(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】フルバチニブ又はそのメタンスルホン酸塩の結晶形およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 215/48 20060101AFI20240806BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20240806BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07D215/48 CSP
A61K31/47
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2022543726
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2021081023
(87)【国際公開番号】W WO2021143954
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】202010063033.6
(32)【優先日】2020-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517221354
【氏名又は名称】重慶医薬工業研究院有限責任公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521412559
【氏名又は名称】重▲慶▼葯友制葯有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】YAOPHARMA CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】賀帥
(72)【発明者】
【氏名】張楊
(72)【発明者】
【氏名】劉強
(72)【発明者】
【氏名】陳正霞
(72)【発明者】
【氏名】戴美碧
(72)【発明者】
【氏名】樊斌
(72)【発明者】
【氏名】謝佩▲ユ▼
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/062637(WO,A1)
【文献】特表2019-529478(JP,A)
【文献】特表2019-529414(JP,A)
【文献】特表2018-520205(JP,A)
【文献】Organic Process Research & Development,2009, Vol.13, No.6,p.1241-1253
【文献】浅原 照三,溶剤ハンドブック,株式会社 講談社,1985年,pp.47-51
【文献】芦澤 一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol. 18, No. 10,pp. 81-96
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,丸善株式会社,2008年,pp. 17-23,37-40,45-51,57-65,ISBN 978-4-621-07991-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折パターンが6.28±0.2°、10.65±0.2°、17.87±0.2°、19.48±0.2°、23.57±0.2°、24.38±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有する、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶III。
【請求項2】
さらに、粉末X線回折パターンが10.25±0.2°、14.44±0.2°、15.28±0.2°、18.91±0.2°、19.98±0.2°、20.86±0.2°、21.77±0.2°、22.78±0.2°、24.98±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークをさらに有する、請求項
1に記載の結晶III。
【請求項3】
請求項
1又は
2に記載のメタンスルホン酸フルバチニブの結晶IIIを製造する方法であって、
メタンスルホン酸フルバチニブをエタノールと混合して混合液を得、前記混合液を温度が20℃-65℃の条件下で攪拌しろ過して固体を得、前記固体を乾燥させてメタンスルホン酸フルバチニブの結晶IIIを得ることを含む、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶IIIの製造方法。
【請求項4】
前記混合液は、20-30℃で少なくとも16時間、又は30-65℃で1-4時間、撹拌する、請求項
3に記載のメタンスルホン酸フルバチニブの結晶IIIの製造方法。
【請求項5】
請求項
1又は
2に記載のメタンスルホン酸フルバチニブの結晶IIIと、薬学的に許容される添加物とを含む、医薬組成物。
【請求項6】
腫瘍を治療するための薬剤
として使用するための
、請求項
5に記載の組成
物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔相互参照〕
本願は、2020年1月19日に中国特許庁へ出願された、出願番号202010063033.6、発明の名称「フルバチニブ又はそのメタンスルホン酸塩の結晶形およびその製造方法」の中国特許出願の優先権を主張し、その全内容を援用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、医薬品化学分野に関し、特に、フルバチニブ又はそのメタンスルホン酸塩の結晶形およびその製造方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
肝臓癌は、中国でよく見られる悪性腫瘍であり、2017版の国家がんセンターが発表したデータによると、2013年に中国で36.2万の新しい肝臓癌の症例が発生し、発生率が全国第3位になり、また、肝臓癌による死亡者数は31.6万人に達し、第2位になった。肝細胞癌(HCC)は、潜行性発症であり、初期症状が明らかではないから、ほとんどの患者が受診したときに手術の機会も失っており、手術、介入療法または化学療法のいずれかが肝臓癌への治療効果がまだあまり満足のいくものではなく、現在の肝臓癌の5年生存率が非常に低い。
【0004】
科学技術の発展に伴い、標的薬による薬物治療HCCは必要に応じて現れてきた。現在、肝臓癌に対する標的薬物には、主に表皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)拮抗薬、マルチキナーゼ阻害剤、PI3K/Akt/mTORシグナル経路、肝細胞増殖因子受容体(Met)阻害剤、TGFβ受容体阻害剤などが含まれる。現在、承認されている標的TKI薬としては、主にソラフェニブ、レンバチニブ及びレゴラフェニブなどである。従って、治療薬は非常に限られている。
【0005】
CN109134365には、VEGFR1~3型、線維芽細胞増殖因子受容体1~3型、RET、Kit及びPDGFRの複数のターゲットに作用する活性化合物又は薬用塩が開示されており、その化学構造式は下記の式Iで示される。
【0006】
【0007】
化学名:4-(2-フルオロ-3クロロ-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド、薬名:フルバチニブ(fluvatinib)。この化合物は活性が強く、肝臓や腎臓などの腫瘍のある患者に潜在的な新しい治療オプションを提供する。
【0008】
しかし、本発明者は、研究により、フルバチニブの遊離塩基体であれ、その薬用塩であれ、特にそのメタンスルホン酸塩は、多結晶形態を有し、異なる結晶形が例えば安定性、溶解性、創薬可能性などの点で全て異なるという多形性の性質を示すので、薬物の品質管理に大きな影響を及ぼすことが見出した。従って、安定的かつ創薬可能性の良い結晶形を開発することが非常に必要である。
【0009】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、4-(2-フルオロ-3-クロロ-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド(式Iで示されるフルバチニブ(fluvatinib))又はそのメタンスルホン酸塩の結晶形を提供することを目的とする。
【0010】
【0011】
前記フルバチニブのメタンスルホン酸塩(メタンスルホン酸フルバチニブ、フルバチニブメシレート(fluvatinib mesylate)とも呼ばれ、いずれも同一の化合物を指す。)は、下記の式IIで示される化合物であり、
【0012】
【0013】
。
【0014】
本発明は、粉末X線回折パターンが11.60±0.2°、16.72±0.2°、20.25±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有し、さらに、粉末X線回折パターンが8.28±0.2°、11.60±0.2°、15.42±0.2°、16.72±0.2°、20.25±0.2°、21.81±0.2°、22.36±0.2°及び24.08±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有する、フルバチニブの結晶形を提供する。
【0015】
本発明は、粉末X線回折パターンが9.60±0.2°、22.49±0.2°及び23.07±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有し、さらに、粉末X線回折パターンが10.74±0.2°、16.79±0.2°、17.51±0.2°、18.50±0.2°、20.64±0.2°、20.85±0.2°、21.51±0.2°、23.73±0.2°、24.84±0.2°、26.51±0.2°、27.05±0.2°、27.88±0.2°、28.60±0.2°及び29.74±0.2°の2θ値で特徴的なピークを有する、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形を提供する。
【0016】
本発明は、粉末X線回折パターンが
図7に示すような特徴的な回折ピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形を提供する。
【0017】
本発明は、粉末X線回折パターンが6.28±0.2°、10.65±0.2°、17.87±0.2°、19.48±0.2°、23.57±0.2°、24.38±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形を提供する。さらに、その粉末X線回折パターンが10.25±0.2°、14.44±0.2°、15.28±0.2°、18.91±0.2°、19.98±0.2°、20.86±0.2°、21.77±0.2°、22.78±0.2°、24.98±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有する。
【0018】
本発明は、粉末X線回折パターンが
図11に示すような特徴的なピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形を提供する。
【0019】
本発明は、粉末X線回折パターンが
図12に示すような特徴的なピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形を提供する。
【0020】
本発明は、粉末X線回折パターンが
図13に示すような特徴的なピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形を提供する。
【0021】
本発明は、粉末X線回折パターンが
図14に示すような特徴的なピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、メタンスルホン酸フルバチニブを有機溶剤と混合し、混合液を温度が20℃を超える条件下で攪拌し、ろ過し、得られた固体を乾燥させてメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形を得ることを含む、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形の製造方法を提供する。
【0023】
好ましくは、上記の本発明に係る方法では、前記温度が20℃を超えて70℃未満である。
【0024】
好ましくは、上記の本発明に係る方法では、前記攪拌は、攪拌時間が少なくとも1時間である。
【0025】
好ましくは、上記の本発明に係る方法では、前記攪拌時間が2~48時間である。
【0026】
好ましくは、上記の本発明に係る方法では、前記温度が20~30℃である。
【0027】
好ましくは、上記の本発明に係る方法では、前記有機溶剤は、メタノール、エタノール、アセトン、THF、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル、シクロへキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン及びそれらの任意の組み合わせの混合溶剤からなる群より選択される。
【0028】
より好ましくは、上記の本発明に係る方法では、前記有機溶剤がエタノールである。
【0029】
より好ましくは、上記の本発明に係る方法では、前記温度が20~30℃、攪拌時間が少なくとも2時間又は少なくとも12時間、又は少なくとも16時間、又は少なくとも24時間、又は48時間である。
【0030】
より好ましくは、上記の本発明に係る方法では、前記温度が30℃を超えて70℃未満、攪拌時間が1~3時間である。
【0031】
より好ましくは、上記の本発明に係る方法では、前記温度が20~30℃であり、攪拌時間が1~2時間である。
【0032】
より好ましくは、上記のいずれかの本発明による方法では、有機溶剤がエタノールである。
【0033】
より好ましくは、任意に選択で、上記の本発明に係る方法では、前記有機溶剤は、水を含む混合溶剤であってもよく、好ましくは、エタノールと水又はTHFと水の混合溶剤であってもよい。
【0034】
上記の本発明に係る方法では、プロセスを制御することにより異なるメタンスルホン酸フルバチニブの晶体形態を得ることができる。
【0035】
いくつかの実施形態においては、以下の実施形態も提供される。
【0036】
一実施形態では、本発明に係るフルバチニブの結晶形Iは、粉末X線回折パターンが11.60±0.2°、16.72±0.2°、20.25±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有することを特徴とする。
【0037】
さらに、前記のフルバチニブの結晶形Iは、粉末X線回折パターンが8.28±0.2°、11.60±0.2°、15.42±0.2°、16.72±0.2°、20.25±0.2°、21.81±0.2°、22.36±0.2°及び24.08±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有する。
【0038】
好ましくは、前記のフルバチニブの結晶形Iは、粉末X線回折パターンが
図1に示すような特徴的な回折ピークを有する。
【0039】
いくつかの実施形態においては、本発明は、フルバチニブを有機溶剤に溶解して懸濁液を形成し、攪拌し、ろ過して結晶形Iを得ることを含む、フルバチニブの結晶形Iの製造方法を提供する。好ましくは、前記有機溶剤は、メタノール、エタノール、アセトン、THF、イソプロパノール、酢酸エチル及びそれらの任意の混合溶剤からなる群より選択される。
【0040】
一実施形態では、本発明は、粉末X線回折パターンが9.60±0.2°、22.49±0.2°及び23.07±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形Iを提供する。
【0041】
さらに、上記のメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形Iは、粉末X線回折パターンが10.74、16.79、17.51、18.50、20.64、20.85、21.51、23.73、24.84、26.51、27.05、27.88、28.60及び29.74の2θ(±0.2°)値で特徴的な回折ピークをさらに有する。
【0042】
好ましくは、前記のメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形Iは、粉末X線回折パターンが
図4に示すような特徴的な回折ピークを有する。
【0043】
いくつかの実施形態においては、本発明は、フルバチニブを有機溶剤に溶解し、メタンスルホン酸を加えて反応させ、反応終了後、20~30OCで1~2時間攪拌し、ろ過し、乾燥させてメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形Iを得ることを含む、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形Iの製造方法をさらに提供する。好ましくは、前記有機溶剤は、メタノール、エタノール、アセトン、THF、イソプロパノール、酢酸エチル及びそれらの任意の混合溶剤からなる群より選択される。前記乾燥は減圧下での乾燥であり、乾燥温度は40~50OCである。
【0044】
一実施形態では、本発明は、粉末X線回折パターンが4.88±0.2°、6.93±0.2°、9.77±0.2°、10.93±0.2°の2θ(±0.2°)値で特徴的な回折ピークを有し、さらに、粉末X線回折パターンが12.07、14.81、15.56、17.72、18.56、19.74、21.11、21.73、22.73、24.68、25.70、6.19及び27.49±0.2°の2θ(±0.2°)値で特徴的な回折ピークをさらに有する、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIを提供する。
【0045】
好ましくは、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIは、粉末X線回折パターンが
図7に示すような特徴的なピークを有する。
【0046】
いくつかの実施形態においては、本発明は、フルバチニブを有機溶剤中でメタンスルホン酸塩と反応させた後、10~20OCで2時間攪拌し、固体析出し、ろ過し、乾燥させてメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形を得ることを含む、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIの製造方法をさらに提供する。
【0047】
上記の本発明に係る方法では、前記有機溶剤には、メタノール、エタノール、アセトン、THF又はイソプロパノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
さらに別の実施形態では、本発明は、粉末X線回折パターンが6.28±0.2°、10.65±0.2°、17.87±0.2°、19.48±0.2°、23.57±0.2°、24.38±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIIを提供する。
【0049】
さらに、上記のメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIIは、粉末X線回折パターンが10.25±0.2°、14.44±0.2°、15.28±0.2°、18.91±0.2°、19.98±0.2°、20.86±0.2°、21.77±0.2°、22.78±0.2°、24.98±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークをさらに有する。
【0050】
好ましくは、上記の本発明のメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIIは、粉末X線回折パターンが
図9に示すような特徴的な回折ピークを有する。
【0051】
いくつかの実施形態においては、本発明は、メタンスルホン酸フルバチニブを有機溶剤中で少なくとも2時間攪拌してメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIIを得ることを含む、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIIの製造方法をさらに提供する。
【0052】
いくつかの実施形態においては、上記したメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIIの製造方法は、メタンスルホン酸フルバチニブを有機溶剤に溶解し、20~30℃で少なくとも12時間、好ましくは少なくとも16時間、24時間又は48時間攪拌し、ろ過し、フィルターケーキを乾燥させることを含む。
【0053】
いくつかの実施形態においては、上記したメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IIIの製造方法は、メタンスルホン酸フルバチニブを有機溶剤に溶解し、30~65℃で2~3時間攪拌し、ろ過し、フィルターケーキを乾燥させて得られることを含む。
【0054】
上記の本発明に係る方法では、前記乾燥は減圧下での乾燥であり、乾燥温度は40~50℃である。前記有機溶剤は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、THF、シクロへキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン及び酢酸エチルから選択され、エタノール、アセトン及び酢酸エチルであることが好ましい。
【0055】
本発明は、粉末X線回折パターンが6.22±0.2°、10.59±0.2°、11.58±0.2°、14.41±0.2°、17.93±0.2°、20.32±0.2°、23.58±0.2°、24.09±0.2°、24.59±0.2°、25.79±0.2°の2θ(±0.2°)値で特徴的な回折ピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IVをさらに提供する。好ましくは、その粉末X線回折パターンは、それぞれ
図11に示すような特徴的な回折ピークを有する。
【0056】
本発明は、フルバチニブメシレートをエタノール/水の混合溶剤系に溶解し、20~30℃で20~48時間攪拌し、ろ過し、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させてメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IVを得ることを含む、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形IVの製造方法を提供する。
【0057】
本発明は、粉末X線回折パターンが4.81±0.2°、10.64±0.2°、10.99±0.2°、16.00±0.2°、20.50±0.2°、21.10±0.2°、24.59±0.2°、25.57±0.2°及び26.46±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形Vをさらに提供する。好ましくは、その粉末X線回折パターンは、それぞれ
図12に示すような特徴的な回折ピークを有する。
【0058】
本発明は、フルバチニブメシレートをテトラヒドロフラン/水の混合溶剤系に溶解し、20~30℃で20~48時間攪拌し、ろ過し、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させてメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形Vを得ることを含む、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形Vの製造方法を提供する。
【0059】
本発明は、粉末X線回折パターンが5.61±0.2°、9.98±0.2°、10.61±0.2°、16.84±0.2°、20.14±0.2°、20.89±0.2°の2θ(±0.2°)値で特徴的な回折ピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形VIをさらに提供する。好ましくは、その粉末X線回折パターンは、それぞれ
図13に示すような特徴的な回折ピークを有する。
【0060】
本発明は、フルバチニブの遊離塩基体をメタノール溶剤に加え、撹拌しながらメタンスルホン酸をさらに加えて反応を行い、反応液を20~30℃で2~10時間、好ましくは4時間攪拌し、ろ過し、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させてメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形VIを得ることを含む、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形VIの製造方法を提供する。
【0061】
本発明は、粉末X線回折パターンが5.57±0.2°、6.17±0.2°、9.93±0.2°、10.56±0.2°、14.34±0.2°、16.81±0.2°、17.76±0.2°、20.10±0.2°、20.81±0.2°、24.85±0.2°、25.60±0.2°の2θ値で特徴的な回折ピークを有するメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形VIIをさらに提供する。好ましくは、その粉末X線回折パターンは、それぞれ
図14に示すような特徴的なピークを有する。
【0062】
本発明は、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形VIをエタノール溶剤に溶解し、20~30℃で2~10時間攪拌した後、ろ過し、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させてメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形VIIを得ることを含む、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形VIIの製造方法を提供する。
【0063】
腫瘍を治療するための薬剤の製造における上記の本発明に係るフルバチニブの結晶形I及びメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形I、II、III、IV、V、VI、VIIの使用であって、前記腫瘍には、肝臓癌、腎がん、胃癌、結腸・直腸癌、膵臓がん、肺癌などが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明は、有効量の上記の本発明に係るフルバチニブ又はそのメタンスルホン酸塩の結晶形と、薬学的に許容される添加物とを含む医薬組成物をさらに提供する。前記の結晶形は、フルバチニブの結晶形I及びメタンスルホン酸フルバチニブの結晶形I、II、III、IV、V、VI及びVIIからなる群より選択される。好ましくは、前記の結晶形は、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形I又はの結晶形IIIである。
【0065】
上記の本発明に係る組成物では、前記添加物には、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、着色剤、矯味剤、乳化剤、界面活性剤、助溶剤、懸濁剤、等張剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、吸收促進剤などが含まれるが、これらに限定されず、組成物の異なる製剤形態の要求に応じて上記の添加物を適宜組み合わせて使用することができる。
【0066】
具体的には、上記の充填剤は、乳糖、白糖、グルコース、コーンスターチ、マンニトール、ソルビトール、デンプン、αデンプン、デキストリン、結晶性セルロース、軽質無水ケイ酸、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、アルミニウムマグネシウムシリケート、リン酸水素カルシウムからなる群より選択される一つまたは複数である。上記の崩壊剤は、結晶性セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプン及びカルボキシメチルデンプンナトリウムからなる群より選択される一つまたは複数である。上記の結合剤は、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガカントガム、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールからなる群より選択される一つまたは複数である。上記の潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール及びコロイダルシリカからなる群より選択される一つまたは複数である。上記の着色剤は、酸化第二鉄、黄色酸化第二鉄、カーマイン、キャラメル、β-カロテン、酸化チタン、タルク、リン酸リボフラビンナトリウム及びサンセットイエローなどの医薬用着色剤からなる群より選択される。上記の矯味剤は、カカオ粉末、メントール、芳香性粉末、ペパーミントオイル、ボルネオール及びシナモン粉末などからなる群より選択される。上記の界面活性剤は、オクタデシルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、グリセリンモノステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどからなる群より選択される。上記の助溶剤は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、エタノール、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びツイン80(Tween80)などからなる群より選択される。
【0067】
上記の酸化防止剤は、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α-トコフェロールなどであってもよい。
【0068】
上記の本発明に係る組成物は、製剤形態が錠剤、散剤、粒剤、カプセル剤、シロップ剤、錠含有剤、吸入剤などの経口製剤、又は注射剤であってもよい。
【0069】
上記の経口製剤は、必要に応じて、上記の製剤の表面がコーティングされることもできる。
【0070】
上記の注射剤には、乳化剤、界面活性剤、助溶剤、懸濁剤、等張剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、吸收促進剤などの適切な添加剤を添加することができる。
【0071】
本発明の結晶を医薬品として使用する場合、使用量は症状、年齢、投与方法により異なるが、通常、成人には1日100μg~10gを投与し、1回又は数回に分けて投与する。
【0072】
本発明に係る結晶形は、血管新生阻害剤として非常に有用であり、血管新生阻害剤、抗腫瘍剤、血管腫治療剤、癌転位阻害剤などの、血管新生阻害作用により効果的に治療できる疾患の予防剤又は治療剤として有用である。
【0073】
また、上記の本発明に係る組成物を抗腫瘍剤として使用する場合、前記腫瘍には、肝臓癌、膵臓がん、胃癌、甲状腺がん、大腸癌、乳癌、前立腺がん、肺癌、腎がん、脳腫瘍、血液癌又は卵巣がんが含まれ、特に、肝臓癌、甲状腺がん、胃癌、結腸・直腸癌、前立腺がん、肺癌又は腎がんであることが好ましい。
【0074】
本発明に係る結晶形は報告されていない。ここで、フルバチニブは高温高湿条件下で半月、3ヶ月にわたって安定性を調査した結果、結晶転移の現象は発生しておらず、関連する不純物含有量に明らかな変化はなかった。また、メタノール、エタノール、アセトン、THF、イソプロパノール、酢酸エチルなどの有機溶剤、およびそれらと水との混合溶剤で少なくとも2日間攪拌したところ、結晶転移の現象は発生しておらず、水を含む溶剤条件下で安定を維持し、その製剤の加工過程に適応するのに有利であることが示された。
【0075】
本発明に係るフルバチニブメタンスルホン酸の結晶形は、典型的な多結晶形形態を呈し、本発明ではすでに7つの結晶形態が見出されており、その中で結晶形I及びIIIは、比較的良好な特定の特性を示し、高温高湿の過酷な実験条件下で少なくとも半月、3ヶ月放置してその安定性を調査したところ、フルバチニブメシレートの結晶形I及びの結晶形IIIは結晶転移の現象が発生しておらず、関連物質の含有量が調査前と比較して明らかな変化はなく、物理的及び化学的安定性を示すことが分かった。特に、結晶形IIIは、良好な流動性、吸湿性などの製剤製造特徴を示す。
【0076】
フルバチニブメシレートの結晶形II、結晶形III、結晶形VI、結晶形VIIはエタノール中で2~4日間攪拌すると、フルバチニブメシレートの結晶形II、の結晶形VI、晶VIIは結晶形IIIに転移したが、結晶形IIIはこの条件下で結晶転移の現象が発生しなかったから、結晶形IIIは、結晶形II、VI及びVIIより良い安定性を持ち、製剤の加工過程により適し、適応していることが分かった。また、溶解性もレンバチニブより優れる。
【0077】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕
図1は、フルバチニブの結晶形IのXRPDパターンである。
【0078】
〔
図2〕
図2は、フルバチニブの結晶形IのDSC曲線である。
【0079】
〔
図3〕
図3は、フルバチニブの結晶形IのTGA曲線である。
【0080】
〔
図4〕
図4は、フルバチニブメシレートの結晶形IのXRPDパターンである。
【0081】
〔
図5〕
図5は、フルバチニブメシレートの結晶形IのDSC及びTGA曲線である。
【0082】
〔
図6〕
図6は、フルバチニブメシレートの結晶形Iの吸湿性のDVS曲線である。
【0083】
〔
図7〕
図7は、フルバチニブメシレートの結晶形IIのXRPDパターンである。
【0084】
〔
図8〕
図8は、フルバチニブメシレートの結晶形IIのDSC及びTGA曲線である。
【0085】
〔
図9〕
図9は、フルバチニブメシレートの結晶形IIIのXRPDパターンである。
【0086】
〔
図10〕
図10は、フルバチニブメシレートの結晶形IIIのDSC及びTGA曲線である。
【0087】
〔
図11〕
図11は、フルバチニブメシレートの結晶形IVのXRPDパターンである。
【0088】
〔
図12〕
図12は、フルバチニブメシレートの結晶形VのXRPDパターンである。
【0089】
〔
図13〕
図13は、フルバチニブメシレートの結晶形VIのXRPDパターンである。
【0090】
〔
図14〕
図14は、フルバチニブメシレートの結晶形VIIのXRPDパターンである。
【0091】
〔
図15〕
図15は、実施例9のフルバチニブの結晶形Iの結晶転移試験後のサンプルのXPRDパターンである。
【0092】
〔
図16〕
図16は、実施例10のフルバチニブメシレートの結晶形IのDVS試験の前後のサンプルのXPRDパターンである。
【0093】
〔
図17〕
図17は、実施例11の結晶転移の実験により得られたフルバチニブメシレートの結晶形IIIのXRPDパターンである。
【0094】
〔
図18〕
図18は、実施例11の高温懸濁結晶形実験のXRPDパターンである。
【0095】
〔
図19〕
図19は、フルバチニブメシレートの結晶形IIIのDVS曲線である。
【0096】
〔
図20〕
図20は、フルバチニブメシレートの結晶形Iの打錠前、打錠後及び6ヶ月間放置した結晶形のXRPDパターンである。
【0097】
〔
図21〕
図21は、フルバチニブメシレートの結晶形IIIの打錠前、打錠後及び6ヶ月間放置した結晶形のXRPDパターンである。
【0098】
〔発明を実施するための形態〕
以下の実施例は代表的なものに過ぎず、本発明の精神をさらに説明又は理解するために使用されるが、いかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の精神の範囲内での任意の簡単な修正も、本発明の範囲に属する。
【0099】
本明細書では、粉末X線回折パターン(XRPD)、DSC及びTGAなどの結晶形パラメータに対する測定は、いずれも当分野での従来の手段であり、具体的に採用される検出機器は以下の通りである。ただし、機器及び検出による誤差があるため、XRPDなどの検出結果には+0.2の誤差がある。
【0100】
<粉末X線回折法(X-ray powder diffractometer、XRPD)>
機器モデル:ブルック D8 advance X線回折装置
試験方法:約10~20mgのサンプルをXRPDの検出に使用した。
【0101】
詳細なXRPDパラメータは次のとおりであり:
ライトチューブ:Cu、kα(λ=1.54056Å)
ライトチューブ電圧:40kV、ライトチューブ電流:40mA
発散スリット:0.60mm
検出器スリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
走査範囲:4~40deg
ステップ:0.02deg
ステップサイズ:0.12秒。
【0102】
<示差走査熱量計(DSC)>
試験条件:約0.5~1mgのサンプルをDSCの検出に使用した。
【0103】
方法:50mL/minN2条件下で、10℃/minの昇温速度でサンプルを室温から300℃又は350℃まで加熱した。
【0104】
<熱重量分析装置(TGA)>
試験条件:約2~5mgのサンプルをTGAの検出に使用した。
【0105】
方法:25mL/minN2条件下で、10℃/minの昇温速度でサンプルを室温から20%の重量損失又は300℃まで加熱する。
【0106】
【0107】
サンプルをスライドガラス上に置き、カバーガラスで分散させて観察した。対物レンズ:20/50倍。
【0108】
以下、実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0109】
<実施例1 フルバチニブの結晶形Iの製造>
式Iのフルバチニブの遊離塩基体(50mg、112.40umol)をEtOH(2mL)に加え、15~20℃で12時間攪拌し、ろ過し、フィルターケーキを得、フィルターケーキをアセトン200mLに加え、15~20℃で12時間攪拌し、ろ過し、フィルターケーキを40℃で減圧下でスピン乾燥させ、フルバチニブ固体を得、XRPDによって検出した。その結果を
図1に示す。該フルバチニブ固体は、フルバチニブの結晶形Iと命名し、そのDSC及びTGAの検出結果が
図2及び
図3に示した。
【0110】
<実施例2 フルバチニブメシレート(本明細書では「メタンスルホン酸フルバチニブ」とも呼ばれる)の結晶形Iの製造>
4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニルアミノ)-2-フルオロ-フェノキシ]-7-メトキシ-キノリン-6-カルボキサミドであるフルバチニブ(0.5g、1.12mmol)をEtOH(10mL)溶剤に加え、55~60℃まで加熱し、この温度で撹拌しながら、メタンスルホン酸(108.02mg、1.12mmol、80.02μL、1eq)をフラスコに加え、反応液が清澄になると、反応液を20~30℃まで冷却し、この温度で1時間攪拌し、茶褐色固体が析出し、減圧下で吸引濾過し、フィルターケーキをエタノール(2mL×2)ですすぎ、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させて固体生成物を得た。この固体生成物は、メタンスルホン酸フルバチニブの結晶形Iと命名し、XRPD及びDSC、TGAによって検出した。XRPDの検出結果を以下の表1及び
図4、DSC及びTGAの検出結果を
図5に示した。熔点は約232~237
oCであった。
【0111】
【0112】
<実施例3 フルバチニブメシレートの結晶形IIの製造>
フルバチニブの遊離塩基体(55g)をEtOH(1.1L)溶剤に加え、55~60℃まで加熱し、撹拌(300rpm)しながら、メタンスルホン酸(11.88g)をフラスコに加え、反応終了後に10~20℃まで冷却し、この温度で2時間攪拌し、茶褐色固体が析出し、減圧下で吸引濾過し、フィルターケーキをエタノール(50mL×2)ですすぎ、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させて、生成物として茶褐色固体の結晶形(52.5g)を得た。次に、この結晶形は、XRPD、TGA、DSCによって検出し、結果を表2、
図7及び
図8に示し、フルバチニブメシレートの結晶形II(Form II)と命名した。
【0113】
【0114】
<実施例4 フルバチニブメシレートの結晶形IIIの製造>
方法一:フルバチニブ(遊離体)100gをMeOH(2.2L)溶剤に加え、撹拌しながら、メタンスルホン酸(16.64mL)をフラスコに加えて反応させた後、20~30℃で4時間攪拌し、茶褐色固体が析出し、減圧下で吸引濾過し、フィルターケーキをエタノール(50mL×2)ですすぎ、得られたフィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させて固体生成物(106.2g)を得た。固体生成物(105g)を1Lのエタノールを入れたフラスコに加え、20~30℃で48時間攪拌し、減圧下で吸引濾過し、フィルターケーキを得、フィルターケーキを40~50℃で減圧下で乾燥させて固体結晶生成物を得た。この生成物は、XRPD、TGA、DSCによって検出し、結果を表3、
図9及び
図10を示す。XRPDデータにより、生成物の結晶形がフルバチニブメシレートの結晶形III(Form III)であったことが分かった。熔点は約220~226
oCであった。
【0115】
方法二:実施例3で得られたフルバチニブメシレートの結晶形II(52g)を420mLのエタノールに加え、20~30℃で機械的攪拌(300rpm)で16時間攪拌し、減圧下で吸引濾過し、フィルターケーキを40~50℃で減圧下で乾燥させて生成物を得た。XRPDで検出した結果、そのXRPDの2θ値は
図9とほぼ一致しており、得られた結晶形がForm IIIであることが分かった。
【0116】
方法三:0.5gのフルバチニブメチル遊離塩基体を10mLのエタノールに加え、それに0.1mLのメタンスルホン酸を加え、40℃で3~4時間懸濁し、遠心ろ過し、40℃のオーブンで乾燥させた。検出したところ、製造された生成物がメシレートの結晶形IIIであった。そのXRPDの2θ値は
図9とほぼ一致していた。
【0117】
方法四:0.9gのフルバチニブメシレートを、撹拌しながら、7.2mLのエタノールを入れたフラスコに加え、添加後、温度を55~65℃に上げ、この温度で約2~3時間攪拌した。減圧下で吸引濾過し、フィルターケーキをエタノール(0.5mL×2)ですすぎ、フィルターケーキを得、45℃真空乾燥させて生成物を得た。その生成物のXRPDの2θ値は
図9とほぼ一致していた。
【0118】
【0119】
<実施例5 フルバチニブメシレートの結晶形IVの製造>
約1.0gのフルバチニブメシレートを秤量して4mLのエタノール/4mLの水(1:1)の混合溶剤系に加え、懸濁液を形成した。この懸濁液をマグネチックスターラー(20~30℃)に置いて攪拌し、48h後に茶褐色懸濁液となり、減圧下で吸引濾過し、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させた。得られた乾燥の固体結晶生成物が625mg、収率が62.5%であった。生成物はXRPDで検出し、結果を以下の表4及び
図11に示し、フルバチニブメシレートの結晶形IVであった。
【0120】
【0121】
<実施例6 フルバチニブメシレートの結晶形Vの製造>
約1.0gのフルバチニブメシレートを秤量して4mLのテトラヒドロフラン/4mLの水(1:1)の混合溶剤系に加え、懸濁液を形成した。20~30℃の温度で懸濁液サンプルをマグネチックスターラーに置いて攪拌し、48h後に茶褐色懸濁液となり、ろ過し、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させた。得られた乾燥サンプルが430mg、収率が43.00%であった。サンプルは、XRPDで検出し、結果を以下の表5及び
図12に示す。このサンプルは、フルバチニブメシレートの結晶形Vであった。
【0122】
【0123】
<実施例7 フルバチニブメシレートの結晶形VIの製造>
約2.0gのフルバチニブの遊離塩基体を秤量してメタノールを入れたフラスコに加え、懸濁液を形成し、20~30℃で攪拌し、0.32mLのメタンスルホン酸を加え、反応液を20~30℃で4時間攪拌した。ろ過し、フィルターケーキを40~50℃減圧下でスピン乾燥させ、乾燥サンプルを得た。サンプルはXRPDで検出し、結果を表6及び
図13に示す。このサンプルは、フルバチニブメシレートの結晶形VI(Form VI)であった。
【0124】
【0125】
<実施例8 フルバチニブメシレートの結晶形VIIの製造>
約0.2gの実施例7のフルバチニブメシレートの結晶形VIを秤量してエタノール溶剤に加えて懸濁液を形成し、懸濁液を20~30℃で磁気的に撹拌し、4h後にろ過し、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させた。得られた乾燥サンプルは、XRPDで検出し、結果を表7及び
図14に示す。このサンプルはフルバチニブメシレートの結晶形VII(Form VII)であった。
【0126】
【0127】
<実施例9 フルバチニブの結晶形Iの安定性に関する調査>
フルバチニブの結晶形Iを有機溶剤及び含水有機溶剤に入れ、40℃で2日間攪拌し、結晶転移の現象の有無を調査した。
【0128】
幾つかの約30mgのフルバチニブの結晶形I(Form I)を秤量してそれぞれ異なるガラス瓶に加え、それぞれ適量の単一有機溶剤又は含水溶剤混合物(表8参照)を加えて懸濁液とした。上記の懸濁液サンプルをマグネチックスターラー(40℃)に置いて攪拌試験を行った。懸濁液サンプルを40℃で2日間攪拌してからろ過した後、フィルターケーキサンプルを真空乾燥オーブン(40℃)に入れて一晩乾燥させ、乾燥されたサンプルをXRPDで検出した(表8及び
図15参照)。その結果は、フルバチニブの結晶形Iが様々な溶剤(特に水を含む溶剤)環境で安定し、結晶転移の現象が発生せず、その製剤の工業化生産に適していることを示した。
【0129】
【0130】
<実施例10 フルバチニブメシレートの結晶形Iの安定性に関する調査>
フルバチニブメシレートの結晶形Iをアセトン、エタノール、酢酸エチルに保存して結晶転移の現象の有無を調査した。
【0131】
約50mgのフルバチニブメシレートの結晶形Iを3部秤量してそれぞれ適量のアセトン、エタノール、酢酸エチル溶剤を入れたフラスコに加えた。懸濁液サンプルをマグネチックスターラーに置き、室温で10時間攪拌し、ろ過し、フィルターケーキを40~50度で減圧下でスピン乾燥させ、得られた乾燥サンプルをXRPDで検出した結果、そのXRPDの2θ値は
図4とほぼ一致していた(誤差範囲内)。結論:フルバチニブメシレートの結晶形Iの形態は、単一溶剤のエタノール、アセトン、酢酸エチルの条件下で維持された。フルバチニブメシレートの結晶形Iが安定していることは示された。
【0132】
同時に、フルバチニブメシレートの結晶形Iの水含有量を動的吸湿試験DVSで検出したところ、フルバチニブのメタンスルホン酸塩は、25℃/80%RH条件下で吸湿性重量が1.3%増加し(
図6に参照)、サンプルがわずかに吸湿性を有することが分かり、また、DVS試験が終了した後、サンプルは結晶形転移が見られなかった(
図16に参照)。これにより、フルバチニブメシレートの結晶形Iの安定性が良いことが示された。
【0133】
<実施例11 フルバチニブメシレートの結晶形IIIの安定性に関する調査>
1、空気(酸素)中のフルバチニブメシレートの結晶形IIIの安定性を調査した。
【0134】
フルバチニブメシレートの結晶形III(FormIII)について安定性を調査し、FormIIIを空気中に曝し、酸素と接触させ、結果を表9に示した。結果から、フルバチニブのメタンスルホン酸塩は、20~30℃及び60℃の条件下で空気中に曝されても、安定して存在することができ、メタンスルホン酸塩の酸化防止性が安定しており、明らかに新たな不純物が生成しなかった。
【0135】
【0136】
2、有機溶剤における結晶転移の現象の有無
エタノール中のフルバチニブメシレートの結晶形の安定性、結晶転移の現象があるかどうかを調査した。
【0137】
フルバチニブメシレートの結晶形II(Form II)、III(Form III)、VI(Form VI)及びVII(Form VII)をそれぞれ約0.15g秤量し、エタノールを入れたフラスコに加え、室温で2日間磁気的に撹拌した。ろ過し、フィルターケーキを40~50℃で減圧下でスピン乾燥させ、得られた乾燥サンプルをXRPDで検出した。その結果、サンプルがすべてForm IIIであり、それにより、Form IIIは結晶転移の現象が発生していないが、Form II、Form VI及びForm VIIは結晶転移の現象が発生し、
図17に示されるForm IIIに転移したことが示された。フルバチニブメシレートの結晶形IIIは、安定性が良く、特に製剤の加工過程に適合・適応しており、また、特にエタノールを結合剤又は湿潤剤として含む造粒及び打錠プロセスを使用するフルバチニブメシレートの錠剤又は粒剤の製造に適していることが分かった。
【0138】
3、様々な有機溶剤中のフルバチニブメシレートの結晶形IIIの安定性に関する調査
フルバチニブメシレートの結晶形IIIに対して高温懸濁実験(50℃)を実行した。フルバチニブメシレートの結晶形IIIが様々な種類の一般的な有機溶剤中で結晶転移の現象があるかどうか、安定しているかどうかを調査した。具体的には、以下の表10に示される12種類の有機溶剤及び水を使用し、フルバチニブメシレートの結晶形IIIをそれらの12種類の有機溶剤及び水に懸濁し、懸濁温度を50度、懸濁量を25mg程度、溶剤を1mL、懸濁時間を24時間とした。実験条件及び結果を以下の表10に示した。有機溶剤に懸濁された後の固体は、XRPDによって検出したところ、いずれも結晶形IIIの2θ特徴を持っていた。その結果を
図18に示す。
【0139】
【0140】
<実施例12 フルバチニブメシレートの結晶形の湿熱安定性に関する調査>
本発明に係るフルバチニブメシレートの結晶形I、III、IV、V、VI、VIIを25℃ 92.5%R.Hで7日間放置、40℃ 75%R.Hで14日間放置、60℃で14日間放置という高温高湿条件での過酷な環境に置き、それらの安定性を調査した。次に、調査されたサンプルに対してXRPD試験を行い、その結果を以下の表11に示した。
【0141】
【0142】
表11の結果から分かるように、フルバチニブメシレートの結晶形I及びの結晶形IIIは、高温高湿条件下で結晶転移の現象が発生せず、良好な安定性を示した。一方、メタンスルホン酸メチルフルバチニブの結晶形V、VI、VIIは高温、高湿下で結晶転移の現象が発生し、高温高湿に対する不安定性を示した。
【0143】
<実施例13 吸湿性の調査>
25
oC、0~90%RHの湿度条件下でのフルバチニブメシレートの結晶形IIIの吸湿性を動的水分計(DVS)で測定した。結果を
図19に示した。
【0144】
図19の結果により、フルバチニブメシレートの結晶形IIIは吸湿重量が0.44%であり、低い吸湿性を示し、水分に対して安定性を示すことが分かった。
【0145】
<実施例14 製剤>
製剤成分 重量百分比
フルバチニブメシレートの結晶形I又は結晶形III 30%
無水乳糖 45%
直接プレスデンプン 23%
ステアリン酸マグネシウム 2%。
【0146】
処方量のフルバチニブメシレートの結晶形、無水乳糖、直接プレスデンプンを混合し、ステアリン酸マグネシウムを加えて混合した後、直接打錠法で錠剤を製造し、各錠剤の重量を200mgとした。
【0147】
製造された錠剤を打錠前と打錠後にサンプリングし、40
oC、75%RH環境下で6ヶ月間放置した後にサンプリングしてXRPD試験を行い、結果を
図20及び21に示す。ただし、図中のA、B、Cは、それぞれ打錠前、打錠後及び錠剤が6ヶ月間放置された後の結晶形のXRPDパターンを表す。試験パターンをそれに対応する原料薬(API)結晶形のXRPDパターンと比較した結果、フルバチニブメシレートの結晶形Iであれ、フルバチニブメシレートの結晶形IIIであれ、その錠剤製造過程において結晶転移の現象が発生せず、錠剤が6ヶ月間放置された後にも結晶転移の現象が発生しなかったことが分かった。
【0148】
以上の試験結果から分かるように、フルバチニブメシレートの結晶形I及びIIIは、製剤の加工過程で安定を維持し、特に高温及び高湿度環境でも良好な安定性を示し、結晶形I及びIIIの優れた安定性特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【
図1】
図1は、フルバチニブの結晶形IのXRPDパターンである。
【
図2】
図2は、フルバチニブの結晶形IのDSC曲線である。
【
図3】
図3は、フルバチニブの結晶形IのTGA曲線である。
【
図4】
図4は、フルバチニブメシレートの結晶形IのXRPDパターンである。
【
図5】
図5は、フルバチニブメシレートの結晶形IのDSC及びTGA曲線である。
【
図6】
図6は、フルバチニブメシレートの結晶形Iの吸湿性のDVS曲線である。
【
図7】
図7は、フルバチニブメシレートの結晶形IIのXRPDパターンである。
【
図8】
図8は、フルバチニブメシレートの結晶形IIのDSC及びTGA曲線である。
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図9】
図9は、フルバチニブメシレートの結晶形IIIのXRPDパターンである。
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図10】
図10は、フルバチニブメシレートの結晶形IIIのDSC及びTGA曲線である。
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図11】
図11は、フルバチニブメシレートの結晶形IVのXRPDパターンである。
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図12】
図12は、フルバチニブメシレートの結晶形VのXRPDパターンである。
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図13】
図13は、フルバチニブメシレートの結晶形VIのXRPDパターンである。
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図14】
図14は、フルバチニブメシレートの結晶形VIIのXRPDパターンである。
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図15】
図15は、実施例9のフルバチニブの結晶形Iの結晶転移試験後のサンプルのXPRDパターンである。
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図16】
図16は、実施例10のフルバチニブメシレートの結晶形IのDVS試験の前後のサンプルのXPRDパターンである。
【
図17】
図17は、実施例11の結晶転移の実験により得られたフルバチニブメシレートの結晶形IIIのXRPDパターンである。
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図18】
図18は、実施例11の高温懸濁結晶形実験のXRPDパターンである。
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図19】
図19は、フルバチニブメシレートの結晶形IIIのDVS曲線である。
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図20】
図20は、フルバチニブメシレートの結晶形Iの打錠前、打錠後及び6ヶ月間放置した結晶形のXRPDパターンである。
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図21】
図21は、フルバチニブメシレートの結晶形IIIの打錠前、打錠後及び6ヶ月間放置した結晶形のXRPDパターンである。