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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】インキジェット印刷用の流体セット
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/54 20140101AFI20240806BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240806BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240806BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C09D11/54
C09D11/30
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 132
B41M5/00 134
B41J2/01 501
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022567308
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021060814
(87)【国際公開番号】W WO2021224046
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】20172945.6
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507253473
【氏名又は名称】アグファ・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】AGFA NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ロウウェット,ジョス
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-509148(JP,A)
【文献】国際公開第2001/008895(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/
B41M 5/
B41J 2/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物を含む流体と、着色剤及びポリマー粒子を含む水性インクジェットインキとを含む、流体セットであって、ポリマー粒子が、コアを囲む高分子シェルを含むカプセルであり、コアが、一般式I、II又はIII
【化1】
[式中、
1は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、COR3及びCNからなる群より選ばれ、
2は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基及びCOR3からなる群より選ばれ、
1とR2は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
3は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、OR4及びNR56からなる群より選ばれ、
4は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
5及びR6は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
5とR6は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
XはO及びNR7からなる群より選ばれ、
7は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
8及びR9は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
8とR9は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができる]
に従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む、流体セット。
【請求項2】
高分子シェルがポリ(ウレア)、(ポリ)ウレタン又はそれらの組み合わせを含む請求項1に記載の流体セット。
【請求項3】
化合物が第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基で官能基化された樹脂粒子である請求項1または2に記載の流体セット。
【請求項4】
オリゴマー又はポリマーが少なくとも15個の繰り返し単位を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の流体セット。
【請求項5】
化合物が二又は三官能基性である請求項1ないし4のいずれかに記載の流体セット。
【請求項6】
分散性基が高分子シェルに共有結合しており、分散性基はカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩及びホスホン酸又はその塩からなる群より選ばれる請求項1ないし5のいずれかに記載の流体セット。
【請求項7】
着色剤が顔料である請求項1ないし6のいずれかに記載の流体セット。
【請求項8】
流体が着色剤を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の流体セット。
【請求項9】
流体が水性インキジェットインキ中の成分を凝集させることができる成分を含む請求項1ないし8のいずれかに記載の流体セット。
【請求項10】
流体がポリアクリレート及びポリウレタンからなる群より選ばれる樹脂を含む請求項1ないし9のいずれかに記載の流体セット。
【請求項11】
a)請求項1ないし10に記載の水性インキジェットインキを支持体上に噴射し;そしてb)インキジェットインキの噴射の前、後又はその間に請求項1ないし10に記載の流体を適用し;そして
c)噴射されたインキの少なくとも60℃の温度を得られるように熱を適用することにより適用された流体セットを乾燥する
段階を含む請求項1ないし10に記載の流体セットを用いるインキジェット記録法。
【請求項12】
インキ噴射、バルブ噴射及び噴霧からなる群より選ばれる方法を介して流体を適用する請求項11に記載のインキジェット記録法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的分野
本発明は、樹脂に基づく水性インキジェットインキを含む流体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
背景の技術
インキジェットの工業的な用途はますます多くの技術分野に広がりつつあり、ますます多くの要求の厳しい物理的性質を満たさねばならない。工業的な印刷法はガラス及び金属のような広範囲の非吸収性基材と適合性でなければないが、ポリオレフィンのような温度感受性樹脂を含む合成樹脂とも適合性でなければならない。
【0003】
攻撃的な溶剤に対する耐薬品性は要求の一つであり、画像はヘビーデューティー用途(heavy duty applications)を満足させなければならない。現在まで、ヘビーデューティー用途におけるインキジェット法はUVに基づいてきた。しかしながら水性法もより多くの要求の厳しい用途において徐々に普及している。
【0004】
工業的なインキジェット用途における要求を満たすために、水性の樹脂に基づくインキが種々の方法に基づいて設計されてきた。特許文献1に開示されているラテックスに基づく方法はラテックスのフィルム形成温度の調整に基づいて温度感受性基材と適合性である。しかしながらそれらの接着性能は必ずしも最適でなく、特にそれらの耐薬品性は限られている。さらに、ラテックスに基づくインキはインキジェットヘッドのノズルにおけるフィルム形成の傾向を示し、インキジェット信頼性の問題に導く。
【0005】
特許文献2及び特許文献3に開示されているカプセル封入に基づく方法はインキジェットヘッドのノズルにおけるフィルム形成を避けるが、多くの場合に高い活性化温度を必要とし、その方法をポリオレフィンのような温度感受性基材上における印刷に適さないものとしている。温度感受性基材との適合性と組み合わされた耐薬品性の問題に取り組むために、水に基づくUV法に基づくいくつかの方法が開示された。これらの方法は乾燥と硬化の両方を必要とし、プリンターの設計を複雑にする。
【0006】
特許文献4に、第一のインキがエポキシ化合物を含み、第二のインキが第一級アミンに基づくポリマーを含む二成分インキ法(dual ink approach)が開示されている。その組み合わせは優れた接着性及びアルコール抵抗性を生ずると主張されている。しかしながらエポキシ化合物は加水分解し易く、水性に基づくインキを保存すると活性を失う危険を保持していることが既知である。
【0007】
特許文献5は、β-ジケトン基を有する樹脂粒子を含む水性インキジェットインキを反応物液と一緒に印刷し、印刷画像の優れた摩擦及び引っ掻き抵抗性を達成する記録法を開示している。β-ジケトン基を有する樹脂は長期間保存されると少なくとも部分的に加水分解し易い。この少なくとも部分的な加水分解の故に、反応性及び従って摩擦及び引っ掻き抵抗性に関して得られ得る向上はインキジェットインキを保存すると低下するであろう。
【0008】
従って、信頼できるインキ噴射行動を示し、温度感受性基材と適合性であり、乾燥時の耐薬品性のような優れた物理的性質を与え、保存時の加水分解の危険を保持していない水性の樹脂に基づく方法がまだ必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2018077624A号パンフレット
【文献】国際公開第2015158654A号パンフレット
【文献】欧州特許第293337A号明細書
【文献】米国特許第20190249024号明細書
【文献】欧州特許第1125760A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概略
本発明の目的は上記の問題への解決案を提供することである。前記目的は請求項1に定義される流体セットを提供することにより達成された。
【0011】
本発明の別の目的は、請求項12に定義される通り、請求項1の流体セットを用いる印刷法を提供することである。
【0012】
本発明の他の特徴、要素、段階、特性及び利点は続く本発明の好ましい態様の詳細な記述からより明らかになるであろう。本発明の特定の態様も従属クレイムにおいて定義される。
【0013】
態様の記述
A.本発明に従う流体セット
本発明に従う流体セットは:
a)第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物を含む流体、
b)着色剤及び一般式I、II又はIII(以下を参照されたい)に従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含むポリマー粒子を含む水性インキジェットインキ
を含む。
【0014】
流体は1)流体セットの水性インキジェットインキの噴射前に適用されるプライマー又は予備処理液;2)流体セットの水性インキジェットインキの噴射後に適用されるオーバーコート;3)流体セットの水性インキジェットインキと一緒に噴射され、着色剤及び一般式I、II又はIII(以下を参照されたい)に従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含むポリマー粒子を含むインキジェットインキであることができる。
【0015】
A.1.本発明に従う水性インキジェットインキ
A.1.1.ポリマー粒子
本発明に従う流体セットの水性インキジェットインキは着色剤及びポリマー粒子を含み、ポリマー粒子は一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含み、
【化1】
式中、
1は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、COR3及びCNからなる群より選ばれ、
2は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基及びCOR3からなる群より選ばれ、
1とR2は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
3は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、OR4及びNR56からなる群より選ばれ、
4は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
5及びR6は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
5とR6は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
XはO及びNR7からなる群より選ばれ、
7は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又
は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
8及びR9は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
8とR9は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができる。
【0016】
好ましい態様において、一般式Iに従う部分で官能基化された繰り返し単位を含む前記オリゴマー又はポリマーは少なくとも7個の官能基化された、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基化された繰り返し単位を含む。
【0017】
本発明に従うオリゴマー又はポリマーは好ましくは少なくとも2000、より好ましくは4000そして最も好ましくは6000と30000の間の重量平均分子量を有する。
【0018】
本発明に従うポリマーはホモポリマー又は種々の繰り返し単位のコポリマーであることができる。
【0019】
本発明に従うオリゴマー又はポリマーをエチレン性不飽和モノマーの付加重合、重縮合及び開環重合により製造することができ、付加重合が特に好ましい。最も好ましい態様において、本発明に従う樹脂の製造のためにエチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル重合が用いられる。本発明の別の態様において、本発明に従う樹脂の分子量はRAFT剤、ATRP、ニトロキシル基法又は移動剤、好ましくはチオールを用いて制御される。
【0020】
さらなる好ましい態様において、Xは酸素を示す。さらにもっと好ましい態様において、R1は水素を示す。さらにもっと好ましい態様において、R2は置換又は非置換アルキル基を示し、非置換がより好ましく、低級アルキル基がさらにもっと好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0021】
本発明に従う樹脂の製造のための典型的なモノマーを下記に示すが、これらに制限されない。
付加重合のためのモノマー:表1を参照されたい。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0022】
本発明に従う付加ポリマーの製造にフリーラジカル及びカチオン重合条件が好ましい。
【0023】
開環重合のためのモノマー:表2を参照されたい。
【表2】
【0024】
科学文献に記載されている開環重合環境を用いてポリ(エーテル)、ポリ(エステル)、ポリ(カーボネート)及びポリ(アミド)又はそれらのコポリマーを製造することができる。
【0025】
重縮合のためのモノマー:表3を参照されたい。
【表3】
【0026】
当業者に既知の条件下における官能基化ジオールと二酸又は二酸クロリドの縮合によりポリ(エステル)を製造することができる。官能基化二酸をジオールとの縮合によりポリ(エステル)に転換することができる。当業者に既知の条件下における官能基化ジオール
とジイソシアナートとの縮合によりポリ(ウレタン)を製造することができる。
【0027】
一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子は、好ましくはインキジェットインキの水性ビヒクル中に分散される。粒子は好ましくは分散剤又は界面活性剤の使用によりインキジェットインキの水性媒体中に分散される。
【0028】
粒子は動的レーザー回折により決定される4μm以下の平均粒度を有する。インキジェットプリントヘッドのノズル直径は通常20ないし35μmである。従って好ましくは平均粒度は0.05から2μmまで、より好ましくは0.10から1μmまでである。粒子の平均粒度が2μmより小さい場合、優れた解像度及び時間を経ての分散安定性が得られる。
【0029】
粒子は好ましくは水性インキジェットインキ中に存在するが、プライマー又はオーバーコート中に存在することもできる。インキジェットインキ中の粒子の量はインキの合計重量に基づいて45重量%以下、好ましくは5と25重量%の間の量である。30重量%より多いと噴射が必ずしも非常に信頼できるわけではないことが観察された。
【0030】
好ましい態様において、本発明に従うオリゴマー又はポリマーを好ましくは重合により、より好ましくは界面重合の使用によりカプセル封入して水性分散系を形成する。カプセル封入はオリゴマー又はポリマーと水性インキジェットインキ中の他の化合物の間における高分子バリヤー、すなわちカプセルの高分子シェルの形成の故に水性インキジェットの保存安定性を向上させる。さらに特定的に、水性インキジェットインキの保存時の一般式Iに従う官能基の部分的な加水分解が妨げられる。従ってインキジェットインキの保存時に反応性及び従って印刷画像の溶剤抵抗性及び耐水性に向かう得られる向上は低下しない。
【0031】
一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーのカプセル封入は、カプセル封入しない場合より信頼できる樹脂を含むインキジェットインキの噴射行動を生ずることも観察された。
【0032】
カプセルは好ましくは上記で説明したと同じ理由で動的レーザー回折により決定される4μm以下の平均粒度を有する。
【0033】
カプセルは好ましくは高分子シェルに共有結合した分散性基(dispersing group)を用いてインキジェットインキの水性媒体中に分散されるか或いは好ましくはカプセルの形成の間又はその後に加えられる分散剤又は界面活性剤の使用により分散される。高分子シェルに共有結合した分散性基は好ましくはカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、ホスホン酸又はその塩からなる群より選ばれる。
【0034】
立体的な安定化を達成するために分散性基を高分子分散剤と組み合わせて用いることができる。例えば高分子シェルは共有結合したカルボン酸基を有することができ、それは高分子分散剤のアミン基と相互作用する。しかしながらより好ましい態様において、高分子分散剤は用いられず、インキジェットインキの分散安定性は静電的安定化によってのみ達成される。例えばわずかにアルカリ性の水性媒体は高分子シェルに共有結合したカルボン酸基をイオン性基に変え、その後負に帯電したカプセルは凝集する傾向を持たない。十分な分散性基が高分子シェルに共有結合している場合、カプセルはいわゆる自己分散性カプセルになる。
【0035】
これらの負に帯電したカプセル表面をインキジェット印刷の間に有利に用いることもできる。例えばカチオン性ポリマー又は多価塩であるカチオン性物質を含む予備処理液のような第二の液を用い、第二の液の上に印刷されるインキジェットインキ中のアニオン性カプセルを沈殿させることができる。この方法の使用によりカプセルの固定の故の画質の向上が観察され得る。
【0036】
カプセルの高分子シェルのために用いられるポリマーの型に実質的な制限はない。好ましくは、高分子シェル中で用いられるポリマーは好適に架橋されている。架橋によってより高い剛性がカプセル中に組み込まれ、インキ製造及びインキジェットプリンターの両方におけるカプセルの取り扱いのためのより広い範囲の温度及び圧力を可能にする。
【0037】
高分子シェル材料の好ましい例にはポリウレア、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、メラミンに基づくポリマー及びそれらの混合物が含まれ、ポリウレアが特に好ましい。
【0038】
A.1.2.本発明に従うポリマー粒子の製造
一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有し、高分子シェルで囲まれたカプセル封入されたオリゴマー又はポリマーを化学的及び物理的方法の両方を用いて製造することができる。適したカプセル封入法には複合コアセルベーション、リポソーム形成、噴霧乾燥及び重合法が含まれる。
【0039】
本発明において好ましくは重合法が用いられ、それはそれがカプセルの設計において最高の制御を可能にするからである。より好ましくは本発明のカプセルの製造に界面重合を用いる。この方法は周知であり、Zhang Y.and Rochefort D.(Journal of Microencapsulation,29(7),636-649(2012))により、及びSalitin(Encapsulation Nanotechnologies,Vikas Mittal(ed.),chapter
5,137-173(Scrivener Publishing LLC(2013)において)により総説されている。
【0040】
界面重縮合のような界面重合において、2種の反応物はエマルション滴の界面で出会い、急速に反応する。
【0041】
一般に界面重合は水性連続相中における親油性相の分散又はその逆を必要とする。相のそれぞれは少なくとも1種の溶解されたモノマー(第一のシェル成分)を含み、それは他の相中に溶解された別のモノマー(第二のシェル成分)と反応することができる。重合すると水相及び親油性相中の両方中において不溶性であるポリマーが生成する。結局、生成するポリマーは親油性相と水相の界面において沈殿する傾向を有し、これによって分散相の周りにシェルを形成し、それはさらに重合すると成長する。本発明に従うカプセルは好ましくは水性連続相中の親油性分散系から製造される。
【0042】
本発明に従う且つ界面重合により生成するカプセルの典型的な高分子シェルは、典型的に第一のシェル成分としてジ又はポリ酸クロリド及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアミンから製造されるポリアミド、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴイソシアナート及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアミンから製造されるポリウレア、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴイソシアナート及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアルコールから製造されるポリウレタン、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴスルホクロリド及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアミンから製造されるポリスルホンアミド、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴ酸クロリド及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアルコールから製造されるポリエステルならびに
典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴクロロホルメート及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアルコールから製造されるポリカーボネートからなる群より選ばれる。シェルはこれらのポリマーの組み合わせから構成されることができる。
【0043】
さらなる態様において、第一のシェル成分としてのジ又はオリゴイソシアナート、ジ又はオリゴ酸クロリド、ジ又はオリゴクロロホルメート及びエポキシ樹脂と組み合わせてゼラチン、キトサン、アルブミン及びポリエチレンイミンのようなポリマーを第二のシェル成分として用いることができる。
【0044】
特に好ましい態様において、シェルはポリウレア又はポリウレタンとのその組み合わせからなる。さらなる好ましい態様において、分散段階に水非混和性溶剤が用いられ、それはシェル形成の前又は後に溶剤ストリッピングにより除去される。特に好ましい態様において、水非混和性溶剤は常圧で100℃未満の沸点を有する。エステルは水非混和性溶剤として特に好ましい。
【0045】
水非混和性溶剤は水中で低い混和性を有する有機溶剤である。低い混和性は1対1の体積比(one over one volume ratio)で混合した場合に20℃において二相系を形成する水と溶剤の組み合わせと定義される。
【0046】
コアは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む。これらは通常水との低い混和性を有し且つ水より低い沸点を有する有機溶剤中にそれを溶解することによりカプセル中に導入される。好ましい有機溶剤は酢酸エチルであり、それはそれが他の有機溶剤に比較して低い可燃性の危険も有するからである。
【0047】
しかしながらいくつかの場合に有機溶剤を省略することができる。例えば一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーが100mPa.s未満の粘度を有する場合、有機溶剤を省略することができる。
【0048】
カプセルの分散系の調製方法は好ましくは以下の:
a)水との低い混和性を有し且つ水より低い沸点を有する有機溶剤中の高分子シェルの形成のための第一のシェル成分及び一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの非水性溶液を調製し;
b)高分子シェルの形成のための第二のシェル成分の水溶液を調製し;
c)高せん断下で水溶液中に非水性溶液を分散させ;
d)任意的に水溶液と非水性溶液の混合物から有機溶剤をストリッピングし;そして
e)高分子シェルの形成のための第一及び第二のシェル成分の界面重合により一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの周りに高分子シェルを形成する
段階を含む。
【0049】
次いで例えば着色剤、水、保湿剤、界面活性剤などの添加によりカプセル分散系を水性インキジェットインキに仕上げることができる。
【0050】
好ましい態様において、カプセルは自己分散性カプセルである。カプセルを自己分散性にするために、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩或いはホスホン酸又はその塩のようなアニオン性分散性基をカプセルの高分子シェルに結合させて分散安定性を保証することができる。
【0051】
カプセルの高分子シェル中にアニオン性安定化基を導入するための好ましい方策は、イソシアナートと反応することができるカルボン酸官能基化反応性界面活性剤を利用する。これは少なくとも部分的に第二級又は第一級のアミンを含む両性型の界面活性剤に導く。スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩或いはホスホン酸又はその塩で官能基化された他の反応性界面活性剤を用いることができる。
【0052】
部分的に第二級アミンを有するが第三級アミンも含む界面活性剤の混合物であるいくつかの両性界面活性剤は商業的に入手可能である。インキジェットプリンターで、商業的に入手可能な両性界面活性剤の使用により製造されるカプセルに基づくインキジェットインキにおける法外な発泡に直面した。発泡はインキ供給において及びまたインキから空気を除去しようとするための脱ガスにおいて問題を引き起こし、かくして信頼できない噴射に導く。従って好ましくは国際公開第2016/165970号パンフレットの式(I)に従う界面活性剤が一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーのカプセル封入プロセスの間に用いられる。
【0053】
本発明に従うカプセルは水性媒体中に分散される。水性媒体は水からなるが、好ましくは1種以上の水溶性有機溶剤を含むことができる。
【0054】
多様な理由で1種以上の有機溶剤を加えることができる。例えば調製されるべきインキジェットインキ中における化合物の溶解を促向上させるため、多孔質基材におけるより良い浸透を得るため又はインキジェットヘッドのノズルにおけるインキの速い乾燥を防ぐために少量の有機溶剤を加えるのが有利であり得る。好ましくは水溶性有機溶剤はポリオール(例えばエチレングリコール、グリセリン、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール及び2-メチル-1,3-プロパンジオール)、アミン(例えばエタノールアミン及び2-(ジメチルアミノ)エタノール)、一価アルコール(例えばメタノール、エタノール及びブタノール)、多価アルコールのアルキルエーテル(例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、2,2’チオジエタノール、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド)、複素環式化合物(例えば2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン)ならびにアセトニトリルである。
【0055】
A.1.3.着色剤
本発明に従う水性インキジェットインキ中の着色剤は分散染料、酸性染料、反応染料のような染料であることができ、顔料又はそれらの組み合わせであることができる。好ましくは、本発明に従うインキジェットインキ中の着色剤は顔料である。顔料添加されたインキは光退色に対する広範囲の安定性ならびに向上した耐水性及び溶剤抵抗性を有する画像をもたらす。
【0056】
インキの顔料はブラック、ホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、それらの混合物などであるとができる。カラー顔料はHERBST,Willy,et al.Industrial Orga
nic Pigments,Production,Properties,Applications,3rd edition.Wiley-VCH,2004.ISBN 3527305769により開示されたものから選ばれ得る。
【0057】
適した顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0128]節ないし[0138]節に開示されている。
【0058】
顔料粒子は高分子分散剤又は界面活性剤を用いて水性媒体中に分散される。自己分散性顔料を用いることもできる。本発明に従い且つアニオン性分散性基を有する粒子又はカプセルと組み合わされる場合、顔料のための分散剤として好ましくはアニオン性界面活性剤を用いることができる。後者はインキジェットインキ中に含まれる粒子又はカプセルの分散性基との高分子分散剤の相互作用を妨げ、それは顔料の分散安定性がカプセルのために用いられると同じ静電的安定化の方法により達成されるからである。
【0059】
自己分散性顔料は、塩形成基又はカプセルのための分散性基として用いられている基とと同じ基のようなアニオン性親水性基がその表面上に共有結合している顔料であり、それは界面活性剤又は樹脂を用いずに顔料が水性媒体中に分散するのを可能にする。適した商業的に入手可能な自己分散性カラー顔料は例えばCABOTからのCAB-O-JETTMインキジェット着色剤である。
【0060】
インキジェットインキ中の顔料粒子はインキジェット印刷装置を介する、特に吐出ノズルにおけるインキの自由な流れを許すのに十分に小さくなければならない。最大色濃度のため及び沈降を遅らせるためにも小さい粒子を用いるのが望ましい。
【0061】
平均顔料粒度は好ましくは0.050μmと1μmの間、より好ましくは0.070μmと0.300μmの間そして特に好ましくは0.080μmと0.200μmの間である。最も好ましくは数平均顔料粒度(numeric average pigment
particle size)は0.150μm以下である。顔料粒子の平均粒度は、動的光散乱の原理に基づくBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて決定される。試料は水を用いて0.002重量%の顔料濃度に希釈される。BI90plusの測定設定は:23℃において5回の測定、90oの角度、635nmの波長及びグラフィックス=コレクション関数(graphics=correction function)である。
【0062】
適したホワイト顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0116]中の表2に示されている。ホワイト顔料は好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料である。ホワイト顔料を単独で又は組み合わせて用いることができる。好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料として二酸化チタンを用いる。適した二酸化チタン顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0117]及び[0118]中に開示されているものである。
【0063】
衣類における特殊な効果のための蛍光顔料及び編織布上に銀色及び金色の豪華な外観を印刷するための金属性顔料のような特殊な着色剤を用いることもできる。
【0064】
顔料のための適した高分子分散剤は2種のモノマーのコポリマーであるが、それらは3、4、5種又はそれより多種のモノマーさえ含むことができる。高分子分散剤の性質は、モノマーの性質及びポリマー中におけるそれらの分布の両方に依存する。コポリマー分散剤は、好ましくは以下のポリマー組成を有する:
●ランダム重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABBAABABに重合した);
●交互重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABABABABに重合した);
●勾配(gradient)(テーパード(tapered))重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがAAABAABBABBBに重合した);
●それぞれのブロックのブロック長(2、3、4、5個又はそれより多くさえ)が高分子分散剤の分散能力に重要であるブロックコポリマー(例えばモノマーA及びBがAAAAABBBBBBに重合した);
●グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、主鎖に結合した高分子側鎖を有する高分子主鎖から成る);ならびに
●これらのポリマーの混合形態、例えばブロック様勾配コポリマー。
【0065】
適した分散剤はBYK CHEMIEから入手可能なDISPERBYKTM分散剤、JOHNSON POLYMERSから入手可能なJONCRYLTM分散剤及びLubrisolから入手可能なSOLSPERSETM分散剤である。非高分子ならびにいくつかの高分子分散剤の詳細なリストはMC CUTCHEON,Functional Materals,North American Edition.Glen Rock,N.J.:Manufacturing Confectioner Publishing Co.,1990.p.110-129により開示されている。
【0066】
高分子分散剤は好ましくは500と30000の間、より好ましくは1500と10000の間の数平均分子量Mnを有する。
【0067】
高分子分散剤は好ましくは100,000未満、より好ましくは50,000未満そして最も好ましくは30,000未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0068】
顔料は好ましくはそれぞれインキジェットインキの合計重量に基づいて0.01ないし20重量%の範囲内、より好ましくは0.05ないし10重量%の範囲内そして最も好ましくは0.1ないし5重量%の範囲内で存在する。ホワイトインキジェットインキの場合、ホワイト顔料は好ましくはインキジェットインキの3重量%ないし40重量%そしてより好ましくは5重量%ないし35重量%の量で存在する。3重量%未満の量は十分な被覆力を達成することができない。
【0069】
A.1.4.添加物
本発明に従う水性インキジェットインキは水を含むが、1種以上の水溶性有機溶剤を含むことができる。適した有機溶剤は§A.1.2.に記載されている。
【0070】
本発明に従う水性インキジェットインキは保湿剤も含むことができる。保湿剤はノズルの閉塞を予防する。予防はインキジェットインキ、特に液中の水の蒸発速度を遅くするその能力の故である。保湿剤は好ましくは水より高い沸点を有する有機溶剤である。適した保湿剤にはトリアセチン、N-メチル-2-ピロリドン、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア及びジアルキルチオウレア、エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含むジオール;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエレチングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含むグリコールならびにそれらの混合物及び誘導体が含まれる。好ましい保湿剤はグリセロールである。
【0071】
保湿剤は好ましくは液の合計重量に基づいて0.1ないし20重量%の量でインキジェットインキに加えられる。
【0072】
本発明に従う水性インキジェットインキは界面活性剤を含むことができる。いずれの既
知の界面活性剤も用いられ得るが、好ましくはグリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤が用いられる。アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤の使用はブリーディングをさらに減少させて印刷の質を向上させ、且つ印刷における乾燥性も向上させて高速印刷を可能にする。
【0073】
アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤は好ましくは2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上である。これらは例えばAir Products(GB)からOlfine E1 010のようなOlfine(登録商標)104シリーズ及びEシリーズとして又はNissin Chemical IndustryからSurfynol(登録商標)465及びSurfinol 61として入手可能である。
【0074】
本発明に従うインキジェットインキ組成物はさらに追加の樹脂を含むことができる。樹脂は多くの場合に基材への顔料の優れた接着をさらに達成するためにインキジェットインキ調製物に加えられる。樹脂はポリマーであり、適した樹脂はアクリルに基づく樹脂、ウレタン修飾ポリエステル樹脂又はポリエチレンワックスであることができる。
【0075】
本発明に従うインキジェットインキ中の樹脂の濃度は少なくとも1(重量)%且つ好ましくは30(重量)%未満、より好ましくは20(重量)%未満である。
【0076】
好ましい態様において、本発明に従うインキジェットインキはインキジェットインキセットの一部、より好ましくは複数の本発明に従うインキジェットインキを含む多色インキジェットインキセットの一部である。インキジェットインキセットは好ましくは少なくともシアンインキジェットインキ、マゼンタインキジェットインキ、イエローインキジェットインキ及びブラックインキジェットインキを含む。そのようなCMYK-インキジェットインキセットをレッド、グリーン、ブルー、バイオレット及び/又はオレンジのような追加のインキを用いて拡張し、画像の色域をさらに拡大することもできる。インキジェットインキセットを全密度(full density)インキジェットインキと軽密度(light density)インキジェットインキの組み合わせにより拡張することもできる。暗色及び明色インキならびに/或いはブラック及びグレーインキの組み合わせは粒状性の低下により画質を向上させる。
【0077】
好ましい態様において、インキジェットインキセットはホワイトインキジェットインキも含む。これは特に透明基材上により鮮やかな色を得ることを可能にし、ここで画像を透明基材を介して見る場合にホワイトインキジェットインキをプライマーとして又はカラーインキジェットインキの上に適用することができる。
【0078】
本発明に従うインキジェットインキの粘度は25℃及び90s-1のせん断速度において好ましくは25mPa.s未満、より好ましくは25℃及び90s-1のせん断速度において2mPa.sと15mPa.sの間である。本発明に従うインキジェットインキの表面張力は好ましくは25℃において約18mN/mないし約70mN/mの範囲内、より好ましくは25℃において約20mN/mないし約40mN/mの範囲内である。
【0079】
A.2.本発明に従う流体
A.2.1.第一級又は第二級アミンで官能基化された化合物
本発明に従う流体は第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物を含み、第一級アミンがより好ましい。前記第一級
アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物は二又は多官能基性低分子量化合物及びオリゴマー又はポリマーから選ばれ得る。
【0080】
より好ましい態様において、前記アミノ官能基化化合物は二ないし八、より好ましくは二ないし五の官能基性そして最も好ましくは二又は三官能基性を有する低分子量化合物である。これらの化合物は市場で入手可能である。
【0081】
典型的なアミン官能基化インキ添加物を表4に示すがこれらに限られない。
【表4-1】
【表4-2】
【0082】
より好ましい態様において、前記第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物は、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基で官能基化されたポリマーであり、第一級アミンがより好ましい。
【0083】
ポリマーは流体中に溶解され得るか又は分散された又は乳化されたポリマー粒子として存在することができる。プライマーとしての流体の設計において有用な典型的なポリマーはポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルアミン-コ-ビニルホルムアミド)、キトサン、4-アミノメチル-スチレン又はその塩、2-アミノエチル-アクリレート又はその塩、2-アミノエチル-メタクリレート又はその塩、3-アミノプロピル-アクリルアミド又はその塩、3-アミノプロピル-メタクリルアミド又はその塩のホモポリ-又ははコポリマー、ポリ(リシン)又はそのコポリマーなどからなる群より選ばれる。
【0084】
好ましい態様において、流体は第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基で官能基化された少なくとも1種の樹脂粒子を含み、第一級アミンがより好ましい。流体中で官能基化された化合物の代わりに官能基化された樹脂粒子を用いることは、向上した流動学的行動の利点を有し、向上した噴射信頼性及び流体のコロイド安定性に導く。これは、インキジェットヘッド又はバルブジェットヘッドによる画像形成法で流体を噴射しなければならない場合、例えば流体が画像通りに適用されるプライマー(予備処理液)、水性インキジェットインキ又はオーバーコートである場合に非常に重要なことである。
【0085】
アミノ官能基化樹脂粒子はアミノ官能基化ポリマーの誘導体化(derivatisation)、及び続く前記誘導体の水性環境中における分散及び任意的に続く粒子の架橋により製造され得る。好ましい出発ポリマーはビニルアミン又はアリルアミンのホモ又はコポリマーである。典型的な例にはポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルアミン-コ-ビニルホルムアミド)、キトサン、4-アミノメチル-スチレン又はその塩、2-アミノエチル-アクリレート又はその塩、2-アミノエチル-メタクリレート又はその塩、3-アミノプロピル-アクリルアミド又はその塩、3-アミノプロピル
-メタクリルアミド又はその塩のホモポリ-又ははコポリマー、ポリ(リシン)又はそのコポリマーなどが含まれる。出発ポリマーの重量平均分子量は好ましくは少なくとも7000、より好ましくは少なくとも15000そして最も好ましくは少なくとも25000である。
【0086】
他の合成戦略にはアゼリジンを用いるカルボン酸官能基化アクリルポリマーの誘導体化及び続く乳化及び任意的に続く架橋、任意的に保護されたアミノ官能基化モノマーの乳化又はミニ乳化重合及び任意的に続く脱保護、4-クロロメチル-スチレンのような反応性モノマーを含む反応性ラテックスの後誘導体化ならびにアミノ官能基化アルコキシシランに基づくゾルゲルベースの重縮合を含む。
【0087】
好ましい態様において、前記アミノ官能基化樹脂粒子は架橋されている。架橋された粒子はより調製自由度を与える。事実架橋の故に樹脂粒子はインキのビヒクル中に存在する水溶性有機溶剤に対してより抵抗性であろう。さらなる好ましい態様において、ポリマー樹脂粒子中の繰り返し単位の少なくとも5モル%、より好ましくは少なくとも10モル%そして最も好ましくは少なくとも20モル%が第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる官能基で官能基化されている。
【0088】
アミンは塩酸、メタンスルホン酸、p.-トルエンスルホン酸、リン酸、硫酸ならびに酢酸、クエン酸及び乳酸のようなカルボン酸のような酸を用いて少なくとも部分的に中和されることができる。
【0089】
A.2.2.添加物
流体は流体の機能(functioning)のために特有の添加物を含むことができる。
【0090】
A.2.2.1.プライマーとして働く流体のための添加物
本発明に従う流体セットの一部としての流体がプライマーとして機能する場合、流体はさらにインキセットの水性インキジェットインキ中の成分を凝集させることができる成分を含むことができる。例は流体セットの水性インキの着色剤と反応する凝集剤である。凝集剤は水性インキがプライマーとして働く流体と接触すると粘度上昇、インキの着色剤の沈殿又は固定を引き起こす。
【0091】
凝集剤は好ましくは樹脂、カチオン性界面活性剤又は多価金属イオンである。多価金属イオンの適した例はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム及びアルミニウムのような二価又はもっと多価の金属カチオンとフルオリドイオン(F-)、クロリドイオン(Cl-)、ブロミドイオン(Br-)、サルフェートイオン(SO4 2-)、硝酸イオン(NO3 -)及びアセテートイオン(CH3COO-)のようなアニオンから形成される水溶性金属塩である。
【0092】
これらの多価金属イオンはインキジェットインキ中の顔料の表面上又はインキ中に含まれる分散されたカプセルのポリマー上のカルボキシル基に作用することにより着色剤、さらに特定的に顔料を凝集させる機能を有する。結局インキの着色剤は固定され、ブリーディング及びビーディングを減少させる。従ってインキ中の顔料の表面及び/又はインキ中に含まれるなら分散されたカプセルのポリマーはアニオン性基、好ましくはカルボキシル基を有するのが好ましい。
【0093】
凝集剤としての樹脂は;デンプン;カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロースのようなセルロース系材料;ポリウレタン、多糖類;ゼラチン及びカゼインのようなタンパク質;タンニン及びリグニンのような水溶性の天然に存在するポリマー;な
らびにポリビニルアルコールを含むポリマー、ポリエチレンオキシドを含むポリマー、アクリル酸モノマーから生成するポリマー及び無水マレイン酸モノマーから生成するポリマーのような合成水溶性ポリマーの群から選ばれることができる。他の適した樹脂は欧州特許第2362014号明細書[0027-0030]に記載されているアクリル系ポリマーである。好ましくは、樹脂はカチオン性樹脂、より好ましくはカチオン性帯電ポリウレタンである。樹脂含有率はプライマーとして働く流体の合計質量(100質量%)に対して好ましくは20重量%以下である。
【0094】
プライマーとして働く流体は、ボール紙、黒色不織布のような暗色又は着色基材或いは透明基材上でプライマーに本発明に従う流体セットの水性インキジェットインキを上塗り印刷(over printed)する時に鮮やかな着色画像を得るために着色剤、さらに特定的にホワイト着色剤も含むことができる。さらに特定的に、プライマーとして働く流体は好ましくはホワイト顔料を含む。適したホワイト顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0116]中の表2により示されている。ホワイト顔料は好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料である。ホワイト顔料を単独で又は組み合わせて用いることができる。好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料として二酸化チタンを用いる。適した二酸化チタン顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0117]及び[0118]中に開示されているものである。本発明において有用な二酸化チタン(TiO2)顔料はルチル又はアナターゼ結晶形にあることができる。TiO2の製造方法は“The Pigment Handbook”,Vol.1,2nd Ed.,John Wiley & Sons,NY(1988)に非常に詳細に記載されており、その関連する開示は引用することにより完全に示されているごとくにすべての目的のために本明細書の内容となる。
【0095】
二酸化チタン粒子は流体の所望の末端使用用途に依存して約1ミクロン以下の多様な平均粒度を有することができる。高い隠蔽を要求する用途又は装飾的印刷用途のために、二酸化チタン粒子は好ましくは約1ミクロン未満の平均寸法を有する。好ましくは、粒子は約50nmから約950nmまで、より好ましくは約75nmから約750nmまでそしてさらにもっと好ましくは約100nmから約500nmまでの平均寸法を有する。
【0096】
いくらかの透明度を有する白色を要求する用途のために、好ましい顔料は「ナノ」二酸化チタンである。「ナノ」二酸化チタン粒子は典型的に約10nmから約200nmまで、好ましくは約20nmから約150nmまでそしてより好ましくは約35nmから約75nmまでの範囲の平均寸法を有する。ナノ二酸化チタンを含む流体は向上した彩度及び透明度を与えることができ、一方でまだ光退色への優れた抵抗性及び適切な色相角を保持している。コーティングされていないナノ等級の酸化チタンの商業的に入手可能な例はP-25であり、Degussa(Parsippany N.J.)から入手可能である。
【0097】
さらに、多重の粒度(multiple particle sizes)を用いて不透明性及びUV保護のような独特の利点を実現することができる。顔料の及びナノ等級のTiO2の両方を加えることにより、これらの多重の寸法を達成することができる。
【0098】
二酸化チタン顔料は1種以上の金属酸化物表面コーティングを帯びていることもできる。当業者に既知の方法を用いてこれらのコーティングを適用することができる。金属酸化物コーティングの例には中でもシリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアが含まれる。これらのコーティングは二酸化チタンの光反応性の低下を含む向上した性質を与えることができる。アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアの金属酸化物コーティングはTiO2顔料の正に帯電した表面を生じ、従ってプライマーの通常のpHにおいて正の電荷を有する第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少な
くとも2個の官能基で官能基化された化合物との組み合わせにおいて特に有用である。その場合、顔料の追加の表面処理は必要でない。
【0099】
そのようなコーティングされた二酸化チタンの市販の例にはR700(アルミナコーティングされている、E.I.DuPont deNemours,Wilmington
Del.から入手可能)、RDI-S(アルミナコーティングされている、Kemira Industrial Chemicals,Helsinki,Finlandから入手可能)、R706(DuPont,Wilmington Del.から入手可能)及びW-6042(Tayco Corporation,Osaka Japanからのシリカアルミナ処理されたナノ等級二酸化チタン)が含まれる。
【0100】
プライマーとして働く流体をインキジェットヘッド又はバルブジェットヘッドを介して噴射する場合、§A.1.4.に記載されているもののような他の添加物を加えることができる。
【0101】
A.2.2.2.水性インキジェットインキとして働く流体のための添加物
本発明に従う流体セットの一部としての流体は画像の形成における水性インキジェットインキとしても機能することができ、セットプライマーの第一の水性インキジェットインキと反応するその能力の故に共反応性インキジェットインキとも呼ばれる。
【0102】
インキジェットインキとして働く流体は好ましくは§A.1.3.に記載される着色剤及び§A.1.4.に記載される添加物を含む。
【0103】
A.2.2.3オーバーコートとして働く流体のための添加物
本発明に従う流体セットの一部としての流体が噴射された本発明に従う水性インキジェットインキの上にコーティング又は印刷されるオーバーコートとして機能する場合、流体はさらに樹脂を含むことができる。適した樹脂はアクリルに基づく樹脂、ウレタン修飾ポリエステル樹脂又はポリエチレンワックスであることができる。
【0104】
ポリウレタン樹脂をオーバーコートとして働く流体調製物中に分散系として導入することができ、それらは例えば脂肪族ポリウレタン分散系、芳香族ポリウレタン分散系、カチオン性ポリウレタン分散系、非イオン性ポリウレタン分散系、脂肪族ポリエステルポリウレタン分散系、脂肪族ポリカーボネートポリウレタン分散系、脂肪族アクリル修飾ポリウレタン分散系、芳香族ポリエステルポリウレタン分散系、芳香族ポリカーボネートポリウレタン分散系、芳香族アクリル修飾ポリウレタン分散系又は上記の2種以上の組み合わせからなる群より選ばれることができる。
【0105】
適したポリウレタン分散系のいくつかの例は、例えばNEOREZ R-989、NEOREZ R-2005及びNEOREZ R-4000(DSM NeoResins);BAYHYDROL UH 2606、BAYHYDROL UH XP 2719、BAYHYDROL UH XP 2648及びBAYHYDROL UA XP 2631(Bayer Material Science);DAOTAN VTW 1262/35WA、DAOTAN VTW 1265/36WA、DAOTAN VTW
1267/36WA、DAOTAN VTW 6421/42WA、DAOTAN VTW 6462/36WA(Cytec Engineered Materials Inc.,Anaheim CA);及びSANCURE 2715、SANCURE 20041、SANCURE 2725(Lubrizol Corporation)あるいは上記の2種以上の組み合わせである。
【0106】
アクリルに基づく樹脂にはアクリルモノマーのポリマー、メタクリルモノマーのポリマ
ー及び上記のモノマーと他のモノマーのコポリマーが含まれる。これらの樹脂は約30nmないし約300nmの平均直径を有する粒子の懸濁液として存在する。アクリルラテックスポリマーはアクリルモノマー又はメタクリルモノマー残基から生成する。アクリルラテックスポリマーのモノマーの例には例えばアクリレートエステル、アクリルアミド及びアクリル酸のようなアクリルモノマーならびに例えばメタクリレートエステル、メタクリルアミド及びメタクリル酸のようなメタクリルモノマーが例として含まれる。アクリルラテックスポリマーはホモポリマーであるか或いはアクリルモノマーと例えばスチレン、スチレンブタジエン、p-クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン及びジビニルナフタレンを含むがこれらに限られないビニル芳香族モノマーのような別のモノマーのコポリマーであることができる。
【0107】
適したアクリルラテックスポリマー懸濁液のいくつかの例は、例えばJONCRYL 537及びJONCRYL 538(BASF Corporation,Port ArthurTX);CARBOSET GA-2111、CARBOSET CR-728、CARBOSET CR-785、CARBOSET CR-761、CARBOSET CR-763、CARBOSET CR-765、CARBOSET CR-715及びCARBOSET GA-4028(Lubrizol Corporation);NEOCRYL A-1110、NEOCRYL A-1131、NEOCRYL A-2091、NEOCRYL A-1127、NEOCRYL XK-96及びNEOCRYL XK-14(DSM);ならびにBAYHYDROL AH XP 2754、BAYHYDROL AH XP 2741、BAYHYDROL A 2427及びBAYHYDROL A2651(Bayer)或いは上記の2種以上の組み合わせである。
【0108】
オーバーコートとして働く流体中の樹脂の濃度は少なくとも1重量%且つ好ましくは30重量%未満、より好ましくは20重量%未満である。
【0109】
オーバーコートを噴射された水性インキジェットインキ上にコーティング法により適用することができるか、又は:グラビア印刷、フレキソグラフィー印刷、オフセット印刷又はインキジェット印刷のような印刷法を用いて印刷することができる。特に好ましい態様において、インキジェット印刷を用いてワニスを印刷する。
【0110】
B.インキジェット印刷法
本発明に従う流体セットはインキジェット画像記録法における使用に適している。本発明に従うインキジェット記録法は:
a)基材、好ましくは非多孔質基材上に本発明に従う流体セットの一部を成す水性インキジェットインキを噴射し、インキは着色剤及び一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子の分散系を含み、より好ましくはインキはコアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散系を含み、コアは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含み;そして
b)基材、好ましくは非多孔質基材上(その場合流体はプライマーとして働いている)又は噴射された水性インキジェット上に(その場合流体はオーバーコートとして働いている)本発明に従う流体セットの流体を適用するか或いは流体を水性インキジェットインキと一緒に噴射して着色画像を形成する(その場合は流体は水性インキジェットインキ、より特定的に共反応性インキジェットインキとして働いている)。
c)噴射されたインキの少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度を得るような熱を適用することにより適用された流体セットを乾燥する
段階を含む。得られる温度が60℃未満の場合、一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子と第一級
アミン又は第二級アミンである少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物の間の架橋反応が起こらないか又は不十分である。結局、溶剤抵抗性又は噴射され且つ乾燥したインキの接着の向上は起こらない。
【0111】
好ましいインキジェット記録法において、前記方法は:a)基材、好ましくは非多孔質基材上にプライマーとしての本発明に従う流体を適用する段階を含む。流体は第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物を含み、第一級アミンがより好ましい。流体はいずれかの適したコーティング法によりコーティングされ得るか或いは:グラビア印刷、フレキソグラフィー印刷、オフセット印刷又はインキジェット印刷のような印刷法を用いて印刷され得る。特に好ましい態様において、流体はインキジェット印刷を用いて印刷され、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物は樹脂粒子である。この最後の流体の適用手段は必要な流体の量が基材の下塗りの他の適用法を用いるより実質的に少ないという利点を有する。任意的に熱の適用により流体を乾燥して乾燥又は半乾燥状態にすることができる。b)適用された流体上に本発明に従う流体セットの水性インキジェットインキを噴射し、インキは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子の分散系を含み、より好ましくはインキはコアを囲む高分子シェルから構成されるカプセルの分散系を含み、コアは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含み;そしてc)噴射されたインキの少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度を得るような熱を適用することにより噴射されたインキジェットインキを乾燥する。
【0112】
別の好ましいインキジェット記録法において、前記方法は:a)基材、好ましくは非多孔質基材上に流体セットをインキ噴射することにより画像を形成する段階を含む。流体セットの流体は第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物を含み、第一級アミンがより好ましく、好ましくは着色剤である。より好ましくは前記化合物は樹脂粒子である。本発明に従う流体セットの水性インキジェットインキは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子の分散系を含み、より好ましくはインキはコアを囲む高分子シェルから構成されるカプセルの分散系を含み、コアは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む。画像の形成における流体セットの噴射は流体及び水性インキジェットインキを逐次的に又は同時に噴射することにより行われ得;そしてc)噴射されたインキの少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度を得るような熱を適用することにより噴射された流体セットを乾燥する。
【0113】
別の好ましいインキジェット記録法において、前記方法は:a)基材、好ましくは非多孔質基材上に本発明に従う流体セットの水性インキジェットインキを噴射する段階を含む。インキは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子の分散系を含み、より好ましくはインキはコアを囲む高分子シェルから構成されるカプセルの分散系を含み、コアは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む;任意的に熱の適用によりインキジェットインキを乾燥して乾燥又は半乾燥状態にすることができる;そしてb)噴射された水性インキジェットインキ上にオーバーコートとしての本発明に従う流体を適用する。流体は第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物を含み、第一級アミンがより好ましい。流体はいずれかの適したコーティング法によりコーティングされ得るか或いは:グラビア印刷、フレキソグラフィー印刷、オフセット印刷又はインキジェット印刷のような印刷法を用いて印刷され得る。特に好ましい態様において、流体はインキジェット
印刷を用いて印刷され、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物は樹脂粒子である。c)噴射されたインキの少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度を得るような熱を適用することにより適用された流体セットを乾燥する。
【0114】
別の好ましいインキジェット記録法において、上記の好ましい方法の2つ又は3つを組み合わせることができる。
【0115】
インキジェット記録法における基材は例えば編織布、紙、革及びボール紙基材のような多孔質であることができるが、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリラクチド(PLA)のようなポリエステル又はポリイミドのような非吸収性基材である。
【0116】
基材は普通紙、樹脂がコーティングされた紙、例えばポリエチレン又はポリプロピレンがコーティングされた紙のような紙基材であることもできる。紙の型に実質的な制限はなく、それには新聞紙、雑誌用紙、オフィス用紙、壁紙が含まれるが、ホワイトライニングチップボード、段ボール及び包装紙のような通常ボードと呼ばれる比較的高い坪量の紙も含まれる。
【0117】
基材は透明、半透明又は不透明であることができる。好ましい不透明基材にはAgfa-GevaertからのSynapsTM銘柄ようないわゆる合成紙が含まれ、それは1.10g/cm3以上の密度を有する不透明ポリエチレンテレフタレートシートである。
【0118】
本発明に従う流体セットの乾燥のため又は少なくとも流体又は水性インキジェットインキの乾燥のための加熱法の例にはヒートプレス、大気圧蒸熱、高圧蒸熱、THERMOFIXが含まれるがこれらに限られない。加熱法のためにいずれの熱源も用いることができ;例えば赤外線源が用いられる。
【0119】
乾燥段階を大気において行うことができるが、適用される流体セット或いは流体又は水性インキジェットインキの少なくとも1つの少なくとも60℃、より好ましくは80℃の温度を達成するための加熱段階は、熱源の使用により行われなければならない。適した熱源の例には強制空気加熱、NIR-及びCIR線を含むIR-線のような放射線加熱、伝導加熱、高周波乾燥及びマイクロ波乾燥のための装置が含まれる。
【0120】
インキジェットインキ及び任意的にプライマー及び/又はオーバーコートとして働く流体の噴射用のインキジェット印刷系のために好ましいインキジェットヘッドは圧電インキジェットヘッドである。圧電インキジェット噴射は圧電セラミック変換器に電圧が適用される場合のその動きに基づく。電圧の適用はプリントヘッド中の圧電セラミック変換器の形を変え、空隙を形成し、それが次いでインキ又は液で満たされる。電圧が再び取り除かれると、セラミックはその最初の形に膨張し、インキジェットヘッドからインキ滴を吐出する。しかしながら本発明に従う水性インキジェットインキ及び任意的に流体の噴射は圧電インキジェット印刷に縛られない。他のインキジェットプリントヘッドを用いることができ、連続型、サーマルプリントヘッド型、MEM-ジェット型ヘッド及びバルブジェット型のような種々の型が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0121】
C.実施例
C.1.材料
すべての化合物は、他にことわらなければTCI Europeにより供給される。
●Desmodur N75 BAはBayer AGにより供給される三官能基性イソシアナートである。
●Lakeland ACP70はLakeland Laboratories LTDにより供給される両性イオン性界面活性剤である。
●Alkanol XCはDupontにより供給されるアニオン性界面活性剤である。●Arquad T-50はAkzo Nobel NVにより供給されるカチオン性界面活性剤の混合物である。
●Cab-o-Jet 465MはCabotにより供給されるマゼンタ顔料分散系である。
●Cab-O-Jet 450CはCabotにより供給されるされるシアン顔料分散系である。
●Tego Wet 270はEvonik Industriesにより供給されるエーテル修飾ポリ(ジメチルシロキサン)である。
●PAA H 10CはNittoboにより製造される60000の分子量を有するポリ(アリルアミン)の水中の20重量%溶液である。
●TERTAMINRESは以下の通りに製造される第三級アミンに基づく樹脂である:30gのジメチルアミノ-エチルメタクリレートを40gのトルエン中に溶解した。25gの2,2’-アゾビス[2-メチルブチロニトリル]を加えた。反応混合物を窒素でパージし、80℃に加熱した。反応を2時間続けさせた。追加の125mgの2,2’-アゾビス[2-メチルブチロニトリル]を加え、80℃で22時間反応を続けさせた。反応混合物を室温に冷まし、減圧下で溶媒を除去した。
●CATSURF-1:国際公開第2018077624号パンフレットに開示されている以下の構造を有するカチオン性界面活性剤:
【化2】
●AMINE-1は以下の通りに製造される第一級アミン官能基化コロイドである:40gのアセトン中の7gのオクタデシルイソシアナートの溶液を水中の50gの20重量%ポリ(アリルアミン)(Mw:60000)と200gのアセトンの混合物に室温で3分かけて加えた。Ultra Turraxを用いて15000RPMで混合物を3分間撹拌した。混合物を20分間還流させた。混合物を室温に冷まし、Ultra Turraxを用いて15000RPMで3分間撹拌した。20gのアセトン中の2gのシュウ酸エチルの溶液を4gのメタノール中のCATSURF-1の溶液と混合した。この混合物を室温で10分間撹拌し、上記のポリマー溶液に3分間かけて加え、続いてUltra Turraxを用いて15000RPMで撹拌した。混合物を室温で30分間撹拌した。50gの水を加えた。溶媒及び水を減圧下で蒸発させ、AMINE-1分散系の重量を80gに調整した。0.3gのProxel Kを殺生物剤(biocide)として加えた。
●AMINE-2は以下の通りに製造される第一級アミン官能基化コロイドである:5gのジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド及び30gの3-アミノプロピル-トリメトキシシランの混合物を、Ultra Turraxを用いて18000rpmで5分間撹拌しながら100gの水に加えた。50mlの水を加え、2時間の間に65℃において減圧下で混合物を蒸発させ、反応の間に生成するメタノールを除去した。混合物をさらに蒸発させて25重量%の分散系を得た。
●ZetasizerTM Nano-S(Malvern Instruments,Goffin Meyvis)を用いて平均粒度を測定した。約17nmに主ピーク及び
約140nmに第二極大を有する二重粒度分布が観察された。
●SUB-1:Antalisにより供給されるポリ(プロピレン)(Priplak)●SUB-2:Agfa-Gevaert NVにより与えられるSynaps(SUV311)
●SUB-3:Lexanにより供給されるポリカーボネート(Lexan PC 9030 Clear)
●SUB-4:Lerobelにより供給されるフロートガラス(Sn-接触側)
●SUB-5:Dejond(Wilrijk,Belgium)により供給されるステンレススチール316L
●SUB-6:Metamarkにより供給されるPVC(MD5-100)
●SUB-7:粗面化され且つ陽極酸化された平板アルミニウム印刷板基材
【0122】
C.2.測定法
C.2.1.溶剤抵抗性及び耐水性
溶剤としてイソプロパノール及びメチルエチルケトン又は水を用い、コーティング又は印刷画像の上をQ-チップで40回拭うことにより、溶剤抵抗性を試験した。
【0123】
0の得点はコーティング又は画像層の完全な溶解を意味する。1の得点は拭った時の可視の損傷を意味する。2の得点はコーティング又は画像上に目立つ損傷がないか又は損傷がほとんど目立たないことを意味する。
【0124】
C.2.2.接着
ISO2409:1992(E)に従ってクロスカットテストにより基材上へのコーティング及び画像の接着を評価した。カット間に1mmの空間を有するBRAIVE INSTRUMENTSからのBraive No.1536 Cross Cut Testerを用い、且つTesatapeTM 4104 PVCテープと組み合わせて600gの重りを用いる塗装(国際標準 1992-08-15)。表6に記載される基準に従って評価を行い、ここでクロスカット内及びクロスカット外の接着の両方を評価した。
【表5】
【0125】
C.2.2.3.インキジェット記録法
インキジェット記録法を実行するためのインキジェット記録装置は標準的なDimatixTM 10 plプリントヘッドが備えられたDimatixTM DMP2831系であった。22℃において5kHzの発射周波数(firing frequency)、25Vの発射電圧及び標準的な波形を用いてインキを噴射した。
【0126】
実施例1:
この実施例は、本発明に従うカプセル設計を含む水性インキジェットインキ及びオーバーコートである流体を含む流体セットの使用の故の耐薬品性における向上を示す。
【0127】
本発明の樹脂INVRES-1の合成
10g(46.6ミリモル)の2-(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートを30mlの酢酸エチル中に溶解した。0.472g(2.33ミリモル)のドデシルメルカプタンを加え、混合物を窒素でパージした。134mg(0.7ミリモル)の2,2’-アゾビス[2-メチルブチロニトリル]を加え、混合物を6時間還流させた。混合物を室温に冷ました。酢酸エチル中の本発明の樹脂INVRES-1の溶液を本発明のカプセルINVCAP-1の合成において直接用いた。
【0128】
GPCを用い、INVRES-1の分子量をポリ(スチレン)標準に対して決定した。INVRES-1は10500の数平均分子量(numeric weight average molecular weight)Mn及び15400の重量平均分子量Mwを有した。
【0129】
本発明のカプセルINVCAP-1の製造:
13.2gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-1の溶液の37gに加えた。1.2gのLakeland ACP 70を加え、溶液を室温で1時間撹拌した。
【0130】
この溶液をUltra Turraxを用いて16000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら44gの水中の3.36gのLakeland ACP 70、1.17gのリシン及び1.5gのトリエタノールアミンの溶液に加えた。52gの水を加え、60℃において真空度を500ミリバールから120ミリバールに徐々に増しながら減圧下で溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより分散系の重量を88gに調整した。分散系を65℃で16時間撹拌した。分散系を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散系をろ過した。
【0131】
ZetasizerTM Nano-S(Malvern Instruments,Goffin Meyvis)を用いて平均粒度を測定した。平均粒度は183nmであった。
【0132】
本発明のインキINVINK-1の調製
表6に従う成分を混合することにより本発明のインキINVINK-1を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【表6】
【0133】
比較用のオーバーコートCOMPOV-1及びCOMPOV-2の調製
Arquad T-50の25重量%溶液の6gでpolyDADMACの20重量%溶液の100gを希釈し、1時間撹拌することによりCOMPOV-1を調製した。溶液を水で希釈して150gを得た。polyDADMACの13.3重量%溶液が得られた。COMPOV-1は非反応性第4級アンモニウムに基づく樹脂を含む。
【0134】
13.3gのTERTAMINRESに70gの水を加えることによりCOMPOV-2を調製した。塩酸の37重量%溶液を用いて混合物を中和した。1gのセチル-トリメチルアンモニウムクロリドを加え、続いて水を加えて100gの溶液を得た。COMPOV-2は非反応性第三級アミンに基づく樹脂を含む。
【0135】
本発明のオーバーコートINVOV-1の調製
塩酸の37重量%溶液を用いて100gのPAA H 10Cを中和することによりINVOV-1を調製した。pHを7にするために20gが必要であった。Arquad T-50の25重量%溶液の6gを加え、溶液を1時間撹拌した。溶液を水で希釈し、150gを得た。中和されたポリ(アリルアミン)の13.3重量%溶液が得られた。
【0136】
10ミクロンのワイアバー(wired bar)を用いて本発明のインキINVINK-1をSynaps OM230(Agfa-Gevaert)上にコーティングし、80℃で15分間乾燥した。このコーティングの上に10ミクロンのワイアバーを用いて種々のオーバーコートをコーティングし、80℃で15分間乾燥した。§C.2.1.における方法に従うってコーティングの溶剤抵抗性を測定した。結果を表7にまとめる。
【表7】
【0137】
表7から、本発明の流体セット(INVINK-1+INVOV-1)を用いて得られるコーティングのみが溶剤抵抗性層を生じ、一方他のコーティングは溶剤抵抗性を全く示さなかったことが明らかになる。
【0138】
実施例2:
この実施例は、プライマーとして適用された本発明に従う流体上に本発明に従う水性インキジェットインキを噴射する時の耐薬品性における向上を示す。
【0139】
本発明のプライマーINVPRIM-1の調製
INVPRIM-1はポリ(アリルアミン)Mw60000の20重量%溶液であった。
【0140】
10ミクロンのワイアバーを用いてINVPRIM-1をSUB-1上にコーティングし、50℃で5分間乾燥した。
【0141】
上記のコーティングされた基材上及び比較用の試料としての下塗りされていない基材上に§C.2.3.の方法に従って本発明のインキINVINK-1を噴射した。噴射された層を80℃で5分間乾燥した。
【0142】
各試料の溶剤抵抗性を§C.2.1.に従って試験した。結果を表8にまとめる。
【表8】
【0143】
表8から、両方とも本発明に従う流体(プライマーとして)及び水性インキの組み合わせである流体セットのみが溶剤抵抗性画像を生ずることが明らかになる。
【0144】
実施例3:
この実施例は、本発明に従うカプセルを含むインキ及び本発明に従うアミン官能基化樹脂を含むインキとして働く流体を含む流体セットの使用による溶剤抵抗性における向上を示す。
【0145】
本発明のインキINVINK-2及びINVINK-3の調製
表9に従う成分を混合することにより本発明のインキINVINK-2を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。本発明のインキINVINK-3はAMINE-1に等しい。
【表9】
【0146】
比較用のインキCOMPINK-1の調製
最高水準のポリ(ウレタン)に基づくインキは国際公開第2018077624号パンフレットに開示されている。国際公開第2018077624号パンフレットに基づき、表10に従う成分を混合することにより比較用のインキCOMPINK-1を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【表10】
【0147】
PU-1は国際公開第2018077624号パンフレットにPU-9として開示されている通りに製造された。
【0148】
本発明のインキINVINK-2及び比較用のインキCOMPINK-1を4ミクロンのワイアバーを用いて基材SUB-1ないしSUB-7上にコーティングし、80℃で15分間乾燥した。
【0149】
INVINK-2のコーティングを含む試料に4ミクロンのワイアバーを用いてINVINK-3を上塗りし、80℃で15分間乾燥した。
【0150】
§C.2.1及び§C.2.2に従ってコーティングされた試料上における溶剤抵抗性、耐水性及び接着を測定した。結果を表11にまとめる。
【表11】
【0151】
表11から、本発明の流体セット(INVINK-2+INVINK-3)により得られるコーティングが種々の基材上でポリ(ウレタン)に基づく樹脂インキと比較して耐薬品性及び耐水性における有意により高い自由度を与えながら優れた接着性能を保持していることが明らかになる。
【0152】
実施例5:
この実施例は、本発明に従うカプセルを含むインキ及びインキとして働き且つ本発明に従う第一級アミン官能基化コロイドを含む流体を含む流体セットの噴射により得られる画像のポリプロピレン上における優れた接着性能及び溶剤抵抗性を示す。
【0153】
INVINK-4の調製
表12に従う成分を混合することによりINVINK-4を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【表12】
【0154】
§C.2.3.に記載された方法に従って本発明のインキINVINK-1をSUB-1上に印刷した。インキ層にINVINK-4を2回上塗り印刷した。噴射された層を80℃で5分間乾燥した。§C.2.1及び§C.2.2における方法に従って溶剤抵抗性、耐水性及び接着を測定した。結果を表13にまとめる。
【表13】
【0155】
表13から、本発明に従うカプセルを含むインキ及び第一級アミン官能基化分散系を含むインキを含む流体セットが高められた温度における熱処理の必要なく非吸収性基材上における優れた物理的性質を与えることが明らかになる。
【0156】
実施例6:
この実施例は、噴射可能な反応性樹脂としてのゾルゲルベースの第一級アミン官能基化コロイドを有する流体及び本発明に従うカプセルを含むインキジェットインキに基づく流体セットの使用を示す。
【0157】
本発明のインキINVINK-5の調製
表14に従う成分を混合することによりINVINK-5を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【表14】
【0158】
特別なコーティングのないPremier Textiles,UKからのポリエステル/綿編織布上に§C.2.3.に記載の方法に従って本発明のインキINVINK-2を印刷した。インキ層に§C.2.3.に記載の方法に従ってINVINK-5を2回上塗り印刷した。参照試料に本発明のインキINVINK-2のみを印刷した。試料を80℃で15分間乾燥した。
【0159】
編織布上のベタ領域(solid areas)の印刷及び乾燥の後、Crockmeter SDL ATLAS M238AAを用いてISO105-X12に従って乾燥及び湿潤摩擦染色堅牢度試験(dry and wet crock fastness
test)を行った。白いラビング布(rubbing cloth)の着色をCielab色彩空間に従うΔEとして与えた。ΔE値が低いほど摩擦染色堅牢度は高い。結果を表15にまとめる。
【表15】
【0160】
表15から、本発明に従うカプセルを含むインキ及び第一級アミン官能基化分散系を含むインキを含む流体セットが明らかに向上した湿潤摩擦染色堅牢度を与えることが明らかになる。