(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B25J17/00 E
(21)【出願番号】P 2022565429
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043309
(87)【国際公開番号】W WO2022114093
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2020198401
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 琢弥
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-029291(JP,U)
【文献】特開2020-116716(JP,A)
【文献】特開2019-034383(JP,A)
【文献】特開2020-121350(JP,A)
【文献】特開2018-034268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B23Q 11/12
F16H 57/00 - 57/12
F16N 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性の潤滑材を貯留可能な潤滑室を備え、
該潤滑室に、該潤滑室の壁面を貫通する3以上の貫通孔が設けられ、
該貫通孔は、前記潤滑室の2以上の姿勢において、いずれか一の前記貫通孔が前記潤滑室の最下位
に配置された排油孔であり、他の一の前記貫通孔が、前記潤滑室に前記潤滑材が必要量貯留されたときの該潤滑材の液位に等しい位置
に配置された通気孔であり、残りのいずれかの前記貫通孔が、前記潤滑室に前記潤滑材を供給する
給油孔であるロボット。
【請求項2】
流動性の潤滑材を貯留可能な潤滑室を備え、
該潤滑室に、該潤滑室の壁面を貫通する3以上の貫通孔が設けられ、
該貫通孔は、前記潤滑室の2以上の姿勢において、いずれか一の前記貫通孔が前記潤滑室の最下位に配置された排油孔であり、他の一の前記貫通孔が、前記潤滑室に前記潤滑材が必要量貯留されたときの該潤滑材の液位に等しい位置あるいはそれよりも上方に配置された通気孔であり、残りのいずれかの前記貫通孔が、前記潤滑室に前記潤滑材を供給する給油孔であり、
各前記貫通孔が、それぞれ同等の形状に形成されているロボット。
【請求項3】
各前記貫通孔が、
それぞれ同等の形状に形成されている請求項1に記載のロボット。
【請求項4】
前記潤滑室が、相互に平行な一対の側壁面と、該側壁面に直交する底面とを備え、
一対の前記側壁面に、それぞれ1以上の前記貫通孔が形成され、
前記底面に、2以上の前記貫通孔が形成される
請求項2または請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記潤滑室が、第1部材と
、前記2以上の姿勢において水平方向に延びる水平回転軸線回りに前記第1部材に対して回転可能に支持される第2部材とにより囲まれて構成され、
前記第1部材に、
前記2以上の姿勢において、前記潤滑室の最下位に配置される前記貫通孔が設けられ、
前記第2部材に、
前記2以上の姿勢において、前記潤滑室に前記潤滑材が必要量貯留されたときの該潤滑材の液位に等しい位置に配置される前記貫通孔が設けられている
請求項1に記載のロボット。
【請求項6】
前記他の一の前記貫通孔が、前記残りのいずれかの前記貫通孔よりも上方に配置される
請求項2または請求項3に記載のロボット。
【請求項7】
流動性の潤滑材を貯留可能な潤滑室を備え、
該潤滑室に、該潤滑室の壁面を貫通する2以上の貫通孔が設けられ、
該貫通孔は、前記潤滑室の2以上の姿勢において、いずれか一の前記貫通孔が前記潤滑室の最下位
に配置された排油孔であり、他の一の前記貫通孔が、前記潤滑室に前記潤滑材が必要量貯留されたときの該潤滑材の液位に等しい位置
に配置された通気孔であるロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車機構を潤滑する潤滑材を貯留する潤滑室と、潤滑室に設けられ潤滑材を注排油するための注油ポートおよび排油ポートとを備えた減速機を有するロボットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1のロボットには、床面に設置された状態で潤滑材の交換をした場合に、潤滑室内の古い潤滑材を排出する端面排油ポートと、潤滑室に注入された新しい潤滑材のうち所定量を超えた分を排出する側面排油ポートとが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のロボットを側壁に設置する場合には、潤滑室の姿勢が、床面に設置した場合とは90°異なるので、端面排油ポートおよび側面排油ポートのいずれもが潤滑室の最下位よりも高い位置に配置される。このため、ロボットを側壁に設置した状態で潤滑材の交換作業を行うと、潤滑室内の古い潤滑材の一部が潤滑室内に残留してしまい、新しい潤滑材に入れ替える交換作業が困難である。
したがって、潤滑室の姿勢が変更された状態で給排油が行われる場合であっても、潤滑室内の古い潤滑材の新しい潤滑材への入れ替えを容易にすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、流動性の潤滑材を貯留可能な潤滑室を備え、該潤滑室に、該潤滑室の壁面を貫通する3以上の貫通孔が設けられ、該貫通孔は、前記潤滑室の2以上の姿勢において、いずれか一の前記貫通孔が前記潤滑室の最下位に配置された排油孔であり、他の一の前記貫通孔が、前記潤滑室に前記潤滑材が必要量貯留されたときの該潤滑材の液位に等しい位置に配置された通気孔であり、残りのいずれかの前記貫通孔が、前記潤滑室に前記潤滑材を供給する給油孔であるロボットである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態に係るロボットを示す全体構成図である。
【
図2】
図1のロボットの第1アームと第2アームとの間に配置される関節の内部構造の一例を示す縦断面図である。
【
図3】
図2の関節の潤滑室に設けられる各貫通孔の配置を示す概略図である。
【
図4】
図3の潤滑室が、
図3の姿勢とは異なる姿勢に配置された場合の各貫通孔の配置を示す概略図である。
【
図5】
図3の潤滑室が、
図3および
図4の姿勢とは異なる姿勢に配置された場合の各貫通孔の配置を示す概略図である。
【
図6】
図3の潤滑室の第1の変形例を示す概略図である。
【
図7】
図3の潤滑室の第2の変形例を示す概略図である。
【
図8】
図1のロボットの変形例を示す全体構成図である。
【
図9】
図8のロボットが、
図8の姿勢とは異なる姿勢に配置された場合の全体構成図である。
【
図10】
図2の関節の変形例を示す概略縦断面図である。
【
図11】
図10の関節におけるアームの姿勢と各貫通孔の配置との関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係るロボット1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボット1は、例えば、
図1に示されるような垂直多関節型ロボットであって、被設置面に設置されるベース2と、被設置面に直交する方向に延びる第1軸線J1回りにベース2に対して回転可能に支持された旋回胴3とを備えている。
【0008】
また、ロボット1は、第1軸線J1に直交する方向に延びる第2軸線J2回りに旋回胴3に対して回転可能に支持された第1アーム(第1部材)4と、第2軸線J2に平行な第3軸線J3回りに第1アーム4に対して回転可能に支持された第2アーム(第2部材)5とを備えている。さらに、ロボット1は、第2アーム5の先端に3軸の手首ユニット6を備えている。
【0009】
本実施形態に係るロボット1の関節の構造について、第1アーム4と第2アーム5との間の関節Aを例に挙げて説明する。
関節Aは、
図2に示されるように、第1アーム4に対して第2アーム5を駆動するサーボモータ10および減速機20を備えている。
【0010】
第1アーム4には、サーボモータ10が固定され、第1アーム4と第2アーム5との間には減速機20が固定されている。第1アーム4には潤滑室40が設けられている。潤滑室40には、サーボモータ10の動力を伝達するギヤ11、ギヤ11を第1アーム4に回転可能に支持するベアリング12および減速機20を潤滑するためのオイル等の流動性のある潤滑材41が貯留される。
【0011】
図2は、ロボット1が
図1の姿勢をとっているときの潤滑室40を、鉛直方向に延びる切断面によって切断した縦断面の一例を示している。潤滑室40は、筒状の周壁(壁面)40aと、周壁40aの軸方向の両端を閉塞する一対の端壁(壁面)40b,40cとにより画定されている。
潤滑室40には、潤滑室40の内部と外部空間とを連通させる3つの貫通孔43a,43b,43cが設けられている。
【0012】
貫通孔43a,43bは、いずれも潤滑室40の周壁40aを径方向に貫通して形成されている。貫通孔43aは、ロボット1が
図1の姿勢をとっているときに、潤滑室40の最下位に配置されている。また、貫通孔43bは、貫通孔43aとは周方向に所定角度θ(
図3参照)だけ異なる位置に配置されている。
【0013】
また、貫通孔43cは、潤滑室40の端壁40bを板厚方向に貫通して形成されている。貫通孔43cは、潤滑室40に必要量の潤滑材41が貯留されたときの液位41aと等しい位置に配置されている。
【0014】
必要量とは、潤滑室40内部のギヤ11、ベアリング12および減速機20を十分に潤滑可能な量であり、例えば、潤滑室40の容積の70~80%である。残りの30~20%には、空気あるいは不活性ガス等の気体が充填される。また、液位41aに等しい位置とは、
図2に示されるように、貫通孔43cの下縁が、必要量の潤滑材41の液位41aに一致する位置を意味している。
【0015】
ここで、説明を簡単にするために、
図3から
図5に示されるように、潤滑室40の内部空間を単純な円柱状の形態を有するものとする。
ロボット1が
図1の姿勢をとっているときには、
図3に示されるように、3つの貫通孔43a,43b,43cは、それぞれ上述した位置に配置される。
【0016】
ロボット1が
図1の姿勢から、旋回胴3に対して第2軸線J2回りに第1アーム4を所定角度θだけ回転させたときには、
図4に示されるように、潤滑室40の姿勢が変化し、貫通孔43bが潤滑室40の最下位に移動する。このとき、貫通孔43cも所定角度θだけ移動するが、移動後にも潤滑室40に必要量の潤滑材41が貯留されたときの液位41aと等しい位置に維持される。
【0017】
さらに、ロボット1が、鉛直な壁面に設置され、いわゆる壁掛け型として使用される場合には、潤滑室40は
図5に示されるように、貫通孔43cを最下位に配置する姿勢をとり得る。このとき、周壁40aに配置されている2つの貫通孔43a,43bのうち、少なくとも一方が、潤滑室40に必要量の潤滑材41が貯留されたときの液位41aと等しい位置に配置されていればよい。
【0018】
また、各貫通孔43a,43b,43cには、プラグ44または図示しない給油用の逆止弁付きのニップルを着脱可能に締結する雌ねじ(図示略)が形成されている。
各貫通孔43a,43b,43cは、プラグ44またはニップルを締結することにより閉塞される一方、プラグ44またはニップルを取り外すことにより、潤滑室40内を大気開放することができる。
【0019】
このように構成された本実施形態に係るロボット1の潤滑室40に封入される潤滑材41の交換作業について説明する。
本実施形態に係るロボット1の関節Aに設けられた潤滑室40における潤滑材41を交換するには、ロボット1を
図1に示される姿勢に設定し、貫通孔43a,43cに締結されているプラグ44を取り外す。貫通孔43aは潤滑室40の最下位に配置されているので、プラグ44を取り外すことにより排油孔として機能する。貫通孔43cの下縁以外は潤滑材41の液位41aよりも上方に配置されているので、プラグ44を取り外すことにより、外気を潤滑室40内に取り込むための通気孔として機能する。
【0020】
すなわち、2つの貫通孔43a,43cからプラグ44を取り外すだけで、貫通孔43cを経由して外気を潤滑室40内に取り込みつつ、潤滑室40内の古い潤滑材41を、貫通孔43aから、重力によってスムーズに排出することができる。そして、潤滑室40の最下位に位置している貫通孔43aから、潤滑室40内に貯留されている潤滑材41のほぼ全てを、容易に排出することができる。
【0021】
次いで、潤滑室40内のほぼ全ての潤滑材41が排出された後に、通気孔として利用した貫通孔43cを開放したまま、排油孔として利用した貫通孔43aにプラグ44を取り付けて閉塞する。この状態で、貫通孔43bに取り付けていたプラグ44を給油用のニップルに付け替え、付け替えたニップルにオイルガンなどの給油装置を接続して潤滑室40内に新しい潤滑材41を給油する。
【0022】
新しい潤滑材41が、潤滑室40内に充填され始めると、潤滑室40内を満たしていた空気が潤滑材41に押されて、貫通孔43cを経由して外部へと排出される。そして、潤滑室40内に必要量の潤滑材41が充填されると、潤滑材41の液位41aが貫通孔43cの位置に達し、貫通孔43cから潤滑材41が僅かに溢れ出す。この時点で、給油をしている作業者は、潤滑室40内に必要量の潤滑材41が充填されたことを確認することができる。
【0023】
また、必要量以上の潤滑材41が潤滑室40内に供給されても、超過した潤滑材41は貫通孔43cから外部へと排出される。これにより、潤滑室40に新しい潤滑材41を過不足なく充填することができる。
【0024】
本実施形態に係るロボット1によれば、
図1の姿勢から第1アーム4を所定角度θだけ回転させた姿勢においても、潤滑材41の交換作業を行うことができるという利点がある。
すなわち、この場合には、潤滑室40は
図4に示される姿勢となるので、潤滑室40の最下位に配置される貫通孔43bを排油孔として利用し、貫通孔43cを通気孔、貫通孔43aを給油孔として利用することができる。
【0025】
これにより、潤滑室40内に貯留された潤滑材41のほぼ全量を、重力のみによって容易に排出することができるとともに、新しい潤滑材41を過不足なく潤滑室40内に充填することができる。すなわち、本実施形態に係るロボット1によれば、潤滑材41の交換作業を異なる複数の姿勢において実施することができる。したがって、ロボット1あるいは装着しているツールと周辺の部材との干渉等により、交換作業のための1つの姿勢をとることが困難である場合にも、他の姿勢によって交換作業を円滑に行うことができる。
【0026】
また、床面設置されたロボット1を壁面設置に変更して使用する場合には、潤滑室40は
図5に示される姿勢をとることができ、貫通孔43cを排油孔、貫通孔43a,43bの一方を通気孔、他方を給油孔として利用することにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0027】
すなわち、ロボット1のアームの姿勢の変化あるいはロボット1の設置方法の変更による潤滑室40の姿勢の変更に応じて、各貫通孔43a,43b,43cの役割を変更することにより、給油孔、排油孔および通気孔をそれぞれ適正な位置に配置することができる。したがって、潤滑室40の姿勢が変化した複数の姿勢において、潤滑室40内の潤滑材41の十分な排油と、必要量の給油を確実に行うことができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、通気孔として利用される貫通孔は、いずれも必要量の潤滑材41が貯留されたときの液位41aに等しい位置に配置されている。これに代えて、通気孔として利用される貫通孔が、必要量の潤滑材41が貯留されたときの液位41aよりも上方に配置されていてもよい。
【0029】
また、本実施形態においては、排油孔として利用される貫通孔を潤滑室40の最下位に配置したときに、給油孔として利用される貫通孔が、通気孔として利用される貫通孔よりも上方に配置されていてもよい。
このように配置すると、給油時に、潤滑室40に貯留される潤滑材41の液位41aが、通気孔の高さを超えることがないので、潤滑材41の液位41aは、通気孔よりも上方に配置される給油孔の高さには達しない。
このため、プラグ44を取り外して開放された状態の給油孔に、逆止弁付きのニップル等を装着することなく給油を行うことができ、給油作業の作業性を向上することができる。
【0030】
また、本実施形態においては、潤滑室40を略円柱状としたが、これに代えて、
図6および
図7に示されるような略直方体状、あるいは他の任意の形状であってもよい。
図6に示す例では、貫通孔43a,43b,43cは、潤滑室40の互いに直交する3面に1つずつ設けられている。また、各貫通孔43a,43b,43cのいずれが最下位に配置された場合にも、残りの貫通孔の少なくとも一方が、潤滑室40に必要量の潤滑材41が貯留されたときの液位41aに等しい位置に配置されている。
【0031】
また、
図7に示す例では、相互に平行な一対の側壁面40a′,40c′にそれぞれ貫通孔43a,43cが設けられ、側壁面40a′,40c′の間に直交して配置される側壁面(底面)40b′には2つの貫通孔43b,43b′が設けられている。
貫通孔43bは、潤滑室40の最下位に貫通孔43cを配置する姿勢において、潤滑室40に必要量の潤滑材41が貯留されたときの液位41aに等しい位置に配置されている。また、貫通孔43b′は、潤滑室40の最下位に貫通孔43aを配置する姿勢において、潤滑室40に必要量の潤滑材41が貯留されたときの液位41aに等しい位置に配置されている。
【0032】
これにより、貫通孔43aを排油孔として利用する場合と、貫通孔43cを排油孔として利用する場合とで、通気孔として利用する貫通孔を異ならせることができ、側壁面40b′に設定する貫通孔43b,43b′の配置の自由度を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態においては、貫通孔43a,43b,43cのいずれかを最下位に配置する潤滑室40のそれぞれの姿勢において、潤滑室40に貯留される潤滑材41の必要量が相互に異なっていてもよい。
この場合には、潤滑室40に貯留される潤滑材41の必要量は、潤滑室40の姿勢に応じて、それぞれ潤滑室40内のギヤ11、ベアリング12および減速機20を十分に潤滑可能とする量に設定されればよい。
【0034】
また、本実施形態においては、第1アーム4に対して第2アーム5を回転させる関節Aを例示して説明したが、他の関節に同様の構造を適用してもよい。特に、種々の姿勢をとることができる手首ユニット6の各軸に同様の構造を適用することが好ましい。
【0035】
また、本実施形態においては、ロボット1として、垂直多関節型ロボットを例示したが、これに代えて、ロボット1の手首ユニット6の先端に取り付ける、
図8に示されるようなツール(ロボット)50に適用してもよい。
【0036】
図8に示す例では、ツール50は、直方体状のベース51と、ベース51に固定された一対のガイドレール52と、ガイドレール52に沿って移動可能に支持されたスライダ53と、スライダ53を駆動する駆動機構60とを備えている。スライダ53は、ロボット1の手首ユニット6の先端に着脱可能に取り付けられる。
駆動機構60は、ベース51に固定されたラックギヤ54と、ラックギヤ54に噛み合うピニオンギヤ61と、駆動力を発生するサーボモータ62と、サーボモータ62の回転を減速してピニオンギヤ61に伝達する減速機63とを備えている。
【0037】
サーボモータ62は、潤滑室(図示略)を形成する直方体状のハウジング64に固定され、減速機63の減速機構は、ハウジング64内の潤滑室に収容されている。
ハウジング64には、ハウジング64内の潤滑室と外部空間とを連通させる貫通孔65a,65b,65cが設けられており、各貫通孔65a,65b,65cは、ツール50の姿勢に応じて、それぞれ給油孔、排油孔および通気孔のいずれかに利用可能な位置に配置されている。
【0038】
例えば、ツール50が
図8に示す姿勢をとった場合には、ハウジング64の最下位に配置される貫通孔65aを排油孔として利用し、残りの貫通孔65b,65cの一方を通気孔、他方を給油孔として利用する。これにより、潤滑室内の潤滑材(図示略)の交換作業を行うことができる。
また、ツール50が
図9に示される姿勢をとった場合には、ハウジング64の最下位には貫通孔65cが配置されるので、貫通孔65cを排油孔として利用し、貫通孔65aを通気孔、貫通孔65bを給油孔として利用すればよい。これにより、ツール50をロボット1の手首ユニット6に取り付けた状態、あるいは、手首ユニット6から取り外されて収納場所に収納されている状態等、ツール50が異なる姿勢に配置されていても、潤滑材の交換作業を容易に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態においては、潤滑室40は、第1アーム4に設けられていたが、これに代えて、
図10に示されるように、潤滑室40が第1アーム4と第2アーム5とに跨って設けられてもよい。
【0040】
図10においては、貫通孔43b,43cが第1アーム4側に設けられ、貫通孔43aが第2アーム5側に設けられている。このため、
図11に示されるように、第1アーム4に対する第2アーム5の姿勢を、第3軸線J3回りに90°変化させた場合には、貫通孔43b,43cは移動せず、貫通孔43aだけが移動する。また、移動前後における貫通孔43aは、いずれも潤滑室40に必要量の潤滑材41が貯留されたときの液位41aに等しい位置に配置される。
【0041】
したがって、潤滑室40を画定する一部分が移動することによって、潤滑室40の姿勢が変化する場合であっても、潤滑室40の異なる複数の姿勢に対して、潤滑材41の交換作業を適切に実施することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、排油孔として利用可能な貫通孔43aおよび通気孔として利用可能な貫通孔43cの他に給油孔として利用可能な位置に配置される貫通孔43bを設けた。これに代えて、排油孔として利用可能な貫通孔43aを、排油後に逆止弁付きのニップルを取り付けることにより、給油孔として利用してもよい。この場合には、潤滑室40に設ける貫通孔43a,43cは2以上でよい。
【符号の説明】
【0043】
1 ロボット
4 第1アーム(第1部材)
5 第2アーム(第2部材)
40 潤滑室
40a 周壁(壁面)
40b,40c 端壁(壁面)
40a´,40c´ 側壁面
40b´ 側壁面(底面)
41 潤滑材
41a 液位
43a,43b,43b´,43c 貫通孔
50 ツール(ロボット)
65a,65b,65c 貫通孔