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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】アンテナ素子に用いられるプラスチック
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240806BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20240806BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240806BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240806BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08L101/00
H01Q1/38
C23C28/00 A
C08K3/01
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/34
C08K3/36
C08K7/14
C08K3/24
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022575827
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 CN2021099020
(87)【国際公開番号】W WO2021249409
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202010526374.2
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】黎 良元
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 成
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 曼瑞
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲銘▼
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110655792(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105602205(CN,A)
【文献】特開2011-021178(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061460(WO,A1)
【文献】特開2012-219198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合計100重量部のプラスチックであって、前記プラスチックは、重量部で
25~90部のマトリックス樹脂と、
1~60部のレーザ反射剤であって、二酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末、硫化亜鉛粉末、チタン酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末、酸化鉄粉末、タルカムパウダー、マイカ粉末、およびABO3粉末のうちの1つ以上を含み、前記ABO3粉末において、AはBa、Sr、Pb、またはBaxSryであり、BはTi、Zr、またはTixZryであり、x+y=1である、レーザ反射剤と、
0より大きく70部以下の無機充填剤であって、シリカ粒子およびガラス繊維を含む、無機充填剤と、の成分を含み、前記無機充填剤は、化学的に腐食可能である、
プラスチック。
【請求項2】
前記マトリックス樹脂は、第1のマトリックス樹脂を含み、前記第1のマトリックス樹脂は、サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリアミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、およびポリエーテルイミドのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のプラスチック。
【請求項3】
前記第1のマトリックス樹脂の重量部は、25~90部である、請求項2に記載のプラスチック。
【請求項4】
前記マトリックス樹脂は、第2のマトリックス樹脂をさらに含み、前記第2のマトリックス樹脂は、サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー、ABS高ゴム粉末、メチルメタクリレート-ブタジエンコポリマー、アクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレンコポリマー、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン-オクテンコポリマー、およびエチレンプロピレンジエンモノマーゴムのうちの1つ以上を含み、前記第2のマトリックス樹脂は、前記第1のマトリックス樹脂とは異なる、請求項2または3に記載のプラスチック。
【請求項5】
前記第2のマトリックス樹脂の重量部は、1~25部である、請求項4に記載のプラスチック。
【請求項6】
前記マトリックス樹脂は、化学的に腐食可能な2つ以上の樹脂成分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラスチック。
【請求項7】
前記マトリックス樹脂は、化学的に腐食可能な少なくとも10重量部の樹脂成分を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラスチック。
【請求項8】
前記ガラス繊維の断面直径または厚さは、15μm以下である、請求項1に記載のプラスチック。
【請求項9】
前記ガラス繊維におけるシリカの含有量は、50%以上である、請求項1に記載のプラスチック。
【請求項10】
前記プラスチックは、レーザ光によって活性化されて金属粒子を放出することができる成分を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載のプラスチック。
【請求項11】
前記プラスチックは、誘電体改質剤をさらに含み、前記誘電体改質剤は、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸ニオブ酸カリウム、および酸化亜鉛のうちの1つ以上を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプラスチック。
【請求項12】
前記誘電体改質剤の重量部は、40部以下である、請求項11に記載のプラスチック。
【請求項13】
前記プラスチックは、潤滑剤、相溶化剤、難燃剤、および抗菌剤のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプラスチック。
【請求項14】
前記プラスチックの長期許容動作温度は、110℃よりも高く、前記プラスチックの引張強度は、40MPa以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプラスチック。
【請求項15】
700MHz~6GHzにおける前記プラスチックの誘電損失は、0.015未満である、請求項1~14のいずれか一項に記載のプラスチック。
【請求項16】
前記プラスチックを用いて作製されたアンテナ素子の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は、-100dBm以下である、請求項1~15のいずれか一項に記載のプラスチック。
【請求項17】
プラスチック部品本体と、前記プラスチック部品本体の表面に形成された金属コーティングと、を備え、前記プラスチック部品本体は、請求項1~16のいずれか一項に記載のプラスチックを射出成形して得られる、金属コーティング付きプラスチック部品。
【請求項18】
アンテナ素子であって、前記アンテナ素子は、アンテナ素子本体と、前記アンテナ素子本体の表面に形成された金属コーティングとを備え、前記アンテナ素子本体は、請求項1~16のいずれか一項に記載のプラスチックを射出成形することによって得られる、アンテナ素子。
【請求項19】
前記金属コーティングは、前記アンテナ素子本体の前記表面上に順次形成された無電解めっき層および電気めっきコーティングを含み、前記無電解めっき層は、銅および/またはニッケルを含み、前記電気めっきコーティングは、銅、スズ、銀、金、および銅-亜鉛-スズ合金のうちの1つ以上を含む、請求項18に記載のアンテナ素子。
【請求項20】
前記アンテナ素子本体の、前記金属コーティングに接合される一方の側の表面は、複数の腐食孔構造を有し、金属コーティング材料は、前記複数の腐食孔構造内に堆積される、請求項18または19に記載のアンテナ素子。
【請求項21】
前記アンテナ素子本体の前記金属コーティングと接合される一方の側の表面の表面粗さRaは、6μm未満である、請求項1820のいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項22】
前記金属コーティングにはクロスカット試験が使用され、結合力は、3M#600テープで少なくともグレード0である、請求項1821のいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項23】
700MHz~6GHzにおける前記アンテナ素子の3次PIMの平均値は、-100dBm以下である、請求項1822のいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項24】
アンテナであって、前記アンテナは請求項1823のいずれか一項に記載のアンテナ素子を備える、アンテナ。
【請求項25】
端末デバイスであって、前記端末デバイスは請求項24に記載のアンテナを備える、端末デバイス。
【請求項26】
基地局であって、前記基地局は請求項24に記載のアンテナを備える、基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アンテナ技術の分野に関し、特に、アンテナ素子に使用されるプラスチックに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、電磁波を送信または受信するために使用されるデバイスである。無線通信用の基地局アンテナは、概して、レドームと、アンテナ放射素子(アンテナ素子)と、給電ネットワーク(電力分配ネットワーク)と、位相シフタと、反射板とを含む。アンテナによって生成された近い周波数を有する少なくとも2つの無線周波数信号が、アンテナ放射素子、給電ネットワーク、位相シフタ、およびフィルタなどの構成要素を通過するとき、接触非線形性および材料非線形性などの要因により、新しいPIM(受動相互変調)信号が生成される。相互変調信号が受信周波数範囲内に入ると、干渉が生じる。これは受信機の感度を低下させ、通信を妨害することさえある。したがって、構成要素のPIM問題は、アンテナ設計、構成要素製造、およびデバイス設置の段階で考慮する必要がある。
【0003】
アンテナ素子は、基地局アンテナにおける重要な無線周波数構成要素である。現在、アンテナ素子の主な形態は、ダイカストアルミニウム合金アンテナ素子、板金アンテナ素子、PCBアンテナ素子、プラスチックアンテナ素子などである。プラスチックアンテナ素子は、概して、プラスチック材料を射出成形することによって得られるアンテナ素子の構造を有するプラスチック部品と、プラスチック部品の表面に形成された金属回路とを含む。金属回路は、概して、放射素子および電力分配ユニットを含む。軽量、望ましい3D構造成形性、低コスト、高集積化、および他の特徴(アンテナ放射素子および給電ネットワークがともに集積化され得る)により、プラスチックアンテナ素子は、次第にアンテナ素子の主な研究方向になっている。しかしながら、現状では、金属回路を形成するプロセスにおいて、プラスチックの粗面化後の過剰な表面粗さ、表面形態の不均一性および不安定性、レーザ加工中に生成される炭化プラスチック粒子、ならびにメタライゼーション中に生成されるバリなど、既存のプラスチックアンテナ素子には一部の加工上の欠点がある。これら欠点は全て、不安定なPIM源であり、PIMを悪化させる。明らかな欠点を有する前述のプラスチックアンテナ素子において異なる搬送周波数の信号が送信されると、PIM相互変調信号が生成される。これは、基地局アンテナの性能低下につながる。結果として、既存のプラスチックアンテナ素子をFDD(Frequency-division duplex、周波数分割複信)システムにおけるアンテナに適用することは困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願の実施形態は、望ましいメタライゼーション性能を有するプラスチックを提供する。プラスチックの場合、化学的粗面化によって低粗度表面を得ることができ、金属コーティングとプラスチック基板との間に望ましい結合を実現することができ、レーザ加工中にプラスチックに対するレーザ光の炭化効果を低減または排除して、PIM源を効果的に低減することができる。プラスチックは、アンテナ素子を製造するために使用され、低いPIM値を得ることができる。
【0005】
本出願の実施形態の第1の態様は、プラスチックを提供する。合計100重量部で、プラスチックは、重量部で25~90部のマトリックス樹脂と、1~60部のレーザ反射剤と、0~70部の無機充填剤と、の成分を含み、無機充填剤は、化学的に腐食可能である。マトリックス樹脂が化学的に腐食可能な樹脂成分を含む場合、無機充填剤の重量部は、0部以上であり、またはマトリックス樹脂が完全に化学的に腐食不可能な樹脂成分である場合、無機充填剤の重量部は、0部より大きい。本出願のこの実施形態のプラスチック配合物では、化学的に腐食可能なマトリックス樹脂または化学的に腐食可能な無機充填剤が選択され、その結果、低い表面粗さおよび望ましい形態一貫性を有する表面が、化学的粗面化を通してプラスチックについて得ることができ、それによってPIM源を低減することができる。さらに、プラスチックの表面に複数の微細な腐食孔構造を形成することができ、その結果、プラスチックの表面上のコーティングの結合力が増加する。レーザ加工中、レーザ反射剤を添加することにより、プラスチックに対するレーザ光の炭化効果を効果的に低減または排除し、炭化粒子の形成を回避し、金属コーティングの縁部におけるバリの形成を低減することができ、それにより、PIMがさらに改善される。このプラスチックをアンテナ素子などの高周波構成要素に適用することにより、PIM値の低いアンテナ素子を作製することができる。
【0006】
本出願の一実装形態では、マトリックス樹脂は、第1のマトリックス樹脂を含む。第1のマトリックス樹脂は、サーモトロピック液晶ポリエステル(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)、ポリアミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、およびポリエーテルイミドのうちの1つ以上を含む。ポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン4T、ナイロン6T、ナイロン9T、およびナイロン10Tのうちの1つ以上を含み得る。ポリスルホン樹脂としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホンなどが挙げられる。ポリケトン樹脂としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトンなどが挙げられる。本出願のこの実装形態では、第1のマトリックス樹脂の重量部は25~90部である。本出願の一部の実装形態では、第1のマトリックス樹脂の重量部は30~80部である。第1のマトリックス樹脂は、望ましい耐熱性および機械的特性と、低い誘電損失とを有する。第1のマトリックス樹脂の本体樹脂は、高い動作温度、高い機械的強度、および高い誘電特性を有するアンテナ素子製品を製造するのに役立つ。サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、およびポリアミド樹脂などの第1のマトリックス樹脂の一部の樹脂は、化学的に腐食可能であり、腐食孔を有する表面を形成するための化学的粗面化をもたらし、その結果、表面上の金属コーティングの結合力が増加する。第1のマトリックス樹脂の適切な含有量は、プラスチックの総合的な性能を効果的に改善することができる。
【0007】
本出願の別の実装形態では、マトリックス樹脂は、第2のマトリックス樹脂をさらに含み、すなわち、マトリックス樹脂は、第1のマトリックス樹脂および第2のマトリックス樹脂の両方を含む。第2のマトリックス樹脂は、サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー(MBS)、ABS高ゴム粉末、メチルメタクリレート-ブタジエンコポリマー(MB)、アクリレートコポリマー(ACR)、エチレン-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー(PTW)、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー(E-MA-GMA)、ポリブタジエン(PB)、ブタジエン-スチレンコポリマー(BS)、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー(SBS)、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン-オクテンコポリマー、およびエチレンプロピレンジエンモノマーゴムのうちの1つ以上を含み、第2のマトリックス樹脂は、第1のマトリックス樹脂とは異なる。本出願のこの実装形態では、第2のマトリックス樹脂の重量部は1~25部である。第2のマトリックス樹脂は、第1のマトリックス樹脂の性能の欠点を補い、最終的なプラスチック製品の性能、例えば、電気めっき性能および強度性能を改善するために、二次成分樹脂として添加することができる。また、第2のマトリックス樹脂全体が化学的に腐食可能なため、化学的な粗面化が容易となる。
【0008】
本出願のこの実装形態では、多様な腐食構造を有する腐食表面を得て、プラスチックの表面上のコーティングの結合力を増加させるために、無機充填剤の重量部が0部に等しい場合、マトリックス樹脂は、化学的に腐食可能な2つ以上の樹脂成分を含む。異なる種類の樹脂の腐食効果は異なっており、したがって、コーティングの結合力を増加させるためにより好ましい腐食表面は、化学的粗面化を通して得ることができる。
【0009】
本出願のこの実装形態では、望ましい腐食表面を得て、プラスチックの表面上のコーティングの結合力を増加させるために、無機充填剤の重量部が0部に等しい場合、マトリックス樹脂は、化学的に腐食可能な少なくとも10重量部の樹脂成分を含む。
【0010】
本出願のこの実装形態では、サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー、ABS高ゴム粉末、メチルメタクリレート-ブタジエンコポリマー、アクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレンコポリマー、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン-オクテンコポリマー、およびエチレンプロピレンジエンモノマーゴムは、全て化学的に腐食可能な樹脂成分である。ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミドは、化学的に腐食不可能な樹脂成分である。
【0011】
本出願のこの実装形態では、高い動作温度を有するプラスチック製品を得るために、160℃を超えるガラス転移温度または融点を有する樹脂材料が、マトリックス樹脂のために選択されてもよい。低誘電損失の性能を有するプラスチック製品を得るためには、700MHz~6GHzにおける誘電損失が0.015未満である樹脂材料をマトリックス樹脂として選択すればよい。
【0012】
本出願のこの実装形態では、レーザ反射剤は、二酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末、硫化亜鉛粉末、チタン酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末、酸化鉄粉末、タルカムパウダー、マイカ粉末、およびABO3粉末のうちの1つ以上を含む。ABO3粉末において、AはBa、Sr、PbまたはBaxSryであり、BはTi、ZrまたはTixZryであり、ここでx+y=1である。本出願の一部の実装形態では、レーザ反射剤の重量部は5~40部である。レーザ反射剤はレーザ光を効果的に反射することができ、レーザ光に対する反射率が70%以上であるため、プラスチック中のマトリックス樹脂に対するレーザ光の炭化効果をレーザ加工中に排除することができ、その結果、非線形炭化粒子のPIM効果が低減または排除される。
【0013】
本出願のこの実装形態では、無機充填剤は、シリカ粒子およびガラス繊維のうちの1つ以上を含む。2つのタイプの無機充填剤は、化学腐食溶液によって望ましい方法で腐食可能であり、その結果、異なる形態構造を有する腐食孔がプラスチックの表面上に形成される。
【0014】
本出願のこの実装形態では、シリカ粒子のD50粒径は、1μm~5μmである。本出願のこの実装形態では、ガラス繊維の断面直径または厚さは、15μm以下である。適切なサイズのシリカ粒子およびガラス繊維は、プラスチックの化学的粗面化中にプラスチックの表面に適切なサイズおよび深さの腐食孔を形成するのに役立つ。これにより、低粗さが保証され、PIMが改善され、コーティングの結合力を提供するために、特定の量の金属コーティング材料をプラスチックに埋め込むことが可能になる。
【0015】
本出願のこの実装形態では、腐食孔を形成するためのより良好な化学腐食のために、ガラス繊維中のシリカの含有量は50%以上である。
【0016】
本出願の一部の実装形態では、無機充填剤の重量部は、10~60部であり得る。多量の無機充填剤を添加することにより、プラスチックの表面により多くの腐食孔を形成することが可能になり、その結果、表面上のコーティングの結合力が増加する。
【0017】
本出願のこの実装形態では、プラスチックは、レーザ光によって活性化されて金属粒子を放出することができる成分を含まない。本出願のこの実施形態におけるプラスチックは、既存のLDSプラスチックにおいてコストが高い有機金属化合物を含まず、原料のコストが低い。さらに、全ての回路を得るためにレーザアブレーションを行う必要はなく、化学的粗面化によって直接無電解めっきおよび電気めっきを行って金属コーティングを形成することができる。これにより、レーザ加工量を低減することができ、大面積の回路作製に適用することができる。
【0018】
本出願のこの実装形態では、プラスチックの誘電特性を改善するために、プラスチックは、誘電体改質剤をさらに含む。誘電体改質剤は、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸ニオブ酸カリウム、および酸化亜鉛のうちの1つ以上を含む。本出願のこの実装形態では、誘電体改質剤の重量部は、40部以下である。適切な量の誘電体改質剤を添加することにより、プラスチックの他の性能を低下させることなく、プラスチックの誘電特性を効果的に改善することができる。
【0019】
本出願のこの実装形態では、異なる用途シナリオの要件に適用可能であるように異なる性能を有するプラスチック製品を得るために、プラスチックは、潤滑剤、相溶化剤、難燃剤、および抗菌剤のうちの1つ以上をさらに含んでもよい。
【0020】
本出願のこの実装形態では、プラスチックの長期許容動作温度は110℃よりも高く、プラスチックの引張強度は40MPa以上である。本出願のこの実装形態では、700MHz~6GHzにおけるプラスチックの誘電損失は、0.015未満である。高い耐熱性、強度性能、および誘電特性は、プラスチックの適用シナリオを広げることができる。
【0021】
本出願のこの実装形態では、プラスチックを用いて製造されたアンテナ素子の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は、-100dBm以下である。
【0022】
本出願のこの実施形態で提供されるプラスチックでは、前述の成分の相乗効果によって、低い粗さ(Ra<6μm)および均一で一貫した表面形態を有する表面を化学的粗面化によって得ることができ、レーザ光を使用することによって金属コーティングを除去するプロセスにおいてマトリックス樹脂の炭化現象が引き起こされず、その結果、低いPIM値を得ることができる。さらに、化学的粗面化の間にプラスチックの表面に腐食孔を形成して、表面上のコーティングの結合力を増加させることができる。プラスチックは望ましいメタライゼーション性能を有し、したがって、プラスチックは、金属化プラスチック構造が低いPIM要件を有する種々のシナリオに適用することができる。本出願のこの実施形態におけるプラスチックは、アンテナ素子を製造するために使用することができ、3次および5次PIMを含む望ましいPIM値を有する全ての周波数帯域において基地局アンテナに適用される。プラスチックはまた、望ましいPIM値を有する他の無線周波数部品(例えば、フィルタ、導波管、およびコネクタ)に適用され得る。
【0023】
本出願の実施形態の第2の態様は、プラスチック部品本体と、プラスチック部品本体の表面上に形成された金属コーティングとを含む、金属コーティングを有するプラスチック部品を提供する。プラスチック部品本体は、本出願の実施形態の第1の態様によるプラスチックに射出成形を行うことによって得られる。具体的には、プラスチック部品本体は、一体射出成形部品である。金属コーティングは、無電解めっきおよび/または電気めっきによって製造される。
【0024】
本出願の実施形態の第3の態様は、アンテナ素子を提供する。アンテナ素子は、アンテナ素子本体と、アンテナ素子本体の表面に形成された金属コーティングとを有する。アンテナ素子本体は、本出願の実施形態の第1の態様によるプラスチックに射出成形を行うことによって得られる。金属コーティングは、無電解めっきおよび/または電気めっきによって製造される。
【0025】
本出願のこの実装形態では、金属コーティングは、アンテナ素子本体の表面上に順次形成された無電解めっき層および電気めっきコーティングを含み、無電解めっき層は、銅および/またはニッケルを含み、電気めっきコーティングは、銅、スズ、銀、金、および銅-亜鉛-スズ合金のうちの1つ以上を含む。
【0026】
本出願のこの実装形態では、アンテナ素子本体の、金属コーティングに接合される一方の側の表面は、複数の腐食孔構造を有し、金属コーティング材料は、複数の腐食孔構造内に堆積される。金属コーティング材料の一部が腐食孔構造内に堆積されるので、リベット効果が金属コーティングとプラスチック基板との間に形成され、それによって金属コーティングとプラスチック基板との間に所望の結合力を達成する。本出願のこの実装形態では、金属コーティングに対してクロスカット試験が使用され、結合力は3M#600テープに対して少なくともグレード0である。
【0027】
本出願のこの実装形態では、アンテナ素子本体の、金属コーティングに接合された一方の側の表面の表面粗さRaは、6μm未満である。低粗度表面により、アンテナ素子のPIM値を効果的に低減することができる。
【0028】
本出願のこの実装形態では、700MHz~6GHzにおけるアンテナ素子の3次PIMの平均値は、-100dBm以下である。
【0029】
本発明の実施形態の第4の態様は、本出願の実施形態の第3の態様によるアンテナ素子を含むアンテナを提供する。
【0030】
本出願の一実施形態は、端末デバイスをさらに提供する。端末デバイスは、本出願の実施形態の第4の態様によるアンテナを含む。
【0031】
本出願の一実施形態は、基地局をさらに提供する。基地局は、本出願の実施形態の第4の態様によるアンテナを含む。
【0032】
本出願の実施形態で提供されるプラスチックでは、化学的に腐食可能なマトリックス樹脂または化学的に腐食可能な無機充填剤が選択され、その結果、低い表面粗さおよび望ましい形態一貫性を有する表面が、化学的粗面化を通してプラスチックについて得ることができ、それによってPIM源を低減することができる。さらに、化学的粗面化プロセスでは、プラスチックの表面層において化学的に腐食可能な有機または無機材料が、化学腐食溶液によって腐食されて、複数の微細な腐食孔構造を形成する。金属コーティングがプラスチック基板の表面上に形成されるとき、金属コーティング材料の一部は、リベット効果を形成するために、これらの微細な腐食孔構造内に堆積され、それによって、金属コーティングとプラスチック基板との間の望ましい結合力が達成される。また、レーザ反射剤が添加される。レーザ反射剤はレーザ光に対して強い反射率を有するので、レーザ加工中、レーザ加工がプラスチック界面および金属コーティングに対して実施されるとき、プラスチックに対するレーザ光の炭化効果を効果的に低減または排除することができ、炭化粒子の形成を回避することができ、金属コーティングの縁部におけるバリの形成を低減することができ、その結果、PIM問題が効果的に軽減される。プラスチックを使用して製造されたアンテナ素子は、望ましいPIM値を有するFDDアンテナに適用することができ、また、金属コーティングの表面粗さを低減することによってアンテナ利得を得るために、TDD(Time-division duplex、時分割複信)アンテナに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ素子の断面構造を示す模式図である。
図2】本出願の一実施形態に係るアンテナ素子の構造の概略図である。
図3】本出願の別の実施形態によるアンテナ素子の構造の概略図である。
図4】本出願の一実施形態に係るアンテナ素子の製造プロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下は、本出願の実施形態における添付の図面を参照して本出願の実施形態を説明する。
【0035】
現在、プラスチックアンテナ素子の製造プロセスとして、主に、LDS(レーザ直接構造化)プロセスおよびPEP(部分電気めっき処理)プロセスが挙げられる。LDSプロセスでは、プラスチック基板にレーザ光を直接照射し、レーザ照射領域のプラスチック基板を活性化させて金属粒子を放出させ、その領域に無電解めっきを行って金属コーティングを形成することによってメタライゼーションを実施し、それによって金属回路の配置を完了する。LDSプロセスでは、プラスチック基板は、レーザアブレーションプロセスにおいて非線形炭化粒子を生成し、レーザアブレーション後の表面の表面粗さは通常高く、表面形態の安定性は低い。その結果、PIMは望ましくなく、LDSプロセスはFDDアンテナに適用することができない。加えて、このプロセスにおけるプラスチック基板は、レーザ光によって活性化されて金属粒子を放出することができる有機金属化合物を含む必要があり、原料のコストが高い。また、アンテナ素子内の回路領域が大きい場合には、加工のレーザ加工量が大きくなり、プラスチックアンテナ素子のレーザ加工コストが高くなるという問題がある。PEPプロセスでは、エンジニアリングプラスチック射出成形を使用して、アンテナ素子の構造を有するプラスチック部品を得、物理的サンドブラスト粗面化を実施し、無電解めっき法を使用することによって、粗面化されたプラスチック部品の表面上に金属めっき層を堆積させ、めっき層の表面上にレーザアブレーションを実施することによって回路領域を非回路領域から分離し、回路領域を電気めっきによって厚くし、非回路領域において脱めっきを実施してめっき層を除去して、回路特性を有するプラスチックアンテナ素子が得られる。PEPプロセスでは、プラスチック基板を粗面化するために物理的サンドブラストプロセスが使用され、粗面化後の表面粗さは高く、表面形態の一貫性および安定性は低い。したがって、PIMは望ましくなく、PEPプロセスはFDDアンテナにも適用することができない。また、プラスチック界面および金属コーティングにレーザ加工を施すと、レーザ加工領域のプラスチック基板はレーザ光の吸収により炭化するため、電気めっき時に炭化粒子の導電性により端部に金属バリが発生しやすい。これにより、PIMが劣化する。
【0036】
既存のプラスチックアンテナ素子がPIM問題に起因してFDDシステムのアンテナに適用できないという問題を解決するために、本出願の一実施形態は、低いPIM効果を有するプラスチックを提供する。プラスチックを使用して製造されたアンテナ素子は、低いPIM値を有し、プラスチックの表面上の金属コーティングは、大きな結合力を有する。したがって、プラスチックは、FDDシステムにおけるアンテナに適用することができ、原材料およびプロセスのコストが低い。
【0037】
合計100重量部で、本出願のこの実施形態で提供されるプラスチックは、重量部で、
25~90部のマトリックス樹脂と、
1~60部のレーザ反射剤と、
0~70部の無機充填剤と、の成分を含み、無機充填剤は、化学的に腐食可能である。
【0038】
本出願のこの実装形態では、化学的粗面化によって、低い表面粗さ、望ましい形態一貫性、および大量の腐食孔構造を有する表面を形成するために、マトリックス樹脂が化学的に腐食可能な樹脂成分を含む場合、無機充填剤の重量部は0部以上であってもよく、またはマトリックス樹脂が完全に化学的に腐食不可能な樹脂成分である場合、すなわち、マトリックス樹脂が化学的に腐食可能な樹脂成分を含まない場合、無機充填剤の重量部は0部より大きい。
【0039】
本出願の一部の実装形態では、マトリックス樹脂の重量部は、30~80部であってもよい。本出願の一部の実装形態では、マトリックス樹脂の重量部は、35~70部であってもよい。
【0040】
本出願の一実装形態では、マトリックス樹脂は、第1のマトリックス樹脂を含む。第1のマトリックス樹脂は、サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリアミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、およびポリエーテルイミドのうちの1つ以上を含む。ポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン4T、ナイロン6T、ナイロン9T、およびナイロン10Tのうちの1つ以上を含み得る。ポリスルホン樹脂としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホンなどが挙げられる。ポリケトン樹脂としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトンなどが挙げられる。これらの樹脂は、いずれも耐高温性および比強度に優れている。サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、およびポリアミド樹脂は、化学的に腐食可能であり、腐食孔を形成するための化学的粗面化を促進する。本出願のこの実装形態では、第1のマトリックス樹脂は、サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、およびポリアミド樹脂を含み、これらが化学的に腐食可能な場合、化学的に腐食可能な無機充填剤は添加される必要がない、すなわち、無機充填剤の重量部は0部である。これにより、第1のマトリックス樹脂を腐食させて粗面を形成することができ、プラスチックの表面に結合力の大きい金属コーティングを形成することができる。当然ながら、コーティングの結合力を増加させるために、無機充填剤がさらに添加されてもよく、すなわち、無機充填剤の重量部は0部より大きい。ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミドは、化学的に腐食不可能である。マトリックス樹脂がこれらの種類の樹脂のみを含む場合、化学的に腐食可能な無機充填剤を添加する必要があり、すなわち、無機充填剤の重量部は0部より大きい。本出願の一部の実装形態では、第1のマトリックス樹脂の重量部は、25~90部であってもよい。本出願の一部の他の実装形態では、第1のマトリックス樹脂の重量部は30~80部であってもよい。本出願のさらに一部の他の実装形態では、第1のマトリックス樹脂の重量部は、代替的に35~70部であってもよい。第1のマトリックス樹脂の適切な含有量は、プラスチックの機械的強度およびコーティングの結合力を効果的に増加させることができる。
【0041】
本出願の別の実装形態において、マトリックス樹脂は、第1のマトリックス樹脂および第2のマトリックス樹脂を全て含むことができる。第2のマトリックス樹脂は、サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー、ABS高ゴム粉末、メチルメタクリレート-ブタジエンコポリマー、アクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレンコポリマー、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン-オクテンコポリマー、およびエチレンプロピレンジエンモノマーゴムの1つ以上を含むが、これらに限定されない。本実装形態では、第2のマトリックス樹脂と第1のマトリックス樹脂とは異なる樹脂である。本出願の一部の実装形態では、第2のマトリックス樹脂の重量部は1~25部であってもよく、第1のマトリックス樹脂の重量部は25~89部であってもよい。本出願の一部の他の実装形態では、第2のマトリックス樹脂の重量部は、2~20部であってもよい。本出願のさらに一部の他の実装形態では、第2のマトリックス樹脂の重量部は5~15部であってもよい。
【0042】
第2のマトリックス樹脂は、第1のマトリックス樹脂の性能の欠点を補い、最終的なプラスチック製品の性能、例えば、電気めっき性能および強度性能を改善するために、二次成分樹脂として添加することができる。また、第2のマトリックス樹脂全体が化学的に腐食可能なため、化学的な粗面化が容易となる。具体的には、本出願のこの実装形態では、サーモトロピック液晶ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー、ABS高ゴム粉末、メチルメタクリレート-ブタジエンコポリマー、アクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレンコポリマー、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン-オクテンコポリマー、およびエチレンプロピレンジエンモノマーゴムは、全て化学的に腐食可能な樹脂成分である。これらは、化学腐食溶液によって腐食可能であり、その結果、低い粗さを有する粗い表面がプラスチック上に形成される。本出願のこの実装形態では、第1のマトリックス樹脂および/または第2のマトリックス樹脂が化学的に腐食可能な前述の樹脂を含む場合、化学的に腐食可能な無機充填剤は添加される必要はない、すなわち、無機充填剤の重量部は0部である。このようにして、第1のマトリックス樹脂および/または第2のマトリックス樹脂を腐食させて粗面を形成することができ、その結果、結合力の大きい金属コーティングがプラスチックの表面に形成される。当然ながら、表面上のコーティングの結合力を増加させるために、無機充填剤がさらに添加されてもよく、すなわち、無機充填剤の重量部は0部より大きい。ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミドは、化学的に腐食不可能である。マトリックス樹脂がこれらの種類の樹脂のみを含む場合、化学的に腐食可能な無機充填剤を添加する必要があり、すなわち、無機充填剤の重量部は0部より大きい。
【0043】
本出願のこの実装形態では、マトリックス樹脂が化学的に腐食可能な2つ以上の樹脂成分を含む場合、無機充填剤の重量部は0部であってもよい。化学的に腐食可能な2つ以上の樹脂成分は、第1のマトリックス樹脂から選択される樹脂成分であってもよく、第1のマトリックス樹脂および第2のマトリックス樹脂から選択される樹脂成分であってもよい。化学的に腐食可能な2つ以上の樹脂成分を選択することによって、化学的粗面化によってプラスチックの表面上の多様な腐食構造を得ることができ、それによって、金属コーティングの結合力を増加させることができる。当然ながら、表面上のコーティングの結合力をさらに増加させるために、無機充填剤がさらに添加されてもよく、すなわち、無機充填剤の重量部は0部より大きい。具体的に、マトリックス樹脂が化学的に腐食可能な2つ以上の樹脂成分を含む場合、無機充填剤の重量部は0~70部であってもよい。マトリックス樹脂が化学的に腐食可能な樹脂成分を1つだけ含む場合、またはマトリックス樹脂が完全に化学的に腐食不可能な樹脂成分である場合、無機充填剤の重量部は、0部超かつ70部以下である。
【0044】
本出願のこの実装形態では、「化学的に腐食可能な」とは、特定の粗さおよび腐食孔構造を有する表面がプラスチック上に形成されるように、化学腐食溶液によって腐食および除去され得ることを意味する。化学腐食溶液は、酸腐食溶液、アルカリ腐食溶液などを含むことができる。化学腐食溶液は、マトリックス樹脂および無機充填剤の特定の特性に基づいて、異なる腐食溶液系から選択され得ることが理解され得る。
【0045】
本出願のこの実装形態では、望ましい腐食表面を得て、プラスチックの表面上のコーティングの結合力を増加させるために、無機充填剤の重量部が0部に等しい場合、マトリックス樹脂は、化学的に腐食可能な少なくとも10重量部の樹脂成分を含む。あるいは、無機充填剤の重量部が0部に等しい場合、マトリックス樹脂は、化学的に腐食可能な少なくとも15重量部の樹脂成分を含む。本出願の一部の実装形態では、マトリックス樹脂は、代替的に、化学的に腐食可能な少なくとも20重量部の樹脂成分を含み得る。本発明の一部の実装形態では、マトリックス樹脂は、少なくとも30重量部の化学的に腐食可能な樹脂成分を含んでもよい。
【0046】
本出願のこの実装形態では、高い動作温度を有するプラスチック製品を得るために、160℃を超えるガラス転移温度または融点を有する樹脂材料が、マトリックス樹脂のために選択されてもよい。本出願の一部の他の実装形態では、200℃よりも高いガラス転移温度または融点を有する樹脂材料が、マトリックス樹脂のために代替的に選択され得る。本出願の一部の他の実装形態では、230℃よりも高いガラス転移温度または融点を有する樹脂材料が、マトリックス樹脂のために代替的に選択され得る。低誘電損失の性能を有するプラスチック製品を得るためには、700MHz~6GHzにおける誘電損失が0.015未満である樹脂材料をマトリックス樹脂として選択すればよい。本出願のさらに一部の他の実装形態では、700MHz~6GHzにおいて0.01未満の誘電損失を有する樹脂材料が、マトリックス樹脂のために選択され得る。
【0047】
本出願のこの実装形態では、レーザ反射剤が添加される。レーザ反射剤はレーザ光に対して強い反射率を有するので、プラスチック中のマトリックス樹脂に対するレーザ光の炭化効果は、レーザ加工中に効果的に低減または排除することができ、その結果、非線形炭化粒子のPIM効果が低減または排除される。具体的には、本出願のこの実装形態では、レーザ光に対するレーザ反射剤の反射率は、70%以上であってもよい。レーザ反射剤は、具体的には、二酸化チタン粉末、硫化亜鉛粉末、チタン酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末、酸化鉄粉末、タルカムパウダー、マイカ粉末、およびABO3粉末のうちの1つ以上を含んでもよい。ABO3粉末において、AはBa、Sr、PbまたはBaxSryであり、BはTi、ZrまたはTixZryであり、ここでx+y=1である。レーザ反射剤の粉末の粒径は、15μm以下であってもよい。本出願の一部の実装形態では、レーザ反射剤の重量部は、5~40部であってもよい。本出願の一部の他の実装形態では、レーザ反射剤の重量部は、10~35部であってもよい。本出願のさらに一部の他の実施形態では、レーザ反射剤の重量部は、代替的に20~30部であってもよい。
【0048】
本出願のこの実装形態では、無機充填剤は、化学腐食溶液によって腐食され除去され得、その結果、化学的粗面化によってプラスチック上に低粗度表面が形成され得る。化学的粗面化プロセスにおいて、プラスチックの表面は、化学腐食溶液によって腐食されて、複数の開口部を有する複数の腐食孔構造を形成する。その後、無電解めっきまたは電気めっきを行ってプラスチックの表面に金属コーティングを形成すると、金属材料がこれらの開口構造内に浸透して、コーティングの望ましい結合力を生じさせる。加えて、化学的粗面化は、物理的粗面化よりも安定しており、より良好でより安定した表面形態の一貫性を有する粗面を得るために、低粗度表面を形成するように実施することができる。腐食孔構造の形状およびサイズは、プラスチックの表面形態を制御可能に調整するために、無機充填剤の形状およびサイズを選択することによって制御することができる。腐食孔構造の大部分は、ミクロンスケールの孔構造である。さらに、無機充填剤は、プラスチックの強度を効果的に増加させることもできる。腐食孔構造の形成は、低粗度表面を維持しながら、より良好な方法で金属コーティングのより良好な結合力を得ることができる。
【0049】
本出願のこの実装形態では、無機充填剤は、具体的には、シリカ粒子およびガラス繊維のうちの1つ以上であり得る。本出願のこの実装形態では、シリカ粒子はミクロスフェア構造であり、シリカ粒子のD50粒子サイズは1μm~5μmである。具体的には、D50粒子径は、例えば、1μm、2μm、3μm、4μmまたは5μmであってもよい。小さい粒子サイズを有するシリカは、マトリックス樹脂中により良好に分散させることができ、化学的粗面化中にプラスチックの表面に適切なサイズを有するより均一で微細な孔を形成することを可能にする。これにより、金属コーティングの結合力を増加させ、機械的特性に対する過剰な粒子サイズの影響を回避することができ、過剰な粒子サイズに起因する高い粗さによって引き起こされるPIMの劣化の問題を回避することができる。本出願のこの実装形態では、ガラス繊維の断面形状は、円形または矩形であってもよく、当然ながら、代替的に他の規則的または不規則的な特性を有してもよい。ガラス繊維の断面直径または厚さは、15μm以下であってもよく、具体的には、例えば、1μm~15μm以内であってもよい。具体的には、円形のガラス繊維の断面直径が15μm以下であってもよく、扁平なガラス繊維(矩形のガラス繊維)の断面厚さが10μm以下であってもよい。適切な大きさのガラス繊維を添加することにより、適切な深さの腐食孔を形成することができる。これにより、粗面化された表面に対して低いRzを達成し、PIMを改善し、材料の機械的特性を確保することができる。
【0050】
本出願のこの実装形態では、腐食孔を形成するためのより良好な化学腐食のために、ガラス繊維中のシリカの含有量は50%以上である。具体的には、本出願のこの実装形態では、ガラス繊維中のシリカの含有量は、60%、70%、80%、または90%であってもよい。本出願の一部の実装形態では、ガラス繊維は、アルカリを含まないガラス繊維である。無アルカリガラス繊維は、高強度、低損失であり、加工時に樹脂の劣化を引き起こさない。本出願の一部の実装形態では、プラスチックの表面に種々の形状およびサイズの多様な腐食孔を形成し、コーティングの結合力を増加させるために、シリカ粒子およびガラス繊維の両方が添加されてもよい。
【0051】
本出願の一部の実装形態では、無機充填剤の重量部は、10~60部であり得る。本出願の一部の他の実装形態では、無機充填剤の重量部は20~50部であってもよい。本出願のさらに一部の他の実装形態では、無機充填剤の重量部は、代替的に25~40部であってもよい。具体的には、無機充填剤の添加量は、マトリックス樹脂の腐食性に基づいて調整および制御することができる。マトリックス樹脂が化学的に腐食可能な場合には、無機充填剤の添加量を低減してもよい。マトリックス樹脂が化学的に腐食不可能な場合には、無機充填剤の添加量を多くしてもよい。
【0052】
本出願のこの実装形態では、プラスチックは、レーザ光によって活性化されて金属粒子を放出することができる成分を含まない。レーザ光により活性化されて金属粒子を放出する成分としては、具体的には有機金属化合物が挙げられる。本出願のこの実施形態におけるプラスチックは、既存のLDSプラスチックにおいてコストが高い有機金属化合物を含まず、原料のコストが低い。さらに、全ての回路を得るためにレーザアブレーションを行う必要はなく、化学的粗面化によって直接無電解めっきおよび電気めっきを行って金属コーティングを形成することができる。これにより、レーザ加工量を低減することができ、大面積の回路作製に適用することができる。
【0053】
本出願のこの実装形態では、プラスチックの誘電特性をさらに改善するために、プラスチックは、誘電体改質剤をさらに含む。誘電体改質剤は、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸ニオブ酸カリウム、および酸化亜鉛のうちの1つ以上を含むが、それらに限定されない。本出願のこの実装形態では、誘電体改質剤の重量部は、40部以下であり、具体的には、例えば、1~40部であってもよい。さらに、誘電体改質剤の重量部は、30部以下であってもよい。さらに、誘電体改質剤の重量部は、20部以下であってもよい。高い誘電率を有する誘電体改質剤を使用することによって、異なる誘電率を有する一連のプラスチックを開発することができる。添加量が少ない方が高い誘電率と機械的強度が得られ、アンテナ素子の小型化と高アイソレーションの要求を満たすことができる。
【0054】
本出願のこの実装形態では、異なる用途シナリオの要件に適用可能であるように異なる性能を有するプラスチック製品を得るために、用途要件に応じて他の添加剤がプラスチックに添加されてもよい。他の添加剤は、具体的には、潤滑剤、相溶化剤、難燃剤、および抗菌剤のうちの1つ以上を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0055】
本出願のこの実装形態では、射出成形処理中の材料粒子ブランキングの均一性および可塑化効果をさらに改善するために、プラスチックは潤滑剤をさらに含む。潤滑剤は、フッ素含有潤滑剤、シリコン含有潤滑剤、ポリプロピレンワックス、変性ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、変性ポリエチレンワックス、変性ポリエチレン、エチレンプロピレンコポリマー、ステアリン酸エステル、ステアリン酸、およびステアリン酸塩潤滑剤のうちの1つ以上を含んでもよいが、それらに限定されない。本出願のこの実装形態では、材料の機械的特性をさらに改善し、機械的強度を改善するために、プラスチックは相溶化剤をさらに含む。相溶化剤は、無水マレイン酸グラフト、無水マレイン酸コポリマー、アクリル酸変性ポリマー、およびエポキシ変性ポリマーのうちの1つ以上を含んでもよいが、それらに限定されない。本出願のこの実装形態では、材料の難燃性をさらに改善するために、プラスチックは難燃剤をさらに含んでもよい。難燃剤は、リン系難燃剤、窒素系難燃剤および有機ハロゲン系難燃剤のうち1種以上を含んでもよい。異なる難燃性を有するプラスチックは、異なるシナリオにおける難燃性要件を満たすために、異なるタイプおよび異なる含有量の難燃剤を添加することによって製造することができる。本出願のこの実装形態では、材料の抗菌特性をさらに改善するために、プラスチックは、抗菌剤をさらに含んでもよい。抗菌剤としては、具体的には、銀イオン抗菌剤、ナノ二酸化チタン、アンモニウム塩抗菌剤、第四級ホスホニウム塩殺菌剤、および有機スズ殺菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。異なる抗菌グレードを有するプラスチックは、屋外で使用されるときに異なる抗菌要件を満たすために、抗菌剤を添加することによって開発することができる。
【0056】
本出願のこの実施形態において提供されるプラスチックは、前述の成分の相乗効果によって、高温耐性、低PIM値、低誘電損失、低コスト、および高強度などの優れた包括的な性能を有し、種々の適用シナリオに適用可能である。本出願のこの実装形態では、プラスチックは高い耐熱温度を有し、SMT(表面実装技術)はんだ付け要件およびはんだ-鉄溶接要件を260℃以内で満たすことができる。プラスチックの許容動作温度、すなわち長期使用温度は、110℃よりも高い。プラスチックの引張強度は、40MPa以上である。本出願のこの実装形態では、700MHz~6GHzにおけるプラスチックの誘電損失は、0.015未満である。本出願のこの実装形態では、プラスチックを用いて製造されたアンテナ素子の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は、-100dBm以下であり、FDDアンテナに適用可能である。また、アンテナにプラスチックを適用することで、アンテナ素子のアイソレーションを向上させ、アンテナ素子の小型化を実現することができる。
【0057】
本出願のこの実装形態では、プラスチックは以下の方法で製造することができる。
【0058】
マトリックス樹脂を予め乾燥させ、乾燥したマトリックス樹脂を高速ミキサーを用いて均一に混合し、均一に混合したマトリックス樹脂をレーザ反射剤および無機充填剤と均一に混合した後、得られた混合物を二軸押出機のメインフィードホッパーに投入する。ガラス繊維が添加される場合、ガラス繊維は押出機のサイドフィードホッパーから添加され、押出および造粒は溶融ブレンド後に行われ、すなわち、本出願のこの実施形態におけるプラスチックが得られる。
【0059】
本出願の一実施形態は、プラスチック部品本体と、プラスチック部品本体の表面上に形成された金属コーティングとを含む、金属コーティングを有するプラスチック部品をさらに提供する。プラスチック部品本体は、前述のプラスチック上で射出成形を実施することによって得られ、金属コーティングは、無電解めっきおよび/または電気めっきによって製作されてもよい。具体的には、プラスチック部品本体は、一体射出成形部品である。金属コーティングを有するプラスチック部品は、メタライゼーション要件を有する種々のプラスチック適用シナリオにおける構造部品であり得る。適用シナリオは、アンテナ素子、フィルタ、導波管、およびコネクタを含むが、これらに限定されない。
【0060】
図1は、本出願の一実施形態に係るアンテナ素子の断面構造の概略図である。アンテナ素子は、アンテナ素子本体10と、アンテナ素子本体10の表面に形成された金属コーティング20とを含む。アンテナ素子本体10は、本出願の実施形態において前述のプラスチックに射出成形を行うことによって得られる。具体的には、アンテナ素子本体10は、一体射出成形部品である。金属コーティング20は、無電解めっきおよび/または電気めっきによって製造されてもよく、金属コーティング20は、アンテナ素子の構造において設計される必要がある種々の金属回路、反射構成要素などを含んでもよい。
【0061】
本出願のこの実装形態では、アンテナ素子本体10の具体的な構造、形状、およびサイズのいずれも限定されず、アンテナ素子本体10は、実際の製品要件に応じて任意の形態に射出成形されてもよい。図2に示すように、アンテナ素子本体10は、単一のアンテナ素子構造2であってもよい。図3に示すように、アンテナ素子本体10は、代替的に、複数の単一アンテナ素子構造2が一体化された一体型プラスチック部品であってもよく、すなわち、アンテナ素子本体10は、プラスチックベースプレート1と、プラスチックベースプレート1上に一体化された1つ以上の単一アンテナ素子構造2とを含む。一体化されたアンテナ素子構造2の数は限定されず、要件に応じて設定されてもよい。複数の単一アンテナ素子構造2は、アレイ状に配置されてもよい。アンテナ素子本体10に形成された金属コーティング20は、放射素子および電力分配ユニット3などの金属回路を含んでもよく、反射効果を有する反射部品として作用する金属層を含んでもよい。放射素子は、アンテナ素子構造2上に形成されてもよく、電力分配ユニット3は、プラスチックベースプレート1の任意の側の表面上に形成されてもよく、反射効果を有する反射構成要素として作用する金属層は、プラスチックベースプレート1の表面上に形成されてもよい。
【0062】
本発明のこの実装形態では、図1に示すように、金属コーティング20は、アンテナ素子本体10の表面上に順次形成された無電解めっき層21および電気めっきコーティング22を含むことができ、無電解めっき層21は、銅および/またはニッケルを含み、電気めっきコーティング22は、銅、スズ、銀、金、および銅-亜鉛-スズ合金コーティングのうちの1つ以上を含む。金属コーティング20の厚さは、実際の要件に応じて設定することができる。無電解めっき層21の厚さは、例えば1μm以下であってもよい。電気めっきコーティング22の厚さは、例えば、5μm~25μmであってもよい。電気めっきコーティング22は、電気信号を伝送または反射するように構成されてもよく、はんだ付けすることができる。
【0063】
本出願のこの実装形態では、アンテナ素子本体の、金属コーティングに結合される一方の側の表面は、複数の腐食孔構造を有し、金属コーティング材料は、複数の腐食孔構造内に堆積され、その結果、アンテナ素子本体と金属コーティングとの間に強いリベット締めが形成され、結合力が大きい。
【0064】
本出願のこの実装形態では、アンテナ素子本体の、金属コーティングに接合された一方の側の表面の表面粗さRaは、6μm未満である。本出願の一部の実装形態では、アンテナ素子本体の、金属コーティングに接合された一方の側の表面の表面粗さRaは、4μm未満である。本出願の一部の他の実装形態では、アンテナ素子本体の、金属コーティングに接合された一方の側の表面の表面粗さRaは、3μm未満である。本出願の具体的な実装形態において、アンテナ素子本体の、金属コーティングに接合された一方の側の表面の表面粗さRaは、0.5μm~3μmであってもよい。適切な表面粗さにより、アンテナ素子は、低いPIM効果、コーティングの大きな結合力、および望ましい機械的特性を同時に得ることができる。
【0065】
本出願のこの実施形態において提供されるアンテナ素子は、溶接要件を満たすことができ、金属コーティングとアンテナ素子本体との間の結合強度、すなわち、コーティングの結合力が大きい。3M#600テープのクロスカット試験は、グレード0に達し得る。700MHz~6GHzにおける本出願のこの実施形態におけるアンテナ素子の3次PIMの平均値は、-100dBm以下であり、望ましいPIM値を有するFDDアンテナに適用可能である。
【0066】
図4に示すように、本出願のこの実施形態におけるアンテナ素子の製造プロセスの手順は、以下のステップを含むことができる。
【0067】
S101:射出成形を行う。本実施形態では、上述した押出造粒により得られたプラスチック粒子を一体に射出成形してアンテナ素子本体10を得ている。
【0068】
S102:化学的粗面化を行う。アンテナ素子本体10は、化学腐食液を用いて粗面化され、表面粗さRaが6μm未満の粗面が形成されている。化学腐食溶液は、酸腐食溶液および/またはアルカリ腐食溶液を含むことができる。図4から、化学的粗面化後のアンテナ素子本体の表面に一部の腐食孔が形成されていることが分かる。
【0069】
S103:無電解めっき層を形成する:無電解めっき法を用いて、粗面化された表面上に無電解めっき層21を堆積させる。図4から、無電解めっき層21を析出させる際に、めっき層の金属材料の一部がアンテナ素子本体の表面の腐食孔に侵入し、無電解めっき層21がアンテナ素子本体に強固に接合されていることが分かる。
【0070】
S104:分割のためにレーザアブレーションを行う。レーザアブレーションを使用して無電解めっき層21の一部を除去し、回路領域を非回路領域から分離する。このプロセスでは、分割のためだけにレーザアブレーションが用いられ、レーザアブレーションの加工量は、LDSプロセスと比較して大幅に低減される。
【0071】
S105:電気めっきを実行して回路領域に金属コーティングを形成し、非回路領域に脱めっきを行う。電気めっきコーティング22は、電気めっき法を用いて回路領域の無電解めっき層上に形成され、非回路領域の無電解めっき層を除去してアンテナ素子が得られる。
【0072】
本出願の一実施形態は、本出願の実施形態における前述のアンテナ素子を含むアンテナをさらに提供する。本出願のこの実施形態におけるアンテナは、アンテナ素子の集積状態に基づいて他の異なる構成要素をさらに含んでもよく、例えば、反射構成要素、レドーム、位相シフタ、フィルタ、およびヒートシンクをさらに含んでもよい。本出願のこの実施形態におけるアンテナの設計形態および構造は限定されない。アンテナは、単一列アンテナであってよく、またはマルチ列アンテナであってよく、同一帯域マルチアレイアンテナであってよく、またはマルチ帯域マルチアレイアンテナであってよく、高周波アンテナであってよく、またはマルチ周波数アンテナであってよく、または基地局アンテナ、端末デバイスアンテナなどであってもよい。本出願のこの実施形態において提供されるアンテナは、アンテナ機能要件を有する任意のデバイス、例えば、無線通信デバイスにおいて使用されてよい。具体的には、アンテナは、例えば、端末デバイスまたは基地局に用いられてもよい。
【0073】
本出願の一実施形態は、端末デバイスをさらに提供する。端末デバイスは、本出願の実施形態における前述のアンテナを含む。端末デバイスは、無線通信端末、例えば、携帯電話、タブレットコンピュータ、またはスマートウェアラブルデバイスを含むが、それらに限定されない。
【0074】
本出願の一実施形態は、基地局をさらに提供する。基地局は、本出願の実施形態における前述のアンテナを含む。
【0075】
既存のLDSプロセスと比較して、本出願のこの実施形態において提供されるプラスチックは、高価な有機金属化合物を添加する必要がなく、原材料のコストがより低い。さらに、プラスチックを化学的に粗面化することができるので、粗面化後の表面粗さがより小さくなり、表面形態の均一性および安定性がより良好になる。レーザ加工中に、プラスチック内の樹脂が損傷するのを防止することができ、生成される炭化粒子が低減される。全ての回路領域がレーザ光によって活性化される必要はなく、狭い線幅のみが、必要とされる回路のエッジに沿って処理される必要があり、ここで、線幅は概して0.5mm未満である。レーザ加工は、加工量が少なく、加工コストが低い。既存のPEPプロセスと比較して、本出願のこの実施形態におけるプラスチックは、化学的に粗面化することができ、その結果、粗面化後の表面粗さRaは6μm未満であり、コーティングの結合力は、低い粗さにより望ましいものとなる。形態の均一性および安定性は、化学的粗面化後に望ましいものとなる。めっき層コーティングとプラスチック界面にレーザ加工を行うと、プラスチック基板が炭化せず、電気めっきにより金属コーティングを形成した際にコーティングのエッジのバリが小さく、700MHz~6GHzにおける3次PIMを-110dBm未満とすることができる。これは、PIMのためのアンテナ素子の要件を満たし、FDDシステムにおけるアンテナおよびTDDシステムにおけるアンテナに適用可能である。
【0076】
以下では、具体的な実施形態を使用することによって、本出願の実施形態における技術的解決策をさらに説明する。
【0077】
実施形態1
この実施形態は、
45部の液晶ポリエステルと、
35部の二酸化チタン、
10部のシリカミクロスフェアと
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0078】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0079】
本実施形態のプラスチックは二酸化チタンを使用している。二酸化チタンは、レーザ光に対して強い反射率を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。さらに、高い誘電率および低い誘電損失のために、二酸化チタンは、高誘電率および低損失材料を得るための誘電体改質剤として使用することができる。これらの成分、すなわち、液晶ポリエステル、シリカ微小球、および扁平ガラス繊維は、化学的にエッチングすることができる。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する平坦な特徴構造が粗面上に形成され、それによってプラスチックの表面上のコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。本実施形態で製造された材料は、高誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、および高強度の特性を有し、アンテナ素子のアイソレーションをさらに改善し、アンテナにおけるアンテナ素子の小型化を実現することができる。
【0080】
この実施形態におけるプラスチックの引張強度は117MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが2.3μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。マイクロストリップ伝送線路シートを用いてPIM値を試験し、マイクロストリップ伝送線路のインピーダンスを50オームに設計し、試験のために2つの43dBm(20W)キャリア信号を入力し、700MHz~6GHzの周波数帯域で3次PIM値を試験する。この材料の3次PIMの700MHz~6GHzにおける平均値は-115dBmであり、誘電率Dkは6.0、誘電損失Dfは0.0052である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0081】
実施形態2
この実施形態は、
61部の液晶ポリエステルと、
6部の二酸化チタンと、
23部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0082】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0083】
本実施形態の材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。
【0084】
この実施形態におけるプラスチックの引張強度は125MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが2.6μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-110dBmであり、Dkは4.0、Dfは0.0032である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0085】
実施形態3
この実施形態は、
45部の液晶ポリエステルと、
35部の二酸化チタンと、
20部のシリカマイクロスフェアと、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0086】
シリカ微小球のD50は5μmである。
【0087】
本実施形態の材料は、高誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。
【0088】
この実施形態におけるプラスチックの引張強度は118MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが2.5μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-102dBmであり、Dkは5.93、Dfは0.0044である。コーティングの結合力は、3M#600テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0089】
実施形態4
この実施形態は、
49部の液晶ポリエステルと、
31部の二酸化チタンと、
20部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0090】
扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0091】
本実施形態で作製した材料は、高誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。
【0092】
この実施形態におけるプラスチックの引張強度は132MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが2.4μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-107dBmであり、Dkは5.75、Dfは0.0058である。コーティングの結合力は、3M#600テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0093】
実施形態5
この実施形態は、
44部の液晶ポリエステルと、
5部のポリフェニレンスルフィドと、
35部の二酸化チタンと、
8部のシリカミクロスフェアと、
8部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0094】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0095】
本実施形態で作製した材料は、高誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。
【0096】
この実施形態におけるプラスチックの引張強度は90MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが3.2μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-108dBmであり、Dkは5.86、Dfは0.0042である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0097】
実施形態6
この実施形態は、
38部の液晶ポリエステルと、
5部のポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)と、
37部の二酸化チタンと、
10部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0098】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0099】
本実施形態で作製した材料は、高誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は90MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが2.1μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-108dBmであり、Dkは5.83、Dfは0.0046である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0100】
実施形態7
この実施形態は、
45部の液晶ポリエステルと、
35部のチタン酸カルシウムと、
10部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0101】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0102】
本実施形態で使用されるチタン酸カルシウムは、レーザ光に対して強い反射率を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。これらの成分、すなわち液晶ポリエステル、シリカ微小球および無アルカリガラス平板繊維は、化学的にエッチングすることができる。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する平坦な特徴構造が粗面化表面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。本実施形態で作製した材料は、高誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は125MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが1.6μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-103dBmであり、Dkは6.3、Dfは0.0055である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0103】
実施形態8
この実施形態は、
75部の液晶ポリエステルと、
5部のチタン酸カルシウムと、
10部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0104】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0105】
本実施形態で作製した材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は142MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが1.6μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-110dBmであり、Dkは3.9、Dfは0.0041である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0106】
実施形態9
この実施形態は、
57部の液晶ポリエステルと、
6部の二酸化チタンと、
7部のマイカと、
20部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0107】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0108】
本実施形態で使用される二酸化チタンおよび雲母粉末は、レーザ光に対して強い反射率を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。これらの成分、すなわち液晶ポリエステル、シリカ微小球および無アルカリガラス平板繊維は、化学的にエッチングすることができる。プラスチックがエッチングされた後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する平坦な特徴構造が粗面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。また、マイカのフレーク構造により機械的強度を向上させることができる。本実施形態で作製した材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は98MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが2.5μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-108dBmであり、Dkは3.98、Dfは0.0032である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0109】
実施形態10
この実施形態は、
30部のポリフェニレンスルフィドと、
10部の液晶ポリエステルと、
30部の二酸化チタンと、
20部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0110】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0111】
本実施形態で作製した材料は、高誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は89MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、プラスチックシートの表面上に0.6μmの表面粗さRaを有する粗面化表面を形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、単純化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-100dBmであり、Dkは5.63、Dfは0.0027である。コーティングの結合力は、3M#600テープのクロスカット試験のグレード0を満たし、260℃以内ではんだ-鉄溶接を満たすことができる。
【0112】
実施形態11
この実施形態は、
40部のポリフェニレンスルフィドと、
10部のポリフェニレンオキシドと、
10部の二酸化チタンと、
30部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0113】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0114】
使用される二酸化チタンは、レーザ光に対して強い反射性を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。これらの成分、すなわちポリフェニレンオキシド、シリカ微小球および無アルカリガラス平板繊維は、化学的にエッチングすることができる。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する平坦な特徴構造が粗面化表面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。本実施形態で作製した材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIM、高強度という特徴を有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は105MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、プラスチックシートの表面上に0.6μmの表面粗さRaを有する粗面化表面を形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、単純化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-101dBmであり、Dkは4.1、Dfは0.003である。コーティングの結合力は、3M#600テープのクロスカット試験のグレード0を満たし、200℃以内ではんだ-鉄溶接を満たすことができる。
【0115】
実施形態12
この実施形態は、
35部のポリフェニレンスルフィドと、
5部の二酸化チタンと、
60部のシリカマイクロスフェアと、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0116】
シリカ微小球のD50は5μmである。
【0117】
使用される二酸化チタンは、レーザ光に対して強い反射性を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。成分としては、化学的にエッチング可能なシリカ微小球を用いる。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する特徴構造が粗面化表面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。この実施形態で製造された材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、および低PIMを有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は45MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、プラスチックシートの表面上に0.5μmの表面粗さRaを有する粗面化表面を形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、単純化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-112dBmであり、Dkは3.85、Dfは0.0032である。コーティングの結合力は、3M#600テープのクロスカット試験のグレード0を満たし、260℃以内ではんだ-鉄溶接を満たすことができる。
【0118】
実施形態13
この実施形態は、
54部のポリフェニレンオキシドと、
10部の液晶ポリエステルと、
6部の二酸化チタンと、
20部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0119】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0120】
使用される二酸化チタンは、レーザ光に対して強い反射性を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。成分としては、液晶ポリエステルと、化学エッチング可能なシリカ微小球および扁平ガラス繊維とを用いる。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する特徴構造が粗面化表面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。本実施形態の材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、および低PIMの特性を有する。本実施形態におけるプラスチックの引張強度は70MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、プラスチックシートの表面上に1μmの表面粗さRaを有する粗面化表面を形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、単純化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-110dBmであり、Dkは3.88、Dfは0.0015である。コーティングの結合力は、3M#250テープのクロスカット試験のグレード0を満たし、200℃以内ではんだ-鉄溶接を満たすことができる。
【0121】
実施形態14
この実施形態は、
69部の液晶ポリエステルと
5部のエチレン-アクリル酸ブチル-メタクリル酸グリシジルコポリマーと、
6部の二酸化チタンと、
10部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0122】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0123】
使用される二酸化チタンは、レーザ光に対して強い反射性を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。成分としては、液晶ポリエステル、エチレン-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体、シリカ微小球、扁平ガラス繊維等の化学エッチング可能なものを用いる。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する特徴構造が粗面化表面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。本実施形態で作製した材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIMの特性を有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は120MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、プラスチックシートの表面上に2μmの表面粗さRaを有する粗面化表面を形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、単純化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-112dBmであり、Dkは3.95、Dfは0.0055である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0124】
実施形態15
この実施形態は、
69部の液晶ポリエステルと、
5部のエチレンプロピレンジエンモノマーゴムと、
6部の二酸化チタンと、
10部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0125】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0126】
使用される二酸化チタンは、レーザ光に対して強い反射性を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。成分としては、液晶ポリエステルとエチレンプロピレンジエンモノマーゴム、シリカ微小球と扁平ガラス繊維が化学エッチング可能なものを使用する。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する特徴構造が粗面化表面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。本実施形態で作製した材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIMの特性を有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は115MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、表面粗さRaが2.5μmの粗面をプラスチックシートの表面上に形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、簡略化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-114dBmであり、Dkは3.9、Dfは0.0018である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0127】
実施形態16
この実施形態は、
69部のポリエーテルエーテルケトンと、
5部の液晶ポリエステルと、
6部の二酸化チタンと、
10部のシリカミクロスフェアと、
10部の扁平ガラス繊維と、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0128】
シリカ微小球のD50は5μmである。扁平ガラス繊維は、断面の太さが7μmの無アルカリガラス繊維である。
【0129】
使用される二酸化チタンは、レーザ光に対して強い反射性を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。成分としては、液晶ポリエステルと、化学エッチング可能なシリカ微小球および扁平ガラス繊維とを用いる。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する特徴構造が粗面化表面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。この実施形態で製造された材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、および低PIMを有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は110MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、プラスチックシートの表面上に1.9μmの表面粗さRaを有する粗面化表面を形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、単純化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-113dBmであり、Dkは4.05、Dfは0.0035である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0130】
実施形態17
この実施形態は、
43部の液晶ポリエステルと、
10部のメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレンコポリマーと、
47部の二酸化チタンと、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0131】
使用される二酸化チタンは、レーザ光に対して強い反射性を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。成分としては、液晶ポリエステルと、化学的にエッチング可能なメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体を用いる。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する特徴構造が粗面化表面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。この実施形態で製造された材料は、高誘電率、低誘電損失、低コスト、および低PIMを有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は83MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、プラスチックシートの表面上に1.5μmの表面粗さRaを有する粗面化表面を形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、単純化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-112dBmであり、Dkは6.0、Dfは0.014である。コーティングの結合力は、3M#250テープのクロスカット試験のグレード0を満たし、200℃以内ではんだ-鉄溶接を満たすことができる。
【0132】
既存のLDSプロセスと比較して、アンテナ素子を製造するために使用される本出願の前述の実施形態におけるプラスチック材料は、LDS有機金属化合物を含まず、低い材料コストを有し、LDS活性化によって引き起こされる炭化粒子を有さず、より低い粗さおよびより良好なPIM値を有する。既存のPEPプロセスと比較して、プラスチック材料の場合、レーザ加工によって引き起こされる炭化粒子を低減または排除することができ、化学的粗面化によって低粗度および望ましい形態の均一性を有する表面を得ることができ、低粗度を有する金属コーティングの結合力を達成することができ、PIMがより良好である。
【0133】
実施形態18
この実施形態は、
69部の液晶ポリエステルと、
5部のエチレンプロピレンジエンモノマーゴムと、
26部の二酸化チタンと、の成分(重量部)を含むプラスチックを提供する。
【0134】
使用される二酸化チタンは、レーザ光に対して強い反射性を有し、レーザ加工によって引き起こされるプラスチック基板上の炭化効果を著しく低減または排除することができる。液晶ポリエステルとエチレンプロピレンジエンモノマーゴムという腐食しやすい成分を使用する。エッチング後、安定した低粗度表面を得ることができ、微細な孔を有する特徴構造が粗面化表面上に形成され、それによってコーティングとプラスチック界面との間の結合力を増加させる。本実施形態で作製した材料は、低誘電率、低誘電損失、低コスト、低PIMの特性を有する。この実施形態におけるプラスチックの引張強度は105MPaである。この実施形態におけるプラスチックは、プラスチックシートに射出成形され、プラスチックシートは、化学腐食溶液によって腐食されて、プラスチックシートの表面上に1.4μmの表面粗さRaを有する粗面化表面を形成し、次いで、接地面金属およびマイクロストリップがプラスチックシート上にめっきされて、単純化されたマイクロストリップ伝送線路シートが得られる。試験方法は実施形態1と同様である。本実施形態の材料の700MHz~6GHzにおける3次PIMの平均値は-114dBmであり、Dkは5.8、Dfは0.0042である。コーティングの結合力は、3M#250テープに対するクロスカット試験のグレード0を満たし、SMTはんだ付けを満たすことができる。
【0135】
既存のLDSプロセスと比較して、アンテナ素子を製造するために使用される本出願の前述の実施形態におけるプラスチック材料は、LDS有機金属化合物を含まず、低い材料コストを有し、LDS活性化によって引き起こされる炭化粒子を有さず、より低い粗さおよびより良好なPIM値を有する。既存のPEPプロセスと比較して、プラスチック材料の場合、レーザ加工によって引き起こされる炭化粒子を低減または排除することができ、化学的粗面化によって低粗度および望ましい形態の均一性を有する表面を得ることができ、低粗度を有する金属コーティングの結合力を達成することができ、PIMがより良好である。
【符号の説明】
【0136】
1 プラスチックベースプレート
2 単一アンテナ素子構造
3 電力分配ユニット
10 アンテナ素子本体
20 金属コーティング
21 無電解めっき層
22 電気めっきコーティング
図1
図2
図3
図4