(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ウイルス及び抗原精製及びコンジュゲーション
(51)【国際特許分類】
C12N 7/00 20060101AFI20240806BHJP
C07K 14/08 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C12N7/00
C07K14/08
(21)【出願番号】P 2022535138
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 US2020063902
(87)【国際公開番号】W WO2021119062
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-07-28
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522222412
【氏名又は名称】クビオ・ホールディングス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーデン,リー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューム,スティーブン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】モートン,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ポーグ,グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッチャー,バリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイドン,ヒュー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン,キャリー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】パーティン,ニック
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,ジョン・ダブリュ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特許第7315590(JP,B2)
【文献】Human Vaccines & Immunotherapeutics,2014年,Vol.10, No.3,p.586-595
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00-08
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質及びウイルス粒子を含むコンジュゲート化合物の安定性の測定値を向上させるための方法であって、前記方法が、
前記ウイルスの表面に正電荷が凝集するように、前記ウイルス粒子を活性化させる工程と;
次いで、前記ウイルス粒子及び前記タンパク質をコンジュゲーション反応で混合してコンジュゲート混合物を形成する工程を含み、
非冷蔵環境で保存温度に所定期間おいたときに、前記コンジュゲート混合物の完全性、又は濃度が、前記コンジュゲート混合物の初期完全性、又は初期濃度の少なくとも90%であり、前記期間が、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも42日間である、前記方法。
【請求項2】
前記ウイルス粒子を活性化させる工程は、前記ウイルス粒子を約5.5以下のpHに暴露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保存温度が、少なくとも20℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルス粒子が、エンベロープウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質が、抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原が、ヘマグルチニン抗原である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記期間が、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも90日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記期間が、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも180日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質及びウイルスを含むコンジュゲート化合物の安定性の測定値を向上させるための方法であって、前記方法が、
前記ウイルスの表面に正電荷が凝集するように、前記ウイルスを活性化させる工程と;
次いで、前記ウイルス及び前記タンパク質をコンジュゲーション反応で混合してコンジュゲート混合物を形成する工程を含み、
非冷蔵環境で保存温度に所定期間おいたときに、前記コンジュゲート混合物の完全性、又は濃度が、前記コンジュゲート混合物の初期完全性、又は初期濃度の少なくとも90%であり、前記期間が、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも42日間である、前記方法。
【請求項10】
前記ウイルスを活性化させる工程は、前記ウイルスを約5.5以下のpHに暴露することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記保存温度が、少なくとも20℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスが、タバコモザイクウイルスである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質が、抗原である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記抗原が、ヘマグルチニン抗原である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記期間が、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも90日間である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記期間が、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも180日間である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
抗原及びウイルス粒子を含むコンジュゲート化合物の安定性の測定値を向上させるための方法であって、前記方法が、
前記ウイルスの表面に正電荷が凝集するように、前記ウイルス粒子を活性化させる工程と;
次いで、前記ウイルス粒子及び抗原をコンジュゲーション反応で混合してコンジュゲート混合物を形成する工程を含み、
非冷蔵環境で保存温度に所定期間おき、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも42日間経過した後、前記コンジュゲート混合物は、抗原濃度、抗原完全性又は抗原効力の1種以上により測定されると、前記抗原単独の安定性を超える安定性を示す、前記方法。
【請求項18】
前記保存温度が、少なくとも20℃である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗原が、ヘマグルチニン抗原である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルス粒子が、タバコモザイクウイルスである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記期間が、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも90日間である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記期間が、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも180日間である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記ウイルス粒子を活性化させる工程は、前記ウイルス粒子を約5.5以下のpHに暴露することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
安定性の前記測定値は、抗原濃度であり、前記コンジュゲート混合物の濃度と前記抗原単独の濃度の差は、少なくとも10%である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
安定性の前記測定値は、抗原完全性であり、前記コンジュゲート混合物の完全性と前記抗原単独の完全性の差は、少なくとも10%である、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
安定性の前記測定値は、抗原効力であり、前記コンジュゲート混合物の効力と前記抗原単独の効力の差は、少なくとも10%である、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
安定性の前記測定値は、抗原効力であり、前記期間の終了時における前記コンジュゲート混合物の保存効力が、前記コンジュゲート混合物の初期効力の少なくとも70%である、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
ウイルス粒子にコンジュゲートさせたタンパク質を含み、前記タンパク質を前記ウイルス粒子の表面のリジン残基と化学的に会合させた化合物であって、
前記化合物を非冷蔵環境で保存温度に所定期間おいたときに、前記期間の終了時における前記化合物の完全性又は濃度が、前記化合物の初期完全性又は初期濃度の少なくとも90%であり、前記期間が、前記化合物のリリース日から少なくとも42日間である、前記化合物。
【請求項29】
前記保存温度が、少なくとも20℃である、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
前記期間が、前記化合物のリリース日から少なくとも180日間である、請求項28に記載の化合物。
【請求項31】
前記ウイルス粒子が、ウイルスであり、前記ウイルスが、タバコモザイクウイルスである、請求項28に記載の化合物。
【請求項32】
前記ウイルス粒子の表面のリジン残基と化学的に会合させた前記タンパク質が、抗原である、請求項28に記載の化合物。
【請求項33】
前記抗原が、ヘマグルチニン抗原である、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
前記期間の終了時における前記化合物の濃度と前記抗原単独の初期濃度との差が、少なくとも10%である、請求項32に記載の化合物。
【請求項35】
前記期間の終了時における前記化合物の完全性と前記抗原単独の初期完全性との差が、少なくとも10%である、請求項32に記載の化合物。
【請求項36】
ウイルス粒子にコンジュゲートさせた抗原を含む化合物であって、
非冷蔵環境で保存温度に所定期間おき、前記化合物のリリース日から少なくとも42日間経過した後、前記化合物は、抗原濃度、抗原完全性又は抗原効力の1種以上により測定されると、前記抗原単独の安定性を超える安定性を示
し、
前記抗原が、前記ウイルス粒子の表面のリジン残基と化学的に会合している、前記化合物。
【請求項37】
前記保存温度が、少なくとも20℃である、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
前記期間が、前記化合物のリリース日から少なくとも180日間である、請求項36に記載の化合物。
【請求項39】
前記ウイルス粒子が、ウイルスであり、前記ウイルスが、タバコモザイクウイルスである、請求項36に記載の化合物。
【請求項40】
前記抗原が、ヘマグルチニン抗原である、請求項36に記載の化合物。
【請求項41】
前記安定性が測定されるのは、抗原濃度であり、前記コンジュゲート混合物の濃度と前記抗原単独の濃度の差は、少なくとも10%である、請求項36に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に記載する実施形態は、抗原担体としての高度精製組換えウイルスのマルチセット生産方法の使用を含み、更に、各種実施形態は、精製ウイルスと精製抗原を使用したワクチン生産に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、核酸分子がタンパク質外被に内包されており、他の生物の生きた細胞の中でしか複製しない。多種多様なウイルスは、ヒト、家畜及び植物等の全種の生物に感染することができ、有害であると考えられていることが多い。一方、プラス面では、多様な治療目的にウイルスを使用することに関心が高まっており、限定するものではないが、数例を挙げると、ワクチン創製、遺伝子治療及びがん治療が挙げられる。しかし、ウイルスを研究し、その構造を解明し、分子ツールと疾患治療ベクター・担体にウイルスを応用するためには、先ずウイルスを精製し、ウイルスの所期の機能を妨げる細胞破片、高分子繊維、オルガネラ、脂質及び他の不純物を除去する必要がある。
【0003】
一旦精製すると、ウイルスは多数の用途に利用できるようになる。本開示に関連する用途の1例は、ウイルスに対する遺伝子ストラテジーの研究と開発に(この文脈では病原体とみなされる)ウイルスを使用するという従来の認識である。しかし、本開示で詳述するのは、ワクチンを製造するための抗原担体としての精製ウイルスの使用である。抗原は、生物に適切に送達されると、この生物の体内で抗原の分子構造に合致する抗体と結合して抗体産生を刺激することにより、この生物で免疫応答を生じることが可能な分子である。組換え抗原を生産するには、組換えDNAを公知技術によりベクターにクローニングした後、数例を挙げると、細菌、哺乳動物細胞、酵母細胞及び植物細胞等の特定の宿主細胞に導入する。その後、宿主細胞の翻訳装置を使用して組換え抗原を発現させる。発現後、組換え抗原を回収し、コンジュゲーションと呼ばれる方法により、共有結合を介してウイルスと結合させることができる。抗原をウイルスとコンジュゲーションさせた後に、ウイルスは、抗原を生物に送達して免疫系応答を活性化させるための担体として機能することができる。こうして、ウイルス-抗原コンジュゲートを治療用途に利用することができる。抗原が免疫応答を活性化させ、原料生物の宿主細胞で抗体を産生するためには、適正なウイルス-抗原コンジュゲーションが必要である。この適正なコンジュゲーションは、ウイルスと抗原の双方の精製により助長される。
【0004】
現行のウイルス精製法は、一般に、例えば、ナノグラム~ミリグラムのオーダーの少量の生化学量での使用に限られており、グラム~キログラムのオーダーの工業量では検証されていない。例えば、従来使用されている「粗感染細胞ライセート」と呼ばれる方法は、ウイルス感染細胞からの粗細胞ライセート又は細胞培養培地を利用している。感染させた哺乳動物細胞を凍結解凍又は他の公知方法により溶解させ、低速遠心により破片を除去した後、上清を実験に使用している。無傷の感染生物を物理的に破砕又は粉砕し、得られた抽出液を遠心又は濾過により清澄化し、粗ウイルス調製物を生成している。しかし、この方法は、実験を実施してウイルスを操作する性能に影響する多くの非ウイルス因子で著しく汚染される。
【0005】
従来の精製工程の第2の例は高速超遠心法であり、ウイルスをペレット化したり、低密度ショ糖溶液を利用したペレット化により更に精製したり、種々の密度のショ糖溶液に懸濁する方法である。この方法の欠点としては、高速分離のサイズと拡張性が制限されているため、精製ウイルスを少量でしか生産できないという点、及び他の宿主タンパク質がウイルス試料と共精製することが多いため、ウイルス純度が低いという点が挙げられる。
【0006】
ウイルス純度を高めるために従来使用されている第3の方法は、密度勾配超遠心法である。この方法では、集合したウイルス粒子の分離又は遺伝子実体を含まない粒子の除去に、塩化セシウム、ショ糖、イオジキサノール又は他の溶液のグラジエントを使用する。この方法の欠点としては、ウイルスを精製するために必要な時間(多くの場合には2~3日間)、試料数の制限、一度に分析できる試料の量(一般に、ローター当たり6個)、及び精製できるウイルスの量が少ないこと(一般に、マイクログラム~ミリグラムの終産物)が挙げられる。
【0007】
脂質と葉緑体を除去するなどの方法により、植物に由来するウイルスを含めたウイルスを精製するために、有機抽出法とポリエチレングリコール沈殿法も使用されている。しかし、これらの方法も、純度が低く、一般的には生成物が宿主のタンパク質、核酸、脂質及び糖類に結合したままであり、得られるウイルス産物は凝集が顕著になる。これらの欠点は、米国食品医薬品局(FDA)により制定された現行適正製造規範(cGMP)規則の遵守の点で最終製品の有用性を減じている。
【0008】
FDAにより公布された現行cGMP規則は、医薬品製品の製造、加工及び包装に使用される方法、施設及び管理について最低限の要件を定めている。これらの規則は製品の安全性を目的とし、製品が表示通りの成分と含有量であることを保証している。したがって、ウイルスをワクチン創製、遺伝子治療、がん治療及び他の臨床状況で利用するためには、最終ウイルス産物がcGMP規則を遵守していなければならない。ポリエチレングリコール沈殿法により得られる生成物のように、最終ウイルス産物がcGMP規則を遵守していないならば、臨床状況におけるその有用性は存在しないか、又は著しく低い。
【0009】
拡張性とは、例えば、実験室規模(0.1平方メートル未満)から少なくとも20平方メートル超のシステムまで製品量が増えても同一製品を安定して再現可能に製造する方法を意味する。上述したような従来使用されている方法は、いずれも安定性を欠き、拡張性が低く(即ち、生化学量でしか製品を生産できない)、cGMP規則を遵守していない。
【0010】
大規模生産の点では、植物を基盤とする生産が注目を集めているが、その使用には大きな欠点がある。植物を基盤とする生産システムは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)等の動物細胞生産システムよりも著しく低コストで工業的規模の量を生産することが可能である。しかし、ある程度の規模で非植物ウイルスに適切であった所定の従来の精製法は、植物から生産されたウイルス及び抗原には利用できない。これらの欠点は、動物細胞培養からのウイルスの精製と、植物ウイルスの精製には非常に多くの相違点があることに起因する。動物細胞は、一次タンパク質と核酸不純物を産生するが、植物は、動物細胞には存在しない多量の他の不純物も含んでいる。これらのうちの数例を挙げる、葉緑体膜及び液胞膜の脂質組成物、単純糖質及び複合糖質不純物、並びに非粒状オルガネラ不純物が挙げられる。実際に、植物から得られたウイルス及び抗原物質の処理及び精製に使用される設備は、例えば、設備の分離膜又は培地床に不純物が蓄積することにより、粗植物抽出液により汚染されることが多い。このような汚染は、不可避的に圧力流不良、濾過不良を招き、最終的に製品収率不良に至る。これらの不純物は、植物から所望されるタンパク質、ウイルス、又は他の「産物」の内側で凝集する傾向があり、共精製することが可能になるという問題もある。したがって、現行のウイルス精製法は、限定されないが、植物抽出液に存在する不純物等の不純物を完全に又は十分な量ですら適切に除去できないであろうし、精製ウイルスを適切に生産することが示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、商業的規模、即ち、グラム~キログラム以上の規模でcGMP規則を遵守するような方法で高度精製ウイルスを安定して生産することが可能なウイルス及び抗原精製プラットフォームが大いに必要とされている。このような改善が得られるならば、ワクチン創製、遺伝子治療及びがん治療におけるツールとして使用するための臨床開発が可能になるであろう。本願に概要を記載する他の特徴及び利点と共に、本願に記載する複数の実施形態及び代替形態に係るプラットフォームは、この需要及び他の需要を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る所定の実施形態において、ウイルス精製方法は、少なくとも1種のウイルスを含むウイルス材料を原料生物から収穫する工程と;前記少なくとも1種のウイルスから細胞破片を除去することにより、前記少なくとも1種のウイルスの構造を清澄化する工程と;分離・清澄化したウイルスを濃縮する工程であって、所定の実施形態では、使用者により選択される所定限界を超えないための孔径の細孔を有する膜を含む濾過装置により実施する前記工程と;前記濃縮したウイルスを一連の分離手順に供することにより処理し、各分離手順後にウイルスを採取する工程を含むマルチセット法に関し、少なくとも1種の分離手順は、前記ウイルスから宿主細胞夾雑物を分離するために、イオン交換クロマトグラフィーを含み、少なくとも1種の分離手順は、少なくとも前記ウイルスと残留不純物のサイズ差と、前記不純物と1種以上のクロマトグラフィーリガンドの間に生じる化学的相互作用に基づいて前記不純物を前記ウイルスから分離するために、マルチモードクロマトグラフィーを含む。所定の実施形態において、ウイルスの組換え発現を行う原料生物は植物であり、非限定的な例として、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)とコウキクサ(Lemna minor)が挙げられる。原料生物が植物であるとき、収穫工程は、後述するように、種子生産と、植物発芽を含むことができ、一過性遺伝子発現を誘導し、目的タンパク質を形成する。あるいは、ウイルスの組換え発現を行う原料生物は非植物宿主であり、限定されないが、細菌、藻類、酵母、昆虫又は哺乳動物が挙げられる。
【0013】
更に、本願に記載する複数の実施形態の各種態様は、ウイルス粒子とコンジュゲートさせることができる抗原の生産若しくは精製又はその両方に関する。本実施形態及び代替形態において、ウイルス粒子は、限定されないが、棒状ウイルス、正二十面体ウイルス、エンベロープウイルス、及びこれらの1種以上の断片等のウイルスの1種又は一部又は全部及び/又はその断片を含む。所定の実施形態において、抗原の組換え発現を行う原料生物は、植物であり、あるいは、抗原の組換え発現を行う原料生物は、非植物宿主であり、限定されないが、細菌、藻類、酵母、昆虫又は哺乳動物が挙げられる。
【0014】
本願に記載する各種実施形態に従って実施されるマルチセット法は、高度に精製されたウイルス若しくは組換え抗原又はその両方を商業的規模で生産するという利点がある。上流精製工程を改善するために、植物ウイルスの濃縮等の種々の工程を利用する。所定の実施形態は、精製組換えウイルス及び組換え抗原を生産するために、サイズ排除クロマトグラフィー及び他の特徴を利用する。したがって、本願に記載する各種実施形態は、ウイルスと抗原をコンジュゲートさせた1種以上のワクチンの製造に適した1種以上のウイルスと1種以上の抗原を提供する。
【0015】
ウイルスについては、本願に記載する本発明のウイルス精製プラットフォームの所定の実施形態を実施することにより、棒状植物ウイルス(例えば、タバコモザイクウイルス、即ち、「TMV」)と正二十面体植物ウイルス(例えば、アカクローバモザイクウイルス)の精製を行った。本願の複数の実施形態に従い、サイズと構造の点で構造的に異なる2種類のウイルスであるTMVとアカクローバモザイクウイルスの精製を行った。例えば、アカクローバモザイクウイルスのような小型の正二十面体ウイルスは、対称性T=3、粒子径約31~34nmであり、約180個のカプシドタンパク質を含む。他方、TMVは直径約18nm、長さ300nmであり、2160個のカプシドタンパク質を含む。この多様性に鑑み、本発明の方法は、構造的に異なる2種類のウイルスを元にして、望ましくない細胞破片を保持しながら透過液側にウイルスを通過させることに成功した。使用時には、クロロフィル/細胞破片を保持しながらどちらの種類のウイルスも透過液側に通過させるように操作パラメーターを制御することができ、タンジェンシャルフロー(TFF)システムは不当又は不時に汚染されずに効率的に運転し続ける。小型のタンパク質を透過液側に通過させながらウイルスを保持するように追加TFF工程を設計し、宿主細胞タンパク質、宿主細胞DNA、内毒素及び植物ポリフェノール類を捕捉しながら、大小両方のウイルスを排除するようにデュアルクロマトグラフィー工程を制御する。
【0016】
アカクローバモザイクウイルスとTMVの精製の成功に鑑み、複数の実施形態及び代替形態に係るウイルス精製プラットフォームは、多様な遺伝子材料(例えば、二本鎖及び一本鎖DNAウイルス、及びRNAウイルス)、形状(例えば、棒状、屈曲棒状、及び二十面体)、及び科(カリモウイルス科(Caulimoviridae)、ジェミニウイルス科(Geminiviridae)、ブロモウイルス科(Bromoviridae)、クロステロウイルス科(Closteroviridae)、コモウイルス科(Comoviridae)、ポティウイルス科(Potyviridae)、セクイウイルス科(Sequiviridae)、トンブスウイルス科(Tombusviridae))を含むウイルス等の多種多様なウイルス粒子を首尾よく精製できると予想される。
【0017】
本願に記載する実施形態が成功すると予想されるウイルスの非限定的な例としては、バドナウイルス属(Badnavirus)(例えば、ツユクサ黄色斑紋ウイルス);カリモウイルス属(Caulimovirus)(例えば、カリフラワーモザイクウイルス);SbCMV様ウイルス(例えば、ダイズ退緑斑紋ウイルス);CsVMV様ウイルス(例えば、キャッサバ葉脈モザイクウイルス);RTBV様ウイルス(例えば、イネツングロ桿菌状ウイルス);ペチュニア葉脈透過様ウイルス(例えば、ペチュニア葉脈透過ウイルス);マストレウイルス属(Mastrevirus)(ジェミニウイルスサブグループI)(例えば、トウモロコシ条斑ウイルス)及びクルトウイルス属(Curtovirus)(ジェミニウイルスサブグループII)(例えば、ビートカーリートップウイルス)及びベゴモウイルス属(Begomovirus)(ジェミニウイルスサブグループIII)(例えば、インゲンマメゴールデンモザイクウイルス);アルファモウイルス属(Alfamovirus)(例えば、アルファルファモザイクウイルス);イラルウイルス属(Ilarvirus)(例えば、タバコ条斑ウイルス);ブロモウイルス属(Bromovirus)(例えば、ブロムモザイクウイルス);ククモウイルス属(Cucumovirus)(例えば、キュウリモザイクウイルス);クロステロウイルス属(Closterovirus)(例えば、ビート黄化ウイルス);クリニウイルス属(Crinivirus)(例えば、レタス伝染性黄化ウイルス);コモウイルス属(Comovirus)(例えば、ササゲモザイクウイルス);ファバウイルス属(Fabavirus)(例えば、ソラマメウイルトウイルス1);ネポウイルス属(Nepovirus)(例えば、タバコ輪点ウイルス);ポティウイルス属(Potyvirus)(例えば、ジャガイモYウイルス);ライモウイルス属(Rymovirus)(例えば、ライグラスモザイクウイルス);バイモウイルス属(Bymovirus)(例えば、オオムギ縞萎縮ウイルス);セクイウイルス属(Sequivirus)(例えば、カブ黄斑ウイルス);ワイカウイルス属(Waikavirus)(例えば、イネツングロ球状ウイルス);カルモウイルス属(Carmovirus)(例えば、カーネーション斑紋ウイルス);ダイアンソウイルス属(Dianthovirus)(例えば、カーネーション輪紋ウイルス);マクロモウイルス属(Machlomovirus)(例えば、トウモロコシ退緑斑紋ウイルス);ネクロウイルス属(Necrovirus)(例えば、タバコえそウイルス);トンブスウイルス属(Tombusvirus)(例えば、トマトブッシースタントウイルス);キャピロウイルス属(Capillovirus)(例えば、リンゴステムグルービングウイルス);カルラウイルス属(Carlavirus)(例えば、カーネーション潜在ウイルス);エナモウイルス属(Enamovirus)(例えば、エンドウひだ葉モザイクウイルス);フロウイルス属(Furovirus)(例えば、土壌伝染性コムギ萎縮ウイルス);ホルデイウイルス属(Hordeivirus)(例えば、ムギ斑葉モザイクウイルス);イデオウイルス属(Idaeovirus)(例えば、ラズベリー黄化ウイルス);ルテオウイルス属(Luteovirus)(例えば、オオムギ黄萎ウイルス);マラフィウイルス属(Marafivirus)(例えば、トウモロコシラヤドフィノウイルス);ポテックスウイルス属(Potexvirus)(例えば、ジャガイモXウイルス及びクローバモザイクウイルス);ソベモウイルス属(Sobemovirus)(例えば、インゲンマメ南部モザイクウイルス);テヌイウイルス属(Tenuivirus)(例えば、イネ縞葉枯ウイルス);トバモウイルス属(Tobamovirus)(例えば、タバコモザイクウイルス);トブラウイルス属(Tobravirus)(例えば、タバコ茎えそウイルス);トリコウイルス属(Trichovirus)(例えば、リンゴクロロティックリーフスポットウイルス);ティモウイルス属(Tymovirus)(例えば、カブ黄化モザイクウイルス);及びウンブラウイルス属(Umbravirus)(例えば、ニンジン斑紋ウイルス)が挙げられる。
【0018】
ウイルス精製の成功は、商業的規模でありながら、cGMP規則を遵守する方法で達せられた。所定の実施形態において、原料生物は植物であり、本実施形態の所定の態様は植物ウイルスの生産を含むが、本願に記載する実施形態は、植物におけるウイルスの製造又は精製に制限されない。所定の実施形態では、制御下の栽培室で植物を栽培し、植物にウイルスを感染させて複製させ、細胞をディスインテグレータで破砕してウイルスを回収し、スクリュープレスにより液体から植物繊維を除去することにより、ウイルス精製プラットフォームが開始する。
【0019】
植物ウイルスと非植物ウイルスの両方に関連する所定の実施形態において、精製工程は、タンジェンシャルフローシステムを使用して清澄化抽出液を濃縮する工程を含み、カセット細孔径、膜間差圧、及び膜表面積1平方メートル当たりの清澄化抽出液のロード量を制御する。膜間差圧(TMP)は、分離膜の上流側と下流側の差圧であり、次式((供給液圧+保持液圧)/2)-透過液圧により計算される。ウイルスのセラミック通過を確保し、清澄化抽出液を得るために、所定の実施形態では、適切なTMPが得られるように、供給液圧、保持液圧及び透過液圧を各々制御する。清澄化抽出液を更にイオン交換カラムで濃縮し、イオン交換クロマトグラフィー平衡化バッファーで洗浄する。所定の実施形態では、Capto Qイオン交換カラムを平衡化し、供給液をロードし、フロースルー画分で採取する。その後、カラムをベースラインまで洗浄し、宿主細胞夾雑物を高濃度の塩でカラムからストリッピングする。
【0020】
植物ウイルスに関連する所定の実施形態では、タンジェンシャルフローセラミック濾過を使用してクロロフィルと、高分子繊維、オルガネラ、脂質等の他の大型細胞破片を除去する前に、抽出バッファーを加える。所定の実施形態において、セラミック濾過は、ウイルス通過を最適にしながら、植物宿主に由来するクロロフィル、細胞破片及び他の不純物の保持を促進する。植物ウイルス又は非植物ウイルスのいずれかに関係なく、望ましい物質(ウイルス又は抗原)が透過液として通過し、不純物が保持液として保持されるというこのアプローチは、方法の拡張性を促進する。更に、ウイルスのセラミック通過を確保して清澄化抽出液が得られるように、膜間差圧、セラミック細孔径、及び1平方メートル当たりのバイオマスロード量等のパラメーターを全て制御する。セラミックTFFシステムは拡張性が高く、より大量のバイオマスに対応するように、TMP、クロスフロー流速、細孔径、及び表面積等のパラメーターを容易に拡張可能である。また、追加セラミックモジュールをシステムに追加し易い。システムの汚染を殆ど又は全く生じない効率的なクロスフロー流速を維持するように、供給液圧、保持液圧及び透過液圧を制御することもできる。所定の実施形態では、大小規模でウイルスの効率的な通過を可能にする約10~20psiのTMPを生じるようにクロスフロー流速と差圧を設定・制御する。セラミックTFFシステムは、GMP要件に合わせて洗浄試験を実施できるように、硝酸、漂白剤及び水酸化ナトリウム等の高効率洗浄薬品の使用に適応可能である。
【0021】
植物ウイルス又は非植物ウイルスのいずれかに関係なく、拡張可能な高スループットウイルス精製法の開発に一致する複数の実施形態及び代替形態に係る精製方法は、少なくともウイルスと残留不純物のサイズ差と、前記不純物と1種以上のクロマトグラフィーリガンドの間に生じる化学的相互作用に基づいて前記不純物を前記ウイルスから分離するために、マルチモードクロマトグラフィーを使用する少なくとも1種の分離手順を利用する。例えば、Capto(R)Core 700クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Sciences)を用いて少なくとも1種の分離手順を実施することが実施形態の範囲に含まれる。Capto(R)Core 700「ビーズ」は、所定のサイズ、例えば、700キロダルトン(kDA)未満の分子をトラップする疎水性と正電荷性を兼備するように設計されたオクチルアミンリガンドを含む。ウイルスによってはかなり大きいものもあり(例えば、700kDA超)、ビーズ外面は不活性であるため、Capto(R)Core 700は、サイズ排除によりウイルスの精製を可能にし、望ましい物質(ウイルス又は抗原)は透過液として通過し、不純物は保持液として保持される。
【0022】
同様に植物ウイルスと非植物ウイルスに関連する所定の実施形態では、マルチモードクロマトグラフィーカラムの前に、5カラム体積の平衡化バッファーで平衡化を実施する。所定の実施形態では、Capto Qイオン交換クロマトグラフィーからのフロースルー画分と洗浄画分を合一してマルチモードクロマトグラフィーカラムにロードし、カラムのボイドボリュームでウイルスを採取する。カラムをベースラインまで洗浄し、高導電率水酸化ナトリウムでストリッピングする。所定の実施形態の各種態様は、この工程中に、ローディング比、カラムベッド高、滞留時間、及びクロマトグラフィーバッファーを制御する。
【0023】
精製ウイルスを例えば、透析濾過により滅菌濾過し、保存する。
【0024】
抗原については、本願に記載する本発明の抗原精製プラットフォームの所定の実施形態を実施することにより、組換え抗原であるH5組換えインフルエンザヘマグルチニン(rHA)、H7rHA、ウエストナイル熱ウイルスのドメインIII(WNVrDIII)、及びラッサ熱ウイルス組換えタンパク質1/2(LFVrGP1/2)と、H1N1(インフルエンザA/Michigan)、H1N1(インフルエンザA/Brisbane)、H3N2(インフルエンザA/Singapore)、H3N2(インフルエンザA/Kansas)、B/Colorado及びB/Phuketを生産及び精製した。本願に記載する各種実施形態の抗原は、多数の原料に由来することができ、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物又は植物発現アプローチを含む従来の組換えタンパク質製造ストラテジーを使用して生産することができる。
【0025】
所定の実施形態では、制御下の栽培室で植物を栽培し、組換え抗原を複製させるために植物に感染させた後、ディスインテグレータを使用して抗原を回収した後、スクリュープレスにより水性液体から繊維を除去することにより、抗原製造プラットフォームが開始する。(植物の場合には)クロロフィルと大型細胞破片を濾過により除去し易くするために抽出バッファーを加える。植物抗原又は非植物抗原のいずれかに関係なく、抗原がフィルターを通過し易くするように、供給液圧、濾液細孔径、清澄剤、及び膜表面積1平方メートル当たりのバイオマスロード量を制御する。大規模ウイルス及び抗原精製を行うのに適した種々の工程内制御の(非限定的な)説明については、実施例のセクションに更に詳述する。
【0026】
植物抗原と非植物抗原の両方に関連する所定の実施形態では、次に清澄化抽出液をタンジェンシャルフローシステムで濃縮する。この任意工程中には、カセット細孔径、膜間差圧、及び膜表面積1平方メートル当たりの清澄化抽出液のロード量を含む因子を制御する。所定の実施形態では、前記任意工程を完全に省略する。この後、次に清澄化抽出液を濃縮し、イオン交換クロマトグラフィー平衡化バッファーで洗浄する。この工程の実施方法の1例は、平衡化したCapto Qイオン交換カラムに供給液をロードした後、平衡化バッファーで洗浄し、塩で溶出/ストリッピングする。次に、抗原画分を溶出液中で採取し、コバルト固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に備える。IMACを平衡化し、供給液をロードした後、平衡化バッファーで洗浄し、溶出させる。溶出画分を希釈し、pHをチェックした後、マルチモードセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)クロマトグラフィーカラムにロードする。CHT樹脂を平衡化バッファーで平衡化し、抗原を溶出させる。制御する因子としては、ローディング比、カラムベッド高、滞留時間及びクロマトグラフィーバッファーが挙げられる。最後に、抗原を濃縮し、生理食塩水緩衝液で透析濾過する。組換え抗原を滅菌濾過した後、保存する。
【0027】
更に、本願に開示する各種実施形態に従い、以下の一価製剤、即ち、H7rHA、H1N1(インフルエンザA/Michigan)、H3N2(インフルエンザA/Singapore)、B/Colorado、及びB/Phuketを夫々TMVとコンジュゲートさせるのに成功した。本願に記載する各種実施形態に従い、TMVを2種類のインフルエンザBウイルス(B/Colorado及びB/Phuket)の二価製剤とコンジュゲートさせるのにも成功し、更に、TMVとH1N1(インフルエンザA/Michigan)、H3N2(インフルエンザA/Singapore)、B/Phuket及びB/Coloradoとの四価コンジュゲーションにも成功した。「四価」インフルエンザワクチンは、2種類のインフルエンザAウイルスと2種類のインフルエンザBウイルスの4種類の異なるインフルエンザウイルスに対して防御するように設計されている。長年にわたり、三価ワクチンが広く使用されていたが、四価ワクチンは、別のBウイルスを加えることにより流行性インフルエンザウイルスに対してより広い防御を提供できるという利点があるため、現在では最も広く利用されている。所定の実施形態において、前記タンパク質は、複数の実施形態及び代替形態に従ってウイルスとコンジュゲートさせてワクチンを創製した後、免疫応答を生じるために原料生物に送達することが可能な任意種の治療剤から構成される。したがって、本願の開示は、ウイルス-抗原コンジュゲート等の種々のウイルス-タンパク質コンジュゲートを含む組成物を提供する。所定の実施形態において、選択されるウイルスはTMVであり、あるいは、本願の教示により特定及び/又は指定される多数のウイルスのいずれかである。また、所定の実施形態において、前記タンパク質は抗原とすることができ、限定されないが、インフルエンザヘマグルチニン抗原(HA)が挙げられ、限定されないが、本段落に列挙したものが挙げられる。所定の実施形態において、前記HAは、少なくとも約50%の三量体形成を示す。HAは、生物が産生する所定の抗体により認識される傾向があり、種々のインフルエンザ感染に対する主要な防御力を提供するので、臨床的に重要である。HA抗原性及びその結果としてHA免疫原性は、立体配置と密接に関連しているため、HA三量化は、免疫応答の誘発の点で単量体よりも有利であることが知られている。
【0028】
所定の実施形態では、精製した抗原とウイルスを濃縮し、弱酸性緩衝液で透析濾過することにより、コンジュゲーションが開始する。次に、モル濃度に基づいて前記抗原と前記ウイルスを合一し、混合する。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(別称EDC)等の新たに調製した水溶性カルボジイミドをモル濃度に基づいて混合しながら混合物に加える。次に、カルボキシル基をアミン反応性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルに変換するための化学試薬(例えば、ThermoFisher社製スルホ-NHS)をモル濃度に基づいて加える。所定の停止時間まで反応を続ける。次に、1例としてアミン基(例えば、遊離アミンを含有する液体)の添加により、反応をクエンチし、反応を助長するのに使用した化学リンカー(例えば、EDC、スルホ-NHS)をマルチモードクロマトグラフィー工程又は透析濾過により除去した後、混合物を目標濃度まで希釈する。所定の実施形態では、精製してコンジュゲートさせたウイルス粒子をタンパク質と抗原で修飾し、ワクチン及び/又は診断ツールに使用してもよい。これらの粒子は、宿主生物の体内で抗原を追跡することができるため、診断ツールとして使用することができる。
【0029】
所定の実施形態において、本願に開示する各種実施形態に加え、前記精製ウイルス-抗原融合体は遺伝子融合に由来することができる。(外被の内側に配置された)抗原及びウイルス構造タンパク質は、1本の連続したオープンリーディングフレームを形成する。所定の実施形態において、前記リーディングフレームは、外被タンパク質が自己集合してウイルス粒子となるように、植物体内で抗原-外被タンパク質を生産する。次に、本願に開示する実施形態に従い、植物材料を収穫し、ウイルス粒子を精製する。その後、開示する各種実施形態に従い、融合体-外被タンパク質で修飾されたウイルス粒子をワクチン及び/又は診断ツールとして使用することができる。
【0030】
ウイルスによっては(例えば、非限定的な例として、正二十面体ウイルス)、所定のpH条件下で膨潤するので、所定の実施形態では、この「膨潤」をコンジュゲーションに使用することができる。複数の実施形態及び代替形態によると、ウイルスを「膨潤」させる酸性pH条件にウイルス構造を曝露することにより、精製ウイルスを治療剤とコンジュゲートさせることができる。ウイルス構造を中性pH条件で処理すると、ウイルス構造は弛緩し、ウイルスの五量体又は他の構造サブユニット間に細孔ができる。次に、治療剤(例えば、化学療法剤)をバッファーに加え、弛緩したウイルス粒子内に拡散させる。pHを再び変化させると、ウイルス粒子は緊縮し、細孔構造を消失し、五量体又は構造サブユニットが緊密になり、ウイルス粒子の内外に拡散できなくなる。次に、本願に開示する実施形態に従い、植物材料を収穫し、ウイルス粒子を精製し、治療剤を封入したウイルス粒子を薬物送達に使用する。
【0031】
したがって、複数の実施形態及び代替形態は、1種以上の高度精製ウイルスの生産を含む。更に、複数の実施形態及び代替形態は、組換え抗原の生産若しくは精製又はその両方を含む。更に、複数の実施形態及び代替形態は、ワクチンとして使用するための精製抗原と精製ウイルスのコンジュゲーションを含む。ウイルスの精製は、本実施形態に従って単独で実施することができる。同様に、組換え抗原の生産又は精製は、本実施形態に従って単独で実施することができる。任意に、これらの複数の実施形態の種々の態様を組み合わせることもでき、実施形態の組み合わせとしては、これらの実施形態の実施方法として特に、1種以上のウイルスと1種以上の抗原を産生する1種以上の原料生物から出発し、その後、このようなウイルスと抗原を精製した後、少なくとも1種の抗原と少なくとも1種のウイルスのコンジュゲートであるワクチンを形成する方法が挙げられる。
【0032】
本願に記載する図面と実施形態は、本願に開示する複数の実施形態及び代替形態の複数の選択可能な構造、態様及び特徴を表すものであり、これらの実施形態及び代替形態のいずれかの範囲を制限するものと理解すべきではない。更に、当然のことながら、本願に記載及び添付する図面は縮尺通りではなく、実施形態は具体的に示す厳密な構成、図解及び手段に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】複数の実施形態及び代替形態に係る本開示の範囲内の所定のウイルス精製プラットフォームにおける諸工程を示すフローチャートである。
【
図2】複数の実施形態及び代替形態に係る精製正二十面体アカクローバモザイクウイルスである。
【
図3】複数の実施形態及び代替形態に係る正二十面体アカクローバモザイクウイルスの精製のウェスタンブロット解析である。
【
図4】複数の実施形態及び代替形態に係る精製正二十面体アカクローバモザイクウイルスである。
【
図5】複数の実施形態及び代替形態に係る正二十面体アカクローバモザイクウイルスの精製のウェスタンブロット解析である。
【
図6】複数の実施形態及び代替形態に係る精製棒状タバコモザイクウイルスである。
【
図7】複数の実施形態及び代替形態に係る棒状タバコモザイクウイルスの精製のウェスタンブロット解析である。
【
図8】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原製造プラットフォームの諸工程を示すフローチャートである
【
図9】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原製造プラットフォームの諸工程の一部のウェスタンブロット解析である。
【
図10】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原製造プラットフォームの諸工程の一部のウェスタンブロット解析である。
【
図11】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原製造プラットフォームの諸工程の一部のウェスタンブロット解析である。
【
図12】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原製造プラットフォームによる種々の抗原の精製のウェスタンブロット解析である。
【
図13】複数の実施形態及び代替形態に係る組換え抗原とウイルスのコンジュゲーションの模式図である。
【
図14】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原とウイルスのコンジュゲーションのSDS-PAGE解析である。
【
図15】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原とウイルスのコンジュゲーションのSDS-PAGE解析である。
【
図16】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原とウイルスのコンジュゲーションのSDS-PAGE解析である。
【
図17】複数の実施形態及び代替形態に係る遊離TMV産物のサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)の結果である。
【
図18】複数の実施形態及び代替形態に係るウイルスと抗原の15分間のコンジュゲーションのSEC-HPLCの結果である。
【
図19】複数の実施形態及び代替形態に係るウイルスと抗原の2時間のコンジュゲーションのSEC-HPLCの結果である。
【
図20】複数の実施形態及び代替形態に係るウイルスと抗原のコンジュゲーションのウェスタンブロット解析である。
【
図21】複数の実施形態及び代替形態に従い、種々のレベルのUV照射で処理したウイルスの感染性を示すグラフである。
【
図22】複数の実施形態及び代替形態に係る組換え抗原とウイルスのコンジュゲーションプラットフォームの諸工程の一部の模式図である。
【
図23】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原とウイルスのコンジュゲーションのSDS-PAGE解析である。
【
図24】複数の実施形態及び代替形態に係る組換え抗原のネガティブ染色法透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【
図25】複数の実施形態及び代替形態に係るウイルスのネガティブ染色法TEM画像である。
【
図26】複数の実施形態及び代替形態に従い、ウイルスの添加下で組換え抗原を別の組換え抗原とコンジュゲートさせた場合のネガティブ染色法TEM画像である。
【
図27】複数の実施形態及び代替形態に従い、1:1のウイルス対組換え抗原比で組換え抗原をウイルスとコンジュゲートさせた場合のネガティブ染色法TEM画像である。
【
図28】複数の実施形態及び代替形態に従い、1:1のウイルス対組換え抗原比で組換え抗原をウイルスとコンジュゲートさせた場合のネガティブ染色法TEM画像である。
【
図29】複数の実施形態及び代替形態に従い、4:1のウイルス対組換え抗原比で組換え抗原をウイルスとコンジュゲートさせた場合のネガティブ染色法TEM画像である。
【
図30】複数の実施形態及び代替形態に従い、16:1のウイルス対組換え抗原比で組換え抗原をウイルスとコンジュゲートさせた場合のネガティブ染色法TEM画像である。
【
図31】複数の実施形態及び代替形態に係る抗原の正規化沈降係数分布である。
【
図32】複数の実施形態及び代替形態に係るウイルスの正規化沈降係数分布である。
【
図33】複数の実施形態及び代替形態に従い、1:1のウイルス対組換え抗原比で組換え抗原をウイルスとコンジュゲートさせた場合の正規化沈降係数分布である。
【
図34】複数の実施形態及び代替形態に従い、1:1のウイルス対組換え抗原比で組換え抗原をウイルスとコンジュゲートさせた場合の正規化沈降係数分布である。
【
図35】複数の実施形態及び代替形態に従い、1:1のウイルス対組換え抗原比で組換え抗原をウイルスとコンジュゲートさせた場合の正規化沈降係数分布である。
【
図36】複数の実施形態及び代替形態に従い、4:1のウイルス対組換え抗原比で組換え抗原をウイルスとコンジュゲートさせた場合の正規化沈降係数分布である。
【
図37】複数の実施形態及び代替形態に従い、16:1のウイルス対組換え抗原比で組換え抗原をウイルスとコンジュゲートさせた場合の正規化沈降係数分布である。
【
図38】複数の実施形態及び代替形態に係る種々のウイルス対組換え体比のウイルス-抗原産物の投与後の原料生物における抗原関連力価の散布図である。
【
図39】複数の実施形態及び代替形態に係る種々のウイルス対組換え体比のウイルス-抗原産物の投与後の原料生物における抗原関連力価を示す幾何平均試験結果である。
【
図40】複数の実施形態及び代替形態に係る精製組換え抗原のSDS-PAGE解析である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
複数の実施形態及び代替形態
本願の複数の実施形態及び代替形態に係るマルチセット法は、上流精製工程を改善し、更に植物ウイルスを濃縮し、ウイルスと抗原のコンジュゲーションを助長してワクチンを形成し易くする。複数の実施形態及び代替形態に従ってウイルスを生産・精製する諸工程を表1及び
図1に関連して列挙・説明する。同様に、抗原を生産・精製する諸工程も表2に関連して列挙・説明する。各種プラットフォームは、以下に記載する特定の実施形態を有するが、本願に含まれる実施形態の範囲は、いずれか1種の特定の実施形態に制限されない。
【0035】
ウイルス生産及び精製
表1と
図1は、複数の実施形態及び代替形態に係るウイルス精製プラットフォームの諸工程を示す。
【0036】
【0037】
この精製プラットフォームは、商業的拡張性とcGMP規則遵守に留意して設計されており、全精製工程で1種類のバッファーを利用している。複数の実施形態及び代替形態によると、このウイルス精製プラットフォームの諸工程は植物発現に関連して以下に述べる通りである。しかし、後述するような地上組織収穫と細胞破砕後の工程は、(文脈が明白に植物に関連する場合、例えば、植物繊維の除去について述べている場合を除き)非植物ウイルスにも適用される。
【0038】
本願に記載する複数の実施形態及び代替形態によると、特定の宿主に適した方法によりウイルス発現を行う。所定の実施形態では、タバコ植物にウイルスを組換え形成させる改変型TMV発現ベクターを使用し、ウイルスを介して植物宿主に遺伝子を送達する。利用可能なこのような選択肢の1例は、米国特許第7,939,318号「フレキシブルワクチンアセンブリ及びワクチン送達プラットフォーム(Flexible vaccine assembly and vaccine delivery platform)」に記載されているGENEWARE(R)プラットフォームである。同特許に記載されているこの植物を基盤とする一過性発現プラットフォームは、植物タンパク質生産機序を活用するために、植物ウイルスであるTMVを利用し、接種後短期間の収穫期間(例えば、21日間未満)で種々のウイルスを発現させている。ウイルス遺伝子を接種したタバコ植物は、感染細胞中で特定のウイルスを発現するので、収穫時にこれらのウイルスを抽出する。接種方法としては、本願に記載する方法の使用者により選択される例として、葉の表面への手動接種、植物栽培床への機械的接種、葉への高圧噴霧、又は真空浸潤が挙げられる。
【0039】
ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)以外に、他の植物及び非植物宿主も本開示により想定され、発明の概要の欄に言及したものが挙げられる。遺伝子を植物(非限定的な例として、イボウキクサ(Lemna gibba)又はコウキクサ(Lemna minor))及び非植物生物(非限定的な例として、藻類)に送達するために、GENEWARE(R)プラットフォーム以外に、他のストラテジーも利用できる。これらの他のストラテジーとしては、アグロ浸潤法が挙げられ、トランスフェクトした植物全身の多数の細胞にアグロバクテリウム(Agrobacterium)細菌ベクターを介してウイルス遺伝子を導入する。別の例としては、エレクトロポレーションが挙げられ、宿主の細胞膜に細孔を開け、限定されないが、下記実施例1及び3に記載するもの等のウイルス及び抗原を組換え生産する遺伝子を導入する。更に別の例としては、John Lindbo,“TRBO:A High-Efficiency Tobacco Mosaic Virus RNA-Based Overexpression Vector,”Plant Physiol.Vol.145,2007に記載されているようなTMV RNAを基盤とする過剰発現(TRBO)ベクターも挙げられ、TMV外被タンパク質遺伝子配列をもたない35Sプロモーター駆動TMVレプリコンを利用する。
【0040】
所定の実施形態では、制御下の栽培室でベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)野生型植物の栽培を行う。潅水周期、光周期及び施肥周期により植物栽培を制御する。植物を無土壌培地で栽培し、全工程を通して温度を制御する。
【0041】
適切な播種後日数(DPS)、例えば、23~25DPSの後に、植物にウイルスを感染させて複製させる。感染後、ウイルス種に応じて所定の感染後日数(DPI)の間、植物に潅水のみを行い、光周期と温度により制御する。
【0042】
植物を高さと感染症状について検査し、地上組織を収穫する。
【0043】
最適なブレード/スクリーン寸法に構成されたディスインテグレータを使用してウイルス回収/細胞破砕後、(例えば、1例としてスクリュープレスにより)水性液体から残留セルロース性植物繊維を除去する。
【0044】
得られた抽出液に、適切な抽出バッファー(例えば、200mM酢酸ナトリウム,pH5.0;非限定的な1例として
図1の工程201)を1:1のバッファー対組織比で加える。タンジェンシャルフロー(TFF)セラミック濾過(1.4ミクロン/5.0ミクロン)を使用し、パイロットスケールでクロロフィルと大型の細胞破片を除去する。ウイルスがセラミックを通過できるように、膜間差圧、セラミック細孔径、及び膜表面積1平方メートル当たりのバイオマスロード量を全て制御する。所定の実施形態では、得られる膜間差圧が約1.5~2BarTMPの範囲となるように、供給液圧、保持液圧及び透過液圧を設定・制御する。
【0045】
グラスファイバー深層濾過の使用により、セラミック透過液を更に清澄化する(非限定的な1例として、
図1の工程203)。
【0046】
清澄化した抽出液をTFFシステム(Sartorius AG製品)により濃縮する。カセット細孔径(100~300kDa)、本願に記載するような適切なTMP、及び膜表面積1平方メートル当たりの清澄化抽出液のロード量を制御する。
【0047】
清澄化抽出液をイオン交換カラム体積の2倍以下まで濃縮し、イオン交換クロマトグラフィー平衡化バッファー(200mM酢酸ナトリウム,pH5.0;
図1の工程204は非限定的な1例を示す)で7回洗浄する。Capto Qイオン交換カラムを5カラム体積の200mM酢酸ナトリウム,pH5.0(
図1の工程205は非限定的な1例を示す)で平衡化し、供給液をロードし、フロースルー画分で採取する。カラムをベースラインまで洗浄し、宿主細胞夾雑物を高濃度の塩でカラムからストリッピングする。
【0048】
フロースルー画分と洗浄画分を採取し、合一し、マルチモードCapto(R)Core 700クロマトグラフィーに備える。マルチモードクロマトグラフィーカラムを5カラム体積の平衡化バッファー(200mM酢酸ナトリウム,pH5.0;
図1の工程206は非限定的な1例を示す)で平衡化する。
【0049】
Capto Qイオン交換クロマトグラフィーからのフロースルー画分と洗浄画分を合一してカラムにロードし、カラムのボイドボリュームでウイルスを採取する。カラムをベースラインまで洗浄し、高導電率水酸化ナトリウムでストリッピングする。ローディング比、カラムベッド高、滞留時間及びクロマトグラフィーバッファーを全て制御する。所定の実施形態では、TFFシステム(例えば、Sartorius AGシステム)を使用してウイルスの調液と濃縮を行う(
図2、工程208)。細孔径(30~300kDa)、本願に記載するような適切なTMP、膜表面積1平方メートル当たりのロード量、及び細孔材料を全て制御する。ウイルスを適切な濃度(例えば、10mg/ml)まで濃縮し、所定の実施形態では、適切なバッファー(例えば、リン酸ナトリウム)を用いて透析濾過する。調液したウイルスを適宜滅菌・保存する。所定の実施形態では、PESフィルターにより滅菌を行う。
【0050】
本願に記載する全実施例は、ウイルス生産、ウイルス精製、抗原生産、抗原精製、及びウイルス-抗原コンジュゲーションのいずれか又は全部の複数の実施形態及び代替形態の種々の態様を具体的に説明するものである。これらの実施例は、非限定的であり、本願の複数の選択可能な実施形態の特徴を示すものに過ぎない。
【実施例】
【0051】
[実施例1]正二十面体アカクローバモザイクウイルスの精製
混合物中の種々のタンパク質を検出するための公知技術である
図3のウェスタンブロットから明らかなように、
図2に示す正二十面体アカクローバモザイクウイルスの精製に成功した。同様に、
図5のウェスタンブロットから明らかなように、
図4に示す正二十面体アカクローバモザイクウイルスの精製にも成功した。どちらのウイルスも、本願に記載する実施形態に従って精製した。公知検出技術に従い、組織から目的タンパク質を抽出した。次に、ゲル電気泳動法を使用し、等電点、分子量、電荷又はこれらの因子の種々の組み合わせに基づいて試料のタンパク質を分離した。次に、既定分子量の既知タンパク質の混合物を含む「ラダー」に1レーンを充てた以外は、試料をゲルの各レーンにロードした。例えば、
図3では、レーン12をラダーとする。次に、ゲルに電圧を印可し、上記因子に基づいて種々の速度で各種タンパク質をゲル内に泳動させた。夫々
図3及び5に示すように、種々のタンパク質が各レーン内で明白なバンドに分離した。ウェスタンブロットでは、生成物の純度が高いほど、明瞭・明白なバンドとなる特徴があるが、これらの図面ではこのような特徴が認められる。
【0052】
図3及び5から明らかなように、ウイルス精製プラットフォームは正二十面体アカクローバモザイクウイルスの精製に成功した。ウェスタンブロットの各レーンは、ウイルス精製プラットフォームにおける各工程の完了後のウイルスの純度を示す。
図3中、レーンは以下の通りである。レーン1-粗試料液、レーン2-TFFセラミック清澄化保持液、レーン3-TFFセラミック清澄化透過液、レーン4-TFFカセット保持液、レーン5-TFFカセット透過液、レーン6-イオン交換、レーン7-イオン交換、レーン8-マルチモード、レーン9-マルチモード、レーン10-30KTFF透過液、レーン11-30K保持液、レーン12-マーカー。
図5中、ウェスタンブロットのレーンは以下の通りである。レーン1-粗試料液、レーン3-TFFセラミック清澄化保持液、レーン5-TFFセラミック清澄化透過液、レーン7-TFFカセット保持液、レーン9-TFFカセット透過液、レーン11-イオン交換、レーン13-マルチモード、及びレーン14-マーカー。
【0053】
ウイルス精製プラットフォームで最終工程が完了すると、
図3のレーン11と
図5のレーン13の明白なバンドにより明らかなように、得られたウイルス産物は高度に精製されている。
【0054】
[実施例2]棒状TMVの精製
図6は、精製棒状TMVを示し、
図7は、本願に開示する複数の実施形態及び代替形態の範囲内でこの精製TMVを得るのに使用されるウイルス精製プラットフォームを示す。
図3及び5と同様に、
図7は、本ウイルス精製プラットフォームの各種工程の完了後のウイルス産物の純度を示す。最終精製工程後に、得られた産物は、
図7のレーン13の明瞭・明白なバンドに一致する高度に精製されたウイルス産物である。
【0055】
したがって、本発明のウイルス精製プラットフォームは、正二十面体ウイルスと棒状ウイルスの両方を含めて本発明者らがこれらの方法を適用した全ウイルスを精製するのに成功し、このプラットフォームは再現性があり、(全種ではないとしても)ほぼ全種のウイルスを商業的規模で安定して精製できると予想される。
【0056】
組換え抗原の生産及び精製
表2と
図8は、複数の実施形態及び代替形態に係る抗原精製プラットフォームの諸工程を示す。
【0057】
【0058】
この精製プラットフォームは、商業的拡張性とcGMP規則遵守に留意して設計されており、全精製工程で1種類のバッファーを利用している。複数の実施形態及び代替形態によると、この抗原精製プラットフォームの諸工程は以下の通りである。
【0059】
制御下の栽培室でベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)野生型植物の栽培を行う。潅水周期、光周期及び施肥周期により植物栽培を制御する。植物を無土壌培地で栽培し、全工程を通して温度を制御する。適切なDPS日数(例えば、23~25)後に、選択された抗原のタンパク質を複製させるために植物に感染させる。タグを付加すると、タンパク質をトランスジェニック植物細胞のERに保持するために十分となる。感染後、抗原種に応じて適切な感染後日数(例えば、7~14日間)の間、植物に潅水のみを行い、光周期と温度により制御する。植物を高さと感染症状について検査し、地上組織を収穫する。
【0060】
最適なブレード/スクリーン寸法に構成されたディスインテグレータを使用し、植物により産生された抗原を回収した後、(例えば、1例としてスクリュープレスにより)水性液体から残留セルロース性植物繊維を除去する。
【0061】
得られた抽出液に、適切な抽出バッファーを適切な比(例えば、バッファー対組織比1:1又はバッファー対組織比2:1)で加える。所定の実施形態において、抽出バッファーは、50~100mMリン酸ナトリウム+2mM EDTA+250mM NaCl+0.1% Tween80,pH8.5とすることができる。濾過を使用することにより、クロロフィルと大型の細胞破片を除去する。Celpure300を33g/Lの割合で加え、15分間混合する。抗原が通過できるように、供給液圧(30PSI未満)、濾液細孔径(0.3ミクロン)、清澄剤(Celpure300)、及び膜表面積1平方メートル当たりのバイオマスロード量を全て制御する。
【0062】
清澄化した抽出液をTFFシステム(例えば、Sartorius AGシステム)により濃縮する。所定の実施形態では、カセット細孔径(例えば、30kDa)、本願に記載するような適切なTMP、及び膜表面積1平方メートル当たりの清澄化抽出液のロード量を制御する。
【0063】
清澄化抽出液を濃縮し、適切なイオン交換クロマトグラフィー平衡化バッファー(例えば、50mMリン酸ナトリウム+75mM NaCl,pH6.5)で7回洗浄する。Capto Qイオン交換カラムを5カラム体積の50mMリン酸ナトリウム+75mM NaCl,pH6.5で平衡化し、供給液をロードし、平衡化バッファーで洗浄し、カラムを高濃度の塩で溶出/ストリッピングする。
【0064】
コバルトIMACクロマトグラフィーに備えて抗原画分を溶出液中で採取する。IMACを5カラム体積の50mMリン酸ナトリウム+500mM塩化ナトリウム,pH8.0で平衡化し、供給液をロードし、平衡化バッファーで洗浄し、イミダゾールを使用して溶出させる。
【0065】
溶出画分を所定の導電率まで希釈し、pHをチェックし、マルチモードセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)クロマトグラフィーカラムにロードする。CHT樹脂を5カラム体積の平衡化バッファー(5mMリン酸ナトリウム,pH6.5)で平衡化する。リン酸とNaClのグラジエントを使用して抗原を溶出させる。ローディング比、カラムベッド高、滞留時間及びクロマトグラフィーバッファーを全て制御する。TFFシステム(例えば、Sartorius AGシステム)を使用して抗原の調液と濃縮を行う。本願に詳述するように、細孔径(kDaで表す)、TMP、膜表面積1平方メートル当たりのロード量、及び細孔材料を全て制御する。
【0066】
次に、抗原を適切な濃度(例えば、3mg/ml)まで濃縮し、適切なバッファー(例えば、リン酸緩衝生理食塩水,pH7.4)を用いて透析濾過する。調液した抗原を適宜滅菌・保存する。所定の実施形態では、PESフィルターにより滅菌を行う。
【0067】
図9、10及び11は、複数の実施形態及び代替形態に係る抗原精製プラットフォームの各種工程を示す。
図9は、Capto Qクロマトグラフィー工程の完了後の抗原産物の純度を示し、
図10は、アフィニティークロマトグラフィー工程後の抗原産物の純度を示し、
図11は、CHTクロマトグラフィーカラム後の純度を示す。
【0068】
[実施例3、4、5及び6]H5rHA、H7rHA、WNVrDIII、及びLFVrGP1/2
図12に示すように、複数の実施形態及び代替形態に係る抗原精製プラットフォームは、H5rHA、H7rHA、WNVrDIII及びLFVrGP1/2を精製するのに成功した。
図12は、抗原精製プラットフォームの完了後に撮影した2種類の画像を含み、左側の画像は、ウイルスベクターTMV NtK(なお、NtKはN末端リジンの略語である。)とインフルエンザ抗原の純度を示すSDSPageゲルを含み、右側の画像は、ウエストナイル熱抗原とラッサ熱抗原に対する免疫反応性を示すウェスタンブロットを含む。
図12の明瞭・明白なバンドにより明らかなように、各抗原産物は高純度である。したがって、複数の実施形態及び代替形態に係る抗原精製プラットフォームは、各種抗原を商業的規模で使用したときに、cGMP規則を遵守するような方法でこれらの抗原を安定して精製することができた。同様に、このプラットフォームは、(全種ではないとしても)ほぼ全種の抗原を再現可能に精製できると予想される。
【0069】
組換え抗原-ウイルスコンジュゲートの生産
表3は、複数の実施形態及び代替形態に係る組換え抗原のコンジュゲーションの諸工程を示す。
【0070】
【0071】
1実施形態において、コンジュゲーションプラットフォームの諸工程は以下の通りである。
【0072】
精製した抗原とウイルスを別々に濃縮し、NaClを添加した2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液等の弱酸性緩衝液で透析濾過する。
【0073】
1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(別称EDC)等の水溶性カルボジイミドを精製水で0.5Mのモル濃度まで調液する。
【0074】
カルボキシル基をアミン反応性N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルに変換するための化学試薬(例えば、ThermoFisher社のスルホ-NHS)を精製水で0.1Mのモル濃度まで調液する。
【0075】
抗原とウイルスを重量又はモル濃度に基づいて合一し、均一になるまで混合する(例えば、1:1mg:mg添加)。
【0076】
モル濃度に基づいて混合しながら、新たに調製した水溶性カルボジイミド(例えば、EDC)を混合物に加える。
【0077】
EDC添加から1分以内に、カルボキシル基をアミン反応性エステルに変換するための化学試薬(例えば、スルホ-NHS)をモル濃度に基づいて加える。コンジュゲーション反応が開始し、所定の混合停止時間(例えば、4時間)まで反応を続け、室温に制御する。
【0078】
遊離アミンを添加することにより反応をクエンチし、マルチモードクロマトグラフィー工程(例えば、Capto(R)Core 700)、又はリン酸緩衝生理食塩水で透析濾過することにより、化学リンカー(例えば、EDCとスルホ-NHS)を除去する。複数の実施形態及び代替形態によると、保持液としての不純物と、透過液としてのコンジュゲート混合物のサイズ差に基づき、コンジュゲーション反応産物(本願ではコンジュゲート混合物とも言う)から残留不純物を除去する。
【0079】
コンジュゲート混合物を目標濃度まで希釈する。この時点で、ウイルス-抗原コンジュゲートは精製ワクチン/原薬として使用する準備が整う。ワクチンの適切な送達メカニズムとしては、液体バイアル又は予防注射用に生理緩衝液で再構成する凍結乾燥材料が挙げられる。注射は筋肉内又は皮下とすることができる。他の送達方法も想定され、限定されないが、鼻腔内送達が挙げられる。
【0080】
[実施例7]H7rHAとTMVのコンジュゲーション
図13は、組換え抗原(「ワクチン抗原」と表示)とウイルスのコンジュゲーションの模式図であり、明暗陰影を付けた楕円は、本実施例に記載するワクチン抗原のコンジュゲーションの程度を表す。明るい陰影は遊離ウイルスを表し、暗い陰影は、ウイルスのタンパク質外被とコンジュゲートさせた抗原を表す。また、
図13に示すように、ウイルスによっては、RNAゲノムの周囲の外被に配置されたタンパク質を含むものもある。例えば、ウイルスベクターTMV NtKは、外被タンパク質との結合点として機能するN末端リジンを含む。所定の実施形態では、組換え抗原を結合するために提示を強化してタンパク質(例えば、抗原)とウイルスのアミン標的コンジュゲーションを生じるように、N末端リジン残基と会合しているウイルスの部分を修飾する。本願における半径測定の記載に関連して、ウイルス半径は、組換え抗原とウイルス外被タンパク質のコンジュゲーション後に著しく増加する。所定の実施形態では、それらの残基の提示を強化できるようにエンベロープウイルスを改変する際に、修飾を実施する。
【0081】
図14~20に示すように、組換え抗原とウイルスのコンジュゲーションプラットフォームは、H7rHAをTMVとコンジュゲートさせるのに成功した。
図14~16は、pH5.50におけるH7rHAとTMVのコンジュゲーションのドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(「SDS-PAGE」)による解析を示す。これらの図面に示すように、H7rHAのほぼ全部を2時間以内でTMVとコンジュゲートさせた。rHAタンパク質バンドの消滅と同時に、200KDaマーカーよりも上方に染色する複合体が出現したことから、複合体が形成されたと考えられる。HA特異抗体に対するこれらのバンドの反応性は、この推論を更に裏付けている。
【0082】
SEC-HPLC結果も、コンジュゲーションプラットフォームの本実施形態に従い、H7rHAとTMVのコンジュゲーションに成功したことを示した。
図17は、遊離TMV産物のSEC-HPLC結果を示す。
図17において、遊離TMV産物のSEC-HPLC結果は、下表4に詳述するシグナルデータを生じた。
【0083】
【0084】
図18は、コンジュゲーションプラットフォームの本実施形態に従い、H7rHAをTMVと15分間コンジュゲートさせた後のSEC-HPLC結果を示す。
図18において、H7rHAをTMVと15分間コンジュゲートさせた後のSEC-HPLC結果は、表5に詳述するシグナルデータを生じた。
【0085】
【0086】
図19は、コンジュゲーションプラットフォームの本実施形態に従い、H7rHAをTMVと2時間コンジュゲートさせた後のSEC-HPLC結果を示す。
図19において、コンジュゲーションプラットフォームの本実施形態に従い、H7rHAをTMVと2時間コンジュゲートさせた後に取得したSEC-HPLC結果は、下表6に詳述するシグナルデータを生じた。
【0087】
【0088】
図19及び20に示すように、SEC-HPLC結果によると、15分間コンジュゲーション後に全TMV棒状体はある程度H7rHAで覆われており、2時間までの間に更にH7rHAが棒状体に付加された。2時間後に、それ以上のコンジュゲーションは検出されなかった。複数の実施形態及び代替形態によると、SEC-HPLC結果から明らかなように、コンジュゲーション反応は、コンジュゲートされていない天然分子量のウイルス外被タンパク質を少なくとも約50%減らすことができ、コンジュゲーションを4時間行った後に残留している遊離TMVは約3%であった。
【0089】
図20に示すように、コンジュゲート産物のウェスタンブロット解析によると、共有結合を介してH7rHAをTMVとコンジュゲートさせるのに成功した。
図20は、本実施形態に係るコンジュゲーションプラットフォームの各種工程のウェスタンブロット解析を示し、全試料のロード量は10μLとした。各レーンは、抗原とウイルスの種々のコンジュゲーション反応時間を示す。レーン14及び13は、15分後に全TMV棒状体が抗原で覆われていたことを示す。2時間後に、レーン6~9は、それ以上コンジュゲーションが行われていないことを示す。
【0090】
[実施例8]TMV NtKのUV不活化
バイオ医薬品のウイルス汚染を避けるためには、ウイルスが感染性を失うようにウイルスを不活化(又は殺菌)することが必要になることが多い。更に、多くの規制機関は、ウイルス産物の精製過程で少なくとも1回の有効な不活化工程を要件とする規則(例えばcGMP規則)を定めている。水処理システムでは何年も前からUV-C照射が使用されているが、バイオ医薬品での使用は検討されておらず、ウイルスを有効に不活化するその性能に関する研究も限られている。
【0091】
そこで、TMV NtKを有効に不活化及び殺菌するために、ウイルス生産及び精製後で組換え抗原とのコンジュゲーション前に、種々のUV-C条件(即ち、エネルギー密度と波長)と種々のTMV濃度を評価した。多数のエネルギー密度を試験したが、TMV NtKを不活化するのに成功したのは、エネルギー密度が高レベルの場合のみであった。また、TMV溶液を適切な濃度まで希釈しなかった場合には、UV-C照射により試料中の全ウイルスを有効に殺菌できなかったので、ウイルス不活化の成功は濃度依存性であると判断された。したがって、UV-C照射が各ウイルスと反応してこれを有効に不活化できるように、TMV溶液を適切に希釈する必要がある。
【0092】
図21に示すように、種々の量のUV-C照射(エネルギー密度300J/m
2~2400J/m
2)をタバコ(Nicotiana tabacum)植物で試験し、感染性を評価した。
図21に示すように、2400J/m
2のUV-Cエネルギー照射後に病巣数はゼロまで減ったので、ウイルスの不活化に成功したと判断される。また、著しく高レベルのエネルギー線量も試験した処、4800J/m
2~5142J/m
2のエネルギー密度でもTMV NtKの不活化の成功を生じることが分かった。
【0093】
複数の実施形態及び代替形態によると、(精製後でコンジュゲーション前の)ウイルス不活化の諸工程は以下の通りである。
【0094】
(波長260nmのUV光に試料を曝露し、試料を通過する光の量を測定することにより、核酸を定量する一般的な方法である)A260により測定した場合に50マイクログラム/ml未満の濃度となるまでTMV NtK溶液を希釈する。
【0095】
TMV溶液を0.45ミクロンのフィルターで濾過し、UV光路を妨げる細菌及び他のあらゆる大型生物種を除去する。
【0096】
約2400J/m2~約5142J/m2のエネルギー密度のUVスペクトルの光にウイルスを曝露することにより、TMV NtKを不活化する。所定の実施形態において、UV光のエネルギー密度は、約4800J/m2~約5142J/m2である。複数の実施形態及び代替形態によると、UV光の波長は254nmである。
【0097】
次に、不活化したTMV NtKを組換え抗原とコンジュゲートさせるだけである。
【0098】
これらのウイルス不活化工程は、商業的規模拡張性とcGMP規則遵守に留意して設計されている。
【0099】
[実施例9]コンジュゲーションのpH依存性
ウイルスを酸性pHでインキュベートすると、高品質コンジュゲーションが得られるか否かを評価するために、ウイルスの調液を変えた以外は同一バッチのウイルス、抗原、緩衝剤及びエステルを使用して実験を実施した。反応1では、複数の実施形態及び代替形態に従い、TMVをpH5.50の1倍MESコンジュゲーションバッファーで3.1mg/mlの濃度に調液した。反応2では、TMVをリン酸緩衝液中11.0mg/mlまで濃縮し、コンジュゲーション反応体積の15%として直接添加した。これらの工程後に、SECによりコンジュゲーション経過をモニターし、遊離TMVが0分(T=0により示す)から規則的に減少したならば、コンジュゲーションに成功したと判断する。
【0100】
表7及び8に示すように、反応1は、(遊離TMVが0分から規則的に減少したため)コンジュゲーションの成功を示したが、反応2は、遊離TMV残留率により示されるように不成功であった。
【0101】
【0102】
【0103】
したがって、表7に示すように、ウイルスを酸性pHでインキュベーションすると、90%超のコンジュゲーションが得られる。酸性pHインキュベーション工程を実施しない場合には、コンジュゲーション百分率は(表8に示すように)50%未満に留まる。
【0104】
この実験を踏まえ、(
図22に示す)コンジュゲーションモデルを開発した。複数の実施形態及び代替形態によると、ウイルスをコンジュゲーション環境に曝露し、ウイルスが抗原に会合する化学的即応性を改善する(本願では、「活性化させる」、「活性化」又は「活性化する」と言う。)ことにより、精製ウイルスと(
図22に「rHA」で示す)精製抗原のコンジュゲーションは著しく強化される。所定の実施形態では、ウイルス表面に正電荷が凝集するように、コンジュゲーション反応前にウイルスを酸性pHで調液することにより、ウイルス活性化が生じる。所定の実施形態において、活性化工程は、活性化に十分な時間にわたってウイルスを約5.5以下のpHに暴露することを含む。所定の実施形態において、コンジュゲーション環境に曝露するこのような時間は、約18~72時間である。複数の実施形態及び代替形態によると、精製ウイルスを酸性pHで処理し、外被タンパク質リジンを荷電することにより、ウイルスを活性化させる。コンジュゲーション環境におけるこの活性化工程の結果、アミン基のクラスター化により(
図22に示すように)ウイルス表面に正電荷が凝集し、ウイルスは組換え抗原のカルボキシル末端とコンジュゲーションする準備が整う。
【0105】
複数の実施形態及び代替形態に係るウイルス活性化工程は、ウイルス保存時のpHを一般に中性pH又はその付近に維持する従来のアプローチと対照的である。
図22に示すように、従来のアプローチはウイルス表面に正電荷を凝集させず、その結果、コンジュゲーション百分率は50%未満に留まる(表8参照)。更に、従来のアプローチは、有利な表面電荷をもつことを犠牲にして可溶性を促進するリン酸緩衝液を利用している。
【0106】
TMVを利用したコンジュゲーションの成功について調査している過程で、動的光散乱法(DLS)により測定したウイルスの半径が活性化工程中に少なくとも2.75倍増加しているときに、一般にコンジュゲーションの成功が生じていることが確認された(表9Aを表9Bと比較参照)。一般に、(表9Cについて述べるような)TMVコンジュゲーションの成功は、これらの表に示すように、DLS半径が約70nmから約195nm以上に増加しているという特徴があった。
【0107】
ウイルス活性化を利用したコンジュゲーションの成功を踏まえ、精製抗原を精製ウイルスとコンジュゲートさせるためのプラットフォームを開発した。複数の実施形態及び代替形態によると、コンジュゲーションに備えて精製抗原を準備する諸工程は以下の通りである。
【0108】
コンジュゲーション反応のpH制御を確保するために、反応開始直前に精製抗原を反応バッファーで調液する。
【0109】
コンジュゲーションに先立ち、精製抗原を中性~弱塩基性Phのリン酸緩衝生理食塩水中で保存する。
【0110】
抗原pH目標値は、分子種によって異なるが、一般的にpH5.50~6.50である。
【0111】
ウイルスとのコンジュゲーションを助長するために、限外濾過を使用して保存バッファーを酸性pHのMES/NaClバッファーに交換する。タンパク質濃度も3mg/mL超まで上げる。
【0112】
次に、タンパク質構造の不安定化を防ぐために、抗原調製完了から4時間以内にコンジュゲーション反応を開始する。
【0113】
複数の実施形態及び代替形態によると、コンジュゲーションに備えて精製ウイルスを準備する諸工程は以下の通りである。
【0114】
中性pHで保存後、コンジュゲーションの前にウイルスを酸性pHで活性化させる。反応を成功させるためには、ウイルスをpH7.4のリン酸緩衝液で調液後、pH5.50の酢酸緩衝液に交換し、コンジュゲーション反応開始前に最低約18時間から最大約72時間まで維持する。所定の実施形態では、ウイルスをpH7.4のリン酸緩衝液で調液後、pH4.50の酢酸緩衝液に交換し、コンジュゲーション反応開始前に約18時間から最大72時間まで維持する。ウイルスを酸性pHで72時間超保存すると、ウイルスの自己会合が生じ、ウイルスが不溶性になり、コンジュゲーションの効率が低下することが認められた。
【0115】
表9A及び9Bは、DLSにより測定したウイルス(この場合には、TMV)の半径の増加の観点から、活性化工程を更に立証する。具体的に言うと、表9Aは、活性化後でコンジュゲーションの成功が生じる前のTMVのDLS半径増加のデータを示し、右端の列に抗原を列挙する。「半径増加倍率」は、活性化後のTMV半径を中性pHにおける典型的なTMV半径である約70nmで除した数値である。逆に、表9Bは、活性化工程の開始後でコンジュゲーションの試行不成功の前のTMVのDLS半径増加のデータを示し、右端の列に抗原を列挙する。表9A及び9B中、左端の列は、中性pHで一般保存条件下、即ち、活性化が行われる前のTMV棒状体の標準半径を示す。
【0116】
【0117】
【0118】
これらの工程後、抗原反応体とウイルス反応体を混合してコンジュゲート混合物を形成し、DLS法とSDS-PAGE法を使用してコンジュゲーション経過をモニターした。表9Cは、酸性pHを使用してウイルスを活性化した後にDLSを使用して経時的に測定したコンジュゲーション反応物の平均分子半径を示す。表9Cに示すように、分子半径は、抗原分子によるウイルス棒状体被覆の成功を表す1つの指標である。
【0119】
【0120】
一方、
図23は、複数の実施形態及び代替形態に係る活性化TMV NtKと精製抗原のコンジュゲーションのSDS-PAGEによる解析を示す。
図23に示すように、遊離TMV NtKと遊離抗原の両者が経時的に規則的に減少すると共に、200kDA超のタンパク質バンドが出現しており、コンジュゲーションに成功したと判断される。
【0121】
[実施例10]コンジュゲーションに用いる精製ウイルスと精製抗原の比を種々に変えた場合のTEMイメージング
精製ウイルスと精製抗原の望ましいコンジュゲーション反応は下式により表される。
ウイルス + 抗原 → ウイルス-抗原 (式1)
【0122】
しかし、下式に示すように、抗原は自己コンジュゲーションし易く、望ましい反応を得られないことがよく知られている。
ウイルス + 抗原 → ウイルス-抗原 + 抗原-抗原 (式2)
【0123】
抗原-抗原コンジュゲートはサイズクロマトグラフィー工程中に除去されず、その結果、免疫応答は最低減になるか又は低下するので、精製抗原の自己コンジュゲーションは、ワクチン開発の成功を妨げる問題である。
【0124】
この自己コンジュゲーションの問題に対処するために、種々の実験を実施し、未反応の抗原と抗原コンジュゲートの消費方法を調べた。先ず、自己コンジュゲーションを阻止する試薬に曝露することにより抗原をキャッピングした。この従来のアプローチは成功するであろうと予想されたが、反応が著しく急速に生じたため、このアプローチは失敗した。
【0125】
次に、ウイルス対抗原比を調整し、適切なコンジュゲーション比を決定した。表10及び11と
図24~30に示すように、7種類の異なる試料をネガティブ染色法透過型電子顕微鏡(TEM)イメージングにより解析した。試料1~3は対照群とし、試料4~7は、(表3の操作工程5に示すようなコンジュゲーションプラットフォームの混合工程で)種々のヘマグルチニン(HA)対TMV比を用いた。
【0126】
【0127】
【0128】
図24は、倍率52,000倍及びスケールバー200nmで示した試料1(遊離HA、ロット19UL-SG-001)のTEM画像である。
図24において、この試料は、小さい球状粒子(矢印Aで示す)と、約5nm~約9nmの寸法の細長い粒子(矢印Bで示す)を含んでいた。これらの粒子の外観は、天然三量体立体配置に従い、HAの規則的凝集に一致する規則的構造を示す。また、粒子は良好に分散しており、凝塊は最小限であった。
【0129】
図25は、倍率52,000倍及びスケールバー200nmで示した試料2(TMV NtK単独、ロット18HA-NTK-001)のTEM画像である。
図25では、長さ約125nm~約700nm、幅約18nm~約20.5nmの寸法の棒状粒子(矢印A)が認められた。これらの寸法は、TMV粒子の寸法と形状に一致する。また、棒状体にはTMVの公知特徴である約4nmの中心溝が認められた(矢印B)。複数の棒状体が高頻度でその長軸に平行に整列しており、棒状体の表面は概ね平滑であった。少数であるが、約8nm~約10nmの小さい球状粒子(矢印C)も認められ、棒状体の表面に会合しているものと、バックグラウンドで棒状粒子に会合していないものがあった。これらの球状粒子(矢印C)は個々のHA三量体と似ていなかった。
【0130】
図26は、倍率52,000倍及びスケールバー200nmで示した試料3(HA:HA自己コンジュゲートにTMV NtKを添加したもの、ロット19UL-SG-004)のTEM画像である。
図26では、長さ約25nm~約885nm、幅約18nm~約20.5nmの棒状粒子(矢印A)が認められ、約4nmの中心内溝(矢印B)があった。棒状体は全く修飾されていないか、又は種々の寸法と形状の小さいタンパク質粒子(矢印C)でまばらに修飾されていた。棒状体と会合していない若干の小さいタンパク質粒子もバックグラウンドに認められた(矢印D)。
図26には、HA粒子の大きな塊が見られるが、予想通り、TMVは(
図25に示す)コンジュゲートしていないTMVと同一のように見える。
【0131】
図27は、倍率52,000倍及びスケールバー200nmで示した試料4(1:1比のTMV:HA、ロット18TAP-SG-002)のTEM画像である。
図27では、長さ約50nm~1000nm超、幅約18nm~約20.5nmの棒状粒子(矢印A)が認められ、約4nmの中心内溝(矢印B)があった。粒子棒状体は、棒状体の大部分がその表面を小さいタンパク質粒子で強く修飾されている(矢印C)以外は、
図28に見られるコンジュゲートTMVと同様の寸法及び形状であった。棒状体と会合していない若干の小さいタンパク質粒子もバックグラウンドに認められた(矢印D)。
図27に示す試料5は他のTEM画像よりも優れているように見えるが、これは、コンジュゲーションの前のウイルス処理の相違に起因する可能性が高いと思われる。このバッチでは、ウイルスをpH5.50で調液した後、15分間でpHを4.50まで下げ、コンジュゲーション反応の開始時にpH5.50に戻した。
図28~30に示すバッチでは、ウイルスを直接pH4.50に調液し、コンジュゲーションまで終夜維持した。
【0132】
図28は、倍率52,000倍及びスケールバー200nmで示した試料5(1:1比のTMV:HA、ロット19UL-SG-001)のTEM画像である。
図28では、長さ約65nm~約720nm、幅約18nm~約20.5nmの多数の棒状粒子(矢印A)が認められ、約4nmの中心内溝(矢印B)があった。粒子棒状体は、
図25に見られる遊離TMV NtK(試料2)と同様の寸法及び形状であった。一方、
図25に見られるコンジュゲートしていないウイルスとは対照的に、
図28に認められる粒子棒状体は、タンパク質粒子で若干修飾されていた(矢印C)。これらの粒子は形状と寸法が不規則であり、明白なパターンはなく、棒状体の表面とランダムに会合しているようであった。棒状体と会合していない若干の小さいタンパク質粒子もバックグラウンドに認められた(矢印D)。
【0133】
図29は、倍率52,000倍及びスケールバー200nmで示した試料6(4:1比のTMV:HA、ロット19UL-SG-002)のTEM画像である。
図29では、長さ約25nm~約1000nm超、幅約18nm~約20.5nmの棒状粒子(矢印A)が認められ、約4nmの中心内溝(矢印B)があった。
図29に見られる粒子棒状体は、先にコンジュゲートさせた試料と同様の寸法であったが、小さいタンパク粒子(矢印C)による表面修飾レベルは、若干~まばらであった。棒状体と会合していない若干の小さいタンパク質粒子もバックグラウンドに認められた(矢印D)。
【0134】
図30は、倍率52,000倍及びスケールバー200nmで示した試料7(16:1比のTMV:HA、ロット19UL-SG-003)のTEM画像である。
図30では、長さ約30nm~約1000nm超、幅約18nm~約20.5nmの棒状粒子(矢印A)が認められ、約4nmの中心内溝(矢印B)があった。
図30に見られる粒子棒状体は、先にコンジュゲートさせた試料と全体の形態が似ていた。一方、棒状体は、タンパク質でまばらにしか修飾されていない(矢印C)か、又は全く修飾されていなかった。棒状体と会合していないごく少数の小さいタンパク質粒子がバックグラウンドに認められた(矢印D)。
【0135】
図24~30によると、1:1比は完全な棒状体修飾を示し、4:1比は若干の修飾を示し、16:1比はまばらな修飾を示した。換言するならば、1:1比では、HA抗原の抗原修飾の多い(即ち、高密度)ウイルス棒状体が生成され、16:1比では、各棒状体にHA抗原の抗原修飾の少ない(即ち、低密度)ウイルス棒状体が生成された。コンジュゲーション反応の副生物として、主に1:1比の反応でHA-HA自己コンジュゲートが認められた。更に、TEM画像とSDS-PAGE反応解析(データは示さず)によると、1:1反応に比較して、4:1反応では遊離HA又はHA-HAコンジュゲートが少ないようであり、16:1反応では更に少ないようであった。換言するならば、1:1反応よりも16:1比のほうが全体としてHAとTMV棒状体のみとのコンジュゲーション効率が高く、棒状体1個当たりのHA密度は低かった。
【0136】
[実施例11]種々のコンジュゲーション条件の沈降速度解析
分析用超遠心機(「AUC」)で測定した沈降速度(「SV」)は、タンパク質均質性と凝集会合状態に関する情報を得るための理想的な方法である。具体的には、沈降係数の差に基づいて凝集物又は種々のオリゴマーを検出することができる。この方法は、1重量%未満のレベルの凝集物又は他の微量成分も検出する。更に、SVは成分種の相対量の高品質定量を提供し、あらゆる凝集物の正確な沈降係数を提供する。
【0137】
自己コンジュゲートHA及び未反応のHAの量と、種々のコンジュゲーション条件下のTMV NtKにおけるHA占有量を測定するために、SV-AUCを使用して遊離抗原、遊離ウイルス及び種々のTMV:HA比の沈降に関連する全シグナルを測定した。試料と組成を下表12に示す。
【0138】
【0139】
これらのストックを冷蔵(非冷凍)輸送した後、分析時まで2~8℃で保管した。Corning社製品1×PBSを試料希釈と参照ブランクに使用した。1×PBSで試料1を1:1、試料2~7を1:3に希釈し、沈降速度試料を調製した。これらの希釈は、試料の総吸光度が吸光度検出システムの直線範囲内となるように実施した。
【0140】
方法-2チャンネルチャコールエポンセンターピースを固定した光路長12mmのセルに、希釈した試料をロードした。1×PBSを各セルの参照チャンネルにロードした。ロードしたセルを分析用ローターに挿入し、分析用超遠心機にセットし、20℃に設定した。次にローターを3000rpmに設定し、試料を(280nmで)スキャンし、セルローディングが適正であることを確認した。試料2~7については、ローターを最終回転速度9,000rpmに設定した。このローター速度でできるだけ迅速に(3分間隔で)約11時間スキャンを記録した(各試料合計250スキャン)。試料1(遊離HA)については、ローターを35,000rpmに設定し、スキャンを4分間隔で5.3時間記録した。次に、Schuck,P.(2000),“Size-distribution analysis of macromolecules by sedimentation velocity ultracentrifugation and Lamm equation modeling,”Biophys.J.78,1606-1619に記載されているc(s)法を使用してデータを解析した。この方法を使用し、分解能を上げるためにデータに及ぼす拡散の影響をモデル化しながら、沈降係数の分布が得られるように生スキャンデータを直接フィットさせた。
【0141】
結果と考察-試料1~7の高分解能沈降係数分布を
図31~37に示す。これらの図面において、縦軸は濃度を表し、横軸は沈降係数に基づく分離を表す。各ピークの下の面積が該当成分の割合を表すように総曲線下面積を1.0(100%)に設定することにより、各分布を正規化した。試料2~7は、広範囲の沈降係数で沈降する物質を含んでいるので、2000スベドベリ単位(S)といった迅速さで沈降する成分にも対応するようにデータ解析を進めたため、横軸を対数目盛とする。対数目盛によりピークの目に見える面積が歪むのを補償するために、縦軸は沈降係数を乗じ、相対ピーク面積を正確に表すようにした。試料1(遊離HA)のデータは従来通りに直線沈降係数目盛を使用して表す。
【0142】
図31は、試料1(HA単独、ロット19S-G-001)の正規化沈降係数分布である。遊離抗原はウイルスよりも著しく寸法が小さいので、粒度分布を適切に特性決定するために、この試料は試料2~7(9,000RPM)よりも著しく速いローター速度(35,000rpm)で分析した。
図31に示すように、試料1はある程度均質であり、8.967Sに73.7%の主ピークを生じる。これは、HA抗原単独試料に予想された結果であった。この沈降係数に主境界の幅を加味すると、この主ピーク種はモル質量約222kDaであると考えられ、主ピークは、予想される約70kDa単量体のHA三量体にほぼ対応すると思われる。この沈降係数が単量体に対応することは物理的にあり得ず、主ピークは、単量体よりも大きいオリゴマー状態に対応する。下表13に示すように、HA3 Singaporeリリース時のSEC HPLCデータによると、HAの90%超が三量体状態で同定され、解析した4試料のうちの3試料は三量化が50%超であった。
【0143】
【0144】
更に
図31に示すように、主ピークよりも迅速に沈降する7個の副次ピークが検出され、合計すると、沈降特性を表す全吸光度の6.2%に相当する。そのうち2個のピークは、高分子量不純物ではなく、産物凝集物に相当すると予想される。12.4S(4.25%)の主凝集物種は、単量体よりも1.4倍の速さで沈降しており、これは二量体に通常認められる1.4~1.5の範囲内の比である。この比は、この成分種が主ピーク物質の二量体(恐らく約70kDa単量体の六量体)であることを示唆しているが、その沈降係数から見ると、高度に伸長しているか又は部分的に折り畳まれていない主ピーク物質の三量体(恐らく約70kDa単量体の九量体)であるとも考えられる。
【0145】
図31中、次の15.3S(0.96%)のピークは単量体の1.7倍の速さで沈降しており、主ピーク物質の三量体であることを示唆している。沈降係数が30.9Sを超えると、吸光度は検出されなかった。また、主ピークよりもゆっくりと沈降する3個の副次ピークも、2.8S(2.81%)、4.5S(12.44%)、及び6.0S(4.94%)で検出された。これらの副次ピークのうち、4.5Sのピークが抗原単量体に対応する可能性が最も高い。
【0146】
図32は、試料2(遊離TMV NtK、ロット18HA-NTK-001)の正規化沈降係数分布である。
図32に示すように、約60S未満で沈降する物質は検出されなかった。この試料は非常に不均質であると思われ、最大のピークは229S(30.9%)で沈降する。2番目に大きなピークは、191S(28.7%)で検出された。どのピークが完全に集合したウイルスに対応するかは不明である。また、総シグナルの25.3%は、229Sから本実施例11で許容される最大沈降係数である2,000Sまでの間で沈降することが認められた。約60Sから2000Sまでの間で部分的に分解したピークが何を表すかは不明である。
【0147】
図33~37は、ウイルス-抗原コンジュゲートの正規化沈降係数分布を示す。これらの図は各々、沈降しなかった約0.15ODの有意吸光度を示す。これは、全残留物質をペレット化するために、各運転の完了後にローター速度を35,000RPMまで上げることにより生じた。この物質は、遊離抗原試料又は遊離TMV NtK試料では認められなかった。しかし、この物質は沈降しなかったので、粒度分布測定の結果に影響しなかった。
【0148】
図33は、試料3(TMV対HA比1:1、ロット19UL-SG-004)の正規化沈降係数分布である。
図33に示すように、沈降係数の結果は約40S~2000Sの範囲であり、(
図33に示す)遊離ウイルスで認められた結果と同様である。1~40Sの沈降係数範囲では、9.9S(28.3%)、18.7S(7.8%)、及び34.5S(1.0%)の3個のピークも認められた。9.9Sで認められたピークは、(
図32に示す)遊離HA試料で認められた主ピークに対応すると思われる。種々の小さいピークは、HA-HA自己コンジュゲーションイベントを反映していると思われる。
【0149】
図34は、試料4(TMV対HA比1:1、ロット18TAP-SG-002)の正規化沈降係数分布であり、
図35は、試料5(TMV対HA比1:1、ロット19UL-SG-001)の正規化沈降係数分布である。
図34及び35に示す結果は、試料3について記載した(と共に
図33に示した)結果と同様である。しかし、いくつかの顕著な相違が認められた。そもそも、このローター速度では分解能が低いため、遊離抗原試料(1~40S)に見られる相違について説明するのは難しい。とは言え、
図34及び35によると、(ウイルス会合物質を表す)40S~2,000Sに存在する総シグナルは試料3よりも多い。
【0150】
図36は、試料6(TMV対HA比4:1、ロット19UL-SG-002)の正規化沈降係数分布であり、
図37は、試料7(TMV対HA比16:1、ロット19UL-SG-003)の正規化沈降係数である。
図36は、91.1%の合計ウイルス会合物質(即ち、ウイルス-抗原コンジュゲート)を示し、
図37は、99.4%のウイルス会合物質(即ち、ウイルス-抗原コンジュゲート)を示す。
【0151】
図33~37に示すようなウイルス-抗原正規化沈降係数分布の結果を表14にまとめる。上述したように、1~40Sの割合は、HA単量体/三量体の百分率に相当し、40~2000Sの割合は、複数の実施形態及び代替形態に係るTMV NtK-HAコンジュゲートの百分率に相当する。
【0152】
【0153】
表14の結果によると、1:1比では、4:1比及び16:1比に比較してHA及びHA産物の自己コンジュゲーションが多い。また、TMV:HA比を増加させると、HA産物がTMVコンジュゲーションイベントにほぼ完全に利用される(試料7では、ほぼ100%コンジュゲーションに近づく)。
【0154】
複数の実施形態及び代替形態によると、TMV NtK対HA比を1:1から16:1まで増加させることにより、コンジュゲーション反応におけるHAの量を減らすと、その結果として、(1)実施例10及び
図24~30で認められるように、各TMV棒状体上のHA抗原の凝集が減り;(2)
図31~37及び表14に示すように、自己コンジュゲーションイベントと未反応HAの量がほぼゼロまで減り;(3)
図31~37及び表14に示すように、自己コンジュゲーション及び未反応HAイベントに比較して(百分率としての)HAとTMVの会合が増加する。
【0155】
[実施例12]マウスにおける免疫応答
本発明のウイルス-抗原コンジュゲートの投与後の免疫応答を調べるために、マウスにコンジュゲートをワクチンとして筋肉内注射により投与した。各ワクチンは、本願に記載するように1:1(TMV:HA)比で生産したTMV:HAコンジュゲートとし、大半の動物には試験の0日目と14日目に投与した(対照動物には、バッファー単独、TMV単独又はHA単独を投与した)。ワクチンを投与したマウスには、表15に示すように抗原15mcg(マイクログラム)、7.5mcg又は3.75mcgを投与した。第1のコホートでは7日目に試料を採取し、第2のコホートでは14日目と21日目に採取し、第3のコホートでは28日目と42日目と90日目に採取し、その後、試料を赤血球凝集抑制(HAI)アッセイに供した。
【0156】
このアッセイによると、7日目又は14日目にワクチンに対する測定可能な応答はどの動物からも生じなかった。一方、21日目に一部の動物で初期応答が認められた。具体的には、27匹のうちの10匹がH1N1ワクチン(インフルエンザA/Michigan/45/2015(H1N1pdm09))に低レベルの応答を示した(そのうち1匹のみは80HAIを超える力価であった)。また、27匹のうちの22匹がH3N2ワクチン(インフルエンザA/Singapore/INFIMH-16-0019/2016)に低レベルの応答を示した(そのうち2匹のみは80より大きかった)。28日目に、H1N1ワクチンに測定可能に応答するこのコホート内の動物数は29匹のうちの8匹であり、1匹は80HAI力価であったが、その他はいずれもそれよりも低かった。H3N2ワクチンでは、測定可能な応答数は29匹のうちの14匹であり、この場合も1匹は80HAI力価であったが、その他はいずれもそれよりも低かった。
【0157】
下表15に示すように、42日目と90日目に採取した血液試料から最も顕著な結果が認められた。同表では、平均値と応答動物割合(応答率)を示し、平均値の標準誤差(SEM)を併記する。なお、各コホートの一部のマウスにはインフルエンザBウイルス(夫々B/Colorado/06/2017(V)及びB/Phuket/3073/2013(Y))のワクチンを接種した。B型インフルエンザウイルスとこれに対応するHA免疫原は、A型HA免疫原としての効率及び有効性でマウスにHAI力価を生じないことが知られているので、予想通りであったが、どの日もこれらの動物に応答は検出されなかった。
【0158】
【0159】
上記免疫応答試験とは別に、適切なウイルス対抗原比に関して本発明のシステムを更に評価するために、以下に記載するように、対照と共に、インフルエンザA抗原とインフルエンザB抗原を種々のTMV:HAコンジュゲート比(即ち、1:1、4:1、16:1)でワクチン接種後に、マウスの液性免疫応答を評価した。こうして、種々のコンジュゲーション比と免疫応答に及ぼすその影響を試験した。ワクチン接種したマウスには、試験の0日目と14日目にHA15mcgを背部皮下領域に注射により投与した。その後、ワクチン接種に対する血清抗体応答をHA特異活性について解析した。表15(H3インフルエンザウイルスを捕捉タンパク質として使用)及び16(組換えH3タンパク質を捕捉タンパク質として使用)は、マウスのグループ(各グループ12匹)と、投与した物質を示し、各表の右端の列にELISA抗体(Ab)力価結果を示す。
【0160】
【0161】
図38は、表16に関連する散布図であり、0、1:1、4:1及び16:1(TMV:HA)の比でワクチン投与後のH3:HA抗体力価のグラフによる解析を示す。
図39も、コーティングとして組換えH3抗原(表17)を使用した場合、又は抗インフルエンザA H3抗原抗体と結合する捕捉タンパク質として捕捉H3ウイルス(表17)を使用した場合の抗原関連抗体力価の幾何平均試験の結果をグラフにより示す。密度(HAにより占有されるTMVの表面積)に関して、3種類の比の傾向は、TEM及びAUC解析により立証されるように、1:1(最高密度)>4:1>16:1(最低密度)の順となる。H3抗原で得られたELISA結果を示すこれらの図では、最低密度のコンジュゲートで最高の免疫応答が認められた。即ち、免疫応答の傾向は16:1>4:1>1:1であり、密度の傾向とは逆であった。つまり、これらのTMV:HAの比では、コンジュゲーション密度が低いほど、免疫応答が良好になる傾向があることが意外にも判明した。抗原性が最大HAコンジュゲーションイベントと相関しないというこの意外な結果は次にように説明できる。(1)密度が比較的低いときには、未反応タンパク質又は自己コンジュゲートタンパク質が少なく、抗原は均質になる;(2)コンジュゲート抗原をより効率的に処理でき、抗原立体配置の保存度/均質度が高くなる;及び(3)(例えば)TMV棒状体は、より多くの抗原提示細胞を注射部位に移動するように刺激することができ、結合した抗原のプロセシングを刺激することができる。あるいは、これらの原因の何らかの組み合わせも考えられる。なお、単にTMV粒子が存在するだけでは、コンジュゲーションの必要性に代用できない(例えば、表14及び15参照)。
【0162】
インフルエンザAH3抗原に加え、組換えインフルエンザB Phuket抗原とその対応する抗体の結合性を使用し、インフルエンザB抗原(B-Phuket HA)も試験した。下表17は本試験のこの部分の結果を示すが、平均ELISA抗体力価の結果によると、16:1>4:1>1:1となるかどうかは明白ではない。
【0163】
【0164】
とは言え、16:1比は最高の平均抗体力価を示した。したがって、本発明者らは、密度と免疫応答の間の同一の関係がインフルエンザB抗原(B-Phuket HA)の試験にも当てはまると予想するのは妥当であると考える。即ち、H3抗原の結果と同様に、コンジュゲートの密度が低いほど、免疫応答は高くなるであろう。更に、コンジュゲーション中に異常が生じた可能性と、この試料では電子顕微鏡観察も超遠心解析も実施しなかったという事実により、4:1比のコンジュゲーション反応が他の比の反応のように進行しなかったと考えるのも妥当である。いずれにせよ、以上のデータは全3種類の比で免疫応答を示す。複数の比で免疫応答が得られたという事実は、いずれか1種類の特定の比に密接に関連しないというシステムの堅牢性を裏付けるものである。TMV-コンジュゲートワクチンに見られるこのフレキシビリティは、これらの試験で使用したH3及びH1抗原以外の他の抗原をTMVとコンジュゲートさせる場合であっても、また、TMV以外の他のウイルス担体を担体に使用する場合であっても、このシステムが良好に機能することを更に示唆していると思われる。
【0165】
臨床用途については、精製抗原を精製ウイルスにより送達することにより、本願に記載する複数の実施形態及び代替形態のいずれかに従ってコンジュゲートさせた製品(例えば、限定されないが、実施例7、9、10、11及び12に記載したウイルス-抗原コンジュゲート)をワクチンとして利用することができる。更に、本願に記載するコンジュゲーションにより得られたいずれかのウイルス-タンパク質コンジュゲート組成物から製造され、適切なバッファー及び添加剤と共に多数の形態(例えば、バイアル)でパッケージングされたあらゆるワクチン製品が本開示の実施形態に含まれる。この点では、ヒト又は動物患者に提供される単位用量形態でこのようなワクチン製品を送達可能な実施形態が挙げられ、限定されないが、例えば、臨床指定される範囲内で皮下、筋肉内、皮内投与及び鼻腔内等の経路を介したシリンジ又はスプレーによる投与、ならびに経口及び/又は局所投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。非限定的な例として、本願の実施形態の全範囲から逸脱しない限り、TMVのサイズ(一般的には18nm×300nm)とその棒状形状は、抗原提示細胞(APC)による抗原取り込みを促進し、T細胞(例えば、Th1及びTh2)の免疫を強化するように働き、表面にコンジュゲートさせたサブユニットタンパク質にアジュバント活性を提供する。この活性は、更にウイルスRNA/TLR7相互作用により刺激される。その結果、ワクチン取り込み効果が複合的に作用し、APCの活性化を直接刺激する。液性免疫は一般的に、皮下及び鼻腔内送達によりIgG1サブクラスとIgG2サブクラスのバランスが取られる。粘膜ワクチン送達では、実質的な全身及び粘膜IgAの応答も生じる。細胞性免疫も非常に堅牢であり、生きたウイルスの感染に対する応答と同様に、抗原特異的分泌を誘導する。完全長抗原融合体は、ヒト白血球抗原(HLA)多様性を懸念せずに、天然細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトーププロセシングを可能にする。
【0166】
TMVコンジュゲーションを行わずに試験したサブユニットタンパク質は、細胞性又は液性免疫を殆ど又は全く誘導しないが、これとは全く対照的に、本実施形態に係るマルチセット精製プラットフォームでは、(液性及び細胞性に関して)広範で(大きさ及び有効性に関して)強い免疫応答が得られる。これらの免疫応答の結果、本実施形態に係るマルチセットプラットフォームにより創製されたワクチンは、単回ワクチンとして防御性の高い応答を促進し、他の従来のワクチンプラットフォームでは提供されない迅速さと安全性を提供する。実際に、本コンジュゲーションプラットフォームは、多様なウイルスと(抗原を含む)タンパク質に有効であることが分かっており、更に、広い範囲の比で利用できると共に種々の用量で投与するのに成功しており、この点でも本システムの堅牢性を示唆している。本実施形態におけるワクチン生産マルチセットプラットフォームには、病原体攻撃に対する全身免疫防御のプロアクティブ抗原刺激アプローチであるという利点もあり、本プラットフォームは、(ウイルス糖タンパク質又は非分泌型病原体抗原を含む)疾患病原体から抗原ドメインを生産するのに高度に適応可能であり、本プラットフォームは、ウイルス病原体と細菌病原体のいずれにも有効なワクチンプラットフォームとして機能する。
【0167】
ワクチン用途に関する利点に加え、本実施形態に係るマルチセットプラットフォームにより精製された植物ウイルス粒子は、種々の薬物送達目的に合わせて製剤化することができる。これらの種々の目的としては、1)治療用抗体をウイルス粒子の表面にコンジュゲーションさせて送達し、細胞傷害性効果を増強する免疫治療;2)特定の核酸を担持させて遺伝子改変のために特定の細胞種に導入する遺伝子治療、及び3)標的腫瘍送達のために化学療法剤をウイルス粒子に担持させる薬物送達が挙げられる。
【0168】
本願に記載する方法の多くの利点のうちの簡単な1例として、複数の実施形態に係るマルチセットプラットフォームは、薬物送達ツールとして利用することができ、その際には、上述したように先ずpH変化に曝露して精製ウイルスを膨潤させる。その後、この条件下のウイルスをドキソルビシン等の高濃度化学療法剤の溶液と共にインキュベートした後、pHを中性に戻すことにより、ウイルスをその膨潤前の状態に戻し、これにより化学療法剤分子を封入する。次に、必ずしも限定されないが、標的腫瘍治療用の注射を含む群から選択される送達メカニズムによりウイルス粒子を生体に送達することができる。
【0169】
したがって、以上の記載は、(i)植物を基盤にしてウイルスを製造及び精製するため;(ii)植物を基盤にして抗原を製造及び精製するため;(iii)ワクチン及び抗原担体として治療的に有益なウイルス-抗原コンジュゲートを植物体外で形成するため;並びに(iv)精製ウイルスと精製抗原を含む治療用ワクチンを送達するための、複数の実施形態及び多数の代替アプローチを提供する。
【0170】
[実施例13]冷蔵条件下と室温条件下のワクチン安定性
ワクチンはヒト及び動物の健康を劇的に改善している。例えば、20世紀だけでも、ワクチンは天然痘を根絶させ、米国内でポリオを消滅させ、世界中で種々の疾患を防除している。しかし、ワクチンは著しく不安定であり、温度変化に非常に敏感である。F.Coenen et.al.,Stability of influenza sub-unit vaccine.Does a couple of days outside the refrigerator matter? Vaccine 24(2006),525-531に記載されているように、インフルエンザワクチンは、一般に室温保存(即ち、約25℃)で5週間後に許容不能及び不活性となる。F.Coenenの論文に記載されている全インフルエンザワクチンのうち、室温保存で12週間安定性を示したワクチンは1種のみであった。これは、他のワクチン種にも大きな問題である。したがって、現在の全てのワクチンは、一般に、商業的生産時から投与時までのサプライチェーン全体を通して冷蔵する必要があり、これを「コールドチェーン」と呼ぶことが多い。
【0171】
冷蔵環境にある間、大半のワクチンは典型的な78週間の安定性目標期間では安定に維持される。しかし、コールドチェーンの絶対要件は世界的な問題であり、発展途上国では保障しにくいことが多いことから世界中でワクチン入手可能性が限られ、ワクチン損失が広がっている。室温で安定なワクチンを創製することに多大な労力が払われているが、上記文献で論じられているように、このような労力は成功していない。また、製造業者だけでなく、ワクチンを入手し、保管し、集団に接種する医師及び機関にとっても、コールドチェーンを維持するのは非常にコストがかかる。したがって、コールドチェーンへの依存を減らし、ワクチンが投与時までその効力を維持できるようにするために、ワクチンの安定性を向上させ、ワクチン-抗原安定性を強化することが世界的に大いに必要とされている。また、安定性の改善によりワクチンの有効期間を延ばすことができ、潜在的なパンデミックに備えてワクチンの備蓄を助長し、不適切な条件下でのワクチン損失を防ぐことができる。本願に概要を記載する他の特徴及び利点と共に、本実施形態の範囲はこれらの必要性及び他の必要性を満たす。こうして、本発明の精製・コンジュゲーションプラットフォームは、冷蔵条件下と室温条件下の両方でタンパク質-ウイルスコンジュゲートの安定性を延長する。
【0172】
抗原品質及びワクチン安定性の測定方法には数種のものがあり、(1)(タンパク質はアルカリ溶液中でCu2+をCu+1に還元できるため、紫色に呈色するという原理に基づく)BCAプロテインアッセイにより測定したタンパク質濃度、(2)(多重サンドイッチイムノアッセイを利用する)VaxArray抗体アレー結合により測定した保存効力、(3)単独泳動バンドとして測定されるSDS-Page純度、(4)物理的汚染性の測定値としてのpHが挙げられ、更に可能な場合には、(5)抗原の多量体構造を特性決定するためのサイズ排除クロマトグラフィーが挙げられる。更に、BCAプロテインアッセイ、VaxArray試験、又はSDS-Page解析で不合格の場合には、ワクチンは使用に許容されないとみなされる。換言するならば、ワクチンがこれら3種の試験のいずれか1種に不合格であるならば、このワクチンは使用に許容されず、無効である。
【0173】
そこで、複数の実施形態及び代替形態に従って生産・精製した以下のインフルエンザHA抗原、即ちH1NI(A/Michigan)、H3N2(A/Singapore)、H1N1(A/Brisbane)、H3N2(A/Kansas)、B/Colorado、及びB/Phuketについて、前の段落に述べた5種類の試験を実施した。下表は、リリース時と、バイアルに充填して冷蔵条件下(4~8℃)で保存後の各種時点で測定した安定性データと保存効力を示す。本願で使用する初期濃度又は完全性とは、そのリリース日(即ち、医薬品製品の構成又は希釈後であり、「0日」と言う場合もある。)における化合物、コンジュゲート混合物、医薬品、ワクチン等の濃度又は完全性を意味し、リリース日は、連邦規則第21条第11章(21 C.F.R.Part 11)及び新原薬及び製剤のICH Q1A安定性試験、第2改訂版(ICH Q1A Stability Testing of New Drug Substances and Products,Revision 2)(2003年11月)と、その引用文献に基づいて決定され、これらの文献の内容全体を全目的で本願に援用する。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
表18~23から明らかなように、精製遊離抗原は、種々の安定性パターンを示す。例えば、H1NI(A/Michigan)及びH3N2(A/Singapore)等の所定の抗原は、6か月後に安定しているようであり、(一般的に認められるような)測定値の有意なずれは認められなかった。一方、B/Colorado及びH1N1(A/Brisbane)等の他の抗原と、程度は低いが、H3N2(A/Kansas)及びB/Phuketは、これらの条件下で分解、三量体の低下、又は他の主要な特性の低下を示した。例えば、
図40は、冷蔵条件下で1か月後の精製B/PhuketのSDS-PAGE解析である。
図40中、約60kDAのインタクトなバンドよりも下側の低分子量の分解したバンドは、精製B/Phuket抗原が分解していることを示している。予想通り、表18~23及び
図40のデータから明らかなように、冷蔵条件下では、タンパク質によって異なる安定性を示す。
【0181】
複数の実施形態及び代替形態に従って同一の精製抗原をTMVとコンジュゲートさせると、安定性プロファイルと保存効力が変化する。所定の実施形態において、本発明の方法は、タンパク質及びウイルス粒子を含むコンジュゲート化合物の安定性の測定値を向上させ、前記方法は、ウイルス粒子を活性化させる工程と、その後、前記ウイルス粒子と前記抗原をコンジュゲーション反応で混合してコンジュゲート混合物を形成する工程を含み、その結果、コンジュゲート化合物を非冷蔵環境においたときに、リリース日から少なくとも42日間の期間後に、安定性が向上する。典型的な保存温度は、少なくとも20℃である。安定性の向上は、コンジュゲート混合物の安定性を抗原単独の安定性と比較することにより判断することができる。適切な測定値は、抗原濃度、抗原完全性又は抗原効力のいずれか1種以上である。例えば、安定性の測定値が、BCA又は他の適切な方法により測定した抗原濃度であるとき、コンジュゲート化合物の濃度と抗原単独の濃度の差が少なくとも10%であるならば、本実施形態の範囲内に含まれる。同様に、安定性の測定値が、SDS-PAGE、SEC-HPLC又は他の適切な方法により測定した抗原完全性であるとき、コンジュゲート化合物の完全性と抗原単独の完全性の差が少なくとも10%であるならば、本実施形態の範囲内に含まれる。同様に、安定性の測定値が、ELISA結果に基づく抗原-抗体相互作用、又はVaxArray、表面プラズモン共鳴法若しくは他の適切な方法により測定した抗原効力であるとき、コンジュゲート化合物の効力と抗原単独の効力の差が少なくとも30%であるならば、本実施形態の範囲内に含まれる。
【0182】
そこで、リリース時と、バイアルに充填して冷蔵条件下(2~8℃)で保存後の各種時点における(TMV対抗原比を1:1とした)数種の一価製剤の安定性データを下表に示す。
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
表24~27に記載したコンジュゲートの各々で、純度、pH、タンパク質濃度及び保存効力は、冷蔵条件下で少なくとも6か月間の保存期間を通して維持される。更に、多分散性もこの期間を通して一定である。多分散性とは、複合製品における粒子径の変動を意味し、一般に、多分散性が低いほど、製品は良好である。
【0188】
一価製剤に加え、複数の実施形態及び代替形態に従って1:1のTMV対抗原比で生産した以下の四価コンジュゲートは、冷蔵(4~8℃)条件下と室温(22~28℃)条件下のいずれにおいても強い安定性を示す。
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
表28、29A及び29Bから明らかなように、四価コンジュゲートは、冷蔵条件下と室温条件下のいずれにおいても少なくとも6か月間にわたってタンパク質濃度、保存効力、pH及び外観に関して一定しており、安定している。表30は、初期効力を特定時点の保存効力と比較することにより、表29A及び29Bに記載した各種抗原の保存効力の変化率を示す。
【0193】
【0194】
したがって、表30に示すように、コンジュゲートを非冷蔵環境においたとき、30日後の保存効力は、コンジュゲーションの翌日以内のコンジュゲート混合物の初期効力の少なくとも70%であった。90日後に、非冷蔵環境で保存したコンジュゲート混合物の保存効力は、初期効力の少なくとも68%であり、コンジュゲート混合物の保存効力は、少なくとも180日後に少なくとも75%であった。
【0195】
精製組換え抗原のリリース時の状態を、複数の実施形態及び代替形態に従ってTMVとコンジュゲートさせた同一タンパク質と比較することにより、本願に記載する実施形態の安定化効果を下表に例証する。更に、以下のように、タンパク質濃度、効力、SDS-page純度、及びpHを分析することにより、精製抗原とTMVにコンジュゲートさせた同一抗原を冷蔵条件下(4~8℃)で6か月後の安定性について比較した。
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
表31~34から明らかなように、精製及びコンジュゲーションの実施形態には安定性を誘導する性質があり、純度測定値の点では、B/Colorado抗原、B/Phuket抗原、及びH1NI(A/Michigan)抗原が最も明白である。H3N2(A/Singapore)抗原とB/Colorado抗原では、抗原濃度の点でもコンジュゲートの安定性が明らかである。表31~34に示すように、複数の実施形態及び代替形態に係る精製・コンジュゲーション方法は、抗原の物理的性質、抗原反応性及び他の定量的安定性特徴を安定化させた。
【0201】
更に、表29A、29B及び30から明らかなように、複数の実施形態及び代替形態に従って生産した四価コンジュゲートは、室温保存(22~28℃)で少なくとも6か月間又は24週間にわたって強い安定性測定値を示す。(上述したF.Coenenの論文に述べられているような)室温で約5週間の平均的な安定性を示す従来のワクチンに比較すると、複数の実施形態及び代替形態に係るワクチンは、精製抗原の数倍の期間にわたって従来のインフルエンザワクチンの少なくとも5倍の安定性を示す。このように、複数の実施形態及び代替形態に係る製剤及びコンジュゲーション方法は、B/Colorado等の極度に不安定な抗原を安定化させると共に、遊離抗原及び従来のワクチンの安定性限界を遥かに超えてH3N2(A/Singapore)、H1NI(A/Michigan)及びB/Phuket等の他の抗原の安定性を延長させる。
【0202】
本願で実施形態Aと呼ぶ別の実施形態は、使用方法であり、タンパク質及びウイルス粒子をコンジュゲートさせる工程、即ち、前記ウイルス粒子を活性化させる工程と、その後、前記ウイルス粒子と前記タンパク質をコンジュゲーション反応で混合してコンジュゲート混合物を形成する工程により製造された化合物を対象に投与することを含み、非冷蔵環境で保存温度に所定期間おいたときに、前記コンジュゲート混合物の完全性又は濃度は、前記コンジュゲート混合物の初期完全性又は初期濃度の少なくとも90%であり、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも42日間である。前記対象は、ヒトとすることができる。典型的な保存温度は、少なくとも20℃である。
【0203】
実施形態Aの範囲内に含まれ、本願で実施形態Bと呼ぶ実施形態において、前記ウイルス粒子を活性化させる工程は、前記ウイルス粒子を約5.5以下のpHのコンジュゲーション環境に暴露する工程を含む。実施形態Aの範囲内に含まれ、本願で実施形態Cと呼ぶ実施形態において、前記ウイルス粒子は、エンベロープウイルスである。実施形態Aの範囲内に含まれ、本願で実施形態Dと呼ぶ実施形態において、前記タンパク質は、抗原である。実施形態Aの範囲内に含まれ、本願で実施形態Eと呼ぶ実施形態において、前記抗原は、ヘマグルチニン抗原である。実施形態Aの範囲内に含まれ、本願で実施形態Fと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも90日間である。実施形態Aの範囲内に含まれ、本願で実施形態Gと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも180日間である。したがって、本願では、実施形態Aに関連して記載したワクチンを対象に投与する使用方法について記載する。実施形態B、C、D、E、F又はGのいずれか1種以上の追加特徴を付加することにより、本方法を更に定義することができる。
【0204】
本願で実施形態Hと呼ぶ別の実施形態は、使用方法であり、タンパク質及びウイルスをコンジュゲートさせる工程、即ち、前記ウイルスを活性化させる工程と、その後、前記ウイルスと前記タンパク質をコンジュゲーション反応で混合してコンジュゲート混合物を形成する工程により製造されたワクチンを対象に投与することを含み、非冷蔵環境で保存温度に所定期間おいたときに、前記コンジュゲート混合物の完全性又は濃度は、前記コンジュゲート混合物の初期完全性又は初期濃度の少なくとも90%であり、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも42日間である。前記対象は、ヒトとすることができる。典型的な保存温度は、少なくとも20℃である。
【0205】
実施形態Hの範囲内に含まれ、本願で実施形態Iと呼ぶ実施形態において、前記ウイルスを活性化させる工程は、前記ウイルスを約5.5以下のpHのコンジュゲーション環境に暴露する工程を含む。実施形態Hの範囲内に含まれ、本願で実施形態Iと呼ぶ実施形態において、前記ウイルスは、タバコモザイクウイルスである。実施形態Hの範囲内に含まれ、本願で実施形態Jと呼ぶ実施形態において、前記タンパク質は、抗原である。実施形態Hの範囲内に含まれ、本願で実施形態Kと呼ぶ実施形態において、前記抗原は、ヘマグルチニン抗原である。実施形態Hの範囲内に含まれ、本願で実施形態Lと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも90日間である。実施形態Hの範囲内に含まれ、本願で実施形態Mと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも180日間である。したがって、本願では、実施形態Hに関連して記載したワクチンを対象に投与する使用方法について記載する。実施形態I、J、K、L又はMのいずれか1種以上の追加特徴を付加することにより、本方法を更に定義することができる。
【0206】
本願で実施形態Nと呼ぶ別の実施形態は、タンパク質及びウイルス粒子を含むコンジュゲート化合物の安定性の測定値を向上させるための方法であり、前記方法は、前記ウイルス粒子を活性化させる工程と、その後、前記ウイルス粒子と前記タンパク質をコンジュゲーション反応で混合してコンジュゲート混合物を形成する工程を含み、非冷蔵環境で保存温度に所定期間おいたときに、前記コンジュゲート混合物の完全性又は濃度は、前記コンジュゲート混合物の初期完全性又は初期濃度の少なくとも90%であり、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも42日間である。典型的な保存温度は、少なくとも20℃である。所定の実施形態において、前記ウイルス粒子を活性化させる工程は、前記ウイルス粒子を約5.5以下のpHのコンジュゲーション環境に暴露する工程を含む。
【0207】
実施形態Nの範囲内に含まれ、本願で実施形態Oと呼ぶ実施形態において、前記ウイルス粒子は、エンベロープウイルスである。実施形態Nの範囲内に含まれ、本願で実施形態Pと呼ぶ実施形態において、前記タンパク質は、抗原である。実施形態Nの範囲内に含まれ、本願で実施形態Qと呼ぶ実施形態において、前記抗原は、ヘマグルチニン抗原である。実施形態Nの範囲内に含まれ、本願で実施形態Rと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも90日間である。実施形態Nの範囲内に含まれ、本願で実施形態Sと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも180日間である。実施形態O、P、Q、R又はSのいずれか1種以上の追加特徴を付加することにより、本方法を更に定義することができる。
【0208】
本願で実施形態Tと呼ぶ別の実施形態は、タンパク質及びウイルスを含むコンジュゲート化合物の安定性の測定値を向上させるための方法であり、前記方法は、前記ウイルスを活性化させる工程と、その後、前記ウイルスと前記タンパク質をコンジュゲーション反応で混合してコンジュゲート混合物を形成する工程を含み、非冷蔵環境で保存温度に所定期間おいたときに、前記コンジュゲート混合物の完全性又は濃度は、前記コンジュゲート混合物の初期完全性又は初期濃度の少なくとも90%であり、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも42日間である。典型的な保存温度は、少なくとも20℃である。所定の実施形態において、前記ウイルスを活性化させる工程は、前記ウイルス粒子を約5.5以下のpHのコンジュゲーション環境に暴露する工程を含む。
【0209】
実施形態Tの範囲内に含まれ、本願で実施形態Uと呼ぶ実施形態において、前記ウイルスは、タバコモザイクウイルスである。実施形態Tの範囲内に含まれ、本願で実施形態Vと呼ぶ実施形態において、前記タンパク質は、抗原である。実施形態Tの範囲内に含まれ、本願で実施形態Wと呼ぶ実施形態において、前記抗原は、ヘマグルチニン抗原である。実施形態Tの範囲内に含まれ、本願で実施形態Xと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも90日間である。実施形態Tの範囲内に含まれ、本願で実施形態Yと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも180日間である。実施形態U、V、W、X又はYのいずれか1種以上の追加特徴を付加することにより、本方法を更に定義することができる。
【0210】
本願で実施形態Zと呼ぶ別の実施形態は、化合物であり、コンジュゲートさせたタンパク質及びウイルス粒子を含み、前記タンパク質は、前記ウイルスの表面のリジン残基と化学的に会合しており、前記化合物を非冷蔵環境で保存温度に所定期間おいたときに、前記期間の終了時における前記化合物の完全性又は濃度は、前記化合物の初期完全性又は初期濃度の少なくとも90%であり、前記期間は、前記化合物のリリース日から少なくとも42日間である。典型的な保存温度は、少なくとも20℃である。
【0211】
実施形態Zの範囲内に含まれ、本願で実施形態AAと呼ぶ実施形態において、前記ウイルス粒子は、ウイルスである。実施形態Zの範囲内に含まれ、本願で実施形態BBと呼ぶ実施形態において、前記ウイルスは、エンベロープウイルスである。実施形態Zの範囲内に含まれ、本願で実施形態CCと呼ぶ実施形態において、前記ウイルスは、タバコモザイクウイルスである。実施形態Zの範囲内に含まれ、本願で実施形態DDと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも90日間である。実施形態Zの範囲内に含まれ、本願で実施形態EEと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも180日間である。実施形態AA、BB、CC、DD又はEEのいずれか1種以上の追加特徴を付加することにより、本化合物を更に定義することができる。
【0212】
本願で実施形態FFと呼ぶ別の実施形態は、タンパク質及びウイルス粒子を含むコンジュゲート化合物の安定性の測定値を向上させるための方法であり、前記方法は、前記ウイルス粒子を活性化させる工程と、その後、前記ウイルス粒子と抗原をコンジュゲーション反応で混合してコンジュゲート混合物を形成する工程を含み、非冷蔵環境で保存温度においたときに、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも42日間の期間後に、前記コンジュゲート混合物は、抗原濃度、抗原完全性又は抗原効力の1種以上により測定した安定性が、前記コンジュゲート混合物の初期安定性又は前記抗原単独の安定性を上回る。典型的な保存温度は、少なくとも20℃である。所定の実施形態において、前記ウイルスを活性化させる工程は、前記ウイルス粒子を約5.5以下のpHのコンジュゲーション環境に暴露する工程を含む。
【0213】
実施形態FFの範囲内に含まれ、本願で実施形態GGと呼ぶ実施形態において、前記抗原は、ヘマグルチニン抗原である。実施形態FFの範囲内に含まれ、本願で実施形態HHと呼ぶ実施形態において、前記ウイルスは、タバコモザイクウイルスである。実施形態FFの範囲内に含まれ、本願で実施形態IIと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも90日間である。FFの範囲内に含まれ、本願で実施形態JJと呼ぶ実施形態において、前記期間は、前記コンジュゲート混合物のリリース日から少なくとも180日間である。FFの範囲内に含まれ、本願で実施形態KKと呼ぶ実施形態において、安定性の前記測定値は、抗原濃度であり、前記コンジュゲート混合物の濃度と前記抗原単独の濃度の差は、少なくとも10%である。FFの範囲内に含まれ、本願で実施形態LLと呼ぶ実施形態において、安定性の前記測定値は抗原完全性であり、前記コンジュゲート混合物の完全性と前記抗原単独の完全性の差は、少なくとも10%である。FFの範囲内に含まれ、本願で実施形態MMと呼ぶ実施形態において、安定性の前記測定値は、抗原効力であり、前記コンジュゲート混合物の効力と前記抗原単独の効力の差は、少なくとも10%である。FFの範囲内に含まれ、本願で実施形態NNと呼ぶ実施形態において、安定性の前記測定値は、抗原効力であり、前記期間の終了時における前記コンジュゲート混合物の保存効力は、前記コンジュゲート混合物の初期効力の少なくとも70%である。実施形態GG、HH、II、JJ、KK、LL、MM又はNNのいずれか1種以上の追加特徴を付加することにより、本方法を更に定義することができる。
【0214】
当然のことながら、本願に記載する実施形態は、上記教示及び記載又は添付図面の図解の内容にその適用を制限されない。逆に、当然のことながら、本願に記載及び請求するような本願の実施形態及び代替形態は、種々の方法で実施又は実現することが可能である。更に、当然のことながら、本願で使用する単語及び語句は、説明の目的であり、制限的であるとみなすべきではない。本願中で「包含する」、「含む」、「例えば」、「含有する」又は「有する」及びこれらの単語の活用形を使用する場合には、これらの単語の目的語として列挙する事項に加え、その等価事項とその他の事項も含むものとする。
【0215】
したがって、種々の実施形態及び代替形態に関する以上の記載は、本願に開示した内容を例証することを目的とし、その範囲を制限するものではない。本願中の記載は網羅的なものではなく、また、開示した厳密な形態に実施形態の認識を制限するものでもない。当技術分野における通常の知識を有する者に自明の通り、上記教示及び記載に鑑みてこれらの実施形態の変更・変形も当然可能である。