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特許7534425正極活物質、及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、バッテリパック及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】正極活物質、及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、バッテリパック及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240806BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240806BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022548243
(86)(22)【出願日】2020-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 CN2020125667
(87)【国際公開番号】W WO2022088151
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】何金華
(72)【発明者】
【氏名】呉奇
(72)【発明者】
【氏名】范敬鵬
(72)【発明者】
【氏名】陳強
(72)【発明者】
【氏名】趙宇翔
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/164313(WO,A1)
【文献】特開2002-158011(JP,A)
【文献】国際公開第2020/162277(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/135767(WO,A1)
【文献】特開2012-204036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
C01G 53/00 - 53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質であって、
前記正極活物質は、正極活物質基体、及び被覆層を有し、前記被覆層は、前記正極活物質基体の表面を被覆し、
前記正極活物質基体は、Li1+a[NiCoMn]Oであり、0<x<1、0≦y<0.3、0≦z<0.3、0<a<0.2、0<b<0.2、かつx+y+z+b=1であり、前記Mは、Mg、Ca、Sb、Ce、Ti、Zr、Al、Zn及びBのうちの1つ以上から選択され、前記被覆層は、コバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物を有し、
前記被覆層におけるアルミニウム元素とホウ素元素との重量比は、0.5~2:1である、ことを特徴とする正極活物質。
【請求項2】
前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるコバルト元素、アルミニウム元素、及びホウ素元素の総被覆量重量比は、1000~22000ppmである、ことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるコバルト元素の被覆量重量比は、1000~20000ppmである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるアルミニウム元素の被覆量重量比は、100~3000ppmである、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるホウ素元素の被覆量重量比は、100~2000ppmである、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記被覆層の厚みは、0.01μm~2μmである、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記コバルト含有化合物は、酸化コバルト、コバルト塩、水酸化コバルト、及びオキシ水酸化コバルトのうちの1つ以上から選択され、又は、
前記アルミニウム含有化合物は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩、及びハロゲン化アルミニウムのうちの1つ以上から選択され、又は、
前記ホウ素含有化合物は、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩、及び有機ホウ化物のうちの1つ以上から選択される、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項8】
正極活物質の製造方法であって、
正極活物質基体を提供し、前記正極活物質基体の化学式は、Li1+a[NiCoMn]Oであり、0<x<1、0≦y<0.3、0≦z<0.3、0<a<0.2、0<b<0.2であり、かつx+y+z+b=1であり、前記Mは、Mg、Ca、Sb、Ce、Ti、Zr、Al、Zn及びBのうちの1つ以上から選択されるステップS1と、
前記正極活物質基体をコバルト含有化合物と混合し、かつ焼結し、中間体を得るステップS2と、
前記中間体をアルミニウム含有化合物、ホウ素含有化合物と混合し、かつ焼結し、正極活物質を得るステップS3と、を含み、
前記正極活物質は、正極活物質基体、及び被覆層を有し、前記被覆層は、前記正極活物質基体の表面を被覆し、前記正極活物質基体は、Li1+a[NiCoMn]Oであり、0<x<1、0≦y<0.3、0≦z<0.3、0<a<0.2、0<b<0.2であり、かつx+y+z+b=1であり、前記Mは、Mg、Ca、Sb、Ce、Ti、Zr、Al、Zn及びBのうちの1つ以上から選択され、前記被覆層は、コバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物を有する、ことを特徴とする正極活物質の製造方法。
【請求項9】
ステップS1において、リチウム塩と、ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体と、M元素含有化合物とを混合し、混合物材料aを得て、前記混合物材料aを焼結し、前記正極活物質基体を得て、
ステップS2において、正極活物質基体を前記コバルト含有化合物と混合し、混合物材料bを得て、前記混合物材料bを焼結し、中間体を得て、
ステップS3において、前記中間体を前記アルミニウム含有化合物、前記ホウ素含有化合物と混合し、混合物材料cを得て、前記混合物材料cを焼結し、前記正極活物質を得る、ことを特徴とする請求項8に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項10】
ステップS1において、前記リチウム塩におけるリチウム元素と前記ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体におけるニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素の三者の合計とのモル比がLi/(Ni+Co+Mn)=0.9~1.1であり、かつ前記混合物材料の総重量に対して、M元素のドープ量が1000~5000ppmになるように、前記リチウム塩と、前記ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体と、前記M元素含有化合物とを混合する、ことを特徴とする請求項9に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項11】
ステップS1において、前記焼結の温度は700℃~950℃、前記焼結の時間は10~20時間、前記焼結の雰囲気は空気又は酸素である、ことを特徴とする請求項9または0に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項12】
ステップS2において、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記コバルト含有化合物におけるコバルト元素の添加量は1000ppm~20000ppmである、ことを特徴とする請求項8から11のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項13】
ステップS2において、前記焼結の温度は500℃~700℃、前記焼結の時間は5~15時間、前記焼結の雰囲気は空気又は酸素である、ことを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項14】
ステップS3において、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記アルミニウム含有化合物におけるアルミニウム元素の添加量は100~3000ppmであり、又は、
ステップS3において、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記ホウ素含有化合物におけるホウ素元素の添加量は100~2000ppmである、ことを特徴とする請求項8から13のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項15】
ステップS3において、前記焼結の温度は200℃~500℃であり、前記焼結の時間は5~15時間であり、前記焼結の雰囲気は空気又は酸素である、ことを特徴とする請求項8から14のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項16】
二次電池であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の正極活物質を有する、ことを特徴とする二次電池。
【請求項17】
電池モジュールであって、請求項16に記載の二次電池を有する、ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項18】
バッテリパックであって、請求項17に記載の電池モジュールを有する、ことを特徴とするバッテリパック。
【請求項19】
装置であって、
請求項16に記載の二次電池、請求項17に記載の電池モジュール、又は請求項18に記載のバッテリパックから選択される1つ以上を有する、ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池技術分野に関し、特に、正極活物質、及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、バッテリパック及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、リチウムイオン電池の応用範囲がより広範になったことに伴い、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力、及び太陽エネルギー発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、並びに電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に広く応用されるようになった。リチウムイオン電池が非常に発展したので、さらに高いエネルギー密度、サイクル特性と安全性能などが求められている。また、正極活物質の選択が限定的になるほど、高ニッケル正極活物質は高エネルギー密度ニーズを満たす最良の選択とみなされるようになる。
【0003】
但し、ニッケル含有量が高くなり続けると、その構造安定性は劣るようになる。被覆、ドープなどの方法で材料のレート特性とサイクル特性などを改善することは、現在において比較的有効な手段であるが、従来の方法はいずれもリチウムイオン電池性能を異なる程度で損なってしまう。例えば、リチウムイオン電池の比容量が低下し、サイクル特性が劣るなどである。従って、従来の被覆、又はドープされた正極活物質はやはり改善が待たれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、上述の課題に鑑みて行われるものであり、正極活物質、及びその製造方法を提供し、該材料を含む二次電池が高いエネルギー密度、良好なサイクル特性と安定性能を有するようになることを目的とする。
【0005】
上述の目的を実現するために、本出願は、正極活物質、及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、バッテリパックと装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の第1の様態において、正極活物質を提供し、正極活物質基体、及び被覆層を有し、前記被覆層は、前記正極活物質基体の表面を被覆し、ここで、前記正極活物質基体は、Li1+a[NiCoMn]Oであり、ここでは、0<x<1、0≦y<0.3、0≦z<0.3、0<a<0.2、0<b<0.2、かつx+y+z+b=1であり、任意選択的に、0.8≦x<1であり、前記Mは、Mg、Ca、Sb、Ce、Ti、Zr、Al、Zn及びBのうちの1つ以上から選択され、前記被覆層は、コバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物を有する。
【0007】
このため、本出願は、正極活物質の表面にコバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、ホウ素含有化合物を共同で被覆することで、三者が協調して作用を発揮し、正極活物質のレート特性、サイクル特性を高めることができるとともに、正極活物質と電解液との間の界面副反応を明らかに改善し、容量を高めることができる。
【0008】
任意の実施形態において、前記コバルト含有化合物は、酸化コバルト、コバルト塩、水酸化コバルト、及びオキシ水酸化コバルトのうちの1つ以上から選択される。このため、前記コバルト含有化合物は、正極活物質表面に均一に有効に被覆可能である。
【0009】
任意の実施形態において、前記アルミニウム含有化合物は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩、及びハロゲン化アルミニウムのうちの1つ以上から選択される。このため、前記アルミニウム含有化合物は、正極活物質表面に均一に有効に被覆可能である。
【0010】
任意の実施形態において、前記ホウ素含有化合物は、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩、及び有機ホウ化物のうちの1つ以上から選択される。このため、前記ホウ素含有化合物は、正極活物質表面に均一に有効に被覆可能である。
【0011】
任意の実施形態において、前記被覆層の厚みは、0.01μm~2μmであり、任意選択的に、0.1~1μmである。前記被覆層の厚みが上述範囲内であると、電解液と正極活物質の界面に副反応が生じることを効果的に阻止し、しかも正極活物質の容量を増やすことができる。
【0012】
任意の実施形態において、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるコバルト元素、アルミニウム元素、及びホウ素元素の総被覆量重量比は、1000~22000ppmであり、任意選択的に、1000~15000ppmである。このため、被覆量が適量であるので、正極活物質の容量、レート特性及びサイクル特性を高めることができる。
【0013】
任意の実施形態において、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるコバルト元素の被覆量重量比は、1000~20000ppmであり、任意選択的に、1000~19000ppmであり、さらに任意選択的に、1000~13000ppmである。このため、被覆量が適量であるので、正極活物質の容量、レート特性及びサイクル特性をより良好に高めることができる。
【0014】
任意の実施形態において、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるアルミニウム元素の被覆量重量比は、100~3000ppmであり、任意選択的に、100~2900ppmであり、さらに任意選択的に、500~2000ppmである。このため、被覆量が適量であるので、正極活物質のサイクル、貯留及び安全性能をより良好に高めることができる。
【0015】
任意の実施形態において、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるホウ素元素の被覆量重量比は、100~2000ppmであり、任意選択的に、100~1900ppmであり、さらに任意選択的に、500~1500ppmである。このため、被覆量が適量であるので、正極活物質のサイクル、貯留、及び安全性能をより良好に高めることができる。
【0016】
任意の実施形態において、前記被覆層におけるアルミニウム元素とホウ素元素との重量比は、0.5~2:1であり、任意選択的に、1~2:1である。このため、正極活物質のサイクルと安全性能をより高めることができる。
【0017】
本出願の第2の様態において、正極活物質の製造方法をさらに提供し、
M元素をドープした正極活物質基体を提供し、ここで、前記Mは、Mg、Ca、Sb、Ce、Ti、Zr、Al、Zn及びBのうちの1つ以上から選択されるステップS1と、
前記M元素をドープした正極活物質基体をコバルト含有化合物と混合し、かつ焼結し、中間体を得るステップS2と、
前記中間体をアルミニウム含有化合物、ホウ素含有化合物とミキサー内に入れて混合し、かつ焼結し、コバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物が被覆された正極活物質を得るステップS3と、を含む。
【0018】
任意の実施形態において、ステップS1、リチウム塩と、ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体と、M元素含有化合物とをミキサー内に入れて混合し、混合物材料aを得て、前記混合物材料aを焼成炉内に入れて焼結し、M元素をドープした正極活物質基体を得て、ここで、前記ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体は、[NiCoMn](OH)であり、ここでは、0<x<1、0≦y<0.3、0≦z<0.3であり、任意選択的に、0.8≦x<1であり、前記M元素は、Mg、Ca、Sb、Ce、Ti、Zr、Al、Zn及びBのうちの1つ以上であり、
ステップS2において、前記M元素をドープした正極活物質基体を前記コバルト含有化合物とミキサー内に入れて混合し、混合物材料bを得て、前記混合物材料bを焼成炉内に入れて焼結し、中間体を得て、
ステップS3において、前記中間体を前記アルミニウム含有化合物、前記ホウ素含有化合物とミキサー内に入れて混合し、混合物材料cを得て、前記混合物材料cを焼成炉内に入れて焼結し、コバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物が被覆された正極活物質を得る。
【0019】
このため、上述の本出願の正極活物質の製造方法により、前記M元素を正極活物質基体内に均一にドープすることができ、正極活物質の構造安定性を効果的に高めることができるとともに、正極活物質基体表面にコバルト含有化合物、ホウ素含有化合物、アルミニウム含有化合物の共同被覆層が均一に被覆される。また、本出願の正極活物質の製造方法を採用することにより、従来の製造方法における煩雑な製造工程を回避できるだけでなく、しかも生産コストを低減できる。
【0020】
任意の実施形態において、前記ステップS1において、前記リチウム塩におけるリチウム元素と前記ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体におけるニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素の三者の合計とのモル比がLi/(Ni+Co+Mn)=0.9~1.1、であり、かつM元素のドープ量が1000~5000ppmになるように、リチウム塩と、ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体と、M元素含有化合物とをミキサー内に入れて混合する。このため、M元素を均一にドープでき、材料の構造安定性を効果的に高めることができる。
【0021】
任意の実施形態において、前記ステップS1における焼結条件は、焼結温度が700℃~950℃、焼結時間が10~20時間、焼結雰囲気が空気、又は酸素である。このため、M元素のドープを効果的に行うことができる。
【0022】
任意の実施形態において、前記ステップS2における前記コバルト含有化合物の追加比率は、前記正極活物質基体の総重量に対して、コバルト元素の添加量が1000ppm~20000ppmであり、任意選択的に、1000~19000ppmであり、さらに任意選択的に、1000ppm~13000ppmである。このため、このため、材料の界面副反応をさらに改善できる。しかも被覆量が適量であるので、材料のサイクル、貯留、及び安全性能をより良好に高めることができる。
【0023】
任意の実施形態において、前記ステップS2における焼結条件は、焼結温度が500℃~700℃、焼結時間が5~15時間、焼結雰囲気が空気、又は酸素である。このため、被覆効果を高めることができる。
【0024】
任意の実施形態において、前記ステップS3において、前記アルミニウム含有化合物の追加比率は、前記正極活物質基体の総重量に対して、アルミニウム元素の添加量が100~3000ppmであり、任意選択的に、100~2900ppmであり、さらに任意選択的に、500~2000ppmである。前記ホウ素含有添加物の追加比率は、前記正極活物質基体の総重量に対して、ホウ素の添加量が100~2000ppmであり、任意選択的に、100~1900ppmであり、さらに任意選択的に、500~1500ppmである。このため、材料の界面副反応をさらに改善できる。しかも被覆量が適量であるので、材料のサイクル、貯留、及び安全性能をより良好に高めることができる。
【0025】
任意の実施形態において、前記ステップS3における焼成条件は、焼結温度が200℃~500℃、任意選択的に、200~400℃、焼結時間が5~15時間、任意選択的に、5~10時間、焼結雰囲気が空気、又は酸素である。このため、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物を正極活物質粒子表面にしっかりと被覆し、かつ粒子内層にしみ込まず、被覆効果を改善できる。
【0026】
本出願の第3の様態において、二次電池を提供し、第1の様態の正極活物質、又は本出願の第2の様態の方法に基づいて調製された正極活物質を有する。
【0027】
本出願の第4の様態において、電池モジュールを提供し、本出願の第3の様態の二次電池を有する。
【0028】
本出願の第5の様態においてバッテリパックを提供し、本出願の第4の様態の電池モジュールを有する。
【0029】
本出願の第6の様態において、装置を提供し、本出願の第3の様態の二次電池、本出願の第4の様態の電池モジュール、又は本出願の第5の様態のバッテリパックのうちから選択される1つ以上を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1において得られた正極活物質の走査電子顕微鏡画像である。
図2】実施例1において得られた正極活物質により製造されたコイン型電池の初回充放電曲線である。
図3】それぞれ、実施例1、及び比較例4において得られた正極活物質により製造された二次電池の全電池25℃サイクル特性試験結果の比較曲線である。
図4】それぞれ、実施例1、及び比較例4において得られた正極活物質により製造された二次電池の全電池70℃膨張性能試験結果の比較曲線である。
図5】本出願の実施形態の二次電池の概略図である。
図6図5に示す本出願の実施形態の二次電池の分解図である。
図7】本出願の実施形態の電池モジュールの概略図である。
図8】本出願の実施形態のバッテリパックの概略図である。
図9図8に示す本出願の実施形態のバッテリパックの分解図である。
図10】本出願の実施形態の二次電池を電源とする装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、図面を適切に参照して本出願の正極活物質、及びその製造方法、正極板、二次電池、電池モジュール、バッテリパックと装置を具体的に開示した実施形態を詳細に説明する。但し、不要な詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既知の周知の事項に対する詳細な説明、実質的に同じ構造の重複した説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不要に冗長的になることを回避し、当業者が理解しやすいようにするためである。また、図面、及び以下の説明は、当業者が本出願を充分に理解するようにするために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するものではない。
【0032】
明瞭にするために、本出願は、いくつかの数値範囲を具体的に開示する。しかしながら、いずれかの下限もいずれかの上限と組み合わせて明記されていない範囲を形成できる。いずれかの下限もその他の下限と組み合わせて明記されていない範囲を形成でき、同様に、いずれかの上限もいずれかのその他の上限と組み合わせて明記されていない範囲を形成できる。また、それぞれ単独で開示される点、又は単一数値はそれ自体、下限若しくは上限としていずれかのその他の点、若しくは単一数値と組み合わせて、又はその他の下限、若しくは上限と組み合わせて明記されていない範囲を形成できる。
【0033】
正極活物質
【0034】
本出願の実施形態において、本出願は、正極活物質を提供する。前記正極活物質は、正極活物質基体、及び前記正極活物質基体の表面を被覆する被覆層を有し、ここで、前記正極活物質基体は、Li1+a[NiCoMn]Oであり、ここでは0<x<1、0≦y<0.3、0≦z<0.3、0<a<0.2、0<b<0.2、かつx+y+z+b=1であり、任意選択的に、0.8≦x<1であり、前記Mは、Mg、Ca、Sb、Ce、Ti、Zr、Al、Zn及びBのうちの1つ以上から選択され、前記被覆層は、コバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物を有する。
【0035】
メカニズムは明らかになっていないが、出願人は、予想外に以下の発見をした。本出願は、正極活物質の表面にコバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物を共同で被覆することにより、正極活物質のレート特性、サイクル特性を明らかに高めることができるとともに、さらに、正極活物質と電解液との間の界面副反応を明らかに改善し、容量を高めることができる。また、本出願は、構造安定性が劣る高ニッケル含有(Ni含有量≧80%)の正極活物質に応用しても、正極活物質にM元素をドープするとともに、正極活物質の表面にコバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物を共同で被覆することにより、正極活物質の構造安定性を効果的に高めることができるだけでなく、しかもエネルギー密度を明らかに高めることができ、かつ正極活物質のサイクル特性、レート特性を高めることができる。
【0036】
いくつかの実施例において、例えば、正極活物質表面に均一に有効に被覆でき、正極活物質と電解液との間の界面副反応をさらに改善するという観点から、前記コバルト含有化合物は、コバルトの酸化物、コバルト塩、水酸化コバルト、及びオキシ水酸化コバルトのうちの1つ以上から選択される。コバルトの酸化物の例として、CoO、Coなどを挙げることができる。コバルト塩の例として、酢酸コバルト、シュウ酸コバルト、及び炭酸コバルトなどを挙げることができる。
【0037】
いくつかの実施例において、例えば、正極活物質表面に均一に有効に被覆でき、正極活物質と電解液との間の界面副反応をさらに改善するという観点から、前記アルミニウム含有化合物は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩、及びハロゲン化アルミニウムのうちの1つ以上から選択される。酸化アルミニウムの例として、Alなどを挙げることができる。アルミニウム塩の例として、Al(SO、Al(NO)などを挙げることができる。ハロゲン化アルミニウムの例として、AlClなどを挙げることができる。
【0038】
いくつかの実施例において、例えば、正極活物質表面に均一に有効に被覆でき、正極活物質と電解液との間の界面副反応をさらに改善するという観点から、前記ホウ素含有化合物は、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩、及び有機ホウ化物のうちの1つ以上から選択される。酸化ホウ素の例として、Bなどを挙げることができる。ハロゲン化ホウ素の例として、BF、BCl、BBr及BIなどを挙げることができる。ホウ酸の例として、HBOなどを挙げることができる。ホウ酸塩の例として、B(SO、B(NOなどを挙げることができる。有機ホウ化物の例として、BN、HBOP、CB(OH)、C、(CO)B及び(CO)Bなどを挙げることができる。
【0039】
いくつかの実施例において、例えば、前記被覆層の厚みは、0.01μm~2μmであり、任意選択的に、0.1~1μmである。前記被覆層の厚みが上述範囲内であると、電解液と正極活物質の界面に副反応が生じることを効果的に阻止し、しかも正極活物質の容量を増やすことができる。
【0040】
いくつかの実施例において、例えば、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるコバルト元素、アルミニウム元素、及びホウ素元素の総被覆量重量比は、1000~22000ppmであり、任意選択的に1000~15000ppmである。このため、被覆量が適量であるので、正極活物質の容量、レート特性及びサイクル特性を高めることができる。
【0041】
いくつかの実施例において、例えば、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるコバルト元素の被覆量重量比は、1000~20000ppmであり、任意選択的に、1000~19000ppmであり、さらに任意選択的に、1000~13000ppmである。このため、被覆量が適量であるので、被覆コバルト含有化合物は、正極活物質の界面副反応を改善でき、かつ極活物質の容量、レート特性及びサイクル特性を高めることができる。
【0042】
いくつかの実施例において、例えば、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるアルミニウム元素の被覆量重量比は、100~3000ppmであり、任意選択的に、100~2900ppmであり、さらに任意選択的に、500~2000ppmである。このため、被覆量が適量であるので、被覆アルミニウム含有化合物は、正極活物質の界面副反応をより明らかに改善でき、正極活物質を保護し、これにより極活物質のサイクル、貯留、及び安全性能をより良好に高めることができる。
【0043】
いくつかの実施例において、例えば、前記正極活物質基体の総重量に対して、前記被覆層におけるホウ素元素の被覆量重量比は、100~2000ppmであり、任意選択的に、100~1900ppmであり、さらに任意選択的に、500~1500ppmである。このため、被覆量が適量であるので、被覆ホウ素含有化合物は、正極活物質の界面副反応をより改善し、正極活物質の容量を高め、このほかに、正極活物質のレート特性及びサイクル特性をより良好に高めることができる。
【0044】
いくつかの実施例において、前記被覆層におけるアルミニウム元素とホウ素元素との重量比は、0.5~2:1であり、任意選択的に、1~2:1である。発明者は、以下の発見をした。正極活物質表面にアルミニウム含有化合物を被覆すると、電解液と正極活物質表面との副反応を効果的に抑制し、電池のサイクル特性を改善できるが、アルミニウム含有化合物の含有量が増加し続けると、正極活物質の比容量が低下する可能性があり、同時に、正極活物質表面にホウ素含有化合物を被覆すると、正極活物質の不純物リチウム含有量を効果的に低減でき、かつ正極活物質の比容量をより高めることができる。また、発明者は、被覆層におけるアルミニウム元素とホウ素元素との重量比が上述範囲内であると、正極活物質の容量を明らかに高めることができ、また、正極活物質のサイクル特性を高めることができ、しかも両者の重量が上述範囲内であると、さらに、正極活物質の結晶体構造を効果的に保護でき、これにより正極活物質の安全性能をより改善できることを予想外に発見した。
【0045】
いくつかの実施例において、例えば、正極活物質は、一次粒子物が凝集して形成された二次粒子、又は単結晶粒子である。
【0046】
いくつかの実施例において、正極活物質が、一次粒子物が凝集して形成された二次粒子である場合、二次粒子における一次粒子の平均粒径は、100~1000nmである。二次粒子における一次粒子の平均粒径とは、10K倍の走査電子顕微鏡画像におけるすべての一次粒子粒径サイズの平均値をいう。
【0047】
いくつかの実施例において、二次粒子の正極活物質の粒度分布D50は、2~15μmであり、任意選択的に、2.5~12μmである。
【0048】
いくつかの実施例において、二次粒子の正極活物質の比表面積は、0.2m/g~1.0m/gであり、任意選択的に、0.3m/g~0.8m/gである。
【0049】
いくつかの実施例において、正極活物質が単結晶粒子の場合、単結晶粒子の正極活物質の粒度分布D50は、1.0~8.0μmであり、任意選択的に、2.0~4.0μmである。
【0050】
いくつかの実施例において、単結晶粒子の正極活物質の比表面積は、0.4m/g~2m/gであり、任意選択的に、0.5m/g~1.5m/gである。
【0051】
このため、上述の製造方法により製造された正極活物質は、良好な結晶型構造を持ち、リチウムイオンの伝送に有利であり、レート特性、及びサイクル特性に対して改善作用を持つ。
【0052】
また、粒度分布D50とは、前記正極活物質の累計体積分布パーセントが50%に達したときに対応する粒径のことをいう。本出願において、正極活物質の粒度分布D50は、レーザ回折粒度分析法により測定されることができる。例えば、標準GB/T 19077-2016を参照し、レーザ回折式粒子径分布測定装置(例えば、Malvern Master Size 3000)を使用して測定する。
【0053】
いくつかの実施例において、前記コバルト含有化合物は、以下に記載のコバルト含有化合物を採用し、前記コバルト含有化合物の粒径は、0.001μm~10μmであってよく、例えば、0.001μm~1μmである。前記ナノレベルコバルト含有化合物を採用するので、正極活物質基体表面に均一に有効に被覆でき、材料と電解液との間の界面副反応を改善できる。
【0054】
正極活物質の製造方法
【0055】
本出願の実施形態において、本出願は、正極活物質の製造方法をさらに提供し、
リチウム塩と、ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体と、M元素含有化合物とをミキサー内に入れて混合し、混合物材料aを得て、前記混合物材料aを焼成炉内に入れて焼結し、M元素を前記ドープした正極活物質基体を得て、ここで、前記ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体は、[NiCoMn](OH)であり、ここでは、0<x<1、0≦y<0.3、0≦z<0.3であり、任意選択的に、0.8≦x<1であり、前記M元素は、Mg、Ca、Sb、Ce、Ti、Zr、Al、Zn及びB中のうちの1つ以上であるステップS1と、
前記M元素をドープした正極活物質基体をコバルト含有化合物とミキサー内に入れて混合し、混合物材料bを得て、前記混合物材料bを焼成炉内に入れて焼結し、中間体(コバルト含有化合物が被覆された正極活物質)を得るステップS2と、
前記中間体をアルミニウム含有化合物、ホウ素含有化合物とミキサー内に入れて混合し、混合物材料cを得て、前記混合物材料cを焼成炉内に入れて焼結し、コバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物が被覆された正極活物質を得るステップS3と、を含む。
【0056】
ここで、メカニズムははっきりとしていないが、出願人は予想外に以下の発見をした。本出願の正極活物質の製造方法により、前記M元素を正極活物質核内に均一にドープでき、正極活物質の構造安定性を効果的に高めることができる。同時に、正極活物質核表面にコバルト含有化合物、ホウ素含有化合物、アルミニウム含有化合物の共同被覆層が均一に被覆され、正極活物質と電解液との間の界面副反応を効果的に抑制でき、正極活物質の容量を高め、正極活物質のレート特性を効果的に高めることができ、しかもさらに、正極活物質のサイクル、貯留、及び安全性能を効果的に高めることができる。また、本出願の正極活物質の製造方法を採用することにより、従来の製造方法における湿式被覆などの煩雑な製造工程を回避できるだけでなく、しかも生産コストを低減できる。本出願の製造方法において多段階被覆法を採用し、調製された正極活物質が良好なサイクル特性、及び高い容量を同時に兼ね備えることができるようになる。三者(コバルト含有化合物、ホウ素含有化合物、アルミニウム含有化合物)を同時に被覆すると、被覆温度の設定が高すぎる場合、アルミニウムとホウ素は正極活物質粒子の内層にしみこむ可能性があり、しかもホウ素含有化合物は高温で揮発しやすく、被覆効果に影響し、これにより容量、及びサイクル特性に影響する。被覆温度の設定が低すぎる場合、コバルト含有化合物は正極活物質粒子の外層に効果的に被覆されることができなくなる可能性があり、正極活物質粒子を被覆する被覆効果を果たせず、これによりサイクル、及び安全性能に影響し、従って、段階的ステップで被覆することにより、三者を一体に被覆するときに被覆効果に影響することを回避できる。
【0057】
いくつかの実施例において、前記ステップS1において、前記リチウム塩におけるリチウム元素と前記ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体におけるニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素の三者の合計とのモル比がLi/(Ni+Co+Mn)=0.9~1.1であり、かつM元素のドープ量が1000~5000ppmになるように、リチウム塩と、ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体と、M元素含有化合物とをミキサー内に入れて混合する。このため、M元素を均一にドープでき、材料の構造安定性を効果的に高めることができる。
【0058】
いくつかの実施例において、前記ステップS1における焼結条件は、焼結温度が700℃~950℃、焼結時間が10~20時間、焼結雰囲気が空気、又は酸素である。このため、M元素のドープを効果的に行うことができ、該工程により得られた正極材料基体は、良好な結晶型構造を持ち、リチウムイオンの伝送に有利であり、レート特性、及びサイクル特性を改善できる。
【0059】
いくつかの実施例において、前記ステップS2において、前記コバルト含有化合物の追加比率は、前記正極活物質基体の総重量に対して、コバルト元素の添加量が1000ppm~20000ppmであり、任意選択的に、1000~19000ppmであり、さらに任意選択的に、1000ppm~13000ppmである。このため、コバルト含有化合物を正極活物質基体表面に均一に有効に被覆でき、材料と電解液との間の界面副反応を改善できる。同時に、被覆量が適量であるので、正極活物質の容量、レート特性及びサイクル特性を高めることができる。
【0060】
いくつかの実施例において、前記ステップS2における焼結条件は、焼結温度が500℃~700℃、焼結時間が5~15時間、焼結雰囲気が空気、又は酸素である。このため、コバルト含有化合物を正極活物質の粒子表面にしっかりと被覆し、かつ粒子内層にしみ込まず、被覆効果を改善できる。
【0061】
いくつかの実施例において、前記ステップS3において、前記アルミニウム含有化合物の追加比率は、前記正極活物質基体の総重量に対して、アルミニウム元素の添加量が100ppm~3000ppmであり、任意選択的に、100~2900ppmであり、さらに任意選択的に、500ppm~2000ppmであり、前記ホウ素含有化合物の追加比率は、前記正極活物質基体の総重量に対して、ホウ素元素の添加量が100~2000ppmであり、任意選択的に、100~1900ppmであり、さらに任意選択的に、500~1500ppmである。このため、材料の界面副反応をさらに改善できる。しかも被覆量が適量であるので、材料のサイクル、貯留、及び安全性能をより良好に高めることができる。
【0062】
いくつかの実施例において、前記ステップS3における焼結条件は、焼結温度が200℃~500℃、任意選択的に、200~400℃、焼結時間が5~15時間、任意選択的に、5~10時間、焼結雰囲気が空気、又は酸素である。このため、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物を正極活物質粒子表面にしっかりと被覆し、かつ粒子内層にしみ込まず、被覆効果を効果的に改善できる。しかも、正極活物質の界面副反応を明らかに改善でき、極活物質のサイクル、貯留、及び安全性能を高めることができる。
【0063】
いくつかの実施例において、例えば、前記ニッケル、コバルト、及びマンガン含有正極活物質前駆体は、[NiCoMn](OH)であり、ここでは、0<x<1、0≦y<0.3、0≦z<0.3であり、さらに、0.8≦x<1である。
【0064】
いくつかの実施例において、例えば、前記リチウム塩は、炭酸リチウム、水酸化リチウムのうちの1つ以上から選択できる。
【0065】
また、以下に図面を適切に参照して、本出願の二次電池、電池モジュール、バッテリパックと装置を説明する。
【0066】
本出願の実施形態において、二次電池を提供する。
【0067】
通常の場合、二次電池は、正極板、負極板、電解質、及びセパレータフィルムを有する。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極板と負極板との間に往復して挿入し、及び脱離する。電解質は、正極板と負極板との間でイオン伝導の作用を果たす。セパレータフィルムは、正極板と負極板との間に設けられ、主に正負極短絡を防止する作用を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0068】
[正極板]
【0069】
正極板は、正極集電体、及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極膜層を有し、前記正極膜層は、本出願の第1の様態の正極活物質を有する。
【0070】
例示として、正極集電体は、それ自身の厚み方向において対向する2つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する2つの表面のうちの任意の1つ、又は両者に設けられる。
【0071】
本出願の二次電池において、前記正極集電体は、金属箔片、又は複合集電体を採用できる。例えば、金属箔片として、アルミニウム箔を採用できる。複合集電体は、高分子材料基層、及び高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属層を有することができる。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することにより形成できる。
【0072】
正極膜層は、導電剤をさらに選択的に有することができる。但し、導電剤のタイプを具体的限定せず、当業者は実際のニーズに基づいて選択できる。例示として、正極膜層に用いられる導電剤は、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの1つ以上から選択できる。
【0073】
本出願において当分野の既知の方法に従って正極板を調製できる。例示として、本出願の正極活物質、導電剤、及び接着剤を溶剤(例えば、N-メチルピロリドン(NMP))内に分散させ、均一な正極スラリーを形成できる。正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間圧縮などの工程を経た後に、正極板を得る。
【0074】
[負極板]
【0075】
負極板は、負極集電体、及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた負極膜層を有し、前記負極膜層は、負極活物質を有する。
【0076】
例示として、負極集電体は、それ自身の厚み方向において対向する2つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する2つの表面のうちの任意の1つ、又は両者に設けられる。
【0077】
本出願の二次電池において、前記負極集電体は、金属箔片、又は複合集電体を採用できる。例えば、金属箔片として、銅箔を採用できる。複合集電体は、高分子材料基層、及び高分子材料基材の少なくとも1つの表面に形成された金属層を有することができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することにより形成できる。
【0078】
本出願の二次電池において、前記負極膜層は通常、負極活物質、及び選択可能な接着剤、選択可能な導電剤、及びその他の選択可能な助剤を有し、通常は負極スラリーを塗布して乾燥して得られる。負極スラリーは通常、負極活物質、及び選択可能な導電剤、及び接着剤などを溶剤に分散させ、かつ均一に攪拌して形成される。溶剤は、N-メチルピロリドン(NMP)、又は脱イオン水であってよい。
【0079】
例示として、導電剤は、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの1つ以上から選択できる。
【0080】
例示として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1つ以上から選択できる。
【0081】
その他の選択可能な助剤は例えば、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースセルロースナトリウム((CMC-Na))などである。
【0082】
本出願の二次電池において、前記負極膜層は、負極活物質のほか、さらにその他の通常の負極活物質をさらに選択的に有し、例えば、その他の通常の負極活物質として、人造グラファイト、天然グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料、及びチタン酸リチウムなどを挙げることができる。前記ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸素化合物、ケイ素炭素複合物、ケイ素窒素複合物、及びケイ素合金のうちの1つ以上から選択できる。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸素化合物、及びスズ合金のうちの1つ以上から選択できる。
【0083】
[電解質]
【0084】
電解質は、正極板と負極板との間でイオン伝導の作用を果たす。本出願は、電解質のタイプを具体的限定せず、実際のニーズに基づいて選択できる。例えば、電解質は、固体電解質、及び液体電解質(つまり、電解液)のうちの少なくとも1つから選択できる。
【0085】
いくつかの実施例において、前記電解質は、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩、及び溶剤を有する。
【0086】
いくつかの実施例において、電解質塩は、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF(四フッ化ホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(リチウムジフルオロオキサラトボレート)、LiBOB(リチウムビスオキサラトボレート)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート)のうちの1つ以上から選択できる。
【0087】
いくつかの実施例において、溶剤は、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジプロピル(DPC)、メチルプロピルカルボネート(MPC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸ブチレン(BC)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、ブタン酸メチル(MB)、ブタン酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)及ジエチルスルホン(ESE)のうちの1つ以上から選択できる。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記電解質において、添加剤をさらに選択的に有する。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤を有することができ、正極成膜添加剤を有することもでき、さらに電池のある性能を改善可能な添加剤を有することができ、例えば、電池の充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、及び電池の低温性能を改善する添加剤などである。
【0089】
[セパレータフィルム]
【0090】
電解液を採用した二次電池、及び固体電解質を採用したいくつかの二次電池において、セパレータフィルムをさらに有する。セパレータフィルムは、正極板と負極板との間に設けられ、アイソレーションの作用を果たす。本出願は、セパレータフィルムのタイプを特別に限定せず、任意の公知の、良好な化学安定性と機械安定性を持つ多孔構造セパレータフィルムを選択できる。いくつかの実施例において、セパレータフィルムの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリフッ化ビニリデンのうちの1つ以上から選択できる。セパレータフィルムは、単一層薄膜であってよく、多層複合薄膜であってもよく、特別に限定しない。セパレータフィルムが多層複合薄膜の場合、各層の材料は同じであってよく、又は異なってもよく、特別に限定しない。
【0091】
いくつかの実施例において、正極板、負極板、及びセパレータフィルムは、巻回工程、又は積層工程により電極アセンブリに製造されることができる。
【0092】
いくつかの実施例において、二次電池は、外装を有することができる。該外装は、上述電極センブリ、及び電解質をパッケージすることに用いることができる。
【0093】
いくつかの実施例において、二次電池の外装は、ハードケースであってよく、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどである。二次電池の外装は、パウチであってよく、例えば、袋状パウチである。パウチの材質は、樹脂であってよく、樹脂として、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリブチレンサクシネート(PBS)などを挙げることができる。
【0094】
本出願は二次電池の形状を特別に限定せず、円柱形、方形、又はその他の任意の形状であってよい。例えば、図5は、例示としての方形構造の二次電池5である。
【0095】
いくつかの実施例において、図6を参照し、外装は、ハウジング51、及び蓋板53を有することができる。ここで、ハウジング51は、底板、及び底板に接続される側板を有し、底板、及び側板は合わさって収納室を形成する。ハウジング51は、収納室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記開口を覆うように設けられることで、前記収納室を密閉する。正極板、負極板、及びセパレータフィルムは、巻回工程、又は積層工程により電極アセンブリ52に形成されることができる。電極アセンブリ52は、前記収納室内にパッケージされる。電解液は、電極アセンブリ52内に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1つ、又は複数であってよく、当業者は具体的なニーズに基づいて選択できる。
【0096】
いくつかの実施例において、二次電池は、電池モジュールに組み立てられることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、1つ、又は複数であってよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量に基づいて選択できる。
【0097】
図7は、例示としての電池モジュール4である。図7を参照し、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次配列されて設けられることができる。当然のことながら、その他の任意の方法で配列してもよい。さらに、締付部材により該複数の二次電池5を固定できる。
【0098】
任意選択的に、電池モジュール4はさらに、収納空間を持つケーシングを有することができ、複数の二次電池5は、該収納空間に収納される。
【0099】
いくつかの実施例において、上述電池モジュールはさらに、バッテリパックに組み立てられることができ、バッテリパックに含まれる電池モジュールの数は、当業者がバッテリパックの応用と容量に基づいて選択できる。
【0100】
図8及び図9は、例示としてのバッテリパック1である。図8、及び図9を参照し、バッテリパック1においてバッテリケース、及びバッテリケース内に設けられる複数の電池モジュール4を有することができる。バッテリケースは、上筐体2、及び下筐体3を有し、上筐体2は、下筐体3を被せるように設けられることができ、かつ電池モジュール4を収納するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法に従ってバッテリケース内に配列されることができる。
【0101】
また、本出願は、装置をさらに提供し、前記装置は、本出願により提供される二次電池、電池モジュール、又はバッテリパックのうちの1つ以上を有する。前記二次電池、電池モジュール、又はバッテリパックは、前記装置の電源として使用でき、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用することもできる。前記装置は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、ノート型パソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電動自転車、電動キックボード、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気車、船舶、及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含むことができるが、これに限定されない。
【0102】
前記装置として、その使用ニーズに基づいて二次電池、電池モジュール、又はバッテリパックを選択できる。
【0103】
図10は、例示としての装置である。該装置は、純電気自動車、ハイブリッド車、又はプラグインハイブリッド車などである。該装置の二次電池の高出力と高エネルギー密度に対する要求を満たすために、バッテリパック、又は電池モジュールを採用できる。
【0104】
他の例示としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノート型パソコンなどのであってよい。該装置は通常、薄型化が求められ、二次電池を電源とできる。
[実施例]
【0105】
以下に本出願の実施例を説明する。次に説明される実施例は例示的であり、本出願を解釈するためのものにすぎず、本出願に対する制限と理解できない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当分野の文献に記載される技術若しくは条件、又は製品の説明書に従って行う。使用される試薬、又は機器にメーカが明記されていない場合、いずれも市販の通常製品であってよい。
【0106】
実施例1
正極活物質前駆体、水酸化リチウム、及び酸化ジルコニウム(ZrO)を、水酸化リチウムにおけるリチウム元素と正極活物質前駆体におけるニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素の三者の合計とのモル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.05になるように、コールターミキサー内に入れて1時間混合し、混合物材料を得る。ここで、前記混合物材料の総重量に対して、ジルコニウム元素の添加量は、2000ppmであり、前記正極活物質前駆体は、[Ni0.92Co0.05Mn0.03](OH)であり、粒度分布D50は、5μmである。
【0107】
上述により得られた混合物材料をローラーハースキルン内に入れて焼結温度800℃で一次焼結20時間を行い、一次焼結雰囲気は酸素であり、正極活物質基体を得る。
【0108】
上述により得られた正極活物質基体とCoOを、前記正極活物質基体の総重量に対して、コバルト元素の添加量が8000ppmになるように、コールターミキサー内に入れて1時間混合し、混合物材料を得て、前記混合物材料をローラーハースキルン内に入れて二次焼結を行い、ここで、二次焼結温度は600℃、二次焼結時間は10時間、二次焼結雰囲気は酸素であり、CoOが被覆された正極活物質を得る。これにより得られたCoOが被覆された正極活物質は、粒度分布D50が5μmの二次粒子である。
【0109】
二次焼結により得られたCoOが被覆された正極活物質、及びAlClとBの混合物を、記正極活物質基体の総重量に対して、アルミニウム元素の添加量が1000ppm、ホウ素元素の添加量が1000ppm、及びアルミニウム元素とホウ素元素の添加量比が1:1になるように、高速ミキサー内に入れて1時間混合し、混合物材料を得て、前記混合物材料をローラーハースキルン内に入れて三次焼結を行い、三次焼結温度は250℃、三次焼結時間は5時間、三次焼結雰囲気は酸素であり、最終的な被覆後の正極活物質を得る。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が5μmの二次粒子である。ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の平均厚みは、0.60μmである。実施例1において得られた正極活物質の走査電子顕微鏡画像は、図1に示すとおりである。図1から、上述被覆物は、正極活物質粒子の表面に均一に被覆されていることがわかる。
【0110】
実施例2
正極活物質前駆体を[Ni0.8Co0.1Mn0.1](OH)に置き換え、その粒度分布D50が2.5μmであり、一次焼結温度を700℃に調整し、一次焼結において加える酸化ジルコニウム(ZrO)をMgOに置き換え、一次焼結時間は10時間、マグネシウム元素の添加量は5000ppm、アルミニウム元素の添加量を1200ppmに調整するほか、その他の条件は、実施例1と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が2.5μmの二次粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の平均厚みは、0.65μmである。
【0111】
実施例3
正極活物質前駆体を[Ni0.6Co0.2Mn0.2](OH)に置き換え、その粒度分布D50が12μmであり、一次焼結温度を950℃に調整し、一次焼結において加える酸化ジルコニウム(ZrO)をTiOに置き換え、一次焼結時間は15時間、チタン元素の添加量は1000ppm、アルミニウム元素の添加量を1500ppmに調整するほか、その他の条件は、実施例1と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が12μmの二次粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、0.67μmである。
【0112】
実施例4
正極活物質前駆体の粒度分布D50を2μmに置き換え、一次焼結温度を900℃に調整し、二次焼結温度を500℃に調整し、二次焼結に加えるCoOをCo(OH)に置き換え、コバルト元素の添加量は13000ppmであり、二次焼結時間を5時間に調整し、アルミニウム元素の添加量を1800ppmに調整するほか、その他の条件は実施例1と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が2μmの単結晶粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、0.88μmである。
【0113】
実施例5
正極活物質前駆体の粒度分布D50を4μmに置き換え、一次焼結温度を950℃に調整し、二次焼結温度を700℃に調整し、二次焼結に加えるCoOをCoに置き換え、コバルト元素の添加量は1000ppmであり、二次焼結時間を15時間に調整し、三次焼結におけるアルミニウム元素の添加量を1200ppmに調整し、アルミニウム元素とホウ素元素の追加重量比を1.2:1に調整するほか、その他の条件は実施例1と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が4μmの単結晶粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、0.16μmである。
【0114】
実施例6
正極活物質前駆体を[Ni0.95Co0.02Mn0.03](OH)に置き換え、一次焼結温度を850℃に調整し、一次焼結に加える酸化ジルコニウム(ZrO)をAlに置き換え、アルミニウム元素の添加量を2000ppmに調整し、二次焼結温度を650℃に調整し、二次焼結に加えるCoOを酢酸コバルトに置き換え、コバルト元素の添加量を20000ppmに調整し、三次焼結温度を200℃に調整し、三次焼結時間を5時間に調整し、三次焼結において追加するAlClをAlに、BをHBOに置き換え、ホウ素元素の添加量を2000ppmに調整し、アルミニウム元素とホウ素元素の添加量比を0.5:1に調整するほか、その他の条件は実施例1と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が5μmの二次粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、1.42μmである。
【0115】
実施例7
三次焼結温度を400℃に調整し、三次焼結時間を10時間に調整し、三次焼結に加えるAlをAlClに置き換え、アルミニウム元素の添加量を3000ppmに調整し、三次焼結に加えるHBOを(CO)Bに置き換え、ホウ素元素の添加量を1500ppmに調整し、アルミニウム元素とホウ素元素の追加重量比を2:1に調整するほか、その他の条件は実施例6と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が5μmの二次粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、1.81μmである。
【0116】
実施例8
正極活物質前駆体D50を10μmに置き換え、三次焼結温度を350℃に調整し、三次焼結時間を7時間に調整し、三次焼結に加えるAlをAl(SOに置き換え、アルミニウム元素の添加量を500ppmに調整し、三次焼結に加えるHBOをBClに置き換え、ホウ素元素の添加量を500ppmに調整し、アルミニウム元素とホウ素元素の追加重量比を1:1に調整するほか、その他の条件は実施例6と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が10μmの二次粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、1.15μmである。
【0117】
実施例9
コバルト元素の添加量を30000ppmに調整し、アルミニウム元素の添加量を5000ppmに調整し、ホウ素元素の添加量を5000ppmに調整するほか、その他の条件は実施例8と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が10μmの二次粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、2.85μmである。
【0118】
実施例10
アルミニウム元素の添加量を5000ppmに調整し、ホウ素元素の添加量を1000ppmに調整し、アルミニウム元素とホウ素元素の追加重量比を5:1調整するほか、その他の条件は実施例8と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が10μmの二次粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、1.35μmである。
【0119】
実施例11
正極活物質前駆体の粒度分布D50を18μmに調整するほか、その他の条件は実施例8と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が18μmの二次粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、1.10μmである。
【0120】
実施例12
正極活物質前駆体の粒度分布D50を9μmに調整するほか、その他の条件は実施例5と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が9μmの単結晶粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、0.10μmである。
[比較例]
【0121】
比較例1
正極活物質前駆体、水酸化リチウム、及び酸化ジルコニウム(ZrO)を、水酸化リチウムにおけるリチウムと正極活物質前駆体におけるニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素の三者の合計とのモル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.05になるように、コールターミキサー内に入れて1時間混合し、混合物材料を得て、ここで、前記混合物材料の総重量に対して、ジルコニウム元素の添加量は2000ppmであり、前記正極活物質前駆体は[Ni0.92Co0.05Mn0.03](OH)であり、その粒度分布D50は5μmである。
【0122】
上述により得られた混合物材料をローラーハースキルン内に入れて焼結温度800℃で一次焼結20時間を行い、一次焼結雰囲気は酸素であり、正極活物質を得る。
【0123】
これにより得られた正極活物質は、粒度分布D50が5μmの二次粒子である。
【0124】
比較例2
比較例1において焼結して得られた正極活物質を正極活物質基体として、正極活物質基体とAlClを、正極活物質基体の総重量に対して、アルミニウム元素の添加量が1000ppmになるように、コールターミキサー内に入れて1時間混合し、混合物材料を得て、前記混合物材料をローラーハースキルン内に入れて二次焼結を行い、二次焼結温度は300℃、二次焼結時間は10時間、二次焼結雰囲気は酸素であり、AlClが被覆された正極活物質を得る。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が5μmの二次粒子であり、ここで、被覆層の総厚みは、0.05μmである。
【0125】
比較例3
AlClをBに置き換え、ホウ素元素の添加量は1000ppmであるほか、その他の条件は比較例2と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が5μmの二次粒子であり、ここで、被覆層の総厚みは、0.06μmである。
【0126】
比較例4
AlClをAlClとBの混合物に置き換え、ここではアルミニウム元素の添加量は1000ppmであり、ホウ素元素の添加量は1000ppmであり、アルミニウム元素とホウ素元素の追加重量比は1:1であるほか、その他は比較例2と同じである。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が5μmの二次粒子であり、ここで、被覆層の総厚みは、0.10μmである。
【0127】
比較例5
比較例1において焼結して得られた正極活物質を正極活物質基体として、正極活物質体とCoOを、正極活物質基体の総重量に対して、コバルト元素の添加量が8000ppmになるように、コールターミキサー内に入れて1時間混合し、混合物材料を得て、前記混合物材料をローラーハースキルン内に入れて二次焼結を行い、二次焼結温度は600℃、二次焼結時間は10時間、二次焼結雰囲気は酸素であり、CoOが被覆された正極活物質を得る。これにより得られた最終的な被覆後の正極活物質は、粒度分布D50が5μmの二次粒子であり、ここで、0.1μm精度マイクロメータを利用して測定された被覆層の総厚みは、0.41μmである。
【0128】
比較例6
正極活物質前駆体、水酸化リチウム、及び酸化マグネシウムを、水酸化リチウムにおけるリチウム金属モルと正極活物質前駆体におけるニッケル元素、コバルト元素、及びマンガン元素の三者の総金属とのモル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.05になるように、コールターミキサー内に入れて1時間混合し、混合物材料を得て、ここで、前記混合物材料の総重量に対して、マグネシウム元素の添加量は5000ppmであり、前記正極活物質前駆体は[Ni0.8Co0.1Mn0.1](OH)であり、その粒度分布D50は2.5μmである。
【0129】
上述により得られた混合物材料をローラーハースキルン内に入れて焼結温度700℃で一次焼結10時間を行い、一次焼結雰囲気は酸素であり、正極活物質を得る。これにより得られた正極活物質は、粒度分布D50が2.5μmの二次粒子である。
【0130】
比較例7
正極活物質前駆体、水酸化リチウム、及びTiOを、水酸化リチウムにおけるリチウム金属モルと正極活物質前駆体におけるニッケル元素、コバルト元素、及び追加マンガン元素の三者の総金属モルとのモル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.05になるように、コールターミキサー内に入れて1時間混合し、混合物材料を得る。ここで、前記混合物材料の総重量に対して、チタンの添加量は、1000ppmであり、前記正極活物質前駆体は、[Ni0.6Co0.2Mn0.2](OH)であり、粒度分布D50は、12μmである。
【0131】
上述により得られた混合物材料をローラーハースキルン内に入れて焼結温度950℃で一次焼結15時間を行い、一次焼結雰囲気は酸素であり、正極活物質を得る。これにより得られた正極活物質は、粒度分布D50が12μmの二次粒子である。
【0132】
上述実施例1~12、比較例1~7の正極活物質の関連パラメータは、以下の表1に示すとおりである。
【0133】
【表1】
【0134】
また、上述実施例1~12と比較例1~7において得られた正極活物質をそれぞれ、以下のようにコイン型電池、及び二次電池に調製し、性能試験を行う。試験結果は、表2に示すとおりである。
【0135】
(1)コイン型電池の調製
【0136】
上述各実施例と比較例における被覆後の正極活物質製品、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電カーボンを一定量のN-メチルピロリドン(NMP)内に入れ、追加比は90:5:5であり、乾燥室内で攪拌してスラリーを製造し、アルミニウム箔に上述スラリーを塗布し、乾燥、冷間圧縮して正極板を製造する。リチウム片を負極とし、電解液は、1mol/L LiPF/(炭酸エチレン(EC)+炭酸ジエチル(DEC)+炭酸ジメチル(DMC))(体積比1:1:1)であり、コイン型電池ボックス内でコイン型電池に組み立てる。
【0137】
(2)コイン型電池初期比容量試験
【0138】
上述により調製された各コイン型電池を、それぞれ2.8~4.3Vで、0.1Cで4.3Vまで充電し、その後、4.3Vで電流≦0.05mAまで定電圧充電し、2分静置し、このときの充電容量をC0とし、その後、0.1Cで2.8Vまで放電し、このときの放電容量は初期放電容量であり、D0とし、初期クーロン効率は、D0/C0*100%である。
【0139】
測定した放電容量値(つまり、初期放電容量D0)をコイン型電池における正極活物質の質量で割り、つまり、正極活物質のコイン型電池の初期比容量である。
【0140】
(3)二次電池の調製
【0141】
上述各実施例と比較例における正極活物質製品を正極活物質として、導電剤アセチレンブラック、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と重量比94:3:3で、N-メチルピロリドン溶剤体系において充分に攪拌し均一に混合した後、アルミニウム箔に塗布して乾燥、冷間圧縮して、正極板を得る。
【0142】
負極活物質としての人造グラファイト、導電剤アセチレンブラック、接着剤スチレンブタジエンゴム(SBR)、及び増粘剤カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を重量比90:5:2:2:1で、脱イオン水溶剤体系内で充分に攪拌し均一に混合した後、銅箔に塗布して乾燥、冷間圧縮して、負極板を得る。
【0143】
ポリエチレン(PE)で多孔重合薄膜をセパレータフィルムとして製造する。
【0144】
正極板、セパレータフィルム、及び負極板を順序に従い重ね合わせ、セパレータフィルムが正負極の間でアイソレーションの作用を果たすようにし、かつ巻回してジェリーロールを得る。ジェリーロールを外装内に置き、上述(1)コイン型電池の調製で使用された電解液を注入し、かつパッケージし、二次電池を得る。
【0145】
(4)二次電池初期比容量試験
上述により調製された各二次電池を、それぞれ25℃恒温環境で、5分静置し、1/3Cで2.8Vまで放電し、5分静置した後、1/3Cで4.25Vまで充電し、その後、4.25Vで電流≦0.05mAまで定電圧充電し、5分静置し、このときの充電容量をC0とし、その後、1/3Cで2.8Vまで放電し、このときの放電容量は初期放電容量であり、D0とする。
【0146】
測定した放電容量値(つまり、初期放電容量D0)を二次電池における正極活物質の質量で割り、つまり、正極活物質の全電池初期比容量である。
【0147】
(5)二次電池の25/45サイクル特性試験
【0148】
上述により調製された各二次電池を、それぞれ25又は45の恒温環境で、2.8~4.25Vで、1Cで4.25Vまで充電し、その後、4.25Vで電流≦0.05mAまで定電圧充電し、5分静置し、その後、1Cで2.8Vまで放電し、容量をDn(n=0、1、2……)とし、上述操作を繰り返して、300回のサイクルを行い、容量のフェージング(fading)値を測定する。
【0149】
(6)二次電池の70膨張性能試験
【0150】
上述により調製された100%SOCの各二次電池(保護電圧範囲:2.7-4.3V、表示容量2.25Ah)に対して、アルキメデス法を利用して保管前の初期セル(ジェリーロール)体積を測定し、その後、上述の各二次電池をそれぞれ70で保管炉内に保管し、48時間ごとにセルを保管炉から取り出し、室温まで冷却後に再度アルキメデス法を利用してセルの体積を測定し、30日の保管後に試験を終了し、又は体積膨張が50%を超えると保管を停止する。
【0151】
二次電池を70℃で30日保管後の膨張量=[二次電池を70℃で30日保管後のセルの体積-二次電池の初期セルの体積]÷初期放電容量D0である。
【0152】
【表2】
【0153】
上述の結果から、実施例1~12において得られた正極活物質はドープすることを基礎として、コバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物をさらに被覆するので、エネルギー密度、サイクル特性、及び安全性能の改善において、いずれも良好な効果を得られることがわかる。しかも、さらに、正極活物質の初期クーロン効率を高めることができる。
【0154】
これと比較し、比較例1において得られた正極活物質はジルコニウムのみをドープしており、比較例6において得られた正極活物質はマグネシウムのみをドープしており、比較例7において得られた正極活物質はチタンのみをドープしているが、いずれも被覆していない。従って、比較例1はサイクル特性、及び安全性能において劣り、比較例6と7は正極活物質の容量において劣り、しかもサイクル特性、及び安全性能の改善においても効果的に向上していない。
【0155】
比較例2において得られた正極活物質はジルコニウムをドープしているが、アルミニウム含有化合物のみを被覆している。比較例3において得られた正極活物質はジルコニウムをドープしているが、ホウ素含有化合物のみを被覆している。比較例4において得られた正極活物質はジルコニウムをドープしているが、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物のみを被覆している。比較例5において得られた正極活物質はジルコニウムをドープしているが、コバルト含有化合物のみを被覆している。比較例2~5はいずれも被覆しているが、未被覆と比較して、正極活物質の容量において良好だが、コバルト含有化合物、アルミニウム含有化合物、及びホウ素含有化合物が共同で被覆されることを満たしておらず、従って、サイクル特性、及び安全性能においていずれも明らかに改善されていない。
【0156】
また、実施例9と10は、実施例8と比較して、これらの実施例はいずれもエネルギー密度、サイクル特性、及び安全性能の改善において良好な結果が得られることがわかる。但し、実施例9の被覆厚みは厚すぎ、被覆厚みが2.85μmに達するので、容量に影響し、容量が低下する傾向があり、同時にサイクル過程におけるリチウムイオンの伝送に影響し、サイクル特性が低下する傾向がある。実施例10の被覆比は高すぎ、アルミニウム元素とホウ素元素の追加重量比(アルミニウム:ホウ素)は5:1に達するので、容量及びサイクル特性が低下する傾向がある。
【0157】
実施例12と実施例5、実施例11と実施例8を比較し、これらの実施例はいずれもエネルギー密度、サイクル特性、及び安全性能の改善において良好か結果が得られることがわかる。但し、実施例11、12において得られた正極活物質の平均体積粒度D50は大きすぎるので、正極活物質製品の容量、サイクル特性、及び安全性能に一定の影響がある。
【0158】
本出願は、上述実施形態に限定されないことを説明する必要がある。上述実施形態は例示に過ぎず、本出願の技術的解決手段の範囲内において技術構想が実質的に同一の構成、同じ作用効果を発揮する実施形態はいずれも本出願の技術範囲に含まれる。また、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施形態に当業者が想到可能な各種変形を行うこと、実施形態の一部の構成要素を組み合わせて構築されるその他の形態も本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0159】
1 バッテリパック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
53 トップカバーアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10