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特許7534380方位及び姿勢補正方法、及び方位及び姿勢補正システム
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  • 特許-方位及び姿勢補正方法、及び方位及び姿勢補正システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】方位及び姿勢補正方法、及び方位及び姿勢補正システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20240806BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20240806BHJP
   H01Q 3/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H04B7/06 982
H04B7/08 982
H01Q3/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022209663
(22)【出願日】2022-12-27
(65)【公開番号】P2024093350
(43)【公開日】2024-07-09
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501243317
【氏名又は名称】耀登科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】許 永泰
(72)【発明者】
【氏名】趙 君恒
(72)【発明者】
【氏名】王 彦ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】朱 柏語
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-037424(JP,A)
【文献】特開2004-061295(JP,A)
【文献】特開2008-258808(JP,A)
【文献】特開2017-219375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04B 7/08
H01Q 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方位及び姿勢補正システムに適用可能な方位及び姿勢補正方法であって、
軸方向センサが特定の時間帯にて任意の1つの軸方向に関わる複数の姿勢データを取得すること、
前記複数の姿勢データと前記特定の時間帯における複数の時点に対して線形回帰分析を行い、回帰直線と標準偏差を求めることと、
各前記時点における前記複数の姿勢データと前記回帰直線との偏差値を取得することと、
前記偏差値が前記標準偏差の2倍以上である前記姿勢データを除外することと、
前記偏差値が前記標準偏差の2倍以上である前記姿勢データが除外された前記姿勢データをグループ化値に従ってグループ化し、複数のクラスタを形成することと、
前記各クラスタにおける前記姿勢データの総量を比較し、総量が最大のクラスタを理想クラスタとして定義することと、
前記理想クラスタにおける前記複数の姿勢データの平均値を、補正後の妥当な姿勢データとして算出することと、
を含む、ことを特徴とする、方位及び姿勢補正方法。
【請求項2】
前記グループ化値は、前記方位及び姿勢補正システムにおける前記軸方向センサの最小精度である、請求項1記載の方位及び姿勢補正方法。
【請求項3】
任意の1つの軸方向に関わる複数の姿勢データを生成するために乗り物の姿勢を検知する軸方向センサと、
前記軸方向センサに電気的に接続された較正モジュールと、
を具備する、方位及び姿勢補正システムであって、
前記較正モジュールは、
方位及び姿勢補正システムに適用可能な方位及び姿勢補正方法であって、
軸方向センサが特定の時間帯にて任意の1つの軸方向に関わる複数の姿勢データを取得し、
前記複数の姿勢データと前記特定の時間帯における複数の時点に対して線形回帰分析を行い、回帰直線と標準偏差を求め、
各前記時点における前記複数の姿勢データと前記回帰直線との偏差値を取得し、
前記偏差値が前記標準偏差の2倍以上である前記姿勢データを除外し、
前記偏差値が前記標準偏差の2倍以上である前記姿勢データが除外された前記姿勢データをグループ化値に従ってグループ化し、複数のクラスタを形成し、
前記各クラスタにおける前記姿勢データの総量を比較し、総量が最大のクラスタを理想クラスタとして定義し、
前記理想クラスタにおける前記複数の姿勢データの平均値を、補正後の妥当な姿勢データとして算出する、
ことを特徴とする、方位及び姿勢補正システム。
【請求項4】
前記グループ化値は、前記方位及び姿勢補正システムにおける前記軸方向センサの最小精度である、請求項3記載の方位及び姿勢補正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正方法及び補正システムに関し、より詳細には、方位及び姿勢補正方法、並びに方位及び姿勢補正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子駆動型アレーアンテナでは、駆動装置(モータ装置など)が故障してアレーアンテナの姿勢を変えられない場合、アレーアンテナからのビーム方向を変えて異なる姿勢での衛星と通信するために、方位及び姿勢基準システムが関連するパラメータを取得する必要がある。
【0003】
しかし、従来の方位及び姿勢基準システム装置の軸方向センサは、動作中の環境干渉の影響を受けやすく、不正確な測定値が得られる。このように方位及び姿勢基準装置の測定値が不正確な場合、アレーアンテナのビーム追尾の効率が大きく低下することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術的不備に対して、本発明は、方位及び姿勢補正方法及び方位及び姿勢補正システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の実施形態において、本発明は、方位及び姿勢補正方法を提供する。本方法は、以下を含む。軸方向センサから、ある時間帯における任意の1つの軸方向の複数の姿勢データを取得するステップと、前記姿勢データと前記時間帯内の複数の時点とに対して線形回帰分析を行い、回帰直線と標準偏差を得るステップと、前記姿勢データと前記回帰直線との偏差値を前記時点のそれぞれにおいて取得するステップと、前記偏差値が前記標準偏差の2倍以上である姿勢データを除外し、前記姿勢データをグループ化値に従ってグループ化して複数のクラスタを形成し、前記クラスタそれぞれにおける姿勢データの総量を比較し、総量の最も大きいクラスタを理想クラスタと定義し、前記理想クラスタの姿勢データの平均を補正後の適正姿勢データとして算出するステップと、を含む。
【0006】
特定の実施形態では、グループ化値は、方位及び姿勢補正システムの軸方向センサの最小精度である。
【0007】
別の態様において、本発明は、方位及び姿勢補正システムを提供する。方位及び姿勢補正システムは、軸方向センサと、較正モジュールとを含む。軸方向センサは、任意の1つの軸方向における複数の姿勢データを生成するために乗り物の姿勢を検知するように構成される。較正モジュールは、軸方向センサに電気的に接続され、方位及び姿勢補正方法を実行する。前記方位及び姿勢補正方法は、軸方向センサから、ある時間帯における任意の1つの軸方向の複数の姿勢データを取得するステップと、前記姿勢データと前記時間帯内の複数の時点とに対して線形回帰分析を行い、回帰直線と標準偏差を得るステップと、前記姿勢データと前記回帰直線との偏差値を前記時点のそれぞれにおいて取得するステップと。前記偏差値が前記標準偏差の2倍以上である姿勢データを除外し、前記姿勢データをグループ化値に従ってグループ化して複数のクラスタを形成し、前記クラスタそれぞれにおける姿勢データの総量を比較し、総量の最も大きいクラスタを理想クラスタと定義し、前記理想クラスタの姿勢データの平均を補正後の適正姿勢データとして算出するステップと、を含む。
【0008】
特定の実施形態では、グループ化値は、方位及び姿勢補正システムの軸方向センサの最小精度である。
【発明の効果】
【0009】
そこで、本発明が提供する方位及び姿勢補正方法及び方位及び姿勢補正システムでは、「偏差値が標準偏差の2倍以上である姿勢データを除外し、グループ化値に応じて姿勢データをグルーピングして複数のクラスタを形成し、」、「総量が最大のクラスタを理想クラスタと定義し、理想クラスタの姿勢データの平均値を補正後の妥当な姿勢データとして算出する」ことにより、方位及び姿勢補正方法及び方位及び姿勢補正システムを実現することができる。また、「総量が最大のクラスタの1つを理想クラスタとし、理想クラスタ内の姿勢データの平均値を補正後の妥当な姿勢データとして算出する」ことにより、パラメータを補正し、アンテナビーム追跡の効率を確保できる方位及び姿勢補正方法及び方位及び姿勢補正システムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る方位及び姿勢補正方法のフローチャートである。
図2】本発明に係る方位及び姿勢補正システムの回路ブロック図である。
図3】本発明による軸方向センサによって測定された時間とピッチ角との関係を示す概略図である。
図4図3において、偏差値が標準偏差の2倍以上である姿勢データを除外した場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【0012】
下記より、具体的な実施例で本発明が開示する「方位及び姿勢補正方法、及び方位及び姿勢補正システム」に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神を逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。
【0013】
なお、本明細書において「第1」、「第2」、「第3」等の用語で各種の部品又は信号を説明する可能性があるが、これらの部品又は信号はこれらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は、主として一つの部品と別の部品、又は一つの信号と別の信号を区分するためのものであることが理解されたい。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0014】
さらに、以下の説明において、特定の図面または特定の図面に示されるように参照されることが示されている場合、これは、後続の説明において、説明される関連内容の大部分がその特定の図面に現れることを強調するためだけであり、後続の説明をその特定の図面への参照のみに制限するものではない。
【0015】
図1図4を参照すると、本発明は、方位及び姿勢補正方法及び方位及び姿勢補正システム100を提供するものである。方位及び姿勢補正方法は、方位及び姿勢補正システム100に適用可能である。以下の説明では、まず、方位及び姿勢補正システム100の各構成要素を紹介し、その後、方位及び姿勢補正システム100の各構成要素による補正方法の実施態様を規定する。
【0016】
図2を参照すると、方位及び姿勢補正システム100は、軸方向センサ1と、軸方向センサに電気的に接続された較正モジュール2とを含む。軸方向センサ1は、乗り物(図示せず)の姿勢を検知して、軸方向のいずれか1つにおける複数の姿勢データを生成するように構成される。実際には、軸方向センサ1は、例えば、3軸加速度計、3軸ジャイロスコープ、及び3軸磁力計を備えた9軸電子センシングデバイスであり得、軸方向センサ1は、乗り物の姿勢(例えば、ピッチ角、ロール角、又はヨー角)を検知するために使用できるが、本発明はこれらに限定されない。
【0017】
さらに、図2に示すように、本実施形態における較正モジュール2は、演算機能を有する電子機器(例えば、CPU、MCU、又はECU)であってもよく、較正モジュール2は、軸方向センサ1が発生する誤差パラメータを補正するための補正方法を実行することが可能である。校正方法は、複数のステップS101~S113を含む。注意すべきは、上述したステップのうちいずれか1つは、実用的な要件に応じて合理的な範囲で省略又は調整することができることである。
【0018】
ステップS101では、軸方向センサ1がある時間帯における軸方向のいずれか1つに関わる複数の姿勢データを取得する。例えば、軸方向の1つはピッチ角であり、姿勢データの各々は異なる時点の姿勢状態であってもよい。
【0019】
ステップS103では、前記姿勢データと前記時間帯における複数の時点とに対して線形回帰分析を行い、回帰直線と標準偏差を求める。
【0020】
ステップS105では、各時点における姿勢データと回帰直線との偏差値を求めることにより実施される。偏差値は、同じ時点における姿勢データと回帰直線との残差(Residual)として理解することができる。
【0021】
ステップS107は、偏差値が標準偏差の少なくとも2倍以上である姿勢データを除外することにより実施される。除外される姿勢データは、好ましくは、標準偏差の3倍以上であってもよい。
【0022】
ステップS109は、グループ化値に従って姿勢データをグループ化し、複数のクラスタを形成することによって実施される。グループ化値は、現状に応じて選択される任意の値であり得る。実際には、グループ化値は、好ましくは、軸方向センサ1の最小精度とすることができる。
【0023】
ステップS111は、各クラスタにおける姿勢データの総量を比較し、総量が最大のクラスタの1つを理想クラスタとして定義することにより実施される。
【0024】
ステップS113は、理想クラスタにおける姿勢データの平均値を、補正後の合理的な姿勢データとして算出することにより実施される。すなわち、軸方向センサ1が現在測定している姿勢データを、この妥当な姿勢データで置き換える。
【0025】
以下、説明の便宜上、ステップS101~S113を説明するための例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
図3を参照して、図3は、時間とピッチ角との関係を示す模式図であり、模式図の横軸は時間(例えば、ミリ秒)であり、模式図の縦軸はピッチ角(即ち、姿勢データ)である。図3の時間と姿勢のデータから、線形回帰分析により回帰直線Lと標準偏差を求めることができる。回帰直線Lの方程式は
【数1】
であり、標準偏差は約0.1である。
【0027】
較正モジュール2は、各時点において、姿勢データと回帰直線との偏差値(すなわち、差分、または残差)を比較する。較正モジュール2は、偏差値が標準偏差の少なくとも2倍以上である姿勢データを除外する。例えば、100ミリ秒の時点では、回帰直線の値は0.3053(度)であり、軸方向センサ1が測定した姿勢データは0.09(度)である。従って、100ミリ秒の姿勢データは明らかに標準偏差の2倍を超えており、
【数2】
を超えているので、除外される(すなわち、図4においてピッチ角が0のデータ)。
【0028】
そして、較正モジュール2は、グループ化値に従って姿勢データをグループ化し、複数のクラスタを形成する。グループ化値は、軸方向センサ1の最小精度の一例であり、グループ化値は、例えば、0.1である。そのため、0.1~0.2の範囲内のクラスタ、0.2~0.3の範囲内のクラスタ、0.3~0.4の範囲内のクラスタ、及び0.4~0.5の範囲内のクラスタに姿勢データが分類される。
【0029】
較正モジュール2は、各クラスタにおける姿勢データの総量を比較し(下記表1参照)、総量の最も大きいクラスタの1つを理想クラスタとして定義する、すなわち、度数が0.3~0.4の姿勢データは、理想クラスタに属すると定義する。較正モジュール2は、補正後の妥当な姿勢データとして、理想クラスタに属する姿勢データの平均数(すなわち、0.35度)を算出する。
【0030】
【表1】
【0031】
なお、度数が0.5~1.0の姿勢データ(すなわち、全ての姿勢データ)の実際の平均値は0.30であるが、実際の乗り物のピッチ角は、実際には0.35度により近い値であることに留意されたい。すなわち、本発明に係る方位及び姿勢補正方法及び方位及び姿勢補正システムは、確かに誤差を効果的に低減することができる。
【0032】
[本実施形態の有益な効果]
以上より、本発明の方位及び姿勢補正方法及び方位及び姿勢補正システムにおいては、「偏差値が標準偏差の2倍以上の姿勢データを除外し、グループ化値に応じて姿勢データをグループ化して複数のクラスタを形成し、」、「クラスタのうち総量が最大のものを理想クラスタと定義し、理想クラスタ内の姿勢データの平均値を補正後の妥当な姿勢データとして算出する」ことで、方位及び姿勢補正方法及び方位及び姿勢補正システムは、「偏差値が標準偏差の1倍以上の姿勢を除外し、グループ化値に応じて複数の姿勢をクラスタ化する。また、「総量が最大となるクラスタを理想クラスタと定義し、理想クラスタ内の姿勢データの平均値を補正後の妥当な姿勢データとして算出する」ことにより、パラメータを補正し、アンテナビーム追跡の効率を確保できる方位及び姿勢補正方法、並びに方位及び姿勢補正システムである。
【0033】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0034】
S101~S113:ステップ
100:方位及び姿勢補正システム
1:軸方向センサ
2:較正モジュール
L:回帰直線
図1
図2
図3
図4