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特許7534484リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20240806BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240806BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M10/54
H01M4/58
C01B25/45 Z
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023078923
(22)【出願日】2023-05-11
(65)【公開番号】P2024038982
(43)【公開日】2024-03-21
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】111134107
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517232729
【氏名又は名称】台湾立凱電能科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Advanced Lithium Electrochemistry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 2-1, Singhua Rd., Taoyuan Dist., Taoyuan City,330,Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】謝瀚緯
(72)【発明者】
【氏名】李宜庭
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0102773(US,A1)
【文献】特開2016-149298(JP,A)
【文献】特開2012-195156(JP,A)
【文献】特表2016-522965(JP,A)
【文献】特開2003-257429(JP,A)
【文献】特開2016-143503(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/54
H01M 4/58
C01B 25/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸鉄リチウム再生材料を提供する、ステップ(a)と、
大気雰囲気中に、前記リン酸鉄リチウム再生材料を酸化し、前記リン酸鉄リチウム再生材料は、酸化温度で1時間~5時間処理した後、原料粉末を形成し、前記酸化温度が300℃~400℃であり、前記原料粉末は、LiFePO、Fe(PO、Feおよび残留炭素で構成され、前記原料粉末に対する前記残留炭素の重量パーセントが0.07wt.%~0.6wt.%である、ステップ(b)と、
前記原料粉末を粉砕する、ステップ(c)と、
前記原料粉末の組成を調整し、前駆体を形成し、前記前駆体中のLi:Pのモル比が0.99~1.05:1であり、Fe:Pのモル比が0.98~1.02:1であり、かつ、炭素源を添加する、ステップ(d)と、
不活性ガス中に、前記前駆体を焼結し、前記前駆体を焼結温度で8時間~12時間処理し、リン酸鉄リチウム再生材料を形成し、前記焼結温度が500℃~800℃である、ステップ(e)と、を含むことを特徴とするリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)において、前記原料粉末が粉砕された後の平均粒径が0.4μm~1.2μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項3】
前記ステップ(d)は、助剤を添加し、前記前駆体に対する前記助剤の重量パーセントが3wt.%~15wt.%であるステップ(d1)をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項4】
前記助剤中のLi:Pのモル比が0.99~1.05:1であり、Fe:Pのモル比が0.98~1.02:1である、ことを特徴とする請求項3に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項5】
前記助剤は、非晶質リン酸鉄とリチウム塩との混合物である、ことを特徴とする請求項3に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項6】
前記焼結温度は、第1焼結温度および第2焼結温度を含み、前記前駆体は、前記第1焼結温度で3時間~5時間処理され、且つ、前記第2焼結温度で3時間~5時間処理され、前記リン酸鉄リチウム再生材料を形成し、前記第1焼結温度が500℃~600℃であり、前記第2焼結温度が700℃~800℃である、ことを特徴とする請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項7】
前記リン酸鉄リチウム再生材料の炭素含有量は1.6wt.%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)は、前記原料粉末中のLi、Fe、Pの重量比および前記残留炭素の含有量を分析するステップ(b1)をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項9】
前記ステップ(c)は、湿式粉砕工程により行われ、前記ステップ(d)は、前記前駆体を乾燥するステップ(d1)をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項10】
前記原料粉末に対する前記残留炭素の重量パーセントが0.2wt.%~0.4wt.%であり、且つ、前記ステップ(d1)は、噴霧造粒工程により行われる、ことを特徴とする請求項9に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【請求項11】
前記炭素源は、フルクトース、氷砂糖、スクロース、グルコース、シクロデキストリン、クエン酸、多糖類ビニルピロリドンおよびそれらの組合せからなる群から選択される1つである、ことを特徴とする請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関し、特に、二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(Lithium-ion battery)は、繰り返し充放電可能な二次電池であり、リチウムイオンが正極と負極との間に移動することによって充放電を実現する。そのため、リチウムイオン電池は、リチウム化合物を電極材料として使用する必要がある。従来のリチウムイオン電池に使用される正極材料は、主にコバルト酸化リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)およびリン酸鉄リチウム(LiFePO)などが挙げられる。そのうち、リン酸鉄リチウム電池は、良好な安全性、比電容量が大きく、再生利用可能な寿命が長く、また、高温耐性があり、且つコストが低いため、電気自動車やエネルギー貯蔵装置に広く使用されている。
【0003】
近年、電気自動車やエネルギー貯蔵装置におけるリチウムイオン電池の広範な応用に伴い、オリビン構造正極材料などの関連原材料の価格が大幅に変動している。今後も需要がますます増加していく中で、材料製造工程で発生する消耗品や廃電池から回収されるオリビン構造正極材料の再生利用が一層重要と考えられる。しかし、オリビン構造を有する正極材料の表面には、一般に導電性の炭素被覆層で被覆されており、この炭素被覆層は材料の再生や製造時の材料構造の再構築に影響を与え、場合によっては再生利用時に問題を引き起こす恐れもある。また、正極材料は量産工程において消耗品や不良品が発生する場合もあり、その不良品を再生利用することは望ましい。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法を提供する。本発明によれば、回収または大量生産プロセスでの不良品を再生利用するし、製品仕様を満たすリン酸鉄リチウム再生材料を生成でき、材料の無駄を回避し、従来技術が直面する問題を解決することができると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法を提供することである。回収または大量生産プロセスで形成された不良品を再生利用および再製造することで、製品仕様の要件を満たすリン酸鉄リチウム再生材料を生成し、材料の無駄を回避し、リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用価値を実現することができる。
【0006】
本発明のもう一つ目的は、二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法を提供することである。回収または大量生産プロセスでの欠陥のある半製品または完成品のリン酸鉄リチウムの組成・純度および残留炭素量は、材料の再製造に大きな影響を与えるので、本発明は、大気雰囲気中の酸化ステップにより、組成の制御が容易な原料粉末を形成することができ、特に、酸化された後の原料粉末に含まれる残留炭素量が0.07wt.%~0.6wt.%に低減されることができ、原料粉末中のリチウム、鉄、リン成分の割合に影響を与えない点が優れている。これによって、残留炭素量を低減させた酸化後の原料粉末を、粉砕・分散、組成調整、造粒、焼結等の工程を経て、二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の仕様要件を満たすリン酸鉄リチウム再生材料に形成することができる。また、助剤として非晶質リン酸鉄とリチウム塩の混合物などを添加することにより、噴霧造粒後の前駆物の粉末流動性をより向上させることができる。さらに、原料粉末の残留炭素量が0.2wt.%~0.4wt.%である場合、助剤の添加を省略することができる。また、前駆物が2段階の高温焼結プロセスを施した後、製品仕様を満たすリン酸鉄リチウム再生材料を形成することができ、炭素被覆の含有量が1.6wt.%未満に制御することができる。
【0007】
本発明のもう一つ目的は、二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法を提供することである。本発明の粉末酸化、粉砕・分散、組成調整、乾燥、焼結等の工程を経て、製品規格外のリン酸鉄リチウム再生材料により、製品規格を満たすリン酸鉄リチウム再生材料を生成することができ、同時に、炭素被覆の含有量が1.6wt.%未満に制御できる。その粉砕、分散、乾燥、焼結は、生産ライン上の通常のリン酸鉄リチウム正極材料の実際の量産プロセスと組み合わせることができ、最小限の生産コストでの再生利用および再製造を実現することができ、リン酸鉄リチウム正極材料の良品率を向上させ、さらに、材料の無駄または環境汚染を回避することができる。また、製品仕様を満たすリン酸鉄リチウム再生材料は、篩い分け、粉砕、混合、電磁分離により商品化されることもできるので、製品の競争力を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、リン酸鉄リチウム再生材料を提供するステップ(a)と、大気雰囲気中に、リン酸鉄リチウム再生材料を酸化するステップ(b)であって、リン酸鉄リチウム再生材料は、酸化温度で1時間~5時間処理した後、原料粉末を形成し、酸化温度が300℃~400℃であり、原料粉末は、LiFePO、Fe(PO、Feおよび残留炭素で構成され、原料粉末に対する残留炭素の重量パーセントが0.07wt.%~0.6wt.%であるステップ(b)と、原料粉末を粉砕するステップ(c)と、原料粉末の組成を調整し、前駆体を形成するステップ(d)であって、前駆体中のLi:Pのモル比が0.99~1.05:1であり、Fe:Pのモル比が0.98~1.02:1であり、かつ、炭素源を添加するステップ(d)と、不活性ガス中に、前駆体を焼結し、前駆体を焼結温度で8時間~12時間処理し、リン酸鉄リチウム再生材料を形成するステップ(e)であって、焼結温度が500℃~800℃であるステップ(e)とを含むことを特徴とするリン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法を提供する。
好ましくは、ステップ(c)において、原料粉末が粉砕された後の平均粒径が0.4μm~1.2μmである。
好ましくは、ステップ(d)は、助剤を添加するステップ(d1)であって、前駆体に対する助剤の重量パーセントが3wt.%~15wt.%であるステップ(d1)をさらに含む。
好ましくは、助剤中のLi:Pのモル比が0.99~1.05:1であり、Fe:Pのモル比が0.98~1.02:1である。
好ましくは、助剤は、非晶質リン酸鉄とリチウム塩との混合物である。
好ましくは、焼結温度は、第1焼結温度および第2焼結温度を含み、前駆体は、第1焼結温度で3時間~5時間処理され、且つ、第2焼結温度で3時間~5時間処理されることで、リン酸鉄リチウム再生材料を形成し、第1焼結温度が500℃~600℃であり、第2焼結温度が700℃~800℃である。
好ましくは、リン酸鉄リチウム再生材料の炭素含有量は1.6wt.%以下である。
好ましくは、ステップ(b)は、原料粉末中のLi、Fe、Pの重量比および残留炭素の含有量を分析するステップ(b1)をさらに含む。
好ましくは、ステップ(c)は、湿式粉砕工程により行われ、ステップ(d)は、前駆体を乾燥するステップ(d1)をさらに含む。
好ましくは、原料粉末に対する残留炭素の重量パーセントが0.2wt.%~0.4wt.%であり、且つ、ステップ(d1)は、噴霧造粒工程により行われる。
好ましくは、炭素源は、フルクトース、氷砂糖、スクロース、グルコース、シクロデキストリン、クエン酸、多糖類ビニルピロリドンおよびそれらの組合せからなる群から選択される1つである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法のフローチャート図である。
図2】本発明の二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法中の原料粉末のXRD分析結果である。
図3】本発明の二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法で得られたリン酸鉄リチウムの再生材料のXRD分析結果である。
図4】本発明の実施例1~実施例3の前駆体のSEM画像である。
図5】前駆体に10wt.%助剤が添加された場合の噴霧造粒後のSEM画像である。
図6】前駆体に5wt.%助剤が添加された場合の噴霧造粒後のSEM画像である。
図7】前駆体に3wt.%助剤が添加された場合の噴霧造粒後のSEM画像である。
図8】本発明の実施例4~実施例6の前駆体造粒前のSEM画像である。
図9】本発明の実施例10によって得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。
図10】本発明の実施例14によって得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。
図11】本発明の実施例15によって得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。
図12】本発明の実施例16によって得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。
図13】本発明の実施例17によって得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴及び利点を具体化するいくつかの典型的な実施形態は、以下の内容において詳細に説明する。本発明は、範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、以下の説明及び図面は、本発明を説明するために使用されており、本発明を限定するためのものではない。また、本発明の詳細な説明において、第1特徴が第2特徴の上又は上方に配置されることとは、配置された前記第1特徴と前記第2特徴が直接に接続されている実施形態と、前記第1特徴と前記第2特徴との間に他の構造を介し前記第1特徴と前記第2特徴が直接に接続されていない実施形態とを含む。さらに、本明細書の異なる実施形態に関する説明では、符号および/または記号を繰り返し使用することができる。これらの繰り返しは、簡略化および明確化を目的としており、さまざまな実施形態および/または説明される外観構造の間の関係を限定することを意図したものではない。なお、図中では、1つの構成要素または特徴部分と他の(複数)の構成要素または(複数)の特徴部分との関係を説明しやすくするために、「内」、「外」、「高い」、「低い」などの空間に示す用語を記載している。これらの記載は、空間相対的な用語であり、概略的に示された向きに加えて、使用中または動作中の装置の異なる向きを包含することを意図している。また、その装置は他の配置(例えば、90度回転または他の方向)に配置されてもよく、使用される場面に応じて解釈されることができる。また、構成要素が別の構成要素に「接続されている」または「結合されている」と記載される場合、他の構成要素に直接接続または結合されていても良く、他の構成要素を介して接続または結合されても良い。また、本明細書の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示す数値は可能な限り正確に記載されている。また、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、特許請求の範囲に記載された異なる構成を説明するために使用されており、これらの構成は当該用語に限定されず、実施形態に関する内容では、該当構成は異なる符号で表示さているが、第1構成は第2構成と表示され、また、第2構成は第1構成と表示されることも可能であり、本発明の実施形態から逸脱しない。また、「及び/又は」という用語は、一つおよび複数の関連要素またはその全部の組合せを意味する。操作/動作に関する実施形態において明確に定義しない限り、本明細書に記載されているすべての数値範囲、量、数値およびパーセントなど(例えば、角度、維持時間、温度、操作条件、割合及びそれに相当するパーセントなど)はいずれも、すべての実施形態において用語の「約」または「実質的に」に理解すべきである。また、内容に記載されない限り、本発明及び特許請求の範囲の数値はいずれも、必要に応じて変化しえる近似値に取ることができる。例えば、各パラメーターは、少なくとも記載されている有効桁数に照らして、通常の丸めの原則を適用して解釈しても良い。また、本明細書での数値範囲は、一方の端点から他方の端点まで、または2つの端点の間の範囲として表することができる。本明細書に記載されているすべての範囲は、特に定義されていない限り、端点を含むことを留意されたい。
【0011】
図1は、本発明の実施形態における二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法のフローチャート図である。本発明の二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法は、炭素被覆された二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料を製造するために用いられる。なお、リン酸鉄リチウム正極材料の応用は二次電池に限定されない。
【0012】
まず、ステップS1において、リン酸鉄リチウム再生材料を提供(用意、準備)する。リン酸鉄リチウム再生材料とは、一般的に廃電池の再生利用や量産プロセスで発生する消耗品・不良品で、実際の製品仕様要件を満たさず、再生利用して再製造する必要があるものを指す。換言すれば、リン酸鉄リチウム再生材料の主成分は、リン酸鉄リチウムの不良品であり、含有量が未確定の炭素被覆が含まれる場合がある。ある実施形態では、リン酸鉄リチウム再生材料は、例えば、実際の量産プロセスでの半製品または完成品であり、これらはプロセス仕様の要件を満たさないため、再生利用して再製造する必要がある。ただし、製造工程で発生した半製品または完成品は、主成分が、例えば、リン酸鉄リチウムの前駆体または炭素被覆リン酸鉄リチウム材料であり、粒径や結晶相に制限はなく、リン酸鉄リチウム再生材料として使用できる。これらの材料は、本発明の方法によって、回収および再生利用することができる。他の実施形態では、提供されるリン酸鉄リチウム再生材料は、例えば、廃電池から回収されたリン酸鉄リチウム正極材料であり、粘着剤を除去したリン酸鉄リチウム正極材料のみを含む(例えば、オリビン構造または炭素被覆を含むが、これに限定されない。)。なお、正極材料に使用される粘着剤の主成分はポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride,PVDF)または他の種類の高分子材料であり、これらの粘着剤は炭素被覆の除去を影響し、炭素含有量の制御に影響を与える可能性があるので、物理または化学的な手段によって除去することができる。なお、本発明はこれに限定されない。
【0013】
次に、ステップS2に示すように、大気雰囲気中に、前記リン酸鉄リチウム再生材料を酸化する。本実施形態では、リン酸鉄リチウム再生材料は、酸化温度で1時間~5時間処理された後、原料粉末となる(原料粉末を形成する)。酸化温度が300℃~400℃であり(ここで、350℃で2時間処理することが好ましい)、これによって、比較的に低い残留炭素量を得ることができる。このように酸化処理後の原料粉末をXRDで分析すると、主成分として、LiFePO、Fe(PO、Feで構成されることが分かる。また、図2に示すように、残留炭素を含んでいることも分かる。炭素含有量の分析により、リン酸鉄リチウム再生材料を酸化処理することで形成された原料粉末では、原料粉末に対する残留炭素の重量パーセントが0.07wt.%~0.6wt.%の範囲に制御することができることが分かる。なお、他の実施形態では、原料粉末の残留炭素量は、例えば、0.2wt.%~0.4wt.%に制御でき、これは、その後の再生利用および再製造のプロセスパラメータを制御するのに役立つことができる(もちろん、本発明はこれに限定されない)。原料粉末中のLi、Fe、Pの重量比は、後工程に比率を調整するために、ICP分析により求めることができる。
【0014】
ステップS3において、酸化処理された原料粉末は、湿式粉砕処理により、さらに分散される。ステップS4では、前記原料粉末の組成をさらに調整し、リン酸鉄リチウムの前駆体を形成する。ステップS3とステップS4は、段階的に行ってもよく、同時に行ってもよい。例えば、まず、原料粉末を粉砕し、原料粉末の組成を調整した後に、粉砕分散を行うことができるが、本発明はこれに限定されない。本実施形態では、ステップS3に粉砕された原料粉末または前駆体の平均粒径が0.4μm~1.2μmであり、好ましくは、0.4μm~0.6μmである。ステップS4に形成された前駆体は、Li:Pのモル比が0.99~1.05:1であり、Fe:Pのモル比が0.98~1.02:1である。本実施形態では、前駆体に炭素源をさらに添加しても良い。これによって、後工程において前駆体とともに炭素被覆リン酸鉄リチウム正極材料を形成することができる。炭素源は、例えば、フルクトース、氷砂糖、スクロース、グルコース、シクロデキストリン、クエン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つである。本実施形態では、湿式粉砕および分散後の前駆体を噴霧造粒プロセスによってさらに乾燥させることで、良好な流動性を有し、後続の処理に便利な前駆体の粉末を形成することができる。
【0015】
本実施形態では、上記前駆体の造粒後の粉末の流動性を高めるために、ステップS4において、造粒に必要な粘着剤としての3wt.%~15wt.%の助剤を添加することができる。助剤は、例えば、生産ラインにおいて非晶質リン酸鉄とリチウム塩の混合物から選択することができる。助剤中のLi:Pのモル比が0.99~1.05:1であり、Fe:Pのモル比が0.98~1.02:1であり、これにより、粘着性が提供されるとともに、前駆体中のLi:Fe:P=0.99~1.05:0.98~1.02:1の比率を維持することができる。また、他の実施形態では、使用される原料粉末の残留炭素は、原料粉末に対して、重量パーセントが0.2wt.%~0.4wt.%である場合、助剤の添加を省略することができ、例えば、噴霧造粒により流動性が良好な前駆体の粉末を直接に形成することもできる。なお、本発明はこれに限定されない。
【0016】
最後に、ステップS5に示すように、不活性ガス中で前記前駆体を焼結し、前駆体は、焼結温度で8時間~12時間処理して形成されたリン酸鉄リチウム再生材料であり、炭素含有量が1.6wt.%よりも少ない炭素被覆(被覆炭素)を含む。本実施形態では、焼結温度は、第1焼結温度および第2焼結温度を含む。前駆体は、第1焼結温度で3時間~4時間処理され、且つ第2焼結温度で3時間~4時間処理され、製品仕様の要件を満たすリン酸鉄リチウム再生材料を形成する。第1焼結温度が500℃~600℃であり、第2焼結温度が700℃~800℃である。このように、炭素源が添加された前駆体が焼結された後、XRDで分析すると、リン酸鉄リチウム再生材料の成分がLiFePOで構成されることが分かる。また、図3に示すように、炭素被覆を備えることも分かる。本実施形態では、焼結されたリン酸鉄リチウム再生材料は、篩い分け、粉砕、自己混合、電磁分離等により製品化することができるが、これに限定されるものではない。また、本実施形態において、ステップS5の焼結条件は、通常のリン酸鉄リチウム正極材料の大量生産焼結と組み合わされ、これによって、リン酸鉄リチウム正極の製品収率の向上に役立つだけではなく、材料の無駄および環境汚染を回避することができる。
【0017】
以上の内容より、電池の再生利用または製造プロセスに回収されたリン酸鉄リチウム再生材料のいずれも、本発明の粉末酸化、粉砕分散、成分調整、乾燥、焼結などの工程を経て、リン酸鉄リチウム再生材料を形成することができる。これによって、二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の仕様要件を満たし、同時に、炭素被覆量が1.6wt.%未満であることを制御することができる。このように、材料の無駄が効果的に回避され、リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用価値が実現されることができる。
【0018】
実施例1において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.4wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.84μmである。前駆物は、例えば、10wt.%の助剤を含む。また、炭素源として、フルクトースを前駆体に添加している。ここに留意されたいのは、リン酸鉄リチウム再生材料の炭素含有量は、原料粉末の残留炭素量よりも多いことである。本実施形態では、リン酸鉄リチウム再生材料の目標炭素含有量が1.4wt.%であり、原料粉末の残留炭素量の0.4wt.%よりも多く、炭素源として添加されたフルクトースの量は約6~8g/molである。もちろん、リン酸鉄リチウム再生材料の炭素被覆含有量は、一例として、1.6wt.%よりも少ないことが好ましいが、本発明はこれに限定されない。また、炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、また、700℃で4時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。その比表面積、炭素含有量および電気分析結果は、表1に示されている。
【0019】
実施例2において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.4wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.76μmである。前駆物は、例えば、5wt.%の助剤を含む。また、炭素源として、フルクトースを前駆体に添加している。炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、また、700℃で4時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。その比表面積、炭素含有量および電気分析結果は、表1に示されている。
【0020】
実施例3において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.29wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.82μmである。前駆物は、例えば、3wt.%の助剤を含む。また、炭素源として、フルクトースを前駆体に添加している。炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、また、700℃で4時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。その比表面積、炭素含有量および電気分析結果は、表1に示されている。
【0021】
なお、実施例1~実施例3の前駆体はそれぞれ、焼結処理前の噴霧造粒工程において前駆体の粒子の完全性をより良好に維持することを目的として、異なる含有量の助剤を含むことに留意すべきである。図4A図4Cは、本発明の実施例1~実施例3の前駆体のSEM画像である。図に示すように、前駆体に10wt.%、5wt.%または3wt.%の助剤を造粒に必要な粘着剤として添加する時、噴霧造粒に有利であり、前駆体造粒後の粉末流動性を向上させることができる。また、図5A図5Bは、前駆体に10wt.%助剤を添加した場合の噴霧造粒後のSEM画像を示している。図6A図6B図は、前駆体に5wt.%助剤を添加した場合の噴霧造粒後のSEM画像を示している。図7A図7Bは、前駆体に3wt.%助剤を添加した場合の噴霧造粒後のSEM画像を示している。助剤の添加により、噴霧造粒後の前駆体はより良好な粒子の完全性を維持できる。また、助剤は、生産ラインにおける非晶質リン酸鉄およびリチウム塩の混合物から選択することができる。助剤中のLi:Pのモル比が0.99~1.05:1であり、Fe:Pのモル比が0.98~1.02:1であり、粘着性が提供されるとともに、前駆体中のLi:Fe:P=0.99~1.05:0.98~1.02:1の比率を維持することができる。これによって、再生利用方法を通常の生産ライン生産に統合し、不良品の再処理の問題を解決し、不適切な材料製造によって引き起こされる廃棄物を回避することができる。もちろん、他の実施形態では、前駆体に助剤を添加しなくてもよく、本発明はこれに限定されない。
【0022】
実施例4~実施例6において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中に300℃で2時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.2wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。実施例4の平均粒径が約1.15μmであり、実施例5の平均粒径が約0.75μmであり、実施例6の平均粒径が約0.49μmである。図8A図8Cは、本発明の実施例4~実施例6中の前駆体造粒前のSEM画像である。実施例4~実施例6において、前駆物にはいずれも10wt.%の助剤を含む。また、フルクトースを炭素源として前駆体中に添加している。炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、また、700℃で4時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。その比表面積、炭素含有量および電気分析結果は、表1に示されている。
【0023】
実施例4~実施例6に得られたリン酸鉄リチウム再生材料の結果を比較すると、粉砕された原料粉末または前駆体の平均粒径が0.4μm~1.2μmである時、良好な特性を有するリン酸鉄リチウム再生材料を得ることが分かる(もちろん、本発明はこれに限定されない)。
【0024】
実施例7~実施例10において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中に350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.1wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、且つ適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.75μmであり、10wt.%の助剤を含有する。また、フルクトースを炭素源として前駆体に添加している。実施例7において、炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、また、700℃で4時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。図9Aは、本発明の実施例7に得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。実施例8において、炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、また、750℃で3時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。図9Bは、本発明の実施例8に得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。実施例9において、炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、700℃で4時間保温し、また、550℃で4時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。図9Cは、本発明の実施例9に得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。実施例10において、炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、750℃で3時間保温し、また、550℃で5時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。図9Dは、本発明の実施例10に得られたリン酸鉄リチウム再生材料のEM画像である。実施例7~実施例10に得られたリン酸鉄リチウム再生材料の比表面積、炭素含有量および電気分析結果は、表1に示されている。
【0025】
実施例7~実施例10で得られたリン酸鉄リチウム再生材料の結果から、炭素源が添加された前駆体は、焼結温度500℃~800℃で8時間~12時間処理されることで、所要のリン酸鉄リチウム再生材料を形成できることが分かる。また、炭素含有量が1.6wt.%未満の炭素被覆(被覆炭素)を備えることがわかる。焼結温度は、2段階以上で行われることができる。もちろん、他の実施形態では、焼結温度の制御は段階的に実行されなくてもよく、本発明はこれに限定されない。
【0026】
実施例11~実施例12において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中に350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.35wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.88μmであり、助剤を添加しておらず、フルクトースを炭素源として前駆体に添加している。実施例13において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中に350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.4wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.83μmであり、助剤を添加しておらず、フルクトースを炭素源として前駆体に添加している。実施例11~実施例13において、炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、また、700℃で4時間保温した後、得られたリン酸鉄リチウム再生材料の比表面積、炭素含有量および電気分析結果が表1に示されている。実施例11~13の結果から、原料粉末の残留炭素は、原料粉末に対して、重量パーセントが0.2wt.%~0.4wt.%である場合、助剤の添加を省略できることが分かる(もちろん、本発明はこれに限定されない)。
【0027】
実施例14において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中に350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.4wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.8μmであり、10wt.%の助剤を含有する。本実施形態では、炭素源として、氷砂糖を前駆体に添加している。炭素源が添加された前駆体は、不活性ガス中に、550℃で4時間保温し、また、700℃で4時間保温した後、得られたリン酸鉄リチウム再生材料の比表面積、炭素含有量および電気分析結果が表1に示されている。図10A図10Cは、本発明の実施例14で得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。他の実施例と異なり、実施例14は、前駆体に炭素源として氷砂糖を添加しており、優れた特性を有するリン酸鉄リチウム再生利用材料を得ることができた。他の実施形態では、炭素源として、スクロース、グルコース、シクロデキストリン、クエン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールまたはポリエチレングリコールに置き換えることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0028】
実施例15において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中に350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.18wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.80μmであり、10wt.%の助剤を含有する。炭素源として、フルクトースを前駆体に添加している。炭素源が添加された前駆体が不活性ガス中に550℃で4時間保温し、また、700℃で4時間保温した後に得られたリン酸鉄リチウム再生材料の比表面積、炭素含有量および電気分析結果が表1に示されている。図11A図11Cは、本発明の実施例15で得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。
【0029】
実施例16において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中に350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.35wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.86μmであり、10wt.%の助剤を含有する。炭素源として、フルクトースを前駆体に添加している。炭素源が添加された前駆体が不活性ガス中に550℃で4時間保温し、また、700℃で4時間保温した後に得られたリン酸鉄リチウム再生材料の比表面積、炭素含有量および電気分析結果が表1に示されている。図12A図12Bは、本発明の実施例16で得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。
【0030】
実施例17において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中に350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.4wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。前記前駆物の平均粒径が約0.84μmであり、10wt.%の助剤を含有する。炭素源として、フルクトースを前駆体に添加している。炭素源が添加された前駆体が不活性ガス中に550℃で4時間保温しまた700℃で4時間保温した後に得られたリン酸鉄リチウム再生材料の比表面積、炭素含有量および電気分析結果が表1に示されている。図13A図13Bは、本発明の実施例17で得られたリン酸鉄リチウム再生材料のSEM画像である。
【0031】
実施例18~実施例22において、所定量のリン酸鉄リチウム再生材料を大気雰囲気中に350℃で3時間酸化処理し、得られた原料粉末の残留炭素量が0.78wt.%である。次に、原料粉末を粉砕し、適量のリチウム源および鉄源を添加することで原料粉末の組成を調整し、焼結前の前駆物を形成する。炭素源として、フルクトースを前駆体に添加している。実施例18において、前駆体平均粒径が約0.45μmであり、3wt.%の助剤を含有する。炭素源が添加された前駆体が不活性ガス中に550℃で4時間保温しまた700℃で4時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。実施例19において、前駆体平均粒径が約0.45μmであり、3wt.%の助剤を含有する。炭素源が添加された前駆体が不活性ガス中に750℃で3時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。実施例20において、前駆体平均粒径が約0.399μmであり、3wt.%の助剤を含有している。炭素源が添加された前駆体が不活性ガス中に750℃で3時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。実施例21において、前駆体平均粒径が約0.55μmであり、3wt.%の助剤を含有する。炭素源が添加された前駆体が不活性ガス中に550℃で4時間保温しまた700℃で4時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。実施例22において、前駆体平均粒径が約0.55μmであり、3wt.%の助剤を含有する。炭素源が添加された前駆体が不活性ガス中に550℃で4時間保温し、650℃で3時間保温し、また、700℃で3時間保温した後、リン酸鉄リチウム再生材料を得ることができる。
【0032】
実施例18~実施例22で得られたリン酸鉄リチウム再生材料の結果から、炭素源が添加された前駆体が焼結温度500℃~800℃で3時間~10時間処理された後、所要のリン酸鉄リチウム再生材料を形成することができる。また、炭素含有量が1.3wt.%未満の炭素被覆を備える。焼結温度は、1段階、2段階、またはそれ以上の段階で行われることができる。実施例19および実施例20の焼結時間は3時間に短縮された他の実施形態では、実際の用途の要件に従って焼結の温度および時間を調整することができ、本発明はこれに限定されない。
【0033】
一方で、実施例1~実施例22で得られたリン酸鉄リチウム再生材料の分析結果から、本発明リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法によって生成された製品仕様の要件を満たしたリン酸鉄リチウム再生材料の比表面積が8m/g~14.5m/gであり、0.1C充放電容量が150mAh/g以上で、良好な物性および電気特性を有することが分かる。もちろん、本発明リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法は、前述の多くのプロセスパラメータを調整することにより、要求される製品仕様を備えたリン酸鉄リチウム再生材料を製造することができる。なお、本発明はこれに限定されない。
【0034】
以上のように、本発明は、二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用方法を提供する。回収または大量生産プロセスで形成された不良品を再生利用および再製造することで、製品仕様の要件を満たすリン酸鉄リチウム再生材料を生成し、材料の無駄を回避し、リン酸鉄リチウム正極材料の再生利用価値を実現することができる。回収または大量生産プロセスでの欠陥のある半製品または完成品のリン酸鉄リチウムの組成・純度および残留炭素量は、材料の再製造に大きな影響を与えるので、本発明は、大気雰囲気中の酸化ステップにより、組成の制御が容易な原料粉末を形成することができ、特に、酸化された後の原料粉末に含まれる残留炭素量が0.07wt.%~0.6wt.%に低減されることができ、原料粉末中のリチウム、鉄、リン成分の割合に影響を与えない点が優れている。これによって、残留炭素量を低減させた酸化後の原料粉末を、粉砕・分散、組成調整、造粒、焼結等の工程を経て、二次電池用リン酸鉄リチウム正極材料の仕様要件を満たすリン酸鉄リチウム再生材料に形成することができる。また、助剤として非晶質リン酸鉄とリチウム塩の混合物などを添加することにより、噴霧造粒後の前駆物の粉末流動性をより向上させることができる。さらに、原料粉末の残留炭素量が0.2wt.%~0.4wt.%である場合、助剤の添加を省略することができる。また、前駆物が2段階の高温焼結プロセスを施した後、製品仕様を満たすリン酸鉄リチウム再生材料を形成することができ、炭素被覆の含有量が1.6wt.%未満に制御することができる。本発明の粉末酸化、粉砕・分散、組成調整、乾燥、焼結等の工程を経て、製品規格外のリン酸鉄リチウム再生材料により、製品規格を満たすリン酸鉄リチウム再生材料を生成することができ、同時に、炭素被覆の含有量が1.6wt.%未満に制御できる。その粉砕、分散、乾燥、焼結は、生産ライン上の通常のリン酸鉄リチウム正極材料の実際の量産プロセスと組み合わせることができ、最小限の生産コストでの再生利用および再製造を実現することができ、リン酸鉄リチウム正極材料の良品率を向上させ、さらに、材料の無駄または環境汚染を回避することができる。また、製品仕様を満たすリン酸鉄リチウム再生材料は、篩い分け、粉砕、混合、電磁分離により商品化されることもできるので、製品の競争力を高めることができる。
【0035】
本発明は、当該技術分野における技術者によって様々な方法で修正または変更することができるが、その修正および変更はいずれも本発明の技術的思想から逸脱しなく本発明の特許請求の範囲に含まれている。
【符号の説明】
【0036】
S1~S5:ステップ
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