の方法ステップを含むことができる。方法ステップは、以下のとおりである。
a)カメラ112(図8を参照)を使用することによってオブジェクト118の少なくとも1つの関心領域116の一連の較正画像114(例えば図4Aを参照)を取得することであって、較正画像114は、輝度がそれぞれ異なる、一連の較正画像を取得すること、
b)ステップa)において取得された一連の各較正画像から、モバイル装置110のトーンマッピング関数に特徴的な少なくとも1つの主要な較正数値を導出すること、
c)ステップa)において取得された一連の較正画像114からの主要な較正数値を考慮に入れることによって、モバイル装置110の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数120(例えば、図2図4B図5A図5B図6A図7Aおよび図7Bを参照)を判定すること、
d)光学試験ストリップ124の試験フィールド122の少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得することであって、試験フィールド122には体液が塗布されている(例えば図8を参照)、試験フィールド122の少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得すること、および、
e)モバイル装置110の可能性のあるトーンマッピング関数120を考慮に入れることによって、試験フィールド122の分析画像から体液中の分析物の濃度を判定すること。
【0134】
図1に示すフローチャートでは、ステップa)は、参照符号126によって表され、ステップb)は、参照符号128によって表され、ステップc)は、参照符号130によって表され、ステップd)は、参照符号132によって表され、ステップe)は、参照符号134によって表される。
【0135】
図2は、体液中の分析物の濃度を判定する方法のステップc)にしたがって判定された典型的な可能性のあるトーンマッピング関数120を示している。図2の図のx軸は、ミリ秒単位の露出時間136を示している。図2の図のy軸は、白色フィールド143の輝度値138を示しており、白色フィールドは、図2に示される場合には関心領域116である。例えば、黒色フィールド139、灰色フィールドおよびグレースケールのステップウェッジ142など、他の関心領域も可能である。較正画像114は、輝度がそれぞれ異なる。ステップa)において、較正画像114の輝度は、能動的に、具体的には段階的に変更されることができる。図2に示される場合、較正画像114の輝度は、モバイル装置110のカメラ112の露出時間136を変更することによって変更される。モバイル装置110は、トーンマッピング関数を使用して、カメラ112の撮像装置141によって生データとして生成された各輝度値138に、較正画像114の処理済データとして画像ファイルの一部とすることができる輝度値138を割り当てることができる。処理済輝度値138は、較正画像から導出されることができ、主要な較正数値として機能することができる。較正画像114の処理済データを含むデータセットは、例えばユーザにとってアクセス可能とすることができる。
【0136】
モバイル装置110の生データおよびトーンマッピング関数の双方は知られていなくてもよい。モバイル装置110の可能性のあるトーンマッピング関数120を判定するために、処理済輝度値138は、較正画像114の処理済データを含む各データセットから導出されることができる。較正画像114の処理済輝度値138と、図2の場合は露出時間136である較正画像114の生成に使用されるカメラ112のパラメータ値は、一緒にサンプリング点140を形成することができる。図2は、合計14個のサンプリング点140を示している。可能性のあるトーンマッピング関数120は、主要な較正数値、特に処理済輝度値138、具体的にはサンプリング点140を使用して判定されることができる。特に、可能性のあるトーンマッピング関数は、関数をサンプリング点140に適合させることによって判定されることができる。
【0137】
図3Aは、関心領域116として機能することができるグレースケールステップウェッジ142を示している。図3Bの図のx軸は、グレースケール値144を示している。グレースケールステップウェッジのグレースケール値144は、段階的に変化することができる。図3Bの図のy軸は、RGB色空間の赤色チャネル146の値、具体的には赤色チャネルの強度を示している。他の色チャネルもまた使用されることができる。図3Bは、4セットのサンプリング点をさらに示している。各セットについて、100%、48.8%、29.4%および23.6%のフィルタ値を有する異なる中性密度フィルタが使用される。図3Bに示されるサンプリング点140は、x座標としてのグレースケールステップウェッジ142のフィールドの少なくとも1つのグレースケール値144と、y座標としての較正画像114の赤色チャネル146の処理済値とを含むことができる。100%の中性密度フィルタによって取得されたサンプリング点は、参照符号148によって参照される。48.8%の中性密度フィルタによって取得されたサンプリング点は、参照符号150によって参照される。29.4%の中性密度フィルタによって取得されたサンプリング点は、参照符号152によって参照される。13.6%の中性密度フィルタによって取得されたサンプリング点は、参照符号154によって参照される。セットのそれぞれは、可能性のあるトーンマッピング関数120を判定するために使用されることができる。
【0138】
図4Aは、例示的な一連の較正画像114を示しており、この場合、オブジェクト118は、試験フィールド122と、例えば白色フィールド143または黒色フィールド139とすることができる関心領域116とを含む光学試験ストリップ124である。異なる較正画像114の露出時間136は、異なっていてもよい。したがって、図4Aに示される一連の左端および左への第1および第2の較正画像114の露出時間136は、一連の中央の第3の較正画像の露出時間の0.25倍および0.5倍とすることができるとともに、一連の右および右端への第4および第5の較正画像の露出時間は、一連の中央の第3の較正画像114の露出時間の2倍および4倍とすることができる。上述したように、「画像」という用語は、具体的には、空間的に分解された光学データのセットを指すことができる。特に図4Aの場合、データセットのグラフィカル表現はまた、画像と呼ばれることもある。
【0139】
図4Bは、露出時間136が異なる一連の較正画像114を使用して判定された、さらに例示的な可能性のあるトーンマッピング関数120を示している。図4Bの図のx軸は、露出時間136をミリ秒単位で示している。図4Bの図のy軸は、白色フィールドの輝度値138を示している。可能性のあるトーンマッピング関数120は、7つのサンプリング点140を使用して判定される。各サンプリング点140は、x座標としての較正画像114が取得される露出時間136と、露出時間136によって生成される較正画像114の関心領域116、具体的には白色フィールド143の輝度値138の処理済値とを含むことができる。
【0140】
図5Aおよび図5Bは、本発明にかかる方法を使用して判定された可能性のあるトーンマッピング関数120を示している。一連の較正画像114のうちの較正画像114の輝度は、ステップa)にしたがって異なる。図5Aの場合、較正画像114の輝度は、カメラのISO感度が100の値で一定に保たれている間、露出時間136を変更することによって能動的に変更される。図5Bの場合、較正画像114の輝度は、露出時間136が1ミリ秒で一定に保たれている間、カメラ112のISO感度を変更することによって能動的に変更される。どちらの場合も、使用されるモバイル装置は、Samsung J7であり、赤色チャネルが使用されて、赤色チャネルの輝度値138の形式で主要な較正数値137を導出する。図5Aおよび図5Bの双方について、灰色フィールドは、関心領域116として機能する。図5Aおよび図5Bの双方において、各セットが2つの可能性のあるトーンマッピング関数120を含む5つのデータセットが示されている。セットは、異なる輝度値138を有する灰色フィールドの異なる灰色レベルに対応する。20%、30%、40%、50%、および60%の相対輝度値を有する灰色レベルは、それぞれ参照符号158、160、162、164、および166によって参照される。特に、%で与えられる相対輝度値は、白色と混合された黒色の割合またはパーセンテージを具体的に示すことができる。したがって、20%の相対輝度値を有する灰色レベルは、例えば、20%が黒色で80%が白色の灰色レベルを示すことができる。図5Aに表示されるサンプリング点140は、x座標としての較正画像114が取得される露出時間136と、y座標としての較正画像114の灰色フィールドの処理済輝度値138とを含むことができる。図5Bに表示されるサンプリング点140は、x座標としてのカメラ、特に、較正画像114が取得される撮像装置141のISO感度と、y座標としての較正画像114の灰色フィールドの処理済輝度値138とを含むことができる。図5Aおよび図5Bは、方法のステップc)にしたがって判定された可能性のあるトーンマッピング関数120をさらに示している。図5Aおよび図5Bを比較することによって見られるように、露出時間136の能動的変動は、特により滑らかなトーンマッピング曲線120の形式で、ISO感度の能動的変動よりも一貫した結果を提供する。
【0141】
本方法のステップa)は、オブジェクト118の少なくとも1つの関心領域116の一連の較正画像114を取得することを含む。オブジェクト118はまた、複数の関心領域116、例えば、1つの白色フィールド143および1つの黒色フィールド139などの2つの関心領域116を含むことができる。図6Aは、方法のステップc)にしたがって判定された可能性のあるトーンマッピング関数120を示している。ステップc)において考慮される主要な較正数値は、図6Aの場合のように、ステップa)において取得された較正画像から導出された輝度値138とすることができる。輝度値138は、具体的には、カメラ112の撮像装置141によって検出された輝度値にトーンマッピング関数を適用することによってモバイル装置によって生成された処理済輝度値138とすることができる。図6Aに見られるように、処理済輝度138の値は、サンプリング点140の一部を形成することができる。特に、図6Aに示されるように、較正画像114のデータセットの一部とすることができるか、またはデータセットから導出されることができる処理済輝度値138は、サンプリング点140のy座標とすることができる。さらに、較正画像114の露出時間136は、較正画像114の輝度を変更するために変更されることができる。具体的には、サンプリング点140は、図6Aに示されるように、x座標としての較正画像114の露出時間136を含むことができる。図6Aに表示される図は、y軸上に較正画像114の処理済輝度値138を、x軸上の露出時間136に対してプロットしている。図6Aの図は、5つのサンプリング点140を示しており、その主要な較正数値137、特にy座標として使用される輝度値138は、オブジェクト118の白色フィールド143の段階的な露出不足によって生成された較正画像114から導出される。これらのサンプリング点140は、参照符号168によってさらにマークされている。図6Aの図は、さらに、5つのサンプリング点140を示しており、その主要な較正数値137、特にy座標として使用される輝度値138は、オブジェクト118の黒色フィールド139の段階的な露出過度によって生成された較正画像114から導出される。これらのサンプリング点140は、参照符号170によってマークされている。
【0142】
図6Bは、反転されたsRGBガンマ補正の適用によって達成された部分線形化後の図6Aの可能性のあるトーンマッピング関数120を示している。図6Bの図では、輝度値138は、y軸上にプロットされ、露出時間136は、x軸上にプロットされている。図6Bに表示された結果の関数174から明らかになるように、結果の関数174は、ステップc)にしたがって判定され且つ図6Aに表示された可能性のあるトーンマッピング関数120がsRGBガンマ補正と同一でなくてもよいように、いくらかの残余非線形性を示している。したがって、モバイル装置110によって実際に使用されるトーンマッピング関数は、sRGB補正と同一でなくてもよい。
【0143】
図6Bでは、sRGBガンマ補正の適用後の輝度値138が、参照符号172でさらにマークされている。結果の関数174のサンプリング点140は、y座標としての反転されたガンマ補正172を適用した後の輝度値138と、x座標としての対応する較正画像114の露出時間136とを含むことができる。可能性のあるトーンマッピング関数120は、例えばカメラ112の撮像装置141によって生成されたデータセットにトーンマッピング関数を適用することによって、モバイル装置110によって使用される可能性が高いトーンマッピング関数とすることができる。あるいは、可能性のあるトーンマッピング関数120は、モバイル装置110によって実際に使用されるトーンマッピング関数を近似することができる。可能性のあるトーンマッピング関数120の判定の一部として、結果の関数174または少なくともその一部は、例えば、図6Cに示すように、放物線適合176によって近似されることができる。結果の関数174の関連する部分は、試験フィールド122の分析画像から分析物の濃度を判定するのに適した輝度値138を含むことができる。図6Cの関連する部分によって構成されるサンプリング点140は、ボックスおよび参照符号178によってマークされている。したがって、例えば二次項などの単一のパラメータによって、sRGBガンマ補正からの可能性のあるトーンマッピング関数120の偏差を記述することが可能である。さらに、例えば三次項など、より高次項などのさらなる項が使用されることができる。
【0144】
本方法のステップe)は、モバイル装置110のトーンマッピング関数120の可能性を考慮に入れることによって、試験フィールド122の分析画像から体液中の分析物の濃度を判定することを含む。ステップe)において、分析物の濃度は、具体的には、体液が塗布された試験フィールド122とオブジェクト118の関心領域116との間の輝度比から判定されることができる。体液が塗布された試験フィールド122と関心領域116との間の輝度比は未知であることがあり、判定されなければならないことがある。特に、モバイル装置110によって適用されるトーンマッピング曲線の非線形性のために、分析画像の処理済データセットおよび較正画像114の処理済データセットから利用可能なそれぞれの輝度値138を除算することによって、前記輝度比を判定することができない場合がある。
【0145】
図7Aおよび図7Bは、体液が塗布された試験フィールド122と関心領域116との間の輝度比を判定する、特に近似する任意の方法を示している。図7Aは、露出時間136がx軸上にプロットされ、輝度値がy軸上にプロットされた図を示している。この図は、同様に示されているサンプリング点140を使用して判定された可能性のあるトーンマッピング関数120を示している。y座標として、サンプリング点140は、主要な較正数値、この場合、具体的には、関心領域116としてこの場合は機能する白色フィールド143の輝度値138を含むことができ、輝度値138は、較正画像114の処理済データセットから導出される。x座標として、サンプリング点140は、較正画像114を取得するために使用される露出時間136を含むことができる。図7Aにさらに示されるのは、y座標によって判定される分析点184であり、これは、主要な分析数値186、具体的には、分析画像の処理済データセットから導出されることができるときに体液が塗布された試験フィールド122の輝度値138、およびx座標、具体的には、分析画像を取得するために使用される露出時間136とすることができる。具体的には、図7Aに示されるデータは、同時に取得されることができる。具体的には、各分析画像は、較正画像114の1つと一致することができる。
【0146】
図7Bは、図7Aに表示されたデータ、具体的には、可能性のあるトーンマッピング関数120、サンプリング点140、および分析点184を、対数目盛のx軸によって示している。図7Bは、さらに、分析点184が、それらのx座標を適応させることによって、可能性のあるトーンマッピング関数120またはその外挿にシフトされることができることを矢印によって示している。シフトは、具体的には、分析点184のx座標に共通の偏差係数を乗算することによって、全ての分析点184に対して達成されることができる。偏差係数は、体液が塗布された試験フィールド122とオブジェクト118の関心領域116との間の輝度比に固有とすることができるか、またはそれを反映することができる。図7Bの図では、偏差係数は、0.465とすることができる。シフトされた分析点は、参照符号188によってマークされている。
【0147】
体液が塗布された試験フィールド122と関心領域116との輝度比は、基準輝度比に関連して設定されることができる。基準輝度比は、例えば、体液が塗布されていない試験フィールド122と関心領域116との間の輝度比とすることができる。あるいは、基準輝度比は、光学試験ストリップ124上の基準フィールドと関心領域116との間の輝度比であってもよい。2つの輝度比、例えば体液が塗布された試験フィールド122とオブジェクト118の関心領域116との間の輝度比、および基準輝度比の比から、分析物の濃度は、以下のうちの少なくとも1つを使用することによって判定されることができる:コード曲線、ルックアップテーブル、ニューラルネットワーク(図示せず)。
【0148】
上記概説したように、図8では、モバイル装置110の実施形態が斜視図で示され、モバイル装置110は、カメラ112および少なくとも1つのプロセッサ180を有する。プロセッサ180は、例えば、以下のステップを実行するようにプログラミングによって構成されている。
i.)カメラ112を使用することによって、オブジェクト118の少なくとも1つの関心領域116の一連の較正画像114を取得するようにユーザに促すステップであって、較正画像114は、輝度がそれぞれ異なる、ユーザに促すステップ;
ii.)ステップi)において取得された一連の各較正画像114から、モバイル装置110のトーンマッピング関数に特徴的な少なくとも1つの主要な較正数値137を導出するステップ;
iii.)ステップi)において取得された一連の較正画像114からの主要な較正数値137を考慮に入れることによって、モバイル装置110の少なくとも1つの可能性のあるトーンマッピング関数120を判定するステップ;
iv.)光学試験ストリップ124の試験フィールド122の少なくとも一部の少なくとも1つの分析画像を取得するようにユーザに促すステップであって、試験フィールド122には体液が塗布されている、ユーザに促すステップ;および
v.)モバイル装置110の可能性のあるトーンマッピング関数120を考慮に入れることによって、試験フィールド122の分析画像から体液中の分析物の濃度を判定するステップ。
【0149】
図8は、体液中の分析物の濃度を判定するキット182であって、キット182が、
-上述したようにまたは以下にさらに記載されるように、カメラ110および少なくとも1つのプロセッサ180を有する少なくとも1つのモバイル装置110と、
-少なくとも1つの試験フィールド122を有する少なくとも1つの光学試験ストリップ124と、を備える、キットの実施形態を示している。
【0150】
光学試験ストリップ124は、特に少なくとも1つの関心領域116をさらに含むことができる。
【符号の説明】
【0151】
110 モバイル装置
112 カメラ
114 較正画像
116 関心領域
118 オブジェクト
120 可能性のあるトーンマッピング関数
122 試験フィールド
124 光学試験ストリップ
126 ステップa)
128 ステップb)
130 ステップc)
132 ステップd)
134 ステップe)
136 露出時間
137 主要な較正数値
138 輝度値
139 黒色フィールド
140 サンプリング点
141 撮像装置
142 グレースケールステップウェッジ
143 白色フィールド
144 グレースケール値
146 赤色チャネルの値
148 100%の中性密度フィルタ
150 48.8%の中性密度フィルタ
152 29.4%の中性密度フィルタ
154 13.6%の中性密度フィルタ
156 ISO感度
158 20%の相対輝度値を有する灰色レベル
160 30%の相対輝度値を有する灰色レベル
162 40%の相対輝度値を有する灰色レベル
164 50%の相対輝度値を有する灰色レベル
166 60%の相対輝度値を有する灰色レベル
168 白色フィールドの露出不足
170 黒色フィールドの露出過度
172 逆ガンマ補正の適用後の輝度値
174 結果の関数
176 放物線キット
178 結果の関数の関連セクションのサンプリング点
180 プロセッサ
182 キット
184 分析点
186 主要な分析数値
188 シフトされた分析点
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8