(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 648L
H01L21/304 643A
(21)【出願番号】P 2022176605
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2018181097の分割
【原出願日】2018-09-27
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金井 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 裕次
(72)【発明者】
【氏名】濱田 崇広
(72)【発明者】
【氏名】林 航之介
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-017384(JP,A)
【文献】特開2007-095960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記基板を保持して回転する回転テーブルと、
前記処理室内に設けられ、前記回転テーブルにより保持された前記基板に処理液を供給
する液供給部と、
前記処理室内に設けられ、前記回転テーブルにより保持された前記基板の周囲を覆い、
前記回転テーブルの回転によって前記基板から飛散する前記処理液を受けるカップと、
前記処理室内に設けられ、前記カップ内に連通して前記カップ内の気体を排出するため
の排気路と、
前記カップと前記排気路とを接続する部分の隙間から吹き上がるミストを検出するセン
サと、
前記回転テーブルを回転させる回転機構と、
前記処理室内に上から下に流れる気流を生じさせるファンと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液供給部からの前記処理液の供給を停止させた状態で、前記センサの検出結果に応じて、前記回転テーブルの回転数を変えるように前記回転機構を制御するとともに、前記ファンの回転数を制御して前記処理室内の圧力を調整する基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記センサの検出結果によって、ミストの吹き上がりの発生を判定した場合、前記回転テーブルの回転数を下げ、前記ファンの回転数を上げるように制御する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記カップは、前記回転テーブルを囲むように設けられ、上端面及び下端面のそれぞれが開放された円筒状のカップであり、
前記カップの外側において、前記上端面側の空間と前記下端面側の空間とを区画する床部をさらに有し、前記排気路は前記下端面側の空間を含み、
前記隙間は、前記カップと前記排気路とを接続する部分であって、前記カップの外側と前記床部との間に形成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記排気路内に設けられ、前記排気路の開口度を変える調整弁と、
前記センサの検出結果に応じて、前記排気路の開口度を変えるように前記調整弁を制御
する制御部と、
を備える請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板を処理するための処理室と、前記処理室内に設けられ、前記基板を保持して回転する回転テーブルと、前記処理室内に設けられ、前記回転テーブルにより保持された前記基板に処理液を供給する液供給部と、前記処理室内に設けられ、前記回転テーブルにより保持された前記基板の周囲を覆い、前記回転テーブルの回転によって前記基板から飛散する前記処理液を受けるカップと、前記処理室内に設けられ、前記カップ内に連通して前記カップ内の気体を排出するための排気路とを備える基板処理装置を用いて、前記基板を処理する基板処理方法であって、
前記カップと前記排気路とを接続する部分の隙間から吹き上がるミストをセンサにより
検出し、
前記処理液の供給を停止した状態で、前記センサの検出結果に応じて、前記回転テーブルの回転数を変えるとともに、前記処理室に上から下に流れる気流を生じさせるファンの回転数を変えて前記処理室内の圧力を調整する基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、半導体や液晶パネルなどの製造工程において、ウェーハや液晶基板などの基板の被処理面を薬液により処理し、薬液処理後に基板をリンス液により洗い流して、リンス後に基板を乾燥する装置である。この基板処理装置では、均一性や再現性の面から、基板を一枚ずつ専用の処理室で処理する枚葉方式が用いられる。
【0003】
基板は回転テーブル上に載置され、回転する回転テーブル上の基板に薬液又はリンス液などの処理液が供給され、基板が処理液によって処理される。基板処理後、処理液の供給が停止され、回転テーブルの回転数が上げられて基板が乾燥される。乾燥時、基板上の処理液は、遠心力によって基板上から排出され、回転テーブルの周囲を覆うカップの内周面によって受けられる。
【0004】
このとき、排出された処理液はカップの内周面と衝突し、カップ内にミスト(処理液のミスト)が発生するが、カップ内は排気路を介して排気されており、カップ内のミストは排気路に流れ込む。ところが、排気路に流れ込んだミストが回転テーブル上の基板に付着することがある。ミストが基板に付着すると、基板にウォーターマークなどが生じて基板が汚染されるため、基板品質(製品品質)が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、基板品質を向上させることができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、
基板を処理するための処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記基板を保持して回転する回転テーブルと、
前記処理室内に設けられ、前記回転テーブルにより保持された前記基板に処理液を供給
する液供給部と、
前記処理室内に設けられ、前記回転テーブルにより保持された前記基板の周囲を覆い、
前記回転テーブルの回転によって前記基板から飛散する前記処理液を受けるカップと、
前記処理室内に設けられ、前記カップ内に連通して前記カップ内の気体を排出するため
の排気路と、
前記カップと前記排気路とを接続する部分の隙間から吹き上がるミストを検出するセン
サと、
前記回転テーブルを回転させる回転機構と、
前記処理室内に上から下に流れる気流を生じさせるファンと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液供給部からの前記処理液の供給を停止させた状態で、前記センサの検出結果に応じて、前記回転テーブルの回転数を変えるように前記回転機構を制御するとともに、前記ファンの回転数を制御して前記処理室内の圧力を調整する。
【0008】
本発明の実施形態に係る基板処理方法は、
基板を処理するための処理室と、前記処理室内に設けられ、前記基板を保持して回転する回転テーブルと、前記処理室内に設けられ、前記回転テーブルにより保持された前記基板に処理液を供給する液供給部と、前記処理室内に設けられ、前記回転テーブルにより保持された前記基板の周囲を覆い、前記回転テーブルの回転によって前記基板から飛散する前記処理液を受けるカップと、前記処理室内に設けられ、前記カップ内に連通して前記カップ内の気体を排出するための排気路とを備える基板処理装置を用いて、前記基板を処理する基板処理方法であって、
前記カップと前記排気路とを接続する部分の隙間から吹き上がるミストをセンサにより
検出し、前記処理液の供給を停止した状態で、前記センサの検出結果に応じて、前記回転テーブルの回転数を変えるとともに、前記処理室に上から下に流れる気流を生じさせるファンの回転数を変えて前記処理室内の圧力を調整する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、基板品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の2-2線の断面位置での基板処理装置の概略構成を示す図である。
【
図3】
図2の3-3線の断面位置での基板処理装置の概略構成を示す図である。
【
図4】第2の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
【
図5】第3の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明者らは、カップに衝突して発生するミストが排気路に流れず、基板に付着する原因について調査したところ、次のことが判明した。カップ内のミストは、回転する回転テーブルの周辺の気流とともに回転し、順次、排気路から排気されることになる。ところが、ミストがカップの内周面から排気路に至るまでの経路途中に経路幅が狭い部分が存在すると、その部分でミストは、回転テーブルの周方向だけではなく、上方にも移動することが分かった。例えば、平面視で、処理室が矩形状で、カップが円形状だとすると、処理室の辺部分とカップの外周部分との間隔は、処理室のコーナー部分とカップの外周部分との間隔に比べて狭い。上方に移動するミストは、カップと排気路とを接続する部分の隙間からカップの上方に吹き上がり、その吹き上がったミストが再びカップ内に侵入し、回転テーブル上の基板に付着していたのである。なお、ミストが、カップと排気路とを接続する部分の隙間から上方に吹き上がる現象が生じる例として、平面視で、処理室が矩形状で、カップが円形状である場合を挙げたが、その他に、例えば処理室とカップの両者ともが円形状で、径の差が少ない場合であっても生じ得ることである。
【0012】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について
図1から
図3を参照して説明する。
【0013】
(基本構成)
図1から
図3に示すように、第1の実施形態に係る基板処理装置10は、処理室20と、カップ30と、回転テーブル40と、回転機構50と、液供給部60と、二つのミストセンサ(センサ)70と、制御部80とを備えている。
【0014】
処理室20は、外装体21と、内装体(仕切壁体)22と、二本の排気路23とを有している。この処理室20は、被処理面Waを有する基板Wを処理するための処理ボックスであり、カップ30、回転テーブル40、回転機構50の一部、液供給部60、各ミストセンサ70などを収容する。基板Wとしては、例えば、ウェーハや液晶基板が用いられる。
【0015】
外装体21は、上面が開口した箱形状で、平面視で矩形状に形成されている。この外装体21は、四つの側壁部21aと、床部(底壁部)21bとを有している。各側壁部21aの一つには、入出口21a1(
図2参照)が形成されている。入出口21a1は、処理室20内に対する基板Wの搬入及び搬出を可能にするためのものであり、開閉可能なシャッタ(不図示)によって塞がれている。床部21bには、排出管(不図示)が接続されている。この排出管は、基板Wの被処理面Waから排出された処理液を処理室20外に排出するためのものである。
【0016】
内装体22は、外装体21内に設けられている。この内装体22は、二つの側壁部22aと、床部(底壁部)22bとを有している。側壁部22aは、外装体21の対向する一対の側壁部21aに対し、その幅方向(
図2中の上下方向)全長にわたって所定間隔で離間して対向するように形成されている。床部22bは、外装体21の床部21bに対し、上下方向において所定間隔で離間して対向するように形成されている。床部22bには、取付孔22b1が形成されており、この取付孔22b1内にはカップ30が設けられている。
【0017】
前述の内装体22の上面の開口には、四角枠形状のフランジ24(
図1参照)が設けられている。このフランジ24の上面には、クリーンユニット25が設けられている。このクリーンユニット25は、基板処理装置10が設置されるクリーンルームの天井から吹き降ろすダウンフローを浄化して処理室20内に導入するものであり、例えば、HEPAフィルタやULPAフィルタのフィルタを有している。また、クリーンユニット25は、ファン25aを有している。ファン25aは、回転することで処理室20内に上から下に流れる気流を生じさせるものである。このファン25aは制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
【0018】
二本の排気路23は、外装体21及び内装体22により形成されている。すなわち、各排気路23は、外装体21の対向する一対の側壁部21a及び床部21bと、内装体22の一対の側壁部22a及び床部22bとによって構成されている。これらの排気路23は、カップ30の下側からカップ30内に連通してカップ30内の気体を排出するための流路であり、処理室20の下面から側面に沿って延伸して上面につながっている。各排気路23は、それぞれ排気ダクト26に接続されており、各排気ダクト26に接続された排気ファン(不図示)の駆動によってカップ30内の気体は各排気路23及び各排気ダクト26を介して排出される。
【0019】
カップ30は、円筒状に形成されており、本実施形態では
図2に示すように、平面視で矩形状をなす外装体21のほぼ中央部に配置され、回転テーブル40により保持された基板Wの周囲(基板Wの外周面)を覆うように設けられている。このカップ30の周壁の上部は、内側に向かって傾斜しており、また、回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waが露出するように開口している。このカップ30は、回転テーブル40の回転によって回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waから飛散する処理液を内周面で受ける。飛散した処理液は、カップ30の内周面に衝突し、カップ30の内周面に沿ってカップ30の下方に流れ落ちる。
【0020】
前述のカップ30は、一対の昇降機構31(
図2参照)により上下方向に移動可能に形成されている。これらの昇降機構31は、回転テーブル40を挟んで対向する位置に設けられ、カップ30を支持して上下方向に移動させる。昇降機構31としては、例えば、シリンダが用いられる。この昇降機構31は制御部90に電気的に接続されており、その駆動は制御部90により制御される。例えば、カップ30は、基板Wの搬入や搬出に応じて一対の昇降機構31により上下方向に移動する。基板Wの搬入や搬出が行われる場合、カップ30は下降し、ロボットハンド(不図示)の基板搬入や基板搬出動作を妨げない待機位置まで移動する。また、ロボットハンドが回転テーブル40上に基板Wを載置し、回転テーブル40の上方から退避すると、カップ30は上昇し、回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waから飛散する処理液を内周面で受ける処理位置まで移動する。なお、
図1及び
図3に示すカップ30は処理位置にある。
【0021】
回転テーブル40は、カップ30内の略中央に位置付けられ、水平面内で回転可能に回転機構50上に設けられている。この回転テーブル40は、例えば、スピンテーブルと呼ばれる。回転テーブル40は、複数の保持部材41を有しており、それらの保持部材41により基板Wを水平状態に保持する。このとき、基板Wの被処理面Waの中心は、回転テーブル40の回転軸上に位置付けられる。
【0022】
回転機構50は、回転テーブル40を支持するように設けられ、その回転テーブル40を水平面内で回転させるように構成されている。例えば、回転機構50は、回転テーブル40の中央に連結された回転軸やその回転軸を回転させるモータ(いずれも不図示)などを有しており、モータの駆動により回転軸を介して回転テーブル40を回転させる。この回転機構50は制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
【0023】
液供給部60は、ノズル61と、ノズル移動機構62とを具備している。この液供給部60は、ノズル移動機構62によりノズル61を移動させて回転テーブル40の上方に位置付け、そのノズル61から回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waに処理液を供給する。
【0024】
ノズル61は、ノズル移動機構62により回転テーブル40の上方を回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waに沿って揺動可能に形成されている。このノズル61は、回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waの中央付近に対向し、その被処理面Waに向けて処理液(例えば、薬液又はリンス液)を供給する。なお、ノズル61には、基板処理装置10外のタンク(不図示)から処理液が供給される。
【0025】
ノズル移動機構62は、可動アーム62aと、アーム揺動機構62bとを有している。可動アーム62aは、一端にノズル61を保持し、アーム揺動機構62bにより水平に支持されている。アーム揺動機構62bは、可動アーム62aにおけるノズル61と反対側の一端を保持し、その可動アーム62aを回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waに沿って揺動させる。このアーム揺動機構62bは制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
【0026】
例えば、ノズル61は、ノズル移動機構62により、回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waの中央付近に対向する処理位置と、回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waの上方から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする待機位置との間を移動する。なお、
図1及び
図2に示すノズル61は処理位置にある。
【0027】
二つのミストセンサ70は、
図2に示すように、内装体22の各側壁部22aの間の中央を通る直線上でカップ30を挟んで対向するようにカップ30の外面の周囲に位置付けられ、
図3に示すように、それぞれ内装体22の床部22bの上面に固定部材71を介して設けられている。これらのミストセンサ70は、それぞれカップ30の上端より低い高さ位置に位置付けられ、固定部材71によって支持されており、カップ30と排気路23とを接続する部分の隙間A1から吹き上がるミスト(処理液ミスト)を検出する。この隙間A1は、カップ30と内装体22の床部22bとの隙間、すなわちカップ30の外周面と取付孔22b1の内周面との円環形状の隙間である(
図2参照)。各ミストセンサ70としては、例えば、カメラが用いられる。各ミストセンサ70は制御部80に電気的に接続されており、それぞれ検出信号を制御部80に送信する。
【0028】
光源72は、
図3に示すように、ミストセンサ70ごとに設けられており、ミストセンサ70が、隙間A1から吹き上がるミストを検出する検出領域、すなわちミストセンサ70の検出領域を照らすようにフランジ24の下面に取り付けられている。これにより、各ミストセンサ70の個々の検出領域に光が当たるので、隙間A1から吹き上がるミストが照らされた光によって反射し、その反射した光を各ミストセンサ70により検出することができる。各光源72としては、例えば、ランプが用いられる。各光源72は制御部80に電気的に接続されており、それらの駆動は制御部80により制御される。
【0029】
なお、ミストセンサ70は、前述の隙間A1においてミストの吹き上がりが生じやすい箇所に対応させて設けられている。これにより、ミストの吹き上がりを確実に検出することが可能になるので、ミストセンサ70によるミスト検出の有無によって、隙間A1からミストが吹き上がったか否かを確実に判断することができる。また、各ミストセンサ70、各固定部材71及び光源72は、処理室20内で上から下に流れる気流を妨げないように設けられている。これにより、乱流の発生を抑えることができる。
【0030】
ここで、前述のミストの吹き上がりが生じやすい箇所とは、前述したように、処理室20の辺部分とカップ30の外周部分との間である。つまり、
図2に示すように、
図2中の上の側壁部21aとカップ30の外周面との間において空間が最も狭くなる箇所、また、
図2中の下の側壁部21aとカップ30の外周面との間において空間が最も狭くなる箇所であり、すなわち、カップ30の周囲において空間(排気路23)が最も狭くなる箇所である。この箇所では、回転テーブル40の回転による気流が滞り、この気流は隙間A1から逃げようとするため、ミストの吹き上がりが発生しやすい。したがって、カップ30の周囲の空間が最も狭くなる箇所の隙間A1から吹き上がるミストを検出するようにミストセンサ70を設けることによって、ミストの吹き上がりを把握することができる。
【0031】
制御部80は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、基板処理に関する基板処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも不図示)を具備している。この制御部80は、基板処理情報や各種プログラムに基づいて、一対の昇降機構31によるカップ30の昇降動作や回転機構50による回転テーブル40の回転動作、液供給部60による処理液の供給動作などの制御を行う。
【0032】
また、制御部80は、各ミストセンサ70の検出結果(ミスト検出の有無)に応じて、回転テーブル40の回転数を変えるように回転機構50を制御する。例えば、制御部80は、各ミストセンサ70の両方がミストを検出しない場合、ミストの吹き上がりが無いと判断し、回転テーブル40の回転数を所定の設定値(所定の回転数)に維持するように回転機構50を制御する。一方、制御部80は、各ミストセンサ70のどちらかがミストを検出した場合、ミストの吹き上がりが有ると判断し、回転テーブル40の回転数を所定の設定値から所定値だけ下げるように回転機構50を制御する。なお、回転テーブル40の回転数において、所定の設定値や所定値は予め設定されている。
【0033】
また、制御部80は、各ミストセンサ70の検出結果に応じて、ファン25aの回転数を変えるようにファン25aを制御する。例えば、各ミストセンサ70のどちらかがミストを検出すると、制御部80はファン25aの回転数を所定の設定値から所定値だけ上げるようにファン25aを制御する。なお、ファン25aの回転数において、所定の設定値や所定値は予め設定されている。
【0034】
(基板処理工程)
次に、前述の基板処理装置10が行う基板処理工程の流れについて説明する。
【0035】
基板Wの搬入時には、カップ30及びノズル61が待機位置にある状態で、処理室20の入出口21a1を塞ぐシャッタ(不図示)が開かれる。ロボットハンドなどを有する搬送装置(不図示)により未処理の基板Wが処理室20内に搬入され、回転テーブル40の各保持部材41上に載置され、それらの保持部材41によって保持される。ロボットハンドが処理室20から退避し、処理室20の入出口21a1がシャッタにより塞がれる。
【0036】
基板Wの搬入後、カップ30は一対の昇降機構31により待機位置から処理位置に、ノズル61はノズル移動機構62により待機位置から処理位置に移動する。基板Wが回転テーブル40の各保持部材41により保持された状態で、回転テーブル40が回転機構50により所定の回転数(例えば、500rpm)で回転し、回転テーブル40上の基板Wが回転する(低速回転)。なお、クリーンユニット25により浄化された空気は、カップ30内に流れ込み、そのカップ30内から各排気路23を通じて処理室20外に排出されている。
【0037】
次に、カップ30及びノズル61が処理位置にある状態で、ノズル61から回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waに処理液が供給される。ノズル61から吐出された処理液は、回転する回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waの中央付近に供給され、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの被処理面Waの全体に広がる。これにより、基板Wの被処理面Wa上には処理液の液膜が形成され、基板Wの被処理面Waは処理液によって処理される。
【0038】
前述の処理液の吐出開始から所定時間経過後、すなわち基板Wの処理完了後には、処理液の吐出が停止され、ノズル61がノズル移動機構62により処理位置から待機位置に移動する。そして、基板Wの回転数が制御部80により所定の回転数(例えば、1200rpm)に上げられ(高速回転)、液の振り切りが所定時間継続され、液の振り切り開始から所定時間経過後、基板Wの回転が停止される。この振り切りによって基板Wが乾燥され、カップ30は一対の昇降機構31により処理位置から待機位置に移動する。
【0039】
基板Wの乾燥後、基板Wの搬出時には、カップ30及びノズル61が待機位置にある状態で、処理室20の入出口21a1を塞ぐシャッタが開かれる。乾燥状態の処理済の基板Wは、回転テーブル40の各保持部材41上から前述の搬送装置(不図示)によって処理室20外に搬出される。次いで、未処理の基板Wが前述のように処理室20内に搬入され、処理が繰り返される。
【0040】
このような基板処理工程では、基板Wの乾燥時、基板Wから遠心力によって飛散した処理液は、カップ30の内周面に衝突して下方に流れ落ちる。このとき、カップ30の内周面に衝突した処理液の一部がミストとなるため、カップ30内にミスト(処理液のミスト)が発生する。一方、クリーンユニット25により浄化された空気は、処理室20内の上から下に向けて流れ、カップ30内に流入して各排気路23を流れ、処理室20上部の各排気ダクト26に排出される。この気流により、カップ30内に浮遊するミストは、各排気路23に向かって流れ、カップ30内から排出される。
【0041】
ここで、カップ30は上下方向に移動するため、カップ30と排気路23とを接続する部分、すなわち、カップ30と内装体22の床部22bとの間(カップ30の外周面と取付孔22b1の内周面との間)には微小であるが、隙間A1が存在する。カップ30内のミストが排気路23に移動して隙間A1からカップ30の上方に吹き上がり(
図3参照)、吹き上がったミストが再びカップ30内に侵入し、回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waに付着することがある。この点については、前述したとおりである。このミスト付着を防止するためには、隙間A1から吹き上がるミストを検出する各ミストセンサ70が必要となる。
【0042】
ミストが隙間A1から吹き上がると、吹き上がったミストが各ミストセンサ70のどちらかにより検出され、カップ30の外面の周囲においてミストの吹き上がりが発生したことが制御部80によって判定される。なお、ミストは、前述したようにカップ30の周囲の空間(排気路23)が最も狭くなる箇所の隙間A1から吹き上がりやすい。この隙間A1から吹き上がるミストが検出されてミストの吹き上がりの発生が判定されると、回転テーブル40及びファン25aの両方の回転数が変えられ、例えば、回転テーブル40の回転数が所定の設定値から所定値だけ下げられる。これにより、回転テーブル40の回転により生じる気流が弱まり、カップ30の周辺の気流や乱流が抑制される。また、回転テーブル40の回転数を下げることに加え、ファン25aの回転数が設定値から所定値だけ上げられる。これにより、処理室20内に供給される気流の流量が増え、処理室20内の圧力が上昇する。つまり、処理室20内において隙間A1の上方に圧力がかかる。そのため、側壁部21aとカップ30の外周部分との間が狭い空間を流れるミストが、カップ30の外面の周囲で吹き上がることが抑えられる。したがって、カップ30内のミストが排気路23に移動して隙間A1から吹き上がることを抑制することが可能になるので、吹き上がったミストが回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waに付着することを抑えることができる。
【0043】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、カップ30と排気路23とを接続する部分の隙間A1から吹き上がるミストを検出するミストセンサ70が設けられている。これにより、前述の隙間A1から吹き上がるミストを検出し、カップ30の外面の周囲におけるミストの吹き上がりの発生を把握することが可能になるので、カップ30の外面の周囲でのミストの吹き上がりを抑えるための制御、例えば、回転テーブル40やファン25aの回転数の制御を行うことができる。その結果、カップ30の外面の周囲でのミストの吹き上がりを抑制し、吹き上がったミストが回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waに付着することを抑えることが可能になるので、基板品質を向上させることができる。
【0044】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について
図4を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(ミストセンサ、固定部材及び光源の配置)について説明し、その他の説明は省略する。
【0045】
図4に示すように、第2の実施形態では、二つのミストセンサ70が、カップ30の上端より高い位置であって、隙間A1の上方に設けられている。これらのミストセンサ70は、内装体22において互いに対向する二つの側壁部22aにそれぞれ固定部材71によって固定されており、隙間A1から吹き上がるミストを検出する。
【0046】
二つの光源72は、カップ30の上端より高い位置であって、外装体21において互いに対向する二つの側壁部21aにそれぞれミストセンサ70の検出領域を照らすように設けられている。これにより、各ミストセンサ70の個々の検出領域が明るくなるので、隙間A1から吹き上がるミストを各ミストセンサ70により検出することができる。
【0047】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ミストセンサ70がカップ30の上端より高い位置に設けられている。これにより、吹き上がったミストがミストセンサ70に付着することを抑制することが可能になるので、ミストの吹き上がりによるミストセンサ70の汚染を抑えることができる。
【0048】
<第3の実施形態>
第3の実施形態について
図5を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点(調整弁及び調整弁の制御)について説明し、その他の説明は省略する。
【0049】
図5に示すように、第3の実施形態では、調整弁23aが排気路23ごとに設けられている。この調整弁23aは、排気路23の途中であって排気路23における排気ダクト26側の端部に配置されており、排気路23を流れる気体の流量を調整するものである。例えば、調整弁23aは、板状に形成され、基準位置からの回転量(回転角度)に応じて排気路23の開口度(開口面積)を変えるように回転可能に設けられている。この調整弁23aは制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
【0050】
制御部80は、各ミストセンサ70の検出結果に応じて、排気路23の開口度を変えるように調整弁23aを制御する。このとき、制御部80は、回転テーブル40及びファン25aの両方の回転数の制御を行わずに、排気路23の開口度の制御だけを行う。例えば、制御部80は、各ミストセンサ70の両方がミストを検出しない場合、ミストの吹き上がりが無いと判断し、排気路23の開口度を所定の設定値に維持するように調整弁23aを制御する。一方、制御部80は、各ミストセンサ70のどちらかがミストを検出した場合、ミストの吹き上がりが有ると判断し、排気路23の開口度を所定の設定値から所定値だけ上げるように調整弁23aを制御する。なお、所定の設定値や所定値は予め設定されている。
【0051】
ミストが隙間A1から吹き上がると、吹き上がったミストが各ミストセンサ70のどちらかにより検出され、カップ30の外面の周囲においてミストの吹き上がりが発生したことが制御部80によって判定される。そして、排気路23の開口度が変えられ、例えば、排気路23の開口度が所定の設定値から所定値だけ上げられる。これにより、排気路23を流れる気流が強くなり、カップ30から排気路23に流入したミストが隙間A1から吹き上がらずに隙間A1の下方を通過しやすくなるため、カップ30の外面の周囲でのミストの吹き上がりが抑えられる。したがって、カップ30内のミストが排気路23に移動して隙間A1から吹き上がることを抑制することが可能になるので、吹き上がったミストが回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waに付着することを抑えることができる。
【0052】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、カップ30の外面の周囲でのミストの吹き上がりを抑えるための制御として、排気路23の開口度の制御を行うことができる。これにより、カップ30の外面の周囲でのミストの吹き上がりを抑制し、吹き上がったミストが回転テーブル40上の基板Wの被処理面Waに付着することを抑えることが可能になるので、基板品質を向上させることができる。
【0053】
<他の実施形態>
前述の説明においては、ミストセンサ70の個数や固定部材71の個数、光源72の個数、また、調整弁23aの個数を二個としているが、それらの個数は限定されるものではない。
【0054】
また、前述の説明においては、ミストセンサ70としてカメラを用いているが、これに限るものではなく、例えば、反射型センサを用いるようにしても良い。反射型センサを用いた場合には、光源72を不要とし、構成を簡略化することができる。
【0055】
また、前述の説明においては、ミストセンサ70をカップ30の外面の周囲にあるいはカップ30の外面の上方に設けているが、これに限るものではなく、その他の位置に設けるようにしても良く、カップ30と排気路23とを接続する部分の隙間A1から吹き上がるミストを検出することが可能な位置に設ければ良い。なお、隙間A1においてミストの吹き上がりが生じやすい箇所として、カップ30の周囲の空間(排気路23)が最も狭くなる箇所を例示したが、これに限るものではない。例えば、各昇降機構31やアーム揺動機構62bなどの配置位置によってカップ30の周囲の空間(排気路23)の開口度や気流の流れも変わるため、ミストの吹き上がりが生じやすい箇所も変わることになる。
【0056】
また、前述の説明においては、各ミストセンサ70の検出結果に応じて、回転テーブル40及びファン25aの両方の回転数を変えているが、これに限るものではなく、どちらか一方の回転数だけを変えるようにしても良い。また、どちらか一方の回転数を変え、所定時間後、再度、ミストセンサ70がミストを検出した場合、もう一方の回転数を変えるようにしても良い。つまり、回転テーブル40やファン25aの回転数を制御するときの優先度を決定し、その優先度に基づく順番で回転テーブル40やファン25aの回転数を制御することが可能である。
【0057】
また、前述の説明においては、各ミストセンサ70の検出結果に応じて、回転テーブル40の回転数を所定の設定値から所定値だけ下げ、ファン25aの回転数を所定の設定値から所定値だけ上げているが、これに限るものではなく、例えば、時間経過に応じて回転テーブル40の回転数を徐々に下げたり、もしくは、ファン25aの回転数を徐々に上げたり、また、段階的に複数回にわたり回転を制御するようにしても良い。また、回転テーブル40やファン25aの回転数を各ミストセンサ70によってミストが検出されなくなるまで制御するようにしても良い。また、各ミストセンサ70の検出結果に応じて、排気路23の開口度を所定の設定値から所定値だけ上げているが、これに限るものではなく、例えば、時間経過に応じて徐々に上げたり、段階的に複数回上げたりするようにしても良い。一方、回転テーブル40の回転数を下げるのではなく、排気路23の流路形状や排気路23内の気体の流れなどによっては、所定の設定値から所定値だけ上げたり、あるいは、時間経過に応じて徐々に上げたり、段階的に複数回上げたりするようにしても良い。また、ファン25aの回転数を上げるのではなく、排気路23の流路形状や排気路23内の気体の流れなどによっては、所定の設定値から所定値だけ下げたり、あるいは、時間経過に応じて徐々に下げたり、段階的に複数回下げたりするようにしても良い。また、排気路23の流路形状や排気路23内の気体の流れなどによっては、調整弁23aの開口度を上げるのではなく、所定の設定値から所定値だけ下げたり、あるいは、時間経過に応じて徐々に下げたり、段階的に複数回下げたりするようにしても良い。
【0058】
また、前述の説明においては、カップ30の外面の周囲でのミストの吹き上がりを抑えるための制御として、回転テーブル40やファン25aの回転数の制御、あるいは、排気路23の開口度の制御を用いているが、これに限るものではなく、例えば、各排気ダクト26に接続された排気ファン(不図示)による排気量、すなわち排気ファンの回転数の制御を用いるようにしても良い。また、回転テーブル40及びファン25aの回転数のどちらか一方又は両方の制御と、排気路23の開口度の制御とを組み合わせて実行することも可能である。この組み合わせは、排気路23の流路形状や排気路23内の気体の流れなどに応じて適切に設定される。なお、回転テーブル40やファン25aの回転数、排気路23の開口度を制御するときの優先度を決定し、その優先度に基づく順番で回転テーブル40やファン25aの回転数、排気路23の開口度を制御することも可能である。
【0059】
また、前述の説明においては、ミストセンサ70によるミスト検出の有無によってミストの吹き上がりの有無を判断しているが、これに限るものではなく、例えば、ミストの吹き上がり量に基づいてミストの吹き上がりの有無を判断するようにしても良い。この場合、制御部80は、ミストセンサ70により検出されたミストの吹き上がり量が許容範囲内であるか否かを判断し、吹き上がり量が許容範囲内であると判断した場合、ミストの吹き上がりが無いと判定し、回転テーブル40やファン25aの回転数又は排気路23の開口度を所定の設定値に維持する。一方、吹き上がり量が許容範囲外であると判断した場合には、ミストの吹き上がりが有ると判定し、回転テーブル40やファン25aの回転数を所定の設定値から所定値だけ下げたり、あるいは、排気路23の開口度を所定の設定値から所定値だけ上げたりする。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10 基板処理装置
20 処理室
23 排気路
23a 調整弁
25a ファン
30 カップ
40 回転テーブル
50 回転機構
60 液供給部
70 ミストセンサ
80 制御部
A1 隙間
W 基板