(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】作業支援装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2022060588
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中原 弘陽
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】平川 晃暉
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-011006(JP,A)
【文献】特開2021-094650(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213235(WO,A1)
【文献】特開2012-213543(JP,A)
【文献】特開2021-049601(JP,A)
【文献】特開2020-189377(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104534(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0303950(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111571568(CN,A)
【文献】国際公開第2014/195373(WO,A1)
【文献】特開2020-055685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者(P)が手(Ph)で重量物(W)を持ち上げる作業を補助する作業支援装置であって、
作業者(P)の胴体(Pm)に取付可能な取付部(10)と、作業者(P)の腕(Pa)又は手(Ph)に装着可能な装着部(20)と、その装着部(20)が一端部(40a)に結合されるベルト(40)と、前記取付部(10)に連結されると共に前記ベルト(40)の他端側を巻取り可能なベルト巻取り装置(R)とを備え、
前記ベルト巻取り装置(R)は、前記ベルト(40)に対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構(31)と、通常は引出し方向への更なる引出しを許容しつつ前記ベルト(40)を任意の引出し長さでの引出し状態に保持可能であるが、解除作動時には前記引出し状態を解除可能である保持・解除機構(30)と、前記保持・解除機構(30)を解除作動させ得る解除指令装置(C)とを有していて、前記ベルト(40)の中間部を作業者(P)の肩(Ps)に摺動可能に掛けた状態で前記一端部(40a)を引くことで、該ベルト(40)を任意の引出し長さで保持するとともに、前記作業の開始に応じて前記解除指令装置(C)により前記保持・解除機構(30)を解除作動させることで、前記ベルト(40)に前記付勢機構(31)による巻取り方向の付勢力を作用させることを特徴とする作業支援装置。
【請求項2】
前記ベルト巻取り装置(R)は、前記取付部(10)を介して作業者(P)の腰部(Pw)に取付けられることを特徴とする、請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記解除指令装置(C)は、前記作業の際の前記装着部(20)と重量物(W)間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置(51)の検知結果に基づき該作業の開始が判断されるのに応じて前記保持・解除機構(30)を自動で解除作動させる自動式の指令装置(50)、或いは任意操作可能な解除スイッチ(62)への操作入力に連動して前記保持・解除機構(30)を手動で解除作動させる手動式の指令装置(60)のうち、少なくとも一方の指令装置(50,60)を含むことを特徴とする、請求項
1または2に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記装着部(20)は、作業者(P)の少なくとも一つの指(Pf)に引っ掛かった状態で該装着部(20)に手(Ph)を通して装着可能な形状であることを特徴とする、請求項1~
3の何れか1項に記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記取付部(10)は、作業者(P)の腰部(Pw)を一周して該腰部(Pw)に保持される腰ベルト(71)を含み、その腰ベルト(71)に前記ベルト巻取り装置(R)が連結されることを特徴とする、請求項1~
4の何れか1項に記載の作業支援装置。
【請求項6】
前記腰ベルト(71)には、作業者(P)の少なくとも一方の大腿部(Pl)を通すよう該大腿部(Pl)に装着可能な脚ベルト(75)が接続されることを特徴とする、請求項
5に記載の作業支援装置。
【請求項7】
前記ベルト(40)は、これの前記他端側から前記一端部(40a)に向かう途中で二股に分かれる分岐部(40j)を有することを特徴とする、請求項1~
6の何れか1項に記載の作業支援装置。
【請求項8】
作業者(P)の少なくとも肩(Ps)の上部を覆うように作業者(P)が着用可能な作業用上着(80)を更に備え、前記上着(80)には、前記ベルト(40)の中間部が作業者(P)の肩(Ps)に掛かった状態を維持すべく該ベルト(40)を摺動可能に通すベルトガイド(81f,81r)が設けられることを特徴とする、請求項1~
7の何れか1項に記載の作業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援装置、特に作業者が手で重量物を持ち上げる作業を補助する作業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業支援装置は、例えば特許文献1~3にも示されるように従来公知である。これらの特許文献には、補助索条(例えばハーネス、紐状部材、ワイヤ等)の一端部を作業者の腕又は手に装着し、その補助索条から作業者の腕又は手に作業補助のための助勢力を付与できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-524752号公報
【文献】特開2018-149624号公報
【文献】特開2016-129916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業支援装置では、補助索条としてのハーネスの基部を、背中に固定の頑丈な金属フレーム枠で支持しており、またハーネスは、これを巻取り格納する構造ではなく、非作業時においてもハーネス全体が常に露出状態に置かれる。そのため、非作業時の平常動作がハーネスにより阻害される可能性があり、また頑丈な金属フレーム枠の使用で装置が重量増となるので、作業者の負担が増える等の問題もある。
【0005】
また特許文献2の作業支援装置では、補助索条としての紐状部材161,162 の基部が、背中に取付けた頑丈な金属フレーム枠(即ち背中部材110 ・支持部材140 )で支持されており、その金属フレーム枠をアクチュエータ151 で回動させることで上体を起こすことを支援した結果、紐状部材を介し作業者の手を引き上げるようにして、重量物の持ち上げ支援が行われる。この場合、紐状部材は、これを巻取り格納する構造ではなく、非作業時においても紐状部材や、肩より上まで延びる金属フレーム枠が常に露出状態に置かれる。そのため、非作業時の平常動作が紐状部材や剛体フレームにより阻害される可能性があり、また頑丈な剛体フレーム枠をアクチュエータで回動させる関係で装置が重量増となり、作業者の負担が増える問題もある。
【0006】
また特許文献3の作業支援装置では、補助索条としてのワイヤ31の基部を、背中に固定されて頭上部に高く延びる頑丈な剛体アーム部11の上端部を経由して、背中に固定の巻上用モータ13で巻き上げる構造であり、剛体アーム部11の上端部より垂下したワイヤ31の一端部に作業者の手を装着して重量物の持ち上げ支援が行われる。そのため、剛体アーム部11の上端部より長く垂下したワイヤ31により非作業時の平常動作が阻害され、例えば作業者はワイヤに周囲物体が巻き込まれないよう注意して作業する必要があり、また大型で重量大の剛体アーム部11を作業者が背中で支えて作業する必要があり、作業者の負担が増える問題もある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来装置の上記課題を簡単な構造で解決可能な作業支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、作業者が手で重量物を持ち上げる作業を補助する作業支援装置であって、作業者の胴体に取付可能な取付部と、作業者の腕又は手に装着可能な装着部と、その装着部が一端部に結合されるベルトと、前記取付部に連結されると共に前記ベルトの他端側を巻取り可能なベルト巻取り装置とを備え、前記ベルト巻取り装置は、前記ベルトに対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構と、通常は引出し方向への更なる引出しを許容しつつ前記ベルトを任意の引出し長さでの引出し状態に保持可能であるが、解除作動時には前記引出し状態を解除可能である保持・解除機構と、前記保持・解除機構を解除作動させ得る解除指令装置とを有していて、前記ベルトの中間部を作業者の肩に摺動可能に掛けた状態で前記一端部を引くことで、該ベルトを任意の引出し長さで保持するとともに、前記作業の開始に応じて前記解除指令装置により前記保持・解除機構を解除作動させることで、前記ベルトに前記付勢機構による巻取り方向の付勢力を作用させることを第1の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記ベルト巻取り装置は、前記取付部を介して作業者の腰部に取付けられることを第2の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記解除指令装置は、前記作業の際の前記装着部と重量物間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置の検知結果に基づき該作業の開始が判断されるのに応じて前記保持・解除機構を自動で解除作動させる自動式の指令装置、或いは任意操作可能な解除スイッチへの操作入力に連動して前記解除機構を手動で解除作動させる手動式の指令装置のうち、少なくとも一方の指令装置を含むことを第3の特徴とする。
【0012】
また本発明は、第1~第3の何れかの特徴に加えて、前記装着部は、作業者の少なくとも一つの指に引っ掛かった状態で該装着部に手を通して装着可能な形状であることを第4の特徴とする。
【0013】
また本発明は、第1~第4の何れかの特徴に加えて、前記取付部は、作業者の腰部を一周して該腰部に保持される腰ベルトを含み、その腰ベルトに前記ベルト巻取り装置が連結されることを第5の特徴とする。
【0014】
また本発明は、第5の特徴に加えて、前記腰ベルトには、作業者の少なくとも一方の大腿部を通すよう該大腿部に装着可能な脚ベルトが接続されることを第6の特徴としている。
【0015】
また本発明は、第1~第6の何れかの特徴に加えて、前記ベルトは、これの前記他端側から前記一端部に向かう途中で二股に分かれる分岐部を有することを第7の特徴としている。
【0016】
また本発明は、第1~第7の何れかの特徴に加えて、作業者の少なくとも肩の上部を覆うように作業者が着用可能な作業用上着を更に備え、前記上着には、前記ベルトの中間部が作業者の肩に掛かった状態を維持すべく該ベルトを摺動可能に通すベルトガイドが設けられることを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の特徴によれば、作業者の胴体に取付可能な取付部と、作業者の腕又は手に装着可能な装着部と、その装着部が一端部に結合されるベルトと、取付部に連結されると共にベルトの他端側を巻取り可能なベルト巻取り装置とを備え、ベルト巻取り装置は、ベルトに対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構と、通常は引出し方向への更なる引出しを許容しつつ前記ベルトを任意の引出し長さでの引出し状態に保持可能であるが、解除作動時には前記引出し状態を解除可能である保持・解除機構と、保持・解除機構を解除作動させ得る解除指令装置とを有していて、ベルト巻取り装置から引出されたベルトの中間部を作業者の肩に摺動可能に掛けた状態で一端部を引くことで、ベルトを任意の引出し長さで保持するとともに、作業者が手で重量物を持ち上げる作業の開始に応じて、解除指令装置により保持・解除機構を解除作動させることで、ベルトに付勢機構による巻取り方向の付勢力を作用させることができる。即ち、保持・解除機構は、ベルト巻取り装置からベルトを単に引出すだけで、引出し方向への更なる引出しを許容しつつベルトを引出された任意の長さでの引出し状態に保持し得るから、作業者の胴体に取付部を介して連結したベルト巻取り装置から引出したベルトの中間部を作業者の肩に掛けた状態で、ベルトの一端部を更に引出すと共にその一端部に結合した装着部を作業者の腕又は手に装着するだけで、作業の支援準備を整えることができ、装着部に腕又は手を装着した状態で重量物を手で掴む作業を、ベルト巻取り装置に邪魔されずに支障なく行うことができる。また解除指令装置は、前記作業の開始に応じて保持・解除機構を解除作動させることで引出し状態を解除できるため、手で重量物を持ち上げる際には、ベルト巻取り装置が直ちに巻取り作動を開始して、その巻取り方向の付勢力で作業者の重量物持上げ作業を助勢できて、作業支援を的確に行うことができる。
【0018】
この作業支援の際に、ベルトは、作業者の肩の上を滑り動きながら経由して胴体に固定のベルト巻取り装置に巻き取られるため、作業支援の際の荷重がベルトから作業者の肩と胴体に分散してバランスよく受け止められ、作業者の荷重負担を軽減することができる。またベルト巻取り装置は、これを作業者の胴体に頑丈な大型フレームを介して固定せずとも、また大きな巻取り付勢力を発揮する高出力タイプを使用せずとも、巻取り付勢力に基づいて一定の作業支援効果は期待できるため、軽量且つ簡素な構成で作業支援を行うことができ、コスト節減や作業者の負担軽減に寄与することができる。しかもベルト巻取り装置は、支援作業時のベルト巻取りに専ら使用され、作業終了後はベルトが巻取り状態に保持されるため、ベルトが非作業時の平常動作を阻害する心配や、ベルトに他の物体が不用意に巻込まれたり巻付いたりする心配もない。更に装着部はベルトの一端部に結合されるため、保管管理も容易で、紛失の心配もない。
【0019】
また第2の特徴によれば、ベルト巻取り装置は、取付部を介して作業者の腰部に取付けられるので、ベルト巻取り装置は、これが腰部周辺に位置することで、作業の邪魔になりにくく、しかもベルトに加わる外力を肩と、腰部及びその周辺に無理なく分散させることができる。
【0021】
また第3の特徴によれば、解除指令装置は、装着部と重量物間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置の検知結果に基づき作業の開始が判断されるのに応じて保持・解除機構を自動で解除作動させる自動式の指令装置、或いは任意操作可能な解除スイッチへの操作入力に連動して保持・解除機構を手動で解除作動させる手動式の指令装置のうち、少なくとも一方の指令装置を含む。これにより、解除指令装置に自動式の指令装置が含まれる場合には、作業の際の装着部と重量物間の接触面圧又は相対距離の変化を検知装置が検知したときに、その検知に基づき自動式の指令装置が保持・解除機構を解除作動させて、特別なスイッチ操作を行うことなく自動的に作業支援を開始させることができる。また解除指令装置に手動式の指令装置が含まれる場合には、作業者が任意操作可能な解除スイッチを操作するのに応じて手動式の指令装置が保持・解除機構を手動で解除作動させて、任意のタイミングで作業支援を開始可能である。
【0022】
また第4の特徴によれば、装着部は、作業者の少なくとも一つの指に引っ掛かった状態で装着部に手を通して装着可能な形状であるので、作業準備の際に装着部に対し指を引っ掛けた状態で手を通すことで、その手を用いて簡単的確にベルトの引出しを行うことができ、作業効率が高められる。
【0023】
また第5の特徴によれば、取付部は、作業者の腰部を一周して腰部に保持される腰ベルトを含み、その腰ベルトにベルト巻取り装置が連結されるので、重量物の持ち上げ支援を行う際にベルト巻取り装置が受ける巻取り反力を、腰ベルトから腰部及びその周辺に広範囲に分散させることができ、腰部の荷重負担が軽減される。しかも腰ベルトにより腹部に適度な圧迫力が与えられることで、腹腔圧を上昇させ、腰椎への負担軽減にも寄与することができる。
【0024】
また第6の特徴によれば、腰ベルトには、作業者の少なくとも一方の大腿部を通すよう大腿部に装着可能な脚ベルトが接続されるので、重量物を持ち上げる際のベルト巻取り装置自体のズリ上がりを抑制でき、同装置を適切な位置で効果的に使用可能となる。
【0025】
また第7の特徴によれば、ベルトは、これの他端側から一端部に向かう途中で二股に分かれる分岐部を有するので、ベルト他端側でのベルト使用本数を削減でき、延いてはベルト巻取り装置の設置個数を削減できるから、コスト節減に寄与することができる。
【0026】
また第8の特徴によれば、作業者の少なくとも肩の上部を覆うように作業者が着用可能な作業用上着を更に備え、その上着には、ベルトの中間部が作業者の肩に掛かった状態を維持すべくベルトを摺動可能に通すベルトガイドが設けられるので、このベルトガイドにより、ベルトのスムーズな引出し作業を許容しつつ、ベルトの中間部が作業者の肩に掛かった状態を的確に維持することができ、作業効率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る作業支援装置を使用しつつ作業者が重量物を持ち上げた状態を示す正面図
【
図4】巻取り装置の平面図(
図3の4X-4X断面図、
図5の4X矢視図)
【
図5】巻取り装置の一部破断斜視図(
図3及び
図4の5X矢視より見た一部破断斜視図)
【
図6】巻取り装置の保持機構及び解除機構の要部を示す断面図(
図4の6X-6X断面図)
【
図7】作業者の手と、ベルト一端部の装着部との関係を示すものであって、(A)は手の装着前の状態を、また(B)は装着後の状態をそれぞれ示す
【
図8】作業支援の開始前(装着部を手に未装着の状態)を示す正面図(
図1対応図)
【
図9】第2実施形態に係る作業支援装置の使用状態を示す正面図(
図1対応図)と背面図(
図3対応図)
【
図10】第3実施形態に係る作業支援装置の使用状態を示す正面図(
図1対応図)と背面図(
図3対応図)
【
図11】脚ベルトのバリエーションを示すものであって、(A)は大腿部に斜めに巻く脚ベルト(第1実施形態に相当)を示し、また(B)は大腿部に略水平に巻く脚ベルトを示す
【
図12】ベルト巻取り装置を作業者の腰部側面に配置した第1実施形態の第1変形例を示す斜め後方斜視図
【
図13】ベルト巻取り装置を作業者の腰部前面に配置した第1実施形態の第2変形例を示す斜め後方斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づき説明する。
【0029】
先ず、
図1~
図8を参照して、本発明に係る作業支援装置の第1実施形態について説明する。
【0030】
作業支援装置Aは、作業者Pが手Phで重量物Wを持ち上げる作業を補助するためのものであって、それは、作業者Pの胴体Pm(実施形態では腰部Pw)に取付可能な取付部10と、作業者Pの手Phに装着可能な装着部20と、その装着部20が一端部40aに結合されるベルト40と、取付部10に連結されると共にベルト40の他端側を巻取り可能なベルト巻取り装置Rとを備える。
【0031】
前記装着部20は、作業者Pの少なくとも一つの指(実施形態では親指Pf)に引っ掛かった状態で装着部20に手Phを通して装着可能な形状であって、その全体が可撓性を有する丈夫な素材(例えば布材、革材)で構成される。即ち、
図7で明らかなように、装着部20は、前後両端が開放して作業者Pの手Ph(実施形態では指以外の部位)が嵌挿可能な筒状胴部21と、その筒状胴部21の掌側の一側部に連設されて作業者Pの手Phの親指Pfが嵌挿可能な指サック部22とを備える。
【0032】
筒状胴部21の、中心部から見て親指及び人指し指側(即ち腰部Pwから遠い側)に偏位した外側面に、ベルト40の一端部40aが結合(例えば縫着、接着)される。その結合部位は、実施形態に限定されず、例えば、筒状胴部21の、中心部から見て親指及び人指し指から遠い側(即ち腰部Pwと近い側)に偏位した外側面にベルト40の一端部40aを結合してもよく、或いはまた、重量物持ち上げ作業に障害とならない部位であればその他の部位であってもよい。
【0033】
尚、実施形態の各図面においては、手Phの形態が三次元的に複雑である関係で、手Phの部分を模式的に描いている。例えば、親指以外の4つの指は一纏めに簡略して帯板状に描いており、これの関節部のみ複数の凹凸条を付している。
【0034】
而して、筒状胴部21と指サック部22との境界部に、対応する指の付け根部分(実施形態では親指と人指し指との付け根部分)を引っ掛けるようにすれば、装着部20に装着した手Phでベルト40を的確に引出すことができ、作業性が良好である。
【0035】
尚、指サック部22は、親指Pfに加えて/又は代えて他の少なくとも1つの指を嵌挿可能な構造としてもよい。また実施形態では、指サック部22が親指Pf全体を覆うものを例示したが、指サック部22の先端をカットして親指Pfの先部を露出させるようにした変形例の実施も可能である。
【0036】
ところでベルト巻取り装置Rは、取付部10を介して作業者Pの腰部Pwに着脱可能に取付けられるものであって、特に第1実施形態では作業者Pの腰部Pwに巻き付けられる腰ベルト71の後面に左右一対のベルト巻取り装置Rが互いに間隔をおいて装着、固定されている。この場合、上記取付部10は、作業者Pの腰部Pwを一周するよう巻き付いて腰部Pwに保持される腰ベルト71を含み、その腰ベルト71にベルト巻取り装置Rの装置本体Rm(実施形態では後述する連結部材13)が連結される。
【0037】
尚、一般的に腰ベルトを腰部に一周して巻き付け固定する手法は従来周知であるので、実施形態の腰ベルト71を腰部Pwに一周して着脱可能に巻き付け固定する構造についても、図示及び説明は省略する。
【0038】
また前記腰ベルト71には、作業者Pの少なくとも一方(実施形態では両方)の大腿部Plを通すよう大腿部Plに装着可能な脚ベルト75が接続ベルト76および接続具77を介して接続される。その接続構造は、着脱可能な構造でも、或いは着脱不能な構造でもよい。
【0039】
また実施形態の作業支援装置Aは、作業者Pの少なくとも肩Psの上部を覆うように作業者Pが着用可能な作業用上着としてのベスト80を更に含む。このベスト80の前面及び後面には、ベルト40の中間部が作業者Pの肩Psに掛かった状態を維持すべくベルト40を摺動可能に通す前部ベルトガイド81f及び後部ベルトガイド81rがそれぞれ設けられる。またベスト80の、左右の肩Ps上を覆う部分(即ち引出し・巻取り時のベルト40が直接摺動する部分)には、必要に応じてベルト40が滑り易く丈夫な素材を被着することが望ましい。
【0040】
次にベルト巻取り装置Rについて、
図4~
図6を主として参照して具体的に説明する。各々のベルト巻取り装置Rの装置本体Rmは、ベルト40の幅より僅かに広い間隔をおいて並列する第1,第2ケース11,12と、第1,第2ケース11,12の一端間を一体的に結合する板状の連結部材13とを有して平面視で略コ字状に形成される。第1,第2ケース11,12は、各々が平板状に形成されて互いに平行な内側壁11i,12iと、その内側壁11i,12iに不図示の結合手段を介して着脱可能に結合される平皿状のカバー11c,12cとで各々中空体に構成される。
【0041】
また連結部材13は、これの上下端部が第1,第2ケース11,12よりも上下方向外方に延出しており、その延出部13a,13bには、腰ベルト71に対する連結用孔13hが設けられる。この連結用孔13hに連結軸18(例えば連結用リベット、連結用ボルト)を挿通させ、その連結軸18により、腰ベルト71と延出部13a,13bとの各間を結合する。尚、このような結合構造に代えて、例えば下方の延出部13bを着脱可能な結合具(例えば自動車用シートベルトの結合具と同様の構造)で腰ベルト71に着脱可能に結合してもよい。而して、連結部材13及び腰ベルト71は、前記取付部10を構成している。
【0042】
また実施形態では、上側の延出部13が横向きに屈曲しており、その屈曲部には、ベルト巻取り装置Rから引き出されたベルト40を摺動可能に通すスリット状のベルトガイド孔13ahが設けられる。
【0043】
第1,第2ケース11,12の相対向する内側壁11i,12iには、ベルト40の他端部40bが結合され且つベルト40を巻き付け可能なドラム軸14の両端部が回転自在に貫通、支持される。第1ケース11内には、ベルト40に対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構31が配設されており、ベルト40は、これの中間部を作業者Pの肩Ps上に摺動可能に掛けた状態で、上記付勢力に抗して一端部40aを引くことで任意の引出し長さで引出し可能である。
【0044】
付勢機構31は、中心部がドラム軸14の一端に結合された渦巻きばね32を主要部とし、その渦巻きばね32の他端は、第1ケース11の外周部内壁に結合される。そして、この渦巻きばね32の弾発力により、ベルト40に対する巻取り方向(
図5で時計方向、
図6で反時計方向)の回転付勢力が発揮される。
【0045】
またベルト巻取り装置Rは、通常は引出し方向への更なる引出しを許容しつつベルト40を任意の引出し長さでの引出し状態に保持可能であるが、解除作動時には前記引出し状態を解除可能である保持・解除機構30と、重量物持ち上げ作業の開始に応じて保持・解除機構30を解除作動させ得る解除指令装置Cとを備えており、特に保持・解除機構30は、第2ケース12に内蔵される。
【0046】
保持・解除機構30は、従来周知のラチェット機構と同様の構造であって、外周に多数のラチェット歯35tを等間隔置きに有してドラム軸14の他端に同心状に結合されたラチェット歯車35と、ラチェット歯35tに係脱可能に係止されるロック爪部36tを先端に有した係止部材36と、係止部材36をラチェット歯35tとの係合方向(
図6で上方)に弾発するラチェットばね37と、係止部材36の軸部36aをラチェット歯35tとの係脱方向(
図6で上下方向)に摺動可能に嵌合、支持すべく第2ケース12の内側壁12iに固定される軸受部材38とを有する。
【0047】
而して、係止部材36は、通常はラチェットばね37の弾発力でラチェット歯35tとの係止位置に保持され、これにより、ドラム軸14のベルト巻取り方向の回転が規制されて、ベルト40が
、引出し方向への更なる引出しを許容しつつ任意の引出し長さでの引出し状態に保持される。一方、解除指令装置Cにより係止部材36が、ラチェット歯35tから離れる係止解除方向(
図6で下方)に引かれると、ロック爪部36tとラチェット歯35tとの係止が解除され(即ち、保持・解除機構30が解除作動し)、その解除作動に伴い渦巻きばね32の弾発力でラチェット歯車35、従ってドラム軸14が巻取り方向(
図6で反時計方向)に付勢回転されて、ベルト40をドラム軸14回りに巻き取る。
【0048】
またラチェット歯35tは、係止部材36が前記係止位置に保持される場合でも、ベルト40の一端部40aが引き出されてドラム軸14が
図6で時計方向に回転するときにはロック爪部36tがラチェット歯35t上を滑ることでスムーズな引出しを許容する歯形に形成される。
【0049】
また実施形態において、解除指令装置Cは、前記作業の際の装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置51の検知結果に基づき作業の開始が判断されるのに応じて保持・解除機構30を自動で解除作動させる自動式の指令装置50で構成される。
【0050】
この自動式の指令装置50は、上記検知装置51と、係止部材36の軸部36aにインナワイヤの一端が結合されたボーデンケーブルよりなる操作索条53と、その操作索条53のインナワイヤの他端に連動連結されて係止部材36を前記係止解除方向に牽引駆動可能な電動式のアクチュエータ52と、検知装置51の検知信号に基づいてアクチュエータ52を作動制御する制御装置54とを備える。
【0051】
検知装置51は、これが特に前記作業の際の装着部20と重量物W間の接触面圧の変化を検知するものである場合には、その接触面圧の変化を検知可能な部位(例えば装着部20の筒状胴部21の内側部等)に設置される。検知装置51が特に前記作業の際の装着部20と重量物W間の相対距離の変化を検知するものである場合には、その相対距離の変化を検知可能な部位に設置される。
【0052】
そして、検知装置51が前記作業の開始に伴い装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知すると、その検知結果から制御装置54は作業の開始を検知してアクチュエータ52を作動させ、これにより係止部材36を前記係止解除方向に牽引駆動して、保持・解除機構30を解除作動させることができる。
【0053】
ところで上記した自動式の指令装置50に代えて、
図6に鎖線で示すように任意操作可能な解除スイッチ62への操作入力に連動して保持・解除機構30を手動で解除作動させる手動式の指令装置60を解除指令装置Cとしてもよい。
【0054】
その手動式の指令装置60は、係止部材36の軸部36aにインナワイヤの一端が結合されたボーデンケーブルよりなる操作索条63と、その操作索条63のインナワイヤの他端に連動連結されて係止部材36を前記係止解除方向に手動操作で牽引駆動可能な解除スイッチ62とを備える。従って、解除スイッチ62を作業者Pの手元(例えば装着部20の適所)に設置しておけば、作業を開始させるときに作業者Pが解除スイッチ62を随時、操作入力することで、係止部材36を前記係止解除方向に牽引駆動して、保持・解除機構30を解除作動させることができる。
【0055】
尚、手動式の指令装置60の変形例として、手動操作可能な解除スイッチ62を信号線又はリモコンを介して前記制御装置54と連係させて、その解除スイッチ62の解除操作に応じて前記アクチュエータ52を作動させることで、係止部材36を前記係止解除方向に牽引駆動して保持・解除機構30を解除作動させるようにしてもよい。
【0056】
次に実施形態の作用について説明する。
【0057】
図8は、作業支援装置Aを作業者Pにセットした直後の未作業状態を示す。即ち、作業者Pの腰部Pw及び大腿部Plには腰ベルト71及び脚ベルト75がそれぞれ巻き付け、保持されており、また作業者Pの上半身にはベスト80が着用される。そして、ベルト巻取り装置Rから延びるベルト40は、ベスト80越しで肩Psの上に掛かり、そこで転向して前方下向きに延びており、そのベルト40の中間部は、ベスト80の後部ベルトガイド81r及び前部ベルトガイド81fを通されている。このとき、ベルト40は初期の引出し位置に保持され、従って、ベルト40の一端部40aに固定の装着部20も初期位置(
図8の位置)で待機する。
【0058】
この状態より、例えば作業者Pが手Phに装着部20を装着し、次いでその手Phで装着部20を介してベルト40を前下方に引出すようにすれば、ベルト巻取り装置Rからベルト40を肩Ps上に掛けた状態のまま、所望の引出し長さまで引出すことができ、重量物Wを容易に掴むことができる。そこで作業者Pが手Phで重量物Wを持ち上げようとすると、重量物Wと装着部20との接触面圧が急増するのを検知装置51が検知し、その検知結果に基づき制御装置54がアクチュエータ52を作動させて保持・解除機構30を解除作動させる。これにより、ベルト巻取り装置Rがベルト40を巻き取り、その際に巻取り付勢力が作業者Pの重量物持ち上げ作業を助勢する。
【0059】
このように実施形態の作業支援装置Aは、作業者Pの胴体Pmに取付可能な取付部10と、作業者Pの手Phに装着可能な装着部20と、装着部20が一端部40aに結合されるベルト40と、取付部10に連結されると共にベルト40の他端側を巻取り可能なベルト巻取り装置Rとを備え、ベルト巻取り装置Rは、ベルト40に対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構を有しており、且つベルト40の中間部を作業者Pの肩Psに摺動可能に掛けた状態で一端部40aを引くことで、ベルト40を任意の引出し長さで引出し可能である。これにより、作業者Pの胴体Pmに取付部10を介して連結したベルト巻取り装置Rから引出したベルト40の中間部を作業者Pの肩Psに掛けた状態で、ベルト40の一端部40aを更に引出すと共にその一端部40aに結合した装着部20を作業者Pの手Phに装着するだけで、作業の支援準備を容易に整えることができる。しかも作業者Pが重量物Wを手Phに持ち上げると略同時に、ベルト巻取り装置Rがベルト40を巻き取るため、その巻取り方向の付勢力で作業者Pの重量物持上げ作業を補助できて、作業を支援することができる。
【0060】
この作業支援の際に、ベルト40は、作業者Pの肩Psの上を滑り動きながら経由して胴体Pmに固定のベルト巻取り装置Rに巻き取られるため、作業支援の際の荷重がベルト40から作業者Pの肩Psと胴体Pmに分散してバランスよく受け止められ、作業者Pの荷重負担を軽減することができる。またベルト巻取り装置Rは、これを作業者Pの胴体Pmに頑丈な大型フレームを介して固定せずとも、また大きな巻取り付勢力を発揮する高出力タイプを使用せずとも、巻取り付勢力に基づいて一定の作業支援効果は期待できるため、軽量且つ簡素な構成で作業支援を行うことができ、コスト節減や作業者Pの負担軽減に寄与することができる。しかもベルト巻取り装置Rは、支援作業時のベルト巻取りに専ら使用され、作業終了後はベルト40が巻取り状態に保持されるため、ベルト40が非作業時の平常動作を阻害する心配や、ベルト40に他の物体が不用意に巻込まれたり巻付いたりする心配もない。更に装着部20はベルト40の一端部40aに結合されるため、保管管理も容易で、紛失の心配もない。
【0061】
また実施形態のベルト巻取り装置Rは、腰ベルト71を含む取付部10を介して作業者Pの腰部Pwに取付けられるので、ベルト巻取り装置Rは、これが腰部Pw周辺に位置することで、作業の邪魔になりにくい。しかもベルト40に加わる外力を肩Psと、腰部Pw及びその周辺に無理なく分散させることができる。
【0062】
また実施形態のベルト巻取り装置Rは、通常はベルト40を、引出し方向への更なる引出しを許容しつつ任意の引出し長さでの引出し状態に保持可能であるが、解除作動時には前記引出し状態を解除可能である保持・解除機構30と、持ち上げ作業の開始に応じて保持・解除機構30を解除作動させ得る解除指令装置Cとを有する。これにより、ベルト巻取り装置Rからベルト40を単に引出すだけで、保持・解除機構30は、引出し方向への更なる引出しを許容しつつベルト40を任意の引出し長さでの引出し状態に保持することができるため、装着部20に手Phを装着した状態で重量物Wを手Phで掴む作業を、ベルト巻取り装置Rに邪魔されずに支障なく行うことができる。また解除指令装置Cは、作業の開始に応じて保持・解除機構30を解除作動させることで前記引出し状態を解除できるため、手Phで重量物Wを持ち上げる際には、ベルト巻取り装置Rが直ちに巻取り作動を開始して、作業支援を的確に行うことができる。
【0063】
また特に実施形態の解除指令装置Cは、作業の際の装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置51の検知結果に基づき作業の開始が判断されるのに応じて保持・解除機構30を自動で解除作動させる自動式の指令装置50、或いは任意操作可能な解除スイッチ62への操作入力に連動して保持・解除機構30を手動で解除作動させる手動式の指令装置60のうちの何れか一方の指令装置を含む。これにより、解除指令装置Cに自動式の指令装置50が含まれる場合には、作業の開始の際の装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知装置51が検知したときに、その検知に基づき自動式の指令装置50が保持・解除機構30を解除作動させて、特別なスイッチ操作を行うことなく自動的に作業支援を開始させることができる。
【0064】
また解除指令装置Cに手動式の指令装置60が含まれる場合には、作業者が任意操作可能な解除スイッチ62を操作するのに応じて手動式の指令装置60が保持・解除機構30を手動で作動させて、任意のタイミングで作業支援を開始可能である。
【0065】
ところで実施形態の装着部20は、作業者Pの少なくとも一つの指に引っ掛かった状態で装着部20に手Phを通して装着可能な形状である。これにより、作業準備の際に装着部20に対し指(例えば指の付け根)を引っ掛けた状態で手Phを通すことで、その手Phを用いて簡単的確にベルト40の引出しを行うことができ、作業効率が高められる。
【0066】
また実施形態の取付部10は、作業者Pの腰部Pwを一周して腰部Pwに保持される腰ベルト71を含み、その腰ベルト71にベルト巻取り装置Rが連結される。これにより、重量物Wの持ち上げ支援を行う際にベルト巻取り装置Rが受ける巻取り反力を、腰ベルト71から腰部Pw及びその周辺に広範囲に分散させることができるため、腰部Pwの荷重負担が軽減される。しかも腰ベルト71により腹部に適度な圧迫力が与えられることで、腹腔圧を上昇させ、腰椎への負担軽減にも寄与することができる。
【0067】
さらに実施形態の腰ベルト71には、作業者Pの少なくとも一方の大腿部Plを通すよう大腿部Plに装着可能な脚ベルト75が接続されるので、重量物Wを持ち上げる際のベルト巻取り装置R自体のズリ上がりを抑制でき、同装置Rを適切な位置で効果的に使用可能となる。
【0068】
その上、実施形態の作業支援装置Aにおいては、作業者Pの少なくとも肩Psの上部を覆うように作業者Pが着用可能な作業用上着としてのベスト80を備え、そのベスト80には、ベルト40の中間部が作業者Pの肩Psに掛かった状態を維持すべくベルト40を摺動可能に通すベルトガイド81f,81rが設けられる。これにより、このベルトガイド81f,81rにより、ベルト40のスムーズな引出し作業を許容しつつ、ベルト40の中間部が作業者Pの肩Psに掛かった状態を的確に維持することができ、作業効率が高められる。
【0069】
図9には、第2実施形態に係る作業支援装置Aの使用状態を示す正面図及び背面図が示される。即ち、第1実施形態では、左右一対のベルト巻取り装置R,Rが作業者Pの背面側に間隔をおいて並列配置され、その各々のベルト巻取り装置Rからベルト40が引き出され且つその一端部40aに固定の装着部20が左右の手Phにそれぞれ装着されるのに対し、第2実施形態では、左右何れか一方側のベルト巻取り装置Rだけが設けられており、それから引き出されるベルト40も作業者Pの該一方側の肩Psに掛けて同側の手Phに装着部20を装着するものである。
【0070】
第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるので、第2実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。
【0071】
而して第2実施形態も、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成するが、特に第2実施形態では、ベルト巻取り装置Rが単一でコスト節減が図られるが、その反面、重量物持ち上げ作業時に作業支援装置Aが発揮する作業者Pへの助勢力が半減するので、持ち上げるべき重量物Wの重量が比較的小さい場合(例えば小荷物を片手で持ち上げる場合)に有効である。
【0072】
また
図10には、第3実施形態に係る作業支援装置Aの使用状態を示す正面図及び背面図が示される。この第3実施形態においてもベルト巻取り装置Rは単一とされるが、それから引き出されるベルト40は、これの途中(特に背中側)で二股に分かれる分岐部40jを有する。その分岐部40jにおいて別れた左右一対のベルト40は、第1実施形態と同様、作業者Pの左右の肩Psに掛けられ、さらに左右の手Phに装着部20がそれぞれ装着される。
【0073】
第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるので、第3実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。
【0074】
而して第3実施形態も、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成するが、特に第3実施形態では、ベルト巻取り装置Rが単一で済む反面、重量物持ち上げ作業時に作業支援装置Aが発揮する作業者Pへの助勢力が半減するので、持ち上げるべき重量物Wの重量が比較的小さい場合に有効である。但し、第3実施形態では、重量物Wを左右の手Phで持ち上げる場合に、単一のベルト巻取り装置Rであっても左右略均等に助勢力を発揮できるため、第2実施形態と比べ左右でバランスよく持ち上げ作業を行うことができる。
【0075】
しかもベルト40は、これの途中で上記分岐部40jを有することで、ベルト40の他端側(背中側)でのベルト使用本数を削減でき、延いてはベルト巻取り装置Rの設置個数を削減できるから、コスト節減に寄与することができる。
【0076】
また
図11には、脚ベルト75のバリエーションが示され、特に(A)は大腿部に斜めに巻く脚ベルト(第1実施形態に相当)を示し、また(B)は大腿部に略水平に巻く脚ベルト75を示す。この(B)の脚ベルト75は、大腿部Plへの巻き方が第1実施形態の脚ベルト75と異なるだけであって、基本的に第1実施形態と同様の作用効果を達成可能である。
【0077】
更に
図12には、ベルト巻取り装置Rを腰部Pwの側面に配置した第1実施形態の第1変形例が示され、また
図13には、ベルト巻取り装置Rを腰部Pwの前面に配置した第1実施形態の第2変形例が示される。これら変形例もまた、基本的に第1実施形態と同様の作用効果を達成可能である。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0079】
例えば、前記実施形態では、装着部20が、作業者Pの手Phに装着可能な構造のものを例示したが、本発明では、装着部20が作業者Pの腕Paに装着可能に構成されるものを使用してもよい。
【0080】
また前記実施形態では、巻取り装置Rからのベルト40の引出し操作を作業者P本人が行うようにしたが、作業者Pとは別人が、引出し操作を行い且つ作業者Pの手Ph又は腕Paに装着部20を装着するのを手助けするようにしてもよい。
【0081】
また前記実施形態では、解除指令装置Cが、作業の際の装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置51の検知結果に基づき作業の開始が判断されるのに応じて保持・解除機構30を自動で作動させる自動式の指令装置50、或いは任意操作可能な解除スイッチ62への操作入力に連動して保持・解除機構30を手動で作動させる手動式の指令装置60の何れか一方である(即ちその他方は省略する)ものを示したが、本発明では、自動式の指令装置50および手動式の指令装置60の両方を解除指令装置Cが含むものであってもよい。この場合、自動式の指令装置50および手動式の指令装置60は、その何れが作動する場合でも支障なく保持・解除機構30を解除作動させ得るように、保持・解除機構30に対し互いに並列に接続される。
【0082】
また前記実施形態では、自動式の指令装置50が、作業の際の装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置51の検知結果から制御装置54が作業の開始を判断して保持・解除機構30を解除作動させるものを示したが、検知装置51としては、作業の開始を判断できる何等かの作業状態変化を検知できるものであれば実施形態に限定されない。
【0083】
また前記実施形態では、ベルト巻取り装置Rの付勢機構31の動力源が渦巻きばね30であって、そのばね力を巻取り付勢力に利用したものを示したが、その付勢機構31の動力源として電動モータを利用してもよい。但し、この場合でも、ベルト巻取り装置Rは、単にベルト40の巻取りのみに使用されるものであって、前記特許文献のような頑丈で重い剛体フレームを回動させたり引き上げたりする必要はないから、比較的小出力のモータの使用が可能であり、コスト増を抑制可能である。
【0084】
また前記実施形態では、作業者Pの少なくとも肩Psの上部を覆うように作業者Pが着用可能な作業用上着としてのベスト80を用い、ベスト80に、ベルト40の中間部が作業者Pの肩Psに掛かった状態を維持すべくベルト40を摺動可能に通すベルトガイド81f,81rを設けたものを示したが、この作業用上着としてのベスト80は、本発明の作業支援装置Aに必須のものではなく、例えば、このベスト80を着用せず通常の服装をした作業者Pが、肩Psにベルト40の中間部を摺動可能に直接、掛けるようにしてもよい。或いはまた、ベスト80以外のスタイルの上着(例えばブレザー、シャツ)を本発明の作業用上着として使用して、これの前面及び後面にベルトガイド81f,81rを設けてもよい。
【符号の説明】
【0085】
A・・・・・作業支援装置
C・・・・・解除指令装置
P・・・・・作業者
Pa,Pf,Ph,Pl・・作業者の腕,指,手,大腿部
Pm,Ps,Pw・・・・・作業者の胴体,肩,腰部
R・・・・・ベルト巻取り装置
W・・・・・重量物
10・・・・取付部
20・・・・装着部
30・・・・保持・解除機構
31・・・・付勢機構
40・・・・ベルト
40a・・・一端部
40j・・・分岐部
50・・・・自動式の指令装置
51・・・・検知装置
60・・・・手動式の指令装置
62・・・・解除スイッチ
71・・・・腰ベルト
75・・・・脚ベルト
80・・・・作業用上着としてのベスト
81f,81r・・ベルトガイドとしての前、後部ベルトガイド