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特許7534423内視鏡システム、制御装置および記録媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】内視鏡システム、制御装置および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240806BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240806BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/045 618
A61B1/045 614
A61B1/00 655
G02B23/24 B
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022547659
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2021033210
(87)【国際公開番号】W WO2022054884
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】63/076408
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「先進的医療機器・システム等技術開発事業」「外科手術のデジタルトランスフォーメーション:情報支援内視鏡外科手術システムの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】水谷 千春
(72)【発明者】
【氏名】柳原 勝
(72)【発明者】
【氏名】荻本 浩人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 寛
(72)【発明者】
【氏名】北口 大地
(72)【発明者】
【氏名】竹下 修由
(72)【発明者】
【氏名】小島 成浩
(72)【発明者】
【氏名】古澤 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】杵淵 裕美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅昭
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-162231(JP,A)
【文献】特開平06-319697(JP,A)
【文献】特開2005-055756(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0161280(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0090728(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0123179(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 - 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入され該被検体内の内視鏡画像を取得する内視鏡と、
該内視鏡を保持し該内視鏡を移動させる移動装置と、
記憶部と、
少なくとも1つのプロセッサを有する制御装置と、を備え、
前記記憶部が、前記被検体内の第1領域の第1位置情報および第1回転角情報と、前記被検体内の前記第1領域とは異なる第2領域の第2位置情報および第2回転角情報と、を記憶し、前記第1回転角情報は、前記第1領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記第2回転角情報は、前記第2領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記被検体内の第3領域の第3位置情報と前記第1および第2位置情報との間の位置関係を算出し、
該位置関係、前記第1回転角情報および前記第2回転角情報に基づいて、前記第3領域の第3回転角情報を算出し、
前記第3領域は前記第1および第2領域とは異なる領域であり、
前記内視鏡によって現在撮像されている現在の撮像領域が前記第3領域に含まれる場合、前記第3回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させ、
回転された前記内視鏡画像を表示装置に出力する、内視鏡システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記内視鏡画像を画像処理によって回転させる、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記移動装置が、前記内視鏡の光軸回りに該内視鏡を回転させることが可能であり、
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記移動装置を制御し前記内視鏡を前記光軸回りに回転させることによって前記内視鏡画像を回転させる、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサが、ユーザによる前記内視鏡の操作を許可するマニュアルモードで動作可能であり、
前記マニュアルモードにおいて、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1位置情報、前記第1回転角情報、前記第2位置情報および前記第2回転角情報を決定し前記記憶部に記憶させる、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記内視鏡画像内に含まれる第1特定組織に基づいて前記第1位置情報および前記第1回転角情報を決定し、
前記内視鏡画像内に含まれる第2特定組織に基づいて前記第2位置情報および前記第2回転角情報を決定する、請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記記憶部が、特定組織を含む画像と該特定組織の種類との対応関係を機械学習した学習済みモデルを記憶し、
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記記憶部に記憶された前記学習済みモデルを使用して前記内視鏡画像内の前記第1特定組織および前記第2特定組織を認識し、
前記第1特定組織が認識された前記内視鏡画像の撮像領域の位置に基づいて前記第1位置情報を決定するとともに、前記内視鏡画像内の前記第1特定組織の回転角に基づいて前記第1回転角情報を決定し、
前記第2特定組織が認識された前記内視鏡画像の撮像領域の位置に基づいて前記第2位置情報を決定するとともに、前記内視鏡画像内の前記第2特定組織の回転角に基づいて前記第2回転角情報を決定する、請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記制御装置が、ユーザの指示を受け付けるユーザインタフェースをさらに備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記ユーザインタフェースが第1指示を受け付けたときの前記撮像領域の位置に基づいて前記第1位置情報を決定するとともに、前記ユーザインタフェースが前記第1指示を受け付けたときの前記内視鏡の光軸回りの回転角に基づいて前記第1回転角情報を決定し、
前記ユーザインタフェースが第2指示を受け付けたときの前記撮像領域の位置に基づいて前記第2位置情報を決定するとともに、前記ユーザインタフェースが前記第2指示を受け付けたときの前記内視鏡の光軸回りの回転角に基づいて前記第2回転角情報を決定する、請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記第1領域を撮像した内視鏡画像である第1内視鏡画像および前記第2領域を撮像した前記内視鏡画像である第2内視鏡画像を前記記憶部に保存する、請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記記憶部に保存された前記第1内視鏡画像および前記第2内視鏡画像に基づいて、前記現在の撮像領域が前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域のいずれに含まれるかを判定する、請求項8に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記記憶部に、術前に取得された前記被検体内の検査画像に基づいて決定された前記第1位置情報および前記第2位置情報が、予め記憶されている、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記現在の撮像領域が前記第1領域に含まれる場合、前記第1回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させ、
前記現在の撮像領域が前記第2領域に含まれる場合、前記第2回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させる、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記プロセッサが、前記撮像領域の位置、前記第1位置情報および前記第2位置情報に基づいて、前記現在の撮像領域が前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域のいずれに含まれるかを判定する、請求項11に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
前記内視鏡が、前記被検体に対して固定された所定のピボット点において第1ピボット軸回りに揺動可能に支持され、該第1ピボット軸回りの前記内視鏡の揺動によって前記撮像領域が前記第1領域と前記第2領域との間で移動可能であり、
前記第1位置情報、前記第2位置情報および前記第3位置情報の各々が、前記第1ピボット軸回りの前記内視鏡の回転角度を含む、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項14】
前記内視鏡が、前記所定のピボット点において第2ピボット軸回りに揺動可能に支持され、該第2ピボット軸は前記第1ピボット軸と直交し、
前記第1位置情報、前記第2位置情報および前記第3位置情報の各々が、3次元情報であり、前記第2ピボット軸回りの前記内視鏡の回転角度をさらに含む、請求項13に記載の内視鏡システム。
【請求項15】
前記移動装置が、1以上の関節と、該1以上の関節の各々の回転角度を検出する1以上の角度センサとを有し、
前記プロセッサが、前記1以上の角度センサによって検出された回転角度に基づいて、前記第1ピボット軸回りの前記内視鏡の回転角度を算出する、請求項13に記載の内視鏡システム。
【請求項16】
前記記憶部に、特定組織の種類と回転角情報とが対応付けられたデータベースが記憶され、
前記第3領域の前記内視鏡画像内に前記特定組織が含まれる場合、前記プロセッサは、
前記内視鏡画像内の前記特定組織の種類と対応する前記回転角情報を前記データベースから読み出し、
読み出された前記回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させる、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記内視鏡の前記光軸回りの回転角が所定の回転可能範囲の限界角に達した場合、前記内視鏡画像を画像処理によって回転させる、請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項18】
前記内視鏡が、直視型内視鏡または斜視型内視鏡である、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項19】
前記内視鏡が、該内視鏡の先端部に電動で湾曲可能な湾曲部を有する、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記現在の撮像領域が前記第1領域に含まれる場合、前記第1位置情報または前記第1回転角情報を、現在の撮像領域の位置情報または回転角情報に更新可能であり、
前記現在の撮像領域が前記第2領域に含まれる場合、前記第2位置情報または前記第2回転角情報を、現在の撮像領域の位置情報または回転角情報に更新可能である、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項21】
前記マニュアルモードにおいて、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第3位置情報および前記第3回転角情報を算出し前記記憶部に記憶させる請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記移動装置を制御することによって前記内視鏡を自律的に移動させる自律モードで動作可能であり、
前記第3位置情報および前記第3回転角情報を前記自律モード中に算出する請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項23】
内視鏡によって取得され表示装置に表示される内視鏡画像を制御する制御装置であって、
記憶部と、
少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記記憶部が、被検体内の第1領域の第1位置情報および第1回転角情報と、前記被検体内の前記第1領域とは異なる第2領域の第2位置情報および第2回転角情報と、を記憶し、前記第1回転角情報は、前記第1領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記第2回転角情報は、前記第2領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記被検体内の第3領域の第3位置情報と前記第1および第2位置情報との間の位置関係を算出し、
該位置関係、前記第1回転角情報および前記第2回転角情報に基づいて、前記第3領域の第3回転角情報を算出し、
前記第3領域は前記第1および第2領域とは異なる領域であり、
前記内視鏡によって現在撮像されている現在の撮像領域が前記第3領域に含まれる場合、前記第3回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させ、
回転された前記内視鏡画像を表示装置に出力する、制御装置。
【請求項24】
内視鏡によって取得され表示装置に表示される内視鏡画像を、被検体内の第1領域の第1位置情報および第1回転角情報と前記被検体内の前記第1領域とは異なる第2領域の第2位置情報および第2回転角情報とを用いて制御する制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムを記憶した、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体であって、
前記第1回転角情報は、前記第1領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記第2回転角情報は、前記第2領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、
前記制御方法が、
前記被検体内の第3領域の第3位置情報と前記第1および第2位置情報との間の位置関係を算出し、該位置関係、前記第1回転角情報および前記第2回転角情報に基づいて、前記第3領域の第3回転角情報を算出し、前記第3領域は前記第1および第2領域とは異なる領域である、工程と、
前記内視鏡によって現在撮像されている現在の撮像領域が前記第3領域に含まれる場合、前記第3回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させる工程と、
回転された前記内視鏡画像を表示装置に出力する工程と、を含む記録媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システム、制御装置、制御方法および記録媒体に関するものである。
本出願は、2020年9月10日にアメリカ合衆国に仮出願された米国特許仮出願第63/076,408号に基づいて優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動のホルダを制御することによって、ホルダに保持された内視鏡を移動させる内視鏡システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)
特許文献1の内視鏡システムは、手動モードにおいて操作者が内視鏡を移動させている間のホルダの各関節の回転角度の時系列変化を記憶し、自動復帰モードにおいて、各関節の回転角度の時系列変化を逆再生する。これにより、内視鏡は、手動モードにおける移動軌跡を逆方向に移動し、初期の位置および姿勢に自動的に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6161687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
術者が表示装置に表示される内視鏡画像を観察しながら患部の手術を行うとき、表示装置上の内視鏡画像の上下方向が重要である。内視鏡画像の上下方向は、内視鏡画像内の被写体の回転角を示し、別の表現では天地方向とも言う。内視鏡画像の上下方向に応じて臓器の配置および組織の見え方が異なる。したがって、術者が表示装置上の内視鏡画像内の臓器および組織を正確に認識することができるようにするために、適切な上下方向の内視鏡画像が表示装置に表示されること
が望ましい。
【0005】
しかし、体内での内視鏡の移動に伴って内視鏡画像の上下方向は変化する。さらに、術者にとって望ましい内視鏡画像の上下方向は観察位置や手技内容に応じて異なる。特許文献1の内視鏡システムは、手動モードにおける移動軌跡を再現するのみで、内視鏡の位置または観察位置に応じて内視鏡画像の上下方向を調整する機能を有しない。したがって、内視鏡画像の上下方向を調整するために、術者は、操作中の処置具から一旦手を放して処置を中断し、内視鏡を手動で操作して内視鏡の姿勢を調整する必要がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、内視鏡画像の上下方向を自動的に調整することができる内視鏡システム、制御装置、制御方法および記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、被検体(患者体腔内)内に挿入され該被検体内の内視鏡画像を取得する内視鏡と、該内視鏡を保持し該内視鏡を移動させる移動装置と、記憶部と、少なくとも1つのプロセッサを有する制御装置と、を備え、前記記憶部が、前記被検体内の第1領域の第1位置情報および第1回転角情報と、前記被検体内の前記第1領域とは異なる第2領域の第2位置情報および第2回転角情報と、を記憶し、前記第1回転角情報は、前記第1領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記第2回転角情報は、前記第2領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記被検体内の第3領域の第3位置情報と前記第1および第2位置情報との間の位置関係を算出し、該位置関係、前記第1回転角情報および前記第2回転角情報に基づいて、前記第3領域の第3回転角情報を算出し、前記第3領域は前記第1および第2領域とは異なる領域であり、前記内視鏡によって現在撮像されている現在の撮像領域が前記第3領域に含まれる場合、前記第3回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させ、回転された前記内視鏡画像を表示装置に出力する、内視鏡システムである。
【0008】
本発明の他の態様は、内視鏡によって取得され表示装置に表示される内視鏡画像を制御する制御装置であって、記憶部と、少なくとも1つのプロセッサと、を備え、前記記憶部が、被検体内の第1領域の第1位置情報および第1回転角情報と、前記被検体内の前記第1領域とは異なる第2領域の第2位置情報および第2回転角情報と、を記憶し、前記第1回転角情報は、前記第1領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記第2回転角情報は、前記第2領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記被検体内の第3領域の第3位置情報と前記第1および第2位置情報との間の位置関係を算出し、該位置関係、前記第1回転角情報および前記第2回転角情報に基づいて、前記第3領域の第3回転角情報を算出し、前記第3領域は前記第1および第2領域とは異なる領域であり、前記内視鏡によって現在撮像されている現在の撮像領域が前記第3領域に含まれる場合、前記第3回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させ、回転された前記内視鏡画像を表示装置に出力する、制御装置である。
【0009】
本発明の参考例としての発明の一参考態様は、内視鏡によって取得され表示装置に表示される内視鏡画像を、被検体内の第1領域の第1位置情報および第1回転角情報と前記被検体内の前記第1領域とは異なる第2領域の第2位置情報および第2回転角情報とを用いて制御する制御方法であって、前記第1回転角情報は、前記第1領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記第2回転角情報は、前記第2領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記被検体内の第3領域の第3回転角情報を前記第1位置情報、前記第1回転角情報、前記第2位置情報、前記第2回転角情報および前記第3領域の第3位置情報に基づいて算出し、前記第3領域は前記第1および第2領域とは異なる領域である、工程と、前記内視鏡によって現在撮像されている現在の撮像領域が前記第3領域に含まれる場合、前記第3回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させる工程と、回転された前記内視鏡画像を表示装置に出力する工程と、を含む制御方法である。
【0010】
本発明の他の態様は、内視鏡によって取得され表示装置に表示される内視鏡画像を、被検体内の第1領域の第1位置情報および第1回転角情報と前記被検体内の前記第1領域とは異なる第2領域の第2位置情報および第2回転角情報とを用いて制御する制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムを記録した、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体であって、前記第1回転角情報は、前記第1領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記第2回転角情報は、前記第2領域の前記内視鏡画像の回転角を規定する情報であり、前記制御方法が、前記被検体内の第3領域の第3位置情報と前記第1および第2位置情報との間の位置関係を算出し、該位置関係、前記第1回転角情報および前記第2回転角情報に基づいて、前記第3領域の第3回転角情報を算出し、前記第3領域は前記第1および第2領域とは異なる領域である、工程と、前記内視鏡によって現在撮像されている現在の撮像領域が前記第3領域に含まれる場合、前記第3回転角情報に基づいて前記内視鏡画像を回転させる工程と、回転された前記内視鏡画像を表示装置に出力する工程と、を含む記録媒体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検体内の観察位置に応じて適切な上下方向の内視鏡画像を操作者に提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】内視鏡システムの全体構成を示す外観図である。
図1B】腹腔内に挿入された内視鏡の移動を説明する図である。
図1C】ロボットアームの先端部と内視鏡とを示す図である
図2】内視鏡システムの全体構成を示すブロック図である。
図3A】第1実施形態に係る制御方法を示すシーケンス図であり、マニュアルモードにおけるユーザの操作とプロセッサの処理とを説明する図である。
図3B】第1実施形態に係る制御方法を示すフローチャートであり、自律モードにおけるプロセッサの処理を説明する図である。
図4A】第1位置情報および第1回転角情報を決定する工程における内視鏡の操作を説明する図である。
図4B】第2位置情報および第2回転角情報を決定する工程における内視鏡の操作を説明する図である。
図5A】O点における内視鏡画像を示す図である。
図5B】B点における内視鏡画像を示す図である。
図5C】回転によって上下方向が調整された図5Bの内視鏡画像を示す図である。
図6A】A点における内視鏡画像を示す図である。
図6B】回転によって上下方向が調整された図6Aの内視鏡画像を示す図である。
図7】マニュアルモードにおいて記憶部に記憶される位置情報および回転角情報を示す図である。
図8A】第2実施形態に係る制御方法を示すシーケンス図であり、マニュアルモードにおけるユーザの操作とプロセッサの処理とを説明する図である。
図8B】第2実施形態に係る制御方法を示すフローチャートであり、自律モードにおけるプロセッサの処理を説明する図である。
図9】第3実施形態に係る制御方法を示すフローチャートであり、自律モードにおけるプロセッサの処理を説明する図である。
図10】第1変形例の斜視型内視鏡を示す図である。
図11A】第1変形例に係る制御方法を示すシーケンス図であり、マニュアルモードにおけるユーザの操作とプロセッサの処理とを説明する図である。
図11B】第1変形例に係る制御方法を示すフローチャートであり、自律モードにおけるプロセッサの処理を説明する図である。
図12】第2変形例の湾曲部を有する内視鏡を示す図である。
図13A】他の変形例に係る制御方法を示すシーケンス図であり、マニュアルモードにおけるユーザの操作とプロセッサの処理とを説明する図である。
図13B】他の変形例に係る制御方法を示すフローチャートであり、自律モードにおけるプロセッサの処理を説明する図である。
図14A図1Aの内視鏡システムの一変形例の全体構成を示す外観図である。
図14B図1Aの内視鏡システムの他の変形例の全体構成を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る内視鏡システム、制御装置、制御方法および記録媒体について図面を参照して説明する。
図1Aに示されるように、本実施形態に係る内視鏡システム10は、内視鏡2および1以上の処置具6を被検体である患者Xの体内に挿入し、処置具6を内視鏡2によって観察しながら処置具6で処置部位を処置する手術に使用され、例えば、腹腔鏡下手術に使用される。
【0014】
図1Bに示されるように、内視鏡2は、体壁に形成された穴Hを経由して被検体内、例えば腹腔内に挿入される。これにより、内視鏡2は、被検体に対して固定されピボット点である穴Hの位置において体壁によって支持され、ピボット点Hを通るピボット軸(第1ピボット軸)P1回りに揺動可能である。図1Aおよび図1Bに示される腹腔鏡下手術において、ピボット軸P1は、腹側から背側へ向かう患者Xの前後方向に延びている。ピボット軸P1回りの内視鏡2の揺動によって、内視鏡2によって撮像される撮像領域は、大動脈Fを含む第1領域と骨盤Gを含む第2領域との間で移動することができる。
内視鏡2および処置具6は、穴Hを貫通するトロッカ内を経由して被検体内に挿入されてもよい。トロッカは、両端において開口する筒状の器具である。この場合、内視鏡2は、穴Hの位置においてトロッカによって支持される。
【0015】
図1Aおよび図2に示されるように、内視鏡システム10は、内視鏡2と、内視鏡2を保持し内視鏡2を被検体内で移動させる移動装置3と、内視鏡2と接続され内視鏡2によって撮像された内視鏡画像Eを処理する内視鏡プロセッサ4と、移動装置3および内視鏡プロセッサ4と接続され移動装置3を制御する制御装置1と、内視鏡プロセッサ4と接続され内視鏡画像Eを表示する表示装置5とを備える。
【0016】
内視鏡2は、内視鏡2の長手軸Iと同軸の視軸(光軸)Cを有する直視型内視鏡であり、例えば硬性鏡である。内視鏡2は、撮像素子2aを有し、被検体X内、例えば腹腔内を撮像し、処置具6の先端を含む内視鏡画像E(図5Aから図6B参照。)を取得する。撮像素子2aは、例えば内視鏡2の先端部に設けられた3次元カメラであり、ステレオ画像を内視鏡画像Eとして撮像する。撮像素子2aは、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどのイメージセンサであり、所定領域から受光した光を光電変換により電気信号に変換することで、所定領域の画像を生成する。内視鏡画像Eであるステレオ画像は、視差を有する2つの画像を内視鏡プロセッサ4等によって画像処理することで生成される。この場合、内視鏡2の先端部は、ステレオ光学系を有する。
【0017】
内視鏡画像Eは、内視鏡2から内視鏡プロセッサ4に送信され、内視鏡プロセッサ4において必要な処理が施され、内視鏡プロセッサ4から表示装置5に送信され、表示装置5の表示画面5aに表示される。表示装置5は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の任意のディスプレイである。術者は、表示画面5aに表示される内視鏡画像Eを観察しながら体内に挿入された処置具6を操作する。表示装置5は、スピーカ等の音声装置を備えていてもよい。
表示装置5以外に、ユーザによって使用され制御装置1および内視鏡プロセッサ4と通信ネットワークを通じて通信する端末が設けられ、端末に内視鏡画像Eが表示されてもよい。端末は、特に限定しないが、ノート型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータまたはスマートフォンなどである。
【0018】
移動装置3は、内視鏡2を保持し内視鏡2の位置および姿勢を3次元的に制御するロボットアーム3a(電動スコープホルダを含む)を備える。移動装置3は、複数の関節3b,3cを有し、複数の関節3b,3cの動作によって、ピボット軸P1を支点として内視鏡2を移動させ内視鏡2の位置および姿勢を3次元的に変更することができる。
【0019】
図1Cに示されるように、関節3cは、内視鏡2を長手軸I回りに回転させる回転関節であり、例えばロボットアーム3aの先端部に設けられている。関節3cの回転によって内視鏡2が長手軸Iと同軸の光軸C回りに回転し、それにより、内視鏡画像E内の被写体の回転角、すなわち、内視鏡画像Eの上下方向が変化する。
移動装置3は、複数の関節3b,3cの各々の回転角度を検出する複数の角度センサ3dを備える。角度センサ3dは、例えば、各関節3b,3cに設けられたエンコーダ、ポテンショメータまたはホールセンサなどである。
【0020】
図2に示されるように、制御装置1は、中央演算処理装置のような少なくとも1つのプロセッサ11と、メモリ12と、記憶部13と、入力インタフェース14と、出力インタフェース15と、ユーザインタフェース16とを備える。制御装置1は、例えば、デスクトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、スマートフォンまたは携帯電話などでよい。
【0021】
プロセッサ11は、シングルプロセッサ、マルチプロセッサまたはマルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサ11は、記憶部13に格納されているプログラムを読み出して実行する。
メモリ12は、例えば、ROM(read-only memory)、または、RAM(Random Access Memory)領域を含む半導体メモリである。メモリ12も、後述する記憶部13と同様に、プロセッサ11の処理に必要なデータを記憶してもよい(すなわち、「記憶部」として動作してもよい。)。
【0022】
記憶部13は、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体であり、例えば、ハードディスクまたはフラッシュメモリ等の半導体メモリを含む不揮発性の記録媒体である。記憶部13は、追従制御プログラム(図示略)および画像制御プログラム(制御プログラム)1aを含む各種のプログラムと、プロセッサ11の処理に必要なデータとを記憶している。プロセッサ11が実行する後述の処理の一部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、およびPLD(Programmable Logic Device)など専用の論理回路やハードウェア等によって実現されてもよい。
【0023】
記憶部13は、制御装置1に内蔵された記録媒体に代えて、通信インタフェースを備えた制御装置1と通信ネットワークを経由して接続された、クラウドサーバのようなサーバであってもよい。通信ネットワークは、例えば、インターネットなどの公衆回線、専用回線、または、LAN(Local Area Network)であってもよい。各種装置の接続は、有線接続および無線接続のいずれであってもよい。
【0024】
なお、内視鏡画像Eを処理する内視鏡プロセッサ4が、プロセッサ11を備えることとしてもよい。すなわち、制御装置1に含まれるプロセッサ11と同様に、内視鏡プロセッサ4が、プロセッサや専用の論理回路またはハードウェアを備え、プロセッサ11と同様に後述の処理を行うこととしてもよい。内視鏡プロセッサ4と制御装置1は、一体であってもよい。内視鏡プロセッサ4と制御装置1に、それぞれ1つ以上のプロセッサが設けられていてもよい。
制御装置1が備える上記少なくとも1つのプロセッサ11、メモリ12、記憶部13、入力インタフェース14、出力インタフェース15およびユーザインタフェース16のいずれかの構成は、内視鏡プロセッサ4および制御装置1とは別に、ユーザが使用する端末にさらに備えられていてもよい。また、制御装置1は、移動装置3と一体であってもよい。
【0025】
入力インタフェース14および出力インタフェース15は内視鏡プロセッサ4と接続されている。制御装置1は、内視鏡2から内視鏡プロセッサ4を経由して内視鏡画像Eを取得することができ、内視鏡画像Eを内視鏡プロセッサ4を経由して表示装置5に出力することができる。制御装置1が内視鏡2から内視鏡画像Eを直接取得し、内視鏡画像Eを表示装置5に直接出力することができるように、入力インタフェース14は内視鏡2と直接接続され、出力インタフェース15は表示装置5と直接接続されていてもよい。
また、入力インタフェース14および出力インタフェース15は移動装置3と接続されている。制御装置1は、角度センサ3dによって検出された関節3b,3cの回転角度の情報を移動装置3から取得し、関節3b,3cを駆動させるための制御信号を移動装置3に送信する。
【0026】
ユーザインタフェース16は、術者等のユーザがユーザインタフェース16に入力を行うための、ボタン、マウス、キーボードおよびタッチパネル等の入力デバイスを有し、ユーザからの入力を受け付ける。
また、ユーザインタフェース16は、ユーザが後述のマニュアルモードと自律モードとを切り替えるための手段、例えばスイッチを有する。
また、ユーザインタフェース16は、ユーザの第1指示および第2指示を受け付けることができるように構成されている。第1指示および第2指示は、後述する位置情報および回転角情報の登録を制御装置1に実行させるための指示である。例えば、ユーザインタフェース16は、操作者によって操作されるボタンを有し、ボタンが1回目に操作されることによって第1指示を受け付け、ボタンが2回目に操作されることによって第2指示を受け付ける。
【0027】
プロセッサ11は、マニュアルモードおよび自律モードのいずれかで動作可能である。
マニュアルモードは、術者等のユーザによる内視鏡2の操作を許可するモードである。マニュアルモードにおいて、術者は、内視鏡2の基端部を手で把持し、内視鏡2を手動で移動させることができる。または、術者は、移動装置3と接続された操作装置を使用して内視鏡2を遠隔操作することができる。操作装置は、ボタン、ジョイスティックおよびタッチパネルなどを含むことができる。
【0028】
自律モードは、内視鏡画像E内に映った処置具6の位置に基づいて移動装置3を制御することによって、内視鏡2を処置具6に自動的に追従させるモードである。自律モードにおいて、プロセッサ11は、処置具6の先端の3次元位置を内視鏡画像Eから取得し、処置具6の先端の3次元位置と内視鏡2の視野内に設定された所定の目標点の3次元位置とに基づいて移動装置3を制御する。目標点は、例えば、内視鏡画像Eの中心点と対応する光軸C上の点である。これにより、制御装置1は、内視鏡2の移動を制御し、処置具6の先端が内視鏡画像E内の中心点に配置されるように処置具6に内視鏡2を追従させる。
【0029】
さらに、自律モードにおいて、プロセッサ11は、メモリ12に読み込まれた画像制御プログラム1aに従って図3Aおよび図3Bに示される制御方法を実行することによって、表示画面5aに表示される内視鏡画像Eの回転角を制御する。
【0030】
次に、プロセッサ11が実行する制御方法について説明する。
図3Aおよび図3Bに示されるように、本実施形態に係る制御方法は、内視鏡2の初期位置を設定する工程SB2と、被検体内の第1領域の第1位置情報および第1回転角情報を決定する工程SB3,SB4と、被検体内の第2領域の第2位置情報および第2回転角情報を決定する工程SB5,SB6と、被検体内の第3領域の第3位置情報および第3回転角情報を算出する工程SB7,SB8と、位置情報および回転角情報を記憶部13に記憶させる工程SB9と、内視鏡2によって現在撮像されている現在の撮像領域に応じて内視鏡画像Eを回転させる工程SC4~SC9と、回転された内視鏡画像Eを表示装置5に出力する工程SC10と、を含む。
図3Aに示されるように、工程SB2~SB9はマニュアルモードにおいて実行され、図3Bに示されるように、工程SC3~SC10は自律モードにおいて実行される。
【0031】
術者等のユーザは、移動装置3に保持された内視鏡2を腹腔内に挿入した後、マニュアルモードに切り替え(SA1,SB1)、内視鏡2を腹腔内で移動させることによって見回しを開始する(SA3)。見回しは、腹腔内の全体を観察し、臓器および組織の位置等を確認する作業である。患者毎に臓器および組織の位置が異なるため、挿入毎にこの作業は必要となる。見回しにおいて、術者は、ピボット軸P1回りに内視鏡2を回転させることによって、解剖学的に特徴を有する少なくとも2つの特定組織を含む範囲を内視鏡2によって観察する。本実施形態において、特定組織は、大動脈Fおよび骨盤Gである。
【0032】
図3Aに示されるように、見回しの前に、術者は、内視鏡2の初期位置を制御装置1に登録する(SA2)。例えば、術者は、内視鏡2を所望の初期位置に配置し、ユーザインタフェース16の所定のボタンを操作する。プロセッサ11は、所定のボタンが操作されたことに応答し、内視鏡2の現在の位置φを算出し、現在の位置φを初期位置φ=0°として記憶部13に記憶する(SB2)。位置φは、内視鏡2の、ピボット軸P1回りの周方向の位置であり、角度センサ3dによって検出される関節3b,3cの回転角度から算出される。位置φは、撮像領域の、ピボット軸P1回りの周方向の位置を表す。
【0033】
次に、図4Aおよび図5Aに示されるように、術者は、大動脈Fを正面から撮像する位置(O点)に内視鏡2を配置し、大動脈Fが内視鏡画像E内の所望の回転角に配置されるように光軸C回りの内視鏡2の回転角ωを調整する(SA4)。ここでの大動脈Fの回転角は、内視鏡画像Eの中心点回りの周方向の位置である。本実施形態において、図5Aに示されるように、大動脈Fが内視鏡画像E内において水平に配置されるように回転角ωが調整される。次に、術者は、ユーザインタフェース16に第1指示を入力する(SA5)。
【0034】
第1指示の入力後、術者は、O点において調整された回転角ωを維持しながら内視鏡2をO点からピボット軸P1回りに回転させることによって、大動脈Fの全体を内視鏡2によって観察する。図5Aおよび図5Bに示されるように、内視鏡2がO点からB点に向かって回転するにつれて、内視鏡画像E内で大動脈Fが回転移動する。B点は、内視鏡画像E内に大動脈Fが観察される範囲の端点である。
【0035】
ユーザインタフェース16が第1指示を受け付けたことに応答し、プロセッサ11は、内視鏡画像Eに基づいて大動脈(第1特定組織)Fを含む第1領域の第1位置情報および第1回転角情報を決定する(SB3,SB4)。第1回転角情報は、第1領域の内視鏡画像Eの回転角を規定する情報である。
【0036】
具体的には、記憶部13には、特定組織を含む画像と特定組織の種類との対応関係を機械学習した学習済みモデル1bが記憶されている。工程SB3において、プロセッサ11は、学習済みモデル1bを使用して内視鏡画像E内の大動脈Fを認識し、大動脈Fが内視鏡画像E内に含まれる内視鏡2の位置φの範囲を第1位置情報として決定する。すなわち、第1領域は、O点とB点との間の領域である。
例えば、第1位置情報はφ=0°~20°である。このように、工程SA2,SB2による初期位置の設定に代えて、プロセッサ11は、第1指示が受け付けられた時点での内視鏡2の位置φを、初期位置φ=0°に設定してもよい。すなわち、ユーザの所望のタイミングおよび場所で初期位置が決定される。
また、プロセッサ11は、学習済みモデル1bによる処理を経ずに、第1指示が受け付けられた時点での内視鏡2の位置φを、第1位置情報として設定してもよい。すなわち、ユーザの所望のタイミングおよび場所で第1位置情報が決定される。
【0037】
次に、工程SB4において、プロセッサ11は、ユーザインタフェース16が第1指示を受け付けた時点での内視鏡画像Eおよび内視鏡2の回転角ωを、第1基準内視鏡画像および第1基準回転角にそれぞれ設定し、第1基準内視鏡画像および第1基準回転角に基づいて第1回転角情報を決定する。
具体的には、プロセッサ11は、所定の初期回転角ω=0°に対する第1基準回転角を、第1指示を受け付けた時点の位置φでの内視鏡画像Eの目標回転角θtとして算出する。算出された目標回転角θtは、第1指示を受け付けた時点の位置φにおいて、大動脈Fを内視鏡画像E内において水平に配置するのに必要な内視鏡画像Eの回転量を表す。本実施形態において、第1基準回転角ωを初期回転角0°に設定している。
【0038】
次に、プロセッサ11は、第1位置情報に含まれる他の位置φにおいて取得された内視鏡画像Eについて、内視鏡画像E内の大動脈Fを第1基準内視鏡画像内の大動脈Fに一致させるために必要な内視鏡画像Eの回転量Δθを算出する。次に、プロセッサ11は、回転量Δθを第1基準回転角に加算することによって、他の位置φでの目標回転角θtを算出する。算出された目標回転角θtは、他の位置φにおいて、大動脈Fを内視鏡画像E内において水平に配置するのに必要な内視鏡画像Eの回転量を表す。図5Cは、B点での目標角度θtだけ回転された図5Bの内視鏡画像Eを示す。
【0039】
以上のようにして、プロセッサ11は、第1位置情報に含まれる各位置φ=0°,…,20°において大動脈Fを水平に配置するための内視鏡画像Eの目標回転角θtを算出し、各位置φ=0°,…,20°での目標回転角θtを第1回転角情報として決定する。図7には、第1回転角情報として、φ=0°,20°における目標回転角θt=0°,-10°のみが代表して記載されている。
【0040】
次に、図4Bに示されるように、術者は、骨盤Gを撮像する位置(D点)に内視鏡2を配置する。初期回転角ω=0°で骨盤Gを観察した場合、図6Aに示されるように、骨盤Gが内視鏡画像E内において不適切な位置に配置され得る。術者は、骨盤Gが内視鏡画像E内の所望の回転角に配置されるように内視鏡2の光軸C回りの回転角ωを調整し(SA6)、ユーザインタフェース16に第2指示を入力する(SA7)。本実施形態において、図6Bに示されるように、骨盤Gが内視鏡画像E内において上方に配置されるように回転角ωが調整される。
【0041】
第2指示の入力後、術者は、D点において調整された回転角ωを維持しながら内視鏡2をD点からピボット軸P1回りに回転させることによって、骨盤Gの全体を内視鏡2によって観察する。このときも、内視鏡2がD点からA点に向かって回転するにつれて、内視鏡画像E内で骨盤Gが回転移動する。A点は、内視鏡画像E内に骨盤Gが観察される範囲の端点である。
【0042】
ユーザインタフェース16が第2指示を受け付けたことに応答し、プロセッサ11は、内視鏡画像Eに基づいて骨盤(第2特定組織)Gを含む第2領域の第2位置情報および第2回転角情報を決定する(SB5,SB6)。第2回転角情報は、第2領域の内視鏡画像Eの回転角を規定する情報である。
【0043】
具体的には、工程SB5において、プロセッサ11は、学習済みモデル1bを使用して内視鏡画像E内の骨盤Gを認識し、骨盤Gが内視鏡画像E内に含まれる内視鏡2の位置φの範囲を第2位置情報として決定する。すなわち、第2領域は、D点とA点との間の領域である。例えば、第2位置情報はφ=70°~90°である。
なお、第2位置情報に関しても、プロセッサ11は、学習済みモデル1bによる処理を経ずに、第2指示が受け付けられた時点での内視鏡2の位置φを、第2位置情報として設定してもよい。すなわち、ユーザの所望のタイミングおよび場所で第2位置情報が決定される。
【0044】
次に、工程SB6において、プロセッサ11は、ユーザインタフェース16が第2指示を受け付けた時点での内視鏡画像Eおよび内視鏡2の回転角ωを、第2基準内視鏡画像および第2基準回転角にそれぞれ設定し、第2基準内視鏡画像および第2基準回転角に基づいて第2回転角情報を決定する。
具体的には、プロセッサ11は、初期回転角ω=0°に対する第2基準回転角を、第2指示を受け付けた時点の位置φでの内視鏡画像Eの目標回転角θtとして算出する。算出された目標回転角θtは、第2指示を受け付けた時点の位置φにおいて、骨盤Gを内視鏡画像E内において上方に配置するのに必要な内視鏡画像Eの回転量を表す。
【0045】
次に、プロセッサ11は、第2位置情報に含まれる他の位置φにおいて取得された内視鏡画像Eについて、内視鏡画像E内の骨盤Gを第2基準内視鏡画像内の骨盤Gに一致させるために必要な内視鏡画像Eの回転量Δθを算出する。次に、プロセッサ11は、回転量Δθを第2基準回転角に加算することによって、他の位置φでの目標回転角θtを算出する。算出された目標回転角θtは、他の位置φにおいて、骨盤Gを内視鏡画像E内において上方に配置するのに必要な内視鏡画像Eの回転量を表す。
【0046】
以上のようにして、プロセッサ11は、第2位置情報に含まれる各位置φ=70°,…,90°において骨盤Gを上方に配置するための内視鏡画像Eの目標回転角θtを算出し、各位置φ=70°,…,90°での目標回転角θtを第2回転角情報として決定する。図7には、第2回転角情報として、φ=70°,90°における目標回転角θt=100°,90°のみが代表して記載されている。
【0047】
次に、プロセッサ11は、第3領域の第3位置情報および第3回転角情報を、第1位置情報、第1回転角情報、第2位置情報および第2回転角情報に基づいて算出する(SB7,SB8)。第3領域は、第1領域および第2領域とは異なる領域であり、本実施形態において、A点とB点との間の領域である。
工程SB7において、プロセッサ11は、第1位置情報と第2位置情報との間の位置φの範囲を第3位置情報として決定する。例えば、第3位置情報はφ=20°~70°である。
【0048】
次に、工程SB8において、プロセッサ11は、第1、第2、第3位置情報および第1、第2回転角情報に基づいて第3回転角情報を算出する。第3回転角情報は、第3領域の内視鏡画像Eの回転角を規定する情報である。
具体的には、プロセッサ11は、第3位置情報と第1および第2位置情報との間の位置関係を算出し、位置関係、第1回転角情報および第2回転角情報に基づいて第3回転角情報を算出する。
【0049】
一例として、第3位置情報の各位置φ(M点)がA点とB点との間の軌跡をm:nに内分する内分点であると考える。プロセッサ11は、比m:n、A点の回転角100°およびB点の回転角-10°に基づいて、各位置φでの目標回転角θtを算出する。例えば、位置φ=45°は、A点とB点との間の軌跡を1:1に内分するので、位置φ=45°での目標回転角θtは、-10°と100°との間の中央値である45°である。
【0050】
これにより、位置φがB点からA点に向かって変化するにつれて、100°から-10°に向かって漸次変化する目標回転角θtが算出される。
プロセッサ11は、各位置φ=20°,…,70°での目標回転角θtを第3回転角情報として決定する。図7には、第3回転角情報として、φ=45°における目標回転角θt=45°のみが代表して記載されている。
【0051】
すなわち、第3領域は、第1領域および第2領域における骨盤Gや大動脈Fのように、内視鏡画像Eの回転角の指標となる特定組織が内視鏡画像内に映らない領域である。このような領域では、学習済みモデル1bによる特定組織の認識およびユーザによる所望の回転角の決定が困難である。そのため、第1領域および第2領域の第1および第2位置情報ならびに第1および第2回転角情報に基づいた第3位置情報および第3回転角情報の算出が必要となる。
【0052】
次に、工程SB9において、プロセッサ11は、工程SB3~SB8において決定された第1位置情報、第1回転角情報、第2位置情報、第2回転角情報、第3位置情報および第3回転角情報を、記憶部13に記憶させる。これにより、図7に示されるように、撮像領域の位置を表す内視鏡2の回転角度φと、各回転角度φにおける内視鏡画像Eの目標回転角θtとを含むデータが記憶部13に生成される。
【0053】
見回しが終了した後、術者は、マニュアルモードから自律モードへ切り替え、大動脈Fおよび骨盤Gを処置具6によって処置する。図3Bに示されるように、術者によって自律モードに切り替えられると(SC2)、プロセッサ11は、回転関節3cを回転させることによって内視鏡2の回転角ωを初期回転角0°に一致させ、回転角ωを0°に維持しながら、移動装置3を制御することによって処置具6の先端に内視鏡2を追従させる(SC3)。また、プロセッサ11は、内視鏡2の追従と並行して、表示画面5aに表示される内視鏡画像Eの上下方向を制御する(SC4~SC10)。
【0054】
プロセッサ11は、装置1,3の起動中、関節3b,3cの回転角度を移動装置3から逐次受信し、関節3b,3cの回転角度から内視鏡2の現在位置φを算出する(SC1)。
プロセッサ11は、内視鏡2の現在位置、第1位置情報および第2位置情報に基づいて、現在の撮像領域が第1領域、第2領域および第3領域のいずれに含まれるかを判定する(SC4,SC6,SC8)。
【0055】
具体的には、現在位置φが第1位置情報(φ=0°~20°)に含まれる場合、プロセッサ11は、現在の撮像領域が第1領域に含まれると判定する(SC4のYES)。次に、プロセッサ11は、記憶部13に記憶されている第1回転角情報に基づいて、内視鏡画像Eを該内視鏡画像Eの平面内において回転させる(SC5)。具体的には、プロセッサ11は、現在位置φの目標回転角θtを記憶部13から読み出し、目標回転角θtだけ内視鏡画像Eを画像処理によって回転させる。次に、プロセッサ11は、回転された内視鏡画像Eを制御装置1から表示装置5に出力し表示画面5aに表示させる(SC10)。
【0056】
回転された内視鏡画像Eにおいて、大動脈Fは水平に配置される。したがって、内視鏡2がφ=0°~20°の範囲内を移動し大動脈Fを含む内視鏡画像Eを取得している間、表示画面5aに表示される内視鏡画像E内の大動脈Fは水平に維持される。例えば、O点からB点まで内視鏡2がピボット軸P1回りに20°揺動した場合、内視鏡画像Eは0°から-10°まで回転する。
【0057】
現在位置φが第2位置情報(φ=70°~90°)に含まれる場合、プロセッサ11は、現在の撮像領域が第2領域に含まれると判定する(SC4のNOかつSC6のYES)。次に、プロセッサ11は、記憶部13に記憶されている第2回転角情報に基づいて、内視鏡画像Eを該内視鏡画像Eの平面内において回転させる(SC7)。具体的には、プロセッサ11は、現在位置φの目標回転角θtを記憶部13から読み出し、目標回転角θtだけ画像処理によって内視鏡画像Eを回転させる。次に、プロセッサ11は、回転された内視鏡画像Eを制御装置1から表示装置5に出力し表示画面5aに表示させる(SC10)。
【0058】
回転された内視鏡画像Eにおいて、骨盤Gは上方に配置される。したがって、内視鏡2がφ=70°~90°の範囲内を移動し骨盤Gを含む内視鏡画像Eを取得している間、表示画面5aに表示される内視鏡画像E内の骨盤Gは上方に維持される。例えば、A点からD点まで内視鏡2がピボット軸P1回りに20°揺動した場合、内視鏡画像Eは100°から90°まで回転する。
【0059】
現在位置φが第1位置情報および第2位置情報のいずれにも含まれない場合(SC4のNOかつSC6のNO)、プロセッサ11は、現在の撮像領域が第3領域に含まれると判定する(SC8)。次に、プロセッサ11は、記憶部13に記憶されている第3回転角情報に基づいて、内視鏡画像Eを該内視鏡画像Eの平面内において回転させる(SC9)。具体的には、プロセッサ11は、現在位置φの回転角を記憶部13から読み出し、回転角だけ内視鏡画像Eを画像処理によって回転させる。次に、プロセッサ11は、回転された内視鏡画像Eを制御装置1から表示装置5に出力し表示画面5aに表示させる(SC10)。
【0060】
表示画面5aに表示される内視鏡画像Eは、位置φに応じた目標回転角θtだけ回転されており、位置φが第1領域側から第2領域側へ変化するにつれて、目標回転角θtが第1領域の目標回転角から第2領域の目標回転角へ向かって次第に変化する。したがって、例えば、内視鏡2がB点からA点までピボット軸P1回りに揺動した場合、表示画面5aに表示される内視鏡画像Eは-10°から100°まで一方向に回転する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、特定組織Fを含む第1領域の第1位置情報と、特定組織Fを術者が所望する回転角に配置するための内視鏡画像Eの目標回転角θtを規定する第1回転角情報とが、記憶部13に記憶される。また、特定組織Gを含む第2領域の第2位置情報と、特定組織Gを術者が所望する回転角に配置するための内視鏡画像Eの目標回転角θtを規定する第2回転角情報とが、記憶部13に記憶される。さらに、第1領域と第2領域との間の第3領域の第3回転角情報として、第1回転角情報の目標回転角θtと第2回転角情報の目標回転角θtとの間で漸次変化する目標回転角θtが補間され、記憶部13に記憶される。
【0062】
その後、自律モードにおいて、現在の撮像領域の位置φに応じた目標回転角θtだけ内視鏡画像Eが回転されることによって、内視鏡画像Eの上下方向が自動的に調整される。具体的には、現在の撮像領域が特定組織F,Gを含む第1または第2領域であるときには、特定組織F,Gが所定の回転角で配置される目標回転角θtだけ内視鏡画像Eが自動的に回転させられる。現在の撮像領域が特定組織F,Gを含まない第3領域であるときには、第1および第2回転角情報から推定される適切な目標回転角θtだけ内視鏡画像Eが自動的に回転させられる。
【0063】
このように、腹腔内の現在の撮像領域の位置に応じた適切な上下方向の内視鏡画像Eを操作者に提供することができる。
また、内視鏡画像Eの上下方向が自動的に調整されることによって、術者のストレスを軽減することができるとともに、処置時間を短縮することができる。すなわち、内視鏡画像Eの上下方向を術者が自身で調整する場合、術者は、操作中の処置具6から手を一旦放し、内視鏡2を手動で回転させなければならない。本実施形態によれば、上下方向の調整のために術者が内視鏡2を操作する必要が無いので、術者は、処置を中断することなく継続することができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る内視鏡システム、制御装置、制御方法および記録媒体について図面を参照して説明する。
本実施形態は、プロセッサ11が、画像処理に代えて内視鏡2の回転によって内視鏡画像Eを回転させる点において、第1実施形態と相違する。本実施形態においては、第1実施形態と相違する構成について説明し、第1実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施形態に係る内視鏡システム10は、第1実施形態と同様、制御装置1、内視鏡2、移動装置3、内視鏡プロセッサ4および表示装置5を備える。
図8Aおよび図8Bは、本実施形態においてプロセッサ11が実行する制御方法を示している。
【0066】
図8Aおよび図8Bに示されるように、本実施形態に係る制御方法は、内視鏡2の初期位置を決定する工程SB2と、被検体内の第1領域の第1位置情報および第1回転角情報を決定する工程SB3,SB4’と、被検体内の第2領域の第2位置情報および第2回転角情報を決定する工程SB5,SB6’と、被検体内の第3領域の第3位置情報および第3回転角情報を算出する工程SB7,SB8’と、位置情報および回転角情報を記憶部13に記憶させる工程SB9と、内視鏡2によって現在撮像されている現在の撮像領域に応じて内視鏡画像Eを回転させる工程SC4~SC9’と、回転した内視鏡画像Eを表示装置5に出力する工程SC10と、を含む。
図8Aに示されるように、工程SB2~SB9はマニュアルモードにおいて実行され、図8Bに示されるように、工程SC4~SC10は自律モードにおいて実行される。
【0067】
第1実施形態と同様、ユーザは、工程SA1~SA5を行う。ユーザインタフェース16が第1指示を受け付けたことに応答し、プロセッサ11は、内視鏡画像Eに基づいて第1領域の第1位置情報および第1回転角情報を決定する(SB3,SB4’)。
具体的には、工程SB3の次の工程SB4’において、プロセッサ11は、ユーザインタフェース16が第1指示を受け付けた時点での内視鏡画像Eおよび内視鏡2の回転角ωを、第1基準内視鏡画像および第1基準回転角にそれぞれ設定する。
【0068】
次に、プロセッサ11は、所定の初期回転角ω=0°に対する第1基準回転角を、第1指示を受け付けた時点の位置φでの内視鏡2の目標回転角ωtとして算出する。
次に、プロセッサ11は、第1位置情報に含まれる他の位置φにおいて取得された内視鏡画像Eについて、内視鏡画像E内の大動脈Fを第1基準内視鏡画像内の大動脈Fに一致させるために必要な内視鏡画像Eの回転量Δθを算出する。次に、プロセッサ11は、回転量Δθを第1基準回転角に加算することによって、他の位置φでの内視鏡2の目標回転角ωtを算出する。
以上のようにして、プロセッサ11は、第1位置情報に含まれる各位置φ=0°,…,20°において大動脈Fを水平に配置するための内視鏡2の目標回転角ωtを算出し、各位置φ=0°,…,20°での目標回転角ωtを第1回転角情報として決定する。
【0069】
次に、ユーザは、工程SA6,SA7を行う。ユーザインタフェース16が第2指示を受け付けたことに応答し、プロセッサ11は、内視鏡画像Eに基づいて第2領域の第2位置情報および第2回転角情報を決定する(SB5,SB6’)。
具体的には、工程SB5の次の工程SB6’において、プロセッサ11は、ユーザインタフェース16が第2指示を受け付けた時点での内視鏡画像Eおよび内視鏡2の回転角ωを、第2基準内視鏡画像および第2基準回転角にそれぞれ設定する。
【0070】
次に、プロセッサ11は、初期回転角ω=0°に対する第2基準回転角を、第2指示を受け付けた時点の位置φでの内視鏡2の目標回転角ωtとして算出する。
次に、プロセッサ11は、第2位置情報に含まれる他の位置φにおいて取得された内視鏡画像Eについて、内視鏡画像E内の骨盤Gを第2基準内視鏡画像内の大動脈Gに一致させるために必要な内視鏡画像Eの回転量Δθを算出する。次に、プロセッサ11は、回転量Δθを第2基準回転角に加算することによって、他の位置φでの内視鏡2の目標回転角ωtを算出する。
以上のようにして、プロセッサ11は、第2位置情報に含まれる各位置φ=70°,…,90°において骨盤Gを上方に配置するための内視鏡2の目標回転角ωtを算出し、各位置φ=70°,…,90°での目標回転角ωtを第2回転角情報として決定する。
【0071】
次に、プロセッサ11は、第3領域の第3位置情報および第3回転角情報を、第1位置情報、第1回転角情報、第2位置情報および第2回転角情報に基づいて算出する(SB7,SB8’)。具体的には、工程SB7の次の工程SB8’において、プロセッサ11は、工程SB8’と同様にして、第3位置情報の各位置φ=20°,…,70°での目標回転角ωtを第3回転角情報として決定する。
【0072】
次に、工程SB9において、プロセッサ11は、工程SB3,SB4’,SB5,SB6’,SB7,SB8’において決定された位置情報および回転角情報を、記憶部13に記憶させる。これにより、撮像領域の位置を表す内視鏡2の回転角度φと、各回転角度φにおける内視鏡2の目標回転角ωtとを含むデータが記憶部13に生成される。
【0073】
続いて、図8Bに示されるように、プロセッサ11は、内視鏡2の現在位置φを算出する(SC1)。自律モードに切り替えられると(SC2のYES)、プロセッサ11は、現在の撮像領域が第1領域、第2領域および第3領域のいずれに含まれるかを判定する(SC4,SC6,SC8)。
【0074】
現在の撮像領域が第1領域に含まれると判定した場合(SC4のYES)、プロセッサ11は、記憶部13に記憶されている第1回転角情報に基づいて内視鏡2を回転させる(SC5’)。具体的には、プロセッサ11は、現在位置φの目標回転角ωtを記憶部13から読み出し、目標回転角ωtに内視鏡2を回転させることによって内視鏡画像Eを回転させる。
【0075】
現在の撮像領域が第2領域に含まれると判定した場合(SC4のNOかつSC6のYES)、プロセッサ11は、記憶部13に記憶されている第2回転角情報に基づいて内視鏡2を回転させる(SC7’)。具体的には、プロセッサ11は、現在位置φの目標回転角ωtを記憶部13から読み出し、目標回転角ωtだけ内視鏡2を回転させることによって内視鏡画像Eを回転させる。
【0076】
現在の撮像領域が第3領域に含まれると判定した場合(SC7)、プロセッサ11は、記憶部13に記憶されている第3回転角情報に基づいて内視鏡2を回転させる(SC8’)。具体的には、プロセッサ11は、現在位置φの目標回転角ωtを記憶部13から読み出し、目標回転角ωtだけ内視鏡2を回転させることによって内視鏡画像Eを回転させる。
工程SC5’、SC7’またはSC9’の次に、プロセッサ11は、回転された内視鏡画像Eを制御装置1から表示装置5に出力し表示画面5aに表示させる(SC10)。
【0077】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様、自律モードにおいて、現在の撮像領域の位置φに応じた目標回転角ωtに内視鏡2が回転されることによって、内視鏡画像Eの上下方向が自動的に調整される。具体的には、現在の撮像領域が特定組織F,Gを含む第1または第2領域であるときには、特定組織F,Gが所定の回転角で配置される目標回転角ωtに内視鏡2が自動的に回転させられる。現在の撮像領域が特定組織F,Gを含まない第3領域であるときには、第1および第2回転角情報から推定される適切な目標回転角ωtに内視鏡2が自動的に回転させられる。
このように、腹腔内の現在の撮像領域の位置に応じた適切な上下方向の内視鏡画像Eを操作者に提供することができる。また、内視鏡画像Eの上下方向が自動的に調整されることによって、術者のストレスを軽減することができるとともに、処置時間を短縮することができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、光軸C回りの内視鏡2の回転によって内視鏡画像Eを回転させることによって、内視鏡画像Eを回転させるための画像処理を無くすことができ、プロセッサ11の負荷を減らすことができる。また、ユーザは、内視鏡2の体外に配置される部分の回転角ωを目視で確認することによって、内視鏡画像Eの上下方向を感覚的に認識することができる。
【0079】
本実施形態において、光軸C回りの内視鏡2全体の回転によって内視鏡画像Eを回転させることとしたが、これに代えて、光軸C回りの内視鏡2の回転角ωを維持しながら撮像素子2aを光軸C回りに回転させてもよい。この場合、撮像素子2aを回転させるための回転機構が内視鏡2に設けられる。
内視鏡2の本体に対する撮像素子2aの回転によっても、内視鏡2全体を回転させたときと同様に内視鏡画像Eを回転させることができる。
【0080】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る内視鏡システム、制御装置、制御方法および記録媒体について図面を参照して説明する。
本実施形態は、光軸C回りの内視鏡2の回転および画像処理の組み合わせによって内視鏡画像Eを回転させる点において、第1および第2実施形態と相違する。本実施形態においては、第1および第2実施形態と相違する構成について説明し、第1および第2実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施形態に係る内視鏡システム10は、第1実施形態と同様、制御装置1、内視鏡2、移動装置3、内視鏡プロセッサ4および表示装置5を備える。
図9は、本実施形態において、プロセッサ11が自律モードで実行する制御方法を示している。本実施形態に係る制御方法は、第2実施形態において説明した工程SB2,SB3,SB4’,SB5,SB6’,SB7,SB8’,SB9,SC1~SC4,SC5’,SC6,SC7’,SC8,SC9’に加えて、内視鏡2の回転角ωが所定の限界角であるか否かを判断する工程SC11と、内視鏡画像Eを画像処理によって回転させる工程SC12と、を含む。
【0082】
工程SB9の後、図9に示されるように、プロセッサ11は、内視鏡2の現在位置φを算出する(SC1)。自律モードに切り替えられると(SC2のYES)、プロセッサ11は、工程SC1~SC4,SC5’,SC6,SC7’,SC8,SC9’を実行する。
【0083】
工程SC5‘,SC7’,SC9’において、プロセッサ11は、角度センサ3dによって検出される回転関節3cの回転角度に基づいて、内視鏡2の回転角ωが内視鏡2の回転可能範囲の限界角に達しているか否かを判断する(SC11)。内視鏡2が回転することができる回転可能範囲は、物理的な制約等によって制限されることがある。例えば、内視鏡2および移動装置3の内部のケーブルには内視鏡2の回転によってねじれが発生するので、過度なねじれが生じないように内視鏡2の回転可能範囲が設定される。
【0084】
回転角ωが限界角に達することなく内視鏡2が目標回転角ωtまで回転した場合(SC11のNO)、プロセッサ11は、回転した内視鏡画像Eを表示装置5に出力する(SC10)。
一方、回転角ωが目標回転角ωtに達する前に限界角に達した場合(SC11のYES)、プロセッサ11は、内視鏡2の回転を限界角において停止させ、次に、目標回転角ωtまで足りない回転角だけ内視鏡画像Eを画像処理によって回転させ(SC12)、回転された内視鏡画像Eを表示装置5に出力する(SC10)。
【0085】
以上説明したように、本実施形態によれば、光軸C回りの内視鏡2の回転と画像処理とを組み合わせることによって、内視鏡2の回転のみでは達成することが難しい内視鏡画像Eの回転を実現することができる。
本実施形態のその他の効果は第1および第2実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0086】
(第1変形例)
次に、第1から第3実施形態に係る内視鏡システム10、制御装置1、制御方法および記録媒体の第1変形例について説明する。
図10に示されるように、本変形例は、内視鏡2が斜視型である点において、上述した第1から第3実施形態と相違する。
【0087】
斜視型の内視鏡2は、長手軸Iを有し被検体内に挿入される長尺の挿入部2bと、撮像素子2aを含み挿入部2bの基端に接続された撮像部2cとを有する。回転関節3cの回転によって挿入部2bおよび撮像部2cは長手軸I回りに一体的に回転する。なお、分離型の斜視型鏡の場合、カメラヘッド(撮像部2c)および光学視管(挿入部2b)が別々の回転角情報を有するが、本変形例では、カメラヘッドおよび光学視管を一体的に回転させることによって共通の回転角情報として処理を行う。
【0088】
直視型の内視鏡2の場合、視軸(光軸)Cが長手軸Iと同軸であるため、内視鏡2が長手軸I回りに回転しても視軸Cの位置は維持される。一方、斜視型の内視鏡2の場合、視軸Cが長手軸Iに対して傾斜するため、長手軸I回りの内視鏡2の回転に伴って視軸Cが長手軸I回りに回転移動し、撮像領域が移動する。
【0089】
図11Aおよび図11Bは、本変形例においてプロセッサ11が実行する制御方法を示している。図11Aおよび図11Bに示されるように、本変形例に係る制御方法は、工程SB2’,SB3~SB9と、工程SC3’,SC4~SC10と、を含む。
工程SB2’において、プロセッサ11は、内視鏡2の現在位置φを初期位置φ=0°に設定し、内視鏡2の現在姿勢ωを初期姿勢ω=0°に設定する。内視鏡2の姿勢ωは、長手軸I回りの回転角であり、長手軸Iに対する視軸Cの姿勢に相当する。
【0090】
次に、ユーザインタフェース16が第1指示を受け付けたことに応答し(SA5)、プロセッサ11は、第1位置情報および第1回転角情報を決定し(SB3,SB4)、さらに、第1指示を受け付けた時点での内視鏡2の第1姿勢の情報を保持する。
次に、ユーザインタフェース16が第2指示を受け付けたことに応答し(SA7)、プロセッサ11は、第2位置情報および第2回転角情報を決定し(SB5,SB6)、さらに、第2指示を受け付けた時点での内視鏡2の第2姿勢の情報を保持する。
【0091】
工程SB9において、プロセッサ11は、位置情報および回転角情報に加えて、第1姿勢および第2姿勢を記憶部13に記憶させる。これにより、撮像領域の位置を表す内視鏡2の回転角度φと、各回転角度φにおける内視鏡画像Eの目標回転角θtと、各撮像領域に対応する内視鏡2の第1姿勢および第2姿勢と、を含むデータが記憶部13に生成される。
【0092】
続いて、自律モードにおいて、プロセッサ11は、移動装置3を制御することによって内視鏡2の位置および姿勢を制御し、処置具6の先端に内視鏡2を追従させる(SC3’)。ここで、プロセッサ11は、記憶部13に記憶された第1および第2位置情報と第1および第2姿勢とに基づいて内視鏡2の位置および姿勢を制御することによって、撮像領域が第1領域に含まれるときは内視鏡2の姿勢ωを第1姿勢に制御し、撮像領域が第2領域に含まれるときは内視鏡2の姿勢ωを第2姿勢に制御する。
そして、第1実施形態と同様、プロセッサ11は、現在の撮像領域に応じて内視鏡画像Eを画像処理によって目標回転角θtだけ回転させる(SC4~SC9)。
【0093】
前述したように、斜視型内視鏡2の場合、長手軸I回りの内視鏡2の回転によって撮像領域が移動する。そのため、内視鏡2の回転によって内視鏡画像Eを回転させる第2実施形態の制御方法のみでは、内視鏡画像Eの上下方向を制御することが難しい。
【0094】
本変形例によれば、マニュアルモードにおいて、第1領域を撮像するときの内視鏡2の第1姿勢と、第2領域を撮像するときの内視鏡2の第2姿勢とが記憶される。そして、自律モードにおいて、第1領域の撮像時には、内視鏡2の姿勢が第1姿勢に制御されるとともに内視鏡画像Eの上下方向が画像処理による回転によって調整される。また、自律モードにおいて、第2領域の撮像時には、内視鏡2の姿勢が第2姿勢に制御されるとともに内視鏡画像Eの上下方向が画像処理による回転によって調整される。これにより、斜視型内視鏡2によって取得される内視鏡画像Eの上下方向を適切に制御することができる。
【0095】
(第2変形例)
次に、第1から第3実施形態に係る内視鏡システム10、制御装置1、制御方法及び記録媒体13の第2変形例について説明する。
図12に示されるように、本変形例は、内視鏡2が湾曲部2dを有する点において、上述した第1から第3実施形態と相違する。
【0096】
内視鏡2は、被検体内に挿入される長尺の挿入部2bと、挿入部2bの先端部に設けられ挿入部2bの長手軸Iに交差する方向に湾曲可能である湾曲部2dとを有する。湾曲部2dが湾曲している場合、視軸Cが長手軸Iに対して傾斜するため、長手軸I回りの内視鏡2の回転に伴って視軸Cが長手軸I回りに回転移動し、撮像領域が移動する。さらに、長手軸Iに対する視軸Cの傾斜方向および傾斜角度は、湾曲部2dの湾曲方向および湾曲角度に応じて異なる。
【0097】
本変形例においてプロセッサ11が実行する制御方法は、第1変形例と同様、工程SB2’,SB3~SB9と、工程SC3’,SC4~SC10と、を含む。ただし、内視鏡2の姿勢として、長手軸I回りの回転角ωに代えて、湾曲部2dの回転方向および回転角度が用いられる。
【0098】
すなわち、工程SB2’において、プロセッサ11は、湾曲部2dの現在の湾曲方向および湾曲角度を初期姿勢として設定する。そして、工程SB9において、プロセッサ11は、第1指示を受け付けた時点での湾曲部2dの湾曲方向および湾曲角度を第1姿勢として記憶部13に記憶させ、第2指示を受け付けた時点での湾曲部2dの湾曲方向および湾曲角度を第2姿勢として記憶部13に記憶させる。
【0099】
また、自律モードの工程SC3’において、プロセッサ11は、記憶部13に記憶された第1および第2位置情報と第1および第2姿勢とに基づいて内視鏡2の位置および姿勢を制御することによって、撮像領域が第1領域に含まれるときは湾曲部2dの湾曲方向および湾曲角度を第1姿勢に制御し、撮像領域が第2領域に含まれるときは湾曲部2dの湾曲方向および湾曲角度を第2姿勢に制御する(SC3’)。
【0100】
前述したように、湾曲部2dを有する内視鏡2の場合、湾曲部2dの湾曲方向および湾曲角度に応じて、撮像領域が内視鏡2の回転によって回転移動する。そのため、内視鏡2の回転によって内視鏡画像Eを回転させる第2実施形態の制御方法によって内視鏡画像Eの上下方向を制御することが難しい。
【0101】
本変形例によれば、第1変形例と同様、自律モードにおいて、第1領域の撮像時には、内視鏡2の姿勢がマニュアルモードにおいて記憶された第1姿勢に制御されるとともに内視鏡画像Eの上下方向が画像処理による回転によって調整される。また、自律モードにおいて、第2領域の撮像時には、内視鏡2の姿勢がマニュアルモードにおいて記憶された第2姿勢に制御されるとともに内視鏡画像Eの上下方向が画像処理による回転によって調整される。これにより、湾曲部2dを有する内視鏡2によって取得される内視鏡画像Eの上下方向を適切に制御することができる。
【0102】
上記各実施形態および各変形例において、プロセッサ11が、第3回転角情報をマニュアルモードにおいて計算し記憶部13に記憶させることとしたが、これに代えて、図13Aおよび図13Bに示されるように、自律モードの実行中に第3回転角情報をプロセッサ11がリアルタイムに計算してもよい(SC13)。言い換えれば、プロセッサ11は、マニュアルモードにおいて、第3位置情報および第3回転角情報の決定および記憶を行わない。この場合、第3領域とは、第1領域および第2領域ではない領域という意味になる。
【0103】
各実施形態および各変形例の自律モードにおいて、現在の撮像領域が第3領域に含まれる(第1領域および第2領域のいずれでもない)と判定された場合、プロセッサ11は、内視鏡2の現在位置φにおける目標回転角θtまたはωtを、現在位置φ、第1位置情報、第1回転角情報、第2位置情報および第2回転角情報に基づいてリアルタイムに算出してもよい(SC13)。さらに、現在の撮像領域が第1領域および第2領域のいずれかに含まれる(第3領域に含まれない)場合、プロセッサ11は、目標回転角θtまたはωtをリアルタイムに算出せず、第1回転角情報または第2回転角情報に一致させればよい。このようにすることで、マニュアルモード時に記憶部13に記憶させる位置情報および回転角情報の量を減らすことができ、自律モードの操作時に必要となった第3位置情報および第3回転角情報のみを算出すれば良いので、システムへの負荷が軽減される。
【0104】
また、プロセッサ11は、現在の撮像領域が第1領域または第2領域に含まれる場合は、事前に記憶されている第1位置情報または第2位置情報、または第1回転角情報または第2回転角情報を、現在の位置情報および回転角情報にアップデートしてもよい。アップデート後に内視鏡2を移動させ、現在の撮像領域が第1領域または第2領域に含まれていると判断された場合、アップデートした第1位置情報、第2位置情報、第1回転角情報、第2回転角情報を使用することができる。アップデートを行う場合、ユーザは、ユーザインタフェース16からアップデート指示を行えばよい。このようにすることで、気腹または体位の調整等に因り患者の体の一部が変形した場合でも、位置情報および回転角情報を現在の状況に応じた正しい情報に更新することが可能となる。
【0105】
上記各実施形態および各変形例において、プロセッサ11が、内視鏡画像E内の特定組織を認識し、認識された特定組織に基づいて各位置情報および各回転角情報を決定することとしたが、これに代えて、各指示が受け付けられた時点での内視鏡2の位置φおよび回転角ωに基づいて各位置情報および各回転角情報を決定してもよい。
すなわち、マニュアルモードにおいて、術者は、所望の位置に所望の回転角ωで内視鏡2を配置し、第1指示を入力する。プロセッサ11は、ユーザインタフェース16が第1指示を受け付けた時点での内視鏡2の位置φの周辺範囲を第1位置情報に決定し、ユーザインタフェース16が第2指示を受け付けた時点での内視鏡2の回転角ωを第1回転角情報に決定する。
【0106】
同様に、術者は、他の所望の位置に所望の回転角ωで内視鏡2を配置し、第2指示を入力する。プロセッサ11は、ユーザインタフェース16が第2指示を受け付けた時点での内視鏡2の位置φの周辺範囲を第2位置情報に決定し、ユーザインタフェース16が第2指示を受け付けた時点での内視鏡2の回転角ωを第2回転角情報に決定する。
この構成によれば、術者が、被検体内の任意の領域を第1領域および第2領域として登録することができ、より術者の感覚に沿った位置情報および回転角情報の決定が可能になる。また、第1および第2領域に特定組織が含まれない場合においても、学習済みモデル1bの処理を行わずに、第1および第2領域の位置情報および回転角情報を任意に決定し記憶することができる。
【0107】
内視鏡画像E内の特定組織に基づく位置情報および回転角情報の決定と、指示が受け付けられた時点での内視鏡2の位置φおよび回転角ωに基づく位置情報および回転角情報の決定と、が併用されてもよい。
例えば、プロセッサ11は、第1から第3実施形態およびこれらの変形例において説明したように内視鏡画像E内の特定組織F,Gに基づいて第1および第2位置情報と第1および第2回転角情報とを決定した後、術者の指示に基づいて、第1および第2領域とは異なる任意の領域の位置情報および回転角情報をさらに決定してもよい。
【0108】
上記各実施形態および各変形例において、特定組織が大動脈Fおよび骨盤Gであることとしたが、特定組織は、解剖学的に特徴を有する任意の臓器または組織であればよく、例えば子宮であってもよい。
上記各実施形態および各変形例において、2つの領域の位置情報および回転角情報を記憶することとしたが、これに代えて、3以上の領域の位置情報および回転角情報を記憶してもよい。これにより、事前に記憶された情報に基づいて位置情報および回転角情報を算出する場合の精度を向上させることが出来る。
【0109】
上記各実施形態および各変形例において、撮像領域の位置を表す内視鏡2の位置φが、ピボット点Hを原点とする2次元極座標系で表現されることとしたが、これに代えて、3次元極座標系で表現されてもよい。すなわち、内視鏡2が、ピボット点Hを通り第1ピボット軸P1と直交する第2ピボット軸P2回りに揺動可能に支持され、撮像領域の位置が(φ1,φ2)として表現されてもよい。φ1は第1ピボット軸P1回りの回転角度であり、φ2は第2ピボット軸P2回りの回転角度である。この場合、第1位置情報、第2位置情報および第3位置情報の各々は、回転角度φ1,φ2を含む3次元情報である。
【0110】
上記各実施形態および各変形例において、撮像領域の位置が、極座標系に代えて、他の種類の座標系で表されてもよい。例えば、撮像領域の位置が、穴Hを原点するデカルト座標系で表現されてもよい。
上記各実施形態および各変形例において、撮像領域の位置φの座標系が、被検体に対して固定されたグローバル座標系であることとしたが、これに代えて、内視鏡2の先端に対する相対座標系であってもよい。
【0111】
上記各実施形態および各変形例において、第1および第2位置情報がマニュアルモードにおいて決定され記憶部13に記憶されることとしたが、これに代えて、第1および第2位置情報が、手術前に記憶部13に予め記憶されていてもよい。
術前、処置部位を含む範囲の検査画像、例えば腹部のCT画像が取得されることがある。多数のCT画像をデコンボリューション処理することによって、腹腔内の3次元画像が生成される。このような術前の3次元画像に基づいて、術前に第1および第2位置情報を決定し記憶部13に記憶させてもよい。この場合、マニュアルモードにおいて、工程SB4,SB6は省略される。
この構成によれば、マニュアルモードでのプロセッサ11の計算量を減らすことができる。
【0112】
上記各実施形態および変形例において、プロセッサ11は、マニュアルモードにおいて、第1領域を撮像した内視鏡画像Eである第1内視鏡画像と、第2領域を撮像した内視鏡画像Eである第2内視鏡画像と、を記憶部13に保存してもよい。例えば、工程SB3において、プロセッサ11は、大動脈Fが認識された1以上の内視鏡画像Eを第1内視鏡画像として記憶部13に保存する。また、工程SB6において、プロセッサ11は、骨盤Gが認識された1以上の内視鏡画像Eを第2内視鏡画像として記憶部13に保存する。
【0113】
この場合、プロセッサ11は、自律モードにおいて、第1内視鏡画像および第2内視鏡画像に基づいて、現在の撮像領域が第1、第2および第3領域のいずれに含まれるかを判定してもよい。すなわち、プロセッサ11は、現在の内視鏡画像Eを第1内視鏡画像および第2内視鏡画像と比較する。そして、プロセッサ11は、現在の内視鏡画像Eと同一または類似の第1内視鏡画像が存在する場合に現在の撮像領域が第1領域に含まれると判定し、現在の内視鏡画像Eと同一または類似の第2内視鏡画像が存在する場合に現在の撮像領域が第2領域に含まれると判定する。
【0114】
上記各実施形態および各変形例において、内視鏡画像E内に特定組織が含まれる場合、プロセッサ11は、記憶部13に記憶されたデータベース1cから特定組織の回転角に関する情報を読み出し、読み出された回転角に関する情報に基づいて内視鏡画像Eを回転させてもよい。回転角は、内視鏡画像Eの中心点回りの角度である。この構成によれば、内視鏡画像E内の特定組織が所定の回転角に配置されるように内視鏡画像Eを回転させることができる。
【0115】
例えば、データベース1cには、大動脈Fおよび骨盤G以外の1以上の特定組織の種類と、各種類の回転角とが登録されている。プロセッサ11は、内視鏡画像E内の特定組織を認識し、特定組織の回転角をデータベース1cから読み出し、特定組織が回転角に配置されるように内視鏡画像Eを回転させる。
一例として、特定組織である子宮Jは内視鏡画像E内の上方に配置されることが好ましいので、データベース1cには、子宮Jの回転角として、12時の位置に相当する90°が登録される。プロセッサ11は、認識された子宮Jが90°の位置に配置されるように内視鏡画像Eを回転させる。これにより、内視鏡画像E内に子宮Jが含まれる場合、子宮Jが90°の位置に配置されるように内視鏡画像Eの上下方向が自動的に調整される。
【0116】
上記各実施形態および各変形例において、内視鏡画像E内の特定組織F,Gに基づいて内視鏡画像Eの回転を制御することとしたが、これに加えて、内視鏡画像E内の処置具6に基づいて内視鏡画像Eの回転を制御してもよい。
例えば、プロセッサ11は、特定組織F,Gに基づいて内視鏡画像Eの回転を制御する第1回転モードと、処置具6に基づいて内視鏡画像Eの回転を制御する第2回転モードとで動作可能である。術者等のユーザは、ユーザインタフェース16を使用して、第1回転モードと第2回転モードとを切り替えることができる。
【0117】
第2モードにおいて、プロセッサ11は、現在の内視鏡画像E内の処置具6の角度を検出し、内視鏡2の回転または画像処理によって、処置具6の角度が所定の目標角度と等しくなるように内視鏡画像Eを回転させ、回転された内視鏡画像Eを表示装置5に出力し表示画面5aに表示させる。処置具6の角度は、例えば、内視鏡画像Eの水平線に対する処置具6のシャフトの長手軸の角度である。
【0118】
術者が内視鏡画像Eを観察しながら処置具6を適切に操作するためには、表示画面5aに表示される内視鏡画像E内の処置具6の角度が適切であることが重要である。しかし、術者が処置具6を移動させることによって、または、処置具6に追従する内視鏡2の姿勢が変化することによって、内視鏡画像E内の処置具6の角度が変化する。
術者は、必要に応じて第1回転モードから第2回転モードへ切り替えることによって、内視鏡画像E内の処置具6を表示画面5a上に目標角度で表示させることができる。
【0119】
上記各実施形態および各変形例において、術者が処置具6を手に把持し手動で操作することとしたが、これに代えて、図14Aおよび図14Bに示されるように、処置具6は、移動装置3とは異なる第2移動装置31によって保持および制御されてもよい。この場合、制御装置1は、内視鏡2を移動させる移動装置3および処置具6を移動させる第2移動装置31から、内視鏡2および処置具6の位置の情報をそれぞれ取得してもよい。第2移動装置31は、移動装置3と同様、ロボットアームまたは電動ホルダによって処置具6を保持し、制御装置101による制御に従って処置具6の位置および姿勢を3次元的に変更する。処置具6は、図14Aに示されるように、ロボットアームの先端に接続されロボットアームと一体であってもよく、図14Bに示されるように、ロボットアームとは別体でありロボットアームによって把持されていてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 制御装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 記憶部、記録媒体
14 入力インタフェース
15 出力インタフェース
16 ユーザインタフェース
1a 画像制御プログラム
1b 学習済みモデル
1c データベース
2 内視鏡
2a 撮像素子
3 移動装置
3a ロボットアーム
3b,3c 関節
3d 角度センサ
4 内視鏡プロセッサ
5 表示装置
5a 表示画面
6 処置具
A,B,D,O 位置
C 光軸、視軸
P1 第1ピボット軸
P2 第2ピボット軸
E 内視鏡画像
F 大動脈、第1特定組織
G 骨盤、第2特定組織
H 穴
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B