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特許7534429耐湿及び耐水特性を有するポリイミドフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】耐湿及び耐水特性を有するポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240806BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022554577
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 KR2021003274
(87)【国際公開番号】W WO2021187882
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0032746
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504408236
【氏名又は名称】ドゥーサン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン、キョンイル
(72)【発明者】
【氏名】キム、トンヨン
(72)【発明者】
【氏名】シム、ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォンギョム
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0074168(KR,A)
【文献】特表2010-536981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0031997(US,A1)
【文献】特開2020-029486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00-5/02、5/12-5/22、
C08G73/00-73/26、
C09D1/00-10/00、101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のジアミン、及び少なくとも1種の酸二無水物を含んで共重合されたポリイミドフィルムであって、
上記酸二無水物は、芳香族酸二無水物と脂環族酸二無水物とを含み、
前記脂環族酸二無水物は、全酸二無水物100モル%に対して10~30モル%の割合で含まれ、
上記ジアミンは、フッ素化芳香族ジアミンとエーテル系芳香族ジアミンとを含み、
上記フッ素化芳香族ジアミンと上記エーテル系芳香族ジアミンの使用割合は、60~95:40~5モル%の割合であり、
上記ポリイミドフィルムの大きさが縦5cm横5cm厚さ80μmである場合の当該ポリイミドフィルムの85℃、相対湿度85%の条件下で72時間処理後の吸湿率が1.0%以下であり、100℃で2時間処理後の吸水率が3.0%以下であり、吸湿処理及び吸水処理後の黄色度変化量(ΔY.I)が0.5以下である、
ポリイミドフィルム。
【請求項2】
吸湿率が0.9%以下であり、
吸水率が2.5%以下であり、
吸湿処理後の黄色度変化量(ΔY.I)、及び吸水処理後の黄色度変化量(ΔY.I)は、それぞれ、0.5以下である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
厚さ30~100μmで、波長550nmにおける光透過率が85%以上であり、
ASTM E313-73規格に基づく黄色度が5以下である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
上記芳香族酸二無水物は、フッ素化芳香族酸二無水物、非フッ素化芳香族酸二無水物、及びスルホン系芳香族酸二無水物からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
上記ジアミン(a)と上記酸二無水物(b)とのモル比(a/b)は、0.7~1.3の範囲である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
ディスプレイ装置のカバーウィンドウとして使用される、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムに関し、より詳しくは、優れた耐湿及び耐水特性を同時に確保すると共に、高い透明性を有することで、ディスプレイのカバーウィンドウとして使用することができるポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Display:OLED)などのようなディスプレイ装置の表面には、パネルを保護するためのカバーウィンドウ(cover window)が適用されている。従来、カバーウィンドウ材質としては、平坦度、耐熱性、耐化学性、及び水分や気体に対するバリア性に優れ、線膨張係数(CTE)が小さく、光透過率が高い強化ガラスが主に使用されている。
【0003】
なお、近年、カーブドディスプレイや折り畳み式(in-folding)ディスプレイのようなフレキシブルディスプレイが開発されつつある。このようなフレキシブルディスプレイに適用するためには、カバーウィンドウもフレキシブル性を有する必要があるが、従来のガラス製のカバーウィンドウは、重くて割れやすく、また、フレキシブル性が劣り、フレキシブルディスプレイに適していない。
【0004】
上記のような問題点を解決するため、最近、成型の自由度が比較的高いプラスチック材質を採用したカバーウィンドウが提案されている。プラスチック材質を採用したカバーウィンドウは、軽くて割れにくく、多様なデザインを実現できるという長所を持つ。現在、カバーウィンドウ用プラスチック材料としては、主に透明性に優れたポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートなどが使用されている。このような材料は、透明性に優れているという長所を持つが、ガラス転移温度(Tg)が150℃以下で、耐熱特性が悪く、耐化学性及び機械的強度が低いため、適用には限界がある。また、カバーウィンドウは、フレキシブルディスプレイ装置の最外側に配置されるが、上述した材料を適用する場合、外部紫外線に継続して晒され、黄変現象が生じ、ディスプレイの視認性に悪影響を与えることになる。
【0005】
一方、カバーウィンドウが吸水率の大きい素材で構成される場合、基材フィルムと接着剤層に内部応力が蓄積されるという問題がある。また、大気中に流入した水分が、加熱によって外部に急に放出されると、カバーウィンドウを構成するフィルムの寸法変化及び光学特性変化を起こすことがある。これにより、反り(warpage)や剥離などによる材料間の接着力の低下が発生し、また、黄変や白化などの問題がもたらされ、ディスプレイの視認性に悪影響を与えることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点を解決するために案出されたものであって、改善された耐湿及び耐水特性を同時に確保すると共に、透明性、フレキシブル性、機械的特性などの諸物性に優れているため、カバーウィンドウとして使用することができる新規なポリイミドフィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述のような目的を達成するため、少なくとも1種のジアミン、及び少なくとも1種の酸二無水物を含んで共重合されたポリイミドフィルムであって、85℃、相対湿度85%の条件下で72時間処理後の吸湿率が1.0%以下であり、100℃で2時間処理後の吸水率が3.0%以下であり、吸湿処理又は吸水処理後の黄色度変化量(ΔY.I)が0.5以下であるポリイミドフィルムを提供する。
【0008】
本発明の一具体例では、上記ポリイミドフィルムは、吸湿率が0.9%以下であり、吸水率が2.5%以下であり、吸湿処理後の黄色度変化量(ΔY.I)及び吸水処理後の黄色度変化量(ΔY.I)は、それぞれ、0.5以下であり得る。
【0009】
本発明の一具体例では、上記ポリイミドフィルムは、厚さ30~100μmで、波長550nmにおける光透過率が85%以上であり、ASTM E313-73規格に基づく初期黄色度が5以下であり得る。
【0010】
本発明の一具体例では、上記ジアミンは、少なくとも1種の芳香族ジアミンを含み、又は、芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとを含むことができる。
【0011】
本発明の一具体例では、上記芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとは70~100:0~30モル%の割合で含まれ得る。
【0012】
本発明の一具体例では、上記芳香族ジアミンは、フッ素化第1ジアミン、スルホン系第2ジアミン、ヒドロキシ系第3ジアミン、エーテル系第4ジアミン、及び非フッ素第5ジアミンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0013】
本発明の一具体例では、上記酸二無水物は、少なくとも1種の芳香族酸二無水物を含み、又は、芳香族酸二無水物と脂環族酸二無水物とを含むことができる。
【0014】
本発明の一具体例では、上記芳香族酸二無水物と脂環族酸二無水物とは、70~100:0~30モル%の割合で含まれ得る。
【0015】
本発明の一具体例では、上記芳香族酸二無水物は、フッ素化芳香族第1酸二無水物、非フッ素化芳香族第2酸二無水物、及びスルホン系芳香族第3酸二無水物からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0016】
本発明の一具体例では、上記ジアミン(a)と上記酸二無水物(b)とのモル比(a/b)は、0.7~1.3の範囲であり得る。
【0017】
本発明の一具体例では、上記ポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置のカバーウィンドウとして使用され得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施例によれば、ポリイミドフィルムを構成する所定の成分を採用し、また、その含有量を調節することにより、優れた耐湿及び耐水特性を確保することができ、このような耐湿及び耐水特性によって、反り(warpage)による剥離(delamination)現象を防止し、黄変を極力抑制する効果を奏することができる。
【0019】
また、本発明では、高い光透過度、低い黄色度、優れた耐湿及び耐水特性を示し、最終製品の作業性及び信頼性を向上させることができる。
【0020】
従って、本発明のポリイミドフィルムは、フラットディスプレイパネルをはじめとした当該分野におけるディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイなどのカバーウィンドウに有用に適用でき、その他、当該分野において周知のIT製品、電子製品、家電製品などにも適用可能である。
【0021】
本発明による効果は、上述の記載に制限されず、さらに種々の効果が本明細書中に含まれている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳述する。本発明の実施例は、当該技術分野で通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものであり、後述の実施例は、種々に変更して実施することができ、本発明の範囲は、後述の実施例によって限定されるものではない。なお、本明細書全体にわたって同一の参照符号は、同一の構造を指称する。
【0023】
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が共通して理解できる意味で使用されている。また、一般的に使用される辞典に定義されている用語は、特に定義されていない限り、理想的に又は過剰解釈してはならない。
【0024】
また、本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、本明細書全体において、「上に」又は「上方に」とは、対象部分の上又は下に位置する場合だけでなく、その中間にまた別の部分が存在する場合も含むことを意味し、必ずしも重力方向を基準に上に位置することを意味するわけではない。また、本明細書中、「第1」、「第2」などの用語は、任意の順序又は重要度を示すのではなく、構成要素を互いに区別するために使用されている。
【0025】
<ポリイミドフィルム>
本発明の一実施例に係るポリイミド樹脂フィルムは、ディスプレイ装置に設けられ得る透明フィルムであって、より具体的には、フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウ(cover window)として使用することができる。
【0026】
ここで、カバーウィンドウとは、フレキシブルディスプレイ装置の最外側に配置されてディスプレイ装置を保護するフィルムを指称する。このようなカバーウィンドウは、ウィンドウフィルム単独であるか、又は光学的に透明な樹脂からなる別の基材(substrate)フィルム上に接着剤層とウィンドウコーティング層が設けられているフィルムであり得る。
【0027】
なお、外部に露出されるディスプレイのカバーウィンドウは、日常生活でフレキシブル性(flexibility)などの加工特性と優れた光学特性を有する必要があり、また、他の基材との優れた接着力も併せ持つ必要がある。従来、プラスチック材質のウィンドウが高い吸水率と吸湿率を有する場合は、大気中に存在する水分の流入によって、フィルム自体の寸法変化が発生するだけでなく、隣接した他の基材との接着力が低下し、及び/又は、黄変現象などのように光学特性が低下するという現像がもたらされる。これにより、フォーダブルディスプレイ(foldable display)のカバーウィンドウに適用することが困難であった。
【0028】
これに対して、本発明に係るポリイミドフィルムは、従来周知のプラスチック製のフィルムに比べて、優れた耐湿及び耐水特性を有すると共に、上記吸湿及び吸水処理による黄色度の変化量(ΔY.I)が、特定の範囲以下に抑制されることを特徴とする。これにより、上記ポリイミドフィルムは、当該分野で周知のディスプレイ装置に制限なく適用することができ、特にインフォールディング(in-folding)、アウトフォールディング(out-folding)型の折り畳み式携帯電話機のカバーウィンドウに適用する場合、優れた耐湿及び耐水特性によって、高い光学特性と優れた接着力を継続して発揮することができる。
【0029】
本発明の一具体例では、上記ポリイミドフィルムは、少なくとも1種のジアミン、及び少なくとも1種の酸二無水物を含んで共重合されたものであって、吸湿率が1.0%以下、吸水率が3.0以下、上記吸湿・吸水処理による黄色度変化量(ΔY.I)が0.5以下であり得る。
【0030】
本明細書において、「吸湿率」とは、当該ポリイミドフィルムを所定の条件(例えば、85℃、相対湿度85%の条件下で72時間放置)下で吸湿処理した後の重量と初期乾燥重量との変化量(百分率)を意味する。また、「吸水率」とは、当該ポリイミドフィルムを所定の条件(例えば、蒸留水に浸漬した状態で100℃で2時間放置)下で吸水処理した後の重量と初期乾燥重量との変化量(百分率)を意味する。さらに、本明細書において、「黄色度変化量(ΔY.I)」とは、上述した吸湿処理及び吸水処理のうちの少なくとも一つを実施した後の黄色度と初期黄色度との変化値を意味する。
【0031】
なお、上述した吸湿率、吸水率、及び黄色度変化値(ΔY.I)は、当該フィルムの厚さにより影響され得る。このような吸湿率、吸水率、及び黄色度変化値(ΔY.I)の数値は、当該ポリイミドフィルムの厚さ10~100μmを基準にして測定されるものであり、具体的には、20~90μm、より具体的には、80±5μmであり得る。また、本発明では、黄色度変化値(例えば、ΔY.I)は、当該ポリイミドフィルムの所定の厚さを基準にして測定される値を示しているが、これに限定されず、ポリイミドフィルムの厚さ変化による黄色度変化値(例えば、ΔY.I)の割合(ratio)で示すことも本発明の範疇に含まれる。
【0032】
具体的には、本発明に係るポリイミドフィルムは、85℃、相対湿度85%の条件下で72時間処理後の吸湿率が1.0%以下であり、より具体的には、0.9%以下であり得る。また、上記ポリイミドフィルムは、100℃で2時間処理後の吸水率が3.0%以下であり、具体的には、2.5%以下であり得る。なお、吸湿処理及び吸水処理時の下限値は、特に限定されず、一例として、0%超過であり得る。
【0033】
また、本発明に係るポリイミドフィルムは、所定の吸湿条件及び吸水条件のうちの少なくとも一つの条件下で処理後の黄色度と初期黄色度との変化値(ΔY.I)が0.5以下であり得る。具体的には、吸湿処理後の黄色度と初期黄色度との変化量(ΔY.I)、及び吸水処理後の黄色度と初期黄色度との変化量(ΔY.I)は、それぞれ0.5以下であり、より具体的には0超~0.5以下であり得る。
【0034】
上述のような吸湿率、吸水率、黄色度変化量(ΔY.I)のパラメータ及び当該数値を有する本発明のポリイミドフィルムであれば、過酷な環境下でも水分に対する高い抵抗性を有するので、高い光学特性と優れた接着力を継続して保持することができる。
【0035】
本発明に係るポリイミドフィルムが、移動通信端末やタブレットPCなどのカバーウィンドウとして使用されるためには、ディスプレイ画面の視認性を高めるため、高透明度及び光透過率などの優れた光学特性を併せ持つ必要がある。
【0036】
本発明の他の具体例では、上記ポリイミドフィルムは、厚さ30~100μmで、波長550nmにおける光透過率が85%以上であり、具体的には89%以上、より具体的には90%~99%であり得る。また、ASTM E313規格に基づく黄色度(ΔY.I)が5以下であり、具体的には4以下、より具体的には3.5以下であり得る。上記黄色度は、吸湿及び吸水処理が実施される前の初期黄色度の値を意味することができる。
【0037】
本発明に係るポリイミドフィルムが、上述のような耐湿性、耐水性、及び低黄色度特性を満足すれば、ポリイミド樹脂を構成する成分及び/又はその組成などに、特に制限はない。
【0038】
一例として、上記ポリイミドフィルムは、少なくとも1種のジアミン、及び少なくとも1種の酸二無水物を含んで共重合されたものであり、具体的には、上述したジアミン、酸二無水物、必要に応じて溶剤を含むポリアミック酸組成物を、高温でイミド化及び熱処理して製造されるものであり得る。
【0039】
一般的に、ポリイミド(polyimide、PI)樹脂とは、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミン又は芳香族ジイソシアネートとを溶液重合してポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化して製造される高耐熱樹脂をいう。このようなポリイミド樹脂は、イミド(imide)環を含有する高分子物質であって、イミド環の化学的安定性に基づいて、耐熱性、耐化学性、耐摩耗性、及び電気的特性に優れている。上記ポリイミド樹脂は、ランダム共重合体(random copolymer)やブロック共重合体(block copolymer)形態であり得る。
【0040】
本発明のポリイミドフィルムを構成するジアミン(a)成分は、分子内にジアミン構造を有する化合物であれば、特に限定されず、当該分野で周知のジアミン化合物を制限なく使用可能である。一例として、ジアミン構造を有している、芳香族、脂環族、脂肪族化合物、又はこれらの組み合わせなどを使用することができる。
【0041】
特に、本発明では、ポリイミドフィルムが有する優れた耐湿及び耐水性、高い光透過度(high transmittance)、低いY.I、低いヘイズ(haze)などの光学特性を考慮して、少なくとも1種の芳香族ジアミンを使用し、又は上記芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとを混用することができる。
【0042】
上記芳香族ジアミンの具体例としては、フッ素化置換基を有するフッ素系、スルホン(sulfone)系、ヒドロキシ(hydroxyl)系、エーテル(ether)系、非フッ素系などのジアミンを、それぞれ単独で使用、又は適宜組み合わせて1種以上混用することができる。これにより、本発明では、ジアミン化合物として、フッ素置換基が導入されたフッ素化芳香族第1ジアミン、スルホン系芳香族第2ジアミン、ヒドロキシ系芳香族第3ジアミン、エーテル系芳香族第4ジアミン、非フッ素系芳香族第5ジアミンを、それぞれ単独で使用し、又はこれらの2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
使用可能なジアミン単量体(a)としては、例えば、オキシジアニリン(ODA)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2’-TFDB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,3’-ジアミノビフェニル(2,2’-bis(trifluoromethyl)-4,3’-diaminobiphenyl)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-5,5’-ジアミノビフェニル(2,2’-bis(trifluoromethyl)-5,5’-diaminobiphenyl)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノフェニルエーテル(2,2’-bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenyl ether、6-FODA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-DDS)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3,3’-DDS)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA)、或いは、これらの1種又は2種以上を混合して適用することができるが、これらに制限されない。
【0044】
ポリイミドフィルムの高透明性、高ガラス転移温度、及び低黄色度を考慮して、フッ素化第1ジアミンとしては、直線状高分子化を誘導し得る、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2’-TFDB)、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(6-FAPB)を使用することができる。また、スルホン系第2ジアミンとしては、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-DDS)、又は3,3’-DDSを使用することができる。また、ヒドロキシ系第3ジアミンとしては、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-bis(3-amino-4-hydroxyphenyl)-hexafluoropropane、BIS-AP-AF)を使用することができる。また、エーテル系第4ジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノフェニルエーテル(6-FODA)、又はオキシジアニリン(ODA)を使用することができる。また、非フッ素系第5ジアミンとしては、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)-ヘキサフルオロプロパン(2,2-bis(3-amino-4-methylphenyl)-hexafluoropropane、BIS-AT-AF)、m-トリジン(m-tolidine)、又はp-フェニレンジアミン(p-PDA)を使用することができる。
【0045】
本発明のジアミン単量体(a)において、上記フッ素化芳香族第1ジアミン、スルホン系芳香族第2ジアミン、ヒドロキシ系芳香族第3ジアミン、エーテル系芳香族第4ジアミン、非フッ素芳香族第5ジアミンなどの含有量は、特に限定されないが、それぞれ、全ジアミン100モル%に対して、0~100モル%であり、具体的には10~90モル%、より具体的に20~80モル%であり得る。但し、上記第1ジアミン~第5ジアミンのうちの少なくとも1つの含有量は、全ジアミン100モル%を満たすように含まれ得る。
【0046】
上記芳香族ジアミンと混用可能な脂環族ジアミンとしては、例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン[2,2-bis(3-amino-4-hydroxycyclohexyl)hexafluoropropane]、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(MACM)、4,4’-メチレンビシクロヘキシルアミン(PACM)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4-BAC)、シス-1,2-シクロヘキサンジメタンアミン、トランス-1,2-シクロヘキサンジメタンアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)エーテル、N-(4-アミノシクロヘキシル)-1,4-シクロヘキサンジアミン、又はこれらの混合物などを使用することができるが、これらに制限されない。
【0047】
本発明のジアミン単量体(a)において、芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとの混合割合は、全ジアミン100モル%に対して、70~100:0~30モル%の割合であり、具体的には80~100:0~20モル%の割合であり得る。
【0048】
本発明の好適な一例では、上記ジアミン(a)として、フッ素化芳香族第1ジアミン及びエーテル系芳香族第4ジアミンを混用することができる。このとき、これらの使用割合は、特に制限されず、一例として、60~95:40~5モル%の割合であり得る。
【0049】
本発明の好適な他の一例では、 上記ジアミン(a)として、少なくとも1種のフッ素化芳香族第1ジアミンを混用することができる。このとき、これらの使用割合は、50~80:20~50モル%の割合であり得るが、特に制限されない。
【0050】
本発明のポリイミドフィルムを構成する酸二無水物(b)単量体としては、分子内に酸二無水物構造を有する当該分野で周知の化合物を制限なく使用することができる。一例として、酸二無水物(dianhydride)構造を有している、芳香族、脂環族、脂肪族化合物、又はこれらの組み合わせなどを使用することができ、具体的には、少なくとも1種の芳香族酸二無水物を使用し、又は上記芳香族酸二無水物と脂環族酸二無水物とを混用することができる。
【0051】
上記芳香族酸二無水物の具体例としては、フッ素化芳香族第1酸二無水物、非フッ素化芳香族第2酸二無水物、スルホン系芳香族第3酸二無水物を、それぞれ単独で使用、又はこれらの少なくとも2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0052】
上記フッ素化第1酸二無水物単量体は、フッ素置換基が導入された芳香族酸二無水物であれば、特に限定されない。使用可能なフッ素化第1酸二無水物としては、例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(2,2-bis(3,4-dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6-FDA)、4-(トリフロオロメチル)ピロメリット酸二無水物(4-(trifluoromethyl)pyromellitic dianhydride、4-TFPMDA)などが挙げられるが、これらに制限されない。これらを単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。フッ素化酸二無水物のうち、6-FDAは、分子鎖間及び分子鎖内の電荷移動錯体(CTC:Change Transfer Complex)の形成を制限する特性が非常に高いため、透明化に非常に適している化合物である。
【0053】
また、非フッ素化第2酸二無水物単量体は、フッ素置換基が導入されていない非フッ素化芳香族酸二無水物であれば、特に限定されない。使用可能な非フッ素化第3酸二無水物単量体としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyl tetracarboxylic acid dianhydride、BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4-(4,4-isopropylidenediphenoxy)bis(phthalic anhydride)(BPADA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシランジアンヒドリド(bis(3,4-dicarboxyphenyl)dimethylsilanedianhydride、SiDA)などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0054】
また、スルホン系第3酸二無水物単量体は、スルホン基が導入された酸二無水物であれば、特に限定されず、一例として、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-diphenylsulfonetetracarboxylic dianhydride、DSDA)が挙げられる。
【0055】
本発明の酸二無水物単量体(b)において、上記フッ素化芳香族第1酸二無水物、非フッ素化芳香族第2酸二無水物、スルホン系芳香族第3酸二無水物などの含有量は、特に限定されない。一例として、これらは、それぞれ、全酸二無水物100モル%に対して、0~100モル%の範囲で含まれ、具体的には10~90モル%、より具体的には20~80モル%であり得る。但し、上記第1酸二無水物~第3酸二無水物のうちの少なくとも一つの含有量は、全酸二無水物100モル%を満たすように含まれ得る。
【0056】
上記脂環族(alicyclic)酸二無水物は、化合物中において芳香族環ではなく脂環族環を有すると共に酸二無水物構造を有する化合物であれば、特に制限されない。上記芳香族酸二無水物と混用可能な脂環族酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ビシクロ[2,2,2]-7-オクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BCDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’、4,4’-テトラカルボン酸二無水物(H-BPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサン-テトラカルボン酸二無水物(H-PMDA)、bicyclo[2.2.2]octane-2,3,5,6-tetracarboxylic2,3:5,6-dianhydride(7CI,8CI)、又はこれらの1種以上の混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0057】
本発明の酸二無水物単量体(b)において、芳香族酸二無水物と脂環族酸二無水物との混合割合は、全酸二無水物100モル%に対して、70~100:0~30モル%、具体的には80~100:0~20モル%の割合であり得る。
【0058】
本発明の好適な一例では、上記酸二無水物(b)として、フッ素化第1酸二無水物及び非フッ素化第2酸二無水物を混用することができる。このとき、これらの使用割合は、特に制限されず、一例として、10~80:90~20モル%の割合であり得る。
【0059】
本発明の好適な他の一例では、上記酸二無水物(b)として、少なくとも1種の非フッ素化第3酸二無水物を混用することができる。このとき、これらの使用割合は、50~80:20~50モル%の割合であり得るが、これに制限されない。
【0060】
本発明の好適な他の一例では、上記酸二無水物(b)として、脂環族酸二無水物と非フッ素化第2酸二無水物とを混用することができる。このとき、これらの使用割合は、5~30:95~70モル%の割合であり得るが、これに制限されない。
【0061】
本発明のポリイミドフィルムを構成するポリアミック酸組成物において、上記ジアミン成分(a)のモル数と上記酸二無水物成分(b)のモル数との比(a/b)は、0.7~1.3であり、好ましくは、0.8~1.2であり、より好ましくは、0.9~1.1の範囲であり得る。
【0062】
上述のように構成される本発明のポリイミドフィルムは、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族酸二無水物とから得られる繰り返し単位を含む。このような芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物とで構成される繰り返し単位を含む場合、優れた耐湿及び耐水特性を示すと共に、吸湿・吸水処理後に黄変現象が極力抑制され得る。また、芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物とで構成されるポリイミドの主鎖を含み、ここに所定の脂環族成分(例えば、ジアミン、酸二無水物)が含まれる場合でも、優れた耐湿及び耐水の効果を示しながら、これによる黄変現象が極力抑制され得る。
【0063】
本発明のポリアミック酸組成物は、上述した単量体の溶液重合反応のための溶媒として、当該分野で周知の有機溶媒を制限なく使用することができる。使用可能な溶媒としては、例えば、m-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルポキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテート、及びジメチルフタレート(DMP)のうちから選択される一つ以上の極性溶媒を使用することができる。その他に、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムのような低沸点溶液又はγ-ブチロラクトンのような溶媒を使用することができる。このとき、溶媒(重合用第1溶媒)の含有量は、特に制限されないが、適切なポリアミック酸組成物(ポリアミック酸溶液)の分子量と粘度を得るため、ポリアミック酸組成物の全重量に対して、50~95重量%が好ましく、より好ましくは、70~90重量%の範囲で含むことができる。
【0064】
上記ポリアミック酸組成物は、少なくとも1種の酸二無水物と少なくとも1種のジアミンとを有機溶媒に投入した後、反応させて製造することができ、一例として、ポリイミドの物性改善のため、ジアミン(a)と酸二無水物(b)とを、約1:1の当量比に調節することができる。このようなポリアミック酸組成物の組成は、特に制限されず、一例として、ポリアミック酸組成物の全重量100重量%に対して、酸二無水物2.5~25.0重量%、ジアミン2.5~25.0重量%、及び組成物100重量%を満たすような残部の有機溶媒を含んで構成することができる。なお、有機溶媒の含有量は、70~90重量%であり得る。また、上記ポリアミック酸組成物は、当該固形分100重量%に対して、酸二無水物30~70重量%、及びジアミン30~70重量%の範囲で含むことができるが、これに制限されない。
【0065】
上述のように構成されるポリアミック酸組成物は、約1,000~200,000cps、好ましくは、約5,000~50,000cps範囲の粘度を有することができる。ポリアミック酸組成物の粘度が上述の範囲内である場合、ポリアミック酸組成物のコーティング時において、厚さの調節が容易であり、均一なコーティング表面が得られる。
【0066】
必要に応じて、上記ポリアミック酸組成物は、本発明の目的と効果を損なわない範囲内で、可塑剤、酸化防止剤、難燃化剤、分散剤、粘度調節剤、レベリング剤などの少なくとも1種の添加剤を少量含むことができる。
【0067】
本発明に係るポリイミド樹脂フィルムは、当該分野で周知の常法で製造することができ、一例として、上記ポリアミック酸組成物を、基材(substrate)、例えば、ガラス基板上にコーティング(キャスティング)した後、30~350℃の範囲で温度を徐々に昇温させながら、0.5~8時間、イミド閉環反応(imidazation)を誘導して製造することができる。
【0068】
なお、コーティング方法としては、当業界で周知の常法を制限なく使用することができ、例えば、スピンコーティング(spin coating)法、ティップコーティング(dip coating)法、ソルベントキャスティング(solvent casting)法、スロットダイコーティング(slot die coating)法、及びスプレーコーティング法からなる群から選択される少なくとも1つの方法により行われる。上記無色透明なポリイミド樹脂層の厚さが、数百nmから数十μmになるように、ポリアミック酸組成物を少なくとも1回以上コーティングすることができる。
【0069】
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法において、重合されたポリアミック酸を支持体にキャスティングしてイミド化するステップに適用されるイミド化法としては、熱イミド化法、化学イミド化法、又は熱イミド化法と化学イミド化法とを併用して適用することができる。
【0070】
熱イミド化法は、ポリアミック酸組成物(ポリアミック酸溶液)を支持体上にキャスティングし、30~400℃の温度範囲で徐々に昇温させながら、1~10時間加熱してポリイミドフィルムを得る方法である。
【0071】
また、化学イミド化法は、ポリアミック酸組成物に酢酸無水物などの酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどのアミン類などに代表されるイミド化触媒とを投入する方法である。このような化学イミド化法に、熱イミド化法又は熱イミド化法を併用する場合、ポリアミク酸組成物の加熱条件は、ポリアミク酸組成物の種類、製造されるポリイミドフィルムの厚さなどによって変動し得る。
【0072】
上記熱イミド化法と化学イミド化法との併用について、より具体的には、ポリアミック酸組成物に脱水剤及びイミド化触媒を投入し、支持体上にキャスティングした後、80~300℃、好ましくは、150~250℃で加熱して脱水剤及びイミド化触媒を活性化することで、部分的に硬化及び乾燥した後、ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0073】
このように形成されたポリイミドフィルムの厚さは、特に制限されず、適用される分野によって適宜調節することができる。一例として、10~150μmの範囲であり、好ましくは、30~100μmの範囲であり得る。
【0074】
上述のように製作された本発明のポリイミドフィルム、及びその変形例は、優れた耐湿及び耐水特性と、優れた光学特性が要求される多様な分野において有用に使用可能である。特に、ディスプレイ装置のカバーウィンドウ(cover window)に適用されることで、表面傷を防止し、フレキシブルディスプレイ装置に優れたフレキシブル性と視認性を付与することができる。
【0075】
本発明において、ディスプレイ装置とは、画像を表示するフレキシブルディスプレイ装置や非フレキシブルディスプレイ装置を指称し、フラットパネルディスプレイ装置(FPD:Flat Panel Display Device)だけでなく、カーブドディスプレイ装置(Curved Display Device)、フォーダブルディスプレイ装置(Foldable Display Device)、折り畳み式携帯電話機、スマートフォン、移動通信端末やタブレットPCなどが挙げられる。具体的には、上記ディスプレイ装置は、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、電気泳動表示装置(Electrophoretic Display)、有機発光表示装置(Organic Light Emitting Display)、無機EL表示装置(Inorganic Light Emitting Display)、電界放出表示装置(Field Emission Display)、表面伝導型電子放出表示装置(Surface-conduction Electron-emitter Display)、プラズマ表示装置 (Plasma Display)、陰極線管表示装置(Cathode Ray Display)、電子ペーパーなどであり得る。一具体例としては、LCD、PDP、OLEDなどのフラットディスプレイパネルであり得る。上述した用途に限らず、本発明のポリイミドフィルムは、当該分野で周知のディスプレイ装置に適用可能であり、その他、フレキシブルディスプレイ用基板や保護膜として活用することもできる。
【0076】
上述のようなポリイミドフィルムが設けられたディスプレイ装置の一具体例では、ディスプレイ部、偏光板、タッチスクリーンパネル、カバーウィンドウ、及び保護フィルムを含み、上記カバーウィンドウは、本発明の一実施例に係るポリイミドフィルムを含むことができる。ここで、ディスプレイ装置を構成する各構成要素は、特に制限されず、当該分野で周知の構成要素を含むことができる。
【実施例
【0077】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳述するが、後述の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
[実施例1~5:ポリイミドフィルムの製造]
下記表1に記載のジアミンと酸二無水物とを含む組成を用いて、ポリアミック酸組成物を製造した。
【0079】
上記ポリアミック酸組成物をLCD用ガラス板にバーコーター(bar coater)を用いてコーティングした後、窒素雰囲気のコンベクションオーブンにて、80℃で30分、150℃で30分、200℃で1時間、300℃で1時間、段階的に徐々に昇温させながら、乾燥及びイミド閉環反応(imidazation)を行った。これにより、イミド化率が85%以上である膜厚80μmのポリイミドフィルムを製造した。その後、ガラス板からポリイミドフィルムを分離した。
【0080】
【表1】
【0081】
[比較例1~5:ポリイミドフィルムの製造]
上記表1に記載の組成を使用した以外は、上記実施例1~5と同様にして比較例1~5のポリイミドフィルムをそれぞれ製造した。
【0082】
[実験例:物性評価]
実施例1~5及び比較例1~5で製造されたポリイミド樹脂フィルムの物性を、以下の方法で評価し、その結果を下記表2に示す。なお、下記表2に記載の各物性は、厚さ80μmを基準としている。
【0083】
<物性評価方法>
1)光透過度の測定
400nmと550nm波長においてUV-Vis-NIRスペクトロフォトメーターを用いて、ASTM E313-73規格であるC光源と視野角2度で測定した。
【0084】
2)黄色度の測定
UV分光計(コニカミノルタ社製、CM-3700d)を用いて、550nmでの黄色度を、ASTM E313規格に基づいて測定した。
【0085】
3)厚さの測定
シリコンウエハーに、透明ポリアミック酸樹脂を20μm以下の膜厚でコーティングした後、乾燥及びイミド閉環反応を行い、波長550nmにおいて非接触式屈折率測定装置(エリプソテクノロジーのElli-RP)を用いて、フィルムの厚さを測定した。
【0086】
4)吸湿率の測定
製造されたポリイミド樹脂フィルムを、大きさ5cm×5cmの正方形に切断した。切断された試験片を110℃で1時間乾燥した後、重さを測定し、これを初期重量(W1)とした。初期重量を測定した試験片を、85℃/相対湿度85%の恒温恒湿器に入れ、72時間吸湿処理した後、その重量を測定して吸湿処理後の重量(W2)とした。測定された数値を下記[式1]に代入して吸湿率を計算した。
[式1]
吸湿率(%)=[(W2-W1)/W1]×100
【0087】
5)吸水率の測定
製造されたポリイミド樹脂フィルムを、大きさ5cm×5cmmの正方形に切断した。切断された試験片を110℃で1時間乾燥した後、重さを測定し、これを初期重量(W1)とした。初期重量を測定した試験片を、100℃の蒸留水に2時間浸漬した後、その重量を測定して吸水処理後の重量(W3)とした。測定された数値を下記[式2]代入して吸水率を計算した。
[式2]
吸水率(%)=[(W3-W1)/W1]×100
【0088】
6)吸湿及び吸水処理後の黄色度変化量(ΔY.I)の測定
吸湿処理と吸水処理とをそれぞれ実施した後、黄色度を測定し、下記[式3]によって黄色度の変化量を示した。
[式3]
ΔY.I=吸湿条件(又は吸水条件)下で放置後に測定されたY.I-初期Y.I
【0089】
【表2】
【0090】
上記表2に示されるように、本発明に係るポリイミドフィルムは、吸湿率及び吸水率がより改善された特性を有すると共に、吸湿及び吸水処理による黄色度の変化値が最小化され、高い光学特性を継続して保持できることが確認された。具体的には、芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物とで構成される場合、優れた耐湿及び耐水特性と、低い黄色度変化量が得られることがわかり、脂環族ジアミン及び/又は脂環族酸二無水物が所定の範囲内で含まれる場合は、当該フィルムの吸湿率、吸水率、及び黄変度について大きな変化は起こらなかった。これに対して、脂環族成分が一定の含有量以上含まれている比較例では、ポリイミドフィルムの吸湿率及び吸水率特性の低下が急激であり、これにより、黄変現象が必ず生じていることがわかった。
【0091】
従って、本発明のポリイミドフィルムは、優れた耐湿及び耐水特性と、高い光学特性を有することにより、ディスプレイ装置のカバーウィンドウに有用に適用できることが確認された。